説明

フェーズドアレイアンテナ検査システム、フェーズドアレイアンテナ検査装置、フェーズドアレイアンテナ検査方法及びフェーズドアレイアンテナ

【課題】精度よく機能検査及び機能修正が可能なフェーズドアレイアンテナ検査システム、フェーズドアレイアンテナ検査装置及び検査方法を提供すること、及びこれらから得られた検査結果から精度よく機能修正されるフェーズドアレイアンテナを提供することにある。
【解決手段】送信側アンテナ素子20aと受信側アンテナ素子30a、送信側アンテナ素子20bと受信側アンテナ素子30b、それぞれを近接対向配置し、送信側アンテナ素子20bの位相を固定した状態で送信側アンテナ素子20aの位相を変化させ、受信電力を測定し、該測定結果から極小値を算出することによりフェーズドアレイアンテナ2の機能検査を行い、位相のずれがある場合には位相のずれを修正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェーズドアレイアンテナの機能検査を行うためのフェーズドアレイアンテナ検査システム、フェーズドアレイアンテナ検査装置、フェーズドアレイアンテナ検査方法及び、該フェーズドアレイアンテナ検査システム、フェーズドアレイアンテナ検査装置あるいはフェーズドアレイアンテナ検査方法により得られた検査結果から機能修正されるフェーズドアレイアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電波の指向性(アンテナから出入りする電波の強さの角度特性)を電気的に制御可能なフェーズドアレイアンテナがある。このフェーズドアレイアンテナは概略以下のように構成されている。すなわち、N個のアンテナ素子それぞれに、電波の位相を任意に変化させる移相器が接続されている。分配合成器に入力された送信電波は、それぞれのアンテナ素子ごとの移相器に分配され、各移相器にて所望の位相変化(移相)がなされた後、各アンテナ素子から放射される。このとき、移相後の各電波がすべて同相となるような方向、つまり正弦波の位相が一致する方向に強く電波が放射される。
【0003】
このフェーズドアレイアンテナにおいては、理論的には移相器で指示したとおりに電波が放射されるはずであるが、例えば、製品不良、調整不良などにより製品として出荷する前から正常に機能しないものが混在している場合がある。また、製品として出荷され実際に使用された後においても、例えば、環境温度の変化、使用環境の変化により移相器の指示したとおりに電波が放射されない状態が生じ得る。そこで、従来から、移相器が正常に制御されアンテナパタンが正常に形成されているか等の機能検査が行われている。
【0004】
例えば、そのような機能検査をおこなうものとして従来から特許文献1に記載されたアクティブフェーズドアレイ方式のアレイアンテナ装置がある。このアレイアンテナ装置においては、複数のアンテナ素子に方向性結合器を介して増幅器が接続されており、各方向性結合器には検波器が接続され、この検波器により各増幅器の異常を検出し、移相器が正常に制御されているか否かの機能検査が行われている(特許文献1に記載の従来の技術)。さらに、この特許文献1には、温度環境の変化により検波器が正常な動作確認を行うことが困難になることから、この従来のアレイアンテナ装置を改良したアレイアンテナ装置(以下「特許文献1に係るアレイアンテナ装置」と言う)も開示されている。
【0005】
この特許文献1に係るアレイアンテナ装置は、発振器を掃引制御するとともに、複数の増幅器の一台を選択的に駆動して、発振器で掃引した出力信号を該増幅器を介して所定のアンテナ素子に導いて、このアンテナ素子の出力のスペクトラムをスペクトラム解析器を介して検出することにより、増幅器の動作確認を行うように構成している。このように構成することにより、温度変化に影響されることなく正確に安定した増幅器動作確認を実現している。
【0006】
また、この機能検査は、周辺の電波の影響を排除すべく電波暗室を使用して行われるのが一般的である。具体的には、この機能検査は、電波暗室内で電波を空間に放射し、その電波を受信することにより行われる。
【0007】
ここで、この電波暗室とは、外部からの電磁波の影響を受けず、また外部に電磁波を漏らさないように設計・施工されたシールド空間である。具体的には、この電波暗室は、空間全体を金属でシールドし、天井・壁の5面、あるいは床を含めた6面に電波吸収材を施工した施設である。この電波暗室を使用して空間放射にてフェーズドアレイアンテナの機能検査を行う場合、アンテナ間の距離は波長(約0.3m、周波数950MHz)より十分長い距離が必要となり、通常、アンテナ系の測定では3mが一般的である。周囲反射物による影響を回避し測定の正確さのため電波暗室を用いての測定となるが、その設備の大きさを考慮すると、10m×7m×6mの規模の設備が必要になる。
【0008】
このようにして機能検査が行われた結果、移相器が正常に制御されていないフェーズドアレイアンテナが発見された場合には、製品出荷前であれば、そのまま製品を出荷するわけには行かず、移相器が正常に制御される状態に修正する必要がある。しかしながら、上述した特許文献1には、製品として使用された後の増幅器に発生した異常の確認を行うのみで、製品出荷前の異常確認は出来ないうえ、異常が発見された後の前記修正も行っていない。
【0009】
また、前記電波暗室を新設するには、巨額の費用がかかる他、既設の場合であっても、本検査のためにタイミングよく使用できない場合がある。更に、アンテナの放射パタンごとに受信側アンテナを移動させて測定することになるほか、設備が大きいため設置、収納に時間がかかる等といった問題が生ずる。このように、電波暗室を使用して、製品を出荷するごとに検査を行うことは、特に、大量製造大量出荷するような製品においては、時間的にもコスト的にも問題が生じるが、未だ、これら問題を解決できる有効な検査装置、検査方法などは見当たらない。
【0010】
【特許文献1】特開平7−106839号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記問題点を解決すべくなされたものであり、第1の目的は、フェーズドアレイアンテナの機能検査の結果、移相器が正常に機能していないものが発見された場合に、移相器を正常に機能するように精度よく制御可能なフェーズドアレイアンテナ検査システム、フェーズドアレイアンテナ検査装置、フェーズドアレイアンテナ検査方法及び移相器が正常に機能し得るように制御されるフェーズドアレイアンテナを提供することにある。
【0012】
また、本発明の第2の目的は、簡易・迅速・安価及び精度よくフェーズドアレイアンテナの機能検査ができるフェーズドアレイアンテナ検査システム、フェーズドアレイアンテナ検査装置、フェーズドアレイアンテナ検査方法及び該機能検査を経て移相器が正常に機能し得るように制御されるフェーズドアレイアンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記問題点を解決すべく、本発明に係るフェーズドアレイアンテナ検査システムは、複数のアンテナ素子からなり電波を送信する第一のアンテナと、複数のアンテナ素子からなり前記第一のアンテナから送信された電波を受信する第二のアンテナと、前記第二のアンテナが受信した電波の受信電力を測定する受信電波測定手段と、前記受信電波測定手段の測定結果から受信電力の極小値を検出する極小値検出手段と、前記極小値検出手段によって検出された極小値に応じて前記第一のアンテナまたは第二のアンテナの位相を制御する移相器と、を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、複数のアンテナ素子からなる第一のアンテナから送信された電波を、複数のアンテナ素子からなる第二のアンテナにより受信することにより、第一のアンテナの機能検査を行うフェーズドアレイアンテナ検査装置であって、前記第二のアンテナが受信した電波の受信電力を測定する受信電波測定手段と、前記受信電波測定手段の測定結果から受信電力の極小値を検出する極小値検出手段と、前記極小値検出手段によって検出された極小値に応じて前記第一のアンテナの位相を制御する移相器と、を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、複数のアンテナ素子からなる第一のアンテナから送信された電波を、複数のアンテナ素子からなる第二のアンテナにより受信することにより、第二のアンテナの機能検査を行うフェーズドアレイアンテナ検査装置であって、前記第二のアンテナが受信した電波の受信電力を測定する受信電波測定手段と、前記受信電波測定手段の測定結果から受信電力の極小値を検出する極小値検出手段と、前記極小値検出手段によって検出された極小値に応じて前記第二のアンテナの位相を制御する移相器と、を有することを特徴とする。
【0016】
例えば、複数のアンテナ素子からなる同一の2つのパッチアンテナを近づけて正対させた状態で、1つ又は複数のアンテナ素子間に印加する位相を変えると、アンテナ素子間において位相差が180°となったときに、受信側アンテナにおける受信電力が最も小さい値を取る。この受信電力の最も小さい値が極小値である。移相器が正常に制御されている場合には、極小値は理論的に算出される極小値となるはずであるが、正常に機能していない場合には、実測値から得られる極小値と、理論的に算出される極小値との間にずれ(両極小値間における位相のずれ)が生じる。このずれを検出し、当該ずれを修正すれば、精度よい機能検査、更には精度よい機能修正が実現可能となる。
【0017】
また、前記第一のアンテナを構成する各アンテナ素子と、前記第二のアンテナを構成する各アンテナ素子とが近接対向配置されるように構成してもよい。第一のアンテナと第二のアンテナとを近接に配置しているため、周囲反射の影響を考慮する必要は殆どなくなる。よって、本発明を使用すれば、フェーズドアレイアンテナの機能検査において電波暗室のような大規模な設備は一切不要となる。ここで、近接とは、電波の波長より十分短い距離を意味し、例えば、周波数950MHz帯の電波の場合、目安としては、5cm以下である。
【0018】
また、前記第一のアンテナを構成するアンテナ素子と前記第二のアンテナを構成するアンテナ素子とは、近接対向配置されているアンテナ素子同士は電気的に強く結合し、それ以外のアンテナ素子同士は電気的に弱く結合するようにしてもよい。例えば、複数のアンテナ素子からなる2つの同一のパッチアンテナを近づけて正対させると、対向するアンテナ素子間においては受信電波の電力ロスは少ないが、対向していないそれ以外との間における受信電波の電力ロスは対向するアンテナ素子間における電力ロスに比べると格段に多い。このような関係を、「電気的に強く結合」あるいは「電気的に弱く結合」と称している。
【0019】
前記移相器が、第一のアンテナのうちの一のアンテナ素子と、該一のアンテナ素子に隣接する他のアンテナ素子との間の位相差を変化させ、前記受信電波測定手段が、前記第二のアンテナにより受信した電波の受信電力を測定し、該測定結果から極小値検出手段が受信電力の極小値を検出するようにしてもよい。極小値は、位相を変化させる毎に検出してもよいし、測定結果を総合的にチェックした後から検出するようにしてもよい。
【0020】
前記第一のアンテナは、複数のアンテナ素子からなる第一のアンテナ素子グループ及び第2のアンテナ素子グループとからなり、前記移相器が、前記第一のアンテナ素子グループと前記第二のアンテナ素子グループとの間の位相差を変化させ、前記受信電波測定手段が、前記第二のアンテナにより受信した電波の受信電力を測定し、該測定結果から極小値検出手段が受信電力の極小値を検出するようにしてもよい。
【0021】
例えば、本発明において極小値を求める手法として、第1のアンテナにおいて、単数の隣接するアンテナ素子間で位相を変化させる、あるいは、複数のアンテナ素子を1つのグループとして考え、グループ単位で位相に変化を与え、位相差を変化させる毎に電波の受信電力を測定することにより、該極小値が算出される。グループ毎に位相差を変化させることにより、アンテナ素子の数が多数であった場合には、機能検査の短縮化が図れる。
【0022】
前記移相器に加えられる位相、及び前記第一のアンテナあるいは第二のアンテナの各アンテナ素子に印加する電力から理論的に算出された受信電力の極小値である理論極小値となる位相を予め記憶する記憶手段を備え、前記極小値となる位相と前記理論極小値となる位相との間にずれがあった場合に、該ずれを補正する補正値を前記第一のアンテナあるいは第二のアンテナに対し送るようにしてもよい。
【0023】
検査の結果、理論的に算出される極小値と、実測値から算出された極小値との間にずれが生じる場合がある。例えば、このずれは、送信電力が高すぎたり低すぎたりすることによって生ずるが、この場合に、単に機能検査を行って、正常あるいは異常を判断するだけでなく、理論的に算出される極小値となる位相と、実測値から算出された極小値となる位相との間のずれ量を算出し、該ずれ量を補正値としてフェーズドアレイアンテナに対し送るように構成されている。これにより、フェーズドアレイアンテナ側においては、該補正値により機能修正が可能となる。
【0024】
また、本発明は、複数のアンテナ素子からなる第一のアンテナから送信された電波を、複数のアンテナ素子からなる第二のアンテナにより受信することにより、第一のアンテナあるいは第二のアンテナの機能検査を行うフェーズドアレイアンテナ検査方法であって、前記第二のアンテナが受信した電波の受信電力を測定し、該測定結果から受信電力の極小値を検出し、該検出された極小値に応じて前記第一のアンテナまたは第二のアンテナの位相を制御することを特徴とする。
【0025】
前記本発明に係るフェーズドアレイアンテナ検査方法においては、前記第一のアンテナを構成する各アンテナ素子と、前記第二のアンテナを構成する各アンテナ素子とが近接対向配置されるようにしてもよい。また、前記第一のアンテナを構成するアンテナ素子と前記第二のアンテナを構成するアンテナ素子とは、近接対向配置されているアンテナ素子同士は電気的に強く結合し、それ以外のアンテナ素子同士は電気的に弱く結合するようにしてもよい。
【0026】
また、本発明は、複数のアンテナ素子と、各アンテナ素子の位相を変化させる移相器とを有するとともに、検査用アンテナから送信された電波を受信する、あるいは前記検査用アンテナに対し電波を送信するフェーズドアレイアンテナであって、前記移相器に加えられる位相、及び自身あるいは前記検査用アンテナの各アンテナ素子に印加する電力から理論的に算出された受信電力の極小値である理論極小値となる位相を予め記憶する記憶手段を有するとともに、複数のアンテナ素子からなる検査用アンテナに対し電波を送信する、あるいは前記検査用アンテナから送信された電波を受信することにより、自身あるいは前記検査用アンテナが受信した電波の受信電力を測定し、該測定結果から受信電力の極小値を検出し、前記極小値となる位相と前記理論極小値となる位相との間にずれがあった場合に、該ずれを補正する補正値に応じて前記移相器の位相制御値を修正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように本発明に係る一の形態のフェーズドアレイアンテナ検査システム、フェーズドアレイアンテナ検査装置及びフェーズドアレイアンテナ検査方法によれば、受信した電波の受信電力の極小値を検出し、該検出した極小値に応じてアンテナの位相を制御するようにした。これにより、精度よくフェーズドアレイアンテナの機能検査ができるばかりでなく、精度よく機能修正をすることも可能となる。
【0028】
また、本発明に係るフェーズドアレイアンテナは、上述したフェーズドアレイアンテナ検査システム、フェーズドアレイアンテナ検査装置及びフェーズドアレイアンテナ検査方法により機能検査を行い、位相のずれを検出し、該ずれがあった場合には、そのずれを補正する補正値に応じて移相器の位相制御値を修正するように構成した。これにより、移相器の位相にずれが生じた場合であっても、精度よく機能修正できる。
【0029】
また、本発明に係る他の形態のフェーズドアレイアンテナ検査システム、フェーズドアレイアンテナ検査装置及びフェーズドアレイアンテナ検査方法によれば、上記一の形態に加え、更に、第一のアンテナと第二のアンテナとを近接対向に配置して機能検査を行うように構成した。これにより、簡易にフェーズドアレイアンテナの機能検査が行うことができ、しかも、電波暗室が不要となりコスト低減を図れるほか、検査時間の短縮化及び検査精度の向上も図れるといった効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について、添付した図面を参照しながら説明する。なお、以下においては、送信側のアンテナにのみ移相器を設けているが、受信側のアンテナにも移相器を設けていてもよい。また、被検査対象のアンテナを送信側とし、送信側のアンテナを移相器により位相を変化させているが、受信側のアンテナを被検査対象のアンテナとし、位相を変化させることにより機能検査を行うようにしてもよい。
【0031】
図1は、本発明のフェーズドアレイアンテナ検査装置の一実施形態の概略構成を示す説明図、図2は、送信側アンテナ素子と受信側アンテナ素子との配置関係を示す説明図、図3は、本発明のフェーズドアレイアンテナ検査装置における検査処理及び補正処理を示すフローチャート、図4は、受信電力の測定値と理論値を示すグラフ、図5は、補正のイメージを示すグラフ、図6は受信電力の補正後の測定値と理論値を示すグラフである。
【0032】
以下の実施形態においては、本発明のフェーズドアレイアンテナ検査装置及びフェーズドアレイアンテナについてのみ説明するが、下記フェーズドアレイアンテナ検査装置に検査用アンテナを加えた構成が本発明のフェーズドアレイアンテナ検査システムとなり、これらフェーズドアレイアンテナ検査装置及び検査システムを実行することにより実現されるのがフェーズドアレイアンテナ検査方法である。
【0033】
図1に示すように、本発明のフェーズドアレイアンテナ検査装置1は、複数の送信側アンテナ素子20a、20bからなる送信側アンテナ(第一のアンテナ)20と、複数の送信側アンテナ素子20a、20bにそれぞれに接続されるとともに電波の位相を任意に変化させる移相器21a、21bと、を備えるフェーズドアレイアンテナ2の機能検査を行うための装置である。このフェーズドアレイアンテナ2が機能検査を行う対象の被検査アンテナであり、後述する近接対向配置された検査用アンテナ3に対し、電波を送信することにより機能検査を行うように構成されている。
【0034】
更に、詳しく説明すると、フェーズドアレイアンテナ検査装置1は、まず、送信側アンテナ20と同一の配置構成を有する受信側アンテナ30を具備する検査用アンテナ3を備えている。次いで、フェーズドアレイアンテナ検査装置1は、検査用アンテナ3に接続されるとともに、受信側アンテナ3により受信した電波の受信電力を測定する受信電波測定手段として機能する測定器4と、測定器4による測定結果から受信電力の極小値を検出する極小値検出手段を有し、後述する機能検査処理・補正曲線算出処理などを行うとともに、フェーズドアレイアンテナ検査装置1全体を統括制御するPC5を備えている。
【0035】
まず、被検査対象側、すなわち送信側アンテナであるフェーズドアレイアンテナ2の構成について説明する。本実施形態における検査対象であるフェーズドアレイアンテナ2は、概略、検査用アンテナ3に対し電波を送信するための複数(ここでは2つ)の送信側アンテナ素子20a、20bと、各送信側アンテナ素子20a、20bに接続された移相器21a、21bと、各移相器21a、21bに接続されるとともに各移相器21a、21bを制御して位相を変化させる制御部22と、後述する測定器4に接続されるとともにPC5を介して該測定器4から入力された送信電波を各送信側アンテナ素子20a、20bごとの移相器21a、21bに分配する分配合成器23と、から構成されている。
【0036】
フェーズドアレイアンテナ2は、PC5を介して測定器4から分配合成器23に入力された送信電波を、各移相器21a、21bに分配し、各移相器21a、21bにおいて所望の位相変化がなされた後、各送信側アンテナ素子20a、20bから放射される。このとき、移相後の各電波が全て同相となる方向、つまり正弦波の位相が一致する方向に強く電波が放射される。
【0037】
次いで、検査のために使用されるアンテナ、すなわち検査用アンテナ3側の構成について説明する。検査用アンテナ3は、複数(ここでは2つ)の受信側アンテナ素子30a、30bと、各受信側アンテナ素子30a、30bが受信した電波を合成する分配合成器31と、から構成されている。各受信側アンテナ素子30a、30bは、送信側アンテナ素子20a、20bからの送信電波をそれぞれ受信し、該受信した電波は分配合成器31により合成され、分配合成器31に接続された測定器4に入力される。
【0038】
測定器4は、被検査対象であるフェーズドアレイアンテナ2と検査用アンテナ3とにネットワーク接続された測定器であり、主に、検査用アンテナ3が受信した電波の受信電力を測定するように機能し、該測定結果はPC5へ送信される。
【0039】
PC5は、主に、測定器4による測定結果から受信電力の極小値を検出する極小値検出手段としての機能と、該極小値を検出した結果修正が必要であれば必要な補正値を算出して制御部22に送信する機能とを有する。PC5は、図示しないROMやRAMなどの記憶部を有しており、該記憶部には、送信電力Ptに対して理論的に算出される極小値(理論極小値)、後述する機能検査処理・補正曲線算出処理などの各処理を行うためのプログラムなどが記憶されている。
【0040】
次に、フェーズドアレイアンテナ検査装置1におけるフェーズドアレイアンテナの機能検査の手法について説明する。
【0041】
まず、該機能検査をするにあたり、送信側アンテナ20と受信側アンテナ30とを図2に示すように近接対向配置する。すなわち、本実施形態においては、送信側アンテナ素子20aと受信側アンテナ素子30aとが対向関係になり、送信側アンテナ素子20bと受信側アンテナ素子30bとが対向関係になる(なお、以下においては、該対向関係にあるアンテナ素子を「対向素子」と言う。)。送信側アンテナ20と受信側アンテナ30との距離Lは、波長より十分短い距離であり、大体5cm以下が目安である(周波数950MHz帯の場合)。
【0042】
次に、本実施形態においては、フェーズドアレイアンテナ2は2素子の送信側アンテナ素子20a、20bで構成されていることから、各送信側アンテナ素子20a、20bのそれぞれ及び該送信側アンテナ素子20a、20bに接続された移相器21a、21bの機能検査を行う。
【0043】
該機能検査は、概略、対向素子間の電気的結合がそれ以外のアンテナ素子間の結合より格段に強くなることを利用し、受信側アンテナ側の受信電力の極小値を検出することにより行われる。以下その手法について具体的に説明する。
【0044】
まず、フェーズドアレイアンテナ2から送信電波が検査用アンテナ3に対して送信されると、各送信側アンテナ素子20a、20bから送信された電波が各受信側アンテナ素子30a、30bにおいて受信され、各送信側アンテナ素子20a、20b及び各受信側アンテナ素子30a、30b同士が電気的に結合される。ここでは、この電気的に結合された状態を図1に示すように電気的経路aa、ab、ba、bbとして示し、各移相器21a、21bに与えられる位相(位相回転量)をそれぞれ順にφα、φβとする。また、各送信側アンテナ素子20a、20bからの送信電波は、受信側アンテナ2においては、電力量が減衰されて受信されることとなるので、各経路における該減衰量をそれぞれLossα、Lossβとする。以上をまとめると以下のようになる。
<各経路における減衰量と位相回転量>
経路aaまたはbb : 減衰量=Lossα 位相回転量=φα
経路abまたはba : 減衰量=Lossβ 位相回転量=φβ
【0045】
また、フェーズドアレイアンテナ2に給電される送信電力をPt、受信側アンテナ素子30aにおける受信電力をPra、受信側アンテナ素子30bにおける受信電力をPrbとすると、以下のようになる。
<式1>
Pra = Pt/2×1/Lossα+ Pt/2×1/Lossβ
Prb = Pt/2×1/Lossα+ Pt/2×1/Lossβ
【0046】
ここで、上述したとおり、送信側アンテナ素子20a、20bと受信側アンテナ素子30a、30bとは近接対向配置されていることから、対向素子同士の電気的結合がそれ以外のアンテナ素子間との電気的結合より格段に強いので、対向素子間における減衰量はそれ以外のアンテナ素子間における減衰量よりも非常に少ない。よって、
<式2>
Lossα << Lossβ
【0047】
前記式2から、前記式1は、以下のように近似される。
<式3>
Pra = Pt/2×1/Lossα
Prb = Pt/2×1/Lossα
【0048】
よって、測定点における受信電力Prは、
<式4>
Pr = Pra+Prb= Pt/Lossα
と表すことができる。
【0049】
移相器20aと移相器20bの位相差(φα−φβ)を考慮すると、
<式5>
Pr = Pt/Lossα × |cos(180°(φα−φβ))|
となる。
【0050】
以上より、フェーズドアレイアンテナ2の各移相器20a、20bを制御し、φαとφβの位相差が180°の関係になったとき受信電力Prが極小となる(この値を「極小値」と言う)。
【0051】
この極小値の求め方を模式的に示したものが、図4の位相回転―受信レベルのグラフである。横軸は位相差(deg)、縦軸は受信電力から得られる受信レベル相対値(dB)である。移相器21a、21bに与える位相回転量を変化させると、フェーズドアレイアンテナ2から送信される送信電波の指向方向が変化し、その結果、受信電力も変化する。そして、位相差を変化させると、図4に示すようなグラフが描け、位相差180°のときに理論的には受信電力が極小値をとる。
【0052】
本発明においては、この理論的に算出される理論極小値と、実際に付与された位相回転量から算出される位相差及び、実際に検査用アンテナ3が電波を受信して得られた受信電力から算出された極小値との間の誤差を調べ、この誤差が予め設定した規定値以下であるか否かが調べられる。そして、この誤差をフェーズドアレイアンテナ2側において修正可能なように、当該誤差を補正値として、フェーズドアレイアンテナ2に送るように構成されている。
【0053】
一方、当該誤差が規定値を超えている場合には、不良品と判断する。なお、前記「所定の誤差」は使用者において予め設定しておく必要はあるが、この誤差の範囲は、例えば、検査対象であるフェーズドアレイアンテナ2の使用環境、具体的には、高精度な性能が要求されるような状況で使用されるものであれば、誤差の範囲は狭く設定すればよいし、あまり高精度な性能が要求されない場合には、誤差の範囲は広く設定しておけばよい。
【0054】
次に、機能検査処理及び補正曲線算出処理の具体例について図3〜図6を参照して説明する。
【0055】
フェーズドアレイアンテナ検査装置1は、概略、送信側アンテナ素子20a及び移相器21aの機能検査をまず行い、次いで、送信側アンテナ素子20b及び移相器21bの機能検査を行い、所定の場合には補正処理あるいはNG処理を行う。
【0056】
図3に示すフローチャートを参照して詳細に説明すると、図2に示した状態にアンテナ20、30同士を近接対向配置した状態で、送信側アンテナ素子20bの位相は固定しておいたまま、送信側アンテナ素子20aの位相を少しずつ変化させる(S300)。このように変化させ、両送信側アンテナ素子20a、20b間の位相差を変化させると、模式的に図4に示すグラフが描け、極小値が検出されるはずであるので、S300に続いて受信電力の実測値から極小値が検出されたか否かを調べる(S301)。
【0057】
その結果、理論的には極小値が検出されるはずであるが、送信側アンテナ素子20aや移相器21aが故障していると、極小値が検出されない場合がある(S301のN)。この場合、次いで、位相変化が予め決められた限度以下か否かが調べられ、限度を超えている場合には、フェーズドアレイアンテナ2は不良であると判断し、NG処理(S314)を行う。このNG処理としては、PC5において、警報をならす、ランプを点灯させる等極小値が検出されなかったことを検査している者に知らせられればどのような処理でもよい。
【0058】
一方、限度以下である場合には(S302のY)、再度、送信側アンテナ素子20aの位相を少しずつ変化させるS300の処理が行われる。
【0059】
また、極小値が検出された場合には(S301のY)、次いで、その検出された極小値と理論極小値との間の誤差が規定値以下か否かを調べる(S303)。この規定値は、予め使用者において設定されPC5に記憶されている。その結果、規定値以下でない場合には(S303のN)、前記同様、NG処理がなされる(S314)。
【0060】
一方、規定値以下であった場合には、その極小値におけるPC5を介して測定器4がフェーズドアレイアンテナ2に対し印加した印加電圧を取得(S304)し、実測値から算出された位相回転−受信レベルグラフと、理論値から算出された該グラフから補正曲線を算出(S305)し、当該補正曲線をフェーズドアレイアンテナ2の制御部22に書き込む(S306)。ここで、「補正曲線」は、縦軸を印加電圧、横軸を位相差とする図5に示すグラフであり、図4に示すグラフにおける実測値のグラフと理論値のグラフとの誤差から算出されるグラフである。
【0061】
上述したとおり、位相差が180°のときに理論的には極小値となるはずであるが、例えば、印加電圧が高すぎたり低すぎたりすると、極小値が左右にずれる場合がある。図5では、例えば、実測値から得られた極小値が点線L1から右にずれL2上に位置した場合を点線の実測値曲線として示し、理論値から得られるものを実測値曲線として示している。
【0062】
そして、制御部22には、この実測値曲線と理論値曲線のずれ量が数値情報として記憶されることとなり、制御部22においては、この数値情報に基づいて位相回転量を調整し機能修正を行う。そして、実際に測定された受信電力の測定値を、前記補正曲線に基づいて機能修正を行った後のグラフが図6に示すグラフである。このグラフを参照すると、補正後の測定値から求めたグラフと、理論値から求めたグラフは略一致するとともに、極小値も理論的に算出された極小値と略同一となっている。このようにして、フェーズドアレイアンテナ検査装置1においては、フェーズドアレイアンテナ2の正常、異常のみの機能検査だけでなく、このような補正処理がなされるので、フェーズドアレイアンテナ2の機能保持、機能向上にも資することができる。
【0063】
前記S306の処理を終えると、送信側アンテナ素子20a及び移相器21aの機能検査が終了し、次いで、送信側アンテナ素子20b及び移相器21bの機能検査に移ることとなるが、当該送信側アンテナ素子20b及び移相器21bの機能検査においては、送信側アンテナ素子20aを固定し、送信側アンテナ素子20bの位相を変化させることが異なるだけで、上述したS300〜S306と同様の処理を行う。よって、S307〜S313についての個別の説明は省略する。
【0064】
続いて、図7〜図9を参照して他の実施形態に係るフェーズドアレイアンテナ検査装置について説明する。
【0065】
図7は、本発明のフェーズドアレイアンテナ検査装置の他の実施形態の概略構成を示す説明図、図8は、送信側アンテナ素子と受信側アンテナ素子との配置関係を示す説明図、図9は、図7に示すフェーズドアレイアンテナ検査装置における検査処理及び補正処理を示すフローチャートである。
【0066】
なお、本実施形態におけるフェーズドアレイアンテナ検査装置1Aは、上記説明したフェーズドアレイアンテナ検査装置1とアンテナ素子の数が相違する点及び、検査処理が若干異なるだけなので、フェーズドアレイアンテナ検査装置1と同様の構成については同一の符号を付し、上記第一実施形態と相違する点のみ説明し、その他の点については省略する。
【0067】
フェーズドアレイアンテナ検査装置1Aの構成としては、被検査対象であるフェーズドアレイアンテナ2の送信側アンテナ20が4つの送信側アンテナ素子20a、20b、20c、20dからなり、検査用アンテナ3の受信側アンテナ30が4つの受信側アンテナ素子30a、30b、30c、30dからなる点が上記第一実施形態に係るフェーズドアレイアンテナ検査装置1と相違する。送信側アンテナ20と受信側アンテナ30との配置関係は図8(a)に示すとおりである。すなわち、送信側アンテナ素子20aと受信側アンテナ素子30a、20bと30b、20cと30c、20dと30dとがそれぞれ近接対向配置されている。距離Lも上記と同様である。
【0068】
なお、送信側アンテナ20と受信側アンテナ30との配置関係の他の実施形態としては、図8(b)に示すような形態も適用可能である。この場合、検査用アンテナ3側の受信側アンテナ30は、2つの受信側アンテナ素子30a、30bとなり、機能検査を行う場合には、受信側アンテナ素子30c、30dが電波を受信しないように(図示しない)スイッチにより電気的に切断しておく。このようにすれば、フェーズドアレイアンテナ2と検査用アンテナ3のアンテナ素子の数を同数とする必要はなくなる。
【0069】
次に、図9を参照してフェーズドアレイアンテナ検査装置1Aにおける機能検査処理および補正処理について説明する。なお、図9に示す処理は、図3に示す処理と略同じであり、大きく相違する点は、位相変化する際に複数の送信側アンテナ素子を同時に変化させる点である。以下に該相違する点について詳細に説明する。
【0070】
まず、図8(a)に示した状態にアンテナ20、30同士を近接対向配置した状態で、送信側アンテナ素子20c、20d(第二のアンテナ素子グループ20B)の位相は固定しておいたまま、送信側アンテナ素子20a、20b(第一のアンテナ素子グループ20A)の位相を同時に少しずつ変化させる(S800)。このように変化させ、送信側アンテナ素子20a、20bと、送信側アンテナ素子20c、20dとの間の位相差を変化させると、模式的に図4に示すグラフが描け、極小値が検出されるはずであるので、S800に続いて受信電力の実測値から極小値が検出されたか否かを調べる(S801)。
【0071】
その結果、理論的には極小値が検出されるはずであるが、送信側アンテナ素子20a、20bや移相器21a、21bが故障していると、極小値が検出されない場合がある(S801のN)。この場合、次いで位相変化が予め決められた限度以下か否かが調べられ、限度を超えている場合には、フェーズドアレイアンテナ2は不良であると判断し、NG処理(S818)を行う。このNG処理は上記S314と同様の処理が適用可能である。
【0072】
一方、限度以下である場合には(S802のY)、再度、送信側アンテナ素子20a、20bの位相を少しずつ変化させるS800の処理が行われる。
【0073】
また、極小値が検出された場合には(S801のY)、次いで、その検出された極小値と理論極小値との間の誤差が規定値以下か否かを調べる(S803)。この規定値は、予め使用者において設定されPC5に記憶されている。その結果、規定値以下でない場合には(S803のN)、送信側アンテナ素子20aの位相と送信側アンテナ素子20bの位相を個別に変化させ(S804)、上記規定値以下の極小値検出を試みる(S805)。
【0074】
このように、個別に変化させるのは、同時に位相変化させ、位相差が0であるはずの送信側アンテナ素子20aと送信側アンテナ素子20bとの間に位相差が生じている可能性があるので、該位相差を補正するためである。
【0075】
その結果、規定値を満たす極小値が検出されなかった場合には(S805のN)、上記同様NG処理(S818)がなされる。一方、極小値が検出された場合には(S805のY)、その極小値におけるPC5により測定器4を介してフェーズドアレイアンテナ2に対し印加した印加電圧を取得(S806)し、実測値から算出された位相回転−受信レベルグラフと、理論値から算出された該グラフから補正曲線を算出する(S807)し、当該補正曲線をフェーズドアレイアンテナ2の制御部22に書き込む(S808)。S806〜S808の処理は、上記S304〜S306の処理と同様である。
【0076】
次いで、送信側アンテナ素子20a、20bの位相は固定しておいたまま、送信側アンテナ素子20c、20dの位相を同時に少しずつ変化させる(S809)。以降S810〜S817の処理は、上記S801〜S808の処理と同様であるので説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明のフェーズドアレイアンテナ検査装置の一実施形態の概略構成を示す説明図。
【図2】送信側アンテナ素子と受信側アンテナ素子との配置関係を示す説明図。
【図3】本発明のフェーズドアレイアンテナ検査装置における検査処理及び補正処理を示すフローチャート。
【図4】受信電力の測定値と理論値を示すグラフ。
【図5】補正のイメージを示すグラフ。
【図6】受信電力の補正後の測定値と理論値を示すグラフ。
【図7】本発明のフェーズドアレイアンテナ検査装置の他の実施形態の概略構成を示す説明図。
【図8】送信側アンテナ素子と受信側アンテナ素子との配置関係を示す説明図。
【図9】図7に示すフェーズドアレイアンテナ検査装置における検査処理及び補正処理を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0078】
1、1A フェーズドアレイアンテナ検査装置
2 フェーズドアレイアンテナ
20 送信側アンテナ(第一のアンテナ)
20A 第一のアンテナ素子グループ
20B 第二のアンテナ素子グループ
20a、20b、20c、20d 送信側アンテナ素子(アンテナ素子)
21a、21b、21c、21d 移相器
22 制御部
23 分配合成器
3 検査用アンテナ
30 受信側アンテナ(第二のアンテナ)
30a、30b、30c、30d 受信側アンテナ素子(アンテナ素子)
31 分配合成器
4 測定器(受信電波測定手段)
5 PC(極小値検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナ素子からなり電波を送信する第一のアンテナと、
複数のアンテナ素子からなり前記第一のアンテナから送信された電波を受信する第二のアンテナと、
前記第二のアンテナが受信した電波の受信電力を測定する受信電波測定手段と、
前記受信電波測定手段の測定結果から受信電力の極小値を検出する極小値検出手段と、
前記極小値検出手段によって検出された極小値に応じて前記第一のアンテナまたは第二のアンテナの位相を制御する移相器と、を有すること
を特徴とするフェーズドアレイアンテナ検査システム。
【請求項2】
前記第一のアンテナを構成する各アンテナ素子と、前記第二のアンテナを構成する各アンテナ素子とが近接対向配置されていることを特徴とする請求項1に記載のフェーズドアレイアンテナ検査システム。
【請求項3】
前記第一のアンテナを構成するアンテナ素子と前記第二のアンテナを構成するアンテナ素子とは、近接対向配置されているアンテナ素子同士は電気的に強く結合し、それ以外のアンテナ素子同士は電気的に弱く結合することを特徴とする請求項2に記載のフェーズドアレイアンテナ検査システム。
【請求項4】
前記移相器が、第一のアンテナのうちの一のアンテナ素子と、該一のアンテナ素子に隣接する他のアンテナ素子との間の位相差を変化させ、
前記受信電波測定手段が、前記第二のアンテナにより受信した電波の受信電力を測定し、
該測定結果から極小値検出手段が受信電力の極小値を検出すること
を特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載のフェーズドアレイアンテナ検査システム。
【請求項5】
前記第一のアンテナは、複数のアンテナ素子からなる第一のアンテナ素子グループ及び第2のアンテナ素子グループとからなり、
前記移相器が、前記第一のアンテナ素子グループと前記第二のアンテナ素子グループとの間の位相差を変化させ、
前記受信電波測定手段が、前記第二のアンテナにより受信した電波の受信電力を測定し、
該測定結果から極小値検出手段が受信電力の極小値を検出すること
を特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載のフェーズドアレイアンテナ検査システム。
【請求項6】
前記移相器に加えられる位相、及び前記第一のアンテナあるいは第二のアンテナの各アンテナ素子に印加する電力から理論的に算出された受信電力の極小値である理論極小値となる位相を予め記憶する記憶手段を備え、
前記極小値となる位相と前記理論極小値となる位相との間にずれがあった場合に、該ずれを補正する補正値を前記第一のアンテナあるいは第二のアンテナに対し送ること
を特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載のフェーズドアレイアンテナ検査システム。
【請求項7】
複数のアンテナ素子からなる第一のアンテナから送信された電波を、複数のアンテナ素子からなる第二のアンテナにより受信することにより、第一のアンテナの機能検査を行うフェーズドアレイアンテナ検査装置であって、
前記第二のアンテナが受信した電波の受信電力を測定する受信電波測定手段と、
前記受信電波測定手段の測定結果から受信電力の極小値を検出する極小値検出手段と、
前記極小値検出手段によって検出された極小値に応じて前記第一のアンテナの位相を制御する移相器と、を有すること
を特徴とするフェーズドアレイアンテナ検査装置。
【請求項8】
複数のアンテナ素子からなる第一のアンテナから送信された電波を、複数のアンテナ素子からなる第二のアンテナにより受信することにより、第二のアンテナの機能検査を行うフェーズドアレイアンテナ検査装置であって、
前記第二のアンテナが受信した電波の受信電力を測定する受信電波測定手段と、
前記受信電波測定手段の測定結果から受信電力の極小値を検出する極小値検出手段と、
前記極小値検出手段によって検出された極小値に応じて前記第二のアンテナの位相を制御する移相器と、を有すること
を特徴とするフェーズドアレイアンテナ検査装置。
【請求項9】
前記第一のアンテナを構成する各アンテナ素子と、前記第二のアンテナを構成する各アンテナ素子とが近接対向配置されていることを特徴とする請求項7あるいは8に記載のフェーズドアレイアンテナ検査装置。
【請求項10】
前記第一のアンテナを構成するアンテナ素子と前記第二のアンテナを構成するアンテナ素子とは、近接対向配置されているアンテナ素子同士は電気的に強く結合し、それ以外のアンテナ素子同士は電気的に弱く結合することを特徴とする請求項9に記載のフェーズドアレイアンテナ検査装置。
【請求項11】
前記移相器が、第一のアンテナのうちの一のアンテナ素子と、該一のアンテナ素子に隣接する他のアンテナ素子との間の位相差を変化させ、
前記受信電波測定手段が、前記第二のアンテナにより受信した電波の受信電力を測定し、
該測定結果から極小値検出手段が受信電力の極小値を検出すること
を特徴とする請求項7〜10いずれか1項に記載のフェーズドアレイアンテナ検査装置。
【請求項12】
前記第一のアンテナは、複数のアンテナ素子からなる第一のアンテナ素子グループ及び第2のアンテナ素子グループとからなり、
前記移相器が、前記第一のアンテナ素子グループと前記第二のアンテナ素子グループとの間の位相差を変化させ、
前記受信電波測定手段が、前記第二のアンテナにより受信した電波の受信電力を測定し、
該測定結果から極小値検出手段が受信電力の極小値を検出すること
を特徴とする請求項7〜10いずれか1項に記載のフェーズドアレイアンテナ検査装置。
【請求項13】
前記移相器に加えられる位相、及び前記第一のアンテナあるいは第二のアンテナの各アンテナ素子に印加する電力から理論的に算出された受信電力の極小値である理論極小値となる位相を予め記憶する記憶手段を備え、
前記極小値となる位相と前記理論極小値となる位相との間にずれがあった場合に、該ずれを補正する補正値を前記第一のアンテナあるいは第二のアンテナに対し送ること
を特徴とする請求項7〜12いずれか1項に記載のフェーズドアレイアンテナ検査装置。
【請求項14】
複数のアンテナ素子からなる第一のアンテナから送信された電波を、複数のアンテナ素子からなる第二のアンテナにより受信することにより、第一のアンテナあるいは第二のアンテナの機能検査を行うフェーズドアレイアンテナ検査方法であって、
前記第二のアンテナが受信した電波の受信電力を測定し、
該測定結果から受信電力の極小値を検出し、
該検出された極小値に応じて前記第一のアンテナまたは第二のアンテナの位相を制御すること
を特徴とするフェーズドアレイアンテナ検査方法。
【請求項15】
前記第一のアンテナを構成する各アンテナ素子と、前記第二のアンテナを構成する各アンテナ素子とを近接対向配置し、
前記第一のアンテナのうちの一のアンテナ素子と、該一のアンテナ素子に隣接する他のアンテナ素子との間の位相差を変化させ、
前記第二のアンテナにより受信した電波の受信電力を測定し、
該測定結果から受信電力の極小値を検出すること
を特徴とする請求項14に記載のフェーズドアレイアンテナ検査方法。
【請求項16】
前記第一のアンテナを構成するアンテナ素子と前記第二のアンテナを構成するアンテナ素子とは、近接対向配置されているアンテナ素子同士は電気的に強く結合し、それ以外のアンテナ素子同士は電気的に弱く結合することを特徴とする請求項15に記載のフェーズドアレイアンテナ検査方法。
【請求項17】
複数のアンテナ素子と、各アンテナ素子の位相を変化させる移相器とを有するとともに、検査用アンテナから送信された電波を受信する、あるいは前記検査用アンテナに対し電波を送信するフェーズドアレイアンテナであって、
前記移相器に加えられる位相、及び自身あるいは前記検査用アンテナの各アンテナ素子に印加する電力から理論的に算出された受信電力の極小値である理論極小値となる位相を予め記憶する記憶手段を有するとともに、
複数のアンテナ素子からなる検査用アンテナに対し電波を送信する、あるいは前記検査用アンテナから送信された電波を受信することにより、
自身あるいは前記検査用アンテナが受信した電波の受信電力を測定し、
該測定結果から受信電力の極小値を検出し、
前記極小値となる位相と前記理論極小値となる位相との間にずれがあった場合に、該ずれを補正する補正値に応じて前記移相器の位相制御値を修正すること
を特徴とするフェーズドアレイアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−124360(P2010−124360A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297642(P2008−297642)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】