説明

フォトクロミックインデノ縮合ナフトピラン

インデノ縮合ナフトピランの3位に結合した4−フルオロビフェニル基および4−アミノフェニル基を含む置換基を有するインデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック材料が開示される。このフォトクロミック材料は、インデノ縮合ナフトピランの3位に結合した4−フルオロフェニル基および4−アミノフェニル基なしの同様のインデノ縮合ナフトピランと比較した場合、よりはやい退色速度を示し得る。本明細書に開示されるインデノ縮合ナフトピランの合成に利用される置換2−プロピン−1−オールが開示される。本明細書に開示されるフォトクロミック材料を組み込むフォトクロミックな組成物および物品、例えば、光学素子も開示される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景)
本開示の種々の非限定的な実施形態は、ナフトピランの3位に結合した4−フルオロフェニル基および4−アミノフェニル基を含む置換基を有するインデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック材料に関した。本開示の種々の非限定的な実施形態に従うフォトクロミック材料はまた、ナフトピランの3位に結合した4−フルオロフェニル基および4−アミノフェニル基なしの同様のインデノ縮合ナフトピランと比較した場合、よりはやい退色速度を示し得る。本開示の他の非限定的な実施形態はまた、本明細書に開示されるインデノ縮合ナフトピランの合成のための置換された2−プロピン−1−オールに関する。本明細書に開示されるさらなる他の非限定的な実施形態は、フォトクロミック材料を組み込んでいる、フォトクロミックの組成物および物品、例えば、光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの従来のフォトクロミック材料、例えば、フォトクロミックナフトピランなどは、電磁放射線の吸収に応答して第一の形態または状態から第二の形態または状態への変換を受け得る。例えば、多くの従来の熱的に可逆性のフォトクロミック材料は、特定の波長の電磁放射線(すなわち、「化学線」)の吸収に応答して、第一の「透明な」または「脱色された」基底状態型と第二の「着色された」活性化状態型との間で変換し得る。本明細書において用いられる場合、「化学線」という用語は、フォトクロミック材料を第一の型または状態から第二の型または状態に変換させ得る電磁放射線をいう。次いで、このフォトクロミック材料は、化学線の非存在下で熱エネルギーに応答して透明な基底状態型に復帰し得る。1つ以上のフォトクロミック材料を含むフォトクロミック物品および組成物、例えば、メガネ類の適用のためのフォトクロミックレンズは一般に、それらが含むフォトクロミック材料に対応する光学的に透明な状態および着色された状態を示す。従って、例えば、フォトクロミック材料を含むメガネ類のレンズは、日光で見出される特定の波長のような化学線に対する暴露の際に、透明な状態から着色された状態に変換し得、そして熱エネルギーの吸収の際、このような放射線の非存在下で透明な状態に復帰し得る。
【0003】
フォトクロミック物品および組成物において利用する場合、従来のフォトクロミック材料は代表的には、吸収させること、混合すること、および/または結合することのうちの1つによってホストのポリマーマトリックスに組み込まれる。あるいは、このフォトクロミック材料は、事前に成型された物品またはコーティングに吸収され得る。本明細書において用いられる場合、「フォトクロミック組成物」という用語は、フォトクロミック材料であってもなくてもよい1つ以上の他の材料と組み合わせたフォトクロミック材料を指す。
【0004】
多くのフォトクロミック適用については一般に、着色された活性化状態型から透明な基底状態型に急速に復帰し得るが、依然として色濃度のような受容可能な特徴を維持しているフォトクロミック材料を有することが所望され得る。例えば、フォトクロミックメガネ類の適用では、フォトクロミック材料を含む光学的レンズは、着用者が低化学線の領域(例えば、インドア)から、高化学線の領域(例えば、直射日光)へ動くにつれて、光学的に透明な状態から着色された状態へ変換する。レンズが着色されれば、電磁スペクトルの可視領域および/または紫外領域からの電子放射線が、レンズを通して着用者の目へ透過するのは少なくなる。換言すれば、光学的に透明な状態においてよりも着色状態ではレンズによって吸収される電磁放射線が多い。着用者が引き続き高化学線の領域から低化学線の領域に移動した場合、メガネ類におけるフォトクロミック材料は、熱エネルギーに応答して、着色された活性化状態から透明な基底状態に復帰する。着色から透明へのこの変換に数分間以上かかる場合、着用者の視覚は、低い周辺光、および着色レンズを通じた可視光の透過の減少の複合効果に起因して、この間最適ではないかもしれない。
【0005】
従って、特定の適用については、従来のフォトクロミック材料と比較して、着色型から透明型へさらに急速に変換し得るフォトクロミック材料を開発することが有益であり得る。本明細書において用いる場合、「退色速度」という用語は、活性化された着色状態から不活性な透明状態へフォトクロミック材料が変換する速度の尺度である。フォトクロミック材料の退色速度は、例えば、所定のマトリックスにおいて制御された条件下でフォトクロミック材料を飽和まで活性化すること、その活性化状態吸光度(すなわち、飽和光学密度)を測定すること、次いでフォトクロミック材料の吸光度が活性化定常状態の吸光度値の半分に低下するのにかかる時間の長さを決定することによって測定され得る。この形式で測定した場合、退色速度は、秒の単位を用いてT1/2で示される。
【0006】
活性化状態型のフォトクロミック材料の吸収スペクトルは、化学線に曝された場合、フォトクロミック材料を含む物品の色、例えば、メガネ類のレンズの色に対応する。電磁放射線の可視領域内の特定の波長が、活性化状態の型におけるフォトクロミック材料によって吸収されるので、透過される(すなわち、吸収されない)可視領域内の波長は、開環型におけるフォトクロミック材料の色に対応する。電磁スペクトルの可視領域における約500nm〜約520nmの波長の光の吸収によって、「赤っぽい」色を示すフォトクロミック材料を生じる。すなわち、それは、可視スペクトルのうちより短い波長、すなわち青側から可視光線を吸収し、そして可視スペクトルのうちより長い波長、すなわち赤側からの放射線を透過させる。逆に、電磁スペクトルの可視領域における約580nm〜約610nmの波長の光の吸収によって、「青っぽい」色を示すフォトクロミック材料を生じる。すなわち、それは、可視スペクトルのうちより長い波長、すなわち赤側から可視光線を吸収し、そして可視スペクトルのうちより短い波長、すなわち青側から放射線を透過させる。
【0007】
多くの現在のフォトクロミック化合物は、可視スペクトルの青側に向かう可視光を吸収する活性化状態吸収スペクトルを有し、そして活性化型で赤っぽい色を示す。このフォトクロミック材料が、深色シフトされるように、すなわち、より長い波長を有する光を吸収するようにシフトされるように、活性化状態吸収スペクトルを有する場合、このフォトクロミック材料は、現行のフォトクロミック材料よりも青い色を示す。特定の適用については、化学線について深色シフトした活性化型吸収スペクトルを有し、従ってより青い色を示し得るフォトクロミック材料を有することが所望され得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(簡単な要旨)
本明細書に開示される種々の非限定的な実施形態は、インデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック材料に関しており、このインデノ縮合ナフトピランは、そのインデノ縮合ナフトピランの3位に結合した4−フルオロフェニル基および4−アミノフェニル基を含む置換基を有する。特定の非限定的な実施形態に従うフォトクロミック材料は、インデノ縮合ナフトピランの3位に結合した4−フルオロフェニル基および4−アミノフェニル基を含む置換基を有さない、匹敵するフォトクロミックのインデノ縮合ナフトピランよりも、よりはやい退色速度を有し得る。
【0009】
1つの非限定的な実施形態では、このフォトクロミック材料は、3位に結合したB基および3位に結合したB’基を含むインデノ縮合ナフトピランを含み得る。このB基は、4−フルオロフェニル基であり得、そしてこのB’基は、4位が置換されたフェニル基であり得、ここでこの4位が置換されたフェニル基の4位の置換基は、−NRであり、RおよびRは各々独立して、水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、または二置換フェニルであり、このフェニルの置換基はC〜CアルキルもしくはC〜Cアルコキシであるか、またはRおよびRは窒素原子と一緒になって、以下の構造式II:
【0010】
【化9】

によって提示される窒素含有環を形成し、
ここで、各々の−Y−は、各々の出現について独立して、−CH−、−CH(R)−、−C(R−、−CH(アリール)−、−C(アリール)−、および−C(R)(アリール)−から選択され、かつZは−Y−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NH−、−N(R)−または−N(アリール)−であり、各々のRは独立してC〜Cアルキル、またはヒドロキシ(C〜C)アルキルであり、各々のアリールが独立してフェニルまたはナフチルであり、mは整数1、2または3であり、かつpは整数0、1、2または3であり、そしてpが0である場合、Zは−Y−である。
【0011】
本発明の開示のなおさらなる非限定的な実施形態は、構造式III:
【0012】
【化10】

に示される構造を有するフォトクロミック材料に関しており、
ここで、R16、R17、R18、R19、およびR20は、本明細書において以下に記載されかつ特許請求の範囲に説明されるような基を表す。
【0013】
本発明の開示のなおさらなる非限定的な実施形態は、構造式VI:
【0014】
【化11】

に示されるような構造を有する化合物に関しており、
ここで、R12は、本明細書において記載されかつ特許請求の範囲に説明されるような基を表す。本発明の開示のなおさらなる非限定的な実施形態は、図VIの化合物と、7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールとを反応させて3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランを形成する工程を包含する、フォトクロミック材料を作製する方法に関する。
【0015】
他の非限定的な実施形態は、基板と、本明細書に開示される任意の非限定的な実施形態に従うフォトクロミック材料とを含むフォトクロミック物品に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本明細書に開示される種々の非限定的な実施形態は、以下の図面と組み合わせて読み取った場合に、より良好に理解され得る。
【0017】
(詳細な説明)
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる場合、「a」、「an」および「the」との冠詞は、明らかにかつ明白に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を包含する。
【0018】
さらに、本明細書の目的のためには、他に示さない限り、本明細書に用いられる成分の量、反応条件および他の特性またはパラメーターを示す全ての数値は、全ての場合に、「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。従って、他に示さない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に示される数的なパラメーターは近似であることが理解されるべきである。最低限でも、そして特許請求の範囲に対して均等論の適用を限定することは企図せず、数的なパラメーターは、報告された有効数字の数および通常の四捨五入の技術の適用に照らして読み取られるべきである。
【0019】
さらに、本発明の広範な範囲を示している数的な範囲およびパラメーターは、上記で考察されるように近似であるが、実施例のセクションに示される数値は、できるだけ正確に報告される。しかし、このような数的な値は、測定装置および/または測定技術から生じる特定の誤差を固有に含むことが理解されるべきである。
【0020】
本発明の種々の非限定的な実施形態によるフォトクロミック化合物および材料がここで考察される。本明細書において用いる場合、「フォトクロミック」という用語は、少なくとも化学線の吸収に応答して変化する、少なくとも可視の放射線についての吸収スペクトルを有することを意味する。本明細書において用いる場合、「化学線」という用語は、フォトクロミック材料を第一の形態または状態から第二の形態または状態に変換させ得る電磁放射線をいう。さらに、本明細書において用いる場合、「フォトクロミック材料」という用語は、フォトクロミック特性を示すように適合された、すなわち、少なくとも化学線の吸収に応答して変化する少なくとも可視の放射線について吸収スペクトルを有するように適合された任意の物質を意味する。本明細書において用いる場合、「フォトクロミック組成物」という用語は、フォトクロミック材料であってもなくてもよい1つ以上の他の材料と組み合わせた、フォトクロミック材料を指す。
【0021】
本明細書において用いる場合、「インデノ縮合ナフトピラン」という用語は、(I)において下に示されるように、インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランを含む環骨格を有するフォトクロミック化合物として定義される。インデノ縮合ナフトピランは、フォトクロミックナフトピランの例である。本明細書において用いる場合、「フォトクロミックナフトピラン」という用語は、化学線の吸収に応答して、第一の「閉環型」と第二の「開放型」との間で変換し得るナフトピランを指す。本明細書において用いる場合、「閉環型」という用語は、インデノ縮合ナフトピランの基底状態型に対応し、そして「開環型」という用語は、インデノ縮合ナフトピランの活性化状態型に対応する。
【0022】
本明細書において用いる場合、「3位」、「6位」、「11位」などという用語は、下の構造(I)に番号付けした位置で図示されるように、インデノ縮合ナフトピラン骨格の環原子のそれぞれ、3位、6位および11位をいう。さらに、インデノ縮合ナフトピラン骨格の環は、A〜Eの文字によって示され得、その結果各々の環は、その対応する文字によって言及され得る。従って、例えば、本明細書において用いる場合、「C環」または「インデノ縮合ナフトピランのC環」という用語は、下の構造(I)において「C」と表示された環によって表示されるとおり、インデノ縮合ナフトピランのナフチル部分構造の下側の環に対応する。本明細書において用いる場合、「C環の炭素に結合される」という用語は、構造(I)に示される番号付けに従う5位、6位、7位または8位のうちの少なくとも1つにおいて炭素に結合されることを意味する。
【0023】
【化12】

本明細書に開示される種々の非限定的な実施形態によれば、インデノ縮合ナフトピランの3位のB基およびB’基は、上記で(I)において図示されるフォトクロミックなインデノ縮合ナフトピラン骨格の一部である。いかなる特定の理論によって限定されることも意図しないが、B基およびB’基は、インデノ縮合ナフトピラン構造の開環型を安定化することを補助し得る。本明細書に開示される種々の非限定的な実施形態によれば、基Bおよび/または基B’は、本開示の種々の非限定的な実施形態においては、置換されたフェニルの置換基のような、コアのインデノ縮合ナフトピラン構造の開環型のπ系と共役し得る少なくとも1つのπ結合を有する任意の構造であり得る。本開示の種々の非限定的な実施形態によれば、フォトクロミック材料のB基およびB’基は各々4位が置換されたフェニル基を含み得、ここでB基およびB’基の各々の4位が置換されたフェニル基の4位における置換基は、本明細書において下に説明される。
【0024】
本開示のフォトクロミック材料の種々の非限定的な実施形態はここに、詳細に考察される。特定の非限定的な実施形態によれば、本発明の開示は、インデノ縮合ナフトピランの3位に結合したB基およびインデノ縮合ナフトピランの3位に結合したB’基を含むインデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック材料を提供する。このB基は、4−フルオロフェニル基であり得、そしてB’基は、4位が置換されたフェニル基であり得、ここで4位が置換されたフェニル基の4位における置換基は−NRである。種々の非限定的な実施形態によれば、RおよびRは各々独立して、水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、または二置換フェニルであり得、このフェニルの置換基はC〜CアルキルもしくはC〜Cアルコキシであり得るか、またはRおよびRは窒素原子と一緒になって、以下の構造式II:
【0025】
【化13】

によって提示される窒素含有環を形成し得、ここで各々の−Y−は各々の出現について独立して、−CH−、−CH(R)−、−C(R−、−CH(アリール)−、−C(アリール)−、および−C(R)(アリール)−から選択され得、そしてZは−Y−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NH−、−N(R)−または−N(アリール)−であり、各々のRは独立してC〜Cアルキル、またはヒドロキシ(C〜C)アルキルであり、各々のアリールは独立してフェニルまたはナフチルであり得、「m」は整数1、2または3であり、かつ「p」は整数0、1、2または3であり、そして「p」が0である場合、Zは−Y−である。
【0026】
特定の非限定的な実施形態によれば、このフォトクロミック材料は、ポリメタクリレートチップにおいて測定した場合、インデノ縮合ナフトピランであって、その3位に結合した4−フルオロフェニル基、および3位に、4−置換フェニルであってこの4位の置換フェニルが−NRである4−置換フェニルを欠くインデノ縮合ナフトピランを含む、匹敵するフォトクロミック材料よりもはやい退色速度を有し得る。
【0027】
本開示全体を通じて用いられる場合、「退色速度」という用語は、フォトクロミック材料のT1/2値を測定することによって表され得る運動速度値に相当する。本明細書において用いる場合、「退色速度」という用語は、フォトクロミック材料が活性化された着色状態から不活性な透明状態に変換する速度の尺度である。フォトクロミック材料の退色速度は、例えば、フォトクロミック材料を所定のマトリックスにおける制御条件下で飽和まで活性化すること、その活性化された定常状態の吸光度(すなわち、飽和された光学密度)を測定すること、次いでフォトクロミック材料の吸光度が活性化定常状態吸光度値の半分に低下するのにかかる時間の長さを決定することによって測定され得る。この形式で測定した場合、退色速度は、秒の単位を用いてT1/2で示される。従って、退色速度が「よりはやい」といわれる場合、フォトクロミック化合物は、着色された活性化状態から透明な基底状態まで、より高速で変化する。このよりはやい退色速度は、例えば、フォトクロミック材料のT1/2測定値の値での低下によって示され得る。すなわち、退色速度がよりはやくなるにつれて、吸光度が最初の活性化された吸光度値の半分に低下するのにかかる時間の長さは短くなる。本明細書に開示されるフォトクロミック材料についてのT1/2値を決定するためのさらに詳細な測定手順は、下の実施例に説明される。
【0028】
フォトクロミック材料の退色速度は、そのフォトクロミック材料が組み込まれる媒体に依存し得るということが当業者によって理解される。本明細書において用いる場合、「組み込まれる」という用語は、フォトクロミック材料と関連して用いられる場合、物理的におよび/または化学的に組み合わされる媒体手段である。本発明の開示では、本明細書に開示される全てのフォトクロミック性能のデータ(例えば、退色速度(T1/2)、極大吸収波長(λmax−vis)、飽和光学密度および性能等級)は、他に特に注記しない限り、メタクリレートポリマーを含むポリマー試験チップへのフォトクロミック材料の組み込みが関与する標準的なプロトコールを用いて測定される。本明細書において用いる場合、「極大吸収波長」すなわち「λmax−vis」という用語は、可視スペクトルにおけるフォトクロミック材料の活性化(着色)型の極大吸光度の波長である。本明細書において用いる場合、「飽和光学密度」(「Sat’d OD」と略称)という用語は、実施例に規定されるような標準的な条件下での活性化フォトクロミック材料の定常状態の吸光度(すなわち、光学密度)の尺度である。本明細書において用いる場合、「性能等級」または「PR」という用語は、フォトクロミック材料の性能の尺度であり、かつ以下の式:
性能等級=((Sat’d OD)T1/2)×10,000
によって算出される。性能等級は代表的には、1〜100の値を有し、高い値ほど一般に好ましい。
【0029】
フォトクロミック性能試験および本発明の開示の種々の非限定的実施形態のフォトクロミック材料を組み込む、ポリマー試験チップの形成のための標準的プロトコールは、本明細書の実施例のセクションにさらに詳細に開示される。当業者は、退色速度についての正確な値および他のフォトクロミック性能データは組み込みの媒体に極めて依存し得るが、本明細書に開示されるフォトクロミック性能データは、他の媒体に組み込まれた場合のフォトクロミック材料について予想されるべき相対速度およびデータ値の実例であり得るということを理解する。
【0030】
他の非限定的な実施形態によれば、フォトクロミック材料は、インデノ縮合ナフトピランを含み、B基は4−フルオロフェニル基であり得、そしてB’基は、4−モルホリノフェニル、4−ピペリジノフェニル、4−(置換ピペリジノ)フェニル、4−ピロリジノフェニル、4−(置換ピロリジノ)フェニル、または4−ピペリジノフェニルであり得、この置換基は、C〜Cアルキルまたはヒドロキシ(C〜C)アルキルであり得る。特定の非限定的な実施形態では、4−ピペリジノフェニルは、4−(N’置換)ピペリジノフェニルであり得、ここでこの窒素上の置換は、C〜Cアルキル置換基であり得る。なおさらなる非限定的な実施形態によれば、B’基は、4−(N,N−ジアルキルアミノ)フェニルであり得、これらのアルキル基は、同じであっても異なってもよく、そしてC〜Cアルキル、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピルおよびブチルなどであり得る。
【0031】
【化14】

本明細書に開示される特定の非限定的な実施形態によれば、本明細書に説明されかつ特許請求されるような、4−フルオロフェニルを含むB基および4−アミノフェニル基を含むB’基を有するインデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック材料は、T1/2値によって測定される場合、上記に説明されるように組み合わせたB基およびB’基なしの匹敵するインデノ縮合ナフトピランよりもはやい退色速度を有し得る。例えば、そして、構造(A)、化合物A1を参照して、1つの特定の非限定的な実施形態によれば、B基が4−フルオロフェニル(R=F)であり、B’基が4−ピペリジノフェニル(R=ピペリジノ)であるフォトクロミック材料は、T1/2=118秒という退色速度を有する。対照的に、そして構造(A)、化合物A3およびA4を参照して、B基がフェニル(R=F)であり、そしてB’基がそれぞれフェニル(R=H)または4−ピペリジノフェニル(R=ピペリジノ)のいずれかである2つの匹敵するフォトクロミック材料は、それぞれ723秒および180秒というより遅い退色速度T1/2値を有する。さらに、構造(A)、化合物A6を参照すれば、B基が4−フルオロフェニル(R=F)であり、かつB’基がフェニル(R=H)である匹敵するフォトクロミック材料は、542秒というより遅い退色速度T1/2値を有する。
【0032】
さらに、構造(A)、化合物A2を参照して、別の特定の非限定的な実施形態によれば、B基が4−フルオロフェニル(R=F)であり、そしてB’基が4−モルホリノフェニル(R=モルホリノ)であるフォトクロミック材料は、T1/2=151秒という退色速度を有する。対照的にそして構造(A)、化合物A3およびA5を参照して、B基がフェニル(R=H)であり、かつB’基がそれぞれフェニル(R=H)または4−モルホリノフェニル(R=モルホリノ)のいずれかである2つの匹敵するフォトクロミック材料は、それぞれ723秒および241秒というより遅い退色速度T1/2値を有する。さらに、構造(A)、化合物A6を参照すれば、B基が4−フルオロフェニル(R=F)であり、かつB’基がフェニル(R=H)である匹敵するフォトクロミック材料は、542秒というより遅い退色速度T1/2値を有する。
【0033】
このフォトクロミック材料の特定の非限定的な実施形態は、本明細書に記載されるようなB基およびB’基に加えて、インデノ縮合ナフトピランのC環の炭素に結合した第一の電子求引性基を含み得る。フォトクロミック材料の特定の非限定的な実施形態によれば、この第一の電子求引性基は、インデノ縮合ナフトピランのC環の6位に結合され得る。
【0034】
本明細書において用いる場合、「基」という用語は、1つ以上の原子の配列を意味する。本明細書において用いる場合、「電子求引性基」という用語は、π系(例えば、インデノ縮合ナフトピラン骨格のπ系など)から電子密度を吸引する基として定義され得る。さらに、「電子求引性基」とは、本明細書において用いる場合、この基が芳香族のπ系(例えば、インデノ縮合ナフトピランのコアの芳香族π系)に関与する炭素に結合される場合、正のハメットσ値を有する基として定義され得る。本明細書において用いる場合、「ハメットσ値」という用語は、分極性π電子系(例えば、芳香族π電子系など)を通じて伝達される、芳香族π系に関与する炭素に結合する置換基の、電子供与性または電子求引性のいずれかの影響として、電子的な影響の尺度である。ハメットσ値は、パラ位で置換された水素の電子的な影響に対して、フェニル環のパラ位での置換基の電子的な影響を比較する相対的な尺度である。代表的には、一般に芳香族置換基については、負のハメットσ値は、π電子系に対して電子供与性の影響を有する基または置換基(すなわち、電子供与性基)の指標であり、そして正のハメットσ値は、π電子系に対して電子求引性の影響を有する基または置換基(すなわち、電子求引性基)の指標である。
【0035】
本明細書に記載されるフォトクロミック材料の種々の非限定的な実施形態と組み合わせて用いるのに適切な電子求引性基は、約0.05〜約0.75の範囲のハメットσ値を有し得る。適切な電子求引性基は、例えば、限定はしないが以下を含み得る:ハロゲン、例えば、フルオロ(σ=0.06)、クロロ(σ=0.23)およびブロモ(σ=0.23);ペルフルオロアルキル(例えば、−CF、σ=0.54)またはペルフルオロアルコキシ(例えば、−OCF、σ=0.35)であって、ここでペルフルオロアルキルまたはペルフルオロアルコキシのいずれかのペルフルオロアルキル部分は、例えば、トリフルオロメチルまたは式C2n+1を有する他のペルフルオロアルキル部分を含み得、ここで「n」は1〜10の整数である;シアノ(σ=0.66);−OC(=O)R(例えば、−OC(=O)CH,σ=0.31);−SOX(例えば、−SOCH,σ=0.68);または−C(=O)−Xであって、Xは水素(−CHO,σ=0.22)、C〜Cアルキル(例えば、−C(=O)CH,σ=0.50)、−OR(σ≒0.4)、または−NR(例えば、−C(=O)NH,σ=0.36)であって、R、R、RおよびRの各々が各々独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、二置換フェニル、アルキレングリコール、またはポリアルキレングリコールであり得、このフェニルの置換基は、C〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシであり得る。約0.05〜約0.75の範囲のハメットσ値を有するさらなる適切な電子求引性置換基は、その開示が参照によって本明細書に援用される、Lange’s Handbook of Chemistry,第15版、J.A.Dean,編、McGraw Hill,1999,第9.1−9.8頁の「Section 9 Physicochemical Relationships」に説明される。下付き文字「p」は、ハメットのσ値と組み合わせて用いられる場合、この基がモデル系(例えば、パラ置換された安息香酸モデル系)のフェニル環のパラ位に位置する場合に測定されるハメットσ値をいうことが当業者によって理解される。
【0036】
本明細書において用いる場合、「ポリアルキレングリコール」という用語は、−[O−(C2a)]−OR”の一般的構造を有する置換基を意味し、ここで「a」および「b」は各々独立して、1〜10の整数であり、そしてR”は、H、アルキル、反応性置換基、または第二のフォトクロミック材料であり得る。適切なポリアルキレングリコールの非限定的な例は、米国特許第6,113,814号の第3欄第30〜64行に見出され得、その開示は参照によって本明細書に援用される。反応性置換基の非限定的な例は、米国特許出願第11/102,280号、段落[0033]−[0040]に見出され得、その開示は参照によって本明細書に援用される。
【0037】
さらなる非限定的な実施形態によれば、本開示のフォトクロミック材料は、インデノ縮合ナフトピランの11位に結合された第二の電子求引性基をさらに含み得る。種々の非限定的な実施形態によれば、この第二の電子求引性基は、フルオロ、クロロ、ブロモ、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルコキシ、シアノ、−OC(=O)R、−SOX、または−C(=O)−Xであり得、Xは水素、C〜Cアルキル、−OR、または−NR1011であり、ここでR、R、R10、およびR11は各々独立して、水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、または二置換フェニルであり、このフェニルの置換基は、C〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである。
【0038】
上記に説明されるようなインデノ縮合ナフトピラン、第一の電子求引性基、および特定の非限定的な実施形態では第二の電子求引性基を含むフォトクロミック材料のさらなる考察は、その開示全体が参照によって援用される、本願と同時に出願された、発明の名称「Photochromic Materials Having Electron−Withdrawing Substituents」の米国非仮出願第11/314,141号に見出され得る。
【0039】
特定の非限定的な実施形態によれば、本開示のフォトクロミック材料は、インデノ縮合ナフトピランを含み得、ここではその6位に結合される第一の電子求引性基は、第一のフルオロ基であり得、そしてその11位に結合される第二の電子求引性基は、第二のフルオロ基であり得る。
【0040】
他の非限定的な実施形態によれば、本開示のフォトクロミック材料は、下の式(III)によって提示される構造を有する。
【0041】
【化15】

構造(III)を参照して、「s」は、0〜3の範囲の整数であり得、そして「q」は、0〜3の範囲の整数であり得る。各々のR16および各々のR17は、各々の出現について、例えば、以下を含み得る:水素;フルオロ;クロロ;ブロモ;ペルフルオロアルキル;ペルフルオロアルコキシ;シアノ;−OC(=O)R21;−SOX;−C(=O)−Xであって、ここでXは、例えば、水素、C〜Cアルキル、−OR22、または−NR2324であり得、ここでR21、R22、R23およびR24は各々独立して、水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、または二置換フェニルであり得、このフェニルの置換基は、C〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシであり得る;C〜Cアルキル;C〜Cシクロアルキル;置換または非置換のフェニル;−OR25であって、ここでR25は、例えば、水素、C〜Cアルキル、フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ(C〜C)アルキル、C〜Cシクロアルキル、またはモノ(C〜C)アルキル置換C〜Cシクロアルキルであり得、そしてこのフェニルの置換基は、C〜CアルキルであってもまたはC〜Cアルコキシであり得る;一置換フェニルであって、このフェニルは、パラ位に位置する置換基を有し、ここでこの置換基は、ジカルボン酸残基またはその誘導体、ジアミン残基またはその誘導体、アミノアルコール残基またはその誘導体、ポリオール残基またはその誘導体、−CH−、−(CH−、または−[O−(CH−であり、ここで「t」は、整数2、3、4、5または6であり、そして「k」は1〜50の整数であり、この置換基は、別のフォトクロミック材料のアリール基に結合されている;あるいは−N(R26)R27であって、ここでR26およびR27は各々独立して、例えば、水素、C〜Cアルキル、フェニル、ナフチル、フラニル、ベンゾフラン−2−イル、ベンゾフラン−3−イル、チエニル、ベンゾチエン−2−イル、ベンゾチエン−3−イル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、ベンゾピリジル、フルオレニル、C〜Cアルキルアリール、C〜C20シクロアルキル、C〜C20ビシクロアルキル、C〜C20トリシクロアルキルまたはC〜C20アルコキシアルキルであり得、ここでこのアリール基はフェニルまたはナフチルである。あるいは、R26およびR27は窒素原子と一緒になって、以下を形成し得る:C〜C20ヘテロ−ビシクロアルキル環またはC〜C20ヘテロ−トリシクロアルキル環;以下の構造式IVAによって提示される窒素含有環:
【0042】
【化16】

ここで各々の−Y−は独立して、各々の出現について、−CH−、−CH(R28)−、−C(R28−、−CH(アリール)−、−C(アリール)−、または−C(R28)(アリール)−であり得、そしてZは、−Y−、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NH−、−N(R28)−、または−N(アリール)−であり得、各々のR28は独立して、C〜Cアルキルまたはヒドロキシ(C〜C)アルキルであり得、各々のアリールは独立して、フェニルまたはナフチルであり得、「m」は整数1、2または3であり、かつ「p」は整数0、1、2または3であり、そして「p」が0である場合、Zは−Y−である;以下の構造式IVBまたはIVC:
【0043】
【化17】

のうちの1つによって提示される基であって、ここで、R30、R31およびR32は各々独立して、例えば、水素、C〜Cアルキル、フェニル、またはナフチルであり得、あるいは基R30およびR31は一緒になって、5〜8個の炭素原子の環を形成し得、かつ各々のR29は独立して、各々の出現について、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、フルオロまたはクロロであり得、かつ「g」は整数0、1、2または3であるか;または非置換、一置換または二置換のC〜C18スピロ二環式アミンまたは非置換、一置換および二置換のC〜C18スピロ三環式アミンであり、ここでこの置換基は独立して、アリール、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、またはフェニル(C〜C)アルキルである。さらに、6位のR16基および7位のR16基は一緒になって、IVDおよびIVE:
【0044】
【化18】

のうちの1つによって提示される基を形成し得、ここでTおよびT’は各々独立して酸素または基−NR26−であり得、ここでR26、R30およびR31は上記で説明されるとおりであり得る。
【0045】
さらに、構造式(III)を参照して、R18およびR19は各々独立して、例えば、以下であり得る:水素;ヒドロキシ;C〜Cアルキル;C〜Cシクロアルキル;アリル;置換または非置換のフェニル;置換または非置換のベンジル;クロロ;フルオロ;基−C(=O)Wであって、ここでWは例えば、水素、ヒドロキシ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、非置換、一置換または二置換のアリール基であるフェニルまたはナフチル、フェノキシ、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェノキシ、ジ(C〜C)アルコキシ置換フェノキシ、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェノキシ、ジ(C〜C)アルコキシ置換フェノキシ、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、フェニルアミノ、モノ(C〜C)アルキル置換フェニルアミノ、ジ(C〜C)アルキル置換フェニルアミノ、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニルアミノまたはジ(C〜C)アルコキシ置換フェニルアミノであり得る;−OR33であって、ここでR33は、例えば、C〜Cアルキル、フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル(C〜C)アルキル、C〜Cアルコキシ(C〜C)アルキル、C〜Cシクロアルキル、モノ(C〜C)アルキル置換C〜Cシクロアルキル、C〜Cクロロアルキル、C〜Cフルオロアルキル、アリルまたは基−CH(R34)W’であり得、ここでR34は水素またはC〜Cアルキルであり得、W’はCN、CFまたはCOOR35であり得、R35は水素もしくはC〜Cアルキルであり得るか、またはR33は基、−C(=O)W”であり得、ここでW”は例えば、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、非置換、一置換もしくは二置換のアリール基であるフェニルまたはナフチル、フェノキシ、モノ(C〜C)アルキル置換フェノキシ、ジ(C〜C)アルキル置換フェノキシ、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェノキシ、ジ(C〜C)アルコキシ置換フェノキシ、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、フェニルアミノ、モノ(C〜C)アルキル置換フェニルアミノ、ジ(C〜C)アルキル置換フェニルアミノ、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニルアミノまたはジ(C〜C)アルコキシ置換フェニルアミノであり得、ここでこのフェニル基、ベンジル基もしくはアリール基の置換基の各々は独立してC〜CアルキルもしくはC〜Cアルコキシであり得る;または一置換フェニルであって、このフェニルはパラ位に位置する置換基を有し、ここでこの置換基は以下である:ジカルボン酸残基またはその誘導体、ジアミン残基またはその誘導体、アミノアルコール残基またはその誘導体、ポリオール残基またはその誘導体、−CH−、−(CH−、または−[O−(CH−であって、ここで「t」は整数2、3、4、5または6であって、かつ「k」は1〜50の整数であって、この置換基は、別のフォトクロミック材料のアリール基に連結されている。あるいは、R18およびR19は一緒になって、オキソ基、3〜6個の炭素原子を含むスピロ−カルボン酸基、または1〜2個の酸素原子およびスピロ炭素原子を含めて3〜6個の炭素原子を含むスピロ−複素環式基を形成し得、このスピロ炭素環式およびスピロ複素環式基は、0、1もしくは2のベンゼン環と環形成されている。
【0046】
構造(III)をさらに参照して、R20は、−NR3637であり得、ここでR36およびR37は各々独立して、例えば、水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、または二置換フェニルであり得、このフェニルの置換基は、C〜CアルキルもしくはC〜Cアルコキシである。あるいは、R36およびR37は窒素原子と一緒になって以下の構造式V:
【0047】
【化19】

によって提示される窒素含有環を形成し得、ここで各々の−Y’−は独立して、各々の出現について、−CH−、−CH(R38)−、−C(R38−、−CH(アリール)−、−C(アリール)−、および−C(R38)(アリール)−であり得、そしてZ’は−Y’−、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NH−、−N(R38)−、または−N(アリール)−であり得、ここで各々のR38は独立してC〜Cアルキルまたはヒドロキシ(C〜C)アルキルであって、各々のアリールは独立してフェニルまたはナフチルであり、m’は整数1、2または3であり、かつp’は整数0、1、2または3であり、そしてp’が0である場合、Z’は−Y’−である。
【0048】
特定の非限定的な実施形態によれば、R20がモルホリノである場合、R16はインデノ縮合ナフトピラン骨格の7位に結合した4−置換ピペリジノではなくてもよい。
【0049】
特定の非限定的な実施形態によれば、このフォトクロミック材料は、R20がジアルキルアミノ、モルホリノ、ピペリジノ(piperidino)、置換ピペリジノ(piperidino)、ピロリジノ、置換ピロリジノ、ピペリジノ(piperizino)、または置換ピペリジノ(piperizino)を含み得る、構造(III)による構造を含み得る。このピペリジノ(piperidino)、ピロリジノまたはピペリジノ(piperizino)部分上の置換基は、(C〜C)アルキルまたはヒドロキシ(C〜C)アルキル(例えば、ヒドロキシメチルなど)を含み得る。このジアルキルアミノのアルキル置換基は、同じであっても異なってもよく、そして(C〜C)アルキルであり得る。
【0050】
さらなる非限定的な実施形態によれば、このフォトクロミック材料は、R16が構造(III)のインデノ縮合ナフトピランの6位に位置するフルオロ基であり得、そしてR17が構造(III)のインデノ縮合ナフトピランの11位に位置する第二のフルオロ基を含み得る、構造(III)に従う構造を含み得る。
【0051】
本開示の種々の非限定的な実施形態のフォトクロミック材料を作製する非限定的な方法は、図1および図2を参照してここで考察される。本発明の開示における使用に適切な7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール化合物を合成する種々の方法は、例えば、その開示が参照によって本明細書に援用される、米国特許第6,296,785号、第11欄第6行〜第28欄第35行および実施例;米国特許第5,645,767号第6欄第32行〜第8欄第32行および実施例;米国特許出願第11/102,280号(2005年4月8日出願)、第[0069]段落〜第[0072]段落および実施例;ならびに米国特許出願第11/102,279号(2005年4月8日出願)、第[0099]段落〜第[0106]段落および実施例に見出され得る。
【0052】
例えば、図1は、特定の非限定的な実施形態で、例えば、第一および第二の電子求引性基のような置換基R’およびR”を有し得る7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール化合物を作製するための1つの非限定的な反応スキームを図示する。次いで、この置換および非置換の7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール化合物を、図3に示されるように、下に記載される1−(4−アミノフェニル)−1−(4−フルオロフェニル)−2−プロピン−1−オール(その一般的合成は図2に示される)と反応させて、3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン(本明細書に開示される種々の非限定的な実施形態による)を含むフォトクロミック材料を形成し得、これはさらに、その3位に結合したB基およびその3位に結合したB’基を含み、このB基およびB’基は、本明細書に規定されかつ特許請求されるとおりであり得る。これらの反応スキームは、例示目的のためだけに提示されるものであり、本明細書において限定する意図はないことが理解される。本明細書に開示される種々の非限定的な実施形態によるフォトクロミック材料を作製する方法のさらなる例は実施例に説明される。
【0053】
ここで図1を参照すれば、ベンゾフェノン1は、例えば、第一の置換基R’および/または第二の置換基R”で置換され得、これは、コハク酸ジメチルとのStobbe縮合を受けて、二重結合異性体の混合物として、カルボン酸2が得られる(R’がR”と同じでない場合、異性体の混合物は、この時点で分離されてもよく、または引き続く反応の際に直接用いられて、後に分離されてもよい)。カルボン酸2は、上昇した温度で無水酢酸と反応されて置換ナフタレン3が生成され、Rは酢酸エステルである。この酢酸エステルは、加水分解されてナフトール4(R=H)が得られる。ナフトール4のエステルは過剰のメチルマグネシウムブロミドと反応され、水で後処理すると、ジオール5が得られる。ジオール5は、スルホン酸と、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸(「DBSA」)を用いて環化されて、7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール6が得られる。
【0054】
ここで図2を参照すれば、1−(4−アミノフェニル)−1−(4−フルオロフェニル)−2−プロピン−1−オールに対する1つの非限定的なアプローチが提示されており、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(7)を二級アミンHNR’’’R’’’’と反応させて、4−アミノ−4’−フルオロベンゾフェノン8を得、R’’’およびR’’’’は、本明細書に説明されかつ特許請求されるように、それぞれR36およびR37と同じであり得る。アセチレン飽和ジメチルホルムアミド中のアセチジンアニオン(例えば、ナトリウムアセチリド)を、4−アミノ−4’−フルオロベンゾフェノン8のカルボニルに添加し、水で後処理すると、1−(4−アミノフェニル)−1−(4−フルオロフェニル)−2−プロピン−1−オール9を得る。
【0055】
ここで図3を参照すれば、7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール6(その合成は図1に示される)を、1−(4−アミノフェニル)−1−(4−フルオロフェニル)−2−プロピン−1−オール9(その合成は図2に示される)と反応させ得る。6および9の縮合は、スルホン酸、例えば、DBSAまたはメタンスルホン酸などで触媒され、そして本発明の開示の種々の非限定的な実施形態に従う3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン10が得られ、これはその3位に結合したB基およびその3位に結合したB’基を含み、このB基およびB’基は、本明細書に規定されかつ特許請求されるとおりであり得る。当業者は、材料、試薬および/または反応の条件に対する種々の改変が、図1〜3に説明される反応スキームに対してなされて、本明細書において説明されかつ特許請求される、置換インデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック材料の種々の非限定的な実施形態が得られ得ること、ならびにこのような改変が本発明の開示の本発明の範囲内であることを理解する。
【0056】
上記で考察されるとおり、本発明の開示のフォトクロミック材料の合成は、置換または非置換の7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オール6と、1−(4−アミノフェニル)−1−(4−フルオロフェニル)−2−プロピン−1−オール9との反応を包含し得る。さらに、1−(4−アミノフェニル)−1−(4−フルオロフェニル)−2−プロピン−1−オール9のアミノ基は、本明細書に説明されるように置換され得る。特定の非限定的な実施形態によれば、本発明の開示は、構造(VI):
【0057】
【化20】

によって提示される化合物を提供し、ここで、B基は、4−フルオロフェニル置換基であり得、そしてB’基は、4位が置換されたフェニル置換基を表し、ここで置換基R12は、−NR1314であり得る。特定の非限定的な実施形態によれば、R13およびR14は各々独立して、水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、または二置換フェニルであり得、ここでこのフェニルの置換基は、C〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである。他の非限定的な実施形態によればR13およびR14は窒素原子と一緒になって、以下の構造式II:
【0058】
【化21】

によって提示される窒素含有基を形成し得、ここで各々の−Y−は独立して、各々の出現について−CH−、−CH(R15)−、−C(R15−、−CH(アリール)−、−C(アリール)−および−C(R15)(アリール)−から選択され得、そしてZは−Y−、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NH−、−N(R)−または−N(アリール)−であり、各々のR15は独立して、例えば、C〜Cアルキル、もしくはヒドロキシ(C〜C)アルキルであり得、各々のアリールは独立してフェニルまたはナフチルであり得、mは整数1、2または3であり、かつpは整数0、1、2または3であり、ただし、pが0である場合、Zが−Yである。
【0059】
構造VIの2−プロピン−1−オールの特定の非限定的な実施形態によれば、R12はジアルキルアミノ、モルホリノ、ピペリジノ、置換ピペリジノ、ピロリジン、置換ピロリジノ、ピペリジノ、または置換ピペリジノを含み得る。このピペリジノ部分、ピロリジノ部分、またはピペリジノ部分の置換基は、例えば、(C〜C)アルキルまたはヒドロキシ(C〜C)アルキルを含み得る。このジアルキルアミノのアルキル置換基は、同じであっても、または異なってもよく、そして(C〜C)アルキルであり得る。
【0060】
本発明の開示のフォトクロミック材料の特定の他の非限定的な実施形態は、IUPAC命名体系によって、少なくとも部分的には決定される、その化学名によって提示され得る。本発明の開示によって意図されるフォトクロミック材料としては以下が挙げられる:
(a)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−モルホリノフェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(b)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−モルホリノフェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(c)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−ピペリジノフェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(d)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−ピペリジノフェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(e)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−(2−メチルピペリジノ)フェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(f)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−(2−メチルピペリジノ)フェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(g)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−ピペリジノフェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(h)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−ピペリジノフェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(i)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−ピロリジノフェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(j)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−ピロリジノフェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(k)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;および
(l)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン。
【0061】
本開示のフォトクロミック材料(例えば、インデノ縮合ナフトピランであって、その3位に結合したB基およびその3位に結合したB’基を含むインデノ縮合ナフトピランを含むフォトクロミック材料であり、このB基が、4−フルオロフェニル基であり、そしてB’基が、4位が置換されたフェニル基であり、ここでこの4位が置換されたフェニル基の4位における置換基は、本明細書に説明されるとおり、−NRである)は、フォトクロミック材料が使用され得る適用(例えば、光学素子、例えば、眼科用素子、ディスプレイ素子、窓、鏡、能動性液晶セル素子、または受動性液晶セル素子)で使用され得る。本明細書において用いる場合、「光学(的)」は、光および/または視覚に関係または関連することを意味する。本明細書で使用する用語「眼(科)」は、眼および/または視覚に関係または関連することを意味する。本明細書で使用する用語「ディスプレイ」は、用語、数、記号、図案または図面における可視的または機械読み取り可能な情報の提示を意味する。ディスプレイ素子の非限定的な例には、スクリーン、モニター、およびセキュリティ・マークなどのセキュリティ素子が含まれる。本明細書で使用する用語「窓」は、それを貫通する放射線の透過を許容するように適合される開口部を意味する。窓の非限定的な例には、航空機および自動車のフロントガラス、自動車および航空機の透明部品(例えばT−ルーフ、サイドライトおよびバックライト)、フィルター、シャッター、および光スイッチが含まれる。本明細書で使用する用語「鏡」は、入射光の大部分を正反射性で反射する表面を意味する。本明細書で使用する用語「液晶セル」は、整列させることのできる液晶材料を含有する構造体を意味する。液晶セル素子の1つの非限定的な例は、液晶ディスプレイである。
【0062】
特定の非限定的な実施形態では、本開示のフォトクロミック材料は、眼科用素子(例えば、単焦点または多視レンズ(分割式であっても非分割式であってもよい多視レンズ(二焦点レンズ、三焦点レンズおよび累進多焦点レンズなどであるがそれらに限定されない))を含む矯正レンズ、非矯正レンズ、拡大鏡、保護レンズ、サンバイザー、ゴーグル)、ならびにカメラまたは望遠鏡のレンズなどの光学機器用のレンズにおいて使用できる。他の非限定的な実施形態では、本開示のフォトクロミック材料は、プラスチックフィルムおよびシート、繊維物品、およびコーティングにおいて使用できる。
【0063】
さらに、本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によるフォトクロミック材料は、各々単独で使用されても、本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態による他のフォトクロミック材料と組み合わせて使用されても、適切な補完的な従来型フォトクロミック材料と組み合わせて使用されてもよいことが企図される。例えば、本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によるフォトクロミック材料は、約400〜約800nmの範囲内にある活性化吸収極大を有する従来型フォトクロミック材料と併用して使用できる。さらに、本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によるフォトクロミック材料は、例えば、その開示がこれにより本明細書に参照して詳細に組み込まれる、米国特許第6,113,814号(第2欄第39行〜第8欄第41行)、および第6,555,028号(第2欄第65行〜第12欄第56行)に開示されたフォトクロミック材料などの補完的な従来型の重合可能な、または適合化された(compatiblized)フォトクロミック材料と組み合わせて使用できる。
【0064】
上記で考察したように、本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によると、フォトクロミック組成物は、フォトクロミック材料の混合物を含有し得る。例えば、本明細書では限定しないが、フォトクロミック材料の混合物は、ニアニュートラルグレーまたはニアニュートラルブラウンなどの特定の活性化された色を達成するために使用できる。例えば、ニュートラルグレーおよびブラウンの色を定義するパラメーターについて記載している、その開示が本明細書に参照して詳細に組み込まれる米国特許第5,645,767号第12欄第66行〜第13欄第19行を参照されたい。
【0065】
本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態は、有機材料(この有機材料は、ポリマー材料、オリゴマー材料およびモノマー材料のうちの少なくとも1つである)ならびにこの有機材料の少なくとも一部分に組み込まれた上記に記載した非限定的な実施形態のいずれかによるフォトクロミック材料を含むフォトクロミック材料を提供する。本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料は、フォトクロミック材料と有機材料またはその前駆体とを混合することおよび結合することのうちの少なくとも1つによって有機材料の一部分に組み込むことができる。有機材料にフォトクロミック材料を組み込むことに関連して本明細書で使用する用語「混合」および「混合した」は、フォトクロミック材料が、有機材料の少なくとも一部分と混ぜられるかまたは混ぜ合わされるが、有機材料に結合はさせられないことを意味している。さらに、フォトクロミック材料の有機材料に組み込むことに関連して本明細書で使用する用語「結合」または「結合した」は、フォトクロミック材料が有機材料またはその前駆体の一部分に連結させられることを意味している。
【0066】
上記で考察したように、本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によるフォトクロミック組成物は、ポリマー材料、オリゴマー材料および/またはモノマー材料から選択される有機材料を含み得る。本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態と結び付けて使用できるポリマー材料の例には、限定されないが:ビス(アリルカーボネート)モノマー;ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー;ジイソプロペニルベンゼンモノマー;エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレートモノマー;エチレングリコールビスメタクリレートモノマー;ポリ(エチレングリコール)ビスメタクリレートモノマー;エトキシ化フェノールビスメタクリレートモノマー;例えばエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートモノマーなどのアルコキシ化多価アルコールアクリレートモノマー;ウレタンアクリレートモノマー;ビニルベンゼンモノマー;およびスチレンのポリマーが含まれる。適切なポリマー材料のその他の非限定的な例には、多官能性(例えば一官能性、二官能性または多官能性)のアクリレートモノマーおよび/またはメタクリレートモノマーのポリマー;ポリ(C〜C12アルキルメタクリレート)(例えばポリ(メチルメタクリレート));ポリ(オキシアルキレン)ジメタクリレート;ポリ(アルコキシ化フェノールメタクリレート);酢酸セルロース;三酢酸セルロース;酢酸プロピオン酸セルロース;酢酸酪酸セルロース;ポリ(酢酸ビニル);ポリ(ビニルアルコール);ポリ(塩化ビニル);ポリ(塩化ビニリデン);ポリウレタン;ポリチオウレタン;熱可塑性ポリカーボネート;ポリエステル;ポリ(エチレンテレフタレート);ポリスチレン;ポリ(α−メチルスチレン);スチレンおよびメチルメタクリレートのコポリマー;スチレンおよびアクリロニトリルのコポリマー;ポリビニルブチラール;ならびにジアリリデンペンタエリトリトールのポリマー、特にポリオール(アリルカーボネート)モノマー(例えばジエチレングリコールビス(アリルカーボネート))、およびアクリレートモノマー(例えばエチルアクリレート、ブチルアクリレート)とのコポリマーが含まれる。同様に、上記のモノマーのコポリマー、組み合わせ、および上記のポリマーおよびコポリマーと他のポリマーとのコポリマーの混合物(例えば、相互侵入網目構造物品を形成するため)もまた企図されている。
【0067】
さらに、フォトクロミック組成物の透明性が所望である様々な非限定的な実施形態によると、有機材料は透明なポリマー材料であり得る。例えば、様々な非限定的な実施形態によると、ポリマー材料は、例えば、商標LEXAN(登録商標)の下で販売されているビスフェノールAおよびホスゲンに由来する樹脂などの熱可塑性ポリカーボネート樹脂;商標MYLAR(登録商標)の下で販売される材料などのポリエステル;商標PLEXIGLAS(登録商標)の下で販売される材料などのポリ(メチルメタクリレート);およびポリオール(アリルカーボネート)モノマー、詳細にはジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)(このモノマーは、商標CR−39(登録商標)の下で販売されている)の重合物;および例えばポリウレタンオリゴマーと、ジアミン硬化剤との反応によって調製されるポリウレア−ポリウレタン(ポリウレアウレタン)ポリマーから調製された光学的に透明なポリマー材料であり得る。1つのそのようなポリマーのための組成物は、PPG Industries社によって商標TRIVEX(登録商標)の下で販売されている。その他の適切なポリマー材料の他の非限定的な例には、ポリオール(アリルカーボネート)(例えば、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート))のコポリマーと、他の共重合可能なモノマー材料とのコポリマーの重合物(酢酸ビニルとのコポリマー、末端ジアクリレート官能基を有するポリウレタンとのコポリマー、および末端部分がアリル官能基またはアクリリル官能基を含有する脂肪族ウレタンとのコポリマーなどであるがそれらに限定されない)が含まれる。さらにその他の適切なポリマー材料には、限定されないが、ポリ(酢酸ビニル)、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、ポリチオウレタン;ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー、ジイソプロペニルベンゼンモノマー、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレートモノマー、エチレングリコールビスメタクリレートモノマー、ポリ(エチレングリコール)ビスメタクリレートモノマー、エトキシ化フェノールビスメタクリレートモノマーおよびエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートモノマーから選択されたポリマー;酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ポリスチレンおよびスチレンとメチルメタクリレート、酢酸ビニルおよびアクリロニトリルとのコポリマーが含まれる。1つの非限定的な実施形態によると、ポリマー材料は、例えば、CR−307、CR−407、およびCR−607などのCR記号表示の下でPPG Industries社によって販売される光学樹脂であり得る。
【0068】
特定の特定の非限定的な実施形態によると、有機材料は、ポリ(カーボネート)、エチレンおよび酢酸ビニルのコポリマー;エチレンおよびビニルアルコールのコポリマー;エチレン、酢酸ビニル、およびビニルアルコールのコポリマー(エチレンおよび酢酸ビニルのコポリマーの部分鹸化の結果として生じるコポリマーなど);酢酸酪酸セルロース;ポリ(ウレタン);ポリ(アクリレート);ポリ(メタクリレート);エポキシド;アミノプラスト官能性ポリマー;ポリ(酸無水物);ポリ(ウレアウレタン);N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド官能性ポリマー;ポリ(シロキサン);ポリ(シラン);ならびにそれらの組み合わせおよび混合物から選択されたポリマー材料であり得る。
【0069】
本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態は、基材および基材の一部分に結合した、または組み込まれた上記で考察した非限定的な実施形態のいずれかによるフォトクロミック材料を含むフォトクロミック物品を提供する。本明細書で使用する用語「結合した」は、直接的にか、あるいは別の材料または構造を通して間接的にかのいずれかで結び付いていることを意味している。1つの非限定的な実施形態では、本開示のフォトクロミック物品は、例えば眼科用素子、ディスプレイ素子、窓、鏡、能動性液晶セル素子、および受動性液晶セル素子などであるがそれらに限定されない光学素子であり得る。特定の非限定的な実施形態では、フォトクロミック物品は、例えば、眼科用素子(例えば、単焦点または多視レンズ(分割式であっても非分割式であってもよい多視レンズ(二焦点レンズ、三焦点レンズおよび累進多焦点レンズなどであるがそれらに限定されない))を含む矯正レンズ、非矯正レンズ、拡大鏡、保護レンズ、サンバイザー、ゴーグル)、ならびに光学機器用のレンズである。
【0070】
フォトクロミック物品の基材がポリマー材料を含む本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料は、フォトクロミック材料を基材のポリマー部分の少なくとも1部分に組み込むこと、または基材が形成されるオリゴマーまたはモノマー材料の少なくとも一部分に組み込むことによって、基材の少なくとも一部分に結合させることができる。例えば、1つの非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料は、現場流延(cast−in−place)法によって基材のポリマー材料内に組み込むことができる。さらに、または代わりに、フォトクロミック材料は、吸収(imbibition)法によって基材のポリマー材料の少なくとも一部分に組み込むことができる。吸収法および現場流延法については、以下で考察する。
【0071】
本発明の他の非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料は、基材の少なくとも一部分に結合している少なくとも部分的なコーティングの一部としてフォトクロミック物品の基材の少なくとも一部分へ結合させることができる。この非限定的な実施形態によると、基材は、ポリマー基材または無機基材(ガラス基材などであるがそれらに限定されない)であり得る。さらに、フォトクロミック材料は、基材にコーティング組成物を塗布する前にコーティング組成物の少なくとも一部分に組み込むことができるか、または、コーティング組成物は、基板に塗布され、少なくとも部分的に固化され、その後にフォトクロミック材料をコーティングの少なくとも一部分に吸収させることができる。本明細書で使用する用語「固化した」および「固化する」には、限定されないが、硬化、重合、架橋結合、冷却、および乾燥が含まれる。
【0072】
例えば、本開示の1つの非限定的な実施形態では、フォトクロミック物品は、その表面の少なくとも一部分に結合したポリマー材料の少なくとも部分的なコーティングを含むことができる。この非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料は、少なくとも部分的なコーティングのポリマー材料の少なくとも一部分と混合および/または接着することができる。
【0073】
フォトクロミック材料を含む少なくとも部分的なコーティングは、例えば、フォトクロミック材料を含むコーティング組成物を基材の表面の少なくとも一部分へ直接的に塗布し、このコーティング組成物を少なくとも部分的に固化させることによって、基材へ直接的に結合させることができる。さらに、または代わりに、フォトクロミック材料を含む少なくとも部分的なコーティングは、例えば、1つ以上の追加のコーティングを通して、基材に結合させることができる。例えば、本明細書で限定しないが、様々な非限定的な実施形態によると、追加のコーティング組成物を基材の表面の少なくとも一部分に塗布し、少なくとも部分的に固化させ、その後に、フォトクロミック材料を含むコーティング組成物を追加のコーティングの上方に塗布し、少なくとも部分的に固化させることができる。以下では、基材へコーティング組成物を塗布する非限定的な方法について考察する。
【0074】
本明細書に開示したフォトクロミック物品と結び付けて使用できる追加のコーティングおよびフィルムの非限定的な例には、プライマーまたは適合化(compatiblizing)コーティング;遷移性コーティング、耐摩耗性コーティングならびにその他の重合反応化学物質の作用に対して保護する、および/または水分、熱、紫外線、酸素などの環境条件に起因する劣化に対して保護するその他のコーティング(例えば、UV遮蔽コーティングおよび酸素障壁コーティング)を含む保護コーティング;反射防止コーティング;従来型フォトクロミックコーティング;偏光コーティングおよび偏光延伸フィルム;ならびにそれらの組み合わせが含まれる。
【0075】
本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態と結び付けて使用できるプライマーまたは適合化コーティングの非限定的な例には、結合剤、結合剤の少なくとも部分的な加水分解物、およびそれらの混合物を含むコーティングが含まれる。本明細書で使用する「結合剤」は、表面上の基と反応する、結合する、および/または会合することのできる基を有する材料を意味する。本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態による結合剤は、シラン、チタネート、ジルコネート、アルミネート、アルミン酸ジルコニウム、それらの加水分解物およびそれらの混合物などの有機金属を含むことができる。本明細書で使用する語句「結合剤の少なくとも部分的な加水分解物」は、結合剤の加水分解可能な基の一部から全部が加水分解されていることを意味している。本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態と結び付けて使用するために適合するプライマーコーティングの他の非限定的な例には、それらの開示がこれにより詳細に参照して組み込まれる米国特許第6,025,026号第3欄第3行〜第11欄第40行および米国特許第6,150,430号第2欄第39行〜第7欄第58行に記載されたプライマーコーティングが含まれる。
【0076】
本明細書で使用する用語「遷移性コーティング」は、2種のコーティング間の特性に勾配を作り出すのに役立つコーティングを意味する。例えば、本明細書では非限定的であるが、遷移性コーティングは、相対的に硬質のコーティング(耐摩耗性コーティングなど)および相対的に軟質のコーティング(フォトクロミックコーティングなど)の間の硬さにおける勾配を作製することに役立つことができる。遷移性コーティングの非限定的な例には、これにより参照して詳細に本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2003/0165686号の第[0079]〜[0173]段落に記載されている放射線硬化性アクリレートをベースとする薄膜が含まれる。
【0077】
本明細書で使用する用語「耐摩耗性コーティング」は、ASTM F−735「振動サンド法を用いた透明なプラスチックおよびコーティングの耐摩耗性についての標準試験方法」に類似の方法で試験される場合に、標準参照材料、例えば、PPG Industries社から入手できるCR−39(登録商標)モノマーから作製されたポリマーより大きな耐摩耗性を示す保護ポリマー材料を意味する。耐摩耗性コーティングの非限定的な例には、オルガノシラン、オルガノシロキサンを含む耐摩耗性コーティング、シリカ、チタニアおよび/またはジルコニアなどの無機材料をベースとする耐摩耗性コーティング、ならびに紫外線硬化性であるタイプの有機耐摩耗性コーティングが含まれる。
【0078】
反射防止性コーティングの非限定的な例には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法を通して、本明細書に開示した物品上(または物品に塗布される自立フィルム上)に沈着させることのできる、金属酸化物、金属フッ化物、または他のそのような材料の単層コーティング、多層コーティングが含まれる。
【0079】
従来型フォトクロミックコーティングの非限定的な例には、従来型フォトクロミック材料を含むコーティングが含まれるが、それには限定されない。
【0080】
偏光コーティングおよび偏光延伸フィルムの非限定的な例には、当技術分野において知られている二色性化合物を含むコーティング(米国特許出願公開第2005/0151926号に記載されたコーティングなど)および延伸フィルムが含まれるが、それらに限定されない。
【0081】
本明細書で考察するように、様々な非限定的な実施形態によると、追加の少なくとも部分的なコーティングまたはフィルムは、基材上の本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によるフォトクロミック材料を含むコーティングを形成する前に基材上に形成することができる。例えば、特定の非限定的な実施形態によると、プライマーまたは適合化コーティングは、フォトクロミック材料を含むコーティング組成物を塗布する前に基材上に形成することができる。さらに、または代わりに、追加の少なくとも部分的なコーティングは、例えば、フォトクロミックコーティング上の保護膜として、基材上に本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によるフォトクロミック材料を含むコーティングを形成した後に基材上に形成することができる。例えば、特定の非限定的な実施形態によると、遷移性コーティングは、フォトクロミック材料を含むコーティングの上方に形成することができ、耐摩耗性コーティングを遷移性コーティングの上方に形成することができる。
【0082】
例えば、1つの非限定的な実施形態によると、その表面の少なくとも一部分上に耐摩耗性コーティングを含む基材(平凹または平凸眼科用レンズ基材などであるがそれらに限定されない);耐摩耗性コーティングの少なくとも一部分上のプライマーまたは適合化コーティング;プライマーまたは適合化コーティングの少なくとも一部分上の本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によるフォトクロミック材料を含むフォトクロミックコーティング;フォトクロミックコーティングの少なくとも一部分の上の遷移性コーティング;および遷移性コーティングの少なくとも一部分の上の耐摩耗性コーティングを含むフォトクロミック物品が提供される。さらに、この非限定的な実施形態によると、フォトクロミック物品は、例えば基材の表面に結合している反射防止性コーティングおよび/または基材の表面に結合している偏光コーティングまたはフィルムをさらに含み得る。
【0083】
以下では、本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態による、フォトクロミック組成物および光学素子などのフォトクロミック物品を作製する非限定的な方法について考察する。1つの非限定的な実施形態は、フォトクロミック組成物を作製する方法であって、有機材料の少なくとも一部分にフォトクロミック材料を組み込む工程を含む方法を提供する。有機材料内にフォトクロミック材料を組み込む非限定的な方法には、例えば、ポリマー材料、オリゴマー材料、またはモノマー材料の溶液または溶解物中にフォトクロミック材料を混合し、その後にポリマー、オリゴマー、またはモノマー材料を(フォトクロミック材料を有機材料に結合させる工程を伴う、または伴わずに)少なくとも部分的に固化させること;ならびにフォトクロミック材料を(フォトクロミック材料を有機材料に結合させる工程を伴って、または伴わずに)有機材料に吸収させることとが含まれる。
【0084】
また別の非限定的な実施形態は、上記で考察した様々な非限定的な実施形態によるフォトクロミック材料を、基材の少なくとも一部分に結合させる工程を含む、フォトクロミック物品を作製する方法を提供する。例えば、基材がポリマー材料を含む場合は、現場流延法および吸収法のうちの少なくとも1つによって、フォトクロミック材料を基材の少なくとも一部分に結合させることができる。例えば、現場流延法では、フォトクロミック材料は、ポリマー溶液または溶解物と、または他のオリゴマーおよび/またはモノマーの溶液または混合物と混合することができ、それらを引き続いて所望の形状を有する鋳型内に流し込み、少なくとも部分的に固化させて基材を形成することができる。任意で、この非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料は、基材のポリマー材料の一部分へ、例えば、このポリマー材料のモノマー前駆体との共重合によって接着させることができる。吸収法では、フォトクロミック材料は、例えば、加熱を伴って、または伴わずに、フォトクロミック材料を含有する溶液中に基材を浸漬することによって、基材が形成された後にそれのポリマー材料内に拡散させることができる。その後、必ずしも必要ではないが、フォトクロミック材料は、ポリマー材料と結合させることができる。
【0085】
本明細書に開示した他の非限定的な実施形態は、インモールドキャスティング法、コーティング法、および積層法のうちの少なくとも1つによって、フォトクロミック材料を基材の少なくとも一部分へ結合させる工程を含む光学素子を作製する方法を提供する。例えば、基材がポリマー材料を含む1つの非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料は、インモールドキャスティング法によって基材の少なくとも一部分に結合させることができる。この非限定的な実施形態によると、液体コーティング組成物または粉末コーティング組成物であり得るフォトクロミック材料を含むコーティング組成物は、鋳型の表面に塗布され、少なくとも部分的に固化させられる。その後、ポリマー溶液または溶解物、あるいはオリゴマーまたはモノマーの溶液または混合物は、コーティングの上方にキャスティングされ、少なくとも部分的に固化させられる。固化後、コーティングされた基材は、鋳型から取り外される。本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によるフォトクロミック材料を使用できる粉末コーティイングの非限定的な例については、その開示がこれにより詳細に参照して組み込まれる米国特許第6,068,797号第7欄第50行〜第19欄第42行に記載されている。
【0086】
基材がポリマー材料、またはガラスなどの無機材料を含むさらに別の非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料は、コーティング法によって基材の少なくとも一部分に結合させることができる。適切なコーティング法の非限定的な例には、スピンコーティング法、スプレーコーティング法(例えば、液体または粉末のコーティイング剤を使用する)、カーテンコーティング法、ロールコーティング法、スピンおよびスプレーコーティング法、オーバーモールド法、およびそれらの組み合わせが含まれる。例えば、1つの非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料は、オーバーモールド法によって基材へ結合させることができる。この非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料を含むコーティング組成物(上記で考察した液体コーティング組成物であっても粉末コーティング組成物であってもよい)は、鋳型に塗布され得、次に基材がコーティングに接触してこのコーティングが基材の表面の少なくとも一部分の上方に広がることを引き起こすように基材を鋳型内に配置することができる。その後、コーティング組成物は、少なくとも部分的に固化させることができ、コーティングされた基材は鋳型から取り外すことができる。または、オーバーモールド法は、開口領域が基材と鋳型の間に規定されるように基材を鋳型内に配置する工程と、その後にフォトクロミック材料を含むコーティング組成物を開口領域内に射出する工程とによって実施できる。その後、コーティング組成物は、少なくとも部分的に固化させることができ、コーティングされた基材は鋳型から取り外すことができる。
【0087】
さらに、または代わりに、コーティング組成物(フォトクロミック材料を含む、または含まない)は、(例えば、上記の方法のいずれかによって)基材に塗布することができ、コーティング組成物を、少なくとも部分的に固化させ、その後に、フォトクロミック材料をコーティング組成物中に(上記で考察したように)吸収させることができる。
【0088】
基材がポリマー材料、またはガラスなどの無機材料を含むさらに別の非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料は、積層法によって基材の少なくとも一部分に結合され得る。この非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料を含むフィルムは、接着剤ならびに/または熱および圧力の適用を用いて、または用いずに、基材の一部分に付着させるか、他の様式で結合させることができる。その後、所望であれば、第二の基材を第一の基材の上方に適用し、これら2つの基材を相互に積層させて(すなわち、熱および圧力の適用によって)1つの要素を形成することができるが、このときフォトクロミック材料を含むフィルムは、2つの基材間に挟まれている。フォトクロミック材料を含むフィルムを形成する方法は、例えば、限定されないが、フォトクロミック材料をポリマー溶液またはオリゴマー溶液または混合物と合わせる工程と、それからフィルムをキャスティングまたは押出し成型する工程と、所望であれば、フィルムを少なくとも部分的に固化させる工程とを含むことができる。さらに、または代わりに、(フォトクロミック材料を用いて、または用いずに)フィルムを形成し、(上記で考察したように)フォトクロミック材料を吸収させることができる。
【0089】
さらに、本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態は、本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によるフォトクロミック物品を形成するために上記の方法の様々な組み合わせの使用を企図している。例えば、本明細書では限定されないが、1つの非限定的な実施形態によると、フォトクロミック材料は、基材が(例えば、現場流延法および/または吸収法を用いて)形成される有機材料中に組み込むことによって基材に結合することができ、その後フォトクロミック材料(上述したフォトクロミック材料と同一であっても異なってもよい)は、上記で考察したインモールドキャスティング法、コーティング法および/または積層法を使用して基材の一部分に結合させることができる。
【0090】
さらに、当業者には、本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によるフォトクロミック組成物および物品が組成物または物品の加工処理および/または性能に役立つ他の添加物をさらに含み得ることは理解される。そのような添加物の非限定的な例には、光開始剤、熱開始剤、重合防止剤、溶媒、光安定剤(例えばヒンダードアミン光安定剤(HALS)などの紫外線吸収剤および光安定剤などであるがそれらに限定されない)、熱安定剤、離型剤、レオロジー制御剤、レベリング剤(界面活性剤などであるがそれには限定されない)、フリーラジカル捕捉剤、接着促進剤(ヘキサンジオールジアクリレートおよび結合剤など)、ならびにそれらの組み合わせおよび混合物が含まれる。
【0091】
様々な非限定的な実施形態によると、本明細書に記載したフォトクロミック材料は、中にフォトクロミック材料が組み込まれるか、他の様式で結合される有機材料または基材が所望の光学特性を示すような量(または比率)で使用できる。例えば、フォトクロミック材料の量およびタイプは、フォトクロミック材料が閉環体にある場合(すなわち、脱色または非活性化状態にある場合)は有機材料または基材が透明または無色であり得、フォトクロミック材料が開環体にある場合(すなわち、化学線によって活性化された場合)は結果として生じる所望の色を示すことができるように選択することができる。本明細書に記載した様々なフォトクロミック組成物および物品に利用すべきフォトクロミック材料の正確な量は、所望の作用を生成するために十分な量が使用されることを前提にするとそれほど重要ではない。使用されるフォトクロミック材料の特定の量は、例えば、フォトクロミック材料の吸収特性、活性化の際の所望の色および色の強度、ならびにフォトクロミック材料を基材に組み込むか、または結合させるために使用される方法などであるがそれらに限定されない様々な因子に依存し得ることが理解されるべきである。本明細書において限定しないが、本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態によると、有機材料中に組み込まれるフォトクロミック材料の量は、有機材料の重量に基づいて0.01〜40重量%の範囲に及び得る。
【0092】
以下では、本明細書に開示した様々な非限定的な実施形態が非限定的な実施例において例示される。
【実施例】
【0093】
実施例のパートIでは、本明細書に開示される特定の非限定的な実施形態に従ってフォトクロミック材料を作製するために用いられた合成手順が、実施例1〜4に説明される。パートIIでは、本明細書に記載のような特定のフォトクロミック材料と同様に、比較のフォトクロミック材料を組み込んでいるメタクリレート試験チップの形成、ならびに退色速度(T1/2)、極大吸光度波長および飽和光学密度を決定するための試験手順が記載される。
【0094】
(パートI:合成手順)
(実施例1)
(工程1)
ピペリジン(piperidine)(23.4グラム(「g」))、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(60g)、トリエチルアミン(30.6g)を、100ミリリットル(「mL」)のジメチルスルホキシドを含有する反応フラスコに添加した。得られた混合物を105℃に加熱して、窒素雰囲気下で一晩攪拌した。105℃で24時間後、その反応物を、強制的に攪拌しながら1400mLの水の中にクエンチして、明るい褐色の固体が沈殿することが確認された。その固体を濾過して、水で洗浄し、風乾して、79.5gの所望の生成物である4−フルオロ−4’−ピペリジノベンゾフェノンを得た。この材料をさらなる精製なしに次の工程に用いた。
【0095】
(工程2)
工程1の生成物である4−フルオロ−4’−ピペリジノベンゾフェノン(78g)を、アセチレンで飽和した500mLのN,N−ジメチルホルムアミドを含有する反応フラスコに添加した。この得られた混合物を、窒素雰囲気下において室温で機械的なスターラーを用いて攪拌した。キシレン/鉱油に含有されるナトリウムアセチリド(73.5gの18重量%の溶液)を、攪拌しながら反応混合物に30分にわたって添加した。室温で1時間の攪拌後、その反応物を激しく攪拌しながら4Lの水中にクエンチして、黄褐色の固体が沈殿することが確認された。この固体を濾過して、水で洗浄して、風乾して85gの所望の生成物である1−(4−フルオロフェニル)−1−(4−ピペリジノフェニル)−2−プロピン−1−オールを得た。この物質を、さらなる精製なしに工程7で用いた。
【0096】
(工程3)
カリウムt−ブトキシド(68.8g)を、機械的スターラーを装備した反応フラスコ中に秤量して、窒素雰囲気下に置き、そして700mLのトルエンを、続いて4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(100g)を添加した。その反応混合物を機械的に攪拌して、70℃まで加熱した。100mLのトルエンに含有されるコハク酸ジメチル(80g)の溶液を、この反応混合物に対して60分間にわたって添加した。この反応混合物を70℃まで4時間加熱した。室温まで冷却した後、その反応混合物を500mLの水に注ぎ、そしてトルエンの層を廃棄した。その水層をジエチルエーテル(1×400mL)で抽出して、中性の生成物を取り出し、次いで濃HClを用いて水層を酸性にした。黄褐色の油状固体をその水層から得て、3×300mLの酢酸エチルを用いて抽出した。その有機層を合わせて、飽和NaCl溶液(1×500mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ロータリーエバポレーションによる溶媒の除去によって、122gの4,4−ジ(4−フルオロフェニル)−3−メトキシカルボニル−3−ブテン酸を茶色がかった油状固体として得た。この物質はさらに精製せず、次の工程に直接用いた。
【0097】
(工程4)
工程3の生成物(4,4−ジ(4−フルオロフェニル)−3−メトキシカルボニル−3−ブテン酸、122g)および無水酢酸(250mL)を反応フラスコに添加した。この反応混合物を窒素雰囲気下で5時間加熱還流した。その反応混合物を室温まで冷却し、引き続き1200mLの水に注いだ。得られた沈殿物を減圧濾過によって収集し、冷水で洗浄して、110gの1−(4−フルオロフェニル)−2−メトキシカルボニル−4−アセトキシ−6−フルオロナフタレンを得た。その生成物をさならる精製なしに次の反応に用いた。
【0098】
(工程5)
工程4由来の1−(4−フルオロフェニル)−2−メトキシカルボニル−4−アセトキシ−6−フルオロナフタレン(110g)および400mLのメタノールを反応フラスコ中で合わせた。この反応フラスコに5mLの濃塩酸を添加し、窒素雰囲気下で4時間加熱還流した。その反応混合物を室温まで、次いで0℃まで冷却した。所望の生成物(1−(4−フルオロフェニル)−2−メトキシカルボニル−4−ヒドロキシ−6−フルオロナフタレン、65g)の白色結晶を得て、引き続き濾過して、減圧下で乾燥した。この物質をさらに精製せず、次の工程に直接用いた。
【0099】
(工程6)
工程5の生成物(1−(4−フルオロフェニル)−2−メトキシカルボニル−4−ヒドロキシ−6−フルオロナフタレン、39.4g)を、300mLのテトラヒドロフランを含有する反応フラスコに添加した。この得られた混合物を氷水浴中で冷却し、そして窒素雰囲気下で攪拌した。167mLのメチルマグネシウムブロミド溶液(ジエチルエーテル中3M)を30分にわたって滴下して加えた。その得られた黄色の反応混合物を室温まで温めて、一晩攪拌した。その反応混合物を、400mLの水に注ぎ、酸性になるまで濃HClで中和した。その混合物を3×300mL部のエーテルで抽出し、その有機部分を合わせて、1Lの飽和NaCl溶液で洗浄した。その有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、ロータリーエバポレーションによって濃縮した。得られた褐色の油状物(37.8g)を、300mLのキシレンを含有する反応容器(Dean−Starkトラップを装着)に移して、そこに5滴のドデシルベンゼンスルホン酸を添加した。その反応混合物を3時間加熱還流して、冷却した。そのキシレンを、ロータリーエバポレーションによって除去し、35gの3,9−ジフルオロ−7,7−ジメチル−5−ヒドロキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレンを淡褐色の油状物として得た。この物質をさらに精製せず、次の工程に直接用いた。
【0100】
(工程7)
工程6の生成物(3,9−ジフルオロ−7,7−ジメチル−5−ヒドロキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレン、5.55g)、工程2の生成物(1−(4−フルオロフェニル)−1−(4−ピペリジノフェニル)−2−プロピン−1−オール、5.8g)、8滴のメタンスルホン酸および250mLのクロロホルムを反応フラスコ中で合わせて、窒素雰囲気下において還流温度で撹拌した。2時間後、さらなる3.0gの1−(4−フルオロフェニル)−1−(4−ピペリジノフェニル)−2−プロピン−1−オールおよび8滴のドデシルベンゼンスルホン酸をこの反応混合物に添加した。この反応混合物を50℃で一晩加熱し、次いで室温まで冷却した。その反応混合物を、250mLの飽和炭酸水素ナトリウム溶液および250mLの水の混合物で注意深く洗浄した。その有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥し、ロータリーエバポレーターによって濃縮した。その残渣を、溶離液としてヘキサンおよび酢酸エチル(95/5)の混合物を用いてシリカゲルカラムでクロマトグラフィーにより分離した。フォトクロミック画分を収集して、ロータリーエバポレーションによって濃縮して、蒼白の固体(8.0g)を得た。その蒼白の泡状物をさらに、メタノールから沈殿によって精製して、3.5gの緑がかった白色の固体を得た。NMRスペクトルによって、この生成物が3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−ピペリジノフェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランと一致する構造を有することが示された。
【0101】
(実施例2)
(工程1)
米国特許第5,645,767号の実施例1、工程2の生成物(1−フェニル−2−メトキシカルボニル−4−アセトキシナフタレン、50g)を、500mLのテトラヒドロフランを含有する反応フラスコに添加した。得られた混合物を、氷水浴中で冷却し、窒素雰囲気下で撹拌した。703mLのメチルマグネシウムクロリド溶液(テトラヒドロフラン中1M)を、45分にわたって滴下して加えた。その得られた黄色の反応混合物を、0℃で2時間撹拌し、室温までゆっくり温めた。その反応混合物を2Lの氷/水混合物に注いだ。エチルエーテル(1L)を添加し、その層を分離した。その水層を2×500mL部のエーテルで抽出し、そしてその有機部分を合わせて、1Lの水で洗浄した。その有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、そしてロータリーエバポレーションによって濃縮した。得られた油状物を、500mLのトルエンを含有する反応容器(Dean−Starkトラップを装着)に移し、ここに10滴のドデシルベンゼンスルホン酸を添加した。その反応混合物を2時間加熱還流して、冷却した。そのトルエンを、ロータリーエバポレーションによって除去し、40.2gの淡黄色の固体を得た。NMRスペクトルによって、この生成物は、7,7−ジメチル−5−ヒドロキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレンと一致する構造を有することが示された。この物質をさらに精製せず、次の工程に直接用いた。
【0102】
(工程2)
工程1の生成物である7,7−ジメチル−5−ヒドロキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレン(6.0g)、実施例1、工程2の生成物である1−(4−フルオロフェニル)−1−(4−ピペリジノフェニル)−2−プロピン−1−オール(7.1g)、7滴のメタンスルホン酸および250mLのクロロホルムを反応フラスコ中で合わせ、そして還流温度で撹拌した。2時間後、さらなる2.0gの1−(4−フルオロフェニル)−1−(4−ピペリジノフェニル)−2−プロピン−1−オールおよび4滴のメタンスルホン酸を、反応混合物に添加した。これに続いて、さらに1.0gの1−(4−フルオロフェニル)−1−(4−ピペリジノフェニル)−2−プロピン−1−オールおよび4滴のメタンスルホン酸をさらに2時間後加えた。この反応混合物を6時間加熱還流し、次いで室温まで冷却した。この反応混合物を200mLの飽和炭酸水素ナトリウム溶液および200mLの水の混合物を用いて注意深く洗浄した。その有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥し、そしてロータリーエバポレーションによって濃縮した。その残渣を、溶離液としてヘキサンおよび酢酸エチル(93/7)の混合物を用いてシリカゲルカラムでクロマトグラフィーにより分離した。フォトクロミック画分を収集して、ロータリーエバポレーションによって濃縮し、青っぽい色の固体を得た(11g)。その青色固体をさらに、ジエチルエーテルおよびヘキサンの1:1混合物から結晶化によって精製して9.2gの白色固体を得た。NMRスペクトルによって、この生成物は、3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−ピペリジノフェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランと一致する構造を有することが示された。
【0103】
(実施例3)
実施例1、工程6の生成物(3,9−ジフルオロ−7,7−ジメチル−5−ヒドロキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレン、5.0g)、1−(4−フルオロフェニル)−1−(4−モルホリノフェニル)−2−プロピン−1−オール(5.3g)、7滴のメタンスルホン酸および200mLのクロロホルムを反応フラスコ中で合わせて、還流温度で窒素雰囲気下において撹拌した。1時間後、さらなる5.0gの1−(4−フルオロフェニル)−1−(4−モルホリノフェニル)−2−プロピン−1−オールを反応混合物に添加して、加熱を続けた。2時間後、さらなる2.0gの1−(4−フルオロフェニル)−1−(4−モルホリノフェニル)−2−プロピン−1−オールおよび4滴のメタンスルホン酸をこの反応混合物に添加した。その反応混合物をさらに4時間加熱し、次いで、室温まで冷却した。その反応混合物を、125mLの飽和炭酸水素ナトリウム溶液および125mLの水の混合物を用いて注意深く洗浄した。その有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥し、そしてロータリーエバポレーションによって濃縮した。その残渣を、溶離液としてヘキサン、塩化メチレンおよび酢酸エチル(60/35/5)の混合物を用いてシリカゲルカラムでクロマトグラフィーにより分離した。フォトクロミック画分を収集し、ロータリーエバポレーションによって濃縮して、青色固体(4.0g)を得た。この青色固体をさらに、ジエチルエーテルおよびヘキサンの1:1混合物からの結晶化により精製して、3.4gの白色固体を得た。NMRスペクトルによって、この生成物が3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−モルホリノフェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランと一致する構造を有することが示された。
【0104】
(実施例4)
実施例2、工程1の生成物である7,7−ジメチル−5−ヒドロキシ−7H−ベンゾ[C]フルオレン(4.0g)、1−(4−フルオロフェニル)−1−(4−モルホリノフェニル)−2−プロピン−1−オール(6.3g)、8滴のメタンスルホン酸および200mLのクロロホルムを反応フラスコ中で合わせて、窒素雰囲気下において還流温度で撹拌した。1時間後、さらなる4.6gの1−(4−フルオロフェニル)−1−(4−モルホリノフェニル)−2−プロピン−1−オールを反応混合物に添加して、加熱を続けた。2時間後、さらに5.0gの1−(4−フルオロフェニル)−1−(4−モルホリノフェニル)−2−プロピン−1−オールおよび4滴のメタンスルホン酸をこの反応混合物に添加した。その反応混合物を一晩加熱し、次いで室温まで冷却した。その反応混合物を、100mLの飽和炭酸水素ナトリウム溶液および100mLの水の混合物を用いて注意深く洗浄した。その有機層を分離して、硫酸ナトリウムで乾燥し、ロータリーエバポレーションによって濃縮した。その残渣を、溶離液としてヘキサン、塩化メチレンおよび酢酸エチル(60/37/3)の混合物を用いて、シリカゲルカラムでクロマトグラフィーにより分離した。フォトクロミック画分を収集して、ロータリーエバポレーションによって濃縮し、青色固体を得た(8.2g)。その青色固体をさらに、ジエチルエーテルからの結晶化によって精製し、4.4gの白色固体を得た。NMRスペクトルによって、この生成物が、3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−モルホリノフェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランと一致する構造を有することが示された。
【0105】
(パートII:試験)
実施例1〜4、および比較例CE1〜CE6のフォトクロミック材料のフォトクロミック性能を、以下の光学ベンチセットアップを用いて試験した。さらに。本発明の開示の特定の非限定的な実施形態に従う第五の化合物(実施例5)を試験した。実施例5および比較例CE1〜CE6のフォトクロミック材料は、本明細書に開示される教示および実施例に従って、本発明の開示を読めば当業者に容易に明らかとなる適切な改変を伴って作製され得ることが当業者に理解される。さらに、当業者は、開示された方法に対する種々の改変、および他の方法が、本明細書および本明細書の特許請求の範囲に説明される本発明の開示の範囲から逸脱することなく、実施例1〜4のフォトクロミック材料を作製するのに用いられ得ることを認識する。
【0106】
(メタクリレートチップ手順)
1.5×10−3Mの溶液を得るために計算された量の、試験されるべきフォトクロミック材料を、4部のエトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(BPA 2EO DMA)、1部のポリ(エチレングリコール)600ジメタクリレート、および0.033重量パーセントの2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(「AIBN」)の50gのモノマーブレンドを含有するフラスコに添加した。そのフォトクロミック材料を、撹拌および穏やかな加熱によってモノマーブレンドに溶解した。透明な溶液が得られた後、それを減圧脱気して、その後2.2mm×6インチ(15.24cm)×6インチ(15.24cm)の内寸法を有する平坦なシートの鋳型に注いだ。その鋳型をシールして、水平なエアフローのプログラム可能なオーブンに入れた。このオーブンを、5時間の間隔にわたって40℃から95℃まで温度を上昇させ、95℃に3時間保ち、次いで、少なくとも2時間60℃に温度を下げるようにプログラムした。このモールドを開口した後、ダイアモンドブレードのソーを用いて、ポリマーシートを2インチ(5.1cm)の試験スクエア(test squares)に切断した。
【0107】
上記のように調製されたフォトクロミック材料を組み込む試験スクエアを、光学ベンチでフォトクロミック応答について試験した。光学ベンチでの試験の前に、このフォトクロミック試験スクエアを365nmの紫外光に約15分間曝してその中のフォトクロミック材料を不活性な基底(または脱色)状態から活性な(または着色された)状態に変換させ、次いで、75℃のオーブンに約15分間入れて、そのフォトクロミック材料を不活性な状態に復帰させた。次いで、その試験スクエアを室温まで冷却し、蛍光の部屋光に少なくとも2時間曝し、次いで、少なくとも2時間カバーしたままに(すなわち、暗野の環境に)して、その後、23℃に維持した光学ベンチで試験した。そのベンチは、300ワットのキセノンアークランプ、遠隔操作のシャッター、UVおよびIRの波長を改変して、ヒートシンクとして機能するMelles Griot KG2フィルター、減光フィルター、および23℃の水浴内に位置するサンプルホルダーを装着し、ここにこの試験されるべきスクエアを挿入した。タングステンランプからの光の平行ビームは、このスクエアに対して垂直な小さい角度(約30°)でこのスクエアを通過した。このスクエア通過後、タングステンランプからの光は収集球面(collection sphere)に向けられ、この光は混ぜられ、そしてOcean Optics S2000分光計に測定ビームのスペクトルが収集され分析される。λmax−visは、試験スクエア中のフォトクロミック材料の活性化(着色)型の極大吸収が出現する可視スペクトル中の波長である。λmax−vis波長は、Varian Cary 4000 UV−可視分光計でフォトクロミック試験スクエアを試験することによって決定された。この検出器からの出力信号を、放射計によって処理した。
【0108】
各々の試験スクエアについての飽和光学密度(「飽和 OD」)は、キセノンランプからのシャッターを開放し、そしてUV照射に対して30分間試験チップを曝した後、透過率を測定することによって決定した。Sat’d ODでのλmax−visを、光学ベンチでS2000分光計によって測定した活性化データから算出した。退色速度とは、退色半減期(すなわち、T1/2)によって測定した場合、活性化光源の除去後、試験スクエア中のフォトクロミック材料の活性化型の吸光度が、室温(23℃)でSat’d OD吸光度値の半分に達する時間の秒数である。性能等級(「PR」)は、以下の式:
PR=((Sat’d OD)/T1/2)×10,000
によってSat’d ODおよびT1/2から算出される。本発明の開示に従う特定のフォトクロミック材料のフォトクロミックデータは、表1に提示される。比較のフォトクロミック材料データ(すなわち、合わされたB基およびB’基が本明細書に説明されるような4−フルオロフェニル基および4−アミノフェニル基ではないフォトクロミックなインデノ縮合ナフトピラン)は、表2に提示される。
【0109】
【表1】

【0110】
【表2】

本発明の詳細な説明は、本発明の明確な理解に関連する本発明の局面を例示することが理解されるべきである。当業者にとって明白であり、従って、本発明の良好な理解を容易にするものではない本発明の特定の局面は、本発明の開示を簡略にするために提示されていない。本発明は、特定の実施形態に関して記載されているが、本発明は、開示される特定の実施形態には限定されず、添付の特許請求の範囲によって規定されるような、本発明の趣旨および範囲内である改変を包含することが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】図1は、本明細書に開示される種々の非限定的な実施形態に従うフォトクロミック材料の合成のための中間体を作製するための反応スキームの概略図を図示する。
【図2】図2は、本明細書に開示される種々の非限定的な実施形態に従うフォトクロミック材料の合成のための中間体を作製するための反応スキームの概略図を図示する。
【図3】図3は、本明細書に開示される種々の非限定的な実施形態に従うフォトクロミック材料を作製するための反応スキームの概略図を図示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトクロミック材料であって:
3位に結合したB基および3位に結合したB’基を含むインデノ縮合ナフトピランを含み、該B基が4−フルオロフェニル基であり、かつ該B’基が4位が置換されたフェニル基であり、該4位が置換されたフェニル基の4位の置換基が−NRであり、RおよびRが各々独立して、水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、または二置換フェニルであり、該フェニルの置換基がC〜CアルキルもしくはC〜Cアルコキシであるか、またはRおよびRが窒素原子と一緒になって、以下の構造式II:
【化1】

によって提示される窒素含有環を形成し、
各々の−Y−が、各々の出現について独立して、−CH−、−CH(R)−、−C(R−、−CH(アリール)−、−C(アリール)−、および−C(R)(アリール)−から選択され、かつZが−Y−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NH−、−N(R)−または−N(アリール)−であり、各々のRが独立してC〜Cアルキル、またはヒドロキシ(C〜C)アルキルであり、各々のアリールが独立してフェニルまたはナフチルであり、mが整数1、2または3であり、かつpが整数0、1、2または3であり、そしてpが0である場合、Zが−Y−である、フォトクロミック材料。
【請求項2】
請求項1に記載のフォトクロミック材料であって、該フォトクロミック材料は、インデノ縮合ナフトピランが、その3位の、4−フルオロフェニル基および前記4位の置換基が−NRである4−置換フェニルを欠くインデノ縮合ナフトピランを含む匹敵するフォトクロミック材料よりもはやい退色速度を有する、フォトクロミック材料。
【請求項3】
請求項1に記載のフォトクロミック材料であって、前記B’基が4−(N,N−ジアルキルアミノ)フェニル、4−ピペリジノフェニル、4−(置換ピペリジノ)フェニル、4−ピロリジノフェニル、4−(置換ピロリジノ)フェニル、4−ピペリジノフェニル、または4−(置換ピペリジノ)フェニルのうちの1つであり、該ピペリジノ、ピロリジノ、またはピペリジノ上の置換基が、(C〜C)アルキルまたはヒドロキシ(C〜C)アルキルを含み、かつ該ジアルキルアミノのアルキル基が同じかまたは異なる(C〜C)アルキルである、フォトクロミック材料。
【請求項4】
インデノ縮合ナフトピランのC環の炭素に結合した第一の電子求引性基をさらに含む、請求項1に記載のフォトクロミック材料。
【請求項5】
前記第一の電子求引性基が、インデノ縮合ナフトピランの6位に結合している、請求項4に記載のフォトクロミック材料。
【請求項6】
請求項4に記載のフォトクロミック材料であって、前記第一の電子求引性基が、フルオロ、クロロ、ブロモ、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルコキシ、シアノ、−OC(=O)R、−SOX、または−C(=O)−Xであり、Xが水素、C〜Cアルキル、−ORまたは−NRであり、R、R、RおよびRが各々独立して水素、水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、または二置換フェニルであり、該フェニルの置換基が、C〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである、フォトクロミック材料。
【請求項7】
インデノ縮合ナフトピランの11位に結合された第二の電子求引性基をさらに含む、請求項4に記載のフォトクロミック材料。
【請求項8】
請求項7に記載のフォトクロミック材料であって、前記第二の電子求引性基がフルオロ、クロロ、ブロモ、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルコキシ、シアノ、−OC(=O)R、−SOX、または−C(=O)−Xであり、Xが水素、C〜Cアルキル、−OR、または−NR1011であり、R、R、R10およびR11が各々独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、または二置換フェニルであり、該フェニルの置換基がC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである、フォトクロミック材料。
【請求項9】
前記インデノ縮合ナフトピランの6位に結合した第一のフルオロ置換基と、前記インデノ縮合ナフトピランの11位の第二のフルオロ置換基とをさらに含む、請求項1に記載のフォトクロミック材料。
【請求項10】
フォトクロミック材料であって、以下の構造:
【化2】

を有し、
ここで、sが0〜3の範囲の整数であり、qが0〜3の範囲の整数であり、かつ各々のR16および各々のR17が各々の出現について以下を含む:水素;フルオロ;クロロ;ブロモ;ペルフルオロアルキル;ペルフルオロアルコキシ;シアノ;−OC(=O)R21;−SOX;−C(=O)−Xであって、ここでXが水素、C〜Cアルキル、−OR22、または−NR2324であり、ここでR21、R22、R23およびR24が各々独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、または二置換フェニルであり、ここで該フェニルの置換基がC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである;C〜Cアルキル;C〜Cシクロアルキル;置換または非置換のフェニル;−OR25であって、ここでR25が水素、C〜Cアルキル、フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ(C〜C)アルキル、C〜Cシクロアルキル、またはモノ(C〜C)アルキル置換C〜Cシクロアルキルであり、かつ該フェニルの置換基が、C〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである;一置換フェニルであって、該フェニルはパラ位に位置する置換基を有し、該置換基は、ジカルボン酸残基またはその誘導体、ジアミン残基またはその誘導体、アミノアルコール残基またはその誘導体、ポリオール残基またはその誘導体、−CH−、−(CH−、または−[O−(CH−であり、ここでtは整数2、3、4、5または6であり、かつkは1〜50の整数であり、該置換基は、別のフォトクロミック材料のアリール基に連結されている;−N(R26)R27であって、ここでR26およびR27は各々独立して水素、C〜Cアルキル、フェニル、ナフチル、フラニル、ベンゾフラン−2−イル、ベンゾフラン−3−イル、チエニル、ベンゾチエン−2−イル、ベンゾチエン−3−イル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、ベンゾピリジル、フルオレニル、C〜Cアルキルアリール、C〜C20シクロアルキル、C〜C20ビシクロアルキル、C〜C20トリシクロアルキルまたはC〜C20アルコキシアルキルであり、該アリール基は、フェニルまたはナフチルであるか、あるいはR26およびR27は窒素原子と一緒になってC〜C20ヘテロ−ビシクロアルキル環またはC〜C20ヘテロ−トリシクロアルキル環を形成する;以下の構造式IVA:
【化3】

によって提示される窒素含有環であって、ここで各々の−Y−は独立して、各々の出現について−CH−、−CH(R28)−、−C(R28−、−CH(アリール)−、−C(アリール)−、および−C(R28)(アリール)−から選択され、そしてZは、−Y−、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NH−、−N(R28)−、または−N(アリール)−であり、各々のR28は独立してC〜Cアルキルまたはヒドロキシ(C〜C)アルキルであり、各々のアリールは独立してフェニルまたはナフチルであり、mは1、2または3の整数であり、かつpは整数0、1、2または3であり、そしてpが0である場合、Zは−Y−である;以下の構造式IVBまたはIVC:
【化4】

のうちの1つによって提示される基であって、ここでR30、R31およびR32は各々独立して水素、C〜Cアルキル、フェニル、またはナフチルであるか、あるいは基R30およびR31は一緒になって、5〜8個の炭素原子の環を形成し、かつ各々のR29は独立して、各々の出現について、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、フルオロまたはクロロであり、かつgは整数0、1、2または3である基;ならびに非置換、一置換または二置換のC〜C18スピロ二環式アミンまたは非置換、一置換および二置換のC〜C18スピロ三環式アミンであり、ここで該置換基は独立して、アリール、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、またはフェニル(C〜C)アルキルである基;あるいは
6位のR16基および7位のR16基は一緒になって、IVDおよびIVE:
【化5】

のうちの1つによって提示される基を形成し、ここでTおよびT’は各々独立して酸素または基−NR26−であり、R26、R30およびR31は上記されるとおりであり;
18およびR19は各々独立して以下である:水素;ヒドロキシ;C〜Cアルキル;C〜Cシクロアルキル;アリル;置換または非置換のフェニル;置換または非置換のベンジル;クロロ;フルオロ;基−C(=O)Wであり、ここでWは水素、ヒドロキシ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、非置換、一置換または二置換のアリール基であるフェニルまたはナフチル、フェノキシ、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェノキシ、ジ(C〜C)アルコキシ置換フェノキシ、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェノキシ、ジ(C〜C)アルコキシ置換フェノキシ、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、フェニルアミノ、モノ(C〜C)アルキル置換フェニルアミノ、ジ(C〜C)アルキル置換フェニルアミノ、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニルアミノまたはジ(C〜C)アルコキシ置換フェニルアミノである;−OR33であって、ここでR33は、C〜Cアルキル、フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル(C〜C)アルキル、C〜Cアルコキシ(C〜C)アルキル、C〜Cシクロアルキル、モノ(C〜C)アルキル置換C〜Cシクロアルキル、C〜Cクロロアルキル、C〜Cフルオロアルキル、アリルまたは基−CH(R34)W’であって、ここでR34は水素またはC〜Cアルキルであって、W’はCN、CFまたはCOOR35であり、R35は水素もしくはC〜Cアルキルであるか、またはR33は基−C(=O)W”であって、ここでW”は水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、非置換、一置換もしくは二置換のアリール基であるフェニルまたはナフチル、フェノキシ、モノ(C〜C)アルキル置換フェノキシ、ジ(C〜C)アルキル置換フェノキシ、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェノキシ、ジ(C〜C)アルコキシ置換フェノキシ、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、フェニルアミノ、モノ(C〜C)アルキル置換フェニルアミノ、ジ(C〜C)アルキル置換フェニルアミノ、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニルアミノまたはジ(C〜C)アルコキシ置換フェニルアミノであり、ここで該フェニル、ベンジルもしくはアリール基置換基の各々は独立してC〜CアルキルもしくはC〜Cアルコキシである;または一置換フェニルであって、該フェニルはパラ位に位置する置換基を有し、ここで該置換基は、ジカルボン酸残基またはその誘導体、ジアミン残基またはその誘導体、アミノアルコール残基またはその誘導体、ポリオール残基またはその誘導体、−CH−、−(CH−、または−[O−(CH−であって、ここでtは整数2、3、4、5または6であって、かつkは1〜50の整数であって、該置換基は、別のフォトクロミック材料のアリール基に連結されているか;またはR18およびR19は一緒になって、オキソ基、3〜6個の炭素原子を含むスピロ−カルボン酸基、または1〜2個の酸素原子およびスピロ炭素原子を含めて3〜6個の炭素原子を含むスピロ−複素環式基を形成し、該スピロ炭素環式基およびスピロ複素環式基は、0、1もしくは2のベンゼン環と環形成されている;そして
20は、−NR3637であって、ここでR36およびR37は各々独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、または二置換フェニルであって、該フェニルの置換基は、C〜CアルキルもしくはC〜Cアルコキシであるか、またはR36およびR37は窒素原子と一緒になって以下の構造式V:
【化6】

によって提示される窒素含有環を形成し、
ここで各々の−Y’−が独立して、各々の出現について、−CH−、−CH(R38)−、−C(R38−、−CH(アリール)−、−C(アリール)−、および−C(R38)(アリール)−から選択され、そしてZ’は−Y’−、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NH−、−N(R38)−、または−N(アリール)−であって、ここで各々のR38は独立してC〜Cアルキルまたはヒドロキシ(C〜C)アルキルであって、各々のアリールは独立してフェニルまたはナフチルであり、m’は整数1、2または3であり、そしてp’は整数0、1、2または3であり、そしてp’が0である場合、Z’は−Y’−であり;
ただし、R20がモルホリノである場合、R16は構造IIIの7位における4−置換ピペリジノではない、フォトクロミック材料。
【請求項11】
請求項10に記載のフォトクロミック材料であって、R20がジアルキルアミノ、モルホリノ、ピペリジノ、置換ピペリジノ、ピロリジノ、置換ピロリジノ、ピペリジノ、または置換ピペリジノを含み、該ピペリジノ、ピロリジノまたはピペリジノ上の置換基が、(C〜C)アルキルまたはヒドロキシ(C〜C)アルキルを含み、該ジアルキルアミノのアルキル基は、同じまたは異なる(C〜C)アルキルである、フォトクロミック材料。
【請求項12】
16が6位のフルオロ基であり、かつR17が11位のフルオロ基である、請求項10に記載のフォトクロミック材料。
【請求項13】
請求項10に記載のフォトクロミック材料であって、以下:
(a)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−モルホリノフェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(b)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−モルホリノフェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(c)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−ピペリジノフェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(d)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−ピペリジノフェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(e)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−(2−メチルピペリジノ)フェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(f)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−(2−メチルピペリジノ)フェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(g)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−ピペリジノフェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(h)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−ピペリジノフェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(i)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−ピロリジノフェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(j)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−ピロリジノフェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;
(k)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル)−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン;および
(l)3−(4−フルオロフェニル)−3−(4−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル)−6,11−ジフルオロ−13,13−ジメチル−3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピラン、
から選択される、フォトクロミック材料。
【請求項14】
化合物であって、以下の構造:
【化7】

によって提示され、ここでR12が−NR1314であり、R13およびR14が各々独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル、フェニル、一置換フェニル、または二置換フェニルであり、該フェニルの置換基はC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシであるか、あるいはR13およびR14は窒素原子と一緒になって、以下の構造式II:
【化8】

によって提示される窒素含有環を形成し、
ここで各々の−Y−が独立して、各々の出現について−CH−、−CH(R15)−、−C(R15−、−CH(アリール)−、−C(アリール)−および−C(R15)(アリール)−から選択され、かつZは−Y−、−O−、−S−、−S(O)−、−SO−、−NH−、−N(R)−または−N(アリール)−であり、各々のR15が独立してC〜Cアルキル、もしくはヒドロキシ(C〜C)アルキルであり、各々のアリールは独立してフェニルまたはナフチルであり、mは整数1、2または3であり、かつpは整数0、1、2または3であり、そしてpが0である場合、Zが−Yである、化合物。
【請求項15】
請求項14に記載の化合物であって、R12がジアルキルアミノ、モルホリノ、ピペリジノ、置換ピペリジノ、ピロリジノ、置換ピロリジノ、ピペリジノ、または置換ピペリジノを含み、該ピペリジノ、ピロリジノ、またはピペリジノ上の置換基が(C〜C)アルキルまたはヒドロキシ(C〜C)アルキルを含み、そして該ジアルキルアミノのアルキル基が同じかまたは異なる、(C〜C)アルキルである、化合物。
【請求項16】
フォトクロミック材料を作製する方法であって:
請求項14に記載の化合物と7H−ベンゾ[C]フルオレン−5−オールとを反応させて3H,13H−インデノ[2’,3’:3,4]ナフト[1,2−b]ピランを形成する工程を包含する、方法。
【請求項17】
フォトクロミック物品であって:
基板と;
該基板の少なくとも一部に結合された請求項1に記載のフォトクロミック材料と;
を含む、フォトクロミック物品。
【請求項18】
請求項17に記載のフォトクロミック物品であって、該フォトクロミック物品が、光学素子であって、該光学素子が、眼科用素子、ディスプレイ素子、窓、鏡、能動性液晶セル素子、または受動性液晶セル素子のうちの少なくとも1つである、フォトクロミック物品。
【請求項19】
請求項17に記載のフォトクロミック物品であって、前記基板が、ポリマー材料を含み、かつ該フォトクロミック材料が、該ポリマー材料の少なくとも一部との混合、該ポリマー材料の少なくとも一部への結合、および該ポリマー材料の少なくとも一部への吸収のうちの少なくとも1つによって、該ポリマー材料の少なくとも一部に組み込まれている、フォトクロミック物品。
【請求項20】
請求項17に記載のフォトクロミック物品であって、前記フォトクロミック物品が、前記基板の少なくとも一部に結合された少なくとも部分的なコーティングを含み、該少なくとも部分的なコーティングがフォトクロミック材料を含む、フォトクロミック物品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2009−526092(P2009−526092A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547268(P2008−547268)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/046415
【国際公開番号】WO2007/078529
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(504175051)トランジションズ オプティカル, インコーポレイテッド (65)
【Fターム(参考)】