フォイル軸受
【課題】回転軸を支持することができ、かつ回転軸が傾斜した場合でも、フォイルの端部が軸と接触せず、軸表面を傷付けず、焼き付きが発生するおそれがないフォイル軸受を提供する。
【解決手段】回転軸2を支持するフォイル軸受1Aであって、間隔を隔てて回転軸2を囲む中空円筒形の外輪5と、回転軸2の外面に配置されるフォイル4と、を備え、フォイル4と対向する回転軸2の対向部分は、軸方向両端部が中央部より細い凸形状に形成されている。
【解決手段】回転軸2を支持するフォイル軸受1Aであって、間隔を隔てて回転軸2を囲む中空円筒形の外輪5と、回転軸2の外面に配置されるフォイル4と、を備え、フォイル4と対向する回転軸2の対向部分は、軸方向両端部が中央部より細い凸形状に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸の外周に配置された薄膜状のフォイルと、このフォイルの外周に配置された外輪とを備え、回転する回転軸とフォイルの間に空気層を形成することによってオイルレスで回転軸を回転自在に支持するフォイル軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
フォイル軸受は、オイルを供給することがなく、しかも、高速回転する回転軸を支持することができるため、ターボ圧縮機、ターボチャージャ、ガスタービン等に使用されている。
【0003】
従来のフォイル軸受は、例えば、特許文献1(未公開)や、特許文献2、3に記載されている。
【0004】
従来において、フォイル軸受50は、図8に示すように、回転軸51をフォイル52で支持する。フォイル52は回転軸51の外周に多重に巻き付けされており、フォイル52は外輪53に取り付けられている。図8の例では、外輪53の両端には、フォイル52が軸方向にはみ出さないように一対のストッパ54,54が設けられている。
【0005】
回転軸51が回転すると、回転軸51とフォイル52との間に空気層が形成される。この空気層を潤滑層にすることによって、フォイル軸受50はオイルレスで回転軸51を回転自在に支持する。そして、外乱等によってフォイル52の外周側52bが軸方向に変移しようとすると、フォイル52の外周側52bの変位がストッパ54、54によって阻止される。これにより、フォイル52の外周側52bが軸方向に変移することによる不具合を防止できる。なお、52aはフォイル52の内周側を示す。
【0006】
【特許文献1】特願2007−209976号、「フォイル軸受装置」、未公開
【特許文献2】特開2003−278751号公報、「スピンドル装置」
【特許文献3】特開2005−9556号公報、「フォイル型気体軸受装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来のフォイル軸受50では、外乱等によって回転軸51が傾斜した場合、フォイル52の軸方向両端部と回転軸51とが接触し、回転軸51の軸表面を傷付けたり、焼き付きが発生するおそれがある。
特に、回転軸51が回転し始めてから空気層が十分に形成されるまでの間は、外乱等によってフォイル52の軸方向両端部と回転軸51とが接触する可能性がより高くなる。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち本発明の目的は、回転軸の傾斜によって発生するおそれのある、回転軸の損傷や回転軸とフォイルの焼き付きを防止することができるフォイル軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、回転軸を支持するフォイル軸受であって、間隔を隔てて前記回転軸を囲む中空円筒形の外輪と、前記回転軸の外面に配置されるフォイルと、を備え、前記フォイルと対向する前記回転軸の対向部分は、軸方向両端部が中央部より細い凸形状に形成されている、ことを特徴とするフォイル軸受が提供される。
【0010】
上述の本発明のフォイル軸受では、前記フォイルと対向する前記回転軸の対向部分は、軸方向両端部が中央部より細い凸形状に形成されているので、外乱等によって回転軸が傾斜しても、回転軸に設けた凸形状部により、回転軸とフォイルとが接触しなくなり、回転軸表面を傷付けず、フォイル軸受の焼き付きも防止できる。
【0011】
本発明の好ましい実施形態によると、前記回転軸は、円柱状の回転軸本体と、該回転軸本体を囲むように該回転軸本体に嵌合されて該回転軸本体とともに回転する中空円筒形の内輪と、を有し、該内輪の外面の軸方向断面形状が、前記凸形状となっている。
【0012】
このように、前記回転軸は、円柱状の回転軸本体と、該回転軸本体を囲むように該回転軸本体に嵌合されて該回転軸本体とともに回転する中空円筒形の内輪と、を有し、該内輪の外面の軸方向断面形状が、前記凸形状となっているので、前記凸形状にする加工を、回転軸本体に対してではなく前記内輪に対して行うことができる。従って、凸形状加工の作業性がよくなる。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記対向部分の外面の軸方向断面形状は、軸方向全体において円弧形状となっている。
【0014】
また、別の実施形態によれば、前記対向部分の外面の軸方向断面形状は、軸方向中央部において軸と平行な直線形状であり、軸方向両端部において円弧形状となっている。
【0015】
さらに、別の実施形態によれば、前記対向部分の外面の軸方向断面形状は、軸方向中央部において軸と平行な直線形状であり、軸方向両端部において軸方向に対して傾斜した直線形状となっている。
【発明の効果】
【0016】
上記本発明の構成によれば、外乱等によって回転軸が傾斜しても、回転軸に設けた凸形状部により、回転軸とトップフォイルとが接触しなくなり、回転軸表面を傷付けず、フォイル軸受の焼き付きも防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0018】
図1及び図2は本発明の第1実施形態を示し、図1はフォイル軸受の断面図、図2は図1のA−A断面である。
【0019】
図1及び図2において、本発明のフォイル軸受1Aは、図示しない駆動手段によって高速で回転される回転軸2と、この回転軸2の外周に配置されたフォイル4と、このフォイル外周に設けられた中空円筒形の外輪5とを備え、回転軸2を支持する。
【0020】
回転軸2は、円柱状の回転軸本体2aと、回転軸本体2aを囲むように回転軸本体2aに嵌合されて回転軸本体2aとともに回転する中空円筒形の内輪3と、を有する。内輪3は、回転軸2の外周に圧入されることで回転軸本体2aに嵌合されてよい。また、内輪3は、トップフォイル4a(即ち、フォイル4の内周側)が当接する外周面3aを有する。
【0021】
フォイル4は、薄膜状のトップフォイル4aと、薄膜からなるバックフォイル4bとからなる。薄膜状のトップフォイル4aは、内輪3の外面を囲み周方向一端が外輪5内面またはバックフォイル4bに固定されている。薄膜からなるバックフォイル4bは、トップフォイル4aと外輪5内面の間に挟持され、トップフォイル4aを弾性的に支持する。バックフォイル4bの周方向一端は、外輪5内面に固定されてよい。
トップフォイル4aとバックフォイル4bは、金属の薄膜で形成され、その構造には色々な種類がある。フォイル4の具体例としては、波形に近い形状に成形したフォイル4bの上に平らなフォイル4aを重ね合わせたものや、1枚のフォイルを複数回軸に巻き付けるものなどがある。
【0022】
中空円筒形の外輪5は、所定の固定支持面(図示せず)で支持され、内輪3を一定の間隔を隔てて囲む。なお、固定支持面は、回転軸2を有する回転機械のハウジングの内周面などであってよい。例えば、外輪5は、回転軸2に対して固定側であるハウジング(図示せず)に、例えば、すきまばめされ、且つ、図示しないピン等によって回転しないように支持されている。また、外輪5は、円筒状であり、図1、図2の例では、その内周面にバックフォイル4bが当接されている。
【0023】
第1実施形態によると、フォイル4と対向する回転軸2の対向部分は、図1に示すように、軸方向両端部が中央部より細い凸形状に形成されている。また、第1実施形態では、内輪3が前記対向部分であり、内輪3の外面の軸方向断面形状が凸形状となっている。第1実施形態では、前記対向部分の外面の軸方向断面形状(即ち、図1に示す断面形状)は、軸方向全体において円弧形状となっている。なお、本願において、軸方向とは回転軸2の軸方向を意味する。
【0024】
上述した本発明の第1実施形態によるフォイル軸受1Aでは、フォイル4と対向する回転軸2の対向部分は、軸方向両端部が中央部より細い凸形状に形成されているので、外乱等によって回転軸2が傾斜しても、回転軸2に設けた凸形状部により、回転軸2とトップフォイル4aとが接触しなくなり、回転軸表面を傷付けず、フォイル軸受1Aの焼き付きも防止できる。
また、回転軸2は、円柱状の回転軸本体2aと、回転軸本体2aに嵌合されて回転軸本体2aとともに回転する中空円筒形の内輪3と、を有し、内輪3の外面の軸方向断面形状が前記凸形状となっているので、前記凸形状にする加工を、回転軸本体に対してではなく前記内輪に対して行うことができる。従って、凸形状加工の作業性がよくなる。
さらに、第1実施形態では、フォイル4は内輪3に接触するが、回転軸本体2aには全く接触しないため、フォイル4との干渉によって回転軸本体2aが損傷を受けることがない。従って、フォイル4との干渉によって損傷を受ける部材は内輪3であり、内輪3の交換は回転軸2を交換する場合に較べて交換作業性が良く、交換コストも安価で済む。
【0025】
図3は、フォイル軸受1Aの第2実施形態を示す。第2実施形態では、図3のように、フォイル4と対向する回転軸2の対向部分は、回転軸2(内輪3)における対向部分の外面の軸方向断面形状は、軸方向中央部において軸と平行な直線形状であり、軸方向両端部において円弧形状となっている。第2実施形態の他の構成は第1実施形態と同じであってよい。
【0026】
図4は、フォイル軸受1Aの第3実施形態を示す。第3実施形態では、図4のように、フォイル4と対向する回転軸2(内輪3)における対向部分の外面の軸方向断面形状は、軸方向中央部において軸と平行な直線形状であり、軸方向両端部において軸方向に対して傾斜した直線形状となっている。第3実施形態の他の構成は第1実施形態と同じであってよい。
【0027】
図5は、フォイル軸受1Aの第4実施形態を示す。第4実施形態では、内輪3を設けずに、上述の凸形状を一体構造の回転軸2に形成している。図5では、フォイル4と対向する回転軸2の対向部分の外面の軸方向断面形状は、軸方向全体において円弧形状となっている。第4実施形態では、内輪3を設けないので、部品点数削減により部品コストが安価で済む。第4実施形態の他の構成は第1実施形態と同じであってよい。
【0028】
図6は、フォイル軸受1Aの第5実施形態を示す。第5実施形態では、内輪3を設けずに、上述の凸形状を一体構造の回転軸2に形成している。図6では、フォイル4と対向する回転軸2の対向部分の外面の軸方向断面形状は、軸方向中央部において軸と平行な直線形状であり、軸方向両端部において円弧形状となっている。第5実施形態では、内輪3を設けないので、部品点数削減により部品コストが安価で済む。第5実施形態の他の構成は第1実施形態と同じであってよい。
【0029】
図7は、フォイル軸受1Aの第6実施形態を示す。第6実施形態では、内輪3を設けずに、上述の凸形状を回転軸2に形成している。図7では、フォイル4と対向する回転軸2の対向部分の外面の軸方向断面形状は、軸方向中央部において軸と平行な直線形状であり、軸方向両端部において軸方向に対して傾斜した直線形状となっている。第6実施形態では、内輪3を設けないので、部品点数削減により部品コストが安価で済む。第5実施形態の他の構成は第1実施形態と同じであってよい。
【0030】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【0031】
例えば、前述したようにフォイル4には色々な種類がある。つまり、帯状に長い部材を多重に巻き付けた多重巻きフォイル、トップフォイル及びバンプフォイルから成るバンプフォイル、多数のフォイル片から成るリーフフォイル等があり、本発明のフォイル軸受はどのフォイルを用いたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施形態を示し、フォイル軸受の断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態を示し、図1のA−A線断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る回転軸の凸形状図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る回転軸の凸形状図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係る回転軸の凸形状図である。
【図6】本発明の第5実施形態に係る回転軸の凸形状図である。
【図7】本発明の第6実施形態に係る回転軸の凸形状図である。
【図8】従来におけるフォイル軸受の断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1A フォイル軸受
2 回転軸
2a 回転軸本体
3 内輪
3a 内輪の外周面
4 フォイル
4a フォイルの内周側(トップフォイル)
4b フォイルの外周側(バックフォイル)
5 外輪
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸の外周に配置された薄膜状のフォイルと、このフォイルの外周に配置された外輪とを備え、回転する回転軸とフォイルの間に空気層を形成することによってオイルレスで回転軸を回転自在に支持するフォイル軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
フォイル軸受は、オイルを供給することがなく、しかも、高速回転する回転軸を支持することができるため、ターボ圧縮機、ターボチャージャ、ガスタービン等に使用されている。
【0003】
従来のフォイル軸受は、例えば、特許文献1(未公開)や、特許文献2、3に記載されている。
【0004】
従来において、フォイル軸受50は、図8に示すように、回転軸51をフォイル52で支持する。フォイル52は回転軸51の外周に多重に巻き付けされており、フォイル52は外輪53に取り付けられている。図8の例では、外輪53の両端には、フォイル52が軸方向にはみ出さないように一対のストッパ54,54が設けられている。
【0005】
回転軸51が回転すると、回転軸51とフォイル52との間に空気層が形成される。この空気層を潤滑層にすることによって、フォイル軸受50はオイルレスで回転軸51を回転自在に支持する。そして、外乱等によってフォイル52の外周側52bが軸方向に変移しようとすると、フォイル52の外周側52bの変位がストッパ54、54によって阻止される。これにより、フォイル52の外周側52bが軸方向に変移することによる不具合を防止できる。なお、52aはフォイル52の内周側を示す。
【0006】
【特許文献1】特願2007−209976号、「フォイル軸受装置」、未公開
【特許文献2】特開2003−278751号公報、「スピンドル装置」
【特許文献3】特開2005−9556号公報、「フォイル型気体軸受装置」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来のフォイル軸受50では、外乱等によって回転軸51が傾斜した場合、フォイル52の軸方向両端部と回転軸51とが接触し、回転軸51の軸表面を傷付けたり、焼き付きが発生するおそれがある。
特に、回転軸51が回転し始めてから空気層が十分に形成されるまでの間は、外乱等によってフォイル52の軸方向両端部と回転軸51とが接触する可能性がより高くなる。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち本発明の目的は、回転軸の傾斜によって発生するおそれのある、回転軸の損傷や回転軸とフォイルの焼き付きを防止することができるフォイル軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、回転軸を支持するフォイル軸受であって、間隔を隔てて前記回転軸を囲む中空円筒形の外輪と、前記回転軸の外面に配置されるフォイルと、を備え、前記フォイルと対向する前記回転軸の対向部分は、軸方向両端部が中央部より細い凸形状に形成されている、ことを特徴とするフォイル軸受が提供される。
【0010】
上述の本発明のフォイル軸受では、前記フォイルと対向する前記回転軸の対向部分は、軸方向両端部が中央部より細い凸形状に形成されているので、外乱等によって回転軸が傾斜しても、回転軸に設けた凸形状部により、回転軸とフォイルとが接触しなくなり、回転軸表面を傷付けず、フォイル軸受の焼き付きも防止できる。
【0011】
本発明の好ましい実施形態によると、前記回転軸は、円柱状の回転軸本体と、該回転軸本体を囲むように該回転軸本体に嵌合されて該回転軸本体とともに回転する中空円筒形の内輪と、を有し、該内輪の外面の軸方向断面形状が、前記凸形状となっている。
【0012】
このように、前記回転軸は、円柱状の回転軸本体と、該回転軸本体を囲むように該回転軸本体に嵌合されて該回転軸本体とともに回転する中空円筒形の内輪と、を有し、該内輪の外面の軸方向断面形状が、前記凸形状となっているので、前記凸形状にする加工を、回転軸本体に対してではなく前記内輪に対して行うことができる。従って、凸形状加工の作業性がよくなる。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記対向部分の外面の軸方向断面形状は、軸方向全体において円弧形状となっている。
【0014】
また、別の実施形態によれば、前記対向部分の外面の軸方向断面形状は、軸方向中央部において軸と平行な直線形状であり、軸方向両端部において円弧形状となっている。
【0015】
さらに、別の実施形態によれば、前記対向部分の外面の軸方向断面形状は、軸方向中央部において軸と平行な直線形状であり、軸方向両端部において軸方向に対して傾斜した直線形状となっている。
【発明の効果】
【0016】
上記本発明の構成によれば、外乱等によって回転軸が傾斜しても、回転軸に設けた凸形状部により、回転軸とトップフォイルとが接触しなくなり、回転軸表面を傷付けず、フォイル軸受の焼き付きも防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0018】
図1及び図2は本発明の第1実施形態を示し、図1はフォイル軸受の断面図、図2は図1のA−A断面である。
【0019】
図1及び図2において、本発明のフォイル軸受1Aは、図示しない駆動手段によって高速で回転される回転軸2と、この回転軸2の外周に配置されたフォイル4と、このフォイル外周に設けられた中空円筒形の外輪5とを備え、回転軸2を支持する。
【0020】
回転軸2は、円柱状の回転軸本体2aと、回転軸本体2aを囲むように回転軸本体2aに嵌合されて回転軸本体2aとともに回転する中空円筒形の内輪3と、を有する。内輪3は、回転軸2の外周に圧入されることで回転軸本体2aに嵌合されてよい。また、内輪3は、トップフォイル4a(即ち、フォイル4の内周側)が当接する外周面3aを有する。
【0021】
フォイル4は、薄膜状のトップフォイル4aと、薄膜からなるバックフォイル4bとからなる。薄膜状のトップフォイル4aは、内輪3の外面を囲み周方向一端が外輪5内面またはバックフォイル4bに固定されている。薄膜からなるバックフォイル4bは、トップフォイル4aと外輪5内面の間に挟持され、トップフォイル4aを弾性的に支持する。バックフォイル4bの周方向一端は、外輪5内面に固定されてよい。
トップフォイル4aとバックフォイル4bは、金属の薄膜で形成され、その構造には色々な種類がある。フォイル4の具体例としては、波形に近い形状に成形したフォイル4bの上に平らなフォイル4aを重ね合わせたものや、1枚のフォイルを複数回軸に巻き付けるものなどがある。
【0022】
中空円筒形の外輪5は、所定の固定支持面(図示せず)で支持され、内輪3を一定の間隔を隔てて囲む。なお、固定支持面は、回転軸2を有する回転機械のハウジングの内周面などであってよい。例えば、外輪5は、回転軸2に対して固定側であるハウジング(図示せず)に、例えば、すきまばめされ、且つ、図示しないピン等によって回転しないように支持されている。また、外輪5は、円筒状であり、図1、図2の例では、その内周面にバックフォイル4bが当接されている。
【0023】
第1実施形態によると、フォイル4と対向する回転軸2の対向部分は、図1に示すように、軸方向両端部が中央部より細い凸形状に形成されている。また、第1実施形態では、内輪3が前記対向部分であり、内輪3の外面の軸方向断面形状が凸形状となっている。第1実施形態では、前記対向部分の外面の軸方向断面形状(即ち、図1に示す断面形状)は、軸方向全体において円弧形状となっている。なお、本願において、軸方向とは回転軸2の軸方向を意味する。
【0024】
上述した本発明の第1実施形態によるフォイル軸受1Aでは、フォイル4と対向する回転軸2の対向部分は、軸方向両端部が中央部より細い凸形状に形成されているので、外乱等によって回転軸2が傾斜しても、回転軸2に設けた凸形状部により、回転軸2とトップフォイル4aとが接触しなくなり、回転軸表面を傷付けず、フォイル軸受1Aの焼き付きも防止できる。
また、回転軸2は、円柱状の回転軸本体2aと、回転軸本体2aに嵌合されて回転軸本体2aとともに回転する中空円筒形の内輪3と、を有し、内輪3の外面の軸方向断面形状が前記凸形状となっているので、前記凸形状にする加工を、回転軸本体に対してではなく前記内輪に対して行うことができる。従って、凸形状加工の作業性がよくなる。
さらに、第1実施形態では、フォイル4は内輪3に接触するが、回転軸本体2aには全く接触しないため、フォイル4との干渉によって回転軸本体2aが損傷を受けることがない。従って、フォイル4との干渉によって損傷を受ける部材は内輪3であり、内輪3の交換は回転軸2を交換する場合に較べて交換作業性が良く、交換コストも安価で済む。
【0025】
図3は、フォイル軸受1Aの第2実施形態を示す。第2実施形態では、図3のように、フォイル4と対向する回転軸2の対向部分は、回転軸2(内輪3)における対向部分の外面の軸方向断面形状は、軸方向中央部において軸と平行な直線形状であり、軸方向両端部において円弧形状となっている。第2実施形態の他の構成は第1実施形態と同じであってよい。
【0026】
図4は、フォイル軸受1Aの第3実施形態を示す。第3実施形態では、図4のように、フォイル4と対向する回転軸2(内輪3)における対向部分の外面の軸方向断面形状は、軸方向中央部において軸と平行な直線形状であり、軸方向両端部において軸方向に対して傾斜した直線形状となっている。第3実施形態の他の構成は第1実施形態と同じであってよい。
【0027】
図5は、フォイル軸受1Aの第4実施形態を示す。第4実施形態では、内輪3を設けずに、上述の凸形状を一体構造の回転軸2に形成している。図5では、フォイル4と対向する回転軸2の対向部分の外面の軸方向断面形状は、軸方向全体において円弧形状となっている。第4実施形態では、内輪3を設けないので、部品点数削減により部品コストが安価で済む。第4実施形態の他の構成は第1実施形態と同じであってよい。
【0028】
図6は、フォイル軸受1Aの第5実施形態を示す。第5実施形態では、内輪3を設けずに、上述の凸形状を一体構造の回転軸2に形成している。図6では、フォイル4と対向する回転軸2の対向部分の外面の軸方向断面形状は、軸方向中央部において軸と平行な直線形状であり、軸方向両端部において円弧形状となっている。第5実施形態では、内輪3を設けないので、部品点数削減により部品コストが安価で済む。第5実施形態の他の構成は第1実施形態と同じであってよい。
【0029】
図7は、フォイル軸受1Aの第6実施形態を示す。第6実施形態では、内輪3を設けずに、上述の凸形状を回転軸2に形成している。図7では、フォイル4と対向する回転軸2の対向部分の外面の軸方向断面形状は、軸方向中央部において軸と平行な直線形状であり、軸方向両端部において軸方向に対して傾斜した直線形状となっている。第6実施形態では、内輪3を設けないので、部品点数削減により部品コストが安価で済む。第5実施形態の他の構成は第1実施形態と同じであってよい。
【0030】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。
【0031】
例えば、前述したようにフォイル4には色々な種類がある。つまり、帯状に長い部材を多重に巻き付けた多重巻きフォイル、トップフォイル及びバンプフォイルから成るバンプフォイル、多数のフォイル片から成るリーフフォイル等があり、本発明のフォイル軸受はどのフォイルを用いたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施形態を示し、フォイル軸受の断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態を示し、図1のA−A線断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る回転軸の凸形状図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る回転軸の凸形状図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係る回転軸の凸形状図である。
【図6】本発明の第5実施形態に係る回転軸の凸形状図である。
【図7】本発明の第6実施形態に係る回転軸の凸形状図である。
【図8】従来におけるフォイル軸受の断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1A フォイル軸受
2 回転軸
2a 回転軸本体
3 内輪
3a 内輪の外周面
4 フォイル
4a フォイルの内周側(トップフォイル)
4b フォイルの外周側(バックフォイル)
5 外輪
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を支持するフォイル軸受であって、間隔を隔てて前記回転軸を囲む中空円筒形の外輪と、前記回転軸の外面に配置されるフォイルと、を備え、前記フォイルと対向する前記回転軸の対向部分は、軸方向両端部が中央部より細い凸形状に形成されている、ことを特徴とするフォイル軸受。
【請求項2】
前記回転軸は、円柱状の回転軸本体と、該回転軸本体を囲むように該回転軸本体に嵌合されて該回転軸本体とともに回転する中空円筒形の内輪と、を有し、
該内輪の外面の軸方向断面形状が、前記凸形状となっている、ことを特徴とする請求項1に記載のフォイル軸受。
【請求項3】
前記対向部分の外面の軸方向断面形状は、
(A)軸方向全体において円弧形状となっている、
(B)軸方向中央部において軸と平行な直線形状であり、軸方向両端部において円弧形状となっている、または、
(C)軸方向中央部において軸と平行な直線形状であり、軸方向両端部において軸方向に対して傾斜した直線形状となっている、ことを特徴とする請求項1または2に記載のフォイル軸受。
【請求項1】
回転軸を支持するフォイル軸受であって、間隔を隔てて前記回転軸を囲む中空円筒形の外輪と、前記回転軸の外面に配置されるフォイルと、を備え、前記フォイルと対向する前記回転軸の対向部分は、軸方向両端部が中央部より細い凸形状に形成されている、ことを特徴とするフォイル軸受。
【請求項2】
前記回転軸は、円柱状の回転軸本体と、該回転軸本体を囲むように該回転軸本体に嵌合されて該回転軸本体とともに回転する中空円筒形の内輪と、を有し、
該内輪の外面の軸方向断面形状が、前記凸形状となっている、ことを特徴とする請求項1に記載のフォイル軸受。
【請求項3】
前記対向部分の外面の軸方向断面形状は、
(A)軸方向全体において円弧形状となっている、
(B)軸方向中央部において軸と平行な直線形状であり、軸方向両端部において円弧形状となっている、または、
(C)軸方向中央部において軸と平行な直線形状であり、軸方向両端部において軸方向に対して傾斜した直線形状となっている、ことを特徴とする請求項1または2に記載のフォイル軸受。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2009−287583(P2009−287583A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137455(P2008−137455)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】
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