説明

フェノール樹脂成形材料

【課題】 本発明の目的とするところは、高速の射出速度を維持した上で充填性に優れるフェノール樹脂成形材料を提供することである。
【解決手段】 重量平均分子量が6000〜9000であるフェノール樹脂(a)と、2核体以上の結晶性フェノール化合物(b)とを含有することを特徴とするフェノール樹脂成形材料。好ましくは、さらに重量平均分子量が300〜30000であるポリオレフィン化合物(c)を含有し、上記結晶性フェノール化合物(b)がビスフェノールFを含むものであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール樹脂成形材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フェノール樹脂成形材料は耐熱性、電気的特性、機械的特性、寸法安定性などのバランスに優れ、電機部品をはじめとして広範囲の分野に利用されている。一般にフェノール樹脂成形品は射出成形により、射出成形機のシリンダ内で90〜120℃に可塑化された状態から170〜190℃に加熱された金型内に射出され、金型内での架橋反応により、硬化、賦形される。
【0003】
フェノール樹脂成形材料は高温の金型の壁面に接触した際に温度上昇により、一旦粘度が低下するために、金型壁面においては金型内に存在していた空気を巻き込みやすい。
しかも、フェノール樹脂成形材料は架橋反応時に発生するアンモニアガスなどの発生ガスや成形材料内に内包する水分などの揮発成分が多いために、充填時に発生ガスなどを効率よく、金型の外に排出できるように射出速度を遅くしなければならない。射出速度が速すぎると溶融樹脂が発生ガスや空気を巻き込みやすく、ガスの逃げ場のない金型の袋小路部などでガス欠けなどの充填不良になりやすい。
【0004】
一方、熱可塑性樹脂成形材料の射出成形はシリンダ内で融点以上の温度で可塑化され、融点以下の温度の金型内に射出されるため、冷却固化により成形されるものである。熱可塑性樹脂成形材料の場合、その成形過程では化学反応は伴わず、液体から固体への相転移だけで固化するためにフェノール樹脂のように反応に伴うガスの発生はない。発生する可能性のある物質としては成形材料に含まれる水分や低分子成分であるが、一般に熱可塑性成形材料は成形の直前に乾燥処理を十分行うために余分な水分は予め除去されている。そのため、金型内では発生するガス量は僅かである。
【0005】
また、成形過程の熱可塑性樹脂成形材料の流動先端は低温の金型に接触した瞬間に粘度が上昇するものの内部は低粘度のまま流動するために金型内の空気を樹脂内に巻き込む可能性は低い。このように熱可塑性樹脂成形材料の場合はその性質上、充填不良の原因となる空気の巻き込みや発生ガスが少ない上に、溶融粘度は低いために射出速度は速くすることができる。一般に、フェノール樹脂成形材料が熱可塑性樹脂と比較すると射出時間が長く、充填性に劣るといわれる理由はここにあると考えられる。
【0006】
従来、これらの問題を解決するためには成形材料の溶融粘度を低くすることが考えられてきたが、この場合、射出速度を速くすることはできるが低粘度のためガスを巻き込みやすく、充填不良が生じやすいという問題点があった。
逆に、溶融粘度を上げてガスの巻き込みを少なくしようとすると、射出時の流動抵抗が大きく、射出速度が速くならないという問題が生じる。また、硬化性を高めて金型内で粘度を急速に高めることも考えられるが、シリンダ内での熱安定性との両立が困難である。
一方、成形時に気泡を含まず、熱安定性、硬化性を高めることを目的としたフェノール樹脂成形材料が公開されている。(例えば、特許文献1参照)しかしながら、高速の射出速度を維持した上で充填性に優れるフェノール樹脂成形材料に関する技術は今のところ見当らない。
【0007】
【特許文献1】特開平11−060897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的とするところは、高速の射出速度を維持した上で充填性に優れるフェノール樹脂成形材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的は、以下の(1)〜(4)項に記載の本発明により達成される。
(1)重量平均分子量が6000〜9000であるフェノール樹脂(a)と、2核体以上の結晶性フェノール化合物(b)とを含有することを特徴とするフェノール樹脂成形材料。
(2)さらに、重量平均分子量が300〜30000であるポリオレフィン化合物(c)を含有する上記(1)項に記載のフェノール樹脂成形材料。
(3)上記結晶性フェノール化合物(b)がビスフェノールFを含むものである上記(1)又は(2)項に記載のフェノール樹脂成形材料。
(4)更に、充填材(d)を含有する上記(1)ないし(3)項のいずれかに記載のフェノール樹脂成形材料。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、重量平均分子量が6000〜9000であるフェノール樹脂(a)と、2核体以上の結晶性フェノール化合物(b)とを含有することを特徴とするフェノール樹脂成形材料であり、本発明の成形材料を使用すれば、高速の射出速度を維持した上で充填性に優れる成形を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明のフェノール樹脂成形材料(以下、単に「成形材料」ということがある)について詳細に説明する。
本発明の成形材料は、重量平均分子量が6000〜9000であるフェノール樹脂(a)と、2核体以上の結晶性フェノール化合物(b)とを含有することを特徴とする。
【0012】
本発明の成形材料には、重量平均分子量が6000〜9000であるフェノール樹脂(a)を用いる。
ここでフェノール樹脂としては、フェノール類とアルデヒド類とを酸性触媒下で反応させて得られるノボラック型フェノール樹脂、又は、塩基性触媒の存在下で反応させて得られるレゾール型フェノール樹脂を挙げることができる。
【0013】
上記フェノール類としては特に限定されないが、例えばフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等のクレゾール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール等のキシレノール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール等のエチルフェノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール等のブチルフェノール、p−tert−アミルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−クミルフェノール等のアルキルフェノール等が挙げられる。これらを単独または2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0014】
上記アルデヒド類としては特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、グリオキザール、n−ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、o−トルアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられる。これらを単独または2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0015】
重量平均分子量が6000〜9000であるノボラック型フェノール樹脂は、フェノール類(P)とアルデヒド類(F)とのモル比(F/P)を、例えば0.5〜1.0として、塩酸、硫酸、リン酸、亜リン酸等の無機酸類、蓚酸、ジエチル硫酸、パラトルエンスルホン酸、有機ホスホン酸等の酸性触媒下で、所定の分子量まで反応させて得ることができる。
また、重量平均分子量が6000〜9000であるレゾール型フェノール樹脂は、フェノール類(P)とアルデヒド類(F)とのモル比(F/P)を、例えば1.0〜3.0として、アルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物、アミン系化合物等の塩基性触媒下で所定の分子量まで反応させて得ることができる。
また、このようにして調製された市販品を用いることもできる。
【0016】
なお、本発明において、フェノール樹脂(a)の重量平均分子量は、液体クロマトグラフィ法を用いて測定したものである。ここで液体クロマトグラフィ法は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)を用いたものであり、テトラヒドロフランを溶出溶媒として使用し、流量1.0ml/分、カラム温度40℃の条件で、示差屈折計を検出器として測定し、分子量は標準ポリスチレンにより換算した。
装置は、
(1)本体:TOSOH社製 「HLC−8120」
(2)分析カラム:TOSOH社製 「G1000HXL」1本、「G2000HXL」2本、「G3000HXL」1本
を使用した。
【0017】
上記フェノール樹脂(a)の含有量は特に限定されないが、ヘキサメチレンテトラミンを配合する場合はその量を含めて、成形材料全体に対して15〜55重量%であることが好ましい。さらに好ましくは30〜50重量%である。
上記下限値未満では成形材料の生産が困難となったり、材料の流動性が低下するため成形が困難になったりすることがある。上記上限値を超えると充填材の含有量が少なくなるため、バリが発生しやすくなったり、機械的強度が低下したりすることがある。
【0018】
本発明の成形材料に用いられる2核体以上の結晶性フェノール化合物(b)とは、常温では固体であり、溶融すると低粘度の液体となり、ヘキサメチレンテトラミンなどのフェノール樹脂の硬化剤と反応して硬化する性質を有する2核体以上のフェノール化合物をいう。
このような2核体以上の結晶性フェノール化合物(b)としては、特に限定されないが、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールZ、ビスフェノールSなどのビスフェノール化合物及びこれらの誘導体、ビスフェノール及びその誘導体、トリスフェノールAPなど3核体あるいは4核体フェノール化合物などがあり、これらを単独または2種類以上を用いることができる。これらの中でも、ビスフェノールA、ビスフェノールFを用いることが好ましく、特にビスフェノールFが好ましい。これにより、低コストで本発明の成形材料を製造することができる。
【0019】
本発明の成形材料では、重量平均分子量が6000〜9000であるフェノール樹脂(a)と、2核体以上の結晶性フェノール化合物(b)とを併用する。
こうすることで、フェノール樹脂(a)に低分子量成分が加わり、フェノール樹脂(a)のみかけの分子量分布が広くなり、溶融粘度の温度依存性を小さくすることができる。
その結果、上記フェノール樹脂(a)を用いることで金型温度(170〜190℃)での溶融粘度を高くしても、上記結晶性フェノール化合物(b)を配合する効果により、シリンダ温度(90〜120℃)での溶融粘度はそれほど高くならず、射出速度を低下させないことができるものと推測される。
このような目的のためには、上記フェノール樹脂(a)の重量平均分子量は、7000〜8000であることがさらに好ましい。
【0020】
上記重量平均分子量が6000〜9000のフェノール樹脂(a)と、2核体以上の結晶性フェノール化合物(b)との配合比率(重量)は特に限定されないが、(a)/(b)=90/10〜60/40が好ましい。さらに好ましくは(a)/(b)=80/20〜70/30である。
(a)成分の比率が上記下限値より少ないと硬化性が低下することがある。一方、上記上限値より多いと溶融粘度の温度依存性を小さくする効果が低減することがある。
【0021】
重量平均分子量が6000〜9000のフェノール樹脂(a)と、2核体以上の結晶性フェノール化合物(b)との合計含有量は特に限定されないが、成形材料全体に対して、30〜60重量%であることが好ましく、さらに好ましくは40〜50重量%である。上記範囲の含有量とすることで成形性と上記特性とのバランスをとることができる。
【0022】
本発明の成形材料には、さらに、重量平均分子量が300〜30000であるポリオレフィン化合物(c)を用いることができる。
上記低分子ポリオレフィン化合物(c)の種類としては、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどを例示できる。これらの化合物は、80〜120℃での成形材料の溶融粘度を低下させる効果があり、金型内に射出されたときには壁面で滑剤として作用し、射出速度を速くすることができる。このような効果のためには、これらの化合物の重量平均分子量は、好ましくは300〜3000である。80から120℃での溶融粘度を大きく低下させるものとして、さらに好ましくは重量平均分子量500〜1500のポリエチレンである。
【0023】
上記ポリオレフィン化合物(c)の含有量は特に限定されないが、上記(a)、(b)成分の合計量に対して0.1〜5重量%であることが好ましい。
(c)成分の含有量が上記下限値未満では上述の作用が充分ではなく、上記上限値を越えると射出成形機での可塑化が難しくなることがある。
【0024】
本発明の成形材料には、上記(a)〜(c)成分のほか、充填材(d)を配合することができる。これにより、目的とする成形品に要求される機械的特性、電気的特性などを付与することができる。
本発明の成形材料に用いられる充填材(d)としては特に限定されないが、例えば、木粉、パルプ粉、各種繊維粉砕物、フェノール樹脂積層板、成形品の粉砕物などの有機充填材や、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、ガラス、タルク、クレー、マイカ、炭酸カルシウム、カーボンなどの無機粉末、ガラス繊維、カーボン繊維などの無機繊維、などの無機充填材を1種類以上用いることができる。
【0025】
上記充填剤(d)の含有量は特に限定されないが、成形材料全体に対して30〜60重量%が好ましい。更に好ましくは40〜50重量%である。
また、本発明のフェノール樹脂成形材料には、本発明の目的を損なわない範囲で、更に滑剤、着色剤、効果促進剤、難燃剤などの各種添加剤を適宜配合することができる。
【0026】
本発明の成形材料は通常の方法により製造される。即ち、上記の各成分を所定の配合割合で混合し、加熱ロール、コニーダ、二軸押し出し機などを使用して溶融混練した後に冷却、粉砕することにより得られる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
【0028】
実施例1
Mw(重量平均分子量)=8000のフェノール樹脂Aを31重量%、2核体フェノール化合物であるビスフェノールFを12重量%、ポリエチレン(Mw=500)を1重量%、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを7重量%、滑剤を1重量%、着色剤を1重量%、硬化助剤として酸化マグネシウムを3重量%、充填材として木粉を32重量%、炭酸カルシウム粉末を12重量%配合し、加熱ロールで4分間溶融混練し、冷却、粉砕することで成形材料を得た。
【0029】
実施例2
フェノール樹脂Aを33重量%に増量、ビスフェノールFを10重量%に減量した以外は実施例1と同様にして成形材料を得た。
【0030】
実施例3
フェノール樹脂Aを28重量%に減量、ビスフェノールFを15重量%に増量し、溶融混練時間を5分間とした以外は実施例1と同様にして成形材料を得た。
【0031】
実施例4
フェノール樹脂Aを32重量%に増量し、ポリエチレンを配合しなかった以外は実施例1と同様にして成形材料を得た。
【0032】
実施例5
フェノール樹脂Aを29重量%に増量し、ポリエチレンを配合しなかった以外は実施例3と同様にして成形材料を得た。
【0033】
比較例1
フェノール樹脂Aを10重量%、Mw=3000のフェノール樹脂Cを34重量%、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを7重量%、滑剤を1重量%、着色剤を1重量%、硬化助剤を3重量%、木粉を32重量%、炭酸カルシウム粉末を12重量%配合し、加熱ロールで4分間溶融混練し、冷却、粉砕することで成形材料を得た。
【0034】
比較例2
フェノール樹脂Aを44重量%に増量、フェノール樹脂Cを用いなかった以外は、比較例1と同様にして成形材料を得た。
【0035】
比較例3
Mw=4000のフェノール樹脂Bを43重量%、ヘキサメチレンテトラミンを7重量%、滑剤を2重量%、着色剤を1重量%、硬化助剤を3重量%、木粉を32重量%、炭酸カルシウム粉末を12重量%配合し、加熱ロールで4分間溶融混練し、冷却、粉砕することで成形材料を得た。
【0036】
比較例4
フェノール樹脂Bを42重量%に減量、ポリエチレン1重量%を配合し、混練時間を5分間とした以外は、比較例3と同様にして成形材料を得た。
【0037】
得られた成形材料について、粘度特性、射出成形時の射出時間及び充填性を評価した。これらの結果を表1の下段に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
(使用した原料)
(1)フェノール樹脂A:重量平均分子量8000 住友ベークライト社製「PR−50731」
(2)フェノール樹脂B:重量平均分子量4000 住友ベークライト社製「A−1084」
(3)フェノール樹脂C:重量平均分子量3000 住友ベークライト社製「PR−50622」
(4)ビスフェノールF:三井化学社製「ビスフェノールF−M」
(5)ポリエチレン:中国精油社製「ポリレッツ(分子量500)」
(6)滑剤:ステアリン酸
(7)着色剤:カーボンブラック
(8)硬化助剤:酸化マグネシウム
(9)木粉:80メッシュパス
(10)炭酸カルシウム:日東粉化社製「SS80」
【0040】
(測定方法)
射出成形の条件
(1)金型温度:175℃
(2)硬化時間:3分間
(3)成形品形状:幅30×奥行き20×高さ10mmの箱型形状の底面に幅16×奥行き7×高さ8mmの直方体の突起がついた形状で16ヶ取り構造のものである。
(4)シリンダ温度設定:先端90℃/末端50℃
【0041】
(評価方法)
(1)粘度特性:東洋精機社製ラボプラストミルを用い、110℃及び170℃における溶融トルクで評価した。
(2)射出時間:上記成形品を射出速度設定100mm/sec、射出圧力設定140kg/cm2で成形したときの射出時間を計測した。
(3)充填性:上記金型で成形したときの突起部における充填性を目視で評価した。突起部の隅まで充填している場合を○、充填しない場合を×とした。
【0042】
実施例1〜5はいずれも、重量平均分子量が6000〜9000であるフェノール樹脂と、2核体以上の結晶性フェノール化合物とを含有する本発明の成形材料であり、従来の材料である比較例1と比べて、110℃における粘度と170℃における粘度との差が小さいものとなった。また、射出時間は短く、充填性も優れたものであった。
実施例1〜3は、加えて、重量平均分子量が300〜30000であるポリオレフィン化合物を含有する成形材料であり、射出時間をさらに短くすることができた。
比較例1は、流動性は充分有する材料であるが、発生ガスの巻き込みに起因すると思われる充填性の低下がみられた。
比較例2は高分子量のフェノール樹脂Aを単独で配合したものであるが、流動性が充分ではなく、充填性が低下した。
比較例3は、分子量がやや小さいフェノール樹脂Bを単独で配合したものであるが、成形材料の粘度の温度依存性が高い結果となった。射出時間も長く、金型突起部の末端で充填性不良が発生した。
比較例4は比較例3にポリオレフィン化合物を配合し、混練時間を長くして粘度を高めたものである。充填性は良好であったが、110℃における粘度が高くなりすぎたために、射出時間が長くなり、高成形サイクル材料としては不適な水準であった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のフェノール樹脂成形材料は、優れた充填性と高速で射出できる性能を併せ持つため、成形の歩留まり向上と、高成形サイクル化による低コスト化を実現できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が6000〜9000であるフェノール樹脂(a)と、2核体以上の結晶性フェノール化合物(b)とを含有することを特徴とするフェノール樹脂成形材料。
【請求項2】
さらに、重量平均分子量が300〜30000であるポリオレフィン化合物(c)を含有する請求項1に記載のフェノール樹脂成形材料。
【請求項3】
前記結晶性フェノール化合物(b)は、ビスフェノールFを含むものである請求項1又は2に記載のフェノール樹脂成形材料。
【請求項4】
更に、充填材(d)を含有する請求項1ないし3のいずれかに記載のフェノール樹脂成形材料。

【公開番号】特開2006−137819(P2006−137819A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−327407(P2004−327407)
【出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】