説明

フェノール樹脂発泡体用不織布

【課題】フェノール樹脂発泡体として優れた機械的強度を有するフェノール樹脂発泡体用不織布を提供するものである。
【解決手段】熱可塑性連続フィラメントより構成される部分的に熱圧着された長繊維不織布であって、目付が20〜260g/mであり、目付当たりの強伸度積が70〜300であることを特徴とするフェノール樹脂発泡体用不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール樹脂発泡体用不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅、一般建築用、配管、タンク等に用いる断熱材として、化学反応にて発泡させたポリスチレンボード、ポリウレタンボード、イソシアヌレートボード、フェノールボード等の合成樹脂発泡体が用いられている。
【0003】
近年、フェノール樹脂発泡体は、優れた耐熱性と汎用性を併せもつ熱硬化性樹脂であり、合成樹脂発泡体の中でも、熱的及び化学的に最も安定した性質を有すると共に優れた断熱性を有することから、高性能断熱材として使用されている。
【0004】
しかしながら、フェノール樹脂発泡体は、比較的脆い材料であることから、フェノール樹脂発泡体の傷つきや外力による破損から保護する必要があり、フェノールの樹脂発泡体を芯材とし、その少なくとも片面に面材として、天然繊維、ポリエステル繊維やポリエチレン繊維などの合成繊維、ガラス繊維などの無機繊維等の不織布 、紙類、アルミニウム箔張不織布 、金属板、金属箔などが一般に使用されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、面材の別の役割としては、通称「背割り工法」と呼ばれる、発泡体の表面に表面材、裏面にシートが張り合わせてある複合体を表面から裏面に向けて裏面までは貫通しない切り込みを入れ、該板の幅寸法よりも狭い間隔で設けられた支持枠体間に圧挿してはめ込む工法においては、発泡体積層板のヒンジ状構造を可能ならしめる役割があり、この場合、面材となる不織布には、フェノール樹脂発泡体との接着強度や、不織布自体の機械的強度が要求される。
【0006】
フェノール樹脂発泡体積層板およびその製造方法として、特許文献2には、繊維径が0.01〜3.0デニールであり、目付が15〜80g/mの合成繊維不織布を特徴とする面材が開示されている。しかしながら、当該文献には、物性面からポリエステル製、或いはポリプロピレン製の不織布が好適に用いられると記載されているが、不織布の機械的強度等、物性については、何ら記載がなく、ヒンジ状構造に用いる面材用不織布として、安定的に優れた機械的強度を有するものではなかった。
【0007】
また特許文献3には、適度な剛性を持った不織布として、部分的に熱圧着部を有する芯鞘型複合繊維からなる目付120〜360g/mのポリエステル系複合繊維フィラメントで構成されるスパンボンド不織布が開示されている。しかしながら、該不織布の目付は120〜360g/mであることから、背割り工法に用いた場合に、機械的強度に優れるものの、不織布の剛性が強すぎるため、施工時の取り扱い性に優れるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−70508号公報
【特許文献2】特許第3523196号公報
【特許文献3】特許第3161245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、熱可塑性連続フィラメントより構成され、機械的強度に優れる長繊維不織布からなる、フェノール樹脂発泡体用不織布を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明は、熱可塑性連続繊維より構成される長繊維不織布であって、部分的に熱圧着されてなり、目付が20〜260g/m、目付当たりの強伸度積が60〜300であることを特徴とするフェノール樹脂発泡体用不織布である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱可塑性連続フィラメントより構成される長繊維不織布をフェノール樹脂発泡体の面材とすることで、優れた機械的強度を有するフェノール樹脂発泡体用不織布を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のフェノール樹脂発泡体用不織布は、熱可塑性連続繊維から構成される部分的に熱圧着された長繊維不織布である。
【0013】
熱可塑性連続繊維を形成するポリマーとしては例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、あるいはこれらの混合物や共重合体等を挙げることができる。なかでもポリエステルが、より機械的強度や耐熱性、耐水性、耐薬品性等の耐久性に優れることから好ましい。ポリエステルは酸成分とアルコール成分とからなり、酸性分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸などの芳香族カルボン酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸などを用いることができ、また、アルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどを用いることができる。ポリエステルの例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、また、これらの共重合体等を挙げることができる。
【0014】
また、熱可塑性連続繊維を形成するポリマーとしては、生分解性樹脂も、用済み後の廃棄が容易であり環境負荷が小さいことから好ましい。生分解性樹脂の例としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシブチレート等が挙げられる。なかでもポリ乳酸は、石油資源を枯渇させない植物由来の樹脂であり、力学特性や耐熱性も比較的高く、製造コストも低いので好ましい。 また、熱可塑性連続繊維は、高融点重合体の周りに当該高融点重合体の融点よりも低い融点を有する低融点重合体を配した複合繊維であることが好ましい。そうすることにより、熱圧着により熱可塑性連続繊維が不織布内において強固に接着し、毛羽立の抑制や、ヒンジ状構造に用いる面材用不織布として、機械的強度を向上することができる。また、このような複合繊維とすることにより、不織布を構成するフィラメント同士が強固に接着することに加え、融点の異なる繊維同士を混繊させたものに比べ不織布における接着点の数も多くなるため、フェノール樹脂発泡体用不織布としての寸法安定性、耐久性も向上する。高融点重合体と低融点重合体との融点の差としては10〜140℃が好ましい。融点の差を10℃以上、より好ましくは20℃以上、さらに好ましくは30℃以上とすることで、所望の熱接着性を得ることができる。また、140℃以下、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは100℃以下とすることで、熱圧着時に熱圧着ロールに低融点重合体成分が融着し生産性が低下することを抑制することができる。
【0015】
また、上記複合繊維における高融点重合体の融点としては、160〜320℃が好ましい。160℃以上、より好ましくは170℃以上、さらに好ましくは180℃以上とすることで、熱が加わる加工工程においても形態安定性に優れる。また、320℃以下、より好ましくは300℃以下、さらに好ましくは280℃以下とすることで、長繊維不織布製造時に溶融するための熱エネルギーを多大に消費し生産性が低下するのを抑制することができる。
【0016】
かかる高融点重合体および低融点重合体の組み合わせ(高融点重合体/低融点重合体)の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート/ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート/共重合ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。共重合ポリエチレンテレフタレートの共重合成分としては、イソフタル酸等が好ましい。
【0017】
かかる複合繊維における低融点重合体の占める割合としては、10〜70質量%が好ましい。10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上とすることで、所望の熱接着性を得ることができる。また、70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下とすることで、融着が進みすぎてフェノール樹脂が染み込みにくくなりフェノール樹脂発泡体との接着性が低下することを抑制することができる。
【0018】
かかる複合繊維の複合形態としては例えば、同心芯鞘型、偏心芯鞘型、海島型等を挙げることができる。なかでも同心芯鞘型が、熱圧着により繊維同士を強固に接着させることができる点で好ましい。
【0019】
また、熱可塑性連続繊維の断面形状としては、円形、扁平、多角形、X型やY型等の多葉型、中空型等を挙げることができる。前記のような複合繊維で異形型の断面形状を採用する場合は、低融点重合体成分が熱圧着に寄与できるように繊維断面の外周部近傍に存在するのが好ましい。
【0020】
本発明において、熱可塑性連続フィラメントの繊維径としては10〜24μmが好ましい。10μm以上、より好ましくは12μm以上とすることで、機械的強度に優れた不織布を得ることができる。また、24μm以下、より好ましくは22μm以下とすることで、フェノール樹脂発泡体を製造する際に、フェノール樹脂が不織布外面に滲み出すことを抑制することが可能であり、また、フェノール樹脂と不織布の接着強度も良好であり、ヒンジ状構造に用いるフェノール樹脂発泡体積層板として好ましいものである。尚、複数種類の繊維が混繊されている場合は、それぞれの繊維の単繊維繊維径が上記範囲内であるのが好ましい。
【0021】
本発明のフェノール樹脂発泡体用不織布には、結晶核剤や艶消し剤、滑剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、難燃剤、親水剤等を添加してもよい。特に長繊維不織布の熱圧着成形の際、熱伝導性を増すことで長繊維不織布の接着性を向上させる効果がある酸化チタン等の金属酸化物や、熱圧着ロールとウエブ間の離型性を増すことで接着安定性を向上させる効果があるエチレンビスステアリン酸アミド等の脂肪族ビスアミド、および/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミドを添加することが好ましい。これら各種の添加剤は、熱可塑性連続繊維中に存在させてもよいし、熱可塑性連続繊維の表面に存在させてもよい。
【0022】
本発明のフェノール樹脂発泡体用不織布は、部分的に熱圧着されてなることが重要である。部分的に熱圧着されてなることで、繊維同士を一体化させ、毛羽立ちを抑え、フェノール樹脂発泡体用不織布として長期の使用に耐え得る機械的強度が得られる。熱圧着部は、くぼみを形成しており、不織布を構成する熱可塑性連続フィラメント同士が熱と圧力によって融着して形成されている。すなわち、他の部分に比べて熱可塑性連続フィラメントが融着して凝集している部分が熱圧着部である。
【0023】
熱圧着部を設ける手段としては、熱エンボスロールによる接着や、超音波発振装置とエンボスロールとの組み合わせによる接着を好ましく採用することができる。特に熱エンボスロールによる接着は、不織布の強度を向上させる点で好ましい。
【0024】
熱エンボスロールによる熱圧着を採用した場合には、エンボスロールの凸部により熱可塑性連続フィラメントが融着して凝集している部分が熱圧着部となる。例えば、上側または下側のみに所定のパターンの凹凸を有するロールを用いて、他のロールは凹凸の無いフラットロールを用いる場合においては、熱圧着部とは凹凸を有するロールの凸部とフラットロールとで熱圧着されて不織布の熱可塑性連続フィラメントが凝集された部分をいう。また、例えば、表面に複数の平行に配置された直線的溝が形成されている一対の上側ロールと下側ロールからなり、その上側ロールの溝とその下側ロールの溝とがある角度で交叉するように設けられているエンボスロールを用いる場合、熱圧着部とは上側ロールの凸部と下側ロールの凸部とで熱圧着されて不織布の熱可塑性連続フィラメントが凝集された部分をいう。この場合、上側の凸部と下側の凹部あるいは上側の凹部と下側の凸部とで圧接される部分はここでいう熱圧着部には含まれない。
【0025】
熱エンボスロールの温度としては、熱可塑性連続繊維を形成する重合体のうち最も融点の低いものの融点に対して−60〜−5℃とすることが好ましい。当該差を−60℃以上、より好ましくは−50℃以上とすることで、熱接着を効率良く行うことができる。一方、−5℃以下、より好ましくは−10℃以下とすることで、不織布製造時に繊維がエンボスロールに取られることで発生するロール汚れの抑制が可能であり、また、部分的熱圧着部以外の不織布表面繊維の融着を抑制することで、風合いが堅すぎず、施工時の取り扱い性に優れる。
【0026】
熱圧着部の形状としては、円形、三角形、四角形、平行四辺形、楕円形、菱形などを採用することができる。また熱圧着部の配列としては、等間隔に規則的に配されたもの、ランダムに配されたもの、異なる形状が混在したものでもよい。なかでも不織布の均一性の点から、熱圧着部分が等間隔に配されたものが好ましい。さらに不織布を剥離することなく部分的な熱圧着をする点で、表面に複数の平行に配置された直線的溝が形成されている一対の上側ロールと下側ロールからなり、その上側ロールの溝とその下側ロールの溝とがある角度で交叉するように設けられているエンボスロールを用い、上側ロールの凸部と下側ロールの凸部とで熱圧着され形成される平行四辺形の熱圧着部が好ましい。
【0027】
部分的な熱圧着による圧着面積率としては、不織布の面積に対して5〜30%が好ましい。5%以上、より好ましくは7%以上、さらに好ましくは9%以上とすることで、不織布の強度が向上し、また表面の毛羽立ちを抑えることができる。また30%以下、より好ましくは28%以下、さらに好ましくは24%以下とすることで、繊維間の空隙を適度に残し、不織布の引張伸度の低下を抑制するとともに、フェノール樹脂が浸透する空間を確保でき、フェノール樹脂発泡体との接着強度を損なわない。
【0028】
本発明のフェノール樹脂発泡体用不織布の目付としては、20〜260g/mが好ましい。20g/m以上、より好ましくは25g/m以上、さらに好ましくは30g/m以上とすることで、フェノール樹脂が不織布外面に滲み出すことを抑制することが可能であり、また機械的強度に優れたフェノール樹脂発泡体用不織布を得ることができる。また、260g/m以下、より好ましくは200g/m以下、さらに好ましくは110g/m以下とすることで、背割り工法に用いた場合に、不織布の剛性が強すぎず、施工時の取り扱い性に優れる。
【0029】
本発明のフェノール樹脂発泡体用不織布は、目付当たりの強伸度積が60〜300であることが重要である。目付当たりの強伸度積とは、不織布の引張強力(単位:N/5cm)と伸度(単位:%)との積を目付(単位:g/m)で除したものである。目付当たりの強伸度積を60以上、好ましくは65以上、より好ましくは75以上とすることで、本発明のフェノール樹脂発発泡体用不織布をフェノール樹脂発泡体積層板として背割り工法に用いた場合にも、ヒンジ状構造の十分な機械的強度を得ることができる。一方、300以下、好ましくは250以下、より好ましくは200以下とすることで、フェノール樹脂発泡体用不織布として、積層加工時の安定性に優れ、さらには、風合いが堅すぎず、施工時の取り扱い性に優れる。
【実施例】
【0030】
[測定方法]
(1)融点(℃)
パーキンエルマ社製示差走査型熱量計DSC−2型を用い、昇温速度20℃/分の条件で測定し、得られた融解吸熱曲線において極値を与える温度を融点とした。また示差走査型熱量計において融解吸熱曲線が極値を示さない樹脂については、ホットプレート上で加熱し、顕微鏡観察により樹脂が完全に溶融した温度を融点とした。
【0031】
(2)固有粘度IV
ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度IVは以下の方法で測定した。
オルソクロロフェノール100mlに対し試料8gを溶解し、温度25℃においてオストワルド粘度計を用いて相対粘度ηを下記式により求めた。
η=η/η=(t×d)/(t×d
ここで、η:ポリマー溶液の粘度
η:オルソクロロフェノールの粘度
t:溶液の落下時間(秒)
d:溶液の密度(g/cm
:オルソクロロフェノールの落下時間(秒)
:オルソクロロフェノールの密度(g/cm
ついで、相対粘度ηから下記式、
IV=0.0242η+0.2634
により固有粘度IVを算出した。
【0032】
(3)繊維径(μm)
不織布からランダムに小片サンプル10個を採取し、走査型電子顕微鏡で500〜3000倍の写真を撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の繊維の直径を測定し、それらの平均値の小数点以下第一位を四捨五入して求めた。
【0033】
(4)目付(g/m
50cm×50cmの不織布を3個採取して、各試料の重量をそれぞれ測定し、得られた値の平均値を単位面積当たりに換算し、小数点以下第一位を四捨五入した。
【0034】
(5)目付当たりの強伸度積
不織布の縦方向(シート長さ方向)および横方向(シート幅方向)のそれぞれについて、長さ30cm×幅5cmの試験片を10点採取した。試験片を定速伸長型引張試験機にて、つかみ間隔20cm、引張速度10±1cm/minで引張試験を実施し、破断するまでの最大荷重時の強さ(N)を0.1Nの位まで求め、これを引張強力(N/5cm)とした。また最大荷重時の伸び(cm)を0.1cmの位まで求め、これを試験長(20cm)で除し、小数点以下第二位を四捨五入して、伸度(%)を求めた。得られた縦方向および横方向の引張強力と伸度それぞれの合計20点の総平均値を、小数点以下第一位を四捨五入して求め、これを不織布の引張強力、伸度とした。上記の引張強力と伸度の積を上記(4)の目付で除し、小数点以下第一位を四捨五入することで目付当たりの強伸度積を求めた。
【0035】
[実施例1]
(繊維ウェブ)
固有粘度IV0.65、融点260℃であり、酸化チタンを0.3質量%含むポリエチレンテレフタレート樹脂を水分率50ppm以下に乾燥したものを芯成分とした。また、固有粘度IV0.66、イソフタル酸共重合率10モル%、融点230℃であり、酸化チタンを0.2質量%含む共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂を水分率50ppm以下に乾燥したものを鞘成分とした。芯成分を295℃、鞘成分を280℃で溶融し、芯/鞘の複合比を質量比で80/20として円形断面の同心芯鞘型に複合し、口金温度300℃で細孔より紡出した後、エジェクターにより紡糸速度4300m/分で紡糸して、目付50g/mとなるようネットコンベアーの移動速度を調整し、そのコンベアー上に繊維ウエブとして捕集した。
【0036】
(熱圧着)
上記繊維ウエブを上下1対のフラットロールにてフラットロール表面温度120℃、線圧60kg/cmで熱圧着し、連続して上側に円形の凸部を有するロールを用い、下側に凹凸の無いフラットロールを用い、圧着面積率が16%となるよう調整したエンボスロールで、温度190℃、線圧70kg/cmの条件で熱圧着し、繊維径14μm、目付50g/mのスパンボンド不織布を得た。得られたフェノール樹脂発泡体用不織布の目付当たりの強伸度積は142であった。
【0037】
[実施例2]
(繊維ウェブ)
繊維径が18μmとなるよう総吐出量を変更し、また目付が230g/mとなるようネットコンベアーの移動速度を調整した以外は実施例1と同様にして、繊維ウエブを捕集した。
【0038】
(熱圧着)
上記繊維ウエブを上下1対のフラットロールにてフラットロール表面温度130℃、線圧60kg/cmで熱圧着し、連続して表面に複数の平行に配置された直線的溝が形成されている一対の上側ロールと下側ロールからなり、その上側ロールの溝とその下側ロールの溝とがある角度で交叉するように設けられているエンボスロールにおいて、上側ロールの凸部と下側ロールの凸部とで熱圧着され、その圧着面積率が18%となるよう調整したエンボスロールで、温度205℃、線圧70kg/cmの条件で熱圧着し、繊維径18μm、目付230g/mのスパンボンド不織布を得た。得られたフェノール樹脂発泡体用不織布の目付当たりの強伸度積は134であった。
【0039】
[実施例3]
(繊維ウェブ)
目付が60g/mとなるようネットコンベアーの移動速度を調整した以外は実施例1と同様にして、繊維ウエブを捕集した。
【0040】
(熱圧着)
上記繊維ウエブを、上下1対のフラットロールにて上のフラットロール表面温度120℃、下のフラットロール表面温度150℃、線圧60kg/cmで熱圧着し、連続して表面に複数の平行に配置された直線的溝が形成されている一対の上側ロールと下側ロールからなり、その上側ロールの溝とその下側ロールの溝とがある角度で交叉するように設けられているエンボスロールにおいて、上側ロールの凸部と下側ロールの凸部とで熱圧着され、その圧着面積率が18%となるよう調整したエンボスロールで、温度190℃、線圧70kg/cmの条件で熱圧着し、繊維径14μm、目付60g/mのスパンボンド不織布を得た。得られたフェノール樹脂発泡体用不織布の目付当たりの強伸度積は175であった。
【0041】
[実施例4]
(繊維ウェブ)
目付が35g/mとなるようネットコンベアーの移動速度を調整した以外は実施例1と同様にして、繊維ウエブを捕集した。
【0042】
(熱圧着)
上記繊維ウエブを、上下1対のフラットロールにて上のフラットロール表面温度120℃、下のフラットロール表面温度150℃、線圧60kg/cmで熱圧着し、連続して表面に複数の平行に配置された直線的溝が形成されている一対の上側ロールと下側ロールからなり、その上側ロールの溝とその下側ロールの溝とがある角度で交叉するように設けられているエンボスロールにおいて、上側ロールの凸部と下側ロールの凸部とで熱圧着され、その圧着面積率が18%となるよう調整したエンボスロールで、温度180℃、線圧70kg/cmの条件で熱圧着し、繊維径14μm、目付35g/mのスパンボンド不織布を得た。得られたフェノール樹脂発泡体用不織布の目付当たりの強伸度積は139であった。
【0043】
[実施例5]
(繊維ウェブ)
固有粘度IV0.65、融点260℃のポリエチレンテレフタレート(PET)を水分率50ppm以下に乾燥したものを295℃で溶融し、口金温度300℃で円形の細孔より紡出した後、エアサッカーにより紡糸速度4400m/分で紡糸して、目付60g/mとなるようネットコンベアーの移動速度を調整し、そのコンベアー上に繊維ウエブとして捕集した。
【0044】
(熱圧着)
上記繊維ウエブを、上下1対のフラットロールにてフラットロール表面温度170℃、線圧60kg/cmで熱圧着し、連続して上側に円形の凸部を有するロールを用い、下側に凹凸の無いフラットロールを用い、圧着面積率が28%となるよう調整したエンボスロールで、温度250℃、線圧70kg/cmの条件で熱圧着し、繊維径14μm、目付60g/mのスパンボンド不織布を得た。得られたフェノール樹脂発泡体用不織布の目付当たりの強伸度積は、62であった。
【0045】
[比較例1]
(繊維ウェブ)
固有粘度IV0.65、融点260℃のポリエチレンテレフタレート(PET)を水分率50ppm以下に乾燥したものを295℃で溶融し、口金温度300℃で円形の細孔より紡出した後、エアサッカーにより紡糸速度4400m/分で紡糸して、目付30g/mとなるようネットコンベアーの移動速度を調整し、そのコンベアー上に繊維ウエブとして捕集した。
【0046】
(熱圧着)
上記繊維ウエブを、上下1対のフラットロールにてフラットロール表面温度170℃、線圧60kg/cmで熱圧着し、連続して上側に円形の凸部を有するロールを用い、下側に凹凸の無いフラットロールを用い、その圧着面積率が45%となるよう調整したエンボスロールで、温度250℃、線圧70kg/cmの条件で熱圧着し、繊維径14μm、目付30g/mのスパンボンド不織布を得た。得られたフェノール樹脂発泡体用不織布の目付当たりの強伸度積は、59であった。
【0047】
[比較例2]
(繊維ウェブ)
目付が60g/mとなるようネットコンベアーの移動速度を調整した以外は実施例1と同様にして、繊維ウエブを捕集した。
【0048】
(熱圧着)
上記繊維ウエブを上下1対のフラットロールにて上のフラットロール表面温度120℃、下のフラットロール表面温度150℃、線圧60kg/cmで熱圧着し、連続して上側に円形の凸部を有するロールを用い、下側に凹凸の無いフラットロールを用い、圧着面積率が7%となるよう調整したエンボスロールで、温度190℃、線圧70kg/cmの条件で熱圧着し、繊維径14μm、目付60g/mのスパンボンド不織布を得た。得られたフェノール樹脂発泡体用不織布の目付当たりの強伸度積は57であった。
【0049】
【表1】

【0050】
実施例1、2、3、4のフェノール樹脂発泡体用不織布は、いずれも目付当たりの強伸度積が60〜300を満たし、機械的強度に優れ、フェノール樹脂発泡体用不織布として適したものであった。一方、比較例1、2のフェノール樹脂発泡体用不織布は、目付当たりの強伸度積は、70〜300を満たさず、機械的強度に劣り、フェノール樹脂発泡体用不織布として適したものではなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性連続繊維より構成される長繊維不織布であって、部分的に熱圧着されてなり、目付が20〜260g/m、目付当たりの強伸度積が60〜300であることを特徴とするフェノール樹脂発泡体用不織布。
【請求項2】
前記熱可塑性連続繊維が、高融点重合体の周りに当該高融点重合体の融点よりも10〜140℃低い融点を有する低融点重合体を配した複合繊維である、請求項1に記載のフェノール樹脂発泡体用不織布。
【請求項3】
前記部分的な熱圧着による圧着面積率が5〜30%である、請求項1または2記載のフェノール樹脂発泡体用不織布。

【公開番号】特開2010−216044(P2010−216044A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65678(P2009−65678)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】