説明

フォトクロミック光学物品

【課題】フォトクロミックプラスチック物品を提供すること。
【解決手段】フォトクロミックプラスチック物品(例えば、レンズのような眼科用フォトクロミック物品)。この物品は、(1)硬質基材(例えば、熱硬化性基材または熱可塑性基材のようなポリマー基材)、(2)少なくとも1つのフォトクロミック材料(例えば、スピロオキサジン、ナフトピランおよび/もしくはフルギドのフォトクロミック量を含む、基材の少なくとも1つの表面に付着されたフォトクロミックポリマーコーティング、ならびに(3)フォトクロミックコーティングに密着して付着された樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の説明)
本発明は、硬質基材を含むフォトクロミック物品に関する。この硬質基材には、フォトクロミックポリマーコーティングが塗布され、その上に樹状分岐ポリエステルアクリレートを含む透明なポリマーが重ね合わされる。特に、本発明は、透明な硬質基材(例えば、ガラスおよび光学用途に使用される有機プラスチック基材)に関連する。より詳細には、本発明は、眼科用途のために使用されるフォトクロミック物品(例えば、レンズ)に関する。なお、より詳細には、本発明は、フォトクロミック物品に関し、このフォトクロミック物品は、透明なポリマー基材(このポリマー基材は、この基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部分に付着された透明なフォトクロミック有機ポリマーコーティグを有する)、および透明な層(この透明な層は、このフォトクロミックコーティグ上に重ね合わされた樹状分岐ポリエステルアクリレートを含む)を含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
特定の実施形態において、本発明は、フォトクロミック物品(例えば、眼科用プラスチックレンズ)に関し、この物品の少なくとも1つの表面の少なくとも一部の上に、透明な、望ましくは光学的に透明なフォトクロミックポリマー性コーティングの第1の層および透明な樹状分岐アクリルポリエステルの第2の層が連続して付着されている。本発明のさらなる実施形態において、第2の層上に重ねられる少なくとも1種の磨耗抵抗コーティングを含む第3の層を有するフォトクロミック物品が企図される。なおさらなる実施形態において、第4の層(例えば、反射防止コーティング)が、その磨耗抵抗コーティング上に重ねられる。さらなる層が、その第四の層にかまたはその第4の層の下に加えられ、そのフォトクロミック物品にさらなる機能的特性(例えば、帯電防止コーティングおよび/または湿気防止コーティング)を提供し得る。
【0003】
眼への入射光線の透過率を減少させながら、良好な画像の質を提供する透明な眼科用物品が、種々の用途(例えば、サングラス、視力矯正光学レンズ、プラノレンズおよびファッションレンズ(例えば、市販レンズおよび処方レンズ)、スポーツマスク、顔面シールド、ゴーグル、覆面、カメラレンズ、窓、自動車のウインドシールド、ならびに航空機および自動車の透明物(例えば、T−ルーフ、サイドライトおよびバックライト))のために必要とされている。その必要性に反応して、光学用途のためのフォトクロミックプラスチック物品には、かなりの注目がなされている。特に、ガラスレンズに対してフォトクロミックプラスチックレンズが提供する重量の利点のために、フォトクロミックプラスチックレンズは関心がもたれている。
【0004】
さらに、本発明の実施形態は、プラスチックフィルムおよびシート、光学デバイス(例えば、光学スイッチ)、ディスプレイデバイスおよびメモリ保存デバイス(例えば、米国特許第6,589,452号に記載されるもの)、ならびにセキュリティ要素(例えば、光学的に読み取り可能なデータ媒体(例えば、米国特許出願第2002/0142248号に記載されるもの))、米国特許第6,474,695号に記載のスレッド形態またはストリップ形態のセキュリティ要素、およびセキュリティ文書および製品に載せられ得る検証マークの形態のセキュリティ要素に関連して使用され得る。
【0005】
フォトクロミズムは、有機材料または無機材料(例えば、クロメンまたはハロゲン化銀塩)またはこのような材料を含む物品の、紫外線照射への曝露の際の可逆的な色の変化に関連する現象である。紫外光線を含む照射の供給源としては、例えば日光および水銀ランプの光が挙げられる。フォトクロミック材料が紫外線照射に曝露される場合、これは色の変化を示し、そして紫外線照射が中止された場合、このフォトクロミック材料はその本来の色に戻るか、または無色状態に戻る。フォトクロミック材料が塗布されているか、または組み込まれている眼科用物品は、この色の可逆的変化および結果として光透過率の可逆的変化を示す。
【0006】
この機構は、記載されてきた異なるタイプの有機フォトクロミック化合物の特徴である色の可逆的変化(すなわち、可視光(400nm〜700nm)の電磁スペクトル中の吸収スペクトルにおける変化)を引き起こすと考えられた。例えば、John C.Crano,「Chromogenic Materials (Photochromic)」,Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,第4版(1993年),pp.321−3321を参照のこと。有機フォトクロミック化合物(例えば、インドリノスピロピランおよびインドリノスピロオキサジン)の色の可逆的変化を担う機構は、電子環機構であると考えられる。活性化紫外線照射に曝露された場合、これらの有機フォトクロミック化合物は無色の閉環形態から有色の開環形態へと転換する。対照的に、フォトクロミックフルギド化合物の可逆的な色の変化を担う電子環機構は、無色開環形態から有色の閉環形態への転換に関与すると考えられる。
【0007】
フォトクロミックプラスチック物品は、表面膨潤技術によってプラスチック基材内にフォトクロミック材料を組み込むことによって調製されてきた。このような方法において、フォトクロミック色素は、まず1つ以上のフォトクロミック色素/化合物をニートフォトクロミック色素/化合物としてか、あるいはポリマー性または他の有機溶媒キャリア中に溶解してかのいずれかで、プラスチック物品の表面に塗布する工程、次いでコーティングされた表面に熱を適用して、このフォトクロミック色素/化合物をプラスチック物品の表面下領域中に拡散させる工程(一般的に「膨潤」といわれるプロセス)によってプラスチック物品(例えば、レンズ)の表面下領域に組み込まれる。このようなフォトクロミックプラスチック物品のプラスチック基材は、ポリマーマトリクス中にフォトクロミック化合物(例えば、上述のスピロオキサジン、スピロピランおよびフルギド)を無色形態から有色形態に転換し、次いでそれらの本来の無色形態に戻すのに十分な自由容量を有すると報告される。しかしながら、上述の電子環機構が十分に現れて、商業的に受容可能なフォトクロミック用途のために、吸収された(または内部に組み込まれた)フォトクロミック材料のための基材としてそれらを使用し得るのに十分な自由容量を有さないと報告される特定のポリマーマトリクスが存在する。このような基材としては、例えば、一般的に熱硬化性ポリマーマトリクス(例えば、ポリオール(アリルカーボネート)モノマー、特にアリルジグリコールカーボネートモノマー(例えば、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)およびそれらのコポリマー))、一般的に公知の熱可塑性ビスフェノールAベースのポリカーボネートおよび高度に架橋された光学ポリマーが挙げられる。
【0008】
熱硬化性ポリマー、熱可塑性ポリカーボネートおよび高度に架橋された光学ポリマー性材料をフォトクロミック物品のためのプラスチック基材として使用するために、有機フォトクロミックコーティングをこのようなプラスチック基材の表面に塗布することが提案されてきた。フォトクロミックコーティングの曝露される表面に磨耗抵抗コーティングを塗布して、フォトクロミックコーティングの表面を物理的な操作、洗浄および他の環境へのフォトクロミックコーティングの曝露から生じる擦過または他の類似の表面的な欠損から保護することもまた提案されてきた。
【0009】
フォトクロミックポリマー性コーティングおよび磨耗抵抗コーティングのオーバーレイを有する眼科用のプラスチックレンズに関する特定の状況において、このようなレンズがひどく傷つけられた場合に、このような傷ついたレンズをアルコール(例えば、イソプロピルアルコール)を含む市販の洗浄液で洗浄することは、フォトクロミックコーティングにおいて不完全性を引き起こし得るということが観察されてきた。さらに、このようなプラスチックレンズの製造の間に、フォトクロミックコーティングに塗布される磨耗抵抗コーティング、または磨耗抵抗コーティングに塗布される反射防止コーティングが、製品要求を通過しないこと、または眼科用レンズが商業的に受容可能な眼科用レンズについての「表面的な基準」を満たさないことが見出されるのは珍しくは無い。コーティングされたレンズにおける表面上の欠損としては、しみ、ひっかき傷、異物、ひび割れおよびクレージングが挙げられる。これが生じるとき、欠陥のあるコーティングを取り除き(例えば、苛性水溶液での化学的処理によって)、その後新しいコーティングを塗布することが望ましい。受容可能でないコーティングを化学的に取り除くプロセスにおいて、下にあるコーティング(例えば、フォトクロミックコーティング)は損傷され得、それによって物品(例えば、レンズ)の価値を破壊する。当業者に容易に明らかなように、光学レンズのフォトクロミックコーティングへの磨耗抵抗コーティングおよび反射防止コーティングの連続的な塗布は、一連の複数の製造工程のうちの最後の工程の1つであり、この工程のそれぞれが、生産されるレンズの価値を増し、そしてコストを高くする。付着されたコーティングが製品要求に合わないために、この生産プロセスの最後の段階近くでレンズを破棄することは、生産コストを高くし、そしてレンズ製品の最終コストを高くする。したがって、このような製品の損失を避けることが、経済的に望ましい。
【0010】
さらに、フォトクロミック光学レンズのいくつかの製造業者は、彼らが独自に所有する磨耗抵抗コーティングおよび/または反射防止コーティングを、別の製造業者によって調製されたフォトクロミックコーティングされたレンズに取り付けることを望む。フォトクロミックコーティングが、レンズの梱包、発送、開梱、洗浄または他のこのような磨耗抵抗および/または反射防止コーティングの塗布のための調製における物理的操作の結果として、ひっかき傷がつけられたり、または傷つけられたりすることはあり得る。結果として、このような製造業者に発送されるレンズが、フォトクロミックコーティングされたレンズの梱包、開梱、発送、洗浄および/または操作の間に生じ得る擦過または他の表面的な不完全性に抵抗性(すなわち、擦過抵抗性)であることが望ましい。
【0011】
上述の困難性のうちのいくつかを減じるために、放射線硬化されるアクリレートベースのフィルムをフォトクロミックコーティングと磨耗抵抗コーティングとの間に塗布し、それによって欠陥のある磨耗抵抗コーティングおよび/または反射防止コーティングをフォトクロミックコーティングから除去することに関連する特定の製造問題を減じ、そして、磨耗抵抗コーティングを有さないフォトクロミックコーティングを操作および発送の間保護することが提案されてきた。放射線硬化されたアクリレートベースのフィルムは、(a)擦過抵抗性、(b)無機苛性希釈水溶液での処理に抵抗性、および(c)磨耗抵抗有機シラン含有コーティングに適合性であるとして記載される。アクリレートベースのフィルムをフォトクロミックコーティングに塗布する工程において、重合可能なアクリル組成物を含有する光開始剤が使用される。
【0012】
一般的に、紫外光を有効に吸収する光開始剤化合物はその構造において芳香族環を有する。さらに、それらは通常、放射線硬化可能な組成物においてそれらの可溶性を改良するために低分子量であり、その結果熱に供された場合は相対的に揮発性である。これらの特徴は、光開始剤を含有する硬化可能な組成物および硬化された組成物が、硬化の間および硬化後に、熱および光に供されたときに、硬化された組成物の黄変および不快な匂いを生じ得る。さらに、反応を起こしていない光開始剤または分解された光開始剤が硬化後に硬化された組成物中に残存し、硬化された組成物が水と接触した場合に、反応を起こしていない光開始剤が滲出するということが知られている。
【0013】
したがって、硬化のために光開始剤を必要としない放射線硬化可能なコーティング組成物、または一般的に放射線硬化可能なコーティング組成物において使用されるより少ない量の光開始剤を必要とするコーティング組成物を利用することが望ましい。樹状分岐ポリエステルアクリレートを含むコーティング/フィルムが光開始剤の使用無しで放射線によって硬化され得ること;またはわずかに少量の光開始剤を使用して放射線によって硬化され得ること;そしてこのようなコーティング/フィルムが、フォトクロミックポリマー性コーティングおよび磨耗コーティングの間に位置される場合、上記の製造問題を実質的に減じ得ることが発見されてきた。樹状分岐ポリエステルアクリレートコーティング/フィルムは、このフォトクロミックコーティングに接着し、代表的に、フォトクロミックコーティングよりも硬く、そして有機シラン材料を含む磨耗抵抗コーティングに適合性であり;すなわち塗布された磨耗抵抗コーティングがクレーズ(すなわち、微細なひび割れ)しない。
【0014】
本発明の1つの実施形態に従って企図されるフォトクロミック物品(例えば、レンズ)は、以下の組合せ:
(a)透明な硬質基材、
(b)該ポリマー性基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部分に付着された、フォトクロミック有機ポリマー性コーティングであって、該ポリマー性コーティングは、少なくとも1つの有機フォトクロミック材料を含む、ポリマー性コーティング;および
(c)該フォトクロミックポリマー性コーティング上に密着して付着された、透明な樹状分岐ポリエステルアクリレートを含む、透明な硬化されたフィルム、
を含む。
【0015】
本発明の別の実施形態において、企図される上記フォトクロミック物品は、硬化樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムの露出した表面に付着された摩耗抵抗コーティング(例えば、有機シランを含むハードコーティング)をさらに含む。本発明のさらなる実施形態において、企図されるフォトクロミック物品は、摩耗抵抗コーティグに塗布された反射防止コーティングを有する。静電防止コーティングおよび/または湿気防止コーティングのような他のコーティグもまた、反射防止コーティングに塗布され得る。
【0016】
本発明のなおさらなる実施形態において、企図される眼科用フォトクロミック物品は、以下の組合せ:
(a)透明な有機可塑性基材であって、例えば、アリルジグリコールカーボネート(例えば、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)、を含むポリマー組成物から調製される熱硬化基材、熱可塑性ポリカーボネートから調製される基材、ポリウレアウレタンから調製される基材、またはポリ官能基イソシアネートおよび/もしくはイソチオシアネートと、ポリチオールもしくはポリエピスルフィドモノマーとの反応生成物を含む組成物から調製される基材;
(b)該可塑性基材の少なくとも1つの表面に付着された、光学的に透明なフォトクロミック有機ポリマーコーティング、例えば、アクリルベースのフォトクロミックコーティング、ポリウレタンベースのフォトクロミックコーティング、ポリウレアウレタンベースのフォトクロミックコーティング、アミノプラスト樹脂ベースのフォトクロミックコーティングまたはポリエポキシベースのフォトクロミックコーティグであって、該ポリマーコーティングは、少なくとも1つの有機フォトクロミック材料のフォトクロミック量を含む、ポリマーコーティング;
(c)光学的に透明な放射線硬化性層(例えば、フィルム)であって、該フォトクロミックコーティングに干渉的に接着された樹状分岐ポリエステルアクリレートを含む、硬化層;および
(d)必要に応じて、摩耗抵抗コーティング(例えば、該樹状分岐ポリエステルアクリレート層に接着した有機シランを含むハードコーティング)
を含む。なおさらに企図される実施形態において、摩耗抵抗コーティングが存在すると仮定すれば、反射防止コーティングが、該摩耗抵抗コーティングに接着される。
本発明の好適な実施形態によれば、例えば、以下のフォトクロミック物品などが提供される:
(項目1)
フォトクロミック物品であって、該物品は、以下:
(a)硬質基材、
(b)該基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部分に付着された、フォトクロミック有機ポリマー性コーティングであって、該ポリマー性コーティングは、少なくとも1つのフォトクロミック材料のフォトクロミック量を含む、ポリマーコーティング;および
(c)該フォトクロミックポリマーコーティング上に重ね合わせられた、透明な樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルム
を含む、物品。
(項目2)
前記樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムが、樹状分岐ポリエステル高分子および2000未満の分子量を有する有機アルコールをアクリル化することによって調製される液体組成物から調製される、項目1に記載のフォトクロミック物品。
(項目3)
前記樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムが、樹状分岐ポリエステルアクリレートおよび少なくとも1つの他の放射線硬化可能なアクリル材料または熱硬化可能なアクリル材料を含む組成物から調製される、項目1に記載のフォトクロミック物品。
(項目4)
前記少なくとも1つの他の放射線硬化可能なアクリル材料または熱硬化可能なアクリル材料が、モノアクリレートおよびポリアクリレートから選択される(メタ)アクリルモノマー性材料である、項目3に記載のフォトクロミック物品。
(項目5)
前記ポリアクリレートが、ジアクリレート、トリアクリレートまたはジアクリレートおよびトリアクリレートの混合物である、項目4に記載のフォトクロミック物品。
(項目6)
前記樹状分岐ポリエステルアクリレートと、他の放射線硬化可能な(メタ)アクリルモノマー材料または熱硬化可能な(メタ)アクリル性モノマー材料との質量比が、90:10〜10:90の範囲である、項目4に記載のフォトクロミック物品。
(項目7)
前記樹状分岐ポリエステルアクリレートと、他の放射線硬化可能な(メタ)アクリルモノマー性材料または熱硬化可能な(メタ)アクリルモノマー性材料との質量比が、70:30〜30:70の範囲である、項目6に記載のフォトクロミック物品。
(項目8)
前記樹状分岐ポリエステルアクリレートと、他の放射線硬化可能な(メタ)アクリルモノマー性材料または熱硬化可能な(メタ)アクリルモノマー性材料との質量比が、60:40〜40:60の範囲である、項目6に記載のフォトクロミック物品。
(項目9)
前記樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムが、アクリル官能基以外の重合可能な基を含む少なくとも1つの他の放射線硬化可能なモノマー性材料をさらに含む組成物から調製され、該少なくとも1つの他の放射線硬化可能なモノマー性材料が、該組成物の40重量%までの量で存在する、項目4に記載のフォトクロミック物品。
(項目10)
前記樹状分岐ポリエステルポリマーアクリレートフィルムの表面に重ね合わせられた、摩耗抵抗コーティングをさらに含む、項目1に記載のフォトクロミック物品。
(項目11)
前記摩耗抵抗コーティングが、有機シランベースのコーティングを含む、項目10に記載のフォトクロミック物品。
(項目12)
前記摩耗抵抗フィルムの表面に付着された反射防止コーティグをさらに含む、項目10に記載のフォトクロミック物品。
(項目13)
少なくとも1つの光開始剤が、前記樹状分岐ポリエステルアクリレートおよび少なくとも1つの他の放射線硬化可能なアクリル材料を含む組成物に、光開始量で存在する、項目3に記載のフォトクロミック物品。
(項目14)
前記少なくとも1つの光開始剤は、前記樹状分岐ポリエステルアクリレートを含む組成物において光開始量で存在する、項目4に記載のフォトクロミック物品。
(項目15)
前記少なくとも1つの光開始剤が、0.1〜10重量パーセントの量で存在する、項目14に記載のフォトクロミック物品。
(項目16)
前記少なくとも1つの光開始剤が、0.5〜6重量パーセントの量で存在する、項目14に記載のフォトクロミック物品。
(項目17)
前記樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムの厚みが、2〜20ミクロンの範囲である、項目1に記載のフォトクロミック物品。
(項目18)
前記樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムが、摩耗抵抗有機シラン含有コーティングと適合性である、項目1に記載のフォトクロミック物品。
(項目19)
前記フォトクロミック有機ポリマー性コーティグが、樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムよりも柔らかい、項目18に記載のフォトクロミック物品。
(項目20)
前記透明な硬質基材は、1.48〜1.74の屈折率を有する、熱硬化材料または熱可塑性材料から選択される有機ポリマー基材である、項目1に記載のフォトクロミック物品。
(項目21)
前記ポリマー基材が、アリルジグリコールカーボネートモノマーを含むポリマー組成物から調製される熱硬化基材、熱可塑性ポリカーボネートから調製される基材、ポリウレアウレタンから調製される基材、またはポリ官能性イソシアネートおよび/もしくはイソチオシアネートと、ポリチオールもしくはポリエピスルフィドモノマーとの反応生成物を含む組成物から調製される基材から選択される基材である、項目20に記載のフォトクロミック物品。
(項目22)
前記アリルジグリコールカーボネートが、ジエチレングリコールビス(アリルカーネート)である、項目21に記載のフォトクロミック物品。
(項目23)
前記フォトクロミック有機ポリマー性コーティングが、フォトクロミックポリウレタンベースのコーティング、フォトクロミックポリウレアウレタンベースのコーティング、フォトクロミックポリ(メタ)アクリルベースのコーティング、フォトクロミックアミノプラスト樹脂ベースのコーティング、またはフォトクロミックエポキシ樹脂ベースのコーティグから選択される、項目1に記載のフォトクロミック物品。
(項目24)
前記フォトクロミック材料が、フォトクロミックスピロオキサジン、ベンゾピラン、ナフトピラン、フルギド、金属ジゾオネート、ジアリールエタンまたはこれらのフォトクロミック材料の混合物から選択される有機フォトクロミック材料である、項目1に記載のフォトクロミック物品。
(項目25)
前記フォトクロミックナフトピランが、ナフト[1,2−b]ピラン、ナフト[2,1−b]ピラン、スピロ−9−フルオレノ[1,2−b]ピラン、フェナントロピラン、キノピランまたはインデノ−縮合ナフトピランから選択され、かつ前記スピロオキサジンがナフトオキサジンまたはスピロ(インドリン)ピリドベンゾオキサジンから選択される、項目24に記載のフォトクロミック物品。
(項目26)
フォトクロミック物品であって、該フォトクロミック物品は、以下:
(a)透明な硬質有機ポリマー基材、
(b)該ポリマー性基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部分に付着されたフォトクロミック有機ポリマーコーティングであって、該ポリマー性コーティングは、少なくとも1つの有機フォトクロミック材料のフォトクロミック量を含む、フォトクロミック有機ポリマーコーティング、および
(c)該フォトクロミックポリマー性コーティングに密着して付着された、透明な樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルム
を含む、物品。
(項目27)
前記ポリマー基材が、1.48〜1.74の屈折率を有する熱硬化性材料または熱可塑性材料から選択される、項目26に記載のフォトクロミック物品。
(項目28)
前記ポリマー基材が、アリルジグリコールカーボネートモノマーを含む重合可能な組成物から調製される熱硬化基材、熱可塑性ポリカーボネートから調製される基材、ポリウレアウレタンから調製される基材、またはポリ官能性イソシアネートおよび/もしくはイソチオシアネートと、ポリチオールもしくはポリエピスルフィドモノマーとの反応生成物を含む組成物から調製される基材から選択される基材である、項目26に記載のフォトクロミック物品。
(項目29)
前記樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムが、樹状分岐ポリエステル高分子および2000未満の分子量を有する有機アルコールをアクリル化することによって調製される液体組成物から調製される、項目28に記載のフォトクロミック物品。
(項目30)
前記樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムが、樹状分岐ポリエステルアクリレートおよび少なくとも1つの他の放射線硬化可能なアクリル材料を含む組成物から調製され、かつ該少なくとも1つの他の放射線硬化可能なアクリル材料が、モノアクリレート、ポリアクリレートおよびそのようなアクリレート材料の混合物から選択される(メタ)アクリルモノマー性材料である、項目28に記載のフォトクロミック物品。
(項目31)
前記樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムが、樹状分岐ポリエステルアクリレートおよびネオペンチルグリコール−2−プロポキシレートジアクリレートを含む組成物から調製される、項目30に記載のフォトクロミック物品。
(項目32)
前記少なくとも1つの光開始剤は、前記樹状分岐ポリエステルアクリレートを含む組成物に光開始量で存在する、項目30に記載のフォトクロミック物品。
(項目33)
前記樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムの表面に付着された反射防止コーティグをさらに含む、項目26に記載のフォトクロミック物品。
(項目34)
前記摩耗抵抗コーティングが、有機シランベースのコーティングを含む、項目33に記載のフォトクロミック物品。
(項目35)
前記摩耗抵抗フィルムの表面に付着された反射防止コーティグをさらに含む、項目33に記載のフォトクロミック物品。
(項目36)
フォトクロミック物品であって、該物品は、以下:
(a)透明な有機ポリマー性基材であって、該基材は、アリルジグリコールカーボネートモノマーを含む重合可能な組成物から調製される熱可塑性基材、熱可塑性ポリカーボネートから調製される基材、ポリウレアウレタンから調製される基材、またはポリ官能性イソシアネートおよび/もしくはイソチオシアネートと、ポリチオールもしくはポリエピスルフィドモノマーとの反応生成物を含む組成物から調製される基材から選択され、かつ1.48〜1.74の屈折率を有する、基材
(b)該ポリマー性基材の少なくとも1つに付着された透明なフォトクロミック有機ポリマーコーティングであって、該ポリマー性コーティグは、スピロオキサジン、ベンゾピラン、ナフトピラン、フルギド、金属ジゾオネート、ジアリールエタンまたはこれらのフォトクロミック材料の混合物から選択される少なくとも1つの有機フォトクロミック材料のフォトクロミック量を含み、該フォトクロミックポリマー性コーティングは、5〜200ミクロンの厚みを有する、フォトクロミック有機ポリマー性コーティング;ならびに
(c)該フォトクロミックポリマー性コーティングに密着して付着された、放射線硬化された透明な樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルム
を含む、物品。
(項目37)
前記フォトクロミックコーティングが、フォトクロミックポリウレタンベースのコーティング、フォトクロミックポリウレアウレタンベースのコーティング、フォトクロミックポリ(メタ)アクリルベースのコーティング、フォトクロミックアミノプラスト樹脂ベースのコーティング、またはフォトクロミックエポキシ樹脂ベースのコーティグから選択され、かつ10〜50ミクロンの厚みを有する、項目36に記載のフォトクロミック物品。
(項目38)
前記樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムの表面に付着された摩耗抵抗コーティングをさらに含む、項目36に記載のフォトクロミック物品。
(項目39)
前記摩耗抵抗コーティングが、有機シランベースのコーティグを含む、項目38に記載のフォトクロミック物品。
(項目40)
前記摩耗抵抗コーティングの表面に付着された反射防止コーティグをさらに含む、項目38に記載のフォトクロミック物品。
(項目41)
前記ポリマー性基材が、熱可塑性ポリカーボネートを含む基材である、項目36に記載のフォトクロミック物品。
(項目42)
前記樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムが、樹状分岐ポリエステル高分子および60〜1000の分子量を有する脂肪族アルコールをアクリル化することによって調製される液体組成物から調製される、項目36に記載のフォトクロミック物品。
(項目43)
前記樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムが、樹状分岐ポリエステルアクリレートおよび少なくとも1つの他の放射線硬化可能なアクリル材料を含む組成物から調製される、項目41に記載のフォトクロミック物品。
(項目44)
前記少なくとも1つの他の放射線硬化可能なアクリル材料が、モノアクリレートおよびポリアクリレートから選択される(メタ)アクリルモノマー材料である、項目43に記載のフォトクロミック物品。
(項目45)
前記ポリアクリレート材料が、ジアクリレート、トリアクリレートまたはジアクリレートおよびトリアクリレートの混合物である、項目44に記載のフォトクロミック物品。
(項目46)
前記樹状分岐ポリエステルアクリレートと、他の放射線硬化可能な(メタ)アクリルモノマー性材料との質量比が、70:30〜30:70の範囲である、項目44に記載のフォトクロミック物品。
(項目47)
少なくとも1つの光開始剤が、樹状分岐ポリエステルアクリレートおよび少なくとも1つの他の放射線硬化可能なアクリル材料を含む組成物に、光開始量で存在する、項目43に記載のフォトクロミック物品。
(項目48)
前記少なくとも1つの光開始剤が、0.5〜6重量パーセントの量で存在する、項目47に記載のフォトクロミック物品。
(項目49)
前記物品が、眼科用物品である、項目36に記載のフォトクロミック物品。
(項目50)
前記眼科用物品が、レンズである、項目49に記載のフォトクロミック物品。
(項目51)
前記フォトクロミックコーティングが、フォトクロミックポリウレタンベースのコーティング、フォトクロミックポリウレアウレタンベースのコーティング、フォトクロミックポリ(メタ)アクリルベースのコーティング、フォトクロミックアミノプラスト樹脂ベースのコーティング、またはフォトクロミックエポキシ樹脂ベースのコーティグから選択され、10〜50ミクロンの厚みを有し、かつ前記樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムが、樹状ポリエステルアクリレートおよび少なくとも1つの放射線硬化可能な(メタ)アクリレート材料を含む組成物から調製される、項目41に記載のフォトクロミック物品。
(項目52)
前記樹状分岐ポリエステルアクリレートおよび少なくとも1つの他の放射線硬化可能な(メタ)アクリレート材料を含む組成物に、少なくとも1つの光開始剤が0.1〜10重量パーセントの量で存在する、項目51に記載のフォトクロミック物品。
(項目53)
前記物品が、眼科用物品である、項目52に記載のフォトクロミック物品。
(項目54)
前記眼科用物品が、レンズである、項目53に記載のフォトクロミック物品。
(項目55)
前記樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムの表面に付着された摩耗抵抗コーティングをさらに含む、項目54に記載のフォトクロミック物品。
(項目56)
前記摩耗抵抗コーティングの表面に付着された反射防止コーティグをさらに含む、項目55に記載のフォトクロミック物品。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
本発明に従って、硬質基材(例えば、ガラスまたは有機ポリマー性材料のような透明な基材);この基材の少なくとも1つの表面の少なくとも1部に付着されたフォトクロミックポリマー性コーティング;およびこのフォトクロミックコーティング上に重ね合わせられた(例えば、接着された)樹状分岐ポリエステルアクリレートを含む層(例えば、コーティング/フィルム)を組み合わせて備えるフォトクロミック物品が提供される。この樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムは、代表的には、(a)フォトクロミックコーティングより硬く、例えば、こすられるか、または削られた場合にフォトクロミックコーティングよりも、透過されにくく、損なわれにくく、傷がつきにくく、そして望ましくは、(b)磨耗抵抗である有機シラン含有コーティングに適合性である。
【0018】
本明細書(操作実施例以外)の目的のために、他で特に示されない限り、成分、反応条件などの量および範囲を表す全ての数字(例えば、屈折率および波長などを表すもの)は、全例において語句「約」で修飾されていると理解されるべきである。したがって、他で逆に示されない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲で記載される数値で表したパラメーターは近似値であり、本発明によって得ようとされる所望の特性に依存して変動し得る。少なくとも、そして特許請求の範囲に対して均等論の適用の制限を意図することなく、各々の数値パラメーターは、報告された有効数字の数値および通常の四捨五入の技術の適用を考慮して読むべきである。さらに、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される冠詞「a」、「an」および「the」は、明瞭かつ明解に一つの指示対象に限定しない限り、複数の指示対象も含むことが意図される。
【0019】
本明細書中で使用される場合、硬化された組成物または硬化可能な組成物(例えば、いくつかの特定の記述の「硬化された組成物」)と関連して使用される、用語「硬化」「硬化された」または類似の用語は、硬化可能な組成物を形成する重合可能な成分および/または架橋可能な成分の少なくとも1部が、少なくとも部分的に重合および/または架橋されているということを意味することが意図される。特定の実施形態において、この架橋可能な成分の架橋密度(例えば、架橋の度合い)は、完全架橋の5%〜100%の範囲であり得る。他の実施形態において、この架橋密度は、全架橋の35%〜85%(例えば、50%〜85%)の範囲であり得る。この架橋の度合いは、列挙された値を含む、先に定められた値の任意の組み合わせの間の範囲であり得る。
【0020】
発明の広い範囲を記載する数値範囲およびパラメーターは近似値であるが、特定の実施例に記載の数値は、できるだけ正確に報告している。しかし、そのようないかなる数値も、それぞれの試験測定において見出される標準偏差からやむを得ず生じるいくらかの誤差を本来含んでいる。
【0021】
関連するモノマーの調製方法、ポリマー化、コーティング、物品、フォトクロミック化合物などを記載する、欄および行番号によって言及される特定の特許における開示のような、本特許出願明細書における特定の引用(公開された特許または認可された特許、および公開された論文)は、本明細書中に参考として全体が援用される。
【0022】
本発明の実施形態に従って、硬化された樹状分岐ポリエステルアクリレートを含む層(例えば、フィルム)は、フォトクロミックポリマー性コーティングに重ね合わせられる(例えば、密着して接着される)。非アクリル性樹状分岐ポリエステル型高分子が、米国特許第5,418,301号、同第5,663,247号、同第6,225,404 B1号および米国特許出願公開第2002/0151652 A1号などにおいて記載される。これらの高分子は、代表的には樹枝様の構造を有する三次元分子である。本明細書中で使用される場合、用語「樹状分岐ポリエステル型高分子」および「樹状分岐ポリエステル型オリゴマー」(または類似の意味の用語)は、高度に分枝した樹状分岐高分子およびデンドリマーを意味し、そして包含することが意図される。高度に分枝したであると指定される類似の高分子がある程度非対称性を保持する一方、デンドリマーは高度に対称性であり、なお高度に分枝した樹枝様構造を維持する。デンドリマーは、単分散の高度に分枝した樹状分岐高分子または実質的に単分散の高度に分枝した樹状分岐高分子と呼ばれ得る。
【0023】
高度に分枝した樹状分岐ポリエステル高分子は、通常1つ以上の反応部位または官能基を有する開始剤または核および多くの分枝層、そして必要に応じて1つ以上のスペーシング層および/または鎖末端化分子の層を含む。分枝層の連続複製は、通常増加した分枝多重度を得、そして、適用可能であるか所望される場合、増加した数の末端官能基を得る。この層は、通常、世代および分枝デンドロンと呼ばれる。高度に分枝した分枝状樹状分岐高分子(デンドリマー)は、米国特許第6,225,404 B1号の第6欄、第8〜30行目に見出される式によって図示され得る。これらの式において、XおよびYは、それぞれ4つおよび2つの反応性官能基を有する開始剤または核であり、そしてA、BおよびCは3つ(AおよびC)および4つ(B)の反応性官能基を有する分枝鎖エクステンダーであり、各分枝鎖エクステンダーは、高分子において1つの分枝鎖世代を形成する。上述の式におけるTは、末端鎖ストッパーまたは適切な末端官能基または末端部位である(例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基またはエポキシド基)。
【0024】
デンドロンは、予め生成され、次いで核に添加され得る。デンドロンは、例えば、1つ以上のヒドロキシ官能性カルボン酸を、通常のエステル化温度で、一官能性、二官能性、三官能性または多官能性のカルボン酸に、一官能性、二官能性、三官能性または多官能性のアルコールまたはエポキシドでエステル基を形成させるか、あるいはエステル結合、エーテル結合または他の化学結合を生じる類似の手順によって濃縮することによって生成され得る。デンドロンを生成するために使用される原材料は、核または開始剤と反応される少なくとも1つの末端反応部位を提供するように選択される。
【0025】
樹状分岐ポリエステル型高分子は、代表的には、エステルまたはポリエステルユニットから、必要に応じてエーテルまたはポリエーテルユニットと組み合わせて組み立てられる。この高度に分枝した樹状分岐高分子は、少なくとも1つの反応性エポキシド基、ヒドロキシル基、カルボキシル基または無水基を有するモノマー性またはポリマー性の核そして必要に応じて、少なくとも1つの鎖エクステンダーを含む少なくとも1つのスペーシング世代を含み、核に1〜100、通常1〜20(例えば、2〜8)の少なくとも3つの反応基を有する少なくとも1つのモノマー性またはポリマー性分枝鎖エクステンダーを含む分枝世代が添加され、この反応基の少なくとも1つはヒドロキシル基であり、かつ少なくとも1つはカルボキシル基または無水基である。このスペーシング鎖エクステンダーは、望ましくは1つはヒドロキシル基であり、かつ1つはカルボキシル基または無水基である2つの反応基を有する化合物であるか、あるいはラクトンのようなこのような化合物の内部エーテルである。この高度に分枝した樹状分岐高分子の末端鎖エクステンダー官能基は、実質的に、ヒドロキシル基、カルボキシル基または無水基であり、そしてこの高度に分枝した樹状分岐高分子は、必要に応じて、少なくとも1つのモノマー性またはポリマー性鎖ストッパーで完全にか、または部分的に鎖末端化されている、および/または官能基化されている。
【0026】
樹状分岐ポリエステル型高分子は、十分に規定される、高度に分岐した高分子であり、これは中心コアから放射状に広がり、そして議論されるように、段階的な反復分枝反応シーケンスを介して合成される。この反復分枝シーケンスは、代表的に、各世代について完全なシェルを保証し、高分子が代表的には単分散であることを導く。この樹状分岐ポリエステル高分子調製のための合成手順は、その大きさ、形状、界面/内面化学、可撓性および位相に対するほぼ完全な制御を提供する。この樹状分岐ポリエステル高分子は、完全かつ対称性の分枝および不完全かつ非対称性の分枝を有し得る。
【0027】
ポリエステル型樹状分岐高分子についての中心開始分子の非限定的な例としては、分子量2000未満の脂肪族、脂環式または芳香族のジオール、トリオール、テトラオール、ソルビトール、マンニトール、ジペンタエリスリトール、二価アルコール、三価アルコールまたは多価アルコールとアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシド)との反応生成物が挙げられる。適切なジオールの非限定的な例としては、1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールのダイマー、トリマーまたはポリマー、2−アルキル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジアルキル−1,3−プロパンジオール(例えば、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール)、2−ヒドロキシ−2−アルキル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジ(ヒドロキシアルキル)−1,3−プロパンジオール、2−ヒドロキシアルコキシ−2−アルキル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジ(ヒドロキシアルコキシ)−1,3−ブロパンジオール(propandiol)、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−エタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、1,6−ヘキサンジオールおよびポリテトラヒドロフランが挙げられる。この開始剤分子のアルキル基は、代表的には、C−C12(例えば、C−C)アルキル基である。
【0028】
ポリエステル鎖エクステンダーは、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する一官能性カルボン酸であり、例えば、ジメチロールプロピオン酸、α,α−ビス(ヒドロキシ)プロピオン酸、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)吉草酸、α,α,α−トリス(ヒドロキシメチル)酢酸、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、α,β−ジヒドロキシプロピオン酸、ヘプトン酸、クエン酸、d−酒石酸またはl−酒石酸、あるいは3,5−ジヒドロキシ安息香酸のようなα−フェニルカルボン酸であるが、これらに限定されない。
【0029】
使用され得る鎖末端化因子(chain terminating agent)としては、飽和一官能性カルボン酸、飽和脂肪酸、不飽和一官能性カルボン酸、安息香酸のような芳香族一官能性カルボン酸、および二官能性または多官能性のカルボン酸またはそれらの無水物が挙げられる。このような酸の例はベヘン酸である。ポリエステル鎖エクステンダー中の末端ヒドロキシ基は、官能基の有無にかかわらず鎖ストッパーと反応し得る。
【0030】
樹状分岐ポリエステル型高分子は、Perstorp Specialty Chemicals,Perstorp,SwedenからBOLTORN(登録商標)H20、H30およびH40樹状分岐高分子の表示の下市販されており、これらの高分子は末梢(periphery)においてヒドロキシ基で官能基化されている。これらの材料は1,000〜4000の範囲の平均分子量を有する。このBOLTORN(登録商標)H20、H30およびH40材料は、それぞれ、高分子の末梢部に平均で16個、32個および64個のヒドロキシ基を有する。
【0031】
樹状分岐ポリエステル高分子材料は、公知のエステル化技術によってアクリル化され、本明細書中に記載の樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムを形成するために使用される材料を提供し得る。例えば、国際公開第00/77070 A2号および同第00/64975号を参照のこと。
【0032】
アクリル化、アクリル性樹状分岐ポリエステル高分子の回収および精製は、例えば、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology−1980 Vol.1,pages 386−413、「Acrylic
Ester Polymers」に開示されるような、文献から周知の方法を使用して適切に実施され得る。アクリル化は、代表的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸(β−メタクリル酸)との直接反応(例えば、エステル化)ならびに/あるいは上記アクリルに対応する無水物および/またはハロゲン化物との直接反応であり、通常、ヒドロキシル基と上記酸、無水物および/またはハロゲン化物のモル比が1:0.1と1:5との間、より通常には、1:0.5と1:1.5との間のである。代表的には、このアクリル化因子は、化学量論的なモル過剰において使用される。他のアクリル化因子としては、例えば、エポキシドまたは無水官能性アクリレートおよびグリシジルメタクリレートのようなメタクリレートが挙げられる。
【0033】
アクリル化された樹状分岐ポリエステル高分子は、官能性アクリル基(例えば、アクリル化されたヒドロキシル基)の可変パーセンテージを有し得る。このようなパーセンテージは、初期のヒドロキシル含有量に基づいて5%〜100%変動し得る。しばしば、このパーセンテージは、45%〜80%のように、20%〜90%(例えば、40%〜85%)変動し得る。アクリル化されたヒドロキシル基のパーセンテージは、列挙されたパーセンテージを含む、これらのパーセンテージの任意の組み合わせに及び得る。
【0034】
このエステル化工程は、代表的には、無極性の有機溶媒のような溶媒の存在下で実施され、この有機溶媒の例としては、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、キシレンまたはこのような溶媒の混合物が挙げられるがこれらに限定されない。エステル化は、以下のような触媒の存在下で簡便に実施される:p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、硫酸、リン酸、ナフタレンスルホン酸、BF、AlCl、SnClのようなルイス酸、チタン酸テトラブチルのようなチタネート、および有機スズ化合物。このアクリル化工程は、代表的には、50℃〜200℃の温度で実施され、より通常は、80℃〜150℃の温度で、選択された溶媒およびアクリル化工程が実施される圧力に依存して実施される。このアクリル化工程は、メチルエーテルヒドロキノン、ヒドロキノン、フェノチアジン、ジ−t−ブチルヒドロキノンのようなラジカル重合インヒビター、またはこのようなインヒビターの混合物の存在下で実施され得る。
【0035】
国際公開第00/64975号の開示に従って、樹状分岐ポリエステル高分子は一般的に粘性の液体であるので、この樹状分岐ポリエステル高分子は、アクリル化工程の前に1つ以上のヒドロキシル基および2000未満(例えば、60〜1500または100〜1000)の分子量を有する有機アルコール(例えば、脂肪族アルコール)と混合され得る。代表的には、このアルコールは約20℃〜50℃の温度で液体であるか、この温度で上記樹状分岐ポリエステル高分子との液体混合物を得る。このアルコールは、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコールまたは1,3−プロピレングリコール、ブタンジオールあるいはジグリコール、トリグリコールまたはポリグリコールのようなジオールであり得、例としては、ジエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたは1つ以上のエチレングリコールおよび1つ以上のプロピレングリコールを含むポリマーのようなグリコールポリマーが挙げられる。この樹状分岐ポリエステル高分子およびアルコールは、25:75と75:25との間または40:60と60:40との間(例えば、50:50)のような、90:10と10:90との間の樹状分岐ポリエステル 対 アルコールの重量比で混合され得る。この混合物のアクリル化は、少なくとも1つの樹状分岐ポリエステルアクリレートおよび少なくとも1つのアクリレートモノマーを含むアクリレート化合物を生成する。樹状分岐ポリエステル高分子およびアルコールの重量比は、規定の値を含む列挙された値の任意の組み合わせの間で変動し得る。
【0036】
本開示および特許請求の範囲で使用される場合、用語「樹状分岐ポリエステルアクリレート」(または同様の意味の用語)は、樹状分岐ポリエステル型高分子をアクリル化することによってか、またはアクリル化工程の間にアクリル化される基を有する粘性減少材料(例えば、1つ以上のヒドロキシル基を有する1つ以上のアルコール)を含有する樹状分岐ポリエステル型高分子をアクリル化することによって生成される組成物を意味し、そして包含することが意図される。用語「樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルム」(または同様の意味の用語)は、樹状分岐ポリエステルアクリレート(上に定義される)を含む組成物ならびに樹状分岐ポリエステルアクリレートおよび少なくとも1つの他の放射線硬化可能なアクリル材料または熱的に硬化可能なアクリル材料を含む組成物(樹状分岐ポリエステルアクリレート(上に定義される)および放射線硬化可能なアクリル材料または熱的に硬化可能な(メタ)アクリルモノマー(以下で集合的に放射線硬化可能な材料として言及される)の混合物の組成物)の放射線硬化によって生成されるフィルムを意味し、そして包含することが意図される。用語「樹状分岐ポリエステルアクリレートを含む組成物」(または同様の意味の用語)は、このような組成物のいずれかを意味し、そして包含することが意図される。異なる樹状分岐ポリエステルアクリレートのブレンドが、樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムを調製するために使用される組成物の中で使用され得ることもまた企図される。
【0037】
樹状分岐ポリエステルアクリレート組成物中に組み込まれ得る放射線硬化可能な(メタ)アクリルモノマー材料の非限定的な例としては、モノアクリレートおよびジアクリレート、トリアクリレート、テトラアクリレート、ペンタアクリレートのようなポリアクリレートなどが挙げられる。代表的には、ジアクリレート、トリアクリレートおよびこのようなアクリレートの混合物が企図される。この(メタ)アクリルモノマー材料は、樹状分岐ポリエステルアクリレート組成物と、所望されるフィルムの物理的特性(例えば、ブレンドの粘性、架橋の度合いおよびフィルムの硬さ)に依存して種々の比率でブレンドされ得る。代表的には、さらなる(メタ)アクリルモノマー材料に対する樹状分岐ポリエステルアクリレート(上に定義される)の重量比は、広範に変動し得る。特に、この重量比は90:10〜10:90の範囲に及び得、より詳細には50:50のような70:30〜30:70の範囲(例えば40:60〜60:40)に及び得る。このさらなる(メタ)アクリルモノマー材料に対する樹状分岐ポリエステルアクリレートの比率は、規定の値を含む列挙された値の任意の組み合わせの間で変動し得る。
【0038】
本明細書中で使用される場合、用語「アクリル」および「アクリレート」は、(意図する意味を変更することが無い限り)交換可能に使用され、アクリル酸の誘導体ならびに他のように明確に示されない限り、メタクリル酸、エタクリル酸などの置換アクリル酸を包含する。用語「(メタ)アクリル」または「(メタ)アクリレート」は、示された材料(例えば、モノマー)のアクリル/アクリレート形態およびメタクリル/メタクリレート形態の両方を包含するように意図される。1つの企図される実施形態において、樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムは、フォトクロミックコーティングと磨耗抵抗コーティングとの間に挿入され、かつフォトクロミックコーティングおよび磨耗抵抗コーティングに隣接するので、このフィルムはこれらのコーティングをつなぎ合わせるように役立ち、そしてフォトクロミックコーティングを保護する障壁として役立つ。このような実施形態において、樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムは、「タイ層」と言われ得る。
【0039】
アクリルモノマーの非限定的な例としては、ポリアクリレート(例えば、ジアクリレート、トリアクリレート、テトラアクリレートおよびペンタアクリレート)およびモノアクリレート(例えば、単一のアクリル官能基を含有するモノマー、ヒドロキシ置換モノアクリレートおよびトリアルコキシシリルプロピルメタクリレートのようなアルコキシシリルアルキルアクリレート)が挙げられる。
【0040】
多くのアクリレートが、以下の一般式I
R”−[OC(O)C(R’)=CH
によって表され得、
ここで、R”は2〜20個の炭素原子および必要に応じて1〜20個のアルキレンオキシ結合を含有する脂肪族基または芳香族基であり;R’は水素または1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基であり、そしてnは1〜5の整数である。nが1より大きい場合、R”はアクリル官能基を一緒に結合する結合基である。代表的には、R’は水素またはメチルであり、そしてnは1〜3の整数である。より具体的には、ジアクリレート(nが2の場合)は、一般式II
【0041】
【化1】

によって表され得、
ここで、RおよびRは同じか、または異なり得、そしてそれぞれ、水素または1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基(例えば、メチル)から選択され、そしてAは、例えば1〜20個の炭素原子のヒドロカルビル結合基(例えば、アルキレン基、1つ以上のオキシアルキレン基(または異なるオキシアルキレン基の混合物));あるいは以下の一般式III
【0042】
【化2】

の基であり、
ここで、各Rは、水素原子または1〜4個の炭素原子のアルキル基(例えば、メチル)であり;Xはハロゲン原子(例えば、塩素)であり;aは0〜4の整数(例えば、0〜1)であり、ベンゼン環上で置換されたハロゲン原子の数を表し;そしてkおよびmは、0〜20の数(例えば、1〜15または2〜10)である。このkおよびmの値は、平均値であり、計算される場合は自然数または分数であり得る。
【0043】
エポキシ基を有するアクリレートは、以下の一般式IV
【0044】
【化3】

によって表され得、
ここで、RおよびRは同じか、または異なり得、そしてそれぞれ、水素または1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基(例えば、メチル)から選択され;RおよびRは2〜3個の炭素原子を含有するアルキレン基(例えば、エチレンオキシおよびプロピレンオキシ)であり、そしてmおよびnは0〜20の数(例えば、0または1〜15または2〜10)である。mおよびnのうちの1つが0であり、他方が1である場合、残存するR基は以下の式V
【0045】
【化4】

の芳香族基(例えば、2,2’−ジフェニレンプロパン基に由来する基)であり得、このフェニル基は、C〜Cアルキル基またはハロゲン(例えば、メチルおよび/塩素)で置換され得る。
【0046】
以下の特定のアクリルモノマー材料の詳細な実施例において、用語「アクリレート」は、アルキル基において1〜4個の炭素原子を含有する対応するアルキルアクリレート、特に、対応するメタクリレートを意味し、そして包含することが意図され;そしてここで、アルキルアクリレート(例えば、メタクリレート)が特定され、対応するアクリレートが企図される。例えば、実施例におけるヒドロキシエチルアクリレートへの言及は、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルエタクリレートなどを含み;エチレングリコールジアクリレートへの言及は、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジエタクリレートなどを含む。このようなアクリルモノマー材料の非限定的な例としては以下が挙げられる;
ヒドロキシエチルアクリレート、
ヒドロキシプロピルアクリレート、
ヒドロキシブチルアクリレート、
ヒドロキシ−ポリ(アルキレンオキシ)アルキルアクリレート、
カプロラクトンアクリレート、
エチレングリコールジアクリレート、
ブタンジオールジアクリレート、
ヘキサンジオールジアクリレート、
ヘキサメチレンジアクリレート、
ジエチレングリコールジアクリレート、
トリエチレングリコールジアクリレート、
テトラエチレングリコールジアクリレート、
ポリエチレングリコールジアクリレート、
ジプロピレングリコールジアクリレート、
トリプロピレングリコールジアクリレート、
テトラプロピレングリコールジアクリレート、
ポリプロピレングリコールジアクリレート、
グリセリルエトキシレートジアクリレート、
グリセリルプロポキシレートジアクリレート、
トリメチロールプロパントリアクリレート
トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、
トリメチロールプロパンプロポキシレートトリアクリレート、
ネオペンチルグリコールジアクリレート、
ネオペンチルグリコールエトキシレートジアクリレート、
ネオペンチルグリコールプロポキシレートジアクリレート、
モノメトキシトリメチロールプロパンエトキシレートジアクリレート、
ペンタエリスリトールエトキシレートテトラアクリレート、
ペンタエリスリトールプロポキシレートテトラアクリレート、
ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、
ジペンタエリスリトールエトキシレートペンタアクリレート、
ジペンタエリスリトールプロポキシレートペンタアクリレート、
ジ−トリメチロールプロパンエトキシレートテトラアクリレート、
2〜20個のエトキシ基を含有するビスフェノールAエトキシレートジアクリレート、
2〜20個のプロポキシ基を含有するビスフェノールAプロポキシレートジアクリレート、
2〜20個のエトキシ基およびプロポキシ基の混合物を含有するビスフェノールAアルコキシル化ジアクリレート、
ビスフェノールAグリセロレートジメタクリレート、
ビスフェノールAグリセロレート(1グリセロール/1フェノール)ジメタクリレート、グリシジルアクリレート、
β−メチルグリシジルアクリレート、
ビスフェノールA−モノグリシジルエーテルアクリレート、
4−グリシジルオキシブチルメタクリレート、
3−(グリシジル−2−オキシエトキシ)−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、
3−(グリシジルオキシ−1−イソプロピルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、
3−(グリシジルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、および
3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート。
【0047】
本発明のさらなる実施形態において、放射線重合可能な、または熱重合可能なエチレン官能基またはアリル官能基(アクリル官能基以外)を含むモノマーのような、さらに他の反応性モノマー/希釈物もまた存在し得るということが企図される。このような材料の例としては、放射線硬化可能なビニル化合物(例えば、ビニルエーテル)が挙げられるがこれらに限定されない。これらの反応性モノマー/希釈物は、(樹脂固体に基づき)樹状分岐ポリエステルアクリレートを含む組成物の0〜10または20重量パーセントのような30重量パーセントまで、または40重量パーセントまでの量(例えば、0〜40重量パーセント)で存在し得る。この反応性モノマー/希釈物の量は、列挙された値を含む任意の規定の量の間で変動し得る。
【0048】
放射線硬化可能な樹状分岐ポリエステルアクリレートにおいて使用され得るビニルエーテル基を有する化合物としては、水素原子/基、ハロゲン原子/基、ヒドロキシ基およびアミノ基で置換された末端基を有するアルキルビニルエーテル;水素原子/基、ハロゲン原子/基、ヒドロキシ基およびアミノ基で置換された末端基を有するシクロアルキルビニルエーテル;ビニルエーテル基がアルキレン基と結合されたモノビニルエーテル、ジビニルエーテルおよびポリビニルエーテルが挙げられるがこれらに限定されず;そしてここで、ビニルエーテル基はアルキル、シクロアルキル、および芳香族基から選択される置換基の有無にかかわらず、エーテル結合、ウレタン結合およびエステル結合から選択される少なくとも1つの結合を介して少なくとも1つの基に結合される。
【0049】
このような化合物の例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:メチルビニルエーテル、ヒドロキシメチルビニルエーテル、クロロメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、3−クロロプロピルビニルエーテル、3−アミノプロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、4−アミノブチルビニルエーテル、ペンチルビニルエーテル、イソペンチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールモノビニルエーテル、へプチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、イソオクチルビニルエーテル、ノニルビニルエーテル、イソノニルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、イソデシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、イソドデシルビニルエーテル、トリデシルビニルエーテル、イソトリデシルビニルエーテル、ペンタデシルビニルエーテル、イソペンタデシルビニルエーテル、ヘキサデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、メチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、およびペンタエリスリトールテトラビニルエーテル。
【0050】
シクロアルキルビニルエーテルとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:シクロプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシシクロプロピルビニルエーテル、2−クロロシクロプロピルビニルエーテル、シクロプロピルメチルビニルエーテル、シクロブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシシクロブチルビニルエーテル、3−クロロシクロブチルビニルエーテル、シクロブチルメチルビニルエーテル、シクロペンチルビニルエーテル、3−ヒドロキシシクロペンチルビニルエーテル、3−クロロシクロペンチルビニルエーテル、シクロペンチルメチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−アミノシクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテルおよびシクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル。
【0051】
使用され得るビニルエーテルの他の非限定的な例としては、以下が挙げられる:エチレングリコールメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテルなど。例えば、米国特許第6,410,611 B1号の第19欄第26行目〜第20欄第27行目に規定されるビニルエーテルを参照のこと。
【0052】
上に記載のさらなるアクリルモノマーおよび他の反応性モノマー/希釈物の量は、硬化可能な樹状分岐ポリエステルアクリレート含有フィルム組成物を含む重合可能な材料(樹脂固体)の総量に基づき、この総量は非重合可能有機希釈物(例えば、溶媒、光開始剤、安定剤、可塑剤および他のこのような成分)のような他の成分を含まない。硬化可能なフィルム組成物を含む種々の重合可能な材料の全ての合計は、もちろん100パーセントに等しい。
【0053】
放射線硬化可能な(メタ)アクリル材料は、代表的には市販されており;そして市販されていない場合、当業者に周知の手順で合成され得る。市販されるアクリル材料の例は、米国特許第5,910,375号において、特に第8欄第20〜55行目および第10欄第5〜36行目に見られる開示に見出され得る。市販されるアクリル材料は、種々の製造業者から入手可能であり、SARTOMER、EBECRYLおよびPHOTOMERの商品名で販売されているものを含む。
【0054】
同時係属の、本願と同日にW. Blackburnらによって出願された、発明の名称「Photochromic Optical Article」米国特許出願番号第xx/xxx,xxx号に開示されるように、接着を増強する量の接着促進材料(接着促進因子)が、樹状分岐ポリエステルアクリレートを含む組成物中に組み込まれ得ることが企図される。接着を増強する量によって、樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムに適用される重ね合わせられた有機シラン含有磨耗抵抗コーティング(本明細書中に記載される)に対する、樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムの適合性が増強されるということが意味される。代表的には、少なくとも1つの接着促進因子の0.1〜20重量パーセントが、樹状分岐ポリエステルアクリレート組成物がフォトクロミックコーティング上に適用される前に、樹状分岐ポリエステルアクリレート組成物中に組み込まれる。より具体的には、少なくとも1つの接着促進因子の0.5〜16(例えば、0.5〜10)重量パーセント、より具体的には0.5〜8(例えば、5)重量パーセントが樹状分岐ポリエステルアクリレート組成物中に組み込まれる。樹状分岐ポリエステルアクリレート組成物中に組み込まれる接着促進因子の量は、列挙された値を含む上述の値の任意の組み合わせの間の範囲であり得る。
【0055】
樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルム中に組み込まれ、その磨耗抵抗コーティング(例えば、有機シラン材料を含む磨耗抵抗コーティング)との適合性を増強し得る接着促進因子の中には、アミノ有機シランのような接着促進有機シラン材料、ならびにシランカップリング剤、有機チタン酸カップリング剤および有機ジルコン酸カップリング剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
使用され得るアミノ有機シランは、第一アミノ有機シラン、第二アミノ有機シランおよび第三アミノ有機シランであり、特にアミノ有機シランは以下の一般式VI:
【0057】
【化5】

によって表され、
ここで、nは0〜2の整数(通常は0または1)であり;各Rはメチル、エチル、プロピルおよびブチルのようなC−Cアルキル(通常はC−Cアルキル)、メトキシメチル、メトキシエチル、エトキシメチルなどのようなC−CアルコシキC−Cアルキル(代表的にはC−CアルコキシC−Cアルキル)、またはC−C10アリール(例えば、C−Cアリール)から独立して選択され;Rは水素、C−Cアルキル(通常はC−Cアルキル)またはC−C10アリール(例えば、C−Cアリール)であり;Rは二価C−C10アルキレン、C−C10アルケニレンまたはフェニレン(通常はエチレン、トリメチレンなどのようなC−Cアルキレン)またはビニレン、1−プロペニレン、ブテニレン、2−ペンテニレンなどのようなC−Cアルキレンであり;各RおよびRは、水素、C−Cアルキル(通常はC−Cアルキル)、C−Cヒドロキシアルキル(通常はC−Cヒドロキシアルキル)、C−Cアミノアルキル(通常はC−Cアミノアルキル)、C−Cシクロアルキル(例えば、C−Cシクロアルキル)、C−C10アリール(例えば、C−Cアリール)、(メタ)アクリルイルオキシC−Cアルキル(このアルキル基は必要に応じてヒドロキシのような官能基で置換されている)(例えば、(メタ)アクリルイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)から独立して選択されるか、またはRおよびRは、一緒になって4〜7個の炭素原子を(例えば、5〜6個の炭素原子)のシクロアルキル基を形成するか、またはC−C複素環基を形成し、ここで、ヘテロ原子は酸素および/または窒素(例えば、モルホリノまたはピペラジノ)であるか、または一般式VIA
【0058】
【化6】

で表される基であり、
ここで、R、R、Rおよびnは一般式VIに関して定義される通りである。上記式によって表される化合物の部分的および全体の加水分解物は、式VIの化合物中にもまた含まれる。
【0059】
使用され得るアミノシランの非限定的な例としては、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチルトリメトキシシラン、アミノエチルトリエトキシシラン、メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノブチルメチルジメトキシシラン、アミノプロピルジメチルメトキシシラン、アミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノプロピルジメチルエトキシシラン、アミノブチルメチルジメトキシシラン、ビス−(γ−トリメトキシシリルプロピル)アミン、N−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(3−アクリルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、(N,N−ジエチル−3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、ジエチルアミノメチルトリエトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2’−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2’−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ブチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−オクチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−シクロヘキシル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(3’−トリエトキシシリルプロピル)−ピペラジン、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)アミン、トリス−(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン、N,N−ジメチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−メチル−N−ブチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(3’−アミノプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(3’−トリエトキシシリルプロピル)モルホリン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、およびN−フェニル−γ−アミノ−2−メチルプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0060】
シランカップリング剤は、以下の一般式VII:
(R(RSi[(OR) VII
によって表され得、
ここで、各Rは、エポキシ、グリシドキシ、アミノ、ビニル、スチリル、(メタ)アクリルオキシ、メルカプト、ハロアルキル(例えば、クロロアルキル)、ウレイド、または有機官能基で置換された10個以下の炭素原子を有する炭化水素基から独立して選択される有機官能基であり:各Rは20個以下の炭素原子を有する炭化水素基であり、これは脂肪族基、芳香族基またはこれらの炭化水素基の混合物から独立して選択され(例えば、C−C20アルキル、より具体的にはC−C10アルキル(例えばC−Cアルキルまたはフェニル));各Rはメチル、エチル、プロピルおよびブチルのようなC−Cアルキル(通常は、C−Cアルキル)、メトキシメチル、メトキシエチル、エトキシメチルなどのようなC−CアルコキシC−Cアルキル(代表的には、C−CアルコキシC−Cアルキル、C−C10アリール(例えば、C−Cアリール)またはアセトキシから独立して選択され;aは1または2の整数(通常は1)であり、bは0、1または2(例えば0)であり、cは1、2または3(例えば2または3)であり、ただし、a+b+cの総和は4に等しい。
【0061】
シランカップリング剤の非限定的な例としては、以下が挙げられる:ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリ(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリ−t−ブトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、γグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、(3−アクリルオキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−アクリルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−アクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)ジメチルエトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリエトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、クロロプロピルトリエトキシシラン、3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、このようなシラン材料の混合物およびこのようなシランの少なくとも部分的な加水分解物。
【0062】
有機チタン酸カップリング剤の非限定的な例としては、以下が挙げられる:チタン酸テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル)ブチル、チタン酸ジ(ジトリデシル)ホスフィート(phosphito)(KR 55としてKenrich Petrochemicals,Inc.から市販されている);チタン酸ネオペンチル(ジアリル)オキシトリネオデカノイル;チタン酸ネオペンチル(ジアリル)オキシトリ(ドデシル)ベンゼン−スルホニル;チタン酸ネオペンチル(ジアリル)オキシトリ(ジオクチル)ホスフェート(phosphato);チタン酸ネオペンチル(ジアリル)オキシトリ(ジオクチル)ピロ−ホスフェート;チタン酸ネオペンチル(ジアリル)オキシトリ(N−エチレンジアミノ)エチル;チタン酸ネオペンチル(ジアリル)オキシトリ(m−アミノ)フェニル;チタン酸ネオペンチル(ジアリル)オキシトリヒドロキシカプロイル;チタン酸イソプロピルジメチルアクリルイソステアロイル;チタン酸テトライソプロピル(ジオクチル)ホスフィト;このようなチタネートの混合物、およびその少なくとも部分的な加水分解物。
【0063】
有機ジルコネートカップリング剤の非限定的な例としては、以下が挙げられる:ジルコン酸テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル)ブチルジ(ジトリデシル)ホスフィト(KZ 55としてKenrich Petrochemicalsから市販されている);ジルコン酸ネオペンチル(ジアリールオキシ)トリネオデカノイル;ジルコン酸ネオペンチル(ジアリル)オキシトリ(ドデシル)ベンゼンスルホニル;ジルコン酸ネオペンチル(ジアリールオキシ)トリ(デオクチル)ホスフェート;ジルコン酸ネオペンチル(ジアリールオキシ)トリ(デオクチル)ピロホスフェート;ジルコン酸ネオペンチル(ジアリールオキシ)トリ(N−エチレンジアミノ)エチル;ジルコン酸ネオペンチル(ジアリールオキシ)、トリ(m−アミノ)フェニル;ジルコン酸ネオペンチル(ジアリールオキシ)とりメタクリル;ジルコン酸ネオペンチル(ジアリールオキシ)トリアクリル;ジルコン酸ジネオペンチル(ジアリールオキシ)ジ(p−アミノ)ベンゾイル;ジルコン酸ジネオペンチル(アリル)オキシジ(3−メルカプト)プロピオン酸;このようなジルコネートの混合物およびその少なくとも部分的な加水分解物。
【0064】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、用語「少なくとも部分的な加水分解物」とは、部分的に加水分解された化合物または完全に加水分解された化合物を意味し、そして包含することが意図される。
【0065】
先に記載されたように、樹状分岐ポリエステルアクリレートは、光開始剤の使用無しで硬化され得る。さらに、樹状分岐ポリエステルアクリレートを含む本明細書中に記載の組成物もまた、光開始剤の使用無しで硬化され得ることが企図される。しかし、少量の1つ以上の光開始剤の使用は、硬化率を増強し、そしてより短い時間でのより完璧な硬化を提供する。したがって、硬化可能な樹状分岐ポリエステルアクリレート組成物はまた、少なくとも1つの光開始剤を含有し得ることが意図される。光開始剤は、樹脂処方物が電子ビームプロセスによって硬化される場合は不要である。
【0066】
使用される場合、光開始剤は組成物の硬化を開始し、そして持続するのに十分な量(例えば、開始量または光開始量)で存在する。光開始剤は、望ましくは硬化プロセスの開始を得るのに必要な最少量で使用される。一般的には、この光開始剤は、硬化可能な樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルム組成物中の光開始された重合可能成分の総重量に基づいて、0.1〜10重量パーセント(例えば、0.5〜6重量パーセント)、より一般的には1〜4重量パーセントの量で存在し得る。光開始剤は、以下でフォトクロミックポリマーコーティングに関して議論および記載される。この議論は、放射線硬化可能な樹状分岐ポリエステルアクリレート組成物に関しても適用可能であり、そこに援用される。市販の光開始剤のさらなる例は、米国特許第5,910,375号の第10欄第38〜43行目および米国特許第6,271,339 B1号の第11欄第24〜65行目に見出され得る。
【0067】
樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルム形成組成物は、紫外線安定剤を含有し得、これはUV吸収剤および/またはヒンダードアミン光安定剤(HALS)であり得る。UV吸収剤の非限定的な例としては、ベンゾトリアゾールおよびヒドロキシベンゾフェノンが挙げられる。しかしUV吸収剤の場合、適切な波長の十分なUV放射がマレイミド誘導体含有層を通過し、フォトクロミック材料をフォトクロミックポリマーコーティング内で活性化することが可能であるか注意されるべきである。HALS安定剤は、TINUVINの商品名の下、Ciba−Geigyから入手可能である。使用される光安定剤の量は、組成物を安定化するのに有効な量(すなわち、有効量)であり、これは選択される特定の化合物に依存するが、代表的には重合可能な樹脂成分の100重量部に対して20重量部までである。UV吸収剤はまた、有効量で使用され、これは代表的には、重合可能な樹脂成分の100重量部に対して10重量部まで(例えば、0.05〜5重量部)である。
【0068】
この樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルム形成組成物は、当業者に公知の他の添加物を含み得る。これらの添加物としては、溶媒(適切な粘度の獲得が必要とされる場合)、流動剤および平準化剤、湿潤剤、消泡剤、レオロジー改質剤、界面活性剤(例えば、蛍光界面活性剤)、安定剤および抗酸化剤が挙げられるがこれらに限定されない。このような物質は当業者に周知であり、そして市販の界面活性剤および抗酸化剤/安定剤のいくつかの例は、前述の‘375特許の第10欄、第43〜54行目に見出され得る。このような添加物の他の非限定的な例としては、シリコーン、修飾シリコーン、シリコーンアクリレート、炭化水素および他のフッ素含有化合物が挙げられる。
【0069】
硬化可能な樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルム形成組成物は、混合およびブレンドを促進する温度で組成物の成分を混合することによって調製される。この組成物は、後にフォトクロミックコーティングをプラスチック基材に塗布する工程について記載されるのと同じ手順(例えば、スピンコーティングおよび浸漬コーティング)によってフォトクロミックコーティングに塗布され得る。
【0070】
樹状分岐ポリエステルアクリレート組成物をフォトクロミックコーティングに塗布する前に、フォトクロミックコーティングの表面を樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムのフォトクロミックコーティングへの接着を増強するように処理することが一般的であるが、必須ではない。効果的な処理としては、低温プラズマまたはコロナ放電による処理のような活性ガス処理が挙げられる。特に望ましい表面処理は、低温プラズマ処理である。この方法は、表面の処理が重ね合わされたフィルムまたはコーティングの接着を増強することを可能にし、かつ物理的な表面を変更する(例えば、物品の残部に影響することなく表面を粗雑化することおよび/または化学的に修飾することによる)清潔かつ効果的な方法である。アルゴンのような不活性ガスおよび酸素のような反応性ガスは、プラズマガスとして使用されている。不活性ガスは表面を粗雑化し、一方酸素のような反応性ガスは、プラズマに曝露された表面を、例えば、表面上のヒドロキシル単位またはカルボキシル単位を生成することで、粗雑化および化学的に修飾する。1つの企図される実施形態において、酸素はプラズマガスとして使用される。なぜなら、酸素はわずかではあるが効果的な物理的表面の粗雑化を、わずかではあるが効果的な表面の化学的修飾とともに提供すると考えられているからである。もちろん、表面の粗雑化および/または化学的修飾の程度は、プラズマガスおよびプラズマユニットの操作条件(処理の時間の長さを含む)の関数である、
慣習的なプラズマ処理は、表面の上から20〜200Å(数個の分子層)を変更するということが報告されている。プラズマユニットの操作条件は、プラズマチャンバの設計および大きさ(例えば、体積)、プラズマユニットの出力および構造の関数である。プラズマを操作する周波数は、例えば40kHzのような低周波数から2.45GHzのようなマイクロ波周波数まで変動し得る。同様に、プラズマユニットを操作する出力は、例えば50〜1000ワット(例えば50〜150ワットのような、50〜750ワット)のように、変動し得る。プラズマユニットを操作する圧力もまた変動し得るが、低い圧力は一般的に処理された表面に対して物理的により破壊的ではないということが観察されており、これは望ましい。低い圧力(例えば、20〜65Paまたは20〜70Pa)が有用であると考えられている。表面がプラズマに曝露される時間もまた変動し得、そして処理される表面のタイプ(すなわち、フォトクロミックポリマー性コーティングのために使用されるポリマーのタイプ)の関数である。しかし、非常に長い期間の処理は逆効果を生じ得るので、表面はあまり長くは処理されないということに注意されるべきである。当業者は、樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムのフォトクロミックコーティングへの接着を増強するプラズマ処理された表面を提供するために必要とされる最少時間を容易に決定し得る。眼用物品(例えば、レンズ)について、プラズマ処理の長さは、一般的に1〜10分間(例えば、1〜5分間)変動する。1つの企図されるプラズマ処理は、100ワットの出力レベルで操作するPlasmatech機械によって1〜10分間(例えば、1〜5分間)、100ml/分の酸素をPlasmatech機械の真空チャンバ内に導入しながら生成された酸素プラズマの使用に関する。
【0071】
プラズマ処理に供されるコーティングまたは物品の表面は、代表的には室温であるが、所望の場合この表面は予めわずかに加熱され得る。プラズマ処理は、処理される表面(および物品)の温度を上昇させる傾向があることに注意すべきである。その結果、処理の間の表面の温度は、プラズマ処理の長さの直接の関数である。プラズマ処理に供される表面の温度は、この表面が有意に不利に影響されないように(粗雑化およびわずかな化学的修飾による意図される表面積の増加以外)低い温度で維持されるべきである。当業者は、処理される基材に対して、プラズマ処理された表面に重ね合わせられたフィルム/コーティングの接着の改善を獲得するためにプラズマユニットの操作条件を容易に選択し得る。処理される表面の試験は、表面における物理的変化の相対的な程度を決定するように原子間力顕微鏡によって実施され得る。一般的に、低温の、マイクロ波周波数である酸素プラズマが、放射線硬化された樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムが塗布されるフォトクロミックコーティングの処理のために使用され得る。
【0072】
硬化可能な樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルム形成組成物が、厚みが異なり得る実質的に均質な硬化フィルムを得る様式で塗布される。1つの企図される実施形態において、この厚みは200ミクロン未満であり、通常は100ミクロン未満(例えば、50ミクロン以下)である。別の企図される実施形態において、このフィルムは2〜20ミクロン(例えば2〜15ミクロン)、より代表的には8〜12ミクロンの範囲の厚みであり得る。このフィルム厚は、列挙される値を含む、これらの値の任意の組み合わせの間の範囲であり得る。用語「フィルム」は、コーティング分野の当業者によって、一般的に、20ミル(500ミクロン)以下の厚みの層であるとみなされるが、本開示および特許請求の範囲において、この用語が放射線硬化に関して使用される場合、樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムは、本明細書に記載の厚みを有するとして定義される。
【0073】
塗布されたフィルムは、次いで、UV照射(または、UV照射が使用されない場合は電子ビームプロセス)(すなわち、200〜450nmの範囲の放射線)に曝露される。代表的には、この曝露は、市販のUVランプまたはエキシマーの下を、所定の速度で動いているコンベヤ上でフィルム(またはフィルムが塗布される基材)を通過させることによって達成される。この放射線は、可視光および紫外光両方のスペクトルを含有し得る。この放射線は単色性または多色性でもよく、非干渉性または干渉性でもよく、そして重合を開始するのに十分な強度であるべきである。任意の適切なタイプのUVランプ(例えば、水銀蒸発またはパルスキセノン)が使用され得る。光開始剤が使用される場合、光開始剤の吸収スペクトルは、最も高い効果効率のためにUVランプ(バルブ)(例えば、Hバルブ、Dバルブ、QバルブまたはVバルブ)のスペクトル出力と一致されるべきである。硬化プロセスは、一般的に酸素(例えば、空気)が硬化プロセスから排除された場合により効果的である。酸素の排除は、硬化プロセスの間の塗布されたフィルムに対する窒素ブランケットの使用により達成され得る。
【0074】
放射線硬化(例えば、UV硬化)に続いて、硬化後熱が、フィルムを完全に硬化するために使用され得る。212°F(100°C)のオーブン中での0.5〜3時間にわたる加熱が、通常は完全にフィルムを硬化するのに適切である。フォトクロミックコーティングの放射線硬化に関する議論はまた、樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムの硬化に関連して適用可能であり、従って、この議論は本明細書中に援用される。
【0075】
あるいは、樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムは熱硬化され得るが、熱硬化はあまり望ましくない。例えば、熱的なアゾ型またはペルオキシ型遊離基開始剤が、フィルムに組み込まれ得、そしてこのフィルムは赤外線加熱によってか、またはフィルム(またはフィルムを含有する基材)を、このフィルムを硬化するのに十分な温度に維持された慣習的なオーブン(例えば、対流式オーブン)に置くことによって硬化される。このような遊離基開始剤の例は、アクリル/メタクリルモノマーベースのフォトクロミックコーティング組成物に関連して本明細書中に記載され、そしてこの議論はここで適用可能である。さらに企図される実施形態において、この樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムは、上記のように、熱開始剤と光開始剤との組み合わせで硬化され得る。光開始剤の非限定的な例は、フォトクロミックポリマーコーティングの重合化に関連して本明細書中に記載される。この議論はここで適用可能であり、本明細書中に援用される。樹状分岐ポリエステルアクリレートを含む組成物の熱硬化が使用される場合、光開始剤単独でか、または光開始剤を組み合わせて(例えば、放射線硬化の使用)、1つ以上の他の反応性モノマー材料(例えば、樹状分岐ポリエステルアクリレートに組み込まれる(メタ)アクリルモノマー)もまた熱硬化される。
【0076】
フォトクロミックポリマー性コーティングが塗布される硬質基材は、異なり得、このような基材としてはフォトクロミックポリマーコーティングを支持する任意の硬質基材が挙げられる。このような硬質基材の非限定的な例としては、紙、ガラス、セラミック、木造物、織物、金属および有機ポリマー材料が挙げられる。使用される特定の基材は、硬質基材およびフォトクロミックコーティングの両方を必要とする特定の用途に依存する。所望の実施形態において、この硬質基材は透明である。
【0077】
本発明のフォトクロミック物品の調製において使用され得るポリマー性基材としては、有機ポリマー性材料およびガラスのような無機ポリマー性材料が挙げられる。本明細書中で使用される場合、用語「ガラス」とは、ポリマー性物質(例えば、ポリマー性シリケート)として定義される。ガラス基材は、意図される目的に適切であればどのような型でも良いが、望ましくは、透明な、着色の薄い、石英ガラスとして周知である透明ガラス、特にソーダ石灰石英ガラスである。種々の石英ガラスの性質および組成は当該分野において周知である。このガラスは、熱的テンパーリングまたは化学的テンパーリングのいずれかによって強化され得る。本明細書中に記載のフォトクロミック物品を調製するために使用され得るポリマー性有機基材は、基材の表面に塗布されるフォトクロミックポリマー性コーティングと化学的に適合性である任意の現在公知の(または後に発見される)プラスチック材料である。特に企図されるのは、光学基材として有用であることが当該分野で認識されている合成樹脂(例えば、眼用レンズのような光学用途のために光学的に透明な鋳造を調製するために使用される有機光学樹脂)である。
【0078】
ポリマー性有機基材として使用され得る有機基材の非限定的な例は、米国特許第5,962,617号、および同第5,658,501号の第15欄第28行目〜第16欄第17行目に記載されるモノマーおよびモノマーの混合物から調製されるポリマー(すなわち、ホモポリマーおよびコポリマー)である。このような有機基材は、望ましくは1.48〜1.74(例えば、1.50〜1.67)の範囲の屈折率を有する熱可塑性または熱硬化性の基材(例えば、透明な、より具体的には光学的に透明な基材)であり得る。
【0079】
このように開示されるモノマーおよびポリマーの非限定的な例としては以下が挙げられる:ジエチレングリコールビス(炭酸アリル)のようなポリオール(炭酸アリル)モノマー(例えば、炭酸アリルジグリコール)であり、このモノマーはCR−39の商品名のもとPPG Industries,Incから販売されている;ポリウレア−ポリウレタン(ポリウレアウレタン)ポリマーであり、これは、例えば、ポリウレタンプレポリマーおよびジアミン硬化剤との反応によって調製される(TRIVEXの商品名のもとPPG
Industries,Incから販売されるようなポリマーに対する組成物);ポリオール(メタ)アクリロイル末端化炭酸モノマー;ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー;エトキシレートフェノールメタクリレートモノマー;ジイソプロペニルベンゼンモノマー;エトキシル化トリメルロールプロパントリアクリレートモノマー;エチレングリコールビスメタクリリレートモノマー;ポリ(エチレングリコール)ビスメタクリレートモノマー;ウレタンアクリレートモノマー;ポリ(エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート)モノマー;ポリ(酢酸ビニル);ポリ(ビニルアルコール);ポリ(ビニルクロライド);ポリ(ビニリデンクロライド);ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリウレタン:ポリチオウレタン;ビスフェノールAおよびホスゲンに由来するカーボネート結合樹脂(商品名LEXANで販売される材料)のような熱可塑性ポリカーボネート;商品名MYLARで販売される材料のようなポリエステル;ポリ(エチレンテレフタレート);ポリビニルブチラール;商品名PLEXIGLASのもと販売される材料のようなポリ(メチルメタクリレート)であり、ポリマーは、多官能性イソシアネートおよび/またはイソチオシアネートを、ポリチオールまたはポリエピスルフィドモノマー(ホモポリマー化またはコポリマー化および/またはターポリマー化された)と、ポリチオール、ポリイソシアネート、ポリイソチオシアネートおよび必要に応じてエチレン不飽和モノマーと、またはハロゲン化芳香族含有ビニルモノマーと反応することによって調製される。このようなモノマーのコポリマーおよび記載されたポリマーのブレンド、ならびに他のポリマーとのコポリマーもまた(例えば、浸透するネットワーク生成物を形成するために)企図される。有機基材の正確な性質は、本発明に対し重要ではない。しかし、有機ポリマー性基材は、この基材の表面に塗布されるフォトクロミックポリマー性コーティングと化学的に適合性であるべきである。光学的用途のために、この基材は透明であるべきであり、より望ましくは光学的に透明であるべきである。
【0080】
本発明のフォトクロミック物品を調製するために使用されるポリマー性有機基材は、保護コーティング(例えば、磨耗抵抗コーティング)をその表面に有し得る。例えば、市販の熱可塑性ポリカーボネート光学レンズは、代表的にはその表面に磨耗抵抗コーティング(例えば、ハードコート)をすでに塗布して販売される。なぜなら、この表面は容易に傷がつき、磨耗し、または磨り減りがちだからである。このようなレンズの例は、Gentexポリカーボネートレンズ(Gentex Opticsから入手可能である)であり、これはポリカーボネート表面にハードコートがすでに塗布されて販売される。本開示において使用される場合、用語「ポリマー性有機基材」(または類似の用語)またはこのような基材の「表面」とは、ポリマー性有機基材そのものまたはコーティング(例えば、保護コーティングおよび/またはプライマー)を基材上に有するこのような基材のいずれかが意味され、包含されることが意図される。したがって、本開示または請求の範囲において基材の表面に対するプライマーコーティングまたはフォトクロミックコーティングの塗布に参照がなされる場合、このような参照としては、ポリマー性有機基材へのこのようなコーティングそのもの、またはコーティング(例えば、基材の表面上の磨耗抵抗コーティングまたはプライマー)を塗布することが挙げられる。ゆえに、用語「基材」としては、その表面上に保護コーティングおよび/またはプライマーを有する基材が含まれる。このコーティングは、任意の適切なコーティング(フォトクロミックコーティング以外)であり得、そして磨耗抵抗コーティング(ハードコート)(例えば、任意の保護コーティング)、プライマーコーティングまたはさらなる機能特性を、この基材が部分である物品に提供するコーティングさえ含まれる。
【0081】
プラスチック基材(特に熱可塑性ポリカーボネートのようなプラスチック基材)上のフォトクロミック有機コーティングの使用が記載されてきた。本発明にしたがって、任意の有機ポリマー性材料が選択された有機基材のコーティングとして使用され得、これは使用され得る用途のために選択された有機フォトクロミック材料/化合物に対してホスト材料として機能する。通常、このホスト有機ポリマー性コーティングは、フォトクロミック材料が効果的に機能する(例えば、無色形態から紫外線(UV)放射に対して裸眼に認識できる着色形態に変化させ、そしてUV照射が取り除かれたときに無色形態に戻す)のに十分な内部自由容量を有する。さもなければ、フォトクロミック材料のためのホスト材料として使用される有機コーティングの正確な化学的性質は、重要ではない。
【0082】
このような有機ポリマー材料の非限定的な例としては、米国特許第6,107,395号、および同第6,187,444 B1号ならびに国際特許公開第01/55269号に記載のポリウレタンベースのコーティング;米国特許第6,268,055 B1号に記載されるエポキシ樹脂ベースのコーティング;米国特許第6,602,603号、国際特許公開第96/37593号および同第97/06944号ならびに米国特許第5,621,017号および同第5,776,376号に記載のアクリル/メタクリルモノマーベースのコーティング;米国特許第6,506,488 B1号および同第6,432,544 B1号に記載のアミノプラスト(例えば、メラミン型)樹脂;米国特許第6,436,525 B1号に記載のヒドロキシ官能性成分およびポリマー性無水物官能性成分を含むコーティング(例えば、ポリ無水物コーティング);米国特許第6,531,076 B2号の第2欄第27行目〜第18欄第67行目に記載のポリウレアウレタンコーティング;および米国特許第6,060,001号に記載のN−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド機能性ポリマーを含むコーティングが挙げられる。
【0083】
フォトクロミックポリウレタンベースのコーティング、フォトクロミックポリアクリルベースのコーティングまたはポリメタクリル酸ベースのコーティング(ポリ(メタ)アクリルベースのコーティングとして集合的に参照される)、フォトクロミックアミノプラスト樹脂ベースのコーティング、フォトクロミックポリウレアウレタンベースのコーティングおよびフォトクロミックエポキシ樹脂ベースのコーティングが特に重要である。プラノ光学レンズおよび視力補正光学レンズ、日よけレンズおよびゴーグル、商業用または家庭用の窓、自動車および飛行機の透明なもの、ヘルメット、プラスチックシート、クリアフィルムなどのような眼用用途のための透明な(例えば、光学的に透明な)プラスチック基材のような光学的に透明なフォトクロミックポリウレタン、ポリウレアウレタン、エポキシおよびポリ(メタ)アクリルベースのコーティングが特に重要である。
【0084】
基材、フィルム、材料またはコーティングに関して本開示および特許請求の範囲において使用される、用語「透明性」は、示されるコーティング、フィルム、基材または材料(例えば、プラスチック基材、非活性化フォトクロミックコーティング、放射線硬化された樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムならびに放射線硬化された樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルム上に重ねられたか、または重ね合わせられたコーティング)は、少なくとも70%の光透過率、代表的には少なくとも80%の光透過率、そしてより代表的には少なくとも85%の光透過率を有することを意味する。本開示および特許請求の範囲において使用される、用語「光学的に透明な」によって、特定の項目が商業的に受容可能であり、光学物品について規定の値(例えば、眼科用)を満たす光透過率を有することが意味される。
【0085】
フォトクロミックポリウレタンコーティングを調製するために使用され得るポリウレタンは、米国特許第6,187,444 B1号の第3欄第4行目〜第6欄第22行目において完全に記載されるように、有機ポリオール成分とイソシアネート成分との反応によって生成されたものである。より具体的には、このポリウレタンは、少なくとも1つのハードセグメントを生成する有機ポリオールと、少なくとも1つのソフトセグメントを生成する有機ポリオールとの組み合わせから生成される。一般的に、このハードセグメントはイソシアネートと鎖エクステンダーとの反応を生じ;そしてこのソフトセグメントはイソシアネートとポリマーバックボーン成分(例えば、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオールもしくはポリエーテルポリオールまたはこのようなポリオールの混合物)を生じる。ハードセグメントを生成するポリオール対ソフトセグメントを生成するポリオールの重量比は、10:90〜90:10まで変動し得る。
【0086】
ポリウレタン反応混合物を含む成分の相対量は、反応性イソシアネート基の利用可能な数対反応性ヒドロキシル基の利用可能な数の比率として表され得、例えば、NCO:OH基の比率は、0.3:1.0〜3.0:1.0である。イソシアネート成分は、脂肪族イソシアネート、芳香族イソシアネート、脂環式イソシアネートまたは複素環イソシアネート、あるいはこのようなイソシアネートの混合物であり得る。代表的には、このイソシアネート成分は、閉鎖脂肪族イソシアネートまたは非閉鎖脂肪族イソシアネートあるいは脂環式イソシアネート、またはこのようなイソシアネートの混合物である。
【0087】
さらに、米国特許第6,107,395号に記載されるように、フォトクロミックホスト材料として適切なポリウレタンは、以下を含むイソシアネート反応性混合物から調製され得る(i)2〜4個の名目上の官能基および500〜6000g/モルの分子量を有する、40〜85重量パーセントの1つ以上のポリオール、(ii)2〜3個の官能基および62〜499の分子量を有する、15〜60重量パーセントの1つ以上のジオールまたはトリオールまたはこれらの混合物、および(iii)3未満(例えば、2)の官能基を有する脂肪族ポリイソシアネート。
【0088】
既に記載した米国特許第6,602,603号は、フォトクロミック材料のためのポリ(メタ)アクリルホスト材料のための反応混合物を、少なくとも2つの二官能性(メタ)アクリレートモノマーを含み、3個より多く15個未満のアルコキシユニットを有し得るとして記載する。1つの記載される実施形態において、二官能性の(メタ)アクリレートは、直鎖または分枝鎖のアルキレン基によって連結された反応性のアクリレート基を有し、これは通常1〜8個の炭素原子を含有し;一方第2の二官能性(メタ)アクリレートは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドまたはこれらのオキシド基の混合物によってランダムに、またはブロック順序で連結された反応性アクリレート基を有する。
【0089】
米国特許第6,268,055 B1号に記載のエポキシ樹脂ベースのコーティングは、エポキシ樹脂またはポリエポキシド(例えば、脂肪族アルコールおよびフェノールのポリグリシジルエーテル、エポキシ含有アクリルポリマー、ポリカルボン酸のポリグリシジルエステルおよびこれらのエポキシ含有材料の混合物)を含む組成物と硬化剤(例えば、酸無水物と有機ポリオールとの反応から形成された半エステルを含む多価酸)との反応によって調製されるものである。
【0090】
プラスチック基材の少なくとも1つの表面に塗布されるフォトクロミックコーティングの量は、硬化されたコーティングが紫外線(UV)放射に曝露されたときに、光学濃度(ΔOD)の所望の変化を示すコーティングを生成するのに十分な量の有機フォトクロミック材料を提供する量(すなわち、フォトクロミック量)である。代表的には、30秒のUV曝露後に22℃(72°F)で測定される光学濃度の変化は、少なくとも0.05であり、より代表的には少なくとも0.15であり、そしてさらにより代表的には少なくとも0.20である。15分のUV曝露後の光学濃度の変化は、代表的には少なくとも0.10であり、より代表的には少なくとも0.50であり、そしてさらにより代表的には少なくとも0.70である。
【0091】
言い換えれば、フォトクロミックコーティングにおいて使用される活性フォトクロミック材料の量は、このコーティングを生成するために使用されるモノマー/樹脂の総量に基づき、0.5〜40.0重量パーセントの範囲であり得る。使用されるフォトクロミック材料の相対量は変動し、そしてフォトクロミックコーティング中の活性化形態のフォトクロミック化合物の色の相対強度、所望される最終的な色、およびこのフォトクロミック材料の可溶性または分散性に部分的に依存する。コーティング内にフォトクロミック材料の結晶を生じるフォトクロミック材料の量の使用をさけるために注意がされるべきである。代表的には、フォトクロミックコーティング内の活性フォトクロミック材料の濃度は、1.0〜30重量パーセントの範囲であり、より代表的には3〜20重量パーセントの範囲であり、そしてさらにより代表的には3〜10重量パーセントの範囲である(このコーティングを生成するために使用されるモノマー/樹脂の総量に基づく)。コーティング中のフォトクロミック材料の量は、列挙された値を含む、これらの値の任意の組み合わせの間の範囲であり得る。
【0092】
褪色半減期(T1/2)に関連して報告されるフォトクロミックコーティングの漂白速度は、代表的には500秒以下であり、より代表的には190秒以下であり、そしてさらにより代表的には115秒以下である。この半減漂白速度は、フォトクロミックコーティングの活性化形態の光学密度(ΔOD)の変化が、活性化光の供給源の除去後の最も高いΔODの二分の一に達する変化についての秒単位の時間間隔である。光学密度および漂白速度の変化についての上述の値は、22°C(72°F)で測定される。
【0093】
基材の表面に塗布されるフォトクロミックコーティングは、代表的には少なくとも3ミクロンの厚みを有し、より代表的には少なくとも5ミクロン、さらにより代表的には少なくとも10ミクロン(例えば、少なくとも20ミクロンまたは30ミクロン)の厚みを有する。この適用されるフォトクロミックコーティングはまた、通常は200ミクロン以下の厚みを有し、より通常は100ミクロン以下、そしてさらにより通常は50ミクロン以下(例えば、40ミクロン以下)の厚みを有する。フォトクロミックコーティングの厚みは、列挙された値を含む、これらの値の任意の組み合わせの間の範囲であり得る。例えば、このフォトクロミックコーティングは10〜50ミクロン(例えば、20〜40ミクロン)の範囲であり得る。塗布されるフォトクロミックコーティングは、もっとも望ましくは、表面的な欠損(例えば、ひっかき傷、くぼみ、しみ、ひび割れ、異物など)を有さない。
【0094】
代表的には、用語「コーティング」とは、コーティング分野の当業者によって4ミル(約100ミクロン)以下の厚みを有する層であるとみなされる。しかし本明細書および特許請求の範囲においてフォトクロミックコーティングに関して使用される場合、用語コーティングは、厚み(例えば、本明細書において上に規定されるような厚み)を有するとして定義される。さらに、本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、用語「ポリマー性基材の表面」または同様の用語(すなわち、フォトクロミックポリマー性コーティングが塗布される表面)が、この基材の表面の少なくとも一部のみがコーティングされる実施形態を包含することが意図される。ゆえに、フォトクロミックコーティング(およびこのフォトクロミックコーティングに塗布される樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルム)は、基材の表面の一部のみを覆い得るが、代表的には、このコーティングは少なくとも1つの基材表面の全体に塗布される。
【0095】
フォトクロミックコーティングの硬度は重要ではないが、塗布および硬化後は、フォトクロミックコーティングの硬度は望ましくはコーティングにおいて欠損(例えば、ひっかき傷)を生じることなく物理的/機械的に扱えるよう十分に硬いべきである。フォトクロミックコーティングの硬度は、代表的には、フォトクロミックコーティングに塗布された放射線硬化された樹状分岐ポリエステルアクリレート組成物から調製されたフィルム未満であり、これは同様に、代表的には、樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムに塗布された磨耗抵抗(ハードコート)コーティングよりも軟らかい。したがって、プラスチック基材に塗布される主要なコーティング(基材に塗布され得るいかなるプライマー層も含まない)は、磨耗抵抗コーティングの方向に硬度を増す。コーティングまたはフィルムの硬度は、当業者に公知の試験(例えば、Fischer微小硬度、ペンシル硬度またはKnoop硬度)によって定量化され得る。
【0096】
フォトクロミックポリマー性コーティングのFischer微小硬度は、代表的には30N/mm未満であり、より具体的には、2N/mmまたは5N/mmのように25N/mm未満(例えば、15N/mm未満)である。特に、このFischer微小硬度の値は、本明細書に記載される範囲の、より低い部分である(例えば、2〜25N/mm(例えば、10〜15N/mm(例えば、12N/mm)))。硬度のより低い範囲は、フォトクロミック材料に関してすでに議論された電子環状の機構がより高い硬度の値よりも高い有効性で現れることを可能にする。フォトクロミックポリマー性コーティングのFischer微小硬度は、列挙された値を含む規定の値の任意の組み合わせの間の範囲であり得る。Fischer微小硬度値は、Fischerscope HCV Model H−100(Fischer Technology,Inc.から入手可能)を用いて、2um(ミクロン)の圧子(indentor)(Vickersダイヤモンド針)での、深さ100ミリNの負荷、30負荷工程および負荷工程の間の0.5秒の休止の条件下で、試験サンプルの中心領域で3回測定することによって得られ得る。
【0097】
硬質基材に塗布され得るフォトクロミックコーティングについて利用され得るフォトクロミック材料(例えば、フォトクロミック色素/化合物またはこのような色素/化合物を含有する組成物)は、無機および/または有機フォトクロミック化合物ならびに/あるいは現在当業者に公知の(または後に発見される)このような有機フォトクロミック化合物を含有する物質である。選択される特定のフォトクロミック材料(例えば、化合物)は、重要ではなく、そしてそれ/それらの選択は、最終的な用途およびその用途のために所望される色または色相に依存する。2つ以上のフォトクロミック化合物が組み合わせて使用される場合、それらは一般的に、互いに補完し、所望の色または色相を生成するように選択される。
【0098】
フォトクロミックコーティングにおいて使用される有機フォトクロミック化合物は、300nmと1000nmとの間(例えば、400nmと700nm)の可視スペクトル内に少なくとも1つの活性化された吸収極大を有する。この有機フォトクロミック材料は、フォトクロミックコーティング中に(例えば、溶解または分散されて)組み込まれ、そしてフォトクロミック材料が活性化されたとき(すなわち、紫外線放射に曝露されたとき)に、色はこのような材料の着色形態の特徴である色または色相へと変化する。
【0099】
無機フォトクロミック材料は、代表的に、銀ハライド、カドミニウムライドおよび/または銅ハライドの晶子を含有する。一般的に、このハライド材料は、塩化物または臭化物である。他の無機フォトクロミック材料は、ユーロピウム(II)および/またはセリウム(III)の鉱物ガラス(例えば、ケイ酸ソーダガラス)への添加によって調製され得る。1つの実施形態において、この無機フォトクロミック材料は溶融ガラスに添加され、そしてポリマー性フォトクロミックコーティングを形成するために使用されるコーティング組成物中に組み込まれる粒子へと形成される。このような無機フォトクロミック材料は、Kirk Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,第4版, Volume 6, pages 322−325に記載される。
【0100】
1つの企図される実施形態において、フォトクロミックコーティングの有機フォトクロミック成分は、以下:
(a)400nm〜550nm未満(例えば、400nm〜525nm)の可視λ極大を有する少なくとも1つのフォトクロミック有機化合物;および
(b)525nmまたは550nmより大きい(例えば、525nm〜700nmまたは550nm〜700nm)の可視λ極大を有する少なくとも1つのフォトクロミック有機化合物
を含む。
【0101】
フォトクロミックコーティングにおいて使用され得るフォトクロミック化合物の非限定的な例としては、ベンゾピラン、クロメン(例えば、ナフト[1,2−b]ピランおよびナフト[2,1−b]ピランのようなナフトピラン)、スピロ−9−フルオレノ[1,2−b]ピラン、フェナントロピラン、キノピランおよびインデノ縮合ナフトピラン、米国特許第5,645,767号第1欄第10行目〜第12欄第57行目、および米国特許第5,658,501号第1欄第64行目〜第13欄第36行目に開示されるものが挙げられる。使用され得るフォトクロミック化合物のさらなる非限定的な例としては、オキサジン(例えば、ベンゾオキサジン、ナフトオキサジンおよびスピロ(インドリン)ピリドベンゾオキサジン)が挙げられる。本明細書において使用が企図される他のフォトクロミック物質は、例えば、米国特許第3,361,706号に記載の金属ジチゾネート(例えば、水銀ジチゾネート);米国特許第4,931,220号第20欄第5行目〜第21欄第38行目に記載のフルギドおよびフルジミド(例えば、3−フリルおよび3−チエニルファルギドおよびフルジミド);米国特許出願第2003/0174560号段落[0025]〜[0086]に記載のジアリールエテン;および任意の前述のフォトクロミック材料/化合物の混合物である。
【0102】
フォトクロミック化合物、重合可能なフォトクロミック化合物および相補的フォトクロミック化合物のさらなる非限定的な例は、以下の米国特許に記載される:
第5,166,345号第3欄第36行目〜第14欄第3行目;
第5,236,958号第1欄第45行目〜第6欄第65行目;
第5,252,742号第1欄第45行目〜第6欄第65行目;
第5,359,085号第5欄第25行目〜第19欄第55行目;
第5,488,119号第1欄第29行目〜第7欄第65行目;
第5,821,287号第3欄第5行目〜第11欄第39行目;
第6,113,814号第2欄第23行目〜第23欄第29行目;
第6,153,126号第2欄第18行目〜第8欄第60行目;
第6,296,785号第2欄第47行目〜第31欄第5行目;
第6,348,604号第3欄第26行目〜第17欄第15行目;および
第6,353,102第1欄第62行目〜第11欄第64行目。
スピロ(インドリン)ピランはまた、テキストTechniques in Chemistry, Volume III, 「Photochromism」,第3章, Glenn H. Brown(編),John Wiley and Sons, Inc.,New York, 1971に記載される。さらに、金属オキシド中にカプセル化されたフォトクロミック色素およびフォトクロミック化合物がフォトクロミックコーティング中に使用され得ることが企図される。例えば、米国特許第4,166,043号および同第4,367,170号に記載の材料を参照のこと。
【0103】
本発明のフォトクロミックコーティングは、1つのフォトクロミック化合物または所望される場合、2つ以上のフォトクロミック化合物の混合物を含有し得る。フォトクロミック化合物の混合物は、特定の活性化された色(例えば、中間的な灰色に近い色、または中間的な茶色に近い色)を獲得するために使用され得る。例えば、中間的な灰色および茶色を規定するパラメータを記載する、米国特許第5,645,767号第12欄第66行目〜第13欄第19行目を参照のこと。
【0104】
本明細書中に記載されるフォトクロミック化合物は、コーティング組成物に添加することによって、および/またはこの化合物を硬化可能なコーティング組成物に添加する前に溶媒に溶解することによって、硬化可能なコーティング組成物に組み込まれ得る。あるいは、よる複雑ではあるが、このフォトクロミック化合物は、吸収、浸透、拡散または他の移行方法によって硬化されたポリマーコーティング中に組み込まれ得、これらの方法はホスト材料への色素移行の分野において当業者に公知である。
【0105】
フォトクロミック材料に加えて、フォトクロミックコーティング(または前駆体処方物)は、コーティングに対する所望の特性または特徴を与えるさらなる慣習的なアジュバンドを含有し得、これはプラスチック基材の表面にフォトクロミックコーティングを塗布し、かつ硬化するために使用されるプロセスによって必要とされ、またはコーティングの性能を増強する。このようなアジュバントとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:紫外光吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、非対称ジアリールオキサルアミド(オキサニリド)化合物および一重項酸素消光剤(例えば、有機リガンドとのニッケルイオン錯体)のような光安定剤、抗酸化剤、ポリフェノール抗酸化剤、熱安定剤、レオロジー調節剤、平準化剤(例えば、界面活性剤、フリーラジカルスカベンジャー)および接着促進剤(例えば、トリアルコキシシラン(例えば、1〜4個の炭素原子のアルコキシ基を有するシランであって、このようなシランとしては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロへキシルエチルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、アミノエチルトリメトキシシランおよび3−(トリメトキシシリル)プロピメタクリレートが挙げられる))。このようなフォトクロミック性能増進アジュバント材料の混合物が企図される。例えば、米国特許第4,720,356号、同第5,391,327号および同第5,770,115号に記載の材料を参照のこと。
【0106】
(化学的および色に関して)適合性の色合い(例えば、色素)もまた、医学的な理由または様式の理由(例えば、より美しい結果を達成するために)で、フォトクロミックコーティング処方物に添加され得、またはプラスチック基材に塗布され得る。選択される特定の色素は変動し得、そして上述の必要性および達成されるべき結果に依存する。1つの実施形態において、この色素は使用される活性化されたフォトクロミック材料から生じる色を補完するように(例えば、より中間的な色を獲得するため、あるいは特定の波長または入射光を吸収するために)選択され得る。別の企図される実施形態において、この色素はフォトクロミックコーティングが活性化されていない状態にある場合に、所望の色相を基材および/またはコーティングに提供するために選択され得る。
【0107】
このフォトクロミックコーティング組成物は、プラスチック基材の表面に重合可能な処方物として塗布され、次いで、当業者に周知の方法によって硬化(重合)される。このような方法としては、光重合、熱重合(赤外線重合を含む)および他の放射線供給源が挙げられるが、これらに限定されない。このような応用方法としては、スピンコーティング、カーテンコーティング、浸漬コーティング、噴霧コーティングの当該分野で認められている方法またはオーバーレイを調製するのに使用される方法が挙げられる。このような方法は、米国特許第4,873,029号に記載される。
【0108】
重合可能な処方物として適用される場合、フォトクロミックコーティング処方物はまた、代表的には触媒または重合開始剤を含有する。フォトクロミックコーティング処方物の重合可能な成分を重合するために使用される触媒/重合開始剤の量は変動し得、そして使用される特定の開始剤および重合可能なモノマーに依存する。代表的には、重合を開始(触媒)し、そして維持するのに必要なだけの量(すなわち、開始量または触媒量)が必要とされる。一般的に、光開始剤を含む処方物(少なくとも1つの触媒および/または重合開始剤の処方物)中の重合可能なモノマーの総重量に基づき、0〜10重量パーセント(例えば、0.01〜8重量パーセント)、より代表的には0.1〜5重量パーセントが使用される。触媒/開始剤の量は、列挙された値を含む、上記の値の任意の組み合わせの間を変動し得る。この触媒/開始剤は、フォトクロミックホストとして選択されたポリマー性コーティングを生成するために使用される特定のモノマーを重合するために使用され得、そしてこれはコーティング処方物中に含まれるフォトクロミック材料の機能を有意に損なわない。
【0109】
例えば、ポリウレタン反応混合物を硬化するために使用され得る触媒は、Lewis塩基、Lewis酸およびUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,第5版, 1992, Volume A21, pp. 673〜674に記載の挿入型触媒からなる群より選択され得る。通常、この触媒は有機スズ触媒(例えば、スズオクチレート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズメルカプチド、ジブチルスズジマレアート、ジメチルスズジアセテート、ジメチルスズジラウレートおよび1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)である。スズ触媒の混合物もまた、使用され得る。当該分野で記載される他のスズ触媒も、同様に使用され得る。
【0110】
エポキシ樹脂コーティング組成物は、代表的に、高い平均酸性官能基(すなわち、分子あたり2個以上の酸性基)多価酸硬化剤を含有する。代表的に、この酸性基はカルボン酸基である。ポリカルボン酸の非限定的な例としては、ジカルボン酸(例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸およびドデカンジオン酸(dodecanedioc acid)、;トリカルボン酸(例えば、クエン酸);ならびにテトラカルボン酸(例えば、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸)が挙げられる。
【0111】
ポリ無水物コーティング組成物は、代表的に、アミン化合物を硬化触媒として含有する。アミン化合物の非限定的な例としては、ジメチルココアミン、ジメチルドデシルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミンおよび少なくとも2つのジアルキルアミノ基を含有するフェノール化合物が挙げられる。アミノプラスト樹脂およびアルコキシアクリルアミドポリマーコーティング組成物は、一般的に触媒として酸性化合物を含有する。非限定的な例としては、リン酸または置換されたリン酸(例えば、アルキル酸リン酸およびフェニル酸リン酸);およびスルホン酸または置換されたスルホン酸(例えば、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸およびジノニルナフタレンスルホン酸)が挙げられる。
【0112】
アクリル/メタクリルモノマーベースのコーティング組成物は、有機ペルオキシ化合物またはアゾビス(有機ニトリル)化合物のような熱開始剤(例えば、遊離基を生成する開始剤)、光開始剤またはこのような開始剤の混合物を含有し得る。
【0113】
適切な有機ペルオキシ化合物の非限定的な例としては、ペルオキシモノカーボネートエステル(例えば、第三級ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート);ペルオキシジカーボネートエステル(例えば、ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ(第二ブチル)ペルオキシジカーボネートおよびジイソプロピルペルオキシジカーボネート);ジアシルペルオキシド(例えば、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、プロピオニルペルオキシド、アセチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、p−クロロベンゾイルペルオキシド);ペルオキシエステル(例えば、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシオクチレートおよびt−ブチルペルオキシイソブチレート);メチルエチルケトンペルオキシド;ならびにアセチルシクロへキサンスルホニルペルオキシドが挙げられる。
【0114】
適切なアゾビス(有機ニトリル)化合物の非限定的な例としては、アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンテンニトリル)、1,1’−アゾビスシクロへキサンカルボニトリルおよびアゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)ならびにこのようなアゾ熱開始剤の混合物が挙げられる。所望される熱開始剤は、生じるコーティングを変色せず、重合可能なコーティング組成物内に組み込まれたフォトクロミック材料を分解しない熱開始剤である。
【0115】
光重合は、光開始剤が必要とされる場合、紫外光および/または可視光を使用する少なくとも1種の光開始剤の存在下で実施され得る。遊離基開始剤である光開始剤は、その作用の様式に基づいて2つの主要な群に分類される。切断型の光開始剤としては、アセトフェノン、α−アミノアルキルフェノン、ベンゾインエーテル、ベンゾイルオキシム、アシルホスフェンオキシドおよびビスアシルホスフィンオキシドが挙げられるがこれらに限定されない。抽出型光開始剤としては、ベンゾフェノン、Michler’sケトン、チオキサントン、アントラキノン、カンファルキノン、フルオロンおよびケトクマリンが挙げられるがこれらに限定されない。抽出型光開始剤は、アミンおよび抽出のために不安定な水素原子を提供するように添加された他の水素供与体材料のような材料の存在下でより良く機能する。代表的な水素供与体は、酸素または窒素(例えば、アルコール、エーテルおよび第三アミン)に対してα位置の活性酸素を有するか、または硫黄(例えば、チオール)に直接付加された活性水素原子を有する。このような添加された材料の非存在下において、光開始剤は、水素抽出を介して、モノマー、オリゴマーまたは他の系の成分から、なお出現し得る。
【0116】
使用され得る光重合開始剤の非限定的な例としては、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノール、アセトフェノン、ベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビス(N,N’−ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、フルオロン(例えば、Spectra Group Limitedから入手可能な開始剤のH−Nuシリーズ)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−イソプロピルチキサントン、α−アミノアルキルフェノン(例えば、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン、アシルホスフィンオキシド(例えば、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドおよび,2,6−ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド;ビスアシルホスフィンオキシド(例えば、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシドおよびビス(2,6−ジクロロベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド;フェニル−4−オクチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ドデシルジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、(4−(2−テトラデカノール)オキシフェニル)−ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート)およびこれらの光重合開始剤の混合物が挙げられる。
【0117】
光重合のために使用される放射線の供給源は、紫外光および/または可視光を放つ供給源から選択される。放射線の供給源は、水銀ランプ、FeIおよび/またはGaIで塗られた水銀ランプ、殺菌灯キセノンランプ、タングステンランプ、金属ハライドランプまたはこれらのランプの組み合わせであり得る。代表的には、光開始剤の吸収スペクトルは、もっとも高い硬化効率のために、光供給バルブ(例えば、Hバルブ、Dバルブ、Qバルブおよび/またはVバルブ)のスペクトル出力と一致する。硬化可能なコーティングの光源への曝露時間は、光供給源の波長および強度、光開始剤、およびコーティングの厚みに依存して変動する。一般的に、曝露時間は、コーティングを実質的に硬化するのに十分であるか、あるいは熱硬化の後で物理的操作を可能にするのに十分に硬化されるコーティングを生成するのに十分である。フォトクロミックコーティングはまた、熱開始剤または光開始剤の存在を必要としない電子ビームプロセスを用いて硬化され得る。
【0118】
溶媒もまた、コーティング処方物の成分を溶解および/または分散するためにコーティング処方物中に存在し得る。代表的に、溶媒の溶媒和する量(例えば、コーティング処方物中の固体成分を可溶化/分散するのに十分な量)が使用される。一般的に、コーティング処方物の総重量に基づいて、10〜80重量パーセントの溶媒材料が使用される。
【0119】
溶媒としては以下が挙げられるが、これらに限定されない:ベンゼン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、エタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピルアルコール、プロピレンカーボネート、N−メチルピロリジノン、N−ビニルピロリジノン、N−アセチルピロリジノン、N−ヒドロキシメチルピロリジノン、N−ブチルピロリジノン、N−エチルピロリジノン、N−(N−オクチル)ピロリジノン、N−(N−ドデシル)ピロリジノン、2−メトキシエチルエーテル、キシレン、シクロヘキサン、3−メチルシクロヘキサン、エチルアセテート、ブチルアセテート、テトラヒドロフラン、メタノール、アミルプロピオナート、メチルプロピオナート、プロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、エチレングリコール、エチレングリコールのモノアルキルエーテルおよびジアルキルエーテルおよびCELLOSOLVE工業用溶媒として販売されるそれらの誘導体、ならびにこのような溶媒の混合物。
【0120】
さらに企図される実施形態において、フォトクロミックポリマー性コーティングは、有機溶媒の有無にかかわらず、水系コーティング(例えば、ラテックスのような水性ポリマー分散物)として適用され得る。この型の系は水相および水相に分散される有機相を含む二相の系である。水系コーティングの使用は当該分野で周知である。例えば、水溶性ウレタン樹脂およびこのような樹脂から調製されたコーティング関する米国特許第5,728,769号、ならびに‘769において参照される特許を参照のこと。
【0121】
フォトクロミックコーティング処方物がプラスチック基材の表面に塗布された後、これは紫外線放射または電子ビーム放射によって硬化(重合)されるか、あるいは熱硬化される。使用される特定の硬化条件は、プラスチック基材、処方物中の重合可能な成分および使用される触媒/開始字の型に依存し、あるいは電子ビーム放射の場合、電子ビームの強度に依存する。熱硬化する工程は、室温からプラスチック基材がこの加熱によって損傷されない温度まで加熱する工程を包含し得る。200℃までの温度が報告されてきた。このような硬化条件は当該分野において周知である。例えば、代表的な熱硬化サイクルは、処方物を室温(22℃)から、85℃〜125℃まで、2分間〜20分間の期間にわたって加熱する工程を包含する。紫外線放射硬化または電子ビーム放射硬化のために必要とされる時間は、一般的に熱硬化よりも短く(例えば、5秒間〜5分間)、放射線の強度(出力)に依存する。熱硬化またはUV/電子ビーム硬化条件が物理的に扱われるが完全には硬化されていないコーティングを生成する場合、さらなる硬化後の熱工程がまたフォトクロミックコーティングを完全に硬化するために利用され得る。
【0122】
フォトクロミックコーティングをプラスチック基材の表面に塗布する前に、この基材の表面は、しばしば清潔にされ、そして清潔な表面および基材へのフォトクロミックコーティングの接着を促進する表面を提供するように処理される。一般的に使用される効果的な洗浄および処理としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:水性石鹸/洗剤水溶液での超音波洗浄、有機溶媒の水性混合物(例えば、50:50のイソプロパノール:水またはエタノール:水)での洗浄、UV処理、活性ガス処理(例えば、既に記載された低温プラズマまたはコロナ放電での処理)および基材表面のヒドロキシル化を生じる化学的処理(例えば、水酸化アルカリ金属(例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム)水溶液での表面のエッチング)であって、この水溶液はまた蛍光界面活性剤を含み得る。一般的に、この水酸化アルカリ金属水溶液は希釈水溶液(例えば5〜40重量パーセント、より代表的には10〜15重量パーセント(例えば12重量パーセント)の水酸化アルカリ金属)である。例えば、ポリマー有機材料の表面処理を記載する、米国特許第3,971,872号第3欄第13〜25行目;同第4,904,525号第6欄第10〜48行目;および同第5,104,692号第13欄第10〜59行目を参照のこと。
【0123】
いくつかの場合において、プライマーコーティングが、フォトクロミックコーティングの適用の前に基材のプラスチック表面に適用される。プライマーコーティングは、有機基材とフォトクロミックポリマーコーティングとの間に挿入され、そしてフォトクロミックポリマー性コーティングを含む成分と基材との相互作用および逆の相互作用を妨げる障壁コーティングとしておよびその逆で、および/またはフォトクロミックコーティングのプラスチック基材への接着を促進する接着層として役割を果たす。プライマーは、フォトクロミックコーティングを塗布するのに使用される方法(噴霧コーティング、スピンコーティング、拡散コーティング、カーテンコーティング、圧延コーティングまたは浸漬コーティング)のいずれかによって、プラスチック基材に塗布され得、そして清潔にされ、かつ未処理の基材表面または清潔にされ、かつ処理された(例えば、化学的処理)基材表面に塗布され得る。プライマーコーティングは当該分野において周知である。適切なプライマーコーティングの選択は、使用されるプラスチック基材および特定のフォトクロミックコーティングに依存する(例えば、プライマーコーティングは、プライマーコーティングに対して所望される機能的利益(例えば、障壁特性および接着特性)を提供しつつ、プラスチック基材の表面およびフォトクロミックコーティングと化学的および物理的に適合性でなければならない)。
【0124】
プライマーコーティングは、1つまたは複数の単分子層の厚みであり、そして0.1ミクロン〜10ミクロン、より通常には0.1〜2または3ミクロンの範囲の厚みであり得る。このプライマーの厚みは、列挙された値を含む、上述の値の任意の組み合わせの間で変動し得る。適切なプライマーコーティングの1つの企図される実施形態は、米国特許第6,150,430号に記載されるように、有機官能性シラン(例えば、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン)、化学線の曝露に際して酸を生成する物質の触媒(例えば、オニウム塩)および有機溶媒(例えば、ジグリム(diglyme)またはイソプロピルアルコール)を含む。プライマーコーティングのさらなる例は、実質的に有機シロキサンを含まず、少なくとも1つのエチレン結合を有する有機無水物およびイソシアネート含有物質を含む組成物を記載する米国特許第6,025,026号に記載される。
【0125】
さらに企図される実施形態において、磨耗抵抗コーティングは、樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルム上に重ねられる(例えば、重ね合わせられる)。このような実施形態において、熱硬化後の樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムは、磨耗抵抗コーティングの塗布後まで樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムコーティングされた製品の重要な扱いが無い場合、磨耗抵抗コーティングの塗布後まで後回しにされ得る。非常に広範囲の扱いが必要とされる場合、樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムの硬化後の熱は磨耗抵抗コーティングの塗布前に実施されることが提案される。
【0126】
硬化された樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムは、透明性であるべきであり、より具体的には、光学用途(例えば、眼科用)のために使用される場合に光学的に透明であり、そしてフォトクロミックコーティングされた基材の光学特性を著しく損なわないべきである。例えば、この樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムは、十分な量の適切なUV照射を基材に付着されたフォトクロミックポリマー性コーティングの中に組み込まれるフォトクロミック材料を活性化するために通過させることが可能であるべきである。用語「透明性」および「光学的に透明」は、本開示において先に定義される。硬化された樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムの表面は、望ましくはそれに塗布されるフォトクロミックコーティングよりも硬く、そして通常は、一般的にこの樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムに塗布される磨耗抵抗コーティングよりも軟らかい。記載されるように、硬化された樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムは、フォトクロミックコーティングに十分に接着するべきであり、かつ、有機シランで調製される磨耗抵抗コーティングに適合性であるべきである。さらに、本明細書において後に記載されるように、硬化された樹状分岐ポリエステルフィルムが水溶性無機苛性溶液(例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの希釈水溶液)での処理(例えば、除去)に抵抗性であることが望ましいが、必須ではない。
【0127】
放射線硬化された樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムは、望ましくはプラスチック基材に塗布されたフォトクロミックコーティングにしっかりと接着するべきである。接着は、慣習的な当該分野で認められるクロスハッチテープ剥離接着試験によって、そしてよりストリンジュエントな試験である煮沸水クロスハッチテープ剥離接着試験によって決定され得る。前者はしばしば第1の(1°)試験または乾燥試験と呼ばれ;一方後者はしばしば第2の(2°)または湿潤試験と呼ばれる。第1の試験において、約1mm間隔(チップ−チップ)で配置され、かつ0.65mm厚の11枚のブレードを備える切断工具が、第1の長い切断を作製するために使用され、その後第1の切断を90度で横断するように第2および第三の切断を作製される。第2および第三の切断は、独立したクロスハッチ帯を提供するよう互いに分離される。Scotch 3Mマスキングテープ1インチ(2.54cm)幅2〜2と1/2インチ(5〜6.3cm)長の断片は、第1の切断の方向に貼り付けられ、すべての気泡を取り除くように押し付けられる。このテープは鋭敏、急速でさらに連続的な動きで表面から剥離される。この手順はテープの新しい断片で繰り返される。テープの小断片(1と1/2インチ、3.8cm)は、第1のテープの方向に対して90度の方向で第2および第三の切断によって作製されたクロスハッチ帯のそれぞれに貼り付けられ、そしてこれらのテープ断片は、鋭敏、急速同等でさらに連続的な動きで表面から剥離される。切断工具によって作製されたグリッドの30パーセント以下の方形が、基材(フォトクロミックコーティング)からはがれた(debonded)のが見出される場合(すなわち、少なくとも70パーセントのグリッドが無傷で残る場合)このコーティングは接着試験を通過したとみなされる。より具体的には、グリッドの100個の方形のうち、20個以下(特に、10個以下)の方形、より具体的には5個以下の方形(例えば1個の方形)が基材からはがれることが望ましい。本発明に従って、放射線硬化された樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムは、フォトクロミックコーティングに接着したとみなされるようにクロスハッチテープ剥離接着試験を通過するべきである。別の言い方をすれば、放射線硬化された樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムがクロスハッチテープ剥離試験を通過した場合、このことは本明細書において樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムが、付着される層(例えば、フォトクロミックコーティング)に密着して付着されている(または粘着して付着されている)といわれる。
【0128】
さらにより厳しい接着試験である第2の接着試験または湿潤試験は、必要に応じて、フォトクロミックコーティングに放射線硬化された樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムの接着を評価するために実施され得る。このさらなる試験、すなわち、煮沸水クロスハッチ接着試験は、上記のようにクロスハッチでスコア付けされた試験サンプル(例えば、レンズ)を、沸騰する脱イオン水中に30分間入れる工程を包含する。この試験サンプルが室温まで冷えた後に、上に記載のクロスハッチテープ剥離接着試験が再度なされる。クロスハッチ接着試験について記載されたのと同一の通過/失敗要求が、この試験の煮沸水改変に対して使用される。
【0129】
1つの企図される実施形態において、放射線硬化された樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムは、水溶性無機苛性溶液(例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムのような相対希釈アルカリ金属水酸化物溶液)による処理(例えば、除去)に抵抗性である。このフィルムは、140°F(60℃)での4分間の12.5%水酸化カリウム水溶液への曝露後、フィルムの厚みが0.5ミクロン以下減少される場合に、このような溶液による除去にたいして抵抗性であるとみなされる。望ましくは、このフィルム厚は水酸化カリウム水溶液への2回の曝露後、より望ましくは、3回の曝露後に0.5ミクロン以上減少されない。
【0130】
放射線硬化された樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムは、望ましくはまた、磨耗、擦過などからプラスチック表面を保護するために使用される磨耗抵抗コーティング(ハードコート)、特に有機シラン材料を含む磨耗抵抗コーティングと適合性である。しばしばハードコートまたはシランベースのハードコートと呼ばれる有機シラン含有磨耗抵抗コーティングは、当該分野において周知であり、そして種々の製造業者(例えば、SDC Coatings,Inc.およびPPG Industries,Inc.)から市販されている。有機シランハードコーティングを開示する、米国特許第4,756,973号第5欄第1〜45行目、ならびに同第5,462,806号第1欄第58行目〜第2欄第8行目および第3欄第52行目〜第5欄第50行目を参照のこと。有機シランハードコーティングを開示する、米国特許第4,731,264号、同第5,134,191号、同第5,231,156号、および国際特許出願公開第94/20581号もまた参照のこと。
【0131】
放射線硬化された樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムの記載された物理的特性は、有機シランハードコーティングと適合性のものであるが、磨耗抵抗および擦過抵抗を提供する他のコーティング(例えば、多官能性アクリルハードコーティング、メラミンベースのハードコーティング、ウレタンベースのハードコーティング、アルキドベースのコーティング、シリカゾルベースのハードコーティングあるいは他の有機もしくは無機または無機/有機ハイブリッドハードコーティング)も、磨耗抵抗コーティングとして使用され得る。当業者は、樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムが有機シランハードコートと適合性であるかどうかを、有機シランハードコートを樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムに塗布し、そして樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムの、そのハードコートに対する適合性をハードコート上に実施されるクロスハッチテープ剥離接着試験によって決定することにより容易に決定し得る。
【0132】
樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムのハードコートに対する適合性を決定する別の方法は、ハードコートが樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムに塗布され、そして硬化された後に、ハードコート中においてクレージングが存在しないことである。クレージングによってハードコートにおける断裂の存在が意味される。このような断裂は、ときに観察者によって容易に明らかである;しかし、この断裂は非常に微細であり得、かつ明るい光の下拡大により観察され得る。光源は、光がハードコートに対し垂直に照らされる、高強度の75ワットのキセノンバルブの白色アーク光からなり得る。
【0133】
用語「有機シラン磨耗抵抗コーティング(ハードコート)に適合性である」の使用によって、クロスハッチテープ剥離接着試験またはハードコート中にクレージングが存在しないことによって決定されるように、樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムがその表面に置かれる有機シランハードコートを有することが可能であること、そしてこの有機シランハードコートが通常の扱い/磨耗条件下で樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムに接着することが意味される。もちろん、有機シランハードコートは濃縮された苛性の水溶液での処理または激しい機械的磨耗によって除去され得る。さらに、用語磨耗抵抗有機シラン含有コーティング(または他のこのような類似の意味の用語)は、磨耗抵抗コーティングが少なくとも1つの有機シランを含む組成物から調製されることが意味される。
【0134】
必要とされる場合、樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムの表面に磨耗抵抗コーティングが塗布されるまえに、樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムにプライマーコーティングが塗布され得ることが企図される。このようなプライマーコーティングは当該分野において公知である。適切なプライマーコーティングの選択は、使用される特定の樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムおよび磨耗抵抗コーティングに依存する(すなわち、プライマーコーティングは、それが接する表面と化学的および物理的に適合性(非反応性)でなければならない)。このプライマーコーティングは、1つまたは複数の単分子層の厚みであり得、そしてこの厚みは、0.1ミクロン〜10ミクロン(例えば、0.1ミクロン〜2ミクロンまたは0.1ミクロン〜3ミクロン)の範囲であり得る。このようなプライマーコーティングはフォトクロミックコーティングと関連して本明細書中で議論され、そしてこの議論はまた本発明に適用可能である。
【0135】
1つの実施形態において、ハードコートは以下の一般式VIII:
SiW VIII
によって表される少なくとも1つの有機シランモノマーの、固体として計算される35〜95重量パーセントを含む組成物から調製され得、
ここで、Rはグリシドキシ(C−C20)アルキルであり、望ましくはグリシドキシ(C−C10)アルキルであり、およびより望ましくはグリシドキシ(C−C)アルキルであり;Wは水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C−Cアルコキシ、C−Cアルコキシ(C−C)アルコキシ、C−Cアシルオキシ、フェノキシ、C−Cアルキルフェノキシ、またはC−Cアルコキシフェノキシであり、このハロゲンはブロモ、クロロまたはフルオロである。代表的には、Wは水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C−Cアルコキシ、C−Cアルコキシ(C−C)アルコキシ、C−Cアシルオキシ、フェノキシ、C−CアルキルフェノキシまたはC−Cアルコキシフェノキシであり、そしてこのハロゲンはクロロまたはフルオロである。より代表的には、Wはヒドロキシ、C−Cアルコキシ、C−Cアルコキシ(C−C)アルコキシ、C−Cアシルオキシ、フェノキシ、C−CアルキルフェノキシまたはC−Cアルコキシフェノキシである。
【0136】
ハードコート組成物中の、実験式VIIIによって表されるシランモノマーの、固体として計算される重量パーセントは、代表的には40〜90重量パーセント、より代表的には45〜85重量パーセント;およびさらにより代表的には50〜70重量パーセントである。固体を計算した重量パーセントは、理論的にオルトシリケートの加水分解の間に形成するシラノールの割合として決定される。
【0137】
一般式VIIIによって表されるシランモノマーの非限定的な例としては:
グリシドキシメチルトリエトキシシラン、
グリシドキシメチルトリメトキシシラン、
α−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、
α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、
α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、
α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、
β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、
β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、
β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、
β−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、
β−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、
γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、
γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、
γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、
γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、
γ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、
δ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、
δ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、
このようなシランモノマーの加水分解物、ならびにこのようなシランモノマーとそれらの加水分解物との混合物が挙げられる。
【0138】
上記実施形態のハードコート組成物は、計算固体として、以下の5〜65重量パーセントをさらに含み得る:(a)実験式IXによって表されるシランモノマー;(b)実験式Xによって表される金属アルコキシド;または(c)(a):(b)の重量比が1:100〜100:1であるこれらの混合物。代表的に、このハードコート組成物は、上述の材料(a)、(b)または(c)の10〜60重量パーセント計算固体、より代表的には15〜55重量パーセント、そしてさらにより代表的には30〜50重量パーセント計算固体を含有する。
【0139】
ハードコート組成物は、以下の実験式IX:
(RSiZ4−(b+c) IX
によって表される少なくとも1つのシランモノマーを含み得、
ここで、RはC−C20アルキル、C−C20ハロアルキル、C−C20アルケニル、C−C20ハロアルケニル、フェニル、フェニル(C−C20)アルキル、C−C20アルキルフェニル、フェニル(C−C20)アルケニル、C−C20アルケニルフェニル、モルホリノ、アミノ(C−C20)アルキル、アミノ(C−C20)アルケニル、メルカプト(C−C20)アルキル、メルカプト(C−C20)アルケニル、シアノ(C−C20)アルキル、シアノ(C−C20)アルケニル、アシルオキシ、メタクリルオキシまたはハロゲンであり得る。このハロまたはハロゲンは、ブロモ、クロロまたはフルオロであり得る。代表的には、RはC−C10アルキル、C−C10ハロアルキル、C−C10アルケニル、フェニル、フェニル(C−C10)アルキル、C−C10アルキルフェニル、モルホリノ、アミノ(C−C10)アルキル、アミノ(C−C10)アルケニル、メルカプト(C−C10)アルキル、メルカプト(C−C10)アルケニル、シアノ(C−C20)アルキル、シアノ(C−C10)アルケニルまたはハロゲンであり、そしてこのハロまたはハロゲンはクロロまたはフルオロである。
【0140】
式IXにおいて、RはC−C20アルキレン、C−C20アルケニレン、フェニレン、C−C20アルキレンフェニレン、アミノ(C−C20)アルキレン、アミノ(C−C20)アルケニレンであり得;Zは水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C−Cアルコキシ、C−Cアルコキシ(C−C)アルコキシ、C−Cアシルオキシ、フェノキシ、C−CアルキルフェノキシまたはC−Cアルコキシフェノキシであり得、このハロまたはハロゲンはブロモ、クロロまたはフルオロであり;bおよびcは、それぞれ0〜2の整数であり;そしてbとcの合計は0〜3の整数である。代表的には、RはC−C10アルキレン、C−C10アルケニレン、フェニレン、C−C10アルキレンフェニレン、アミノ(C−C10)アルキレン、アミノ(C−C10)アルケニレンであり、Zは水素、ハロゲン、ヒドロキシ、C−Cアルコキシ、C−Cアルコキシ(C−C)アルコキシ、C−Cアシルオキシ、フェノキシ、C−Cアルキルフェノキシ、またはC−Cアルコキシフェノキシであり、そしてこのハロまたはハロゲンはクロロまたはフルオロである。
【0141】
一般式IXによって表されるシランモノマーの非限定的な例としては、メチルトリメトキシシラン、メチル−トリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、およびγ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピル−メチルジエトキシシラン、テトラメチルオルトシリケート、テトラエチルオルトシリケート、このようなシランモノマーの加水分解物、ならびにこのようなシランモノマーおよびこれらの加水分解物の混合物が挙げられる。
【0142】
ハードコート組成物は、実験式X:
M(T)
によって表される少なくとも1つの化合物を含み得、
ここで、Mはアルミニウム、アンチモン、タンタル、チタンまたはジルコニウムから選択される金属であり;TはC−C10アルコキシであり、そしてqはMの数価に等しい整数である。通常、Mはアルミニウム、チタンまたはジルコニウムかた選択され、そしてTはC−C10アルコキシ(例えば、プロポキシ)である。
【0143】
ハードコート組成物はまた、組成物の総重量に基づいて、0〜20重量パーセントの金属酸化物を含み得、この金属酸化物は、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化チタン、酸化ジルコニウムまたはこれらの金属酸化物の混合物から選択される。この金属酸化物は、ゾル形態であり得る。本明細書において使用される場合、用語ゾルは、水溶液または有機液中において微細に分離される固体の無機金属酸化物粒子のコロイド分散系を意味し、そして包含する。このような粒子の平均サイズは、1ナノメートル〜200ナノメートルの範囲であり得、代表的には2ナノメートル〜200ナノメートル、そしてより代表的には5ナノメートル〜50ナノメートルの範囲であり得る。
【0144】
このような金属酸化物ゾルは、金属塩前駆体を所望の粒子サイズを形成するのに十分な時間加水分解することによって調製され得るか、または商業的に購入され得る。ハードコート組成物において使用され得る商業的に入手可能な金属酸化物ゾルの例としては、NALCO(登録商標)コロイドゾル(NALCO Chemical Co.から入手可能)、REMASOL(登録商標)コロイドゾル(Remet Corp.から入手可能)およびLUDOX(登録商標)コロイドゾル(E.I.du Pont de Nemours Co.,Inc.から入手可能)が挙げられる。安定な酸性金属酸化物ゾルおよびアルカリ性金属酸化物ゾルは、水性分散物として市販される。通常、この金属酸化物は酸に安定なコロイドシリカ、酸に安定なコロイドアルミナ(例えば、NALCO(登録商標)8676)または酸に安定なアルミナコーティングされたシリカゾル(例えば、NALCO(登録商標)1056)の形態で供給されるシリカまたはアルミナである。金属酸化物ゾルはまた、有機液(例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレンクリコールおよび2プロポキシエタノール)中に分散剤として得られ得る。
【0145】
ハードコート組成物はまた、触媒量の水溶性酸性触媒を含有し得る。触媒量は、シランモノマーの重縮合を引き起こすのに十分な量である。代表的には、酸性触媒の触媒量は、ハードコート組成物の総重量に基づいて、0.01〜10重量パーセントの範囲である。この水溶性酸性触媒は、有機カルボン酸または無機酸であり得る。適切な触媒の例としては、酢酸、蟻酸、グルタル酸、マレイン酸、硝酸、硫酸および塩酸が挙げられる。
【0146】
ハードコート組成物中に存在する有機溶媒は、シランモノマーの加水分解によってインサイチュで添加され得るか、または形成され得る。有用な有機溶媒は、コーティング組成物の固体成分を溶解または分散する有機溶媒である。コーティング組成物中に存在する溶媒の最少量は、溶媒和量(すなわち、コーティング組成物中の固体成分を可溶化または分散するのに十分な量)である。例えば、存在する溶媒の量は、コーティング組成物の総重量に基づき、20〜90重量パーセントの範囲であり得、そして、コーティング組成物中に存在するシランモノマーの量に部分的に依存する。溶媒の例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:ベンゼン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、エタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピルアルコール、プロピレンカーボネート、N−メチルピロリジノン、N−ビニルピロリジノン、N−アセチルピロリジノン、N−ヒドロキシメチルピロリジノン、N−ブチル−ピロリジノン、N−エチルピロリジノン、N−(N−オクチル)−ピロリジノン、N−(n−ドデシル)ピロリジノン、2−メトキシエチルエーテル、キシレン、シクロヘキサン、3−メチルシクロヘキサノン、エチルアセテート、ブチルアセテート、テトラヒドロフラン、メタノール、アミルプロピオネート、メチルプロピオネート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、エチレングリコール、エチレングリコールのモノアルキルエーテルおよびジアルキルエーテル、および商品名CELLOSOLVE工業溶媒で販売されているそれらの誘導体、プロピレングリコールメチルエーテルおよびプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(これらは、それぞれ商品名DOWANOL(登録商標)PM溶媒およびDOWANOL(登録商標)PMA溶媒で販売される)ならびにこれらの溶媒の混合物。
【0147】
非イオン性界面活性剤の平準化量が、ハードコート組成物中に成分として存在し得る。平準化量は、コーティングが、それが塗布される樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムの表面でハードコート組成物に均等に拡散するか、またはハードコート組成物を平らにさせるのに十分な量である。代表的には、この非イオン性界面活性剤は使用される状態で液体であり、そしてシランモノマーの量に基づいて、約0.05〜約1.0重量パーセントの量で使用され得る。適切な非イオン性界面活性剤は、Kirk Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,第3版,Volume 22,pages 360〜377に記載される。他の利用可能な非イオン性界面活性剤としては、米国特許第5,580,819号、第7欄第32行目〜第8欄第46行目に記載される界面活性剤が挙げられる。
【0148】
ハードコート組成物中で使用され得る非イオン性界面活性剤の非限定的な例としては、エトキシル化アルキルフェノール(例えば、IGEPAL(登録商標)DM界面活性剤またはオクチル−フェノキシポリエトキシエタノール(これはTRITON(登録商標)X−100として販売される))、アセチレン型ジオール(例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール(これはSURFYNOL(登録商標)104として販売される))、エトキシル化アセチレン型ジオール(例えば、SURFYNOL(登録商標)400界面活性剤シリーズ)、フルオロ−界面活性剤(例えば、FLUORAD(登録商標)フルオロケミカル界面活性剤)およびキャップド非イオン(例えば、ベンジルキャップドオクチルフェノールエトキシレート(これはTRITON(登録商標) CF87として販売される)、プロピルレンオキシドキャップドアルキルエトキシレート(これらはPLURAFAC(登録商標)RAシリーズ界面活性剤として入手可能である)、オクチルフェノキシヘキサデシルエトキシベンジルエーテル、溶媒中のポリエーテル改変ジメチルポリシロキサンコポリマー(これはBYK(登録商標)−306添加剤としてByk Chemieによって販売されている)ならびにこれらの列挙された界面活性剤の混合物が挙げられる。
【0149】
水もまた、ハードコート組成物中にシランモノマー加水分解物を形成するのに十分な量で存在する。任意の金属酸化物ゾル中に存在する水は、必要な量の水を供給し得る。そうでない場合、さらなる水が、シランモノマーを加水分解するのに必要な、必要とされるさらなる量を提供するためにコーティング組成物に添加され得る。
【0150】
磨耗抵抗コーティング(ハードコート)は、フォトクロミックコーティングおよび樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムに関して記載された塗布技術(例えば、スピンコーティング)と同じものを使用して樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムに塗布され得る。磨耗抵抗フィルムは、0.5ミクロン〜10ミクロンの厚みで塗布され得る。ハードコート(例えば、有機シランハードコート)を樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムに塗布する工程の前に、樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムは、そのハードコートの受容性およびハードコートの接着を増強するように処理され得る。樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムの塗布に先立つフォトクロミックコーティングの前処理に関して上に記載されるこのような処理(例えば、プラズマ処理)が、使用され得る。
【0151】
本発明のさらなる実施形態において、さらなるコーティング(例えば、反射防止コーティング)が、ハードコート層に塗布され得る。反射防止コーティングの例は、米国特許第6,175,450号および国際特許公開第00/33111号に記載される。
【0152】
本発明は、以下の実施例においてより詳細に記載され、これらの実施例は例示としてのみ意図され、したがって本実施例における多数の改変および変更が当業者に明らかである。本実施例において、パーセンテージは他に特定されない限り重量パーセントとして報告される。括弧内の小文字によって1つの実施例において特定され、かつ他の実施例において使用されるモノマー、触媒、開始剤などの材料は、後の実施例において同一の小文字で特定される。
【実施例】
【0153】
(実施例1)
以下の実施例において、Gentex Opticsから得たプラノPDQコーティングされたポリカーボネートレンズを使用した。この試験レンズを、Plasmatech機械を使用して、100ワットの出力レベルで1分間、100ml/分の速度で酸素をPlasmatech機械の真空チャンバ内に導入しながら酸素プラズマで処理した。次いでこのレンズを脱イオン水でリンスし、そして空気で乾燥した。フォトクロミックポリウレタンコーティング組成物を、スピンコーティングによってプラズマ処理したレンズに塗布し、そして熱硬化した。ポリウレタン組成物の成分およびその量を表1に作表する。ポリウレタン組成物の成分を30分間、60℃で混合し、その後レンズに塗布される前に室温で30分間混合した。このフォトクロミックポリウレタンコーティングは、約20ミクロンの厚みであった。
【0154】
【表1】

(a)メチルエチルケトオキシムブロックされたヘキサメチレンジイソシアネート(Bayer)
(b)メチルエチルケトオキシムブロックされたイソホロンジイソシアネートトリマー(CreaNova,Inc.)
(c)ポリへキサンカーボネートジオール(Stahl)
(d)ポリアクリレートポリオール(米国特許第6,187,444 B1号の実施例1における組成物D)
(e)ヒンダードアミン光安定剤(Ciba−Geigy)
(f)γグリシドキシプロピルトリメトキシシランカップリング剤(OSi)
(g)UV照射によって活性化された場合に、コーティングに灰色の色合いを与えるよう設計された割合のナフトピランフォトクロミック材料の混合物
(h)界面活性剤(Niax)。
【0155】
2つのコーティング調製物を、樹状分岐ポリエステルアクリレートPRO−5249をそれぞれ15グラム使用して調製した。PRO−5249樹状分岐ポリエステルアクリレートは、その供給業者によってネオペンチルグリコール−2−プロポキシル化ジアクリレートと樹状分岐ポリエステルアクリレートとの50/50ブレンドであり、ここで16個の末端ヒドロキシ基のうち約13個がアクリル化されていると報告される。第1のコーティング調製物は、ニートPRO 5249を光開始剤無しで使用し;一方第2のコーティング調製物は、0.038グラム(0.25重量%)のBAPO光開始剤[ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド]を含有した。
【0156】
試験レンズ上のフォトクロミックポリウレタンコーティングを、Plasmatech機械を使用してコーティングされていないプラノレンズを処理するのに使用されるのと同じ条件を使用して、プラズマ放電によって処理した。樹状分岐ポリエステルアクリレートコーティング調製物を、スピンコーティングによって約0.06グラム(約10ミクロンの厚み)の湿潤フィルムを与えるように、試験レンズに塗布した。このコーティングを、窒素雰囲気下でDバルブからのUV光で硬化した。続いて、4つのレンズ(2つはBAPO光開始剤あり、2つは光開始剤無し)を、Plasmatech機械を使用してコーティングされていないプラノレンズを処理するのに使用されるのと同じ条件を使用してプラズマ処理し、次いでシロキサンベースのハードコート(PPG Industries,Inc.から入手可能なHI−GARD 1035)でハードコーティングした。このハードコートの厚みは約2ミクロンであった。サンプルの全ては対流オーブンにおいて100℃で3時間にわたって焼かれた後であった。この試験レンズを、第1および第2のクロスハッチテープ剥離接着試験を用いて接着について試験し、そしてハードコートの硬化後のクレージングンのレベルを観察することによってハードコートの適合性について試験した。(光開始剤の有無にかかわらず)樹状分岐ポリエステルアクリレートコーティングをコーティングし、ハードコートは有さない試験サンプルの全てに、第1の(乾燥)クロスハッチテープ剥離接着試験および第2の(湿潤)クロスハッチテープ剥離接着試験の両方において100%の接着を見出した。ハードコーティングしたレンズ(光開始剤なし)に、100%の接着(第1のクロスハッチ)および90%の接着(第2のクロスハッチ)をそれぞれ見出した。ハードコーティングしたレンズ(光開始剤あり)に、90%の接着(第1のクロスハッチ)および70%の接着(第2のクロスハッチ)をそれぞれ見出した。ハードコートの全てが、クレージングを有さないことを観察し、このことはこのハードコートが樹状分岐アクリレートコーティングに適合性であることを示す。
【0157】
樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムコーティングされた試験レンズは透明であり、そして86%の光透過率を有した。樹状分岐ポリエステルアクリレートフィルムコーティングされた試験レンズを、UV光に曝露し、そして可逆的な色の変化を観察した。
【0158】
(実施例2)
樹状分岐ポリエステルコーティング溶液を5グラムのPRO 5249樹状分岐ポリエステルアクリレートおよび0.0125グラム(0.25重量%)のBAPO光開始剤を使用して調製したこと以外は、実施例1の手順を、Gentex Opticsから入手したプラノPDQポリカーボネートレンズを使用して追随した。さらに、1つのコーティング溶液は0.25グラムのγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(A−187)を含有させた。
【0159】
この試験レンズを、実施例1に記載のようにプラズマ放電で処理し、実施例1に記載のタイプのフォトクロミックポリウレタンコーティングでコーティングし、樹状分岐ポリエステルアクリレートコーティング溶液を、スピンコーティングによってフォトクロミックポリウレタンコーティングに塗布し、実施例1に記載の様式で硬化した。実施例1に記載のように、2つのレンズをプラズマ処理し、そしてシロキサンベースのハードコートでコーティングした。全てのレンズは、対流オーブンにおいて100℃で3時間にわたって後焼きを行った。接着およびハードコート適合性についての試験を、実施例1に記載のように実施した。(ハードコートの有無にかかわらず)A−187シラン添加剤を含有するレンズの全てに、100%の接着(第1のクロスハッチおよび第2のクロスハッチ)を見出した。さらに、このハードコートは硬化後にクレージングを示さなかった。A−187シラン添加剤を有さないレンズおよびハードコートを有さないレンズが、100%の接着(第1のクロスハッチおよび第2のクロスハッチ)を有することを見出し、一方、ハードコートを有するレンズが、100%の接着(第1のクロスハッチ)および40%の接着(第2のクロスハッチ)を有することを見出した。これらのレンズはまた、ハードコートのクレージングを示さなかった。
【0160】
本発明は、その特定の実施形態の具体的な詳細を参照して記載されてきたが、添付の特許請求の範囲に含まれる範囲を除いて、このような詳細が発明の範囲を制限するものとしてみなされることは意図されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載のフォトクロミック物品。

【公開番号】特開2009−276778(P2009−276778A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191504(P2009−191504)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【分割の表示】特願2006−552135(P2006−552135)の分割
【原出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【出願人】(504175051)トランジションズ オプティカル, インコーポレイテッド (65)
【Fターム(参考)】