説明

フェロセン誘導体およびその用途

【課題】炭素−炭素結合反応または炭素−窒素結合反応に有用なパラジウム触媒またはニッケル触媒用の配位子を提供する。
【解決手段】一般式(1)で表される新規フェロセン誘導体を合成する。


(式中、Xはハロゲンを表し、Yはハロゲン、ジアルキルホスフィノ基またはジアリールホスフィノ基を表し、Zは下記一般式(2)で表されるアミノ基または下記一般式(3)で表されるホスフィノ基を表す。)


(式中、R〜Rは各々独立してアルキル基、またアリール基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なフェロセン誘導体に関するものである。本発明のフェロセン誘導体は、均一系または不均一系の触媒反応に用いる触媒の中間体等に有用である。
【背景技術】
【0002】
これまでに、数多くのフェロセン誘導体が報告されている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、2,1’−ジハロゲノ−1−(ジアルキルアミノメチル)フェロセン誘導体、または2−ホスフィノ−1’−ハロゲノ−1−(ジアルキルアミノメチル)フェロセン誘導体に関する報告例は少なく(例えば、特許文献1参照)、2,1’−ジハロゲノ−1−(2−ジアルキルアミノエチル)フェロセン誘導体、または2−ホスフィノ−1’−ハロゲノ−1−(2−ジアルキルアミノエチル)フェロセン誘導体である2,1’−ジブロモ−1−(2−ジメチルアミノエチル)フェロセンが、(不斉)水素化反応の均一または不均一系触媒の原料として知られているのみである(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
これまでに、炭素−炭素結合反応(別名、鈴木−宮浦カップリング反応)、または炭素−窒素結合反応(別名、Bichwald−Hartwig反応)において、多くのパラジウム触媒の配位子が報告されている。例えば、トリ(t−ブチル)ホスフィン(例えば、特許文献3,非特許文献2参照)、ジアルキルホスフィノ基が置換したフェロセン誘導体(例えば、特許文献4,非特許文献3参照)、2−ジシクロヘキシル−1,1’−ビフェニル誘導体(例えば、特許文献5参照)、1,3−ビス−(2,6−ジイソプロピルフェニル)イミダゾリニウム塩等(例えば、非特許文献4参照)のカルベン誘導体等が挙げられる。
【0004】
上記配位子からなる均一系パラジウム触媒は、遷移金属が反応系中に残存することから、反応系から遷移金属を取り除くために、再結晶および/またはカラムクロマトグラフィーを繰り返す必要があった。近年では、グリーンサステイナブルケミストリーの観点から、例えば、トリフェニルホスフィン誘導体を固定化したマイクロカプセル型触媒(例えば、特許文献6参照)、トリフェニルホスフィン誘導体を固定化したグラフト型固定化触媒(例えば、特許文献7参照)、カルベン誘導体を固定化した固定化触媒(例えば、特許文献8,非特許文献5参照)、2−ジシクロヘキシルホスフィノビフェニル(別名、Buchwald配位子)を固定化したマイクロカプセル型固定化触媒(例えば、特許文献9参照)等の不均一系遷移金属触媒が報告されている。
【0005】
【特許文献1】特表平11−503439号公報
【特許文献2】特表2000−514436公報
【特許文献3】特開平10−139742号公報
【特許文献4】特開2000−247990公報
【特許文献5】米国2002/156295号公開明細書
【特許文献6】特表2004−533928公報
【特許文献7】特表2004−513194公報
【特許文献8】特開2002−20396公報
【特許文献9】特開2008−221089公報
【非特許文献1】Journal of Organometallic Chemistry, 567,191−198(1998)
【非特許文献2】Journal of American Chemical Society, 122(17),4020−4028(2000)
【非特許文献3】Journal of American Chemical Society, 130,6586−6596(2008)
【非特許文献4】Angew. Chem. Int. Ed., 46,2768−2813(2007)
【非特許文献5】Organic Letters, 10(8),1609(2008) しかし、鈴木−宮浦反応においては、上記不均一系触媒は、反応系中への遷移金属の溶出も少なく反応活性も高いものの、Buchwald−Hartwig反応では、未だ低い金属溶出量と高い反応活性の両方を満足できる結果は得られていない(例えば、特許文献8参照)。また、マイクロカプセル化触媒やグラフト重合体を用いてBuchwald−Hartwig反応を行っても、未だ十分な触媒活性は得られていない(例えば、特許文献6,7参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
炭素−炭素結合反応または炭素−窒素結合反応に有用なパラジウム触媒またはニッケル触媒を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、一般式(1)で表される特定のフェロセン誘導体を原料とする配位子およびその触媒が、炭素−炭素結合反応、または炭素−窒素結合反応に有効であることを見出した。即ち、本発明は、一般式(1)で表される新規フェロセン誘導体およびその用途に関するものである。
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Xはハロゲン原子を表し、Yはハロゲン原子、ジアルキルホスフィノ基またはジアリールホスフィノ基を表し、Zは下記一般式(2)で表されるアミノ基または下記一般式(3)で表されるホスフィノ基を表す。)
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、R〜Rは各々独立して炭素数1〜18の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、または置換していてもよいフェニル基若しくはナフチル基を表す。)
以下、本発明に関し詳細に説明する。
【0012】
一般式(1)で表されるフェロセン誘導体において、置換基Xは、ヨウ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子である。
【0013】
また、置換基Yは、ハロゲン原子、ジアルキルホスフィノ基またはジアリールホスフィノ基である。ハロゲン原子としては、ヨウ素原子、塩素原子、臭素原子である。ジアルキルホスフィノ基としては、ジメチルホスフィノ基、ジエチルホスフィノ基、ジイソプロピルホスフィノ基、ジ(t−ブチル)ホスフィノ基、t−アミル基、ジ(シクロヘキシル)ホスフィノ基、ジ(1−アダマンチル)ホスフィノ基、ジ(3,5−ジメチルホスフィノ基)が挙げられる。また、ジアリールホスフィノ基としては、ジフェニルホスフィノ基、ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィノ基、ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)ホスフィノ基、ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)ホスフィノ基、ビス(2,4,6−トリイソプロピルフェニル)ホスフィノ基、ビス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィノ基、ビス(2,4,6−トリメトキシフェニル)ホスフィノ基が挙げられる。中でも、ジ(シクロヘキシル)ホスフィノ基、ジ(t−ブチル)ホスフィノ基、ジ(1−アダマンチル)ホスフィノ基、ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィノ基、ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)ホスフィノ基および臭素原子がフェロセン誘導体の置換基として有効である。
【0014】
〜Rは、各々独立して炭素数1〜18の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、または置換していてもよいフェニル基若しくはナフチル基である。
【0015】
炭素数1〜18の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基は、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、アミル基、ヘキシル基、2−ヘキシル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、3,5−ジメチルアダマンチル基等が挙げられる。置換していてもよいフェニル基若しくはナフチル基としては、先に例示したアルキル基の他に、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基、およびフェニル基で置換されたフェニル基やナフチル基が挙げられる。
【0016】
置換基Zとして、具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジn−プロピルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジn−ブチルアミノ基、ジ−sec−ブチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、ジフェニルアミノ基等の一般式(2)で表されるアミノ基、または、ジエチルホスフィノ基、ジイソプロピルホスフィノ基、ジn−ブチルホスフィノ基、ジ−t−ブチルホスフィノ基、ジシクロヘキシルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基、ジ(o−トリル)ホスフィノ基、ジ(m−トリル)ホスフィノ基、ジ(p−トリル)ホスフィノ基等の一般式(3)で表されるホスフィノ基が挙げられる。中でも、合成の容易さから、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジシクロへキシルホスフィノ基、ジフェニルホスフィノ基が好ましい。
【0017】
本発明のフェロセン誘導体は、入手が容易で安価なジメチルアミノメチルフェロセンから合成可能である(下記(4)式参照)。具体的には、化合物1にブチルリチウムとジブロモテトラフルオロエタンを反応させ、ジブロモ体である化合物2を合成することができる(参考文献:Journal of Organometallic Chemistry, 567,191−198(1998))。次に、ブチルリチウムとクロロホスフィン誘導体を用いて化合物3に変換した後、酢酸中、ホスフィン化合物と反応させることで化合物4を合成することができる(参考文献:Inorganic Chemistry Communications, 7,923−(2004))。
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、RおよびRは各々独立して炭素数1〜18の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、または置換していてもよいフェニル基若しくはナフチル基を表す。)
次に、化合物3または4を固定化する方法としては特に制限はないが、例えば、ブチルリチウムで臭素をリチオ化した後、ジメチルホルムアミドと反応させることによりホルミル体を合成することができる。得られたホルミル体は、Wittig試薬と反応させることによりビニル基、またパラホルムアルデヒドで処理することによりヒドロキシメチル基をそれぞれ導入することができる。また、シリル化合物、例えば、3−クロロプロピルクロロジメチルシランと上記リチオ体とを反応させることによりシリル基を導入することができる。
【0020】
得られたビニル基、ヒドロキシメチル基、クロロプロピルジメチルシリル基等を有するフェロセン誘導体は、公知の方法によりポリスチレン等の有機担体に固定化することができる。また、ビニル基を有するフェロセン誘導体は、スチレン誘導体とのラジカル重合によりマイクロカプセル化することもできる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一般式(1)で表されるフェロセン誘導体は、新規物質であり、このフェロセン誘導体から誘導される配位子は、炭素−炭素結合反応、炭素−窒素結合反応において、活性およびパラジウム溶出量の観点から非常に有効な化合物である。
【実施例】
【0022】
以下、本発明を実施例に基づき、更に詳細に解説するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本実施例で用いた分析機器および測定法を以下に列記する。
【0023】
[NMR測定]
NMR測定装置 : VARIAN Gemini−200
[質量分析]
質量分析装置 : 日立製作所製 M−80B
[元素分析]
元素分析計 : パーキンエルマー全自動元素分析装置
酸素フラスコ燃焼−IC測定法 : 東ソー製 イオンクロマトグラフ IC−2001
[ICP分析]
試料調整 : 硫酸−硝酸による湿式分解
分析装置 : パーキンエルマー社製 Optima3000DV
合成例1(Fc−2の合成)
ジメチルアミノメチルフェロセン Fc−1 9.72g(40mmol)、脱水ジエチルエーテル 70mlを300mlナス型フラスコに加えた後、窒素雰囲気下、室温で1.6M n−ブチルリチウム/ヘキサン溶液(以下、n−BuLi溶液と略す。)を27ml加えた(44mmol)。同温度で2時間攪拌した後、事前に調整したn−BuLi溶液 30ml、テトラメチルエチレンジアミン 5.11g(44mmol)、テトラハイドロフラン 4mlからなる溶液を室温下で滴下してから、更に24時間攪拌した。その後、反応液を−78℃に冷却し、1.2−ジブロモテトラフルオロエタン 23.1g(88.9mmol)を滴下した。更に、同温度で1時間、更に室温下で2時間攪拌した。
【0024】
冷水 70mlを反応液に加えて反応を終了した。反応液は、酢酸エチル (50ml×3回)で抽出し、得られた有機層を水 50ml、引き続き飽和食塩水 50mlで洗浄した後、硫酸マグネシウムで有機層を乾燥した。有機層を濃縮して得られた茶褐色油状物をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液=アセトン)により精製することで、8.3g(収率=52%)のFc−2を単離した。Fc−2のH−NMRチャートを図1に示す。
【0025】
H−NMR(CDCl,ppm):2.23(s,6H), 3.41(d,J=3.6Hz,2H), 4.09−4.45(m,7H)
【0026】
【化4】

【0027】
実施例1(Fc−3の合成)
Fc−2 8.33g(20.9mmol)、脱水ジエチルエーテル 90mlを300mlナス型フラスコに仕込み、−30〜−40℃でn−BuLi溶液 13mlを滴下した。同温度で30分攪拌した後、反応液を−78℃に冷却し、クロロ−ジ(t−ブチル)ホスフィン 4.75mlをシリンジにて滴下した。
【0028】
その後、同温度で30分、更に室温で一晩攪拌した後、冷水 50mlを加えて、反応を終了した。反応液は、酢酸エチルで抽出し、得られた有機層を水 40ml、引き続き飽和食塩水 40mlで洗浄した後、硫酸マグネシウムで有機層を乾燥した。有機層を濃縮して得られた茶褐色油状物をシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=1/2体積比)により精製することで、2.8g(収率=29%)のFc−3を単離した。
【0029】
Fc−3のH−NMRチャートを図2に示す。
【0030】
H−NMR(CDCl,ppm):0.94(d,9H,J=11Hz), 1.48(d,9H,J=12.4Hz), 2.25(s,6H), 3.36(d,1H,J=14.4Hz), 3.54(dd,1H,J=14,2.6Hz), 4.50(t,2H,J=1.6Hz), 4.31−4.42(m,4H), 4.69(brs,1H)
実施例2(Fc−4の合成)
Fc−3 2.8g(6mmol)、脱水ジエチルエーテル 85mlを200mlナス型フラスコに加えた。次に、反応液を−30〜−40℃に冷却してから、1.6M BuLiヘキサン溶液を滴下し、同温度で1時間攪拌しながら熟成した。次に、反応液をドライアイス/アセトンで−78℃に冷却し、パラホルムアルデヒド 0.34g(11.4mmol)を窒素雰囲気下少量ずつ加え、同温度で1時間、更に室温で16時間攪拌した後、冷水 50mlを加えて反応を終了した。反応液を酢酸エチルで抽出した後、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液=ヘキサン/酢酸エチル=1/1体積比)にて精製することにより0.60gのFc−4を赤褐色油状物として単離した(収率=24%)。尚、Fc−4は、H−NMRでピークがブロードになる挙動を示すことから常磁性を示した。FDMSでm/e=417の分子イオンピークを示したことから、目的物と同定した。
【0031】
実施例3(2,1’−ジブロモ−1−(ジフェニルホスフィノメチル)フェロセンの合成)
100mlナス型フラスコに、実施例1で得られたFc−3 0.5g(1.1mmol)、ジフェニルホスフィン 0.2g(1.1mmol),酢酸 15mlを加え、窒素雰囲気下、100℃で3時間攪拌した。冷却後、反応液を濃縮した後、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=1/2体積比)により精製し、0.34gの赤褐色油状物を得た。FDMSでm/e=606の分子イオンピークを示したことから、目的物と同定した。
【0032】
実施例4(Fc−5の合成[ポリスチレンへの固定化])
窒素雰囲気下、100mlナス型フラスコに、実施例2で合成したFc−4 0.56g(1.34mmol)、脱水テトラハイドロフラン 80mlを加え、そこに水素化ナトリウム(40%ミネラルオイル含有) 0.07g(1.75mmol)を加えた。反応液を室温で1時間攪拌した後、マクロポーラス型クロロメチル化ポリスチレン(Aldrich製、1.2mmol−Cl/g)を加え、45時間反応液を還流した。反応液を冷却後、水 10mlを加えた後に濾過した。得られた固定化触媒を10mlの水で2回洗浄した後、更にメタノール、テトラハイドロフランで洗浄(各、10ml×3回)した。真空乾燥の後、540mgの薄赤茶色の粒状固体を得た。ICP分析、元素分析の結果、Fc−5中のP,Fe,Nの含有量は、各々、0.15mmol/g,0.22mmol/g,0.19mmol/gであった。
【0033】
実施例5(Fc−6の合成[酢酸パラジウムの固定化])
30mlシュレンク管に、実施例4で合成したFc−5 260.5mgを仕込み、酢酸パラジウム 34.8mg/脱水テトラハイドロフラン 2ml溶液を加えた。窒素雰囲気下、60℃で4時間加熱攪拌し、室温に冷却した。得られた固体をテトラハイドロフラン、メタノールで洗浄(各、5ml×3回)した後、真空乾燥した。ICP分析の結果、Fc−6中のPd,Feの含有量は、各々、0.21mmol/g,0.18mmol/gであった。
【0034】
実施例6(炭素−窒素結合反応における触媒性能試験)
100mlナス型フラスコに、実施例5で得られたパラジウム固定化触媒 FC−6 125mg(Pd換算で1mol%)、ブロモベンゼン 0.39g(2.5mmol)、アニリン 0.465g(5.0mmol)、ナトリウム−t−ブトキシド 0.48g(5.0mmol)、トルエン 5mlを仕込み、窒素下、100℃で24時間攪拌した。反応液を冷却し、水 5mlを加えた後、反応液を濾過した。回収した固定化触媒をトルエン 5mlで5回洗浄した。得られた母液を分液した後、有機層の内部標準法によるガスクロマトグラフィー分析により、目的物であるN−フェニル−3−トルイジンが収率95.2%で得られていることが分かった。また、反応液中のPd量をICPにより分析すると4ppmであり、仕込みのパラジウム量に対して6%溶出していていることが分かった。
【0035】
比較例1
固定化触媒をマイクロカプセル型触媒 Pd−Encat TOTP30(和光純薬製,トリス(o−トリル)ホスフィン内包) 77mg(Pd換算で1mol%)に代えて、実施例6と同様な実験を行ったところ、反応の進行は殆ど認められなかった。
【0036】
比較例2
固定化触媒をカルベン前駆体および酢酸パラジウムをポリスチレンに固定化した触媒 104mg(パラジウム換算で1mol%−Pd)に代えて、実施例6と同様な実験を行ったところ、N−フェニル−3−トルイジンの収率は9.7%であった。
【0037】
尚、カルベン前駆体の合成およびカルベン前駆体と酢酸パラジウムのポリスチレンへの固定化は、Organic Letters, 10(8),1609(2008)に記載の方法に従い行った。カルベン前駆体のH−NMRチャートを図3に示す。また、合成したパラジウム固定化触媒のPd濃度は、ICP分析の結果2.5wt%であった。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】合成例1で合成したFc−2のH−NMRチャートを示す。
【図2】実施例1で合成したFc−3のH−NMRチャートを示す。
【図3】比較例2で合成したカルベン前駆体(1−(2,4,6−トリメチルフェニル)イミダゾール)のH−NMRチャートを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるフェロセン誘導体。
【化1】

(式中、Xはハロゲン原子を表し、Yはハロゲン原子、ジアルキルホスフィノ基またはジアリールホスフィノ基を表し、Zは下記一般式(2)で表されるアミノ基または下記一般式(3)で表されるホスフィノ基を表す。)
【化2】

(式中、R〜Rは各々独立して炭素数1〜18の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、または置換していてもよいフェニル基若しくはナフチル基を表す。)
【請求項2】
一般式(2)で表されるアミノ基が、ジメチルアミノ基であることを特徴とする請求項1に記載のフェロセン誘導体。
【請求項3】
Yが、ジ(シクロヘキシル)ホスフィノ基、ジ(t−ブチル)ホスフィノ基、ジ(1−アダマンチル)ホスフィノ基、ジ(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィノ基、ジ(2,4,6−トリメチルフェニル)ホスフィノ基、または臭素原子であることを特徴とする請求項1または2に記載のフェロセン誘導体。
【請求項4】
炭素−炭素結合反応または炭素−窒素結合反応に用いるパラジウム触媒またはニッケル触媒の配位子を合成する際に、原料として用いることを特徴とする請求項1〜3に記載のフェロセン誘導体。
【請求項5】
請求項4に記載の配位子が、一般式(1)で表されるフェロセン誘導体を無機または有機担体に固定化した配位子であることを特徴とするパラジウム触媒およびニッケル触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−138116(P2010−138116A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316213(P2008−316213)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】