説明

フェルビナク含有貼付剤

【発明の詳細な説明】
技術分野 本発明は、フェルビナク含有貼付剤に関し、より詳しくは、腰痛、筋肉痛、関節周囲炎等の治療を目的とする薬効成分として消炎鎮痛薬であるフェルビナクを含有した消炎鎮痛貼付剤に関するものである。
背景技術 フェルビナク(Felbinac、4−ビフェニル酢酸)は非ステロイド系消炎鎮痛薬フェンブフェンの活性代謝物であり、強い消炎鎮痛作用を示す薬物である。そして、この薬物は経口投与には適さないために経皮投与製剤としての検討が行われ、これまでに上記薬物を含有するゲル剤、液剤、パップ剤が市販されている。しかしながら、ゲル剤、液剤においては、定量投与の困難さ、生物学的利用率の低さ、衣服への付着、投与回数の多さ(例えば1日に数回投与)といった問題があった。又、これらゲル剤、液剤の問題を改善するためにパップ剤が開発されているが、粘着力が弱いために長時間貼付することができない、生物学的利用率が低い、薬効の持続性が十分でないといった問題が残されていた。そこで、特開平4−321624号公報においては、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体を基剤の主成分とし、クロタミトン(Crotamiton)を必須の可溶化剤とした消炎鎮痛貼付剤の提案がなされた。
発明の開示 しかしながら、特開平4−321624号公報に記載の消炎鎮痛貼付剤であっても、以下に説明するように、消炎鎮痛薬としてフェルビナクを用いた場合においては未だ十分なものではないことを本発明者らは見出した。すなわち、上記特開平4−321624号公報に記載の消炎鎮痛貼付剤にあっては、薬物に対する可溶化剤としてクロタミトンを使うことによる作業工程の煩雑さや、クロタミトンのブリード(表面への浸出)による経時的な粘着力の低下が見られるといった点で未だ十分なものではなかった。
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、皮膚への付着性が長時間にわたって高水準に維持され、皮膚に対する刺激性が少なく安全であり、製剤の安定性が良好であり、薬物の放出性が高く抗炎症作用に優れ、薬効が長時間にわたって持続されるフェルビナク含有貼付剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の知見を見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、従来は、可溶化剤を含有しない分散型貼付剤にあっては薬物が結晶状態で存在するために、薬物の経皮吸収性が低下して十分な薬効が期待されないと当業者に認識されていた。それにも拘らず、特定の成分を特定の割合で含有しかつ特定の厚みを有するフェルビナク含有貼付剤においては、可溶化剤を含有しない分散型貼付剤であるにも拘らず薬物の放出性が高くかつ十分な薬理作用が長時間にわたって持続され、しかも皮膚への付着性が長時間にわたって高水準に維持され、製剤の安定性に優れ、皮膚刺激性が少ないことを本発明者らは見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明のフェルビナク含有貼付剤は、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体10〜40重量%、ロジン系樹脂5〜30重量%、可塑剤20〜70重量%、及び薬効成分としてのフェルビナク1.1〜10重量%を含有する貼付剤であって、該貼付剤が前記フェルビナクに対する可溶化剤であるクロタミトンを含有しておらず、前記フェルビナクが前記貼付剤中に半溶融状態で分散しており、かつ前記貼付剤の厚さが50〜300μmである貼付剤である。本発明のフェルビナク含有貼付剤はまた、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ロジン系樹脂及び可塑剤を含む基剤中に、薬効成分としてのフェルビナクが含有された貼付剤であって、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体10〜40重量%、ロジン系樹脂5〜30重量%、可塑剤20〜70重量%、及びフェルビナク1.1〜10重量%を含有し、前記フェルビナクに対する可溶化剤であるクロタミトンを含有しておらず、かつ厚さが50〜300μmであり、前記フェルビナクは、前記基剤中に溶融した状態のものと微細な結晶状態のものとが共存している状態で均一に分散されており、溶融している前記フェルビナクが前記基剤から放出されるに従い、結晶状態で均一に分散している前記フェルビナクが前記基剤中へと随時溶解していくことにより、安定した前記フェルビナクの放出がされる、貼付剤である。
本発明の貼付剤の製造方法は、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ロジン系樹脂及び可塑剤(他の添加成分を含有させる場合はさらにそれらの成分)をそれぞれ前記の割合で混合して混合物とし、不活性雰囲気下で加熱攪拌して溶解物とし、続いて、薬効成分であるフェルビナクを前記の割合で前記溶解物中に添加し、熱により液体となるように撹拌して均一な溶解物を得る工程を含む、製造方法である。本発明の貼付剤の製造方法はまた、この工程と、前記均一な溶解物を直接前記支持体上に展延した後に剥離被覆物で覆うか、あるいは前記均一な溶解物を剥離被覆物上に展延した後に前記支持体上に被せて溶解物を支持体上に圧着転写させる工程と、を含む、製造方法である。
図面の簡単な説明 図1はヘアレスマウスによる皮膚透過試験の結果を示すグラフである。
図2はウサギによるカラゲニン足浮腫試験の結果を示すグラフである。
発明を実施するための最良の形態 本発明のフェルビナク含有貼付剤においては、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ロジン系樹脂及び可塑剤をそれぞれ特定の配合割合で含む基剤中に、薬効成分としてのフェルビナクが特定の配合割合で含有されている。先ず、本発明の貼付剤を構成するために用いる各種基剤成分について詳述する。
本発明にかかるスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体とは、スチレン及びイソプレンのブロック共重合体であって両端部にポリスチレンを有するものであり、このようなスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体としては、カイフレックスTR−1107、TR−111、TR−1112又はTR−1117(商品名、シェル化学(株)製)、JSR SIS−5000又は5002(商品名、日本合成ゴム(株)製)、クインタック3530又は3421(商品名、日本ゼオン(株)製)、ソルプレン428(商品名、フィリップペトロリアム(株)製)等が挙げられ、1種又は2種以上の組合せを使用することができる。
上記スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の配合量は、貼付剤全体の10〜40重量%であり、好ましくは15〜35重量%である。この配合割合にすることによって、製剤(貼付剤)の安定性、粘着力、長時間の皮膚への付着性(付着持続性)、薬物の経皮吸収性、薬物の分散性、剥離性の痛み、皮膚のかぶれの発生率等が大きく改善される。なお、上記の配合量が10重量%未満では基剤の凝集力や保型性が低下し、他方、上記の配合量が40重量%を越えると粘着力の低下、膏体(貼付剤)の不均一化、作業性の低下を招く。
本発明にかかるロジン系樹脂とは、ロジン又はロジン誘導体をベースとする樹脂であり、ロジンエステル、水添ロジンエステル、マレイン化ロジン等が好適に用いられ得る。このようなロジン系樹脂としては、エステルガムA、AA−G、H又はHP(商品名、荒川化学(株)製)、ハリエスターL、S又はP(商品名、荒川化学(株)製)、パインクリスタルKE−100(商品名、荒川化学(株)製)、KE−311(商品名、荒川化学(株)製)、ハーコリンD(商品名、理化ハーキュレス(株)製)、フォーラル85又は105(商品名、理化ハーキュレス(株)製)、ステベライトエステル7又は10(商品名、理化ハーキュレス(株)製)、ペンタリン4820又は4740(商品名、理化ハーキュレス(株)製)等が挙げられ、1種又は2種以上の組合せを使用することができる。
上記ロジン系樹脂の配合量は、貼付剤全体の5〜30重量%であり、好ましくは10〜25重量%である。この配合割合にすることによって、製剤の安定性、粘着力、付着持続性、薬物の経皮吸収性、薬物の分散性、剥離時の痛み、皮膚のかぶれの発生率等が大きく改善される。なお、上記の配合量が5重量%未満では粘着力、付着持続性、薬物の分散性が低下すると共に、膏体粘度の増加により膏体の不均一化、作業性の低下を招く。他方、上記の配合量が30重量%を越えると薬物の経皮吸収性、保型性が低下すると共に、剥離時の痛み、皮膚のかぶれの発生率、ベタツキ等が増加する。
本発明にかかる可塑剤とは、他の基剤成分と相溶性がよく、基剤に柔軟性を与えるものであり、アーモンド油、オリーブ油、ツバキ油、パーシック油、ラッカセイ油、オレフィン酸、液状ポリイソプレン、液状ポリブテン、流動パラフィン等が好適に用いられ得る。このような可塑剤としては、1種又は2種以上の組合せを使用することができるが、中でも特に流動パラフィンが好ましい。
上記可塑剤の配合量は、貼付剤全体の20〜70重量%であり、好ましくは30〜60重量%である。この配合割合にすることによって、製剤の安定性、粘着力、付着持続性、薬物の経皮吸収性、薬物の分散性、剥離時の痛み、皮膚のかぶれの発生率等が大きく改善される。なお、上記の配合量が20重量%未満では粘着力、薬物の経皮吸収性、薬物の分散性が低下すると共に、膏体粘度の増加により膏体の不均一化、作業性の低下を招く。他方、上記の配合量が70重量%を越えると製剤の安定性、凝集力、保型性が低下すると共に、剥離時の痛み、ベタツキ等が増加する。
本発明の貼付剤においては、前述のスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ロジン系樹脂及び可塑剤を含む基剤中に、薬効成分としてのフェルビナク、すなわち4−ビフェニル酢酸、が特定の配合割合で含有されている。本発明の貼付剤におけるフェルビナクの配合量は、貼付剤全体の1.1〜10重量%であり、好ましくは2〜8重量%、特に好ましくは3〜7重量%である。この配合割合にすることによって、薬物の経皮吸収性、薬効の持続性、薬物の分散性等が大きく改善される。なお、上記の配合量が1.1重量%未満では薬物の経皮吸収性、薬効の持続性が低下し、十分な薬効が得られない。他方、上記の配合量が10重量%を越えると薬物の分散性が悪くなり、膏体の不均一化を招く。
そして、本発明の貼付剤は、上記フェルビナクを含有しているにも拘らず、従来は必須と認識されていた可溶化剤であるクロタミトンを含有していない。すなわち、本発明の貼付剤は、前述のスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ロジン系樹脂、可塑剤及びフェルビナクを含有しかつ前記フェルビナクに対する可溶化剤であるクロタミトンを含有しておらず、本質的にスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ロジン系樹脂、可塑剤及びフェルビナクからなるものであってもよい。
このように、本発明のフェルビナク含有貼付剤は可溶化剤であるクロタミトンを含有していないため、クロタミトンのブリードによる経時的な粘着力の低下は発生せず、その使用に起因する作業工程の煩雑さも生じない。また、本発明のフェルビナク含有貼付剤は、フェルビナクに対する可溶化剤、すなわち基剤中にフェルビナクをその飽和溶解度以上に見掛け上溶解させることが可能なもの、を一切含有していないことが好ましい。このように、クロタミトン以外の可溶化剤をも含有しないことによって、可溶化剤のブリードによる経時的な粘着力の低下の発生がより確実に防止される傾向にある。このようなクロタミトン以外の可溶化剤としては、ベンジルアルコール、ジイソプロパノールアミンが挙げられる。
また、上記組成を有する本発明の貼付剤においては、上記可溶化剤であるクロタミトンを含有していないにも拘らず、フェルビナクが完全に結晶状態で基剤中に取り込まれるのではなく、フェルビナクが基剤中に半溶融状態、すなわち溶融した状態のものと微細な結晶状態のものとが共存している状態、で均一に分散される。この場合、溶融している薬物が基剤から放出されるに従い、結晶状態で均一に分散している薬物は基剤中へと随時溶解していく。これにより、本発明の貼付剤においては、一定速度による長時間にわたっての安定した薬物放出が実現される。そのため、特開平4−321624号公報に記載の可溶化剤含有貼付剤のように薬物が可溶化剤により溶融した状態で基剤中に存在していないにも拘らず、本発明のフェルビナク含有分散型貼付剤においても薬物の放出性が高くかつ十分な薬理作用が長時間にわたって持続される。
本発明の貼付剤は、上記のスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ロジン系樹脂、可塑剤及びフェルビナクに加えて、ポリイソブチレンをさらに含有していることが好ましく、本質的にスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ロジン系樹脂、可塑剤、ポリイソブチレン及びフェルビナクからなるものであってもよい。
本発明にかかるポリイソブチレンとは、イソブチレンの重合体であり、このようなポリイソブチレンとしては、オパノールB−3、B−10、B−15、B−50、B−100、B−200(商品名、BASF(株)製)、ビスタネックスLM−MS、LM−MH、MML−80、MML−100、MML−120、MML−140(商品名、エクソン化学(株)製)、テトラックス3T、4T、5T、6T(商品名、日本石油化学(株)製)等が挙げられ、1種又は2種以上の組合せを使用することができる。
上記ポリイソブチレンの配合量は、貼付剤全体の好ましくは6〜40重量%、より好ましくは6.5〜20重量%である。この配合割合にすることによって、製剤の安定性、粘着力、付着持続性、薬物の経皮吸収性、薬物の分散性、剥離時の痛み、皮膚のかぶれの発生率等が大きく改善される。なお、上記の配合量が6重量%未満では粘着力、付着持続性が低下すると共に、剥離時の痛み、皮膚のかぶれの発生率が増加する傾向にある。他方、上記の配合量が40重量%を越えると保型性が低下すると共にベタツキが増加する傾向にある。
本発明の貼付剤は、上記のスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ロジン系樹脂、可塑剤、フェルビナク及び所望によりポリイソブチレンに加えて、無機充填剤、合成高分子、粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、抗ヒスタミン剤、抗菌剤、香料等の他の添加成分を必要に応じてさらに含有していてもよく、中でも酸化防止剤をさらに含有していることが好ましい。従って、本発明の貼付剤は、本質的にスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ロジン系樹脂、可塑剤、ポリイソブチレン、酸化防止剤及びフェルビナクからなるものであってもよい。
このような他の添加成分としては、無機充填剤(水酸化アルミニウム、含水ケイ酸アルミニウム、合成ケイ酸アルミニウム、カオリン、酸化チタン、タルク、酸化亜鉛、含水シリカ、炭酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイソウ土、無水ケイ酸、ベントナイト等)、合成高分子(ポリアクリル酸系ポリマー、合成ポリイソプレンゴム、ポリスチレン、ポリブタジエンゴム、シリコーンゴム、スチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体等)、粘着付与剤(テルペン樹脂、石油系樹脂等)、酸化防止剤(アスコルビン酸、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ノルジヒドログアヤレチン酸、トコフェロール、酢酸トコフェロール等)、紫外線吸収剤(パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エステル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、サリチル酸エステル、アントラニル酸メチル、ウンベリフェロン、エスクリン、ケイヒ酸ベンジル、シノキサート、グアイアズレン、ウロカニン酸、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、オクタベンゾン、ジオキシベンゾン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、スリンベンゾン、ベンゾレルシノール、オクチルジメチルパラアミノベンゾエート、エチルヘキシルパラメトキシサイナメート等)、抗ヒスタミン剤(塩化イソペンチル、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸イプロヘプチン、塩酸ジフェニルピラリン、塩酸シプロヘプタジン、塩酸トリプロリジン、塩酸プロメタジン、塩酸ホモクロルシクリジン、酒石酸アリメマジン、タンニン酸ジフェンヒドラミン、テオクル酸ジフェニルピラリン、フマル酸クレマスチン、マレイン酸クロルフェニラミン、マレイン酸ジメチンデン、メキタジン等、抗菌剤(パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸、安息香酸塩、サリチル酸塩、ソルビン酸、ソルビン酸塩、デヒドロ酢酸塩、4−イソプロピル−3−メチルフェノール、2−イソプロピル−5−メチルフェノール、ヒノキチオール、クレゾール、2,4,4−トリクロロ−2'−ヒドロキシジフェニルエーテル、3,4,4'−トリクロロカルバニド、クロロブタンノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等)、清涼剤又は香料(1−メントール等)等が挙げられる。
このような他の添加成分の配合量は、貼付剤全体の好ましくは、0.01〜7重量%、より好ましくは0.1〜5重量%である。これらの他の添加成分のうち、酸化防止剤の配合量は貼付剤全体の好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.5〜2重量%である。上記の配合量が上記下限未満では経時による基剤の劣化が起こり、膏体残り、ベタツキ等が増加する傾向にあり、他方、上記の配合量が上記上限を越えると製剤の凝集力、保型性が低下し、剥離時の痛み、ベタツキ等が増加する傾向にある。
上記の諸成分を用いて調製される本発明の貼付剤(貼付剤層)の厚み(後述する支持体及び剥離被覆物の厚みは含まない)は50〜300μmであり、好ましくは80〜200μmである。この範囲内の厚みにすることによって、粘着性、凝集力、付着持続性、剥離時の痛み等が大きく改善される。なお、上記の厚みが50μm未満では粘着性や付着持続性が低下し、他方、上記の厚みが300μmを越えると凝集力や保型性が低下する。
このような本発明の貼付剤は伸縮性に富んでおり、縦横自由自在に伸縮する。このように本発明の貼付剤は優れた付着性と共に高い伸縮率を有していることによって、従来の可溶化剤含有貼付剤では使用することが困難であった伸縮性に富んだ支持体を使用することが可能となり、高水準の貼付感が達成される。
上記本発明のフェルビナク含有貼付剤は、以下の優れた諸特性を有する。
1)油性の貼付剤とすることで優れた付着性を有し、肘、膝などの屈曲部にも長時間剥がれることなく貼付することができる。
2)薬物を飽和溶解度以上の濃度で半溶融状態で分散させているために、期待される薬効が長時間にわたり発現される。
3)水を含まない油性基剤であるために、貼付部位の保温効果に優れ、慢性の炎症等にも使用できる。
4)可溶化剤、吸収促進剤等を使用しないため作業行程が簡便になり、なおかつ製剤の経時安定性にも優れる。
5)油性の貼付剤とすることで厚みを薄くでき、貼付中のフィット感に優れる。
6)従来の可溶化剤含有貼付剤(硬膏剤)は、その粘着性が十分でなかったため、その大きさは80cm2以下程度に制限されていた。それに対して本発明の貼付剤は、可溶化剤を含有していないことに起因して粘着性が著しく高く、その大きさを100cm2以上にすることが可能である。このように本発明の貼付剤は、従来のパップ剤と同等の大きさにすることが可能であり、しかもパップ剤よりも粘着性及び伸縮性に優れる。
上記本発明の貼付剤は支持体上に展延されていることが好ましい。このような支持体としては、本発明の貼付剤からの薬物の放出に影響しないものが望ましく、伸縮性又は非伸縮性のものが用いられ得る。本発明に使用可能な支持体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン等の合成樹脂のフィルム、シート、シート上多孔質体、シート状発泡体、織布又は不織布;紙;織布;不織布;これらの積層体等が挙げられる。
これらの貼付剤支持体の中でも、伸縮性を有する支持体が好ましく、特に伸縮性ポリエステル織布が好適である。また、このような伸縮性ポリエステル織布としては、試料幅50mm、試料長200mm及び伸縮強度200mm/minの測定条件での30%モジュラス(引張り強度)試験において、縦方向強度200g〜3kg及び横方向強度100g〜600gを示すものが好ましい。更に、本発明にかかる前記支持体の目付(単位面積当たりの重量)は100±30g/m2であることが好ましい。
前述のように本発明の貼付剤は高い伸縮率を有しているため、従来の可溶化剤含有貼付剤では使用することが困難であった伸縮性に富んだ支持体、特に好ましくは伸縮性ポリエステル織布を使用することが可能となる。このように伸縮性を有するポリエステル織布を用いることにより、本発明の貼付剤は以下の点で優れる傾向にある。すなわち、i)従来の可溶化剤含有貼付剤は、動きが激しい関節部位等の屈曲部に貼着しても、その動きのために剥離し易かった。それに対して、本発明の貼付剤においては、ポリエステル織布が皮膚の動きに伴って縦、横自在に伸縮するため、つっぱり感が少なく、長時間にわたってしっかりと貼着される。
ii)ポリエステル織布が適度な柔軟性を有するため、貼り易くかつ剥がし易い。
iii)投錨性が向上し(支持体中に膏体がしみ込みかつ粘着力が保持される)、伸縮性が保持される。
次に、本発明のフェルビナク含有貼付剤の製造方法の好適な一例について説明する。
先ず、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ロジン系樹脂及び可塑剤(ポリイソブチレン、他の添加成分等を含有させる場合はさらにそれらの成分)をそれぞれ所定の割合で混合して混合物とし、窒素等の不活性雰囲気下で加熱撹拌して溶解物とする。攪拌時の温度は110〜200℃が好ましく、攪拌時間は30〜120分間が好ましい。続いて、薬効成分であるフェルビナクを前記溶解物中に添加し、好ましくは110〜200℃で好ましくは5〜30分間攪拌して均一な溶解物を得る。なお、この溶解物中では、フェルビナクは熱により液体となっていることが好ましい。
次に、この溶解物を通常の方法で直接支持体上に展延した後に剥離被覆物で覆うか、あるいは一旦この溶解物を剥離被覆物上に展延した後に支持体上に被せて溶解物を支持体上に圧着転写させても良い。このような剥離被覆物としては、剥離処理(剥離しやすくするための処理)を施した剥離紙、セロファン、又はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の合成樹脂フィルム等が挙げられる。以上の製造方法によって、基剤中にフェルビナクが半溶融状態で均一に分散している本発明の貼付剤が得られる。
なお、前記製造方法における各基剤成分、薬効成分、その他の添加成分を配合する順序は、その一例を述べたに過ぎず、本発明の貼付剤の製造方法はこの配合順序の方法に限定されるものではない。
実施例 以下、本発明のフェルビナク含有貼付剤について実施例及び比較例を示してより具体的に説明するが、本発明のフェルビナク含有貼付剤は下記の実施例に記載のものに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中、「部」及び「%」とは特に明記しない限りそれぞれ「重量部」及び「重量%」を意味する。
実施例1スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(商品名:カリフレックスTR−1107) 25.0部流動パラフィン 47.0部ロジン系樹脂(商品名:エステルガムH) 12.0部ポリイソブチレン(商品名:オパノールB−10)10.0部ジブチルヒドロキシトルエン 1.0部フェルビナク 5.0部 上記の処方で前記製造方法に従って貼付剤を作製した。すなわち、上記処方中のフェルビナク以外の諸成分を混合して混合物とし、窒素雰囲気下、130〜80℃で40〜90分間撹拌して溶解物とした。続いて、薬効成分であるフェルビナクを前記溶解物中に添加し、130〜180℃で3〜20分間撹拌して均一な溶解物を得た。次に、この溶解物を支持体(ポリエステルからなる織布)上に、得られる貼付剤層の厚みが50μmとなるように展延した後に剥離被覆物(ポリエステルフィルム)で覆い、冷却後に所望の大きさに裁断したところ、フェルビナクが半溶融状態で均一に分散している分散型の貼付剤が得られた。また、使用したポリエステル織布は、30%モジュラス試験(試料幅50mm、試料長200mm、伸長強度200mm/min、オートグラフAGS−100B(島津製作所製)を使用)において縦方向強度が210〜300g、横方向強度が100〜170gのものであり、110±20g/m2の目付を有するものであった。
実施例2スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(商品名:カリフレックスTR−1111) 30.0部流動パラフィン 39.0部ロジン系樹脂(商品名:パインクリスタルKE−100)
20.0部ポリイソブチレン(商品名:オパノールB−50) 6.0部ジブチルヒドロキシトルエン 1.0部フェルビナク 4.0部 処方を上記処方に変更し、貼付剤層の厚みを100μmとした以外は実施例1と同様にして貼付剤を作製したところ、フェルビナクが半溶融状態で均一に分散している分散型の貼付剤が得られた。
実施例3スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(商品名:カリフレックスTR−1112) 20.0部流動パラフィン 46.0部ロジン系樹脂(商品名:ステベライトエステル7)
15.0部ポリイソブチレン(商品名:オパノールB−100)
15.0部ジブチルヒドロキシトルエン 1.0部フェルビナク 3.0部 処方を上記処方に変更し、貼付剤層の厚みを140μmとした以外は実施例1と同様にして貼付剤を作製したところ、フェルビナクが半溶融状態で均一に分散している分散型の貼付剤が得られた。
実施例4スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(商品名:カリフレックスTR−1117) 23.0部流動パラフィン 40.0部ロジン系樹脂(商品名:KE−311) 25.0部ポリイソブチレン(商品名:オパノールB−200)8.0部ジブチルヒドロキシトルエン 1.0部フェルビナク 3.0部 処方を上記処方に変更し、貼付剤層の厚みを300μmとした以外は実施例1と同様にして貼付剤を作製したところ、フェルビナクが半溶融状態で均一に分散している分散型の貼付剤が得られた。
実施例5スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(商品名:JSR SIS−5000) 20.0部流動パラフィン 41.0部ロジン系樹脂(商品名:フォーラル105) 15.0部ポリイソブチレン(商品名:ビスタネックスLM−MS)
20.0部ジブチルヒドロキシトルエン 1.0部フェルビナク 3.0部 処方を上記処方に変更し、貼付剤層の厚みを200μmとした以外は実施例1と同様にして貼付剤を作製したところ、フェルビナクが半溶融状態で均一に分散している分散型の貼付剤が得られた。
実施例6スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(商品名:JSR SIS−5002) 15.0部流動パラフィン 58.0部ロジン系樹脂(商品名:ステベライト10) 15.0部ポリイソブチレン(商品名:ビスタネックスLM−MH))
7.0部ジブチルヒドロキシトルエン 1.0部フェルビナク 4.0部 処方を上記処方に変更し、貼付剤層の厚みを80μmとした以外は実施例1と同様にして貼付剤を作製したところ、フェルビナクが半溶融状態で均一に分散している分散型の貼付剤が得られた。
実施例7スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(商品名:クインタック3530) 35.0部流動パラフィン 35.0部ロジン系樹脂(商品名:フォーラル85) 15.0部ポリイソブチレン(商品名:ビスタネックスMML−140)
10.0部ジブチルヒドロキシトルエン 1.0部フェルビナク 4.0部 処方を上記処方に変更し、貼付剤層の厚みを160μmとした以外は実施例1と同様にして貼付剤を作製したところ、フェルビナクが半溶融状態で均一に分散している分散型の貼付剤が得られた。
実施例8スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(商品名:クインタック3421) 25.0部流動パラフィン 30.0部ロジン系樹脂(商品名:ペンタリン4820) 22.0部ポリイソブチレン(商品名:テトラックス3T) 15.0部ジブチルヒドロキシトルエン 1.0部フェルビナク 7.0部 処方を上記処方に変更し、貼付剤層の厚みを120μmとした以外は実施例1と同様にして貼付剤を作製したところ、フェルビナクが半溶融状態で均一に分散している分散型の貼付剤が得られた。
実施例9スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(商品名:ソルプレン428) 25.0部流動パラフィン 36.0部ロジン系樹脂(商品名:ハーコリンD) 25.0部ポリイソブチレン(商品名:テトラックス5T) 7.5部ジブチルヒドロキシトルエン 1.0部1−メントール 0.5部フェルビナク 5.0部 処方を上記処方に変更し、貼付剤層の厚みを160μmとした以外は実施例1と同様にして貼付剤を作製したところ、フェルビナクが半溶融状態で均一に分散している分散型の貼付剤が得られた。
実施例10スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(商品名:クインタック3421) 15.0部流動パラフィン 40.0部ロジン系樹脂(商品名:ハリエスターL) 1.0部ポリイソブチレン(商品名:テトラックス6T) 30.0部ジブチルヒドロキシトルエン 1.0部1−メントール 1.0部フェルビナク 3.0部 処方を上記処方に変更し、貼付剤層の厚みを180μmとした以外は実施例1と同様にして貼付剤を作製したところ、フェルビナクが半溶融状態で均一に分散している分散型の貼付剤が得られた。
実施例11 ポリイソブチレンを配合しなかった以外は実施例9と同様にして貼付剤を作製した。
実施例12 貼付剤層の厚みを50μmとした以外は実施例3と同様にして貼付剤を作製した。
実施例13 貼付剤層の厚みを80μmとした以外は実施例3と同様にして貼付剤を作製した。
実施例14 貼付剤層の厚みを200μmとした以外は実施例3と同様にして貼付剤を作製した。
実施例15 貼付剤層の厚みを300μmとした以外は実施例3と同様にして貼付剤を作製した。
比較例1スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(商品名:カリフレックスTR−1112) 20.0部流動パラフィン 52.0部ロジン系樹脂(商品名:KE−311) 15.0部ポリイソブチレン(商品名:テトラックス4T) 5.0部ジブチルヒドロキシトルエン 2.0部クロタミトン 5.0部フェルビナク 1.0部 処方を上記処方に変更、すなわちフェルビナクの可溶化剤としてクロタミトンを配合した以外は実施例5と同様にして貼付剤を作製したところ、フェルビナクが可溶化剤により溶融した状態で存在する溶解型の貼付剤が得られた。なお、本比較例においては、フェルビナクをクロタミトンに溶解して前記溶解物中に添加した。
比較例2 薬効成分であるフェルビナクを配合しなかった以外は実施例5と同様にして貼付剤を作製した。
比較例3 貼付剤層の厚みを30μmとした以外は実施例3と同様にして貼付剤を作製した。
比較例4 貼付剤層の厚みを350μmとした以外は実施例3と同様にして貼付剤を作製した。
試験例1(安定性試験:粘着力)
実施例3、5、7、10及び比較例1で得られた貼付剤の粘着力の安定性を以下のようにして評価した。すなわち、各貼付剤(大きさ10cm×14cm)の製造直後(初期)のもの、40℃で3ヶ月保存したもの、40℃で6ヶ月保存したものの粘着力を、プローブタック試験法(使用装置:PROVE TACK TESTER)により測定した。得られた結果を表1に示す。


表1に示した結果から明らかなように、実施例3、5、7、10で得られた貼付剤の粘着力の安定性は良好であったが、比較例1で得られた貼付剤の粘着力はクロタミトンのブリードにより経時的に低下した。
試験例2(安定性試験:ヘアレスマウス皮膚透過試験)
実施例5及び比較例1で得られた貼付剤の初期のもの及び40℃で6ヶ月保存したものを用い、以下のようにしてヘアレスマウス皮膚透過試験を行った。すなわち、ヘアレスマウス(雌、7週令)の剥離した背部皮膚に直径10mmに切り取った貼付剤を貼付し、真皮側がレセプター相になるようにフロースルー型セルに装着した。そして、レセプター液(pH7.4のリン酸バッファー)を0.8ml/hrの流速で流し、レセプター液中に透過してきたフェルビナクの量をHPLCを用いて測定した。得られた結果を図1に示す。
図1に示した結果から明らかなように、実施例5で得られた貼付剤は40℃で6ヶ月保存した後であっても安定した薬物放出性を示し、比較例1で得られた貼付剤に比べて薬物放出性が長時間にわたって安定して持続した。
試験例3(カラゲニン足浮腫試験)
体重135g前後のWistar系雄性ラットを1群15匹ずつで使用した。実施例5で得られた貼付剤、比較例2で得られた貼付剤、市販フェルビナク含有パップ剤(商品名:セルタッチ、日本レダリー(株)製)をそれぞれ3cm×4cmサイズに裁断し、それぞれの貼付剤(又はパップ剤)をラットの右後足に4時間貼付した後に除去し、直ちに1%カラゲニン溶液0.1mlを同部位へ皮下注射して反応を惹起させた。反応惹起から3時間後に足容積を測定し、注射前の足容積に基づいて浮腫率を算出した。得られた結果を図2に示す。なお、コントロールは、貼付剤(又はパップ剤)の貼付を行なわなかった例である。
図2に示した結果から明らかなように、カラゲニン足浮腫に対して、フェルビナクを含有しない比較例2で得られた貼付剤では影響を認められなかったが、実施例5で得られた貼付剤は強い抗炎症作用を示し、その強さは市販フェルビナク含有パップ剤と同等であった。
試験例4(付着性試験)
健康成人男女30名に実施例9及び実施例11で得られた貼付剤(大きさ10cm×14cm)をそれぞれ左右の膝に貼付し、約6時間後に付着性と剥離時の痛みの判定を以下の基準に従って行った。
[判定基準]
付着性 完全に付着 5点、端の部分剥離 4点、1/3以上剥離 3点、1/2以上剥離 2点、完全脱落 1点剥離時の痛み 痛くない 5点、あまり痛くない 4点、少し痛い 3点、痛い 2点、非常に痛い 1点 30名のスコアの平均値を表2に示す。


表2に示した結果から明らかなように、実施例9及び実施例11で得られた貼付剤は何れも付着性が良好であるが、実施例9で得られた貼付剤は更に良好な付着性を備えると共に剥離時の痛みも少ない使用上非常に優れた貼付剤であるといえる。
試験例5(付着性試験)
実施例3、12、13、14及び15、並びに比較例3及び4で得られた貼付剤(大きさ10cm×14cm)をそれぞれ健康成人男女30名の膝に貼付し、約6時間後に付着性の判定を以下の基準に従って行った。
[判定基準]
付着性 完全に付着 5点、端の部分剥離 4点、1/3以上剥離 3点、1/2以上剥離 2点、完全脱落 1点 30名のスコアの平均値を表3に示す。
試験例6(安定性試験:保型性)
実施例3、12、13、14及び15、並びに比較例3及び4で得られた貼付剤(大きさ10cm×14cm)をそれぞれ50℃で2ケ月保管した後に形状の評価を以下の基準に従って行った。
[判定基準]
良好な形状を保っていた:○ 若干の膏体のはみ出しが観察された:△ ひどい膏体のはみ出しが観察された:× 得られた結果を表3に示す。


表3に示した結果から明らかなように、実施例3、12、13、14及び15で得られた貼付剤に関しては付着性、50℃で2ケ月保存後の形状とも良好であったが、比較例3で得られた貼付剤は付着性が十分なものではなく、比較例4で得られた貼付剤は50℃で2ケ月保存後の形状が十分なものではなかった。
産業上の利用可能性 以上説明したように、本発明によれば、可溶化剤であるクロタミトンを含有しない分散型貼付剤であるにも拘らず薬物の放出性が高くかつ十分な薬理作用(抗炎症作用)が長時間にわたって持続され、しかも皮膚への付着性が長時間にわたって高水準に維持され、製剤の安定性に優れ、皮膚刺激性が少ないフェルビナク含有貼付剤を得ることが可能となる。
従って、本発明によって外用の消炎鎮痛貼付剤として有用なフェルビナク含有貼付剤を提供できるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体10〜40重量%、ロジン系樹脂5〜30重量%、可塑剤20〜70重量%、及び薬効成分としてのフェルビナク1.1〜10重量%を含有する貼付剤であって、該貼付剤が前記フェルビナクに対する可溶化剤であるクロタミトンを含有しておらず、前記フェルビナクが前記貼付剤中に半溶融状態で分散しており、かつ前記貼付剤の厚さが50〜300μmである貼付剤。
【請求項2】前記フェルビナクが溶融した状態のものと微細な結晶状態のものとが共存している状態で前記貼付剤中に均一に分散している、請求項1記載の貼付剤。
【請求項3】スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ロジン系樹脂及び可塑剤を含む基剤中に、薬効成分としてのフェルビナクが含有された貼付剤であって、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体10〜40重量%、ロジン系樹脂5〜30重量%、可塑剤20〜70重量%、及びフェルビナク1.1〜10重量%を含有し、前記フェルビナクに対する可溶化剤であるクロタミトンを含有しておらず、かつ厚さが50〜300μmであり、前記フェルビナクは、前記基剤中に溶融した状態のものと微細な結晶状態のものとが共存している状態で均一に分散されており、溶融している前記フェルビナクが前記基剤から放出されるに従い、結晶状態で均一に分散している前記フェルビナクが前記基剤中へと随時溶解していくことにより、安定した前記フェルビナクの放出がされる、貼付剤。
【請求項4】ポリイソブチレン6〜40重量%をさらに含有する、請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項5】酸化防止剤0.1〜5重量%をさらに含有する、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項6】フェルビナクに対する可溶化剤を含有していない、請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項7】伸縮性ポリエステル織布からなる支持体を更に備える、請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項8】前記伸縮性ポリエステル織布が、試料幅50mm、試料長200mm及び伸長強度200mm/minの測定条件での30%モジュラス試験において、縦方向強度200g〜3kg及び横方向強度100g〜600gを示すものである、請求項7記載の貼付剤。
【請求項9】前記支持体の目付が100±30g/m3である、請求項7又は8記載の貼付剤。
【請求項10】請求項1〜6のうちのいずれか一項に記載の貼付剤を製造する製造方法であって、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ロジン系樹脂及び可塑剤(他の添加成分を含有させる場合はさらにそれらの成分)をそれぞれ前記の割合で混合して混合物とし、不活性雰囲気下で加熱攪拌して溶解物とし、続いて、薬効成分であるフェルビナクを前記の割合で前記溶解物中に添加し、熱により液体となるように撹拌して均一な溶解物を得る工程を含む、製造方法。
【請求項11】請求項7〜9のうちのいずれか一項に記載の貼付剤を製造する製造方法であって、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ロジン系樹脂及び可塑剤(他の添加成分を含有させる場合はさらにそれらの成分)をそれぞれ前記の割合で混合して混合物とし、不活性雰囲気下で加熱攪拌して溶解物とし、続いて、薬効成分であるフェルビナクを前記の割合で前記溶解物中に添加し、熱により液体となるように撹拌して均一な溶解物を得る工程と、前記均一な溶解物を直接前記支持体上に展延した後に剥離被覆物で覆うか、あるいは一日前記均一な溶解物を剥離被覆物上に展延した後に前記支持体上に被せて溶解物を支持体上に圧着転写させる工程と、を含む、製造方法。

【第1図】
image rotate


【第2図】
image rotate


【特許番号】特許第3499247号(P3499247)
【登録日】平成15年12月5日(2003.12.5)
【発行日】平成16年2月23日(2004.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−525452
【出願日】平成9年12月4日(1997.12.4)
【国際出願番号】PCT/JP97/04439
【国際公開番号】WO98/024423
【国際公開日】平成10年6月11日(1998.6.11)
【審査請求日】平成15年4月30日(2003.4.30)
【早期審査対象出願】早期審査対象出願
【出願人】(999999999)久光製薬株式会社
【参考文献】
【文献】特開 平8−291055(JP,A)
【文献】特開 平7−238014(JP,A)
【文献】特開 昭55−133310(JP,A)
【文献】国際公開96/008245(WO,A1)