説明

フェライト粒子並びにそれを用いた電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤

【課題】高磁気特性を有するのみならず高い強度をも有するフェライト粒子を提供する。
【解決手段】組成式MnFe3−X(但し、0≦X<1)で表される材料を主成分とし、Si元素とAl元素とを含有するフェライト粒子であって、エネルギー分散型X線分析によるFe元素に対するSi元素のピーク強度比が1.0×10−3〜1.5×10−1の範囲で、Fe元素に対するAl元素のピーク強度比が8.0×10−4〜6.0×10−3の範囲であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフェライト粒子並びにそれを用いた電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の高機能化に伴って、これらの機器の部品又は部品材料として使用されるフェライト粒子についても、高抵抗化や磁気特性の向上に加えて高強度化が求められている。
【0003】
例えば、電子写真方式を用いたファクシミリやプリンタ、複写機などの画像形成装置では、フェライト粒子の表面を絶縁性樹脂で被覆したいわゆるコーティングキャリアとトナーとを混合した二成分系現像剤によって、感光体表面に形成された静電潜像を可視像化している。
【0004】
近年、画像形成装置における画像形成速度の高速化及び高画質化の市場要求に対応するため、現像装置の現像スリーブや撹拌部材の回転速度を速めて、静電潜像への現像剤の供給量及びトナーの帯電速度を速めている。
【0005】
現像スリーブや撹拌部材の回転速度を速めると、コーティングキャリア同士の衝突や、コーティングキャリアと現像装置内壁面との間の摩擦などが激しくなるため、コーティングキャリアの芯材に欠けや割れが発生しやすくなる。欠けや割れが生じたコーティングキャリアは飛散して感光体に付着し画質低下の原因の一つとなっていた。
【0006】
そこで、例えば特許文献1では、キャリア芯材の強度を高めるため、フェライト原料を粉砕、混合、ペレット化した後、900〜1200℃で仮焼成し、次いで、粉砕、スラリー化し、スラリーの粒径D50およびD90を小さくした後、1150〜1230℃で本焼成して電子写真用キャリア芯材を製造する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-271663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記提案の製造方法では、キャリア芯材の製造工程での焼成温度、焼成雰囲気、原料組成などによって結晶粒界の成長が大きく異なるため、得られるキャリア芯材の粒子強度は必ずしも満足できるものではなかった。
【0009】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、高磁気特性を有するのみならず高い強度をも有するMn系フェライト粒子を提供することにある。
【0010】
また本発明の目的は、画像形成速度の高速化及び高画質化に対応し得る電子写真用のキャリア及び現像剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成する本発明に係るフェライト粒子は、組成式MnFe3−X(但し、0≦X<1)で表される材料を主成分とし、Si元素とAl元素とを含有するフェライト粒子であって、エネルギー分散型X線分析によるFe元素に対するSi元素のピーク強度比が1.0×10−3〜1.5×10−1の範囲で、Fe元素に対するAl元素のピーク強度比が8.0×10−4〜6.0×10−3の範囲であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明によれば、前記記載のフェライト粒子の表面を樹脂で被覆したことを特徴とする電子写真現像用キャリアが提供される。
【0013】
さらに、本発明によれば、前記記載の電子写真現像用キャリアとトナーとを含むことを特徴とする電子写真用現像剤が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るフェライト粒子によれば、磁気特性の低下を抑制しながら粒子強度を向上させることができる。
【0015】
また、本発明のフェライト粒子を用いた画像形成装置の電子写真現像用キャリアでは、高速化及び高画質化が達成される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者等は、高い磁気特性を有しながら高い強度をも有するMn系フェライト粒子を得るべく種々検討を行った結果、Si元素を添加すると、フェライト粒子の強度は向上するものの製造工程における焼結反応が抑えられること、一方Al元素を添加すると、焼結反応は促進されるものの飽和磁化などの磁気特性が低下することを見出した。そこで、Si元素とAl元素とを所定の割合で添加することによって、フェライト粒子の磁気特性を低下を抑制しながら強度を向上させることができることを見出し本発明をなすに至った。
【0017】
すなわち、本発明に係るフェライト粒子の大きな特徴は、組成式MnFe3−X(但し、0≦X<1)で表される材料を主成分とし、Si元素とAl元素とを含有すると共に、エネルギー分散型X線分析によるFe元素に対するSi元素のピーク強度比を1.0×10−3〜1.5×10−1の範囲とし、Fe元素に対するAl元素のピーク強度比を8.0×10−4〜6.0×10−3の範囲としたことにある。
【0018】
Fe元素に対するSi元素のエネルギー分散型X線分析によるピーク強度比が1.0×10−3より小さいと、フェライト粒子の強度が充分に向上しないことがある。一方、Fe元素に対するSi元素のピーク強度比が1.5×10−1より大きいと、フェライト粒子の製造工程における焼結反応が抑制され磁気特性が低下することがある。Fe元素に対するSi元素のより好ましいピーク強度比は2.8×10−3〜7.2×10−2の範囲である。
【0019】
また、Fe元素に対するAl元素のエネルギー分散型X線分析によるピーク強度比が8.0×10−4より小さいと、フェライト粒子の製造工程における焼結反応の促進が図れないことがある。一方、Fe元素に対するAl元素のピーク強度比が6.0×10−3より大きいと、フェライト粒子の磁気特性が低下することがある。Fe元素に対するAl元素のより好ましいピーク強度比は1.1×10−3〜5.4×10−3の範囲である。
【0020】
本発明のフェライト粒子の79.58×10(A/m)の磁場における磁化σ1000(Am/kg)は50Am/kg〜72Am/kgの範囲が好ましい。σ1000が50Am/kg未満であると、例えば、フェライト粒子をキャリア芯材として用いた場合に、キャリア飛散が頻繁に発生するおそれがある。一方、σ1000が72Am/kgを超えると、磁気ブラシの穂が硬くなり過ぎ電子写真現像における画質低下を招くおそれがある。より好ましいσ1000は55Am/kg〜65Am/kgの範囲である。
【0021】
本発明のフェライト粒子の好ましい電気抵抗は、印加電圧100Vにおいて1.0×10Ω・cm〜1.0×1010Ω・cmの範囲である。電気抵抗が1.0×10Ω・cm未満であると、電荷リークの発生するおそれがある一方、電気抵抗が1.0×1010Ω・cmを超えると、エッジ効果が大きくなり画像濃度の低下を招くおそれがある。フェライト粒子のより好ましい電気抵抗は、1.0×10Ω・cm〜1.0×10Ω・cmの範囲である。
【0022】
本発明のフェライト粒子の粒径に特に限定はないが、平均粒径で数十μm〜数百μm程度が好ましく、粒度分布はシャープであるのが好ましい。
【0023】
本発明のフェライト粒子は各種用途に用いることができ、例えば、電子写真現像用キャリアや電磁波吸収材、電磁波シールド材用材料粉末、ゴム、プラスチック用充填材・補強材、ペンキ、絵具・接着剤用艶消材、充填材、補強材等として用いることができる。これらの中でも特に電子写真現像用キャリアとして好適に用いられる。
【0024】
本発明のフェライト粒子の製造方法に特に限定はないが、以下に説明する製造方法が好適である。
【0025】
まず、Fe原料とMn原料、Si原料、Al原料とを秤量して分散媒中に投入し混合してスラリーを作製する。Fe原料としては、Fe等が好適に使用される。Mn原料としては、MnO、Mn(OH)、MnCO等から選択される少なくとも1種の化合物が好適に使用される。Si原料としてはシリカが好適に用いられる。シリカとしては、例えば、球状溶融シリカ粉末、摩砕処理シリカ粉末、破砕状シリカ粉末等が用いられる。Si原料の平均粒径としては50nm以下であるのが好ましい。また、Al原料としてはAlが好適に使用できる。
【0026】
Si原料の添加量は、フェライト粒子としたときに、Fe元素に対するSi元素のエネルギー分散型X線分析によるピーク強度比が前記範囲となるようにすればよく、例えば、Fe原料とMn原料の総重量に対してSi元素換算で0.1wt%〜10wt%の範囲とするのが好ましい。なお、Si元素は、鉱石系や塩鉄系のFe原料中に含有されている場合があり、このような場合には、フェライト粒子としたとき狙いのSi元素量になるように換算し調整する。
【0027】
Al原料の添加量も同様に、フェライト粒子としたときに、Fe元素に対するAl元素のエネルギー分散型X線分析によるピーク強度比が前記範囲となるようにすればよく、例えば、Fe原料とMn原料の総重量に対してAl元素換算で0.01wt%〜0.1wt%の範囲とするのが好ましい。なお、Al元素は、鉱石系や塩鉄系のFe原料中に含有されている場合があり、このような場合には、フェライト粒子としたとき狙いのAl元素量になるように換算し調整する。
【0028】
本発明で使用する分散媒としては水が好適である。分散媒には、前記Fe原料、Mn原料、Si原料、Al原料の他、必要によりバインダー、分散剤等を配合してもよい。バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコールが好適に使用できる。バインダーの配合量としてはスラリー中の濃度が0.5〜2wt%程度とするのが好ましい。また、分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸アンモニウム等が好適に使用できる。分散剤の配合量としてはスラリー中の濃度が0.5〜2wt%程度とするのが好ましい。その他、潤滑剤や焼結促進剤等を配合してもよい。
【0029】
スラリーの固形分濃度は50〜90wt%の範囲が望ましい。なお、Si原料とAl原料の添加量が、Fe原料とMn原料との総重量に対し微量であるので、Si原料及びAl原料を先に分散媒中に分散させ、その後、Fe原料とMn原料を分散媒に分散させてもよい。これにより、分散媒に原料を均一に分散できるようになる。また、Fe原料、Mn原料、Si原料、Al原料を分散媒に投入する前に、必要により、粉砕混合の処理をしておいてもよい。
【0030】
次に、以上のようにして作製されたスラリーを湿式粉砕する。例えば、ボールミルや振動ミルを用いて所定時間湿式粉砕する。粉砕後の原材料の平均粒径は3μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以下である。振動ミルやボールミルには、所定粒径のメディアを内在させるのがよい。メディアの材質としては、鉄系のクロム鋼や酸化物系のジルコニア、チタニア、アルミナなどが挙げられる。粉砕工程の形態としては連続式及び回分式のいずれであってもよい。粉砕物の粒径は、粉砕時間や回転速度、使用するメディアの材質・粒径などによって調整される。
【0031】
そして、粉砕されたスラリーを噴霧乾燥させて造粒する。具体的には、スプレードライヤーなどの噴霧乾燥機にスラリーを導入し、雰囲気中へ噴霧することによって球状に造粒する。噴霧乾燥時の雰囲気温度は100〜300℃の範囲が好ましい。これにより、粒径10〜200μmの球状の造粒物が得られる。なお、得られた造粒物は、振動ふるい等を用いて、粗大粒子や微粉を除去し粒度分布をシャープなものとするのが望ましい。
【0032】
次に、造粒物を800℃以上に加熱した炉に投入して、フェライト粒子を合成するための一般的な手法で焼成することにより、フェライト粒子を生成させる。焼成温度が800℃以上であれば焼結は進み、生成したフェライト粒子の形状が維持される。焼結温度の好ましい上限値は1500℃である。焼結温度が1500℃以下であると、フェライト粒子同士の過剰焼結が起こらず、異形粒子の発生が抑制されるからである。したがって、焼結温度としては800〜1500℃の範囲が好ましい。
【0033】
次に、得られた焼成物を解粒する。具体的には、例えば、ハンマーミル等によって焼成物を解粒する。解粒工程の形態としては連続式及び回分式のいずれであってもよい。そして、必要により、粒径を所定範囲に揃えるため分級を行ってもよい。分級方法としては、風力分級や篩分級など従来公知の方法を用いることができる。また、風力分級機で1次分級した後、振動篩や超音波篩で粒径を所定範囲に揃えるようにしてもよい。さらに、分級工程後に、磁場選鉱機によって非磁性粒子を除去するようにしてもよい。
【0034】
その後、必要に応じて、分級後の粉末(焼成物)を酸化性雰囲気中で加熱して、粒子表面に酸化被膜を形成させて高抵抗化を図ってもよい。酸化性雰囲気としては大気雰囲気又は酸素と窒素の混合雰囲気のいずれでもよい。また、加熱温度は、200〜800℃の範囲が好ましく、250〜600℃の範囲がさらに好ましい。加熱時間は30分〜5時間の範囲が好ましい。
【0035】
以上のようにして作製した本発明のフェライト粒子を、電子写真現像用キャリアとして用いる場合、フェライト粒子をそのまま電子写真現像用キャリアとして用いることもできるが、帯電性等の観点からは、フェライト粒子の表面を樹脂で被覆して用いるのが好ましい。
【0036】
フェライト粒子の表面を被覆する樹脂としては、従来公知のものが使用でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリ塩化ビニリデン、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ポリスチレン、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、並びにポリ塩化ビニル系やポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の熱可塑性エストラマー、フッ素シリコーン系樹脂などが挙げられる。
【0037】
フェライト粒子の表面を樹脂で被覆するには、樹脂の溶液又は分散液をフェライト粒子に施せばよい。塗布溶液用の溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類溶媒;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒などの1種又は2種以上を用いることができる。塗布溶液中の樹脂成分濃度は、一般に0.001〜30wt%、特に0.001〜2wt%の範囲内にあるのがよい。
【0038】
フェライト粒子への樹脂の被覆方法としては、例えばスプレードライ法や流動床法あるいは流動床を用いたスプレードライ法、浸漬法等を用いることができる。これらの中でも、少ない樹脂量で効率的に塗布できる点で流動床法が特に好ましい。樹脂被覆量は、例えば流動床法の場合には吹き付ける樹脂溶液量や吹き付け時間によって調整することができる。
【0039】
キャリアの粒子径は、一般に体積平均粒子径で20〜110μm、特に30〜80μmのものが好ましい。また、本発明のキャリアを負帯電性トナーと混合し現像剤として使用する場合には、キャリアの体積平均粒子径は100μm以上とするのが好ましい。キャリアの見掛け密度は、磁性材料を主体とする場合は磁性体の組成や表面構造等によっても相違するが、一般に1.9g/cm〜2.5g/cmの範囲が好ましい。
【0040】
本発明に係る電子写真用現像剤は、以上のようにして作製したキャリアとトナーとを混合してなる。キャリアとトナーとの混合比に特に限定はなく、使用する現像装置の現像条件などから適宜決定すればよい。一般に現像剤中のトナー濃度は1wt%〜20wt%の範囲が好ましい。トナー濃度が1wt%未満の場合、画像濃度が薄くなりすぎ、他方トナー濃度が20wt%を超える場合、現像装置内でトナー飛散が発生し機内汚れや転写紙などの背景部分にトナーが付着する不具合が生じるおそれがあるからである。より好ましいトナー濃度は3〜15wt%の範囲である。
【0041】
キャリアとトナーとの混合は、従来公知の混合装置を用いることができる。例えばヘンシェルミキサー、V型混合機、タンブラーミキサー、ハイブリタイザー等を用いることができる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0043】
実施例1
Mnフェライト粒子を下記方法で作製した。出発原料として、鉱石系Fe(平均粒径:0.6μm)の0.75kgと、塩鉄系Fe(平均粒径:0.6μm)の15.16kgと、Mn(平均粒径:2μm)の4.09kgとを、水4.75kg中に分散し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を300g、還元剤としてカーボンブラックを123g、SiOを40gをさらに添加して混合物とした。この混合物の固形分濃度を測定したところ80重量%であった。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
【0044】
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約130℃の熱風中に噴霧し(ディスク回転数20,000rpm)、粒径10〜200μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から、網目61μmの篩網を用いて粗粒を分離し、網目25μmの篩網を用いて微粒を分離した。
【0045】
この造粒粉を、窒素ガス雰囲気下の電気炉に投入し1150℃で3時間焼成した。得られた焼成物をハンマーミルで解粒した後に振動ふるいを用いて分級し、平均粒径35μmのフェライト粒子を得た。得られたフェライト粒子のエネルギー分散型X線分析によるFe元素に対するSi元素とAl元素のピーク強度比、磁気特性、抵抗、粒子強度、キャリア飛散、電荷リークを下記に示す方法でそれぞれ測定した。表1に測定結果をまとめて示す。
【0046】
(エネルギー分散型X線分析によるFe元素に対するSi元素,Al元素のピーク強度比)
フェライト粒子を切断した断面を、エネルギー分散型X線分析によってFe,Si,Alの元素スペクトル分析した。分析には、SEM−EDS測定装置(日本電子(株)社製、SEM:JSM−6510LA型、EDS:JED−2300型)を用いた。元素スペクトルの測定条件は、加速電圧:15kV、スポットサイズ:70であり、測定時間は50secである。そして、Si元素及びAl元素からのKα分析線によるNet強度(kcps)の値を、Fe元素からのKα分析線によるNet強度(kcps)の値で割って算出した。
【0047】
(磁気特性)
室温専用振動試料型磁力計(VSM)(東英工業社製「VSM−P7」)を用いて磁化の測定を行い、79.58×10(A/m)の磁場における磁化σ1000(Am/kg)及び飽和磁化σ(Am/kg)をそれぞれ測定した
【0048】
(電気抵抗測定)
表面を電解研磨した厚さ2mmの電極としての真鍮板2枚を、距離2mm離して対向するように配置した。電極間にフェライト粒子200mgを装入した後、それぞれの電極の背後に、断面積240mmの磁石(表面磁束密度が1500ガウスのフェライト磁石)を配置して、電極間にフェライト粒子のブリッジを形成させた。そして、10Vから1000Vまでの直流電圧を電極間に印加し、フェライト粒子に流れる電流値を測定し、フェライト粒子の電気抵抗を算出した。
【0049】
(粒子強度)
作製したフェライト粒子の累積粒子頻度をマイクロトラック粒度分析計(日機装社製「Model 9320-X100」)を用いて測定する。そして、作製したフェライト粒子から30gを採取し、サンプルミル(協立理工株式会社製「SK―M10型」)に投入し、回転数14000rpmで60秒間破砕する。そして、破砕後のフェライト粒子の累積粒子頻度を前記と同様にしてマイクロトラック粒度分析計を用いて測定する。破砕前と破砕後との、粒径22μm以下の累積粒子頻度の変化率を粒子強度の指標とした。
【0050】
(キャリア飛散)
作製したフェライト粒子を電子写真現像剤用キャリアとして、公知のトナーとV型混合機で混合し電子写真現像剤試料を製造した。
次に、製造した電子写真現像剤試料を用いて画像評価試験を行った。そして、初期、50K枚、100K枚時の画像にキャリア飛散が観察されなければ「◎」、キャリア飛散が1〜10個観察されれば「○」、キャリア飛散が10個以上観察されれば「×」と評価した。
【0051】
(電荷リーク)
シリコーン系樹脂(信越化学製、KR251)をトルエンに溶解させて被覆樹脂溶液を作製した。そして、フェライト粒子と被覆樹脂溶液とを重量比で9:1の割合で撹拌機に投入し、フェライト粒子を樹脂溶液に浸漬しながら150〜250℃で3時間加熱撹拌した。そして、表面を樹脂で被覆されたフェライト粒子を、熱風循環式加熱装置にて250℃で5時間加熱し、樹脂被覆層を硬化させてキャリアを得た。
得られたキャリア92重量%と、フルカラー複写機のトナー(シアン)8重量%をV型混合機で混合して電子写真現像剤とした。そして、現像バイアス電圧として交流バイアス電圧を印加する、20枚/分のデジタル反転現像方式の画像形成装置をベースにした評価機に、作製した電子写真現像剤を投入して、初期、50K枚、100K枚、150K枚時にグレー画像を出力させた。そして、電荷リークに起因するホワイトスポットの有無に着目して下記基準により画像評価を行った。
「◎」は非常に良好
「○」は良好
「△」は使用可能なレベル
「×」は使用不可
ここで「○」評価が、現在実用化されている高性能な電子写真現像剤と同等レベルであり、「○」評価以上を合格と判定した。
【0052】
実施例2
SiOを1kgとした以外は実施例1と同様にしてフェライト粒子を作製した。そして、実施例1と同様にして各物性を測定した。表1に測定結果をまとめて示す。
【0053】
実施例3
SiOを1.8kgとした以外は実施例1と同様にしてフェライト粒子を作製した。そして、実施例1と同様にして各物性を測定した。表1に測定結果をまとめて示す。
【0054】
実施例4
鉱石系Fe(平均粒径:0.6μm)を1.56kg、塩鉄系Fe(平均粒径:0.6μm)を14.35kg、SiOを1kgとした以外は実施例1と同様にしてフェライト粒子を作製した。そして、実施例1と同様にして各物性を測定した。表1に測定結果をまとめて示す。
【0055】
実施例5
鉱石系Fe(平均粒径:0.6μm)を2.13kgと、塩鉄系Fe(平均粒径:0.6μm)を13.78kg、SiOを1kgとした以外は実施例1と同様にしてフェライト粒子を作製した。そして、実施例1と同様にして各物性を測定した。表1に測定結果をまとめて示す。
【0056】
比較例1
SiOを添加しなかった以外は実施例1と同様にしてフェライト粒子を作製した。そして、実施例1と同様にして各物性を測定した。表1に測定結果をまとめて示す。
【0057】
比較例2
SiOを2.4kgとした以外は実施例1と同様にしてフェライト粒子を作製した。そして、実施例1と同様にして各物性を測定した。表1に測定結果をまとめて示す。
【0058】
比較例3
鉱石系Fe(平均粒径:0.6μm)を2.49kg、塩鉄系Fe(平均粒径:0.6μm)を13.42kg、SiOを1kgとした以外は実施例1と同様にしてフェライト粒子を作製した。そして、実施例1と同様にして各物性を測定した。表1に測定結果をまとめて示す。
【0059】
比較例4
鉱石系Feを添加せず、塩鉄系Fe(平均粒径:0.6μm)を15.91kg、SiOを1kgとした以外は実施例1と同様にしてフェライト粒子を作製した。そして、実施例1と同様にして各物性を測定した。表1に測定結果をまとめて示す。
【0060】
【表1】

【0061】
表1から理解されるように、本発明に係る実施例1〜5のフェライト粒子は、磁気特性、抵抗、粒子強度のいずれも好適値を有し、キャリア飛散及び電荷リークは発生しなかった。
これに対し、Si/Feピーク強度比が小さい比較例1のフェライト粒子では、粒子強度が低くかった。また、電気抵抗が低く電荷リークが発生しやすい状態であった。一方、Si/Feピーク強度比が大きい比較例2のフェライト粒子では、磁気特性が低下しキャリア飛散が発生した。Al/Feピーク強度比が大きい比較例3のフェライト粒子では、粒子表面に大きな凹凸が形成され、粒子同士の衝突等で被覆樹脂が剥がれて電荷リークが発生した。Al/Feピーク強度比が小さい比較例4のフェライト粒子では、焼結反応が充分に進まず粒子強度が低かった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係るフェライト粒子は高磁気特性を有するのみならず高い強度をも有し有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式MnFe3−X(但し、0≦X<1)で表される材料を主成分とし、Si元素とAl元素とを含有するフェライト粒子であって、
エネルギー分散型X線分析によるFe元素に対するSi元素のピーク強度比が1.0×10−3〜1.5×10−1の範囲で、Fe元素に対するAl元素のピーク強度比が8.0×10−4〜6.0×10−3の範囲であることを特徴とするフェライト粒子。
【請求項2】
請求項1記載のフェライト粒子の表面を樹脂で被覆したことを特徴とする電子写真現像用キャリア。
【請求項3】
請求項2記載の電子写真現像用キャリアとトナーとを含む電子写真用現像剤。

【公開番号】特開2012−188343(P2012−188343A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250600(P2011−250600)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(506334182)DOWAエレクトロニクス株式会社 (336)
【出願人】(000224802)DOWA IPクリエイション株式会社 (96)
【Fターム(参考)】