説明

フェライト粒子及びそれを用いた電子写真現像用キャリア、電子写真用現像剤並びにフェライト粒子の製造方法

【課題】見掛け密度が小さく且つ流動性に優れ、小さな動力で撹拌混合等を行うことができるフェライト粒子及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】一般式(MFe3−x)O(但し、MはFe,Mg,Mn,Ca,Ti,Cu,Zn,Sr,Niからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属、0≦x≦1)で表されるフェライト粒子本体の表面をアルミナで被覆する。このようなフェライト粒子の製造方法としては、Fe原料とM原料、及び水を混合してスラリーを得る工程と、前記スラリーを噴霧乾燥させて造粒物を得る工程と、前記造粒物を焼成して焼成物前駆体を得る工程と、得られた焼成物前駆体の表面をアルミナで被覆する工程と、アルミナで表面を被覆した焼成物前駆体をさらに焼成する工程とを有する方法が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェライト粒子及びそれを用いた電子写真現像用キャリア、電子写真用現像剤並びにフェライト粒子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いたファクシミリやプリンタ、複写機などの画像形成装置では、現像剤である粉体のトナーを感光体上の静電潜像に付着させ、当該付着したトナー像を所定の用紙等へ転写した後、加熱・加圧して用紙等へ溶融定着させている。ここで、現像剤としては、トナーのみを含む一成分系現像剤を用いる一成分系現像法と、トナーとキャリアとを含む二成分系現像剤を用いる二成分系現像法とに大別される。そして、近年は、ほとんどの場合、トナーの荷電制御が容易で安定した高画質を得ることができ、高速現像が可能であることから二成分系現像法が用いられている。
【0003】
二成分系現像法では、トナーとキャリアとを含む現像剤を現像装置内で撹拌混合し、摩擦によってトナーを所定量まで帯電させる。そして、回転する現像スリーブに現像剤を供給し、現像スリーブ上で磁気ブラシを形成させて、磁気ブラシを介して感光体へトナーを電気的に移動させて感光体上の静電潜像を可視像化する。
【0004】
近年、画像形成装置の高速化に伴い、現像剤の撹拌混合及び回転搬送の速度も速くなっている。一方、省エネルギーの観点から、現像剤を撹拌混合及び回転搬送させるための動力を抑えることが求められている。そのためには、使用するキャリアの見掛け密度を小さくするのが望ましい。
【0005】
キャリアの見掛け密度を小さくする一つの手段として、キャリアの表面に凹凸を設けることが考えられる。本出願人は、目的は異なるが、キャリア芯材の表面に凹凸を設ける技術としてアルミナをキャリアの原料に添加することを以前に提案した(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-237155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本出願人が以前に提案した技術は、キャリア芯材の表面凹凸性を高めて被覆樹脂の剥離の抑制を目的とするものであり、例えば表面を樹脂被覆しない場合には所望の流動性が得られず、撹拌動力等の低減が図れないことがある。
【0008】
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、見掛け密度が小さく且つ流動性に優れ、小さな動力で撹拌混合等を行うことができるフェライト粒子及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の目的は、省エネルギー及び高速化を満足する電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るフェライト粒子は、一般式(MFe3−x)O(但し、MはFe,Mg,Mn,Ca,Ti,Cu,Zn,Sr,Niからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属、0≦x≦1)で表されるフェライト粒子本体の表面をアルミナで被覆してなることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る電子写真現像用キャリアは、前記のフェライト粒子の表面を樹脂で被覆したことを特徴とする。
【0012】
また本発明に係る電子写真用現像剤は、前記のキャリアとトナーとを含むことを特徴とする。
【0013】
そしてまた、本発明に係るフェライト粒子の製造方法は、一般式(MFe3−x)O(但し、MはFe,Mg,Mn,Ca,Ti,Cu,Zn,Sr,Niからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属、0≦x≦1)で表されるフェライト粒子本体が生成するように成分調整されたFe原料とM原料、及び水を混合してスラリーを得る工程と、前記スラリーを噴霧乾燥させて造粒物を得る工程と、前記造粒物を焼成して焼成物前駆体を得る工程と、得られた焼成物前駆体の表面をアルミナで被覆する工程と、アルミナで表面を被覆した焼成物前駆体をさらに焼成する工程とを有することを特徴とする。
【0014】
前記焼成物前駆体の表面をアルミナで被覆するには、前記焼成物前駆体をアルミナゾルに浸漬した状態で乾燥するのが好ましい。
【0015】
また、アルミナで表面を被覆した焼成物前駆体を焼成する条件としては、焼成温度は600℃〜1200℃で、焼成時間は0.5時間〜6時間の範囲が好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のフェライト粒子は、フェライト粒子本体の表面をアルミナで被覆してなるので、見掛け密度が小さく且つ流動性に優れ、小さな動力で撹拌混合等を行うことができる。
【0017】
また、本発明の電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤は、前記フェライト粒子を用いているので、省エネルギー及び高速化に対応できる。
【0018】
そしてまた、本発明の製造方法では、見掛け密度が小さく且つ流動性に優れたフェライト粒子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1のフェライト粒子のSEM写真である。
【図2】実施例1のフェライト粒子の断面SEM写真である。
【図3】図2のSEM写真と同一部分における、EDSによるAl元素のピークカウントマップ画像である。
【図4】比較例1のフェライト粒子のSEM写真である。
【図5】比較例1のフェライト粒子の断面SEM写真である。
【図6】図5のSEM写真と同一部分における、EDSによるAl元素のピークカウントマップ画像である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
まず、本発明に係るフェライト粒子について説明する。本発明に係るフェライト粒子の大きな特徴は、一般式(MFe3−x)O(但し、MはFe,Mg,Mn,Ca,Ti,Cu,Zn,Sr,Niからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属、0≦x≦1)で表されるフェライト粒子本体の表面をアルミナで被覆してなることを特徴とする。フェライト粒子本体の表面をアルミナで被覆することにより、アルミナを原料添加していた従来に比べて粒子本体表面に形成される凹凸が小さくなり、所定の見掛け密度を有し且つ高い流動性も得られるようになる。
【0021】
粒子本体の表面に形成するアルミナの被覆厚みに特に限定はないが、通常は1μm以下であるのが好ましい。アルミナの被覆厚みを上記範囲に調整するには、例えば、後述する製造方法における、粒子本体にアルミナゾルを塗布する際のアルミナゾルの濃度やゾル量、塗布時間などにより調整すればよい。
【0022】
本発明に係るフェライト粒子の見掛け密度としては2.5g/cm以下であるのが好ましい。見掛け密度が2.5g/cm以下であることで、例えばフェライト粒子を電子写真現像用キャリアとして用いた場合に、キャリアを含む現像剤の撹拌動力の軽減が図れるようになる。より好ましい見掛け密度は2.2g/cm以下である。加えて、キャリアを含む現像剤の撹拌動力の軽減を図る観点からは、フェライト粒子は流動性が高いことが望ましく、後述の実施例で説明する流動度(キャリア50gが容器の底に開いた穴から流れ落ちるのに要する時間)が50秒以下であるのが望ましい。より好ましくは45秒以下である。
【0023】
本発明に係るフェライト粒子の平均粒子径としては10μm〜100μmの範囲が好ましい。平均粒子径が10μm以上あることで、粒子のそれぞれに必要な磁力が確実に付与され、例えば、フェライト粒子を電子写真現像用キャリアとして用いた場合に、感光体へのキャリア付着が抑制されるようになる。一方、平均粒子径が100μm以下であることで、画像特性を良好に保つことができるようになる。フェライト粒子の平均粒子径を上記範囲とするには、フェライト粒子の製造工程中または製造工程後に篩等を用いて分級処理を行えばよい。
【0024】
本発明に係るフェライト粒子の好ましい飽和磁化σは、20〜90emu/g(A・m/kg)の範囲である。飽和磁化σが20emu/g未満であると、例えば、フェライト粒子を電子写真現像用キャリアとして用いた場合に、感光体へのキャリア付着が頻繁に起きるおそれがある。一方、飽和磁化σが90emu/gを超えると、磁気ブラシの穂が硬くなり、電子写真現像における画質低下を招くおそれがある。フェライト粒子の、より好ましい飽和磁化σは50〜90emu/gの範囲であり、さらに好ましくは70〜90emu/gの範囲である。
【0025】
また、本発明に係るフェライト粒子の磁化は、外部磁場1kOe(79577A/m)において50〜70emu/gの範囲であるのが好ましい。フェライト粒子の磁気特性をこの範囲とすることで、例えばフェライト粒子をキャリアとして用いた場合に、磁気ブラシの保磁力が十分確保され、感光体にキャリアが付着する現象が抑制される。
【0026】
従来、原料としてアルミナを添加していたため、得られるフェライト粒子の磁気特性が低下し、磁気特性を前記好適範囲とすることは難しかったが、本発明のフェライト粒子ではアルミナを粒子表面に付着させるので、磁気特性の低下を抑制でき磁気特性を前記好適範囲に容易に調整できる。
【0027】
本発明のフェライト粒子は各種用途に用いることができ、例えば、電子写真現像用キャリアや電磁波吸収材、電磁波シールド材用材料粉末、ゴム、プラスチック用充填材・補強材、ペンキ、絵具・接着剤用艶消材、充填材、補強材等として用いることができる。これらの中でも特に電子写真現像用キャリアとして好適に用いられる。
【0028】
本発明のフェライト粒子の製造方法に特に限定はないが、以下に説明する製造方法が好適である。
【0029】
まず、Fe原料とM成分の原料とを秤量して分散媒中に投入し混合してスラリーを作製する。Fe原料としては、Fe粉、Fe酸化物、Fe水酸化物等が使用できる。M成分の原料としては、Mg、Mn、Ca、Ti、Cu、Zn、Sr又はNi、及びこれら2価の金属を任意に組み合わせたものが好適に使用できる。例えば、MnであればMnCO、Mn等が使用でき、MgであればMgO、Mg(OH)、MgCOが好適に使用できる。そして、これらの原料の配合比を、前記一般式で示されるフェライトの組成と一致させて秤量し混合して、金属原料混合物を得る。スラリーの固形分濃度は50〜90wt%の範囲が望ましい。原料であるFe原料、Mg原料を分散媒に投入する前に、必要により、粉砕混合処理しておいてもよい。
【0030】
本発明で使用する分散媒としては水が好適である。分散媒には、前記Fe原料、M成分の原料の他、必要によりバインダー、分散剤等を配合してもよい。バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコールが好適に使用できる。バインダーの配合量としてはスラリー中の濃度が0.5〜2wt%程度とするのが好ましい。また、分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸アンモニウム等が好適に使用できる。分散剤の配合量としてはスラリー中の濃度が0.5〜2wt%程度とするのが好ましい。その他、潤滑剤や焼結促進剤等を配合してもよい。
【0031】
次に、以上のようにして作製されたスラリーを必要により湿式粉砕する。例えば、ボールミルや振動ミルを用いて所定時間湿式粉砕する。粉砕後の原材料の平均粒径は50μm以下が好ましく、より好ましくは10μm以下である。振動ミルやボールミルには、所定粒径のメディアを内在させるのがよい。メディアの材質としては、鉄系のクロム鋼や酸化物系のジルコニア、チタニア、アルミナなどが挙げられる。粉砕工程の形態としては連続式及び回分式のいずれであってもよい。粉砕物の粒径は、粉砕時間や回転速度、使用するメディアの材質・粒径などによって調整される。
【0032】
そして、粉砕されたスラリーを噴霧乾燥させて造粒する。具体的には、スプレードライヤーなどの噴霧乾燥機にスラリーを導入し、雰囲気中へ噴霧することによって球状に造粒する。噴霧乾燥時の雰囲気温度は100〜300℃の範囲が好ましい。これにより、粒径10〜200μmの球状の造粒物が得られる。なお、得られた造粒物は、振動ふるい等を用いて、粗大粒子や微粉を除去し粒度分布をシャープなものとするのが望ましい。
【0033】
次に、造粒物を800℃以上に加熱した炉に投入して、フェライト粒子を合成するための一般的な手法で焼成し、焼成物前駆体を生成させる。焼成温度が800℃以上であれば焼結は進み、生成した焼成物前駆体の形状が維持される。焼結温度の好ましい上限値は1500℃である。焼結温度が1500℃以下であると、焼成物前駆体同士の過剰焼結が起こらず、異形粒子の発生が抑制されるからである。したがって、焼結温度としては800〜1500℃の範囲が好ましい。また焼成時間としては1〜6時間の範囲が好ましい。
【0034】
そして、得られた焼成物前駆体の表面をアルミナで被覆する。焼成物前駆体の表面をアルミナで被覆する方法としては、アルミナゾルへの浸漬、アルミナゾルの噴霧など従来公知の方法を用いることができるが、簡易な設備で容易に作業できることからアルミナゾルへの浸漬によって焼成物前駆体の表面をアルミナで被覆する方法が推奨される。具体的には、アルミナゾルを入れた容器に焼成物前駆体を浸漬し、次いで加熱・乾燥して、アルミナゾルの溶媒を蒸発させて焼成物前駆体の表面をアルミナで被覆する。加熱温度及び加熱時間は、アルミナゾルの溶媒を除去できる温度及び時間であればよく、溶媒の種類やアルミナの濃度などから適宜決定すればよいが、通常、加熱温度としては100〜200℃の範囲であり、加熱時間としては0.5時間〜数時間の範囲である。
【0035】
ここで使用するアルミナゾルとしては、例えば平均粒径1nm〜50nmの範囲のアルミナがエチルアルコールなどの溶媒に分散させたものが挙げられる。アルミナゾルにおけるアルミナの濃度としては10〜50wt%の範囲が好ましい。また、溶媒としては、水:メチルアルコール、エチルアルコールなどのアルコール類:ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどのアミド類が挙げられる。
【0036】
次に、アルミナで被覆した焼成物前駆体を加熱した炉に再び投入して、アルミナを焼成し固定化する。固定化条件としては、アルミナを焼成・固定化できる条件であればよく、アルミナの被覆量などから適宜決定すればよい。通常、固定化温度は600〜1200℃の範囲、固定化時間は0.5時間〜6時間の範囲である。
【0037】
そして、必要により、得られた焼成物を解砕する。具体的には、例えば、ハンマーミル等によって焼成物を解砕する。解砕工程の形態としては連続式及び回分式のいずれであってもよい。そして、さらに必要により、粒径を所定範囲に揃えるため分級を行ってもよい。分級方法としては、風力分級や篩分級など従来公知の方法を用いることができる。また、風力分級機で1次分級した後、振動篩や超音波篩で粒径を所定範囲に揃えるようにしてもよい。さらに、分級工程後に、磁場選鉱機によって非磁性粒子を除去するようにしてもよい。
【0038】
以上のようにして作製した本発明のフェライト粒子を、電子写真現像用キャリアとして用いる場合、フェライト粒子をそのまま電子写真現像用キャリアとして用いることもできるが、帯電性等の観点からは、フェライト粒子の表面を樹脂で被覆して用いるのが好ましい。
【0039】
フェライト粒子の表面を被覆する樹脂としては、従来公知のものが使用でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリ塩化ビニリデン、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂、ポリスチレン、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、並びにポリ塩化ビニル系やポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の熱可塑性エストラマー、フッ素シリコーン系樹脂などが挙げられる。
【0040】
フェライト粒子の表面を樹脂で被覆するには、樹脂の溶液又は分散液をフェライト粒子に施せばよい。塗布溶液用の溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類溶媒;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒などの1種又は2種以上を用いることができる。塗布溶液中の樹脂成分濃度は、一般に0.001〜30wt%、特に0.001〜2wt%の範囲内にあるのがよい。
【0041】
フェライト粒子への樹脂の被覆方法としては、例えばスプレードライ法や流動床法あるいは流動床を用いたスプレードライ法、浸漬法等を用いることができる。これらの中でも、少ない樹脂量で効率的に塗布できる点で流動床法が特に好ましい。樹脂被覆量は、例えば流動床法の場合には吹き付ける樹脂溶液量や吹き付け時間によって調整することができる。
【0042】
本発明に係る電子写真用現像剤は、以上のようにして作製したキャリアとトナーとを混合してなる。キャリアとトナーとの混合比に特に限定はなく、使用する現像装置の現像条件などから適宜決定すればよい。一般に現像剤中のトナー濃度は1〜20wt%の範囲が好ましい。トナー濃度が1wt%未満の場合、画像濃度が薄くなりすぎ、他方トナー濃度が20wt%を超える場合、現像装置内でトナー飛散が発生し機内汚れや転写紙などの背景部分にトナーが付着する不具合が生じるおそれがあるからである。より好ましいトナー濃度は3〜15wt%の範囲である。
【0043】
キャリアとトナーとの混合は、従来公知の混合装置を用いることができる。例えばヘンシェルミキサー、V型混合機、タンブラーミキサー、ハイブリタイザー等を用いることができる。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
【0045】
実施例1
平均粒径が約1μmに微粉砕されたFeと分散剤とを分散媒としての水に投入し、湿式ボールミルを用いて湿式粉砕してスラリーを作製した。次に、このスラリーに還元剤としてのカーボンブラックを原料に対して1.25wt%添加した後、スプレードライヤーにて約180℃の熱風中に噴霧し(ディスク回転数20,000rpm)、粒径10〜200μmの造粒物を得た。この造粒物から、網目156μmの篩網を用いて粗粒を分離し、網目63μmの篩網を用いて微粒を分離した。
【0046】
次に、造粒物を窒素雰囲気下1050℃で3時間焼成して焼成物前駆体を得た。この焼成物前駆体のBET比表面積は0.1415m/gであった。一方、加熱式撹拌機の撹拌槽にアルミナゾル(溶媒:メタノール水溶液,アルミナ濃度:20wt%)を150g(1wt%)を入れ、ここに前記焼成物前駆体3kgを投入してアルミナゾルに浸漬させた。そして、温度150℃に加熱し1時間撹拌して溶媒を除去して、アルミナで表面が被覆された焼成物前駆体を得た。
【0047】
そして、アルミナで表面が被覆された焼成物前駆体を、窒素雰囲気下1000℃で3時間焼成してアルミナを固定化した。その後、ハンマーミルで解砕し、風力分級機を用いて微粉を除去し網目54μmの振動ふるいで粒度調整してフェライト粒子を得た。図1にフェライト粒子のSEM写真、図2に粒子断面のSEM写真、図3にSEM写真と同一部分における、EDSによるAl元素のピークカウントマップ画像をそれぞれ示す。また、このフェライト粒子の見掛け密度、流動度、飽和磁化σs、外部磁場1000Oeにおける磁化σ1000を以下に示す方法で測定した。表1にその結果を示す。
【0048】
(SEM写真及びEDS分析)
フェライト粒子断面の、SEM写真及びEDSのピークカウントマップ画像には、SEM−EDS測定装置(日本電子(株)社製、SEM:JSM−6510LA型、EDS:20310BU型)を用いた。
ピークカウントマップ画像の測定条件は、加速電圧:15kV、照射電流:1.0nA、スポットサイズ:70であり、解像度:512×314、デュエルタイム:0.2msec、スイープ回数:10回である。
【0049】
(見掛け密度)
粉体の見掛け密度は、JIS Z 2504に準拠して測定した。
【0050】
(流動度)
流動度は、JIS Z 2502に準拠して測定した。
【0051】
(飽和磁化σs、磁化σ1000
飽和磁化σsは、室温専用振動試料型磁力計(VSM)(東英工業株式会社製、VSM−P7)を用いて磁化の測定を行い、外部磁場0〜10000(Oe)の範囲で1サイクル連続的に印加して、飽和磁化σs(emu/g)及び外部磁場1000Oeにおける磁化σ1000を測定した。
【0052】
実施例2,3
焼成物前駆体を浸漬させるアルミナゾルの使用量を75g(0.5wt%)、1500g(10wt%)とした以外は実施例1と同様にしてフェライト粒子を作製した。このフェライト粒子の見掛け密度、流動度、飽和磁化σs、磁化σ1000を実施例1と同様にして測定した。表1に測定結果を示す。
【0053】
実施例4〜10
焼成物前駆体の表面を被覆しているアルミナを固定化する温度及び時間を表1に示す温度及び時間とした以外は、実施例1と同様にしてフェライト粒子を作製した。このフェライト粒子の見掛け密度、流動度、飽和磁化σs、磁化σ1000を実施例1と同様にして測定した。表1に測定結果を示す。
【0054】
比較例1
平均粒径が約1μmに微粉砕されたFeと、アルミナ1wt%と、分散剤とを分散媒としての水に投入し、湿式ボールミルを用いて湿式粉砕してスラリーを作製した。次に、このスラリーに還元剤としてのカーボンブラックを原料に対して1.25wt%添加した後、スプレードライヤーにて約180℃の熱風中に噴霧し(ディスク回転数20,000rpm)、粒径10〜200μmの造粒物を得た。この造粒物から、網目156μmの篩網を用いて粗粒を分離し、網目63μmの篩網を用いて微粒を分離した。
【0055】
次に、造粒物を、窒素雰囲気下1200℃で3時間焼成してフェライト化した。このフェライト化した焼成物をハンマーミルで解砕し、風力分級機を用いて微粉を除去し網目54μmの振動ふるいで粒度調整してフェライト粒子を得た。図4にフェライト粒子のSEM写真、図5に粒子断面のSEM写真、図6にSEM写真と同一部分における、EDSによるAl元素のピークカウントマップ画像をそれぞれ示す。また、このフェライト粒子の見掛け密度、流動度、飽和磁化σs、磁化σ1000を実施例1と同様にして測定した。表1に測定結果を示す。
【0056】
比較例2〜5
原料としてのアルミナの添加量を0.5wt%、0.29wt%、0.25wt%、0.1wt%に変えた以外は比較例1と同様にしてフェライト粒子を得た。そして、得られたフェライト粒子の見掛け密度、流動度、飽和磁化σs、磁化σ1000を実施例1と同様にして測定した。表1に測定結果を示す。
【0057】
【表1】

【0058】
実施例1〜10のフェライト粒子では、図3に示すAl元素のピークカウントマップ画像から理解されるように、粒子表面がアルミナ(図3の白い部分)で被覆されていた。これにより、実施例1〜10のフェライト粒子は、見掛け密度が2.17g/cm以下と小さく、また所望の流動性を有していた。加えて、飽和磁化σs及び磁化σ1000についても、通常はアルミナの添加によって大幅に低下するところ、フェライト粒子を電子写真現像用キャリアとして用いた場合に、感光体へのキャリア付着が発生しないレベルに維持されていた。
【0059】
これに対して、アルミナを原料添加した比較例1〜5のフェライト粒子では、図6に示すAl元素のピークカウントマップ画像から理解されるように、アルミナ(図6の黒点部分)は粒子全体にほぼ均一に分散していた。このため、図4のSEM写真から理解されるように粒子の異形化が進み、見掛け密度は小さくなったものの流動度が悪化し、アルミナの添加量が0.1wt%と少なかった比較例5のフェライト粒子を除き、流動度の測定は不能であった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のフェライト粒子は、見掛け密度が小さく且つ流動性に優れ、小さな動力で撹拌混合等を行うことができ有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(MFe3−x)O(但し、MはFe,Mg,Mn,Ca,Ti,Cu,Zn,Sr,Niからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属、0≦x≦1)で表されるフェライト粒子本体の表面をアルミナで被覆してなることを特徴とするフェライト粒子。
【請求項2】
請求項1記載のフェライト粒子の表面を樹脂で被覆したことを特徴とする電子写真現像用キャリア。
【請求項3】
請求項2記載のキャリアとトナーとを含むことを特徴とする電子写真用現像剤。
【請求項4】
一般式(MFe3−x)O(但し、MはFe,Mg,Mn,Ca,Ti,Cu,Zn,Sr,Niからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属、0≦x≦1)で表されるフェライト粒子本体が生成するように成分調整されたFe原料とM原料、及び水を混合してスラリーを得る工程と、前記スラリーを噴霧乾燥させて造粒物を得る工程と、前記造粒物を焼成して焼成物前駆体を得る工程と、得られた焼成物前駆体の表面をアルミナで被覆する工程と、アルミナで表面を被覆した焼成物前駆体をさらに焼成する工程とを有することを特徴とするフェライト粒子の製造方法。
【請求項5】
前記焼成物前駆体をアルミナゾルに浸漬した状態で乾燥し、前記焼成物前駆体の表面をアルミナで被覆した請求項4記載のフェライト粒子の製造方法。
【請求項6】
アルミナで表面を被覆した焼成物前駆体を温度600℃〜1200℃で0.5時間〜6時間焼成する請求項4又は5記載のフェライト粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−25640(P2012−25640A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167737(P2010−167737)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(506334182)DOWAエレクトロニクス株式会社 (336)
【出願人】(000224802)DOWA IPクリエイション株式会社 (96)
【Fターム(参考)】