フェロモン又はその成分のメタセシス合成方法
【課題】昆虫の性誘因ホルモン又はそれらの成分のメタセシス合成法の提供。
【解決手段】ピーチツイッグボーラーフェロモン(Peach Twig Borer pheromone)であるE−5−デセニルアセテート、モスキート産卵誘因フェロモン(mosquito oviposition attractant pheromone)である(5R,6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド、ペカンナットカセビアラーモスフェロモン(pecan nut casebearer moth pheromone)であるE9,Z11−ヘキサデカジエナール、ダイアモンドバックモス(DBM)フェロモン(Diamondback Moth pheromone)のアナログである9−テトラデセニルフォルメート等の昆虫の性誘因ホルモン又はそれらの成分のメタセシス合成。好ましくはクラスI−IVのメタセシス触媒を採用する。
【解決手段】ピーチツイッグボーラーフェロモン(Peach Twig Borer pheromone)であるE−5−デセニルアセテート、モスキート産卵誘因フェロモン(mosquito oviposition attractant pheromone)である(5R,6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド、ペカンナットカセビアラーモスフェロモン(pecan nut casebearer moth pheromone)であるE9,Z11−ヘキサデカジエナール、ダイアモンドバックモス(DBM)フェロモン(Diamondback Moth pheromone)のアナログである9−テトラデセニルフォルメート等の昆虫の性誘因ホルモン又はそれらの成分のメタセシス合成。好ましくはクラスI−IVのメタセシス触媒を採用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成フェロモンまたはその成分に関し、さらに、特に、生物的に活性な、桃枝穿孔性動物フェロモンの主成分であるE−5−デセニルアセタート、蚊産卵性誘引物質フェロモンである(5R,6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリド、またはペカン堅果ケースベアラー(casebearer)蛾フェロモンであるE9,Z11−ヘキサデカジエナール等の昆虫性誘引物質フェロモンまたはその成分等の、生物活性な化合物および中間体を生成するメタセシス反応に関する。
【背景技術】
【0002】
昆虫ペストは作物を破壊し、および/または病気を拡げる。通常のペスト抑制法は、農場、果樹園、湿地帯、森林、または他のペスト生息地に、殺虫剤を散布することである。この方法は問題を有する。その理由は、殺虫剤は作物や分水界に直接適用されるので、これを実施することにより、優先性の高い農作物や水質問題さらに他の環境問題に逆行するからである。また、殺虫剤は無差別キラーであるため、益虫も害虫も殺す。結局、昆虫ペストは普通の殺虫剤の多くに対して耐性を高めるに至る。
【0003】
昆虫の個体数を抑制する別の方法は、昆虫の性誘引物質を使用して、オスの昆虫を混乱させ、これにより、交尾を回避し、将来的に昆虫の発生をなくすことである。この方法は、メイティングパターン破壊(mating pattern disruption)という。昆虫フェロモンは従来の殺虫剤に対して多くの利点を有する比較的新しいクラスの化合物に含まれる。昆虫フェロモンは、無毒性であり、環境的にもやさしい。これらは、標的の昆虫に特異的であり、益虫に悪影響を与えないし、標的の昆虫が耐性を持つようになることはない。メイティングパターン破壊を使用して昆虫個体数を抑制することの最大の弊害は、昆虫フェロモンを生成するコストである。このコストは伝統的な殺虫剤のコストをはるかに凌いで典型的に高価である。昆虫フェロモンの製造コストを低減する方法により、メイティングパターン破壊を、昆虫個体数を抑制する経済的な方法にする。これにより、ペルト抑制に関する環境問題を最小にする。
【0004】
一般に、普通のフェロモンは10〜18個の炭素原子を含むオレフィンを伴い、末端アルコール、アルデヒド、またはアセタート官能基を有し、特異な特別な立体異性を有する。以下の記載は、石果果樹園における主なペストである桃枝穿孔性動物(PTB)等の普通の昆虫ペスト、イエカ属の病原体を媒介する蚊、およびペカンにおける主なペストであるペカン堅果ケースベアラー蛾に対する幾つかのフェロモンを非制限的に例示する。
【0005】
PTBフェロモンはE−5−デセニルアセタートとE−5−デセノールが85:15の割合である。したがって、PTBフェロモンの主成分である5−デセニルアセタートの生成は、PTBフェロモン製造法の重要な段階である。この酢酸エステルは、加水分解によってその後除去され、E−5−デセノール、PTBフェロモンの他の成分を得ることができる。したがって、E−5−デセニルアセタートを合成する速くて、高価でなく、高収率の方法が望まれる。
【0006】
蚊の産卵フェロモン(MOP)に関する背景情報は、以下の文献から得られる。すなわち、Olagbemiro氏等による「(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリド、蚊産卵フェロモンの、Kochia scoparia (アカザ科)ホウキギ植物の種子油からの製造、」J.Agric.Food Chem.(1999)47,3411。より詳しくはこの文献を参照のこと。
イエカ属の蚊(双し目:蚊(Culicidae))には、公衆衛生に対する最大の驚異がある。その理由は、世界規模で何百万人の人々を悩ます、マラリア、デング熱、黄熱、脳炎、およびフィラリア等の病気に対する原因薬剤の媒介として振る舞う可能性があるからである。マラリアと脳炎は、非常に大勢に感染し、致死率が最も高く、主にアフリカで、世界90箇国15億の約3分の1に影響する。(AAAS(American Association for the Advancement of Science)「マラリアおよびアフリカにおける発生」:AAAS:ワシントンDC、(1991);Giles氏等による、「Bruce−Chwatt’s Essential Malariology」第3刷、Edward Arnold;London UK(1993);およびWHO/CTD.「マラリア予防および抑制」WHOリポート;ジュネーブ(1998)。)
【0007】
フィラリアは危険下にある45000万人の人々の3.33%(すなわち〜1500万人)に感染し、毎年約100万人の新規な感染が生じる。(Reeves 氏等による、「節足動物媒介の自然感染」疫学および蚊媒介アルボウイルスの抑制、カリフォルニアにおける、1943−1987;REEVES,W.G.Ed.;カリフォルニア蚊抑制協会:サクラメント,CA.1990 128−149頁。)媒介物が引き起こす病気の報告が急速に増加したために、媒介物の監視および抑制の有効な方法が最も重要である。
【0008】
Wuchereria Bancrofti(合衆国における、ヒトフィラリアの原因薬剤およびセントルイ脳炎ウイルスおよび他のアルボウイルス)の伝達はquinquefasciatus属の蚊に原因がある。(Reissen氏等による、「カリフォルニアのロサンゼルス盆地における1987−1990の蚊およびセントルイ脳炎ウイルスのエコロジー」J.Med.Entomol.(1992)29,582).卵を持っているquinquefasciatus属のメスが嗅覚のキューを使用して、適当な産卵場所を決める。主なキューは産卵誘引物質フェロモン((5S,6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリド)であり、これは成熟した卵集団により放出される。(Osgood,C.E.「tarsakis 属の卵ラフトに関する産卵フェロモン」J.Econ.Entomol.(1971)64,1038;Osgood氏等、「蚊の産卵誘引物質と刺激物質との間の識別のための空気流れオルファクトメーター」J.Econ.Entomol.(1971a)64,1109;およびStarratt,A.N.;C.E.Osgood「quinquefasciatus属とpipens pipens属の卵から得られる1,3−ジグリセリド」Comp.Biochem.Physiol.(1973)857.)
【0009】
quinquefasciatus属のメスの蚊により生成される産卵誘引物質フェロモン((5S,6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリド)は、卵上に舌先の滴から放出される。(Laurence 氏等による「エリスロ−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリド、蚊の産卵誘引物質の主な成分」J.Chem.Commun. (1982)59−60.(Laurence氏等’82)。これは、これおよび関連する種のメスを産卵した卵の付近に誘引する。(Howse氏等、「昆虫フェロモンおよびペスト管理におけるその使用」Chapman およびHall,2−6 Boundary Row, ロンドン SE1 8HN, JK 1998,p52)quinquefasciatus属の蚊を抑制するための新しい方法は、産卵誘引フェロモン(5S,6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリドの確認から始まった。(Laurence氏等、’82、Laurence氏等。「蚊の産卵誘引物質フェロモン6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリドの完全な配置」J.Chem.Ecol.(1985)11,643;およびLaurence氏等。「quinquefasciatus属Say(双し目、蚊(Culicidae))の産卵誘引物質フェロモン」Bull.Entomol.Res.(1985a)5,283.9ヶ国、3大陸の研究所および野外実験所で等量比の全4立体異性体[すなわち、(5,6)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリドの(5R,6S),(5S,6S),(5R,6R),(5S,6R)](Dawson 氏等「Convenient Synthesis of Mosquito Oviposition Pheromone and a Highly Flourinated Analog Retaining Biological Activity」)J.Chem.Ecol.(1990)16,1779.)を含む合成フェロモンを使用して、spp.属の蚊の誘引における産卵フェロモンの効果を例証した。(Otieno 氏等、「A Field Trial of Synthetic Oviposition Pheromone with Culex quinquefasciatus Say (Diptera,Culicidae) in Kenya」Bull.Entomol.Res.(1988)78,463.)3種の不活性な非自然の立体異性体[すなわち、(5S,6S),(5R,6R),(5S,6R)]の存在にもかかわらず、天然異性体の生物活性は影響されなかった。これらの結果は、効果的で、有効な、高価でない産卵誘引物質フェロモン(5R,6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリドが立体異性体を含む(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリドのラセミ体混合物からもたらされることがわかる。また、Olagbemiro氏等は、quinquefasciatus属メス蚊が種子油不純物および(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリドの合成物から得られる合成不純物によって影響されないことを示した。
【0010】
産卵誘引物質フェロモンの同定および特性は、多くの非対称合成および大規模ラセミ体合成ルートへの機動力をもたらす。Laurence氏等、’82;Coutrout氏等「5−ホルミル−d−バレロラクロン−Vespa orientalisフェロモンおよび蚊産卵誘引物質フェロモンのキラル合成に対する有益なシントン(Synthon)」Tetrahedron Lett.(1994)35,8381;Gravierpelletier氏等「L−アスコルビン酸およびD−イソアスコルビン酸からのエナンチオピュアヒドロキシラクトン:2.(−)−(5R,6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリドおよびそのジアステレオマーの合成」Tetrahedron(1995)51,1663;Henkel氏等、「蚊産卵誘引フェロモンのof(5R,6S)−6−アセトキシイル−5−オリド−類似物のリパーゼ触媒合成」J.Pract.Chem.(1997)339,434−440;Mori,K.,「天然物の全合成,9巻」John ApSimon Ed.John Wiley&Sons New York (1992)p252−264)」。上記種々の合成経路は多量の産卵誘引物質フェロモンを提供可能であるが、製造コストは非常に高い。したがって、安価で有効な蚊産卵フェロモンおよびその合成は非常に望まれる。
【0011】
別の昆虫ペスト、つまりペカン堅果ケースベアラー蛾(PNCB:pecan nut casebearer moth),Acrobasis nuxvorella Neuzigは、生物的手段では抑制されない、$4900万米国ペカン産業の最新の主なペストの一つである。PNCBは、テキサス、オクラホマ、ミズーリー、カンザス、ルイジアナのペカンの重大なペストであり、はるか東の農作物に影響を与える。このペストは、最近ニューメキシコの高生産性ペカンMesilla Valley 領域を襲った。西部のペカン果樹園の管理はペカン堅果ケースベアラー蛾を抑制する殺虫剤の使用によってのみ有機的に略完全に攪乱された。
【0012】
最近の有効な有機燐酸塩殺虫剤(Lorsban E4 および50W)は食品品質保護法のEPAの監視下で、食品中に残留するため市場から除去される。ピレスロイド殺虫剤は代替として使用できない。その理由は、処理後にアリマキ、クモダニの急増を引き起こすからであり、ペカンにおける抑制は困難である(Knutson A.;W.Ree.1998.「Managing insect and mite pests of commercial pecan in Texas」Texas Ag Extension Service,B1238.p13)。すぐには、ペカン栽培者PNCB抑制に対する有効な代替物を得ることができなかった。CONFIRM(商標)、すなわち、昆虫成長調節剤は、代替物であるが、高価であり、これのみの使用の場合、耐性の発現を受ける。未検出のPNCBが残っていると、ペカン産業が破壊され、多くのペカン栽培者は失業する。したがって、PNCB抑制への実行可能な経済的な代替物を至急開発する必要がある。
【0013】
PNCBは、交尾や産卵の4月終わりから5月始めの2週間に生じる第1世代間に殆どダメージを受ける(Knutson,1988)。堅果を貫通する前に孵化する幼虫を標的にして殺虫剤を散布してPNCBを抑制できる場合に、この処理は、短い期間に規定できる。PNCB個体数の変動を監視するフェロモントラップの最近の開発により、ペカン果樹園の管理が変わり、殺虫剤適用時期を正確に決められるようになった。見込みのある代替物ペスト管理法はPNCBフェロモンを使用して交尾の混乱を促進し、これによりその個体数を抑制することである。
【0014】
PNCBフェロモンは、E9,Z11−ヘキサデカジエナル、すなわち、独特なフェロモン化合物である。PNCBフェロモンはマイクログラムより多量では市販されていない。PNCBを監視するためのルアーを販売している2つの会社は、グラムより多量でPNCBを供給できない。その理由は、利用可能なこのフェロモンの多量の市販源(すなわち、>20g)がないからである。PNCBの大規模生産、およびPNCBをチェックする昆虫抑制技術を開発する必要がある。
高収率で、かつ安定で再生産可能な立体異性体比の生成物を製造できる種々のフェロモン化合物およびその前躯体を合成する簡単な方法が、必要な場合に望まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Olagbemiro氏等、「(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリド、蚊産卵フェロモンの、Kochia scoparia (アカザ科)ホウキギ植物の種子油からの製造、」、J. Agric. Food Chem. (1999) 47, 3411
【非特許文献2】AAAS(American Association for the Advancement of Science)「マラリアおよびアフリカにおける発生」:AAAS: ワシントンDC、(1991)
【非特許文献3】Giles氏等、「Bruce−Chwatt’s Essential Malariology」第3刷、Edward Arnold; London UK(1993)
【非特許文献4】WHO/CTD.「マラリア予防および抑制」WHOリポート;ジュネーブ(1998)
【非特許文献5】Reeves氏等、「節足動物媒介の自然感染」疫学および蚊媒介アルボウイルスの抑制、カリフォルニアにおける、1943−1987;REEVES, W.G. Ed.;カリフォルニア蚊抑制協会:サクラメント,CA.1990 128−149頁
【非特許文献6】Reissen氏等による、「カリフォルニアのロサンゼルス盆地における1987−1990の蚊およびセントルイ脳炎ウイルスのエコロジー」J. Med. Entomol. (1992) 29,582
【非特許文献7】Osgood,C.E.「tarsakis属の卵ラフトに関する産卵フェロモン」J.Econ.Entomol.(1971)64,1038; Osgood 氏等、「蚊の産卵誘引物質と刺激物質との間の識別のための空気流れオルファクトメーター」J.Econ.Entomol.(1971a)64,1109
【非特許文献8】Starratt,A.N.;C.E.Osgood「quinquefasciatus属とpipens pipens属の卵から得られる1,3−ジグリセリド」Comp.Biochem.Physiol.(1973)857.)
【非特許文献9】Laurence氏等による「エリスロ−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリド、蚊の産卵誘引物質の主な成分」J.Chem.Commun.(1982)59−60.(Laurence氏等’82)
【非特許文献10】Howse氏等、「昆虫フェロモンおよびペスト管理におけるその使用」ChapmanおよびHall,2−6 Boundary Row,ロンドンSE1 8HN,JK1998,p52
【非特許文献11】Laurence氏等、’82、Laurence氏等、「蚊の産卵誘引物質フェロモン6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリドの完全な配置」J.Chem.Ecol.(1985)11,643
【非特許文献12】Laurence氏等。「quinquefasciatus属Say(双し目、蚊(Culicidae))の産卵誘引物質フェロモン」Bull.Entomol.Res.(1985a)5,283.
【非特許文献13】Otieno氏等、「A Field Trial of Synthetic Oviposition Pheromone with Culex quinquefasciatus Say (Diptera,Culicidae)in Kenya」Bull. Entomol.Res.(1988) 78, 463.)
【非特許文献14】Laurence氏等、’82;Coutrout氏等「5−ホルミル−d−バレロラクロン−Vespa orientalisフェロモンおよび蚊産卵誘引物質フェロモンのキラル合成に対する有益なシントン(Synthon)」Tetrahedron Lett.(1994)35,8381
【非特許文献15】Gravierpelletier氏等「L−アスコルビン酸およびD−イソアスコルビン酸からのエナンチオピュアヒドロキシラクトン:2.(−)−(5R,6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリドおよびそのジアステレオマーの合成」Tetrahedron(1995)51,1663
【非特許文献16】Henkel氏等、「蚊産卵誘引フェロモンのof(5R,6S)−6−アセトキシイル−5−オリド−類似物のリパーゼ触媒合成」J.Pract.Chem.(1997)339,434−440
【非特許文献17】Mori,K.,「天然物の全合成,9巻」John ApSimon Ed. John Wiley&Sons New York (1992)p252−264)」
【非特許文献18】Knutson A.;W.Ree.1998.「Managing insect and mite pests of commercial pecan in Texas」Texas Ag Extension Service, B 1238. p13
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】Aは、5−デセニルアセタートの合成(オレフィンメタセシス)の一部を示す反応図である。ここで、アリル塩化マグネシウムはブロモクロロプロパンと反応し、1−クロロ−5−ヘキセンを生成する。これは米国特許第5916983に開示されている。Bは、5−デセニルアセタートの合成の第2工程を示す反応図である。ここで、1−クロロ−ヘキセンを1−ヘキセンと触媒823の存在下で反応させて、1−クロロ−5−デセンを得る。Cは、5−デセニルアセタートの合成の第3工程を示す反応図である。ここで、1−クロロ−5−デセンを酢酸カリウムとともに加熱して、5−デセニルアセタートを得る。Dは、5−デセニルアセタートの合成の第4工程を示す反応図である。ここで、トランス:シス比60:40の5−デセニルアセタートをベンゼンスルフィン酸のナトリウム塩と酢酸の存在下で異性化し、トランス:シス比80:20の5−デセニルアセタートを得る。
【図2】一般メタセシスクラスI触媒の構造図である。
【図2A】触媒823の構造図である。
【図2B】触媒739の構造図である。
【図2C】触媒801の構造図である。
【図2D】触媒716の構造図である。
【図2E】触媒849の構造図である。
【図2F】触媒765の構造図である。
【図2G】触媒791の構造図である。
【図2H】触媒707の構造図である。
【図2I】触媒815の構造図である。
【図2J】触媒731の構造図である。
【図2K】触媒834の構造図である。
【図2L】触媒751の構造図である。
【図2M】表1を表す。これは、図2A−2Lに存在するクラスIメタセシス触媒の、分子量、CAS#、化学名を含む。
【図3】一般メタセシスクラスII触媒の構造図である。
【図3A】触媒877の構造図である。
【図3B】触媒835の構造図である。
【図3C】触媒855の構造図である。
【図3D】触媒813の構造図である。
【図3E】触媒903の構造図である。
【図3F】触媒881の構造図である。
【図3G】表2を示す。これは、図3A−Fに存在するクラスIIメタセシス触媒の、分子量、CAS#、化学名を含む。
【図4】一般メタセシスクラスIII触媒の構造図である。
【図4A】触媒846の構造図である。
【図4B】触媒805の構造図である。
【図4C】触媒824の構造図である。
【図4D】触媒783の構造図である。
【図4E】触媒873の構造図である。
【図4F】触媒831の構造図である。
【図4G】触媒814の構造図である。
【図4H】触媒773の構造図である。
【図4I】触媒839の構造図である。
【図4J】触媒797の構造図である。
【図4K】触媒859の構造図である。
【図4L】触媒817の構造図である。
【図4M】表3を表す。これは、図4A−4Lに存在するクラスIIIメタセシス触媒の、分子量、CAS#、化学名を含む。
【図5】一般メタセシスクラスIV触媒の構造図である。
【図5A】触媒848の構造図である。
【図5B】触媒807の構造図である。
【図5C】触媒826の構造図である。
【図5D】触媒785の構造図である。
【図5E】触媒875の構造図である。
【図5F】触媒833の構造図である。
【図5G】触媒816の構造図である。
【図5H】触媒775の構造図である。
【図5I】触媒841の構造図である。
【図5J】触媒799の構造図である。
【図5K】触媒861の構造図である。
【図5L】触媒819の構造図である。
【図5M】表4を表す。これは、図5A−5Lに存在するクラスIVメタセシス触媒の、分子量、CAS#、化学名を含む。
【図6】好ましい出発材料および好ましいメタセシス触媒を使用できる幾つかの一般クロスメタセシスを示す。
【図7】図6に示した反応の、種々の好ましい出発材料およびメタセシス生成物を示す表である。
【図8】図6に示した反応の、種々の好ましい出発材料およびメタセシス生成物を示す表である。
【図9A】5−デセニルアセタートの改良した合成における第1段階を示す。ここで、1−ヘキセンはセルフメタセシスされ5−デセンおよびメチレンになり、雰囲気中に排気されることにより、反応系から除去される。
【図9B】5−デセニルアセタートの改良した合成の第2段階を示す。ここで、5−デセンは5−ヘキシルアセタートと反応して、真空下、1−ヘキセンおよびトランス:シス比80:20〜84:16の5−デセニルアセタートを得る。
【図10A】好ましいメタセシス触媒の除去に使用されたトリスヒドロキシメチルホスフィンの一般構造式を示す。
【図10B】好ましいメタセシス触媒の除去に使用された好ましい水溶性ホスフィンまたはホスファイトの一般構造式を示す。
【図10C】好ましいメタセシス触媒の除去に使用された好ましい水溶性ホスフィン環系の一般構造式を示す。
【図11】5−デセニルアセタートの一段階構成合成を示す。ここで、1−ヘキセンは5−ヘキセニルアセタートとクロスメタセシスしてトランス:シス比80:20〜84:16の5−デセニルアセタートを得る。
【図12】5−デセニルアセタートの択一的な合成を示す。ここで、1−ヘキセンは5−ヘキセン酸とクロスメタセシス反応し、5−デセン酸を生じ、再結晶化され、アルコールに還元され、アセチル化され、90%より高いE−5−デセニルアセタートを得る。
【図13】5−デセニルアセタートの択一的な合成を示す。ここで、1−ヘキセンは5−ヘキセン酸エステルとクロスメタセシス反応し、5−デセン酸を生じ、再結晶化され、アルコールに還元され、アセチル化され、90%より高いE−5−デセニルアセタートを得る。
【図14】5−デセニルアセタートの択一的合成を示す。ここで、1,10−ジアセトキシ−5−デセンおよび5−デセンをクロスメタセシス反応する。
【図15】5−デセニルアセタートの択一的合成を示す。ここで、4−ペンテニル塩化物をセルフメタセシス反応させ、1,8−ジクロロ−4−オクテンを生成し、これを5−デセンとメタセシス反応させ、4−ノネニル塩化物を生成し、その後、5−デセニルアセタートに転化する。
【図16】5−デセニルアセタートの択一的合成を示す。ここで、ビニルボレートピナコールエステルを5−ヘキセノールTHPエーテルとクロスメタセシス反応させ、1−ボロヘキセン−6−オルTHPエーテルのピナコールエステルを得る。
【図17】5−デセニルアセタートの択一的合成を示す。ここで、ビニルボレートピナコールエステルを5−ヘキセニルアセタートとクロスメタセシス反応させ、1−ボロヘキセン−6−イルアセタートを得る。これを水酸化ナトリウムおよび水から結晶化し、ヘキセン−6−オルの1−ホウ酸を得て、97%より高いE−5−デセニルアセタートに転化する。
【図18】9−テトラデセニルホルメートの合成を示す。ここで、5−デセンを9−デセノールとクロスメタセシス反応させ、9−テトラデセノールを生成し、一方、1−ヘキセンを真空下反応系から除去する。さらに、メタセシス生成物である9−テトラデセノールをホルミル酢酸と反応させる。
【図19】11−テトラデセニルアセタートの合成を示す。ここで、3−ヘキセンを11−ドデセニルアセタートとクロスメタセシス反応させ、生成した1−ブテンを溶液から除去する。
【図20】11−エイコセニルアセタートからの11−テトラデセニルアセタートの択一的合成を示す。
【図21】E−4−トリデセニルアセタートの合成を示す。ここで、1−デセンを4−ペンテニルアセタートとクロスメタセシス反応させ、生成したエチレンを溶液から除去する。
【図22】E−4−トリデセニルアセタートの択一的合成を示す。ここで、1−デセンをセルフメタセシス反応させ、9−オクタデセンを形成し、4−ペンテニルアセタートをセルフメタセシス反応させ、1,8−ジアセトキシ−4−オクテンを生成し、9−オクタデセンを1,8−ジアセトキシ−4−オクテンとクロスメタセシス反応させる。
【図23】E,E−8,10−ドデカジエノールの合成を示す。ここで、ペンテニル誘導体を8−ノネノールとクロスメタセシス反応させ、その後、酸または塩基で処理する。
【図24A】8−クロロオクタン−1−イルアセタートの合成を示す。ここで、1,10−ジアセトキシ−5−デセンを1,6−ジクロロ−3−ヘキセンとクロスメタセシス反応させ、8−クロロ−5−オクタン−1−イルアセタートを得る。これを還元して8−クロロオクタニルアセタートを得る。
【図24B】E,E−8,10−ドデカジエノールの択一的合成を示す。ここで、8−クロロオクタン−1−イルアセタートをトルエン中、トリエチルホスファイトで灌流し、8−ジエチルホスホネートオクタニルアセタートを生成し、8,10−ドデカジエノールに転化する。
【図25】1,6−ジブロモ−3−ヘキセンおよび1,10−ジアセトキシ−5−デセンのクロスメタセシス反応から得られる8−ブロモオクタノール(bromoocatanol)の合成を示す。
【図26】メドウウフォーム油の化学構造を示す。
【図27】メドウフォーム油および1−ドデセンのクロスメタセシス反応を伴う蚊産卵フェロモンの合成を示す。
【図28】11−ドコセンを生成する1−ドデセンのセルフメタセシスを示す。
【図29】メドウフォーム油および11−ドコセンのクロスメタセシス反応を伴う蚊産卵フェロモンの合成を示す。
【図30】メチル5−ヘキセノアートおよび11−ドコセンのクロスメタセシス反応を伴う蚊産卵フェロモンの合成を示す。
【図31】メチル5−ヘキセノアートおよび1−ドデセンのクロスメタセシス反応を伴う蚊産卵フェロモンの合成を示す。
【図32】メドウフォーム油および1−ドデセンのクロスメタセシス反応を伴う蚊産卵フェロモンの択一的合成を示す。
【図33】メドウフォーム油および11−ドコセンのクロスメタセシス反応を伴う蚊産卵フェロモンの択一的合成を示す。
【図34】メチル5−ヘキセノアートおよび11−ドコセンのクロスメタセシス反応を伴う蚊産卵フェロモンの択一的合成を示す。
【図35】メチル5−ヘキセノアートおよび1−ドデセンのクロスメタセシス反応を伴う蚊産卵フェロモンの択一的合成を示す。
【図36】5−ヘキセニルアセタートおよび1−ドデセンのクロスメタセシス反応を伴う蚊産卵フェロモンの合成を示す。
【図37】加硫 5−ヘキセニルアセタートおよび11−ドコセンのクロスメタセシス反応を伴う蚊産卵フェロモンの合成を示す。
【図38】5−ヘキセナールジエチルアセタールおよび11−ドコセンのクロスメタセシス反応を伴う蚊産卵フェロモンの合成を示す。
【図39】5−ヘキセナールジエチルアセタールおよび1−ドデセンのクロスメタセシス反応を伴う蚊産卵フェロモンの合成を示す。
【図40】ビニルボレートピナコールエステルと9−デセナールジエチルアセタールのクロスメタセシス反応を伴うE−9,Z−11−ヘキサデカジエナールの好ましい合成を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、フェロモンおよびメタセシス反応を使うその成分の合成法を提供することである。
本発明の別の目的は、桃枝穿孔性動物フェロモンを製造する方法を改良することである。
さらに、本発明の別の目的は、蚊産卵誘引物質フェロモンの改良した合成法を提供することである。
さらに、本発明の別の目的は、ペカン堅果ケースベアラーの改良した合成法を提供することである。
さらに、本発明の別の目的は、オメガハロアルカノールおよびオメガハロアルカニルアセタートの改良した合成法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
図1A、1B、1C、1D(纏めて図1)は、Pederson およびGrubbsの米国特許第5916983に開示された5−デセニルアセタートを製造する最近の方法を示す。この合成では、アリル塩化マグネシウムおよびブロモクロロプロパンをカップリングすることにより1−クロロヘキセンを製造する。収率40%の、トランス:シス異性体比60:40の1−クロロ−5−デセンを、1−クロロヘキセンおよび1−ヘキセンのオレフィンメタセシスにより得た。この方法において使用したメタセシス触媒は、図2Aに示す、触媒823の、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジクロロルテニウム(II)ベンジリデン、[(Pcy3)2Cl2]Ru=CHPhである。これらの反応は、32℃から62℃で行われる。室温ではこの反応は遅く、転化率はより低い。27%の収率が32℃の実施で得られる。1−クロロ−5−デセンは5−デセニルアセタートに前者を酢酸中で酢酸カリウムとともに加熱することにより、転化される。得られたトランス:シス比60:40の5−デセニルアセタートは酢酸中でベンゼンスルフィン酸ナトリウム塩によりトランス:シス比80:20の5−デセニルアセタートに異性化される。
【0019】
5−デセニルアセタートの低い25%から27%の全収率は、メチリデンルテニウム触媒中間体の形成のために十分である。これは、熱力学的に安定なアルキリデンであり、出発材料の生成物への高転化を回避し、高トランス異性体生成物の形成を回避する。
この方法は、典型的に、18から25日を要して、12kgの5−デセニルアセタートを製造する。このシス:トランス比は80:20であり、標準サイズの装置を使用する(多重反応させる必要がある。その理由は収率が低く、適正な操作のために溶媒で反応の多くを希釈する必要があるからである。)。特に、反応を終わらせて1−クロロ−5−デセンを蒸留するのに5日は典型的に必要である。3つのメタセシスが各1日で操作され、触媒を除去するのにさらに2日かかる。そして、蒸留に2日かかる。1−クロロ−5−デセンを製造するのに小計で7日必要である。トランス:シス比60:40の5−デセニルアセタートのその後の製造には2つから3つのランが各36から48時間を要し、小計4から6日間で98%の転化率を達成する。2つのバッチのそれぞれに対して24時間が必要であり、5−デセニルアセタートの異性化を、トランス:シス比80:20で、小計2日で達成する。18から25日の全期間は、最終蒸留の期間を含んでいない。
【0020】
20%のシス−5−デセニルアセタートは、ルアーおよび交尾混乱の用途においてPTBフェロモンの効力に影響しないが、低収率および完了まで長期間を要するために、この方法は高価になる。多くの反応段階の観点から、多量の出発材料および試薬が必要になり、反応時間が長いこと、全体の収率が低いことから5−デセニルアセタートの製造法は未だ十分ではない。
したがって、本発明は、経済的で効率的な方法における種々の付加価値のある生成物メタセシスに対するメタセシス合成に関する。クロスメタセシス反応の殆どは、ニート(neat)ランであり、未反応の出発材料は次のクロスメタセシス反応にリサイクルされる。
本発明は、2つの異なるまたは類似の末端オレフィン(すなわちアルファオレフィン)をクロスメタセシス反応し、新しい内部オレフィンを製造し、末端オレフィンおよび内部オレフィンをクロスメタセシスし、新規な内部オレフィンを生成し、末端オレフィンおよび環状オレフィンをクロスメタセシスし、新規な末端および/または内部オレフィンを製造し、2つの類似のまたは異なる内部オレフィンをクロスメタセシスし、新規な内部オレフィン生成物を製造可能にする。
【0021】
本発明により容易化された最も新規なメタセシス生成物の幾つかは、昆虫性誘引フェロモンまたはその成分を含む。例えば、桃枝穿孔性動物フェロモンの主成分であるE−5−デセニルアセタート;産卵誘引フェロモンである(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリド;ペカン堅果ケースベアラー蛾フェロモンであるE9,Z11−ヘキサデカジエニル;ダイヤモンドバック(DBM:Diamondback Moth)フェロモンの類似物である9−テトラデセニルフォルメート;オムニボラスリーフローラ(OLR:Omnivorous Leafroller)フェロモンである11−テトラデセニルアセタート;トマトピンウォーム(TPW:Tomato Pinworm)フェロモンの主成分であるE−4−トリデセニルアセタート;カドリング蛾(CM:Codling Moth)フェロモンであるE,E−8,10−ドデカジエノールである。この合成は好ましくは、幾つかの反応段階を必要とし、一般的に市販される出発材料を使用し、反応時間は比較的短い。これらの合成は収率が高く、高価な高性能な装置を必要としない。また、本発明は、アルファ−オメガ−ジアセトキシアルケンおよびアルファ−オメガ−ジハライドをクロスメタセシス反応することによりオメガ−ハロアルケノールを製造する高価でない経路を提供する。これらは伝統的な水素化法により容易にオメガ−ハロアルカノールに転化する。
【0022】
これらの反応に好ましいメタセシス触媒は、図2、3、4、または5にあるI−IVメタセシス触媒から選択される。さらに好ましいメタセシス触媒は、表I−IVにある。最も好ましい態様では、触媒848、785、807、826、823、および801である。
本発明は特に、E−5−デセニルアセタートの改良した合成法を提供する。これは以前に方法にあった多くの問題を解消する。好ましい態様では、改良点は、1)出発材料の生成物へのより高い転化率を得る方法(40%から75%);2)60:40から80:20と84:16のトランス:シス比における増加;3)たった2つの反応段階;4)1週間より短い製造時間、である。
一態様では、これらの改良点の幾つかは、1−ヘキセンを5−デセンにセルフメタセシスし、5−デセンと5−ヘキセニルアセタートをクロスメタセシスすることにより達成される。両反応は、同じメタセシス触媒の存在下で行われる。1−ヘキセンのセルフメタセシスは真空下で行われ、エチレンサイド生成物は溶液から泡立つ。1−ヘキセンの除去は、メチリデン触媒中間体の形成を回避し、収率を純粋な5−デセニルアセタート98%以上に増加させる。トランス:シス比は、従来は60:40であるのに対して、本発明では80:20から84:16である。
【0023】
本発明は、イエカ属の病原体媒介蚊に対する蚊産卵誘引物質フェロモンである(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリドの、比較的高価でない合成法を提供する。蚊産卵誘引物質フェロモンの好ましい合成法は、メドウフォーム(meadowfoam)油、ヘキセン酸誘導体、ヘキセナール誘導体、またはヘキセノール誘導体と、1−ドデセンまたは11−ドコセン等の市販の材料のクロスメタセシス、および二重結合の酸化およびラクトン化を含む。幾つかの態様では、メドウフォーム油が好ましい出発材料である。その理由は、この油の95%がZ−5−カルボキシレート部位を含み、これは市販されており、本発明のメタセシス反応を介して容易に(5R,6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリドに転化されるからである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(好ましい態様の詳細な説明)
本発明は、オレフィンアルコール、アセタート、アルデヒド、カルボン酸、またはそれらの誘導体等の付加価値のある種々のメタセシス生成物の、経済的で効率的なメタセシス合成を提供する。クロスメタセシス反応の殆どは、希釈なしで進行し、未反応の出発材料は、次のクロスメタセシス反応に再使用される。本発明は、2つの異なるまたは類似の末端オレフィン(すなわちアルファオレフィン)をクロスメタセシスし、新しい内部オレフィンを製造し、末端オレフィンおよび内部オレフィンをクロスメタセシスし、新規な内部オレフィンを生成し、末端オレフィンおよび環状オレフィンをクロスメタセシスし、新規な末端および/または内部オレフィンを製造し、2つの類似のまたは異なる内部オレフィンをクロスメタセシスし、新規な内部オレフィン生成物を製造可能にする。
【0025】
好ましい一般的な実施態様において、型R−(CH=CH)k(CH2)(CHX)g(CH2)m−Hの反応剤を、自己メタセシスされることができ、同じ型の異なる反応剤でクロスメタトシスされるか、型QCH(CH2)rMの反応剤でクロスメタセシスされることができる。自己メタセシスのとき、この反応剤は、型(CH=CH)k[(CH2)n(CHX)g(CH2)m−H]の産物、及び型CH2=CH2及びRCH=CHRの副産物を形成する。もしこれらの副産物が不安定なら、それらは真空圧下又は高温下で容易に除去することができる。汎用的な実施態様において、Xは、水素(H)、アルコール(OH)、アセテート(AcO、カルボン酸塩エステル(CO2Ra)から選択することができ、ここでは、Raはアルキル、アリール、又は金属、カルボン酸(CO2H)、アルデヒド、ハロゲン化物(Cl,Br,I)、トシレート(TsO)、又はメシレート(MesO)、又はその誘導体である。より好ましい実施態様において、Xは、水素、アルコール、アセテート、トリフルオロアセテート、メチルカルボキシレート、エチルカルボキシレート、カルボン酸塩ナトリウム、塩化物、ホウ化物、ヨウ化物、又はメシレートである。
【0026】
一般的な実施態様において、g、k、m及びnは、0〜20以下の整数からそれぞれ選択される。より好ましい実施態様において、gは、0〜5以下の整数から選択される。もっとも好ましい実施態様において、gは、0、1又は2と等しい。より好ましい実施態様において、kは、1〜5の整数から選択される。もっとも好ましい実施態様において、kは1に等しい。より好ましい実施態様において、mは、0〜15以下の整数から選択される。もっとも好ましい実施態様において、mは、0、1又は2と等しい。より好ましい実施態様において、nは、0〜10以下の整数から選択される。もっとも好ましい実施態様において、nは、0、1、3、4、5、7又は10と等しい。一般的な実施態様において、Rは、水素、アルキル、アリール又はその誘導体から選択される。より好ましい実施態様において、Rは水素、C1−C20アルキル、ジイソプロピルホウ酸塩エステル、ピコナールホウ酸塩エステル、カテコールホウ酸塩エステル、ネオペンチルグリコールホウ酸塩エステル、ジアルキル燐酸塩エステル、トリアルキルシランエステル、又はトリアルキルシロキサンエステルから選択される。もっとも好ましい実施態様において、R−(CH=CH)k(CH2)(CHX)g(CH2)m−Hは、5−ヘキセニルアセテート、5−ヘキセニルアルコール、5−デセン、1−へキセン、1−ブテン、1−ドデセン、11−ドコセン、1,10−ジアセトキシ−5−デセン、3−へキセン、11−エイコセニルアセテート、11−エイコセノール、11−エイコサン酸、5−エイコセセニルアセテート、5−エイコセノール、5−エイコサン酸、10−ウンデセン酸、10−ウンデセノール、10−ウンデセノエートエステル、ビニルホウ酸塩ピコナールエステル、ビニルジエチル燐酸塩、アリルジエチル燐酸塩、ビニルトリエトキシシラン、又はアリルトリエトキシシランを挙げられる。
【0027】
R−(CH=CH)k(CH2)(CHX)g(CH2)m−Hの型QCH(CH2)rMの反応剤とのクロスメタセシスは、産物H(CH2)m(CHX)g(CH2)n(CH=CH)p(CH2)rM又はその誘導体、及びCH2Zの型の副産物を形成する。好ましい実施態様において、Qは、CH2又はCH(CH2)rMから選択され、rは0〜20以下の整数から選択される。Mは、アルコール、アセテート、カルボン酸エステル、カルボン酸、アルデヒド、ハロゲン化物、水素、又はその誘導体から選択される。Zは、CH2、又はCH(CH2)n(CHX)g(CH2)mから選択される。pは0〜m及びnの合計と等しいかそれ未満の整数から選択され、副産物が反応混合物の外へ蒸発するように、十分高温及び/又は十分低圧の条件下で行うことができる。
【0028】
以下に詳細に述べる好ましいメタセシス触媒、及び自己メタセシス反応及びクロスメタセシス反応を使用する各合成ルートは両反応に対して同様の触媒を使用する。
【0029】
構造[PL3L‘AA’]Ru=CRbRcのメタセシス触媒が一般に好ましい。ここで、L及びL’は中性電子(中性子)ドナーリガンドであり、Lは、CRd(Ri)2及びシクロアルキル又はアルキル置換シクロアルキルから選択され、ここでは、炭素原子の数は、環において、4〜12であり、Rd及びRiは、それぞれ水素、及び具体的な例としてシクロヘニル、シクロペンチル、イソプロピル、フェニル、又はその誘導体を含むアルキルから選択される。
【0030】
L’は、図2X及び2Yに示す構造からのいずれの型(L)3から選択することができ、ここでRs及びRvは、アルキル、アリール、又は置換アリール、好ましくは置換フェニル、及びもっとも好ましくはメシチル(すなわち、2,4,6トリメチルフェニル)から無関係に選択され、ここでは、Rt及びRvは、好ましくはアルキル又はアリール、又はシクロアルキル、もっとも好ましくは、両方水素、t−ブチル、又はフェニル(これらイミダゾールリガンドは、4,5−ジヒドロ−イミダゾール−2−イリジンリガンドとして言及される。)
【0031】
A及びA’は、ハロゲン、水素、C1−C20アルキル、アリール、C1−C20アルコキシド、アリールオキサイド、C2−C20アルコキシカルボニル、アリールカルボキシレ−ト、C1−C20カルボキシレ−ト、アリールスルホニル、C1−C20アルキルスルフィニルから無関係に選択されるアニオンリガンドであり、各リガンドは、選択的にC1−C5アルキル、ハロゲン、C1−C5アルコキシ、又はハロゲン、C1−C5アルキル又はC1−C5アルコキシで選択的に置換するフェニル基で置換することができる。
Rb及びRcは、水素、C1−C20アルキル、アリール、C1−C20カルボキシレ−ト、C1−C20アルコキシ、アリロキシ、C1−C20アルコキシカルボニル、C1−C20アルキルチオ、C1−C20アルキルスルホニル及びC1−C20アルキルスルフィニル、C1−C5アルキル、ハロゲン、C1−C5アルコキシ、又はハロゲン、C1−C5アルキル又はC1−C5アルコキシで選択的に置換したフェニル基で選択的に置換したRb及びRcのそれぞれから無関係に選択される。
【0032】
型[(PL3)2AA’]Ru=CRbRcのこれらの触媒のサブセットは、Grubbs等の国際出願No.PCT/US95/09655に概して記述されている。これらの触媒は一般にここでは、Gribbsの触媒という。
【0033】
クラスIメタセシス触媒などこのサブセットのいくつかの触媒は、好ましい。一般的なクラスIメタセシス触媒を図2に示す。図2に関して、Rb及びRcは、上述したパラグラフに明らかにされたように同じである。限定されないが、好ましいクラスIメタセシス触媒は、触媒823、739、801.716、849、765、791、707、815、731、834及び751を含む。これらの触媒は、それぞれ、図2A〜2L(集合的に図2)に示される。便宜上、具体的な触媒は、ここでは、それらの分子量によって言及され、いくつかはまとめられたものあり、図において以下の構造に示される。それらは、各分子量、CAS#、及び図2Mにおける化学名でFig#によって表にもされる。これらの触媒の多くは、入手可能であるが、一般に熱安定性ではなく、それは一般に、トリ置換オレフィンを合成するのに使用することができない。
【0034】
図2Aに関して、触媒823及びそのバリエーションが特に好ましい。触媒823は、化学式[(Pcy3)2Cl2]Ru=CHphを有し、ここで、Cyはシクロヘキシル基を表し、Phはフェニル基を表す。触媒823の合成は、米国特許番号5,916,983号に記載されている。触媒823は、95%以上の純度でBoulder Scientific of Boulder, Coloradoから入手可能である。ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジクロロルテニウム(II)3−メチルー1,2−ブタジエン、触媒716は、それぞれ図2C及び図2Dに示される。触媒801及び716は、Strem of Newburyport,MAから入手可能であり、好ましいメタセシス触媒である。
【0035】
一般的なクラスIIメタセシス触媒を図3に示す。好ましいクラスIIメタセシス触媒は、限定されないが、触媒877、835,855、813、903及び881を含む。これらの触媒は、それぞれ図3A〜3Fに示される(集合的に図3)。それらは、各分子量、CAS#、及び図3Gにおける化学名でFig#によって表にもされる。これらの触媒は、クラスI触媒よりもっと熱安定的でより活性な傾向があるが、クラスII触媒は、入手可能でなく、容易に合成されない。加えて、クラスII触媒は、トリ置換オレフィンを合成することができない。
【0036】
一般的なクラスIIIメタセシス触媒を、図4に示す。ここで、Arは、アリール基を示し、Rcは、以前に定義した。好ましいクラスIIIメタセシス触媒は、限定されないが、触媒846、805,824、783、873、831、814、773、839、797、859及び817を含む。これらの触媒は、それぞれ図4A〜4Fに示される(集合的に図4)。それらは、各分子量、CAS#、及び図4Mにおける化学名でFig#によって表にもされる。クラスIII触媒は、クラスI触媒及びクラスII触媒よりもっと熱安定的でより活性である。クラスIII触媒は、入手可能でなく、容易に合成されない。しかしながら、クラスI触媒及びクラスII触媒と異なり、クラスIII触媒は、トリ置換オレフィンを合成することに使用することができるが、一般にテトラ置換オレフィンを合成することができない。
【0037】
一般的にクラスIVメタセシス触媒を図5に示す。ここで、Arは、アリール基を表し、Rcは、以前に定義した。好ましいクラスIVメタセシス触媒は、限定されないが、触媒848、807,826、785、875、833、816、775、841、799、861及び819を含む。これらの触媒は、それぞれ図5A〜5Fに示される(集合的に図5)。それらは、それらの分子量、CAS#、及び図5Mにおける化学名でFig#によって表にもされる。クラスIV触媒は、クラスI〜III触媒よりもっと熱安定的でより活性である。クラスIV触媒を使用する反応は、およそ同じ収率を得るのに同じ反応に必要とされるクラスI触媒、特に823又は801の量と比較して、約8〜10倍弱の触媒、特に848が必要である。さらに、クラスIV触媒、特に848は、1時間より少なくて反応を完了する一方、クラスI触媒は同じ反応を約19〜24時間で完了する。上で特定したクラスIV触媒のいくつかは、Stremから入手可能であるが、Scholl等によって述べられたように合成することができる(1999)。クラスIV触媒は、特に好ましい。なぜなら、そららは、トリ置換オレフィンと同様にテトラ置換オレフィンを合成することに使用することができるからである。
【0038】
これら触媒の式のいくつかは、L’がCRd(Ri)2、シクロアルキル、又はアルキル置換シクロアルキルから選択され、ここでは、環において炭素原子の数は、4〜12、又は環状(NRw)[(CHh)Rt][(CHh)(Rv)](NRt)C、すなわち、hは0〜9であり、Rw、Rs、Rt及びRvは、水素、アリール及びアルキルから選択され、Rd及びRiは上述した。L’の最も好ましい実施態様は、図2X、2Yに示す構造であり、ここでは、Rw及びRsは、2,4,6−トリメチルフェニル、イソプロピル、又はt−ブチルから選択される。
【0039】
図5Aに示す触媒848など、1,3−ジメシチル−4、5−ジヒドロ−イミダゾール−2−イリジン−置換ルテニウム系錯体のこのファミリーが好ましい。触媒848の合成は、Organic letters,”Synthesisi and Actiity of New Generation of Ruthenium−Based Olefin Metathesis Catalysis Coordinated with 1,3 −Dimesityl−4,5−dihydro−imidazol^2−ylidene Ligands “ Scholl等(1999)に記述されている。触媒848,826、及び785は、Scholl等に記述されたように合成することができる。
【0040】
触媒848に2当量のエチルビニルエーテル加え、室温で約3時間撹拌し、沈殿を分離して、触媒816及び794を合成する。触媒816及び794は明確な温度プロファイルにおいてメタセシス反応を開始させるので、非常に興味深い特性を有している。クラスIとクラスIIの触媒を含む反応混合物は、それらが反応を開始するのを防止するためには、−40〜−70℃の範囲等の極低温に保たれなければならない。クラスIIIの大部分及びクラスIVの幾つかの触媒は、反応を防止するには、比較的低い温度に保たれなければならない。しかしながら、触媒816及び794を含有する反応混合物は、約35℃の比較的高い開始温度を有するので、反応が始まる前に総ての反応物質を完全に混合することができ、反応をより良く制御することができる。
【0041】
「定義の明確な触媒」等の他のメタセシス触媒を代わりに使用することができる。かかる触媒としては、特に制限は無く、GrubbsらのTetrahedron(1998), 54, 4413−4450に記載のシュロック(Schrock)のモリブデンメタセシス触媒、即ち2,6−ジイソプロピルフェニルイミド ネオフィリディーン(neophylidene)モリブデン(VI)ビス(ヘキサフルオロ−t−ブトキシド)、及びCouturier,J.LらのAngew. Chem. Int. Ed. Engl. (1992)31, 628に記載のバセット(Basset)のタングステンメタセシス触媒等が挙げられる。シュロック触媒はストレム(Strem)(ニューベリーポート、MA)から入手することができるが、PTBフェロモンの大規模生産には高価過ぎる。バセット触媒は、現在市販されておらず、空気、水、及び種々の官能基に対して敏感であり、且つ合成するのに費用がかかる。
【0042】
「定義の不明確な触媒」等の他のメタセシス触媒も使用することができるが、それらの活性は共触媒に依存し、該共触媒は典型的にはテトラアルキルスズ又はテトラアルキル鉛化合物等の重金属であり、廃棄物の処理問題をもたらす。これらの不明確な触媒は、活性化するのに強ルイス酸の存在も必要とし、該強ルイス酸は望ましくない二重結合の移動を引き起こし得る。
【0043】
図6は、好適な他の類似物質と好適なクラスI〜IV又は他のメタセシス触媒とを使用できる一般的なクロスメタセシス反応を示している。図6に関して、B、T、U、V、及びDは、水素、アルキルアリール、ヒドロキシ、アセテート、保護されたアルコール、ハライド、メシレート、トシレート等から選択され、x、e、y、及びzは0〜10から選択され、t1は2〜22から選択される。スキームAにおいて、2つの類似した末端オレフィンを自己メタセシス反応させると内部オレフィンが生じる。具体例としては、5−ヘキセニルアセテート(T=アセテート及びx=4)の1,10−ジアセトキシ−5−デセンへの自己メタセシス、及び4−ペンチルクロライド(T=クロライドでx=3)の1,8−ジクロロ−4−オクテンへの自己メタセシスが挙げられる。
【0044】
スキームBでは、内部オレフィンは、それ自身とクロスメタセシス反応して、2つの新規な内部オレフィンを生じる。具体例は、1,6−ジクロロ−3−ヘキセン(V=Cl及びy=1)及び3−ヘキセン(U=CH3及びz=1)を生じる1−クロロ−3−ヘキセン(U=CH3、V=Cl、y=1及びz=1)のクロスメタセシスである。
【0045】
スキームCでは、2つの異なる末端オレフィンがクロスメタセシス反応して、新規の内部オレフィンを生じる。具体例は、ヘキセニルボロエートピナコールエステル(T=Ac、x=4、D=ボレートピナコールステル及びe=0)を生じるヘキセニルアセテート(T=Ac及びx=4)とビニルボレートピナコールエステル(D=ボレートピナコールエステルでe=0)とのクロスメタセシスである。
【0046】
スキームDでは、末端オレフィンと内部オレフィンとがクロスメタセシス反応して、新規な内部オレフィンを生じる。具体例は、ヘキセニルボレートピナコールエステル(T=Ac、x=4、D=ボレートピナコールエステル及びe=0)を生じる1,10−ジアセトキシ−5−デセン(T=Ac、x=4)とビニルボレートピナコールエステル(D=ボレートピナコールエステルでe=0)とのクロスメタセシスである。
【0047】
スキームEでは、2つの異なる内部オレフィンがクロスメタセシス反応して、新規な内部オレフィンを生じる。具体例は、8−クロロ−5−オクテニルアセテート(V=Cl、y=1、T=Ac、x=4)を生じる1,6−ジクロロ−3−ヘキセン(V=Cl、y=1)と1,10−ジアセトキシ−5−デセン(T=Ac、x=4)とのクロスメタセシスである。
【0048】
スキームF及びGでは、クロスメタセシス生成物が通常の水素化条件下で水素化され、対応する飽和アルキル生成物が生じる。具体例としては、8−クロロ−5−オクテニルアセテート(V=Cl、y=1、T=Ac、x=4)をオメガ−クロロオクタニルアセテート(V=Cl、T=Ac、t1=8)にすること、及び10−ブロモ−5−デセニルアセテート(U=Br、y=4、T=Ac、x=4)をオメガ−ブロモデセニルアセテート(V=Br、T=Ac、t1=10)にすることが挙げられる。
【0049】
以下に反応、図、及び実施例を示すが、上記のタイプのメタセシス合成に対する例示を目的とするだけのものであり、本発明の範囲を限定するものとして考慮されるべきものではない。
【0050】
図7に、図6に示す反応に関する種々の好適な出発物質及びメタセシス生成物を表す表Vを示す。
【0051】
図8に、図6に示す反応に関する追加の好適な出発物質及びメタセシス生成物を表す表VIを示す。図8に関して、アセテート、TMS、THP、及びEVE保護基が好ましく、ハロ基は、好ましくはフルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、メシル、トシル等である。
【0052】
図9A及び9B(まとめて図9)は、5−デセニルアセテートの改善された反応を示す。特に図9は、触媒823の存在下、1−ヘキセンの自己メタセシス反応が5−デセンを形成することを示す。エチレンが形成されるにつれ該エチレンが反応系から取り除かれるので、該反応は5−デセンの形成に有利に働く。図9Bは、触媒823の存在下且つ真空下での、5−デセンと5−ヘキセニルアセテート(5−ヘキセン−1−イル アセテート)とのクロスメタセシス反応を示す。真空下で反応を実施すると1−ヘキセンが取り除かれ、結果として5−ヘキセニルアセテートの5−デセニルアセテートへの転化率が高くなり、84:16のトランス:シス比の異性体生成物を生じる。次の実施例は、PTBフェロモンの合成を具体的に示したものであり、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきものではない。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
5−デセンの合成:1−ヘキセンの自己メタセシス
図9Aを参照して、乾燥した2Lの丸底フラスコに、225g(2.67mol)の1−ヘキセン(95%以上の純度のものがアモコから入手できる)と磁気撹拌子とを加えた。該フラスコに10分間窒素を散布した。触媒823(2.2g, 2.7mmol)を加え、反応系を室温で18時間撹拌した。反応系からエチレンガスが放出されるのが観察された。200gのJ.T.Baker Silica Gel 60−200メッシュを1.5インチ×22インチのクロマトグラフィーカラムにつめたものに反応系を通してろ過し、使用した触媒を除去した。該カラムを、300mLの石油エーテル(沸点38℃〜55℃)ですすいだ。減圧下で前記溶媒と未反応の1−ヘキセンを除去し、115g(0.81mol)の5−デセンが生成した。この生成物を、更に精製することなく、次の反応に用いた。
【0054】
5−デセニルアセテートの合成:5−デセンと5−ヘキセニルアセテートとのクロスメタセシス
図9Bを参照して、乾燥した1Lの丸底フラスコに、115g(0.81mol)の5−デセンと、22.5g(0.158mol)の5−ヘキセニルアセテート(98%以上の純度のものが、酢酸5−ヘキセニルエステルの名でTCIアメリカから入手できる)と、磁気撹拌子とを加えた。該フラスコに5分間窒素を散布し、触媒823を1.33g(1.6mmol)加え、該フラスコを8mmHgの真空下で16時間管理した。16時間後、真空ポンプを外し、反応系を更に12時間窒素雰囲気下で撹拌した。GC分析は、87%の5−デセニルアセテートと、12%の1,10−ジアセトキシ−5−デセンと、1%未満の5−ヘキセニルアセテーとを示した。
【0055】
上記反応混合物の約半分を500gのJ.T.Baker Silica Gelを1.5インチ×22インチのクロマトグラフィーカラムにつめたものに通してろ過し、5−デセニルアセテートの精製されたサンプルを得た。該カラムを、1Lの石油エーテルですすぎ、引き続き石油エーテル中で10%のジエチルエーテル溶液1Lですすいだ。200mLの区分を収集した。該データを以下にまとめる。
【0056】
GCの結果
区分番号 5−デセン 5−デセニルアセテート 1,10−ジアセトキシ−5−デセン1 0 0 0
2 100 0 0
3 91 9 0
4 0 100 0
5 0 100 0
6 0 100 0
7 0 100 0
8 0 0 0
9 0 0 100
10 0 0 100
11 0 0 0
【0057】
区分4、5、6、及び7を合わせ、減圧下で濃縮すると、99.4%の化学純度で且つ81:19のトランス:シス異性体比のものが10.6g(53.5mmol)生成した。5−デセニルアセテートのこのサンプルは、オレゴンのベンドのConsep, Inc.から入手できる5−デセニルアセテートのサンプルと実質的に区別できなかった。E−5−デセニルアセテート及びZ−5−デセニルアセテートは、それぞれ500mg当り$54.60($109.20/g)及び500mg当り$55.00($110.00/g)でシグマ(セントルイス、MO)から市販されている。
【0058】
(実施例2)
5−デセンの合成:1−ヘキセンの自己メタセシス
再び図9Aを参照して、空気入りーバーヘッド撹拌機(−10℃の循環冷却液を伴った高効率還流コンデンサー)に連結された汚れの無い72Lの丸底フラスコに、48L(384mol)の1−ヘキセン(99%以上の純度のものがアモコから入手でき、更に精製することなく使用できる)を加えた。撹拌を開始し、該溶液に窒素を表面下から15分間散布した。触媒823(10g, 0.018mol)を加え、窒素雰囲気下で18〜24時間撹拌した。エチレンが、前記高効率コンデンサーを通して排気ダクトの中に排出された。
【0059】
24時間後、GC分析は、1−ヘキセンから5−デセンへの転化率が60〜70%であることを示した。この反応混合物を2.5Kgのシリカゲル(Fisher 170−400メッシュ、60Å)に通してろ過し、使用した触媒を除去した。
【0060】
当業者なら、中間体化合物を精製することなく前記物質を次の反応に送ることができることが分かるであろう。しかしながら、精製を望む場合は、中間体を分離することができ、例えば、前記5−デセンを蒸留又は別の方法で精製することができる。
【0061】
5−デセニルアセテートの合成:5−デセンと5−ヘキセニルアセテートとのクロスメタセシス
再び図9Bを参照して、汚れの無い72Lの丸底フラスコに60Lの5−デセン(60%〜70%の純度)を仕込み、空気入りーバーヘッド撹拌機と真空蒸留設備に連結した。該真空蒸留設備は、3´´×36´´記号の蒸留カラムと高効率熱交換機と、22Lの受けフラスコに通じる1´´の取り出しヘッドとを備える。2つの真空トラップを、22Lの受けフラスコの後と高容量真空ポンプの前とに挿入した。
【0062】
触媒823(100g, 0.122mol)を上記丸底フラスコに加え、撹拌を開始し、真空にし、加熱マンテルを設定2にした。反応混合物の温度を45℃以下に維持し、真空圧を調節して5−デセンが72Lのフラスコから蒸発するのを防いだ。5−ヘキセニルアセテート(純度99%、12L, 76mol)を5時間以上加えた。添加終了の後、加熱マンテルを切り、反応系を10mmHgの真空下で撹拌した。12時間後、真空トラップが空になり、ドライアイスで再びパックし、再び真空にした。
【0063】
当業者なら、上記メタセシス反応を、反応系を引っ張る真空度に応じて、約25℃〜60℃の間で実施するのが好ましく、約10mmHgで約25℃〜35℃の間で実施するのが最も好ましいことが分かるであろう。
【0064】
前記メタセシス反応のGC分析は、0.1%の1−ヘキセン、64.9%の5−デセン、0.08%の5−ヘキセニルアセテート、30.8%の5−デセニルアセテート(82%のトランスと18%のシスの異性体)、及び4.1%の1,10−ジアセトキシ−5−デセンを示す。
【0065】
54〜83%の範囲の収率が、12Kgの規模で得られた。該収率は、5−デセンのヘキセニルアセテートに対する比を変えることで操作できる。1−ヘキセンを強真空下で除去するので、5−デセンの比の増加が5−デセニルアセテートの収率を増加させる。しかしながら、この増加した比は、処理能力を減少させ、即ち、実施により製造される5−デセニルアセテートのKg数を減少させる。12Kgスケールでは、75:25〜50:50の比の5−デセン:1−ヘキセンが、99%の5−ヘキセニルアセテートを5−デセニルアセテート及び1,10−ジアセトキシ−5−デセンに転換するのに作用するだろう。
【0066】
真空下で反応を実施することにより、出発物質の生成物への転化率が高まることは予期せぬことであった。真空の適用はエチレンを除去して転化率を約75%まで高める目的で試みたにもかからず、1−ヘキセンの除去で、5−ヘキセニルアセテートの転化率が99%以上になったのは全く予想外であった。
【0067】
好ましい実施態様では、同規模の材料と同タイプの装置で、合成ステップが4から2に減少し、最終生成物を合成するのに要する合計時間が20日以上から2日に減少した。このことは、10の要因により時間が短縮することを示している。実施例2の手法を用いれば、当業者は、83:17のトランス:シス比の5−デセニルアセテート12Kgを48時間以下で製造することができる。この製造時間には、メタセシス反応と触媒の除去が含まれるが、最後の蒸留は含まれない。
【0068】
より都合の良い方法であることに加えて、本方法は、5−デセニルアセテートの製造コストも減少させる。例えば、本方法は、好適なトランス:シス比の5−デセニルアセテートを、概ねグラム当り$0.40未満のコストで製造できることを明らかにした。廃溶媒及び廃棄生成物が無いことが、溶媒の購入及び廃棄物の処分コストを含めた反応のコストを実質的に低減する。更なる利点は、1−ヘキセン及び5−ヘキセニルアセテート等の出発物質が市販されていることである。
【0069】
触媒除去手法
前記メタセシス触媒を、図10Aに示すトリスヒドロキシメチルフォスフィン(THMP)等の水溶性フォスフィンにより除去する。THMPが好ましく、該THMPはJ.W.EllisらのInorg. Chem. (1992) 31, 3026及びN.J.GoodwinらのChem. Commun. (1996) 1551に記載のようにして、テトラキスヒドロキシメチルフォスフォニウムクロライド(TKC)から製造することができる。TKCは、80%の水溶液である。より良い手法は、100mmolのテトラキスヒドロキシメチルフォスフォニウムクロライド(CytecからのPyroset TKCとしても知られている)を100mLのイソプロパノールに加え、窒素で10分間脱気し、100mmolの水酸化カリウムのペレットを加え、15分間又は該水酸化カリウムが溶解するまで撹拌することである。生成物は、更に精製することなく使用でき、又は必要となるまで該生成物を冷蔵庫中で撹拌することができる。
【0070】
この手法は、一般にポリヒドロキシアルキルフォスフィン又はポリヒドロキシアリールフォスフィンを対応するポリヒドロキシアルキル−ヒドロキシメチルフォスフォニウムハライド塩又はポリヒドロキシアリール−ヒドロキシメチルフォスフォニウムハライド塩と、等モル量の塩基、好ましくは水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムとから製造するのに使用できる。塩基が最初にホルムアルデヒドの形でヒドロキシメチルを除去して上記フォスフィンを生成させるので、塩基とヒドロキシメチルフォスフォニウム誘導体とのモル比が実質的に等しいことが、所望のポリヒドロキシアルキルフォスフィン又はポリヒドロキシアリールフォスフィンを生成させるのに不可欠である。如何なる余剰の塩基もフォスフィンと反応してポリヒドロキシアルキルフォスフィンオキサイド又はポリヒドロキシアリールフォスフィンオキサイドを生じ、それらはメタセシス触媒に対して不活性であり、反応混合物からメタセシス触媒を除去しないであろう。
【0071】
図10Bは、他の好適な非環式水溶性フォスフィンの一般構造式を示し、式中、qは0又は1であり、Raa、Rbb、及びRccはH;CH3;CH2OH;CH2OCH3;CH2CH2OCH3;(CH2CH2O)xx(ここでxxは1から20である);アミン;カルボキシレート;スルフォネート等から選ばれる。図10Cは、4〜40の炭素原子と3〜20の酸素原子とを有する好適な環系の水溶性フォスフィンの一般構造式を示す。
【0072】
上記実施例2からのメタセシス反応混合物(約0.041molのメタセシス触媒を含む20L)を空気入りーバーヘッド撹拌機に連結された22Lのフラスコに加え、砂温度浴中に設置し、室温より高い温度、好ましくは約55℃に加熱した。THMP溶液を加え、反応系を勢い良く12〜24時間撹拌した。窒素を散布した水(2L)を加え、1時間勢い良く撹拌した。撹拌を止め、界面を分離した。明るいオレンジの水相を除去し、水を更に2L加え、30分間勢い良く撹拌した。再び界面を分離し、水相を除去した。この手法を、水相が無色になるまで繰り返したが、通常は3〜4回の洗浄である。有機相を1Lの4M HClで30分間(好ましくはpH<1で)洗浄し除去した。飽和炭酸水素ナトリウム水(1L)を加え、15分間(好ましくはPH>7で)勢い良く撹拌した。該水相を分離し、除去した。
【0073】
勢い良く撹拌した5−デセニルアセテート溶液に、400gの無水硫酸ナトリウムを加えた。2時間撹拌の後、400gの炭酸カリウムを加え、該フラスコを約55℃で10〜12時間撹拌した。
【0074】
12時間後、撹拌を止め、5−デセニルアセテート混合物をフェノール樹脂でライニングされた55ガロンのドラムに移し、IPA中1MのKOHで安定化し、0.1%溶液を製造した。ドラムがいっぱいになったら、船積みして精製のための真空蒸留会社に送った。
【0075】
この触媒除去手法又はシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて、5−デセン又は5−デセニルアセテート反応混合物からメタセシス触媒を、所望に従い小規模又は大規模工程で除去することができる。
【0076】
5−デセノールヘの転換
上記5−デセニルアセテートの一部を取り出し、次の手法手法に従い対応するアルコールに転換することができ、規模は必要に応じて調整することができる。15.0g(67mmol)の5−デセニルアセテート、35mLのメタノール及び34mLの2M水酸化ナトリウムを250mLの丸底フラスコに加える。この混合物を室温で3時間撹拌する。3時間後、加水分解が終了し、次に10mLのヘキサンを加え、溶液を10mLの1M HCl、10mLの飽和NaHCO3水及び10mLの塩水で洗浄する。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、ヘキサンを減圧下で除去し、9.4gの5−デセノールを生成させる。GC分析は、5−デセノールの異性体比が維持されていることを示す。
【0077】
最後に、PTBフェロモンを、9.4g(60.2mmol)の上記5−デセノールと79.5g(402mmol)の上記5−デセニルアセテートとを混合して合成し、83:17モルのアセテートとアルコールとの混合物を製造した。
【0078】
(実施例3)
触媒848を用いた5−デセニルアセテートの合成
図9Aを再び参照して、上記実施例1又は2に従い、或いは触媒848(図5A)を触媒823の代わりに用いて、5−デセンを製造した。
【0079】
図9Bを再び参照して、磁気撹拌子及び真空アダプターを含んだ100mLの丸底フラスコに、10g(70.4mmol)の5−ヘキセニルアセテート及び30g(214mmol)の5−デセンを加えた。反応系に窒素を5分間散布し、次に、20mg(0.023mmol)の触媒848を加え、10mmHgの真空下で45分間撹拌した。
【0080】
前記のようにしてメタセシス触媒を除去し、透明な液体を生成させた。GC分析は、5−ヘキセニルアセテートから5−デセニルアセテートへの転化率が78%であり、E:Zの異性体比が82:18であることを示した。
【0081】
(実施例4)
触媒848を用いた5−デセニルアセテートの合成
図11は、触媒848の存在下の5−デセニルアセテートの1段階合成で、5−デセニルアセテートが80:20〜84:16のトランス:シス比で生成することを示す。図6を参照して、磁気撹拌子及び還流コンデンサーを含んだ100mLの丸底フラスコに10g(70.4mmol)の5−ヘキセニルアセテート及び17g(210mmol)の1−ヘキセンを加えた。反応フラスコに窒素を5分間散布し、次に(触媒823に代えて)24mg(0.028mmol)の触媒848を加え、窒素雰囲気下、室温で6〜8時間撹拌した。反応が進むに従い、エチレンを含む揮発ガスがフードの中に排気された。
【0082】
上記メタセシス触媒を除去して、透明な液体を生成させた。模範的実施においては、GC分析は、5−ヘキセニルアセテートの5−デセニルアセテートへの転化率が65%であり、E:Zの異性体比が78:22であることを示した。
【0083】
この合成は、1−ヘキセンの5−デセンへの自己メタセシス反応を排除し、余剰の出発物資、大量の触媒、及び余剰の反応時間を伴う。更に、この反応は、真空にすることなく実施可能であり、実施例1又は2中の何れか1つの工程よりも時間が短く、それらの実施例の何れかで使用された触媒より100倍少ない触媒を使用する。
【0084】
代替の好適な実施態様は、1)アルコールが保護された5−ヘキセン−1−オール、又は限定されるものではないが、テトラヒドロピラニル(THP)エーテル、トリメチルシリル(TMS)エーテル、又はエチルビニルエーテル(EVE)エーテル、又はアセテート、又はベンゾエート及びプロピオネートエステル、又は当業者にとって容易に明らかである他の類似した誘導体等の前記アルコールが保護された5−ヘキセン−1−オールの誘導体を使うこと;2)メチリデンルテニウム錯体の形成を防止することが出発物質の生成物への転化率を高めるので、メチリデンルテニウム錯体の形成を防止する条件下(即ち、揮発性末端オレフィンが形成されるのに合わせて、該揮発性末端オレフィンを除去し)でクロスメタセシス反応を実行すること;及び3)反応において上記の条件を用いて高いトランス:シス異性体比を得ることを含む。
【0085】
例えば、5−ヘキセン酸又は5−ヘキセン酸のエステル(例えば、メチル5−ヘキセノエート、エチル5−ヘキセノエート等)を1−ヘキセンの代わりに用いることができるが、該合成は、カルボン酸又はエステルのアルコールへの還元を伴い、その後アセチル化される。これらの合成を、それぞれ図12及び13に示す。図12及び13を参照して、触媒823の存在下且つ真空下で、5−ヘキセン酸又は5−ヘキセノエートが5−デセンと反応して、それぞれ5−デセン酸又は5−デセノエートが生成する。生成した5−デセン酸又は5−デセノエートを還元及びアセチル化すると5−デセニルアセテートが生成する。更に、5−デセン酸の塩を再結晶化するとトランス異性体が増加してトランス−5−デセン酸が90%以上になり、次に還元及びアセチル化するとトランス−5−デセニルアセテートが90%以上になるので、5−デセン酸を合成することは有益である。
【0086】
図14は、5−デセニルアセタートの他の合成方法を示す。この方法は、1,10−ジアセトキシ−5−デセンと5−デセンのクロスメタセシスを伴う。末端オレフィンが存在しない(すなわち、1−ヘキセンおよび5−ヘキセニルアセタートである)場合、反応は実施例1および2で説明した反応と同じ転換率およびトランス:シス比となるであろう。5−ヘキセニルアセタートの1,10−ジアセトキシ−5−デセンへの転換は、エチレンを除去し、高い転換率(例えば98%より大きい)を得るために、真空下で行うことが好ましい。
【0087】
5−デセンと1,10−ジアセトキシ−5−デセンの比が1:1であるクロスメタセシスにより、統計上25%の5−デセン、50%の5−デセニルアセタートおよび25%の1,10−ジアセトキシ−5−デセンが得られるが、この経路の利点は、出発材料から生成物への処理能力が最大となる点である。5−デセンおよび1,10−ジアセトキシ−5−デセンは、次のクロスメタセシス反応に再循環される。
【0088】
図15は、5−デセニルアセタートの他の合成を示す。この中で、4−塩化ペンテニルは、自己メタセシスして1,8−ジクロロ−4−オクテンを生成し、これと5−デセンとをメタセシスして8−塩化ノネニルを作る。次いで、塩化ノネニルを5−デセニルアセタートに転換する。
【0089】
ホウ酸ビニルアルキルまたはアリールエステルと内部または末端オレフィンとのクロスメタセシス ホウ酸ビニルアルキルまたはアリールエステルと内部または末端オレフィンとのクロスメタセシスにより、合成的に価値のある中間体が得られる。この中間体は、ホウ酸ビニルアルキルと、オルガノアルキルまたはオルガノアリール剤とのパラジウム触媒を用いた結合により、トランスもしくはシスハロビニル中間体、またはトランスオレフィンもしくはシスオレフィンに転換される。このホウ酸ビニル クロスメタセシス製法は、穏やかかつ費用効率がよいので、この製法により多くの新しい機会が開かれた。
【0090】
従来、ホウ酸ビニルアルキルエステルの合成は、液体臭素を用いて臭化した後、液体アンモニア中でナトリウムアミドを用いてデヒドロハロゲン化することにより、末端オレフィンを末端アセチレンに転換することを伴う。次いで、高価なボラン剤(例えば、9−BBN、カテコールボラン、ピナコールボラン等)を加えて、支配的なトランス臭化ビニル中間物が得る。これらの反応工程は、分子内の官能基または他のオレフィンに対して修正できない。この合成経路は、費用のかかるプロセスであり、所望の生成物を経済的に魅力のないものにしてしまう。
【0091】
しかし、この発明は、内部オレフィン(すなわち5−デセン)とホウ酸ビニルとをクロスメタセシスしてシスおよびトランスホウ酸ヘキセニルを得るだけでなく、単純な真空蒸留またはカラムクロマトグラフィーによりシスおよびトランスホウ酸ヘキセニルを分離して純粋なシスおよびトランス異性体を得るためのものである。純粋なホウ酸異性体が得られると、これを、構造を保持したままヨウ化ビニル中間体に転換するか、または構造を反転して臭化ビニル中間体に転換する。(すなわち、反応条件によっては、トランスホウ酸ヘキセニルピナコールエステルをトランス1−ヨウ化−1−ヘキセンまたはシス1−臭化ヘキセンに転換することができる。)次いで、トランス1−ヨウ化−1−ヘキセンまたはシス1−臭化ヘキセンを種々の有機金属アルキルまたは有機金属アリール剤と結合させて、異性体的に純粋な生成物を得る。この方法は、ウィティヒおよびホーナー・エモンズ化学反応を直接的に補完し、かつこれと匹敵する。
【0092】
シスおよびトランスオレフィンを分離する従来の方法は、硝酸銀を含浸したシリカゲルを用いる。この方法は、材料が少量の研究量(すなわち、100mg未満)である場合にはうまく働くが、大規模(10kgより大きい)で実用するには費用がかかりすぎ、かつ扱いが面倒である。単純真空蒸留、カラムクロマトグラフィー、または再結晶により容易にシスおよびトランスホウ酸ビニルアルキルを分離する利点は、この方法が非常に強力かつ効率的なものになる点である。さらに、ホウ酸ビニルとシスおよびトランス5−デセンとのクロスメタセシスは、トランス5−デセン異性体が非常に過剰に存在する場合にも、シス5−デセンを選択的に消耗する点である。
【0093】
表7および8は、異なる反応条件下でのクロスメタセシス反応から得られた結果を示す。これらの結果により、この方法の有用性および選択性が明らかである。
【0094】
[表7]
5−デセンはトランス82.3%、シス17.7%の異性体混合物として開始した。HBPEはホウ酸ヘキセニルピナコールエステルである。
【0095】
[表8]
5−デセンはトランス82.3%、シス17.7%の異性体混合物として開始した。HBPEはホウ酸ヘキセニルピナコールエステルである。
【0096】
表7において、クロスメタセシス反応は迅速に進行して終了し、600%過剰の5−デセンを用いたにもかかわらず、この反応により5−デセンのトランス比が82.3%から86.7%に増加した。また、ホウ酸ヘキセニルピナコールエステルの異性体比も高いトランス選択性を保持しており、開始1分後には94%であったものが、9時間後には90%となっている。
【0097】
表8において、過剰のホウ酸ビニルピナコールエステルを用いた場合、反応は遅延し、かつホウ酸ヘキセニルピナコールエステル(HBPE)の収率は低い(すなわち、20.0%)。しかし、E−5−デセン異性体純度およびHBPE異性体純度は、5−デセンを非常に過剰な量で用いた場合(表7、9時間のデータ)とほぼ同じ値に達した。
【0098】
図16は、触媒823を用いて、ホウ酸ビニルピナコールエステルと5−ヘキセノールTHPエーテル(または5−デセンの1,10−ジTHPエーテル)とをクロスメタセシスして(Matheson、D.S J Am Chem Soc (1960)82、4228−4233)、1−ボロヘキセン−6−オールTHPエーテルのピナコールエステルを得ることを伴う5−デセニルアセタートの合成を示している。この生成物を、Miycuira(Org Syn 8 p.532)により説明されるスズキ条件下でブチルリチウムおよび塩化亜鉛と結合し、E−5−デセノールTHPエーテルをE:Z異性体比91:9で得た。この材料をカラムクロマトグラフィーで精製し、次いでアセタート化して5−デセニルアセタートをE:Z異性体比=91:9で得た。
【0099】
図17は、触媒823を用いて、ホウ酸ビニルピナコールエステルと5−ヘキセニルアセタート(または1,10−ジアセトキシ−5−デセン)とをクロスメタセシスして(Matheson、D.S J Am Chem Soc (1960)82、4228−4233)、1−ボロヘキセン−6−イルアセタートのピナコールエステルを得ることを伴う5−デセニルアセタートの合成を示している。この生成物は、水酸化ナトリウムおよび水により触媒され、ヘキセン−6−オールの1−ボロン酸を生じた。この生成物を、Miycuira(Org Syn 8 p.532)により説明されるスズキ条件下でブチルリチウムおよび塩化亜鉛と結合し、E−5−デセノールを98%より大きいE異性体比で得た。この材料をカラムクロマトグラフィーで精製し、アセタート化して5−デセニルアセタートを98%より大きい異性体比で得た。
【0100】
図18は、コナガ(Diamondback Moth:DBM)フェロモンの類似物質である9−ギ酸テトラデセニルの合成を示す。再び図9Aを参照して、前記の実施例1または2と同様に、あるいは触媒848を触媒823に置換して5−デセンを作った。図18を参照して、5−デセンを真空下かつ触媒823の存在下で9−デセノールとクロスメタセシスし、1−ヘキセンが発生するのでこれを反応から除去しながら、9−テトラデセノール(図示せず。)を生成した。次いで、酢酸ホルミルを9−テトラデセノールと反応させ、9−ギ酸テトラデセニルを生成した。
【0101】
(実施例6)
11−テトラデセニルアセタートの合成
図19は、雑食ハマキ(Omnivorous Leafroller:OLR)のフェロモンである、11−テトラデセニルアセタートの合成を示す。図19を参照して、10g(44.2ミリモル)の11−ドデセニルアセタートおよび11.2g(133ミリモル)の3−ヘキセンを、マグチック撹拌子および還流冷却器を含む100ml丸底フラスコに加えた。窒素を5分間噴霧し、次いで12mg(0.014ミリモル)の触媒848を加え、室温の窒素雰囲気下で8時間撹拌した。反応が進行するにつれて、1−ブテンを含む揮発性気体をドラフトに排気した。
【0102】
前記したようにして、メタセシス触媒を取り除き、透明な液体を得た。GC分析により、11−ドデセニルアセタートの70%が11−テトラデセニルアセタートに転換し、80:20のE:Z異性体比となることが示された。
【0103】
(実施例7)
11−テトラデセニルアセタートの合成
再び図19を参照して、10g(44.2ミリモル)の11−ドデセニルアセタートと3−ヘキセンの代わりに15g(268ミリモル)の1−ブテンとを、マグチック撹拌子およびドライアイス冷却器を含み、−15℃の冷却バス中に入れた100ml丸底フラスコに加えた。窒素を1分間噴霧し、次いで24mg(0.028ミリモル)の触媒848を加え、15℃の窒素雰囲気下で8時間撹拌し、その後、一晩放置して室温にした。反応が進行するにつれて、1−ブテンを含む揮発性気体をドラフトに排気した。
【0104】
前記したようにして、メタセシス触媒を取り除き、透明な液体を得た。GC分析により、11−ドデセニルアセタートの55%が11−テトラデセニルアセタートに転換し、66:34のE:Z異性体比となることが示された。
【0105】
(実施例7a)
11−テトラデセニルアセタートの合成
図20を参照して、10g(31.2ミリモル)の11−エイコセニルアセタートおよび15g(179ミリモル)の3−ヘキセンを、マグチック撹拌子および還流冷却器を含む100ml丸底フラスコに加えた。ホホバ油として知られる、安価な日用品の種油から11−エイコセニルアセタートを分離する。窒素を1分間噴霧し、次いで50mg(0.059ミリモル)の触媒848を加え、35℃の窒素雰囲気下で8時間撹拌した。
【0106】
前記したようにして、メタセシス触媒を取り除き、透明な液体を得た。GC分析により、11−エイコセニルアセタートの69%が11−テトラデセニルアセタートに転換し、83:17のE:Z異性体比となることが示された。溶媒としてシクロヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィーにより11−テトラデセニルアセタートを分離し、3.86g(15.1ミリモル)を収率48%で得た。
【0107】
図21は、トマト蟯虫(Tomato Pinworm:TPW)フェロモンの主成分である、E−4−トリデセニルアセタートの合成を示す。図12を参照して、1−デセンを触媒823の存在下、真空中で4−ペンテニルアセタートとクロスメタセシスして、E−4−トリデセニルアセタートを生成し、かつエチレンが発生するのでこれを溶液から除去する。
【0108】
図22は、E−4−トリデセニルアセタートの他の合成を示す。図22を参照して、1−デセニルは自己メタセシスして9−オクタデセンを形成する。4−ペンチルアセタートは自己メタセシスして1,8−ジアセトキシ−4−オクテンを生じる。触媒823の存在下、真空を用いずに、9−オクタデセンと1,8−ジアセトキシ−4−オクテンをクロスメタセシスして、4−トリデセニルアセタートを得る。2つの内部オレフィンを用いることにより、真空を用いずに得られる4−テトラデセニルアセタートの転換および収率を高くできる。
【0109】
図23は、コドリンガ(Codling Moth:CM)のフェロモンであるE,E−8,10−ドデカジエノールの合成を示す。図23を参照して、触媒823の存在下、真空中で、ペンテニル誘導体と8−ノネノールとをクロスメタセシスして、Xで表される離脱基をC−10位置に有するE−8−ドデセニル誘導体を生成する。エチレンが発生するので、これを反応混合物から取り除く。次いで、反応混合物を酸または塩基で処理して、E,E−8,10−ドデカジエノールを得る。
【0110】
図24Aおよび図24Bは、E,E−8,10−ドデカジエノールの他の合成を示す。図24Aを参照して、触媒801を用い、1,10−ジアセトキシ−5−デセンおよび1,6−ジクロロ−3−ヘキセンのクロスメタセシスして、8−クロロ−5−オクテン−1−イルアセタートを得、これを還元および脱アセチル化して、8−クロロオクタン−1−イルアセタートを合成した。図24Bを参照して、トルエン中2当量の亜リン酸トリエチルを用いて、8−クロロオクタン−1−イルアセタートを4時間還流し、オクタノールホスフィット中間体を得た。混合物をアルゴン下で−40℃まで冷却した。リチウムジイソプロピルアミンを加え(ホスホン酸の2.3モル当量)、室温まで徐々に温めた。蒸留したばかりのクロトンアルデヒド(2モル当量)を加え、室温で4時間撹拌した。8,10−ドデカジエノールが得られるまで混合物を加工した。
【0111】
8−ハロオクタン−1−オールに対する従来の方法と比較した、8−ハロオクタン−1−オールへのメタセシス経路の利点 オメガ−ハロアルカノールは、合成中間物、特に昆虫フェロモンの合成における中間物として用いられてきた、高価な化合物である(Mori 1992)。こうした化合物を調製する従来の方法は、水の除去を連続して(Pattison、FLM;JB Sothers;RG Woolford J.Am.Chem.Soc.(1956)78、2255〜2259)、または連続せずに(Chong、JM;MA Heuft;およびP Rabbat 「アルファ、オメガ−ジオールのモノブロム化の溶媒効果:オメガブロモアルカノールの従来の調製」J.Org.Chem.(2000)65、5837〜5838)、不活性溶媒中でアルファ、オメガ−ジオールをHClまたはHBr水溶液と共に加熱して行う。これらの方法は、研究量の材料に対しては適度に働くが、大規模な合成に対しては不都合である。しかし、これらの反応は、通常低濃度(例えば0.3M)で行われ、高い転換率を得るのに最大96時間を必要とし、最大で60%のジハライドまたは未反応の出発ジオールで汚染され、蒸留により用意に純粋なオメガ−ハロアルカノールを分離することができず、中程度(典型的には35%〜85%)の収率が得られる。ジオールのいくつかは、商業プロセスで用いるには非常に高価であるという点がもうひとつの制限である。
【0112】
これらの不足を克服する新しい方法は、アルファ−オメガ−ジアセトキシアルケンおよびアルファ−オメガ−ジハライドのクロスメタセシスを用いて、オメガ−ハロアルケノールを得る。(ここでの命名において、アルコールを最初の炭素原子として開始して、オメガは分子の最終炭素原子を表す。)オメガ−ハロアルケノールは、それ自体高価な合成中間体であり、従来の水素化法下で容易にオメガ−ハロアルカノールに転換する。この方法の利点は、4つの異なる対称なアルファ、オメガ−ジハライド(すなわち、W−(CH2)n−Wであり、式中、Wは塩化物、臭化物、ヨウ化物、メシラート、トシラートまたはこれらの誘導体から選択され、nは4、6、8または10に等しい。)を4つの異なる対称なアルファ、オメガ−ジアセトキシアルケン(すなわち、AcO−(CH2)n−OAcであり、式中、n=4、6、8または10である。)とクロスして、7つの異なるオメガ−ハロアルケノール(すなわち、AcO−(CH2)nCH=CH(CH2)m−Wであり、式中、n=1、2、3または4、m=1、2、3または4である。)を生じる。これらのオメガ−ハロアルケノールは、水素化条件下でオメガハロアルカノールに転換される。
【0113】
これらのメタセシス反応は、通常同モル比の対称ジハライドおよびジアセトキシ化合物で円滑に行われ、未反応の出発物質は、次のメタセシス反応に再循環される。収率は、典型的には50%程度の反応器体積効率である。(すなわち、反応器体積の50%が生成物である。)出発対称ジハライドおよびジアセトキシ化合物は、通常商業的供給者から、またはアルコールをハライドに容易に転換することにより入手可能である。また、出発物質とオメガ−ハロアルケノール生成物の沸点の違いに基づいて出発物質を選択する等の、オメガ−ハロアルケノールから出発物質を分離するのが非常に簡単となるように、これらを選択することが好ましい。例えば、1,6−ジブロモ−3−ヘキセンと1,10−ジアセトキシ−5−デセンとの間のクロスメタセシス反応から8−ブロモ−5−オクテニルアセタートを得る際、沸点の違いが大きいという理由でこれらの出発物質を選択した。1,6−ジブロモ−3−ヘキセンのBpt1.0mmHgは84〜85℃であり、8−ブロモ−5−オクテニルアセタートのBpt1.0mmHgは110〜112℃であり、1,10−ジアセトキシ−5−デセンのBpt1.0mmHgは158〜162℃である。
【0114】
(実施例:8−ブロモオクタン−1−オールの合成の比較)
8−ブロモオクタン−1−オールは、昆虫フェロモンの合成において有用な出発物質であるが、大量に市販されていないので広範には使用されていない。TCI(オレゴン州ポートランド)は、8−ブロモオクタン−1−オールを25gで191.30ドル(7652ドル/kg)で販売している。1,8−オクタンジオールから出発することもまた高価である。TCIは、1,8−オクタンジオールを498ドル/kgで販売している。このように高価であること、およびこの材料をオメガ−アルカノールに転換する際に前記した欠点により、このような方法が商業的に発展できなくなっている。
【0115】
図25を参照して、しかしながら、オレフィンメタセシスは、8−ブロモオクタン−1−オールを生成する安価な方法を提供する。対称1,6ジブロモ−3−ヘキセンを、1−ブロモ−3−ヘキセンにより作る(揮発性3−ヘキセンを真空下で除去する)。1−ブロモ−3−ヘキセンを、40ドル/kg未満で販売されている市販のリーフアルコール(Bedoukian、コネチカット州ダンブリー)から調製する。1,10−ジアセトキシ−5−デセンをヘキセニルアセタートのクロスメタセシスにより調製する。ヘキセニルアセタートは、従来の方法により、ヘキセノールから調製する。5−ヘキセノールは、45ドル/kg未満で販売されており、ニュージャージー州サマセットのDegussa−Hulsから入手可能である。
【0116】
同モル量の1,6ジブロモ−3−ヘキセンおよび1,10−ジアセトキシ−5−デセンをクロスメタセシスして、収率40〜50%の8−ブロモ−5−オクテニルアセタートを得る(この反応条件下での最大収率は50%である)。オメガ−ブロモ−5−オクテニルアセタートを単純真空蒸留により分離し、還元およびジアセチル化して8−ブロモオクタン−1−オールを作る。この方法のコストは最終生成物1kg当たり300ドル未満である。
【0117】
蚊産卵誘引フェロモン(Mosquito Oviposition Attractant Pheromon:MOP):(5R,6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライドの合成
(実施例8)
メドウホーム油および1−ドデセンのクロスメタセシス
図26は、植物名Limnanthes Albaとしても知られているメドウホーム油の化学構造を示す(CAS Number:153065−40−8;EINES Numvber:310−127−6)。メドウホーム油は、Natural Plant Products LLC,2767 19th St SE、PO Box 4306、Salem,OR 97302、から入手可能であり、現在、キログラム当り約$12の値段である。
【0118】
図27は、メドウホーム油及び1−ドデセンのクロスメタセシスを用いたMOPについて合成スキームを示す。図26及び図27に関して、3.0g(3.0mmol)メドウホーム油及び6.1g(36mmol)1−ドデセンを乾燥した50mL丸底フラスコに加えた。フラスコを窒素で20分間浄化し、ついで、0.025gの触媒823を添加し、混合物を18時間、35℃で10mmHg真空下で攪拌した。メタセシス触媒を0.037g(0.30mmol)のトリスヒドロキシメチルホスフィン及び5mLのトリエチルアミンを添加することによって除去した。混合物を50℃で12時間攪拌した。3回の100ml洗浄を水で行って、ついで、1MHClの1×50mL洗浄及びNaHCO3飽和水の1×50mL洗浄を行った。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、さらに精製することなく、ろ過し、次の反応において使用した。
【0119】
上述由来のメタセシス生成物を、“Epoxidation of Olefins by Hydorogen perocide−Acetonitorile: cis−Cyclohexesne Oxide”、におけるBach等によって記述されたように、すなわち、m−クロロペルオキシベンゾイン酸でエポキシドへ酸化した。グリセリドエステルを加水分解し、エポキシドを2MKOH及び20mLのイソプロパノールアルコール(IPA)において60℃へ6時間加温することによって、エポキシドをジオールへ開環した。溶液を濃縮し、50mLの1MHClで洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、さらに精製することなく、ろ過し、次の反応において使用した。ラクトン化を次の手順を用いて行った。すなわち、重ジオール(2.9g、9.0mmol)を50mgのトルエンスルホン酸を含む50mlの無水トルエンの中へ溶解し、100℃へ6時間加熱した。混合物を室温へ冷却し、50mLのNaHXO3飽和水で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、さらに精製することなく、ろ過し、次の反応において使用した。乾燥させた溶液を1.8g(0.018mmol)の無水酢酸及び5mLのトリエチルアミンでアセチル化した。溶液を室温で一昼夜攪拌した。反応を50mLの1MHCl及びNaHCO3飽和水の50mL洗浄によって仕立てた。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、さらに精製することなく、ろ過し、濃縮し(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体を産出し、その後、クロマトグラフィーで精製した。
【0120】
(実施例9)
1−ドデセンの自己メタセシス
図28に関して、61.0g(360mmol)の1−ドデセンを乾燥した50mLの丸底フラスコへ加えた。フラスコを窒素で20分間洗浄し、ついで、0.25g(0.30mmol)の触媒823を添加し、混合物を18時間、35℃で10mmHg真空下で攪拌した。メタセシス触媒を100gのシリカゲル、170〜400メッシュを通じてろ過によって除去し、50.2g(324mmol)の11−ドコセンを産出した。この生成物をさらに精製することなく使用した。
メドウホーム油及び11−ドコセンのクロスメタセシス
図29に関して、(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体の合成は、5.5g(18mmol)の11−ドコセンを1−ドデセンの代わりに用いた以外、実施例8に述べたようにした。
【0121】
(実施例10)
メチルへキセノエート(hexenoate) 及び11−ドコセンのクロスメタセシス
図30に関して、(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体の合成は、1.15g(9mmol)のメチルへキセノエートをメドウホーム油の代わりに用い、5.5g(18mmol)の11−ドコセンを1−ドデセンの代わりに用いた以外、実施例8に述べたようにした。
【0122】
(実施例11)
メチルへキセノエート(hexenoate)及び1−ドデセンのクロスメタセシス
図31に関して、(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体の合成は、1.15g(9mmol)のメチルへキセノエートをメドウホーム油の代わりに用いた以外、実施例8に述べたようにした。
【0123】
(実施例12)
メドウホーム油及び1−ドデセンのクロスメタセシス
図32に関して、(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体の合成は、ジオールに対する二重結合を酸化をOlagbemiro等によって述べられたようにした以外、実施例8に述べたようにした。
【0124】
(実施例13)
メドウホーム油 及び11−ドコセンのクロスメタセシス
図33に関して、(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体の合成は、5.5g(18mmol )の11−ドコセンを1−ドデセンの代わりに用い、ジオールに対する二重結合を酸化をOlagbemiro等によって述べられたようにした以外、実施例8に述べたようにした。
【0125】
(実施例14)
メチルへキセノエート(hexenoate)及び11−ドコセンのクロスメタセシス
図34に関して、(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体の合成は、1.15g(9mmol)のメチルへキセノエートをメドウホーム油の代わりに用い、ジオールに対する二重結合を酸化をOlagbemiro等によって述べられたようにした以外、実施例8に述べたようにした。
【0126】
(実施例15)
メチルへキセノエート(hexenoate)及び1−ドデセンのクロスメタセシス
図35に関して、(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体の合成は、1.15g(9mmol)のヘキセニルアセテートをメドウホーム油の代わりに用いた以外、実施例8に述べたようにした。5−ヘキサデセニルアセテートの5−へキサデセン酸の酸化は、Witzmann等の“Di−Glyceraldehde Ethyl Acetal”Organic Synthesis Collective Volume II, 1943 p307及びジオールへの二重結合の酸化をOlagbemiro等によって述べられたようにした。
【0127】
(実施例16)
ヘキセニルアセテート及び1−ドデセンのクロスメタセシス
図36に関して、(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体の合成は、1.15g(9mmol )のヘキセニルアセテートをメドウホーム油の代わりに用いた以外、実施例8に述べたようにした。5−ヘキサデセニルアセテートの5−へキサデセン酸の酸化は、Witzmann等に述べられたように行い、ジオールへの二重結合の酸化をOlagbemiro等によって述べられたようにした。
【0128】
(実施例17)
ヘキセニルアセテート及び1−ドコセンのクロスメタセシス
図37に関して、(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体の合成は、1.15g(9mmol)のヘキセニルアセテートをメドウホーム油の代わりに用いた以外、実施例8に述べたようにした。5−ヘキサデセニルアセテートの5−へキサデセン酸の酸化は、Witzmann等に述べられたように行い、5.5g(18mmol)の11−ドコセンを1−ドデセンの代わりに使用し、ジオールへの二重結合の酸化をOlagbemiro等によって述べられたようにした。
【0129】
(実施例18)
ヘキセナールジエチルアセタール及び11−ドコセンのクロスメタセシス
図38に関して、(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体の合成は、1.15g(9mmol)のヘキセナールジエチルアセタールをメドウホーム油の代わりに用いた以外、実施例8に述べたようにした。5−ヘキサデセナールジエチルアセタールの5−へキサデセン酸の酸化は、Ruhoff,J.R.(“N−Heptanoic Acid” OrganicSynthesis Collective Volume II,1943p314)に述べられたように行い、5.5g(18mmol)の11−ドコセンを1−ドデセンの代わりに使用し、ジオールへの二重結合の酸化をOlagbemiro等によって述べられたようにした。
【0130】
(実施例19)
図39に関して、(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体の合成は、1.15g(9mmol)のヘキセナールジエチルアセタールをメドウホーム油の代わりに用いた以外、実施例8に述べたようにした。5−ヘキサデセナールジエチルアセタールの5−へキサデセン酸の酸化は、Ruhoffに述べられたように行い、ジオールへの二重結合の酸化をOlagbemiro等によって述べられたようにした。
【0131】
ぺカンナッツ系ベアラーホルモン(PNCB)の合成E−9、Z−11−ヘキサデカジエナール
図40は、ビニルホウ酸塩ピナコールエステル(Matheson,D.SJ AmChem Soc(1960)82,4228−4233)の(入手可能な9−デセノールのSwern酸化によって合成し、9−デセナールを産出し、その後エタノールと塩酸でアセタールとして保護した)9−デセナールジエチルアセタールとのクロスメタセシスを、触媒823で伴い、1−ボロデセナールジエチルアセタールのピナコールエステルを生成するPNCBの合成を示す。この生成物は、Miycuira Org SynVIIIp532に述べられたようなSuzuki 条件下で、Z−1−ヨードへキセン(Normant Org Syn VII,p290−294)と結合し、E−9、Z−11−ヘキサデカジエナール時エチルアセタールを生成する。この物質は、カラムクロマトグラフィーによって精製し、アセタールを含水メタノール及び水中で、触媒p−トルエンスルホン酸を用いて35℃で24時間加水分解した。E−9、Z−11ヘキサデカジエナールを反応混合物を濃縮することによって単離し、カラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0132】
図9、11〜25及び27〜40において示す合成スキームの説明を特定の触媒及び出発物質を含むが、当業者は、図及び説明を見本としてのみであり、たとえば、図2〜5に示すようなクラスI−IVメタセシス触媒他の合成触媒を使用することによって、修正をすることができると賞賛するであろう。図9、11〜25、及び27〜40の合成スキームに関して具体的に、クラスIVメタセシス触媒、特に触媒848、826、807及び785が好ましい。なぜなら、これらの触媒は、他の3つのクラスの触媒よりも十分少量で使用することができるからである。たとえ、触媒807及び785を少量で使用することができ、より高い収率を産することができても、それらが現在容易に合成される触媒848、及び826は現在もっとも好ましい。触媒823、801、及び716も好ましいが、一般にクラスIV触媒より少量の収率を産する。触媒791及び707は、現在好ましくない。
【0133】
当業者は、図1、11〜25、及び27〜40に示す合成スキームをたとえば、上述したような出発物質の他のアルコール保護された誘導体など、他の出発材料を用いることによって修正することでき、たとえば、ここに存在するクロスメタセシス生成物の別の合成を提供するために、あるいは、E−9、Z−11−ヘキサデカジエナール、E−3、Z−5ドデカジエニルアセテート、E−8,Z−10−ペンタデカジエニルアセテート、E−7、Z−9ドデカジエニルアセテート、Z−5,E−7−ドデカジエノール、E−5、Z−7ドデカジエノール、Z−9、E−11−テトラデカジエニルアセテート、Z−11、E−13−ヘキサデカジエニルアセテート、又は他の同様の製品を合成するのに使用することができると賞賛するであろう。
【0134】
本発明の趣旨を逸脱することなしに、多くの変形を本発明の上述した実施形態の詳細になされることが、当業者にとって明白であろう。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ決定されるべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成フェロモンまたはその成分に関し、さらに、特に、生物的に活性な、桃枝穿孔性動物フェロモンの主成分であるE−5−デセニルアセタート、蚊産卵性誘引物質フェロモンである(5R,6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリド、またはペカン堅果ケースベアラー(casebearer)蛾フェロモンであるE9,Z11−ヘキサデカジエナール等の昆虫性誘引物質フェロモンまたはその成分等の、生物活性な化合物および中間体を生成するメタセシス反応に関する。
【背景技術】
【0002】
昆虫ペストは作物を破壊し、および/または病気を拡げる。通常のペスト抑制法は、農場、果樹園、湿地帯、森林、または他のペスト生息地に、殺虫剤を散布することである。この方法は問題を有する。その理由は、殺虫剤は作物や分水界に直接適用されるので、これを実施することにより、優先性の高い農作物や水質問題さらに他の環境問題に逆行するからである。また、殺虫剤は無差別キラーであるため、益虫も害虫も殺す。結局、昆虫ペストは普通の殺虫剤の多くに対して耐性を高めるに至る。
【0003】
昆虫の個体数を抑制する別の方法は、昆虫の性誘引物質を使用して、オスの昆虫を混乱させ、これにより、交尾を回避し、将来的に昆虫の発生をなくすことである。この方法は、メイティングパターン破壊(mating pattern disruption)という。昆虫フェロモンは従来の殺虫剤に対して多くの利点を有する比較的新しいクラスの化合物に含まれる。昆虫フェロモンは、無毒性であり、環境的にもやさしい。これらは、標的の昆虫に特異的であり、益虫に悪影響を与えないし、標的の昆虫が耐性を持つようになることはない。メイティングパターン破壊を使用して昆虫個体数を抑制することの最大の弊害は、昆虫フェロモンを生成するコストである。このコストは伝統的な殺虫剤のコストをはるかに凌いで典型的に高価である。昆虫フェロモンの製造コストを低減する方法により、メイティングパターン破壊を、昆虫個体数を抑制する経済的な方法にする。これにより、ペルト抑制に関する環境問題を最小にする。
【0004】
一般に、普通のフェロモンは10〜18個の炭素原子を含むオレフィンを伴い、末端アルコール、アルデヒド、またはアセタート官能基を有し、特異な特別な立体異性を有する。以下の記載は、石果果樹園における主なペストである桃枝穿孔性動物(PTB)等の普通の昆虫ペスト、イエカ属の病原体を媒介する蚊、およびペカンにおける主なペストであるペカン堅果ケースベアラー蛾に対する幾つかのフェロモンを非制限的に例示する。
【0005】
PTBフェロモンはE−5−デセニルアセタートとE−5−デセノールが85:15の割合である。したがって、PTBフェロモンの主成分である5−デセニルアセタートの生成は、PTBフェロモン製造法の重要な段階である。この酢酸エステルは、加水分解によってその後除去され、E−5−デセノール、PTBフェロモンの他の成分を得ることができる。したがって、E−5−デセニルアセタートを合成する速くて、高価でなく、高収率の方法が望まれる。
【0006】
蚊の産卵フェロモン(MOP)に関する背景情報は、以下の文献から得られる。すなわち、Olagbemiro氏等による「(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリド、蚊産卵フェロモンの、Kochia scoparia (アカザ科)ホウキギ植物の種子油からの製造、」J.Agric.Food Chem.(1999)47,3411。より詳しくはこの文献を参照のこと。
イエカ属の蚊(双し目:蚊(Culicidae))には、公衆衛生に対する最大の驚異がある。その理由は、世界規模で何百万人の人々を悩ます、マラリア、デング熱、黄熱、脳炎、およびフィラリア等の病気に対する原因薬剤の媒介として振る舞う可能性があるからである。マラリアと脳炎は、非常に大勢に感染し、致死率が最も高く、主にアフリカで、世界90箇国15億の約3分の1に影響する。(AAAS(American Association for the Advancement of Science)「マラリアおよびアフリカにおける発生」:AAAS:ワシントンDC、(1991);Giles氏等による、「Bruce−Chwatt’s Essential Malariology」第3刷、Edward Arnold;London UK(1993);およびWHO/CTD.「マラリア予防および抑制」WHOリポート;ジュネーブ(1998)。)
【0007】
フィラリアは危険下にある45000万人の人々の3.33%(すなわち〜1500万人)に感染し、毎年約100万人の新規な感染が生じる。(Reeves 氏等による、「節足動物媒介の自然感染」疫学および蚊媒介アルボウイルスの抑制、カリフォルニアにおける、1943−1987;REEVES,W.G.Ed.;カリフォルニア蚊抑制協会:サクラメント,CA.1990 128−149頁。)媒介物が引き起こす病気の報告が急速に増加したために、媒介物の監視および抑制の有効な方法が最も重要である。
【0008】
Wuchereria Bancrofti(合衆国における、ヒトフィラリアの原因薬剤およびセントルイ脳炎ウイルスおよび他のアルボウイルス)の伝達はquinquefasciatus属の蚊に原因がある。(Reissen氏等による、「カリフォルニアのロサンゼルス盆地における1987−1990の蚊およびセントルイ脳炎ウイルスのエコロジー」J.Med.Entomol.(1992)29,582).卵を持っているquinquefasciatus属のメスが嗅覚のキューを使用して、適当な産卵場所を決める。主なキューは産卵誘引物質フェロモン((5S,6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリド)であり、これは成熟した卵集団により放出される。(Osgood,C.E.「tarsakis 属の卵ラフトに関する産卵フェロモン」J.Econ.Entomol.(1971)64,1038;Osgood氏等、「蚊の産卵誘引物質と刺激物質との間の識別のための空気流れオルファクトメーター」J.Econ.Entomol.(1971a)64,1109;およびStarratt,A.N.;C.E.Osgood「quinquefasciatus属とpipens pipens属の卵から得られる1,3−ジグリセリド」Comp.Biochem.Physiol.(1973)857.)
【0009】
quinquefasciatus属のメスの蚊により生成される産卵誘引物質フェロモン((5S,6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリド)は、卵上に舌先の滴から放出される。(Laurence 氏等による「エリスロ−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリド、蚊の産卵誘引物質の主な成分」J.Chem.Commun. (1982)59−60.(Laurence氏等’82)。これは、これおよび関連する種のメスを産卵した卵の付近に誘引する。(Howse氏等、「昆虫フェロモンおよびペスト管理におけるその使用」Chapman およびHall,2−6 Boundary Row, ロンドン SE1 8HN, JK 1998,p52)quinquefasciatus属の蚊を抑制するための新しい方法は、産卵誘引フェロモン(5S,6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリドの確認から始まった。(Laurence氏等、’82、Laurence氏等。「蚊の産卵誘引物質フェロモン6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリドの完全な配置」J.Chem.Ecol.(1985)11,643;およびLaurence氏等。「quinquefasciatus属Say(双し目、蚊(Culicidae))の産卵誘引物質フェロモン」Bull.Entomol.Res.(1985a)5,283.9ヶ国、3大陸の研究所および野外実験所で等量比の全4立体異性体[すなわち、(5,6)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリドの(5R,6S),(5S,6S),(5R,6R),(5S,6R)](Dawson 氏等「Convenient Synthesis of Mosquito Oviposition Pheromone and a Highly Flourinated Analog Retaining Biological Activity」)J.Chem.Ecol.(1990)16,1779.)を含む合成フェロモンを使用して、spp.属の蚊の誘引における産卵フェロモンの効果を例証した。(Otieno 氏等、「A Field Trial of Synthetic Oviposition Pheromone with Culex quinquefasciatus Say (Diptera,Culicidae) in Kenya」Bull.Entomol.Res.(1988)78,463.)3種の不活性な非自然の立体異性体[すなわち、(5S,6S),(5R,6R),(5S,6R)]の存在にもかかわらず、天然異性体の生物活性は影響されなかった。これらの結果は、効果的で、有効な、高価でない産卵誘引物質フェロモン(5R,6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリドが立体異性体を含む(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリドのラセミ体混合物からもたらされることがわかる。また、Olagbemiro氏等は、quinquefasciatus属メス蚊が種子油不純物および(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリドの合成物から得られる合成不純物によって影響されないことを示した。
【0010】
産卵誘引物質フェロモンの同定および特性は、多くの非対称合成および大規模ラセミ体合成ルートへの機動力をもたらす。Laurence氏等、’82;Coutrout氏等「5−ホルミル−d−バレロラクロン−Vespa orientalisフェロモンおよび蚊産卵誘引物質フェロモンのキラル合成に対する有益なシントン(Synthon)」Tetrahedron Lett.(1994)35,8381;Gravierpelletier氏等「L−アスコルビン酸およびD−イソアスコルビン酸からのエナンチオピュアヒドロキシラクトン:2.(−)−(5R,6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリドおよびそのジアステレオマーの合成」Tetrahedron(1995)51,1663;Henkel氏等、「蚊産卵誘引フェロモンのof(5R,6S)−6−アセトキシイル−5−オリド−類似物のリパーゼ触媒合成」J.Pract.Chem.(1997)339,434−440;Mori,K.,「天然物の全合成,9巻」John ApSimon Ed.John Wiley&Sons New York (1992)p252−264)」。上記種々の合成経路は多量の産卵誘引物質フェロモンを提供可能であるが、製造コストは非常に高い。したがって、安価で有効な蚊産卵フェロモンおよびその合成は非常に望まれる。
【0011】
別の昆虫ペスト、つまりペカン堅果ケースベアラー蛾(PNCB:pecan nut casebearer moth),Acrobasis nuxvorella Neuzigは、生物的手段では抑制されない、$4900万米国ペカン産業の最新の主なペストの一つである。PNCBは、テキサス、オクラホマ、ミズーリー、カンザス、ルイジアナのペカンの重大なペストであり、はるか東の農作物に影響を与える。このペストは、最近ニューメキシコの高生産性ペカンMesilla Valley 領域を襲った。西部のペカン果樹園の管理はペカン堅果ケースベアラー蛾を抑制する殺虫剤の使用によってのみ有機的に略完全に攪乱された。
【0012】
最近の有効な有機燐酸塩殺虫剤(Lorsban E4 および50W)は食品品質保護法のEPAの監視下で、食品中に残留するため市場から除去される。ピレスロイド殺虫剤は代替として使用できない。その理由は、処理後にアリマキ、クモダニの急増を引き起こすからであり、ペカンにおける抑制は困難である(Knutson A.;W.Ree.1998.「Managing insect and mite pests of commercial pecan in Texas」Texas Ag Extension Service,B1238.p13)。すぐには、ペカン栽培者PNCB抑制に対する有効な代替物を得ることができなかった。CONFIRM(商標)、すなわち、昆虫成長調節剤は、代替物であるが、高価であり、これのみの使用の場合、耐性の発現を受ける。未検出のPNCBが残っていると、ペカン産業が破壊され、多くのペカン栽培者は失業する。したがって、PNCB抑制への実行可能な経済的な代替物を至急開発する必要がある。
【0013】
PNCBは、交尾や産卵の4月終わりから5月始めの2週間に生じる第1世代間に殆どダメージを受ける(Knutson,1988)。堅果を貫通する前に孵化する幼虫を標的にして殺虫剤を散布してPNCBを抑制できる場合に、この処理は、短い期間に規定できる。PNCB個体数の変動を監視するフェロモントラップの最近の開発により、ペカン果樹園の管理が変わり、殺虫剤適用時期を正確に決められるようになった。見込みのある代替物ペスト管理法はPNCBフェロモンを使用して交尾の混乱を促進し、これによりその個体数を抑制することである。
【0014】
PNCBフェロモンは、E9,Z11−ヘキサデカジエナル、すなわち、独特なフェロモン化合物である。PNCBフェロモンはマイクログラムより多量では市販されていない。PNCBを監視するためのルアーを販売している2つの会社は、グラムより多量でPNCBを供給できない。その理由は、利用可能なこのフェロモンの多量の市販源(すなわち、>20g)がないからである。PNCBの大規模生産、およびPNCBをチェックする昆虫抑制技術を開発する必要がある。
高収率で、かつ安定で再生産可能な立体異性体比の生成物を製造できる種々のフェロモン化合物およびその前躯体を合成する簡単な方法が、必要な場合に望まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Olagbemiro氏等、「(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリド、蚊産卵フェロモンの、Kochia scoparia (アカザ科)ホウキギ植物の種子油からの製造、」、J. Agric. Food Chem. (1999) 47, 3411
【非特許文献2】AAAS(American Association for the Advancement of Science)「マラリアおよびアフリカにおける発生」:AAAS: ワシントンDC、(1991)
【非特許文献3】Giles氏等、「Bruce−Chwatt’s Essential Malariology」第3刷、Edward Arnold; London UK(1993)
【非特許文献4】WHO/CTD.「マラリア予防および抑制」WHOリポート;ジュネーブ(1998)
【非特許文献5】Reeves氏等、「節足動物媒介の自然感染」疫学および蚊媒介アルボウイルスの抑制、カリフォルニアにおける、1943−1987;REEVES, W.G. Ed.;カリフォルニア蚊抑制協会:サクラメント,CA.1990 128−149頁
【非特許文献6】Reissen氏等による、「カリフォルニアのロサンゼルス盆地における1987−1990の蚊およびセントルイ脳炎ウイルスのエコロジー」J. Med. Entomol. (1992) 29,582
【非特許文献7】Osgood,C.E.「tarsakis属の卵ラフトに関する産卵フェロモン」J.Econ.Entomol.(1971)64,1038; Osgood 氏等、「蚊の産卵誘引物質と刺激物質との間の識別のための空気流れオルファクトメーター」J.Econ.Entomol.(1971a)64,1109
【非特許文献8】Starratt,A.N.;C.E.Osgood「quinquefasciatus属とpipens pipens属の卵から得られる1,3−ジグリセリド」Comp.Biochem.Physiol.(1973)857.)
【非特許文献9】Laurence氏等による「エリスロ−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリド、蚊の産卵誘引物質の主な成分」J.Chem.Commun.(1982)59−60.(Laurence氏等’82)
【非特許文献10】Howse氏等、「昆虫フェロモンおよびペスト管理におけるその使用」ChapmanおよびHall,2−6 Boundary Row,ロンドンSE1 8HN,JK1998,p52
【非特許文献11】Laurence氏等、’82、Laurence氏等、「蚊の産卵誘引物質フェロモン6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリドの完全な配置」J.Chem.Ecol.(1985)11,643
【非特許文献12】Laurence氏等。「quinquefasciatus属Say(双し目、蚊(Culicidae))の産卵誘引物質フェロモン」Bull.Entomol.Res.(1985a)5,283.
【非特許文献13】Otieno氏等、「A Field Trial of Synthetic Oviposition Pheromone with Culex quinquefasciatus Say (Diptera,Culicidae)in Kenya」Bull. Entomol.Res.(1988) 78, 463.)
【非特許文献14】Laurence氏等、’82;Coutrout氏等「5−ホルミル−d−バレロラクロン−Vespa orientalisフェロモンおよび蚊産卵誘引物質フェロモンのキラル合成に対する有益なシントン(Synthon)」Tetrahedron Lett.(1994)35,8381
【非特許文献15】Gravierpelletier氏等「L−アスコルビン酸およびD−イソアスコルビン酸からのエナンチオピュアヒドロキシラクトン:2.(−)−(5R,6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリドおよびそのジアステレオマーの合成」Tetrahedron(1995)51,1663
【非特許文献16】Henkel氏等、「蚊産卵誘引フェロモンのof(5R,6S)−6−アセトキシイル−5−オリド−類似物のリパーゼ触媒合成」J.Pract.Chem.(1997)339,434−440
【非特許文献17】Mori,K.,「天然物の全合成,9巻」John ApSimon Ed. John Wiley&Sons New York (1992)p252−264)」
【非特許文献18】Knutson A.;W.Ree.1998.「Managing insect and mite pests of commercial pecan in Texas」Texas Ag Extension Service, B 1238. p13
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】Aは、5−デセニルアセタートの合成(オレフィンメタセシス)の一部を示す反応図である。ここで、アリル塩化マグネシウムはブロモクロロプロパンと反応し、1−クロロ−5−ヘキセンを生成する。これは米国特許第5916983に開示されている。Bは、5−デセニルアセタートの合成の第2工程を示す反応図である。ここで、1−クロロ−ヘキセンを1−ヘキセンと触媒823の存在下で反応させて、1−クロロ−5−デセンを得る。Cは、5−デセニルアセタートの合成の第3工程を示す反応図である。ここで、1−クロロ−5−デセンを酢酸カリウムとともに加熱して、5−デセニルアセタートを得る。Dは、5−デセニルアセタートの合成の第4工程を示す反応図である。ここで、トランス:シス比60:40の5−デセニルアセタートをベンゼンスルフィン酸のナトリウム塩と酢酸の存在下で異性化し、トランス:シス比80:20の5−デセニルアセタートを得る。
【図2】一般メタセシスクラスI触媒の構造図である。
【図2A】触媒823の構造図である。
【図2B】触媒739の構造図である。
【図2C】触媒801の構造図である。
【図2D】触媒716の構造図である。
【図2E】触媒849の構造図である。
【図2F】触媒765の構造図である。
【図2G】触媒791の構造図である。
【図2H】触媒707の構造図である。
【図2I】触媒815の構造図である。
【図2J】触媒731の構造図である。
【図2K】触媒834の構造図である。
【図2L】触媒751の構造図である。
【図2M】表1を表す。これは、図2A−2Lに存在するクラスIメタセシス触媒の、分子量、CAS#、化学名を含む。
【図3】一般メタセシスクラスII触媒の構造図である。
【図3A】触媒877の構造図である。
【図3B】触媒835の構造図である。
【図3C】触媒855の構造図である。
【図3D】触媒813の構造図である。
【図3E】触媒903の構造図である。
【図3F】触媒881の構造図である。
【図3G】表2を示す。これは、図3A−Fに存在するクラスIIメタセシス触媒の、分子量、CAS#、化学名を含む。
【図4】一般メタセシスクラスIII触媒の構造図である。
【図4A】触媒846の構造図である。
【図4B】触媒805の構造図である。
【図4C】触媒824の構造図である。
【図4D】触媒783の構造図である。
【図4E】触媒873の構造図である。
【図4F】触媒831の構造図である。
【図4G】触媒814の構造図である。
【図4H】触媒773の構造図である。
【図4I】触媒839の構造図である。
【図4J】触媒797の構造図である。
【図4K】触媒859の構造図である。
【図4L】触媒817の構造図である。
【図4M】表3を表す。これは、図4A−4Lに存在するクラスIIIメタセシス触媒の、分子量、CAS#、化学名を含む。
【図5】一般メタセシスクラスIV触媒の構造図である。
【図5A】触媒848の構造図である。
【図5B】触媒807の構造図である。
【図5C】触媒826の構造図である。
【図5D】触媒785の構造図である。
【図5E】触媒875の構造図である。
【図5F】触媒833の構造図である。
【図5G】触媒816の構造図である。
【図5H】触媒775の構造図である。
【図5I】触媒841の構造図である。
【図5J】触媒799の構造図である。
【図5K】触媒861の構造図である。
【図5L】触媒819の構造図である。
【図5M】表4を表す。これは、図5A−5Lに存在するクラスIVメタセシス触媒の、分子量、CAS#、化学名を含む。
【図6】好ましい出発材料および好ましいメタセシス触媒を使用できる幾つかの一般クロスメタセシスを示す。
【図7】図6に示した反応の、種々の好ましい出発材料およびメタセシス生成物を示す表である。
【図8】図6に示した反応の、種々の好ましい出発材料およびメタセシス生成物を示す表である。
【図9A】5−デセニルアセタートの改良した合成における第1段階を示す。ここで、1−ヘキセンはセルフメタセシスされ5−デセンおよびメチレンになり、雰囲気中に排気されることにより、反応系から除去される。
【図9B】5−デセニルアセタートの改良した合成の第2段階を示す。ここで、5−デセンは5−ヘキシルアセタートと反応して、真空下、1−ヘキセンおよびトランス:シス比80:20〜84:16の5−デセニルアセタートを得る。
【図10A】好ましいメタセシス触媒の除去に使用されたトリスヒドロキシメチルホスフィンの一般構造式を示す。
【図10B】好ましいメタセシス触媒の除去に使用された好ましい水溶性ホスフィンまたはホスファイトの一般構造式を示す。
【図10C】好ましいメタセシス触媒の除去に使用された好ましい水溶性ホスフィン環系の一般構造式を示す。
【図11】5−デセニルアセタートの一段階構成合成を示す。ここで、1−ヘキセンは5−ヘキセニルアセタートとクロスメタセシスしてトランス:シス比80:20〜84:16の5−デセニルアセタートを得る。
【図12】5−デセニルアセタートの択一的な合成を示す。ここで、1−ヘキセンは5−ヘキセン酸とクロスメタセシス反応し、5−デセン酸を生じ、再結晶化され、アルコールに還元され、アセチル化され、90%より高いE−5−デセニルアセタートを得る。
【図13】5−デセニルアセタートの択一的な合成を示す。ここで、1−ヘキセンは5−ヘキセン酸エステルとクロスメタセシス反応し、5−デセン酸を生じ、再結晶化され、アルコールに還元され、アセチル化され、90%より高いE−5−デセニルアセタートを得る。
【図14】5−デセニルアセタートの択一的合成を示す。ここで、1,10−ジアセトキシ−5−デセンおよび5−デセンをクロスメタセシス反応する。
【図15】5−デセニルアセタートの択一的合成を示す。ここで、4−ペンテニル塩化物をセルフメタセシス反応させ、1,8−ジクロロ−4−オクテンを生成し、これを5−デセンとメタセシス反応させ、4−ノネニル塩化物を生成し、その後、5−デセニルアセタートに転化する。
【図16】5−デセニルアセタートの択一的合成を示す。ここで、ビニルボレートピナコールエステルを5−ヘキセノールTHPエーテルとクロスメタセシス反応させ、1−ボロヘキセン−6−オルTHPエーテルのピナコールエステルを得る。
【図17】5−デセニルアセタートの択一的合成を示す。ここで、ビニルボレートピナコールエステルを5−ヘキセニルアセタートとクロスメタセシス反応させ、1−ボロヘキセン−6−イルアセタートを得る。これを水酸化ナトリウムおよび水から結晶化し、ヘキセン−6−オルの1−ホウ酸を得て、97%より高いE−5−デセニルアセタートに転化する。
【図18】9−テトラデセニルホルメートの合成を示す。ここで、5−デセンを9−デセノールとクロスメタセシス反応させ、9−テトラデセノールを生成し、一方、1−ヘキセンを真空下反応系から除去する。さらに、メタセシス生成物である9−テトラデセノールをホルミル酢酸と反応させる。
【図19】11−テトラデセニルアセタートの合成を示す。ここで、3−ヘキセンを11−ドデセニルアセタートとクロスメタセシス反応させ、生成した1−ブテンを溶液から除去する。
【図20】11−エイコセニルアセタートからの11−テトラデセニルアセタートの択一的合成を示す。
【図21】E−4−トリデセニルアセタートの合成を示す。ここで、1−デセンを4−ペンテニルアセタートとクロスメタセシス反応させ、生成したエチレンを溶液から除去する。
【図22】E−4−トリデセニルアセタートの択一的合成を示す。ここで、1−デセンをセルフメタセシス反応させ、9−オクタデセンを形成し、4−ペンテニルアセタートをセルフメタセシス反応させ、1,8−ジアセトキシ−4−オクテンを生成し、9−オクタデセンを1,8−ジアセトキシ−4−オクテンとクロスメタセシス反応させる。
【図23】E,E−8,10−ドデカジエノールの合成を示す。ここで、ペンテニル誘導体を8−ノネノールとクロスメタセシス反応させ、その後、酸または塩基で処理する。
【図24A】8−クロロオクタン−1−イルアセタートの合成を示す。ここで、1,10−ジアセトキシ−5−デセンを1,6−ジクロロ−3−ヘキセンとクロスメタセシス反応させ、8−クロロ−5−オクタン−1−イルアセタートを得る。これを還元して8−クロロオクタニルアセタートを得る。
【図24B】E,E−8,10−ドデカジエノールの択一的合成を示す。ここで、8−クロロオクタン−1−イルアセタートをトルエン中、トリエチルホスファイトで灌流し、8−ジエチルホスホネートオクタニルアセタートを生成し、8,10−ドデカジエノールに転化する。
【図25】1,6−ジブロモ−3−ヘキセンおよび1,10−ジアセトキシ−5−デセンのクロスメタセシス反応から得られる8−ブロモオクタノール(bromoocatanol)の合成を示す。
【図26】メドウウフォーム油の化学構造を示す。
【図27】メドウフォーム油および1−ドデセンのクロスメタセシス反応を伴う蚊産卵フェロモンの合成を示す。
【図28】11−ドコセンを生成する1−ドデセンのセルフメタセシスを示す。
【図29】メドウフォーム油および11−ドコセンのクロスメタセシス反応を伴う蚊産卵フェロモンの合成を示す。
【図30】メチル5−ヘキセノアートおよび11−ドコセンのクロスメタセシス反応を伴う蚊産卵フェロモンの合成を示す。
【図31】メチル5−ヘキセノアートおよび1−ドデセンのクロスメタセシス反応を伴う蚊産卵フェロモンの合成を示す。
【図32】メドウフォーム油および1−ドデセンのクロスメタセシス反応を伴う蚊産卵フェロモンの択一的合成を示す。
【図33】メドウフォーム油および11−ドコセンのクロスメタセシス反応を伴う蚊産卵フェロモンの択一的合成を示す。
【図34】メチル5−ヘキセノアートおよび11−ドコセンのクロスメタセシス反応を伴う蚊産卵フェロモンの択一的合成を示す。
【図35】メチル5−ヘキセノアートおよび1−ドデセンのクロスメタセシス反応を伴う蚊産卵フェロモンの択一的合成を示す。
【図36】5−ヘキセニルアセタートおよび1−ドデセンのクロスメタセシス反応を伴う蚊産卵フェロモンの合成を示す。
【図37】加硫 5−ヘキセニルアセタートおよび11−ドコセンのクロスメタセシス反応を伴う蚊産卵フェロモンの合成を示す。
【図38】5−ヘキセナールジエチルアセタールおよび11−ドコセンのクロスメタセシス反応を伴う蚊産卵フェロモンの合成を示す。
【図39】5−ヘキセナールジエチルアセタールおよび1−ドデセンのクロスメタセシス反応を伴う蚊産卵フェロモンの合成を示す。
【図40】ビニルボレートピナコールエステルと9−デセナールジエチルアセタールのクロスメタセシス反応を伴うE−9,Z−11−ヘキサデカジエナールの好ましい合成を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、フェロモンおよびメタセシス反応を使うその成分の合成法を提供することである。
本発明の別の目的は、桃枝穿孔性動物フェロモンを製造する方法を改良することである。
さらに、本発明の別の目的は、蚊産卵誘引物質フェロモンの改良した合成法を提供することである。
さらに、本発明の別の目的は、ペカン堅果ケースベアラーの改良した合成法を提供することである。
さらに、本発明の別の目的は、オメガハロアルカノールおよびオメガハロアルカニルアセタートの改良した合成法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
図1A、1B、1C、1D(纏めて図1)は、Pederson およびGrubbsの米国特許第5916983に開示された5−デセニルアセタートを製造する最近の方法を示す。この合成では、アリル塩化マグネシウムおよびブロモクロロプロパンをカップリングすることにより1−クロロヘキセンを製造する。収率40%の、トランス:シス異性体比60:40の1−クロロ−5−デセンを、1−クロロヘキセンおよび1−ヘキセンのオレフィンメタセシスにより得た。この方法において使用したメタセシス触媒は、図2Aに示す、触媒823の、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジクロロルテニウム(II)ベンジリデン、[(Pcy3)2Cl2]Ru=CHPhである。これらの反応は、32℃から62℃で行われる。室温ではこの反応は遅く、転化率はより低い。27%の収率が32℃の実施で得られる。1−クロロ−5−デセンは5−デセニルアセタートに前者を酢酸中で酢酸カリウムとともに加熱することにより、転化される。得られたトランス:シス比60:40の5−デセニルアセタートは酢酸中でベンゼンスルフィン酸ナトリウム塩によりトランス:シス比80:20の5−デセニルアセタートに異性化される。
【0019】
5−デセニルアセタートの低い25%から27%の全収率は、メチリデンルテニウム触媒中間体の形成のために十分である。これは、熱力学的に安定なアルキリデンであり、出発材料の生成物への高転化を回避し、高トランス異性体生成物の形成を回避する。
この方法は、典型的に、18から25日を要して、12kgの5−デセニルアセタートを製造する。このシス:トランス比は80:20であり、標準サイズの装置を使用する(多重反応させる必要がある。その理由は収率が低く、適正な操作のために溶媒で反応の多くを希釈する必要があるからである。)。特に、反応を終わらせて1−クロロ−5−デセンを蒸留するのに5日は典型的に必要である。3つのメタセシスが各1日で操作され、触媒を除去するのにさらに2日かかる。そして、蒸留に2日かかる。1−クロロ−5−デセンを製造するのに小計で7日必要である。トランス:シス比60:40の5−デセニルアセタートのその後の製造には2つから3つのランが各36から48時間を要し、小計4から6日間で98%の転化率を達成する。2つのバッチのそれぞれに対して24時間が必要であり、5−デセニルアセタートの異性化を、トランス:シス比80:20で、小計2日で達成する。18から25日の全期間は、最終蒸留の期間を含んでいない。
【0020】
20%のシス−5−デセニルアセタートは、ルアーおよび交尾混乱の用途においてPTBフェロモンの効力に影響しないが、低収率および完了まで長期間を要するために、この方法は高価になる。多くの反応段階の観点から、多量の出発材料および試薬が必要になり、反応時間が長いこと、全体の収率が低いことから5−デセニルアセタートの製造法は未だ十分ではない。
したがって、本発明は、経済的で効率的な方法における種々の付加価値のある生成物メタセシスに対するメタセシス合成に関する。クロスメタセシス反応の殆どは、ニート(neat)ランであり、未反応の出発材料は次のクロスメタセシス反応にリサイクルされる。
本発明は、2つの異なるまたは類似の末端オレフィン(すなわちアルファオレフィン)をクロスメタセシス反応し、新しい内部オレフィンを製造し、末端オレフィンおよび内部オレフィンをクロスメタセシスし、新規な内部オレフィンを生成し、末端オレフィンおよび環状オレフィンをクロスメタセシスし、新規な末端および/または内部オレフィンを製造し、2つの類似のまたは異なる内部オレフィンをクロスメタセシスし、新規な内部オレフィン生成物を製造可能にする。
【0021】
本発明により容易化された最も新規なメタセシス生成物の幾つかは、昆虫性誘引フェロモンまたはその成分を含む。例えば、桃枝穿孔性動物フェロモンの主成分であるE−5−デセニルアセタート;産卵誘引フェロモンである(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリド;ペカン堅果ケースベアラー蛾フェロモンであるE9,Z11−ヘキサデカジエニル;ダイヤモンドバック(DBM:Diamondback Moth)フェロモンの類似物である9−テトラデセニルフォルメート;オムニボラスリーフローラ(OLR:Omnivorous Leafroller)フェロモンである11−テトラデセニルアセタート;トマトピンウォーム(TPW:Tomato Pinworm)フェロモンの主成分であるE−4−トリデセニルアセタート;カドリング蛾(CM:Codling Moth)フェロモンであるE,E−8,10−ドデカジエノールである。この合成は好ましくは、幾つかの反応段階を必要とし、一般的に市販される出発材料を使用し、反応時間は比較的短い。これらの合成は収率が高く、高価な高性能な装置を必要としない。また、本発明は、アルファ−オメガ−ジアセトキシアルケンおよびアルファ−オメガ−ジハライドをクロスメタセシス反応することによりオメガ−ハロアルケノールを製造する高価でない経路を提供する。これらは伝統的な水素化法により容易にオメガ−ハロアルカノールに転化する。
【0022】
これらの反応に好ましいメタセシス触媒は、図2、3、4、または5にあるI−IVメタセシス触媒から選択される。さらに好ましいメタセシス触媒は、表I−IVにある。最も好ましい態様では、触媒848、785、807、826、823、および801である。
本発明は特に、E−5−デセニルアセタートの改良した合成法を提供する。これは以前に方法にあった多くの問題を解消する。好ましい態様では、改良点は、1)出発材料の生成物へのより高い転化率を得る方法(40%から75%);2)60:40から80:20と84:16のトランス:シス比における増加;3)たった2つの反応段階;4)1週間より短い製造時間、である。
一態様では、これらの改良点の幾つかは、1−ヘキセンを5−デセンにセルフメタセシスし、5−デセンと5−ヘキセニルアセタートをクロスメタセシスすることにより達成される。両反応は、同じメタセシス触媒の存在下で行われる。1−ヘキセンのセルフメタセシスは真空下で行われ、エチレンサイド生成物は溶液から泡立つ。1−ヘキセンの除去は、メチリデン触媒中間体の形成を回避し、収率を純粋な5−デセニルアセタート98%以上に増加させる。トランス:シス比は、従来は60:40であるのに対して、本発明では80:20から84:16である。
【0023】
本発明は、イエカ属の病原体媒介蚊に対する蚊産卵誘引物質フェロモンである(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリドの、比較的高価でない合成法を提供する。蚊産卵誘引物質フェロモンの好ましい合成法は、メドウフォーム(meadowfoam)油、ヘキセン酸誘導体、ヘキセナール誘導体、またはヘキセノール誘導体と、1−ドデセンまたは11−ドコセン等の市販の材料のクロスメタセシス、および二重結合の酸化およびラクトン化を含む。幾つかの態様では、メドウフォーム油が好ましい出発材料である。その理由は、この油の95%がZ−5−カルボキシレート部位を含み、これは市販されており、本発明のメタセシス反応を介して容易に(5R,6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノリドに転化されるからである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(好ましい態様の詳細な説明)
本発明は、オレフィンアルコール、アセタート、アルデヒド、カルボン酸、またはそれらの誘導体等の付加価値のある種々のメタセシス生成物の、経済的で効率的なメタセシス合成を提供する。クロスメタセシス反応の殆どは、希釈なしで進行し、未反応の出発材料は、次のクロスメタセシス反応に再使用される。本発明は、2つの異なるまたは類似の末端オレフィン(すなわちアルファオレフィン)をクロスメタセシスし、新しい内部オレフィンを製造し、末端オレフィンおよび内部オレフィンをクロスメタセシスし、新規な内部オレフィンを生成し、末端オレフィンおよび環状オレフィンをクロスメタセシスし、新規な末端および/または内部オレフィンを製造し、2つの類似のまたは異なる内部オレフィンをクロスメタセシスし、新規な内部オレフィン生成物を製造可能にする。
【0025】
好ましい一般的な実施態様において、型R−(CH=CH)k(CH2)(CHX)g(CH2)m−Hの反応剤を、自己メタセシスされることができ、同じ型の異なる反応剤でクロスメタトシスされるか、型QCH(CH2)rMの反応剤でクロスメタセシスされることができる。自己メタセシスのとき、この反応剤は、型(CH=CH)k[(CH2)n(CHX)g(CH2)m−H]の産物、及び型CH2=CH2及びRCH=CHRの副産物を形成する。もしこれらの副産物が不安定なら、それらは真空圧下又は高温下で容易に除去することができる。汎用的な実施態様において、Xは、水素(H)、アルコール(OH)、アセテート(AcO、カルボン酸塩エステル(CO2Ra)から選択することができ、ここでは、Raはアルキル、アリール、又は金属、カルボン酸(CO2H)、アルデヒド、ハロゲン化物(Cl,Br,I)、トシレート(TsO)、又はメシレート(MesO)、又はその誘導体である。より好ましい実施態様において、Xは、水素、アルコール、アセテート、トリフルオロアセテート、メチルカルボキシレート、エチルカルボキシレート、カルボン酸塩ナトリウム、塩化物、ホウ化物、ヨウ化物、又はメシレートである。
【0026】
一般的な実施態様において、g、k、m及びnは、0〜20以下の整数からそれぞれ選択される。より好ましい実施態様において、gは、0〜5以下の整数から選択される。もっとも好ましい実施態様において、gは、0、1又は2と等しい。より好ましい実施態様において、kは、1〜5の整数から選択される。もっとも好ましい実施態様において、kは1に等しい。より好ましい実施態様において、mは、0〜15以下の整数から選択される。もっとも好ましい実施態様において、mは、0、1又は2と等しい。より好ましい実施態様において、nは、0〜10以下の整数から選択される。もっとも好ましい実施態様において、nは、0、1、3、4、5、7又は10と等しい。一般的な実施態様において、Rは、水素、アルキル、アリール又はその誘導体から選択される。より好ましい実施態様において、Rは水素、C1−C20アルキル、ジイソプロピルホウ酸塩エステル、ピコナールホウ酸塩エステル、カテコールホウ酸塩エステル、ネオペンチルグリコールホウ酸塩エステル、ジアルキル燐酸塩エステル、トリアルキルシランエステル、又はトリアルキルシロキサンエステルから選択される。もっとも好ましい実施態様において、R−(CH=CH)k(CH2)(CHX)g(CH2)m−Hは、5−ヘキセニルアセテート、5−ヘキセニルアルコール、5−デセン、1−へキセン、1−ブテン、1−ドデセン、11−ドコセン、1,10−ジアセトキシ−5−デセン、3−へキセン、11−エイコセニルアセテート、11−エイコセノール、11−エイコサン酸、5−エイコセセニルアセテート、5−エイコセノール、5−エイコサン酸、10−ウンデセン酸、10−ウンデセノール、10−ウンデセノエートエステル、ビニルホウ酸塩ピコナールエステル、ビニルジエチル燐酸塩、アリルジエチル燐酸塩、ビニルトリエトキシシラン、又はアリルトリエトキシシランを挙げられる。
【0027】
R−(CH=CH)k(CH2)(CHX)g(CH2)m−Hの型QCH(CH2)rMの反応剤とのクロスメタセシスは、産物H(CH2)m(CHX)g(CH2)n(CH=CH)p(CH2)rM又はその誘導体、及びCH2Zの型の副産物を形成する。好ましい実施態様において、Qは、CH2又はCH(CH2)rMから選択され、rは0〜20以下の整数から選択される。Mは、アルコール、アセテート、カルボン酸エステル、カルボン酸、アルデヒド、ハロゲン化物、水素、又はその誘導体から選択される。Zは、CH2、又はCH(CH2)n(CHX)g(CH2)mから選択される。pは0〜m及びnの合計と等しいかそれ未満の整数から選択され、副産物が反応混合物の外へ蒸発するように、十分高温及び/又は十分低圧の条件下で行うことができる。
【0028】
以下に詳細に述べる好ましいメタセシス触媒、及び自己メタセシス反応及びクロスメタセシス反応を使用する各合成ルートは両反応に対して同様の触媒を使用する。
【0029】
構造[PL3L‘AA’]Ru=CRbRcのメタセシス触媒が一般に好ましい。ここで、L及びL’は中性電子(中性子)ドナーリガンドであり、Lは、CRd(Ri)2及びシクロアルキル又はアルキル置換シクロアルキルから選択され、ここでは、炭素原子の数は、環において、4〜12であり、Rd及びRiは、それぞれ水素、及び具体的な例としてシクロヘニル、シクロペンチル、イソプロピル、フェニル、又はその誘導体を含むアルキルから選択される。
【0030】
L’は、図2X及び2Yに示す構造からのいずれの型(L)3から選択することができ、ここでRs及びRvは、アルキル、アリール、又は置換アリール、好ましくは置換フェニル、及びもっとも好ましくはメシチル(すなわち、2,4,6トリメチルフェニル)から無関係に選択され、ここでは、Rt及びRvは、好ましくはアルキル又はアリール、又はシクロアルキル、もっとも好ましくは、両方水素、t−ブチル、又はフェニル(これらイミダゾールリガンドは、4,5−ジヒドロ−イミダゾール−2−イリジンリガンドとして言及される。)
【0031】
A及びA’は、ハロゲン、水素、C1−C20アルキル、アリール、C1−C20アルコキシド、アリールオキサイド、C2−C20アルコキシカルボニル、アリールカルボキシレ−ト、C1−C20カルボキシレ−ト、アリールスルホニル、C1−C20アルキルスルフィニルから無関係に選択されるアニオンリガンドであり、各リガンドは、選択的にC1−C5アルキル、ハロゲン、C1−C5アルコキシ、又はハロゲン、C1−C5アルキル又はC1−C5アルコキシで選択的に置換するフェニル基で置換することができる。
Rb及びRcは、水素、C1−C20アルキル、アリール、C1−C20カルボキシレ−ト、C1−C20アルコキシ、アリロキシ、C1−C20アルコキシカルボニル、C1−C20アルキルチオ、C1−C20アルキルスルホニル及びC1−C20アルキルスルフィニル、C1−C5アルキル、ハロゲン、C1−C5アルコキシ、又はハロゲン、C1−C5アルキル又はC1−C5アルコキシで選択的に置換したフェニル基で選択的に置換したRb及びRcのそれぞれから無関係に選択される。
【0032】
型[(PL3)2AA’]Ru=CRbRcのこれらの触媒のサブセットは、Grubbs等の国際出願No.PCT/US95/09655に概して記述されている。これらの触媒は一般にここでは、Gribbsの触媒という。
【0033】
クラスIメタセシス触媒などこのサブセットのいくつかの触媒は、好ましい。一般的なクラスIメタセシス触媒を図2に示す。図2に関して、Rb及びRcは、上述したパラグラフに明らかにされたように同じである。限定されないが、好ましいクラスIメタセシス触媒は、触媒823、739、801.716、849、765、791、707、815、731、834及び751を含む。これらの触媒は、それぞれ、図2A〜2L(集合的に図2)に示される。便宜上、具体的な触媒は、ここでは、それらの分子量によって言及され、いくつかはまとめられたものあり、図において以下の構造に示される。それらは、各分子量、CAS#、及び図2Mにおける化学名でFig#によって表にもされる。これらの触媒の多くは、入手可能であるが、一般に熱安定性ではなく、それは一般に、トリ置換オレフィンを合成するのに使用することができない。
【0034】
図2Aに関して、触媒823及びそのバリエーションが特に好ましい。触媒823は、化学式[(Pcy3)2Cl2]Ru=CHphを有し、ここで、Cyはシクロヘキシル基を表し、Phはフェニル基を表す。触媒823の合成は、米国特許番号5,916,983号に記載されている。触媒823は、95%以上の純度でBoulder Scientific of Boulder, Coloradoから入手可能である。ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジクロロルテニウム(II)3−メチルー1,2−ブタジエン、触媒716は、それぞれ図2C及び図2Dに示される。触媒801及び716は、Strem of Newburyport,MAから入手可能であり、好ましいメタセシス触媒である。
【0035】
一般的なクラスIIメタセシス触媒を図3に示す。好ましいクラスIIメタセシス触媒は、限定されないが、触媒877、835,855、813、903及び881を含む。これらの触媒は、それぞれ図3A〜3Fに示される(集合的に図3)。それらは、各分子量、CAS#、及び図3Gにおける化学名でFig#によって表にもされる。これらの触媒は、クラスI触媒よりもっと熱安定的でより活性な傾向があるが、クラスII触媒は、入手可能でなく、容易に合成されない。加えて、クラスII触媒は、トリ置換オレフィンを合成することができない。
【0036】
一般的なクラスIIIメタセシス触媒を、図4に示す。ここで、Arは、アリール基を示し、Rcは、以前に定義した。好ましいクラスIIIメタセシス触媒は、限定されないが、触媒846、805,824、783、873、831、814、773、839、797、859及び817を含む。これらの触媒は、それぞれ図4A〜4Fに示される(集合的に図4)。それらは、各分子量、CAS#、及び図4Mにおける化学名でFig#によって表にもされる。クラスIII触媒は、クラスI触媒及びクラスII触媒よりもっと熱安定的でより活性である。クラスIII触媒は、入手可能でなく、容易に合成されない。しかしながら、クラスI触媒及びクラスII触媒と異なり、クラスIII触媒は、トリ置換オレフィンを合成することに使用することができるが、一般にテトラ置換オレフィンを合成することができない。
【0037】
一般的にクラスIVメタセシス触媒を図5に示す。ここで、Arは、アリール基を表し、Rcは、以前に定義した。好ましいクラスIVメタセシス触媒は、限定されないが、触媒848、807,826、785、875、833、816、775、841、799、861及び819を含む。これらの触媒は、それぞれ図5A〜5Fに示される(集合的に図5)。それらは、それらの分子量、CAS#、及び図5Mにおける化学名でFig#によって表にもされる。クラスIV触媒は、クラスI〜III触媒よりもっと熱安定的でより活性である。クラスIV触媒を使用する反応は、およそ同じ収率を得るのに同じ反応に必要とされるクラスI触媒、特に823又は801の量と比較して、約8〜10倍弱の触媒、特に848が必要である。さらに、クラスIV触媒、特に848は、1時間より少なくて反応を完了する一方、クラスI触媒は同じ反応を約19〜24時間で完了する。上で特定したクラスIV触媒のいくつかは、Stremから入手可能であるが、Scholl等によって述べられたように合成することができる(1999)。クラスIV触媒は、特に好ましい。なぜなら、そららは、トリ置換オレフィンと同様にテトラ置換オレフィンを合成することに使用することができるからである。
【0038】
これら触媒の式のいくつかは、L’がCRd(Ri)2、シクロアルキル、又はアルキル置換シクロアルキルから選択され、ここでは、環において炭素原子の数は、4〜12、又は環状(NRw)[(CHh)Rt][(CHh)(Rv)](NRt)C、すなわち、hは0〜9であり、Rw、Rs、Rt及びRvは、水素、アリール及びアルキルから選択され、Rd及びRiは上述した。L’の最も好ましい実施態様は、図2X、2Yに示す構造であり、ここでは、Rw及びRsは、2,4,6−トリメチルフェニル、イソプロピル、又はt−ブチルから選択される。
【0039】
図5Aに示す触媒848など、1,3−ジメシチル−4、5−ジヒドロ−イミダゾール−2−イリジン−置換ルテニウム系錯体のこのファミリーが好ましい。触媒848の合成は、Organic letters,”Synthesisi and Actiity of New Generation of Ruthenium−Based Olefin Metathesis Catalysis Coordinated with 1,3 −Dimesityl−4,5−dihydro−imidazol^2−ylidene Ligands “ Scholl等(1999)に記述されている。触媒848,826、及び785は、Scholl等に記述されたように合成することができる。
【0040】
触媒848に2当量のエチルビニルエーテル加え、室温で約3時間撹拌し、沈殿を分離して、触媒816及び794を合成する。触媒816及び794は明確な温度プロファイルにおいてメタセシス反応を開始させるので、非常に興味深い特性を有している。クラスIとクラスIIの触媒を含む反応混合物は、それらが反応を開始するのを防止するためには、−40〜−70℃の範囲等の極低温に保たれなければならない。クラスIIIの大部分及びクラスIVの幾つかの触媒は、反応を防止するには、比較的低い温度に保たれなければならない。しかしながら、触媒816及び794を含有する反応混合物は、約35℃の比較的高い開始温度を有するので、反応が始まる前に総ての反応物質を完全に混合することができ、反応をより良く制御することができる。
【0041】
「定義の明確な触媒」等の他のメタセシス触媒を代わりに使用することができる。かかる触媒としては、特に制限は無く、GrubbsらのTetrahedron(1998), 54, 4413−4450に記載のシュロック(Schrock)のモリブデンメタセシス触媒、即ち2,6−ジイソプロピルフェニルイミド ネオフィリディーン(neophylidene)モリブデン(VI)ビス(ヘキサフルオロ−t−ブトキシド)、及びCouturier,J.LらのAngew. Chem. Int. Ed. Engl. (1992)31, 628に記載のバセット(Basset)のタングステンメタセシス触媒等が挙げられる。シュロック触媒はストレム(Strem)(ニューベリーポート、MA)から入手することができるが、PTBフェロモンの大規模生産には高価過ぎる。バセット触媒は、現在市販されておらず、空気、水、及び種々の官能基に対して敏感であり、且つ合成するのに費用がかかる。
【0042】
「定義の不明確な触媒」等の他のメタセシス触媒も使用することができるが、それらの活性は共触媒に依存し、該共触媒は典型的にはテトラアルキルスズ又はテトラアルキル鉛化合物等の重金属であり、廃棄物の処理問題をもたらす。これらの不明確な触媒は、活性化するのに強ルイス酸の存在も必要とし、該強ルイス酸は望ましくない二重結合の移動を引き起こし得る。
【0043】
図6は、好適な他の類似物質と好適なクラスI〜IV又は他のメタセシス触媒とを使用できる一般的なクロスメタセシス反応を示している。図6に関して、B、T、U、V、及びDは、水素、アルキルアリール、ヒドロキシ、アセテート、保護されたアルコール、ハライド、メシレート、トシレート等から選択され、x、e、y、及びzは0〜10から選択され、t1は2〜22から選択される。スキームAにおいて、2つの類似した末端オレフィンを自己メタセシス反応させると内部オレフィンが生じる。具体例としては、5−ヘキセニルアセテート(T=アセテート及びx=4)の1,10−ジアセトキシ−5−デセンへの自己メタセシス、及び4−ペンチルクロライド(T=クロライドでx=3)の1,8−ジクロロ−4−オクテンへの自己メタセシスが挙げられる。
【0044】
スキームBでは、内部オレフィンは、それ自身とクロスメタセシス反応して、2つの新規な内部オレフィンを生じる。具体例は、1,6−ジクロロ−3−ヘキセン(V=Cl及びy=1)及び3−ヘキセン(U=CH3及びz=1)を生じる1−クロロ−3−ヘキセン(U=CH3、V=Cl、y=1及びz=1)のクロスメタセシスである。
【0045】
スキームCでは、2つの異なる末端オレフィンがクロスメタセシス反応して、新規の内部オレフィンを生じる。具体例は、ヘキセニルボロエートピナコールエステル(T=Ac、x=4、D=ボレートピナコールステル及びe=0)を生じるヘキセニルアセテート(T=Ac及びx=4)とビニルボレートピナコールエステル(D=ボレートピナコールエステルでe=0)とのクロスメタセシスである。
【0046】
スキームDでは、末端オレフィンと内部オレフィンとがクロスメタセシス反応して、新規な内部オレフィンを生じる。具体例は、ヘキセニルボレートピナコールエステル(T=Ac、x=4、D=ボレートピナコールエステル及びe=0)を生じる1,10−ジアセトキシ−5−デセン(T=Ac、x=4)とビニルボレートピナコールエステル(D=ボレートピナコールエステルでe=0)とのクロスメタセシスである。
【0047】
スキームEでは、2つの異なる内部オレフィンがクロスメタセシス反応して、新規な内部オレフィンを生じる。具体例は、8−クロロ−5−オクテニルアセテート(V=Cl、y=1、T=Ac、x=4)を生じる1,6−ジクロロ−3−ヘキセン(V=Cl、y=1)と1,10−ジアセトキシ−5−デセン(T=Ac、x=4)とのクロスメタセシスである。
【0048】
スキームF及びGでは、クロスメタセシス生成物が通常の水素化条件下で水素化され、対応する飽和アルキル生成物が生じる。具体例としては、8−クロロ−5−オクテニルアセテート(V=Cl、y=1、T=Ac、x=4)をオメガ−クロロオクタニルアセテート(V=Cl、T=Ac、t1=8)にすること、及び10−ブロモ−5−デセニルアセテート(U=Br、y=4、T=Ac、x=4)をオメガ−ブロモデセニルアセテート(V=Br、T=Ac、t1=10)にすることが挙げられる。
【0049】
以下に反応、図、及び実施例を示すが、上記のタイプのメタセシス合成に対する例示を目的とするだけのものであり、本発明の範囲を限定するものとして考慮されるべきものではない。
【0050】
図7に、図6に示す反応に関する種々の好適な出発物質及びメタセシス生成物を表す表Vを示す。
【0051】
図8に、図6に示す反応に関する追加の好適な出発物質及びメタセシス生成物を表す表VIを示す。図8に関して、アセテート、TMS、THP、及びEVE保護基が好ましく、ハロ基は、好ましくはフルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、メシル、トシル等である。
【0052】
図9A及び9B(まとめて図9)は、5−デセニルアセテートの改善された反応を示す。特に図9は、触媒823の存在下、1−ヘキセンの自己メタセシス反応が5−デセンを形成することを示す。エチレンが形成されるにつれ該エチレンが反応系から取り除かれるので、該反応は5−デセンの形成に有利に働く。図9Bは、触媒823の存在下且つ真空下での、5−デセンと5−ヘキセニルアセテート(5−ヘキセン−1−イル アセテート)とのクロスメタセシス反応を示す。真空下で反応を実施すると1−ヘキセンが取り除かれ、結果として5−ヘキセニルアセテートの5−デセニルアセテートへの転化率が高くなり、84:16のトランス:シス比の異性体生成物を生じる。次の実施例は、PTBフェロモンの合成を具体的に示したものであり、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきものではない。
【実施例】
【0053】
(実施例1)
5−デセンの合成:1−ヘキセンの自己メタセシス
図9Aを参照して、乾燥した2Lの丸底フラスコに、225g(2.67mol)の1−ヘキセン(95%以上の純度のものがアモコから入手できる)と磁気撹拌子とを加えた。該フラスコに10分間窒素を散布した。触媒823(2.2g, 2.7mmol)を加え、反応系を室温で18時間撹拌した。反応系からエチレンガスが放出されるのが観察された。200gのJ.T.Baker Silica Gel 60−200メッシュを1.5インチ×22インチのクロマトグラフィーカラムにつめたものに反応系を通してろ過し、使用した触媒を除去した。該カラムを、300mLの石油エーテル(沸点38℃〜55℃)ですすいだ。減圧下で前記溶媒と未反応の1−ヘキセンを除去し、115g(0.81mol)の5−デセンが生成した。この生成物を、更に精製することなく、次の反応に用いた。
【0054】
5−デセニルアセテートの合成:5−デセンと5−ヘキセニルアセテートとのクロスメタセシス
図9Bを参照して、乾燥した1Lの丸底フラスコに、115g(0.81mol)の5−デセンと、22.5g(0.158mol)の5−ヘキセニルアセテート(98%以上の純度のものが、酢酸5−ヘキセニルエステルの名でTCIアメリカから入手できる)と、磁気撹拌子とを加えた。該フラスコに5分間窒素を散布し、触媒823を1.33g(1.6mmol)加え、該フラスコを8mmHgの真空下で16時間管理した。16時間後、真空ポンプを外し、反応系を更に12時間窒素雰囲気下で撹拌した。GC分析は、87%の5−デセニルアセテートと、12%の1,10−ジアセトキシ−5−デセンと、1%未満の5−ヘキセニルアセテーとを示した。
【0055】
上記反応混合物の約半分を500gのJ.T.Baker Silica Gelを1.5インチ×22インチのクロマトグラフィーカラムにつめたものに通してろ過し、5−デセニルアセテートの精製されたサンプルを得た。該カラムを、1Lの石油エーテルですすぎ、引き続き石油エーテル中で10%のジエチルエーテル溶液1Lですすいだ。200mLの区分を収集した。該データを以下にまとめる。
【0056】
GCの結果
区分番号 5−デセン 5−デセニルアセテート 1,10−ジアセトキシ−5−デセン1 0 0 0
2 100 0 0
3 91 9 0
4 0 100 0
5 0 100 0
6 0 100 0
7 0 100 0
8 0 0 0
9 0 0 100
10 0 0 100
11 0 0 0
【0057】
区分4、5、6、及び7を合わせ、減圧下で濃縮すると、99.4%の化学純度で且つ81:19のトランス:シス異性体比のものが10.6g(53.5mmol)生成した。5−デセニルアセテートのこのサンプルは、オレゴンのベンドのConsep, Inc.から入手できる5−デセニルアセテートのサンプルと実質的に区別できなかった。E−5−デセニルアセテート及びZ−5−デセニルアセテートは、それぞれ500mg当り$54.60($109.20/g)及び500mg当り$55.00($110.00/g)でシグマ(セントルイス、MO)から市販されている。
【0058】
(実施例2)
5−デセンの合成:1−ヘキセンの自己メタセシス
再び図9Aを参照して、空気入りーバーヘッド撹拌機(−10℃の循環冷却液を伴った高効率還流コンデンサー)に連結された汚れの無い72Lの丸底フラスコに、48L(384mol)の1−ヘキセン(99%以上の純度のものがアモコから入手でき、更に精製することなく使用できる)を加えた。撹拌を開始し、該溶液に窒素を表面下から15分間散布した。触媒823(10g, 0.018mol)を加え、窒素雰囲気下で18〜24時間撹拌した。エチレンが、前記高効率コンデンサーを通して排気ダクトの中に排出された。
【0059】
24時間後、GC分析は、1−ヘキセンから5−デセンへの転化率が60〜70%であることを示した。この反応混合物を2.5Kgのシリカゲル(Fisher 170−400メッシュ、60Å)に通してろ過し、使用した触媒を除去した。
【0060】
当業者なら、中間体化合物を精製することなく前記物質を次の反応に送ることができることが分かるであろう。しかしながら、精製を望む場合は、中間体を分離することができ、例えば、前記5−デセンを蒸留又は別の方法で精製することができる。
【0061】
5−デセニルアセテートの合成:5−デセンと5−ヘキセニルアセテートとのクロスメタセシス
再び図9Bを参照して、汚れの無い72Lの丸底フラスコに60Lの5−デセン(60%〜70%の純度)を仕込み、空気入りーバーヘッド撹拌機と真空蒸留設備に連結した。該真空蒸留設備は、3´´×36´´記号の蒸留カラムと高効率熱交換機と、22Lの受けフラスコに通じる1´´の取り出しヘッドとを備える。2つの真空トラップを、22Lの受けフラスコの後と高容量真空ポンプの前とに挿入した。
【0062】
触媒823(100g, 0.122mol)を上記丸底フラスコに加え、撹拌を開始し、真空にし、加熱マンテルを設定2にした。反応混合物の温度を45℃以下に維持し、真空圧を調節して5−デセンが72Lのフラスコから蒸発するのを防いだ。5−ヘキセニルアセテート(純度99%、12L, 76mol)を5時間以上加えた。添加終了の後、加熱マンテルを切り、反応系を10mmHgの真空下で撹拌した。12時間後、真空トラップが空になり、ドライアイスで再びパックし、再び真空にした。
【0063】
当業者なら、上記メタセシス反応を、反応系を引っ張る真空度に応じて、約25℃〜60℃の間で実施するのが好ましく、約10mmHgで約25℃〜35℃の間で実施するのが最も好ましいことが分かるであろう。
【0064】
前記メタセシス反応のGC分析は、0.1%の1−ヘキセン、64.9%の5−デセン、0.08%の5−ヘキセニルアセテート、30.8%の5−デセニルアセテート(82%のトランスと18%のシスの異性体)、及び4.1%の1,10−ジアセトキシ−5−デセンを示す。
【0065】
54〜83%の範囲の収率が、12Kgの規模で得られた。該収率は、5−デセンのヘキセニルアセテートに対する比を変えることで操作できる。1−ヘキセンを強真空下で除去するので、5−デセンの比の増加が5−デセニルアセテートの収率を増加させる。しかしながら、この増加した比は、処理能力を減少させ、即ち、実施により製造される5−デセニルアセテートのKg数を減少させる。12Kgスケールでは、75:25〜50:50の比の5−デセン:1−ヘキセンが、99%の5−ヘキセニルアセテートを5−デセニルアセテート及び1,10−ジアセトキシ−5−デセンに転換するのに作用するだろう。
【0066】
真空下で反応を実施することにより、出発物質の生成物への転化率が高まることは予期せぬことであった。真空の適用はエチレンを除去して転化率を約75%まで高める目的で試みたにもかからず、1−ヘキセンの除去で、5−ヘキセニルアセテートの転化率が99%以上になったのは全く予想外であった。
【0067】
好ましい実施態様では、同規模の材料と同タイプの装置で、合成ステップが4から2に減少し、最終生成物を合成するのに要する合計時間が20日以上から2日に減少した。このことは、10の要因により時間が短縮することを示している。実施例2の手法を用いれば、当業者は、83:17のトランス:シス比の5−デセニルアセテート12Kgを48時間以下で製造することができる。この製造時間には、メタセシス反応と触媒の除去が含まれるが、最後の蒸留は含まれない。
【0068】
より都合の良い方法であることに加えて、本方法は、5−デセニルアセテートの製造コストも減少させる。例えば、本方法は、好適なトランス:シス比の5−デセニルアセテートを、概ねグラム当り$0.40未満のコストで製造できることを明らかにした。廃溶媒及び廃棄生成物が無いことが、溶媒の購入及び廃棄物の処分コストを含めた反応のコストを実質的に低減する。更なる利点は、1−ヘキセン及び5−ヘキセニルアセテート等の出発物質が市販されていることである。
【0069】
触媒除去手法
前記メタセシス触媒を、図10Aに示すトリスヒドロキシメチルフォスフィン(THMP)等の水溶性フォスフィンにより除去する。THMPが好ましく、該THMPはJ.W.EllisらのInorg. Chem. (1992) 31, 3026及びN.J.GoodwinらのChem. Commun. (1996) 1551に記載のようにして、テトラキスヒドロキシメチルフォスフォニウムクロライド(TKC)から製造することができる。TKCは、80%の水溶液である。より良い手法は、100mmolのテトラキスヒドロキシメチルフォスフォニウムクロライド(CytecからのPyroset TKCとしても知られている)を100mLのイソプロパノールに加え、窒素で10分間脱気し、100mmolの水酸化カリウムのペレットを加え、15分間又は該水酸化カリウムが溶解するまで撹拌することである。生成物は、更に精製することなく使用でき、又は必要となるまで該生成物を冷蔵庫中で撹拌することができる。
【0070】
この手法は、一般にポリヒドロキシアルキルフォスフィン又はポリヒドロキシアリールフォスフィンを対応するポリヒドロキシアルキル−ヒドロキシメチルフォスフォニウムハライド塩又はポリヒドロキシアリール−ヒドロキシメチルフォスフォニウムハライド塩と、等モル量の塩基、好ましくは水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムとから製造するのに使用できる。塩基が最初にホルムアルデヒドの形でヒドロキシメチルを除去して上記フォスフィンを生成させるので、塩基とヒドロキシメチルフォスフォニウム誘導体とのモル比が実質的に等しいことが、所望のポリヒドロキシアルキルフォスフィン又はポリヒドロキシアリールフォスフィンを生成させるのに不可欠である。如何なる余剰の塩基もフォスフィンと反応してポリヒドロキシアルキルフォスフィンオキサイド又はポリヒドロキシアリールフォスフィンオキサイドを生じ、それらはメタセシス触媒に対して不活性であり、反応混合物からメタセシス触媒を除去しないであろう。
【0071】
図10Bは、他の好適な非環式水溶性フォスフィンの一般構造式を示し、式中、qは0又は1であり、Raa、Rbb、及びRccはH;CH3;CH2OH;CH2OCH3;CH2CH2OCH3;(CH2CH2O)xx(ここでxxは1から20である);アミン;カルボキシレート;スルフォネート等から選ばれる。図10Cは、4〜40の炭素原子と3〜20の酸素原子とを有する好適な環系の水溶性フォスフィンの一般構造式を示す。
【0072】
上記実施例2からのメタセシス反応混合物(約0.041molのメタセシス触媒を含む20L)を空気入りーバーヘッド撹拌機に連結された22Lのフラスコに加え、砂温度浴中に設置し、室温より高い温度、好ましくは約55℃に加熱した。THMP溶液を加え、反応系を勢い良く12〜24時間撹拌した。窒素を散布した水(2L)を加え、1時間勢い良く撹拌した。撹拌を止め、界面を分離した。明るいオレンジの水相を除去し、水を更に2L加え、30分間勢い良く撹拌した。再び界面を分離し、水相を除去した。この手法を、水相が無色になるまで繰り返したが、通常は3〜4回の洗浄である。有機相を1Lの4M HClで30分間(好ましくはpH<1で)洗浄し除去した。飽和炭酸水素ナトリウム水(1L)を加え、15分間(好ましくはPH>7で)勢い良く撹拌した。該水相を分離し、除去した。
【0073】
勢い良く撹拌した5−デセニルアセテート溶液に、400gの無水硫酸ナトリウムを加えた。2時間撹拌の後、400gの炭酸カリウムを加え、該フラスコを約55℃で10〜12時間撹拌した。
【0074】
12時間後、撹拌を止め、5−デセニルアセテート混合物をフェノール樹脂でライニングされた55ガロンのドラムに移し、IPA中1MのKOHで安定化し、0.1%溶液を製造した。ドラムがいっぱいになったら、船積みして精製のための真空蒸留会社に送った。
【0075】
この触媒除去手法又はシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて、5−デセン又は5−デセニルアセテート反応混合物からメタセシス触媒を、所望に従い小規模又は大規模工程で除去することができる。
【0076】
5−デセノールヘの転換
上記5−デセニルアセテートの一部を取り出し、次の手法手法に従い対応するアルコールに転換することができ、規模は必要に応じて調整することができる。15.0g(67mmol)の5−デセニルアセテート、35mLのメタノール及び34mLの2M水酸化ナトリウムを250mLの丸底フラスコに加える。この混合物を室温で3時間撹拌する。3時間後、加水分解が終了し、次に10mLのヘキサンを加え、溶液を10mLの1M HCl、10mLの飽和NaHCO3水及び10mLの塩水で洗浄する。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、ヘキサンを減圧下で除去し、9.4gの5−デセノールを生成させる。GC分析は、5−デセノールの異性体比が維持されていることを示す。
【0077】
最後に、PTBフェロモンを、9.4g(60.2mmol)の上記5−デセノールと79.5g(402mmol)の上記5−デセニルアセテートとを混合して合成し、83:17モルのアセテートとアルコールとの混合物を製造した。
【0078】
(実施例3)
触媒848を用いた5−デセニルアセテートの合成
図9Aを再び参照して、上記実施例1又は2に従い、或いは触媒848(図5A)を触媒823の代わりに用いて、5−デセンを製造した。
【0079】
図9Bを再び参照して、磁気撹拌子及び真空アダプターを含んだ100mLの丸底フラスコに、10g(70.4mmol)の5−ヘキセニルアセテート及び30g(214mmol)の5−デセンを加えた。反応系に窒素を5分間散布し、次に、20mg(0.023mmol)の触媒848を加え、10mmHgの真空下で45分間撹拌した。
【0080】
前記のようにしてメタセシス触媒を除去し、透明な液体を生成させた。GC分析は、5−ヘキセニルアセテートから5−デセニルアセテートへの転化率が78%であり、E:Zの異性体比が82:18であることを示した。
【0081】
(実施例4)
触媒848を用いた5−デセニルアセテートの合成
図11は、触媒848の存在下の5−デセニルアセテートの1段階合成で、5−デセニルアセテートが80:20〜84:16のトランス:シス比で生成することを示す。図6を参照して、磁気撹拌子及び還流コンデンサーを含んだ100mLの丸底フラスコに10g(70.4mmol)の5−ヘキセニルアセテート及び17g(210mmol)の1−ヘキセンを加えた。反応フラスコに窒素を5分間散布し、次に(触媒823に代えて)24mg(0.028mmol)の触媒848を加え、窒素雰囲気下、室温で6〜8時間撹拌した。反応が進むに従い、エチレンを含む揮発ガスがフードの中に排気された。
【0082】
上記メタセシス触媒を除去して、透明な液体を生成させた。模範的実施においては、GC分析は、5−ヘキセニルアセテートの5−デセニルアセテートへの転化率が65%であり、E:Zの異性体比が78:22であることを示した。
【0083】
この合成は、1−ヘキセンの5−デセンへの自己メタセシス反応を排除し、余剰の出発物資、大量の触媒、及び余剰の反応時間を伴う。更に、この反応は、真空にすることなく実施可能であり、実施例1又は2中の何れか1つの工程よりも時間が短く、それらの実施例の何れかで使用された触媒より100倍少ない触媒を使用する。
【0084】
代替の好適な実施態様は、1)アルコールが保護された5−ヘキセン−1−オール、又は限定されるものではないが、テトラヒドロピラニル(THP)エーテル、トリメチルシリル(TMS)エーテル、又はエチルビニルエーテル(EVE)エーテル、又はアセテート、又はベンゾエート及びプロピオネートエステル、又は当業者にとって容易に明らかである他の類似した誘導体等の前記アルコールが保護された5−ヘキセン−1−オールの誘導体を使うこと;2)メチリデンルテニウム錯体の形成を防止することが出発物質の生成物への転化率を高めるので、メチリデンルテニウム錯体の形成を防止する条件下(即ち、揮発性末端オレフィンが形成されるのに合わせて、該揮発性末端オレフィンを除去し)でクロスメタセシス反応を実行すること;及び3)反応において上記の条件を用いて高いトランス:シス異性体比を得ることを含む。
【0085】
例えば、5−ヘキセン酸又は5−ヘキセン酸のエステル(例えば、メチル5−ヘキセノエート、エチル5−ヘキセノエート等)を1−ヘキセンの代わりに用いることができるが、該合成は、カルボン酸又はエステルのアルコールへの還元を伴い、その後アセチル化される。これらの合成を、それぞれ図12及び13に示す。図12及び13を参照して、触媒823の存在下且つ真空下で、5−ヘキセン酸又は5−ヘキセノエートが5−デセンと反応して、それぞれ5−デセン酸又は5−デセノエートが生成する。生成した5−デセン酸又は5−デセノエートを還元及びアセチル化すると5−デセニルアセテートが生成する。更に、5−デセン酸の塩を再結晶化するとトランス異性体が増加してトランス−5−デセン酸が90%以上になり、次に還元及びアセチル化するとトランス−5−デセニルアセテートが90%以上になるので、5−デセン酸を合成することは有益である。
【0086】
図14は、5−デセニルアセタートの他の合成方法を示す。この方法は、1,10−ジアセトキシ−5−デセンと5−デセンのクロスメタセシスを伴う。末端オレフィンが存在しない(すなわち、1−ヘキセンおよび5−ヘキセニルアセタートである)場合、反応は実施例1および2で説明した反応と同じ転換率およびトランス:シス比となるであろう。5−ヘキセニルアセタートの1,10−ジアセトキシ−5−デセンへの転換は、エチレンを除去し、高い転換率(例えば98%より大きい)を得るために、真空下で行うことが好ましい。
【0087】
5−デセンと1,10−ジアセトキシ−5−デセンの比が1:1であるクロスメタセシスにより、統計上25%の5−デセン、50%の5−デセニルアセタートおよび25%の1,10−ジアセトキシ−5−デセンが得られるが、この経路の利点は、出発材料から生成物への処理能力が最大となる点である。5−デセンおよび1,10−ジアセトキシ−5−デセンは、次のクロスメタセシス反応に再循環される。
【0088】
図15は、5−デセニルアセタートの他の合成を示す。この中で、4−塩化ペンテニルは、自己メタセシスして1,8−ジクロロ−4−オクテンを生成し、これと5−デセンとをメタセシスして8−塩化ノネニルを作る。次いで、塩化ノネニルを5−デセニルアセタートに転換する。
【0089】
ホウ酸ビニルアルキルまたはアリールエステルと内部または末端オレフィンとのクロスメタセシス ホウ酸ビニルアルキルまたはアリールエステルと内部または末端オレフィンとのクロスメタセシスにより、合成的に価値のある中間体が得られる。この中間体は、ホウ酸ビニルアルキルと、オルガノアルキルまたはオルガノアリール剤とのパラジウム触媒を用いた結合により、トランスもしくはシスハロビニル中間体、またはトランスオレフィンもしくはシスオレフィンに転換される。このホウ酸ビニル クロスメタセシス製法は、穏やかかつ費用効率がよいので、この製法により多くの新しい機会が開かれた。
【0090】
従来、ホウ酸ビニルアルキルエステルの合成は、液体臭素を用いて臭化した後、液体アンモニア中でナトリウムアミドを用いてデヒドロハロゲン化することにより、末端オレフィンを末端アセチレンに転換することを伴う。次いで、高価なボラン剤(例えば、9−BBN、カテコールボラン、ピナコールボラン等)を加えて、支配的なトランス臭化ビニル中間物が得る。これらの反応工程は、分子内の官能基または他のオレフィンに対して修正できない。この合成経路は、費用のかかるプロセスであり、所望の生成物を経済的に魅力のないものにしてしまう。
【0091】
しかし、この発明は、内部オレフィン(すなわち5−デセン)とホウ酸ビニルとをクロスメタセシスしてシスおよびトランスホウ酸ヘキセニルを得るだけでなく、単純な真空蒸留またはカラムクロマトグラフィーによりシスおよびトランスホウ酸ヘキセニルを分離して純粋なシスおよびトランス異性体を得るためのものである。純粋なホウ酸異性体が得られると、これを、構造を保持したままヨウ化ビニル中間体に転換するか、または構造を反転して臭化ビニル中間体に転換する。(すなわち、反応条件によっては、トランスホウ酸ヘキセニルピナコールエステルをトランス1−ヨウ化−1−ヘキセンまたはシス1−臭化ヘキセンに転換することができる。)次いで、トランス1−ヨウ化−1−ヘキセンまたはシス1−臭化ヘキセンを種々の有機金属アルキルまたは有機金属アリール剤と結合させて、異性体的に純粋な生成物を得る。この方法は、ウィティヒおよびホーナー・エモンズ化学反応を直接的に補完し、かつこれと匹敵する。
【0092】
シスおよびトランスオレフィンを分離する従来の方法は、硝酸銀を含浸したシリカゲルを用いる。この方法は、材料が少量の研究量(すなわち、100mg未満)である場合にはうまく働くが、大規模(10kgより大きい)で実用するには費用がかかりすぎ、かつ扱いが面倒である。単純真空蒸留、カラムクロマトグラフィー、または再結晶により容易にシスおよびトランスホウ酸ビニルアルキルを分離する利点は、この方法が非常に強力かつ効率的なものになる点である。さらに、ホウ酸ビニルとシスおよびトランス5−デセンとのクロスメタセシスは、トランス5−デセン異性体が非常に過剰に存在する場合にも、シス5−デセンを選択的に消耗する点である。
【0093】
表7および8は、異なる反応条件下でのクロスメタセシス反応から得られた結果を示す。これらの結果により、この方法の有用性および選択性が明らかである。
【0094】
[表7]
5−デセンはトランス82.3%、シス17.7%の異性体混合物として開始した。HBPEはホウ酸ヘキセニルピナコールエステルである。
【0095】
[表8]
5−デセンはトランス82.3%、シス17.7%の異性体混合物として開始した。HBPEはホウ酸ヘキセニルピナコールエステルである。
【0096】
表7において、クロスメタセシス反応は迅速に進行して終了し、600%過剰の5−デセンを用いたにもかかわらず、この反応により5−デセンのトランス比が82.3%から86.7%に増加した。また、ホウ酸ヘキセニルピナコールエステルの異性体比も高いトランス選択性を保持しており、開始1分後には94%であったものが、9時間後には90%となっている。
【0097】
表8において、過剰のホウ酸ビニルピナコールエステルを用いた場合、反応は遅延し、かつホウ酸ヘキセニルピナコールエステル(HBPE)の収率は低い(すなわち、20.0%)。しかし、E−5−デセン異性体純度およびHBPE異性体純度は、5−デセンを非常に過剰な量で用いた場合(表7、9時間のデータ)とほぼ同じ値に達した。
【0098】
図16は、触媒823を用いて、ホウ酸ビニルピナコールエステルと5−ヘキセノールTHPエーテル(または5−デセンの1,10−ジTHPエーテル)とをクロスメタセシスして(Matheson、D.S J Am Chem Soc (1960)82、4228−4233)、1−ボロヘキセン−6−オールTHPエーテルのピナコールエステルを得ることを伴う5−デセニルアセタートの合成を示している。この生成物を、Miycuira(Org Syn 8 p.532)により説明されるスズキ条件下でブチルリチウムおよび塩化亜鉛と結合し、E−5−デセノールTHPエーテルをE:Z異性体比91:9で得た。この材料をカラムクロマトグラフィーで精製し、次いでアセタート化して5−デセニルアセタートをE:Z異性体比=91:9で得た。
【0099】
図17は、触媒823を用いて、ホウ酸ビニルピナコールエステルと5−ヘキセニルアセタート(または1,10−ジアセトキシ−5−デセン)とをクロスメタセシスして(Matheson、D.S J Am Chem Soc (1960)82、4228−4233)、1−ボロヘキセン−6−イルアセタートのピナコールエステルを得ることを伴う5−デセニルアセタートの合成を示している。この生成物は、水酸化ナトリウムおよび水により触媒され、ヘキセン−6−オールの1−ボロン酸を生じた。この生成物を、Miycuira(Org Syn 8 p.532)により説明されるスズキ条件下でブチルリチウムおよび塩化亜鉛と結合し、E−5−デセノールを98%より大きいE異性体比で得た。この材料をカラムクロマトグラフィーで精製し、アセタート化して5−デセニルアセタートを98%より大きい異性体比で得た。
【0100】
図18は、コナガ(Diamondback Moth:DBM)フェロモンの類似物質である9−ギ酸テトラデセニルの合成を示す。再び図9Aを参照して、前記の実施例1または2と同様に、あるいは触媒848を触媒823に置換して5−デセンを作った。図18を参照して、5−デセンを真空下かつ触媒823の存在下で9−デセノールとクロスメタセシスし、1−ヘキセンが発生するのでこれを反応から除去しながら、9−テトラデセノール(図示せず。)を生成した。次いで、酢酸ホルミルを9−テトラデセノールと反応させ、9−ギ酸テトラデセニルを生成した。
【0101】
(実施例6)
11−テトラデセニルアセタートの合成
図19は、雑食ハマキ(Omnivorous Leafroller:OLR)のフェロモンである、11−テトラデセニルアセタートの合成を示す。図19を参照して、10g(44.2ミリモル)の11−ドデセニルアセタートおよび11.2g(133ミリモル)の3−ヘキセンを、マグチック撹拌子および還流冷却器を含む100ml丸底フラスコに加えた。窒素を5分間噴霧し、次いで12mg(0.014ミリモル)の触媒848を加え、室温の窒素雰囲気下で8時間撹拌した。反応が進行するにつれて、1−ブテンを含む揮発性気体をドラフトに排気した。
【0102】
前記したようにして、メタセシス触媒を取り除き、透明な液体を得た。GC分析により、11−ドデセニルアセタートの70%が11−テトラデセニルアセタートに転換し、80:20のE:Z異性体比となることが示された。
【0103】
(実施例7)
11−テトラデセニルアセタートの合成
再び図19を参照して、10g(44.2ミリモル)の11−ドデセニルアセタートと3−ヘキセンの代わりに15g(268ミリモル)の1−ブテンとを、マグチック撹拌子およびドライアイス冷却器を含み、−15℃の冷却バス中に入れた100ml丸底フラスコに加えた。窒素を1分間噴霧し、次いで24mg(0.028ミリモル)の触媒848を加え、15℃の窒素雰囲気下で8時間撹拌し、その後、一晩放置して室温にした。反応が進行するにつれて、1−ブテンを含む揮発性気体をドラフトに排気した。
【0104】
前記したようにして、メタセシス触媒を取り除き、透明な液体を得た。GC分析により、11−ドデセニルアセタートの55%が11−テトラデセニルアセタートに転換し、66:34のE:Z異性体比となることが示された。
【0105】
(実施例7a)
11−テトラデセニルアセタートの合成
図20を参照して、10g(31.2ミリモル)の11−エイコセニルアセタートおよび15g(179ミリモル)の3−ヘキセンを、マグチック撹拌子および還流冷却器を含む100ml丸底フラスコに加えた。ホホバ油として知られる、安価な日用品の種油から11−エイコセニルアセタートを分離する。窒素を1分間噴霧し、次いで50mg(0.059ミリモル)の触媒848を加え、35℃の窒素雰囲気下で8時間撹拌した。
【0106】
前記したようにして、メタセシス触媒を取り除き、透明な液体を得た。GC分析により、11−エイコセニルアセタートの69%が11−テトラデセニルアセタートに転換し、83:17のE:Z異性体比となることが示された。溶媒としてシクロヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィーにより11−テトラデセニルアセタートを分離し、3.86g(15.1ミリモル)を収率48%で得た。
【0107】
図21は、トマト蟯虫(Tomato Pinworm:TPW)フェロモンの主成分である、E−4−トリデセニルアセタートの合成を示す。図12を参照して、1−デセンを触媒823の存在下、真空中で4−ペンテニルアセタートとクロスメタセシスして、E−4−トリデセニルアセタートを生成し、かつエチレンが発生するのでこれを溶液から除去する。
【0108】
図22は、E−4−トリデセニルアセタートの他の合成を示す。図22を参照して、1−デセニルは自己メタセシスして9−オクタデセンを形成する。4−ペンチルアセタートは自己メタセシスして1,8−ジアセトキシ−4−オクテンを生じる。触媒823の存在下、真空を用いずに、9−オクタデセンと1,8−ジアセトキシ−4−オクテンをクロスメタセシスして、4−トリデセニルアセタートを得る。2つの内部オレフィンを用いることにより、真空を用いずに得られる4−テトラデセニルアセタートの転換および収率を高くできる。
【0109】
図23は、コドリンガ(Codling Moth:CM)のフェロモンであるE,E−8,10−ドデカジエノールの合成を示す。図23を参照して、触媒823の存在下、真空中で、ペンテニル誘導体と8−ノネノールとをクロスメタセシスして、Xで表される離脱基をC−10位置に有するE−8−ドデセニル誘導体を生成する。エチレンが発生するので、これを反応混合物から取り除く。次いで、反応混合物を酸または塩基で処理して、E,E−8,10−ドデカジエノールを得る。
【0110】
図24Aおよび図24Bは、E,E−8,10−ドデカジエノールの他の合成を示す。図24Aを参照して、触媒801を用い、1,10−ジアセトキシ−5−デセンおよび1,6−ジクロロ−3−ヘキセンのクロスメタセシスして、8−クロロ−5−オクテン−1−イルアセタートを得、これを還元および脱アセチル化して、8−クロロオクタン−1−イルアセタートを合成した。図24Bを参照して、トルエン中2当量の亜リン酸トリエチルを用いて、8−クロロオクタン−1−イルアセタートを4時間還流し、オクタノールホスフィット中間体を得た。混合物をアルゴン下で−40℃まで冷却した。リチウムジイソプロピルアミンを加え(ホスホン酸の2.3モル当量)、室温まで徐々に温めた。蒸留したばかりのクロトンアルデヒド(2モル当量)を加え、室温で4時間撹拌した。8,10−ドデカジエノールが得られるまで混合物を加工した。
【0111】
8−ハロオクタン−1−オールに対する従来の方法と比較した、8−ハロオクタン−1−オールへのメタセシス経路の利点 オメガ−ハロアルカノールは、合成中間物、特に昆虫フェロモンの合成における中間物として用いられてきた、高価な化合物である(Mori 1992)。こうした化合物を調製する従来の方法は、水の除去を連続して(Pattison、FLM;JB Sothers;RG Woolford J.Am.Chem.Soc.(1956)78、2255〜2259)、または連続せずに(Chong、JM;MA Heuft;およびP Rabbat 「アルファ、オメガ−ジオールのモノブロム化の溶媒効果:オメガブロモアルカノールの従来の調製」J.Org.Chem.(2000)65、5837〜5838)、不活性溶媒中でアルファ、オメガ−ジオールをHClまたはHBr水溶液と共に加熱して行う。これらの方法は、研究量の材料に対しては適度に働くが、大規模な合成に対しては不都合である。しかし、これらの反応は、通常低濃度(例えば0.3M)で行われ、高い転換率を得るのに最大96時間を必要とし、最大で60%のジハライドまたは未反応の出発ジオールで汚染され、蒸留により用意に純粋なオメガ−ハロアルカノールを分離することができず、中程度(典型的には35%〜85%)の収率が得られる。ジオールのいくつかは、商業プロセスで用いるには非常に高価であるという点がもうひとつの制限である。
【0112】
これらの不足を克服する新しい方法は、アルファ−オメガ−ジアセトキシアルケンおよびアルファ−オメガ−ジハライドのクロスメタセシスを用いて、オメガ−ハロアルケノールを得る。(ここでの命名において、アルコールを最初の炭素原子として開始して、オメガは分子の最終炭素原子を表す。)オメガ−ハロアルケノールは、それ自体高価な合成中間体であり、従来の水素化法下で容易にオメガ−ハロアルカノールに転換する。この方法の利点は、4つの異なる対称なアルファ、オメガ−ジハライド(すなわち、W−(CH2)n−Wであり、式中、Wは塩化物、臭化物、ヨウ化物、メシラート、トシラートまたはこれらの誘導体から選択され、nは4、6、8または10に等しい。)を4つの異なる対称なアルファ、オメガ−ジアセトキシアルケン(すなわち、AcO−(CH2)n−OAcであり、式中、n=4、6、8または10である。)とクロスして、7つの異なるオメガ−ハロアルケノール(すなわち、AcO−(CH2)nCH=CH(CH2)m−Wであり、式中、n=1、2、3または4、m=1、2、3または4である。)を生じる。これらのオメガ−ハロアルケノールは、水素化条件下でオメガハロアルカノールに転換される。
【0113】
これらのメタセシス反応は、通常同モル比の対称ジハライドおよびジアセトキシ化合物で円滑に行われ、未反応の出発物質は、次のメタセシス反応に再循環される。収率は、典型的には50%程度の反応器体積効率である。(すなわち、反応器体積の50%が生成物である。)出発対称ジハライドおよびジアセトキシ化合物は、通常商業的供給者から、またはアルコールをハライドに容易に転換することにより入手可能である。また、出発物質とオメガ−ハロアルケノール生成物の沸点の違いに基づいて出発物質を選択する等の、オメガ−ハロアルケノールから出発物質を分離するのが非常に簡単となるように、これらを選択することが好ましい。例えば、1,6−ジブロモ−3−ヘキセンと1,10−ジアセトキシ−5−デセンとの間のクロスメタセシス反応から8−ブロモ−5−オクテニルアセタートを得る際、沸点の違いが大きいという理由でこれらの出発物質を選択した。1,6−ジブロモ−3−ヘキセンのBpt1.0mmHgは84〜85℃であり、8−ブロモ−5−オクテニルアセタートのBpt1.0mmHgは110〜112℃であり、1,10−ジアセトキシ−5−デセンのBpt1.0mmHgは158〜162℃である。
【0114】
(実施例:8−ブロモオクタン−1−オールの合成の比較)
8−ブロモオクタン−1−オールは、昆虫フェロモンの合成において有用な出発物質であるが、大量に市販されていないので広範には使用されていない。TCI(オレゴン州ポートランド)は、8−ブロモオクタン−1−オールを25gで191.30ドル(7652ドル/kg)で販売している。1,8−オクタンジオールから出発することもまた高価である。TCIは、1,8−オクタンジオールを498ドル/kgで販売している。このように高価であること、およびこの材料をオメガ−アルカノールに転換する際に前記した欠点により、このような方法が商業的に発展できなくなっている。
【0115】
図25を参照して、しかしながら、オレフィンメタセシスは、8−ブロモオクタン−1−オールを生成する安価な方法を提供する。対称1,6ジブロモ−3−ヘキセンを、1−ブロモ−3−ヘキセンにより作る(揮発性3−ヘキセンを真空下で除去する)。1−ブロモ−3−ヘキセンを、40ドル/kg未満で販売されている市販のリーフアルコール(Bedoukian、コネチカット州ダンブリー)から調製する。1,10−ジアセトキシ−5−デセンをヘキセニルアセタートのクロスメタセシスにより調製する。ヘキセニルアセタートは、従来の方法により、ヘキセノールから調製する。5−ヘキセノールは、45ドル/kg未満で販売されており、ニュージャージー州サマセットのDegussa−Hulsから入手可能である。
【0116】
同モル量の1,6ジブロモ−3−ヘキセンおよび1,10−ジアセトキシ−5−デセンをクロスメタセシスして、収率40〜50%の8−ブロモ−5−オクテニルアセタートを得る(この反応条件下での最大収率は50%である)。オメガ−ブロモ−5−オクテニルアセタートを単純真空蒸留により分離し、還元およびジアセチル化して8−ブロモオクタン−1−オールを作る。この方法のコストは最終生成物1kg当たり300ドル未満である。
【0117】
蚊産卵誘引フェロモン(Mosquito Oviposition Attractant Pheromon:MOP):(5R,6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライドの合成
(実施例8)
メドウホーム油および1−ドデセンのクロスメタセシス
図26は、植物名Limnanthes Albaとしても知られているメドウホーム油の化学構造を示す(CAS Number:153065−40−8;EINES Numvber:310−127−6)。メドウホーム油は、Natural Plant Products LLC,2767 19th St SE、PO Box 4306、Salem,OR 97302、から入手可能であり、現在、キログラム当り約$12の値段である。
【0118】
図27は、メドウホーム油及び1−ドデセンのクロスメタセシスを用いたMOPについて合成スキームを示す。図26及び図27に関して、3.0g(3.0mmol)メドウホーム油及び6.1g(36mmol)1−ドデセンを乾燥した50mL丸底フラスコに加えた。フラスコを窒素で20分間浄化し、ついで、0.025gの触媒823を添加し、混合物を18時間、35℃で10mmHg真空下で攪拌した。メタセシス触媒を0.037g(0.30mmol)のトリスヒドロキシメチルホスフィン及び5mLのトリエチルアミンを添加することによって除去した。混合物を50℃で12時間攪拌した。3回の100ml洗浄を水で行って、ついで、1MHClの1×50mL洗浄及びNaHCO3飽和水の1×50mL洗浄を行った。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、さらに精製することなく、ろ過し、次の反応において使用した。
【0119】
上述由来のメタセシス生成物を、“Epoxidation of Olefins by Hydorogen perocide−Acetonitorile: cis−Cyclohexesne Oxide”、におけるBach等によって記述されたように、すなわち、m−クロロペルオキシベンゾイン酸でエポキシドへ酸化した。グリセリドエステルを加水分解し、エポキシドを2MKOH及び20mLのイソプロパノールアルコール(IPA)において60℃へ6時間加温することによって、エポキシドをジオールへ開環した。溶液を濃縮し、50mLの1MHClで洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、さらに精製することなく、ろ過し、次の反応において使用した。ラクトン化を次の手順を用いて行った。すなわち、重ジオール(2.9g、9.0mmol)を50mgのトルエンスルホン酸を含む50mlの無水トルエンの中へ溶解し、100℃へ6時間加熱した。混合物を室温へ冷却し、50mLのNaHXO3飽和水で洗浄した。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、さらに精製することなく、ろ過し、次の反応において使用した。乾燥させた溶液を1.8g(0.018mmol)の無水酢酸及び5mLのトリエチルアミンでアセチル化した。溶液を室温で一昼夜攪拌した。反応を50mLの1MHCl及びNaHCO3飽和水の50mL洗浄によって仕立てた。有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、さらに精製することなく、ろ過し、濃縮し(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体を産出し、その後、クロマトグラフィーで精製した。
【0120】
(実施例9)
1−ドデセンの自己メタセシス
図28に関して、61.0g(360mmol)の1−ドデセンを乾燥した50mLの丸底フラスコへ加えた。フラスコを窒素で20分間洗浄し、ついで、0.25g(0.30mmol)の触媒823を添加し、混合物を18時間、35℃で10mmHg真空下で攪拌した。メタセシス触媒を100gのシリカゲル、170〜400メッシュを通じてろ過によって除去し、50.2g(324mmol)の11−ドコセンを産出した。この生成物をさらに精製することなく使用した。
メドウホーム油及び11−ドコセンのクロスメタセシス
図29に関して、(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体の合成は、5.5g(18mmol)の11−ドコセンを1−ドデセンの代わりに用いた以外、実施例8に述べたようにした。
【0121】
(実施例10)
メチルへキセノエート(hexenoate) 及び11−ドコセンのクロスメタセシス
図30に関して、(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体の合成は、1.15g(9mmol)のメチルへキセノエートをメドウホーム油の代わりに用い、5.5g(18mmol)の11−ドコセンを1−ドデセンの代わりに用いた以外、実施例8に述べたようにした。
【0122】
(実施例11)
メチルへキセノエート(hexenoate)及び1−ドデセンのクロスメタセシス
図31に関して、(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体の合成は、1.15g(9mmol)のメチルへキセノエートをメドウホーム油の代わりに用いた以外、実施例8に述べたようにした。
【0123】
(実施例12)
メドウホーム油及び1−ドデセンのクロスメタセシス
図32に関して、(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体の合成は、ジオールに対する二重結合を酸化をOlagbemiro等によって述べられたようにした以外、実施例8に述べたようにした。
【0124】
(実施例13)
メドウホーム油 及び11−ドコセンのクロスメタセシス
図33に関して、(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体の合成は、5.5g(18mmol )の11−ドコセンを1−ドデセンの代わりに用い、ジオールに対する二重結合を酸化をOlagbemiro等によって述べられたようにした以外、実施例8に述べたようにした。
【0125】
(実施例14)
メチルへキセノエート(hexenoate)及び11−ドコセンのクロスメタセシス
図34に関して、(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体の合成は、1.15g(9mmol)のメチルへキセノエートをメドウホーム油の代わりに用い、ジオールに対する二重結合を酸化をOlagbemiro等によって述べられたようにした以外、実施例8に述べたようにした。
【0126】
(実施例15)
メチルへキセノエート(hexenoate)及び1−ドデセンのクロスメタセシス
図35に関して、(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体の合成は、1.15g(9mmol)のヘキセニルアセテートをメドウホーム油の代わりに用いた以外、実施例8に述べたようにした。5−ヘキサデセニルアセテートの5−へキサデセン酸の酸化は、Witzmann等の“Di−Glyceraldehde Ethyl Acetal”Organic Synthesis Collective Volume II, 1943 p307及びジオールへの二重結合の酸化をOlagbemiro等によって述べられたようにした。
【0127】
(実施例16)
ヘキセニルアセテート及び1−ドデセンのクロスメタセシス
図36に関して、(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体の合成は、1.15g(9mmol )のヘキセニルアセテートをメドウホーム油の代わりに用いた以外、実施例8に述べたようにした。5−ヘキサデセニルアセテートの5−へキサデセン酸の酸化は、Witzmann等に述べられたように行い、ジオールへの二重結合の酸化をOlagbemiro等によって述べられたようにした。
【0128】
(実施例17)
ヘキセニルアセテート及び1−ドコセンのクロスメタセシス
図37に関して、(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体の合成は、1.15g(9mmol)のヘキセニルアセテートをメドウホーム油の代わりに用いた以外、実施例8に述べたようにした。5−ヘキサデセニルアセテートの5−へキサデセン酸の酸化は、Witzmann等に述べられたように行い、5.5g(18mmol)の11−ドコセンを1−ドデセンの代わりに使用し、ジオールへの二重結合の酸化をOlagbemiro等によって述べられたようにした。
【0129】
(実施例18)
ヘキセナールジエチルアセタール及び11−ドコセンのクロスメタセシス
図38に関して、(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体の合成は、1.15g(9mmol)のヘキセナールジエチルアセタールをメドウホーム油の代わりに用いた以外、実施例8に述べたようにした。5−ヘキサデセナールジエチルアセタールの5−へキサデセン酸の酸化は、Ruhoff,J.R.(“N−Heptanoic Acid” OrganicSynthesis Collective Volume II,1943p314)に述べられたように行い、5.5g(18mmol)の11−ドコセンを1−ドデセンの代わりに使用し、ジオールへの二重結合の酸化をOlagbemiro等によって述べられたようにした。
【0130】
(実施例19)
図39に関して、(5R、6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド及びそのステレオ異性体の合成は、1.15g(9mmol)のヘキセナールジエチルアセタールをメドウホーム油の代わりに用いた以外、実施例8に述べたようにした。5−ヘキサデセナールジエチルアセタールの5−へキサデセン酸の酸化は、Ruhoffに述べられたように行い、ジオールへの二重結合の酸化をOlagbemiro等によって述べられたようにした。
【0131】
ぺカンナッツ系ベアラーホルモン(PNCB)の合成E−9、Z−11−ヘキサデカジエナール
図40は、ビニルホウ酸塩ピナコールエステル(Matheson,D.SJ AmChem Soc(1960)82,4228−4233)の(入手可能な9−デセノールのSwern酸化によって合成し、9−デセナールを産出し、その後エタノールと塩酸でアセタールとして保護した)9−デセナールジエチルアセタールとのクロスメタセシスを、触媒823で伴い、1−ボロデセナールジエチルアセタールのピナコールエステルを生成するPNCBの合成を示す。この生成物は、Miycuira Org SynVIIIp532に述べられたようなSuzuki 条件下で、Z−1−ヨードへキセン(Normant Org Syn VII,p290−294)と結合し、E−9、Z−11−ヘキサデカジエナール時エチルアセタールを生成する。この物質は、カラムクロマトグラフィーによって精製し、アセタールを含水メタノール及び水中で、触媒p−トルエンスルホン酸を用いて35℃で24時間加水分解した。E−9、Z−11ヘキサデカジエナールを反応混合物を濃縮することによって単離し、カラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0132】
図9、11〜25及び27〜40において示す合成スキームの説明を特定の触媒及び出発物質を含むが、当業者は、図及び説明を見本としてのみであり、たとえば、図2〜5に示すようなクラスI−IVメタセシス触媒他の合成触媒を使用することによって、修正をすることができると賞賛するであろう。図9、11〜25、及び27〜40の合成スキームに関して具体的に、クラスIVメタセシス触媒、特に触媒848、826、807及び785が好ましい。なぜなら、これらの触媒は、他の3つのクラスの触媒よりも十分少量で使用することができるからである。たとえ、触媒807及び785を少量で使用することができ、より高い収率を産することができても、それらが現在容易に合成される触媒848、及び826は現在もっとも好ましい。触媒823、801、及び716も好ましいが、一般にクラスIV触媒より少量の収率を産する。触媒791及び707は、現在好ましくない。
【0133】
当業者は、図1、11〜25、及び27〜40に示す合成スキームをたとえば、上述したような出発物質の他のアルコール保護された誘導体など、他の出発材料を用いることによって修正することでき、たとえば、ここに存在するクロスメタセシス生成物の別の合成を提供するために、あるいは、E−9、Z−11−ヘキサデカジエナール、E−3、Z−5ドデカジエニルアセテート、E−8,Z−10−ペンタデカジエニルアセテート、E−7、Z−9ドデカジエニルアセテート、Z−5,E−7−ドデカジエノール、E−5、Z−7ドデカジエノール、Z−9、E−11−テトラデカジエニルアセテート、Z−11、E−13−ヘキサデカジエニルアセテート、又は他の同様の製品を合成するのに使用することができると賞賛するであろう。
【0134】
本発明の趣旨を逸脱することなしに、多くの変形を本発明の上述した実施形態の詳細になされることが、当業者にとって明白であろう。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ決定されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタセシス産物を合成するための方法であって、クラスIからIVより選択されたメタセシス触媒の存在下で、末端オレフィンと内部オレフィンとをクロスメタセシスし、メタセシス産物と副生成物を生成し;
反応チャンバーの外に該副生成物が蒸発する様な十分に高い温度及び/又は十分に低い圧力の条件を適用する、上記の過程よりなる、メタセシス産物を合成するための方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、メタセシス出発オレフィンがR−(CH=CH)k(CH2)n(CHX)g(CH2)m−Hの形態であって、ここでXは水素、アルコール、アセテート、カルボキシレートエステル、カルボン酸、アルデヒド、ハライド、又はトシラート(tosylate)、メシラート(mesylate)、又はそれらの誘導体であって、かつnとmはそれぞれゼロ及び20以下の整数から選択され、RはH,CH2又は(CH2)n(CHX)g(CH2)m−Hから選択され、かつ、第2のメタセシス触媒の存在下で、第1の産物を、QCH(CH2)rの形態の第2のアルファオレフィンとクロスメタセシスし、H(CH2)m(CHX)g(CH2)n(CH=CH)p(CH2)rM又はそれらの誘導体の形態である第2の産物及びCH2Zの形態である第2の副生成物を、反応チャンバーの外に該第2の副生成物が蒸発する様な、十分に高い温度及び/又は十分に低い圧力の条件下で生成し、前記QCH(CH2)rにおいてQはCH2又はCH(CH2)rMから選択され、rはゼロ及び20以下の整数から選択され、かつMはアルコール、アセテート、カルボキシレートエステル、カルボン酸、アルデヒド、ハライド、水素、又はそれらの誘導体であって、前記H(CH2)m(CHX)g(CH2)n(CH=CH)p(CH2)rMにおいてpはmとnの合計以下であり、かつ前記CH2ZにおいてZはCH2又はCH(CH2)n(CHX)g(CH2)mCH3から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
メタセシス出発オレフィンが、2から22個の炭素を含んでいるアルケニルエステル及びその誘導体、2から22個の炭素を含んでいるアルケニルハライド及びその誘導体、4から40個の炭素を含んでいるアルファ、オメガ−アルケニルジエステル及びその誘導体、4から40個の炭素を含んでいるアルファ、オメガ−アルケニルジハライド及びその誘導体、2から44個の炭素を含んでいるアルケン、2から22個の炭素を含んでいるアルケノール、又は4から40個の炭素を含んでいるアルケンジオールからなる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
メタセシス出発オレフィンが、2から10個の炭素を含んでいるアルケニルエステル及びその誘導体、2から10個の炭素を含んでいるアルケニルハライド及びその誘導体、4から20個の炭素を含んでいるアルファ、オメガ−アルケニルジエステル及びその誘導体、4から20個の炭素を含んでいるアルファ、オメガ−アルケニルジハライド及びその誘導体、2から20個の炭素を含んでいるアルケン、2から10個の炭素を含んでいるアルケノール、又は4から20個の炭素を含んでいるアルケンジオールからなる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
メタセシス出発オレフィンが、1−ヘキセン、5−デセン、1−ブテン、3−ヘキセン、5−ヘキセニルアセテート、5−ヘキセニルクロライド、1,10−ジアセトキシ−5−デセン、1,10−ジクロロ−5−デセン、1−ブロモ−3−ヘキセン、1−クロロ−3−ヘキセン、1−ドデセン(dodecene)、4−ペンテニルクロライド、1,8−ジクロロ−4−オクテン、4−ペンテニルアセテート、1,8−ジアセトキシ−4−オクテン、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、1,4−ジクロロ−2−ブテン、11−ドコセン(docosene)、メチル5−エイコセノエート(eicosenoate)、5−エイコセニルアセテート(eicosneyl acetate)、メチル11−エイコセノエート(eicosenoate)、又は11−エイコセニルアセテート(eicosneyl acetate)の内の少なくとも一つからなる、請求項1記載の方法。
【請求項6】
メタセシス産物が、H(CH2)m(CHX)g(CH2)n(CH=CH)p(CH2)rMの形態の第2産物からなる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
メタセシス産物が、5−デセニルアセテート、メチル5−デセノエート、9−テトラデセニルホルメート、9−テトラデセニルクロライド、9−テトラデセニルアセテート、11−テトラデセニルアセテート、メチル11−テトラデセノエート、11−テトラデセニルクロライド、メチル5−ヘキサデセノエート、又は8,10−ドデカジエノール、又はそれらの酸類、塩類、エステル類である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
メタセシス触媒が、触媒823,801,876,848,826,785,816,794,846,824又は794の内の一つからなる、請求項2記載の方法。
【請求項9】
メタセシス産物を合成するための方法であって、第1の内部オレフィンを選択し、第2の内部オレフィンを選択し、前記第1の内部オレフィンと前記第2の内部オレフィンとを、クラスIからIVのメタセシス触媒より選択されたメタセシス触媒の存在下でクロスメタセシスしてメタセシス産物を生成する、上記過程からなる、メタセシス産物を合成するための方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法であって、メタセシス出発オレフィンがR−(CH=CH)k(CH2)n(CHX)g(CH2)m−Hの形態であって、ここでXは水素、アルコール、アセテート、カルボキシレートエステル、カルボン酸、アルデヒド、ハライド、又はトシラート(tosylate)、メシラート(mesylate)、又はそれらの誘導体であって、かつnとmはそれぞれゼロ及び20以下の整数から選択され、RはH,CH2又は(CH2)n(CHX)g(CH2)m−Hから選択され、かつ、第2のメタセシス触媒の存在下で、第1の産物を、QCH(CH2)rの形態の第2のアルファオレフィンとクロスメタセシスし、H(CH2)m(CHX)g(CH2)n(CH=CH)p(CH2)rM又はそれらの誘導体の形態である第2の産物及びCH2Zの形態である第2の副生成物を、反応チャンバーの外に該第2の副生成物が蒸発する様な、十分に高い温度及び/又は十分に低い圧力の条件下で生成し、前記QCH(CH2)rにおいてQはCH2又はCH(CH2)rMから選択され、rはゼロ及び20以下の整数から選択され、かつMはアルコール、アセテート、カルボキシレートエステル、カルボン酸、アルデヒド、ハライド、水素、又はそれらの誘導体であって、前記H(CH2)m(CHX)g(CH2)n(CH=CH)p(CH2)rMにおいてpはmとnの合計以下であり、かつ前記CH2ZにおいてZはCH2又はCH(CH2)n(CHX)g(CH2)mCH3から選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
メタセシス出発オレフィンが、2から22個の炭素を含んでいるアルケニルエステル及びその誘導体、2から22個の炭素を含んでいるアルケニルハライド及びその誘導体、4から40個の炭素を含んでいるアルファ、オメガ−アルケニルジエステル及びその誘導体、4から40個の炭素を含んでいるアルファ、オメガ−アルケニルジハライド及びその誘導体、2から44個の炭素を含んでいるアルケン、2から22個の炭素を含んでいるアルケノール、又は4から40個の炭素を含んでいるアルケンジオールからなる、請求項9記載の方法。
【請求項12】
メタセシス出発オレフィンが、2から10個の炭素を含んでいるアルケニルエステル及びその誘導体、2から10個の炭素を含んでいるアルケニルハライド及びその誘導体、4から20個の炭素を含んでいるアルファ、オメガ−アルケニルジエステル及びその誘導体、4から20個の炭素を含んでいるアルファ、オメガ−アルケニルジハライド及びその誘導体、2から20個の炭素を含んでいるアルケン、2から10個の炭素を含んでいるアルケノール、又は4から20個の炭素を含んでいるアルケンジオールからなる、請求項9記載の方法。
【請求項13】
メタセシス出発オレフィンが、1−ヘキセン、5−デセン、1−ブテン、3−ヘキセン、5−ヘキセニルアセテート、5−ヘキセニルクロライド、1,10−ジアセトキシ−5−デセン、1,10−ジクロロ−5−デセン、1−ブロモ−3−ヘキセン、1−クロロ−3−ヘキセン、1−ドデセン(dodecene)、4−ペンテニルクロライド、1,8−ジクロロ−4−オクテン、4−ペンテニルアセテート、1,8−ジアセトキシ−4−オクテン、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、1,4−ジクロロ−2−ブテン、11−ドコセン(docosene)、メチル5−エイコセノエート(eicosenoate)、5−エイコセニルアセテート(eicosneyl acetate)、メチル11−エイコセノエート(eicosenoate)、又は11−エイコセニルアセテート(eicosneyl acetate)の内の少なくとも一つからなる、請求項9記載の方法。
【請求項14】
メタセシス産物が、H(CH2)m(CHX)g(CH2)n(CH=CH)p(CH2)rMの形態の第2の産物又はそれらの誘導体からなる、請求項9記載の方法。
【請求項15】
メタセシス産物が、5−デセニルアセテート、メチル5−デセノエート、9−テトラデセニルホルメート、9−テトラデセニルクロライド、9−テトラデセニルアセテート、11−テトラデセニルアセテート、メチル11−テトラデセノエート、11−テトラデセニルクロライド、メチル5−ヘキサデセノエート、又は8,10−ドデカジエノール、又はそれらの酸類、塩類、エステル類である、請求項9記載の方法。
【請求項16】
メタセシス触媒が、触媒823,801,876,848,826,785,816,794,846,824又は794の内の一つからなる、請求項9記載の方法。
【請求項17】
メタセシス産物を合成するための方法であって、第1の末端オレフィンを選択し、第2の末端オレフィンを選択し、前記第1の末端オレフィンと前記第2の末端オレフィンとを、クラスIからIVのメタセシス触媒より選択されたメタセシス触媒の存在下でクロスメタセシスしてメタセシス産物及び副生成物を生成し;及び、反応チャンバーの外に該副生成物が蒸発する様な十分に高い温度及び/又は十分に低い圧力の条件を適用する、上記の過程からなる、メタセシス産物を合成するための方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法であって、メタセシス出発オレフィンがR−(CH=CH)k(CH2)n(CHX)g(CH2)m−Hの形態であって、ここでXは水素、アルコール、アセテート、カルボキシレートエステル、カルボン酸、アルデヒド、ハライド、又はトシラート(tosylate)、メシラート(mesylate)、又はそれらの誘導体であって、かつnとmはそれぞれゼロ及び20以下の整数から選択され、RはH,CH2又は(CH2)n(CHX)g(CH2)m−Hから選択され、かつ、第2のメタセシス触媒の存在下で、第1の産物を、QCH(CH2)rの形態の第2のアルファオレフィンとクロスメタセシスし、H(CH2)m(CHX)g(CH2)n(CH=CH)p(CH2)rM又はそれらの誘導体の形態である第2の産物及びCH2Zの形態である第2の副生成物を、反応チャンバーの外に該第2の副生成物が蒸発する様な、十分に高い温度及び/又は十分に低い圧力の条件下で生成し、前記QCH(CH2)rにおいてQはCH2又はCH(CH2)rMから選択され、rはゼロ及び20以下の整数から選択され、かつMはアルコール、アセテート、カルボキシレートエステル、カルボン酸、アルデヒド、ハライド、水素、又はそれらの誘導体であって、前記H(CH2)m(CHX)g(CH2)n(CH=CH)p(CH2)rMにおいてpはmとnの合計以下であり、かつ前記CH2ZにおいてZはCH2又はCH(CH2)n(CHX)g(CH2)mCH3から選択される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
メタセシス出発オレフィンが、2から22個の炭素を含んでいるアルケニルエステル及びその誘導体、2から22個の炭素を含んでいるアルケニルハライド及びその誘導体、4から40個の炭素を含んでいるアルファ、オメガ−アルケニルジエステル及びその誘導体、4から40個の炭素を含んでいるアルファ、オメガ−アルケニルジハライド及びその誘導体、2から44個の炭素を含んでいるアルケン、2から22個の炭素を含んでいるアルケノール、又は4から40個の炭素を含んでいるアルケンジオールからなる、請求項17記載の方法。
【請求項20】
メタセシス出発オレフィンが、2から10個の炭素を含んでいるアルケニルエステル及びその誘導体、2から10個の炭素を含んでいるアルケニルハライド及びその誘導体、4から20個の炭素を含んでいるアルファ、オメガ−アルケニルジエステル及びその誘導体、4から20個の炭素を含んでいるアルファ、オメガ−アルケニルジハライド及びその誘導体、2から20個の炭素を含んでいるアルケン、2から10個の炭素を含んでいるアルケノール、又は4から20個の炭素を含んでいるアルケンジオールからなる、請求項17記載の方法。
【請求項21】
メタセシス出発オレフィンが、1−ヘキセン、5−デセン、1−ブテン、3−ヘキセン、5−ヘキセニルアセテート、5−ヘキセニルクロライド、1,10−ジアセトキシ−5−デセン、1,10−ジクロロ−5−デセン、1−ブロモ−3−ヘキセン、1−クロロ−3−ヘキセン、1−ドデセン(dodecene)、4−ペンテニルクロライド、1,8−ジクロロ−4−オクテン、4−ペンテニルアセテート、1,8−ジアセトキシ−4−オクテン、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、1,4−ジクロロ−2−ブテン、11−ドコセン(docosene)、メチル5−エイコセノエート(eicosenoate)、5−エイコセニルアセテート(eicosneyl acetate)、メチル11−エイコセノエート(eicosenoate)、又は11−エイコセニルアセテート(eicosneyl acetate)の内の少なくとも一つからなる、請求項17記載の方法。
【請求項22】
メタセシス産物が、H(CH2)m(CHX)g(CH2)n(CH=CH)p(CH2)rMの形態の第2の産物又はそれらの誘導体からなる、請求項17記載の方法。
【請求項23】
メタセシス産物が、5−デセニルアセテート、メチル5−デセノエート、9−テトラデセニルホルメート、9−テトラデセニルクロライド、9−テトラデセニルアセテート、11−テトラデセニルアセテート、メチル11−テトラデセノエート、11−テトラデセニルクロライド、メチル5−ヘキサデセノエート、又は8,10−ドデカジエノール、又はそれらの酸類、塩類、エステル類である、請求項17記載の方法。
【請求項24】
メタセシス産物の収率が90%以上である、請求項17記載の方法。
【請求項25】
メタセシス触媒が、触媒823,801,876,848,826,785,816,794,846,824又は794の内の一つからなる、請求項17記載の方法。
【請求項26】
メタセシス産物を合成するための方法であって、第一の末端オレフィンを選択し、 第ニの末端オレフィンを選択し、 前記第1の末端オレフィンと前記第2の末端オレフィンとを、クラスIII 又はクラスIVメタセシス触媒より選択されたメタセシス触媒の存在下でクロスメタセシスして、反応容器内において該容器の圧力を低下させることなくメタセシス産物を生成する、上記過程からなる、メタセシス産物を合成するための方法。
【請求項27】
請求項26記載の方法であって、メタセシス出発オレフィンがR−(CH=CH)k(CH2)n(CHX)g(CH2)m−Hの形態であって、ここでXは水素、アルコール、アセテート、カルボキシレートエステル、カルボン酸、アルデヒド、ハライド、又はトシラート(tosylate)、メシラート(mesylate)、又はそれらの誘導体であって、かつnとmはそれぞれゼロ及び20以下の整数から選択され、RはH,CH2又は(CH2)n(CHX)g(CH2)m−Hから選択され、かつ、第2のメタセシス触媒の存在下で、第1の産物を、QCH(CH2)rの形態の第2のアルファオレフィンとクロスメタセシスし、H(CH2)m(CHX)g(CH2)n(CH=CH)p(CH2)rM又はそれらの誘導体の形態である第2の産物及びCH2Zの形態である第2の副生成物を、反応チャンバーの外に該第2の副生成物が蒸発する様な、十分に高い温度及び/又は十分に低い圧力の条件下で生成し、前記QCH(CH2)rにおいてQはCH2又はCH(CH2)rM から選択され、rはゼロ及び20以下の整数から選択され、かつMはアルコール、アセテート、カルボキシレートエステル、カルボン酸、アルデヒド、ハライド、水素、又はそれらの誘導体であって、前記H(CH2)m(CHX)g(CH2)n(CH=CH)p(CH2)rM においてpはmとnの合計以下であり、かつ前記CH2ZにおいてZはCH2又はCH(CH2)n(CHX)g(CH2)mCH3から選択される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
メタセシス出発オレフィンが、2から22個の炭素を含んでいるアルケニルエステル及びその誘導体、2から22個の炭素を含んでいるアルケニルハライド及びその誘導体、4から40個の炭素を含んでいるアルファ、オメガ−アルケニルジエステル及びその誘導体、4から40個の炭素を含んでいるアルファ、オメガ−アルケニルジハライド及びその誘導体、2から44個の炭素を含んでいるアルケン、2から22個の炭素を含んでいるアルケノール、又は4から40個の炭素を含んでいるアルケンジオールからなる、請求項26記載の方法。
【請求項29】
メタセシス出発オレフィンが、2から10個の炭素を含んでいるアルケニルエステル及びその誘導体、2から10個の炭素を含んでいるアルケニルハライド及びその誘導体、4から20個の炭素を含んでいるアルファ、オメガ−アルケニルジエステル及びその誘導体、4から20個の炭素を含んでいるアルファ、オメガ−アルケニルジハライド及びその誘導体、2から20個の炭素を含んでいるアルケン、2から10個の炭素を含んでいるアルケノール、又は4から20個の炭素を含んでいるアルケンジオールからなる、請求項26記載の方法。
【請求項30】
メタセシス出発オレフィンが、1−ヘキセン、5−デセン、1−ブテン、3−ヘキセン、5−ヘキセニルアセテート、5−ヘキセニルクロライド、1,10−ジアセトキシ−5−デセン、1,10−ジクロロ−5−デセン、1−ブロモ−3−ヘキセン、1−クロロ−3−ヘキセン、1−ドデセン(dodecene)、4−ペンテニルクロライド、1,8−ジクロロ−4−オクテン、4−ペンテニルアセテート、1,8−ジアセトキシ−4−オクテン、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、1,4−ジクロロ−2−ブテン、11−ドコセン(docosene)、メチル5−エイコセノエート(eicosenoate)、5−エイコセニルアセテート(eicosneyl acetate)、メチル11−エイコセノエート(eicosenoate)、又は11−エイコセニルアセテート(eicosneyl acetate)の内の少なくとも一つからなる、請求項26記載の方法。
【請求項31】
メタセシス産物が、H(CH2)m(CHX)g(CH2)n(CH=CH)p(CH2)rMの形態の第2の産物又はそれらの誘導体からなる、請求項26記載の方法。
【請求項32】
前記メタセシス産物が、5−デセニルアセテート、メチル5−デセノエート、9−テトラデセニルホルメート、9−テトラデセニルクロライド、9−テトラデセニルアセテート、11−テトラデセニルアセテート、メチル11−テトラデセノエート、11−テトラデセニルクロライド、メチル5−ヘキサデセノエート、又は8,10−ドデカジエノール、又はそれらの酸類、塩類、エステル類である、請求項26記載の方法。
【請求項33】
メタセシス産物の収率が90パーセント以上である、請求項26記載の方法。
【請求項34】
メタセシス触媒が、触媒823,801,876,848,826,785,816,794,846,824又は794の内の一つからなる、請求項26記載の方法。
【請求項35】
オレフィンのアルコール、アセテート、アルデヒド、カルボン酸又はそれらの誘導体を反応チャンバー内で合成するための方法であって、R−(CH=CH)k(CH2)n(CHX)g(CH2)m−Hの形態からなる第1のアルファオレフィンであって、ここでXは水素、アルコール、アセテート、カルボキシレートエステル、カルボン酸、アルデヒド、ハライド、又はトシラート(tosylate)、メシラート(mesylate)、又はそれらの誘導体であって、かつnとmはそれぞれゼロ及び20以下の整数から選択され、該第1のアルファオレフィンを、第1のメタセシス触媒の存在下で自己メタセシスを行って、(CH=CH)k[(CH2)n(CHX)g(CH2)m−H]2の形態である第1の産物とRHC=CHRの形態である第1の副生成物を生成し、RHC=CHRにおいてRはH,CH2,又は(CH2)n(CHX)g(CH2)m−Hから選択され、及び第2のメタセシス触媒の存在下で、該第1の産物を、QCH(CH2)rMの形態の第2のアルファオレフィンとクロスメタセシスを行って、H(CH2)m(CHX)g(CH2)n(CH=CH)p(CH2)rM又はそれらの誘導体の形態である第2の産物及びCH2Zの形態である第2の副生成物を、反応チャンバーの外に該第2の副生成物が蒸発する様な、十分に高い温度及び/又は十分に低い圧力の条件下で生成し、前記QCH(CH2)rMにおいてQはCH2又はCH(CH2)rMから選択され、rはゼロ及び20以下の整数から選択され、かつMはアルコール、アセテート、カルボキシレートエステル、カルボン酸、アルデヒド、ハライド、水素、又はそれらの誘導体であって、前記H(CH2)m(CHX)g(CH2)n(CH=CH)p(CH2)rMにおいてpはmとnの合計以下であり、かつ前記CH2ZにおいてZはCH2又はCH(CH2)n(CHX)g(CH2)mCH3 から選択される、オレフィンのアルコール、アセテート、アルデヒド、カルボン酸又はそれらの誘導体を反応チャンバー内で合成するための方法。
【請求項36】
第1又は第2のメタセシス触媒が同一であり、クラスIからIVのNメタセシス触媒からなる、請求項35記載の方法。
【請求項37】
自己メタセシスの過程が、反応チャンバーの外に前記第1の副生成物が蒸発する様な、十分に高い温度及び/又は十分に低い圧力の条件下で行われる、請求項35記載の方法。
【請求項38】
第1の産物が、5−デセン又は5−デセン酸(5−decenoic acid)又はそれらの塩又はエステルである、請求項35記載の方法。
【請求項39】
第2の産物が、5−デセニルアセテート又はその酸、塩又はエステルである、請求項35記載の方法。
【請求項40】
第2の産物が、9−テトラデセニルホルメート又はその酸、塩又はエステルである、請求項35記載の方法。
【請求項41】
第1の産物が11−テトラデセニルアセテート又は11−テトラデセン酸(11−tetradecenoic acid)又はそれらの塩又はエステルである、請求項35記載の方法。
【請求項42】
第1の産物が、5−ヘキサデセニルアセテート又はメチル5−ヘキサデセン酸(5−hexadecenoic acid)又はそれらの塩又はエステルである、請求項35記載の方法。
【請求項43】
第1の産物が11−ドコセン(11−docosene)又は11−ドコセン酸(11−docosenoic acid)又はそれらの塩又はエステルである、請求項35記載の方法。
【請求項44】
第2の産物が(5R,6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド(hexadecanolide)又はその酸、塩又はエステルである、請求項43記載の方法。
【請求項45】
第1/第2の触媒が、触媒823,801,876,848,826,785,816,794,846,824又は794の内の一つからなる、請求35記載の方法。
【請求項46】
オメガ−ハロアルキル産物を合成する方法であって、アルファ−オメガ−ジアセトキシアルケンを選択し;アルファ−オメガ−ジハライドを選択し;及び該アルファ−オメガ−ジアセトキシアルケンと該アルファ−オメガ−ジハライドとを、メタセシス触媒の存在下でクロスメタセシスを行い、オメガ−ハロアルケニルアセテートを生成する、上記過程よりなる、オメガ−ハロアルキル産物を合成する方法。
【請求項47】
前記オメガ−ハロアルケニルアセテート、前記アルファ−オメガ−ジアセトキシアルケン、及び前記アルファ−オメガ−ジハライドが、真空又は産物の高い変換率を得るために十分に高い温度の下で、アルファ−オレフィンの自己メタセシスによって生成された、請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記オメガ−ハロアルケニルアセテート、前記アルファ−オメガ−ジアセトキシアルケン、及び前記アルファ−オメガ−ジハライドが、それぞれの第1、第2及び第3の沸点を有し、かつ該第1の沸点が該第2及び第3の沸点から5℃以上異なっている、請求項46記載の方法。
【請求項49】
前記オメガ−ハロアルケニルアセテートを、前記アルファ−オメガ−ジアセトキシアルケン及び前記アルファ−オメガ−ジハライドより、蒸留によって分離することを更に含む、請求項46記載の方法。
【請求項50】
前記オメガ−ハロアルケニルアセテートを還元し、かつ脱アセチル化して、オメガ−ハロアルカノールを生成することを更に含む、請求項46記載の方法。
【請求項51】
前記オメガ−ハロアルカノールが、8−ブロモオクタン−1−オール(8−bromooctan−1−ol)又は8−クロロオクタン−1−オール(8−chlorooctan−1−ol)である、請求項50記載の方法。
【請求項52】
前記オメガ−ハロアルカノールが、6−ブロモヘキサン−1−オ−ル及び6−クロロヘキサン−1−オ−ルである、請求項50記載の方法。
【請求項53】
前記オメガ−ハロアルケニルアセテートを還元して、オメガ−ハロアルカニルアセテートを生成することを更に含む、請求項46記載の方法。
【請求項54】
前記オメガ−ハロアルケニルアセテートが8−クロロ−5−オクテニルアセテート(8−chloro−5−octenyl acetate)である、請求項46記載の方法。
【請求項55】
メタセシス触媒がクラスIからIVより選択された触媒からなる、請求項46記載の方法。
【請求項56】
メタセシス触媒が、触媒823,801,876,848,826,785,816,794,846,824又は794の内の一つからなる、請求項55記載の方法。
【請求項57】
立体特異的(stereo−specific )なメタセシス産物を合成するための方法であって、 オレフィンを選択し;
ホウ酸ビニル(vinyl borate)を選択し;
該オレフィンと該ホウ酸ビニルとを、クラスI からIVのメタセシス触媒から選択されたメタセシス触媒の存在下でクロスメタセシスを行って立体特異的なメタセシス産物を生成する、上記過程からなる、立体特異的なメタセシス産物を合成するための方法。
【請求項58】
末端オレフィンをホウ酸ビニルとクロスメタセシスして、アルケニルホウ酸エステルを得る、請求項57記載の方法。
【請求項59】
内部オレフィンをホウ酸ビニルとクロスメタセシスして、アルケニルホウ酸エステルを得る、請求項57記載の方法。
【請求項60】
前記クロスメタセシス産物を蒸留又はクロマトグラフィーで精製することが可能である、請求項58記載の方法。
【請求項61】
前記クロスメタセシス産物を蒸留又はクロマトグラフィーで精製することが可能である、請求項59記載の方法。
【請求項62】
前記クロスメタセシス産物を蒸留によって精製して、純粋なトランス及びシスのアルケニルホウ酸エステルを得ることが可能である、請求項60記載の方法。
【請求項63】
前記クロスメタセシス産物を蒸留によって精製して、純粋なトランス及びシスのアルケニルホウ酸エステルを得ることが可能である、請求項61記載の方法。
【請求項64】
適切な反応条件によって、前記クロスメタセシス産物を純粋なトランス−ハロ−アルケン又は純粋なシス−ハロ−アルケンに変換することが可能である、請求項62記載の方法。
【請求項65】
ホウ酸ビニルと内部オレフィンのトランス:シス混合物とのクロスメタセシス反応を用いて、最初のオレフィン混合物のトランス異性体の比率を増加させることが可能である、請求項57記載の方法。
【請求項66】
オレフィン産物を得るために、前記アルケニルホウ酸エステルをスズキ条件下で反応させた、請求項57記載の方法。
【請求項67】
オレフィン産物を得るために、前記アルケニルホウ酸エステルをパラジウム触媒条件下で反応させた、請求項57記載の方法。
【請求項68】
前記産物が、E9,Z11−ヘキサデカジエナール(E9,Z11−hexadecadienal)である、請求項57記載の方法。
【請求項69】
前記産物が、E−5−デセニルアセテート(E−5−decenylacetate)である、請求項57記載の方法。
【請求項70】
前記生成物が、E−11−テトラデセニルアセテート(E−11−tetradecenyl acetate)である、請求項57記載の方法。
【請求項71】
メタセシス触媒が、触媒823,801,876,848,826,785,816,794,846,824又は794の内の一つからなる、請求項57記載の方法。
【請求項72】
メタセシス産物又は反応物を含んでいる反応混合液からメタセシス触媒を除去する方法であって、一定量の水溶性ホスフィン(phosphine)又は水溶性ホスファイト(phosphite)を、メタセシス触媒がクラスIからIVのメタセシス触媒から選択された反応混合液中へ導入し、該反応混合液を混合して水層を形成し;及びメタセシス触媒を含んでいる水層を除去する、上記の過程からなる、メタセシス産物又は反応物を含んでいる反応混合液からメタセシス触媒を除去する方法。
【請求項73】
前記水溶性ホスフィンがトリスヒドロキシメチルホスフィン(trishydroxymethyl phosphine)である、請求項72記載の方法。
【請求項74】
前記水溶性ホスフィン又は水溶性ホスファイトが、図10Bに示された化学式を有する、非環式ホスフィン又はホスファイトである、請求項72記載の方法。
【請求項75】
前記水溶性ホスフィン又は水溶性ホスファイトが、図10Cに示された化学式を有する、環式ホスフィン又はホスファイトである、請求項72記載の方法。
【請求項76】
反応混合液を室温以上に加熱することを更に含む、請求項72記載の方法。
【請求項77】
請求項72記載の方法であって、前記水層を除去した後に更に、反応混合液に水を添加し;
該反応混合液を混合して、はっきりとした色彩を有する反応の結果生じる水層を形成し;
メタセシス触媒を含んでいる、該反応の結果生じる水層を除去し;及び該反応の結果生じる水層が実質的に無色になるまで、添加、混合、及び除去の過程を繰り返す、上記の過程を更に含む、請求項72記載の方法。
【請求項78】
メタセシス触媒が、触媒823,801,876,848,826,785,816,794,846,824又は794の内の一つからなる、請求項72記載の方法。
【請求項79】
1モルのメタセシス触媒に対して、前記水溶性ホスフィンの量が6から100モルである、請求項72記載の方法。
【請求項80】
ポリヒドロキシルホスフィン(polyhydroxyl phosphine)又はポリヒドロキシアリールホスフィン(polyhydroxyaryl phosphine)を調製するための方法であって、ポリヒドロキシアルキル−ヒドロキシメチルホスフォニウムハライド塩(polyhydroxyalkyl−hydroxymethyl phosphoniun halide salt)又はポリヒドロキシアリール−ヒドロキシメチルホスフォニウムハライド塩(polyhydroxyaryl−hydroxymethyl phosphoniun halide salt)を選択し;
該塩を、実質的に等モルの塩基と処理して、ポリヒドロキシルホスフィン又はポリヒドロキシアリールホスフィンを生成する、上記過程からなる、ポリヒドロキシルホスフィン又はポリヒドロキシアリールホスフィンを調製するための方法。
【請求項81】
前記ポリヒドロキシアルキル−ヒドロキシメチルホスフォニウムハライド塩が、テトラキスヒドロキシメチルホスフォニウムクロライドであり、かつ前記ポリヒドロキシルホスフィンがトリスヒドロキシメチルホスフィンである、請求項80記載の方法。
【請求項82】
前記塩基が水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムである、請求項81記載の方法。
【請求項83】
調製がイソプロパノール溶液中で行われる、請求項82記載の方法。
【請求項84】
(5R,6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド((5R,6S)−6−acetoxy−5−hexadecanolide)を合成するための方法であって、メドウフォームオイル(meadowfoam oil)、メチル5−ヘキサデセノエート、ヘキセン酸(hexenoic acid)誘導体、ヘキセナール誘導体又はヘキセノール誘導体を、1−ドデセン(1−dodecene)又は11−ドコセン(11−docosene)と、メタセシス触媒の存在下においてクロスメタセシスを行い、二重結合を有する第1産物を生成し;
二重結合を酸化して第2産物を生成し;及び該第2産物をラクトン化及びアセチル化して、(5R,6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド(hexadecanolide)を生成する、上記の過程からなる、(5R,6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライドを合成するための方法。
【請求項85】
メタセシス触媒の存在下かつ50mmHg以下の気圧の真空下において、1−ドデセンの自己メタセシスを行うことによって、前記11−ドコセンが生成した、請求項84記載の方法。
【請求項86】
(5R,6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライドを、グラムあたり3.00ドル以下の費用で生成することを更に含む、請求項84記載の方法。
【請求項87】
(5R,6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライドを、40時間以下の時間内で生成することを更に含む、請求項84記載の方法。
【請求項88】
前記メタセシス触媒が、クラスIからIVより選択された触媒である、請求項84記載の方法。
【請求項89】
前記メタセシス触媒が、触媒823,801,876,848,826,785,816,794,846,824又は794の内の一つからなる、請求項88記載の方法。
【請求項90】
5−デセニルアセテート(5−decenyl acetate)を合成する方法であって、第1触媒の存在下で1−ヘキセンの自己メタセシスを行って、産物を生成し、第2触媒の存在下で、該産物をアルコール又はアセテートで保護されたヘキセン又はその誘導体とクロスメタセシスを行い、5−デセニルアセテート又はその誘導体及び副生成物を生成する、上記の過程からなる、5−デセニルアセテートを合成する方法。
【請求項91】
前記第1又は第2触媒が触媒823である、請求項90記載の方法。
【請求項92】
前記第1又は第2触媒が触媒848である、請求項90記載の方法。
【請求項93】
前記産物が5−デセンである、請求項90記載の方法。
【請求項94】
クロスメタセシスの過程の間に真空とすることを更に含む、請求項90記載の方法。
【請求項95】
前記真空が50mmHg以下の気圧を有する、請求項94記載の方法。
【請求項96】
前記副生成物が1−ヘキセンである、請求項90記載の方法。
【請求項97】
5−デセニルアセテートを40パーセント以上の総収量で生成することを更に含む、請求項90記載の方法。
【請求項98】
5−デセニルアセテートを70パーセント以上の総収量で生成することを更に含む、請求項97記載の方法。
【請求項99】
5−デセニルアセテートを、80:20以上のトランス:シス異性体比において生成することを更に含む、請求項90記載の方法。
【請求項100】
5−デセニルアセテートを、グラムあたり0.50ドル以下の費用で生成することを更に含む、請求項90記載の方法。
【請求項101】
5−デセニルアセテートを、95パーセント以上の純度で、80:20以上のトランス:シス異性体比において、100時間以下の時間内で生成することを更に含む、請求項90記載の方法。
【請求項102】
5−デセニルアセテートを、25時間以下の時間内で生成することを更に含む、請求項101記載の方法。
【請求項103】
前記第1又は第2触媒が、クラスIからIVのメタセシス触媒より選択された触媒である、請求項90記載の方法。
【請求項104】
前記第1及び第2触媒が同一である、請求項90記載の方法。
【請求項105】
請求項90記載の方法であって、前記アセテートで保護されたヘキセンが、5−ヘキセン酸(5−hexenoic acid)又はそのエステルであり、かつ前記5−デセニルアセテートの誘導体が5−デセン酸(5−decenoic acid)又はその塩又はエステルであり、前記方法が、5−デセン酸又はその塩を再結晶化し、5−デセン酸又はその塩のトランス対シスの異性体比率を増加し;及び 5−デセン酸又はその塩又はエステルを、5−デセノールへと還元し;
5−デセノールをアセチル化して、90パーセント以上のトランス対シスの比率を有する5−デセニルアセテートを生成する、上記過程からなる、請求項90記載の方法。
【請求項106】
5−デセニルアセテートを合成するための方法であって、触媒823の存在下で1−ヘキセンの自己メタセシスを行って、5−デセンとエチレンの混合物を生成し;
該混合物からエチレンを除去し;
5−デセンを、5−ヘキセン−1−Rの化学式を有する保護されたヘキセンと、触媒823の存在下でクロスメタセシスを行って、80:20以上のトランス:シス比を有する1−ヘキセンと5−デセニルアセテートを生成し、5−ヘキセン−1−RにおいてRはアルコール、アセテート、エーテル、ハライド又はエステルを含み;真空下でクロスメタセシスの過程を行って生成した通りの1−ヘキセンを除去し;及び30パーセント以上の総収率で5−デセニルアセテートを生成する、上記の過程よりなる、5−デセニルアセテートを合成する方法。
【請求項107】
前記保護されたヘキセンが5−ヘキセン−1−イルアセテート又は5−ヘキセン−1− オールから選択された、請求項106記載の方法。
【請求項108】
前記RグループがTHP,TMS又はEVEエーテル、安息香酸又はプロピオン酸エステル、又は塩化、臭化又は沃化ハロゲン化物から選択された、請求項106記載の方法。
【請求項109】
5−デセニルアセテートを合成する方法であって、真空下かつ触媒の存在下で、5−ヘキセニルアセテートの自己メタセシスを行って、1,10−ジアセトキシ−5−デセンを生成し;及び触媒の存在下で1,10−ジアセトキシ−5−デセンと5−デセンのクロスメタセシスを行って、5−デセニルアセテートを生成する、上記の過程からなる、5−デセニルアセテートを合成する方法。
【請求項1】
メタセシス産物を合成するための方法であって、クラスIからIVより選択されたメタセシス触媒の存在下で、末端オレフィンと内部オレフィンとをクロスメタセシスし、メタセシス産物と副生成物を生成し;
反応チャンバーの外に該副生成物が蒸発する様な十分に高い温度及び/又は十分に低い圧力の条件を適用する、上記の過程よりなる、メタセシス産物を合成するための方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、メタセシス出発オレフィンがR−(CH=CH)k(CH2)n(CHX)g(CH2)m−Hの形態であって、ここでXは水素、アルコール、アセテート、カルボキシレートエステル、カルボン酸、アルデヒド、ハライド、又はトシラート(tosylate)、メシラート(mesylate)、又はそれらの誘導体であって、かつnとmはそれぞれゼロ及び20以下の整数から選択され、RはH,CH2又は(CH2)n(CHX)g(CH2)m−Hから選択され、かつ、第2のメタセシス触媒の存在下で、第1の産物を、QCH(CH2)rの形態の第2のアルファオレフィンとクロスメタセシスし、H(CH2)m(CHX)g(CH2)n(CH=CH)p(CH2)rM又はそれらの誘導体の形態である第2の産物及びCH2Zの形態である第2の副生成物を、反応チャンバーの外に該第2の副生成物が蒸発する様な、十分に高い温度及び/又は十分に低い圧力の条件下で生成し、前記QCH(CH2)rにおいてQはCH2又はCH(CH2)rMから選択され、rはゼロ及び20以下の整数から選択され、かつMはアルコール、アセテート、カルボキシレートエステル、カルボン酸、アルデヒド、ハライド、水素、又はそれらの誘導体であって、前記H(CH2)m(CHX)g(CH2)n(CH=CH)p(CH2)rMにおいてpはmとnの合計以下であり、かつ前記CH2ZにおいてZはCH2又はCH(CH2)n(CHX)g(CH2)mCH3から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
メタセシス出発オレフィンが、2から22個の炭素を含んでいるアルケニルエステル及びその誘導体、2から22個の炭素を含んでいるアルケニルハライド及びその誘導体、4から40個の炭素を含んでいるアルファ、オメガ−アルケニルジエステル及びその誘導体、4から40個の炭素を含んでいるアルファ、オメガ−アルケニルジハライド及びその誘導体、2から44個の炭素を含んでいるアルケン、2から22個の炭素を含んでいるアルケノール、又は4から40個の炭素を含んでいるアルケンジオールからなる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
メタセシス出発オレフィンが、2から10個の炭素を含んでいるアルケニルエステル及びその誘導体、2から10個の炭素を含んでいるアルケニルハライド及びその誘導体、4から20個の炭素を含んでいるアルファ、オメガ−アルケニルジエステル及びその誘導体、4から20個の炭素を含んでいるアルファ、オメガ−アルケニルジハライド及びその誘導体、2から20個の炭素を含んでいるアルケン、2から10個の炭素を含んでいるアルケノール、又は4から20個の炭素を含んでいるアルケンジオールからなる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
メタセシス出発オレフィンが、1−ヘキセン、5−デセン、1−ブテン、3−ヘキセン、5−ヘキセニルアセテート、5−ヘキセニルクロライド、1,10−ジアセトキシ−5−デセン、1,10−ジクロロ−5−デセン、1−ブロモ−3−ヘキセン、1−クロロ−3−ヘキセン、1−ドデセン(dodecene)、4−ペンテニルクロライド、1,8−ジクロロ−4−オクテン、4−ペンテニルアセテート、1,8−ジアセトキシ−4−オクテン、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、1,4−ジクロロ−2−ブテン、11−ドコセン(docosene)、メチル5−エイコセノエート(eicosenoate)、5−エイコセニルアセテート(eicosneyl acetate)、メチル11−エイコセノエート(eicosenoate)、又は11−エイコセニルアセテート(eicosneyl acetate)の内の少なくとも一つからなる、請求項1記載の方法。
【請求項6】
メタセシス産物が、H(CH2)m(CHX)g(CH2)n(CH=CH)p(CH2)rMの形態の第2産物からなる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
メタセシス産物が、5−デセニルアセテート、メチル5−デセノエート、9−テトラデセニルホルメート、9−テトラデセニルクロライド、9−テトラデセニルアセテート、11−テトラデセニルアセテート、メチル11−テトラデセノエート、11−テトラデセニルクロライド、メチル5−ヘキサデセノエート、又は8,10−ドデカジエノール、又はそれらの酸類、塩類、エステル類である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
メタセシス触媒が、触媒823,801,876,848,826,785,816,794,846,824又は794の内の一つからなる、請求項2記載の方法。
【請求項9】
メタセシス産物を合成するための方法であって、第1の内部オレフィンを選択し、第2の内部オレフィンを選択し、前記第1の内部オレフィンと前記第2の内部オレフィンとを、クラスIからIVのメタセシス触媒より選択されたメタセシス触媒の存在下でクロスメタセシスしてメタセシス産物を生成する、上記過程からなる、メタセシス産物を合成するための方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法であって、メタセシス出発オレフィンがR−(CH=CH)k(CH2)n(CHX)g(CH2)m−Hの形態であって、ここでXは水素、アルコール、アセテート、カルボキシレートエステル、カルボン酸、アルデヒド、ハライド、又はトシラート(tosylate)、メシラート(mesylate)、又はそれらの誘導体であって、かつnとmはそれぞれゼロ及び20以下の整数から選択され、RはH,CH2又は(CH2)n(CHX)g(CH2)m−Hから選択され、かつ、第2のメタセシス触媒の存在下で、第1の産物を、QCH(CH2)rの形態の第2のアルファオレフィンとクロスメタセシスし、H(CH2)m(CHX)g(CH2)n(CH=CH)p(CH2)rM又はそれらの誘導体の形態である第2の産物及びCH2Zの形態である第2の副生成物を、反応チャンバーの外に該第2の副生成物が蒸発する様な、十分に高い温度及び/又は十分に低い圧力の条件下で生成し、前記QCH(CH2)rにおいてQはCH2又はCH(CH2)rMから選択され、rはゼロ及び20以下の整数から選択され、かつMはアルコール、アセテート、カルボキシレートエステル、カルボン酸、アルデヒド、ハライド、水素、又はそれらの誘導体であって、前記H(CH2)m(CHX)g(CH2)n(CH=CH)p(CH2)rMにおいてpはmとnの合計以下であり、かつ前記CH2ZにおいてZはCH2又はCH(CH2)n(CHX)g(CH2)mCH3から選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
メタセシス出発オレフィンが、2から22個の炭素を含んでいるアルケニルエステル及びその誘導体、2から22個の炭素を含んでいるアルケニルハライド及びその誘導体、4から40個の炭素を含んでいるアルファ、オメガ−アルケニルジエステル及びその誘導体、4から40個の炭素を含んでいるアルファ、オメガ−アルケニルジハライド及びその誘導体、2から44個の炭素を含んでいるアルケン、2から22個の炭素を含んでいるアルケノール、又は4から40個の炭素を含んでいるアルケンジオールからなる、請求項9記載の方法。
【請求項12】
メタセシス出発オレフィンが、2から10個の炭素を含んでいるアルケニルエステル及びその誘導体、2から10個の炭素を含んでいるアルケニルハライド及びその誘導体、4から20個の炭素を含んでいるアルファ、オメガ−アルケニルジエステル及びその誘導体、4から20個の炭素を含んでいるアルファ、オメガ−アルケニルジハライド及びその誘導体、2から20個の炭素を含んでいるアルケン、2から10個の炭素を含んでいるアルケノール、又は4から20個の炭素を含んでいるアルケンジオールからなる、請求項9記載の方法。
【請求項13】
メタセシス出発オレフィンが、1−ヘキセン、5−デセン、1−ブテン、3−ヘキセン、5−ヘキセニルアセテート、5−ヘキセニルクロライド、1,10−ジアセトキシ−5−デセン、1,10−ジクロロ−5−デセン、1−ブロモ−3−ヘキセン、1−クロロ−3−ヘキセン、1−ドデセン(dodecene)、4−ペンテニルクロライド、1,8−ジクロロ−4−オクテン、4−ペンテニルアセテート、1,8−ジアセトキシ−4−オクテン、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、1,4−ジクロロ−2−ブテン、11−ドコセン(docosene)、メチル5−エイコセノエート(eicosenoate)、5−エイコセニルアセテート(eicosneyl acetate)、メチル11−エイコセノエート(eicosenoate)、又は11−エイコセニルアセテート(eicosneyl acetate)の内の少なくとも一つからなる、請求項9記載の方法。
【請求項14】
メタセシス産物が、H(CH2)m(CHX)g(CH2)n(CH=CH)p(CH2)rMの形態の第2の産物又はそれらの誘導体からなる、請求項9記載の方法。
【請求項15】
メタセシス産物が、5−デセニルアセテート、メチル5−デセノエート、9−テトラデセニルホルメート、9−テトラデセニルクロライド、9−テトラデセニルアセテート、11−テトラデセニルアセテート、メチル11−テトラデセノエート、11−テトラデセニルクロライド、メチル5−ヘキサデセノエート、又は8,10−ドデカジエノール、又はそれらの酸類、塩類、エステル類である、請求項9記載の方法。
【請求項16】
メタセシス触媒が、触媒823,801,876,848,826,785,816,794,846,824又は794の内の一つからなる、請求項9記載の方法。
【請求項17】
メタセシス産物を合成するための方法であって、第1の末端オレフィンを選択し、第2の末端オレフィンを選択し、前記第1の末端オレフィンと前記第2の末端オレフィンとを、クラスIからIVのメタセシス触媒より選択されたメタセシス触媒の存在下でクロスメタセシスしてメタセシス産物及び副生成物を生成し;及び、反応チャンバーの外に該副生成物が蒸発する様な十分に高い温度及び/又は十分に低い圧力の条件を適用する、上記の過程からなる、メタセシス産物を合成するための方法。
【請求項18】
請求項17記載の方法であって、メタセシス出発オレフィンがR−(CH=CH)k(CH2)n(CHX)g(CH2)m−Hの形態であって、ここでXは水素、アルコール、アセテート、カルボキシレートエステル、カルボン酸、アルデヒド、ハライド、又はトシラート(tosylate)、メシラート(mesylate)、又はそれらの誘導体であって、かつnとmはそれぞれゼロ及び20以下の整数から選択され、RはH,CH2又は(CH2)n(CHX)g(CH2)m−Hから選択され、かつ、第2のメタセシス触媒の存在下で、第1の産物を、QCH(CH2)rの形態の第2のアルファオレフィンとクロスメタセシスし、H(CH2)m(CHX)g(CH2)n(CH=CH)p(CH2)rM又はそれらの誘導体の形態である第2の産物及びCH2Zの形態である第2の副生成物を、反応チャンバーの外に該第2の副生成物が蒸発する様な、十分に高い温度及び/又は十分に低い圧力の条件下で生成し、前記QCH(CH2)rにおいてQはCH2又はCH(CH2)rMから選択され、rはゼロ及び20以下の整数から選択され、かつMはアルコール、アセテート、カルボキシレートエステル、カルボン酸、アルデヒド、ハライド、水素、又はそれらの誘導体であって、前記H(CH2)m(CHX)g(CH2)n(CH=CH)p(CH2)rMにおいてpはmとnの合計以下であり、かつ前記CH2ZにおいてZはCH2又はCH(CH2)n(CHX)g(CH2)mCH3から選択される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
メタセシス出発オレフィンが、2から22個の炭素を含んでいるアルケニルエステル及びその誘導体、2から22個の炭素を含んでいるアルケニルハライド及びその誘導体、4から40個の炭素を含んでいるアルファ、オメガ−アルケニルジエステル及びその誘導体、4から40個の炭素を含んでいるアルファ、オメガ−アルケニルジハライド及びその誘導体、2から44個の炭素を含んでいるアルケン、2から22個の炭素を含んでいるアルケノール、又は4から40個の炭素を含んでいるアルケンジオールからなる、請求項17記載の方法。
【請求項20】
メタセシス出発オレフィンが、2から10個の炭素を含んでいるアルケニルエステル及びその誘導体、2から10個の炭素を含んでいるアルケニルハライド及びその誘導体、4から20個の炭素を含んでいるアルファ、オメガ−アルケニルジエステル及びその誘導体、4から20個の炭素を含んでいるアルファ、オメガ−アルケニルジハライド及びその誘導体、2から20個の炭素を含んでいるアルケン、2から10個の炭素を含んでいるアルケノール、又は4から20個の炭素を含んでいるアルケンジオールからなる、請求項17記載の方法。
【請求項21】
メタセシス出発オレフィンが、1−ヘキセン、5−デセン、1−ブテン、3−ヘキセン、5−ヘキセニルアセテート、5−ヘキセニルクロライド、1,10−ジアセトキシ−5−デセン、1,10−ジクロロ−5−デセン、1−ブロモ−3−ヘキセン、1−クロロ−3−ヘキセン、1−ドデセン(dodecene)、4−ペンテニルクロライド、1,8−ジクロロ−4−オクテン、4−ペンテニルアセテート、1,8−ジアセトキシ−4−オクテン、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、1,4−ジクロロ−2−ブテン、11−ドコセン(docosene)、メチル5−エイコセノエート(eicosenoate)、5−エイコセニルアセテート(eicosneyl acetate)、メチル11−エイコセノエート(eicosenoate)、又は11−エイコセニルアセテート(eicosneyl acetate)の内の少なくとも一つからなる、請求項17記載の方法。
【請求項22】
メタセシス産物が、H(CH2)m(CHX)g(CH2)n(CH=CH)p(CH2)rMの形態の第2の産物又はそれらの誘導体からなる、請求項17記載の方法。
【請求項23】
メタセシス産物が、5−デセニルアセテート、メチル5−デセノエート、9−テトラデセニルホルメート、9−テトラデセニルクロライド、9−テトラデセニルアセテート、11−テトラデセニルアセテート、メチル11−テトラデセノエート、11−テトラデセニルクロライド、メチル5−ヘキサデセノエート、又は8,10−ドデカジエノール、又はそれらの酸類、塩類、エステル類である、請求項17記載の方法。
【請求項24】
メタセシス産物の収率が90%以上である、請求項17記載の方法。
【請求項25】
メタセシス触媒が、触媒823,801,876,848,826,785,816,794,846,824又は794の内の一つからなる、請求項17記載の方法。
【請求項26】
メタセシス産物を合成するための方法であって、第一の末端オレフィンを選択し、 第ニの末端オレフィンを選択し、 前記第1の末端オレフィンと前記第2の末端オレフィンとを、クラスIII 又はクラスIVメタセシス触媒より選択されたメタセシス触媒の存在下でクロスメタセシスして、反応容器内において該容器の圧力を低下させることなくメタセシス産物を生成する、上記過程からなる、メタセシス産物を合成するための方法。
【請求項27】
請求項26記載の方法であって、メタセシス出発オレフィンがR−(CH=CH)k(CH2)n(CHX)g(CH2)m−Hの形態であって、ここでXは水素、アルコール、アセテート、カルボキシレートエステル、カルボン酸、アルデヒド、ハライド、又はトシラート(tosylate)、メシラート(mesylate)、又はそれらの誘導体であって、かつnとmはそれぞれゼロ及び20以下の整数から選択され、RはH,CH2又は(CH2)n(CHX)g(CH2)m−Hから選択され、かつ、第2のメタセシス触媒の存在下で、第1の産物を、QCH(CH2)rの形態の第2のアルファオレフィンとクロスメタセシスし、H(CH2)m(CHX)g(CH2)n(CH=CH)p(CH2)rM又はそれらの誘導体の形態である第2の産物及びCH2Zの形態である第2の副生成物を、反応チャンバーの外に該第2の副生成物が蒸発する様な、十分に高い温度及び/又は十分に低い圧力の条件下で生成し、前記QCH(CH2)rにおいてQはCH2又はCH(CH2)rM から選択され、rはゼロ及び20以下の整数から選択され、かつMはアルコール、アセテート、カルボキシレートエステル、カルボン酸、アルデヒド、ハライド、水素、又はそれらの誘導体であって、前記H(CH2)m(CHX)g(CH2)n(CH=CH)p(CH2)rM においてpはmとnの合計以下であり、かつ前記CH2ZにおいてZはCH2又はCH(CH2)n(CHX)g(CH2)mCH3から選択される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
メタセシス出発オレフィンが、2から22個の炭素を含んでいるアルケニルエステル及びその誘導体、2から22個の炭素を含んでいるアルケニルハライド及びその誘導体、4から40個の炭素を含んでいるアルファ、オメガ−アルケニルジエステル及びその誘導体、4から40個の炭素を含んでいるアルファ、オメガ−アルケニルジハライド及びその誘導体、2から44個の炭素を含んでいるアルケン、2から22個の炭素を含んでいるアルケノール、又は4から40個の炭素を含んでいるアルケンジオールからなる、請求項26記載の方法。
【請求項29】
メタセシス出発オレフィンが、2から10個の炭素を含んでいるアルケニルエステル及びその誘導体、2から10個の炭素を含んでいるアルケニルハライド及びその誘導体、4から20個の炭素を含んでいるアルファ、オメガ−アルケニルジエステル及びその誘導体、4から20個の炭素を含んでいるアルファ、オメガ−アルケニルジハライド及びその誘導体、2から20個の炭素を含んでいるアルケン、2から10個の炭素を含んでいるアルケノール、又は4から20個の炭素を含んでいるアルケンジオールからなる、請求項26記載の方法。
【請求項30】
メタセシス出発オレフィンが、1−ヘキセン、5−デセン、1−ブテン、3−ヘキセン、5−ヘキセニルアセテート、5−ヘキセニルクロライド、1,10−ジアセトキシ−5−デセン、1,10−ジクロロ−5−デセン、1−ブロモ−3−ヘキセン、1−クロロ−3−ヘキセン、1−ドデセン(dodecene)、4−ペンテニルクロライド、1,8−ジクロロ−4−オクテン、4−ペンテニルアセテート、1,8−ジアセトキシ−4−オクテン、1,4−ジアセトキシ−2−ブテン、1,4−ジクロロ−2−ブテン、11−ドコセン(docosene)、メチル5−エイコセノエート(eicosenoate)、5−エイコセニルアセテート(eicosneyl acetate)、メチル11−エイコセノエート(eicosenoate)、又は11−エイコセニルアセテート(eicosneyl acetate)の内の少なくとも一つからなる、請求項26記載の方法。
【請求項31】
メタセシス産物が、H(CH2)m(CHX)g(CH2)n(CH=CH)p(CH2)rMの形態の第2の産物又はそれらの誘導体からなる、請求項26記載の方法。
【請求項32】
前記メタセシス産物が、5−デセニルアセテート、メチル5−デセノエート、9−テトラデセニルホルメート、9−テトラデセニルクロライド、9−テトラデセニルアセテート、11−テトラデセニルアセテート、メチル11−テトラデセノエート、11−テトラデセニルクロライド、メチル5−ヘキサデセノエート、又は8,10−ドデカジエノール、又はそれらの酸類、塩類、エステル類である、請求項26記載の方法。
【請求項33】
メタセシス産物の収率が90パーセント以上である、請求項26記載の方法。
【請求項34】
メタセシス触媒が、触媒823,801,876,848,826,785,816,794,846,824又は794の内の一つからなる、請求項26記載の方法。
【請求項35】
オレフィンのアルコール、アセテート、アルデヒド、カルボン酸又はそれらの誘導体を反応チャンバー内で合成するための方法であって、R−(CH=CH)k(CH2)n(CHX)g(CH2)m−Hの形態からなる第1のアルファオレフィンであって、ここでXは水素、アルコール、アセテート、カルボキシレートエステル、カルボン酸、アルデヒド、ハライド、又はトシラート(tosylate)、メシラート(mesylate)、又はそれらの誘導体であって、かつnとmはそれぞれゼロ及び20以下の整数から選択され、該第1のアルファオレフィンを、第1のメタセシス触媒の存在下で自己メタセシスを行って、(CH=CH)k[(CH2)n(CHX)g(CH2)m−H]2の形態である第1の産物とRHC=CHRの形態である第1の副生成物を生成し、RHC=CHRにおいてRはH,CH2,又は(CH2)n(CHX)g(CH2)m−Hから選択され、及び第2のメタセシス触媒の存在下で、該第1の産物を、QCH(CH2)rMの形態の第2のアルファオレフィンとクロスメタセシスを行って、H(CH2)m(CHX)g(CH2)n(CH=CH)p(CH2)rM又はそれらの誘導体の形態である第2の産物及びCH2Zの形態である第2の副生成物を、反応チャンバーの外に該第2の副生成物が蒸発する様な、十分に高い温度及び/又は十分に低い圧力の条件下で生成し、前記QCH(CH2)rMにおいてQはCH2又はCH(CH2)rMから選択され、rはゼロ及び20以下の整数から選択され、かつMはアルコール、アセテート、カルボキシレートエステル、カルボン酸、アルデヒド、ハライド、水素、又はそれらの誘導体であって、前記H(CH2)m(CHX)g(CH2)n(CH=CH)p(CH2)rMにおいてpはmとnの合計以下であり、かつ前記CH2ZにおいてZはCH2又はCH(CH2)n(CHX)g(CH2)mCH3 から選択される、オレフィンのアルコール、アセテート、アルデヒド、カルボン酸又はそれらの誘導体を反応チャンバー内で合成するための方法。
【請求項36】
第1又は第2のメタセシス触媒が同一であり、クラスIからIVのNメタセシス触媒からなる、請求項35記載の方法。
【請求項37】
自己メタセシスの過程が、反応チャンバーの外に前記第1の副生成物が蒸発する様な、十分に高い温度及び/又は十分に低い圧力の条件下で行われる、請求項35記載の方法。
【請求項38】
第1の産物が、5−デセン又は5−デセン酸(5−decenoic acid)又はそれらの塩又はエステルである、請求項35記載の方法。
【請求項39】
第2の産物が、5−デセニルアセテート又はその酸、塩又はエステルである、請求項35記載の方法。
【請求項40】
第2の産物が、9−テトラデセニルホルメート又はその酸、塩又はエステルである、請求項35記載の方法。
【請求項41】
第1の産物が11−テトラデセニルアセテート又は11−テトラデセン酸(11−tetradecenoic acid)又はそれらの塩又はエステルである、請求項35記載の方法。
【請求項42】
第1の産物が、5−ヘキサデセニルアセテート又はメチル5−ヘキサデセン酸(5−hexadecenoic acid)又はそれらの塩又はエステルである、請求項35記載の方法。
【請求項43】
第1の産物が11−ドコセン(11−docosene)又は11−ドコセン酸(11−docosenoic acid)又はそれらの塩又はエステルである、請求項35記載の方法。
【請求項44】
第2の産物が(5R,6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド(hexadecanolide)又はその酸、塩又はエステルである、請求項43記載の方法。
【請求項45】
第1/第2の触媒が、触媒823,801,876,848,826,785,816,794,846,824又は794の内の一つからなる、請求35記載の方法。
【請求項46】
オメガ−ハロアルキル産物を合成する方法であって、アルファ−オメガ−ジアセトキシアルケンを選択し;アルファ−オメガ−ジハライドを選択し;及び該アルファ−オメガ−ジアセトキシアルケンと該アルファ−オメガ−ジハライドとを、メタセシス触媒の存在下でクロスメタセシスを行い、オメガ−ハロアルケニルアセテートを生成する、上記過程よりなる、オメガ−ハロアルキル産物を合成する方法。
【請求項47】
前記オメガ−ハロアルケニルアセテート、前記アルファ−オメガ−ジアセトキシアルケン、及び前記アルファ−オメガ−ジハライドが、真空又は産物の高い変換率を得るために十分に高い温度の下で、アルファ−オレフィンの自己メタセシスによって生成された、請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記オメガ−ハロアルケニルアセテート、前記アルファ−オメガ−ジアセトキシアルケン、及び前記アルファ−オメガ−ジハライドが、それぞれの第1、第2及び第3の沸点を有し、かつ該第1の沸点が該第2及び第3の沸点から5℃以上異なっている、請求項46記載の方法。
【請求項49】
前記オメガ−ハロアルケニルアセテートを、前記アルファ−オメガ−ジアセトキシアルケン及び前記アルファ−オメガ−ジハライドより、蒸留によって分離することを更に含む、請求項46記載の方法。
【請求項50】
前記オメガ−ハロアルケニルアセテートを還元し、かつ脱アセチル化して、オメガ−ハロアルカノールを生成することを更に含む、請求項46記載の方法。
【請求項51】
前記オメガ−ハロアルカノールが、8−ブロモオクタン−1−オール(8−bromooctan−1−ol)又は8−クロロオクタン−1−オール(8−chlorooctan−1−ol)である、請求項50記載の方法。
【請求項52】
前記オメガ−ハロアルカノールが、6−ブロモヘキサン−1−オ−ル及び6−クロロヘキサン−1−オ−ルである、請求項50記載の方法。
【請求項53】
前記オメガ−ハロアルケニルアセテートを還元して、オメガ−ハロアルカニルアセテートを生成することを更に含む、請求項46記載の方法。
【請求項54】
前記オメガ−ハロアルケニルアセテートが8−クロロ−5−オクテニルアセテート(8−chloro−5−octenyl acetate)である、請求項46記載の方法。
【請求項55】
メタセシス触媒がクラスIからIVより選択された触媒からなる、請求項46記載の方法。
【請求項56】
メタセシス触媒が、触媒823,801,876,848,826,785,816,794,846,824又は794の内の一つからなる、請求項55記載の方法。
【請求項57】
立体特異的(stereo−specific )なメタセシス産物を合成するための方法であって、 オレフィンを選択し;
ホウ酸ビニル(vinyl borate)を選択し;
該オレフィンと該ホウ酸ビニルとを、クラスI からIVのメタセシス触媒から選択されたメタセシス触媒の存在下でクロスメタセシスを行って立体特異的なメタセシス産物を生成する、上記過程からなる、立体特異的なメタセシス産物を合成するための方法。
【請求項58】
末端オレフィンをホウ酸ビニルとクロスメタセシスして、アルケニルホウ酸エステルを得る、請求項57記載の方法。
【請求項59】
内部オレフィンをホウ酸ビニルとクロスメタセシスして、アルケニルホウ酸エステルを得る、請求項57記載の方法。
【請求項60】
前記クロスメタセシス産物を蒸留又はクロマトグラフィーで精製することが可能である、請求項58記載の方法。
【請求項61】
前記クロスメタセシス産物を蒸留又はクロマトグラフィーで精製することが可能である、請求項59記載の方法。
【請求項62】
前記クロスメタセシス産物を蒸留によって精製して、純粋なトランス及びシスのアルケニルホウ酸エステルを得ることが可能である、請求項60記載の方法。
【請求項63】
前記クロスメタセシス産物を蒸留によって精製して、純粋なトランス及びシスのアルケニルホウ酸エステルを得ることが可能である、請求項61記載の方法。
【請求項64】
適切な反応条件によって、前記クロスメタセシス産物を純粋なトランス−ハロ−アルケン又は純粋なシス−ハロ−アルケンに変換することが可能である、請求項62記載の方法。
【請求項65】
ホウ酸ビニルと内部オレフィンのトランス:シス混合物とのクロスメタセシス反応を用いて、最初のオレフィン混合物のトランス異性体の比率を増加させることが可能である、請求項57記載の方法。
【請求項66】
オレフィン産物を得るために、前記アルケニルホウ酸エステルをスズキ条件下で反応させた、請求項57記載の方法。
【請求項67】
オレフィン産物を得るために、前記アルケニルホウ酸エステルをパラジウム触媒条件下で反応させた、請求項57記載の方法。
【請求項68】
前記産物が、E9,Z11−ヘキサデカジエナール(E9,Z11−hexadecadienal)である、請求項57記載の方法。
【請求項69】
前記産物が、E−5−デセニルアセテート(E−5−decenylacetate)である、請求項57記載の方法。
【請求項70】
前記生成物が、E−11−テトラデセニルアセテート(E−11−tetradecenyl acetate)である、請求項57記載の方法。
【請求項71】
メタセシス触媒が、触媒823,801,876,848,826,785,816,794,846,824又は794の内の一つからなる、請求項57記載の方法。
【請求項72】
メタセシス産物又は反応物を含んでいる反応混合液からメタセシス触媒を除去する方法であって、一定量の水溶性ホスフィン(phosphine)又は水溶性ホスファイト(phosphite)を、メタセシス触媒がクラスIからIVのメタセシス触媒から選択された反応混合液中へ導入し、該反応混合液を混合して水層を形成し;及びメタセシス触媒を含んでいる水層を除去する、上記の過程からなる、メタセシス産物又は反応物を含んでいる反応混合液からメタセシス触媒を除去する方法。
【請求項73】
前記水溶性ホスフィンがトリスヒドロキシメチルホスフィン(trishydroxymethyl phosphine)である、請求項72記載の方法。
【請求項74】
前記水溶性ホスフィン又は水溶性ホスファイトが、図10Bに示された化学式を有する、非環式ホスフィン又はホスファイトである、請求項72記載の方法。
【請求項75】
前記水溶性ホスフィン又は水溶性ホスファイトが、図10Cに示された化学式を有する、環式ホスフィン又はホスファイトである、請求項72記載の方法。
【請求項76】
反応混合液を室温以上に加熱することを更に含む、請求項72記載の方法。
【請求項77】
請求項72記載の方法であって、前記水層を除去した後に更に、反応混合液に水を添加し;
該反応混合液を混合して、はっきりとした色彩を有する反応の結果生じる水層を形成し;
メタセシス触媒を含んでいる、該反応の結果生じる水層を除去し;及び該反応の結果生じる水層が実質的に無色になるまで、添加、混合、及び除去の過程を繰り返す、上記の過程を更に含む、請求項72記載の方法。
【請求項78】
メタセシス触媒が、触媒823,801,876,848,826,785,816,794,846,824又は794の内の一つからなる、請求項72記載の方法。
【請求項79】
1モルのメタセシス触媒に対して、前記水溶性ホスフィンの量が6から100モルである、請求項72記載の方法。
【請求項80】
ポリヒドロキシルホスフィン(polyhydroxyl phosphine)又はポリヒドロキシアリールホスフィン(polyhydroxyaryl phosphine)を調製するための方法であって、ポリヒドロキシアルキル−ヒドロキシメチルホスフォニウムハライド塩(polyhydroxyalkyl−hydroxymethyl phosphoniun halide salt)又はポリヒドロキシアリール−ヒドロキシメチルホスフォニウムハライド塩(polyhydroxyaryl−hydroxymethyl phosphoniun halide salt)を選択し;
該塩を、実質的に等モルの塩基と処理して、ポリヒドロキシルホスフィン又はポリヒドロキシアリールホスフィンを生成する、上記過程からなる、ポリヒドロキシルホスフィン又はポリヒドロキシアリールホスフィンを調製するための方法。
【請求項81】
前記ポリヒドロキシアルキル−ヒドロキシメチルホスフォニウムハライド塩が、テトラキスヒドロキシメチルホスフォニウムクロライドであり、かつ前記ポリヒドロキシルホスフィンがトリスヒドロキシメチルホスフィンである、請求項80記載の方法。
【請求項82】
前記塩基が水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムである、請求項81記載の方法。
【請求項83】
調製がイソプロパノール溶液中で行われる、請求項82記載の方法。
【請求項84】
(5R,6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド((5R,6S)−6−acetoxy−5−hexadecanolide)を合成するための方法であって、メドウフォームオイル(meadowfoam oil)、メチル5−ヘキサデセノエート、ヘキセン酸(hexenoic acid)誘導体、ヘキセナール誘導体又はヘキセノール誘導体を、1−ドデセン(1−dodecene)又は11−ドコセン(11−docosene)と、メタセシス触媒の存在下においてクロスメタセシスを行い、二重結合を有する第1産物を生成し;
二重結合を酸化して第2産物を生成し;及び該第2産物をラクトン化及びアセチル化して、(5R,6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライド(hexadecanolide)を生成する、上記の過程からなる、(5R,6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライドを合成するための方法。
【請求項85】
メタセシス触媒の存在下かつ50mmHg以下の気圧の真空下において、1−ドデセンの自己メタセシスを行うことによって、前記11−ドコセンが生成した、請求項84記載の方法。
【請求項86】
(5R,6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライドを、グラムあたり3.00ドル以下の費用で生成することを更に含む、請求項84記載の方法。
【請求項87】
(5R,6S)−6−アセトキシ−5−ヘキサデカノライドを、40時間以下の時間内で生成することを更に含む、請求項84記載の方法。
【請求項88】
前記メタセシス触媒が、クラスIからIVより選択された触媒である、請求項84記載の方法。
【請求項89】
前記メタセシス触媒が、触媒823,801,876,848,826,785,816,794,846,824又は794の内の一つからなる、請求項88記載の方法。
【請求項90】
5−デセニルアセテート(5−decenyl acetate)を合成する方法であって、第1触媒の存在下で1−ヘキセンの自己メタセシスを行って、産物を生成し、第2触媒の存在下で、該産物をアルコール又はアセテートで保護されたヘキセン又はその誘導体とクロスメタセシスを行い、5−デセニルアセテート又はその誘導体及び副生成物を生成する、上記の過程からなる、5−デセニルアセテートを合成する方法。
【請求項91】
前記第1又は第2触媒が触媒823である、請求項90記載の方法。
【請求項92】
前記第1又は第2触媒が触媒848である、請求項90記載の方法。
【請求項93】
前記産物が5−デセンである、請求項90記載の方法。
【請求項94】
クロスメタセシスの過程の間に真空とすることを更に含む、請求項90記載の方法。
【請求項95】
前記真空が50mmHg以下の気圧を有する、請求項94記載の方法。
【請求項96】
前記副生成物が1−ヘキセンである、請求項90記載の方法。
【請求項97】
5−デセニルアセテートを40パーセント以上の総収量で生成することを更に含む、請求項90記載の方法。
【請求項98】
5−デセニルアセテートを70パーセント以上の総収量で生成することを更に含む、請求項97記載の方法。
【請求項99】
5−デセニルアセテートを、80:20以上のトランス:シス異性体比において生成することを更に含む、請求項90記載の方法。
【請求項100】
5−デセニルアセテートを、グラムあたり0.50ドル以下の費用で生成することを更に含む、請求項90記載の方法。
【請求項101】
5−デセニルアセテートを、95パーセント以上の純度で、80:20以上のトランス:シス異性体比において、100時間以下の時間内で生成することを更に含む、請求項90記載の方法。
【請求項102】
5−デセニルアセテートを、25時間以下の時間内で生成することを更に含む、請求項101記載の方法。
【請求項103】
前記第1又は第2触媒が、クラスIからIVのメタセシス触媒より選択された触媒である、請求項90記載の方法。
【請求項104】
前記第1及び第2触媒が同一である、請求項90記載の方法。
【請求項105】
請求項90記載の方法であって、前記アセテートで保護されたヘキセンが、5−ヘキセン酸(5−hexenoic acid)又はそのエステルであり、かつ前記5−デセニルアセテートの誘導体が5−デセン酸(5−decenoic acid)又はその塩又はエステルであり、前記方法が、5−デセン酸又はその塩を再結晶化し、5−デセン酸又はその塩のトランス対シスの異性体比率を増加し;及び 5−デセン酸又はその塩又はエステルを、5−デセノールへと還元し;
5−デセノールをアセチル化して、90パーセント以上のトランス対シスの比率を有する5−デセニルアセテートを生成する、上記過程からなる、請求項90記載の方法。
【請求項106】
5−デセニルアセテートを合成するための方法であって、触媒823の存在下で1−ヘキセンの自己メタセシスを行って、5−デセンとエチレンの混合物を生成し;
該混合物からエチレンを除去し;
5−デセンを、5−ヘキセン−1−Rの化学式を有する保護されたヘキセンと、触媒823の存在下でクロスメタセシスを行って、80:20以上のトランス:シス比を有する1−ヘキセンと5−デセニルアセテートを生成し、5−ヘキセン−1−RにおいてRはアルコール、アセテート、エーテル、ハライド又はエステルを含み;真空下でクロスメタセシスの過程を行って生成した通りの1−ヘキセンを除去し;及び30パーセント以上の総収率で5−デセニルアセテートを生成する、上記の過程よりなる、5−デセニルアセテートを合成する方法。
【請求項107】
前記保護されたヘキセンが5−ヘキセン−1−イルアセテート又は5−ヘキセン−1− オールから選択された、請求項106記載の方法。
【請求項108】
前記RグループがTHP,TMS又はEVEエーテル、安息香酸又はプロピオン酸エステル、又は塩化、臭化又は沃化ハロゲン化物から選択された、請求項106記載の方法。
【請求項109】
5−デセニルアセテートを合成する方法であって、真空下かつ触媒の存在下で、5−ヘキセニルアセテートの自己メタセシスを行って、1,10−ジアセトキシ−5−デセンを生成し;及び触媒の存在下で1,10−ジアセトキシ−5−デセンと5−デセンのクロスメタセシスを行って、5−デセニルアセテートを生成する、上記の過程からなる、5−デセニルアセテートを合成する方法。
【図1】
【図2】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図2I】
【図2J】
【図2K】
【図2L】
【図2M】
【図2X】
【図2Y】
【図3】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図4】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図4H】
【図4I】
【図4J】
【図4K】
【図4L】
【図4M】
【図5】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図5H】
【図5I】
【図5J】
【図5K】
【図5L】
【図5M】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図2】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図2H】
【図2I】
【図2J】
【図2K】
【図2L】
【図2M】
【図2X】
【図2Y】
【図3】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図3G】
【図4】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図4H】
【図4I】
【図4J】
【図4K】
【図4L】
【図4M】
【図5】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図5E】
【図5F】
【図5G】
【図5H】
【図5I】
【図5J】
【図5K】
【図5L】
【図5M】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【公開番号】特開2011−178789(P2011−178789A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−84025(P2011−84025)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【分割の表示】特願2001−538323(P2001−538323)の分割
【原出願日】平成12年11月17日(2000.11.17)
【出願人】(502180185)
【出願人】(502180196)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84025(P2011−84025)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【分割の表示】特願2001−538323(P2001−538323)の分割
【原出願日】平成12年11月17日(2000.11.17)
【出願人】(502180185)
【出願人】(502180196)
【Fターム(参考)】
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