説明

フェノキシメチルベンズアミド誘導体、その薬学的に許容される酸付加塩及びその医薬用途

【課題】フェノキシメチルベンズアミド構造を有し、神経障害性疼痛に対する鎮痛作用が優れた神経障害性疼痛治療剤を提供すること。
【解決手段】本発明は、以下の化合物に代表されるフェノキシメチルベンズアミド誘導体又はその薬学的に許容される酸付加塩を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノキシメチルベンズアミド誘導体、その薬学的に許容される酸付加塩及びその医薬用途に関する。
【背景技術】
【0002】
疼痛とは、痛みのことであり、その発症原因によって、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛及び心因性疼痛の3種類に大別されている。侵害受容性疼痛は、疾病や外傷等によって組織が損傷を受け、局所的に産生された発痛物質が原因となって発症する疼痛のことであり、神経障害性疼痛は、組織の損傷はないが、神経系の機能異常が原因となって発症する疼痛のことであり、心因性疼痛は、組織の損傷及び神経系の機能異常のいずれの原因がないにもかかわらず発症し、ヒステリー、うつ病、分裂病等の部分症状として発症する疼痛のことである。
【0003】
中でも神経障害性疼痛は、末梢神経系若しくは中枢神経系における損傷又は機能障害に起因して痛覚過敏やアロディニアを主症状とするため、患者のQOL(Qualty of Life)を著しく低下させることが知られている。
【0004】
神経障害性疼痛の治療剤としては、ガバペンチン(特許文献1及び2)やプレガバリンが開発され、その治療に使用されている(特許文献3)。
【0005】
一方、特許文献4には、フェノキシメチルベンズアミド誘導体の一部の化合物が開示され、メラニン凝集ホルモン拮抗作用を有することが開示されている。また、特許文献5には、ベンズアミド誘導体の一部の化合物が、ブラジキニン受容体拮抗作用を有することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4024175号明細書
【特許文献2】米国特許第4087544号明細書
【特許文献3】米国特許第5563175号明細書
【特許文献4】国際公開第2004/048319号
【特許文献5】米国特許第5212182号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ガバペンチンやプレガバリンは、鎮静、めまい、傾眠等の中枢性副作用を有しているため、中枢性副作用が軽減された安全性の高い神経障害性疼痛治療薬の開発が望まれている。
【0008】
また、これまでに開示されたフェノキシメチルベンズアミド誘導体については、その一部の化合物にメラニン凝集ホルモン拮抗作用が認められているが、鎮痛作用の有無については示唆も開示もされていない。さらに、ベンズアミド誘導体については、その一部の化合物にブラジキニン受容体拮抗作用があり、鎮痛作用がある旨の示唆がなされているが、フェノキシメチルベンズアミド構造を有する化合物の鎮痛作用については示唆も開示もされていない。
【0009】
そこで本発明は、フェノキシメチルベンズアミド構造を有し、神経障害性疼痛に対する鎮痛作用が優れた神経障害性疼痛治療剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、新規なフェノキシメチルベンズアミド誘導体又はその薬学的に許容される酸付加塩が、神経障害性疼痛に対し優れた治療効果を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、一般式(I)で示されるフェノキシメチルベンズアミド誘導体又はその薬学的に許容される酸付加塩を提供する。
【化1】

[式中、Rは、炭素数1〜6のハロアルキルを表し、R及びRは、それぞれ独立して、水素又は炭素数1〜6のアルコキシを表し、Rは、水素、炭素数1〜6のアルキル、−(CH−R又は一般式(II)
【化2】

(式中、Rは、水素又は炭素数1〜6のアルキルを表し、p及びqは、それぞれ独立して、1又は2を表す)
で示される置換基を表し、Rは、ハロゲン、ヒドロキシ、フェニル、炭素数3〜8のシクロアルキル又は−NRを表し、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキルを表すか、又は、RとRとそれらが結合する窒素とが一緒になって含窒素脂肪族3〜8員複素環式基を表し、mは1〜5の整数を表し、r及びyは、それぞれ独立して、1又は2を表す。]
【0012】
上記のフェノキシメチルベンズアミド誘導体は、R及びRが、それぞれ独立して、水素又はメトキシであり、rが2であることが好ましく、Rが、フルオロメチル、ジフルオロメチル又はトリフルオロメチルであることが好ましく、Rが、水素、メチル、エチル、−(CH−F、−(CH−OH、ベンジル、−(CH−NMe又はN−メチルピペリジン−4−イルであることが好ましい。
【0013】
これらの化合物は、神経障害性疼痛の治療剤として、低用量にて優れた鎮痛作用を有する。
【0014】
また上記のフェノキシメチルベンズアミド誘導体は、Rが、トリフルオロメチルであることが好ましく、R及びRが、水素であり、かつ、yが2であることが好ましく、Rが、メチル、ベンジル、−(CH−NMe又はN−メチルピペリジン−4−イルであり、かつ、mが2又は3であることが好ましい。
【0015】
これらの化合物は、神経障害性疼痛の治療剤として、さらに低用量にて優れた鎮痛作用を有する。
【0016】
また本発明は、上記のフェノキシメチルベンズアミド誘導体又はその薬学的に許容される酸付加塩を有効成分として含有する医薬を提供する。この医薬は、神経障害性疼痛の治療剤として好ましく利用できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のフェノキシメチルベンズアミド誘導体又はその薬学的に許容される酸付加塩は、神経障害性疼痛に対して優れた治療効果を有し、神経障害性疼痛の治療剤として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】マウス坐骨神経部分結紮モデルに対する実施例1の化合物の鎮痛作用を示す図である。
【図2】マウス坐骨神経部分結紮モデルに対する実施例2の化合物の鎮痛作用を示す図である。
【図3】マウス坐骨神経部分結紮モデルに対する実施例4の化合物の鎮痛作用を示す図である。
【図4】マウス坐骨神経部分結紮モデルに対する実施例5の化合物の鎮痛作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のフェノキシメチルベンズアミド誘導体は、以下の一般式(I)で示されることを特徴としている。
【化3】

[式中、Rは、炭素数1〜6のハロアルキルを表し、R及びRは、それぞれ独立して、水素又は炭素数1〜6のアルコキシを表し、Rは、水素、炭素数1〜6のアルキル、−(CH−R又は一般式(II)
【化4】

(式中、Rは、水素又は炭素数1〜6のアルキルを表し、p及びqは、それぞれ独立して、1又は2を表す)
で示される置換基を表し、Rは、ハロゲン、ヒドロキシ、フェニル、炭素数3〜8のシクロアルキル又は−NRを表し、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキルを表すか、又は、RとRとそれらが結合する窒素とが一緒になって含窒素脂肪族3〜8員複素環式基を表し、mは1〜5の整数を表し、r及びyは、それぞれ独立して、1又は2を表す。]
【0020】
「炭素数1〜6のアルキル」とは、炭素及び水素からなる炭素数が1〜6個の一価の直鎖状又は分岐鎖状の飽和炭化水素基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル又はヘキシルが挙げられる。
【0021】
「炭素数1〜6のアルコキシ」とは、炭素数が1〜6個の−OR基(Rは、ここで定義されているアルキルである)を意味し、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ又はtert−ブトキシが挙げられる。
【0022】
「ハロゲン」とは、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを意味する。
【0023】
「炭素数1〜6のハロアルキル」とは、1個以上のハロゲンで任意の水素が置換されたアルキルを意味し、例えば、フルオロメチル、ジフルオロメチル、ジクロロメチル、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル又は2,2,2−トリクロロエチルが挙げられる。
【0024】
「炭素数3〜8のシクロアルキル」とは、炭素及び水素からなる炭素数が3〜8個の一価の環状の飽和炭化水素基を意味し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルが挙げられる。
【0025】
「含窒素脂肪族3〜8員複素環式基」とは、炭素、水素及び窒素からなる、環を構成する原子数が3〜8個の環状の複素環式基を意味し、例えば、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン又はピペリジンが挙げられる。
【0026】
上記の一般式(I)におけるR〜R並びにr及びyの好ましい具体例を以下に示す。Rとしては、フルオロメチル、ジフルオロメチル、ジクロロメチル、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、2、2、2−トリフルオロエチル又は2、2、2−トリクロロエチルが好ましく、フルオロメチル、ジフルオロメチル又はトリフルオロメチルがより好ましく、トリフルオロメチルがさらに好ましい。
【0027】
及びRとしては、それぞれ独立して、水素、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ又はtert−ブトキシが好ましく、水素又はメトキシがより好ましく、水素がさらに好ましく、その際、rが2であることが好ましい。
【0028】
としては、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、−(CH−F、−(CH−F、−(CH−OH、−(CH−OH、ベンジル、シクロヘキシルメチル、ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピル、ジメチルアミノブチル、ジメチルアミノペンチル、N−メチルアゼチジン−3−イル、N−メチルピロリジン−3−イル又はN−メチルピペリジン−4−イルが好ましく、水素、メチル、エチル、−(CH−F、−(CH−OH、ベンジル、ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピル、ジメチルアミノブチル、ジメチルアミノペンチル又はN−メチルピペリジン−4−イルがより好ましく、メチル、エチル、ベンジル、ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピル又はN−メチルピペリジン−4−イルがさらに好ましく、メチル、ベンジル、ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピル又はN−メチルピペリジン−4−イルが特に好ましい。その際、mが2又は3であるとより好ましい。
【0029】
上記の一般式(I)で示されるフェノキシメチルベンズアミド誘導体の薬学的に許容される酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩若しくはリン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、グルタル酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マンデル酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩若しくはフタル酸塩等の有機カルボン酸塩又はメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩若しくはカンファースルホン酸塩等の有機スルホン酸塩が挙げられるが、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、酒石酸塩又はメタンスルホン酸塩が好ましく、塩酸塩、酒石酸塩又はメタンスルホン酸塩がより好ましい。
【0030】
なお、上記の一般式(I)で示されるフェノキシメチルベンズアミド誘導体に不斉炭素が存在する場合には、これに基づく光学異性体やジアステレオマーが存在することになるが、これらの単一異性体又はラセミ体若しくはジアステレオマー混合物も本発明は包含している。
【0031】
表1は、上記の一般式(I)で示されるフェノキシメチルベンズアミド誘導体の好ましい具体例を示したものです。
【0032】
【表1】

【0033】
上記の一般式(I)で示されるフェノキシメチルベンズアミド誘導体は、その基本骨格や置換基の種類に由来する特徴に基づいた方法で適宜製造できる。この製造に使用する出発物質及び試薬は、一般に入手、又は、公知の方法により合成することができる。以下に、具体的な製造方法について記載する。
【0034】
(製造法1)
上記の一般式(I)で示されるフェノキシメチルベンズアミド誘導体は、例えば、以下のスキーム1に従って、一般式(III)で示されるカルボン酸誘導体と一般式(IV)で示されるアミン誘導体との縮合反応により製造できる。
【化5】

[式中、R〜R並びにr及びyは、上記定義に同じである。]
【0035】
縮合反応に用いる溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド(以下、DMF)、ジメチルアセトアミド若しくはジメチルスルホキシド(以下、DMSO)等の非プロトン性極性溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(以下、THF)、ジメトキシエタン(以下、DME)若しくは1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン若しくはキシレン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム若しくは1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール若しくは1−プロパノール等のアルコール系溶媒又はそれらの混合溶媒が挙げられるが、ハロゲン系溶媒が好ましく、ジクロロメタンがより好ましい。
【0036】
縮合反応において、上記の一般式(III)で示されるカルボン酸誘導体の当量は、上記の一般式(IV)で示されるアミン誘導体に対して0.5〜20当量が好ましく、0.5〜10当量がより好ましく、0.5〜3当量がさらに好ましい。
【0037】
縮合反応に用いる縮合剤としては、例えば、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド(以下、EDC)若しくはその塩酸塩、ジシクロへキシルカルボジイミド(以下、DCC)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(以下、HATU)、ジエチルリン酸シアニド(以下、DEPC)、O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、クロロギ酸エチル若しくはクロロギ酸イソブチル等のクロロギ酸エステル類、2,4,6−トリクロロベンゾイルクロリド又はカルボニルジイミダゾールが挙げられるが、HATUが好ましい。該縮合剤の当量は、上記の一般式(IV)で示されるアミン誘導体に対して0.5〜50当量が好ましく、0.5〜20当量がより好ましく、0.5〜10当量がさらに好ましい。
【0038】
縮合反応において、反応を促進させる、又は、副反応(ラセミ化等)を防ぐために、縮合剤と共に添加剤を用いることが好ましい場合があるが、該添加剤としては、例えば、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール、3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン、1−ヒドロキシスクシンイミド又はジメチルアミノピリジンが挙げられる。該添加剤の当量は、上記の一般式(IV)で示されるアミン誘導体に対して0.5〜50当量が好ましく、0.8〜10当量がより好ましく、1〜5当量がさらに好ましい。
【0039】
縮合反応に用いる塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、ジメチルアニリン若しくはジメチルアミノピリジン等の有機塩基、炭酸ナトリウム若しくは炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩又は水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が挙げられるが、ジイソプロピルエチルアミンが好ましい。該塩基の当量は、上記の一般式(IV)で示されるアミン誘導体に対して0.5〜100当量が好ましく、0.8〜10当量がより好ましい。
【0040】
縮合反応の反応温度は、−40〜150℃が好ましく、−30〜80℃がより好ましい。縮合反応の反応時間は、反応温度等の条件に応じて適宜選択されるが、0.5〜24時間が好ましい。
【0041】
上記の製造法により得られた一般式(I)で示されるフェノキシメチルベンズアミド誘導体を適当な溶媒に溶解し、そこへ酸を添加することで、一般式(I)で示されるフェノキシメチルベンズアミド誘導体の酸付加塩を得ることができる。該反応に用いる溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム若しくは1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール若しくは1−プロパノール等のアルコール系溶媒、1,4−ジオキサン若しくはジエチルエーテル等のエーテル系溶媒又はそれらの混合溶媒が挙げられるが、アルコール系溶媒又はエーテル系溶媒が好ましく、メタノール、1−プロパノール又は1,4−ジオキサンがより好ましい。添加する酸の当量は、上記の一般式(I)で示されるフェノキシメチルベンズアミド誘導体に対して1〜30当量が好ましく、1〜10当量がより好ましく、1〜5当量がさらに好ましい。該反応の反応温度は、−10〜50℃が好ましい。該反応の反応時間は、5分間〜1時間が好ましい。
【0042】
(製造法2)
上記の製造法1における出発物質である上記の一般式(III)で示されるカルボン酸誘導体は、例えば、以下のスキーム2に従って、一般式(V)で示されるエステル誘導体の加水分解反応により製造できる。
【化6】

[式中、R〜Rは、上記定義に同じであり、Rは、メチル、エチル、ベンジル、アリル又はtert−ブチル等のカルボキシル基の保護基を表す。]
【0043】
加水分解反応に用いる溶媒としては、例えば、DMF、ジメチルアセトアミド若しくはDMSO等の非プロトン性極性溶媒、ジエチルエーテル、THF、DME若しくは1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール若しくは1−プロパノール等のアルコール系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素若しくは1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、水又はそれらの混合溶媒が挙げられるが、THF、メタノール、エタノール又は水が好ましく、メタノールがより好ましい。
【0044】
加水分解反応に塩基を用いる場合は、該塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム若しくは水酸化バリウム等のアルカリ金属水酸化物が挙げられる。該塩基の当量は、上記の一般式(V)で示されるエステル誘導体に対して0.9〜100当量が好ましく、0.9〜10当量がより好ましい。一方、加水分解反応に酸を用いる場合は、該酸としては、塩酸、硫酸又はトリフルオロ酢酸が挙げられる。該酸の当量は、上記の一般式(V)で示されるエステル誘導体に対して1〜300当量が好ましく、1〜100当量がより好ましい。
【0045】
加水分解反応の反応温度は、−30〜200℃が好ましい。加水分解反応に塩基を用いる場合は、−20〜180℃がより好ましく、−10〜100℃がさらに好ましい。一方、加水分解反応に酸を用いる場合は、0〜180℃がより好ましく、0〜100℃がさらに好ましい。加水分解反応の反応時間は、反応温度等の条件に応じて適宜選択されるが、1分間〜48時間が好ましい。
【0046】
(製造法3)
上記の製造法2における出発物質である上記の一般式(V)で示されるエステル誘導体は、例えば、以下のスキーム3に従って、一般式(VI)で示されるフェノール誘導体と一般式(VII)で示されるエステル誘導体とのエーテル化反応により製造できる。
【化7】

[式中、R〜R及びRは、上記定義に同じであり、R10は、ハロゲン、p−トルエンスルホニルオキシ又はメタンスルホニルオキシ等の脱離基を表す。]
【0047】
エーテル化反応に用いる溶媒としては、例えば、DMF、ジメチルアセトアミド、DMSO、アセトニトリル若しくはアセトン等の非プロトン性極性溶媒、ジエチルエーテル、THF、DME若しくは1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン若しくはキシレン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム若しくは1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール若しくは1−プロパノール等のアルコール系溶媒又はそれらの混合溶媒が挙げられるが、非プロトン性極性溶媒が好ましく、DMF又はDMSOがより好ましい。
【0048】
エーテル化反応において、上記の一般式(VII)で示されるエステル誘導体の当量は、上記の一般式(VI)で示されるフェノール誘導体に対して0.5〜20当量が好ましく、0.5〜10当量がより好ましく、0.5〜3当量がさらに好ましい。
【0049】
エーテル化反応に用いる塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、ジメチルアニリン若しくはジメチルアミノピリジン等の有機塩基、炭酸ナトリウム若しくは炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩又は水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が挙げられるが、炭酸カリウムが好ましい。該塩基の当量は、上記の一般式(VI)で示されるフェノール誘導体に対して0.5〜100当量が好ましく、0.8〜10当量がより好ましい。
【0050】
エーテル化反応の反応温度は、−30〜150℃が好ましく、0〜150℃がより好ましい。エーテル化反応の反応時間は、反応温度等の条件に応じて適宜選択されるが、0.5〜48時間が好ましい。
【0051】
(製造法4)
上記の製造法1における出発物質である上記の一般式(IV)で示されるアミン誘導体は、例えば、以下のスキーム4に従って、一般式(VIII)で示されるt−ブチルカルバマート誘導体の脱Boc化反応により製造できる。
【0052】
【化8】

[式中、R並びにr及びyは、上記定義に同じである。]
【0053】
脱Boc化反応に用いる溶媒としては、例えば、DMF、ジメチルアセトアミド若しくはDMSO等の非プロトン性極性溶媒、ジエチルエーテル、THF、DME若しくは1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール若しくは1−プロパノール等のアルコール系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素若しくは1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、水又はそれらの混合溶媒が挙げられるが、THF、メタノール、エタノール、ジクロロメタン又は水が好ましく、メタノール又はジクロロメタンがより好ましい。
【0054】
脱Boc化反応に用いる酸としては、例えば、塩酸、硫酸又はトリフルオロ酢酸が挙げられるが、塩酸又はトリフルオロ酢酸が好ましい。該酸の当量は、上記の一般式(VIII)で示されるt−ブチルカルバマート誘導体に対して1〜300当量が好ましく、1〜100当量がより好ましく、1〜30当量がさらに好ましい。
【0055】
脱Boc化反応の反応温度は、−20〜150℃が好ましく、−10〜100℃がより好ましい。脱Boc化反応の反応時間は、反応温度等の条件に応じて適宜選択されるが、0.5〜60時間が好ましい。
【0056】
(製造法5)
上記の製造法4における出発物質である上記の一般式(VIII)で示されるt−ブチルカルバマート誘導体は、例えば、以下のスキーム5に従って、一般に入手可能な一般式(IX)で示されるアミン誘導体の、一般式(X)で示されるアルキル化剤を用いたアルキル化反応により製造することができる。
【化9】

[式中、R並びにr及びyは、上記定義に同じであり、Xは、ハロゲン、p−トルエンスルホニルオキシ又はメタンスルホニルオキシ等の脱離基を表す。]
【0057】
アルキル化反応に用いる溶媒としては、例えば、DMF、ジメチルアセトアミド、DMSO、アセトニトリル若しくはアセトン等の非プロトン性極性溶媒、ジエチルエーテル、THF、DME若しくは1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン若しくはキシレン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム若しくは1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール若しくは1−プロパノール等のアルコール系溶媒、水又はそれらの混合溶媒が挙げられるが、非プロトン性極性溶媒が好ましく、DMF、DMSO又はアセトニトリルがより好ましい。
【0058】
アルキル化反応において、上記の一般式(X)で示されるアルキル化剤の当量は、上記の一般式(IX)で示されるアミン誘導体に対して0.5〜20当量が好ましく、0.5〜10当量がより好ましく、0.5〜5当量がさらに好ましい。
【0059】
アルキル化反応に用いる塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、ジメチルアニリン若しくはジメチルアミノピリジン等の有機塩基、炭酸ナトリウム若しくは炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が挙げられるが、ジイソプロピルエチルアミン又は炭酸カリウムが好ましい。該塩基の当量は、上記の一般式(IX)で示されるアミン誘導体に対して0.5〜100当量が好ましく、0.8〜10当量がより好ましい。
【0060】
アルキル化反応の反応温度は、−30〜150℃が好ましく、0〜150℃がより好ましい。また、アルキル化反応の反応時間は、反応温度等の条件に応じて適宜選択されるが、0.5〜48時間が好ましい。
【0061】
(製造法6)
上記の製造法4における出発物質である上記の一般式(VIII)で示されるt−ブチルカルバマート誘導体は、例えば、以下のスキーム6に従って、一般に入手可能な一般式(IX)で示されるアミン誘導体と、Rに相当するアルデヒド誘導体又はケトン誘導体との還元的アルキル化反応により製造することもできる。
【化10】

[式中、R並びにr及びyは、上記定義に同じである。]
【0062】
還元的アルキル化反応に用いる溶媒としては、例えば、DMF、ジメチルアセトアミド若しくはDMSO等の非プロトン性極性溶媒、ジエチルエーテル、THF、DME若しくは1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン若しくはキシレン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム若しくは1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール若しくは1−プロパノール等のアルコール系溶媒又はそれらの混合溶媒が挙げられるが、THF、メタノール、エタノール、ジクロロメタン又は1,2−ジクロロエタンが好ましく、ジクロロメタン又は1,2−ジクロロエタンがより好ましい。
【0063】
還元的アルキル化反応において、上記のアルデヒド誘導体又はケトン誘導体の当量は、上記の一般式(IX)で示されるアミン誘導体に対して0.5〜20当量が好ましく、0.5〜10当量がより好ましく、0.5〜3当量がさらに好ましい。
【0064】
還元的アルキル化反応に用いる還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化シアノホウ素ナトリウム又は水素化トリアセトキシホウ素ナトリウムが挙げられるが、水素化シアノホウ素ナトリウム又は水素化トリアセトキシホウ素ナトリウムが好ましい。該還元剤の当量は、上記の一般式(IX)で示されるアミン誘導体に対して0.5〜50当量が好ましく、1〜50当量がより好ましく、1〜10当量がさらに好ましい。
【0065】
還元的アルキル化反応の反応温度は、−40〜150℃が好ましく、−30〜80℃がより好ましい。還元的アルキル化反応の反応時間は、反応温度等の条件に応じて適宜選択されるが、0.5〜10時間が好ましい。
【0066】
(製造法7)
上記の製造法で得ることができる一般式(I)で示されるフェノキシメチルベンズアミド誘導体は、例えば、以下のスキーム7に示すように、一般式(XI)で示されるアミン誘導体の、一般式(X)で示されるアルキル化剤を用いたアルキル化反応により製造することもできる。
【化11】

[式中、R〜R、r及びy並びにXは、上記定義に同じである。]
【0067】
アルキル化反応に用いる溶媒としては、例えば、DMF、ジメチルアセトアミド、DMSO、アセトニトリル若しくはアセトン等の非プロトン性極性溶媒、ジエチルエーテル、THF、DME若しくは1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン若しくはキシレン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム若しくは1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール若しくは1−プロパノール等のアルコール系溶媒、水又はそれらの混合溶媒が挙げられるが、非プロトン性極性溶媒が好ましく、DMF、DMSO又はアセトニトリルがより好ましい。
【0068】
アルキル化反応において、一般式(X)で示されるアルキル化剤の当量は、上記の一般式(XI)で示されるアミン誘導体に対して0.5〜20当量が好ましく、0.5〜10当量がより好ましく、0.5〜5当量がさらに好ましい。
【0069】
アルキル化反応に用いる塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、ジメチルアニリン若しくはジメチルアミノピリジン等の有機塩基、炭酸ナトリウム若しくは炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が挙げられるが、ジイソプロピルエチルアミン又は炭酸カリウムが好ましい。該塩基の当量は、上記の一般式(XI)で示されるアミン誘導体に対して0.5〜100当量が好ましく、0.8〜10当量がより好ましい。
【0070】
アルキル化反応の反応温度は、−30〜150℃が好ましく、0〜150℃がより好ましい。アルキル化反応の反応時間は、反応温度等の条件に応じて適宜選択されるが、0.5〜48時間が好ましい。
【0071】
(製造法8)
上記の製造法により得ることができる一般式(I)で示されるフェノキシメチルベンズアミド誘導体は、例えば、以下のスキーム8に従って、一般式(XI)で示されるアミン誘導体と、Rに相当するアルデヒド誘導体又はケトン誘導体との還元的アルキル化反応により製造することもできる。
【化12】

[式中、R〜R並びにr及びyは、上記定義に同じである。]
【0072】
還元的アルキル化反応に用いる溶媒としては、例えば、DMF、ジメチルアセトアミド若しくはDMSO等の非プロトン性極性溶媒、ジエチルエーテル、THF、DME若しくは1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン若しくはキシレン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム若しくは1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール若しくは1−プロパノール等のアルコール系溶媒又はそれらの混合溶媒が挙げられるが、THF、メタノール、エタノール、ジクロロメタン又は1,2−ジクロロエタンが好ましく、ジクロロメタン又は1,2−ジクロロエタンがより好ましい。
【0073】
還元的アルキル化反応において、上記のアルデヒド誘導体又はケトン誘導体の当量は、上記の一般式(XI)で示されるアミン誘導体に対して0.5〜20当量が好ましく、0.5〜10当量がより好ましく、0.5〜3当量がさらに好ましい。
【0074】
還元的アルキル化反応に用いる還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化シアノホウ素ナトリウム又は水素化トリアセトキシホウ素ナトリウムが挙げられるが、水素化シアノホウ素ナトリウム又は水素化トリアセトキシホウ素ナトリウムが好ましい。該還元剤の当量は、上記の一般式(XI)で示されるアミン誘導体に対して0.5〜50当量が好ましく、1〜50当量がより好ましく、1〜10当量がさらに好ましい。
【0075】
還元的アルキル化反応の反応温度は、−40〜150℃が好ましく、−30〜80℃がより好ましい。還元的アルキル化反応の反応時間は、反応温度等の条件に応じて適宜選択されるが、0.5〜10時間が好ましい。
【0076】
(製造法9)
上記の製造法7及び8における出発物質である上記の一般式(XI)で示されるアミン誘導体は、例えば、以下のスキーム9に従って、一般式(XII)で示されるt−ブチルカルバマート誘導体の脱Boc化反応により製造することができる。
【化13】

[式中、R〜R並びにr及びyは、上記定義に同じである。]
【0077】
脱Boc化反応に用いる溶媒としては、例えば、DMF、ジメチルアセトアミド若しくはDMSO等の非プロトン性極性溶媒、ジエチルエーテル、THF、DME若しくは1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール若しくは1−プロパノール等のアルコール系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素若しくは1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、水又はこれらの混合溶媒が挙げられるが、THF、メタノール、エタノール、ジクロロメタン又は水が好ましく、メタノール又はジクロロメタンがより好ましい。
【0078】
脱Boc化反応に用いる酸としては、例えば、塩酸、硫酸若しくはトリフルオロ酢酸が挙げられるが、塩酸又はトリフルオロ酢酸が好ましい。該酸の当量は、上記の一般式(XII)で示されるt−ブチルカルバマート誘導体に対して1〜300当量が好ましく、1〜100当量がより好ましく、1〜30当量がさらに好ましい。
【0079】
脱Boc化反応の反応温度は、−20〜150℃が好ましく、−10〜100℃がより好ましい。脱Boc化反応の反応時間は、反応温度等の条件に応じて適宜選択されるが、0.5〜60時間が好ましい。
【0080】
(製造法10)
上記の製造法9における出発物質である上記の一般式(XII)で示されるt−ブチルカルバマート誘導体は、例えば、以下のスキーム10に従って、上記の一般式(III)で示されるカルボン酸誘導体と一般式(XIII)で示されるアミン誘導体との縮合反応により製造することができる。
【化14】

[式中、R〜R並びにr及びyは、上記定義に同じである。]
【0081】
縮合反応に用いる溶媒としては、例えば、DMF、ジメチルアセトアミド若しくはDMSO等の非プロトン性極性溶媒、ジエチルエーテル、THF、DME若しくは1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン若しくはキシレン等の炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム若しくは1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール若しくは1−プロパノール等のアルコール系溶媒又はそれらの混合溶媒が挙げられるが、ハロゲン系溶媒が好ましく、ジクロロメタンがより好ましい。
【0082】
縮合反応において、上記の一般式(III)で示されるカルボン酸誘導体の当量は、上記の一般式(XIII)で示されるアミン誘導体に対して0.5〜20当量が好ましく、0.5〜10当量がより好ましく、0.5〜3当量がさらに好ましい。
【0083】
縮合反応に用いる縮合剤としては、例えば、EDC若しくはその塩酸塩、DCC、HATU、DEPC、O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート、クロロギ酸エチル若しくはクロロギ酸イソブチル等のクロロギ酸エステル類、2,4,6−トリクロロベンゾイルクロリド又はカルボニルジイミダゾールが挙げられるが、HATUが好ましい。該縮合剤の当量は、上記の一般式(XIII)で示されるアミン誘導体に対して0.5〜50当量が好ましく、0.5〜20当量がより好ましく、0.5〜10当量がさらに好ましい。
【0084】
縮合反応において、反応を促進させる、又は、副反応(ラセミ化等)を防ぐために、縮合剤と共に添加剤を用いることが好ましい場合があるが、該添加剤としては、例えば、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール、3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジン、1−ヒドロキシスクシンイミド又はジメチルアミノピリジンが挙げられる。該添加剤の当量は、上記の一般式(XIII)で示されるアミン誘導体に対して0.5〜50当量が好ましく、0.8〜10当量がより好ましく、1〜5当量がさらに好ましい。
【0085】
縮合反応に用いる塩基としては、例えば、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、ピリジン、ジメチルアニリン若しくはジメチルアミノピリジン等の有機塩基、炭酸ナトリウム若しくは炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が挙げられるが、ジイソプロピルエチルアミンが好ましい。該塩基の当量は、上記の一般式(XIII)で示されるアミン誘導体に対して0.5〜100当量が好ましく、0.8〜10当量がより好ましい。
【0086】
縮合反応の反応温度は、−40〜150℃が好ましく、−30〜80℃がより好ましい。縮合反応の反応時間は、反応温度等の条件に応じて適宜選択されるが、0.5〜24時間が好ましい。
【0087】
また、上記の一般式(I)で示されるフェノキシメチルベンズアミド誘導体又はその薬学的に許容される酸付加塩は、優れた神経障害性疼痛の治療作用を有していることから、医薬として用いることができ、好ましくは神経障害性疼痛の治療剤として用いることができる。
【0088】
神経障害性疼痛とは、末梢神経系若しくは中枢神経系における損傷又は機能障害に起因し、痛覚過敏やアロディニアを主症状とする痛みを指し、神経障害性疼痛には、糖尿病性神経障害痛、帯状疱疹痛、帯状疱疹後神経痛、三叉神経痛、癌性疼痛及びエイズ関連神経痛が包含される。
【0089】
上記の一般式(I)で示されるフェノキシメチルベンズアミド誘導体又はその薬学的に許容される酸付加塩が、神経障害性疼痛の治療に有効であることは、マウス又はラットを用いた神経障害性疼痛の病態モデルで評価することができる。そのような病態モデルとしては、例えば、絞扼性神経損傷モデル(Bennettら、Pain、1988年、第33巻、p.87−107)、脊髄神経結紮モデル(Kimら、Pain、1992年、第50巻、p.355−363)、坐骨神経部分結紮モデル(Seltzerら、Pain、1990年、第43巻、p.205−218; Malmbergら、Pain、1998年、第76巻、p.215−222)又は糖尿病性神経障害モデル(Bannonら、Brain Research、1998年、第801巻、p.158−163)が挙げられる。
【0090】
上記の一般式(I)で示されるフェノキシメチルベンズアミド誘導体又はその薬学的に許容される酸付加塩を含有する医薬は、ヒトに対して有効であるだけではなく、ヒト以外の哺乳類、例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ及びサルに対しても有効である。
【0091】
上記の一般式(I)で示されるフェノキシメチルベンズアミド誘導体又はその薬学的に許容される酸付加塩を、医薬として臨床で使用する際には、薬剤はフリーの塩基又はその酸付加塩自体でもよく、また、例えば、賦形剤、安定化剤、保存剤、緩衝剤、溶解補助剤、乳化剤、希釈剤又は等張化剤等の添加剤が適宜混合されていてもよい。投与形態としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤若しくはシロップ剤等による経口投与、注射剤、座剤若しくは液剤等による非経口投与又は軟膏剤、クリーム剤若しくは貼付剤等による局所投与が挙げられる。
【0092】
上記の医薬は、上記の一般式(I)で示されるフェノキシメチルベンズアミド誘導体又はその薬学的に許容される酸付加塩を、有効成分として0.00001〜90重量%含有することが好ましく、0.0001〜70重量%含有することがより好ましい。その投与用量は、患者の症状、年齢及び体重並びに投与方法等に応じて適宜選択されるが、成人に対して、有効成分量として、注射剤の場合は1日0.1μg〜1g、経口剤の場合は1日1μg〜10g、貼付剤の場合は1日1μg〜10gが好ましく、それぞれ1回又は複数回に分けて投与することができる。
【0093】
また、上記の一般式(I)で示されるフェノキシメチルベンズアミド誘導体又はその薬学的に許容される酸付加塩を含有する神経障害性疼痛の治療剤は、治療若しくは予防効果の補完又は増強あるいは投与量の低減のために他の治療剤又は予防剤と組合せて用いることもできる。
【0094】
組合せて用いることができる他の治療剤又は予防剤としては、例えば、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)であるCOX−1及び/又はCOX−2阻害薬(例えば、アスピリン、インドメタシン、ジクロフェナック、イブプロフェン、アセトアミノフェン、アセチルサリチル酸、ケトプロフェン、ピロキシカム、メフェナム酸、チアラミド、ナプロキセン、ロキソプロフェン、オキサプロジン、ザルトプロフェン、エトドラク、メロキシカム、ロルノキシカム、アンプロキシカム、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、ルミラコキシブ又はリコフェロン)、オピオイド鎮痛薬(例えば、コデイン、モルヒネ、ジヒドロコデイン、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、オキシコドン、フェンタニル、ブプレノルフィン、ブトルファノール、ナルブフィン、ペンタゾシン、レボルファノール、メサドン、ペチジン、トラマドール又はオキシモルフォン)、他の鎮痛薬(例えば、ガバペンチン、プレガバリン、デュロキセチン又はバクロフェン)、麻酔薬(例えば、ハロタン、リドカイン、エチドカイン、ロピバカイン、クロロプロカイン、ブピバカイン又はプロポホール)、ベンゾジアゼピン系薬剤(例えば、ジアゼパム、クロルジアゼポキシド、アルプラゾラム又はロラゼパム)、骨格筋弛緩薬(例えば、カリソプロドル、ロバキシサル又はダントリウム)、偏頭痛治療剤(例えば、エルゴタミン、エリトリプタン、スマトリプタン、リザトリプタン、ゾルミトリプタン又はナラトリプタン)、抗痙攣薬(例えば、カルマバゼピン、クロナゼパム、トピラマート、フェニトイン、バルプロ酸、ゾニサミド又はオクスカルバゼピン)、抗うつ薬(例えば、アミトリプチン、ノルトリプチン、トリプタノール、アモキサピン、イミプラミン、パロキセチン、フルボキサミン、ミルナシプラン又はデュロキセチン)、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾロン、デキサメタゾン又はベタメタゾン)、NMDAアンタゴニスト(例えば、デキストロメトロファン、ケタミン、メマンチン、アマンタジン、エリプロジル又はイフェンプロジル)、バニロイド作動薬若しくは拮抗薬(例えば、カプサイシン又はレジニフェラトキシン)、カルシウムチャネル遮断薬(例えば、ジコノタイド)、カリウムチャネル開口薬(例えば、フルピルチン又はレチガビン)、セロトニン受容体拮抗薬(例えば、パロノセトロン、オンダセトロン、ケタンセリン又はアロセトロン)、ナトリウムチャネル拮抗薬(例えば、メキシレチン)、又は毒素(例えば、ボツリヌストキシン又はテトロドトキシン)が挙げられる。
【実施例】
【0095】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0096】
(参考例1)
メチル4−((4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)メチル)ベンゾエート(3)の合成:
【化15】

4−トリフルオロメチルフェノール(1)(1.4g、8.7mmol)、4−ブロモメチル安息香酸メチル(2)(2.0g、8.7mmol)のDMF(44mL)溶液に炭酸カリウム(2.4g、17mmol)を加え、100℃で12時間撹拌した。反応混合物に水を加え、続いて酢酸エチルにて抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n−ヘキサン=30/70)で精製して、メチル4−((4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)メチル)ベンゾエート(3)(2.5g、白色固体、収率93%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ (ppm): 3.92 (s, 3H), 5.17 (s, 2H), 7.02 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.50 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.55 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 8.07 (d, J = 8.5 Hz, 2H).
【0097】
(参考例2)
4−((4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)メチル)ベンゾイックアシッド(4)の合成:
【化16】

メチル4−((4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)メチル)ベンゾエート(3)(2.4g、7.7mmol)のメタノール(20mL)/THF(20mL)混合溶液に1N水酸化ナトリウム水溶液(40mL)を加え、50℃で12時間撹拌した。反応混合物に水、1N塩酸を加え、続いてクロロホルムにて抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮して4−((4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)メチル)ベンゾイックアシッド(4)(2.0g、白色固体、収率87%)を得た。
1H NMR (400MHz, DMSO-d6) δ (ppm): 5.30 (s, 2H), 7.21 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.58 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.67 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.97 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 12.97 (br, 1H).
MS(ESI); 295 (M-H+).
【0098】
(実施例1)
N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−4−((4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)メチル)ベンズアミド塩酸塩(5)の合成:
【化17】

4−((4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)メチル)ベンゾイックアシッド(4)(100mg、0.34mmol)、4−アミノ−1−メチルピペリジン(41mg、0.35mmol)のジクロロメタン(4mL)溶液にジイソプロピルエチルアミン(65mg、0.51mmol)、HATU(41mg、0.37mmol)を加え、室温で12時間撹拌した。反応混合物に水を加え、続いてクロロホルムにて抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(アンモニア飽和クロロホルム/メタノール=10/1)で精製して、N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−4−((4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)メチル)ベンズアミド(127mg、白色固体、収率96%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ (ppm): 1.64-1.52 (m, 2H), 2.01-2.09 (m, 2H), 2.12-2.22 (m, 2H), 2.31 (s, 3H), 2.80-2.87 (m, 2H), 3.95-4.05 (br, m, 1H), 5.16 (s, 2H), 5.94 (d, J = 7.56 Hz, 1H), 7.02 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.49 (d, J= 8.1 Hz, 2H), 7.55 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.78 (d, J = 8.1 Hz, 2H).
MS(ESI); 393(M+H+).
【0099】
N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−4−((4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)メチル)ベンズアミド(120mg、0.31mmol)のメタノール(3mL)溶液に10%塩化水素メタノール溶液(1mL)を加え、続いて濃縮した。得られた固体をメタノールに溶解し、続いてジエチルエーテルを加え、N−(1−メチルピペリジン−4−イル)−4−((4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)メチル)ベンズアミド塩酸塩(5)(以下、実施例1の化合物)(97mg、白色固体、収率74%)を得た。
1H NMR (400MHz, DMSO-d6) δ (ppm): 1.84-1.95 (m, 2H), 1.96-2.03 (m, 2H), 2.70 (s, 3H), 3.01-3.12 (m, 2H), 3.38-3.46 (m, 2H), 3.95-4.07 (m, 1H), 5.28 (s, 2H), 7.20 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.54 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.67 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.90 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 8.56 (d, J = 6.6 Hz, 1H), 10.33 (br, 1H).
融点244−248℃
IR (KBr, cm-1): 3447, 3343, 2956, 2729, 2633, 2549, 2522, 2480, 1651, 1616, 1538, 1519, 1509, 1468, 1326, 1250, 1169, 1113, 1067, 1010, 840.8.
【0100】
(参考例3)
tert−ブチル(1’−メチル−[1,4’−ビピペリジン]−4−イル)カルバマート(7)の合成:
【化18】

tert−ブチル−ピペリジン−4−イルカルバマート(6)(300mg、1.5mmol)、N−メチルピペリドン(170mg、1.5mmol)の1,2−ジクロロエタン(15mL)溶液に水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム(476mg、2.2mmol)を加え、室温で12時間撹拌した。反応混合物に水を加え、続いてアンモニア水を加えた後、クロロホルムにて抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(アンモニア飽和クロロホルム/メタノール=10/1)で精製して、tert−ブチル(1’−メチル−[1,4’−ビピペリジン]−4−イル)カルバマート(7)(417mg、白色固体、収率93%)を得た。
1H-NMR (400MHz, CDCl3) δ (ppm): 1.22-1.41 (m 4H), 1.44 (s, 9H), 1.50-1.60 (m, 1H), 1.70-1.96 (m, 7H), 2.40 (s, 3H), 2.40-2.46 (m, 1H), 2.65-2.69 (m, 1H), 2.71-2.86 (m, 2H), 3.00-3.06 (m, 1H), 3.40-3.50 (m, 1H), 4.41-4.51 (m, 1H).
【0101】
(参考例4)
1’−メチル−[1,4’−ビピペリジン]−4−アミン(8)の合成:
【化19】

tert−ブチル(1’−メチル−[1,4’−ビピペリジン]−4−イル)カルバマート(7)(300mg、1.0mmol)のメタノール(10mL)溶液にトリフルオロ酢酸(1mL)を加え、室温で12時間撹拌した。反応混合物に水、1N水酸化ナトリウム水溶液を加え、続いてクロロホルムにて抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮して1’−メチル−[1,4’−ビピペリジン]−4−アミン(8)(160mg、無色透明オイル)を得た。
MS(ESI); 198(M+H+).
【0102】
(実施例2)
N−(1’−メチル−[1,4’−ビピペリジン]−4−イル)−4−((4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)メチル)ベンズアミド・2塩酸塩(9)の合成:
【化20】

4−((4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)メチル)ベンゾイックアシッド(4)(200mg、0.68mmol)、1’−メチル−[1,4’−ビピペリジン]−4−アミン(8)(147mg、0.74mmol)のジクロロメタン(7mL)溶液にジイソプロピルエチルアミン(131mg、1.0mmol)、HATU(282mg、0.74mmol)を加え、室温で12時間撹拌した。反応混合物に水を加え、続いてクロロホルムにて抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(アンモニア飽和クロロホルム/メタノール=10/1)で精製して、N−(1’−メチル−[1,4’−ビピペリジン]−4−イル)−4−((4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)メチル)ベンズアミド(218mg、白色固体、収率68%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ (ppm): 1.48-1.66 (m, 4H), 1.78-1.82 (m, 2H), 1.90-2.12 (m, 4H), 2.26 (s, 3H), 2.32-2.40 (m, 2H), 2.88-2.97 (m, 5H), 3.85-4.03 (m, 1H), 5.16 (s, 2H), 5.95 (d, J = 8.1 Hz, 1H), 7.01 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.27 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.51 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.77 (d, J = 8.5 Hz, 2H).
MS(ESI); 476(M+H+).
【0103】
N−(1’−メチル−[1,4’−ビピペリジン]−4−イル)−4−((4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)メチル)ベンズアミド(200mg、0.42mmol)のメタノール(4mL)溶液に10%塩化水素メタノール溶液(1mL)を加え、続いて濃縮した。得られた固体をメタノールに溶解し、続いてジエチルエーテルを加え、N−(1’−メチル−[1,4’−ビピペリジン]−4−イル)−4−((4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)メチル)ベンズアミド・2塩酸塩(9)(以下、実施例2の化合物)(198mg、白色固体、収率92%)を得た。
1H NMR (400MHz, DMSO-d6) δ (ppm): 1.98-2.11(m, 4H), 2.30-2.40 (m, 2H), 2.72 (s, 3H), 2.88-3.19 (m, 4H), 3.33-3.60 (m, 7H), 4.02-4.19 (m, 1H), 5.28 (s, 2H), 7.20 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.53 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.67 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.91 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 8.61 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 10.58 (bs, 1H), 10.98 (bs, 1H).
融点261−265℃
IR (KBr, cm-1): 3451, 2931, 2655, 2558, 2525, 1639, 1616, 1556, 1330, 1252, 1180, 1165, 1112, 1067, 837.
【0104】
(参考例5)
tert−ブチル−4−(4−((4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)メチル)ベンズアミド)ピペリジン−1−カルボキシレート(10)の合成:
【化21】

4−((4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)メチル)ベンゾイックアシッド(4)(200mg、0.68mmol)、tert−ブチル−4−アミノピペリジン−1−カルボキシレート(135mg、0.68mmol)のジクロロメタン(7mL)溶液にジイソプロピルエチルアミン(131mg、1.0mmol)、HATU(282mg、0.74mmol)を加え、室温で12時間撹拌した。反応混合物に水を加え、続いてクロロホルムにて抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(アンモニア飽和クロロホルム/メタノール=10/1)で精製して、tert−ブチル−4−(4−((4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)メチル)ベンズアミド)ピペリジン−1−カルボキシレート(10)(300mg、白色固体、収率93%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ (ppm): 1.32-1.41 (m, 2H), 1.46 (s, 9H), 1.85-2.05 (m, 2H), 2.83-2.92 (m, 2H), 4.02-4.19 (m, 3H), 5.16 (s, 2H), 6.35 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.01 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.47 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.54 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.80(d, J = 8.1 Hz, 2H).
【0105】
(実施例3)
N−(ピペリジン−4−イル)−4−((4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)メチル)ベンズアミド(11)の合成:
【化22】

tert−ブチル4−(4−((4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)メチル)ベンズアミド)ピペリジン−1−カルボキシレート(10)(300mg、0.63mmol)のジクロロメタン(7mL)溶液にトリフルオロ酢酸(0.5mL、6.3mmol)を加え、室温で5時間撹拌した。反応混合物を濃縮後、水、続いて1N水酸化ナトリウム水溶液を加え、次にクロロホルムにて抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(アンモニア飽和クロロホルム/メタノール=10/1)で精製して、N−(ピペリジン−4−イル)−4−((4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)メチル)ベンズアミド(11)(185mg、白色固体、収率78%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ (ppm): 1.41 (ddd, J = 3.8, 11.7, 23.5 Hz, 2H), 1.63 (bs, 1H), 2.05 (d, J = 9.4 Hz, 2H), 2.76 (dt, J = 2.0, 11.7 Hz, 2H), 3.11 (dd, J = 3.8, 9.4 Hz, 2H), 4.01-4.13 (m, 1H), 5.16 (s, 2H), 6.00 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 7.02 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.48 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.54 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.78 (d, J = 8.1 Hz, 2H).
MS(ESI); 379(M+H+).
【0106】
(実施例4)
N−(1−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)ピペリジン−4−イル)−4−((4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)メチル)ベンズアミド・2塩酸塩(12)の合成:
【化23】

N−(ピペリジン−4−イル)−4−((4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)メチル)ベンズアミド(11)(77mg、0.20mmol)、3−(ジメチルアミノ)プロピルクロリド塩酸塩(32mg、0.20mmol)のアセトニトリル(6mL)溶液に炭酸カリウム(56mg、0.49mmol)を加え、室温で12時間撹拌した。反応混合物に水を加え、続いてクロロホルムにて抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(アンモニア飽和クロロホルム/メタノール=10/1)で精製して、N−(1−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)ピペリジン−4−イル)−4−((4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)メチル)ベンズアミド(31mg、白色固体、収率33%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ (ppm): 1.50-1.73 (m, 4H), 2.02-2.21 (m, 4H), 2.23 (s, 6H), 2.29 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 2.38 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 2.86-2.94 (m, 2H), 3.96-4.07 (m, 1H), 5.16 (s, 2H), 5.94 (d, J = 7.2 Hz, 1H), 7.02 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.49 (d, J = 8.4 Hz, 2H), 7.55 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.77 (d, J = 8.4 Hz, 2H).
MS(ESI); 464 (M+H+).
【0107】
N−(1−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)ピペリジン−4−イル)−4−((4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)メチル)ベンズアミド(30mg、0.07mmol)のメタノール(2mL)溶液に10%塩化水素メタノール溶液(0.5mL)を加え、続いて濃縮した。得られた固体をメタノールに溶解し、続いてジエチルエーテルを加え、N−(1−(3−(ジメチルアミノ)プロピル)ピペリジン−4−イル)−4−((4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)メチル)ベンズアミド・2塩酸塩(12)(以下、実施例4の化合物)(27mg、白色固体、収率83%)を得た。
1H NMR (400MHz, DMSO-d6)δ (ppm): 1.92-2.22 (m, 4H), 2.77 (s, 6H), 2.99-3.32 (m, 8H), 3.48-3.58 (m, 2H), 3.99-4.11 (m, 1H), 5.28 (s, 2H), 7.20 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.54 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 7.66 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.90 (d, J = 8.0 Hz, 2H), 8.53 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 10.40 (br, 1H), 10.69 (br, 1H).
融点226−230℃
IR (KBr, cm-1): 3466, 3331, 2919, 2662, 1639, 1330, 1254, 1112, 837, 607.
【0108】
(実施例5)
N−(1−ベンジルピペリジン−4−イル)−4−((4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)メチル)ベンズアミド塩酸塩(13)の合成:
【化24】

4−((4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)メチル)ベンゾイックアシッド(4)(200mg、0.68mmol)、4−アミノ−1−ベンジルピペリジン(96mg、0.74mmol)のジクロロメタン(7mL)溶液にジイソプロピルエチルアミン(131mg、1.0mmol)、HATU(282mg、0.74mmol)を加え、室温で12時間撹拌した。反応混合物に水を加え、続いてクロロホルムにて抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(アンモニア飽和クロロホルム/メタノール = 10/1)で精製して、N−(1−ベンジルピペリジン−4−イル)−4−((4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)メチル)ベンズアミド(257mg、白色固体、収率81%)を得た。
1H NMR (400MHz, CDCl3) δ (ppm): 1.56 (ddd, J = 3.5, 11.3, 23.4 Hz, 2H), 2.01 (d, J = 10.5 Hz, 2H), 2.18 (t, J = 10.5 Hz, 2H), 2.83 (t, J = 11.3 Hz, 2H), 3.51 (s, 2H), 3.95-4.03 (m, 1H), 5.15 (s, 2H), 5.94-6.05 (bs, 1H), 7.01 (d, 2H, J = 8.8 Hz), 7.23-7.33 (m, 5H), 7.47 (d, J = 8.1 Hz, 2H), 7.54 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.77 (d, J = 8.1 Hz, 2H).
MS(ESI); 469 (M+H+).
【0109】
(1−ベンジルピペリジン−4−イル)−4−((4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)メチル)ベンズアミド(250mg、0.54mmol)のメタノール(6mL)溶液に10%塩化水素メタノール溶液(1mL)を加え、続いて濃縮した。得られた固体をメタノールに溶解し、続いてジエチルエーテル加え、(1−ベンジルピペリジン−4−イル)−4−((4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)メチル)ベンズアミド塩酸塩(13)(以下、実施例の化合物5)(212mg、白色固体、収率79%)を得た。
1H NMR (400MHz, DMSO-d6)δ (ppm): 1.90-2.10 (m, 4H), 2.95-3.10 (m, 2H), 3.31-3.39 (m, 2H), 3.95-4.10 (m, 1H), 4.26 (s, 2H), 5.28 (s, 2H), 7.20 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 7.42-7.55 (m, 9H), 7.91 (d, 2H, J = 8.1 Hz), 8.46 (d, 1H, J = 7.8 Hz), 11.02 (bs, 1H).
融点221−224℃
IR (KBr, cm-1): 3398, 3286, 2935, 2706, 2631, 2555, 1643, 1615, 1541, 1518, 1329, 1256, 1178, 1160, 1111, 1069, 837, 751, 701, 606.
【0110】
(実施例6)マウス坐骨神経部分結紮モデルに対する薬効評価試験
(A)モデルの作製方法:
神経障害性疼痛の病態モデルの一つとして知られるマウス坐骨神経部分結紮モデルは、Seltzerらの方法(Seltzerら、Pain、1990年、第43巻、p.205−218;Malmbergら、Pain、1998年、第76巻、p.215−222)に従って作製した。すなわち、ICR系雄性マウス、5週齢をSodium pentobarbital(70mg/kg、i.p.)にて麻酔し、右側後肢大腿部の坐骨神経を露出させ、顕微鏡下にて坐骨神経を8−0の絹糸(夏目製作所)を用いて半周だけ強度に三重結紮した(坐骨神経結紮マウス)。また、坐骨神経を露出しただけで結紮しなかった群を偽手術マウスとした。
【0111】
(B)アロディニアの評価方法(von Frey試験):
金網上に設置した測定用アクリル性ケージ(夏目製作所)内でマウスを少なくとも1時間馴化させた後、神経障害性疼痛の症状の一つであるアロディニアの評価(以下、von Frey試験)を実施した。0.16gの圧がかかるvon Freyフィラメント(North Coast Medical,Inc. CA, USA)を右側後肢の足蹠に3秒間押し当てる機械的触刺激に対する逃避行動の強度をスコア化することでアロディニアを評価した。スコアは以下のように決定した。
【0112】
<アロディニアの評価のためのスコア>
スコア0:無反応
スコア1:刺激に対して緩徐でわずかな逃避行動
スコア2:flinching(足をすばやく連続的に振る行動)やlicking(足舐め行動)を伴わない刺激に対する素早い逃避行動
スコア3:flinching又はlickingを伴う素早い逃避行動
【0113】
上記の機械的触刺激を3秒間隔で3回繰り返し行い、3回のスコアの合計値(以下、総スコア)を疼痛の指標とした。なお、総スコアが小さいほど、疼痛の度合いが弱いことを示す。
【0114】
(C)被験化合物評価
坐骨神経結紮手術7日後に被験化合物(実施例1、2、4及び5の化合物)を静脈内又は経口投与し、von Frey試験を実施した。
【0115】
被験化合物は、0.3mg/mL、1mg/mL及び3mg/mLの濃度に調製し、体重1kg当たり10mLの投与容量で投与した。実施例1の化合物は、DMSO:蒸留水(1:9)に溶解して経口投与し、対照の溶媒群にはDMSO:蒸留水(1:9)を経口投与した。実施例2及び実施例4の化合物は、生理食塩水に溶解して静脈内投与し、対照の溶媒群には生理食塩水を静脈内投与した。実施例5の化合物は、0.5%メチルセルロース(以下、0.5%MC)に懸濁して経口投与し、対照の溶媒群には0.5%MCを経口投与した。
【0116】
なお、坐骨神経結紮マウスについては、被験化合物投与前のvon Frey試験の総スコアが4以上の個体を、神経障害性疼痛の病態が発症しているとし、評価に用いた。病態を発症した坐骨神経結紮マウスを、総スコアが均一になるように溶媒群と被験化合物群に群分けした。
【0117】
溶媒又は被験化合物の静脈内投与0.5時間、1時間及び3時間後、又は経口投与1時間、2時間及び3時間後にvon Frey試験を行い、被験化合物の抗アロディニア効果(鎮痛効果)を評価した。実施例1、2、4及び5の化合物の評価結果は、図1〜4に示した。
【0118】
図中の横軸は被験化合物の投与前(0hr)又は投与からの経過時間を示し、縦軸は総スコアを示す(平均値±標準誤差、N=3〜6)。図中の「偽手術/溶媒」は、偽手術マウスに溶媒を投与した群を示し、「坐骨神経結紮/溶媒」は、坐骨神経結紮マウスに溶媒を投与した群を示し、「坐骨神経結紮/実施例1、2,4又は5の化合物」は、坐骨神経結紮マウスに実施例1、2、4又は5の化合物を投与した群を示す。図中の*印は、測定時間毎の坐骨神経結紮マウスの溶媒群(図中の「坐骨神経結紮/溶媒」群)との比較で、統計学的に有意である(*:p<0.05、Williams検定)ことを示す。
【0119】
その結果、実施例1の化合物の3mg/kg、10mg/kg又は30mg/kgを経口投与した群の総スコアは、坐骨神経結紮マウスの溶媒群と比較して有意に減少した(図1)。実施例2の化合物の10mg/kg又は30mg/kgを静脈内投与した群の総スコアは、坐骨神経結紮マウスの溶媒群と比較して有意に減少した(図2)。実施例4の化合物の10mg/kg又は30mg/kgを静脈内投与した群の総スコアは、坐骨神経結紮マウスの溶媒群と比較して有意に減少した(図3)。実施例5の化合物の10mg/kg又は30mg/kgを経口投与した群の総スコアは、坐骨神経結紮マウスの溶媒群と比較して有意に減少した(図4)。
【0120】
以上の結果は、上記の一般式(I)で示されるフェノキシメチルベンズアミド誘導体又はその薬学的に許容される酸付加塩が、神経障害性疼痛に対して有効であることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明のフェノキシメチルベンズアミド誘導体又はその薬学的に許容される酸付加塩は、それらを有効成分とする医薬、特に、神経障害性疼痛の治療剤として利用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

[式中、Rは、炭素数1〜6のハロアルキルを表し、
及びRは、それぞれ独立して、水素又は炭素数1〜6のアルコキシを表し、
は、水素、炭素数1〜6のアルキル、−(CH−R又は一般式(II)
【化2】

(式中、Rは、水素又は炭素数1〜6のアルキルを表し、p及びqは、それぞれ独立して、1又は2を表す。)
で示される置換基を表し、
は、ハロゲン、ヒドロキシ、フェニル、炭素数3〜8のシクロアルキル又は−NRを表し、
及びRは、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキルを表すか、又は、RとRとそれらが結合する窒素とが一緒になって含窒素脂肪族3〜8員複素環式基を表し、
mは1〜5の整数を表し、r及びyは、それぞれ独立して、1又は2を表す。]
で示される、フェノキシメチルベンズアミド誘導体又はその薬学的に許容される酸付加塩。
【請求項2】
及びRは、それぞれ独立して、水素又はメトキシであり、rは、2である、請求項1記載のフェノキシメチルベンズアミド誘導体又はその薬学的に許容される酸付加塩。
【請求項3】
は、フルオロメチル、ジフルオロメチル又はトリフルオロメチルである、請求項1又は2記載のフェノキシメチルベンズアミド誘導体又はその薬学的に許容される酸付加塩。
【請求項4】
は、水素、メチル、エチル、−(CH−F、−(CH−OH、ベンジル、−(CH−NMe又はN−メチルピペリジン−4−イルである、請求項1〜3のいずれか一項記載のフェノキシメチルベンズアミド誘導体又はその薬学的に許容される酸付加塩。
【請求項5】
は、トリフルオロメチルである、請求項1〜4のいずれか一項記載のフェノキシメチルベンズアミド誘導体又はその薬学的に許容される酸付加塩。
【請求項6】
及びRは、水素であり、yは、2である、請求項1〜5のいずれか一項記載のフェノキシメチルベンズアミド誘導体又はその薬学的に許容される酸付加塩。
【請求項7】
は、メチル、ベンジル、−(CH−NMe又はN−メチルピペリジン−4−イルであり、mは2又は3である、請求項1〜6のいずれか一項記載のフェノキシメチルベンズアミド誘導体又はその薬学的に許容される酸付加塩。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項記載のフェノキシメチルベンズアミド誘導体又はその薬学的に許容される酸付加塩を有効成分として含有する、医薬。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項記載のフェノキシメチルベンズアミド誘導体又はその薬学的に許容される酸付加塩を有効成分として含有する、神経障害性疼痛の治療剤。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−112657(P2013−112657A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261320(P2011−261320)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】