説明

フェロセンジホスフィン配位子

ラセミ体、立体異性体の混合物、または光学的に純粋な立体異性体の形態の式I(式中、XおよびXは、それぞれ互いに独立して、第二級ホスフィノ基であり;Rは、C原子、N原子、S原子、Si原子、P(O)基またはP(S)基を介してシクロペンタジエニル環に結合したハロゲン原子または置換基であり;Rは、C〜C−アルキルまたはフェニルであり;mは、1〜3であり;nは、0または1〜5である)で示される化合物は、鏡像異性選択性のある均一触媒としての遷移金属の錯体のための配位子である。置換の結果として、転化率、立体選択性および/または形成される付加物の配置に影響を与えることができ、そしてこの方法で触媒の最適化が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロペンタジエニル環中で置換された1−sec−ホスフィノメチル−2−sec−ホスフィノフェロセン;それらを製造する方法;遷移金属と配位子としてのこれらのジホスフィンとの金属錯体;不斉または対称付加反応における均一触媒としての金属錯体の使用;および好ましくはプロキラル不飽和有機化合物の不斉水素化の方法に関する。
【0002】
式:
【0003】
【化7】

【0004】
で示されるフェロセンジホスフィンは、公知である。GB2289855Aには、この種のジホスフィン、例えば[2−(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]メチルジシクロヘキシルホスフィン、およびアイソタクチックポリマーを製造するためのそのPd錯体が記載されている。WO01/38336には、付加反応(特に水素化)で不斉触媒として作用する金属錯体のために、この種の配位子が提案されている。良好な転化率および立体選択性は、基質にもよるが、触媒を用いて達成することができる。これらの配位子の欠点は、反応の最適化のためにホスフィノ基中の改良のみが可能なことである。その上、そのような触媒の活性および/または選択性を更に増大させて、可能な適用例の範囲を広げることが必要とされている。
【0005】
予期しないことには、置換基をシクロペンタジエニル環中に導入すると、転化率および/または選択性の両方、ならびに形成される付加物の配置に影響を及ぼし得ることがここに見出された。転化率の上昇、光学収率の上昇、またはその両方の効果、あるいは所望の光学異性体の形成が観察された。適切な非置換配位子が特定の反応で同定されれば、これらの置換された配位子は、最適化に非常に適している。配位子は、新規な製造方法を通して得ることができる。
【0006】
本発明は、第一に、ラセミ体、立体異性体の混合物、または光学的に純粋な立体異性体の形態の式I:
【0007】
【化8】

【0008】
(式中、
およびXは、それぞれ互いに独立して、第二級ホスフィノ基であり;
は、C原子、N原子、S原子、Si原子、P(O)基またはP(S)基を介してシクロペンタジエニル環に結合したハロゲン原子または置換基であり、m>1の場合の基:Rは、同一または異なっており;
は、C〜C−アルキルまたはフェニルであり;
mは、1〜3であり;
nは、0または1〜5である)
で示される化合物を提供する。
【0009】
例示の目的で、後に示す式にも同様に適用される他の鏡像異性体の代表的な式を、以下に示す。
【0010】
【化9】

【0011】
第二級ホスフィノ基:XおよびXは、2個の同一または2個の異なる炭化水素基を含むことができる。後者の場合、第二級ホスフィノ基は、P−キラルである。第二級ホスフィノ基:XおよびXは、好ましくは、それぞれ、2個の同一炭化水素基を含む。更に第二級ホスフィノ基:XおよびXは、同一または異なっていてもよい。
【0012】
炭化水素基は、非置換もしくは置換されていてもよく、そして/またはO、SおよびNからなる群から選択されるヘテロ原子を含んでいてもよい。それらは、炭素原子を1〜22個、好ましくは1〜18個、特に好ましくは1〜14個含んでいてもよい。好ましい第二級ホスフィノ基は、直鎖状または分枝状C〜C12−アルキル;非置換、またはC〜C−アルキル−もしくはC〜C−アルコキシ−置換のC〜C12−シクロアルキルまたはC〜C12−シクロアルキル−CH−;フェニル、ナフチル、フリル、またはベンジル;ならびにハロゲン(例えば、F、ClおよびBr)、C〜C−アルキル、C〜C−ハロアルキル(例えばトリフルオロメチル)、C〜C−アルコキシ、C〜C−ハロアルコキシ(例えばトリフルオロメトキシ)、(CSi、(C〜C12−アルキル)Si、第二級アミノまたは−CO−C〜C−アルキル(例えば−COCH)により置換されたフェニルおよびベンジルからなる群から選択される同一または異なる基を2個含むものである。
【0013】
好ましくは炭素原子を1〜6個含むP上のアルキル置換基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、ならびにペンチルおよびヘキシルの異性体である。P上の非置換またはアルキル置換のシクロアルキル置換基の例は、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、エチルシクロペンチル、ジメチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、エチルシクロヘキシルおよびジメチルシクロヘキシルである。P上のアルキル−、アルコキシ−、ハロアルキル−、ハロアルコキシ−およびハロゲン−置換のフェニルおよびベンジル置換基の例は、o−、m−またはp−フルオロフェニル、o−、m−またはp−クロロフェニル、ジフルオロフェニル、ジクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、トリメチルフェニル、エチルフェニル、メチルベンジル、メトキシフェニル、ジメトキシフェニル、トリフルオロメチルフェニル、ビストリフルオロメチルフェニル、トリストリフルオロメチルフェニル、トリフルオロメトキシフェニル、ビストリフルオロメトキシフェニル、および3,5−ジメチル−4−メトキシフェニルである。
【0014】
好ましい第二級ホスフィノ基は、C〜C−アルキル、非置換のシクロペンチルもしくはシクロヘキシル、C〜C−アルキルもしくはC〜C−アルコキシ基1〜3個により置換されたシクロペンチルもしくはシクロヘキシル、ベンジル、および特にフェニル(非置換であるか、またはC〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、F、Cl、C〜C−フルオロアルキルもしくはC〜C−フルオロアルコキシ基1〜3個により置換されていてもよい)からなる群から選択される同一の基を含むものである。置換基:Fは、4〜5回存在してもよい。
【0015】
第二級ホスフィノ基:XおよびXは、好ましくは、互いに独立して式:−PR(式中、RおよびRは、それぞれ互いに独立して、炭素原子を1〜18個有する炭化水素基であり、非置換であるか、またはハロゲン、C〜C−アルキル、C〜C−ハロアルキル、C〜C−アルコキシ、C〜C−ハロアルコキシ、(C〜C−アルキル)アミノ、(CSi、(C〜C12−アルキル)Siもしくは−CO−C〜C−アルキルにより置換されており、そして/あるいはヘテロ原子:Oを含む)に対応する。
【0016】
およびRは、好ましくは、直鎖状もしくは分枝状C〜C−アルキル、非置換のシクロペンチルもしくはシクロヘキシル、C〜C−アルキルもしくはC〜C−アルコキシ基1〜3個により置換されたシクロペンチルもしくはシクロヘキシル、フリル、ノルボルニル、アダマンチル、非置換のベンジル、C〜C−アルキルもしくはC〜C−アルコキシ基1〜3個により置換されたベンジル(特に非置換のフェニル)、およびC〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、−NH、−N(C〜C−アルキル)、OH、F、Cl、C〜C−フルオロアルキルもしくはC〜C−フルオロアルコキシ基1〜3個により置換されたフェニルからなる群から選択される同一の基である。
【0017】
およびRは、特に好ましくは、C〜C−アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フリル、非置換のフェニル、ならびにC〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、および/またはC〜C−フルオロアルキル基1〜3個により置換されたフェニルからなる群から選択される同一の基である。
【0018】
第二級ホスフィノ基:XおよびXは、環状sec−ホスフィノ、例えば、非置換であるか、または−OH、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、C〜C−アルコキシ、C〜C−アルコキシ−C〜C−アルキル、フェニル、C〜C−アルキルフェニル、C〜C−アルコキシフェニル、ベンジル、C〜C−アルキルベンジル、C〜C−アルコキシベンジル、ベンジルオキシ、C〜C−アルキルベンジルオキシ、C〜C−アルコキシベンジルオキシ、およびC〜C−アルキリデンジオキシルから選択される置換基1個以上により置換されている、式:
【0019】
【化10】

【0020】
で示される基であってもよい。
【0021】
置換基は、キラル炭素原子を導入するために、P原子に対してα位の一方または両方で結合していてもよい。α位の一方または両方の置換基は、好ましくは、C〜C−アルキルまたはベンジル、例えば、メチル、エチル、n−もしくはi−プロピル、ベンジル、−CH−O−C〜C−アルキルまたは−CH−O−C〜C10−アリールである。
【0022】
β、γ位の置換基は、例えば、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、ベンジルオキシ、−O−CH−O−、−O−CH(C〜C−アルキル)−O−、−O−(C〜C−アルキル)−O−、および−O−CH(C〜C10−アリール)−O−であってもよい。幾つかの例は、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、−O−CH(フェニル)−O−、−O−CH(メチル)−O−、および−O−C(メチル)−O−である。
【0023】
先の式で示される基において、脂肪族5−もしくは6−員環、またはベンゼンは、隣接する炭素原子2個に縮合していてもよい。
【0024】
他の公知で適切な第二級ホスフィノ基は、環中に炭素原子を7個有する環状キラルホスホランのもの、例えば式:
【0025】
【化11】

【0026】
(式中、芳香族環は、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、C〜C−アルコキシ−C〜C−アルキル、フェニル、ベンジル、ベンジルオキシ、C〜C−アルキリデンジオキシル、またはC〜C−アルキレンジオキシルにより置換されていてもよい)で示されるものである(US2003/0073868 A1およびWO02/048161参照)。
【0027】
置換の型および置換基の数に応じて、環状ホスフィノ基は、C−キラル、P−キラル、またはC−およびP−キラルであってもよい。
【0028】
環状sec−ホスフィノ基は、例えば、式:
【0029】
【化12】

【0030】
(式中、基:R′およびR″は、それぞれC〜C−アルキル、例えば、メチル、エチル、n−もしくはi−プロピル、ベンジル、−CH−O−C〜C−アルキルまたは−CH−O−C〜C10−アリールであり、R′およびR″は、同一または異なる)に対応してもよい(可能なジアステレオマーを1種だけ図示した)。R′およびR″が、同じ炭素原子に結合している場合、それらが一緒になって、C〜C−アルキレン基をなしていてもよい。
【0031】
好ましい実施形態において、式Iで示される化合物中のXおよびXは、特に好ましくは、−P(C〜C−アルキル)、−P(C〜C−シクロアルキル)、−P(C〜C12−ビシクロアルキル)、−P(o−フリル)、−P(C、−P[2−(C〜C−アルキル)C、−P[3−(C〜C−アルキル)C、−P[4−(C〜C−アルキル)C、−P[2−(C〜C−アルコキシ)C、−P[3−(C〜C−アルコキシ)C、−P[4−(C〜C−アルコキシ)C、−P[2−(トリフルオロメチル)C、−P[3−(トリフルオロメチル)C、−P[4−(トリフルオロメチル)C、−P[3,5−ビス(トリフルオロメチル)C、−P[3,5−ビス(C〜C−アルキル)、−P[3,5−ビス(C〜C−アルコキシ)、−P[3,4,5−トリス(C〜C−アルコキシ)および−P[3,5−ビス(C〜C−アルキル)−4−(C〜C−アルコキシ)Cからなる群から選択される同一または異なる非環式sec−ホスフィノ、あるいは非置換であるか、またはC〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、C〜C−アルコキシ−C〜C−アルキル、フェニル、ベンジル、ベンジルオキシ、C〜C−アルキリデンジオキシル、および非置換もしくはフェニル置換のメチレンジオキシルから選択される置換基1個以上により置換された、
【0032】
【化13】

【0033】
からなる群から選択される環状ホスフィノである。
【0034】
具体的な例は、−P(CH、−P(i−C、−P(n−C、−P(i−C、−P(C11、−P(ノルボルニル)、−P(o−フリル)、−P(C、−P[2−(メチル)C、−P[3−(メチル)C、−P[4−(メチル)C、−P[2−(メトキシ)C、−P[3−(メトキシ)C、−P[4−(メトキシ)C、−P[3−(トリフルオロメチル)C、−P[4−(トリフルオロメチル)C、−P[3,5−ビス(トリフルオロメチル)C、−P[3,5−ビス(メチル)C、−P[3,5−ビス(メトキシ)C、−P[3,4,5−トリ(メトキシ)C、−P[3,5−ビス(メチル)−4−(メトキシ)C、および式:
【0035】
【化14】

【0036】
(式中、R′は、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、メトキシメチル、エトキシメチル、またはベンジルオキシメチルであり、R″は、独立して、R′の意味の一つを有する)で示される基である。
【0037】
式Iで示される化合物の好ましい実施形態において、Rは、好ましくはメチルである。式Iにおけるnは、特に好ましくは0であり、言い換えれば、その場合Rは、水素原子である。
【0038】
置換基:Rは、シクロペンタジエニル環中に1〜3回、特に好ましくは1または2回存在してもよい。置換基:Rの好ましい位置は、3、4および5位である。好ましい置換様式は、3位、5位、ならびに二重置換の場合の3および5位である。
【0039】
式Iで示される特に好ましい実施形態において、置換基は、5位で結合され、この置換基は、かさ高な置換基(例えば、分枝状アルキル、置換された直鎖状もしくは分枝状アルキル、トリメチルシリル、または置換もしくは非置換の環状置換基[(ヘテロ)シクロアルキルまたは(ヘテロ)アリール]である。
【0040】
置換基:Rは、アキラルであってもよく、または少なくとも1個の不斉炭素原子を含んでいてもよい。不斉炭素原子は、好ましくはRが結合するシクロペンタジエニル環中の炭素原子に関してα、βまたはγ位に位置する。
【0041】
置換基:Rは、1個以上の置換基、例えば1〜3個の置換基、好ましくは1または2個の置換基、例えばハロゲン(F、ClまたはBr、特にF)、−OH、−SH、−CH(O)、−CN、−NR0102、−C(O)−O−R03、−S(O)−O−R03、−S(O)−O−R03、−P(OR03、−P(O)(OR03、−C(O)−NR0102、−S(O)−NR0102、−S(O)−NR0102、−O−(O)C−R04、−R01N−(O)C−R04、−R01N−S(O)−R04、−R01N−S(O)−R04、C〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、C〜C−アルキルチオ、C〜C−シクロアルキル、フェニル、ベンジル、フェノキシまたはベンジルオキシ(式中、R01およびR02は、それぞれ互いに独立して、水素、C〜C−アルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、ベンジルであるか、またはR01およびR02が、一緒になって、テトラメチレン、ペンタメチレンもしくは3−オキサペンタン−1,5−ジイルを形成しており、R03は、水素、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、フェニル、またはベンジルであり、R04は、C〜C18−アルキル、好ましくはC〜C12−アルキル、C〜C−ハロアルキル、C〜C−ヒドロキシアルキル、C〜C−シクロアルキル(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル)、C〜C10−アリール(例えばフェニルまたはナフチル)またはC〜C12−アラルキル(例えばベンジル)である)により置換されていてもよい。2個の置換基は、環状置換基中で結合する炭素原子と一緒になって、飽和または不飽和の脂肪族または芳香族炭化水素環または複素環(縮合環および/または架橋環)も形成している。
【0042】
置換または非置換の置換基:Rは、例えばC〜C12−アルキル(好ましくはC〜C−アルキル、特に好ましくはC〜C−アルキル)、C〜C12−アルケニル(好ましくはC〜C−アルケニル、特に好ましくはC〜C−アルケニル)であってもよい。例は、メチル、エチル、n−またはi−プロピル、n−、i−またはt−ブチル、ならびにペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシルおよびドデシルの異性体、ならびにビニルおよびプロペニルである。
【0043】
置換または非置換の置換基:Rは、例えばC〜C12−シクロアルキル、好ましくはC〜C−シクロアルキルであってもよい。例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシルおよびシクロドデシルである。
【0044】
置換または非置換の置換基:Rは、例えばC〜C−シクロアルキル−C〜C−アルキル、好ましくはC〜C−シクロアルキルアルキルであってもよい。例は、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、およびシクロオクチルメチルである。
【0045】
置換または非置換の置換基:Rは、例えばC〜C18−アリール、好ましくはC〜C10−アリールであってもよい。例は、フェニル、ナフチル、アントラセニルおよびフェナントリルである。
【0046】
置換または非置換の置換基:Rは、例えばC〜C18−アラルキル、好ましくはC〜C12−アラルキル(例えば、ベンジルまたは1−フェニルエタ−2−イル)であってもよい。
【0047】
置換または非置換の置換基:Rは、例えばトリ(C〜C−アルキル)Siまたはトリフェニルシリルであってもよい。トリアルキルシリルの例は、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリ−n−プロピルシリル、トリ−n−ブチルシリルおよびジメチル−t−ブチルシリルである。
【0048】
置換基:Rは、例えばハロゲンであってもよい。例は、F、ClおよびBrである。
【0049】
置換または非置換の置換基:Rは、例えば、式:−SR05、−S(O)R05、および−S(O)05(式中、R05は、C〜C12−アルキル、好ましくはC〜C−アルキル、特に好ましくはC〜C−アルキル;C〜C−シクロアルキル、好ましくはC〜C−シクロアルキル;C〜C18−アリール、好ましくはC〜C10−アリール;またはC〜C12−アラルキルである)で示されるチオ基、またはスルホキシドもしくはスルホン基であってもよい。これらの炭化水素基の例は、先に列挙した。
【0050】
置換基:Rは、例えば、−CH(O)、−C(O)−C〜C−アルキル、または−C(O)−C〜C10−アリールであってもよい。
【0051】
置換または非置換の置換基:Rは、例えば、−CO03または−C(O)−NR0102基(式中、R01、R02およびR03は、好適さを含め先に示した意味を有する)であってもよい。
【0052】
置換または非置換の置換基:Rは、例えば、−S(O)−O−R03、−S(O)−O−R03、−S(O)−NR0102、および−S(O)−NR0102基(式中、R01、R02およびR03は、好適さを含め先に示した意味を有する)であってもよい。
【0053】
置換または非置換の置換基:Rは、例えば、−P(OR03または−P(O)(OR03基(式中、R03は、好適さを含め先に示した意味を有する)であってもよい。
【0054】
置換または非置換の置換基:Rは、例えば、−P(O)(R03または−P(S)(OR03基(式中、R03は、好適さを含め先に示した意味を有する)であってもよい。
【0055】
置換基:Rの好ましい群において、これらは、置換または非置換のC〜C−アルキル、置換または非置換のフェニルまたはナフチル、トリ(C〜C−アルキル)Si、トリフェニルシリル、ハロゲン(特に、F、ClおよびBr)、−SR06、−CHOH、−CHR06OH、−CR06R′06OH、−CHO−R06、−CH(O)、−COH、−CO06(式中、R06は、炭素原子を1〜10個有する炭化水素基である)、および−P(O)(R03(式中、R03は、先に定義したとおりである)から選択される。
【0056】
置換または非置換の置換基:Rの例は、メチル、エチル、n−およびi−プロピル、n−、i−およびt−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、ジシクロヘキシルメチル、フェニル、ナフチル、ベンジル、ナフチルメチル、ジフェニルメチル、トリメチルシリル、F、Cl、Br、メチルチオ、メチルスルホニル、メチルスルホキシル、フェニルチオ、フェニルスルホニル、フェニルスルホキシル、−CH(O)、−C(O)OH、−C(O)−OCH、−C(O)−OC、−C(O)−NH、−C(O)−NHCH、−C(O)−N(CH、−SOH、−S(O)−OCH、−S(O)−OC、−S(O)−OCH、−S(O)−OC、−S(O)−NH、−S(O)−NHCH、−S(O)−N(CH、−S(O)−NH、−S(O)−NHCH、−S(O)−N(CH、−P(OH)、−PO(OH)、−P(OCH、−P(OC、−PO(OCH、−PO(OC、トリフルオロメチル、メチルシクロヘキシル、メチルシクロヘキシルメチル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、メトキシフェニル、ジメトキシフェニル、ヒドロキシメチル、β−ヒドロキシエチル、γ−ヒドロキシプロピル、CCH(OH)−、CCH(OCH)−、CHCH(OH)−、CHCH(OCH)−、CCH(OH)−、CCH(OCH)−、(CHC(OH)−、(CHC(OCH)−、−CHNH、−CHN(CH、−CHCHNH、−CHCHN(CH、メトキシメチル、エトキシメチル、メトキシエチル、エトキシエチル、HS−CH−、HS−CHCH−、CHS−CH−、CHS−CHCH−、−CH−C(O)OH、−CHCH−C(O)OH、−CH−C(O)OCH、−CHCH−C(O)OCH、−CH−C(O)NH、−CHCH−C(O)NH、−CH−C(O)−N(CH、−CHCH−C(O)N(CH、−CH−SOH、−CHCH−SOH、−CH−SOCH、−CHCH−SOCH、−CH−SONH、−CH−SON(CH、−CH−PO、−CHCH−PO、−CH−PO(OCH)、−CHCH−PO(OCH、−C−C(O)OH、−C−C(O)OCH、−C−S(O)OH、−C−S(O)OCH、−CH−O−C(O)CH、−CHCH−O−C(O)CH、−CH−NH−C(O)CH、−CHCH−NH−C(O)CH、−CH−O−S(O)CH、−CHCH−O−S(O)CH、−CH−NH−S(O)CH、−CHCH−NH−S(O)CH、−P(O)(C〜C−アルキル)、−P(S)(C〜C−アルキル)、−P(O)(C〜C10−アリール)、−P(S)(C〜C10−アリール)、−C(O)−C〜C−アルキル、ならびに−C(O)−C〜C10−アリールである。
【0057】
式Iで示される好ましい化合物は、式Ia:
【0058】
【化15】

【0059】
(式中、
およびXは、それぞれ互いに独立して、第二級ホスフィノ基であり、
は、炭素原子またはSi原子を介してシクロペンタジエニル環に結合したハロゲン原子または置換基である)
で示されるラセミ体、立体異性体の混合物、または光学的に純粋な立体異性体に対応する。
【0060】
例示の目的で、他の鏡像異性体の式Ibを示す。
【0061】
【化16】

【0062】
(ここでの表現は、後の式に同様に適用される)
【0063】
式Iaで示される化合物において、Rは、好ましくは、置換もしくは非置換の直鎖状もしく分枝状C〜C12−アルキル、置換もしくは非置換のC〜C12−シクロアルキル、置換もしくは非置換のC〜C−シクロアルキル−C〜C−アルキル、置換もしくは非置換のC〜C18−アリール、置換もしくは非置換のC〜C18−アラルキル、トリ(C〜C−アルキル)Si−、トリフェニルシリル、またはF、ClおよびBrである。
【0064】
式Iで示される化合物は、置換基が導入される位置に応じて、様々な方法で製造することができる。シクロペンタジエニル(以後、短縮してcpと呼ぶ)基中の基:Xに対してオルト位は、3位である。cp基における基:−CHに対してオルト位は、5位である。4位は、3位と5位の間に位置する。
【0065】
中心の前駆体(central precursor)は、式II:
【0066】
【化17】

【0067】
(式中、
は、開鎖または環状、アキラルsec−アミノまたはキラルsec−アミノであり、その少なくとも1個の炭素原子は、好ましくはN原子に対してα、βまたはγ位で、ジ(C〜C−アルキル)アミノまたはC〜C−アルコキシにより置換されている)で示される化合物であり、それは、オルト位の一方で選択的に金属化(metallate)され、その後、更に修飾することができる。式IIで示される化合物の幾つかは、公知であるか[I. Fleischer et al. Coll. Czech. Chem. Comm., 69(2), (2004), p330-338およびW. Weissensteiner et al. J. Org. Chem. 66, (2001), p8912-8919]、または公知の方法と同様の方法で製造することができる。
【0068】
開鎖または環状sec−アミノ基:Aは、式:RN−(式中、RおよびRは、それぞれ互いに独立して、C〜C12−アルキル、好ましくはC〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、好ましくはC〜C−シクロアルキルであるか、またはN原子と一緒になって、3〜8員、好ましくは5〜8員N−複素環を形成しており、Aが、キラルsec−アミノである場合には、RおよびRの少なくとも一方、ならびに/または複素環は、O−またはN−含有置換基を含む)に対応してもよい。
【0069】
好ましくは直鎖状であるアルキルの例は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチルおよびオクチルである。シクロアルキルの例は、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロオクチルである。シクロアルキルの例は、特にシクロペンチルおよびシクロヘキシルである。sec−アミノが、N−複素環を形成する場合、RおよびRは、一緒になって、好ましくは、テトラメチレン、ペンタメチレン、3−オキサペンチレンまたは3−(C〜C−アルキル)−N−ペンチレンをなしている。適切な置換基は、例えば、C〜C−アルコキシ、C〜C−アルコキシメチル、C〜C−アルコキシエチル、(C〜C−アルキル)N−、(C〜C−アルキル)N−メチルおよび(C〜C−アルキル)N−エチルである。置換基は、例えばsec−アミノ基のN原子に対してγ位に、好ましくはαまたはβ位に位置する。RおよびRは、更に、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、フェニルまたはベンジルにより置換されていてもよい。
【0070】
好ましい実施形態において、RおよびRは、それぞれ、メチル、エチル、シクロヘキシルであるか、またはRおよびRが、一緒になって、テトラメチレン、ペンタメチレンもしくは3−オキサペンチレンをなしており、それぞれが、C〜C−アルコキシ、C〜C−アルコキシメチル、C〜C−アルコキシエチル、(C〜C−アルキル)N−、(C〜C−アルキル)N−メチルおよび(C〜C−アルキル)N−エチルにより、そして所望なら更にC〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、フェニル、またはベンジルにより置換されている。
【0071】
の特に好ましい例は、式:
【0072】
【化18】

【0073】
(式中、Sは、C〜C−アルコキシ、C〜C−アルコキシメチル、C〜C−アルコキシエチル、(C〜C−アルキル)N−、(C〜C−アルキル)N−メチルまたは(C〜C−アルキル)N−エチルであり、「*」は、不斉中心を表す)で示されるsec−アミノ基である。
【0074】
式Iで示される化合物の全ての置換様式を含む可能な製造方法は、以下の2種の反応スキーム1および2に示される。
【0075】
スキーム1:4および5位における基の導入
【0076】
【化19】

【0077】
スキーム2:3、4および5位における基の導入
【0078】
【化20】

【0079】
臭素の代わりに、ヨウ素を用いることもできる。
【0080】
上記式中のR′およびR″は、互いに独立して、Rと同じ意味を有する。
【0081】
ステップa):ACH−基に対してオルト位における置換基の導入
最初に、金属化試薬(例えばアルキルリチウム)を用いて金属化を実施し、次に金属化生成物を求電子性化合物と反応させる。
【0082】
ステップb):Hまたは置換基によるBrまたはIの置換
例えばアルキルリチウムを用いた金属化の後、金属化生成物を水(Hの導入)または求電子性化合物のいずれかと反応させる。基:Rを導入する触媒的方法、例えばSuzukiカップリングおよびHeck反応も公知である。
【0083】
ステップc):ハロゲン(F、Cl、Br)に対してオルト位における置換基の導入
更なる工程ステップにおいて、ハロゲンに対してオルト位を、Liアミドにより選択的にリチウム化し、その後、適切な求電子性物質との反応により、所望の置換基を第2の工程ステップで導入する。
【0084】
ステップd):ACH−基に対してオルト位におけるXの導入
最初に、金属化試薬(例えばアルキルリチウム)を用いて金属化を実施し、次にリチウム化生成物をハロゲン:Xと反応させる。
【0085】
ステップe):XによるAの置換
第二級ホスフィン(好ましくは式:RPHで示されるもの)を用い、それ自体が公知の手法で、基:Aを置換する。
【0086】
ステップf):XによるBrまたはIの置換
例えばアルキルリチウムを用いた金属化の後、金属化生成物をハロゲン:Xと反応させる。
【0087】
反応順序によるが、導入された置換基は、第二級ホスフィノ基によるAの置換の際に、金属化試薬に対し、そして/または反応条件下で不活性であるべきである。別の可能性は、公知の保護基使用であり、それにより選択される反応条件に感受性がある基を分離することができる。
【0088】
ステップc)以外の各工程ステップは公知であり、文献に広範に記載されている。
【0089】
フェロセンの金属化は、例えば、W. Weissensteiner et al., J. Org. Chem., 66(2001)8912-9, W Weissensteiner et al., Synthesis 8(1999), pages 1354-1362, T. Hayashi et al., Bull. Chem. Soc. Jpn. 53(1980), pages 1138-1151またはJonathan Clayden Organolithiums: Selectivity for Synthesis(Tetrahedron Organic Chemistry Series), Pergamom Press(2002)に記載された公知の反応を必要とする。アルキルリチウム中のアルキルは、例えば、炭素原子を1〜4個含むことができる。多くの場合、メチルリチウムおよびブチルリチウムを使用する。マグネシウムGrignard化合物は、好ましくは式(C〜C−アルキル)MgX(式中、Xは、Cl、BrまたはIである)の1種である。
【0090】
反応は、有利には低温で、例えば20〜−100℃、好ましくは0〜−80℃で実施する。反応時間は、約2〜20時間である。反応は、有利には不活性保護気体(例えば窒素)または貴ガス(例えばアルゴン)の下で実施する。
【0091】
反応は、有利には不活性溶媒の存在下で実施する。そのような溶媒は、単独で、または少なくとも2種の溶媒の混合物として用いることができる。溶媒の例は、脂肪族、脂環式および芳香族炭化水素、ならびに開鎖または環状エーテルである。具体的な例は、石油エーテル、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルまたはジエチルエーテル、テトラヒドロフランおよびジオキサンである。
【0092】
ハロゲンの導入は、一般に、同様の反応混合物中での金属化の後、金属化と類似の反応条件を保持しながら、直ちに実施する。好ましくは、1〜1.4当量のハロゲン化試薬を用いることができる。ハロゲン化試薬は、例えば、Cl、BrもしくはIを導入するためのハロゲン(Cl、Br、I)、インターハロゲン(Cl−Br、Cl−I)および脂肪族過ハロゲン化炭化水素(ClC−CClまたはBrFC−CFBr);またはフッ素を導入するためのN−フルオロビス(フェニル)スルホニルアミンである。
【0093】
CH−基に対してオルト位における金属化および求電子性物質の導入は、位置選択的に進行し、中間体が高収率で得られる。反応は、キラル基:ACH−の存在下では立体選択的でもある。更に必要であれば、この段階で、例えばキラルカラムを用いたクロマトグラフィーにより、光学異性体を分離することが可能である。
【0094】
工程ステップc)において、ハロゲン原子に対してオルト位の酸性H原子を置換するのに十分な金属アミドを用いて、同じシクロペンタジエニル環のハロゲン原子に対してオルト位で、フェロセン骨格を再度、位置選択的に金属化する。フェロセンのシクロペンタジエニル環中のCH基あたり、少なくとも1〜5当量の脂肪族リチウムsec−アミドまたはClMg sec−アミド、BrMg sec−アミドもしくはIMg sec−アミドが用いられる。
【0095】
脂肪族リチウムsec−アミドまたはハロゲンMg sec−アミドは、炭素原子を2〜18個、好ましくは2〜12個、特に好ましくは2〜10個含む第二級アミンから誘導することができる。N原子に結合した脂肪族基は、アルキル、シクロアルキルもしくはシクロアルキルアルキルであってもよく、または炭素原子を4〜12個、好ましくは5〜7個有するN−複素環であってもよい。N原子に結合する基の例は、メチル、エチル、n−およびi−プロピル、n−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘキシルメチルである。N−複素環の例は、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、M−メチルピペラジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンおよびアザノルボルナンである。好ましい実施形態において、アミドは、式:Li−N(C〜C−アルキル)またはXMg−N(C〜C−アルキル)(式中、アルキルは、特にi−プロピルである)に対応する。別の好ましい実施形態において、アミドは、Li(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)に対応する。
【0096】
基:Rを形成するための反応性求電子性化合物の例は:
F、Cl、BrまたはIを導入するためのハロゲン(Cl、Br、I)、インターハロゲン(Cl−Br、Cl−I)および脂肪族過ハロゲン化炭化水素(ClC−CClまたはBrFC−CFBr、N−フルオロビス(フェニル)スルホニルアミン);カルボキシル基:−COHを導入するためのCO
カルボキシラート基を導入するためのクロロカルボナートまたはブロモカルボナート[Cl−C(O)−OR](式中、Rは、炭素原子を1〜18個、好ましくは1〜12個、特に好ましくは1〜8個有し、非置換であるか、または不活性置換基(例えばsec−ホスフィノ、ジ(C〜C−アルキル)N−、−C(O)−OC〜C−アルキルもしくは−OC〜C−アルキル(金属または金属基に対してより反応性がある基、例えば−CHOが、式Iで示される化合物中に同時に存在する場合、またはClとBr、ClとI、またはBrとIが、好ましくは芳香族炭化水素基中の結合形態に同時に存在する場合、不活性置換基は、Cl、BrまたはIなどの反応性基も含む)により置換された炭化水素基(アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、へテロアラルキル)である);
基:−CH(O)を導入するためのジ(C〜C−アルキル)ホルムアミド、例えばジメチルホルムアミドまたはジエチルホルムアミド;
−C(O)−R基を導入するためのジ(C〜C−アルキル)カルボキシアミド;
−CH(OH)−R基を導入するための、非置換であるか、もしくは基:R中のsec−ホスフィノにより置換されていてもよいアルデヒド、または−CHOH基を導入するためのパラホルムアルデヒド;
−C(OH)RR基(式中、Rは、独立して、Rの意味の一つを有するか、またはRおよびRが一緒になって、3〜8員を有する脂環式化合物を形成している)を導入するための、非置換であるか、またはRもしくはR基中のsec−ホスフィノにより置換されていてもよい対称または非対称ケトン;
−C−C−OH基(式中、C原子は、HまたはRにより置換されていてもよい)を導入するためのエポキシド;
式:(CH=CHxlで示されるEschenmoser塩;
基:−CH(R)−NHR(式中、Rは、独立して、Rの意味の一つを有するか、またはRおよびRが一緒になって、3〜8員を有する脂環式化合物を形成し、RおよびRは、同時に水素にはならない)を導入するためのイミン:R−CH=N−R
基:−C(R)(R)−NHR(式中、Rは、独立して、Rの意味の一つを有するか、またはRおよびR′が一緒になって、3〜8員を有する脂環式化合物を形成し、Rは、独立して、Rの意味の一つを有するか、またはRおよびRが一緒になって、3〜8員を有する脂環式化合物を形成している)を導入するためのイミン:R−C(R)=N−R
炭化水素およびヘテロ炭化水素基(例えば、C〜C18−アルキル、C〜C14−アリール、C〜C14−アラルキル)を導入するための、モノハロゲン化炭化水素およびモノハロゲン化へテロ炭化水素(特に、塩化物、臭化物およびヨウ化物);
炭化水素およびヘテロ炭化水素基(例えば、C〜C18−アルキル、C〜C14−アリール、C〜C14−アラルキル)を導入するための、反応性が異なるハロゲン原子(特に、塩素原子と臭素原子またはヨウ素原子の組合わせ、臭素原子とヨウ素原子または2個の臭素原子またはヨウ素原子の組合わせ)を有するハロ炭化水素およびハロへテロ炭化水素;
アリールおよびヘテロアリール基を導入するためのアリールホウ酸;
アルケニル基(例えばアリルおよびビニル)を導入するためのハロゲン化(特に、塩化、臭化およびヨウ化)アルケニル;
トリ(C〜C−アルキル)−Si−基を導入するためのハロゲン化(特に、塩化、臭化)トリ(C〜C−アルキル)シリル;
トリフェニルシリル基を導入するためのハロゲン化トリフェニルシリル;
ホスホン酸エステル基(例えば、(CHO)(O)P−、(CO)(O)P−、(シクロヘキシルO)(O)P−、(エチレンジオキシル)(O)P−)を導入するためのモノハロゲン化(塩化、臭化)リン酸エステル;
ホスホン酸チオエステル基(例えば(CHO)(S)P−、(CO)(S)P−、(シクロヘキシルO)(S)P−、(エチレンジオキシル)(S)P−)を導入するためのモノハロゲン化(塩化、臭化)リン酸チオエステル;
−SR基を導入するための有機ジスルフィド:R−SS−R;ならびに
−SH基を導入するための硫黄(S)、
である。求電子性物質中の有機基は、前記のとおり置換されていてもよい。
【0097】
本発明の金属錯体は、反応条件下で活性化し得て、プロキラル不飽和有機化合物上での不斉付加反応に用い得る、均一触媒または触媒前駆体である(E. Jacobsen, A. Pfaltz, H. Yamamoto (Eds.), Comprehensive Asymmetric Catalysis I to III, Springer Verlag, Berlin, 1999,およびB. Cornils et al., Applied Homogeneous Catalysis with Organometallic Compounds, Volume 1,Second Edition, Wiley VCH-Verlag (2002)参照)。
【0098】
本発明の式Iで示される化合物は、不斉合成(例えば、プロキラル不飽和有機化合物の不斉水素化)のための優れた触媒または触媒前駆体である、周期表の遷移金属、好ましくはTM8金属の群、特に好ましくはRu、RhおよびIrからなる群から選択される金属の錯体のための配位子である。プロキラル不飽和有機化合物が用いられる場合、非常に高過剰の光学異性体を有機化合物の合成で誘導することができ、高度の化学的変換を短い反応時間で実現することができる。実現し得るエナンチオ選択性および触媒活性は、優れており、不斉水素化においては、冒頭で述べた公知の非置換配位子の場合よりもかなり高い。その上、そのような配位子は、他の不斉添加または環化反応にも用いることができる。
【0099】
本発明は、更に、周期表の遷移金属の群から選択される金属と、配位子としての式Iで示される化合物の一種との錯体を提供する。
【0100】
可能な金属は、例えば、Cu、Ag、Au、Ni、Co、Rh、Pd、Ir、RuおよびPtである。好ましい金属は、ロジウムおよびイリジウム、ならびにルテニウム、白金、パラジウムおよび銅である。
【0101】
特に好ましい金属は、ルテニウム、ロジウムおよびイリジウムである。
【0102】
金属錯体は、金属原子の酸化数および配位数に応じて、更なる配位子および/または陰イオンを含むことができる。それらは、陽イオン性金属錯体であってもよい。そのような類似の金属錯体およびそれらの製造は、文献に広範に記載されている。
【0103】
金属錯体は、例えば、一般式IIIおよびIV:
【0104】
【化21】

【0105】
(式中、
は、式Iで示される化合物の1種であり;
Lは、同一もしくは異なる単座陰イオン性もしくは非イオン性配位子を表すか、またはLは、同一もしくは異なる二座陰イオン性もしくは非イオン性配位子を表し;
Lが単座配位子であればrは2、3もしくは4であり、またはLが二座配位子であればnは1もしくは2であり;
zは、1、2または3であり;
Meは、Rh、Ir、およびRuからなる群から選択される金属であり、金属は、酸化状態:0、1、2、3または4を有し;
は、オキソ酸または錯酸の陰イオンであり;
陰イオン性配位子は、金属の酸化状態:1、2、3または4の電荷と均衡を保っている)に対応する。
【0106】
上記の好適さおよび実施形態が、式Iで示される化合物に関して適用される。
【0107】
単座非イオン性配位子は、例えば、オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン)、溶媒和性溶媒(ニトリル、直鎖状または環状エーテル、非アルキル化またはN−アルキル化アミドおよびラクタム、アミン、ホスフィン、アルコール、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル)、一酸化窒素、および一酸化炭素からなる群から選択することができる。
【0108】
適切な多座陰イオン性配位子は、例えば、アリル(アリル、2−メタリル)、シクロペンタジエニルまたは脱プロトン化1,3−ジケト化合物、例えばアセチルアセトナートである。
【0109】
単座陰イオン性配位子は、例えば、ハロゲン化物(F、Cl、Br、I)、擬ハロゲン化物(シアニド、シアナート、イソシアナート)、ならびにカルボン酸、スルホン酸およびホスホン酸の陰イオン(カルボナート、ホルマート、アセタート、プロピオナート、メチルスルホナート、トリフルオロメチルスルホナート、フェニルスルホナート、トシラート)からなる群から選択することができる。
【0110】
二座非イオン性配位子は、例えば、直鎖状または環状ジオレフィン(例えば、ヘキサジエン、シクロオクタジエン、ノルボルナジエン)、ジニトリル(マロノジニトリル)、非アルキル化またはN−アルキル化カルボン酸ジアミド、ジアミン、ジホスフィン、ジオール、ジカルボン酸ジエステルおよびジスルホン酸ジエステルからなる群から選択することができる。
【0111】
二座陰イオン性配位子は、例えば、ジカルボン酸、ジスルホン酸およびジホスホン酸(例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、メチレンジスルホン酸およびメチレンジホスホン酸)からなる群から選択することができる。
【0112】
好ましい金属錯体は、Eが、−Cl、−Br、−I、ClO、CFSO、CHSO、HSO、(CFSO、(CFSO、テトラアリールボラート(例えば、B(フェニル)、B[ビス(3,5−トリフルオロメチル)フェニル]、B[ビス(3,5−ジメチル)フェニル]、B(CおよびB(4−メチルフェニル))、BF、PF、SbCl、AsFまたはSbFであるものも包含する。
【0113】
水素化に特に適した特に好ましい金属錯体は、式VおよびVI:
【0114】
【化22】

【0115】
(式中、
は、式Iで示される化合物の1種であり;
Meは、ロジウムまたはイリジウムであり;
は、2種のオレフィンまたは1種のジエンであり;
Zは、Cl、BrまたはIであり;
は、オキソ酸または錯酸の陰イオンである)に対応する。
【0116】
先に記載した実施形態および好適さは、式Iで示される化合物に適用される。
【0117】
オレフィン:Yは、C〜C12−オレフィン、好ましくはC〜C−オレフィン、特に好ましくはC〜C−オレフィンであってもよい。例は、プロペン、1−ブテンであり、特にエチレンである。ジエンは、炭素原子を5〜12個、好ましくは5〜8個有していてもよく、開鎖、環状、または多環式ジエンであってもよい。ジエンのオレフィン基2個は、好ましくは、CH基1または2個に結合している。例は、1,4−ペンタジエン、シクロペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、1,4−または1,5−ヘプタジエン、1,4−または1,5−シクロヘプタジエン、1,4−または1,5−オクタジエン、1,4−または1,5−シクロオクタジエン、およびノルボルナジエンである。Yは、好ましくは、エチレン2分子、または1,5−ヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエンもしくはノルボルナジエンである。
【0118】
式Vにおいて、Zは、好ましくはClまたはBrである。Eの例は、BF、ClO、CFSO、CHSO、HSO、B(フェニル)、B[ビス(3,5−トリフルオロメチル)フェニル]、PF、SbCl、AsF、またはSbFである。
【0119】
本発明の金属錯体は、文献で知られる方法により製造される(US−A−5,371,256、US−A−5,446,844、US−A−5,583,241、E. Jacobsen, A. Pfaltz, H. Yamamoto(Eds), Comprehensive Asymmetric Catalysis I to III, Springer Verlag, Berlin, 1999、および本明細書に引用された参考文献も参照)。
【0120】
ルテニウム錯体は、例えば、式VII:
【0121】
【化23】

【0122】
(式中、
Zは、Cl、BrまたはIであり;Aは、式Iで示される化合物であり;Lは、同一もしくは異なる配位子を表し;Eは、オキソ酸、鉱酸または錯酸の陰イオンであり;Sは、配位子として配位が可能な溶媒であり;aは、1〜3であり、bは、0〜4であり、cは、0〜6であり、dは、1〜3であり、eは、0〜4であり、fは、1〜3であり、gは、1〜4であり、hは、0〜6であり、kは、1〜4であり、錯体の電荷の合計は、0である)に対応してもよい。
【0123】
Z、A、LおよびEに関して先に示した好適さが、式VIIで示される化合物に適用される。配位子:Lは、更に、アレーンまたはヘテロアレーン(例えば、ベンゼン、ナフタレン、メチルベンゼン、キシレン、クメン、1,3,5−メシチレン、ピリジン、ビフェニル、ピロール、ベンゾイミダゾールまたはシクロペンタジエニル)およびLewis酸官能基を有する金属塩(例えば、ZnCl、AlCl、TiClおよびSnCl)であってもよい。溶媒配位子は、例えば、アルコール、アミン、酸アミド、ラクタムおよびスルホンであってもよい。
【0124】
この種の錯体は、以下に挙げた文献およびその中に引用された参考文献に記載されている:
【表1】

【0125】
本発明の金属錯体は、反応条件下で活性化し得て、プロキラル不飽和有機化合物上での不斉付加反応に用い得る、均一触媒または触媒前駆体である。
【0126】
金属錯体は、例えば、炭素−炭素または炭素−ヘテロ原子二重結合を有するプロキラル化合物の不斉水素化(水素の付加)に用いることができる。可溶性均一金属錯体を用いるそのような水素化は、例えば、Pure and Appl. Chem., Vol. 68, No. 1, pp. 131-138(1996)に記載されている。水素化される好ましい不飽和化合物は、基:C=C、C=Nおよび/またはC=Oを含む。本発明によれば、好ましくは、ルテニウム、ロジウムおよびイリジウムの金属錯体が、水素化に用いられる。
【0127】
本発明は、更に、キラル有機化合物を製造するため、好ましくはプロキラル有機化合物中の炭素−炭素または炭素−ヘテロ原子二重結合に水素を不斉付加するための均一触媒としての、本発明の金属錯体の使用を提供する。
【0128】
本発明は、少なくとも1種の本発明の金属錯体の触媒量の存在下で、付加反応を実施することを特徴とする、触媒の存在下、プロキラル有機化合物中で炭素−炭素または炭素−ヘテロ原子二重結合に水素を不斉付加することにより、キラル有機化合物を製造する方法も提供する。
【0129】
水素化される好ましいプロキラル不飽和化合物は、開鎖または環状有機化合物中に同一または異なる基:C=C、C=Nおよび/またはC=Oを1個以上含んでいてもよく、ここで、基:C=C、C=Nおよび/またはC=Oは、環系の一部または環外基であってもよい。プロキラル不飽和化合物は、アルケン、シクロアルケン、ヘテロシクロアルケン、開鎖または環状ケトン、α,β−ジケトン、αまたはβ−ケトカルボン酸、ならびにそれらのα,β−ケトアセタールまたは−ケトケタール、エステル、アミド、ケチミン、およびケトヒドラゾン(kethydrazones)であってもよい。
【0130】
不飽和有機化合物の幾つかの例は、アセトフェノン、4−メトキシアセトフェノン、4−トリフルオロメチルアセトフェノン、4−ニトロアセトフェノン、2−クロロアセトフェノン、対応する非置換またはN−置換アセトフェノンベンジルイミン、非置換または置換ベンゾシクロヘキサノンまたはベンゾシクロペンタノンおよび対応するイミン、非置換または置換されたテトラヒドロキノリン、テトラヒドロピリジンおよびジヒドロピロールからなる群からのイミン、ならびに不飽和カルボン酸、エステル、アミドおよび塩、例えばα−および(適切ならば)β−置換アクリル酸またはクロトン酸である。好ましいカルボン酸は、式:
【0131】
【化24】

【0132】
(式中、R101は、C〜C−アルキル、非置換のC〜C−シクロアルキルまたはC〜C−アルキル1〜4個により置換されたC〜C−シクロアルキル、C〜C−アルコキシまたはC〜C−アルコキシ−C〜C−アルコキシ基、あるいは非置換のC〜C10−アリール(好ましくはフェニル)またはC〜C−アルキル、C〜C−アルコキシもしくはC〜C−アルコキシ−C〜C−アルコキシ基1〜4個により置換されたC〜C10−アリール(好ましくはフェニル)であり、R102は、それぞれの場合に、非置換であるか、または先に定義したとおり置換されていてもよい、直鎖状または分枝状C〜C−アルキル(例えばイソプロピル)、またはシクロペンチル、シクロヘキシル、フェニル、または保護アミド(例えばアセチルアミノ)である)で示されるもの、ならびにその塩、エステルおよびアミドである。
【0133】
本発明の方法は、低温または高温、例えば−20〜150℃、好ましくは−10〜100℃、特に好ましくは10〜80℃の温度で実施してもよい。光学収率は、一般に高温よりも比較的低温で良好である。
【0134】
本発明の方法は、大気圧または超大気圧で実施することができる。圧力は、例えば、10〜2×10Pa(パスカル)であってもよい。水素化は、大気圧または超大気圧で実施することができる。
【0135】
触媒は、水素化される化合物に基づいて、好ましくは0.0001〜10モル%、特に好ましくは0.001〜10モル%、特に0.01〜5モル%の量で用いる。
【0136】
配位子および触媒の製造、ならびに水素化は、溶媒の非存在下または不活性溶媒の存在下で実施することができ、溶媒1種または溶媒の混合物を用いることができる。適切な溶媒は、例えば、脂肪族、脂環式、および芳香族炭化水素(ペンタン、ヘキサン、石油エーテル、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン)、脂肪族ハロゲン化炭化水素(塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、およびテトラクロロエタン)、ニトリル(アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル)、エーテル(ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールモノメチルエーテルまたはエチルエーテル)、ケトン(アセトン、メチルイソブチルケトン)、カルボン酸エステルおよびラクトン(酢酸エチルまたはメチル、バレロラクトン)、N−置換のラクタム(N−メチルピロリドン)、カルボキシアミド(ジメチルアミド、ジメチルホルムアミド)、非環式尿素(ジメチルイミダゾリン)、スルホキシドおよびスルホン(ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシド、テトラメチレンスルホン)、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル)、および水である。溶媒は、単独で、または少なくとも2種の溶媒の混合物として用いることができる。
【0137】
反応は、共触媒、例えば第四級ハロゲン化アンモニウム(ヨウ化テトラブチルアンモニウム)の存在下、および/またはプロトン酸(例えば鉱酸)の存在下で実施してもよい(例えば、US−A−5,371,256、US−A−5,446,844、US−A−5,583,241、およびEP−A−0,691,949参照)。同じく、1,1,1−トリフルオロエタノールなどのフッ素化アルコールの存在が、触媒反応を促進することができる。
【0138】
触媒として用いられる金属錯体は、別個に製造して単離した化合物として添加してもよいが、またはそれを反応の前にその場で形成させ、その後、水素化する基質と混合してもよい。単離した金属錯体を用いた反応では更なる配位子を添加することが有利となり得るが、またはそのものの位置で製造する場合には、過剰の配位子を用いることが有利となり得る。過剰は、製造に用いる金属化合物に基づいて、例えば1〜6モル、好ましくは1〜2モルであってもよい。
【0139】
本発明の方法は、好ましくは触媒を充填し、その後、基質と、所望なら反応助剤および追加の化合物を添加し、次に反応を開始することにより実施される。追加の気体化合物、例えば水素またはアンモニアは、好ましくは圧力下で導入する。方法は、様々な型の反応器で、連続式またはバッチ式で実施してもよい。
【0140】
本発明により製造され得るキラル有機化合物は、特に調味料、香料、医薬品および農薬の製造の分野の、そのような物質を製造するための活性物質または中間体である。
【0141】
以下の実施例は、本発明を例示している。
【0142】
A)置換されたフェロセンジホスフィンの製造
略語:Meはメチルであり、Etはエチルであり、Buはブチルであり、Phはフェニルであり、Cyはシクロヘキシルであり、Xylは3,5−ジメチルフェン−1−イルであり、PEは石油エーテルであり、EtOはジエチルエーテルであり、nbdはノルボルナジエンであり、CODはシクロオクタジエンである。
【0143】
実施例A1:(S)−1−ジフェニルホスフィノ−2−ジシクロヘキシルホスフィノメチル−3−メチルフェロセン(A1)の製造
【0144】
【化25】

【0145】
a)化合物(1)の製造
化合物(1)は文献:I. Feischer, S. Toma, Coll. Czech. Chem. Comm., 69(2), (2004)330-338に記載されている。
【0146】
b)(1R,2S,S)−N−(1−ジフェニルホスフィノ−3−メチルフェロセン−2−イルメチル)−N−メチル−1−メトキシ−1−フェニルプロパ−2−イルアミン(2)の製造
s−ブチルリチウム(シクロヘキサン中の1.3M)6.6ml(8.5mmol)を、無水ジエチルエーテル80ml中の化合物(1)2.78g(7.1mmol)の脱気溶液に、シリンジで滴下した。反応混合物を−78℃で1時間、そして−30℃で40分間撹拌した。続いて、ClPPh 1.92ml(10.6mmol)を添加した。−30℃での1時間後に、混合物を室温で更に16時間撹拌した。1M水性NaOH溶液を添加して反応を停止させた。水相をジエチルエーテルで抽出し、その後、ひとまとめにした有機相を飽和水性NaCl溶液で洗浄して、MgSOで乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、粗生成物をクロマトグラフィー[Al、PE:EtO(10:1)]で精製した。これにより、化合物(2)を黄色固体として得た(3g、5.2mmol、理論値の73%)。
【表2】

【0147】
c)表題化合物A1の製造
HPCy 0.43ml(2.09mmol)を、酢酸12ml中の化合物(2)1g(1.74mmol)の脱気溶液に、シリンジで滴下した。反応混合物をもう一度脱気して、100℃で16時間撹拌した。続いて酢酸を減圧下で除去した。残渣をCHClに溶解し、飽和水性NaHCO溶液、水および飽和水性NaCl溶液で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をクロマトグラフィー[Al、PE:EtO:EtN(40:1:0.4)]で精製した。これにより、表題化合物:A1を黄色固体として得た(0.85g、14.3mmol、理論値の82%)。
【表3】

【0148】
実施例A2:(S)−1−ジフェニルホスフィノ−2−ジ−t−ブチルホスフィノメチル−3−メチルフェロセン(A2)の製造
HP(t−Bu) 0.48ml(2.61mmol)を、酢酸12ml中の化合物(2)1g(1.74mmol)の脱気溶液に、シリンジで滴下した。反応混合物をもう一度脱気して、100℃で16時間撹拌した。続いて酢酸を減圧下で除去した。残渣をCHClに溶解し、飽和水性NaHCO溶液、水および飽和水性NaCl溶液で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をクロマトグラフィー[Al、PE:EtO:EtN(40:1:0.1)]で精製した。これにより、所望の生成物を黄色固体として得た(0.71g、13.1mmol、理論値の75%)。
【表4】

【0149】
実施例A3:(S)−1−ジフェニルホスフィノ−2−ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノメチル−3−メチルフェロセン(A3)の製造
トルエン(24.3%)中のHP[3,5−(CH(0.7g、2.90mmol)の溶液2.89mlを、酢酸13ml中の化合物(2)1.11g(1.93mmol)の脱気溶液に、シリンジで滴下した。反応混合物をもう一度脱気して、100℃で16時間撹拌した。続いて酢酸を減圧下で除去した。残渣をCHClに溶解し、飽和水性NaHCO溶液、水および飽和水性NaCl溶液で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をクロマトグラフィー[Al、PE:EtO(5:1)]で精製した。これにより、表題化合物を黄色固体として得た(0.77g、12.1mmol、理論値の63%)。
【表5】

【0150】
実施例A4:(S)−1−ジフェニルホスフィノ−2−ジシクロヘキシルホスフィノメチル−3−フェニルフェロセンの製造
【0151】
【化26】

【0152】
a)化合物(3)の製造
化合物(3)は文献:W. Weissensteiner et al., J. Org. Chem., 66(2001) 8912-9に記載されている。
【0153】
b)化合物(4)の製造
Pd(PPh 0.66g(0.5mmol)を、室温で、トルエン125ml中の化合物(3)6.65g(13.2mmol)と、エタノール14ml中のフェニルホウ酸3.22g(26.4mmol)と、2M水性NaCO溶液27.7mlとの脱気混合物に添加した。反応混合物をもう一度脱気して、16時間還流した。混合物を放冷して有機相を分別し、その後、水および飽和水性NaCl溶液で洗浄して、MgSOで乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、粗生成物をクロマトグラフィー[Al、PE:EtO:EtN(30:3:1)]で精製した。これにより、化合物(4)を黄色油状物として得た(3.0g、6.2mmol、理論値の50%)。
【表6】

【0154】
c)化合物(5)の製造
s−ブチルリチウム(シクロヘキサン中の1.3M)3.8ml(4.9mmol)を、0℃の無水ジエチルエーテル15ml中の化合物(4)1.7g(3.8mmol)の脱気溶液に、シリンジで滴下した。反応混合物を0℃で2時間撹拌した。それにClPPh 1.39g(6.29mmol)を添加し、混合物を0℃で更に1時間、続いて室温で16時間撹拌した。水を添加して、水相をジクロロメタンで抽出した。ひとまとめにした有機相を飽和水性NaCl溶液で洗浄して、MgSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をクロマトグラフィー[Al、PE:EtO:EtN(30:1:1)]で精製した。これにより、所望の生成物を黄色泡状物として得た(1.62g、2.54mmol、理論値の68%)。
【表7】

【0155】
d)表題化合物(A4)の製造
HPCy 0.43ml(2.12mmol)を、酢酸50ml中の化合物(5)0.9g(1.41mmol)の脱気溶液に、シリンジで滴下した。反応混合物をもう一度脱気して、100℃で16時間撹拌した。続いて酢酸を減圧下で除去した。残渣をCHClに溶解し、飽和水性NaHCO溶液、水および飽和水性NaCl溶液で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をクロマトグラフィー[Al、PE:EtO(50:1)]で精製した。これにより、所望の生成物を黄色固体として得た(0.68g、1.04mmol、理論値の74%)。
【表8】

【0156】
実施例A5:(S)−1−ジフェニルホスフィノ−2−ジ−t−ブチルホスフィノメチル−3−フェニルフェロセン(A5)の製造
酢酸(10%)中のHP(t−Bu)の溶液5.2ml(2.82mmol)を、酢酸50ml中の化合物(5)1.2g(1.88mmol)の脱気溶液に、シリンジで滴下した。反応混合物をもう一度脱気して、100℃で16時間撹拌した。続いて酢酸を減圧下で除去した。残渣をCHClに溶解し、飽和水性NaHCO溶液、水および飽和水性NaCl溶液で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をクロマトグラフィー[Al、PE:EtO(50:1)]で精製した。これにより、表題化合物(A5)を黄色固体として得た(0.86g、1.42mmol、理論値の74%)。
【表9】

【0157】
実施例A6:(S)−1−ジフェニルホスフィノ−2−ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィノメチル−3−フェニルフェロセン(A6)の製造
トルエン(24.3%)中のHP[3,5−(CH(0.6g、2.49mmol)の溶液2.48mlを、酢酸13ml中の化合物(5)0.86g(1.71mmol)の脱気溶液に、シリンジで滴下した。反応混合物をもう一度脱気して、100℃で16時間撹拌した。続いて酢酸を減圧下で除去した。残渣をCHClに溶解し、飽和水性NaHCO溶液、水および飽和水性NaCl溶液で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をクロマトグラフィー[Al、PE:EtO(10:1)]で精製した。これにより、表題化合物(A6)を黄色固体として得た(0.7g、1.0mmol、理論値の59%)。
【表10】

【0158】
実施例A7:(S)−1−ジフェニルホスフィノ−2−ジシクロヘキシルホスフィノメチル−3−(3,5−ジメチルフェン−1−イル)フェロセン(A7)の製造
【0159】
【化27】

【0160】
a)化合物(6)の製造
Pd(PPh 0.12g(0.1mmol)を、室温で、トルエン20ml中の化合物3 1.0g(2mmol)と、エタノール3ml中の(3,5−ジメチルフェン−1−イル)ホウ酸0.6g(4mmol)と、2M水性NaCO溶液4.2mlとの脱気混合物に添加した。反応混合物をもう一度脱気して、16時間還流した。混合物を放冷して有機相を分別し、その後、水および飽和水性NaCl溶液で洗浄して、MgSOで乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、粗生成物をクロマトグラフィー[Al、PE:EtO:EtN(20:1:0.2)]で精製した。これにより、化合物(6)を黄色油状物として得た(0.8g、1.6mmol、理論値の80%)。
【表11】

【0161】
b)化合物(7)の製造
s−ブチルリチウム(シクロヘキサン中の1.3M)5.8ml(7.6mmol)を、0℃の無水ジエチルエーテル35ml中の化合物(6)2.8g(5.8mmol)の脱気溶液に、シリンジで滴下した。反応混合物を0℃で2時間撹拌した。それにClPPh 1.93g(8.7mmol)を添加し、その後、混合物を0℃で更に1時間、続いて室温で16時間撹拌した。水を添加して、水相をジクロロメタンで抽出した。ひとまとめにした有機相を飽和水性NaCl溶液で洗浄して、MgSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をクロマトグラフィー[Al、PE:EtO:EtN(30:1:0.3)]で精製した。これにより、化合物(7)を黄色泡状物として得た(3.25g、4.88mmol、理論値の84%)。
【表12】

【0162】
c)表題化合物(A7)の製造
HP(C11 0.48ml(2.39mmol)を、酢酸50ml中の化合物(7)1.06g(1.59mmol)の脱気溶液に、シリンジで滴下した。反応混合物をもう一度脱気して、100℃で16時間撹拌した。続いて酢酸を減圧下で除去した。残渣をCHClに溶解し、飽和水性NaHCO溶液、水および飽和水性NaCl溶液で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をクロマトグラフィー[Al、PE:EtO(50:1)]で精製した。これにより、表題化合物を黄色泡状物として得た(0.62g、1.04mmol、理論値の57%)。
【表13】

【0163】
実施例A8:(S)−1−ジフェニルホスフィノ−2−ジ−t−ブチルホスフィノメチル−3−(3,5−ジメチルフェン−1−イル)フェロセン(A8)の製造
酢酸(10%)中のHP(t−Bu)の溶液3.3ml(1.80mmol)を、酢酸10ml中の化合物(7)0.75g(1.12mmol)の脱気溶液に、シリンジで滴下した。反応混合物をもう一度脱気して、100℃で16時間撹拌した。続いて酢酸を減圧下で除去した。残渣をCHClに溶解し、飽和水性NaHCO溶液、水および飽和水性NaCl溶液で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をクロマトグラフィー[Al、PE:EtO(50:1)]で精製した。これにより、表題化合物を橙色泡状物として得た(0.6g、0.95mmol、理論値の85%)。
【表14】

【0164】
実施例A9:(S)−1−ジフェニルホスフィノ−2−ビス(3,5−ジメチルホスフィノ)メチル−3−(3,5−ジメチルフェン−1−イル)フェロセン(A9)の製造
トルエン(24.3%)中のHP[3,5−(CH(54mg、0.22mmol)の溶液0.2mlを、酢酸5ml中の化合物(7)0.1g(0.15mmol)の脱気溶液に、シリンジで滴下した。反応混合物をもう一度脱気して、100℃で16時間撹拌した。続いて酢酸を減圧下で除去した。残渣をCHClに溶解し、飽和水性NaHCO溶液、水および飽和水性NaCl溶液で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をクロマトグラフィー[Al、PE:EtO(30:1)]で精製した。これにより、表題化合物を橙色泡状物として得た(50mg、0.07mmol、46%)。
【表15】

【0165】
B)金属錯体の製造
【0166】
実施例B1:
[Rh(nbd)]BF 5.1mg(0.0136mmol)および実施例A6からの配位子A1 10.4mg(0.0163mmol)を、磁器撹拌機を取付けたSchlenk管に計量して入れ、真空およびアルゴンで空気を排出させた。脱気メタノール0.8mlを撹拌しながら添加した後、金属錯体の橙色溶液(触媒溶液)を得た。均一なC2−対称錯体が形成された。
【0167】
C)使用例
【0168】
実施例C1:不飽和化合物の水素化
水素化の実施方法および光学収率:eeの測定は、W. Weissensteiner et al. Organometallics 21(2002), p1766-1774の一般用語に記載されている。触媒は、溶媒中で配位子と触媒前駆体としての金属錯体(=他に断りがなければ[Rh(ノルボルナジエン)]BF)とを混合することにより、「そのものの位置で」製造した。他に断りがなければ、基質濃度は0.25mol/lであり、金属に対する基質のモル比は200であり、金属に対する配位子のモル比は1.05であった。
【0169】
水素化:
基質:MACおよびDMIの反応条件
金属に対する基質のモル比=200;触媒前駆体=[Rh(ノルボルナジエン)]BF;溶媒=MeOH;水素圧=1バール;温度=25℃;反応時間1時間。
【0170】
【化28】

【0171】
基質:MEAの反応条件
金属に対する基質のモル比=100;触媒前駆体=[Ir(COD)Cl];溶媒=トルエン;添加:Ir 1当量あたりヨウ化テトラブチルアンモニウム2当量およびトルエン10mlあたりトリフルオロ酢酸0.03ml;水素圧=80バール;温度=25℃;反応時間=16時間。
【0172】
【化29】

【0173】
水素化の結果を、以下の表1に報告する。「ee」は、鏡像体過剰率である。配置をカッコ内に示す。表1の比較の配位子および置換された配位子での結果から、置換が予期しないことには配置に影響を及ぼし、配置を反転させ得ることが理解できる。その上、置換基を導入した場合の光学収率の上昇が理解できる。
【0174】
比較の配位子:C1、C2およびC3の構造を以下に示す。
【0175】
【化30】

【0176】
【表16】

【0177】
実施例C2:N−(2′−メチル−6′−エチルフェン−1′−イル)−1−メトキシメチルエチルアミンの製造
[Ir(シクロオクタジエン)Cl] 1.65mg、配位子2.8mg、ヨウ化テトラブチルアンモニウム70mgおよび酢酸10mlを、オートクレーブ内でイミン(1)105gに添加した。条件は、イリジウムに対する基質の比100000に対応した。オートクレーブを閉じて、アルゴンでフラッシュした。その後、水素をでラッシュすることによりアルゴンを置換して、オートクレーブを水素(80バール)で加圧した。撹拌器を入力することにより、水素化を開始した。水素化の後、HPLC[Chiracel OD;溶離液 ヘキサン/i−プロパノール(99.6:0.4)、流速:1ml/分]により、転化率および光学収率(ee)を測定した。光学収率に対する配置(RまたはS配置)をはじめとする結果を、以下の表2に報告する。
【0178】
【表17】

【0179】
)逆の配置を有する生成物は、他の鏡像異性体形態の配位子を用いることにより得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラセミ体、立体異性体の混合物、または光学的に純粋な立体異性体の形態の式I:
【化1】


(式中、
およびXは、それぞれ互いに独立して、第二級ホスフィノ基であり;
は、C原子、N原子、S原子、Si原子、P(O)基またはP(S)基を介してシクロペンタジエニル環に結合したハロゲン原子または置換基であり、m>1の場合の基:Rは、同一または異なっており;
は、C〜C−アルキルまたはフェニルであり;
mは、1〜3であり;
nは、0または1〜5である)
で示される化合物。
【請求項2】
第二級ホスフィノ基:XおよびXが、2個の同一または2個の異なる炭化水素基を含むこと、ならびに第二級ホスフィノ基:XおよびXが、同一または異なっていることを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
およびXが、−P(C〜C−アルキル)、−P(C〜C−シクロアルキル)、−P(C〜C12−ビシクロアルキル)、−P(o−フリル)、−P(C、−P[2−(C〜C−アルキル)C、−P[3−(C〜C−アルキル)C、−P[4−(C〜C−アルキル)C、−P[2−(C〜C−アルコキシ)C、−P[3−(C〜C−アルコキシ)C、−P[4−(C〜C−アルコキシ)C、−P[2−(トリフルオロメチル)C、−P[3−(トリフルオロメチル)C、−P[4−(トリフルオロメチル)C、−P[3,5−ビス(トリフルオロメチル)C、−P[3,5−ビス(C〜C−アルキル)、−P[3,5−ビス(C〜C−アルコキシ)、−P[3,4,5−トリス(C〜C−アルコキシ)および−P[3,5−ビス(C〜C−アルキル)−4−(C〜C−アルコキシ)Cからなる群から選択される同一または異なる非環式sec−ホスフィノ基、あるいは非置換であるか、またはC〜C−アルキル、C〜C−アルコキシ、C〜C−アルコキシ−C〜C−アルキル、フェニル、ベンジル、ベンジルオキシ、C〜C−アルキリデンジオキシル、および非置換もしくはフェニル置換のメチレンジオキシルから選択される置換基1個以上により置換された、
【化2】


からなる群から選択される環状ホスフィンであることを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
およびXが、それぞれ、−P(CH、−P(i−C、−P(n−C、−P(i−C、−P(C11、−P(ノルボルニル)、−P(o−フリル)、−P(C、−P[2−(メチル)C、−P[3−(メチル)C、−P[4−(メチル)C、−P[2−(メトキシ)C、−P[3−(メトキシ)C、−P[4−(メトキシ)C、−P[3−(トリフルオロメチル)C、−P[4−(トリフルオロメチル)C、−P[3,5−ビス(トリフルオロメチル)C、−P[3,5−ビス(メチル)C、−P[3,5−ビス(メトキシ)C、−P[3,4,5−トリ(メトキシ)C、−P[3,5−ビス(メチル)−4−(メトキシ)C、または式:
【化3】


(式中、R′は、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、メトキシメチル、エトキシメチル、またはベンジルオキシメチルであり、R″は、R′の意味の一つを有する)の一つを有する基であることを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
式I中のnが、0であることを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
置換基:Rが、5位で結合されており、置換基が、かさ高な置換基であることを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
置換基:Rが、C〜C−アルキル、置換または非置換のフェニル、トリ(C〜C−アルキル)Si、トリフェニルシリル、ハロゲン、−SR06、−CHOH、−CHR06OH、−CR06R′06OH、−CHO−R06、−CH(O)、−COH、−CO06(式中、R06は、炭素原子を1〜10個有する炭化水素基であり、R′06Oは、独立して、R′06の意味の一つを有する)、および−P(O)(R03(式中、R03は、水素、C〜C−アルキル、C〜C−シクロアルキル、フェニルまたはベンジルである)から選択されることを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
式Iで示される化合物が、式Ia:
【化4】


(式中、
およびXは、それぞれ互いに独立して、第二級ホスフィノ基であり、
は、炭素原子またはSi原子を介してシクロペンタジエニル環に結合したハロゲン原子または置換基である)
で示されるラセミ体、立体異性体の混合物、または光学的に純粋な立体異性体に対応することを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
が、置換もしくは非置換の直鎖状もしく分枝状C〜C12−アルキル、置換もしくは非置換のC〜C12−シクロアルキル、置換もしくは非置換のC〜C−シクロアルキル−C〜C−アルキル、置換もしくは非置換のC〜C18−アリール、置換もしくは非置換のC〜C18−アラルキル、トリ(C〜C−アルキル)Si−、トリフェニルシリル、またはF、ClおよびBrであることを特徴とする、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
元素周期表の遷移金属の群、好ましくはCu、Ag、Au、Ni、Co、Rh、Pd、Ir、RuおよびPtの群から選択される金属と、配位子としての式Iで示される化合物との錯体。
【請求項11】
式IIIおよびIV:
【化5】


(式中、
は、式Iで示される化合物の1種であり;
Lは、同一もしくは異なる単座陰イオン性もしくは非イオン性配位子を表すか、またはLは、同一もしくは異なる二座陰イオン性もしくは非イオン性配位子を表し;
Lが単座配位子であればrは2、3もしくは4であり、またはLが二座配位子であればnは1もしくは2であり;
zは、1、2または3であり;
Meは、Rh、Ir、およびRuからなる群から選択される金属であり、金属は、酸化状態:0、1、2、3または4を有し;
は、オキソ酸または錯酸の陰イオンであり;
陰イオン性配位子は、金属の酸化状態:1、2、3または4の電荷と均衡を保っている)に対応する、請求項10記載の金属錯体。
【請求項12】
式VII:
【化6】


(式中、
Zは、Cl、BrまたはIであり;Aは、式Iで示される化合物であり;Lは、同一もしくは異なる配位子を表し;Eは、オキソ酸、鉱酸または錯酸の陰イオンであり;Sは、配位子として配位が可能な溶媒であり;aは、1〜3であり、bは、0〜4であり、cは、0〜6であり、dは、1〜3であり、eは、0〜4であり、fは、1〜3であり、gは、1〜4であり、hは、0〜6であり、kは、1〜4であり、錯体の電荷の合計は、0である)に対応する、請求項10記載の金属錯体。
【請求項13】
触媒の存在下、プロキラル有機化合物中で水素を炭素−炭素または炭素−ヘテロ原子二重結合に不斉付加することにより、キラル有機化合物を製造する方法であって、請求項10記載の少なくとも1種の金属錯体の触媒量の存在下で付加反応を実施することを特徴とする方法。
【請求項14】
キラル有機化合物の製造のための、好ましくはプロキラル有機化合物中で水素を炭素−炭素または炭素−ヘテロ原子二重結合に不斉付加するための均一触媒としての、請求項10記載の金属錯体の使用。

【公表番号】特表2009−504618(P2009−504618A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525584(P2008−525584)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際出願番号】PCT/EP2006/065196
【国際公開番号】WO2007/017522
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(599163159)ソルヴィーアス アクチェンゲゼルシャフト (22)
【氏名又は名称原語表記】Solvias AG
【Fターム(参考)】