説明

フェノキシカルボニル基の脱離方法

【課題】N−フェノキシカルボニル化アミノ化合物のフェノキシカルボニル基を簡便かつ効率よく脱離させる方法及び該方法を利用したペプチド化合物の合成方法の提供。
【解決手段】N−フェノキシカルボニル化アミノ化合物を、水存在下熱処理することを特徴とする前記N−フェノキシカルボニル化アミノ化合物のフェノキシカルボニル基を脱離させる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノキシカルボニル基の脱離方法及び該方法を利用したペプチド化合物の合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
N−フェノキシカルボニルアミノ酸は、ポリアミノ酸の合成等に利用されている有用な化合物である(特許文献1)。この化合物は、α−アミノ酸のアミノ基がフェノキシカルボニル基で保護された構造を有しており、ペプチド合成における出発アミノ酸や、これに逐次結合させるアミノ酸の供給源として利用できると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−74035号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】HELVETICA CHIMICA ACTA,Vol.36,875-886(1953)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ペプチド化合物の段階的伸長法においては、アミノ保護基が脱離しやすいことが要求される。フェノキシカルボニル基は一般的な脱保護条件に対し安定であり、脱離させるのが困難なため、N−フェノキシカルボニルアミノ酸はペプチド合成原料として利用されることはなかった。フェノキシカルボニル基の脱離方法の数少ない例として、特定のN−フェノキシカルボニルアミノ酸のフェノキシカルボニル基を特定の還元剤や強酸を用いて脱離させる方法が報告されているものの(非特許文献1)、斯かる方法では、還元剤や強酸の分離が必要なだけでなく、副反応が生じやすいため、還元剤や強酸に弱いアミノ酸種やペプチドシーケンスから効率的にフェノキシカルボニル基を脱離させるのが難しい。
【0006】
したがって、本発明の課題は、N−フェノキシカルボニル化アミノ化合物のフェノキシカルボニル基を簡便かつ効率よく脱離させる方法及び該方法を利用したペプチド化合物の合成方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、N−フェノキシカルボニル化アミノ化合物を、水の存在下熱処理することによって、該化合物のフェノキシカルボニル基を簡便かつ効率よく脱離させることができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、N−フェノキシカルボニル化アミノ化合物を、水の存在下熱処理することを特徴とする前記N−フェノキシカルボニル化アミノ化合物のフェノキシカルボニル基を脱離させる方法を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、下記式(1)
【0010】
【化1】

【0011】
〔式(1)中、R1は、カルボキシル基の保護基、固相樹脂又は水素原子を示し、Xは、それぞれ独立してアミノ酸残基を示し、nは1以上の整数を示す。〕
で表される、アミノ酸又はペプチドシーケンスを、水の存在下熱処理することを特徴とする前記アミノ酸又はペプチドシーケンスのフェノキシカルボニル基を脱離させる方法を提供するものである。
【0012】
更に、本発明は、C末端からN末端へ逐次ペプチド鎖を伸長させるペプチド化合物の合成方法であって、下記式(2)
【0013】
【化2】

【0014】
〔式(2)中、R2は、C末端アミノ酸のカルボキシル基の保護基又は固相樹脂を示し、Xは、それぞれ独立してアミノ酸残基を示し、mは2以上の整数を示す。〕
で表されるペプチドシーケンスのフェノキシカルボニル基を、水存在下熱処理により脱離させる工程を含むことを特徴とするペプチド化合物の合成方法を提供するものである。
【0015】
更に、本発明は、N末端からC末端へ逐次ペプチド鎖を伸長させるペプチド化合物の合成方法であって、下記式(3)
【0016】
【化3】

【0017】
〔式(3)中、X及びmは前記と同義である。〕
で表されるペプチドシーケンスのフェノキシカルボニル基を、水存在下熱処理により脱離させる工程を含むことを特徴とするペプチド化合物の合成方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明のフェノキシカルボニル基の脱離方法によれば、N−フェノキシカルボニル化アミノ化合物のフェノキシカルボニル基を簡便かつ効率よく脱離させることができる。したがって、該脱離方法を利用することにより、フェノキシカルボニル基をアミノ保護基として用い、簡便かつ効率よく目的とするペプチド化合物を合成できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のフェノキシカルボニル基の脱離方法は、N−フェノキシカルボニル化アミノ化合物を水の存在下熱処理することを特徴とするものである。まず、斯かる脱離方法について詳細に説明する。
【0020】
上記N−フェノキシカルボニル化アミノ化合物としては、化合物中のアミノ基がフェノキシカルボニル化されているものであれば特に限定されないが、アミノ基がフェノキシカルボニル化されているアミノ酸やペプチドシーケンスが好ましく、下記式(1)
【0021】
【化4】

【0022】
〔式(1)中、R1は、カルボキシル基の保護基、固相樹脂又は水素原子を示し、Xは、それぞれ独立してアミノ酸残基を示し、nは1以上の整数を示す。〕
で表される、アミノ酸又はペプチドシーケンスがより好ましい。本発明の脱離方法によれば、フェノキシカルボニル基を脱離させるときに副反応が生じやすいペプチドシーケンスのフェノキシカルボニル基も簡便かつ効率よく選択的に脱離させることができる。
【0023】
前記R1で示されるカルボキシル基の保護基としては、カルボキシル基を保護できるものであれば特に限定されないが、カルボン酸エステルのエステル残基が挙げられる。斯かる保護基の炭素数としては、フェノキシカルボニル基の脱離効率の観点から、1〜16が好ましく、1〜12がより好ましく、1〜8が更に好ましく、1〜4が特に好ましい。
また、エステル残基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。なお、上記アルキル基、アルケニル基は直鎖状でも分岐状でもよい。
また、エステル残基は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;ニトロ基;フェニル基;C13アルコキシ基;ベンゾイル基;ピリジル基等の置換基が置換していてもよく、置換基の位置及び数は任意であり、置換基を2以上有する場合、該置換基は同一でも異なっていてもよい。
斯様なエステル残基の中でも、フェノキシカルボニル基の脱離効率の観点から、メチル基、トリフルオロメチル基、エチル基、トリクロロエチル基、tert−ブチル基、フェナシル基、4−ピコリル基等の置換又は非置換のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ベンジル基、p−ニトロベンジル基、p−メトキシベンジル基、ジフェニルメチル基等の置換又は非置換のアラルキル基が好ましく、置換又は非置換のアルキル基が特に好ましい。
【0024】
また、R1で示される固相樹脂は、ペプチド固相合成法に通常用いられる樹脂であればよい。斯様な固相樹脂としては、例えば、ワング樹脂等の水酸基を有するポリスチレン樹脂、メリフィールド樹脂等の塩素原子を有するポリスチレン樹脂等が挙げられる。
【0025】
上述のようなR1の中でも、カルボキシル基の保護基、固相樹脂が好ましい。本発明の脱離方法によれば、R1がカルボキシル基の保護基や固相樹脂であっても、これらの脱離を抑えつつ、フェノキシカルボニル基を選択的に脱離させることができる。
【0026】
また、Xは、それぞれ独立してアミノ酸残基を示す。アミノ酸残基としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、プロリン等の中性アミノ酸の残基;アスパラギン酸等の酸性アミノ酸の残基;リシン、アルギニン等の塩基性アミノ酸の残基が挙げられる。斯様なアミノ酸残基の中でも、−NH−CHR’−(C=O)−で表されるもの(R’はアミノ酸側鎖を示す。)が好ましい。
また、n個のXのうち、少なくとも1個以上がフェニルアラニンであるのが好ましい。
【0027】
また、nは1以上の整数を示すが、1〜5の整数が好ましく、1〜3の整数がより好ましく、2又は3が特に好ましい。
【0028】
また、本発明の脱離方法は酸存在下で行うのが好ましい。酸を用いることによりヒダントインの生成を抑制できる。
上記酸としては、副反応を抑制し、簡便かつ効率よくフェノキシカルボニル基を脱離させる観点から、pKaが−4〜5の範囲のものが好ましい。斯かるpKaは、水溶液(25℃)中の1段目の酸解離定数を意味し、その下限としては、−1以上が好ましく、1以上がより好ましく、上記と同様の観点から、2以上が更に好ましく、3以上が更に好ましく、3.5以上が特に好ましい。一方、上限としては、上記と同様の観点から、4.5以下が好ましく、4以下がより好ましい。
【0029】
また、使用する酸としては、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸等の有機酸;リン酸、塩酸、亜硫酸水素塩(例えば、亜硫酸水素ナトリウム)等の無機酸が挙げられる(これらは強酸と弱酸とに大別することもできるが弱酸が好ましい)。
また、酸の合計使用量は特に限定されないが、N−フェノキシカルボニル化アミノ化合物に対して、通常、0.1〜100質量倍程度であり、好ましくは0.5〜10質量倍である。
【0030】
また、本発明の脱離方法は、pH1〜7(好ましくは1.5〜5であり、より好ましくは2〜4である)の酸性条件で行うのが好ましい。斯様な条件とするためのpHの調整は前記酸を用いればよい。
【0031】
また、本発明の脱離方法はN−フェノキシカルボニル化アミノ化合物を熱処理するものである。熱処理の温度(反応温度)としては105〜180℃が好ましい。斯様な反応温度とすることにより、フェノキシカルボニル基とアミノ基との間の結合が熱的に分解され、フェノキシカルボニル基の脱離効率を向上させることができる。上記反応温度の下限としては、副反応を抑制し、簡便かつ効率よくフェノキシカルボニル基を脱離させる観点から、110℃以上が好ましく、115℃以上がより好ましい。一方、上限としては、下限と同様の観点から、170℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましく、150℃以下が更に好ましく、140℃以下が更に好ましく、130℃以下が特に好ましい。
【0032】
また、本発明の脱離方法は水存在下で行うものである。斯かる水の使用量としては、副反応を抑制し、簡便かつ効率よくフェノキシカルボニル基を脱離させる観点から、N−フェノキシカルボニル化アミノ化合物に対して、10〜70質量倍が好ましく、20〜70質量倍がより好ましく、30〜70質量倍が特に好ましい。
【0033】
また、本発明の脱離方法は他の溶媒を用いてもよい。斯かる他の溶媒としては、他の極性溶媒が好ましい。斯かる他の極性溶媒としては、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;テトラヒドロフラン等のエーテル類等が挙げられ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
また、上記他の溶媒の合計使用量は特に限定されないが、N−フェノキシカルボニル化アミノ化合物に対して、通常、10〜100質量倍程度であり、好ましくは20〜100質量倍である。
また、反応時間は特に限定されないが、通常、1〜48時間程度である。
【0034】
そして、上述の本発明の脱離方法によれば、N−フェノキシカルボニル化アミノ化合物のフェノキシカルボニル基を簡便かつ効率よく脱離させることができ、脱離に伴いフェノールが生じるがこれも極めて容易に分離できる。また、斯かる脱離方法によれば、脱離させるときに副反応が生じやすいペプチドシーケンスのフェノキシカルボニル基も簡便かつ効率よく選択的に脱離させることができる。
したがって、本発明の脱離方法を、C末端からN末端へ又はN末端からC末端へ逐次ペプチド鎖を伸長させるペプチド化合物の合成方法に利用することにより、フェノキシカルボニル基をアミノ保護基として用いて簡便かつ効率よく目的とするペプチド化合物を合成できる。
ここで、本発明のC末端からN末端へ逐次ペプチド鎖を伸長させるペプチド化合物の合成方法(以下、N末端伸長合成法とも称する)について、詳細に説明する。
【0035】
本発明のN末端伸長合成法は、下記式(2)
【0036】
【化5】

【0037】
〔式(2)中、R2は、C末端アミノ酸のカルボキシル基の保護基又は固相樹脂を示し、mは2以上の整数を示し、Xは前記と同義である。〕
で表されるペプチドシーケンスのフェノキシカルボニル基を、水存在下熱処理により脱離させる工程を含むことを特徴とするものである。
【0038】
2は、C末端アミノ酸のカルボキシル基の保護基又は固相樹脂を示す。これら保護基、固相樹脂としては、R1で示されるC末端アミノ酸のカルボキシル基の保護基、固相樹脂と同様のものが好ましい。
また、mとしては、前記nと同様のものが好ましい。
【0039】
次に、本発明のN末端伸長合成法を、m=2の場合を例に挙げて具体的に説明する。
【0040】
【化6】

【0041】
(式中、R2及びXは前記と同義である。)
【0042】
<工程1−1>
工程1−1は、出発アミノ酸(4)に対し、保護α−アミノ酸(5)を反応させ、ペプチドシーケンス(2’)を得る工程である。
本反応で用いる出発アミノ酸(4)としては、例えば、バリンメチルエステル、バリンエチルエステル、バリンtert−ブチルエステル、グリシンメチルエステル、グリシンエチルエステル、グリシンtert−ブチルエステル、フェニルアラニンメチルエステル、フェニルアラニンエチルエステル、フェニルアラニンtert−ブチルエステル、プロリンメチルエステル、プロリンエチルエステル、プロリンtert−ブチルエステル、これらの塩等が挙げられる。なお、塩は、好ましくは無機酸塩である。
斯かる出発アミノ酸(4)は、対応するアミノ酸のカルボキシ基の保護や対応するアミノ酸のカルボキシ基を固相樹脂上に固定することにより得られる。
【0043】
また、本反応で用いる保護α−アミノ酸(5)としては、例えば、N−フェノキシカルボニルバリン、N−フェノキシカルボニルフェニルアラニン、N−フェノキシカルボニルプロリン等が挙げられる。
保護α−アミノ酸(5)の使用量は特に限定されないが、出発アミノ酸(4)に対して、通常、1〜2モル当量程度であり、好ましくは1〜1.1モル当量である。
【0044】
また、上記出発アミノ酸(4)として塩を用いる場合、本反応は塩基存在下で行うのが好ましい。斯かる塩基は、トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基に大別される。なお、塩基は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0045】
また、本反応は、カップリング剤存在下で行うのが好ましい。カップリング剤としては、カルボジイミド類、アジド類、シアニド類が挙げられる。
カルボジイミド類のカップリング剤としては、例えば、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩等が挙げられる。
また、アジド類のカップリング剤としては、例えば、ジフェニルリン酸アジドが挙げられ、シアニド類のカップリング剤としては、例えば、ジエチルリン酸シアニド等が挙げられる。
なお、カップリング剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0046】
また、本反応には、エピメリ化抑制剤を使用してもよい。斯様なエピメリ化抑制剤としては、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミド、1−ヒドロキシベンゾロリアゾール、3−ヒドロキシ−4−オキソ−3,4−ジヒドロ−1,2,3−ベンゾトリアジン、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸イミド、2−ヒドロキシイミノ−2−シアノ酢酸エチルエステル、そのアミドが挙げられる。なお、エピメリ化抑制剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
また、前記塩基、カップリング剤及びエピメリ化抑制剤は、いずれも、出発アミノ酸(4)に対して、通常、1〜1.5モル当量程度使用され、好ましくは1〜1.1モル当量である。
【0047】
また、本反応は、溶媒存在下又は非存在下で行うことができるが、溶媒存在下で行うのが好ましい。該溶媒としては、極性溶媒が好ましく、斯かる極性溶媒としては、前記他の極性溶媒と同様のものが挙げられる。
また、溶媒の合計使用量は特に限定されないが、出発アミノ酸(4)に対して、通常、5〜70質量倍程度である。
また、本反応の反応温度は、通常−20〜50℃程度であり、反応時間は、通常1〜72時間程度である。
【0048】
<工程1−2>
工程1−2は、工程1−1で得たペプチドシーケンス(2’)のフェノキシカルボニル基を水存在下熱処理により脱離させて、ペプチドシーケンス(6)を得る工程である。すなわち、N末端伸長合成法においては、斯様な脱保護工程に本発明の脱離方法が利用される。本反応は前記脱離方法と同様にして行えばよい。
本反応で用いるペプチドシーケンス(2’)としては、例えば、N−フェノキシカルボニル−Phe−Val−OtBu、N−フェノキシカルボニル−Phe−Gly−OtBu、N−フェノキシカルボニル−Phe−Pro−OtBu、N−フェノキシカルボニル−Val−Gly−OtBu、N−フェノキシカルボニル−Val−Phe−OtBu、N−フェノキシカルボニル−Val−Pro−OtBu、N−フェノキシカルボニル−Gly−Val−OtBu、N−フェノキシカルボニル−Gly−Phe−OtBu、N−フェノキシカルボニル−Gly−Pro−OtBu等が挙げられる。
なお、ここで得たペプチドシーケンス(6)を使用して、工程1−1と工程1−2とを繰り返しペプチド鎖を伸長させていき、得られたm=3以上のペプチドシーケンスを後述する工程1−3に使用すれば、m=3以上のペプチド化合物が得られる。
【0049】
<工程1−3>
工程1−3は、工程1−2で得たペプチドシーケンス(6)のR2を脱離させ、ペプチド化合物(7)を得る工程である。
本反応で用いるペプチドシーケンス(6)としては、H−Phe−Val−OtBu、H−Phe−Gly−OtBu、H−Phe−Pro−OtBu、H−Val−Gly−OtBu、H−Val−Phe−OtBu、H−Val−Pro−OtBu、H−Gly−Val−OtBu、H−Gly−Phe−OtBu、H−Gly−Pro−OtBu等が挙げられる。
【0050】
また、本反応は、酸、塩基等を用い、通常のC末端アミノ酸のカルボキシル基を脱保護させる方法に従い行えばよい。酸としては、前記脱保護方法で使用できるものが挙げられ、塩基としては、前記工程1−1で使用できるものが挙げられる。
酸、塩基の使用量は、いずれも、ペプチドシーケンス(6)に対して、通常、1〜100質量倍程度である。
また、本反応の反応温度は、通常0℃〜室温程度であり、反応時間は、通常0.5〜10時間程度であり、好ましくは1〜2時間である。
【0051】
次に、本発明のN末端からC末端へ逐次ペプチド鎖を伸長させるペプチド化合物の合成方法(以下、C末端伸長合成法とも称する)について説明する。
本発明のC末端伸長合成法は、下記式(3)
【0052】
【化7】

【0053】
〔式(3)中、X及びmは前記と同義である。〕
で表されるペプチドシーケンスのフェノキシカルボニル基を、水存在下熱処理により脱離させる工程を含むことを特徴とするものである。斯かるC末端伸長合成法を、m=2の場合を例に挙げて具体的に説明する。
【0054】
【化8】

【0055】
(式中、R3は、C末端アミノ酸のカルボキシル基の保護基を示し、Xは前記と同義である。)
なお、R3で示される保護基としては、R1で示されるC末端アミノ酸のカルボキシル基の保護基と同様のものが好ましい。
【0056】
<工程2−1及び工程2−2>
工程2−1は、出発アミノ酸(5)に対し、保護α−アミノ酸(4)を反応させ、ペプチドシーケンス(2’)を得る工程である。
また、工程2−2は、工程2−1で得たペプチドシーケンス(2’)のR2を脱離させ、ペプチドシーケンス(3’)を得る工程である。
工程2−1は、前記工程1−1と同様にして、工程2−2は、前記工程1−3と同様にして、それぞれ行えばよい。
【0057】
<工程2−3>
工程2−3は、工程2−2で得たペプチドシーケンス(3’)のフェノキシカルボニル基を水存在下熱処理により脱離させて、ペプチド化合物(7)を得る工程である。すなわち、C末端伸長合成法においては、斯様な脱保護工程に本発明の脱離方法が利用される。本反応は前記脱離方法と同様にして行えばよい。本反応で用いるペプチドシーケンス(3’)としては、例えば、N−フェノキシカルボニル−Phe−Val−OH、N−フェノキシカルボニル−Phe−Gly−OH、N−フェノキシカルボニル−Phe−Pro−OH、N−フェノキシカルボニル−Val−Gly−OH、N−フェノキシカルボニル−Val−Phe−OH、N−フェノキシカルボニル−Val−Pro−OH、N−フェノキシカルボニル−Gly−Val−OH、N−フェノキシカルボニル−Gly−Phe−OH、N−フェノキシカルボニル−Gly−Pro−OH等が挙げられる。
【0058】
なお、N末端伸長合成法及びC末端伸長合成法の前記各工程において、各反応生成物の単離は、必要に応じて、ろ過、洗浄(固相樹脂の除去等)、乾燥、再結晶、遠心分離、各種溶媒による抽出、中和、クロマトグラフィー等の通常の手段を適宜組み合わせて行えばよい。
【0059】
斯様にして、本発明のペプチド化合物の合成方法によれば、フェノキシカルボニル基をアミノ保護基として用いて簡便かつ効率よく目的とするペプチド化合物を合成できる。
【実施例】
【0060】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例における1H−NMRスペクトルはBruker社製AVANCE500により測定した。
【0061】
合成例1 N−フェノキシカルボニル−Phe−OHの合成
フェニルアラニン(1.45g,8.00mmol)とテトラブチルアンモニウム硫酸水素塩(2.72g,8.00mmol)を20.8%−水酸化ナトリウム水溶液3.08gに懸濁させ、室温で30分攪拌した。この懸濁液に、あらかじめメチルイソブチルケトン5mLに溶解しておいた炭酸ジフェニル(1.71g,8.00mmol)を滴下して加え、室温で3時間攪拌した。次いでこの溶液に、メチルイソブチルケトン45mL、ヘキサン9mL、水4mL及び0.5M−硫酸水溶液40mLを加え抽出した。有機層を0.5M−硫酸水溶液で1回、水で3回洗浄し、さらに、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で塩基抽出した(なお、水層は1M−硫酸で中和した)。さらに、有機層をメチルイソブチルケトンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去して、N−フェノキシカルボニル−Phe−OH(白色固体)を得た(1.71g,75%)。
得られたN−フェノキシカルボニル−Phe−OHの構造式とNMRスペクトルを以下に示す。
【0062】
【化9】

【0063】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ3.27 (dm, 2H), 4.76 (dd, 1H), 5.44 (d, 1H), 7.09 (d, 2H), 7.24-7.52 (m, 8H).
【0064】
合成例2 N−フェノキシカルボニル−Val−OHの合成
バリン(16.5g,141mmol)とテトラブチルアンモニウム硫酸水素塩(43.5g,128mmol)を20.8%−水酸化ナトリウム水溶液49.3gに懸濁させ、室温で30分攪拌した。この懸濁液に、あらかじめメチルイソブチルケトン80mLに溶解しておいた炭酸ジフェニル(27.4g,128mmol)を滴下して加え、室温で3時間攪拌した。次いでこの溶液に、メチルイソブチルケトン720mL、ヘキサン146mL及び0.5M−硫酸水溶液567mLを加え抽出した。有機層を0.5M−硫酸水溶液で1回、水で3回洗浄し、さらに、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で塩基抽出した(なお、水層は1M−硫酸で中和した)。一方、有機層をメチルイソブチルケトンで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去して、N−フェノキシカルボニル−Val−OH(うす黄色透明の粘稠液体)を得た(16.7g,55%)。
得られたN−フェノキシカルボニル−Val−OHの構造式とNMRスペクトルを以下に示す。
【0065】
【化10】

【0066】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ1.00 (d, 3H), 1.07 (d, 3H), 2.31 (m, 1H), 4.41 (q, 1H), 5.50 (d, 1H), 7.13 (d, 2H), 7.19 (t, 1H), 7.32 (t, 2H).
【0067】
実施例1 フェニルアラニルバリンの合成
<1>以下の合成経路に従い、N−フェノキシカルボニル−フェニルアラニルバリンt−ブチルエステルを合成した。
【0068】
【化11】

【0069】
合成例1で得たN−フェノキシカルボニル−Phe−OH(1.50g,5.26mmol)をジメチルホルムアミド15mLに溶解し、この溶液に、ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.20g,5.79mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物(0.89g,5.79mmol)、バリンt−ブチルエステル塩酸塩(1.01g,5.79mmol)及びトリエチルアミン(0.82mL,5.79mmol)を加え、0℃で一晩攪拌した。次いで、ジシクロヘキシルウレアをろ別した後、ろ液をジエチルエーテルで3回抽出した。有機層を、1N−塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)で精製して、N−フェノキシカルボニル−フェニルアラニルバリンt−ブチルエステル(白色固体)を得た(2.00g,86%)。
NMR測定により、得られた化合物がN−フェノキシカルボニル−フェニルアラニルバリンt−ブチルエステルであることを確認した。得られたN−フェノキシカルボニル−フェニルアラニルバリンt−ブチルエステルのNMRスペクトルを以下に示す。
【0070】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ0.88 (d, 3H), 0.91 (d, 3H), 1.48 (s, 9H), 2.14 (m, 1H), 3.18 (d, 2H), 4.38 (q, 1H), 4.50 (t, 1H), 5.67 (d, 1H), 6.21 (d, 1H), 7.09 (d, 2H), 7.21-7.36 (m, 8H).
【0071】
<2>以下の合成経路に従い、フェニルアラニルバリンt−ブチルエステルを合成した。
【0072】
【化12】

【0073】
上記で得られたN−フェノキシカルボニル−フェニルアラニルバリンt−ブチルエステル100mg(0.227mmol)をジメチルスルホキシド7.5mLと1%−ギ酸水溶液(pH2.2)5.5mLの混合溶媒に懸濁させ、120℃で8時間攪拌した。次いで、この反応液(HPLCより算出したフェニルアラニルバリンt−ブチルエステルの収量37mg,51%)にジエチルエーテルと1N−HClを加えて抽出した。有機層を飽和食塩水で洗い(なお、水層は炭酸水素ナトリウムで中和した後、酢酸エチルで再度抽出した)、硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去してフェニルアラニルバリンt−ブチルエステル(白色固体)を得た(収量27.5mg,38%)。
NMR測定により、得られた化合物がフェニルアラニルバリンt−ブチルエステルであることを確認した。得られたフェニルアラニルバリンt−ブチルエステルのNMRスペクトルを以下に示す。
【0074】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ0.94 (d, 3H), 0.95 (d, 3H), 1.48 (s, 9H), 2.18 (m, 1H), 3.02 (ddd, 2H), 3.69 (m, 1H), 4.44 (q, 1H), 7.23 (d, 2H), 7.26 (t, 1H), 7.34 (t, 2H), 7.78 (d, 1H).
【0075】
<3>以下の合成経路に従い、フェニルアラニルバリンを合成した。
【0076】
【化13】

【0077】
上記で得られたフェニルアラニルバリンt−ブチルエステル70mg(0.218mmol)をトリフルオロ酢酸0.66mLに溶解し、室温で2時間攪拌した。トリフルオロ酢酸を減圧下留去し、残渣を水に溶解して乾燥する操作を二回繰り返してフェニルアラニルバリン(白色固体)を得た(収量76mg,98%)。
NMR測定により、得られた化合物がフェニルアラニルバリンであることを確認した。得られたフェニルアラニルバリンのNMRスペクトルを以下に示す。
【0078】
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ0.88-0.90 (dd, 6H), 2.06 (m, 1H), 3.19 (d, 2H), 4.17 (d, 1H), 4.29 (t, 1H), 7.25 (d, 2H), 7.19, 7.34-7.38 (m, 3H).
【0079】
合成例3 N−フェノキシカルボニル−Val−Phe−Val−OtBuの合成
実施例1の<1>及び<2>と同様にしてフェニルアラニルバリンt−ブチルエステルを得た後、以下の合成経路に従い、N−フェノキシカルボニル−Val−Phe−Val−OtBuを合成した。
【0080】
【化14】

【0081】
フェニルアラニルバリンt−ブチルエステル(50mg,156μmol)を、ジメチルホルムアミド0.50mLに溶解させ、この溶液に、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物(26mg,172μmol)と合成例2で得たN−フェノキシカルボニル−Val−OH(41mg,172μmol)を加え、氷水浴で0℃に冷却した後、ジシクロヘキシルカルボジイミド(36mg,172μmol)を加え室温で一晩攪拌した。その後、析出したジシクロヘキシルウレアをろ別し、ろ液にジエチルエーテルを加えて抽出した。有機層を1N−塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル)で精製後、溶媒を減圧留去してN−フェノキシカルボニル−Val−Phe−Val−OtBu(白色固体)を得た(収量79mg,94%)。
NMR測定により、得られた化合物がN−フェノキシカルボニル−Val−Phe−Val−OtBuであることを確認した。得られたN−フェノキシカルボニル−Val−Phe−Val−OtBuのNMRスペクトルを以下に示す。
【0082】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ0.83(d, 3H), 0.87 (d, 3H), 0.94 (d, 3H), 1.00 (d, 3H), 1.48 (s, 9H), 2.08 (m, 1H), 2.16 (m, 1H), 3.10 (q, 2H), 4.07 (m, 1H), 4.33 (q, 1H), 4.78 (q, 1H), 5.71 (d, 1H), 6.36 (d, 1H), 6.58 (d, 1H), 7.12-7.38 (m, 10H).
【0083】
実施例2 フェニルアラニルバリンの合成
実施例1の<1>と同様にしてN−フェノキシカルボニル−フェニルアラニルバリンt−ブチルエステルを得た後、以下の合成経路に従い、フェニルアラニルバリンを合成した。
【0084】
【化15】

【0085】
N−フェノキシカルボニル−フェニルアラニルバリンt−ブチルエステル100mg(0.227mmol)をトリフルオロ酢酸0.75mLに溶解し、室温で2時間攪拌した。トリフルオロ酢酸を減圧下留去し、残渣を酢酸エチル/ヘキサン=2/5溶液で晶析してN−フェノキシカルボニル−フェニルアラニルバリン(白色固体)を得た(収量73mg,75%)。
NMR測定により、得られた化合物がN−フェノキシカルボニル−フェニルアラニルバリンであることを確認した。得られたN−フェノキシカルボニル−フェニルアラニルバリンのNMRスペクトルを以下に示す。
【0086】
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz): δ0.89-0.95 (dd, 6H), 2.12 (m, 1H), 2.96 (ddd, 2H), 4.24 (t, 1H), 4.59 (q, 1H), 6.96 (d, 2H), 7.19 (d, 2H), 7.26 (d, 2H), 7.32-7.36 (m, 4H), 7.39 (d, 2H), 7.97 (d, 2H), 8.20 (d, 2H), 12.69 (br, 1H).
【0087】
上記で得られたN−フェノキシカルボニル−フェニルアラニルバリン52mg(0.135mmol)をジメチルスルホキシド3.75mLと2%−亜硫酸水素ナトリウム水溶液(pH3.8)2.75mLの混合溶媒に懸濁させ、120℃で8時間攪拌した。これをイオン交換樹脂で精製し、フェニルアラニルバリン(白色固体)を得た(収量8.2mg,23%)。
NMR測定により、得られた化合物がフェニルアラニルバリンであることを確認した。得られたフェニルアラニルバリンのNMRスペクトルを以下に示す。
【0088】
1H NMR (400 MHz, D2O): δ0.89 (d, 3H), 0.90 (d, 3H), 2.06 (m, 1H), 3.19 (d, 2H), 4.17 (d, 1H), 4.29 (t, 1H), 7.25 (d, 2H), 7.34-7.38 (m, 3H).
【0089】
比較例1
N−フェノキシカルボニル−フェニルアラニルバリンt−ブチルエステル100mg(0.250mmol)を氷酢酸5mLに溶解し、酸化白金16mgを加え、バルーンを用いて水素雰囲気下とし、室温で24時間攪拌した。白金触媒をろ別した後、ジエチルエーテルと1N−HClを加えて振り混ぜ、分離した。水層を炭酸水素ナトリウムで中和した。一方、有機層を酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去して無色透明固体を得た。
得られた化合物をNMRで同定した。その結果、目的とするフェニルアラニルバリンt−ブチルエステルは得られておらず、得られた化合物は、フェノキシカルボニル基が脱離しているだけでなく側鎖のフェニル基が水素化されたシクロヘキシルアラニルバリンt−ブチルエステルであることがわかった(収量22mg,27%)。
【0090】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ0.94-0.95 (dd, 6H), 1.47 (s, 9H), 2.16 (m, 1H), 3.47 (dd, 1H), 4.41 (dq, 1H), 7.72 (d, 1H).

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−フェノキシカルボニル化アミノ化合物を、水の存在下熱処理することを特徴とする前記N−フェノキシカルボニル化アミノ化合物のフェノキシカルボニル基を脱離させる方法。
【請求項2】
下記式(1)
【化1】

〔式(1)中、R1は、カルボキシル基の保護基、固相樹脂又は水素原子を示し、Xは、それぞれ独立してアミノ酸残基を示し、nは1以上の整数を示す。〕
で表される、アミノ酸又はペプチドシーケンスを、水の存在下熱処理することを特徴とする前記アミノ酸又はペプチドシーケンスのフェノキシカルボニル基を脱離させる方法。
【請求項3】
1が、カルボキシル基の保護基又は固相樹脂であり、前記アミノ酸又はペプチドシーケンスのフェノキシカルボニル基を選択的に脱離させる請求項2記載の脱離方法。
【請求項4】
水溶液(25℃)中の1段目の酸解離定数(pKa)が−4〜5の酸を用いる請求項1〜3のいずれか1項に記載の脱離方法。
【請求項5】
C末端からN末端へ逐次ペプチド鎖を伸長させるペプチド化合物の合成方法であって、下記式(2)
【化2】

〔式(2)中、R2は、C末端アミノ酸のカルボキシル基の保護基又は固相樹脂を示し、Xは、それぞれ独立してアミノ酸残基を示し、mは2以上の整数を示す。〕
で表されるペプチドシーケンスのフェノキシカルボニル基を、水存在下熱処理により脱離させる工程を含むことを特徴とするペプチド化合物の合成方法。
【請求項6】
前記脱離工程において、酸を用いる請求項5記載の合成方法。
【請求項7】
前記酸として、水溶液(25℃)中の1段目の酸解離定数(pKa)が2〜5の酸を用いる請求項6記載の合成方法。
【請求項8】
N末端からC末端へ逐次ペプチド鎖を伸長させるペプチド化合物の合成方法であって、下記式(3)
【化3】

〔式(3)中、Xは、それぞれ独立してアミノ酸残基を示し、mは2以上の整数を示す。〕
で表されるペプチドシーケンスのフェノキシカルボニル基を、水存在下熱処理により脱離させる工程を含むことを特徴とするペプチド化合物の合成方法。
【請求項9】
前記脱離工程において、酸を用いる請求項8記載の合成方法。
【請求項10】
前記酸として、水溶液(25℃)中の1段目の酸解離定数(pKa)が2〜5の酸を用いる請求項9記載の合成方法。

【公開番号】特開2013−95735(P2013−95735A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242290(P2011−242290)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】