説明

フエニル−置換1,4−ジヒドロピリジン類の製造法

【課題】新規なフェニル−置換1,4−ジヒドロピリジン類の製造法の提供。
【解決手段】ベンズアルデヒド誘導体、β−ケトエステル及びアンモニアを適宜反応させることによる、下記一般式で表わされるフェニル−置換1,4−ジヒドロピリジン類の製造方法。


[式中、R及びRは同一又は相異なり炭素数が最高8のアルキルを示し、それは場合により炭素数が最高6のアルコキシ又はヒドロキシルにより置換されていることができ、あるいは炭素数が3〜7のシクロアルキルを示し、Rは無置換又はハロゲン、シアノ、メチル、メチルチオ、トリフルオロメチル又は炭素数が最高4のアルコキシなどから選択される1〜2の置換基を有するフェニル基を示す]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規フェニル−置換1,4−ジヒドロピリジン類、それらの製造法及び医薬品における、特に脳活性薬剤(cerebrally active agents)としてのそれらの利用に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばニモジピンなどのいくつかのジヒドロピリジンが脳活性を有することは開示されている[特許文献1参照]。循環器活性を有するジヒドロピリジンも開示されており、それはハロゲン、CN又はCFで置換されたフェニル環を4位に有する[特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5参照]。
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第28 15 578号明細書
【特許文献2】ドイツ特許出願公開第1 963 188号明細書
【特許文献3】ドイツ特許出願公開第2 117 572号明細書
【特許文献4】ドイツ特許出願公開第2 117 573号明細書
【特許文献5】欧州特許第007 293号明細書
【発明の開示】
【0003】
本発明は一般式(I)
【0004】
【化1】

【0005】
[式中、
及びRは同一又は異なり炭素数が最高8の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキルを示し、それは場合により炭素数が最高6の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルコキシ又はヒドロキシルにより置換されていることができ、あるいは炭素数が3〜7のシクロアルキルを示し、
は基
【0006】
【化2】

【0007】
を示し、ここで
及びRは同一又は相異なりハロゲン、シアノ、エチニル、トリフルオロメトキ
シ、メチル、メチルチオ、トリフルオロメチル又は炭素数が最高4の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルコキシを示すか、あるいは
又はRは水素を示す]
の選ばれる新規なフェニル−置換1,4−ジヒドロピリジン類及びそれらの塩、特に式(I)に包含される後記実施例1〜124の新規化合物に関する。
【0008】
生理学的に許容し得る塩は、本発明の化合物と無機又は有機酸との塩である。好ましい塩は塩酸、臭化水素酸、リン酸又は硫酸などの無機酸との塩、あるいは例えば酢酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、安息香酸又はメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、フェニルスルホン酸、トルエンスルホン酸又はナフタレンジスルホン酸などの有機カルボン酸又はスルホン酸との塩である。
【0009】
本発明の化合物は鏡像として挙動するか(エナンチオマー)又は鏡像として挙動しない(ジアステレオマー)立体異性体の形態で存在する。本発明は対掌体及びラセミ体の両方、ならびにジアステレオマー混合物に関する。ラセミ体はジアステレオマーと同様に既知の方法で立体異性体的に均一な成分に分離することができる。
【0010】
好ましい化合物は、一般式(I)において
及びRが同一又は異なり炭素数が最高8の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキルを示し、これは場合により炭素数が最高5の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルコキシ又はヒドロキシルにより置換されていることができ、あるいはシクロプピル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチルを示し、
が基
【0011】
【化3】

【0012】
を示し、ここで
及びRが同一又は相異なりフッ素、臭素、塩素、シアノ、エチニル、トリフルオロメトキシ、メチル、メチルチオ、トリフルオロメチル又は炭素数が最高3の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルコキシを示すか、あるいは
又はRが水素を示す
化合物及びそれらの塩である。
【0013】
特に強調されるべき化合物はRが基−(CH−ORを示し、ここでnが2〜4の数を示し、Rが水素又は炭素数が1〜4のアルキルを示す一般式Iの化合物であり、特にRが基−CH−CH−OCHを示し、RがRと同一であるか又は相異なり、炭素数が最高8の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキルを示し、それは場合によりヒドロキシル又は炭素数が1〜4のアルコキシにより置換されていることができるか、あるいはシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチルを示す式Iの化合物である。
【0014】
特に興味深いのはRがシアノフェニル基を示し、それが第2フェニル置換基としてフッ素、塩素又はCFを有する一般式Iの化合物である。フェニル基Rの2−及び3−
位が塩素、フッ素、シアノ及びCFから成る群より選ばれる置換基により置換されている一般式Iの化合物も特に興味深い。
【0015】
一般式(I)の特別に好ましい化合物は以下である:
(±)4−(2−フルオロフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸イソプロピル 2−メトキシエチル
(+)4−(2−フルオロフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸イソプロピル 2−メトキシエチル
(−)4−(2−フルオロフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸イソプロピル 2−メトキシエチル
(±)4−(2,3−ジフルオロフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸イソプロピル 2−メトキシエチル
(+)4−(2,3−ジフルオロフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸イソプロピル 2−メトキシエチル
(−)4−(2,3−ジフルオロフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸イソプロピル 2−メトキシエチル
(±)4−(2,5−ジフルオロフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸イソプロピル 2−メトキシエチル
(+)4−(2,5−ジフルオロフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸イソプロピル 2−メトキシエチル
(−)4−(2,5−ジフルオロフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸イソプロピル 2−メトキシエチル
(±)4−(2,6−ジフルオロフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸イソプロピル 2−メトキシエチル
(+)4−(2,6−ジフルオロフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸イソプロピル 2−メトキシエチル
(−)4−(2,6−ジフルオロフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸イソプロピル 2−メトキシエチル
(±)4−(2,5−ジクロロフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸イソプロピル 2−メトキシエチル
(+)4−(2,5−ジクロロフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸イソプロピル 2−メトキシエチル
(−)4−(2,5−ジクロロフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸イソプロピル 2−メトキシエチル
(±)4−(2−クロロ−6−フルオロフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸イソプロピル 2−メトキシエチル(+)4−(2−クロロ−6−フルオロフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸イソプロピル 2−メトキシエチル(−)4−(2−クロロ−6−フルオロフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸イソプロピル 2−メトキシエチル(±)4−(2−フルオロ−3−トリフルオロメチルフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸イソプロピル 2−メトキシエチル
(+)4−(2−フルオロ−3−トリフルオロメチルフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸イソプロピル 2−メトキシエチル
(−)4−(2−フルオロ−3−トリフルオロメチルフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸イソプロピル 2−メトキシエチル
(±)4−(3−クロロ−2−シアノフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸イソプロピル 2−メトキシエチル
(+)4−(3−クロロ−2−シアノフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸イソプロピル 2−メトキシエチル
(−)4−(3−クロロ−2−シアノフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸イソプロピル 2−メトキシエチル
(±)4−(2−シアノフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸イソプロピル 2−メトキシエチル
(+)4−(2−シアノフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸イソプロピル 2−メトキシエチル
(−)4−(2−シアノフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸イソプロピル 2−メトキシエチル
(±)4−(3−シアノフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸tert−ブチル 2−メトキシエチル
(+)4−(3−シアノフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸tert−ブチル 2−メトキシエチル
(−)4−(3−シアノフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸tert−ブチル 2−メトキシエチル
(±)4−(3−シアノフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸シクロヘプチル 2−メトキシエチル
(+)4−(3−シアノフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸シクロヘプチル 2−メトキシエチル
(−)4−(3−シアノフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸シクロヘプチル 2−メトキシエチル
(±)4−(2−クロロ−3−シアノフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸シクロペンチル 2−メトキシエチル(+)4−(2−クロロ−3−シアノフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸シクロペンチル 2−メトキシエチル(−)4−(2−クロロ−3−シアノフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸シクロペンチル 2−メトキシエチル(±)4−(2−フルオロ−3−トリフルオロメチルフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸シクロペンチル 2−メトキシエチル
(+)4−(2−フルオロ−3−トリフルオロメチルフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸シクロペンチル 2−メトキシエチル
(−)4−(2−フルオロ−3−トリフルオロメチルフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸シクロペンチル 2−メトキシエチル
(±)4−(2−フルオロ−3−トリフルオロメチルフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸2−メトキシエチル メチル
(+)4−(2−フルオロ−3−トリフルオロメチルフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸2−メトキシエチル メチル
(−)4−(2−フルオロ−3−トリフルオロメチルフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸2−メトキシエチル メチル
(±)4−(2−シアノ−3−クロロフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸シクロペンチル 2−メトキシエチル(+)4−(2−シアノ−3−クロロフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸シクロペンチル 2−メトキシエチル(−)4−(2−シアノ−3−クロロフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸シクロペンチル 2−メトキシエチル。
【0016】
本発明は本発明の一般式(I)の化合物の製造法にも関し、それは
[A]一般式(II)
−CHO (II)
[式中、
は示された意味を有する]
のアルデヒドを最初に一般式(III)
C−CO−CH−CO (III)
[式中、
は示された意味を有する]
のアセト酢酸エステルと反応させ、適宜対応する一般式(IV)
【0017】
【化4】

【0018】
[式中
及びRは示された意味を有する]
のイリデン化合物を単離し、次いでこれらを一般式(V)
CH−CO−CH−CO (V)
[式中、
は示された意味を有する]
の化合物と不活性溶媒中でアンモニア又はアンモニウム塩の存在下に反応させるか、又は一般式(VI)
【0019】
【化5】

【0020】
[式中、
は示された意味を有する]
のエナミノ誘導体と直接反応させるか、あるいは
[B]一般式(II)のアルデヒドを最初に一般式(V)の化合物と反応させ、適宜一般式(VII)
【0021】
【化6】

【0022】
[式中、
及びRは示された意味を有する]
のイリデン化合物を単離し、次の段階でこれらを一般式(III)の化合物と、不活性溶
媒中でアンモニア又はアンモニウム塩の存在下に反応させるか、又は一般式(VIII)
【0023】
【化7】

【0024】
[式中、
は示された意味を有する]
のエナミノカルボン酸誘導体と直接反応させるか、あるいは
[C]一般式(IX)
【0025】
【化8】

【0026】
[式中、
は上記の意味を有し、
Aは上記のR又はRの意味を有し、
Bは−CO基と一緒になって反応性カルボン酸誘導体を形成する]
の化合物を不活性溶媒中で塩基の存在下に一般式(X)
−OH (X)
[式中、
は上記のR又はRの意味を有する]
と反応させ、そして純粋なエステルエナンチオマーの場合にはエナンチオマー的に純粋なカルボン酸を、適宜最初に反応性酸誘導体の段階を介して対応するアルコールと反応させることを特徴とする。
【0027】
本発明の方法は例えば以下の反応式により示すことができる:
【0028】
【化9】

【0029】
【化10】

【0030】
この場合の方法[A]及び[B]に適した溶媒は、反応条件下で変化しないすべての不活性有機溶媒である。これらには好ましくはアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール又はイソプロパノール、あるいはエーテル、例えばジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、グリコールジメチルエーテル又はジエチレングリコールジメチルエーテル、アセトニトリル又はアミド、例えばヘキサメチルホスホルアミド又はジメチルホルムアミド、あるいは酢酸又はハロゲン化炭化水素、例えばメチレンクロリド、四塩化炭素、あるいは炭化水素、例えばベンゼン又はトルエンが含まれる。上記の溶媒の混合物を用いることもできる。イソプロパノール、テトラヒドロフラン、メタノール、ジオキサン及びジメチルホルムアミドが好ましい。
【0031】
方法[C]に適した溶媒はアルコール及び酢酸を除いた上記の溶媒である。
【0032】
適した塩基は一般に環状アミン、例えばピペリジン、C−C−トリ−及びジアルキルアミン、例えばジ−及びトリエチルアミンあるいはピリジン又はジメチルアミノピリジンである。特定の反応段階によりピペリジン、ジメチルアミノピリジン及びピリジンが好
ましい。
【0033】
用いるのが好ましい助剤は縮合剤であり、塩基であることもできる。この場合通常の縮合剤、例えばカーボジイミド、例えばN,N’−ジエチル−、N,N’−ジプロピル−、N,N’−ジイソプロピル又はN,N’−ジシクロヘキシルカーボジイミドあるいはN−(3−ジメチルアミノイソプロピル)−N’−エチルカーボジイミドヒドロクロリド、あるいはカルボニル化合物、例えばカルボニルジイミダゾール、あるいは1,2−オキサゾリウム化合物、例えば2−エチル−5−フェニル−1,2−オキサゾリウム−3−スルホネート又は2−tert−ブチル−5−メチル−イソオキサゾリウムパークロレート、あるいはアシルアミノ化合物、例えば2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリン、あるいはプロパンホスホン酸無水物又はイソブチルクロロホルメート、又はベンゾトリアゾリルオキシ−トリス(ジメチルアミノ)−ホスホニウムヘキサフルオロホスホネートが好ましい。N,N’−ジシクロヘキシルカーボジイミド及びカルボニルジイミダゾールが好ましい。
【0034】
カメボン酸の活性化に適した塩基は一般にアルカリ金属炭酸塩、例えば炭酸ナトリウム又は炭酸カリウム、あるいはトリアルキルアミンなどの有機塩基、例えばトリエチルアミン、N−エチルモルホリン、N−メチルピペリジン又はジイソプロピルエチルアミンあるいはジメチルアミノピリジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)又は1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン(DBN)である。ジメチルアミノピリジンが好ましい。
【0035】
一般に塩基は一般式(II)又は(IX)の化合物の1モルに対してそれぞれの場合に0.01モル〜1モル、好ましくは0.05モル〜0.1モルの量で用いられる。
【0036】
助剤は一般に一般式(II)及び(IX)の化合物の1モルに対してそれぞれの場合に1モル〜3モル、好ましくは1モル〜1.5モルの量で用いられる。
【0037】
方法[A]及び[B]の反応温度は比較的広範囲内で変えることができる。一般に反応は−20℃〜200℃、好ましくは0℃〜100℃の範囲で行われる。
【0038】
方法は常圧、高圧又は減圧下で行うことができ(例えば0.5〜5バール)、常圧下が好ましい。
【0039】
本発明の方法を行う場合、反応に関与する物質の所望の比率を用いることができる。しかし一般にモル量の反応物を用いて反応が行われる。
【0040】
カルボン酸の活性化に適した試薬は無機ハライド、例えばチオニルクロリド、三塩化リン又は五塩化リン、あるいはカルボニルジイミダゾール、カーボジイミド、例えばシクロヘキシルカーボジイミド又は1−シクロヘキシル−3−[2−(N−メチルモルホリノ)エチル]−カーボジイミドp−トルエンスルホン酸塩、又はN−ヒドロキシフタルイミド又はN−ヒドロキシベンゾトリアゾールなどの通常の試薬である。
【0041】
さらにエナンチオマー的に純粋な形態は、例えばR又はRがエナンチオマー的に純粋なキラルアルコール基を示す一般式(I)の化合物のジアステレオマー混合物を通常の方法で分離し、続いてエナンチオマー的に純粋なカルボン酸を製造し、場合によりこれらを適したアルコールを用いたエステル化によりエナンチオマー的に純粋なジヒドロピリジンに変換することにより得ることができる。
【0042】
適したキラルエステル基は例えば1−フェニルエタノール、乳酸、乳酸エステル、マン
デリン酸、マンデリン酸エステル、2−アミノ−アルコール、糖誘導体などのエナンチオマー的に純粋なアルコール及び他の多くのエナンチオマー的に純粋なアルコールのエステルすべてである。
【0043】
ジアステレオマーの分離は一般に分別結晶化により、カラムクロマトグラフィーにより、又は向流分配(countercurrent distribution)により行われる。場合により最適の方法が決定されねばならず、個別の方法の組み合わせを用いるのが良いこともある。
【0044】
エナンチオマー的に純粋なジヒドロピリジンのエステル化は、ジエチルエーテル又はテトラヒドロフランなどのエーテル、ジメチルホルムアミド、メチレンクロリド、クロロホルム、アセトニトリル又はトルエン中で行うのが好ましい。
【0045】
一般式(II)のアルデヒドはそれ自体既知であるか、又は通常の方法により製造することができる。
【0046】
一般式(III)及び(V)のアセト酢酸エステル、ならびに一般式(VI)及び(VIII)のエナミノ誘導体も同様に既知である。
【0047】
一般式(IX)の活性酸誘導体はある場合には既知であるか、又は新規化合物であり、その場合は通常の方法により製造することができる。
【0048】
一般式(X)の化合物は既知である。
【0049】
一般式(IV)及び(VII)の化合物はほとんどの場合既知であるか、又は通常の方法により製造することができる。
【0050】
上記の製造法は単に例示のために示すものである。一般式(I)の化合物の製造はこれらの方法に制限されず、これらの方法のいずれの修正法も同様に、本発明の化合物の製造に用いることができる。
【0051】
本発明の化合物は予想外の、有用な薬理学的活性範囲を示す。
【0052】
本発明の化合物は中枢神経系のL−型カルシウムチャンネルに対する選択性を有するカルシウムチャンネルリガンドである。この選択性は、例えばラット脳及びラット心臓におけるDHP結合部位への結合親和性の比較により示すことができる。
【0053】
化合物は水迷路(water maze)、モリス迷路(Morris maze)、受動性回避(passive avoidance)及び自動化スキナー箱における記憶試験などの典型的学習及び記憶モデルにおけるラットへのその記憶−増進作用が示す通り、学習及び記憶性能に正の影響を及ぼす。それらはPorsoltに従うラット水泳試験(rat swimming test)におけるその活性が確証する通り、抗うつ力を有する。
【0054】
カルシウムフラックス
カルシウムフラックスの測定のために培養PC12細胞の懸濁液を用いる。細胞を通常の培地中の37℃で研究するべき活性化合物と共にインキュベートする。細胞の脱分極のために、カルシウム濃度が高く、同時に放射性カルシウム(45Ca2+)を含む活性化培地を加える。特定の時間間隔の後に0℃に冷却した培地を加え、細胞への放射性カルシウムの流入を止める。続いて収穫され、乾燥された細胞の放射性を測定する。阻害値の0
%限界(limit)の決定のためにジメチルスルホキシド(DMSO)を用い、100%阻害値は10−6モル/lのピモジドを用いて決定する。
【0055】
結合アッセイ:
ラット脳又はラット心臓におけるPN 200−110結合部位への結合親和力をRamp D.R.,Mutledge A.,Janis R.A.,Triggle D.J.:Can.Journ.Physiol.Pharmacol.65,(1987)1452に従って決定する。
【0056】
水迷路
老ウィスター(Wistar)ラット(24カ月)を、冷水(14〜15°)を満たしたプラスチックの槽(120x50x40cm)の出発位置に置き、垂直な障壁で分ける。動物が水から逃げることができるはしごに達するために、彼らはこれらの障壁の回りを泳がねばならない。出口を見つけるのに要した時間及びそこまでの経路に関する間違いの数を記録する。この場合間違いは、行き止まりに泳ぎ入ること、又は槽が細分されている想像上の四角の境界上を出口から離れる方向で泳ぐこととして定義する。
【0057】
ラットは出口を見つけるまで迷路に止まるが、最長で300秒である。その後ラットを取り出し、乾燥し、赤い光の下で暖める。その後ラットをそれが住んでいるカゴに戻す。
【0058】
典型的な実験の場合、2つの同等の動物群(プラシーボ、試験物質、それぞれn=15)を予備実験を用いて決定する。続いて動物に6試験セッションを1日当たり2回行う。試験物質又はプラシーボは、実験の30分前に経口的に投与する。出口に達するまでの時間の短縮、間違いの数の減少、及び出口を見つける動物の全体としての数の増加が、プラシーボと比較した試験化合物の学習−及び記憶−増進効果の尺度である。
【0059】
Porsoltに従うラット水泳試験
予備試験の間に、25℃で17cmの高さに水を入れたガラスのシリンダー(高さ40cm、直径20cm)に若いラットを置く。水中で20分後、動物を取り出し、ランプの下で30分間暖める。この予備試験において、すべてのラットは約15分後に静止したままとなる(“行動絶望(behavioural despair)”、諦め挙動)までシリンダーから出ようとする。24時間後、試験セッションを開始し、ラットを前日のようにガラスシリンダーに入れるが、今回は5分間だけである。この5分の間に静止したままである時間を記録する。この場合、水中で直立して浮遊し、頭を水上に保つために最小の動きのみを行っているラットを静止とみなす。プラシーボ又は試験物質(0.25、0.5、1、5、10mg/kg;群当たりn=6)は試験セッションの23、5及び1時間前の3回、経口的に投与する(予備試験後1、19及び23時間)。試験化合物の抗うつ効果は、プラシーボ値と比較した静止の時間の短縮に見られる。
【0060】
その薬理学的性質の結果として、本発明の化合物は例えば痴呆(多発梗塞性痴呆、MID、原発性退化性痴呆 PDD、老年前及び老年性アルツハイマー病、HIV痴呆及び他の形態の痴呆)、パーキンソン病又は筋萎縮性側索硬化症に起こる中枢退化性疾患(central degenerative disorder)の処置のための医薬品の調製に用いることができる。
【0061】
活性化合物はさらに老令における脳機能障害、器質性精神病(OBS)及び年令性記憶障害(age−associated memory impairment)(AAMI)の処置に適している。
【0062】
化合物は脳虚血、卒中及びクモ膜下出血などの脳循環器における疾患の後遺症の予防及
び防除、ならびに脳損傷の処置に有用である。
【0063】
化合物はうつ病及び躁病の処置に適している。他の利用領域は片頭痛の処置、例えば損傷、糖尿病などの代謝異常、中毒、微生物又は自己免疫疾患によって起こるニューロパシーの処置、及び嗜癖及び離脱症状の処置である。
【0064】
本発明の化合物は中枢神経系のL−型Ca2+チャンネルに対する選択性を有するCa2+拮抗剤である。
【0065】
この選択性は、脳活性を有する既知のCa2+拮抗性ジヒドロピリジンであるニモジピン及びニカルジピンより優れている。これは、例えばラット脳及びラット心臓におけるDHP(PN−200 110)結合部位に対する結合親和性の比較により現れる[Rampe,D.R.,Rutledge,A.,Janis,R.A.,Triggle,D.J.,Can.Journ.Physiol.Pharmacol.65(1987),1452を参照]。
【0066】

実施例番号 K(脳)[nM] K(心臓)[nM] 選択性
──────────────────────────────────
ニモジピン 2.4 4.6 1.9
ニカルジピン 32 14 0.44
──────────────────────────────────
12 7.2 72 10
15 2.0 11.3 5.7
18 8.2 28 3.4
30 1.7 8.0 4.7
33 3.6 7.9 2.2

【0067】
本発明は不活性、無毒性の製薬学的に適した助剤及び賦形剤の他に一般式(I)の化合物を1種又はそれ以上含む、あるいは1種又はそれ以上の式(I)の活性化合物から成る製薬学的組成物、及びこれらの組成物の製造法を含む。
【0068】
式(I)の活性化合物はこれらの組成物中において、混合物全体の0.1〜99.5重量%、好ましくは0.5〜95重量%の濃度で存在しなければならない。
【0069】
製薬学的組成物は、式(I)の活性化合物に加えて他の製薬学的活性化合物を含むこともできる。
【0070】
上記の製薬学的組成物は、例えば賦形剤又は助剤を用いた通常のやり方による既知の方法で調製することができる。
【0071】
一般に式(I)の活性化合物を、24時間毎に体重1kg当たり約0.01〜約100mgの合計量、好ましくは約0.1mg〜20mgの合計量で、適宜数個の個別の投薬量の形態で投与するのが所望の結果を得るために有利であることがわかった。
【0072】
しかし特に処置される患者の性質及び体重、医薬品に対する患者の挙動、疾患の性質及び重度、調製及び投与の性質、ならびに投与を行う時間及び間隔により上記の量から変動させるのが有利であることもある。
【0073】
それぞれの場合に示されるR値は、他に記載がなければシリカゲル上の薄層クロマトグラフィー(アルミニウム箔、シリカゲル 60 F 254、E.Merck)により決定した。物質のスポットは、UV光下の観察により、及び/又は1%濃度の過マンガン酸カリウム溶液もしくはモリブドリン酸溶液を噴霧することにより視覚化した。
【0074】
フラッシュクロマトグラフィーはシリカゲル 60、0.040−0.064mm、Merck上で行った(Still et al.,J.Org.Chem.43,2923,1978を参照;より簡単な分離の問題に関してAldrichimica Acta 18,25,1985を参照)。溶媒勾配を用いた溶離は、純粋な非極性溶媒混合物成分を用いて開始し、極性溶離剤成分を所望の生成物が溶離されるまで(薄層クロマトグラフィー判定)量を増加させて混合することを意味する。
【0075】
すべての生成物の場合に、溶媒を最終的に約0.1mmHgにおいて蒸留した。
【実施例】
【0076】
出発化合物
実施例I
2−アセチル−3−(2−フルオロフェニル)−2−プロペン酸2−メトキシエチル
【0077】
【化11】

【0078】
10g(80ミリモル)の2−フルオロベンズアルデヒドを13g(80ミリモル)の2−メトキシエチルアセト酢酸と共に200mlのイソプロパノールに溶解する。10mlのイソプロパノール中の1.0mlのピペリジン及び0.5mlの氷酢酸の新しく調製した溶液をこの溶液に加え、それを40℃で終夜撹拌する。混合物を濃縮し、残留物をトルエン中に取り上げ、溶液を再濃縮し、残留物を300mlのシリカゲル上の濾過により精製して(溶離剤:トルエン/酢酸エチル 100:1〜10:1)15gの目的化合物を黄色油として得、それを直後にさらに反応させる。
【0079】
実施例II
2−アセチル−3−(2,4−ジフルオロフェニル)−2−プロペン酸2−メトキシエチル
【0080】
【化12】

【0081】
5.0g(35ミリモル)の2,4−ジフルオロベンズアルデヒドを5.7g(35ミリモル)の2−メトキシエチルアセト酢酸と共に100mlのイソプロパノールに溶解する。5mlのイソプロパノール中の1.0mlのピペリジン及び0.5mlの氷酢酸の新しく調製した溶液をこの溶液に加え、それを40℃で終夜撹拌する。混合物を濃縮し、残留物をトルエン中に取り上げ、溶液を再濃縮し、残留物を100mlのシリカゲル上の濾過により精製して(溶離剤:トルエン/酢酸エチル 100:1)5gの目的化合物を黄色油として得、それを直後にさらに反応させる。
【0082】
実施例III
4−(2−クロロ−6−フルオロフェニル)−3−シクロペンチルオキシカルボニル−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−5−カルボン酸
【0083】
【化13】

【0084】
98g(0.22モル)の4−(2−クロロ−6−フルオロフェニル)−3−(2−シアノエチル)−シクロペンチルオキシカルボニル−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−5−カルボン酸を400mlの1,2−ジメトキシエタンに溶解し、混合物を400mlの1N水酸化ナトリウム溶液と共に室温で終夜撹拌する。溶媒の体積を約半分に減らし、溶液をジクロロメタンで洗浄し、水相を2N塩酸で酸性化する(pH=2)。ジクロロメタンで2回抽出し、有機相を水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮し、エーテルから結晶化し、42gの目的化合物を融点が約120℃(分解)の固体として得る。
【0085】
実施例IV
4−(2−クロロ−6−フルオロフェニル)−1,4−ジヒドロ−5−(1−イミダゾリルカルボニル)−2,6−ジメチルピリジン−3−カルボン酸シクロペンチル
【0086】
【化14】

【0087】
13.6g(83ミリモル)のカルボニルジイミダゾールを350mlのテトラヒドロフラン中の33.0g(83ミリモル)の4−(2−クロロ−6−フルオロフェニル)−3−シクロペンチルオキシカルボニル−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−5−カルボン酸に加え、混合物を3時間加熱還流する。薄相クロマトグラフィーによる判定(シリカゲル、トルエン/酢酸エチル 1:1)で完全な反応が示され、その後反応混合物を濃縮し、残留物を酢酸エチル中に取り上げ、溶液を水で2回洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、再濃縮する。目的化合物は融点が150℃の白色結晶の形態でエーテルから沈澱する。
収量:29.7g
【0088】
製造例
実施例1
4−(2−フルオロフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸イソプロピル 2−メトキシエチル
【0089】
【化15】

【0090】
4.0g(約15ミリモル)の実施例Iからの化合物を100mlのイソプロパノール中で2.2g(15ミリモル)の3−アミノ−2−ブテン酸イソプロピルと共に終夜加熱還流する。薄相クロマトグラフィー判定(SiO、トルエン/酢酸エチル 5:1)で完全な変換が示された後、反応混合物を濃縮し、残留物をトルエンを用いて取り上げ、溶液を再濃縮し、続いて残留物をシリカゲル上の濾過により精製する(溶離剤:トルエン/酢酸エチル 100:1〜5:1)。結晶化する黄色油が得られ、それを約−15℃でメタノールから再結晶する。2.8g(48%)の目的化合物が得られる。
融点:99〜100℃
【0091】
実施例2
(−)−4−(3−シアノフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸シクロヘプチル 2−メトキシエチル
【0092】
【化16】

【0093】
5.0g(14ミリモル)の(−)−4−(3−シアノフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチル−3−(2−メトキシ)エトキシカルボニルピリジン−5−カルボン酸[キラル固定相上のラセミモノカルボン酸のクロマトグラフィー分離により得られる]を50mlのテトラヒドロフラン中で30分間、モレキュラーシーブ(4A)上で撹拌する。続いて2.3g(14ミリモル)のカルボニルジイミダゾールを加え、混合物を1時間加熱還流し、モレキュラーシーブを濾過し、濾液を濃縮する。残留物を30mlのシクロヘプタノール中に取り上げ、スパチュラ1杯のN,N−ジメチル−4−アミノピリジンを加えた後に100℃で6時間加熱する。トルエン/酢酸エチル、ジクロロメタン/イソプロパノール及びシクロヘキサン/酢酸エチル混合物中でシリカゲル上のクロマトグラフィーを繰り返し、ジイソプロピルエーテル/シクロヘキサンから結晶化し、1.0g(16%)の目的化合物を白色結晶として得る。
融点:98〜99℃
[α]20=−24.2°(c=0.9、CHCl
【0094】
表1に示す化合物は実施例1及び2と同様にして、あるいはラセミ生成物をキラル固定相(Chiralcel and Chiralpad,Daicel)上でエナンチオマー的に純粋な目的化合物にクロマトグラフィー分離することにより得られる:
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

【0097】
【表3】

【0098】
【表4】

【0099】
実施例51
5−(2,4−ジフルオロフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸2−メトキシエチル イソプロピル
【0100】
【化17】

【0101】
5.0g(約18ミリモル)の実施例IVの化合物を50mlのイソプロパノール中で2.5g(18ミリモル)の3−アミノ−2−ブテン酸イソプロピルと共に終夜加熱還流する。薄相クロマトグラフィー判定(SiO、トルエン/酢酸エチル 5:1)により完全な変換が示された後、反応混合物を濃縮し、残留物をトルエンを用いて取り上げ、溶液を再濃縮し、続いて残留物を少量のメタノールからの結晶化により精製する。2.8g(39%)の目的化合物が得られる。
融点:123〜126℃
【0102】
表2、3、4、5、6及び7に示す化合物は、実施例1、2及び51の方法と同様にして製造する:
【0103】
【表5】

【0104】
【表6】

【0105】
【表7】

【0106】
【表8】

【0107】
【表9】

【0108】
【表10】

【0109】
【表11】

【0110】
【表12】

【0111】
【表13】

【0112】
【表14】

【0113】
実施例107
(−)−4−(3−シアノフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸メチル 2−メトキシエチル
【0114】
【化18】

【0115】
3.6g(10ミリモル)の(−)−4−(3−シアノフェニル)−1,4−ジヒドロ−3−(2−メトキシ)エトキシカルボニル−2,6−ジメチルピリジン−5−カルボン酸を40mlのテトラヒドロフラン中で30分間、モレキュラーシーブ(4A)上で撹拌する。続いて1.6g(10ミリモル)のカルボニルジイミダゾールを加え、混合物を0.5時間60℃に加熱し、モレキュラーシーブを濾過し、濾液を濃縮する。残留物を40mlのメタノール中に取り上げ、80℃で6時間加熱する。トルエン/酢酸エチル混合物(1:0〜3:1)を用いてシリカゲル上のクロマトグラフィーを繰り返し、1.4gの油状物質を得、それをジエチルエーテルを用いて摩砕することにより結晶化する。かくして1.1g(30%)の融点が103〜104℃の無色の結晶を得る。
[α]20=−7.0°(c=1.2;CHCl
【0116】
表8に示す化合物を実施例107と同様にして、又はラセミ生成物をキラル固定相(Chiralcel and Chiralpad,Daicel)上でエナンチオマー的に純粋な目的化合物にクロマトグラフィー分離することにより(以下におけるA*)得られる:
【0117】
【表15】

【0118】
実施例113
4−(2−フルオロ−3−トリフルオロメチルフェニル)−1,4−ジヒドロ−2,6−ジメチルピリジン−3,5−ジカルボン酸ビス−(2−メトキシエチル)
【0119】
【化19】

【0120】
5mlの25%濃度アンモニア溶液及び5.0g(31.2ミリモル)のアセト酢酸2−メトキシエチルを、50mlのジオキサン中の3.0g(15.6ミリモル)の2−フルオロ−3−トリフルオロメチルベンズアルデヒドの溶液に加え、TLC判定(シリカゲル、トルエン/酢酸エチル 5:1)により完全な変換が示されるまで混合物を加熱還流する。混合物を濃縮し、残留物をトルエン中に2回取り上げ、溶液を再濃縮する。トルエンから結晶化し、1.4g(19%)の融点が148℃の目的化合物を得る。
【0121】
表9に示す化合物を実施例113の方法と同様にして製造する:
【0122】
【表16】

【0123】
表10に示す化合物を実施例107の方法と同様にして対応するイミダゾリドから製造する:
【0124】
【表17】

【0125】
本発明の主たる特徴及び態様は以下の通りである。
1.一般式
【0126】
【化20】

【0127】
[式中、
及びRは同一又は相異なり炭素数が最高8の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキルを示し、それは場合により炭素数が最高6の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルコキシ又はヒドロキシルにより置換されていることができ、あるいは炭素数が3〜7のシクロアルキルを示し、
は基
【0128】
【化21】

【0129】
を示し、ここで
及びRは同一又は相異なりハロゲン、シアノ、エチニル、トリフルオロメトキシ、メチル、メチルチオ、トリフルオロメチル又は炭素数が最高4の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルコキシを示すか、あるいは
又はRは水素を示す]
のフェニル−置換1,4−ジヒドロピリジン類及びそれらの塩。
2.R及びRが同一又は相異なり炭素数が最高8の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキルを示し、これは場合により炭素数が最高5の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルコキシ又はヒドロキシルにより置換されていることができ、あるいはシクロプピル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチルを示し、
が基
【0130】
【化22】

【0131】
を示し、ここで
及びRが同一又は相異なりフッ素、臭素、塩素、シアノ、エチニル、トリフルオロ
メトキシ、メチル、メチルチオ、トリフルオロメチル又は炭素数が最高3の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルコキシを示すか、あるいは
又はRが水素を示す
上記1項に記載のフェニル−置換1,4−ジヒドロピリジン類及びそれらの塩。
3.R及びRが同一又は相異なり炭素数が最高8の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキルを示し、これは場合によりメトキシ又はヒドロキシルにより置換されていることができ、あるいはシクロペンチル、シクロプロピル、シクロヘキシル又はシクロヘプチルを示し、
が基
【0132】
【化23】

【0133】
を示し、ここで
及びRが同一又は相異なりフッ素、臭素、塩素、シアノ、エチニル、トリフルオロメトキシ、メチル、メチルチオ、トリフルオロメチル又は炭素数が最高3の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルコキシを示すか、あるいは
又はRが水素を示す
上記1項に記載のフェニル−置換1,4−ジヒドロピリジン類及びそれらの塩。
4.一般式I
【0134】
【化24】

【0135】
[式中
は基−(CH−ORを示し、ここでnは2〜4の数を示し、Rは水素又は炭素数が1〜4のアルキルを示し、
はRと同一又は相異なりシクロプロピル、シクロヘキシル又はシクロヘプチルを示すか、あるいは炭素数が最高8のアルキルを示し、それは場合によりヒドロキシル又は炭素数が1〜4のアルコキシにより置換されていることができ、
は上記3項に示した意味を有する]
のフェニル−置換1,4−ジヒドロピリジン類。
5.一般式(I)
【0136】
【化25】

【0137】
[式中、
及びRは、上記4項に示した意味を有し、
は2−及び3−位において同一又は相異なるフッ素、塩素、シアノ又はCF置換基により置換された、2,3−ジクロロフェニルを除くフェニル基を示す]
の化合物。
6.Rが基−CH−CH−OCHを示し、
が上記4項に示した意味を有する
上記4項に記載の化合物。
7.疾患の抑制において使用するための上記1項に記載のフェニル−置換1,4−ジヒドロピリジン類。
8.[A]一般式(II)
−CHO (II)
[式中、
は上記1項に示す意味を有する]
のアルデヒドを最初に一般式(III)
C−CO−CH−CO (III)
[式中、
は上記1項に示す意味を有する]
のアセト酢酸エステルと反応させ、その際適宜対応する一般式(IV)
【0138】
【化26】

【0139】
のイリデン化合物を単離し、次いでこれらを一般式(V)
CH−CO−CH−CO (V)
[式中、
は上記1項に示す意味を有する]
の化合物と不活性溶媒中でアンモニア又はアンモニウム塩の存在下に反応させるか、又は一般式(VI)
【0140】
【化27】

【0141】
[式中、
は上記の意味を有する]
のエナミノ誘導体と直接反応させるか、あるいは
[B]一般式(II)のアルデヒドを最初に一般式(V)の化合物と反応させ、その際適宜一般式(VII)
【0142】
【化28】

【0143】
[式中、
及びRは上記の意味を有する]
のイリデン化合物を単離し、次の段階でこれらを一般式(III)の化合物と、不活性溶媒中でアンモニア又はアンモニウム塩の存在下に反応させるか、又は一般式(VIII)
【0144】
【化29】

【0145】
[式中、
は上記の意味を有する]
のエナミノカルボン酸誘導体と直接反応させるか、あるいは
[C]一般式(IX)
【0146】
【化30】

【0147】
[式中、
は上記の意味を有し、
Aは上記のR又はRの意味を有し、
Bは−CO基と共に反応性カルボン酸誘導体を形成する]
の化合物を不活性溶媒中で塩基の存在下に一般式(X)
−OH (X)
[式中、
は上記のR又はRの意味を有する]
と反応させ、そして純粋なエステルエナンチオマーの場合には、エナンチオマー的に純粋なカルボン酸を、適宜最初に反応性酸誘導体の段階を介して対応するアルコールと反応させることを特徴とする請求項1に記載のフェニル−置換1,4−ジヒドロピリジン類の製造法。
9.上記1項に記載のフェニル−置換1,4−ジヒドロピリジンの少なくとも1種を含む医薬品。
10.中枢退化疾患、脳力疾患(brain power disorders)、うつ病の処置、ならびに脳循環器疾患の後遺症の予防及び処置のための上記9項に記載の医薬品。
11.フェニル−置換1,4−ジヒドロピリジンを適宜通常の助剤及び賦形剤を用いて適した投与形態に変換することを特徴とする上記9項に記載の医薬品の製造法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A] 一般式(II)
−CHO (II)
[式中、
は基
【化1】

を示し、ここで
及びRは同一又は相異なりハロゲン、シアノ、エチニル、トリフルオロメト
キシ、メチル、メチルチオ、トリフルオロメチル又は炭素数が最高4の直鎖状もしく
は分枝鎖状のアルコキシを示すか、あるいは
又はRは水素を示す]
のアルデヒドを最初に一般式(III)
C−CO−CH−CO (III)
[式中、
は炭素数が最高8の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキルを示し、それは場合に
より炭素数が最高6の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルコキシ又はヒドロキシルにより
置換されていることができ、あるいは炭素数が3〜7のシクロアルキルを示す]
のアセト酢酸エステルと反応させ、その際適宜対応する一般式(IV)
【化2】

のイリデン化合物を単離し、次いでこれらを一般式(V)
CH−CO−CH−CO (V)
[式中、
はRと同一又は相異なり炭素数が最高8の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキ
ルを示し、それは場合により炭素数が最高6の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルコキシ
又はヒドロキシルにより置換されていることができ、あるいは炭素数が3〜7のシク
ロアルキルを示す]
の化合物と不活性溶媒中でアンモニア又はアンモニウム塩の存在下に反応させるか、又は一般式(VI)
【化3】

[式中、
は上記の意味を有する]
のエナミノ誘導体と直接反応させるか、あるいは
[B] 一般式(II)のアルデヒドを最初に一般式(V)の化合物と反応させ、その際適宜一般式(VII)
【化4】

[式中、
及びRは上記の意味を有する]
のイリデン化合物を単離し、次の段階でこれらを一般式(III)の化合物と不活性溶媒中でアンモニア又はアンモニウム塩の存在下に反応させるか、又は一般式(VIII)
【化5】

[式中、
は上記の意味を有する]
のエナミノカルボン酸誘導体と直接反応させるか、あるいは
[C] 一般式(IX)
【化6】

[式中、
は上記の意味を有し、
Aは上記のR又はRの意味を有し、
Bは−CO基と共に反応性カルボン酸誘導体を形成する]
の化合物を不活性溶媒中で塩基の存在下に一般式(X)
−OH (X)
[式中、
は上記のR又はRの意味を有する]
の化合物と反応させ、そして純粋なエステルエナンチオマーの場合には、エナンチオマー的に純粋なカルボン酸を、適宜最初に反応性酸誘導体の段階を介して対応するアルコールと反応させる
ことを特徴とする一般式(I)
【化7】

[式中、
、R及びRは上記の意味を有する]
のフェニル−置換1,4−ジヒドロピリジン類の製造法。

【公開番号】特開2007−91750(P2007−91750A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−315995(P2006−315995)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【分割の表示】特願平6−330296の分割
【原出願日】平成6年12月7日(1994.12.7)
【出願人】(591063187)バイエル アクチェンゲゼルシャフト (67)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−51368 Leverkusen,Germany
【Fターム(参考)】