説明

フェノール樹脂発泡体の製造方法

【課題】炭化水素系発泡剤を用いて製造したフェノール樹脂発泡体において、発泡剤の沸点以下の温度領域における熱伝導率を低減する。
【解決手段】沸点が20℃以上の炭化水素系発泡剤を用いたフェノール樹脂の発泡成形において、フェノール樹脂100重量部に三フッ化塩化エチレンの低重合物を1.1〜10.0重量部混合して発泡させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅の壁材や天井材、屋根等の各種建築用断熱材、冷蔵倉庫用断熱材等として使用される断熱材、特に低温度領域の断熱性能が優れたフェノール樹脂発泡体の製造方法を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
フェノール樹脂発泡体は、フェノールとホルマリンをアルカリ性触媒により縮合したレゾール型フェノール樹脂に界面活性剤、発泡剤、硬化触媒を混合し、常温、もしくは加熱して発泡硬化せしめて製造される。その発泡剤として、ジクロロフルオロエタン(HCFC−141b)、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン(HCFC−142b)等の水素化クロロフルオロカーボン類(HCFC)、或いは1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)、1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a)等の水素化フルオロカーボン類(HFC)、或いはペンタン、ブタン等の炭化水素類を用いることが公知である。
【0003】
近年、発泡剤によるオゾン層の破壊や、地球温暖化の問題から、フェノール樹脂発泡体はもちろん、それ以外のウレタン樹脂発泡体や、スチレン樹脂発泡体、ポリエチレン樹脂発泡体等においても、地球環境上穏やかな発泡剤である炭化水素系発泡剤での発泡技術開発が進み、炭化水素系発泡剤が使用されるようになってきた(特許文献1,2,3参照)。
【0004】
しかしながら、炭化水素系発泡剤として一般的に使用される熱伝導率の小さい発泡剤としては、ノルマルペンタン(沸点36.2℃)、イソペンタン(沸点27.8℃)、シクロペンタン(沸点49.3℃)などがあるが、いずれも発泡剤の沸点が20℃より高く、標準的な断熱材の使用温度である20℃での熱伝導率、及び発泡剤の沸点以下での熱伝導率は、発泡体内の発泡剤が液化する現象によって大きくなり、断熱性能が悪くなってしまうという問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開平11−140216号公報
【特許文献2】国際公開第99/11697号パンフレット
【特許文献3】特許第3681307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、炭化水素系発泡剤を用いて製造したフェノール樹脂発泡体の課題である、発泡剤の沸点以下の低温度領域での熱伝導率が大きくなるという問題を解決し、発泡剤の沸点以下の温度領域においても熱伝導率が小さいフェノール樹脂発泡体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、前記本発明の課題を達成しうるフェノール樹脂発泡体の製造方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は、フェノール樹脂に発泡剤、硬化触媒を混合して発泡硬化させるフェノール樹脂発泡体の製造方法において、発泡剤が沸点20℃以上の炭化水素であり、フェノール樹脂には、フェノール樹脂100重量部に対して1.1〜10.0重量部の三フッ化塩化エチレンの低重合物を混合して、発泡硬化させることを特徴とするフェノール樹脂発泡体の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、発泡剤の沸点温度以下の広い温度領域においても熱伝導率が小さく良好な断熱性能を示すフェノール樹脂発泡体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、フェノール樹脂100重量部に、液体状である三フッ化塩化エチレンの低重合物を1.1〜10.0重量部混合して発泡させることによって、沸点が20℃以上の炭化水素系発泡剤の該沸点以下の広い温度領域における熱伝導率を大幅に低減したフェノール樹脂発泡体を提供する事ができる。
【0011】
本発明における樹脂原料であるフェノール樹脂は、公知の方法によりフェノールとホルムアルデヒドを原料として、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物を触媒としてそれぞれ用いて40〜100℃の温度範囲で加熱して重合させて得られる。本発明で使用するレゾール型フェノール樹脂のフェノール類対アルデヒド類の出発モル比は、1:1から1:4が好ましく、より好ましくは1:1.5から1:2.0の範囲内である。このレゾール型フェノール樹脂には尿素、アミン類、アミド類、エポキシ化合物、単糖類、でんぷん類、ポバール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ラクトン類等の各種改質剤を添加して使用しても良い。レゾール型フェノール樹脂は、水分量を調整することにより、適正な粘度にして使用される。フェノール樹脂の好適な粘度範囲は、発泡条件により異なるが、40℃における粘度が1000〜50000cps(センチポアズ)であることが好ましく、2000〜30000cpsであることがさらに好ましい。
【0012】
本発明において発泡剤として使用する沸点が20℃以上の炭化水素としては、ノルマルペンタン(沸点36.2℃)、イソペンタン(沸点27.8℃)、シクロペンタン(沸点49.3℃)が挙げられる。これら炭化水素系発泡剤は単独、或いはそれぞれを混合して使用してもよい。フェノール樹脂と発泡剤の混合割合は、目的とする熱伝導率値や、発泡条件、発泡倍率によって異なるが、フェノール樹脂100重量部(水分量を除く樹脂分)に対し発泡剤を2〜15重量部が通常使用される。
【0013】
本発明において、フェノール樹脂に混合する三フッ化塩化エチレンの低重合物の割合は、フェノール樹脂100重量部に対して1.1〜10重量部、好ましくは1.1〜6重量部である。三フッ化塩化エチレンの低重合物の添加量が1.1重量部未満では、熱伝導率の低下の効果が十分でなく、10重量部を超えて添加しても、効果はそれほど変わることはなく製造コスト的に高価なものになるので好ましくない。
【0014】
また、整泡のため、一般にフェノール樹脂発泡体の製造に使用される界面活性剤が使用されるが、中でもノニオン系の界面活性剤が効果的である。例えば、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体、アルキレンオキサイドとノニルフェノール、ドデシルフェノールのようなアルキルフェノールとの縮合物等が挙げられる。これら界面活性剤は、単独或いは複数のものを混合して使用される。その使用量についても、特に制限はないが、フェノール樹脂100重量部に対して0.5〜10重量部の範囲で添加して使用される。
【0015】
また硬化触媒は特に限定しないが、トルエンスルホン酸やキシレンスルホン酸、フェノールスルホン酸などの芳香族スルホン酸類が挙げられ、これら一種類でも、二種類以上の組み合わせでもよい。また、硬化助剤としてレゾルシノール、クレゾール、サリニゲン(o−メチロールフェノール)、p−メチロールフェノールなどを添加しても良い。これらの硬化触媒はジエチレングリコール、エチレングリコールなどの溶媒で希釈して用いることもできる。硬化触媒は、その種類及び、発泡条件により使用量は異なるが、フェノール樹脂100重量部に対し、5〜15重量部程度が通常使用される。
【0016】
また本発明のより好ましい実施の形態としては、発泡剤100重量部に対して気泡核剤として0.01〜5重量部程度の窒素を混合溶解せしめて用いることが挙げられる。その混合溶解方法としては、発泡剤の保存容器において発泡剤に窒素を加圧して溶解させても良いし、発泡時に混合機の手前で発泡剤中に導入して混合溶解させても良い。
【0017】
本発明の実施の形態としては、例えば適性な粘度に調整されたフェノール樹脂に三フッ化塩化エチレンの低重合物を添加・混合し、発泡剤、硬化触媒を混合機に導入し、均一に攪拌混合して発泡性樹脂組成物を得る。そして発泡性樹脂組成物を成形金型に流し込み加熱、発泡、硬化させて、フェノール樹脂発泡体を得る。三フッ化塩化エチレンの低重合物の混合方法は特に制限されるものではなく、フェノール樹脂に三フッ化塩化エチレンの低重合物を予め混合しておいてから発泡剤を混合しても良いし、フェノール樹脂と三フッ化塩化エチレンの低重合物と発泡剤を同時に一緒に混合しても良いが、フェノール樹脂に予め混合しておくことが好ましい。また、混合手段としては、ハンドミキサーや連続混合方式のピンミキサー等を利用してもよい。本発明のフェノール樹脂発泡体の製造において、硬化触媒が予め発泡性樹脂組成物と混合されると発泡前に硬化反応が進行し良好な発泡体が得られないので、混合機で発泡性樹脂組成物と硬化触媒とを混合することが望ましい。加熱温度及び加熱時間は、フェノール樹脂の反応性や硬化触媒量などによって異なるが、一般的な加熱温度は80℃前後で、加熱時間は60分〜120分程度であれば、完全に発泡し硬化が完了する。
【実施例】
【0018】
本発明を実施例、比較例に基づいて説明する。
【0019】
[実施例1]
フェノール樹脂100g(樹脂分)に界面活性剤として、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体(BASF社製「プルロニックF−127」)3g、三フッ化塩化エチレン低重合物(ダイキン工業社製「ダイフロイル#1」、平均分子量約500)1.1gを混合した後、発泡剤としてノルマルペンタン(沸点36℃)6gを混合した物に、硬化触媒(パラトルエンスルホン酸−水和物60重量%とジエチレングリコール40重量%の混合物)8gを添加し均一に混合してできた発泡性樹脂組成物を30cm×30cm×3cmサイズの面材を敷いた金型に流し込み、80℃の加熱オーブンで2時間加熱し、フェノール樹脂発泡体を得た。得られたフェノール樹脂発泡体の両面をスライスし厚み25mmのフェノール樹脂発泡体を作成し、JIS A 1412の平板熱流計法に従って各温度における熱伝導率を測定した。フェノール樹脂発泡体の熱伝導率の測定結果を表1に示す。発泡剤の沸点以下の熱伝導率は非常に低い値であった。
【0020】
[実施例2]
フェノール樹脂100gに三フッ化塩化エチレン低重合物3.0gを混合した以外は、実施例1と同じ方法でフェノール樹脂発泡体を作成した。得られたフェノール樹脂発泡体の熱伝導率の測定結果を表1に示す。発泡剤の沸点以下の熱伝導率は非常に低い値であった。
【0021】
[実施例3]
フェノール樹脂100gに三フッ化塩化エチレン低重合物6.0gを混合した以外は、実施例1と同じ方法でフェノール樹脂発泡体を作成した。得られたフェノール樹脂発泡体の熱伝導率の測定結果を表1に示す。発泡剤の沸点以下の熱伝導率は非常に低い値であった。
【0022】
[比較例1]
フェノール樹脂100gに三フッ化塩化エチレン低重合物を入れない点を除いて実施例1と同じ方法で、フェノール樹脂発泡体を作成した。得られたフェノール樹脂発泡体の熱伝導率の測定結果を表1に示す。発泡剤の沸点以下の熱伝導率は実施例に比較して非常に高く満足する物は得られなかった。
【0023】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール樹脂に発泡剤、硬化触媒を混合して発泡硬化させるフェノール樹脂発泡体の製造方法において、発泡剤が沸点20℃以上の炭化水素であり、フェノール樹脂には、フェノール樹脂100重量部に対して1.1〜10.0重量部の三フッ化塩化エチレンの低重合物を混合して、発泡硬化させることを特徴とするフェノール樹脂発泡体の製造方法。

【公開番号】特開2007−131802(P2007−131802A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−328297(P2005−328297)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(390018717)旭化成建材株式会社 (249)
【Fターム(参考)】