説明

フェルール及び光コネクタ

【課題】光ファイバの先端面を安価に且つ確実に保護する。
【解決手段】各光ファイバ41,45の先端部の外周に取り付けられるフェルール51,91が、筒状の基部67と、この基部67の先端側に延設された突出片71とを備える。突出片71は、基部67の先端部の一部から各光ファイバ41,45の先端面41a,45aを先端方向に越えるよう櫛歯状に延設される。障害物がよほど尖ったものでない限り、当該障害物が各フェルール51,91の各突出片71同士の間隙を越えて各光ファイバ41,45の先端面41a,45aに到達することがなくなり、各光ファイバ41,45の先端面41a,45aを極めて高確率で且つ簡単で安価な構造で保護できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの先端部に取り付けられるフェルール及び光コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、安全性装備、低燃費装備、乗員の快適装備の充実を図るため、車両の電装機器は増加の一途である。これにより車両内での通信情報量も増大しており、その対策として、車両内で用いられる情報伝達媒体を電線から高速情報伝達媒体である光ファイバに置き換える対策が採られ始めている。
【0003】
ところで、光ファイバの端面に汚れや傷が付くと、光ファイバの情報伝達能力は低下するので、光ファイバの端部に取り付けられる光コネクタには、光ファイバの端面を保護するための端面保護構造が採用されているものがある。
【0004】
従来の光ファイバの端面保護構造では、図8の如く、互いに嵌合する第1及び第2のコネクタハウジング1,3のそれぞれに収容凹部5,7を形成し、その収容凹部5,7内で、各光ファイバ9,11の先端面9a,11aが各収容凹部5,7の開口面から突出しないように配置し、各光ファイバ9,11の先端部をその収納凹部5,7内に収容する構造が採用されている。
【0005】
かかる構成で両コネクタハウジング1,3同士を嵌合すると、図9のように、光ファイバ9,11の先端面9a,11aが突き合うように当接し、両者間の光結合がなされる。
【0006】
ここで、各光ファイバ9,11の先端部の外周部には、図10の如く、その折れ曲がりや損傷等による光結合の失敗を防止するために、金属製または工業プラスチック製等の略筒状のフェルール13が設けられている。
【0007】
しかしながら、このようなフェルール13を使用する場合、光ファイバ9,11の各先端面9a,11aとフェルール13の先端位置とが面一で配されているため、図8のように光ファイバ9,11の各先端面9a,11aを収容凹部5,7の奥まった位置に配置しても、指が先端面9a,11aに接触したり、小さなゴミが先端面9a,11aに付着したりするのを充分に防止することが困難であった。
【0008】
このことを考慮して、光ファイバと光電素子とを光結合させる分野においては、例えば図11に示した特許文献1のように、雌型コネクタのハウジング21に雄型コネクタのハウジング23を結合する際に、押圧片25の摺接により弾性体27を変形して係止体29を押し下げ、開放作動体31の当接によりガイドピン33を上方へ移動してフード本体35を露出方向へ回転する一方、両ハウジング21,23の分離時には、ガイドピン33を下方へ移動してフード本体35を被覆方向へ回転し、フード本体35の回転により光ファイバ37の端面を被覆,露出していた。これにより、光ファイバ37の端面を被覆して保護するとともに、光ファイバ37と光電素子39との光結合を容易に行うことが可能になっていた。
【0009】
【特許文献1】特開平06−011628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記した特許文献1に開示された技術は、光ファイバ37と光電素子39との光結合に関するものであるが、この技術を一対の光ファイバ同士の光結合に応用することは可能である。
【0011】
しかしながら、特許文献1では、両コネクタのハウジング21,23の構造が複雑になってしまい、光ファイバの先端面を安価に保護することが困難であった。
【0012】
そこで、この発明の課題は、光ファイバの先端面を安価に且つ確実に保護することが可能な光ファイバの先端部に取り付けられるフェルール及び光コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決すべく、請求項1に記載の発明は、光ファイバの先端部の外周に取り付けられるフェルールであって、前記光ファイバの先端部の外周に取り付けられる略筒状の基部と、前記基部の先端側に延設された突出片とを備え、前記突出片が、前記基部の先端部の一部から前記光ファイバの先端面を先端方向に越えるよう櫛歯状に延設されていものである。
【0014】
請求項2に記載の発明は、第1の光ファイバの先端部が導出した状態で前記第1の光ファイバを保持する第1のコネクタ部と、前記第1のコネクタ部との結合部に第2の光ファイバの先端部が導出した状態で前記第2の光ファイバを保持した第2のコネクタ部とからなる光コネクタであって、前記各コネクタ部が、前記各光ファイバの先端部に取り付けられるフェルールと、前記フェルールを保持するハウジングとを備え、前記フェルールが、前記光ファイバの先端部の外周に取り付けられる略筒状の基部と、前記基部の先端側に延設された突出片とを備え、前記突出片が、前記両コネクタ部の結合状態でそれら両フェルールの突出片同士が嵌合して前記光ファイバの先端部の全周を覆う形状に形成されたものである。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の光コネクタであって、前記突出片が、前記基部の先端部の一部から前記光ファイバの先端面を先端方向に越えるよう櫛歯状に延設されているものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1〜請求項3に記載の発明の光コネクタは、障害物がよほど尖ったものでない限り、当該障害物が各フェルールの各突出片同士の間隙を越えて各光ファイバの先端面に到達することがない。したがって、フェルールの突出片により各光ファイバの先端面を極めて高確率で保護することが可能となる。しかも、フェルールの形状だけで光ファイバの先端面を保護できるので、両コネクタのハウジングの構造が複雑にならずに済む。したがって、光ファイバの先端面を安価に且つ確実に保護することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<構成>
図1は光コネクタの第1のコネクタ部、図2は光コネクタの第2のコネクタ部、図3は本発明の一の実施の形態において両コネクタ部の切り離し状態を示す断面図、図4は両コネクタ部の嵌合状態を示す断面図、図5は本発明の一の実施の形態に係るフェルールを示す図である。
【0018】
この光コネクタは、図1〜図4の如く、内部に第1の光ファイバ41の先端部を導出した状態でこれを保持する第1のコネクタ部43(図1)と、内部に第2の光ファイバ45の先端部を導出した状態でこれを保持する第2のコネクタ部47(図2)とを備え、両コネクタ部43,47を嵌合することで両光ファイバ41,45の光結合を行うものである。
【0019】
各光ファイバ41,45は、プラスチックまたはガラス等の透明材料が使用された一般的な光伝導線部品が適用され、その先端面41a,45aで光が入出射されることで光結合が行われるものである。
【0020】
第1のコネクタ部43は、第1の光ファイバ41の先端部の外周に取り付けられる第1のフェルール51と、この第1のフェルール51を先端方向に導出した状態で当該第1のフェルール51を保持する第1のハウジング53と、第1のハウジング53内で第1のフェルール51を固定する第1の固定部材55とを備える。
【0021】
第1のフェルール51は、図5の如く、第1の光ファイバ41の先端部における折れ曲がりや損傷等による光結合の失敗を防止するとともに、指やゴミ等から第1の光ファイバ41の端面を保護するために、第1の光ファイバ41の先端部の外周に取り付けられるもので、工業プラスチックまたは金属等が使用されて形成される。この第1のフェルール51は、第1の光ファイバ41の先端部の外周を覆う円筒状の基部67と、基部67の後端部付近の外周に張り出し形成されたフランジ69と、基部67の先端部の一部から先端方向に矩形の櫛歯状に延設された複数の突出片71とが一体形成された形状とされている。
【0022】
第1のフェルール51の基部67と突出片71は、第1のフェルール51の中心軸を中心として同心円状且つ同径に形成され、第2のコネクタ部47のフェルール91の突出片71に嵌合して両光ファイバ41,45の先端部の全周を覆う形状に形成されている。具体的には、第1のフェルール51の基部67及び突出片71が設置される同心円の円周に沿って隣り合う突出片71同士の間隙寸法W1は全て同一とされ、且つ各突出片71の間隙寸法W1と幅寸法W2とが同寸法に設定されている。
【0023】
また、この第1のフェルール51の突出片71に対する第1の光ファイバ41の取付位置は、第1の光ファイバ41の先端面41aの位置が、突出片71の長さ方向の中間位置、即ち、基部67からの突出片71の突出寸法L1に対して、第1の光ファイバ41の先端面41aの基部67からの突出寸法L2が半分の寸法になるように設定される。
【0024】
第1のハウジング53は、例えば略角筒状に形成されたハウジング本体74と、このハウジング本体74の内周中間部に形成されて第1のフェルール51の基部67を貫通させる貫通孔75が形成された中間壁77と、ハウジング本体74の一側面(上側面)に形成されて第2のコネクタ部47に係合するための第1の係合部79とを備える。
【0025】
即ち、第1のハウジング53は、ハウジング本体74の内部が中間壁77で仕切られることで、第1の光ファイバ41の先端方向に開放されて第1のフェルール51の先端部を奥まらせて収容する第1の前方収容凹部83と、後方に開放された第1の後方収容凹部85とが形成されている。
【0026】
そして、この第1のハウジング53の第1の後方収容凹部85から第1の光ファイバ41の第1のフェルール51の基部67を貫通孔75に挿入している状態で、そのフランジ69が中間壁77の後面に当接し、さらに第1の固定部材55に形成された押圧体56により中間壁77側に押圧されることで、第1のフェルール51が第1のハウジング53内で位置決め固定されるようになっている。
【0027】
第1のハウジング53の第1の係合部79は、ハウジング本体74の一側面(上側面)から外側に張り出されて形成された袋壁79aであり、この袋壁79aの一部に、第2のコネクタ部47と係合するための係合孔79bが穿設されて構成されている。
【0028】
第1の固定部材55は、上述のように、第1のハウジング53の第1の後方収容凹部85から第1の光ファイバ41の第1のフェルール51を収容したときに、第1の後方収容凹部85の後面開口を閉塞するとともに、第1のハウジング53内で第1のフェルール51を位置決め固定するもので、第1のフェルール51のフランジ69の後面に当接してこれを中間壁77側に押圧する筒状の押圧体56と、この押圧体56に一体的に形成された略円板形状等の蓋体57とを備え、この蓋体57の中央位置に、第1の光ファイバ41を貫通するための貫通孔57aが形成されている。
【0029】
第2のコネクタ部47は、第2の光ファイバ45の先端部の外周に取り付けられる第2のフェルール91と、この第2のフェルール91を先端方向に導出した状態で当該第2のフェルール91を保持する第2のハウジング93と、この第2のハウジング93内で第2のフェルール91を固定する第2の固定部材95とを備える。
【0030】
第2のフェルール91は、図5の如く、第1のフェルール51と同材料で且つ全く同形状に形成されており、第2の光ファイバ45の先端部の外周を覆う円筒状の基部67と、基部67の後端部付近の外周に張り出し形成されたフランジ69と、基部67の先端部の一部から先端方向に矩形の櫛歯状に延設された複数の突出片71とが一体形成された形状とされている。
【0031】
そして、第2のフェルール91においても第1のフェルール51と同様に、隣り合う突出片71同士の間隙寸法W1が全て同一とされ、且つ各突出片71の間隙寸法W1と幅寸法W2とが同寸法に設定されている。また、この第2のフェルール91の突出片71に対する第2の光ファイバ45の取付位置も、第1のフェルール51と同様に、第2の光ファイバ45の先端面41aの位置が、突出片71の長さ方向の中間位置になるように設定される(図3の第1のフェルール51における符号L1,L2参照)。これにより、図4のように両フェルール51,91の櫛歯状の突出片71同士が交互に噛み合うことが可能とされ、両フェルール51,91同士が係合可能で且つ内部の両光ファイバ41,45の先端面41a,45aを突出片71により保護することが可能となる。
【0032】
第2のハウジング93は、例えば略角筒状に形成されたハウジング本体105と、このハウジング本体105の内周中間部に形成されて第2のフェルール91の基部67を貫通させる貫通孔107が形成された中間壁109と、ハウジング本体105の一側面(上側面)に形成されて第1のコネクタ部43に係合するための第2の係合部111とを備える。
【0033】
即ち、第2のハウジング93は、ハウジング本体105の内部が中間壁109で仕切られることで、第2の光ファイバ45の先端方向に開放されて第2のフェルール91の先端部を奥まらせて収容する第2の前方収容凹部113と、後方に開放された第2の後方収容凹部115とが形成されている。
【0034】
そして、この第2のハウジング93の第2の後方収容凹部115から第2の光ファイバ45の第2のフェルール91の基部67を貫通孔107に挿入している状態で、そのフランジ69が第2の固定部材95に形成された押圧体96により中間壁109側に押圧されることで、第2のフェルール91が第2のハウジング93内で位置決め固定されるようになっている。
【0035】
第2のハウジング93の第2の係合部111は、ハウジング本体105の一側面(上側面)から外側に張り出されて形成された有弾性の弾性片121と、この弾性片121の一部に外側に向けて突設されて第1のコネクタ部43側の係合孔79bに係合するための係合爪123とを備える。この係合爪123には、先端方向に向かってテーパ面が形成されている。そして、弾性片121が第1のコネクタ部43側の袋壁79aの先端部に当接したときに、弾性片121が袋壁79aの内面側に導かれて倒れるように弾性変形し、これにより弾性片121が袋壁79a内に収納され、係合爪123が係合孔79bの位置に到達した際に、弾性片121の弾性復帰力によって係合爪123が外側(上側)の係合孔79bに填め込まれて係合するようになっている。
【0036】
第2の固定部材95は、上述のように、第2のハウジング93の第2の後方収容凹部115から第2の光ファイバ45の第2のフェルール91を収容したときに、第2の後方収容凹部115の後面開口を閉塞するとともに、第2のハウジング93内で第2のフェルール91を位置決め固定するもので、第2のフェルール91のフランジ69の後面に当接してこれを中間壁109側に押圧する筒状の押圧体96と、この押圧体96に一体的に形成された略円板形状等の蓋体97とを備え、この蓋体97の中央位置に、第2の光ファイバ45を貫通するための貫通孔97aが形成されている。
【0037】
<使用方法>
上記構成の光コネクタの使用方法を説明する。まず、各固定部材55,95の蓋体57,97の貫通孔57a,97aに各光ファイバ41,45を貫通させるよう挿入する。この際、各固定部材55,95の押圧体56,96が各光ファイバ41,45の先端方向に向くようにしておく。
【0038】
そして、図5に示すように、各光ファイバ41,45の先端部に各フェルール51,91を取り付ける。この両フェルール51,91は、互いに同材料で且つ全く同形状であるため、各光ファイバ41,45が第1のコネクタ部43と第2のコネクタ部47のいずれに取り付けられるかを峻別する必要がないため、光ファイバ41,45及びフェルール51,91の品番等の管理は極めて容易なものである。
【0039】
次に、両コネクタ部43,47の各ハウジング53,93の各後方収容凹部85,115から、各光ファイバ41,45の先端部を挿入する。そして、その先端部の各フェルール51,91の各基部67を各ハウジング53,93の中間壁77,109の貫通孔75,107に挿入し、各フランジ69を各中間壁77,109の後面に当接させる。
【0040】
この際、図3のように、第1のコネクタ部43内の第1のフェルール51の突出片71と、第2のコネクタ部47内の第2のフェルール91の突出片71とは、互いに噛み合うことが可能なように、各光ファイバ41,45の中心軸を中心に、所定の角度差だけずらすように回転させておく。例えば、各フェルール51,91における突出片71の形成個数が4個の場合は、各フェルール51,91の角度差θは、「θ=2π/(4×2)=π/4」とされる。一般に、各フェルール51,91における突出片71の形成個数がx個の場合は、各フェルール51,91同士の角度差θは、「θ=π/x」に設定される。
【0041】
この状態で、各光ファイバ41,45に予め取り付けておいた各固定部材55,95を、各ハウジング53,93の各後方収容凹部85,115の方へずらしていき、各固定部材55,95の蓋体57,97で各後方収容凹部85,115を閉塞する。そうすると、この蓋体57,97に一体形成された押圧体56,96が、各フェルール51,91のフランジ69の後面を中間壁77,109側に押圧する。このように、各フェルール51,91のフランジ69が各ハウジング53,93の中間壁77,109と各固定部材55,95の押圧体56,96とに挟み込まれることで、図3のように、各フェルール51,91が各コネクタ部43,47の各ハウジング53,93内で位置決め固定される。
【0042】
この場合、各光ファイバ41,45の先端面41a,45aは、各コネクタ部43,47の各ハウジング53,93の各前方収容凹部83,113の奥まった位置に配置される。したがって、図8に示した従来例と同様、指等が各光ファイバ41,45の先端面41a,45aに接触しにくくなっている。
【0043】
さらに、各光ファイバ41,45の先端面41a,45aが、各フェルール51,91の突出片71の先端部よりも奥まった位置に配置される。したがって、指等の障害物が各前方収容凹部83,113に入り込んで、各光ファイバ41,45の先端面41a,45aに近づこうとしても、その障害物がよほど尖ったものでない限り、当該障害物が各フェルール51,91の各突出片71同士の間隙を越えて各光ファイバ41,45の先端面41a,45aに到達することはなく、当該障害物が各フェルール51,91の突出片71の先端部に接触するだけで済む。したがって、フェルール51,91の突出片71により各光ファイバ41,45の先端面41a,45aを極めて高確率で保護することが可能となる。
【0044】
次に、両コネクタ部43,47同士を嵌合する。この場合、第1のコネクタ部43の第1のハウジング53の第1の前方収容凹部83内に、第2のコネクタ部47の第2のハウジング93の先端部を収納するよう、第2のコネクタ部47を第1のコネクタ部43側に進行させる。
【0045】
このとき、第2のハウジング93の第2の係合部111の弾性片121が、第1のコネクタ部43の第1の係合部79側の袋壁79aの先端部に当接する。そうすると、弾性片121が袋壁79aの内面側に導かれて倒れるように弾性変形し、これにより弾性片121が袋壁79a内に収納される。そして、第2の係合部111の弾性片121に形成された係合爪123が第1の係合部79の係合孔79bの位置に到達したとき、図4の如く、弾性片121の弾性復帰力によって係合爪123が外側(上側)の係合孔79bに填め込まれ、これにより両係合部79,111同士が係合する。
【0046】
この際、上述したように、各フェルール51,91の先端部で互いに隣り合う突出片71同士の間隙寸法W1が全て同一とされ、且つ各突出片71の間隙寸法W1と幅寸法W2とが同寸法に設定されており、さらに、各コネクタ部43,47内の各フェルール51,91が、各光ファイバ41,45の中心軸を中心に、所定の角度差θ(突出片71の形成個数xに対して「θ=π/x」)だけ互いにずれるように回転されているので、第1のコネクタ部43内の第1のフェルール51の突出片71と、第2のコネクタ部47内の第2のフェルール91の突出片71とが、図4のように交互に噛み合うようにして嵌合する。
【0047】
そうすると、内部の両光ファイバ41,45の先端面41a,45aの周囲を、フェルール51,91の複数の突出片71が覆う状態となり、これにより、先端面41a,45aが強固に保護されるとともに、両光ファイバ41,45の先端部における光軸同士が高精度に位置決めされる。
【0048】
このように、両コネクタ部43,47を嵌合することで、両光ファイバ41,45の先端面41a,45aの保護と光軸合わせを容易に行うことができる。
【0049】
また、両コネクタ部43,47同士を切り離す際には、図4に示した状態から、第2のハウジング93の第2の係合部111の弾性片121の後端部を図中下側に押圧することで、弾性片121に形成された係合爪123を係合孔79bから図中下側に離脱させ、係合爪123と係合孔79bとの係合を解除する。この状態の後、第2の係合部111を第1の係合部79の袋壁79aの図中下面側右方向に摺動させながら、両ハウジング53,93同士を切り離せば良い。
【0050】
このように両コネクタ部43,47を切り離した状態で、上述と同様、各光ファイバ41,45の先端面41a,45aが、各コネクタ部43,47の各ハウジング53,93の各前方収容凹部83,113の奥まった位置に配置され、また各光ファイバ41,45の先端面41a,45aが、各フェルール51,91の突出片71の先端部よりも奥まった位置に配置されるので、指等の障害物が各前方収容凹部83,113に入りにくく、図8に示した従来例と同様、各光ファイバ41,45の先端面41a,45aを保護しやすい状態となる。
【0051】
また、当該障害物が各前方収容凹部83,113に入り込んでも、その障害物がよほど尖ったものでない限り、当該障害物が各フェルール51,91の各突出片71同士の間隙を越えて各光ファイバ41,45の先端面41a,45aに到達することがない。したがって、フェルール51,91の突出片71により各光ファイバ41,45の先端面41a,45aを極めて高確率で保護することが可能となる。
【0052】
そして、両コネクタ部43,47の各ハウジング53,93の形状が、図8に示した従来例と同様で済むので、図11に示した従来例に比べて、両コネクタのハウジングの構造が複雑にならずに済む。したがって、光ファイバの先端面を安価に且つ確実に保護することが可能となる。
【0053】
尚、上記実施の形態において、各フェルール51,91の突出片71の形状が、図5に示したような矩形の櫛歯状に設定されていたが、各突出片71の形状は、同形状の突出片71とその間隙同士が互いに嵌合する形状であればよく、図5に示したような形状に限るものではない。例えば、図6及び図7に示すように、三角形状であってもよく、あるいはこれ以外の形状であっても、半円型、半長円型または半楕円型等、どのような形状であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一の実施の形態に係る光コネクタの第1のコネクタ部を示す斜視図である。
【図2】本発明の一の実施の形態に係る光コネクタの第2のコネクタ部を示す斜視図である。
【図3】本発明の一の実施の形態に係る光コネクタの両コネクタ部が切り離された状態を示す側面視断面図である。
【図4】本発明の一の実施の形態に係る光コネクタの両コネクタ部が嵌合した状態を示す側面視断面図である。
【図5】本発明の一の実施の形態に係る光コネクタの各光ファイバの先端部に取り付けられたフェルールを示す斜視図である。
【図6】他の実施例に係る光コネクタのフェルール同士が互いに離脱した状態を示す側面図である。
【図7】他の実施例に係る光コネクタのフェルール同士が互いに嵌合した状態を示す側面図である。
【図8】従来の光コネクタの両コネクタ部が切り離された状態を示す側面視断面図である。
【図9】従来の光コネクタの両コネクタ部が嵌合した状態を示す側面視断面図である。
【図10】従来の光ファイバの先端部に取り付けられたフェルールを示す斜視図である。
【図11】従来の光コネクタの他の例を示す側面視断面図である。
【符号の説明】
【0055】
41,45 光ファイバ
41a,45a 先端面
43,47 コネクタ部
51,91 フェルール
53,93 ハウジング
55,95 固定部材
56,96 押圧体
57,97 蓋体
57a,97a 貫通孔
67 基部
69 フランジ
71 突出片
74,105 ハウジング本体
75,107 貫通孔
77,109 中間壁
79,111 係合部
79a 袋壁
79b 係合孔
83,113 前方収容凹部
85,115 後方収容凹部
121 弾性片
123 係合爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの先端部の外周に取り付けられるフェルールであって、
前記光ファイバの先端部の外周に取り付けられる略筒状の基部と、
前記基部の先端側に延設された突出片と
を備え、
前記突出片が、前記基部の先端部の一部から前記光ファイバの先端面を先端方向に越えるよう櫛歯状に延設されていることを特徴とするフェルール。
【請求項2】
第1の光ファイバの先端部が導出した状態で前記第1の光ファイバを保持する第1のコネクタ部と、前記第1のコネクタ部との結合部に第2の光ファイバの先端部が導出した状態で前記第2の光ファイバを保持した第2のコネクタ部とからなる光コネクタであって、
前記各コネクタ部が、
前記各光ファイバの先端部に取り付けられるフェルールと、
前記フェルールを保持するハウジングと
を備え、
前記フェルールが、
前記光ファイバの先端部の外周に取り付けられる略筒状の基部と、
前記基部の先端側に延設された突出片と
を備え、
前記突出片が、前記両コネクタ部の結合状態でそれら両フェルールの突出片同士が嵌合して前記光ファイバの先端部の全周を覆う形状に形成されたことを特徴とする光コネクタ。
【請求項3】
請求項2に記載の光コネクタであって、
前記突出片が、前記基部の先端部の一部から前記光ファイバの先端面を先端方向に越えるよう櫛歯状に延設されていることを特徴とする光コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−91404(P2006−91404A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−276482(P2004−276482)
【出願日】平成16年9月24日(2004.9.24)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】