説明

フォトクロミックポリマーコーティングを有する物品

【課題】フォトクロミック物品を提供すること。
【解決手段】基材、ならびにフォトクロミック量の少なくとも1つのフォトクロミック化合物、少なくとも1つのカーボネート基および少なくとも1つのヒドロキシル基を有する少なくとも1つの物質、ならびに少なくとも1つの不飽和基を有する少なくとも1つのモノイソシアネート含有物質の少なくとも部分的に硬化した重合可能組成物の少なくとも部分的なコーティンクを含むフォトクロミック物品が開示される。このフォトクロミック重合可能組成物でコーティングされた光学素子基材から調製されるフォトクロミック光学素子(例えば、眼用レンズ)もまた記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本出願は、2001年11月1日に出願された仮出願番号60/335,871に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
本発明は、フォトクロミック重合可能組成物の少なくとも部分的に硬化されたコーティングの少なくとも部分的なコーティングを有する基材を含むフォトクロミック物品に関する。フォトクロミック化合物は、重合前、または少なくとも部分的に硬化されたコーティングが形成された後に、この組成物に添加され得る。本発明はまた、フォトクロミック重合可能組成物の少なくとも部分的に硬化されたコーティングの少なくとも部分的なコーティングを有する、光学素子であるフォトクロミック物品に関する。
【0003】
フォトクロミズムは、紫外線を含む光放射に曝されたときの、フォトクロミック化合物、またはこのような化合物を含む物品の色の可逆的変化、およびこの紫外線放射の影響が中断されたときの、原色への逆転を含む現象である。紫外線を含む光放射源としては、例えば、日光および水銀灯の光が挙げられる。紫外線放射の中断は、例えば、フォトクロミック化合物またはフォトクロミック物品を暗闇で保存すること、または紫外線放射源を(例えば、濾過手段によって)取り除くことによって、達成され得る。
【0004】
種々の型のフォトクロミック化合物によって示される色の可逆的変化(すなわち、光の可視範囲(400〜700nm)における吸収スペクトルの変化)を担う一般的な機構が、記載され、そして分類されている。John C.Crano、「Chromogenic Materials(Photochromic)」、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,第4版、1993,pp.321−332を参照のこと。フォトクロミック化合物の最も一般的なクラス(例えば、インドリノスピロピランおよびインドリノスピロオキサジン)についての一般的な機構は、電子環開閉機構を含む。活性化する放射線に曝された場合、これらの化合物は、無色の閉環化合物から有色の開環種に変換する。対照的に、有色形態のフルギドフォトクロミック化合物は、無色開環形態の有色閉環形態への変換を含む電子環開閉機構によって生成される。
【0005】
前記の電子環開閉機構において、フォトクロミック化合物は、これらのフォトクロミック化合物が可逆的に変換することができる環境を必要とする。固形ポリマーマトリクスにおいて、フォトクロミックの活性化プロセス(すなわち、色の形成または暗化、および退色(すなわち、元の状態または無色の状態に戻ること))が起こる速度は、ポリマーマトリクス中の自由な容量(free volume)に依存すると考えられる。ポリマーマトリクスの自由な容量は、フォトクロミック化合物周囲のポリマー環境の鎖部分の可撓性(すなわち、マトリクスを構成する鎖部分の局所移動度または局所粘度)に依存している。Claus D.Eisenbach、「New Aspects of Photochromism in Bulk Polymers」、Photographic Science and Engineering,1979,pp.183−190を参照のこと。フォトクロミック系の多数の商業的な利用について、Claus D.Eisenbachによって報告された主要な障害のうちの1つは、固体ポリマーマトリクス中でのフォトクロミックの活性化および退色の速度の遅さである。
【0006】
近年、フォトクロミックプラスチック材料は、これらの材料がガラス製の眼用レンズに対して提供し得る重量的利点に一部起因して、かなりの注目の対象となっている。さらに、輸送機関(例えば、自動車および飛行機)についてのフォトクロミックの透明度はこのような透明度が与える潜在的な安全特徴に起因して、興味深い。
【0007】
ポリマーマトリクス中のフォトクロミック化合物の活性化および退色の速度の遅さに加えて、プラスチック材料と組み合わせたフォトクロミック有機化合物の広範な商業的使用に対するさらなる欠点は、紫外(UV)線に長期間繰返し曝された結果としての、フォトクロミック化合物が色の可逆的変化を示す能力の喪失である。この現象は、フォトクロミック有機化合物の不可逆的分解の結果であると考えられ、これは、疲労と呼ばれる。
【0008】
いくらかの進歩が、疲労耐性の増強およびフォトクロミック物質の性能の改善に向けてなされてきたが、疲労耐性における、さらなる改善(小さな増分の改善でさえも)および/またはフォトクロミックポリマー性物質の性能の改善が、依然として求められている。それゆえ、このような改善を得るための努力が続けられている。
【0009】
重合可能組成物(例えば、(メタ)アクリレート)と組み合わせたフォトクロミック化合物の使用は公知であるが、基材上の少なくとも部分的に硬化されたコーティングの少なくとも部分的なコーティングとしての、本発明の重合可能組成物のフォトクロミック化合物との使用は、開示されていない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の詳細な説明)
本発明は、以下を提供する。
(項目1)
フォトクロミック物品であって、該フォトクロミック物品は、基材、および少なくとも部分的に硬化した重合可能組成物の少なくとも部分的なコーティングを含み、該少なくとも部分的に硬化した重合可能組成物は、フォトクロミック量の少なくとも1つのフォトクロミック化合物、少なくとも1つのカーボネート基および少なくとも1つのヒドロキシル基を含む少なくとも1つの物質、ならびに少なくとも1つの不飽和基を有する少なくとも1つのモノイソシアネート含有物質を含み、該フォトクロミック物品が、促進風化フォトクロミックパーセント明所疲労試験において、フォトクロミック化合物のパーセント疲労の減少を提供するように適合される、フォトクロミック物品。
(項目2)
前記基材が、紙、ガラス、セラミック、木、石、テキスタイル、金属またはポリマー性有機物質である、項目1に記載のフォトクロミック物品。
(項目3)
前記ポリマー性有機物質が、熱硬化性有機ポリマー性物質または熱可塑性有機ポリマー性物質から選択される固体透明ポリマーである、項目2に記載のフォトクロミック物品。
(項目4)
前記基材が、光学素子である、項目1に記載のフォトクロミック物品。
(項目5)
前記光学素子がレンズである、項目4に記載のフォトクロミック物品。
(項目6)
前記重合可能組成物中の前記少なくとも1つのフォトクロミック化合物が、クロメン、スピロピラン、オキサジン、ジチゾネート水銀、フルギド、フルギミド、またはこれらの混合物から選択される、項目1に記載のフォトクロミック物品。
(項目7)
前記少なくとも1つの不飽和基が、アリル基、(メタ)アクリル基、ビニル基、またはこれらの混合物から選択される、項目1に記載のフォトクロミック物品。
(項目8)
前記少なくとも1つの不飽和基が(メタ)アクリル基である、項目7に記載のフォトクロミック物品。
(項目9)
前記少なくとも1つのカーボネート基および少なくとも1つのヒドロキシル基を含む少なくとも1つの物質が、ポリカーボネートポリオールである、項目1に記載のフォトクロミック物品。
(項目10)
前記重合可能組成物が、少なくとも1つの他の共重合可能モノマーをさらに含む、項目1に記載のフォトクロミック物品。
(項目11)
前記重合可能組成物中の前記少なくとも1つの他の共重合可能モノマーが、(メタ)アクリルモノマーである、項目10に記載のフォトクロミック物品。
(項目12)
フォトクロミック物品であって、該フォトクロミック物品は、基材および少なくとも部分的に硬化した重合可能組成物の少なくとも部分的なコーティングを含み、該少なくとも部分的に硬化した重合可能組成物は、以下:
a)少なくとも1つのカーボネート基を含むポリオールと、1つの反応性イソシアネート基および少なくとも1つの重合可能な二重結合を含むイソシアネートとの反応生成物;ならびに
b)フォトクロミック量の少なくとも1つのフォトクロミック化合物、
を含む、フォトクロミック物品。
(項目13)
前記少なくとも部分的に硬化した重合可能組成物の少なくとも部分的なコーティングが、(c)成分(a)と共重合可能な少なくとも1つの他のモノマー、をさらに含む、項目12に記載のフォトクロミック物品。
(項目14)
項目12に記載のフォトクロミック物品であって、ここで、前記重合可能組成物の反応生成物(a)が、以下の式:
【化1】


により表され、ここで、R’が、少なくとも1つのカーボネート基を含むポリオールの残基であり、Rが、水素またはメチルであり、Eが−NH−であり;Xが、直鎖または分枝鎖のアルキレン、直鎖または分枝鎖のポリオキシアルキレン、環状アルキレン、フェニレン、ポリオールの残基およびC〜Cアルキル置換フェニレンから選択される二価の連結基であり、そしてiが、2〜6の整数から選択される、フォトクロミック物品。
(項目15)
項目12に記載のフォトクロミック物品であって、ここで、(a)のイソシアネートが、以下:
(a)以下の式:
CH=C(R)−C(O)OX−N=C=O
により表されるイソシアネートであって、ここで、Rが、水素またはメチルであり、Xが、直鎖もしくは分枝鎖のアルキレン、直鎖もしくは分枝鎖のポリオキシアルキレン、環状アルキレン、フェニレン、ポリオールの残基またはC〜Cアルキル置換フェニレンから選択される二価の連結基である、イソシアネート;
(b)m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート;
(c)ビニルエーテル基を含む少なくとも1つのアクリル官能性モノマーとイソシアン酸との反応生成物;あるいは
(d)これらの混合物、
から選択される、フォトクロミック物品。
(項目16)
項目15に記載のフォトクロミック物品であって、ここで、前記イソシアネートが、イソシアナトエチルメタクリレート;m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート;1−(2−メタクリルオキシエトキシ)エチルイソシアネート;またはこれらの混合物から選択される、フォトクロミック物品。
(項目17)
項目12に記載のフォトクロミック物品であって、ここで、前記少なくとも1つのカーボネート基を含むポリオールは、以下の式:
【化2】


によって表されるポリカーボネートポリオールであり、
ここで、RおよびRは、各場合において、二価の直鎖アルキレン基または分枝鎖アルキレン基、環状アルキレン基または二価C〜C15芳香族基から各々独立して選択され、そしてaは、1〜20から選択される整数である、
フォトクロミック物品。
(項目18)
項目17に記載のフォトクロミック物品であって、ここで、前記ポリカーボネートポリオールは、少なくとも1つのビス(クロロホルメート)と少なくとも1つのポリオールとの反応生成物である、フォトクロミック物品。
(項目19)
項目18に記載のフォトクロミック物品であって、ここで、前記ビス(クロロホルメート)は、モノエチレングリコールビス(クロロホルメート)、ジエチレングリコールビス(クロロホルメート)、プロパンジオールビス(クロロホルメート)、ブタンジオールビス(クロロホルメート)、ヘキサンジオールビス(クロロホルメート)、ネオペンチルジオールビス(クロロホルメート)、ビスフェノールAビス(クロロホルメート)またはこれらの混合物である、フォトクロミック物品。
(項目20)
項目18に記載のフォトクロミック物品であって、ここで、前記ポリオールは、ビスフェノールA;トリメチロールエタン;トリメチロールプロパン;ジ−(トリメチロールプロパン)ジメチロールプロピオン酸;エチレングリコール;プロピレングリコール;1,3−プロパンジオール;2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール;1,2−ブタンジオール;1,4−ブタンジオール;1,3−ブタンジオール;1,5−ペンタンジオール;2,4−ペンタンジオール;2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール;2−メチル−1,3−ペンタンジオール;2−メチル−1,5−ペンタンジオール;3−メチル−1,5−ペンタンジオール;1,6−ヘキサンジオール;2,5−ヘキサンジオール;2−エチル−1,3−ヘキサンジオール;1,4−シクロヘキサンジオール;1,7−ヘプタンジオール;2,4−ヘプタンジオール;1,8−オクタンジオール;1,9−ノナンジオール;1,10−デカンジオール;2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオネート;ジエチレングリコール;トリエチレングリコール;テトラエチレングリコール;ポリエチレングリコール;ジプロピレングリコール;トリプロピレングリコール;ポリプロピレングリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール;1,2−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン;1,2−ビス(ヒドロキシエチル)シクロヘキサン;1モルの2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわちビスフェノール−A)と2〜10モルのエチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはこれらの混合物とのアルコキシル化生成物;ポリ(オキシテトラメチレン)ジオールあるいはこれらの混合物である、フォトクロミック物品。
(項目21)
項目13に記載のフォトクロミック物品であって、ここで、(a)は、前記組成物中の非フォトクロミックモノマーの全重量に基づいて、少なくとも5重量%〜95重量%未満で存在する、フォトクロミック物品。
(項目22)
項目12に記載のフォトクロミック物品であって、ここで、反応生成物(a)は、2000より大きな数平均分子量を有する、モノマーである、フォトクロミック物品。
(項目23)
項目13に記載のフォトクロミック物品であって、ここで、少なくとも1つの他の共重合可能モノマー(c)が、以下:
(a)以下の式:
【化3】


によって表されるラジカル重合可能モノマーであって、
ここで、Rは、ポリオールの多価残基であり、Rは、水素またはメチルであり、iは、2〜6の整数から選択され、そして、Xは、直鎖アルキレンもしくは分枝鎖アルキレン、直鎖ポリオキシアルキレンもしくは分枝鎖ポリオキシアルキレン、環状アルキレン、フェニレン、ポリオールの残基またはC〜Cアルキル置換フェニレンから選択される二価の連結基である、ラジカル重合可能モノマー;
(b)以下の式:
【化4】


によって表されるラジカル重合可能モノマーであって、
ここでmおよびnは、0〜6の整数から各々独立して選択され、mとnとの和は、0〜6であり、RおよびR10は、各場合において、水素またはメチルから各々独立して選択され、R11およびR12は、水素またはC〜Cアルキルから、各々について独立して選択され、そしてBは、直鎖アルキレンもしくは分枝鎖アルキレン、フェニレン、C〜Cアルキル置換フェニレン、または以下の式:
【化5】


によって表される基から選択される二価の連結基であり、
ここで、R15およびR16は、各場合において、C〜Cアルキル、塩素または臭素から各々独立して選択され、pおよびqは、0〜4の整数から各々独立して選択され、
【化6】


は、二価ベンゼン基または二価シクロヘキサン基を表わし、
【化7】


が、二価ベンゼン基である場合、Dは、−O−、−S−、−S(O)−、−C(O)−、−CH−、−CH=CH−、−C(CH−、−C(CH)(C)−または
【化8】


であり、そして
【化9】


が、二価シクロヘキサン基である場合、Dは、−O−、−S−、−CH−、または−C(CH−である、ラジカル重合可能モノマー;
(c)以下の式:
【化10】


によって表されるラジカル重合可能モノマーであって、
ここで、oおよびuは、正の数から各々独立して選択され、oとuとの和は、7〜70であり、R、R10、R11、R12およびBは、前記に定義されるものと同じである、ラジカル重合可能モノマー;
(d)以下の式:
【化11】


によって表されるラジカル重合可能モノマーであって、
ここでR、RおよびR11は、前記に定義されるものと同じであり、dは、0〜20の整数から選択され、そしてjは、3〜6の数から選択される、ラジカル重合可能モノマー;
(e)ポリカーボネートポリオールポリクロロホルメートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応生成物;
(f)ポリカーボネートポリオールと塩化(メタ)アクリロイルとの反応生成物;
(g)モノエチレン性不飽和である、ラジカル重合可能モノマー;
(h)少なくとも2つのアリル基を有するアリル官能性モノマーである、ラジカル重合可能モノマーであって、但し、該アリル官能性モノマーは、モノマーの全重量に基づいて、5重量%を超過しないレベルで使用される、ラジカル重合可能モノマー;あるいは、
(i)これらの混合物、
から選択される、フォトクロミック物品。
(項目24)
項目23に記載のフォトクロミック物品であって、ここで、以下:
(a)Rは、脂肪族ポリオール、脂環式ポリオール、芳香族ポリオールまたは少なくとも2つのヒドロキシ基を含むエステル基を含むポリオールから選択されるポリオールの多価残基であり、iは、2であり、Xは、直鎖アルキレンまたは分枝鎖アルキレンであり;
(b)RおよびR10は、各々メチルであり、R11およびR12は、各々水素であり、p、q、rおよびsは、各々0であり、Dは、−C(CH−であり、そしてmとnとの和は、0〜4であり;
(c)oとuとの和は、10〜30であり、
(d)Rは、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールの残基であり、dは、3〜15であり;
(e)ポリカーボネートポリオールとポリクロロホルメートとの反応混合物;
(f)ポリカーボネートポリオールと塩化メタクリロイルとの反応混合物;
(g)前記モノエチレン性不飽和のモノマーは、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、ビニル芳香族モノマー、ビニルハライド、ビリニデンハライド、ビニルエステル、(メタ)アクリル酸またはこれらの混合物であり;
(h)前記アリル官能性モノマーが、以下:
(i)以下の式:
17−[−O−C(O)O−R18
によって表されるアリル官能基性モノマーであって、
ここでR17は、1,2−エタンジオールジエチレングリコールまたは1,2−プロパンジオールから選択されるジオールの二価残基であり、そしてR18は、アリル基である、アリル官能基性モノマー
(ii)以下の式:
【化12】


によって表されるアリル官能性モノマーであって、
ここでR15およびR16は、各場合において、C〜Cアルキル、塩素または臭素から各々独立して選択され、pおよびqは、0〜4の整数から各々独立して選択され、そして−A−は、−O−、−S−、−S(O)、−C(O)−、−CH−、−CH=CH−、−C(CH−、−C(CH)(C)−または
【化13】


から選択される二価連結基であり、そしてR18は、アリル基である、アリル官能基性モノマー
(iii)以下の式:
【化14】


によって表されるアリル官能基性モノマーであって、ここでR18は、アリル基である、アリル官能基性モノマー;あるいは
(iv)(i)、(ii)および(iii)の少なくとも2つの混合物、
である、フォトクロミック物品。
(項目25)
項目23に記載のフォトクロミック物品であって、
(a)ここで、Rは、以下の式:
−(Y−(C(O)(−CR−CHR−O)−H)
によって表されるポリオールの残基であり、
ここで:Yは、−O−または−NR−であり、そしてRは、水素またはC〜C12アルキルであり;Rは、開始剤に由来する有機ラジカルであり、R、RおよびRは、各場合において、水素、C〜C12アルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cアルコキシ、ベンジルまたはフェニルから各々独立して選択され、但し、R、RおよびRの全数の少なくともh+2は、水素であり、文字hは、1〜6の整数から選択され;tは、1〜100の整数から選択され;そしてyは、2〜6に等しい整数から選択される、
フォトクロミック物品。
(項目26)
項目23に記載のフォトクロミック物品であって、
(a)ここで、Rは、少なくとも1つのジオールと少なくとも1つのラクトンとの反応生成物の残基であり;該ジオールは、2〜20個の炭素原子を有する直鎖脂肪族ジオールまたは分枝鎖脂肪族ジオール、ポリ(C〜C)アルキレングリコール、環式環に5〜8個の炭素原子を有する脂環式ジオール、単環式芳香族ジオール、ビスフェノール、水素化ビスフェノール、あるいはこれらの混合物であり;該ラクトンは、β−プロピオラクトン;γ−ブチロラクトン;β−ブチロラクトン;δ−バレロラクトン;α−メチル−γ−ブチロラクトン;β−メチル−γ−ブチロラクトン;γ−バレロラクトン;ε−カプロラクトン;モノメチル−ε−カプロラクトン;モノエチル−ε−カプロラクトン;モノプロピル−ε−カプロラクトン;モノドデシル−ε−カプロラクトン;メトキシ−ε−カプロラクトン;エトキシ−ε−カプロラクトン;シクロヘキシル−ε−カプロラクトン;フェニル−ε−カプロラクトン;ベンジル−ε−カプロラクトン;ζ−エナトラクトン;η−カプリラクトンまたはこれらの混合物である、
フォトクロミック物品。
(項目27)
前記基材が、紙、ガラス、セラミック、木、石、テキスタイル、金属またはポリマー性有機物質である、項目12に記載のフォトクロミック物品。
(項目28)
前記ポリマー性有機物質が、熱硬化性有機ポリマー性物質または熱可塑性有機ポリマー性物質から選択される固体透明ポリマーである、項目27に記載のフォトクロミック物品。
(項目29)
前記基材が、光学素子である、項目28に記載のフォトクロミック物品。
(項目30)
光学素子がレンズである、項目29に記載のフォトクロミック物品。
(項目31)
前記基材と前記少なくとも部分的に硬化した重合可能組成物の少なくとも部分的なコーティングとの間に挿入されたプライマーをさらに含む、項目12に記載のフォトクロミック物品。
(項目32)
前記少なくとも部分的に硬化した重合可能組成物の少なくとも部分的なコーティングの表面に塗布された保護コーティングをさらに含む、項目31に記載のフォトクロミック物品。
【0011】
本発明の1つの非限定的な実施形態において、以下を含む重合可能組成物の少なくとも部分的に硬化されたコーティングの少なくとも部分的なコーティングを有する基材を含むフォトクロミック物品が提供される:フォトクロミック量の少なくとも1種のフォトクロミック化合物、少なくとも1つのカーボネート基および少なくとも1つのヒドロキシル基を有する少なくとも1種の物質、ならびに少なくとも1つの不飽和基を有する少なくとも1種のモノイソシアネート含有物質。この組成物は、必要に応じて、他の共重合可能モノマーを含み得る。
【0012】
さらなる非限定的な実施形態において、本発明のフォトクロミック物品は、Accelerated Weathering Photochromic Percent Photopic Fatigue Test(AWPPPF試験)においてフォトクロミック化合物の低下したパーセント明所疲労(percent photopic fatigue)を提供するように適合される。このAWPPPF試験は、本明細書中で実施例15に記載されている。この試験において、本発明の重合可能なフォトクロミック組成物および他の重合可能な組成物でコーティングされたレンズは、メタクリル酸コーティング組成物の成分として、フォトクロミック性能およびフォトクロミック疲労について試験される。
【0013】
本発明の別の非限定的な実施形態において、以下を含む重合可能組成物の少なくとも部分的に硬化されたコーティングの少なくとも部分的なコーティングを有する基材を含むフォトクロミック物品が提供される:成分(a)少なくとも1つのカーボネート基を含むポリオールと、1つの反応性イソシアネート基および少なくとも1個の重合可能な二重結合を含むイソシアネートとの反応生成物;ならびに必要に応じて、成分(b)成分(a)と共重合可能な、少なくとも1種の他のモノマー;および成分(c)フォトクロミック量の少なくとも1種のフォトクロミック化合物。
【0014】
1つの非限定的な実施形態において、本明細書中で実施例15において記載されている、AWPPPF試験において記載されるように、本発明のフォトクロミック物品が、フォトクロミック化合物のパーセント疲労の低下を示すことが、予想外に見出された。本発明のフォトクロミック物品は、ウレタン基を有さないポリカーボネートベースのジメタクリル酸モノマーを含むメタクリルコーティングでコーティングされたフォトクロミック物品と比較して、フォトクロミック化合物のより低量のパーセント疲労を、上で言及したAWPPPF試験において示すこともまた、見出された。
【0015】
本発明のフォトクロミック物品を作製するために使用されるフォトクロミック重合可能組成物の種々の非限定的な実施形態において、任意の成分(b)の正確な性質は、重合可能なフォトクロミック組成物と共重合可能であること以外は、重要ではない。任意の共重合可能モノマーが使用され得る。
【0016】
1つの非限定的な実施形態において、成分(b)の共重合可能モノマーは、以下より選択され得る:
(a)以下の式:
【0017】
【化15】

によって表されるラジカル重合可能モノマーであって、式中、Rは、ポリオールの多価残基であり、Rは、水素またはメチルであり、iは、2〜6の整数から選択され、そしてXは、直鎖または分枝鎖のアルキレン、直鎖または分枝鎖のポリオキシアルキレン、環状アルキレン、フェニレン、ポリオールの残基またはC〜Cアルキル置換フェニレンから選択される二価の連結基である、モノマー;
(b)以下の式:
【0018】
【化16】

によって表されるラジカル重合可能なモノマーであって、式中、mおよびnは、各々独立して、0〜6の整数から選択され、mおよびnの合計は、0〜6であり、RおよびR10は、各々独立して、水素またはメチルから選択され、R11およびR12は、各々独立して、各存在について、水素またはC〜Cアルキルから選択され、そしてBは、直鎖または分枝鎖のアルキレン、フェニレン、C〜Cアルキル置換フェニレン、または以下の式:
【0019】
【化17】

によって表される基から選択される二価の連結基であり、式中、R15およびR16は、各々独立して、各存在について、C〜Cアルキル、塩素または臭素から選択され、pおよびqは、各々独立して、0〜4の整数から選択され、
【0020】
【化18】

は、二価のベンゼン基または二価のシクロヘキサン基を表し、そして
【0021】
【化19】

が二価のベンゼン基である場合、Dは、−O−、−S−、−S(O)−、−C(O)−、−CH−、−CH=CH−、−C(CH−、−C(CH)(C)−、または
【0022】
【化20】

であり、そして、
【0023】
【化21】

が二価のシクロヘキサン基である場合、Dは、−O−、−S−、−CH−、または−C(CH−である、モノマー;
(c)以下の式:
【0024】
【化22】

によって表されるラジカル重合可能なモノマーであって、式中、oおよびuは、各々独立して、正の数から選択され、oおよびuの合計は、7〜70であり、R、R10、R11、R12およびBは、本明細書中で以前に規定したとおりである、モノマー;
(d)以下の式:
【0025】
【化23】

によって表されるラジカル重合可能なモノマーであって、式中、R、RおよびR11は、本明細書中で以前に規定したとおりであり、dは、0〜20の数から選択され、そしてjは、3〜6の数から選択される、モノマー;
(e)ポリカーボネートポリオールポリクロロホルメートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応生成物;
(f)ポリカーボネートポリオールと(メタ)アクリロイルクロリドとの反応生成物;
(g)モノエチレン性不飽和である、ラジカル重合可能なモノマー;
(h)少なくとも2個のアリル基を有するアリル官能性モノマーであるラジカル重合可能なモノマーであるが、但しこのアリル官能性モノマーは、このモノマーの総重量に基づいて、5重量%を超えないレベルで使用される、モノマー;あるいは、
(i)それらの混合物。
【0026】
種々の非限定的な実施形態において、フォトクロミック化合物は、重合可能組成物の重合前に、少なくとも部分的に硬化されたコーティングに添加され得るか、または本発明のフォトクロミック物品を作製するためのこのような方法の組み合わせによって添加され得る。
【0027】
本明細書中および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、1つの対象に対して明白かつ明快に限定されない限り、複数の対象を含むことに留意のこと。
【0028】
本明細書の目的のために、他に指示がなければ、本明細書および特許請求の範囲において使用される構成成分の量、反応条件などを表す全ての数は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されることが理解されるべきである。従って、反対の指示がなければ、以下の明細書および添付の特許請求の範囲で示される数的パラメーターは、本発明によって獲得されるべく探求される所望の特性に依存して変動し得る近似値である。少なくとも、そして特許請求の範囲への等価物の原則の適用を制限する試みとしてではなく、各々の数的パラメーターは、少なくとも、報告されている有意な数字の数を考慮し、かつ一般的な概算(rounding)技術を適用することによって、解釈されるべきである。
【0029】
本発明の広範な範囲を示す数的範囲および数的パラメーターが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例に記載される数値は、可能な限り正確に報告されている。しかし、任意の数値は、それぞれの試験測定値において見出される標準偏差から必然的に得られる特定の誤差を固有に含む。
【0030】
句「少なくとも部分的なコーティング」とは、基材の一部から、全ての表面までを覆うコーティングの量を意味する。句「少なくとも部分的に硬化された重合物」とは、硬化可能な、または架橋可能な成分が、少なくとも部分的に硬化され、架橋されそして/または反応を起こさせられるような、重合可能組成物をいう。本発明の特定の非限定的な実施形態において、反応した成分の程度は、広範に(例えば、全てのありうる硬化可能、架橋可能および/または反応可能な成分の5%〜100%)で変動し得る。
【0031】
モノマー、重合物およびフォトクロミック化合物を調製するための方法を記載する、本明細書中で列番号および行番号または特定の引用によって列挙される、関連する出願、特許および論文の開示は、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【0032】
用語「ポリオール」は、本明細書中で、2個以上のヒドロキシル基を有する多価アルコールとして定義されるが、他に指示がなければ、実質的にカーボネート基を有さない。ポリオールの残基またはポリオールから誘導されるラジカルは、ヒドロキシル基のポリオールからの除去の後に残存しているものである。用語「アルキレン」は、直鎖(linear chain)(すなわち、直鎖(straight chain))、または分枝鎖の後にくる場合、2〜20個の炭素原子を有する炭化水素基として本明細書中で定義される。用語「オキシアルキレン」は、2〜4個の炭素原子および1個の酸素原子を有する炭化水素基として本明細書中で定義される。「オキシアルキレン基」に関して、式中に含まれそして記載されるオキシアルキレンの数は、例えば、0〜6の整数または実数であるとして本明細書中で定義され、部分数(例えば、1.1または5.9)は、特定化された範囲内に含まれる。用語「環状アルキレン」は、3〜7個の炭素原子を有する環状炭化水素基として、本明細書中で定義される。用語「メタ(アクリロイル)」は、アクリロイル基、メタクリロイル基、またはアクリロイル基とメタクリロイル基との組み合わせとして、定義される。用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレート、またはアクリレートとメタクリレートとの組み合わせとして、本明細書中で定義される。用語「(メタ)アクリル」は、アクリル基、メタクリル基、またはアクリル基とメタクリル基との組み合わせとして、本明細書中で定義される。
【0033】
成分(a)および成分(b)の記載において、同じ文字および同じ用語は、他に述べられていなければ、同じ意味を有する。
【0034】
本発明のフォトクロミック物品は、基材および少なくとも部分的に硬化された重合可能なフォトクロミック組成物の少なくとも部分的なコーティングを備える。1つの非限定的な実施形態において、重合可能なフォトクロミック組成物は、以下の反応生成物である:少なくとも1つのカーボネート基および少なくとも1つのヒドロキシル基を含む少なくとも1種の物質(例えば、カーボネート基を含む)、または少なくとも1個のカーボネート基および少なくとも1個のヒドロキシル基を含む(メタ)アクリル酸モノマー物質;少なくとも1個の不飽和基を有する少なくとも1つのモノイソシアネート含有物質(例えば、ビニルエーテル基を含む(メタ)アクリル酸モノマー物質とイソシアン酸との反応生成物);ならびに、フォトクロミック量の少なくとも1つのフォトクロミック化合物。
【0035】
別の非限定的な実施形態において、成分(a)(1つの反応性イソシアネート基および少なくとも1つの重合可能な二重結合を含むイソシアネートと、少なくとも1個のカーボネート基を含むポリオールとの反応生成物)は、以下の式:
【0036】
【化24】

によって表され得、式中、R’は、少なくとも1つのカーボネート基を含むポリオールの残基であり、Rは、水素またはメチルであり、Eは、−NH−であり;Xは、直鎖または分枝鎖のアルキレン、直鎖または分枝鎖のポリオキシアルキレン、環状アルキレン、フェニレン、ポリオールの残基またはC〜Cアルキル置換フェニレンから選択される二価の連結基であり、そしてiは、2〜6の整数である。別の非限定的な実施形態において、R’は、少なくとも2個のカーボネート基を含むポリオールの残基である。
【0037】
1つの非限定的な実施形態において、成分(a)のポリカーボネートポリオールは、以下の式:
【0038】
【化25】

によって表され得、式中、RおよびRは、同じであっても異なっていてもよく、そして各々独立して、各存在について、二価の直鎖または分枝鎖のアルキレン基、環状アルキレン基または二価のC〜C15芳香族基(例えば、2,2−ジフェニレンプロパン)から選択され、そしてaは、1〜20の整数である。
【0039】
別の非限定的な実施形態において、上で言及した式のポリカーボネートポリオールは、米国特許第5,266,551号に記載されるように、少なくとも1個のビス(クロロホルメート)と少なくとも1個のポリオール(例えば、ジオール)との反応によって形成され得る。これらの成分のうちの1つは、得られるポリカーボネートポリオールの分子量を制限し、そして制御するために、過剰に使用され得る。ポリカーボネート調製スキームの以下の非限定的な例示において示されるように、ジオールは過剰であり、末端基となる。
【0040】
(ポリカーボネート調製スキーム)
【0041】
【化26】

前記の調製スキームにおいて使用され得るビス(クロロホルメート)の例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:モノエチレングリコールビス(クロロホルメート)、ジエチレングリコールビス(クロロホルメート)、プロパンジオールビス(クロロホルメート)、ブタンジオールビス(クロロホルメート)、ヘキサンジオールビス(クロロホルメート)、ネオペンチルジオールビス(クロロホルメート)、ビスフェノールAビス(クロロホルメート)またはそれらの混合物。
【0042】
前記の調製スキームにおいて使用され得るポリオールの例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:ビスフェノールA;トリメチロールエタン;トリメチロールプロパン;ジ(トリメチロールプロパン)ジメチロールプロピオン酸;エチレングリコール;プロピレングリコール;1,3−プロパンジオール;2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール;1,2−ブタンジオール;1,4−ブタンジオール;1,3−ブタンジオール;1,5−ペンタンジオール;2,4−ペンタンジオール;2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール;2−メチル−1,3−ペンタンジオール;2−メチル−1,5−ペンタンジオール;3−メチル−1,5−ペンタンジオール;1,6−ヘキサンジオール;2,5−ヘキサンジオール;2−エチル−1,3−ヘキサンジオール;1,4−シクロヘキサンジオール;1,7−ヘプタンジオール;2,4−ヘプタンジオール;1,8−オクタンジオール;1,9−ノナンジオール;1,10−デカンジオール;2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオネート;ジエチレングリコール;トリエチレングリコール;テトラエチレングリコール;ポリエチレングリコール;ジプロピレングリコール;トリプロピレングリコール;ポリプロピレングリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール;1,2−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン;1,2−ビス(ヒドロキシエチル)シクロヘキサン;1molの2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわち、ビスフェノール−A)と、2mol〜10molのエチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはこれらの混合物とのアルコキシル化生成物;ポリ(オキシテトラメチレン)ジオール、あるいはそれらの混合物。
【0043】
いくつかの非限定的な実施形態において、上記物質は、ポリカーボネートポリオールの種々の組成物、鎖長および末端基を形成するように組み合わされ得る。例えば、ポリオールは、末端脂肪族ヒドロキシル基(例えば、ジエチレングリコール基)、フェノール末端基(例えば、ビスフェノールA基)、またはこのような末端ヒドロキシル基の混合物を有し得る。
【0044】
種々の非限定的な実施形態において、米国特許第4,131,731号、同第4,160,853号、同第4,891,421号、および同第5,143,997号に記載されるように、ポリカーボネートポリオールならびに少なくとも1つのカーボネート基および少なくとも1つのヒドロキシル基を含む物質が、ジアルキル、ジアリールまたはアルキレンカーボネートとポリオールとのエステル交換反応により調製され得る。そのようなカーボネート基およびヒドロキシル基含有物質の他の例としては、以下:米国特許第4,533,729号に記載されるようなポリオールとホスゲンとの反応により調製される生成物;および米国特許第5,527,879号に記載されるようなポリカーボネートポリオールと酸無水物またはジカルボン酸との反応により調製される生成物が挙げられる。市販されている生成物の例としては、EniChem Synthesis Milanoより入手可能なポリカーボネートジオールのRAVECARB(登録商標)102−108シリーズおよびStahl USAより入手可能なPC 1122が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
1つの非限定的な実施形態において、重合可能なフォトクロミック組成物を生成するために使用されるモノイソシアネートは、一級イソシアネート基、二級イソシアネート基、または三級イソシアネート基(これはまた、反応性イソシアネート基とも呼ばれる)およびアリル、(メタ)アクリル、ビニルまたはこれらの混合物から選択される少なくとも1つの不飽和基を有する。別の非限定的な実施形態において、不飽和基は、(メタ)アクリル基から選択される重合可能な二重結合を有する基である。
【0046】
一連の非限定的な実施形態において、成分(a)のイソシアネートならびに少なくとも1つの不飽和基を含むモノイソシアネート物質は:
(1)以下の式で表されるイソシアネートであって:
CH=C(R)−C(O)OX−N=C=O
ここで、RおよびXは、前述のものと同じである、イソシアネート;
(2)m−イソプロペニル−α、α−ジメチルベンジルイソシアネート;
(3)ビニルエステル基を含む少なくとも1つのアクリル官能性モノマーとイソシアン酸との反応生成物;または
(4)これらの混合物、であり得る。
【0047】
1つの非限定的な実施形態において、成分(a)を形成するための反応物として用いられ得るイソシアネートは、1つの反応性イソシアネート基および少なくとも1つの重合可能な二重結合を有する物質である。そのような化合物の非限定的な例は、イソシアナトエチルメタクリレートである。非限定的な例示として、そのような化合物を調製するための方法は、Thomas,Mary R.「Isocyanatoethyl Methacrylate:A Heterofunctional Monomer for Polyurethane and Vinyl Polymer Systems」、 Organic Coatings and Polymer Science Proceedings、Volume 46、pp.506−513、1982に開示されている。m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートを調製するための非限定的な方法は、米国特許第4,377,530号;同第4,379,767号;および同第4,439,616号に開示されている。さらなる非限定的な例示としては、ビニルエーテル基を含むアクリル官能性モノマーおよびイソシアン酸(例えば、1−(2−メタクリルオキシエトキシ)エチルイソシアネート)の反応生成物の調製のための方法は、Hoover,F.W.ら、「Chemistry of Isocyanic Acid.II.Reaction with α,β−Unsaturated Ethers」、Journal of Organic Chemistry、Volume 28、pp.2082−2085、1963により開示されている。
【0048】
さらなる非限定的な実施形態において、本明細書に定義されるような構成要素(a)のイソシアネートは、「遊離」、「ブロックされた」または部分的にブロックされたイソシアネート基を有する「改変」または「非改変」イソシアネートを含み得る。このイソシアネート含有化合物は、脂肪族、芳香族、脂環式、複素環式イソシアネートまたはこれらの混合物から選択される得る。用語「改変された」は、前記のイソシアネート含有化合物が、公知の様式において、ビウレット、尿素、カルボジイミド、ウレタンまたはイソシアヌレート基を導入ように変化されることを意味することが本明細書中に定義されている。イソシアネートを改変するための他の方法は、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第5版、1989、A14巻、611−625ページおよび米国特許第4,442,145号の第2欄の63行から第3欄の31行に記載される。
【0049】
遊離イソシアネート基は、安定でない(すなわち、イソシアネート基は、水または反応性水素原子を含む化合物と反応する)。安定かつ保存可能なイソシアネートおよび/またはイソシアネート含有化合物を提供するために、NCO基は、イソシアネート基を、室温で、反応性水素化合物に対して不活化する特定の選択された有機化合物がでブロックされ得る。高温(例えば、90℃と200℃との間)に熱せられた場合、ブロックされたイソシアネートは、ブロッキング剤を放出し、元のブロックされていないかまたは遊離のイソシアネートと同様の様式で、反応する。
【0050】
1つの非限定的な実施形態において、イソシアネートは、米国特許第3,984,299号、第1欄の1〜68行、第2欄および第3欄の1〜15行に記載のように完全にブロックされ得るか、または部分的にブロックされ得、そして米国特許第3,947,338第2欄の65〜第4欄の30行に記載のように、ポリマー骨格と反応し得る。本明細書に使用される場合、NCO:OH比におけるNCOは、ブロッキング剤の放出後の遊離イソシアネート含有化合物、およびブロックされたかまたは部分的にブロックされたイソシアネート含有化合物の遊離または反応性イソシアネート、を表す。いくつかの場合において、ブロッキング剤の全てを取り除くことは、可能ではない。そのような状況において、より多くのブロックされたイソシアネート含有化合物が、遊離NCOの所望のレベルを達成するために使用される。
【0051】
別の非限定的な実施形態において、イソシアネート含有化合物は、脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート、芳香族イソシアネート、部分的にブロックされた脂肪族イソシアネート、部分的にブロックされた脂環式イソシアネート、部分的にブロックされた芳香族イソシアネートまたはそれらの混合物の化合物の改変群あるいは非改変群から選択される。別の非限定的な実施形態において、イソシアネートは、脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート、芳香族イソシアネートまたはそれらの混合物の改変群から選択される。さらなる非限定的な実施形態において、イソシアネート成分は、非改変脂肪族イソシアネートである。
【0052】
一般に、イソシアネートをブロックするために使用される化合物は、反応性水素原子を有する特定の有機化合物である。1つの非限定的な実施形態において、例としては、揮発性アルコール、アミン、酸性エステル、εカプロラクタム、トリアゾール、ピラゾールおよびケトキシム化合物が挙げられる。別の非限定的な実施形態において、ブロッキング化合物は、メタノール、t−ブタノール、フェノール、クレゾール、ノニルフェノール、ジイソプロピルアミン、マロン酸ジエチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、εカプロラクタム、3−アミノトリアゾール、1,2,4−トリアゾール、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、アセトンオキシム、メチルアミルケトキシム、メチルエチルケトキシムまたはそれらの混合物からなる群から選択され得る。さらなる非限定的な実施形態において、ブロッキング化合物は、メタノール、ジイソプロピルアミン、マロン酸ジエチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、1,2,4−トリアゾール、メチルエチルケトキシム、アセトンオキシムまたはそれらの混合物から選択される。なおさらなる非限定的な実施形態において、ブロッキング化合物は、メタノール、ジイソプロピルアミン、メチルエチルケトキシム、1,2,4−トリアゾールまたはそれらの混合物である。
【0053】
1つの非限定的な実施形態において、少なくとも1つのカーボネート群および少なくとも1つのヒドロキシルを含む群を含む物質に対する少なくとも1つの非飽和基を有するモノイソシアネート含有物質についてのNCO:OH比は、1:1〜1:7の範囲、例えば、1:2〜1:6または1:2〜1:5の範囲であり得る。NCO:OH比は、記載した範囲(例えば、1:1.5〜1:6.9の範囲)を含めたそれらの値の任意の組み合わせの間の範囲であり得る。
【0054】
別の非限定的な実施形態において、少なくとも1つのカーボネート群および少なくとも1つのヒドロキシル基を含む少なくとも1つの物質と、少なくとも1つの非飽和基を有する少なくとも1つのモノイソシアネート含有物質(例えば、化合物(a))との反応性生物の分子量は、広範に変化し得る。それは、反応生成物を形成するために使用される最少数の要素の分子量(1モルあたり約200グラム)から200,000のポリスチレン標準物質に基づく平均分子量を有する大きなポリマー種までの範囲であり得る。例えば、分子量は、ポリエチレングリコール標準物質(500〜17,500)に基づく数平均分子量範囲、またはポリスチレン標準物質(1500〜100,000)に基づく数平均分子量の範囲にまたがり得る。反応性生物の分子量は、それらの値の任意の組み合わせの間(例えば、1モルあたり250グラムの分子量〜150,000の数平均分子量まで)の範囲であり得る。1つの意図された非限定的な実施形態において、成分(a)の分子量は、2,000を越えるポリスチレン標準物質に基づく数平均分子量である。
【0055】
一連の非限定的な実施形態にいて、成分(a)は、広範な量(例えば、重合可能な非フォトクロミック成分の全重量に基づいて、5重量%〜100重量%)で、フォトクロミック重合可能組成物中に存在し得る。成分(a)は、少なくとも5重量%の量で(例えば、少なくとも20重量%または少なくとも30重量%の量で)、本発明の重合可能組成物中に存在し得、この重量%は、重合可能な非フォトクロミック成分の全重量に基づく。成分(a)は、95重量%未満の量で(例えば、75重量%未満または50重量%未満の量で)、重合可能組成物中に存在し得、この重量%は、重合可能な非フォトクロミック成分の全重量に基づく。本発明の重合可能組成物中に存在する成分(a)モノマーの量は、記載された値を含む上端値と下端値との間の任意の組み合わせの間(例えば、6〜99重量%)の範囲であり得る。
【0056】
別の一連の非限定的な実施形態において、任意の成分(b)の共重合可能モノマーは、広範な量で、フォトクロミック重合可能組成物中に存在し得る。共重合可能モノマーは、少なくとも5重量%の量(例えば、少なくとも25重量%の量または少なくとも50重量%の量)重合可能組成物中に存在し得、この重量%は、重合可能な非フォトクロミック成分の全重量に基づく。共重合可能モノマーは、95重量%未満の量(例えば、80重量%未満の量または70重重量%未満の量)で、重合可能組成物中に存在し得、この重量%は、重合可能な非フォトクロミック成分の全重量に基づく。重合可能組成物中に存在する共重合可能モノマーの量は、記載された値を含む、それらの上端値と下端値との間の任意の組み合わせの間(例えば、10〜90重量%)の範囲であり得る。重合可能非フォトクロミック成分の全重量に基づく、成分(a)および成分(b)の重量%は、100重量%を構成する。
【0057】
1つの非限定的な実施形態において、本発明の重合可能有機組成物の第1の共重合可能モノマーは、直鎖または分枝鎖脂肪ポリオール、脂環式ポリオール、芳香族ポリオールまたはエステル基を含包するポリオール(例えば、脂肪族グリコールビス((メタ)アクリロイルカーボネート)モノマー、アルキリデンビスフェノールビス((メタ)アクリロイルカーボネート)モノマー)またはポリエステルビス((メタ)アクリロイルカーボネート)モノマー)の(メタ)アクリロイル末端カーボネートとして記載され得る。第1のモノマーの調製のための非限定的方法は、米国特許第5,965,680号に記載の手順である。
【0058】
【化27】

上式を参考として、Rは、少なくとも2つのヒドロキシ基(例えば、3つ、4つ、5つまたは6つのヒドロキシ基を含む脂肪族ポリオール、脂環式ポリオール、芳香族ポリオールまたは少なくとも2つのヒドロキシ基(例えば、3つ、4つ、5つまたは6つのヒドロキシ基を含むエステル基を含むポリオールであり得るポリオ−ルの多価残基である。2より多くのヒドロキシ基を有するポリオールとしては、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、ジトリメチロールエタン、ペンタエリスリトールおよびジペンタエリスリトールが挙げられる。Xは、本明細書以前に定義される2価の連結基であり、Rは、水素またはメチルである。1つの非限定的な実施形態において、Rは、メチルであり、文字iは、2〜6の整数である。別の非限定的な実施形態において、iは、2である。
【0059】
一連の非限定的な実施形態において、Rが残基であるポリオールは、2つのヒドロキシ基(すなわち、ジオール(例えば、グリコールまたはビスフェノール))を含む。脂肪族ポリオールは、直鎖または分枝鎖であり得、また、2〜20の炭素原子を含み得る。1つの非限定的な実施形態において、脂肪族ポリオールは、2〜4の炭素原子を有するアルキレングリコールである(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、および/またはポリ(C〜C)アルキレングリコール(例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、トリブチレングリコールなど))。
【0060】
さらに非限定的な実施形態において、Rが残基であるポリオールはまた、1,3−ベンゼンジオール、1,4−ベンゼンジオール、ヒドロキシキノンビス(2−ヒドロキシエチレン)エーテルまたは次の式によって表せるビスフェノールから選択され得、
【0061】
【化28】

ここで、R13およびR14は、各々独立して、C〜Cアルキル、塩素または臭素から各々の存在について選択され;pおよびqは、各々独立して、0〜4の整数から選択され;および−A−は、−O−、−S−、−S(O)−、−C(O)−、−CH−、−CH=CH−、−C(CH−、−C(CH)(C)−または
【0062】
【化29】

から選択される2価の連結基である。
【0063】
なおさらに非限定的な実施形態において、Rが選択され得る脂環式ポリオールとしては、1,2−、1,3−または1,4−ジメタノールシクロヘキサンまたはビスフェノールの水素化バージョン(例えば、本明細書でさらに記載されるようなビスシクロヘキサノ−ル)が挙げられる。Rが選択され得るビスシクロヘキサノ−ルの非限定的な例は、4,4’−イソプロピリデンビスシクロ−ヘキサノ−ルである。
【0064】
本発明の別の非限定的な実施形態において、Rが残基であるポリオールは、アルキレングリコール、ポリ(C〜C)アルキレングリコール、グリセロール、1,3−ベンゼンジオール、1,4−ベンゼンジオール、ヒドロキシキノリンビス(2−ヒドロキシエチレン)エーテルジオールまたはそれらの混合物から選択される。さらに非限定的な実施形態において、Rが残基であるポリオールは、アルキレングリコール(例えば、エチレングリコール)またはポリ(C〜C)アルキレングリコール(例えば、ジエチレングリコール)から選択される。
【0065】
第1の共重合可能モノマー(a)が選択され得るポリオール((メタ)アクリロイルカーボネート)モノマーの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない;エチレングリコール((メタクリロイロキシ)エチレンカーボネート)、エチレングリコールビス((アクリロリロキシ)エチレンカーボネート)、ジエチレングリコールビス((メタクリロイロキシ)エチレンカーボネート)、ジエチレングリコールビス((アクリロリロキシ)エチレンカーボネート)、トリエチレングリコールビス((メタクリロイロキシ)エチレンカーボネート)、トリエチレングリコールビス((アクリロリロキシ)エチレンカーボネート)、プロピレングリコールビス((メタクリロイロキシ)エチレンカーボネート)、プロピレングリコールビス((アクリロリロキシ)エチレンカーボネート)、1,3−プロパンジオールビス((メタクリロイロキシ)エチレンカーボネート)、1,3−プロパンジオールビス((アクリロリロキシ)エチレンカーボネート)、1,3−ブタンジオールビス((メタクリロイロキシ)エチレンカーボネート)、1,3−ブタンジオールビス((アクリロリロキシ)エチレンカーボネート)、1,2−および1,3−グリセロールビス((メタクリロイロキシ)エチレンカーボネート)、1,2−および1,3−グリセロールビス((アクリロリロキシ)エチレンカーボネート)、1,4ブタンジオールビス((メタクリロイロキシ)エチレンカーボネート)、1,4ブタンジオールビス((アクリロリロキシ)エチレンカーボネート)、ジプロピレングリコールビス((メタクリロイロキシ)エチレンカーボネート)、ジプロピレングリコールビス((アクリロリロキシ)エチレンカーボネート)、トリエチレングリコールビス((メタクリロイロキシ)エチレンカーボネート)、トリエチレングリコールビス((アクリロリロキシ)エチレンカーボネート)、ペンタメチレングリコールビス((メタクリロイロキシ)エチレンカーボネート)、ペンタメチレングリコールビス((アクリロリロキシ)エチレンカーボネート)、1,3−および1,4−ベンゼンジオールビス((メタクリロイロキシ)エチレンカーボネート)、1,3−および1,4−ベンゼンジオールビス((アクリロリロキシ)エチレンカーボネート)、ヒドロキシキノリンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテルビス((メタクリロイロキシ)エチレンカーボネート)、ヒドロキシキノンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテルビス((アクリロリロキシ)エチレンカーボネート)、イソプロピリデンビスフェノールビス((メタクリロイロキシ)エチレンカーボネート)、イソプロピリデンビスフェノールビス((アクリロリロキシ)エチレンカーボネート)、ジエチレングリコールビス((メタクリロイロキシ)2−メチル−エチレンカーボネート)、ジエチレングリコールビス((メタクリロイロキシ)1,4−シクロへキシレンカーボネート)、ジエチレングリコールビス((メタクリロイロキシ)1,4−フェニレンカーボネート)、ジエチレングリコールビス((メタクリロイロキシ)2,5−ジメチル−1,3−フェニレンカーボネート)またはそれらの混合物。
【0066】
さらに非限定的な実施形態において、Rが残基であるポリオールは、エステル基を含むポリオールである。そのようなポリオールは、一般的に公知であり、200〜10,000の範囲の数平均分子量を有し得る。それらは、ポリカルボン酸と共に、低分子量のジオール(すなわち、1モル当り500グラム以下の分子量を有するジオール)、トリオールおよび当該分野において公知の多価アルコール(必要に応じて、1価のアルコールと組み合わせて)を用いる慣用技術によって調製され得る。ポリカルボン酸の非限定的な例としては、以下が挙げられる:フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリト酸、テトラヒドロフタル酸、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸またはそれらの混合物。上記の酸の無水物はまた、それらが存在する場合、使用され得、そして用語「ポリカルボン酸」に含包される。
【0067】
なおさらなる非限定的な実施形態において、酸と類似の様式で反応してポリエステルポリオールを形成する特定の物質もまた、有用である。そのような物質としては、ラクトン(例えば、カプロラクトン、プロピオラクトン、およびブチロラクトン)およびヒドロキシ酸(例えば、ヒドロキシカプロン酸およびジメチロールプロピオン酸が、挙げられる。トリオールまたは多価アルコールが使用される場合、モノカルボン酸(例えば、酢酸および/または安息香酸)が、ポリエステルポリオールの調製において使用され得、そして、いくつかの目的のために、そのようなポリエステルポリオールが、望ましくあり得る。さらに、ポリエステルポリオールは、本明細書中で、脂肪酸または脂肪酸のグリセリドオイルで改変されたポリエステルポリオール(すなわち、このような改変を含む慣用的アルキドポリオール)を含むことが理解される。使用され得るポリエステルポリオールの他の非限定的な例は、アルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなど)、およびメタクリル酸を有するベルサチル酸(versatic acid)のグリシジルエステル(glycidyl ester)とメタクリル酸とを反応させて、対応するエステルを形成することにより調製されるポリエステルポリオールである。
【0068】
1つの非限定的な実施形態において、Rが、エステル基を含むポリオールの残基である場合、Rが残基であるポリオールは、以下の式によって表され得る:
−(Y−(C(O)(−CR−CHR−O)−H)
ここで:Yは、−O−または−NR−であり、そして、Rは、水素またはC〜C12アルキルであり;Rは、開始剤由来の有機ラジカルである。開始剤は、触媒の補助があってもなくてもラクトン環を開環し、そして凝縮水を形成することなく、これを開鎖に付加し得る添加可能な少なくとも1つの反応性水素を有する化合物である。開始剤の非限定的な例としては、単官能性開始剤(例えば、アルコールおよびアミン)および多官能性開始剤(例えば、ポリオール、ポリアミン、アミノアルコールおよびビニルポリマー)ならびにアミド、スルホンアミド、ヒドロゾン(hydrozone)、セミカルバゾン、オキシム、ポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸およびアミノカルボン酸が挙げられる。R、RおよびRは、各々の存在について、各々独立して、水素、C〜C12アルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cアルコキシ、ベンジルまたはフェニルから選択され、ただし、R、RおよびRの合計数の少なくともh+2は、水素である。例えば、ブチロラクトン(C)が、出発物質である場合、hは、2であり、R、RおよびRの合計数の少なくとも4つ、実際には5つが、水素である。文字hは、1〜6の整数から選択され;tは、1〜100の整数から選択され;そして、yは、2〜6に等しい整数から選択される。
【0069】
別の非限定的な実施形態において、エステル基を含むポリオールは、ジオール開始剤およびラクトンの反応生成物(すなわち、ポリラクトンジオール)である。ポリラクトンジオールのジオールは、2〜20の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の脂肪族ジオール、ポリ(C〜C)アルキレングリコール、環式環内に5〜8の炭素原子を有する脂環式ジオール、単環式芳香族ジオール、ビスフェノ−ル、水素化ビスフェノールあるいはそれらの混合物から選択され得る。
【0070】
ポリラクトンジオールを調製するために使用され得る、2〜20の炭素原子を有する直鎖脂肪族ジオールまたは分枝鎖脂肪族ジオールの例としては、Rが残基であるジオールが挙げられるが、これらに限定されない。そのようなジオールの非限定的な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−および2,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、ドデカンジオール、トリデカンジオール、テトラデカンジオール、ペンタデカンジオール、ヘキサデカンジオール、ヘプタデカンジオール、オクタデカンジオール、ノナデカンジオールならびにイコサンジオールが挙げられる。ポリ(C〜C)アルキレングリコールの例としては、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−、およびより高級なエチレングリコール、ジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−、およびより高級なプロピレングリコール、ならびにジ−、トリ−、テトラ−、ペンタ−、およびより高級なブチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
ポリラクタンジオールを調製するために使用され得る、5〜8の炭素原子を有する脂環式ジオールとしては、本明細書中で既に記載の脂環式ジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘプタンジオールおよびシクロオクタンジオールが挙げられるが、これらに限定されない。単環式芳香族ジオールの例としては、例えば、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ベンゼンジオール(例えば、1,2−ジヒドロキシベンゼンおよび1,3−ジヒドロキシベンゼン);C〜Cアルキル置換ベンゼンジオール(例えば、4−tert−ブチル−ベンゼン−1,2−ジオール、4−メチル−ベンゼン−1,2−ジオール、3−tert−ブチル−5−メチル−ベンゼン−1,2−ジオールおよび3,4,5,6−テトラメチル−ベンゼン−1,2−ジオール);ハロ置換ベンゼンジオール(例えば、3,5−ジクロロベンゼン−1,2−ジオール、3,4,5,6−テトラブロモ−ベンゼン−1,2−ジオールおよび3,4,5−トリクロロ−ベンゼン−1,2−ジオール);ならびにC〜Cアルキルおよびハロ置換ベンゼンジオール(例えば、3−ブロモ−5−タルト−ブチル−ベンゼン−1,2−ジオール、3,6−ジクロロ−4−メチル−ベンゼン−1,2−ジオール、3−ブロモ−4,5−ジメチル−ベンゼン−1,2−ジオールまたは3−クロロ−4,6−ジ−tert−ブチル−ベンゼン−1,2−ジオール)。
【0072】
1つの非限定的な実施形態において、ポリラクトンジオールを調製するために使用され得るビスフェノールおよび水素化ビスフェノールは、以下の式によって表され得る:
【0073】
【化30】

ここで、R13およびR14は、各々の存在について、各々独立してC〜Cアルキル、塩素または臭素から選択され;pおよびqは、0〜4の整数から各々独立して選択され;そして、−A−は、−O−、−S−、−S(O)−、−C(O)−、−CH−、−CH=CH−、−C(CH−、−C(CH)(C)−、または
【0074】
【化31−1】

から選択される2価の連結基であり、
【0075】
【化31−2】

は、ベンゼン環またはシクロヘキサン環を表す。
ポリラクトンジオールの調製に使用され得るビスフェノールの非限定的な例は、4,4’−イソプロピリデンビスフェノールである。ポリラクトンジオールを調製するために使用され得る水素化ビスフェノールの非限定的な例は、4,4’−イソプロピリデンビスシクロヘキサノ−ルである。
【0076】
1つの非限定的な実施形態において、ポリラクトンジオールを調製するために使用されるラクトンは、環状ラクトン環中に3〜8の炭素原子を有しまた、以下の式によって表され得る:
【0077】
【化32】

ここで、hは、1〜6の整数(例えば、1,2,3,4,5または6)から選択され、R、RおよびRは、各々の存在について、各々独立して、水素、C〜C12アルキル、C〜Cシクロアルキル、C〜Cアルコキシ、ベンゼンまたはフェニルから選択され、ただし、R、RおよびR群の合計数の少なくともh+2が水素である。別の非限定的な実施形態において、R、RおよびRは、各々水素である。
【0078】
ポリラクトンジオールを調製するために使用され得るラクトンの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:β−プロピオラクトン;γ−ブチロラクトン;β−ブチロラクトン;δ−バレロラクトン;α−メチル−γ−ブチロラクトン;β−メチル−γ−ブチロラクトン;γ−バレロラクトン;ε−カプロラクトン;モノメチル−、モノエチル−、モノプロピル−、モノイソプロピル−などからモノドデシルまでのεーカプロラクトン;メトキシおよびエトキシεカプロラクトン;シクロヘキシルε−カプロラクトン;フェニルε−カプロラクトン;ベンジルε−カプロラクトン;ζ−エナソラクトン(enatholactone);ならびにη−カプリルラクトン。本発明の1つの非限定的な実施形態において、R、RおよびRは、各々水素で、そして、hは、4でありまた、ラクトンは、ε−カプロラクトンである。
【0079】
1つの非限定的な実施形態において、第2の共重合可能モノマーは、以下の式によって表され得る:
【0080】
【化33】

ここで、mおよびnは、0〜6の整数から各々独立して選択され、mおよびnの合計は、0〜6であり、RおよびR10は、水素およびメチルから各々独立して選択され、R11およびR12は、各々の存在において、水素またはC〜Cアルキルから各々独立して選択され、そして、Bは、直鎖または分枝鎖のアルキレン、フェニレン、C〜Cアルキル置換フェニレンまたは以下の式で表される基から選択される2価の連結基であり、
【0081】
【化34】

ここで、R15およびR16は、各々の存在についてC〜Cアルキル、塩素または臭素から各々独立して選択され、pおよびqは、0〜4の整数から各々選択され、
【0082】
【化35】

は、2価のベンゼン基または2価のシクロヘキサン基を表し、そして、Dは、
【0083】
【化36】

が、2価のベンゼン基である場合、
−O−、−S−、−S(O)−、−C(O)−、−CH−、−CH=CH−、−C(CH−、−C(CH)(C)−、または
【0084】
【化37】

であり、そして、Dは、
【0085】
【化38】

が、2価のシクロヘキサン基である場合、−O−、−S−、−CH−または−C(CH−である。
【0086】
1つの非限定的な実施形態において、Bは、以下の式によって表される2価の連結基である:
【0087】
【化39】

ここで、
【0088】
【化40】

は、ベンゼン基を表す。
【0089】
別の限定されない実施形態において、RおよびR10は、それぞれメチルであり、R11およびR12はそれぞれ水素であり、p、q、rおよびsは、それぞれ0であり、Dは、−C(CH−であり、そしてmとnの合計は、0〜4から選択される。
【0090】
別の限定されない実施形態において、第3の共重合可能なモノマーは、以下の式で表され得る:
【0091】
【化41】

ここで、oおよびuは、正の数からそれぞれ独立して選択され、そのoとuの合計は、7〜70から選択され、R、R10、R11、R12およびBは、本明細書の上文に定義されたものと同じである。
【0092】
別の限定されない実施形態において、oとuの合計は、10〜30である。
【0093】
1つの限定されない実施形態において、第4の共重合可能なモノマーは、以下の式で表され得る:
【0094】
【化42】

ここで、R、RおよびR11は、本明細書の上文に定義されたものと同じであり、dは、0〜20の数から選択され、そしてjは、3〜6の数から選択される。
【0095】
別の限定されない実施形態において、dは、3〜15であり、そしてRを誘導するポリオールは、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトールまたはジペンタエリトリトールである。さらなる限定されない実施形態において、dは、5〜10である。
【0096】
1つの限定されない実施形態において、第5の共重合可能なモノマーは、ポリカーボネートポリオールポリクロロホルメート塩とヒドロキシ(メタ)アクリラートとの反応生成物であり得る。これは、以下の工程:
(a)カーボネート基を含むポリオールのクロロホルメート中間体を調製する工程;および
(b)クロロホルメート中間体のクロロホルメートをヒドロキシ(メタ)アクリラートと反応させる工程、を包含する方法によって調製され得る。
【0097】
クロロホルメート中間体の調製およびその後のヒドロキシ官能性(メタ)アクリラートとの反応は、当該分野で認識された方法に従って実施され得る。当業者に公知のように、クロロホルメート基のヒドロキシ官能性(メタ)アクリラートとの反応は、代表的には、酸性スカベンジャー(例えば、アルカリ金属水酸化物)の存在下で行われ、次に、得られたポリオール((メタ)アクリロイルカーボネート)モノマーの混合物の洗浄および単離が続く。工程(b)のクロロホルメート中間体の混合物のクロロホルメート基に対するヒドロキシ官能性(メタ)アクリラートのモル当量比は、1:1未満であり得るが、1つの限定されない実施形態において、これは、少なくとも1:1である(すなわち、クロロホルメート基の全てが、ヒドロキシ(メタ)アクリラートと反応する)。本法の工程(b)において、クロロホルメート基に対するヒドロキシ(メタ)アクリラートのモル当量比は、1:1〜1.5:1.0(例えば、1.1:1.0)であり得る。
【0098】
別の限定されない実施形態において、第5の共重合可能なモノマーは、カーボネート基を含むポリオールのヒドロキシ基を、以下の式によって表されるクロロホルメート官能性(メタ)アクリラートと反応させる工程を包含する方法によっても、調製され得る:
【0099】
【化43】

ここで、XおよびRは、それぞれ、本明細書中に前述したとおりである。
【0100】
前述の式によって表されるクロロホルメート官能性(メタ)アクリラートは、当業者に周知の方法によって、調製され得る。1つの限定されない実施形態において、ヒドロキシ官能性(メタ)アクリラート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリラート)を、前述の式によって表されるクロロホルメート官能性(メタ)アクリラートが形成されるようなモル当量比で、ホスゲンと反応させる。
【0101】
1つの限定されない実施形態において、クロロホルメート官能性(メタ)アクリラートのクロロホルメート基とポリオールのヒドロキシ基の反応を、酸性スカベンジャー(例えば、アルカリ金属水酸化物)の存在下で行い、次いで、得られたポリオール((メタ)アクリロイルカーボネート)モノマーの混合物の洗浄および単離を(当業者に公知であるように)行う。クロロホルメート官能性(メタ)アクリラートのクロロホルメート基に対するポリオールの混合物のヒドロキシ基のモル当量比は、広く変動し得るが、1つの限定されない実施形態において、これは、ポリオールの混合物の全てのヒドロキシ基が、クロロホルメート官能性(メタ)アクリラートと反応するように選択される(すなわち、1:1未満かまたは1:1に等しいモル当量比(例えば、0.5:1〜1:1))。
【0102】
別の限定されない実施形態において、第5の共重合可能なモノマーは、(過剰の)ポリオールを(メタ)アクリロイルクロライドと反応させ、次いで単官能性メタクリレートを洗浄および単離することによって、調製され得る。この物質は、ホスゲンと反応してクロロホルメート中間体を形成し、これは、引き続いて、少なくとも1つのカーボネート基を含むポリールと反応する。
【0103】
1つの限定されない実施形態において、第6の共重合可能なモノマーは、ポリカーボネートポリオールを(過剰の)(メタ)アクリロイルクロライドと反応させ、次いでポリカーボネートポリオール(メタ)アクリラートを洗浄および単離することによって、調製され得る。
【0104】
1つの限定されない実施形態において、第7の共重合可能なモノマーは、フリーラジカル開始反応によって重合可能なモノエチレン性不飽和モノマーである。モノエチレン性不飽和モノマーは、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、ビニル芳香族モノマー、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、ビニルエステル、(メタ)アクリルオキシプロピルトリ(C−C)アルコキシシラン、(メタ)アクリル酸またはこれらの混合物から選択され得る。
【0105】
別の限定されない実施形態において、モノエチレン性不飽和モノマーは、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸シクロヘキシル、スチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、フッ化ビニリデン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ビニルラレレート(larerate)、ビニルピロリジノロール(pyrrolidinorol)、安息香酸ビニル、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランまたはこれらの混合物から選択され得る。
【0106】
1つの限定されない実施形態において、第8の共重合可能なモノマーは、少なくとも2つのアリル基を有するアリル官能性モノマーである。このアリル官能性モノマーは、モノマーの総重量に基づいて、5重量%を越えないレベルで、重合可能な組成物に使用され得る。別の限定されない実施形態において、このアリル官能性モノマーは、以下の(i)〜(iv)から選択される:
(i)以下の式で表されるアリル官能性モノマー:R17−[−O−C(O)O−R18ここで、R17は、1,2−エタンジオールジエチレングリコールまたは1,2−プロパンジオールから選択されるジオールの2価の残基であり、そしてR18は、アリル基である;
(ii)以下の式で表されるアリル官能性モノマー:
【0107】
【化44】

ここで、R15およびR16は、C−Cアルキル、塩素または臭素の各々から、各場合において、各々独立的に選択され、pおよびqは、0〜4の整数からそれぞれ独立的に選択され、そして−A−は、−O−、−S−、−S(O)−、−C(O)−、−CH−、−CH=CH−、−C(CH−、−C(CH)(C)−または
【0108】
【化45】

から選択された2価の連結基であり、そしてR18は、アリル基である;
(iii)以下の式で表されるアリル官能性モノマー:
【0109】
【化46】

ここで、R18は、アリル基である;あるいは、
(iv)(i)、(ii)および(iii)のうちの少なくとも2つの混合物。
【0110】
さらなる限定されない実施形態において、アリル官能性モノマーは、以下の(i)〜(iii)から選択される:
(i)ポリエーテルジオールビス(アリルカーボネート);
(ii)ポリラクトンジオールビス(アリルカーボネート);または
(iii)これらの混合物。
【0111】
1つの限定されない実施形態において、フォトクロミック重合可能コーティング組成物の重合は、Hawley’s Condensed Chemical Dictionary 13版(1997年、John Wiley&Sons、901〜902ページ)の「polymerization」の定義に記載された機構によって、起こり得る。これらの機構としては、フリーラジカルが開始剤であり、一方ではモノマーの二重結合に付加され、同時に他方では新規の自由電子を生成することによって、モノマーの二重結合と反応する「付加」による機構、2つの反応モノマーによる水分子の分離を含む「縮合」による機構、およびいわゆる「酸化的カップリング」による機構、が挙げられる。
【0112】
さらなる限定されない実施形態において、フォトクロミック重合可能コーティング組成物の重合は、フリーラジカルを生成可能な開始量の物質(例えば、有機ペルオキシ化合物またはアゾビス(有機ニトリル)化合物)を、すなわち開始剤として、この組成物に付加することによって達成され得る。ポリオール((メタ)炭酸アクリロイル)モノマー組成物の重合化のための方法は、当業者に周知であり、任意のこれらの周知技術が、前述の重合可能有機組成物の重合化に使用され得る。このような重合方法としては、熱重合、光重合またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0113】
熱重合開始剤として使用され得る有機ペルオキシ化合物の限定されない例としては、以下が挙げられる:ペルオキシモノ炭酸エステル(例えば、第3ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート);ペルオキシジカーボネートエステル(例えば、ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ(第2ブチル)ペルオキシジカーボネートおよびジイソプロピルペルオキシジカーボネート);ジアシルペルオキシド(diacyperoxide)(例えば、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、プロピオニルペルオキシド、アセチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドおよびp−クロロベンゾイルペルオキシド);ペルオキシエステル(例えば、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシオクチレートおよびt−ブチルペルオキシイソブチレート);メチルエチルケトンペルオキシド、ならびにアセチルシクロヘキサンスルホニルペルオキシド。1つの限定されない実施形態において、使用される熱開始剤は、得られた重合物を変色させない熱開始剤である。
【0114】
熱重合開始剤として使用され得るアゾビス(有機ニトリル)化合物の限定されない例としては、アゾビス(イソブチロニトリル)、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)またはそれらの混合物が挙げられる。
【0115】
フォトクロミック重合可能コーティング組成物を開始し、そして重合するのに使用される熱重合開始剤の量は変動し得、そして使用される特定の開始剤および意図されたフォトクロミック製品(例えば、コーティングされたレンズまたはオーバーモールド(overmold))に依存する。重合反応を開始し、そして持続するのに必要な量だけが、必要とされる(すなわち、開始量)。1つの限定されない実施形態において使用される、ペルオキシ化合物であるジイソプロピルペルオキシジカルボネートに関して、この量は、代表的には、重合可能有機組成物100部あたり、開始剤は0.01部と3.0部の間(phm)である。別の限定されない実施形態において、0.05と1.0の間のphmが、重合を開始するのに使用される。この熱硬化サイクルは、フォトクロミック重合可能コーティング組成物を、1つの限定されない実施形態において、室温から85℃〜125℃まで、2時間から30時間の期間にわたって、開始剤の存在下で加熱する工程を包含する。
【0116】
1つの限定されない実施形態において、本発明に従うフォトクロミック重合可能コーティング組成物の光重合は、紫外線、可視光、またはそれらの組み合わせを使用して、光重合開始剤の存在下で行われ得る。光重合開始剤の限定されない例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルベンゾフェノール、アセトフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−イソプロピルチオキサントン(isopropylthixantone)および2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが挙げられる。本発明の重合可能有機組成物を開始し、そして重合するのに使用される光重合開始剤の量は、変動し得、そして使用される特定の開始剤および生成することが意図されたフォトクロミック製品に依存する。重合反応を開始し、そして持続するのに必要な量だけが、必要とされる(すなわち、開始量)。1つの限定されない実施形態において、光重合開始剤は、モノマー成分の重量に基づいて、0.01重量%〜5重量%の量で使用される。
【0117】
1つの限定されない実施形態において、光重合に使用される光源は、紫外線を放射する光源から選択される。この光源は、水銀灯、殺菌灯またはキセノンランプであり得る。可視光(例えば、日光)もまた、使用され得る。曝露時間は、例えば、光源の波長および強度ならびに特定のフォトクロミック製品によって異なり得、そして代表的には、経験的に決定される。
【0118】
本発明の重合可能コーティング組成物に利用され得るフォトクロミック化合物の限定されない例は、所望の色相に着色する有機フォトクロミック化合物である。これらは代表的に、400ナノメートルと700ナノメートルの間の範囲内で、少なくとも1つの活性化吸収極大を有する。これらは、個々に使用され得るか、または、活性化された色を補足するフォトクロミック化合物と組み合わせて使用され得る。
【0119】
1つの限定されない実施形態において、この有機フォトクロミック物質としては、クロメン(例えば、ナフトピラン、ベンゾピラン、インデノナフトピランおよびフェナントロピラン(phenanthorpyran));スピロピラン(例えば、スピロ(ベンゾインドリン)ナフトピラン、スピロ(インドリン)ベンゾピラン、スピロ(インドリン)ナフトピラン、スピロ(インドリン)キノピランおよびスピロ(インドリン)ピラン);オキサジン(例えば、スピロ(インドリン)ナフトオキサジン、スピロ(インドリン)ピリドベンゾオキサジン、スピロ(ベンゾインドリン)ピリドベンゾオキサジン、スピロ(ベンゾンドリン)ナフトオキサジンおよびスピロ(インドリン)ベンゾオキサジン);水銀ジチゾネート(dithizonate)、フルギド、フルギミド(fulgimide)ならびにこれらのフォトクロミック化合物の混合物が挙げられる。これらのフォトクロミック化合物は、米国特許第5,645,767号、同第6,153,126号および同第6,296,785B1号の30欄44行〜31欄5行に記載される。
【0120】
別の限定されない実施形態において、本明細書中に記載されるフォトクロミック化合物は、この化合物が適用されるコーティング組成物、またはこの化合物が組み込まれるコーティング組成物が結果として生じた所望の色(例えば、フィルター処理されていない日光で活性化された場合、グレーまたは褐色の陰影のような実質的に中間色(例えば、活性化されたフォトクロミック化合物の色を考慮して可能な限り中間色に近い色))を示すような、フォトクロミック量および割合(混合物が使用される場合)で使用される。グレー中間色および褐色中間色は、1つの限定されない実施形態において好ましい;しかしながら、他の流行色も使用され得る。中間色および色を描写する方法のさらなる考察は、米国特許第5,645,767号の12欄66行〜13欄19行に見出され得る。
【0121】
本明細書中および特許請求の範囲に使用される場合、「フォトクロミック物質量」とは、活性化によって裸眼に少なくとも認識可能なフォトクロミック効果をもたらすのに十分なフォトクロミック化合物または物質の量を意味する。この使用される特定の量は、それらの照射の際に所望される色の強度によって、しばしば異なる。1つの限定されない実施形態において、本発明の重合可能な組成物中に存在するかまたは本発明のコーティング中に組み込まれるフォトクロミック物質が多いほど、もたらされるフォトクロミック製品の色強度が大きくなる。
【0122】
重合可能コーティング組成物に組み込まれたフォトクロミック物質の量は、1つの限定されない実施形態において、重合可能組成物の重量に基づいて、0.01〜40重量%の範囲で変動する。例えば、フォトクロミック物質の濃度は、重合可能組成物の重量に基づいて、0.05〜30重量%、または0.1〜20重量%または0.2〜15重量%(例えば、7〜14重量%)の範囲で変動し得る。このフォトクロミック物質の濃度は、記載した範囲を含めて、これらの値の任意の組み合わせの間(例えば、0.05〜39.95重量%)で変動し得る。
【0123】
例えば吸収によって、少なくとも部分的に硬化した本発明のコーティング中に組み込まれる場合、この表面に適用されるフォトクロミック物質の量は、1つの限定されない実施形態において、表面面積1cmあたり0.01〜2.00mg(例えば、0.1〜1.0mg)で変動し得る。このフォトクロミック物質の濃度は、記載した範囲を含んで、これらの値の任意の組み合わせの間の範囲(例えば、表面面積1cmあたり0.015〜1.999mg)で変動し得る。用語「吸収」または「吸収する」は、少なくとも部分的に硬化したコーティング中へのフォトクロミック物質のみの浸透、少なくとも部分的に硬化したコーティング中へのフォトクロミック物質の溶媒により補助される輸送吸収、気相輸送、および他のこのような輸送機構を意味し、かつ含むことを意図する。
【0124】
多様な限定されない実施形態において、アジュバント物質もまた、重合可能組成物または硬化したコーティングへのフォトクロミック物質の適用または組み込みより前か、同時か、あるいは後に用いられるフォトクロミック物質と共に、重合可能コーティング組成物中に組み込まれ得る。例えば、紫外線吸収体を、組成物に添加する前にフォトクロミック物質と混合し得るか、またはこのような吸収体を、フォトクロミックコーティングと入射光との間の層として重ね得る(例えば、上に重ね合わせ得る)。さらに、安定剤を、フォトクロミック物質の耐光疲労性を改善するために組成物に添加する前に、フォトクロミック物質と混合し得る。安定剤(例えば、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、不斉ジアリールオキサルアミド(オキサニリド)化合物および一重項酸素失活剤(例えば、有機配位子を有するニッケルイオン錯体、ポリフェノール酸化防止剤))またはこれらの安定剤の混合物が検討される。これらは、単独または組み合わせて使用され得る。このような安定剤は、米国特許第4,720,356号、同5,391,327号および同5,770,115号に記載される。
【0125】
1つの限定されない実施形態において、(化学的および色の観点で)適合性の色彩(すなわち、色素)を、医学的理由または流行の理由で、より美的な結果を達成するために、重合可能コーティング組成物に添加し得るか、あるいはこのコーティングに適用され得る。選択される特定の色素は異なり、そして前述の必要性および達成すべき結果によって決まる。1つの限定されない実施形態において、この色素を、(例えば、より中間色を達成するかまたは入射光の特定の波長を吸収するために)活性化されたフォトクロミック物質に起因する色を補足するために、選択し得る。別の限定されない実施形態において、フォトクロミック物質が不活性な状態である場合、この色素を、コーティングに所望の色相を提供するために選択し得る。
【0126】
別の限定されない実施形態において、多様な従来の添加物が、フォトクロミック重合可能コーティング組成物中に組み込まれ得る。このような添加物としては、熱安定剤、離型剤、静止(非フォトクロミック)染料、色素、溶媒および保存期間中の安定性を促進するための重合阻害剤が挙げられ得る。抗黄変添加物(例えば、3−メチル−2−ブテノール、有機ピロカーボネートおよびトリフェニルホスファイト[CAS 101−02−0])もまた、黄変に対する耐性を高めるために、本発明の重合可能な有機組成物に添加され得る。
【0127】
さらなる限定されない実施形態において、本発明の重合可能なコーティング組成物は、この組成物に所望の特性を与える追加の従来成分、または基材にこの組成物を適用しそして硬化するのに使用されるプロセスに必要な追加の従来成分、またはこの組成物から作製された硬化コーティングを強化する追加の従来成分を、さらに含み得る。このような成分は、モノマーの重量に基づいて、20重量%までの量で使用され得る。例えば、可塑剤は、Fischer微小硬度および/またはフォトクロミック重合可能コーティング組成物のフォトクロミック性能特性を調整するために使用され得る。他のこのような追加の成分としては、レオロジーコントロール剤、レベリング剤(例えば、界面活性剤)、フリーラジカルスカベンジャー、架橋剤および接着促進剤が挙げられる。
【0128】
限定されない接着促進剤の例(例えば、1〜4炭素原子のアルコキシ置換基を有する有機官能性(organofunctional)トリアルコキシシラン、および米国特許第6,150,430号の2欄39行〜8欄38行に開示されたプロセスを用いて適合される重合可能有機官能性シラン)が使用され得る。これらの物質としては、以下:γ−グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、アミノエチルトリメトキシシランまたはこれらの混合物、が挙げられるが、これらに限定されない。接着促進剤は、本発明の重合物に対するその後に適応されるコーティングの接着、またはレンズブランクに対する重合可能な組成物のオーバーモールド(overmolding)の接着を改善する量で使用され得る。接着促進剤の接着を改善する量は、ASTM D−3359−Standard Test Method for Measuring Adhesion by
Tape Test−Method Bで測定して評価された、接着促進因子のないコーティングと比較して、改善された接着を実証する量である。
【0129】
1つの限定されない実施形態において、これらの基材(すなわち、コーティング組成物が適用される物質)は、任意のタイプ(例えば、紙、ガラス、セラミック、木、石造物、織物、金属および有機高分子材料)の基材であり得る。1つの限定されない実施形態において、この基材は、有機高分子材料、特に、固体の透明な熱硬化性または熱可塑性の有機高分子材料(例えば、熱可塑性ポリカーボネートタイプのポリマーおよびコポリマーならびにポリオール(アリルカーボネート)のホモポリマーまたはコポリマー)であり、有機光学材料として使用される。
【0130】
1つの非限定的な実施形態における基材に適用されるコーティング組成物の量は、十分な量の有機フォトクロミック化合物が組み込まれるのに必要な量(例えば、硬化コーティングがUV照射に曝露されるとき、裸眼に対して認識可能なフォトクロミック効果を示すコーティングを作製するためのフォトクロミック量)である。別の非限定的な実施形態において、硬化コーティングは、1〜10,000ミクロンもしくは5〜1,000ミクロンまたは10〜400ミクロン(例えば、30ミクロン)の厚さを有し得る。塗布されたコーティングの厚さは、列挙された値を含む、これらの値の任意の組み合せの間の範囲(例えば、1.1〜9,999.9ミクロン)であり得る。
【0131】
1つの非限定的な実施形態において、可変の厚さのコーティングを有する本発明のフォトクロミック物品は、ディップコーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、スピンおよびスプレーコーティング、またはこれらの組み合せを使用する、単コーティング適用または複数コーティング適用によって作製され得る。代替の非限定的な方法は、本明細書中で後に記載する、オーバーモールドプロセスである。これは、単独でか、または当該分野で公知のコーティング方法との組み合せで使用され得る。
【0132】
基材の処理された表面へのコーティング組成物の適用に従って、1つの非限定的な実施形態において、コーティングが硬化される。フォトクロミック重合可能なコーティング組成物を硬化する方法は、上記の方法を含む。さらなる非限定的な方法は、コーティングの工程において重合可能な成分の重合反応を開始するために、赤外放射線、γ放射線または電子放射線を用いてコーティングを照射する工程を包含する。この後に加熱工程が続き得る。
【0133】
必要な場合および適切な場合、コーティングの接着を促進する目的で、本発明のコーティング組成物を塗布する前に、基材の表面をきれいにしてコーティングされることが代表的である。プラスチックおよびガラスに対して有効な処理技術は、当業者に公知である。
【0134】
いくつかの非限定的な実施形態において、本発明のコーティング組成物の塗布の前に、基材の表面にプライマーを適用することが必要とされ得る。このプライマーは、コーティング成分の基材との相互作用を妨害する(および逆もまた同様)バリアコーティングとして、ならびに/または基材に対してコーティング組成物を接着する、接着性層として役立ち得る。プライマーの適用は、例えばスプレーコーティング、スピンコーティング、スピンおよび(ans)スプレーコーティング、拡散(spread)コーティング、ディップコーティング、キャスティングコーティングまたはロールコーティングのようなコーティング技術において使用される方法のいずれかによってなされ得る。
【0135】
引き続いて適用されるコーティングの接着を改善するためのプライマーとしての、保護コーティング(このうちのいくつかは、ポリマー形成有機シランを含み得る)の使用は、米国特許第6,150,430号に記載されている。1つの非限定的な実施形態において、非染色性(tintable)コーティングが使用される。市販のコーティング製品の非限定的な例としては、SILVUE(登録商標)124コーティング(SDC Coatings,Inc.から入手可能)およびHI−GARD(登録商標)コーティング(PPG Industries,Inc.から入手可能)が挙げられる。さらに、コーティング物の意図された使用に従って、1つの非限定的な実施形態において、適切な保護コーティング(すなわち、摩擦および磨耗の効果からのスクラッチ、ならびに酸素のフォトクロミック化合物との相互作用をそれぞれ防止するための、コーティング組成物の曝露された表面上の、磨耗耐性コーティングおよび/または酸素バリアとして役立つコーティング)を適用することが必要とされ得る。いくつかの場合において、プライマーおよび保護コーティングは、互換性がある(例えば、同じコーティングが、プライマーおよび保護コーティングとして使用され得る)。硬コーティングの非限定的な例としては、無機金属に基づくもの(例えば、シリカ、チタニア、および/またはジルコニア)ならびに紫外線硬化型の有機硬コーティングが挙げられる。
【0136】
1つの非限定的な実施形態において、本発明の物品は、基材、フォトクロミック重合可能コーティングおよび保護硬コーティングを、組み合わせて含む。この保護硬コーティングは、有機シラン硬コーティングである。
【0137】
さらなる非限定的な実施形態において、他のコーティングまたは表面処理(例えば、染色性コーティング、反射防止表面など)がまた、本発明の物品(例えば、フォトクロミックコーティング基材)に適用され得る。反射防止コーティング(例えば、金属酸化物、金属フッ化物、あるいは他のこのような物質の単層または多層)は、真空エバポレーション、スパッタリング、またはいくつかの他の方法を介して、フォトクロミック物品(例えば、本発明のレンズ)上に堆積され得る。
【0138】
1つの非限定的な実施形態において、本発明のコーティング組成物に対する基材であり得る有機重合体物質は、通常透明であるが、半透明または不透明であり得る。一般に、重合体有機物質は、透明な固体または光学的に透明な物質(例えば、プラノ、眼科用レンズおよびコンタクトレンズのような光学的適用に適した材料、窓、自動車の透明部分(transparency)(例えば、フロントガラス)、航空機の透明部分、プラスチックシート、重合体フィルムなど)である。
【0139】
本明細書中で記載されるフォトクロミック重合可能コーティング組成物に対する基材として使用され得る、重合体有機物質の非限定的な例としては、以下が挙げられる:ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリチオウレタン、熱可塑性ポリカーボネート、ポリエステル、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリスチレン、ポリ(αメチルスチレン)、コポリ(スチレン−メチルメタクリレート)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、ポリビニルブチラル、ポリ(酢酸ビニル)、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酪酸セルロースアセテート、ポリスチレンまたはポリマー(例えば、以下に挙げるモノマーから選択したモノマーのホモポリマーおよびコポリマー:ビス(炭酸アリル)モノマー、スチレンモノマー、ジイソプロフェニルベンゼンモノマー、ビニルベンゼンモノマー(例えば、米国特許第5,475,074号に記載されるもの)、ジアリリデンペンタエリスリトールモノマー、ポリオール(炭酸アリル)モノマー(例えば、ジエチレングリコールビス(炭酸アリル))、酢酸ビニルモノマー、アクリロニトリルモノマー、単官能的または多官能的(polyfunctional)な(例えば、二官能的または多官能的(multi−functional))、(C−C12)アルキル(メタ)アクリレート(例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなど)のような(メタ)アクリレートモノマー、ポリ(オキシアルキレン)(メタ)アクリレート、ポリ(アルコキシル化フェノール(メタ)アクリレート)、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシル化ビスフェノールA(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、エトキシル化フェノール(メタ)アクリレート、アルコキシル化ポリヒドリックアルコール(メタ)アクリレート(例えば、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレートモノマー)、米国特許第5,373,033号に記載されるようなウレタン(メタ)アクリレートモノマーまたは、これらの混合物)。重合体有機宿主物質のさらなる例は、米国特許第5,753,146号、第8段、62列〜第10段、34列に開示される。
【0140】
別の非限定的な実施形態において、透明なコポリマーおよび透明なポリマーの混合物はまた、重合体物質としても適している。代表的には、フォトクロミックコーティング組成物に対する基材は、熱可塑性ポリカーボネート樹脂(例えば、登録商標LEXANで販売される、ビスフェノールAおよびホスゲン由来のカーボネート連鎖樹脂;登録商標MYLARで販売される物質のような、ポリエステル;登録商標PLEXIGLASで販売される物質のような、ポリ(メチルメタクリレート);ポリオール(アリルカーボネート)モノマーの重合体、特に、そのモノマーが登録商標CR−39で販売される、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)、ならびにポリオール(アリルカーボネート)のコポリマーの重合体(例えば、他の共重合可能なモノマー物質を伴うジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)ならびに、米国特許第4,360,653号および同第4,994,208号に記載されるような、末端ジアクリレート官能性を有するポリウレタンを伴うコポリマー;ならびに米国特許第5,200,483号に記載されるような、末端部分にアリル官能基またはアクリリル官能基を含む、脂肪族ウレタンを伴うコポリマー))から作製した光学的に透明な重合体化有機物質である。
【0141】
1つの意図される非限定的な実施形態は、光学素子(例えば、プラノおよび視力調整眼科用レンズおよびコンタクトレンズ)、窓、透明重合体フィルム、自動車の透明部分(例えば、フロントガラス)、航空機の透明部分、プラスチックシートなどのような、光学的に透明な重合体(すなわち、光学的適用に適した物質)の使用である。このような光学的に透明な重合体は、1.48〜2.00(例えば、1.495〜1.75、特に1.50〜1.66)の範囲であり得る屈折率を有し得る。
【0142】
別の意図される非限定的な実施形態は、フォトクロミック光学物品を作製するための、本発明のフォトクロミック重合可能コーティング組成物の光学素子との組み合せの使用である。このような物品は、光学素子であるプライマー、本発明のフォトクロミック重合可能な組成物、および必要な場合、適切な保護コーティングを、連続して適用することによって作製され得る。
【0143】
さらなる非限定的な実施形態において、本発明のフォトクロミック重合可能組成物の接着コーティングを有する、半仕上げの単一視(SFSV)レンズは、オーバーモールドプロセスによって作製され得る。代表的には、所定の容量のフォトクロミック重合可能組成物が、半球凹面またはSFSVレンズの前面曲線と外径がほぼ一致する、マイナスガラスモールドによって規定される容量中に分配される。ガラスモールドは、モールドを約0.2ミリメートル超えて延び、ガラスモールドの外径よりも約4ミリメートル小さい内径を有する、環状の塩化ポリビニルガスケットに合わせられる。モノマーが分配されると、SFSVレンズは、広がって所定の量を満たす、分配された重合可能組成物上に、慎重に置かれる。レンズの外径と同等またはそれよりも大きい外径を有する、環状ガラスプレートが、レンズの背部表面に置かれる。バネ・クランプが、一方のクランプがネガティブモールドの前面上にあり、そしてもう一方のクランプがガラスプレートの背面上にあるように位置付けられる。結果として得られるアッセンブリは、ポリウレタンテープを使用して、プレート−レンズ−ガスケット−モールドの外周を貼り付けることによって封される。このアッセンブリは、空気乾燥器中、30〜95℃で60分間隔で予熱され、続いて、3時間間隔にわたって、温度が95〜125℃に上げられ、そして82℃に下げられる。このアッセンブリは、レンズとモールドの間のガスケットのすぐ下にくさびを挿入することによって分離される。このレンズは、このとき150〜180ミクロンの接着コーティングを有する。
【0144】
本発明は、例示のみと意図される、以下の実施例においてより詳しく記載される。これは、その中の多数の修正および改良型が、当業者に明らかであるからである。
【0145】
フォトクロミック成分に加えて、成分1、2および3、ならびに種々のメタクリレートモノマーを使用して、実施例1〜14を作製する。実施例15は、この実施例のフォトクロミックレンズの調整および試験、ならびに加速風化フォトクロミック割合明順応疲労試験(Accelerated Weathering Photochromic Percent Photopic Fatigue Test)に従って実施されたその試験の結果を記載する。
【0146】
(成分1)
イソシアネートとポリカーボネートポリオールの反応生成物を、表1に要約される成分から調製した。
【0147】
【表1】

充填物1を、全てのガラス反応器に加えた。成分を、エア噴霧を用いて混合した。充填物が60℃の温度に到達するまで、この反応器中でこの充填物に熱を付与した。充填物2を、約1時間の期間にわたって加えた。この充填物2の添加の完了時に、この反応混合物を、6時間混合した。得られた溶液を、40℃にて10mm水銀で1時間、真空除去した。得られたポリマー溶液は、総溶液重量に基づいて、約91.71%の測定総固体含量を有した。このポリマーは、標準としてポリスチレンを使用するゲル透過クロマトグラフィーによって測定される場合、約6473の重量平均分子量、および2480の数平均分子量を有した。
【0148】
(成分2)
(工程1)
ポリラクトンジオールビス(クロロホルメート)中間体を、表2に要約したような成分から調製した。このポリカプロラクトンジオールビス(クロロホルメート)中間体は、ポリカプロラクトンジオールビス(メタ)アクリロイルカーボネート)モノマーの調製において有用である。
【0149】
【表2】

充填物1を、15分間にわたって、5リットルの4つ首丸底ジャケット付き(jacketed)フラスコに加え、同時に5℃まで冷却した。このフラスコは、モーター駆動TEFLON(登録商標)ポリマー撹拌ブレード、ホスゲン入口チューブ、熱電対、圧力均等添加漏斗(pressure equalizing addition funnel)、および水酸化ナトリウムスクラバーに接続された冷却コンデンサーを備えていた。充填物1の添加を完了すると、充填物2および充填物3を各々、それぞれ8.5時間および7.5時間の期間にわたって、このフラスコに同時に加えた。充填物2および充填物3の添加の間、このフラスコの内容物の温度は、せいぜい38℃までしか上昇しないことが観察された。充填物2の添加の最後に、熱マントル(heating mantle)をこのフラスコ上に配置し、そしてこのフラスコの内容物を、充填物3の残りの添加期間、32℃の温度で維持した。充填物3の添加を完了すると、このフラスコの内容物を、32℃の温度にて、約24時間の期間にわたって窒素ガスとともに噴霧した。このフラスコの内容物を、適切な容器に移した。この反応物のアッセイを、この生成物とピリジンとの混合物の滴定に基づいて、99%であると決定した。
【0150】
(工程2)
工程1のポリラクトンジオールビス(クロロホルメート)中間体を、表3に要約した成分とともに使用して、以下のようなポリラクトンジオールビス((メタ)アクリロイル)カーボネート)モノマーを調製した。
【0151】
【表3】

充填物1を、1リットルのジャケット付き丸底ガラスフラスコに添加した。このフラスコは、モーター駆動式TEFLON(登録商標)ポリマーブレードと、水冷コンデンサーと、循環式冷却ユニット(このフラスコのジャケット用)と、温度フィードバック制御デバイスを介して接続された温度計とを備えていた。このフラスコの内容物を0℃まで冷却し、そして充填物2を、35分間かけてゆっくりと添加した。充填物2の添加を通して、このフラスコの内容物の温度が20℃を超えることは、観察されなかった。充填物2の添加が完了した時に、50gの水を添加し、そしてこのフラスコの内容物を、約20℃の温度にてさらに2時間攪拌した。800ミリリットル(ml)の脱イオン水と0.05gのブチル化ヒドロキシトルエンとをこのフラスコに添加することによって、このフラスコの内容物を、有機相と水相とに分離した。その有機相を収集し、そして300gの10重量%水酸化ナトリウム水溶液で洗浄した。400gの脱イオン水を添加し、1時間後にその有機相を収集した。その有機相を、0.035gのブチル化ヒドロキシトルエンを含む500gの脱イオン水で洗浄した。その有機相を1時間後に収集し、そして600gの脱イオン水で洗浄した。その有機相を18時間後に収集し、そして空気とともに2時間噴霧した。その有機相を、35℃の温度にて、12ミリメートル(mm)水銀の真空下で30分間ストリッピングし、48℃にて、10mm水銀下で40分間ストリッピングした。得られた生成物を、0.45ミクロンフィルターに通して濾過した。それから得られた成分2の反応性オリゴマー生成物を、85%収率で得た。その生成物は、サンプル1gあたり5.62mg KOHのヒドロキシル数を有し、そして標準としてポリスチレンを使用するゲルクロマトフラフィーによって測定する場合、重量平均分子量500〜1400を有することが、見出された。
【0152】
(成分3)
ポリカーボネートポリオールと塩化(メタ)アクリロイルとの反応生成物を、表4に要約される成分から調製した。
【0153】
【表4】

充填物1を、窒素で洗浄した全てのガラス反応器に添加した。この反応器を氷浴中に配置し、そして、反応混合物の温度を25℃未満に維持しながら、充填物2を、1時間の間隔の間添加した。充填物2の添加が完了した際、反応混合物を、95分間にわたって室温にまで暖めた。充填物が、35℃に達するまで、反応器中の充填物に熱を付与した。反応アリコートを、メタノールでクエンチし、そしてメチルメタクリレートについてガスクロマトグラフィーによって分析し、反応変換を決定した。完了した反応物を、酢酸エチル中で1:1に希釈し、そして飽和炭酸水素ナトリウムで2回洗浄し、そしてブラインを用いて2回洗浄した。生じた有機溶液を、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、そして約92%が固体となるまで濃縮した。生じた物質を、さらに精製することなく使用した。
【0154】
メチルメタクリレートの存在を、Supelco SPB−8キャピラリーカラムを備えるHewelett Packard 5890 Series IIガスクロマトグラフィーにおいて、標準(Aldrich Chemical Companyのメチルメタクリレート99%、M5、590−9)とともに同時注入することによって、決定した。4.29分の保持時間を、以下の設定において、決定した;注入ポート温度 200℃、検出ポート温度 250℃、カラム温度プログラム 2分間40℃に維持、40〜220℃を15℃/分で上昇、220℃で22分間維持。
【0155】
ゲル透過クロマトグラフィーデータは、最終産物について、以下のことを明らかにした:Mnは2400であり、Mwは5600である。GPCシステムを、ポリエチレングリコール標準を用いて、校正した。
【0156】
(フォトクロミック成分)
フォトクロミック成分を、表5に列挙される物質の各々を、攪拌機および加熱手段を備えた適切な容器に添加することによって調製した。生じた混合物を、透明な溶液が生じるまで、攪拌し、そして穏やかに加熱した。
【0157】
【表5】


(実施例1〜14)
表6は、実施例1〜14の各々における、モノマーを重量%で列挙する。これら実施例は、以下を添加した後に、表6に列挙されるモノマー組成物を、攪拌機を備えた適切な容器に添加し、そして1時間混合することによって調製した:3Mから入手可能なFC−431フルオロカーボン界面活性剤を、0.15重量%を提供するような量にて添加し、そして表5のフォトクロミック成分を、28.0重量%を提供するような量にて添加した(これら両方の重量%は、モノマーの総重量に基づく)。
【0158】
【表6】

(実施例15)
促進風化フォトクロミックパーセント明所疲労試験(AWPPPF Test)は、レンズを調製する工程(パートA〜C)、これらのレンズを重合可能組成物でコーティングする工程(パートD)、このコーティングしたレンズのFischer微小硬度を測定する工程(パートE)、および風化(weathering)(パートG)の前後のフォトクロミック性能および疲労を決定する工程(パートF)、を包含する。
【0159】
本発明の重合可能組成物を、実施例1〜8、10および11のコーティング組成物に組み込んだ。本発明の重合可能組成物を含まない他の重合可能組成物(例えば、実施例9、12、13および14の組成物)もまた、試験した。比較可能なFischer微小硬度レベルを有するコーティングについてのフォトクロミック性能試験および疲労試験の結果を、比較して、これらのパラメーターの増加または減少があったか否かを決定した。比較可能なFischer微小硬度レベルを有するコーティングしたレンズを比較することによって、このコーティングの物理的性質を考察した。なぜなら、フォトクロミック化合物の性能は、より軟らかい重合材料においてより速くあり得ることが一般的に知られているからである。
【0160】
(パートA)
一連のプラノレンズブランク(PPG Industries,inc.から入手可能なCR−39(登録商標)モノマーから調製)を使用した。このレンズブランクの直径は、70mmであった。これらのレンズブランクの全てを、食器用洗剤(Lemon Scented Joy)および水で洗浄し、溶液の全重量に基づいて12.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液に、60℃で10秒間浸し、脱イオン水でリンスし、イソプロピルアルコールと共に噴霧し、そして乾燥した。
【0161】
(パートB)
パートAで調製したレンズを、米国特許第6,150,430号に記載されるタイプの接着促進組成物でコーティングした。接着促進組成物を分配しながら、このレンズを1500回転/分(rpm)で9秒間スピンさせることによって、接着促進組成物をレンズの表面に塗布した。
【0162】
(パートC)
パートBで調製したコーテイングレンズの全てを、紫外線照射に曝露することによって硬化した。このレンズを5〜10秒間の曝露に供し、Dymax 5000ECスポット硬化システムの6インチ下を、400ワット/インチの出力で評価した。塗布した組成物が硬化した後、各レンズを、1500rpmでスピンさせながら、イソプロピルアルコールで9秒間リンスし、そしてさらなる処理の前に乾燥させた。
【0163】
(パートD)
パートCで調製したレンズを、表7に列挙される時間、1500rpmでレンズをスピンさせ、コーティング組成物を分配することによって、表6のフォトクロミックコーティング組成物でコーティングして、硬化後に約30ミクロンの厚みを有するコーティングを生成した。
【0164】
【表7】

コーティングされたレンズを、10インチ(25.4cm)長の2つの紫外線「V」型ランプの下のコンベアベルト上で2.3フィート/分(70.1cm/分)の速さでそれらを1回通過させて曝露することによる、紫外線照射への曝露によって硬化した。第1のランプを、コンベアの上2.5インチ(6.4cm)の高さに維持し、第2のランプは、コンベアの上6.5インチ(16.5cm)の高さに維持した。硬化システムは、Eye
Ultravioletシステムから入手し、そして100ppm未満の酸素レベルまで、窒素で不活性化した。
【0165】
(パートE)
パートDで調製されたコーティングされたフォトクロミックレンズをFischer Technology,Inc.から入手可能なFischerscope HCV、H−100モデルを使用して微小硬度試験に供した。実施例のコーティングされたレンズの(ニュートン/mmで測定される)微小硬度を、100ミリニュートンロード、30ロード工程で各ロード工程の間に0.5秒休止の条件下で決定した。表8に報告する結果を2μmのインデンターの深さで測定した。
【0166】
【表8】

表8の結果は、成分1を含む実施例1〜8、10および11が、84〜108ニュートン/mmの範囲の微小硬度を有したことを示す。他の実施例は、99〜189ニュートン/mmの範囲の微小硬度を有した。
【0167】
(パートF)
パートDで調製されたコーティングされたフォトクロミックレンズを、Essilor of France製の光学台上でのフォトクロミック応答(本明細書で以後「BMP」と称される)について試験した。BMPの試験の前に、フォトクロミック化合物を活性化させるためにコーティングされたフォトクロミックレンズをランプから約14cmの距離で約10分間、365nmの紫外線光に曝露した。サンプルへのUVA照射量をLicor Model Li−1800分光放射計で測定し、そして22.2ワット/mであることを見出した。次いで、そのサンプルを、ランプから約36cmの距離で約10分間ハロゲンランプ下に配置し、サンプル中のフォトクロミック化合物を退色させるかまたは不活性化させた。サンプルにおける照度を、Licor分光放射計で測定し、21.9Kluxであることを見出した。次いで、試験レンズをBMP上での試験の前に少なくとも1時間、暗環境下に放置した。
【0168】
BMPは、90°離れた位置に2つの150ワットキセノンアークランプ(一方のランプはUV/VIS光の量を提供し、他方のランプは、可視光のさらなる寄与を提供する)に係合する平らな金属表面を備える。そのキセノンアークランプからいくらか平行にした出力光線を50/50光線スプリッターを通して組み合わせ、サンプルセルおよび照射量検出器に向けた。各ランプに、フィルターをかけ、別々に閉じ、そしてサンプルセルに入る前の混合の後にもまた閉じた。各ランプに、Schott 3mm KG−2 バンドパスフィルターをさらにかけた。補助の可視光についてのランプを、さらに400nmカットオフフィルターにかけた。
【0169】
装置に供給されたソフトウェア(すなわち、BMPSoft バージョン2.1e)を使用して、タイミング、照射量、エアセルおよびサンプルの温度、閉鎖、フィルターの選択および応答測定を制御した。確立された設定内に調節するために提供されたソフトウェアプログラムは、フォトフィードバックユニットに限定し、次いでランプのワット量をわずかに調節し、続いてランプ出力をした。選択された照射量が、フォトフィードバックユニットの限界内で達成され得ない場合、そのプログラムは、各光路に対して中性の密度フィルターの選択の変化についての必要性があることを示した。
【0170】
BMPソフトウェアの設定は、サンプルにおいて、Model #268UVA UVA検出器およびModel #268P可視光検出器に取り付けられたGraseby Model 5380デュアルチャネルオプトメーターによる分光放射計の測定間の相関係数を必要とした。このオプトメーター検出器を、光学レール運搬機上に備えつけて、そしてキセノンアークランプからの分裂および結合した光線の半分を受けた。レンズサンプルセルを石英の窓およびセルフセンタリング型のサンプルホルダーに取りつけた。サンプルセル中の温度を、環境刺激装置である、改変Facis、Model FX−10を備えるソフトウェアを介して73.4°F(23℃)に制御した。サンプルにおける照射量を6.7ワット/mのUVAおよび50Kluxの照度に設定した。タングステンハロゲンランプからサンプルを通過した光送達のための光ファイバーケーブルを備えたZeiss分光光度計、Model MCS 501を、応答および色測定に関して使用した。サンプルを通過し、分光光度計に取りつけられた受信用光ファイバーケーブルアセンブリに向かう場合、光ファイバーケーブルからの平行にしたモニタリング光線を、試験サンプルに対して垂直に保持した。試験セル中のサンプルの位置の正確な点は、活性化したキセノンアーク線およびモニタリンク光線が2つの光同心円を形成するように交差する点である。サンプル配置点におけるキセノンアーク線の入射角は、直角から約20°だった。
【0171】
不活性化したか、または退色した状態から、活性化したかまたは暗くした状態への光学密度の変化(ΔOD)に関して、応答測定を、初期の不活性化した透過率を確立すること、キセノンランプからシャッターを開けることおよび選択された時間間隔で活性化を介した透過率を測定することによって決定した。光学密度の変化は、式:ΔOD=log(%Tb/%Ta)によって決定され、ここで%Tbは、退色した状態の%透過率であり、%Taは、活性化した状態の%透過率であり、そして対数の底は、10である。
【0172】
退色速度(T1/2)は、活性化光源の除去後、最も高いΔODの2分の1に達するための、試験面積内のフォトクロミック化合物の活性化した形態のΔODについての秒単位の時間間隔である。活性化速度(A1/2)は、照射の15分後に得られる光学密度の変化(ΔOD)の50%を達成するために必要とする、照射の秒単位の時間間隔である。コーティングされたフォトクロミックレンズの結果を表9に列挙する。
【0173】
【表9】

表9の結果は、成分1を個々に含むか、または成分2、成分3、トリメチオールプロパントリメタクリレートおよび/もしくはビスフェノールA(2エトキシ単位)ジメタクリレート処方物中のビスフェノールA(10エトキシ単位)ジメタクリレートを組み合わせて含む実施例1〜8、10および11の活性速度(A1/2)および退色速度(T1/2)を示し、これらは、実施例14を除く試験された他の全ての実施例より早いことをが実証されている。実施例1〜8、10および11の光学密度の変化(ΔOD)は、試験したほかの実施例と匹敵するかまたはいくらか小さかった。表8および9の両方の実験は、実施例1、4〜8、10および11のコーティングのFischer微小硬度が、実施例14のFischer微小硬度と等しいか、またはそれより高いことを示す。このことは、実施例1、4〜8、10および11によって示されるフォトクロミックパフォーマンス(例えば、活性化速度(A1/2)および/または退色速度(T1/2))の改善が、コーティングの物理的性質(例えば、より柔らかいか、またはより低いFischer微小硬度を有する)に起因しなかったことを明らかにする。
【0174】
(パートG)
太陽光照射による促進された風化のシミュレーションを実施するために、ATLAS Ci4000 WEATHEROMETERを使用した。ATLAS Ci4000 WEATHEROMETERにおいて340nmで0.25ワット/mのフィルターをかけられたキセノンランプ出力に65時間曝露した後に、表10に報告するサンプルの結果を得た。耐候性試験機内の温度を45℃に保ち、相対的湿度を75%に制御した。黒パネルホルダー上のレンズの温度は、代表的に55℃を越えなかった。レンズが疲労プロセスを受けた後、それらを曝露の前に調製し、そして光学台上で同じ条件下で測定した。
【0175】
%疲労(%Fat)を、促進された風化の前後における試験サンプルの光学密度の変化(ΔOD)間の差異を測定することによって、そして差異が表す光学密度における%減少を計算することによって決定した。退色した状態の試験レンズをサンプルホルダーに挿入し、透過率(T)を測定し、退色した状態から活性化した(すなわち、暗くした)状態へ試験サンプルを変化するようにシミュレートされた太陽光照射を提供するためのキセノンランプからのシャッターを開け、活性化状態(T)において透過率を測定し、そして式:ΔOD=log(T/T)(対数の底は10)に従って光学密度の変化を計算することによって、光学密度の変化(ΔOD)を決定した。結果は、±2で変化し得る。
【0176】
%明所視疲労を、人間の目によって検出される可視光応答に密接に対応する明所視フィルターを通過する波長について測定した。表10に結果を報告する。
【0177】
【表10】

表10の結果は、30重量%の成分1を含む実施例7の%明所視疲労が、試験した他のすべてのサンプルより低いことを示す。各々15重量%の成分1および2を含む実施例8は、30%の成分1および30%の成分2をそれぞれ含む、実施例7および9の結果の平均である%明所視疲労を示した。15重量%の成分1および15重量%の成分3、成分1の他にジメタクリル酸の反応生成物に基づく異なるポリカーボネートポリオールを含む実施例10は、試験した他の全てのサンプルより高い%明所視疲労を示した。各々10重量%の成分1、2および3を含んだ実施例11は、実施例9および10の%明所視疲労の間に入る%明所視疲労結果を有した。
【0178】
実施例12、13および14は、エトキシ単位がそれぞれ10〜20単位、10〜30単位に増加する%%明所視疲労が減少することを示した。
【0179】
表9および10の両方の試験は、改善されたパフォーマンス(例えば、より速い活性化速度および退色速度ならびに/または減少した疲労(例えば、より長い寿命))を有するフォトクロミックレンズが、成分1単独を利用してか、または10、20または30エトキシ単位を有するビスフェノールAジメタクリレートの位置でアクリレート(メタクリレート)処方物中の成分2および/または成分3と組み合わせることで予想外に生成した。
【0180】
本発明は、それらの特定の実施形態の特定の詳細に対する参照として記載されている。そのような詳細は、それらが添付の特許請求の範囲に含まれる限り、そしてその程度までを除いて、本発明の範囲に対する限定として見なされることを意図されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本実施例に記載のフォトクロミック物品。

【公開番号】特開2008−158551(P2008−158551A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72585(P2008−72585)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【分割の表示】特願2003−540265(P2003−540265)の分割
【原出願日】平成14年10月31日(2002.10.31)
【出願人】(504175051)トランジションズ オプティカル, インコーポレイテッド (65)
【Fターム(参考)】