説明

フォトクロミックコンタクトレンズおよび製造方法

レンズの中心領域または瞳孔領域にフォトクロミック物質を有するコンタクトレンズおよびこのようなレンズの製造方法が記載されている。1つの方法において、フォトクロミック量の少なくとも一つのフォトクロミック物質が、添加前および/または添加後に少なくとも一部分が重合し得る重合可能モノマーを含む成形鋳型の瞳孔領域に加えられる。別の方法は、瞳孔領域のための一定量の重合可能なフォトクロミックモノマーとコンタクトレンズの残部のための一定量の重合可能な非フォトクロミックモノマーを成形鋳型に提供することを含む。フォトクロミックモノマーおよび非フォトクロミックモノマーは、重合度、粘度、および/または密度が異なり得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
この出願は、2002年12月10日に出願された米国特許出願番号10/315,656に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
本発明は光感受性フォトクロミックコンタクトレンズおよび製造方法に関する。より具体的には、本発明は、レンズの中心部分もしくは瞳孔領域に配置された、フォトクロミック物質のような光感受性物質を有するコンタクトレンズに関する。本製造方法は、一つの非限定的な実施形態において、コンタクトレンズを製造する成形鋳型法に応用可能である。
【0003】
フォトクロミズムは、光によって誘導される、色における可逆的な変化を含む現象である。このような紫外線を含む光放射にさらされることにより色を帯びるような物質を含む物品は、紫外線放射の影響が途切れた時、元の色に戻る。紫外線を含む光放射の光源としては、例えば、太陽光および水銀灯の光が挙げられる。紫外線放射の中断は、例えば、暗所でのフォトクロミック物質もしくはフォトクロミック物品の貯蔵、または(例えばフィルタリングによる)紫外線放射源の除去により達成され得る。
【0004】
フォトクロミックコンタクトレンズは、独特の一連の挑戦を提起する。眼の表面は、70°F(21℃)を超える温度で代表的に性能の低下を経験するフォトクロミック分子を含むコンタクトレンズにとって難しい環境である。コンタクトレンズ物質は、代表的に50%以上の水から構成されているが、代表的には非常に高度に親油性の分子とわずかに適合性である。また、眼は、眉毛および睫毛によって、フォトクロミック分子の活性化のために必要とされる紫外光から強度にさえぎられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フォトクロミック物質をコンタクトレンズに組み込むための方法が開示されてきたが、光感受性物質がレンズの中心部分もしくは瞳孔領域に配置されたフォトクロミックコンタクレンズを製造する迅速で確実な方法が、未だ必要とされている。さらに、このプロセスを、経済的にし、かつ例えば親水性の架橋されたコンタクトレンズのように、今日コンタクトレンズを製造するために用いられている非常に自動化された器具に難なく適合可能にする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の詳細な説明)
既存の成形鋳型プロセスに対して、新規のかつこれまでに実現されていない改変をすることにより、一つの非限定的な実施形態において、中心領域フォトクロミック活性もしくは瞳孔領域フォトクロミック活性を有するコンタクトレンズが調製され得ることがここで見出された。眼の瞳孔領域は、瞳孔および瞳孔の開閉を制御する絞りとして働く代表的に着色された虹彩の開口部が配置されている眼の領域である。コンタクトレンズもしくは成形鋳型の瞳孔領域は、本明細書中では、眼の瞳孔領域に相当し、残りのコンタクトレンズの領域の50%までに及ぶコンタクトレンズもしくは成形鋳型の領域と定義される。眼の瞳孔領域に相当する領域を超えるコンタクトレンズの部分は、本明細書中では、レンズ体と呼ばれる。
【0007】
一つの非限定的な実施形態において、フォトクロミック活性の領域は、瞳孔のみの領域を覆う。別の非限定的な実施形態において、フォトクロミック活性の領域は、眼の瞳孔領域および虹彩領域に相当する領域を覆う。さらなる非限定的な実施形態において、フォトクロミック活性の領域は、本明細書上記に定義された瞳孔領域を覆う。別の非限定的な実施形態において、コンタクトレンズ体におけるフォトクロミック活性の程度は、レンズ体領域の50%未満、30%未満、または10%以下である。領域パーセントは、眼の瞳孔領域に相当する領域を除くレンズ体の全領域に基づいている。
【0008】
留意すべきは、この明細書および添付された請求の範囲において用いられる場合、特別に、そして明白に一つの対象に制限されない限り、単数形「a」、「an」、および「the」は複数の対象を含むということである。
【0009】
この明細書の目的のために、もし別の方法で示されていなければ、明細書および請求の範囲で用いられた成分、反応条件、およびその他のパラメータの量を表す全ての数は、全ての場合において用語「about」により修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、もし逆に示されるのでなければ、以下の明細書および添付された請求の範囲に示される数値のパラメータは、本発明により獲得を要求されている所望の特性に依存して変化し得る近似値である。いずれにせよ、均等論の適用を請求の範囲に限定する試みとしてではなく、各々の数値のパラメータは、少なくとも、報告される有効数字の数に照らして、そして通常の概算技術への適用によって解釈されるべきである。
【0010】
本発明の広い範囲を設定する数値の範囲およびパラメータは、近似値であるにもかかわらず、特定の実施例において示される数値は、可能な限り正確に報告される。しかし、あらゆる数値は、本質的に、必然的にそれぞれの試験測定値において見られる標準偏差から生じる、一定の誤差を含む。
【0011】
「満たす水和する、抽出する、置き換えるもしくは除去する」という用語に先んずる「少なくとも部分的には」という熟語は、満たす、水和する、抽出する、置き換えるもしくは除去する程度が、満たされ得る、水和され得る、抽出され得る、置き換えられ得るもしくは除去され得る量の部分量から完全量まで変動することを意味する。「重合可能組成物を少なくとも部分的には硬化する」もしくは「少なくとも部分的には硬化された重合可能組成物」という熟語は、硬化可能なもしくは架橋可能な成分が少なくとも部分的に硬化され、架橋されおよび/もしくは反応された重合可能組成物を言う。本発明の一つの非限定的な実施形態において、硬化された、架橋されたもしくは反応された成分の程度は、例えば、可能な硬化可能な、架橋可能なおよび/もしくは反応可能な成分の全てのうちの5%から90%まで広く変化し得る。
【0012】
「少なくとも本質的に硬化された」という熟語は、反応した成分の程度が、可能な硬化可能な、架橋可能なおよび/もしくは反応可能な成分の全てのうちの90%よりも大きい量から100%までにおよぶ、重合可能組成物を言う。反応した成分の程度の決定は、一つの非限定的な実施形態において、モノマー、その他の未反応物質および不純物を抽出し得る溶媒(例えば、メタノール)を用いた抽出プロセスにより成し遂げられ得る。例えば、アクリル基およびメタアクリル基のような、(メタ)アクリル基の反応程度は当業者に公知の赤外分光法を用いて決定され得る。
【0013】
一つの非限定的な実施形態において、フォトクロミックな瞳孔領域を含むコンタクトレンズの製造方法は、以下:
a)第一粘度およびフォトクロミック量の少なくとも一つのフォトクロミック物質を含む一定体積の第一重合可能モノマー組成物を、瞳孔領域を有する凹部部材および凸部部材を含む成形鋳型の凹部部材に添加する工程であって、その体積は、少なくとも本質的に硬化したコンタクトレンズにおいてフォトクロミック瞳孔領域を作るのに十分である、工程;
b)第一重合可能モノマー組成物よりも少なくとも300センチポアズ低い粘度を含む一定体積の第二重合可能モノマー組成物を、a)の成形鋳型の凹部部材に添加する工程であって、第一重合可能モノマー組成物および第二重合可能モノマー組成物の合計体積が、少なくとも本質的に硬化したコンタクトレンズを作るのに十分である、工程;
c)凸部部材をb)の成形鋳型の凹部部材に取り付ける工程;ならびに
d)c)の成形鋳型において重合可能組成物を少なくとも本質的に硬化する工程
を包含する。
【0014】
一つの非限定的な実施形態において、第一重合可能モノマーの粘度は、第二重合可能モノマーの粘度よりも少なくとも500センチポアズ高い。別の非限定的な実施形態において、第一重合可能モノマーの粘度は、第二重合可能モノマーの粘度よりも少なくとも1000センチポアズ高い。第二モノマーの粘度と比較してより高い第一モノマーの粘度の量は、例えば、少なくとも350センチポアズ高いとうような前述した値も含めて、これらの値の任意の値の間で変動し得る。モノマーの粘度は、ブルックフィールド粘度計により決定される。
【0015】
別の非限定的な実施形態において、フォトクロミック瞳孔領域を含むコンタクトレンズの製造方法は、以下:
a)成形鋳型の凹部部材への添加前に;
b)成形鋳型の凹部部材への添加後に;または
c)それらの組み合わせ
において、第一重合可能モノマー組成物および/または第二重合可能モノマー組成物を少なくとも部分的に硬化する工程をさらに包含する。
【0016】
さらなる非限定的な実施形態において、フォトクロミック瞳孔領域を含むコンタクトレンズの製造方法は、成形鋳型から少なくとも本質的に硬化したコンタクトレンズを取り出す工程をさらに包含する。
【0017】
なおさらなる非限定的な実施形態において、フォトクロミック瞳孔領域を含むコンタクトレンズの製造方法は、以下:
a)少なくとも本質的に硬化したコンタクトレンズを少なくとも部分的に水和する工程;
b)a)のコンタクトレンズから、あらゆる未反応モノマーもしくは不純物を少なくとも部分的に抽出する工程;
c)コンタクトレンズにおいてa)およびb)の後に残った残存液体を、少なくとも部分的に等張塩溶液に置き換える工程;ならびに
d)c)のコンタクトレンズから微生物内容物を少なくとも部分的に除去し、そしてパッケージングする工程;または
e)c)のコンタクトレンズをパッケージングし、そして微生物内容物を少なくとも部分的に除去する工程
をさらに包含する。
【0018】
一つの非限定的な実施形態において、本発明の重合可能組成物の重合は、Hawley’s Condensed Chemical Dictionary 第13版、1997年、John Wiley&Sons、901〜902頁における「重合」の定義に記載された機構により起こり得る。それらの機構は、フリーラジカルが一方で付加によりモノマーの二重結合と反応し、同時に他方で新しい自由電子を生成する開始剤となる「付加」によるもの、もしくは二つの反応モノマーによる水分子の開裂を含む「縮合」によるものを含む。
【0019】
別の非限定的な実施形態において、重合可能モノマーの重合は、有機ペルオキシ化合物もしくはアゾビス(有機ニトリル)化合物(例えば、重合開始剤)のようなフリーラジカルを生成可能な開始量の物質を重合可能モノマー組成物に添加することにより達成され得る。モノマー組成物を重合する方法は当業者に周知であり、それらの周知技術のどれもが上記の重合可能組成物を重合するために使われ得る。このような重合方法は、熱重合、光重合もしくはそれらの組み合わせを含む。
【0020】
熱重合開始剤として使われ得る有機ペルオキシ化合物の非限定的な例としては、以下が挙げられる:ターシャリーブチルペルオキシイソプロピルカーボネートのようなペルオキシモノカーボネートエステル;ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ(セカンダリーブチル)ペルオキシジカーボネートおよびジイソプロピルペルオキシジカーボネートのようなペルオキシジカーボネートエステル;2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、プロピオニルペルオキシド、アセチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドおよびp−クロロベンゾイルペルオキシドのようなジアシルペルオキシド(diacyperoxides);t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシオクチレートおよびt−ブチルペルオキシイソブチレートのようなペルオキシエステル;メチルエチルケトンペルオキシド、ならびにアセチルシクロへキサンスルホニルペルオキシド。一つの非限定的な実施形態において、使用される熱開始剤は、結果として生じる重合物を変色させるものではない。
【0021】
熱重合始剤として使われ得るアゾビス(有機ニトリル)化合物の非限定的な例としては、アゾビス化合物(イソブチロニトリル)、アゾビス化合物(2,4−ジメチルバレロニトリル)もしくはその混合物が挙げられる。
【0022】
重合可能モノマー組成物の開始および重合のために使われ得る熱重合開始剤の量は、変化し得、使われる特定の開始剤に依存する。一つの非限定的な実施形態において、例えば開始量のように、重合反応を開始し維持するために必要とされる量のみが必要とされる。一つの非限定的な実施形態において使われるペルオキシ化合物、ジイソプロピルペルオキシカーボネートに関しては、量は、代表的に重合可能有機組成物100部につき開始剤0.01部と3.0部との間(phm)である。別の非限定的な実施形態において、重合を開始するために0.05と1.0との間のphmが使われる。熱硬化サイクルは、一つの非限定的な実施形態において、開始剤存在下にて室温から85℃〜125℃に30分〜30時間以上、重合可能モノマー組成物を加熱する工程を包含する。
【0023】
一つの非限定的な実施形態において、本発明による重合可能モノマー組成物の光重合は、光重合開始剤の存在下、紫外光、可視光、もしくはその組み合わせを用いて実行され得る。光重合開始剤の非限定的な例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエスールベンゾフェノール、アセトフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−イソプロピルチキサントン(2−isopropylthixantone)および2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが挙げられる。重合可能モノマー組成物の開始および重合のために使われる光重合開始剤の量は、変化し得、使われた特定の開始剤に依存する。例えば開始量のように、重合反応を開始し維持するために必要とされる量のみが必要とされる。一つの非限定的な実施形態において、光重合開始剤は、モノマー組成物の重量に基づいて0.01重量パーセントから5重量パーセントの量で用いられる。
【0024】
一つの非限定的な実施形態において、光重合に用いられる光源は紫外光を放射するものから選択される。光源は、水銀灯、殺菌灯もしくはキセノンランプであり得る。例えば、太陽光のような、可視光もまた用いられ得る。曝露時間は、例えば、光源の波長および強度、ならびに特定のフォトクロミック物品に依存して異なり得、代表的に経験に基づいて決定される。
【0025】
別の非限定的な実施形態において、本発明の重合可能モノマー組成物に様々な従来の添加物が組み込まれ得る。このような添加物としては、光安定化剤、熱安定化剤、抗酸化剤、紫外光吸収剤、離型剤、静的(非フォトクロミック)色素、着色剤、保存の間の安定性を促進する溶媒および重合阻害剤、ならびに(フォトクロミック化合物以外の)紫外光吸収剤が挙げられ得る。例えば、3−メチル−2−ブテノール、オルガノピロカーボネートおよびトリフェニルホスファイト[CAS 101−02−0]のような黄変防止添加剤もまた、黄変抵抗性を促進するために本発明の重合可能モノマー組成物に添加され得る。
【0026】
さらなる非限定的な実施形態において、重合緩和剤、もしくはそれら重合緩和剤の混合物は、得られた重合物におけるすじあとのようなゆがみの形成を最小限に抑えるために、本発明の重合可能組成物に添加され得ることもまた意図される。重合緩和剤の非限定的な例としては、以下が挙げられる:ジラウリルチオジプロピオネート、テルピノレン、1−イソプロピル−4−メチル−1,4−シクロヘキサジエン、1−イソプロピル−4−メチル−1,3−シクロヘキサジエン、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、α−メチルスチレン、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、1,1−ジフェニルエチレン、シス−1,2−ジフェニルエチレン、2,6−ジメチル−2,4,6−オクタトリエン、4−t−ブチルピロカテコール、3−メチル−2−ブテノールもしくはそれらの混合物を含む。
【0027】
なおさらなる非限定的な実施形態において、重合緩和剤は、重合可能組成物の合計重量に基づいて、例えば、0.1重量パーセント〜10重量パーセントもしくは0.3重量パーセント〜5重量パーセントのような、0.01重量パーセント〜20重量パーセントの量において、重合可能モノマー組成物に添加され得る。重合緩和剤の量は、例えば0.015〜19.999重量パーセントのような列挙された範囲を含めて、これらの値のあらゆる組み合わせに及び得る。
【0028】
一つの非限定的な実施形態において、重合可能モノマー組成物の重合から得られた重合物もしくはコンタクトレンズは、固形で、可撓性で、かつ透明もしくは視覚的にクリアであるため、例えば、光学のコンタクトレンズのような光学の要素として用いられ得る。
【0029】
別の非限定的な実施形態において、フォトクロミック物質は、例えば注入のような添加により、少なくとも本質的に硬化されたコンタクトレンズの瞳孔領域を作るために十分な量で満たされた、少なくとも部分的に満たされたコンタクトレンズ鋳型において、重合可能モノマー組成物の瞳孔領域に分配され得る。これは、重合可能モノマーを少なくとも部分的に硬化するプロセスの後、重合可能モノマーを少なくとも部分的に硬化するプロセスの間に、もしくはそれらの組み合わせで行われ得る。
【0030】
さらなる非限定的な実施形態において、コンタクトレンズを鋳造するために用いられる重合可能モノマーは、少なくとも二つの異なる成形鋳型添加物に分割され得る。少なくとも一つのフォトクロミック物質が、重合可能フォトクロミックモノマー組成物を作るために、少なくとも一つの成形鋳型添加物に添加され得る。一つの非限定的な実施形態において、例えば、少なくとも本質的に硬化されたコンタクトレンズにおいてフォトクロミック瞳孔領域を作るのに十分な体積のような、少なくとも部分的に重合され得る重合可能フォトクロミックモノマー組成物の所定量は、重合可能非フォトクロミックモノマー組成物の添加前に、重合可能非フォトクロミックモノマー組成物の添加後にもしくはそれらの組み合わせで、瞳孔領域を有する凹部部材および凸部部材を含む成形鋳型の凹部部材に分配され得る。
【0031】
別の非限定的な実施形態において、重合可能フォトクロミックモノマー組成物は、鋳型への添加もしくは分配、それによるコンタクトレンズの残りの部分を作るために含められる非フォトクロミックモノマーとの混合の発生の制限後、少なくとも部分的に硬化され得る。
【0032】
成形鋳型プロセスにおいて、コンタクトレンズは、通常もしくは代表的に、二つのスチール、黄銅、もしくは(より代表的に)プラスチック鋳型の間で形成される。鋳型は、正確な前および後ろの表面形状で設計されている。鋳型プロセスの間、一つの非限定的な実施形態において、モノマーは成形鋳型の凹部部材に分配され、その後、モノマーを成形鋳型の光学表面に挟まれる状態にしたまま、凸部部材がプレスばめされる。用いられた成形鋳型に依存して、一つの非限定的な実施形態において、重合物もしくはコンタクトレンズの厚さを設定するガスケットが用いられ得る。もし必要であれば、ガスケットの使用は、成形鋳型の凸部部材を凹部部材に取り付ける工程において含まれる。そして、モノマーは、硬化され、例えば紫外光のような光化線への曝露、熱によるプロセスもしくは二つの硬化プロセスの組み合わせによりレンズを生成し得る。
【0033】
本質的に硬化されたレンズが形成された後、一つの非限定的な実施形態において、この本質的に硬化されたレンズは、鋳型から取り出され、少なくとも部分的な水和プロセスおよび少なくとも部分的な抽出プロセスが行われる。これらの工程の間、レンズが吸収し得る水の量は広範に変化する。一つの非限定的な実施形態において、レンズはその重量の38%〜72%の水を吸収し得る。水和プロセスの後、一つの非限定的な実施形態において、レンズは溶媒によって抽出もしくは洗浄され得る。用いられ得る溶媒の種類は、広範に変化し、取り除かれるべき物質に依存する。一つの非限定的な実施形態において、用いられ得る溶媒としては、メタノールのような有機溶媒もしくは水(例えば、最低限に抑えられた微生物レベルを有する精製水)が挙げられ得る。抽出プロセスは、あらゆる未反応モノマーおよび/もしくは不純物を取り除くために行われる。これらのプロセスは、例えば、加熱された水浴において同時に、もしくは順に実行され得る。
【0034】
水和プロセスおよび抽出プロセスの後、一つの非限定的な実施形態において、レンズは、例えば生理食塩水のような任意に緩衝作用を有する等張塩溶液に浸されもしくは接触される。一つの非限定的な実施形態において、この工程は、水和工程および抽出工程から残った残存液体を眼に寛容な塩溶液で置き換えることを意味する。別の非限定的な実施形態において、結果として生じたコンタクトレンズ生成物は、滅菌され得、微生物内容物が少なくとも部分的に除去され、そして結果として生じたコンタクトレンズは、パッケージングされる。別の非限定的な実施形態において、用いられる製造プロセスに依存して、コンタクトレンズはパッケージングされ得、そしてパッケージ内容物は滅菌され得る。
【0035】
本発明のプロセスにおいて、一つの非限定的な実施形態において、コンタクトレンズを鋳造するために用いられたモノマーの混合物として以下が挙げられる。ヒドロキシエチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン、メタクリル酸、メチルメタクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−クロロスチレン、o−クロロスチレン、p−ブロモスチレン、o−ブロモスチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルベンゾエート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、p−クロロフェニル(メタ)アクリレート、p−クロロベンジル(メタ)アクリレート、p−ブロモフェニル(メタ)アクリレート、p−ブロモベンジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、3−アクリロイロキシグリセロールモノエタクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシ(2’−ヒドロキシプロピロキシ)フェニル)プロパン、ジイソプロピルフマレート、ジイソプロピルマレエート、ジベンジルフマレート、ジベンジルマレエート、ジベンジルメサコネート、無水マレイン酸、および無水イタコン酸。これらのモノマーは、単独もしくはそれらの混合物で用いられ得る。
【0036】
一つの非限定的な実施形態において、スチレンおよびp−クロロスチレンは、樹皮組成物の硬化により得られた樹脂物質の屈折率を改善するために含まれ得、結果として、比重がさらに減少する。別の非限定的な実施形態において、エチレングリコールジメタクリレートもしくはジエチレングリコールジメタクリレートのような一つの架橋モノマーまたはそれらの組み合わせが用いられ得る。
【0037】
さらなる非限定的な実施形態において、第二モノマーより少なくとも300センチポアズ高い粘度を有する第一モノマーはまた、第二モノマーよりも大きい密度を有し得る。Hawley’s Condensed Chemical Dictionary 第13版、1997、John Wiley&Sons、1038〜1039頁によれば、比重の定義は、固体および液体の密度が数値的に比重に等しいと記載している。本発明のプロセスにおいて用いられるこのような第一モノマーに添加されるフォトクロミック物質は、結果として、非フォトクロミック重合レンズ体およびレンズ体中に配置され非フォトクロミックレンズ体より大きい密度を有するフォトクロミック瞳孔領域を含む、コンタクレンズとなる。
【0038】
フォトクロミック量の少なくとも一つのフォトクロミック物質は、一つの非限定的な実施形態において、少なくとも部分的に満たされた成形鋳型の凹部部材の瞳孔領域に添加され得る。一つの非限定的な実施形態において、これは、重合可能モノマーの表面下のフォトクロミック物質を凹部部材の瞳孔領域に注入することにより達成され得る。重合可能組成物は、フォトクロミック物質の添加前、フォトクロミック物質の添加の間、フォトクロミック物質の添加後もしくはそれらの組み合わせによって、少なくとも部分的に重合され得る。
【0039】
本明細書および請求の範囲において用いられる場合、「フォトクロミック量」により、少なくとも活性化された際に裸眼に認識可能なフォトクロミック効果を生み出すために十分な量のフォトクロミック物質が意味される。用いられる特定量は、コンタクトレンズの厚さ、瞳孔領域の大きさおよびその照射時に望まれる色の強度にしばしば依存する。代表的に、組み込まれるフォトクロミック物質が多いほど、より強い色の強度の大きさは、ある限度にまで及ぶ。それ以上のどれほど多くの物質の添加も認識可能な効果を有さないポイントが存在する。
【0040】
重合可能組成物に組み込まれるフォトクロミック物質の量は、広範に変化し得る。一つの非限定的な実施形態において、量は、重合可能組成物の重量に基づいて0.01重量パーセント〜40重量パーセントの範囲に及ぶ。例えば、フォトクロミック物質の濃度は、重合可能組成物の重量に基づいて、0.05重量パーセント〜30重量パーセント、もしくは0.1重量パーセント〜20重量パーセントもしくは0.2重量パーセント〜15重量パーセント(例えば、7重量パーセント〜14重量パーセント)の範囲に及ぶ。フォトクロミック物質の濃度は、例えば、0.05重量パーセント〜39.95重量パーセントのような、列挙された範囲を含む、これらの値のあらゆる組み合わせの間の範囲に及び得る。
【0041】
本発明のプロセスにおいて用いられるフォトクロミック物質は、単独でまたは一つもしくはそれ以上の、他の適切かつ相補的なフォトクロミック物質(例えば、少なくとも一つの400〜700ナノメールの範囲内の活性化吸収極大を有し、活性化されると適切な色へと着色する有機フォトクロミック化合物)と組み合わせて用いられ得る。中間色および色の記載方法についてのさらなる議論は、米国特許第5,645,767号の12欄、66行〜13欄、19行において見出され得る。
【0042】
一つの非限定的な実施形態において、米国特許第5,166,345号の3欄、36行〜14欄、3行に開示された重合可能ナフトキサジン類;米国特許第5,236,958号の1欄、45行〜6欄、65行に開示された重合可能スピロベンゾピラン類;米国特許第5,252,742号の1欄、45行〜6欄、65行に開示された重合可能スピロベンゾピランおよびスピロベンゾチオピラン類;米国特許第5,359,085号の5欄、25行〜19欄、55行に開示された重合可能フルギド類;米国特許第5,488,119号の1欄、29行〜7欄、65行に開示された重合可能ナフタセネジオン類;米国特許第5,821,287号の3欄、5行〜11欄、39行に開示された重合可能スピロオキサジン類;米国特許第6,113,814号の2欄、23行〜23欄、29行に開示された重合可能ポリアルコキシ化ナフトピラン類;ならびにWO97/05213および2001年4月6日に出願された出願番号09/828,260に開示された重合可能フォトクロミック化合物のような重合可能フォトクロミック物質が用いられ得る。
【0043】
さらなる非限定的な実施形態において、フォトクロミック物質としては、以下の種類の物質が挙げられ得る:例えば、ナフトピラン類、ベンゾピラン類、インデノナフトピラン類およびフェナンスロピラン類のようなクロメン類;例えば、スピロ(ベンズインドリン)ナフトピラン類、スピロ(インドリン)ベンゾピラン類、スピロ(インドリン)ナフトピラン類、スピロ(インドリン)キノピラン類およびスピロ(インドリン)ピラン類のようなスピロピラン類;例えば、スピロ(インドリン)ナフトオキサジン類、スピロ(インドリン)ピリドベンズオキサジン類、スピロ(ベンズインドリン)ピリドベンズオキサジン類、スピロ(ベンズインドリン)ナフトオキサジン類およびスピロ(インドリン)ベンズオキサジン類のようなオキサジン類;水銀ジチゾナート、フルギド、フルギミドならびにこのようなフォトクロミック化合物の混合物。このようなフォトクロミック化合物および相補的なフォトクロミック化合物は、米国特許第4,931,220号の8欄、52行〜22欄、40行;同第5,645,767号の1欄、10行〜12欄、57行;同第5,658,501号の1欄、64行〜13欄、17行;同第6,153,126の2欄、18行〜8欄、60行;同第6,296,785号の2欄、47行〜31欄、5行;同第6,348,604号の3欄、26行〜17欄、15行;ならびに同第6,353,102号の1欄、62行〜11欄、64行に記載されている。スピロ(インドリン)ピラン類は、また、書物、Techniques in Chemistry、III巻、「Photochromism」、3章、Glenn H.Brown、編集者、John Wiley and Sons,Inc.、New York、1971に記載されている。
【0044】
別の非限定的な実施形態において、用いられ得る他のフォトクロミック物質としては、有機金属ジチオゾネート、すなわち、例えば、米国特許第3,361,706号の2欄、27行〜8欄、43行に記載されている水銀ジチゾネートのような(アリールアゾ)−チオホルミックアリールヒドラジデート類、ならびに例えば、米国特許第4,931,220号の1欄、39行〜22欄、41行に記載されている3−フリルおよび3−チエニルフルギド類およびフルギミド類のようなフルギド類およびフルギミド類が挙げられる。
【0045】
欄番号および行番号により示された、上記特許におけるこのようなフォトクロミック化合物に関連する開示は、本明細書中に参考として援用される。
【0046】
一つの非限定的な実施形態において、本発明のプロセスは、成形鋳型の凹部部材への分割された添加を実行する手段を利用している。例えば、二つの非常に正確なバルブおよびコントローラーが、重合可能モノマーおよびフォトクロミック量の少なくとも一つのフォトクロミック物質の添加もしくは、例えば、一方はフォトクロミック重合可能モノマー組成物でもう一方は非フォトクロミック重合可能モノマー組成物のような二つの異なる重合可能モノマー組成物の添加のために、標準的な鋳型成形器具に備えられ得る。別の非限定的な実施形態において、鋳型中に既に存在する物質を混合もしくは乱すことを避けるために、非破壊的なもしくは乱れない様式において物質を加える分配手段が用いられ得る。このような器具は、エレクトロニクスおよび医療デバイス産業において度々用いられる。このような器具の非限定的な例としては、East Providence、RI、02914のEFD Corporationから入手可能な、740MD−SSマイクロドットニードルバルブおよびValvemate7000コントローラーが挙げられる。
【0047】
別の非限定的な実施形態において、フォトクロミック含有組成物を添加するために用いられるニードルバルブおよびコントローラーは、例えば、少なくとも部分的に充填された成形鋳型の瞳孔領域への添加時に、体積的にのみではなく、位置的にも高い程度の正確さを有する。位置的な正確さはまた、選択された分配チップの制御の程度と相関するものである。一つの非限定的な実施形態において、この物質は一般に過剰に添加されるので、非フォトクロミックモノマーを添加するニードルバルブおよびコントローラーは、体積的な正確さは劣り得る。
【0048】
本発明の一つの非限定的な実施形態において、フォトクロミックモノマーは、まず、正確な分配チップにより成形鋳型の凹(雌性)部部材に分配され得る。この量は、レンズのデザインおよび補正により変化するが、代表的には2〜6マイクロリットルのオーダーの体積が分配され得る。別の非限定的な実施形態において、モノマーは、凹部部材の中心に正確に配置される。分配される体積は、レンズのデザインおよびレンズ屈折能に依存するが、完成したコンタクトレンズの中心瞳孔領域の体積に基づいて決定され得る。重合の間に生じる縮小および水和の間に生じる膨張のために、計算における許容量が作られる必要がある。さらなる非限定的な実施形態において、瞳孔領域の直径は、コンタクトレンズのデザインおよび/もしくはレンズの集束力に依存して広範に変化し得る。一つの非限定的な実施形態において、この直径は、5〜15ミリメートル(mm)、6〜10mmの範囲(例えば、8mm)に及ぶ。瞳孔領域の直径は、列挙された範囲を含むこれらの値のあらゆる組み合わせの間の範囲に及び得る。
【0049】
別の非限定的な実施形態において、重合可能非フォトクロミックモノマー組成物は、代表的には10マイクロリットル以上であり、フォトクロミックモノマーの中心プールを乱さないように留意しながら、前記分配手段を用いて、重合可能フォトクロミックモノマー組成物の上もしくは周囲に過剰に分配され得る。一つの非限定的な実施形態において、例えば、単純なブラウン運動のために、多少の混合が生じ得る。これは、クリアな部分とフォトクロミック部分との間の明瞭な境界を有さず、むしろこれらの部分が混合もしくは混和されたレンズを製造し得る。いくつかの場合において、これは、望ましい表面的な効果を有し得る。一つの非限定的な実施形態において、レンズの非瞳孔領域の半分は、非フォトクロミックのままである。
【0050】
一つの非限定的な実施形態において、フォトクロミック部分および非フォトクロミック部分の混合もしくは混和の程度は、どちらかもしくは両方のモノマー組成物が少なくとも部分的にもしくは本質的に硬化されるまでの時間を変えることにより制御され得る。より少ない混和が所望される場合、一つの非限定的な実施形態において、迅速な硬化が、分割された領域の維持において最も効果的であり得る。多少の混和が所望される場合には、より時間をかけた硬化プロセスが採用され得る。もちろん、所望される効果を達成するために硬化方法の組み合わせを用いることもまた可能である。
【0051】
フォトクロミック領域と非フォトクロミック領域との間に明確な境界が所望される場合、一つの非限定的な実施形態において、それは、成形鋳型の凹部部材への添加前、添加後もしくはそれらの組み合わせにおいて、モノマー混合物の一方もしくは両方を少なくとも部分的に硬化する工程により成し遂げられ得る。別の非限定的な実施形態において、粘度の違いは、二つの異なるモノマー組成物の混和を制限するために用いられ得る。フォトクロミックモノマー組成物が少なくとも部分的に硬化される場合、一つの非限定的な実施形態において、凸(雄性)部部材のプレスばめの間、それは、より粘性であり得、そして容易に縁に向かって流れる傾向を有し得ない。異なる粘度の物質を用いることにより、それらが重合前に共に混和される可能性は少なくなる。また、非フォトクロミックモノマーよりも高い粘度および高い密度を有するフォトクロミックモノマー物質を用いることにより、非フォトクロミックレンズ体よりも高い密度のフォトクロミック瞳孔領域を有するコンタクトレンズが作製され得る。前述のように、液体の比重は、数値的に密度に等しい。モノマーに関するこのような情報は、代表的に、製品カタログにおいて製造業者により提供され、例えば、Sartomer Product Catalogを参照のこと。
【0052】
代替的な非限定的な実施形態において、モノマーの粘度は、比較的低い粘度を有する他のモノマーもしくは溶媒のようなより粘度の低い物質の添加によって減少され得る。重合可能モノマー組成物への少量の溶媒の添加は、一つの非限定的な実施形態において、ポンピングおよび分配の間に粘度を減少させ得る。一度モノマーが成形鋳型の凹部部材に分配されると、一つの非限定的な実施形態において、窒素もしくは他の不活性ガス気流を用いパージすることにより、その後のフォトクロミック物質および/またより多くの重合可能モノマー組成物の添加の前に、溶媒は全体または一部除去され得る。一つの非限定的な実施形態において、溶媒は、重合可能フォトクロミックモノマー組成物と比較して重合可能非フォトクロミックモノマー組成物の粘度を低下させるために、重合可能非フォトクロミックモノマー組成物に添加され得る。そうすることにより、成形鋳型の凹部部材において、中心のより粘度の高いフォトクロミックモノマーの外側に蓄積する重合可能非フォトクロミックモノマー組成物の能力を上昇させ得る。
【0053】
溶媒の非限定的な例としては、以下が挙げられる:ベンゼン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、エタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピルアルコール、プロピレンカルボネート、N−メチルピロリジオン、N−ビニルピロリジオン、N−アセチルピロリジオン、N−ヒドロキシメチルピロリジオン、N−ブチルピロリジオン、N−エチルピロリジオン、N−(N−オクチル)ピロリジオン、N−(N−ドデシル)ピロリジオン、2−メトキシエチルエーテル、キシレン、シクロヘキサン、3−メチルシクロヘキサン、エチルアセテート、ブチルアセテート、テトラヒドロフラン、メタノール、アミルプロピオネート、メチルプロピオネート、プロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、エチレングリコール、Union CarbideによりCELLOSOLVE産業用溶媒として販売されるエチレングリコールおよびそれらの誘導体のモノ−およびジアルキルエーテル類ならびにこのような溶媒の混合物。
【0054】
別の非限定的な実施形態において、凸部部材を成形鋳型の凹部部材に取り付けるプロセスにおいて、より粘度の低い非フォトクロミックモノマーは、より容易に流動し得、結果として、非フォトクロミックな非瞳孔領域を有する最終的なレンズ生成物が生じ得る。レンズが本質的に硬化された後、それは鋳型から取り出され得る。続いて、水和、抽出もしくは洗浄、滅菌およびパーケージングのようなコンタクトレンズの製造において従来用いられるプロセスは、当該分野で公知のプロセスと変わらないままである。
【0055】
さらなる非限定的な実施形態において、本発明の上記方法は、本発明のコンタクトレンズを製造するために用いられる。
【0056】
本発明は、以下の実施例においてより具体的に記載され、以下の実施例は、その中の多数の改変および変更は当業者にとって明白であるので、単なる実施例として解釈される。
【実施例】
【0057】
(A部)
6つの基底湾曲を有するクラウンガラス成形鋳型の凹部半分に、4滴のSR 9036(SartomerからビスフェノールA 30 エトキシル化ジメタクリレートであると報告されている)および2滴のSR 348モノマー(SartomerからビスフェノールA 2 エトキシル化ジメタクリレートであると報告されている)を添加し、これらは、モノマーの重量に基づくとおよそ2重量パーセントのフォトクロミックナフトピランおよびモノマーの重量に基づくと0.5重量パーセントのIrgacure 819(Ciba Geigyから入手可能なホスフィンベースの開始剤であると報告されている)を含む。
【0058】
(B部)
A部のクラウンガラス鋳型の凹部半分を、約1ミリメートルの厚さのガスケットに適合し、そしてクラウンガラス鋳型の対応する凸部半分に、わずかな圧力を適合して完全な成形鋳型を形成した。完成された成形鋳型における重合可能組成物を、一通過5.0フィート/分(152.4cm/分)の速さで、ベルトコンベアー上にて、二つの10インチ(25.4cm)長の紫外型「D」光源の真下にそれをさらすことによる紫外線放射への曝露により、硬化した。第一の光源を、コンベアーより2.5インチ(6.4cm)高く維持し、そして第二の光源は、コンベアーより6.5インチ(16.5cm)高く維持した。この硬化システムは、Eye Ultraviolet systemから得られ、窒素により100ppmの酸素より低いレベルにまで不活性化した。
【0059】
(C部)
成形鋳型を分離し、約1インチすなわち2.54cmの外径、クリアなレンズ体および約0.44インチすなわち1.11cmの有色の瞳孔領域を有するレンズを取り出した。このレンズを紫外線照射にさらし、そして瞳孔領域はより濃い色になり、そして紫外線照射の中断後、瞳孔領域はより薄い色になった。
【0060】
本発明は装置および方法の特定の実施形態に関して記載されたが、種々の改変および応用が本開示に基づいてなされ得、そして添付の請求の範囲内であると解釈されることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトクロミック瞳孔領域を有するコンタクトレンズの製造方法であって、該方法は、以下:
a)第一粘度およびフォトクロミック量の少なくとも一つのフォトクロミック物質を含む一定体積の第一重合可能モノマー組成物を、瞳孔領域を有する凹部部材および凸部部材を含む成形鋳型の該凹部部材へ添加する工程であって、該体積は、少なくとも本質的に硬化されるコンタクトレンズにおいてフォトクロミック瞳孔領域を作るのに十分である、工程;
b)該第一重合可能モノマー組成物未満の少なくとも300センチポアズの粘度を有する一定体積の第二重合可能モノマー組成物を、a)の成形鋳型の該凹部部材へ添加する工程であって、該第一重合可能モノマー組成物および該第二重合可能モノマー組成物の合計体積は、少なくとも本質的に硬化されるコンタクトレンズを作るのに十分である、工程;
c)該凸部部材を、b)の成形鋳型の該凹部部材へ取り付ける工程;ならびに
d)c)の成形鋳型において、該重合可能組成物を少なくとも本質的に硬化する工程
を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
a)前記成形鋳型の前記凹部部材への添加前に;
b)前記成形鋳型の前記凹部部材への添加後に;もしくは
c)それらの組み合わせ
において、前記第一重合可能モノマー組成物を少なくとも部分的に硬化する工程をさらに包含する、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
a)前記成形鋳型の前記凹部部材への添加前に;
b)前記成形鋳型の前記凹部部材への添加後に;もしくは
c)それらの組み合わせ
において、前記第二重合可能モノマー組成物を少なくとも部分的に硬化する工程をさらに包含する、方法。
【請求項4】
前記第一重合可能モノマー組成物および前記第二重合可能モノマー組成物の各々が、さらに開始量の重合開始剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記重合開始剤が、熱開始剤、光開始剤、もしくはそれらの混合物から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも本質的に硬化されたコンタクトレンズを前記成形鋳型から取り出す工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、該方法は、
a)前記少なくとも本質的に硬化されたコンタクトレンズを、少なくとも部分的に水和させる工程;
b)a)のコンタクトレンズから、重合していないあらゆるモノマーもしくは不純物を、少なくとも部分的に抽出する工程;
c)前記コンタクトレンズ中の、a)およびb)の後に残った残存液体を、少なくとも部分的に等張塩溶液に置き換える工程;ならびに
d)c)のコンタクトレンズから微生物内容物を、少なくとも部分的に除去し、そしてパッケージングする工程;もしくは
e)c)のコンタクトレンズをパッケージングし、そして該微生物内容物を少なくとも部分的に除去する工程
をさらに包含する、方法。
【請求項8】
フォトクロミック瞳孔領域を有するコンタクトレンズの製造方法であって、該方法は、以下:
a)一定体積の第一重合可能モノマー組成物を、瞳孔領域を有する凹部部材および凸部部材を含む成形鋳型の凹部部材に添加する工程であって、該体積は、少なくとも本質的に硬化されたコンタクトレンズにおいて、瞳孔領域を作るのに十分である、工程;
b)該成形鋳型の該凹部部材において、フォトクロミック量の少なくとも一つのフォトクロミック物質を該第一重合可能モノマー組成物に添加しながら、フォトクロミック物質の添加の間に、該第一重合可能モノマー組成物を少なくとも部分的に硬化する工程;
c)一定体積の第二重合可能モノマー組成物を、b)の成形鋳型の該凹部部材に添加する工程であって、該第一重合可能モノマー組成物および該第二重合可能モノマー組成物の合計体積は、少なくとも本質的に硬化されたコンタクトレンズを作るのに十分である、工程;
d)該凸部部材をc)の成形鋳型の該凹部部材に取り付ける工程;
e)d)の成形鋳型において、該重合可能組成物を少なくとも本質的に硬化させる工程;ならびに
f)該成形鋳型から、該少なくとも本質的に硬化されたコンタクトレンズを取り出す工程
を包含する、方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、
a)前記成形鋳型の前記凹部部材への添加前に;
b)前記成形鋳型の前記凹部部材への添加後;もしくは
c)それらの組み合わせ
において、前記第一重合可能モノマー組成物を少なくとも部分的に硬化させる工程をさらに包含する、方法。
【請求項10】
フォトクロミック瞳孔領域を有するコンタクトレンズの製造方法であって、該方法は、以下:
a)フォトクロミック量の少なくとも一つのフォトクロミック物質を含む一定体積の第一重合可能モノマー組成物を、瞳孔領域を有する凹部部材および凸部部材を含む成形鋳型の該凹部部材に添加する工程であって、該体積は、少なくとも本質的に硬化されたコンタクトレンズの該瞳孔領域を形成するのに十分である、工程;
b)一定体積の第二重合可能モノマー組成物を、該第二重合可能モノマー組成物を該第一重合可能モノマー組成物と混合することを避ける分配手段を用い、該成形鋳型の該凹部部材に添加する工程であって、該第一重合可能組成物および該第二重合可能組成物の該成形鋳型に添加される合計体積は、少なくとも本質的に硬化されたコンタクトレンズを作るのに十分である、工程;
c)該凸部部材を、b)の成形鋳型の該凹部部材に取り付ける工程;
d)c)の成形鋳型において、該重合可能組成物を、少なくとも本質的に硬化する工程
を包含する、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
a)前記成形鋳型の前記凹部部材への添加前に;
b)前記成形鋳型の前記凹部部材への添加後;もしくは
c)それらの組み合わせ
において、前記第一重合可能モノマー組成物を少なくとも部分的に硬化させる工程をさらに包含する、方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、
a)前記成形鋳型の前記凹部部材への添加前に;
b)前記成形鋳型の前記凹部部材への添加後;もしくは
c)それらの組み合わせ
において、前記第二重合可能モノマー組成物を少なくとも部分的に硬化させる工程をさらに包含する、方法。
【請求項13】
前記第一重合可能モノマー組成物の粘度が、前記第二重合可能モノマー組成物の粘度よりも少なくとも300センチポアズ高い、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
フォトクロミック瞳孔領域を有するコンタクトレンズの製造方法であって、該方法は、以下:
a)第一重合可能モノマー組成物を、瞳孔領域を有する凹部部材および凸部部材を含む成形鋳型の該凹部部材に添加する工程;
b)フォトクロミック量の少なくとも一つのフォトクロミック物質を含む第二重合可能モノマー組成物を、a)の凹部部材に添加する工程であって、該第二重合可能モノマー組成物が、該第一重合可能モノマー組成物よりも少なくとも300センチポアズ高い粘度を有する、工程;
c)該凸部部材を、b)の成形鋳型の該凹部部材へ取り付ける工程;
d)c)の成形鋳型において、重合可能組成物を、少なくとも本質的に硬化する工程;ならびに
e)該少なくとも本質的に硬化されたコンタクトレンズを、該成形鋳型から取り出す工程
を包含する、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、
a)a)の成形鋳型の前記凹部部材への添加前に;
b)a)の成形鋳型の前記凹部部材への添加後に;もしくは
c)それらの組み合わせ
において、前期第二重合可能モノマー組成物を少なくとも部分的に硬化させる工程をさらに包含する、方法。
【請求項16】
コンタクトレンズであって、非フォトクロミックポリマーレンズ体およびフォトクロミック瞳孔領域を備え、該フォトクロミック瞳孔領域は、以下:
a)第一粘度およびフォトクロミック量の少なくとも一つのフォトクロミック物質を含む一定体積の第一重合可能モノマー組成物を、瞳孔領域を有する凹部部材および凸部部材を含む成形鋳型の凹部部材に添加する工程であって、該体積は、少なくとも本質的に硬化されたコンタクトレンズにおいてフォトクロミック瞳孔領域を作るのに十分である、工程;
b)該第一重合可能モノマー組成物よりも少なくとも300センチポアズ低い粘度を有する一定体積の第二重合可能モノマー組成物を、a)の成形鋳型の該凹部部材へ添加する工程であって、該第一重合可能モノマー組成物および該第二重合可能モノマー組成物の合計体積が、少なくとも本質的に硬化されたコンタクトレンズを作るのに十分である、工程;
c)該凸部部材を、b)の成形鋳型の該凹部部材に取り付ける工程;ならびに
d)c)の成形鋳型において、該重合可能組成物を少なくとも本質的に硬化する工程
により、該レンズ体内に配置されている、コンタクトレンズ。
【請求項17】
前記フォトクロミック瞳孔領域が直径5〜15ミリメートルである、請求項16に記載のコンタクトレンズ。
【請求項18】
コンタクトレンズであって、非フォトクロミックポリマーレンズ体およびフォトクロミック瞳孔領域を備え、該フォトクロミック瞳孔領域は、以下:
a)一定体積の第一重合可能モノマー組成物を、瞳孔領域を有する凹部部材および凸部部材を含む成形鋳型の凹部部材に添加する工程であって、該体積は、少なくとも本質的に硬化されたコンタクトレンズにおいて瞳孔領域を作るのに十分である、工程;
b)フォトクロミック量の少なくとも一つのフォトクロミック物質を、該成形鋳型の該凹部部材において該第一重合可能モノマー組成物に添加しながら、フォトクロミック物質添加の間、該第一重合可能モノマー組成物を少なくとも部分的に硬化する工程;
c)一定体積の第二重合可能モノマー組成物を、b)の成形鋳型の該凹部部材に添加する工程であって、該第一重合可能モノマー組成物および該第二重合可能モノマー組成物の合計体積は、少なくとも本質的に硬化されたコンタクトレンズを作るのに十分である、工程;
d)該凸部部材を、c)の成形鋳型の該凹部部材へ取り付ける工程;
e)d)の成形鋳型において、該重合可能組成物を少なくとも本質的に硬化する工程;ならびに
f)該少なくとも本質的に硬化されたコンタクトレンズを、該成形鋳型から取り出す工程
により、該レンズ体内に配置されている、コンタクトレンズ。
【請求項19】
コンタクトレンズであって、非フォトクロミックポリマーレンズ体およびフォトクロミック瞳孔領域を備え、該フォトクロミック瞳孔領域は、以下:
a)フォトクロミック量の少なくとも一つのフォトクロミック物質を含む一定体積の第一重合可能モノマー組成物を、瞳孔領域を有する凹部部材および凸部部材を含む成形鋳型の該凹部部材に添加する工程であって、該体積は、少なくとも本質的に硬化されたコンタクトレンズの瞳孔領域を作るのに十分である、工程;
b)一定体積の第二重合可能モノマー組成物を、該第二重合可能モノマー組成物を該第一重合可能モノマー組成物と混合することを避ける分配手段を用い、該成形鋳型の該凹部部材に添加する工程であって、該成形鋳型に添加された該第一重合可能組成物および該第二重合可能組成物の合計体積は、少なくとも本質的に硬化されたコンタクトレンズを作るのに十分である、工程;
c)該凸部部材を、b)の成形鋳型の該凹部部材へ取り付ける工程;
d)c)の成形鋳型において、該重合可能組成物を少なくとも本質的に硬化する工程
により、該レンズ体内に配置されている、コンタクトレンズ。
【請求項20】
コンタクトレンズであって、非フォトクロミックポリマーレンズ体およびフォトクロミック瞳孔領域を備え、該フォトクロミック瞳孔領域は、以下:
a)第一重合可能モノマー組成物を、瞳孔領域を有する凹部部材および凸部部材を含む成形鋳型の該凹部部材に添加する工程;
b)フォトクロミック量の少なくとも一つのフォトクロミック物質を含む第二重合可能モノマー組成物を、a)の凹部部材に添加する工程であって、該第二重合可能モノマー組成物が、該第一重合可能モノマー組成物よりも少なくとも300センチポアズ高い粘度を有する、工程;
c)該凸部部材を、b)の成形鋳型の該凹部部材へ取り付ける工程;
d)c)の成形鋳型において、重合可能組成物を少なくとも本質的に硬化する工程;ならびに
e)該少なくとも本質的に硬化されたレンズを、該成形鋳型から取り出す工程
により、該レンズ体内に配置されている、コンタクトレンズ。
【請求項21】
非フォトクロミックポリマーレンズ体および該レンズ体内に配置されたフォトクロミック瞳孔領域を含むコンタクトレンズであって、該フォトクロミック瞳孔領域が、該非フォトクロミックレンズ体よりも高い密度を有する、コンタクトレンズ。

【公表番号】特表2006−503338(P2006−503338A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−558695(P2004−558695)
【出願日】平成15年12月10日(2003.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2003/039403
【国際公開番号】WO2004/052631
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(504175051)トランジションズ オプティカル, インコーポレイテッド (65)
【Fターム(参考)】