説明

フェムト秒ファイバーレーザーによる眼科手術処置のための装置

【課題】制御された仕方で角膜曲率を変える、高速屈折矯正眼科手術のための装置を提供する。
【解決手段】ファイバー光利得媒質を有し、100000パルス/秒よりも大きなパルス繰り返し数と数ピコ秒よりも短いパルスあたりの長さを与えるパルスレーザー装置110、パルスレーザー装置からのレーザー光129を受け取るために操作できるように接続され、10秒よりも短い時間内に少なくとも100000パルスを使用して、外科手術処置のために組織を切断するのに適した出力光パターンを走査するために操作することのできる走査ヘッドを有する光路、から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、アメリカ仮特許出願60/475,583号(2003年、6月2日提出)およびアメリカ非仮特許出願10/625,797号(2003年6月23日提出)に対して優先権を主張する。これらの出願の標題は、いずれも、APPARATUS AND METHOD FOR OPHTHALMOLOGIC SURGICAL PROCEDURES USING A FEMTOSECOND FIBER LASER(フェムト秒ファイバーレーザーによる眼科手術処置のための装置と方法)である。これらの明細書の全記載事項を参照されたい。
【0002】
本発明は、外科レーザー装置の分野に関する。より詳しくは、フェムト秒ファイバーレーザーによる眼科手術処置のための方法と装置に関する。
【背景技術】
【0003】
屈折矯正眼科手術たとえばLASIK(レーザーによるその部位での角膜曲率形成)処置のためのレーザーを用いる装置では、各種の視力障害たとえば近視(すなわち、近眼)、遠視(すなわち、遠眼)、および乱視を、眼の角膜の外科的再成形によって矯正することができる。
【0004】
遠視は、正のジオプトリで表される。近視は負のジオプトリで表される。もっとも普通の屈折の異常は、+6〜−6ジオプトリの範囲にある。たとえば、角膜基質(角膜の内部実質)の部分を除去して、生成される空洞を閉じるようにすることができる。その結果は、整形された角膜である。
【0005】
通常、LASIK処置では、各膜切開刀と呼ばれる機械的ナイフを使用して組織弁を作る。機械的な組織弁形成処置は角膜および基質組織に損傷を与えることがあり、場合によっては、長い治癒までの期間が必要になり、望ましくない人為的欠陥たとえば濁り、傷跡、および/または矯正の不安定性が残り、これらは視力を損なうことがある。
【0006】
さらに、組織弁が作られて、折り返されると、通常のLASIK処置では、一般に、基質を整形するために一つのパターン(たとえば、スポットから成る)を光切断するのに、高エネルギー紫外エキシマーレーザーを使用する。そのようなプロセスは、スポットの割合に大きな寸法のため、また場合によってはエキシマー光切断による加熱と音響衝撃波のため、割合に大ざっぱなものとなる。すなわち、エキシマーレーザー処置の割合に粗い(course)区画分割とその大きなエネルギーパルスとのため、望ましくない(desired)何かが残される。基質の整形のあと、組織弁はもとの位置に戻されて、手術が完了する。
【0007】
アメリカ特許第6,110,166号(2000年8月29日付与)(標題:“Method for corneal laser surgery(角膜レーザー手術のための方法))”に記載されているように、LASIKタイプの外科手術処置は、形成された組織弁を非施術角膜組織と重なり合う関係となるように戻すことができる場合には、より効果的かつ効率的に実施することができる。同明細書を参照されたい。重なり合う関係の構成の組織弁を作ることができる。次に、この組織弁を持ち上げて、除去すべき角膜組織を露出させることができ、さらに、必要な量の角膜組織を除去してから、組織弁をもとの位置に戻し、非施術角膜組織と重なり合うようにして、治療過程中、組織弁を正しい位置に保つことができる。眼科手術処置、また本発明で意図するその他の処置のためのレーザーシステムの使用は、角膜組織を除去すべき場合、非常な高精度が必要なため、特に適当である。除去すべき組織体積の直径と大体の形状とによるが、わずか約10μm厚の基質組織層の除去が1ジオプトリの変化を生じうる。直径4 mmで中心の厚さが約50 μmのレンズ形の組織体積の除去により、約4ジオプトリの屈折矯正を行うことができる。したがって、1ジオプトリ以内の精度で視力矯正を行うためには、そのときに使用する外科手術処置で10μmより小さな誤差の厚さを有する角膜組織を正確に除去することができなければならない。また、この正確さの程度は、必要な矯正総量によらず、任意の屈折矯正に適用される。
【0008】
近視の矯正には、遠視の矯正の場合とは異なった形の角膜組織体積を除去する必要がある。また、可能な矯正の限界も異なる。近視矯正の場合、基質組織の凸レンズ(lentoid)すなわちレンズ形体積が除去される。現在、約30ジオプトリまでの近視矯正が十分に期待できる。他方、遠視状態の矯正は約15ジオプトリまでしか行えない。さらに、遠視矯正の場合、除去される基質組織の体積が、中心からへりに行くにつれて厚くなる。
【0009】
眼の手術のための通常のフェムト秒レーザー装置では、切れ目切断のために割合に長い時間一般に1分程度がかかり、この時間の間、眼を一定位置に保持して、切れ目が連続で、所定の形となるようにしなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のことから、角膜の透明度に影響を与えることなく、また基質を包囲するいろいろな膜の完全性を損なうことなく、制御された仕方で角膜曲率を変えるために、高速屈折矯正眼科手術のための改良された装置が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、高速スキャナーに接続された大きな繰り返し数のフェムト秒レーザー装置を提供する。この装置においては、眼の基質に切れ目を作り出すときに微細な分割区画が与えられ、手術処置の時間がずっと短く、したがって手術中に眼が動く可能性が減少する。
【0012】
一部の実施形態においては、離散スポットが、時間的に連続するパルスが基質内で空間的に離して配置されるパターンによって生成され、局所領域の蓄積加熱および/または局所領域への衝撃が小さくなるようにされる。たとえば、ほとんどのスポットまたはすべてのスポットを、時間的に連続するパルスを配列内でのスポットのスポット-スポット間隔の少なくとも2倍の間隔を有するスポットが生成されるように使用して、生成させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下の好ましい実施形態に関する詳細な説明では、該説明の一部を成す添付の図面を参照する。これらの図面には、例として、本発明を実施しうる特定実施形態を示す。当然のことながら、他の実施形態も使用することができ、また本発明の範囲を逸脱することなく、構造を変えることができる。
【0014】
図に示されている参照番号の最初の数字は、当該要素が最初に出てきた図の番号に対応し、全体を通じて、同じ参照番号を、複数の図に現れる同一の要素を示すのに使用する。信号と接続関係とは、同じ参照番号または名称によって参照することができ、実際の意味は説明の文脈での使い方によって明らかになるであろう。
【0015】
フェムト秒レーザーパルスの使用により、レーザー誘起光放電(LIOB)スポット寸法を大きく減少させることができ、したがってより滑らかな形を得ることができる。(Juhaszほかの“CORNEAL REFRACTIVE SURGERY WITH FEMTOSECOND LASERS”、IEEE Journal of Selected Topics in Quantum Electronics、Vol.5、No.4、1999年、7月/8月号を参照されたい。) 組織への影響はプラズマ生成によって生じる。このプラズマは、十分な流束量(エネルギー/面積)を与えてしきい値に達するようにすることによって生じ、それによって焦体積(focal volume)内の組織が破壊される。これによって、非常に小さな空洞泡(cavitation bubble)が生じるが、順次に配列される多数のそのようなスポットはきわめて正確な平面または湾曲面を生成することができる。実際、通常の角膜切開刀は、切れ目を作るための密に配置されたLIOBスポットの配列によって置き換えることができ、十分に制御されたパターン配置の十分小さな集束レーザースポットにより、より滑らかな面を得ることができる。しかし、小さなスポット寸法のスポットを使用して所定領域をカバーするのには、多数のレーザーパルスが必要である。
【0016】
ナノ秒レーザーは、光切断のためのしきい流束量を実現するのに、割合に大きなエネルギー(1 mJ/パルスよりも大の程度)が必要である。したがって、大きなエネルギーは望ましくない二次効果たとえば加熱、大きな空洞泡、および/または周囲組織への衝撃波が発生する。パルス持続時間をフェムト秒領域まで減少させることにより、しきい流束量が著しく減少し、したがってまた衝撃波損傷と加熱とが著しく小さくなる。
【0017】
通常の眼科装置の場合、5000パルス/秒領域で動作するフェムト秒パルスレーザーが使用され、100,000〜300,000個以上の範囲のパルスが、それぞれの眼科切れ目切断を行うのに必要となりうる。この小さなパルス繰り返し数の場合、レーザーによる一回の切れ目切断または一連の切れ目切断の完了に1分以上の時間がかかりうる。したがって、この1分程度の時間わたる処置のために、眼を動かさないようにする何らかの手段が必要である。そのために、いろいろな技術と方法とが工夫されており、たとえば、手術時間中角膜の周縁に取りつける吸引作動リングによって眼球を保持する。その場合でも、何人かの研究者は手術中の眼の2%以下が動いてしまったという経験を報告している。そのような問題のため、複数の手術が必要になるとか、あるいは眼の正しくない領域の切断のために視力が低下するということが起こりうる。
【0018】
図1は本発明による一つの実施形態による装置100の模式図である。装置100は、レーザーシステム110とスキャナーシステム130とを有する。レーザーシステム110は、大きな繰り返し数で出力レーザーパルスを発生させる(たとえば、50,000〜1,000,000パルス/秒以上が出力されるが、実施形態によってははじめからずっと大きな繰り返し数のパルスが生成される)。これらのパルスには、パルス形状と分散に関してあらかじめ調節が行われ、走査システム130を通過すると、光がフェムト秒のパルスとなるようになっている(すなわち、本件の場合、これらのパルスは、1ピコ秒よりも短い持続時間を有するパルス、つまり約1〜約999フェムト秒の持続時間のパルスである)。一部の実施形態においては、各パルスを非常に小さな体積(たとえば、実施形態によっては、約1μm×1μm×1μm)に集束させて、フェムト秒光切断現象が生じるようにされる。短いパルス持続時間(たとえば、実施形態によっては、350フェムト秒の持続時間)と小さな焦点寸法(たとえば、5μm以下)を選択することにより、光切断体積スポット(ここでは、“スポット”と呼ぶ)の配列によって、非常に正確な面を作り出すことができる。一部の実施形態においては、各パルスのエネルギーは、レーザーシステム110を出るときに、約2 μJであり、走査システム130を通過してから、眼99に到着したとき、約1μJである。
【0019】
装置100は、患者の眼99に向う走査されたパルスレーザービーム129を生成する。一部の実施形態では、レーザーシステム110は一つ以上のセクションを有し、これらのセクションは、非常に短い光パルスの流れを初期生成させるか、またはこれらのパルスを増幅するか、または状態調節、選択(すなわち、パルスの一部を通過させ、他のパルスを除去する)し、ならびに/またはパルスの時間的および/もしくは空間的特性を整えるのに使用されるファイバー光利得媒質を有する。ファイバー光利得セクションには、一般に、レーザー光の波長よりも短い波長を有する光エネルギーが供給され、レーザー発振種の反転分布が生成されるようになっている。一部の実施形態においては、レーザーシステム110は、やはり本発明の譲受人に譲渡されたアメリカ特許第6,249,630号に開示され、特許請求されているレーザーシステムによって生成されるレーザービームの物理的特性に類似の特性を有するパルスレーザービーム127を発生させることができる。同特許の明細書を参照されたい。さらに、本発明は、数ピコ秒もの長い持続時間またはわずか数フェムト秒の短い持続時間のパルスを有する走査されたパルスレーザービーム129の使用をも意図する。
【0020】
図10に詳しく示すように、眼99の解剖学的構造には、瞳孔95、虹彩96、および強膜92の前方にある角膜98が含まれる。眼99の光軸91は、角膜98を貫通している。角膜98の組織は、可視光と近赤外光とに対して透明である。図10の頂部(角膜98の前方)から底部(角膜98の後方)に向って、角膜の組織層は、上皮981、ボウマン膜982(厚さ5〜10μm)、基質983、デスメット(Decemet)膜984(厚さ5μm)、および内皮985を含む。本発明の一部の実施形態においては、基質983がもっとも重要である。患者の視力の矯正のために除去される唯一の組織を含むからである。
【0021】
上述のように、近視、遠視、および/または乱視の矯正は、所定体積の基質組織を除去することによって達成することができる。近視の矯正のために除去すべき基質組織の体積と形状とは、それぞれの必要な矯正のタイプと程度に依存する。近視の矯正のためには、レンズ形の(凸レンズ)体積を除去する。そのような凸レンズ体積80を図1および10の断面図に示す。凸レンズ体積80は、前面88と後面87とによって定められる。前面88と後面87とが、一緒になって、除去すべき基質組織983の凸レンズ体積80を完全に包囲し、基質の残りの部分から分離する。近視矯正のための凸レンズ体積80のレンズ形を得るために、前面88を凸形とし、後面87を平面状、凸形、または凹形とすることができる。
【0022】
一部の実施形態においては、たとえばアメリカ特許第6,254,595号(2001年、7月3日付与)に記載されているような角膜無球面収差化装置を使用して、外科手術処置の少なくとも一部として角膜の前面を無球面収差とし(平坦化し)、集束レーザースポットのコマ収差および/または球面収差を小さくする。同明細書を参照されたい。さらに、この場合、前面88を無収差化レンズの平坦な接触面に平行に切断し、それから無収差化レンズを除去したとき角膜および前面88を湾曲形状に戻すことができる。
【0023】
このやり方は、LASIK処置のための組織弁を作るのに有効であるが、完了したとき角膜表面から等距離にある面に一致しない切れ目を作るために、あつらえた湾曲コンタクトレンズ(それ以外のコンタクトレンズではなく)が必要になる。
【0024】
他の実施形態においては、湾曲コンタクトレンズ1010、たとえば図10に示すようなものを、平面コンタクトレンズの代わりに使用し、角膜に対する過剰な圧力が生じないようにする。この圧力は望ましくない二次効果たとえば緑内障を発生させうるからである。これらの実施形態においては、スキャナー光学装置が、コンタクトレンズ1010と角膜98とによる複合光学効果をあらかじめ補償して、コマおよび球面収差を低下させ、あるいは排除する。さらに、ずっと良好な乱視矯正と最終結果のより良い角膜表面形とを得ることのできる三次元の形を切断することができる。注意すべきことは、レーザーパルスが短いので、その帯域幅(すなわち、色の範囲)が増大する。そのため、一部の実施形態では、スキャナーシステム130の光学装置が、光の焦点を不鮮明にする球面収差、すなわち、一部の色の焦点が近すぎる位置にでき、他の色の焦点が遠すぎる位置にできるような球面収差を補正する。
【0025】
一部の実施形態では、たとえばアメリカ特許第6,344,040号(2002年2月5日付与)に記載されている清掃装置を使用して、外科手術処置によって発生するガスおよび破片を吸引する。同特許の明細書を参照されたい。他の実施形態においては、塩水洗(saline flush)を、フリーハンドまたは走査システム130の枠に取りつけられた管によって実行する。
【0026】
一部の実施形態では、Stockほかに2001年6月19日に付与され、本件と同じ譲受人の一人に譲渡されたアメリカ特許第6,249,630号の教示内容によって、レーザーシステム110が作りつけられる。同特許の明細書を参照されたい。
【0027】
一部の実施形態では、図1において、Yb発振器111たとえば受動モード同期ファイバーレーザーが一連の光パルス(光パルスの流れ)121を生成する。一部の実施形態では、光パルスの流れ121のパルスが、波長1050 nm、帯域幅2.5 nm、パルス持続時間1.5 ps、エネルギー10 mW、パルス繰り返し数50 MHz(すなわち、50,000,000パルス/秒)、およびパルスあたりのエネルギー0.2 nJを有する。これらの実施形態における波長1050 nmに中心を有する光パルスは、赤外光(可視光は、約400 nm(青-紫)〜700 nm(赤))なので、可視光が使用された場合に比して、手術中に患者を驚かしたり、ストレスや不快感を与えたりする可能性が小さくなる。
【0028】
一部の実施形態では、パルスの流れ121が非線形ファイバー増幅器112によって増幅され、パルスの流れ122が生成される。このパルスの流れ122は、波長1050 nm、帯域幅20 nm、パルス持続時間1.5 ps、エネルギー60 mW、パルス繰り返し数50 MHz(すなわち、50,000,000パルス/秒)、およびパルスあたりのエネルギー1.2 nJを有する。
【0029】
それから、パルスの流れ122は、ファイバーパルス伸長器113によって状態調節され、パルスの流れ123が生成される。このパルスの流れは、波長1050 nm、帯域幅20 nm、パルス持続時間200 ps、エネルギー1 mW、パルス繰り返し数50 MHz(すなわち、50,000,000パルス/秒)を有する。
【0030】
一部の実施形態では、パルスの流れ123がファイバー前置増幅器114によって増幅され、パルスの流れ124が生成される。このパルスの流れは、波長1050 nm、帯域幅15 nm、パルス持続時間150 ps、エネルギー500 mW、パルス繰り返し数50 MHz(すなわち、50,000,000パルス/秒)、およびパルスあたりのエネルギー10 nJを有する。
【0031】
一部の実施形態では、減算形カウンター115(たとえば、一部の実施形態では、音響-光モジュレータ)によって、パルスの流れ124が減数され(すなわち、選択されたパルス以外は除去される)、パルスの流れ125が生成される。このパルスの流れは、波長1050 nm、帯域幅15 nm、パルス持続時間150 ps、エネルギー0.7 mW、およびパルス繰り返し数200 kHz(すなわち、200,000パルス/秒)を有する。
【0032】
一部の実施形態においては、パルスの流れ125が、ファイバー電力増幅器116によって増幅され、パルスの流れ126が生成される。このパルスの流れは、波長1050 nm、帯域幅10 nm、パルス持続時間100 ps、エネルギー800 mW、およびパルス繰り返し数200 kHz(すなわち、200,000パルス/秒)を有する。
【0033】
一部の実施形態においては、パルスの流れ126が、格子圧縮器117によってあらかじめ状態調節され、パルスの流れ127が生成される。このパルスの流れは、波長1050 nm、帯域幅10 nm、パルス持続時間350 fs、エネルギー400 mW、パルス繰り返し数200 kHz(すなわち、200,000パルス/秒)、およびパルスあたりのエネルギー2.0 μJを有する。格子圧縮器117はファイバーパルス伸長器113とレーザーシステム110に内蔵されているその他の光学装置とによる伸長パルスを再圧縮するばかりでなく、スキャナーシステム130を通る光路の分散に対してあらかじめ圧縮を与える(同じ大きさで反対符号の分散を与える)。
【0034】
一部の実施形態では、スキャナーシステム130とレーザーシステム110とが、外から見ると単一の統合ユニットとしてまとめられている。
【0035】
一部の実施形態では、スキャナーシステム130は、入力光路131(たとえば、光ファイバー)、および3D走査パターン128を生成するためにコンピュータ135によって制御されるX-Y(二次元)またはX-Y-Z(三次元)スキャナー132を有し、該スキャナーは、光が眼安定化および光インタフェース133の光インタフェース部分を通過したあと、必要なスポットパターンを生成させる。また、スキャナー132は、補償光学装置をも有し、該装置は、スキャナー132内の光路ならびに眼安定化および光インタフェース133内の光路において作用して、角膜98の基質内に十分に集束したスポットを生成する。
【0036】
一部の実施形態では、コンピュータ135は、各パルスのタイミングを制御する制御信号136をも出力する。たとえば、スキャナー132の走査機構を動かすのにわずかに長い時間が必要な場合、対応するパルスを、制御信号136によって必要な時間まで遅らせることができる。
【0037】
一部の実施形態では、ここでフェムト秒薄層角膜移植(FLK)と呼ぶ手術処置が実行される。FLKでは、離散光切断スポットの配列を使用して、レンズ形の組織ブロック(“微小レンズ”)が定められ、このブロックは、側部切れ目を通して基質から除去されるか、または折り返された組織弁によって露出される基質の表面から除去される。微小角膜切開刀を使用する従来の方法は、“自動表層角膜移植”またはALKと呼ばれている。フェムト秒光切断による正確さと柔軟性とにより、FLKは、LASIKと直接競合してこれにまさるものとなることができる。この方法においては、多くの変形が可能である。第一の切れ目87(平坦、凸、または凹)が角膜内部に形成され、これが微小レンズの後面を定める。第二の切れ目88(通常、凸)が微小レンズ前面を定めるように形成される。この切れ目はスリット89を形成するように延ばすことができ、あるいは周縁に沿ってさらに延ばして組織弁が形成されるようにし、より完全なアクセスが可能になるようにすることができる。スリットを通して、または組織弁を持ち上げたあと、微小レンズを手動器具で除去することができる。それから組織弁をもとの位置に戻すと、角膜は新たな形状となり、直接の屈折矯正が行われる。
【0038】
図2は、本発明の一部の実施形態によるスポット配列の走査パターン200の平面図である。この実施形態の場合、隣接走査パターン200がらせんを形成し、時間的に連続する各レーザーパルスは直前のスポットに隣接するスポットとなる。参照番号1〜22はスポットが形成される時間順序を示す。その他の類似の実施形態では、デカルト座標(直交座標)による走査パターンを使用する(すなわち、各隣接X値はYライン全長にわたる時間的に連続するパルスから成り、一つの走査のあと、隣接する次のYラインが走査される(順次走査TVパターンの形式と同じ))。これらの順次走査パターンは、眼の小さな動きが予想されうる場合には、有利である。というのは、隣接スポット間で、眼の動きによる高さの変化は非常に小さく、また隣接ライン間での変化も重大ではないからである。しかし、短時間に小さな領域内に多数のスポットが形成されることによる熱の蓄積により、欠陥が発生しうる。
【0039】
図3は、スポット配列の走査パターン300の平面図である。飛び移り走査パターン300では、連続レーザーパルスが空間的に離れたスポットを形成する。すなわち、連続パルスは、X方向とY方向とのどちらにおいても、空間的に離れたスポット位置を走査し、この操作において、後続パルスはあとで中間のスポットを与える。この実施形態においても、参照番号1〜22はスポットが形成される時間的順序を示す。左下のスポット1が形成されたあと、二つのスポット位置がとばされ、スポット2が三つ先の右下に隣接するスポット位置に形成される。次に、スポット3が中央線の左に形成され、スポット4が中央付近に、スポット5が右側に形成される。注意すべきことは、各スポットが、前に形成されたスポットから最終の空間的スポット-スポット間隔の何倍(>1倍)かの最小距離だけ移動する、ということである。この例の場合、スポット8とスポット15とは、スポット1とスポット2との間に配置されているが、ずっとあとに形成される(たとえば、それぞれ頂部ライン上のスポット7および14のあとに)。他の実施形態においては、時間的に連続するパルスに対して他の空間的間隔、たとえば10スポット、20スポット、50スポット、100スポット、その他の値が使用される。たとえば、一部の実施形態では、たとえば500スポット×500スポットのデカルト格子上で100スポット間隔が使用される。ここで、ライン1上に、1番目、101番目、201番目、301番目、および401番目のスポットが形成され、次に、ライン101上に、1番目、101番目、201番目、301番目、および401番目のスポットが形成され、次に、ライン201上に、1番目、101番目、201番目、301番目、および401番目のスポットが形成され、以下同様であり、時間的に連続するスポット間の最小空間距離が最終最小スポット-スポット間隔の100倍となるようにされる。次のパスでは、ライン1上に2番目、102番目、202番目、302番目、および402番目のスポットが形成され、次に、ライン101上に、2番目、102番目、202番目、302番目、および402番目のスポットが形成され、以下同様であり、必要な切れ目を形成する500×500スポットの全体が形成される。切断プロセスを大きくスピードアップする本発明により、以上のようなスポット飛び移りプロセスが可能になる。というのは、一部の実施形態における1〜2秒程度以下の短い手術時間中には、ずっと小さい眼の運動しか起こりえないからである。
【0040】
図4A〜6Aおよび4B〜6Bは、LASIKに似た方法を示す。
【0041】
図4Aは、組織弁切れ目77形成後の眼99の横断面図である。
【0042】
図4Bは、図4Aの眼99の前面図である。眼99は、強膜92、角膜98、基質97、虹彩96、瞳孔95、水晶体94、および毛様体(lens muscle)93を有し、また光軸91を有している。切れ目77は、たとえば、角膜表面に平行であり、部分弧(たとえば、一部の実施形態では、光軸上に中心をおく270〜315゜の弧)状に延びる切れ目76を有する表面まで延びて、ヒンジ74を残している。一部の実施形態では、基準マーク76が、たとえば組織弁75と周囲の角膜組織との両方に小さな表面下切れ目として形成され、組織弁を、あとでその取りつけ位置に戻したときより良く合わせられるように、再配置することができるようにされる。
【0043】
図5Aは、微小レンズ後面切れ目78形成後の眼99の横断面図である。図5Bは、図5Aの眼99の前面図である。組織弁75は折り返されている。一部の実施形態では、通常のエキシマーレーザー切断が、LASIK法のやり方で実施され、露出基質の表面が切除される。他の実施形態では、微小レンズ70が追加のFSK切断78によって形成される。一部の実施形態では、切れ目78が図4Aの切れ目77の前に形成される(たとえば、図7Aおよび7Bに示すようなものであるが、表面までの切れ目ではなく組織弁を有する)。一部の実施形態では、微小レンズ70が機械的に除去される(たとえば、鉗子でつかむか、または小さな噴射口からの塩水流によって洗い流す)。
【0044】
図6Aは、組織弁をもとに戻したあとの眼99の横断面図である。図6Bは、図6Aの眼99の前面図である。微小レンズ70が除去されて、手術領域の上方の角膜98の表面が変形して、視覚焦点が補正され、視力が改善されている。
【0045】
図7A〜9Aおよび7B〜9Bは、FLK法を示す。
【0046】
図7Aは、二つの微小レンズ切れ目形成後の眼99の横断面図である。図7Bは、図7Aの眼99の前面図である。この実施形態の場合、後面切れ目87と前面切れ目88とが形成されて、周縁86を有する微小レンズ80が定められ、またアクセススリット89が角膜表面を通るように形成されて、微小レンズ80につながっている。
【0047】
図8Aは、微小レンズ80が除去されるときの眼99の横断面図である。図8Bは図8Aの眼99の前面図である。一部の実施形態では、微小レンズ80は機械的に除去される(たとえば、鉗子801でつかむか、または小さな噴射口からの塩水流によって洗い流す)。
【0048】
図9Aは、角膜表面がもとに戻されたあとの眼99の横断面図である。図9Bは、図9Aの眼99の前面図である。微小レンズ80が除去されて、手術領域の上方の角膜98の表面が変形して、視覚焦点が補正され、視力が改善されている。
【0049】
図10は、眼インタフェース1000と眼99との横断面図であり、一部の実施形態で使用される図1の通常の眼安定化および光インタフェース装置133の詳細を示す。眼99の解剖学的構造は、図1に関して前述したように、瞳孔95、虹彩96、および強膜92の前方に角膜98を含んでいる。眼99の光軸91は、角膜98を貫通している。角膜98は、上皮981、ボウマン膜982、基質983、デスメット膜984、および内皮985から成る五つの組織層を含む。一部の実施形態では、吸引リング1016が、支持体1014の端に、強膜92に接するように配置されて、チャンバー1017につながる管1015によって軽い真空が作られ、眼99が一定位置に保持される。一部の実施形態では、作動器1012が使い捨てコンタクトレンズ1010を動かして、角膜98の前部表面に接触させる。一部の実施形態では、コンタクトレンズ1010の屈折率が角膜98の屈折率に一致するようにされ、レンズ1010の前面1011だけが光束129の向きまたは焦点を変えるようにする。このようにすることにより、図1のコンピュータ135はより簡単に計算されるやり方でスキャナー132を制御することができる。というのは、コンタクトレンズ1010の前面1011の形状によってしか光の向きが変えられないからである。一部の実施形態では、網膜全体にわたるいろいろな位置に光を集束させることによって、眼の屈折を、コンタクトレンズ1010の取りつけ前の状態と取りつけた状態とで検査し、必要な矯正の大きさとタイプとを明らかにし、切断すべき微小レンズ80の寸法と形状とを計算する。一部の実施形態では、レーザービーム129の走査によりビーム129を動かして、時間的に連続するパルスを空間的に離れたスポット位置に集束させる(たとえば、微小レンズ後面の切れ目87上の空間スポット1、2、3、4、5、6、7、8、および9は最終の最小スポット-スポット間隔よりも大きく、あとから形成される微小レンズ80の前面の切れ目88上の空間スポット11、12、13、14、15、16、17、18、および19も同様である)。一部の実施形態では、切れ目切断が完了すると(たとえば、1〜2秒以下で)、コンタクトレンズ1010が引き離され、微小レンズ80がアクセススリット89を通して機械的に取り出される。一部実施形態では、スリット89は、かみ合い構成になっていて、あるしきい値の大きさの力によって強制されない限り開かず、手術後の治療過程がより良く進行するようになっている。
【0050】
パルス繰り返し数について説明する。
【0051】
本発明では、小さい繰り返し数(たとえば、数kHz)のレーザーを使用しないで、約50 kHz〜1 MHz以上の繰り返し数で動作するレーザーシステム110を使用する。一部の実施形態では、パルス繰り返し数は調節できるように設計される。一部の実施形態では、レーザーシステム110がツァイスの光走査システム130と組み合わされ、レーザーセクションのパルス繰り返し数が200 kHzに設定される。一部の実施形態では、レーザーシステム110のエネルギーは小さい繰り返し数レーザーの場合に使用されるものよりも小さい(一部の実施形態では、レーザーシステム110を出るパルスのエネルギーは2 μJである)が、これで実用に十分である。大きな繰り返し数と大きな走査速度とは、切断がずっと高速で実効できるということを意味する。これは、切断時間が長いほど、眼を長く静止させておかなければならない(あるいは、追跡しなければならないが、それもやはり難しい)ので、重要である。小さい繰り返し数レーザーの場合、切断時間を短縮するためには、より大きな領域(より大きなスポット寸法)を一度に切断する必要がある。これは、レーザーシステム110よりも大きなパルスエネルギーを有するためであるが、本発明の方法に比して、粗い切断となり、より大きな音響衝撃と熱損傷とが与えられ、これは治りにくく、また正確な屈折矯正が得られない。したがって、非常な高速で多数の小スポットを与えるシステム100は、同程度の時間でより少ない大スポットを与える方法にまさっている。
【0052】
注意すべきことは、大きな繰り返し数レーザーシステム110が使用できるのは、光走査システム130(一部の実施形態では、ツァイス製)が非常に高速のスキャナーを有し、該スキャナーが、200 kHzで、必要なパターン内にスポットを配置するのに十分な速さで光束により眼を走査できる場合だけである、ということである。
【0053】
レーザーは高速かつ正確にオン・オフでき(減算カウンター115を、たとえばコンピュータ135の制御下で使用して)、スキャナー132は高速で動くことができるので、使用者は、眼に他のシステムでは実現できない独自のラスターパターン(たとえば、時間的に連続するパルスから空間的に離れたスポットを得る)を定めることができる。たとえば、各連続パルスが先行の第一のスポットからある距離にある次の第二のスポットに集束させられ、その後の時刻のパルスが第一のスポットと第二のスポットとの間の他のスポットに集束させられるようなパターンである。これらのパターンは、隣り合うスポットを順次暴露で切断することによる熱損傷を減少させるために使用することができ、あるいは新たなやり方での角膜整形を可能にする独特の視力矯正パターンの創出を可能にしうる。
【0054】
先行圧縮について説明する。
【0055】
フェムト秒パルスは、光路(たとえば、走査システム130内の)に沿って光ファイバー、レンズ、その他の要素を通過するので、ひずんでいる(分散による)。したがって、眼99で切断を行うために使用できる光のパルスは、レーザーシステムから出てくるパルスと同じではない。これら二つの点の間での複雑な光学システムによる分散のためである。一部の実施形態では、眼99において約350 fsのパルスが必要であるので、レーザーシステム110の出口において、すべての光学装置を通過したあと、眼内の焦点で前記持続時間を有するパルス(流れ127)を生成させる必要がある。これは、たとえばレーザーシステム99の最終段(先行状態調節格子圧縮器117)で、パルスの先行圧縮によって実現される。他の実施形態の場合、先行状態調節がはじめに行われ、レーザーシステム110内の後段で調整される。レーザーの出力として350 fsパルスを生成させるのに使用される通常の格子圧縮器の代わりに、パルスに二次分散を加える圧縮器が使用される。この二次分散は、眼に到達する光学システムの二次分散を正確に補償するものである。ツァイスの走査システム130を使用する一部の実施形態では、この先行圧縮は−2×104 fs-2である。
【0056】
やはり注意すべきことは、光エネルギーはシステム全体で散逸するので、レーザー装置におけるパルスエネルギーが2 μJである場合でも、これが眼に達したときにはかなり大きく減少する(一部の実施形態では、約1 μJ以下)、ということである。この切断エネルギーはプロセス全体に対しても重要である。エネルギーが小さすぎると、LIOBのためのしきい値に達しないので、切断が起こらず、エネルギーが大きすぎると、周囲の組織に対する熱損傷または大きなスポットを生じうる。
【0057】
本発明の一部の実施形態では、50000パルス/秒よりも大きなパルス繰り返し数と1ピコ秒よりも小さなパルスあたりの長さとを有するパルスレーザーシステム110を有する装置であって、該パルスレーザーシステムからのレーザー光を受けとるために機能的に接続され、10秒よりも短い時間内に少なくとも100000パルスを使用して外科手術処置のために組織を切断するのに適当な出力光パターンを走査するように作動させることのできる走査ヘッドを備えた光路を有する装置が提供される。一部の実施形態では、パルスレーザーシステム110は一つ以上のファイバー光利得媒質セクションを有する。
【0058】
一部の実施形態では、外科処置は眼科外科手術における完全な表面切れ目切断であり、この切れ目は、少なくとも一部が角膜基質内にある面を定める。
【0059】
一部の実施形態では、外科処置で、5秒よりも短い時間内に少なくとも500000パルスを使用する。
【0060】
一部の実施形態では、外科処置で、4秒よりも短い時間内に少なくとも500000パルスを使用する。
【0061】
一部の実施形態では、外科処置で、3秒よりも短い時間内に少なくとも500000パルスを使用する。
【0062】
一部の実施形態では、外科処置で、2秒よりも短い時間内に少なくとも500000パルスを使用する。
【0063】
一部の実施形態では、外科処置で、1秒以下の時間内に少なくとも500000パルスを使用する。
【0064】
一部の実施形態では、外科処置で、1/2秒以下の時間内に少なくとも500000パルスを使用する。
【0065】
一部の実施形態では、外科処置で、1/4秒以下の時間内に少なくとも500000パルスを使用する。
【0066】
一部の実施形態では、外科処置で、5秒よりも短い時間内に少なくとも400000パルスを使用する。
【0067】
一部の実施形態では、外科処置で、4秒よりも短い時間内に少なくとも400000パルスを使用する。
【0068】
一部の実施形態では、外科処置で、3秒よりも短い時間内に少なくとも400000パルスを使用する。
【0069】
一部の実施形態では、外科処置で、2秒よりも短い時間内に少なくとも400000パルスを使用する。
【0070】
一部の実施形態では、外科処置で、1秒よりも短い時間内に少なくとも400000パルスを使用する。
【0071】
一部の実施形態では、外科処置で、5秒よりも短い時間内に少なくとも300000パルスを使用する。
【0072】
一部の実施形態では、外科処置で、4秒よりも短い時間内に少なくとも300000パルスを使用する。
【0073】
一部の実施形態では、外科処置で、3秒よりも短い時間内に少なくとも300000パルスを使用する。
【0074】
一部の実施形態では、外科処置で、2秒よりも短い時間内に少なくとも300000パルスを使用する。
【0075】
一部の実施形態では、外科処置で、1秒よりも短い時間内に少なくとも300000パルスを使用する。
【0076】
一部の実施形態では、外科処置で、5秒よりも短い時間内に少なくとも200000パルスを使用する。
【0077】
一部の実施形態では、外科処置で、4秒よりも短い時間内に少なくとも200000パルスを使用する。
【0078】
一部の実施形態では、外科処置で、3秒よりも短い時間内に少なくとも200000パルスを使用する。
【0079】
一部の実施形態では、外科処置で、2秒よりも短い時間内に少なくとも200000パルスを使用する。
【0080】
一部の実施形態では、外科処置で、1秒よりも短い時間内に少なくとも200000パルスを使用する。
【0081】
一部の実施形態では、外科処置で、5秒よりも短い時間内に少なくとも100000パルスを使用する。
【0082】
一部の実施形態では、外科処置で、4秒よりも短い時間内に少なくとも100000パルスを使用する。
【0083】
一部の実施形態では、外科処置で、3秒よりも短い時間内に少なくとも100000パルスを使用する。
【0084】
一部の実施形態では、外科処置で、2秒よりも短い時間内に少なくとも100000パルスを使用する。
【0085】
一部の実施形態では、外科処置で、1秒よりも短い時間内に少なくとも100000パルスを使用する。
【0086】
一部の実施形態では、外科処置で、1/2秒以下の時間内に少なくとも100000パルスを使用する。
【0087】
一部の実施形態では、外科処置で、5秒よりも短い時間内に少なくとも50000パルスを使用する。
【0088】
一部の実施形態では、外科処置で、4秒よりも短い時間内に少なくとも50000パルスを使用する。
【0089】
一部の実施形態では、外科処置で、3秒よりも短い時間内に少なくとも50000パルスを使用する。
【0090】
一部の実施形態では、外科処置で、2秒よりも短い時間内に少なくとも50000パルスを使用する。
【0091】
一部の実施形態では、外科処置で、1秒よりも短い時間内に少なくとも50000パルスを使用する。
【0092】
一部の実施形態では、外科処置で、1/2秒以下の時間内に少なくとも50000パルスを使用する。
【0093】
一部の実施形態では、外科処置で、1/4秒以下の時間内に少なくとも25000パルスを使用する。
【0094】
一部の実施形態では、外科処置で、1/4秒以下の時間内に少なくとも50000パルスを使用する。
【0095】
一部の実施形態では、外科処置で、1/4秒以下の時間内に少なくとも100000パルスを使用する。
【0096】
一部の実施形態では、外科手術処置は、角膜基質内に微小レンズの後面を定める第一の切れ目、微小レンズの前面を定める第二の切れ目、および角膜表面まで延びるスリット切れ目を形成し、これら三つの切れ目の切断は5秒以内に完了する。一部のこのような実施形態では、スリット切れ目は、微小レンズの中心に対する角度が180゜よりも小さな弧を形成あるいは張る。
【0097】
一部の実施形態では、外科手術処置は、角膜組織弁の後面を定める第一の切れ目を形成する。この組織弁は、折り返して、基質面を露出させ、この露出基質面に対して通常のLASIK手術が実施できる。この第一の切れ目の切断は2秒以内に完了する。
【0098】
一部の実施形態では、さらに、各パルスに負の分散を作り出す先行圧縮器を備えており、この負の分散は先行圧縮器後の光路での分散を補償する。
【0099】
一部の実施形態では、走査ヘッドが少なくとも100000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが999フェムト秒よりも短い。
【0100】
一部の実施形態では、走査ヘッドが少なくとも100000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが750フェムト秒よりも短い。
【0101】
一部の実施形態では、走査ヘッドが少なくとも100000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが500フェムト秒よりも短い。
【0102】
一部の実施形態では、走査ヘッドが少なくとも100000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが400フェムト秒よりも短い。
【0103】
一部の実施形態では、走査ヘッドが少なくとも100000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが350フェムト秒以下である。
【0104】
一部の実施形態では、走査ヘッドが少なくとも200000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが999フェムト秒よりも短い。
【0105】
一部の実施形態では、走査ヘッドが少なくとも200000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが750フェムト秒よりも短い。
【0106】
一部の実施形態では、走査ヘッドが少なくとも200000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが500フェムト秒よりも短い。
【0107】
一部の実施形態では、走査ヘッドが少なくとも200000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが400フェムト秒よりも短い。
【0108】
一部の実施形態では、走査ヘッドが少なくとも200000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが350フェムト秒以下である。
【0109】
一部の実施形態では、走査ヘッドが200000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが350フェムト秒である。
【0110】
一部の実施形態では、走査ヘッドが200000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが約500フェムト秒である。
【0111】
一部の実施形態では、走査ヘッドが200000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが約450フェムト秒である。
【0112】
一部の実施形態では、走査ヘッドが200000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが約400フェムト秒である。
【0113】
一部の実施形態では、走査ヘッドが200000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが約350フェムト秒である。
【0114】
一部の実施形態では、走査ヘッドが200000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが約300フェムト秒である。
【0115】
一部の実施形態では、走査ヘッドが200000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが約250フェムト秒である。
【0116】
一部の実施形態では、走査ヘッドが200000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが約200フェムト秒である。
【0117】
一部の実施形態では、走査ヘッドが少なくとも200000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが約150フェムト秒である。
【0118】
一部の実施形態では、走査ヘッドが少なくとも200000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが約100フェムト秒である。
【0119】
一部の実施形態では、走査ヘッドが少なくとも200000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが約50フェムト秒である。
【0120】
一部の実施形態では、走査ヘッドが少なくとも500000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが999フェムト秒よりも短い。
【0121】
一部の実施形態では、走査ヘッドが少なくとも500000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが750フェムト秒よりも短い。
【0122】
一部の実施形態では、走査ヘッドが少なくとも500000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが500フェムト秒よりも短い。
【0123】
一部の実施形態では、走査ヘッドが少なくとも500000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが400フェムト秒よりも短い。
【0124】
一部の実施形態では、走査ヘッドが少なくとも500000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが350フェムト秒以下である。
【0125】
一部の実施形態では、走査ヘッドが少なくとも1000000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが999フェムト秒よりも短い。
【0126】
一部の実施形態では、走査ヘッドが少なくとも1000000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが750フェムト秒よりも短い。
【0127】
一部の実施形態では、走査ヘッドが少なくとも1000000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが500フェムト秒よりも短い。
【0128】
一部の実施形態では、走査ヘッドが少なくとも1000000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが400フェムト秒よりも短い。
【0129】
一部の実施形態では、走査ヘッドが少なくとも1000000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが350フェムト秒以下である。
【0130】
本発明のその他の実施形態には、少なくとも約50000パルス/秒のパルス繰り返し数と1ピコ秒よりも小のパルスあたりの長さとを有するパルスの流れを生成させ、10秒よりも短い時間内に少なくとも100000パルスを使用して、外科手術処置のために組織を切断するのに適した出力光パターンを走査しながら、前記パルスの流れを該パターンに集束させることを含む方法が含まれる。一部の実施形態では、パルスの流れは、一つ以上のファイバー光利得媒質セクションを備えたパルスレーザー装置によって生成される。
【0131】
本発明の方法の一部の実施形態では、外科手術処置は、眼科手術処置における完全な表面切れ目切断であり、この切れ目が、少なくとも一部が角膜基質内にある面を定める。
【0132】
本発明の方法の一部の実施形態では、走査と集束に少なくとも200000パルスを使用して、5秒よりも短い時間内に完了する少なくとも一つの切れ目切断を行う。
【0133】
本発明の方法の一部の実施形態では、走査と集束に少なくとも200000パルスを使用して、2秒よりも短い時間内に完了する少なくとも一つの切れ目切断を行う。
【0134】
本発明の方法の一部の実施形態では、走査と集束とは、角膜基質内に微小レンズの後面を定める第一の切れ目、微小レンズの前面を定める第二の切れ目、および角膜表面まで延びるスリット切れ目を形成し、これら三つの切れ目の切断は5秒以内に完了する。一部のこのような実施形態では、スリット切れ目は、微小レンズの中心に対する角度が180゜よりも小さな弧を形成あるいは張る。
【0135】
本発明の方法の一部の実施形態では、外科手術処置は、角膜組織弁の後面を定める第一の切れ目を形成する。この組織弁は、折り返して、基質面を露出させ、この露出基質面に対して通常のLASIK手術が実施できる。この第一の切れ目の切断は2秒以内に完了する。
【0136】
本発明の方法の一部の実施形態では、さらに、各パルスを先行圧縮して負の分散を作り出し、この負の分散は先行圧縮器後の光路での分散を補償する。
【0137】
本発明の方法の一部の実施形態では、走査と集束とにおいて、少なくとも100000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが500フェムト秒よりも短い。
【0138】
本発明の方法の一部の実施形態では、走査と集束とにおいて、少なくとも約200000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが400フェムト秒よりも短い。
【0139】
本発明の方法の一部の実施形態では、走査と集束とにおいて、200000パルス/秒を集束させ、パルスあたりの長さが350フェムト秒である。
【0140】
当然のことながら、以上の説明は例示のためのものであり、本発明を限定するものではない。前記説明を検討すれば、当業者には、多くの他の実施形態が明らかになるであろう。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって決定され、これに当てはまる範囲のすべての均等物が本発明に含まれる。特許請求の範囲において、“including”および“in which”という言葉は、それぞれ“comprising”および“wherein”という言葉の平易な同意英語として使用する。また、“第一”、“第二”、“第三”、その他の言葉は、単に標識として使用するだけであり、それらの対象に数的要件を課するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】本発明の一つの実施形態による装置100の模式図である。
【図2】スポット配列の走査パターン200の平面図である。
【図3】スポット配列の走査パターン300の平面図である。
【図4A】組織弁切れ目77形成後の眼99の横断面図である。
【図4B】図4Aの眼99の前面図である。
【図5A】レンズ形切れ目後面78形成後の眼99の横断面図である。
【図5B】図5Aの眼99の前面図である。
【図6A】組織弁がもとに戻されたあとの眼99の横断面図である。
【図6B】図6Aの眼99の前面図である。
【図7A】二つのレンズ形切れ目形成後の眼99の横断面図である。
【図7B】図7Aの眼99の前面図である。
【図8A】レンズ80が除去されるときの眼99の横断面図である。
【図8B】図8Aの眼99の前面図である。
【図9A】角膜表面層がもとに戻されたあとの、眼99の横断面図である。
【図9B】図9Aの眼99の前面図である。
【図10】図1の眼99の横断面図であるが、詳細を示す図である。
【符号の説明】
【0142】
1〜22 スポットとそれが形成される時間順序
70 微小レンズ
74 ヒンジ
75 組織弁
76 切れ目
77 組織弁切れ目
78 切れ目
80 微小レンズ
81 上皮
86 周縁
87 第一の切れ目(80の後面)
88 第二の切れ目(80の前面)
89 スリット
91 光軸
92 強膜
93 毛様体
94 水晶体
95 瞳孔
96 虹彩
97 基質
98 角膜
99 眼
100 本発明の装置
110 レーザーシステム
111 Yb発振器
112 非線形ファイバー増幅器
113 ファイバーパルス伸長器
114 ファイバー前置増幅器
115 減算形カウンター
116 ファイバー電力増幅器
117 格子圧縮器
121 光パルスの流れ
122 パルスの流れ
123 パルスの流れ
124 パルスの流れ
125 パルスの流れ
126 パルスの流れ
127 パルスの流れ
128 3D走査パターン
129 走査されたパルスレーザービーム
130 スキャナーシステム
131 入力光路
132 スキャナー
133 光インタフェース装置
135 コンピュータ
136 制御信号
200 スポット配列の走査パターン
300 スポット配列の走査パターン
801 鉗子
981 上皮
982 ボウマン膜
983 基質
984 デスメット膜
985 内皮
1000 眼インタフェース
1010 使い捨てコンタクトレンズ
1011 1010の前面
1012 作動器
1014 支持体
1015 管
1016 吸引リング
1017 チャンバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイバー光利得媒質を有し、100000パルス/秒よりも大きなパルス繰り返し数と数ピコ秒よりも短いパルスあたりの長さを与えるパルスレーザー装置、
前記パルスレーザー装置からのレーザー光を受け取るために操作できるように接続され、10秒よりも短い時間内に少なくとも100000パルスを使用して、外科手術処置のために組織を切断するのに適した出力光パターンを走査するために操作することのできる走査ヘッドを有する光路、
から成ることを特徴とする装置。
【請求項2】
パルスあたりの長さが10ピコ秒よりも短いことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
外科手術処置が眼科手術処置の完全な表面切断であり、該切断が少なくとも一部が角膜基質内にある表面を定めることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項4】
外科手術処置が5秒よりも短い時間内に少なくとも200000パルスを使用することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
外科手術処置が2秒よりも短い時間内に少なくとも200000パルスを使用することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】
外科手術処置が、角膜基質内の微小レンズの後面を定める第一の切断、微小レンズの前面を定める第二の切断、および角膜表面まで延びるスリット切断から成り、これら三つの切断が5秒以内に完了することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】
当該スリット切断により弧が形成され、該弧が微小レンズの中心に対して180゜よりも小さな角を張ることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
外科手術処置が、角膜組織弁の後面を定める第一の切断を含み、該組織弁を折り返して基質面を露出させ、該露出基質面に対する通常のLASIK手術を実施することができ、ここでこの第一の切断が2秒以内に完了することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】
さらに先行圧縮器を有し、該圧縮器が各パルスに関して負の分散を発生させ、該分散が前記先行圧縮器後の光路の分散を補償することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項10】
走査ヘッドが1秒あたり少なくとも100000パルスを集束させ、パルスあたりの長さが500フェムト秒よりも短いことを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項11】
走査ヘッドが1秒あたり少なくとも約200000パルスを収束させ、パルスあたりの長さが400フェムト秒よりも短いことを特徴とする請求項1に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−120858(P2012−120858A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−19999(P2012−19999)
【出願日】平成24年2月1日(2012.2.1)
【分割の表示】特願2006−508418(P2006−508418)の分割
【原出願日】平成16年5月28日(2004.5.28)
【出願人】(505444983)
【出願人】(505444994)イムラ アメリカ, インク. (2)
【Fターム(参考)】