説明

フォトクロミック多重焦点光学製品

多重焦点光学製品、たとえば、レンズなどの眼用製品であって、該製品は、(1)基材の少なくとも1表面の少なくとも一部に、少なくとも1種の光影響特性、たとえば、フォトクロミック層および/または偏光層を持つように適合された硬質光基材であって、たとえば、熱硬化性または熱可塑性基材などの透明ポリマー基材と、(2)該基材上の、光影響特性を持つ光学品質材料の多重焦点層とを有する製品を記載する。また、前記光学製品であって、多重焦点層上に耐摩耗性被膜、たとえばオルガノシランを含む耐摩耗性被膜を有する製品を記載する。多重焦点光学製品を製造する方法であって、多重焦点モールドと光影響特性を有する光基材を含むプレフォームとの間で、光学品質材料を硬化させるステップを含む方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2004年3月4日に出願された、フォトクロミック光学製品についての米国特許出願番号10/793,589、および2004年3月4日に出願された、フォトクロミック光学製品についての米国特許出願番号10/793,588に関連する。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は多重焦点光学製品に関する。より詳しくは、本発明は、光影響機能を有する多重焦点光学製品に関する。さらにより詳しくは、本発明は、多重焦点眼用製品、たとえば、フォトクロミック、偏光、着色性、および/または他の光変性機能(これらに限定されない)から選択することができる光影響機能を有する眼用レンズに関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
眼への入射光の透過を減少させながら、良好な画像品質を提供する透明な眼用製品は、サンレンズ、プラノレンズ、ファッションレンズ、およびたとえば処方箋レンズなどの視覚矯正眼用レンズが挙げられる種々の用途に必要である。その必要性に応えて、フォトクロミックプラスチック眼用製品は、それらが提供する重さがガラスレンズより有利であるので、大きな注目を集めている。
【0004】
フォトクロミズムとは、フォトクロミック有機材料またはフォトクロミック無機材料、たとえば、クロメンまたはハロゲン化銀塩、あるいはそのような材料を含む製品の色の可逆変化に関連する現象である。活性化紫外線または他の化学線の源に暴露された時、フォトクロミック材料は、色の変化を示し、たとえば、より暗くなる。放射線の活性化を除去または中断した場合、フォトクロミック材料は、元の色または無色状態に戻る。フォトクロミック材料を塗布されたかまたは中に導入された製品は、この色の可逆変化を示し、結果として光透過の可逆変化を示す。
【0005】
フォトクロミックプラスチック眼用製品は、インビビションプロセスによって、フォトクロミック材料をプラスチック製品の基材に導入することによって製造されてきた。該インビビションプロセスでは、1種以上のフォトクロミック材料、たとえば、有機フォトクロミック材料を、プラスチック製品の表面に、純粋のフォトクロミック染料/化合物として塗布するか、またはこれを重合体または他の有機溶剤媒体に溶解または分散させ、次いで加熱してプラスチック製品の表面下領域に該フォトクロミック染料/化合物を拡散させている。そのようなプラスチック製品の表面下領域は、フォトクロミック染料/化合物を、無色状態から着色状態に変え、次いでそれらの元の無色状態に回復するのに十分な空隙があることが報告されている。
【0006】
しかし、フォトクロミック染料/化合物を簡単に吸収しないポリマー材料がある。そのような状況下では、フォトクロミック染料/化合物は、ポリマーの表面下に十分浸透しないか、またはポリマーの表面下には、十分な空隙がないと報告され、それによって、フォトクロミック染料/化合物が有意なフォトクロミック活性を発揮することを妨害されている。したがって、これらのポリマー材料は、商業的に許容しうるフォトクロミック光学用途のための、吸収された(または内部に導入された)フォトクロミック材料用の基材として使用することができない。そのようなポリマー材料を、フォトクロミック製品用の基材として使用できるようにするには、有機フォトクロミック被膜を、そのようなポリマー基材の表面に適用することが提案されてきた。
【0007】
多重焦点眼用製品は、たとえば二重焦点、三重焦点および累進レンズなどのレンズに関して、複数の光学的補正を必要とする数多くの人がいるため、大きな商業的興味である。したがって、有機フォトクロミック材料を簡単に吸収しないポリマーから製造されるフォトクロミック多重焦点眼用製品を提供することが望まれている。プレフォームされた多重焦点製品の表面にフォトクロミック被膜を適用することは、多重焦点領域、たとえば高二重焦点区域の近傍に位置する被膜欠陥および光学的歪のため、最小限の成功しか得ていない。そのような被膜欠陥を持つ眼用製品は、商業的に許容しうる「美容品基準」を満たさない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の簡単な要旨)
本発明の限定ではない1実施形態では、(1)少なくとも1種の光影響特性を有するように適用された硬質光基材と、(2)該基材上にある光学品質樹脂の多重焦点層とを含む多重焦点光学製品を提供する。本発明の他の非限定的な実施形態では、(1)硬質光基材と、(2)該硬質光基材の少なくとも1表面の少なくとも一部の上にある、透明光影響性層、たとえばフォトクロミックポリマー被膜および/または偏光層と、(3)該光影響性層上にある光学品質樹脂の多重焦点層とを含む多重焦点光学製品を提供する。
【0009】
本発明のさらなる非限定的な実施形態では、前記多重焦点光学製品が、(1)多重焦点モールドと少なくとも1種の光影響特性を持つように適用された硬質光基材を含むプレフォームの表面との間に光学品質樹脂を接触するように配置するステップと、(2)該光学品質樹脂を硬化させることによって、前記プレフォームの表面上に多重焦点層を設けるステップとを含む方法によって製造される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(発明の詳細な説明)
本明細書(実施例以外)の目的のため、あるいは他に示唆がない限り、以下の記載および特許請求の範囲で使用される成分、反応条件その他の量および範囲を表す全ての数字は、全ての場合、用語「約」がついていると理解すべきである。したがって、反対のことが記載されていない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載されている数値は、そのプロセスによって得られるべき結果に応じて、そして本発明の製品に求められる特性により変化しうる近似値である。少なくとも、添付の特許請求の範囲の範囲に対する均等論の適用を限定するつもりではなく、各数値は、少なくとも、報告された有効数字の数の観点から、および通常の数字の丸め方を適用することによって解釈すべきである。さらに、本明細書および添付の特許請求の範囲に使用されている単数形、「a」、「an」および「the」は、明示的におよび明確に1つの対象に限定していない限り、複数形も含むものである。
【0011】
発明の広い範囲を掲載する数字範囲およびパラメーターが近似値であることとは別に、特定の実施例で記載されている数値は、可能な限り正確に報告している。しかし、いかなる数値も、本来的に、それぞれの試験測定において見られる標準偏差が必然的にもたらすある誤差を含有する。また、本明細書中で挙げられる数字的範囲はどれも、その中に従属するサブ範囲を含むものであることは理解されるべきである。たとえば、範囲「1〜10」は、挙げられた最小値1と挙げられた最大値10との間で、それらを含むサブ範囲を含むものであり、すなわち、最小値1以上であり、最大値10以下である範囲である。開示された範囲は連続的であるので、最小値と最大値との間の各値を含む。他に明示的に示していない限り、この出願で明記された種々の数字範囲は、記載したように、近似値である。
【0012】
以下の記載および特許請求の範囲で使用される、以下の用語は示された意味を持つものである。
【0013】
用語「アクリル」および「アクリレート」は、(そうすることで意図する意味が変わってしまう場合を除いて)相互互換的に使用され、他に明らかに示されていない限り、アクリル酸、低級アルキル置換アクリル酸(たとえば、メタクリル酸、エタクリル酸などのC−C置換アクリル酸)、およびそのようなアクリル酸の誘導体(たとえば、それらのC−Cアルキルエステル)が挙げられる。用語「(メタ)アクリル」または「(メタ)アクリレート」は、示された物質(たとえば、(メタ)アクリレートモノマー)のアクリル/アクリレート形態およびメタクリル/メタクリレート形態の両方を網羅することが意図される。
【0014】
硬化された組成物または硬化性組成物、たとえば、ある特定の記載の「硬化された組成物」に関連して使用される用語「硬化する」、「硬化された」または類似の用語は、硬化性組成物を形成する重合性および/または架橋性成分の少なくとも一部分が、少なくとも部分的に重合および/または架橋することを意味する。一般的に、硬化性組成物は、実質的に架橋されている。非限定的な実施形態において、架橋度は、完全な架橋の5%〜100%の範囲でありうる。代替の非限定的な実施形態では、架橋度は、完全架橋の35%〜85%の範囲、たとえば50%〜85%の範囲でありうる。架橋度は、記載した値を含んで、先に記載した値の任意の組み合わせの間の範囲にわたることができる。
【0015】
用語「硬化性」は、たとえば、硬化性光学樹脂組成物と関連して使用される場合、示された組成物が、たとえば、熱的開始、触媒的開始、電子線開始、化学的フリーラジカル開始および/または紫外線への暴露などの光開始(これらに限定されない)によって重合しうるまたは架橋しうることを意味する。
【0016】
用語「光影響機能」、「光影響特性」または同様の趣旨の用語は、示された材料、たとえば、被膜、フィルム、基材などが、材料に入射する入射光放射線、たとえば、可視光線、紫外線(UV)および/または赤外線(IR)の吸収(またはフィルタリング)によって変性することができることを意味する。代替の非限定的な実施形態では、光影響機能として、たとえば、偏光子および/または二色性染料による光偏光性;たとえば、フォトクロミック材料などの化学線への暴露時に色を変化させる発色団の使用による光吸収特性の変化;たとえば従来の染料などの固定色彩の使用による入射光放射線の一部のみの透過;またはこれらの光影響機能の1種以上の組み合わせを挙げることができる。
【0017】
たとえば、硬質光基材に関連して使用される用語「少なくとも1種の光影響特性を有するように適用された」は、特定された物品が、そこに導入されたまたは追加された光影響特性を有することができることを意味する。たとえば、代替の非限定的な実施形態では、光影響特性を有するように適用されたプラスチックマトリックスとは、そのプラスチックマトリックスが、フォトクロミック染料または色を内部に収容するのに十分な内部自由空隙を有すること、そのようなプラスチックマトリックスの表面が、それに付随したフォトクロミックまたは色が付けられた層、フィルムまたは被膜を有することができること、および/あるいはこの表面が、それに付随した偏光フィルムを有することができることを意味する。
【0018】
用語「多重焦点」は、特定された光学製品が複数の焦点距離を有し、たとえば、二重焦点、三重焦点、累進または非球面レンズであることを意味する。たとえば、多重焦点光学レンズは、複数のレンズ補正領域を有するレンズであり、たとえば、二重焦点レンズは、距離補正などの第一レンズ補正を提供する光学領域と、読むための第二レンズ補正領域を提供する光学領域とを有する。第一補正領域と第二レンズ補正領域との間の距離などの第三レンズ補正領域を提供する光学区域を有するレンズは、一般的に、三重焦点と言われる。
【0019】
用語「上に」、「に付随された」、「に貼付する」、「に結合された」、「に付着された」または同様の意味を持つ用語は、指定された物品、たとえば、被膜、フィルムまたは層が、対象表面に直接連結されている(積層されている)、または間接的に、たとえば、1種以上の他の被膜、フィルムまたは層を介して連結されている(積層されている)ことを意味する。
【0020】
用語「眼用」は、眼および視力に関連する構成要素およびデバイスをいい、たとえば、アイウェア用のレンズ、たとえば、矯正および非矯正レンズおよびルーペが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
たとえば、ポリマー材料に関連して使用される用語「光学品質」、たとえば、「光学品質の樹脂」または「光学品質の有機ポリマー材料」は、示された材料、たとえば、ポリマー材料、樹脂、または樹脂組成物が、眼用レンズなどの光学製品として、または光学製品と組み合わせて使用することができる基材、層、フィルムまたは被膜であるか、またはこれらを形成することを意味する。
【0022】
たとえば、光基材と関連して使用される用語「硬質」は、特定された物品が自己支持型(self−standing)であることを意味する。
【0023】
用語「光基材」は、特定された基材が、少なくとも4%の光透過率(入射光を透過する)を示し、たとえばヘーズガードプラス(Haze Gard Plus)装置によって550ナノメートルで測定した時、1%未満、たとえば、0.5%未満のヘーズ値を示すことを意味する。光基材として、レンズなどの光学製品、光学層、たとえば、光学樹脂層、光学フィルムおよび光学被膜、および光影響特性を有する光基材が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
用語「プレフォーム」は、少なくとも1種の光影響特性を有するように適用されている硬質光基材を意味する。
【0025】
用語「フォトクロミック受容性」は、示された物品が、その中に導入されたフォトクロミック材料が、その無色状態から着色された状態に変換すること(および、次いで無色状態に回復すること)を可能にするのに十分な空隙を有することを意味する。
【0026】
たとえば、眼用構成要素および光基材に関連して使用される用語「色が付けられた」は、示された物品が、定常光線吸収剤、たとえば、通常の着色剤、赤外線および/または紫外線吸収物質(ただしそれらに限定されない)を該示された物品上または内に含有することを意味する。色が付けられた物品は、化学線に応答して大きく変化しない可視光線の吸収スペクトルを有する。
【0027】
たとえば、眼用構成要素および光基材に関連して使用される用語「色が付けられていない」は、示された物品が、化学線に応答して大きく変化しない可視光線の吸収スペクトルを有することを意味する。
【0028】
用語「化学線」は、可視光線および紫外線の両方を含む。
【0029】
たとえば、眼用構成要素および光基材に関連して使用される用語「色が付けられたフォトクロミック」は、示された物品が、定常光線吸収剤とフォトクロミック材料とを含有することを意味する。示された物品は、化学線に応答して変化する可視光線の吸収スペクトルを有し、化学線が取り去られた時、熱的に可逆である。たとえば、限定ではない1実施形態では、色が付けられたフォトクロミック物品は、吸光剤、たとえば着色剤の第一特性と、フォトクロミック材料が化学線に暴露された時、吸光剤と活性化フォトクロミック材料との組み合わせの第二色特性とを有する。
【0030】
用語「二色性材料」、「二色性染料」または同様の意味を持つ用語は、2種の透過放射線の直交平面偏光成分のうちの一方を他方より強く吸収する材料/染料を意味する。二色性材料の限定ではない例示として、インジゴイド、チオインジゴイド、メロシアニン、インダン、アゾ染料およびポリ(アゾ)染料、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、(ポリ)アントラキノン、アントラピリミジノン、ヨウ素およびヨウ素酸塩が挙げられる。用語「二色性」は、「偏光」または同様の意味をもつ用語と同義である。
【0031】
用語「二色性フォトクロミック」は、二色性特性とフォトクロミック特性との両方を示す特定された物質または製品を意味する。代替の非限定的な実施形態では、特定された物質は、フォトクロミック染料/化合物と二色性染料/化合物との両方を含む、あるいはフォトクロミック特性と二色性特性とを有する単一の染料/成分を含む。
【0032】
たとえば、基材、フィルム、物質および/または被膜に関連して使用される用語「透明」は、後ろに位置する物体が完全に見えるように、示された基材、被膜、フィルムおよび/または物質が、大きな拡散なしに光を透過する特性を有することを意味する。限定ではない1実施形態では、透明な基材、被膜、フィルムおよび/または物質は、少なくとも70%の光透過率を有する。代替の非限定的な実施形態では、透明物品は、少なくとも80%、たとえば、少なくとも85%の光透過率を有する。
【0033】
本発明は、少なくとも1種の光影響特性を有するように適用された硬質光基材と、該基材上の光学品質樹脂の多重焦点層とを含む多重焦点光学製品に関する。限定ではない1実施形態で、本発明は、光基材、たとえば、ガラスまたは光学品質の有機ポリマーなどの有機ポリマー材料の硬質基材と、透明光影響被膜、たとえば、透明基材の少なくとも1表面の少なくとも一部分に付随されたフォトクロミックポリマー被膜および/または偏光被膜と、該光影響被膜上に重ね合わせた光学品質樹脂の透明多重焦点層との複合体を含む眼用製品に関する。
【0034】
さらなる限定ではない本発明の実施形態では、先に記載した多重焦点光学、たとえば眼用製品は、さらに、多重焦点光学樹脂層上に重ね合わせられた耐摩耗性被膜を少なくとも1種含む。さらなる、限定でない本発明の実施形態では、追加の被膜、たとえば、反射防止被膜は、耐摩耗性被膜上に重ね合わされる。追加のフィルム/被膜を、反射防止被膜に付随させ、たとえば、上に重ね合わせ、または下に置き、追加の官能特性を多重焦点製品に付与し、たとえば、帯電防止被膜および/または抗湿潤被膜とすることができる。
【0035】
代替の非限定的な実施形態では、光影響特性を、着色性、フォトクロミズム、着色性およびフォトクロミズムの組み合わせ;偏光;着色性および偏光の組み合わせ;フォトクロミズムおよび偏光の組み合わせ;着色性、フォトクロミズムおよび偏光の組み合わせ;または具体的に記載しなかったこのような光影響特性の1以上の組み合わせから選択することができる。一般的に、光影響特性は、光学製品、たとえば、レンズなどの眼用製品の表面に付随されている被膜、フィルムまたは層に実現される。しかし光影響特性は、光学製品のマトリックス内に導入することができる。
【0036】
多重焦点層は、硬化性光学品質樹脂、たとえば、光学品質の有機重合性組成物で製造される。硬化された場合、光学品質樹脂は、透明な接着性多重焦点層を提供する。非限定的な実施形態において、硬化性多重焦点光学品質樹脂は、それが配置されているプレフォームの表面に互いに密着して付着するように適用され、たとえば、硬化性組成物を、接着促進添加剤、たとえばプレフォームの表面(そして使用する場合、多重焦点光学品質樹脂上に配置される耐摩耗性被膜)と共有化学結合を造ることができるシランカップリング剤を含有するように調製することができ、硬化された光学樹脂の隣接面への接着を強化することができる。代替の非限定的な実施形態で、多重焦点樹脂層をプレフォームの表面に追加する方法は、たとえば、熱および/または圧力の使用により、プレフォームに対する接着性を強化することができる。
【0037】
本発明の非限定的な実施形態において、硬化された多重焦点光学樹脂は、この硬化された多重焦点光学樹脂層上に配置され得る耐摩耗性被膜と、相溶性がある。耐摩耗性被膜、たとえば、オルガノシラン含有組成物で造られるようなハードコートを、本明細書の他の箇所で記載する。「相溶性」とは、硬化された多重焦点光学樹脂が、その表面に塗布された耐摩耗性被膜、たとえば、オルガノシラン含有ハードコートを有することができ、耐摩耗性被膜が、普通の操作/装着条件下、当該分野で周知のクロスハッチテープ剥離接着試験(ASTM D3359−02およびASTM D870−02)によって測定して、プレフォームの表面に付着する、および/または耐摩耗性被膜形成剤が塗布され硬化された後、ひび割れを起こさないことを意味する。
【0038】
限定ではない本発明の1実施形態では、硬化された多重焦点光学樹脂層は、水性無機苛性溶液、たとえば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの溶液などの比較的濃度の低い水性アルカリ金属水酸化物溶液による処理(たとえば、除去)に抵抗性がある。12.5%水酸化カリウム溶液に140°F(60℃)で4分間曝された後、樹脂層の厚さが、0.5ミクロン以下しか減少しない場合、その多重焦点樹脂層は、そのような溶液による除去に対して抵抗性があると考えられる。代替の非限定的な実施形態では、多重焦点樹脂層は、2種類または3種類のアルカリ金属水酸化物溶液に曝された後、0.5ミクロン以下しか減少しない。
【0039】
本発明の非限定的な実施形態では、硬化された多重焦点光学品質樹脂は、光影響特性を有する下にある層、たとえば、フォトクロミック被膜または偏光層より硬い。層または被膜の硬度は、たとえば、フィッシャースコープHCV型H−100(FISCHERSCOPE HCV Model H−100)装置(Fischer Technology社から入手しうる)によって測定することができる。そのような測定によって得られた値は、普通、フィッシャーミクロ硬度と言われる。フィッシャーミクロ硬度は、100ミリNの荷重、30回の荷重ステップ、および2μm(ミクロン)の圧子(ビッカースダイアモンドスタイラ)深さで0.5秒の荷重ステップの間の間隔の条件下で、試験サンプルの中心域で3回測定した平均を取ることによって得られる。
【0040】
本発明の限定ではない1実施形態では、硬化された多重焦点光学品質樹脂層は、光影響特性を有する下にある層より耐スクラッチ性があり、たとえば、摩擦あるいは剥離された場合、光影響特性を有する下にある層より、突き通りにくく、損なわれにくく、あるいは傷が付きにくい。層の耐スクラッチ性は、非常に細かいスチールウールによる研磨を受けた表面の平均ヘーズ増加を測定する、従来のスチールウール引掻き試験によって簡単に測定することができる。たとえば、ASTM試験法F735−81を参照。エーベルバッハスチールウール磨耗試験機(Eberbach Steel Wool Abrasion Tester)を、表面耐スクラッチ性を測定するために、使用することができる。バイエル磨耗試験機(Bayer Abrasion Tester)も、表面耐摩耗性を測定するために使用することができる。
【0041】
限定ではない1実施形態では、多重焦点層を製造するために使用される光学品質樹脂は、放射線、たとえば、紫外線もしくはマイクロ波によっておよび/または熱硬化プロセスによって硬化しうる。一般的に、光学品質多重焦点樹脂は、比較的短い時間間隔で所望の硬化度に硬化する材料である。たとえば、限定ではない1実施形態では、硬化性光学品質樹脂の硬化時間は、2時間未満である。代替の非限定的な実施形態では、該硬化時間は1時間未満、たとえば、30分未満である。多重焦点樹脂の硬化の間、多重焦点光学樹脂と、上に多重焦点光学樹脂が付随している下の層、たとえば、光影響特性を有する被膜との間の接合面で、ある共有結合が存在すると考えられる。このような共有結合によって、2層の接着が向上され、これは、光学樹脂および/または光影響特性を有する被膜中の接着促進添加剤の導入によってさらに向上される。
【0042】
限定ではない本発明の1実施形態では、該物質の硬化の間に、揮発性物質、たとえば蒸気が生成することを避けるように、硬化性多重焦点光学樹脂には、揮発性物質(たとえば、溶剤(反応性溶剤以外))が実質的に存在しない。多重焦点光学品質樹脂の硬化の間に気化する溶剤および溶存ガスなどの揮発性物質によって、製造が困難となり、多重焦点層中に泡および/または他の望ましくない美観的欠陥が存在する結果となり得る。
【0043】
本発明の限定ではない1実施形態では、硬化性多重焦点光学品質樹脂は、多重焦点モールドからのキャスティングおよび/またはプレフォームの早期の分離、多重焦点モールドの破壊および/または多重焦点層内の望ましくない美観的欠陥を避けるように、硬化の間、比較的低い収縮率を有する。代替の非限定的な実施形態では、硬化性多重焦点光学品質樹脂の収縮率は、15%未満、たとえば、10%未満である。
【0044】
前記物理的特性を持つ硬化重合体を提供する光学品質樹脂は、当業者に周知であるか、あるいは選択されたクラス内の樹脂での慣用的な実験によって確認することができる。さらに、それらの硬化樹脂の屈折率も周知である。そのような情報により、当業者は、種々の光学樹脂から選択し、所望の多重焦点層を得ることができる。さらに、当業者は、光学樹脂を、プレフォームおよび/または多重焦点モールドの表面上に均一に分散させる所望の粘度または流動性を持つように、光学樹脂を簡単に配合することができる。
【0045】
本発明の非限定的な実施形態によれば、多重焦点光学品質樹脂は、樹枝状ポリエステル(メタ)アクリレートを含む。非アクリル化樹枝状ポリエステル型巨大分子は、中でも、米国特許第5,418,301号、第5,663,247号および第6,225,404号明細書、および米国特許公開第2002/0151652号公報に記載されている。(また、教科書Dendrimers and other Dendritic Polymers,Jean M.J.FrechetおよびDonald A.Tomalia.編集者,ISBN:0−471−63850−1も参照。)これらの巨大分子は、普通、ツリー様構造を有する三次元分子である。本明細書で使用する用語「樹枝状ポリエステル型巨大分子」および「樹枝状ポリエステル型オリゴマー」(または同様の趣旨の用語)は、多分岐樹枝状巨大分子およびデンドリマーを意味し、包含するものである。デンドリマーは、高度に対称的であり、多分岐として指定される類似の巨大分子は、ある程度、非対称であってもよいが、それでも高度に分岐したツリー様構造は維持している。デンドリマーは、単分散あるいは実質的に単分散の多分岐樹枝状巨大分子ということができる。
【0046】
多分岐樹枝状ポリエステル巨大分子は、通常、開始部または1以上の反応性部位もしくは官能基を有する核、および数多くの分岐層、ならびに必要に応じて1以上のスペーシング層および/または連鎖移動分子の層を含む。分岐層の連続した複製作用により、分岐重複度の増加が得られ、適用できる場合または望ましい場合は、末端官能基の数が増加する。層は、普通、世代と呼ばれ、そして分岐は、デンドロンと呼ばれる。多分岐樹枝状巨大分子(デンドリマー)は、米国特許第6,225,404号明細書の第6欄、第8〜30号に見られる式によって描くことができる。該開示は参照によって本明細書に援用される。これらの式において、XおよびYは、開始部またはそれぞれ4個および2個の反応性官能基を有する核であり、A、BおよびCは、3個(AおよびC)および4個(B)の反応性官能基を有する分岐鎖長延長剤であって、それぞれの分岐鎖長延長剤は、巨大分子中で1つの分岐世代を形成する。前記式中のTは、末端連鎖停止剤または適切な末端官能基または部位であり、たとえば、水酸基、カルボキシル基またはエポキシド基である。
【0047】
デンドロンは、先に生成し、次いで核に付加することができる。デンドロンは、たとえば、1以上のヒドロキシ官能性カルボン酸を普通のエステル化温度で縮合させることによってか、モノ、ジ、トリまたはポリ官能性カルボン酸と、モノ、ジ、トリまたはポリ官能性アルコールまたはエポキシドとでエステル結合を形成させることによってか、あるいはエステル結合、エーテル結合、または他の化学結合を形成する類似の手法によって生成することができる。デンドロンを生成するために使用される原料物質は、少なくとも1つの核または開始部と反応させる末端反応性部位を提供するように選択する。
【0048】
樹枝状ポリエステル型巨大分子は、一般的に、必要に応じて、エーテルまたはポリエーテル単位と組み合わせて、エステルまたはポリエステル単位で構成される。多分岐樹枝状巨大分子は、少なくとも1つの反応性エポキシド基、水酸基、カルボキシル基または酸無水物基を有する単量体または重合体核を含み、該核には1〜100、通常1〜20、たとえば2〜8個の少なくとも3つの反応基を有する単量体または重合体分岐鎖長延長剤を少なくとも1つ含む分岐世代が付加され、反応基の少なくとも1つは、水酸基であり、少なくとも1つはカルボキシル基または酸無水物基であり、必要に応じて少なくとも1つのスペーシング世代は、少なくとも1つの鎖長延長剤を含む。スペーシング鎖長延長剤は、一般的に、1つは水酸基、1つはカルボキシル基または酸無水物基である2個の反応基を有する化合物、あるいはラクトンなどのそのような化合物の分子内エーテルである。多分岐樹枝状巨大分子の末端鎖延長官能基は、実質的に水酸基、カルボキシル基または酸無水物基であり、該多分岐樹枝状巨大分子は、必要に応じて、少なくとも1種の単量体または重合体連鎖停止剤によって完全にまたは部分的に鎖が停止され、および/または官能基化されている。
【0049】
樹枝状ポリエステル型巨大分子は、検討されたように、中央コアから放射状に延びた、明確に定義された高度に分岐した巨大分子であり、段階的な反復性分岐反応シークエンスによって合成される。反復性分岐シークエンスは、普通、各世代の完全なシェルを確保し、単分散である巨大分子に導く。樹枝状ポリエステル巨大分子精製の合成法は、寸法、形状、表面/内部化学、可撓性およびトポロジーに関し殆ど完全な制御を提供することが多い。樹枝状ポリエステル巨大分子は、完全で対称的な分岐と、不完全で非対称的な分岐を有することができる。
【0050】
ポリエステル型樹枝状巨大分子用の中央開始分子の限定ではない例として、脂肪族、脂環式または芳香族のジオール、トリオール、テトラオール、ソルビトール、マンニトール、ジペンタエリスリトール、あるいはジアルコール、トリアルコールまたはポリアルコールとアルキレンオキシド(たとえば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、およびブチレンオキシド)との、分子量が2000未満の反応生成物が挙げられる。ジオールの限定ではない例として、1,3−プロパンジオール、1,3−プロパンジオールのダイマー、トリマーまたはポリマー、2−アルキル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジアルキル−1,3−プロパンジオール(たとえば、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール)、2−ヒドロキシ−2−アルキル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジ(ヒドロキシアルキル)−1,3−プロパンジオール、2−ヒドロキシアルコキシ−2−アルキル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジ(ヒドロキシアルコキシ)−1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−エタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、1,6−ヘキサンジオールおよびポリテトラヒドロフランが挙げられる。開始分子のアルキル基は、一般的に、C〜C12(たとえば、C〜C)アルキル基である。
【0051】
ポリエステル鎖長延長剤は、一般的に、少なくとも2個の水酸基を有する単官能性カルボン酸であり、たとえば、ジメチロールプロピオン酸、α,α−ビス(ヒドロキシ)プロピオン酸、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)吉草酸、α,α,α−トリス(ヒドロキシメチル)酢酸、α,α−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、α,β−ジヒドロキシプロピオン酸、ヘプトン酸、クエン酸、d−またはl−酒石酸、または3,5−ジヒドロキシ安息香酸などのα−フェニルカルボン酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
使用することができる連鎖停止剤として、飽和単官能性カルボン酸、飽和脂肪酸、不飽和単官能カルボン酸、安息香酸などの芳香族単官能カルボン酸、および二官能性または多官能性カルボン酸またはその無水物が挙げられるが、これらに限定されない。そのような酸の限定ではない例として、ベヘン酸が挙げられる。ポリエステル鎖長延長剤中の末端水酸基は、官能基を持つまたは持たない連鎖停止剤と反応することができる。
【0053】
樹枝状ポリエステル型巨大分子は、Perstorp Specialty Chemicals社、Perstorp、Swedenから、名称BOLTORN(登録商標)H20、BOLTORN(登録商標)H30およびBOLTORN(登録商標)H40樹枝状巨大分子で市販され、これらの巨大分子は、その周辺が、ヒドロキシ基で官能基化されている。これらの物質は、1,000〜4000の範囲の重量平均分子量を有する。BOLTORN(登録商標)H20、BOLTORN(登録商標)H30およびBOLTORN(登録商標)H40材料は、平均で、それぞれ、16個、32個および64個のヒドロキシ基を巨大分子の周辺に有する。
【0054】
樹枝状ポリエステル巨大分子材料は、公知のエステル化法によりアクリル化され、本明細書に記載の透明多重焦点層を生成するために使用される光学品質の樹枝状ポリエステルアクリレートを形成するために使用される材料を提供することができる。たとえば、国際公開第00/77070号および第00/64975の国際特許出願公開の開示を参照。
【0055】
樹枝状ポリエステル巨大分子のアクリル化、およびアクリル化された樹枝状ポリエステル巨大分子の回収および精製は、Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology(1980年、第1巻,第386−413頁)に見られる「Acrylic Ester Polymers」の記事に開示の方法などの、文献でよく知られた方法を使用して行ってもよい。アクリル化は、一般的に、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸またはクロトン酸(β−メタクリル酸)でアクリル化する分子によるエステル化などの直接反応、イソシアナト(メタ)アクリレートによる縮合反応、または該アクリル酸に対応する酸無水物および/またはハライドとの直接反応があり、該酸、酸無水物および/またはハライドに対する水酸基のモル比が、普通1:0.1と1:5との間、より普通には1:0.5と1:1.5との間である。他の限定ではないアクリル化剤の例として、エポキシドまたは無水物官能性アクリレートおよびメタクリレート、たとえば、グリシジルメタクリレートが挙げられる。非限定的な実施形態において、アクリル化剤は、化学量論的モル過剰で使用される。
【0056】
アクリル化樹枝状ポリエステル巨大分子中の官能性アルキル酸基、たとえば、アクリル化されている水酸基の割合は様々であるが、一般的に、最初のヒドロキシル含量に対して、5〜100%の範囲である。代替の非限定的な実施形態では、アクリル化樹枝状ポリエステル巨大分子中の官能性アクリル酸基の割合は、20〜90%、たとえば、40〜85%、例として45〜80%の間で変化しうる。アクリル化水酸基の百分率は、列挙した百分率を含めて、これらの百分率のいかなる組み合わせの間でも変化することができる。
【0057】
エステル化ステップは、普通、無極性有機溶媒などの溶媒の存在下で行われる。そのような溶剤の限定ではない例として、ヘプタン、シクロヘキサン、トルエン、ベンゼン、キシレンまたはこれらの溶剤の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。エステル化は、一般的に、触媒(たとえば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、硫酸、リン酸、ナフタレンスルホン酸、BF、AlCl、SnClなどのルイス酸、テトラブチルチタネートなどのチタネートおよび有機スズ化合物)の存在下で行われる。
【0058】
アクリル化ステップは、一般的に、50〜200℃、たとえば、80〜150℃の温度で行われる。アクリル化の温度は変えることができるが、一般的に、選択された溶剤およびアクリル化ステップが行われる圧力に依る。限定ではない1実施形態では、アクリル化ステップは、メチルエーテルヒドロキノン、ヒドロキノン、フェノチアジン、ジ−t−ブチルヒドロキノンなどのラジカル重合開始剤、またはこのような開始剤の混合物の存在下で行われる。
【0059】
国際公開第00/64975の国際特許出願公開の開示によれば、樹枝状ポリエステル巨大分子は一般的に粘稠液体であるので、アクリル化ステップの前に、該樹枝状ポリエステル巨大分子を、1以上の水酸基を有し、分子量が2000未満、たとえば、60〜1500または100〜1000の有機アルコール(たとえば、脂肪族アルコール)と混合され得る。一般的に、アルコールは、20〜50℃で液状であるか、あるいは該温度で樹枝状ポリエステル巨大分子と液状の混合物を得る。アルコールは、ジオールであり得る。ジオールの限定ではない例示として、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコールまたは1,3−プロピレングリコール、ブタンジオールまたはジ−、トリ−またはポリグリコール(たとえば、ジエチレングリコール、ポリプロピレングリコール)、またはグリコールポリマー(たとえば、1個以上のエチレングリコールと1個以上のプロピレングリコールとを含むポリマー)が挙げられる。樹枝状ポリエステル巨大分子とアルコールの重量比は、変わりうる。限定ではない1実施形態では、樹枝状ポリエステルのアルコールに対する重量比は、90:10と10:90との間で変わりうる。代替の非限定的な実施形態では、樹枝状ポリエステルのアルコールに対する重量比は、25:75と75:25との間、たとえば、40:60と60:40との間で変化することができ、例として50:50が挙げられる。樹枝状ポリエステル巨大分子とアルコールとの重量比は、特定した値を含め、挙げられた値の任意の組み合わせの間で変化することができる。樹枝状ポリエステルとアルコールの混合物のアクリル化により、少なくとも1種の樹枝状ポリエステルアクリレートと少なくとも1種のアクリレートモノマーとを含む組成物が生成する。
【0060】
本明細書および特許請求の範囲で使用される用語「樹枝状ポリエステルアクリレート」(または同様の意味を持つ用語)は、樹枝状ポリエステル型巨大分子をアクリル化することによって、あるいは樹枝状ポリエステル型巨大分子を含有する、粘度が減少した材料を含み、アクリル化ステップの間にアクリル化された基、たとえば、1個以上の水酸基を有するアルコール1種以上を有する樹枝状ポリエステル型巨大分子をアクリル化することによって製造される組成物を意味する。用語「樹枝状ポリエステルアクリレート層」(または同様の意味を持つ用語)は、樹枝状ポリエステルアクリレート(先に規定したような)を含む組成物、または樹枝状ポリエステルアクリレート(先に規定したような)と、少なくとも1種の他の放射線でまたは熱的に硬化しうる材料(以下、放射線硬化性材料という)とを含む組成物、たとえば、樹枝状ポリエステルアクリレート(先に規定したような)および放射線でまたは熱的に硬化しうるアクリルモノマー、たとえば、(メタ)アクリルモノマー材料の混合物の組成物を、たとえば、放射線および/または熱的方法による硬化によって製造された層を意味する。異なる樹枝状ポリエステルアクリレートのブレンドを、樹枝状ポリエステルアクリレート層の製造のために使用される組成物中に使用することができることも意図される。用語「樹枝状ポリエステルアクリレートを含む組成物」(または同様の趣旨の用語)は、前記組成物の任意のものを意味する。
【0061】
樹枝状ポリエステルアクリレートを含む組成物に使用することができる放射線硬化性アクリルモノマー材料の限定ではない例として、モノアクリレートおよびポリアクリレート、たとえば、ジアクリレート、トリアクリレート、テトラアクリレート、ペンタアクリレートなどが挙げられる。モノアクリレート、たとえば、単一のアクリル官能性を含有するモノマーとして、ヒドロキシ置換モノアクリレートおよびアルコキシシリルアルキルアクリレート、たとえば、トリアルコキシシリルプロピルメタクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。非限定的な実施形態では、放射線硬化性モノマー材料は、ジアクリレート、トリアクリレートおよびそのようなポリアクリレートの混合物から選択される。アクリルモノマーの例として、多重焦点光学品質樹脂として使用することができる放射線硬化性アクリレート系重合性組成物に関連して本明細書で実質的に記載されているアクリルモノマーが挙げられるが、これらに限定されない。また、2004年3月4日、Eric M.Kingによって出願された係属中の米国特許出願第10/793,589号明細書の15〜19頁も、アクリルモノマーの限定ではない例示として参照のこと。
【0062】
樹枝状ポリエステルアクリレートを含む組成物中の放射線硬化性アクリルモノマー材料の樹枝状ポリエステルアクリレートに対する重量比は、変化し得、一般的に、望ましい硬化性混合物および得られる多重焦点層の物性、たとえば、混合物の粘度、多重焦点層の架橋度および硬度に依る。非限定的な実施形態において、樹枝状ポリエステルアクリレートの放射線硬化性アクリルモノマー材料の重量比は、90:10〜10:90の範囲が可能である。代替の非限定的な実施形態では、該重量比は、70:30〜30:70、たとえば、40:60〜60:40の範囲が可能で、例として50:50が挙げられる。樹枝状ポリエステルアクリレートの追加のアクリレートモノマー材料に対する重量比は、特定した値に加えて、記載した値の任意の組み合わせで変えることができる。
【0063】
追加のアクリレートモノマー、および他の反応性モノマー/希釈剤の前記量は、硬化性樹枝状ポリエステルアクリレート組成物を含む、ただし光開始剤などの他の成分は含まない、重合性材料(樹脂固形分)の総量に基づく。硬化性樹枝状ポリエステルアクリレート組成物を含む種々の重合性材料の全ての合計は、もちろん100%である。
【0064】
放射線硬化性アクリル材料は、普通、市販されており、市販されていない場合は、当業者に周知の手段で生成することができる。商業的アクリレート材料の例示は、米国特許第5,910,375号明細書、特に、第8欄、第20〜55行および第10欄、第5〜36行に見出すことができ、該開示は参照によって本明細書に援用される。市販のアクリレート材料は、種々の製造業者から市販され、たとえば、商品名SARTOMER、EBECRYLおよびPHOTOMERで販売されているものが挙げられる。
【0065】
非限定的な実施形態において、樹枝状ポリエステルアクリレートおよびそのようなアクリレートを含む組成物は、多重焦点層の効率を向上させるため、またはプレフォームへの適用および塗布および多重焦点モールドからの除去を向上させるために、添加剤を含有することができる。そのような材料として、当該分野で周知の接着促進添加剤、紫外線安定剤、ヒンダードアミン安定剤、離型剤、粘度添加剤、流動性添加剤およびレベリング添加剤などが挙げられるが、これらに限定されない。接着促進剤および他の添加剤の検討は、先に挙げた、Eric M.Kingの米国特許出願第10/793,589号明細書の第21〜24頁および第25〜26頁に見出すことができる。
【0066】
樹枝状ポリエステルアクリレートおよび樹枝状ポリエステルアクリレートを含む組成物は、光開始剤を使用して硬化しても使用せずに硬化してもよい。これらの材料は、光開始剤なしで硬化することができるが、少量の1種以上の光開始剤を使用することで、硬化速度が速くなり、短時間でより完全な硬化を提供する。
【0067】
光開始剤は、使用される場合、組成物の硬化を開始し、持続するのに十分な量、たとえば、開始するまたは光開始する量で存在する。光開始剤は、硬化プロセスの開始を得るのに必要な最小の量で使用されるのが望ましい。一般的に、光開始剤は、硬化性樹枝状ポリエステルアクリレートフィルム組成物中の光開始重合性成分の合計に対して、0.1〜10重量%、たとえば、0.2〜1重量%、より一般的には0.3〜0.5重量%の量で存在する。光開始剤は当業者に周知である。市販の光開始剤の限定ではない例を、米国特許第5,910,375号明細書の第10欄、第38〜43行、および米国特許第6,271,339号明細書の第11欄、第24〜65行に見出すことができ、これらの開示は参照により本明細書に援用される。
【0068】
本発明の非限定的な実施形態によれば、多重焦点光学品質樹脂は、少なくとも1種のマレイミド誘導体、たとえば放射線硬化されたマレイミド誘導体、たとえばマレイミドオリゴマー、たとえばビスマレイミドオリゴマーを含む組成物であり得る。マレイミドオリゴマーなどのマレイミド誘導体は、当該分野で公知である。たとえば、米国特許第5,446,073号、第6,034,150号、第6,306,923号、第6,369,124号、第6,410,611号明細書および米国特許公開第2003/0073755号公報、欧州特許第0 878,482公報、および国際公開第99/03930号および第01/68602号の国際特許出願公開を参照。
【0069】
多重焦点光学品質樹脂として使用することができるマレイミド誘導体は、以下の一般式(1):
M−R−FG (1)
(式中、
(a)Mは、マレイミド基、すなわち、
【0070】
【化1】

であり、
(b)Rは、線状または分岐C〜C10アルキルであり、そして
(c1)FGは、−OR、−OC(O)N(R、OC(O)C(=CHR)R、−OC(O)R、−C(O)R、−N(R、−C(O)OR、−NCO、−C(O)N(Rまたは−OC(O)ORから選択される官能基であり、ただし、FGが−ORの場合、RはC〜C線状または分岐アルキルであり、各Rは、水素、20個未満の炭素原子、たとえば1〜10個の炭素原子のアルキル、アリール、シクロアルキル、アリールアルキルまたはアルキルアリール基から選択されるか、あるいは
(c2)FGは(c1)で定義されたとおりの官能基であり、スペーサー基と一緒になって、前記マレイミド基を少なくとも1個の他のマレイミド基と結合してポリマレイミド化合物、たとえば、ジ−、トリ−、テトラ−または他のポリマレイミド化合物を形成する)で表すことができる。
【0071】
マレイミド誘導体は、以下の一般表現で示すこともできる。
【0072】
M−[オリゴマー]−M (2)、および
[オリゴマー] (2A)
(式中、Mは、式(1)で定義した通りであり、xは、2〜4の数字であり、[オリゴマー]は、マレイミド基に結合する構造を示す)。
【0073】
限定ではない1実施形態では、マレイミド誘導体を、以下の一般式(3):
M−R−G−R−G−R−M (3)
(式中、
Mは、式(1)で規定した通りであり、RおよびRは、結合基を示し、これらは同じまたは異なってもよく、それぞれ独立して、20個未満の炭素原子の2価のアルキレン、脂環式、アリールアルキレンまたはシクロアルキルアルキレン基から選択され、GおよびGは、それぞれ、−C(O)O−または−OC(O)−で表されるエステル結合、または基:−OC(O)N−(カルバメート)を示し、Rは、1〜24個の炭素原子のアルキレン基(直鎖または分岐)、ヒドロキシ官能基を含む1〜24個の炭素原子のアルキレン基、4〜7個の炭素原子のシクロアルキレン(脂環式)基、11〜24個の炭素原子のジシクロアルキレンアルキル基、6〜10個の炭素原子のアリーレン基、6〜24個の炭素原子のアリールアルキレン基、13〜24個の炭素原子のジアリーレンアルキル基、ポリエーテル基、またはポリエステル基から選択される2価の結合基を示す)で表すことができる。非限定的な実施形態において、ポリエーテルおよびポリエステル基は、100〜5,000の平均分子量を有することができる。
【0074】
式(3)で示される基およびマレイミド誘導体の例示、ならびにそのような誘導体を製造する方法の限定ではない例は、米国特許第6,410,611号明細書の第4欄26行〜第12欄第24行で見出すことができ、該開示は参照により本明細書に援用される。RおよびRの例として、直鎖および分岐鎖アルキレン基、たとえば、C〜C12アルキレン基(たとえば、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、1−メチルエチレン、1−メチル−トリメチレン、2−メチル−トリメチレン、1−メチル−テトラメチレンなど);シクロアルキレン基(たとえば、シクロペンチレンおよびシクロヘキシレン基);主鎖または側鎖にアリール基を有するアリールアルキレン基(たとえば、ベンジレン(benylene)、2,2−ジフェニル−トリメチレン、1−フェニル−エチレン、1−フェニル−テトラエチレン、2−フェニル−テトラエチレン基など);主鎖または側鎖に脂環式基を有するシクロアルキルアルキレン基(たとえば、シクロヘキシル−メチレン、1−シクロヘキシル−エチレン、1−シクロヘキシル−テトラエチレン、2−シクロヘキシル−テトラエチレン基など)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
で表される結合鎖の限定ではない例として、以下のものが挙げられる。
(a)ポリエーテルポリオール残基であって、100〜5,000の平均分子量を有し、かつ1〜24個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基、2〜24個の炭素原子を有する分岐アルキレン基、3〜24個の炭素原子を有する脂環式基、6〜24個の炭素原子を有するアリール基から選択される少なくとも1個の基が、エーテル結合鎖またはその反復単位に結合している部分を含む残基;
(b)ポリエステルポリオール残基であって、100〜5,000の平均分子量を有し、かつ2〜24個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基、2〜24個の炭素原子を有する分岐アルキレン基、3〜24個の炭素原子を有する脂環式基、または6〜24個の炭素原子を有するアリール基から選択される少なくとも1個の基が、エステル結合鎖またはその反復単位と結合している部分を含む残基;
(c)ポリエーテルポリオールの2〜6個の炭素原子を有するカルボン酸によるエステル化によって得られる、末端位置にポリカルボン酸残基を有するポリカルボキシレートポリエーテルポリオールエステルであって、100〜5,000の平均分子量を有し、かつ1〜24個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基、2〜24個の炭素原子を有する分岐アルキレン基、3〜24個の炭素原子を有する脂環式基、または6〜24個の炭素原子を有するアリール基から選択される少なくとも1個の基が、エステル結合鎖またはその反復単位と結合している部分を含むもの;
(d)ポリエステルポリオールの2〜6個の炭素原子を有するカルボン酸によるエステル化により得られる、末端位置にポリカルボン酸残基を有するポリカルボキシレートポリエステルポリオールエステルであって、100〜5,000、たとえば100〜2000の平均分子量を有し、かつ1〜24個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基、2〜24個の炭素原子を有する分岐アルキレン基、3〜24個の炭素原子を有する脂環式基、または6〜24個の炭素原子を有するアリール基から選択される少なくとも1個の基が、エーテル結合鎖およびエステル結合鎖、またはその反復単位に結合している部分を含むもの;および
(e)ポリエポキシドの開環によって得られる結合鎖であって、100〜5,000の平均分子量を有し、かつ1〜24個の炭素原子を有する直鎖アルキレン基、2〜24個の炭素原子を有する分岐アルキレン基、3〜24個の炭素原子を有する脂環式基、または6〜24個の炭素原子を有するアリール基から選択される少なくとも1個の基が、エーテル結合鎖または該部分を含む反復単位と結合している部分を含む結合鎖、など。
【0076】
マレイミド誘導体の限定ではない例として、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、N−ペンチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、2−マレイミドエチルエチルカーボネート、2−マレイミドエチルイソプロピルカーボネート、N−エチル−(2−マレイミドエチル)カルバメート;N−シクロヘキシルマレイミド;N−フェニルマレイミド、N−2−メチルフェニルマレイミド、N−2−エチルフェニルマレイミド、N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−2−クロロフェニルマレイミド、およびN−(4−ヒロドキシフェニル)マレイミド、N,N’−メチレンビスマレイミド、N,N’−エチレンビスマレイミド、N,N’−トリメチレンビスマレイミド、N,N’−ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N’−ドデカメチレンビスマレイミド、ポリプロピレングリコール−ビス(3−マレイミドプロピル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−マレイミドプロピル)エーテル、およびビス(2−マレイミドエチル)カーボネート;1,4−ジマレイミドシクロヘキサンおよびイソホロンビスウレタンビス(N−エチルマレイミド);N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−(4,4’−ジフェニルオキシ)ビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−2,4−トリレンビスマレイミド、N,N’−2,6−トリレンビスマレイミド、N,N’−[4,4’−ビス(3,5−ジメチルフェニル)メタン]ビスマレイミド、N,N’−[4,4’−ビス(3,5−ジエチルフェニル)メタン]ビスマレイミド、2−エチルカーボネートエチルマレイミド、2−イソプロピルウレタンエチルマレイミド、2−アクリロイルエチルマレイミド、アセトキシエチルマレイミド、イソホロンビスウレタンビスエチルマレイミド、トリエチレングリコールビスカーボネートビスエチルマレイミド、ビスエチルマレイミドカーボネート、4,9−ジオキサ−1,12−ドデカンビスマレイミド、およびヒロドキシマレイミドのウレタン化反応(たとえば、ヒロドキシエチルマレイミドと、ポリイソシアネート(ジイソシアネート、トリイソシアネートなどのイソシアネート)との反応)により得られるマレイミド誘導体が挙げられる。
【0077】
本開示および特許請求の範囲で使用される用語「マレイミド誘導体」、「マレイミドオリゴマー」、「放射線硬化性マレイミド誘導体」または類似の用語は、式(1)、(2)、(2A)または(3)で表される物質をいう。
【0078】
マレイミド誘導体材料は、他の放射線および/または熱硬化性材料、たとえば、その構造内に不飽和二重結合を有するモノマー材料とブレンドしてもよい。そのような化合物として、式(1)、(2)、(2)Aまたは(3)で表されないマレイミド誘導体、アクリル酸およびメタクリル酸誘導体などの材料から誘導されるモノマーおよびオリゴマー、たとえば、(メタ)アクリロイル誘導体、(メタ)アクリルアミド誘導体、ビニル含有誘導体(たとえば、ビニルエーテル、ビニルエステルおよびビニルカルボキシレート誘導体)、スチレン誘導体および不飽和ポリエステル誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
用語「マレイミド誘導体を含む組成物」は、マレイミド誘導体のみを含有する組成物、およびマレイミド誘導体と、少なくとも1種の他の放射線または熱で硬化しうる不飽和モノマー材料(以下、まとめて、放射線硬化性材料という)とを含む組成物を意味する。
【0080】
他の放射線硬化性不飽和モノマー材料は、マレイミド誘導体材料と、所望するブレンドおよび多重焦点層の物性、たとえば、ブレンドの粘度、多重焦点層の架橋度および硬度に依存して種々の比でブレンドすることができる。一般的に、マレイミド誘導体材料の他の硬化性不飽和モノマー材料に対する比は、広く変化しうる。非限定的な実施形態において、該重量比は、90:10〜10:90の範囲で変化しうる。代替の非限定的な実施形態では、該重量比は、70:30〜30:70の範囲、たとえば、40:60〜60:40の範囲で変化でき、たとえば、50:50である。マレイミド誘導体含有材料の他の硬化性不飽和モノマー材料に対する比は、特定した値を含んで、記載した値の任意の組み合わせの間で変化しうる。
【0081】
マレイミド誘導体を含む組成物に導入することができる放射線硬化性(メタ)アクリルモノマー材料として、モノアクリレートおよびポリアクリレート、たとえば、ジアクリレート、トリアクリレート、テトラアクリレート、ペンタアクリレートなどが挙げられる。一般的に、ジアクリレート、トリアクリレートなどのアクリレートの混合物が使用される。アクリルモノマーの限定ではない例として、多重焦点光学品質樹脂として使用することができる放射線硬化性アクリレート系重合性組成物に関連して、本明細書で次に記載されるアクリルモノマーが挙げられるが、これらに限定されない。(メタ)アクリルモノマー材料および他の材料、たとえば、マレイミド誘導体と共に使用することができるビニルエーテル基を含む化合物に関するさらなる検討については、Eric M.Kingによって2004年3月4日に出願された、米国特許出願第10/793,588号、発明の名称:Photochromic Optical Articleの第16〜22頁を参照のこと。
【0082】
放射線硬化性マレイミド誘導体含有組成物において使用することができる、ビニルエーテル基を含む化合物として、ビニルエーテル基がアルキレン基と結合し;エーテル結合、ウレタン結合およびエステル結合から選択される少なくとも1種の結合を介して、アルキル、シクロアルキルおよび芳香族基から選択される置換基を持つかまたは持たない少なくとも1種の基と結合するモノビニルエーテル、ジビニルエーテル、およびポリビニルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。非限定的な実施形態で、水素原子、ハロゲン原子、ヒロドキシル基およびアミノ基で置換された末端基を有し、一般的に鎖長が1〜22個の炭素原子であるアルキルビニルエーテル;ジビニルエーテル(たとえば2〜6個の水酸基を有するたとえばポリオールのジビニルエーテルであり、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、3−メチルプロパントリオールおよびペンタエリスリトールが挙げられる);および水素原子、ハロゲン原子、ヒロドキシル基およびアミノ基で置換された末端基を有するシクロアルキルビニルエーテルを挙げることができる。
【0083】
そのような化合物の例として、メチルビニルエーテル、ヒロドキシメチルビニルエーテル、クロロメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、2−ヒロドキシエチルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、3−ヒロドキシプロピルビニルエーテル、2−ヒロドキシプロピルビニルエーテル、3−クロロプロピルビニルエーテル、3−アミノプロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、4−ヒロドキシブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、4−アミノブチルビニルエーテル、メチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、およびペンタエリスリトールテトラビニルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
使用することができるエーテルの他の限定ではない例として、エチレングリコールメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールモノビニルエーテルなどが挙げられる。たとえば、米国特許第6,410,611号明細書の第19欄第26行〜第20欄第27行に特定されているビニルエーテルを参照、該開示は参照によって本明細書に援用される。
【0085】
硬化性マレイミド誘導体含有組成物に含有することができる他の不飽和モノマー材料として、アミノプラストアクリレート(すなわち、メラミンアクリレート、酢酸ビニル、ビニルハライドおよびビニリデンハライド)ならびにアミド(すなわち、メタクリルアミド、アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド)、ビニルエステルおよびビニリデンエステル、ビニルエーテルおよびビニリデンエーテル、ビニルケトンおよびビニリデンケトン、ブタジエン、ビニル芳香族(すなわち、スチレン、アルキルスチレン、ハロスチレン、アルコキシスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンなど)、ならびにアクリル化エポキシドなどのプレポリマー、ポリエステルおよびポリウレタンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
また、マレイミド誘導体を含む組成物は、接着促進剤、光増感剤、光安定剤などの添加剤を含有してもよい。このような添加剤の説明およびこれらの目的は、樹枝状ポリエステルアクリレート光学品質樹脂に関連したそのような添加剤の先の検討において見出すことができる。該開示は本明細書中でも同様に適用しうる。
【0087】
マレイミド誘導体を含む組成物は、光開始剤を使って(あるいは使わずに)硬化することができる。光開始剤を使用する場合、該開始剤は、組成物の硬化を開始し、維持するのに十分な量、たとえば、開始量または光開始量で存在する。光開始剤および光開始量に関する説明は、樹枝状ポリエステルアクリレート光学品質樹脂の開示に関連したそのような材料の先の検討において見出すことができる。該開示は本明細書中でも適用しうる。
【0088】
本発明の他の非限定的な実施形態では、硬化性多重焦点光学品質樹脂は、ポリエポキシドの液体架橋性組成物と、ポリ酸硬化剤(該硬化剤は、酸無水物とポリオールとを反応させて形成した半エステルを含みうる)とを含む熱硬化性重合性組成物である。
【0089】
ポリエポキシドとポリ酸硬化剤とを含む透明フィルム形成組成物は、当該分野で公知である。適正な粘度および所望の重合物の透明性を有するように適用されたそのような組成物は、光学特性多重焦点層を製造するために使用することができる。当該分野で説明されているポリエポキシドの限定ではない例として、エポキシ縮合ポリマー、ならびにある種のポリエポキシドモノマーおよびオリゴマーが挙げられる。
【0090】
このようなエポキシ縮合ポリマーの限定ではない例として、1を超える、望ましくは1を超え3.0までの1,2−エポキシ当量を有するポリエポキシド、たとえば、脂肪族アルコールのポリグリシジルエーテルが挙げられる。これらのポリエポキシドは、アルカリの存在下、脂肪族アルコールを、エピクロロヒドリンなどのエピハロヒドリンでエーテル化することによって生成することができる。脂肪族アルコールの限定ではない例として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、および1,4−ブチレングリコールが挙げられる。また、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−ビス(ヒロドキシメチル)シクロヘキサンおよび水素化ビスフェノールAなどのシクロ脂肪族ポリオールも使用することができる。
【0091】
先に記載したエポキシ含有ポリマーに加えて、ある種のポリエポキシドモノマーおよびオリゴマーも使用することができる。これらの材料の限定ではない例が、米国特許第4,102,942号明細書、第3欄、第1〜16号に記載され、該開示は参照によって本明細書に援用される。そのようなポリエポキシドの例として、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートおよびビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
ポリ酸硬化剤は、ポリエポキシドと反応して有機溶剤に対する耐性によって示される架橋被膜を形成する分子1個当たり2個以上の酸基を含有する。酸官能基は通常カルボン酸であるが、スルホン酸などの酸も使用することができる。一般的に、ポリ酸硬化剤は、1分子当たり少なくとも2個のカルボキシル基を有するカルボキシル末端物質である。使用することができるポリ酸硬化剤の限定ではない例として、カルボン酸基含有ポリマー、ポリエステルおよびポリウレタン、エステル基含有オリゴマーなどのオリゴマー、およびモノマーがある。
【0093】
種々のポリカルボン酸を硬化剤として使用することができ、これらとしては、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、イタコン酸、アジピン酸、セバシン酸などのジカルボン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。また、それらが存在する場合、ポリカルボン酸の無水物も使用することができる。
【0094】
ポリ酸硬化剤は、組成物中に、樹脂固形分の合計重量に対して10〜90、一般的に25〜75重量%の量で存在する。また、ポリエポキシド−ポリ酸組成物は、無水物、たとえば、25℃で液体である無水物を含有することができる。組成物中にそのような無水物が存在することで、硬化応答が改良される。無水物の限定ではない例として、アルキル基が7個までの炭素、たとえば4個までの炭素を含有するアルキル置換ヘキサヒドロフタル酸無水物、たとえば、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物およびドデセニルコハク酸無水物が挙げられる。使用される無水物の量は変化しうる。限定ではない1実施形態では、使用される無水物の量は、樹脂固形分の合計重量に対して、0〜40、たとえば、5〜25重量%の範囲である。多重焦点層形成組成物中のカルボキシル基のエポキシ基に対する当量比は、一般的に、エポキシ1当量当たり約0.3〜3.0、普通、0.8〜1.5のカルボキシル(無水物は一官能性と考える)当量となるように調整される。
【0095】
また、重合性組成物は、一般的に、エポキシ基および酸基の硬化を促進する触媒を含有する。そのような触媒の限定ではない例は、塩基性材料であり、有機アミンおよび第四級アンモニウム化合物、たとえば、ピリジン、ピペリジン、ジメチルアニリン、ジエチレントリアミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラメチルベンジルアンモニウムアセテート、テトラブチルアンモニウムフルオライド、およびテトラブチルアンモニウムブロマイドが挙げられる。使用される触媒の量は変化しうる。非限定的な実施形態では、使用される触媒の量は、樹脂固形分に対して0〜10重量%、たとえば、0.5〜3重量%である。
【0096】
多重焦点透明ポリエポキシド−ポリ酸樹脂層は、熱硬化することができる。硬化操作において、ポリエポキシド−ポリ酸組成物は、存在する任意の架橋剤の助けによって架橋する。非限定的な実施形態では、加熱または硬化操作は、160°F〜350°F(71℃〜177℃)の範囲の温度で行われる。必要であれば、より低いまたはより高い温度を使用してもよく、必要な架橋メカニズムを活性化するのに十分であるか否かに依る。
【0097】
本発明の別の非限定的な実施形態では、熱硬化性ポリウレタン組成物は、プレフォームに提供される多重焦点光学品質樹脂層を製造するために使用されうる。これらのポリウレタン組成物は、ポリマーポリオールと、ブロックポリイソシアネートが挙げられる有機ポリイソシアネートとを基礎とする。一般的に、ポリマーポリオールは、室温で低粘度であるポリオールから選択される。ポリマーポリオールの限定ではない例は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、およびこれらのポリオールの混合物である。有機ポリイソシアネートの限定ではない例は、モノマーポリイソシアネートおよびポリマーイソシアネートである。一般的に、ポリマーポリイソシアネートは、ポリウレタン中の抽出可能な低分子量材料を残しにくいので、使用される。
【0098】
ポリエステルポリオールは、有機ポリカルボン酸またはその無水物を、有機ポリオールおよび/またはエポキシドでポリエステル化することによって生成される。一般的に、ポリカルボン酸およびポリオールは、脂肪族または芳香族の二塩基酸およびジオールである。より高い官能性のポリオール、たとえば、トリメチロールプロパンおよびペンタエリスリトールも使用してもよい。多価塩基酸およびポリオールから形成されるポリエステルポリオールの他に、ポリラクトン型ポリエステルも使用することができる。そのような生成物は、米国特許第3,169,945号明細書に記載されている。ポリエステルポリオールに加えて、ヒロドキシ含有アクリルポリマーまたはアクリルポリオールは、ポリオール成分として使用してもよい。
【0099】
ポリエーテルポリオールの限定ではない例は、ポリアルキレンエーテルポリオールであって、以下の一般式で表されるものが挙げられる。
【0100】
【化2】

(式中、置換基Rは、水素、または1〜5個の炭素原子を含有する低級アルキルであって、混合置換基も含まれ、nは、一般的に、2〜6の数であり、mは、10〜100以上の数である)。
【0101】
使用することができるポリイソシアネートとして、芳香族および脂肪族のポリイソシアネートが挙げられる。一般的に、脂肪族ポリイソシアネートは、優れた紫外線安定性および黄変しない傾向に起因して、使用される。そのようなポリイソシアネートの限定ではない例として、モノマーポリイソシアネート、たとえば、トルエンジイソシアネート、および4,4’−メチレン−ビス−(シクロヘキシルイソシアネート)、およびイソホロンジイソシアネートが挙げられる。他の限定ではない例は、イソホロンジイソシアネートおよび1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートからのイソシアヌレートであり、これらは両方とも市販されている。
【0102】
低温硬化性熱硬化性ポリウレタン組成物に関して、スズ化合物、たとえば、ジラウリン酸ジブチルスズなどの触媒は、一般的に、熱硬化性ポリウレタン組成物に存在する。使用される触媒の量は変化しうる。一般的に、使用される触媒の量は、樹脂固形分の重量に対して0.25〜0.30重量%である。熱硬化性ポリウレタン被膜形成剤を硬化させるために提供される条件は変化しうる。一般的に、熱硬化性ポリウレタン組成物は、20℃〜140℃の温度、30秒〜4時間で硬化される。より低い硬化温度ではより長い硬化時間が必要である。被膜を取り扱うことができるようになるまでの硬化時間を短縮するために、赤外線加熱を使用することができる。
【0103】
本発明のさらなる非限定的な実施形態では、多重焦点光学品質樹脂は、放射線硬化性アクリレート、たとえば、硬化された場合に透明層を提供する、放射線硬化性アクリレート系重合性組成物を含むことができる。多重焦点光学品質樹脂を生成するために使用することができるアクリレート成分の具体的な詳細は、国際公開第03/058300号の国際特許出願公開の第26頁第11行〜第34頁第1行に見出すことができ、該開示は参照によって本明細書に援用される。
【0104】
たとえば、放射線硬化性アクリレート系組成物は、アクリルモノマーまたはメタクリルモノマー、あるいはアクリルモノマーおよび/またはメタクリルモノマーの混合物を用いて生成することができる。(メタ)アクリルモノマーの混合物は、モノアクリル官能性モノマー、ジアクリル官能性モノマー、トリアクリル官能性モノマー、テトラアクリル官能性モノマーおよびペンタアクリル官能性モノマーを含みうる。追加の共重合性モノマー、たとえばエポキシモノマー、たとえば、エポキシ官能基を含有するモノマー、アクリル官能基およびエポキシ官能基の両方を含有するモノマー、なども配合物中に存在してもよい。アクリレート系組成物を生成するために使用されるモノマーは、複数の(たとえば主要量(すなわち50重量%を超える))アクリル官能性モノマーで構成されている。また、アクリレート系組成物は、少なくとも1個のイソシアネート官能基、たとえば、ブロックおよびブロックされていない有機モノイソシアネートおよび有機ジイソシアネートを有する成分も含有することができ、これによって、多重焦点層内にポリウレタン基を導入する。
【0105】
アクリレートモノマーの限定ではない例として、多官能性アクリレート、たとえば、ジ−、トリ−、テトラ−およびペンタ官能性アクリレート、および単官能性アクリレート、たとえば、単一のアクリル官能基を含有するモノマー、ヒロドキシ置換モノアクリレート、およびアルコキシシリルアルキルアクリレート、たとえば、トリアルコキシシリルプロピルメタクリレートが挙げられる。他の反応性モノマー/希釈剤、たとえば、エチレン性官能基を含有するモノマー(アクリル官能性材料以外)も存在することができる。
【0106】
多くのアクリレートは、以下の一般式I:
R−(OC(O)C(R’)=CH)H I
(式中、Rは、2〜20個の炭素原子および、必要に応じて、1〜20個のアルキレンオキシ結合を含有する脂肪族または芳香族基であり;R’は、水素、または1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基であり;nは、1〜5の整数である)で表すことができる。nが1を超える場合、Rは、アクリル官能基を一緒に結合する結合基である。一般的に、R’は、水素またはメチルであり、nは、1〜3の整数である。より具体的には、ジアクリレート(nが2の場合)は一般式II:
【0107】
【化3】

で表すことができる。
(式中、RおよびRは、同じであっても異なってもよく、それぞれ、水素、または1〜4個の炭素原子を含有するアルキル基、たとえばメチルから選択され、Aは、たとえば1〜20個の炭素原子のヒドロカルビル結合基、たとえば、アルキレン基、1個以上のオキシアルキレン基[または異なるオキシアルキレン基の混合物];あるいは以下の一般式III:
【0108】
【化4】

(式中、各Rは、水素原子、または1〜4個の炭素原子のアルキル基、たとえばメチルであり;Xはハロゲン原子、たとえば塩素であり;aは、ベンゼン環に置換するハロゲン原子の数を表す、0〜4の整数、たとえば0〜1であり;kおよびmは、一般的に、0〜20の数、たとえば、1〜15または2〜10である)の基である)。kおよびmの値は、平均の数であり、計算すると、整数であっても分数であってもよい。
【0109】
エポキシ基を有するアクリレートは、以下の一般式IV:
【0110】
【化5】

で表すことができる。
(式中、RおよびRは、同じであっても異なってもよく、それぞれ、水素、または1〜4個の炭素原子のアルキル基(たとえばメチル)から選択され;RおよびRは、2〜3個の炭素原子を含有するアルキレン基、たとえば、エチレンオキシおよびプロピレンオキシであり;mおよびnは、一般的に、0〜20の数、たとえば、0または1〜15、または2〜10である。)mおよびnの1つが0であり、他が1の場合、残っているR基は、以下の式V:
【0111】
【化6】

の芳香族基、たとえば、2,2’−ジフェニレンプロパンラジカル(ここで、フェニル基は、C〜Cアルキル基またはハロゲン、たとえば、メチルおよび/または塩素で置換されていてもよい)から誘導される基であってもよい。
【0112】
アクリレート系ポリマーシステムの放射線硬化は、一般的に、硬化をもたらすエネルギー源として紫外線(UV)を利用する。UV硬化では、少なくとも1種の光開始剤の存在が必要である。光開始剤およびそれらの量の説明は、多重焦点樹枝状ポリエステルアクリレート光学品質樹脂に関連して検討している。該記載は本明細書中でも適用しうる。
【0113】
限定ではない1実施形態では、アクリレート系配合物は、アクリレート材料が該配合物の0〜100重量%を構成するものを含んでもよい。代替の非限定的な実施形態では、アクリレート材料は、該配合物の0または3〜60または80重量%、たとえば10または15〜45または50、たとえば、20〜45(特に25〜35または45)重量%を構成する。一般的に、該アクリレート系配合物は、少なくとも1種のジアクリレート材料を含有する。また、該配合物は、1種以上のトリアクリレート材料を含有してもよく、トリアクリレート材料を使用しない場合、架橋は、配合物中の他のモノマー材料によってもたらすことができる。トリアクリレートは、配合物の0〜25または30重量%、たとえば、0または5〜15または30、あるいは10または15〜25重量%を構成することができる。より高い官能性のアクリレート材料、たとえば、テトラアクリレート、ペンタアクリレートおよびテトラアクリレートとペンタアクリレートとの混合物も、たとえば、3〜15重量%、たとえば5〜10重量%の量で、具体的には約5重量%の量で、配合物中に使用してもよい。限定ではない1実施形態では、モノアクリレート材料は、配合物の0または10〜75または100重量%を構成してもよい。代替の非限定的な実施形態では、モノアクリレート材料は、配合物の25〜85重量%、たとえば35〜75、たとえば、40〜70重量%を構成してもよい。特に、モノアクリレートがヒロドキシ官能性アクリレートである場合、それが配合物の35〜75、たとえば、40〜60重量%を構成してもよい。アルコキシシリルアクリレートを配合物中に使用する場合、5〜15重量%のそのような材料を使用することができる。
【0114】
官能性アクリレートモノマーの前記百分率は、放射線硬化性アクリレート系組成物を含み、他の非重合性成分、たとえば、光開始剤、安定剤、可塑剤および他のそのような成分は含有しない重合性モノマー材料の合計量に対するものである。硬化性アクリレート系配合物を含む種々の重合性モノマー材料の全ての合計は、もちろん、100%になる。これまで記載した官能性アクリレートモノマーのそれぞれの百分率は、明記した値を含めて、明記した値の任意の組み合わせの間で変化しうる。
【0115】
本発明の他の非限定的な実施形態では、放射線硬化性アクリレート系組成物は、フリーラジカル開始アクリレートモノマーおよびカチオン性開始エポキシモノマーの混合物を含む組成物から生成される。限定ではない1実施形態では、硬化性組成物は、10〜85重量%の少なくとも1種のエポキシモノマーと、90〜15重量%の少なくとも1種のアクリレートモノマーとを含む。代替の非限定的な実施形態では、硬化性組成物は、30〜70重量%のエポキシモノマーと70〜30重量%アクリレートモノマーとを、たとえば、35〜50重量%のエポキシモノマーと65〜50重量%のアクリレートモノマーとを含む。エポキシとアクリルとの両方の官能基を含有するモノマーを、本明細書では、アクリレートモノマーとして分類する。前記硬化性組成物中のアクリレートモノマーおよびエポキシモノマーの範囲は、明記した値を含めて、明記した値の任意の組み合わせの間で変化しうる。
【0116】
アクリレート系配合物において使用されるエポキシモノマーは、一般的に、カチオン性開始剤によって開始されるエポキシモノマーである。一般的に、エポキシモノマーは、エポキシ縮合ポリマー、たとえば、アルコールまたはフェノールのポリグリシジルエーテル、およびある種のポリエポキシモノマーおよびオリゴマーである。エポキシモノマー、たとえば、分子内に少なくとも1個のエポキシ基を有するモノマーは、以下の一般式VI:
【0117】
【化7】

(式中、Yは、b価のアルコール性ヒロドキシル化合物の残基、b価のフェノール性水酸基含有化合物の残基、またはb価のカルボン酸の残基であり、R’’は、水素原子またはメチル基であり、bは、1〜4の整数であり、一般的に1〜2である)で表すことができる。これらの材料として、1価、2価または3価アルコールのアルコール性水酸基含有化合物、フェノールおよびヒドロキノンなどのフェノール性ヒロドキシル化合物とエピクロロヒドリンとの間の反応生成物、ならびに安息香酸およびテレフタル酸などのカルボン酸とエピクロロヒドリンとの間の反応生成物が挙げられるが、これらに限定されない。また、式VIで表されるエポキシモノマーは、ラジカル重合性基(アクリル以外)、たとえば、ビニル基またはアリル基を(Yの一部として)含有してもよい。
【0118】
分子内に少なくとも1種のエポキシ基を有し、重合性基を持たないエポキシモノマー化合物の限定ではない例として、式VI(式中、bは1または2である)の化合物が挙げられる。bが1の場合、Yは、たとえば、2〜20個の炭素原子のアルキル基であり得、これは、水酸基、6〜7個の炭素原子を有するシクロアルキル基で置換することができ、これは、水酸基、フェニル基で置換することができ、これは、水酸基、ベンゾイル基で置換することができ、これは、カルボキシル基またはヒロドキシアルキレンオキシ基で置換することができる。bが2の場合、Yは、たとえば、2〜20個の炭素原子を含有するアルキレン基であり得、これは、水酸基、シクロアルキレン基で置換することができ、これは、水酸基、フェニレン基で置換することができ、これは、水酸基、フタロイル基、イソフタロイル基、テレフタロイル基、2,2’−ビスフェニレンプロピル基、およびアルキレンオキシ基で置換することができる。アルキレンオキシ基は、一般的に、1〜20個のアルキレンオキシ基を有し、アルキレン部分は、2〜4個の炭素原子を有することができる。
【0119】
エポキシ縮合ポリマーとして、1を超える、たとえば、3までの1,2−エポキシ当量を有するポリエポキシドが挙げられる。そのようなエポキシドの限定ではない例として、脂肪族(環状および脂環式)アルコールのポリグリシジルエーテルがある。脂肪族アルコールの例として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−ビス(ヒロドキシメチル)シクロヘキサンおよび水素化ビスフェノールAが挙げられるが、これらに限定されない。これらのエポキシは、Resolution Performance Productsから商品名HELOXYで入手しうる。ポリエポキシドモノマーおよびオリゴマーの例は、米国特許第4,102,942号明細書(第3欄、第1〜16行)に記載されていて、該開示は参照によって本明細書に援用される。脂肪族ポリエポキシドは、Dow社から商品名CYRACUREで入手しうる。
【0120】
共重合性アクリレート材料の限定ではない例は、樹枝状ポリエステルアクリレート光学品質樹脂の記載に関連して、先に記載している。該検討は、本明細書中でも適用しうる。
【0121】
放射線硬化性アクリレート系組成物は、一般的に、少なくとも1種のフリーラジカル光開始剤を含有する。配合物がカチオン性開始エポキシモノマーを含む場合、該配合物は、少なくとも1種のカチオン性光開始剤も含有する。限定ではない1実施形態では、光開始剤の組み合わせが使用される。光開始剤は、配合物の硬化を開始し、維持するのに十分な量、たとえば、開始量で存在する。光開始剤は、普通、少なくとも硬化プロセスの開始を得るのに必要な量で使用される。一般的に、光開始剤は、0.5〜10重量%の量で存在する。代替の非限定的な実施形態では、光開始剤は、硬化性アクリレート系組成物中の光開始重合性成分の合計重量に対して、0.5〜6重量%、たとえば、1〜4重量%の量で存在する。フリーラジカル光開始剤は当業者に周知である。市販の光開始剤の限定ではない例は、米国特許第5,910,375号明細書、第10欄、第38〜43頁に見出すことができ、該開示は参照によって本明細書に援用される。また、フォトクロミック被膜の交換に関連する、光開始剤に関する次の記載も参照。該検討は本明細書中にも適用しうる。
【0122】
カチオン性光開始剤は、フリーラジカル光開始剤とともに使用することができる。一般的に、カチオン性開始剤は、引抜き型光開始剤、水素ドナー材料、たとえば、ブチリルコリントリフェニルブチルボレートまたはそのような材料の組み合わせと使用する。代表的なカチオン性光開始剤は、オニウム塩であり、これは、米国特許第5,639,802号明細書、第8欄、第59行〜第10欄、第46行に記載され、該開示は参照によって本明細書に援用される。そのような開始剤の限定ではない例として、4,4’−ジメチルジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、フェニル−4−オクチルオキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ドデシルジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、[4−[(2−テトラデカノールオキシ]フェニル]フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩、およびトリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート塩、たとえば、六フッ化リンのトリフェニルスルホニウム塩が挙げられる。カチオン性開始剤の混合物を使用することもできる。
【0123】
本発明のさらなる非限定的な実施形態では、多重焦点光学樹脂層を、不飽和ポリエステル樹脂を25〜70重量%の量(スチレンなどのモノマー希釈剤を除く)の量で含む組成物から製造することができる。不飽和ポリエステル樹脂は、当業者に周知であり、1種以上のポリオールと1種以上のポリカルボン酸(飽和および不飽和)との反応によって生成することができ、オレフィン性不飽和は、1種以上の反応原料、普通ポリカルボン酸によって提供される。ポリエステル樹脂は、一般的に、1000〜5000のの平均分子量を有する。
【0124】
また、ポリエステル樹脂組成物は、他の共重合性モノマー、たとえば、アリルエステル、アクリレートモノマー、およびこれらの混合物も含有する。アリルエステルの限定ではない例として、ジアリルフタレート、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)、トリアリルシアヌレート、アリルアクリレートおよびジアリルマレエートが挙げられる。アクリレートモノマーは、樹枝状ポリエステルアクリレート光学品質樹脂の記載に関連して記載されている。該検討は本明細書中でも適用しうる。アクリレートモノマーの限定ではない例として、モノアクリレート、ジアクリレート、トリアクリレート、テトラアクリレート、ペンタアクリレートおよびより高い多官能性のアクリレートが挙げられ、これらには、メチルメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、トリメチロールプロパンポリオキシエチレントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートおよびビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィドが含まれる。アリルエステルは、ポリエステル樹脂組成物の1〜20重量%を占め得る。アクリレートモノマーは、ポリエステル組成物の1〜50重量%を占め得る。
【0125】
ポリエステル組成物は、組成物中に従来の光開始剤を導入し、次いで、放射線、たとえば紫外線で組成物を照射することにより硬化することができる。ポリエステル組成物の限定ではない例は、米国特許第6,863,848号明細書、表2、3、5、7および8に見出すことができ、該組成物は、参照によって本明細書に援用される。これらの組成およびその硬化のさらなる詳細は、米国特許第6,863,848B2号明細書、第16欄、第11行〜第21欄、第48行に見出すことができ、該開示は参照によって本明細書に援用される。
【0126】
多重焦点光学層を製造するために使用することができる組成物の他の限定ではない例は、不飽和ポリエステル樹脂、エチレン性不飽和エステルモノマー、および必要に応じてビニルモノマーおよびフリーラジカル重合触媒を含む組成物である。そのような組成物は、米国特許第5,319,007号明細書、第6欄、第61行〜第10欄、第54行に記載され、該開示は参照により援用される。不飽和ポリエステル樹脂は、飽和または不飽和ジカルボン酸の多価アルコールとの相互作用から誘導される。
【0127】
不飽和ジカルボン酸および飽和ジカルボン酸の限定ではない例が、前述のポリエステル樹脂の実施形態に関連して先に記載されている。多価アルコール(ポリオール)の限定ではない例は、前述のポリエステル樹脂の実施形態に関連して先に記載されている。該例示もこの記述に関連して適用可能である。ベースポリエステル樹脂は、一般的に分子量が1500〜5200であり、平均分子量が2470であり、かつ25℃でのブルックフィールド粘度が440センチポイズの樹脂である。ベースポリエステルに加えて、可撓性ポリエステルも必要に応じて含めることができる。
【0128】
エチレン性不飽和エステルは、以下の一般式:
CH=C(A)−C(O)−O−[(CH−O]−Ar(R)
(式中、AはC1−12アルキルを含み、Arはフェニレン分子を含み、RはC1−5アルキルを含み、mは1〜6の整数であり、nは1〜12の整数である)で表される芳香族エステルであってもよく、該不飽和エステルは、アクリル酸またはメタクリル酸のエステルでもよい。そのようなエチレン性不飽和エステルの限定ではない例として、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルメタクリレートおよびエトキシエチルアクリレートが挙げられる。
【0129】
任意のビニルモノマーとして、エチレン、プロピレン、イソブチレンおよび他のα−オレフィン;スチレン型モノビニル芳香族化合物(たとえば、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレンおよびクロロスチレン);アクリル酸およびメタクリル酸、およびこれらの低級アルキルエステル;ジアリルマレエート、ジアリルフタレート、トリアリルメリテート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ジメチルイタコネート、エチレングリコールジメタクリレートおよびジエチレングリコールアクリレート;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル;および塩化ビニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
一般的に、前記組成物は、80〜95重量部の不飽和ポリエステル樹脂(可撓性ポリエステル樹脂を含む)と、5〜12重量部のエチレン性不飽和エステル(たとえば、エチレン性不飽和芳香族エステル)と、0.5〜2部のフリーラジカル開始剤(たとえば、過酸化物およびケトン過酸化物)とを含む。不飽和ポリエステル樹脂は、25〜40%のビニルモノマー、たとえば、スチレンを含有してもよい。
【0131】
多重焦点光学層を製造するために使用してもよい組成物のさらなる限定ではない例は、米国特許第6,706,894B2号明細書の式(I)で表されるチオール化合物を含む組成物である。このチオール化合物は、トリチアン環に結合する3個のメルカプトアルキル基を有し、該メルカプトアルキル基は同じでも異なってもよい。該チオール化合物の限定ではない例として、2,4,6−トリス(メルカプトメチル)−1,3,5−トリチアンおよび2,4,6−トリス(メルカプトエチル)−1,3,5−トリチアンが挙げられる。該チオール化合物に加え、組成物は、(a)1分子中に少なくとも2個のビニル基を有する化合物、たとえば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、(b)1分子中に少なくとも2個のイソ(チオ)シアネート基を有する化合物、たとえば、キシレンジイソ(チオ)シアネート、3,3’−ジクロロジフェニル−4,4’−ジイソ(チオ)シアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソ(チオ)シアネートおよびヘキサメチレンジイソ(チオ)シアネート、および(c)1分子中に少なくとも1個のビニル基および少なくとも1個のイソ(チオ)シアネート基を有する化合物、たとえば、2−(メタ)アクリルオキシエチルイソ(チオ)シアネートおよび(メタ)アクリロイルイソ(チオ)シアネートから選択される材料を少なくとも1種含む。用語「イソ(チオ)シアネート」は、イソシアネートおよびイソチオシアネートの両方を含む。
【0132】
望ましい場合は、エピスルフィド化合物、たとえば、ビス(β−エピチオプロピルチオ)メタンが組成物中に含有されてもよい。チオール含有組成物のより具体的な詳細は、米国特許第6,706,894B2号明細書の第2欄、第62行〜第7欄、第40行に見出すことができ、該開示は参照によって本明細書に援用される。
【0133】
本発明のさらなる非限定的な実施形態では、多重焦点層は、エピスルフィド化合物、たとえば、米国特許第6,696,540B2号明細書の式(1)として記載されるエピスルフィドを含む配合物から形成してもよい。そのようなエピスルフィド化合物の限定ではない例として、2,4,6−トリス(エピチオメチルチオメチル)−1,3,5−トリチアン;2,4,6−トリス(エピチオエチルチオメチル)−1,3,5−トリチアン;および2,4,6−トリス(エピチオプロピルチオメチル)−1,3,5−トリチアンが挙げられる。該配合物は、1種以上の式(1)のエピスルフィドを含んでもよく、あるいは他の共重合性材料、たとえば、他のエピスルフィド化合物、エポキシ化合物およびホモ重合性ビニルモノマー(これらに限定されない)を含有することができる。式(1)のエピスルフィド、生成方法、およびそのようなエピスルフィド化合物を含む配合物の詳細は、米国特許第6,696,540B2号明細書の第2欄、第65行〜第6欄、第7行に見出すことができ、該記載は参照によって本明細書に援用される。
【0134】
本発明のさらなる非限定的な実施形態では、多重焦点層は、ポリ(チオ)ウレタンを含む組成物から製造してもよく、これは、米国特許第6,596,836B2号明細書の式(I)として記載されるポリイソシアネート化合物、たとえば、1,2,3−トリス(イソシアナトエチルチオ)プロパンの、2個以上の水酸基を有する化合物(たとえば、エチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ジヒロドキシベンゼンなど)、2個以上のメルカプト基を有する化合物(たとえば、2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアン);2,5−ビス(メルカプトメチル)−1,4−ジチアンのダイマー、トリマーまたはそれより高級なポリマー;または1個以上のヒロドキシル基と1個以上のメルカプト基とを含む化合物(たとえば、2−メルカプトエタノール;2,3−ジメルカプトプロパノール;1,2−ジヒロドキシ−3−メルカプトプロパン;4−メルカプトフェノールなど)を含む成分による付加反応によって生成される。ポリ(チオ)ウレタンを含む配合物の具体的な詳細は、米国特許第6,596,836B2号明細書、第4欄、第52行〜第10欄、第50行に見出すことができ、該記載は参照によって本明細書に援用される。
【0135】
本発明のさらなる非限定的な実施形態では、多重焦点層は、炭素、水素およびイオウ原子からなり、2または3個の環内イオウ原子をたとえば複素環の1−3または1−4位置に含有する5〜8員複素環を持つモノ(チオ)(メタ)アクリレートモノマーまたはジ(メタ)アクリレートを少なくとも1種含む配合物から製造され得る。一般的に、複素環は6員である。そのような材料は、米国特許第6,472,488B2号明細書の式(A)によって示される。また、該配合物は、1種以上の共重合性モノマー、たとえば、モノまたは多官能性ビニルモノマー、アクリルモノマーおよびメタクリルモノマーも含有してよい。そのような共重合性モノマーの限定ではない例として、ビニルエステル、たとえば、酢酸ビニルおよび酪酸ビニルが挙げられる。(チオ)(メタ)アクリレートモノマーおよび共重合性モノマーのさらに詳しい記載は、米国特許第6,472,488B2号明細書の第1欄、第56行〜第6欄、第41行、および第36欄〜第39欄、第11行に見出すことができ、該記載は、参照によって本明細書に援用される。
【0136】
本発明のさらなる非限定的な実施形態では、多重焦点光学樹脂層を、ポリ(ウレアウレタン)を含む配合物で製造してもよく、該ポリ(ウレアウレタン)は、少なくとも1種のポリオール、たとえばジオール、少なくとも1種のポリイソシアネート、および少なくとも1種のポリアミン硬化剤の反応生成物である。より具体的には、ポリ(ウレアウレタン)は、(a)1分子当たり1.0個を超える水酸基、たとえば、1分子当たり少なくとも2個の水酸基を有するポリオールを少なくとも1種と、(b)1分子当たり1.0個を超えるイソシアナト基を有するポリイソシアネートを少なくとも1種と、(c)1分子当たり1.0個を超えるアミノ基を有するポリアミンであって、各アミノは、独立して、一級アミノ基および二級アミノ基から選択されるポリアミンを少なくとも1種と、(d)必要に応じて、1分子当たり2.0個を超える水酸基を有するポリオールを少なくとも1種とを含む成分の反応生成物であって、ただし、イソシアネート成分のイソシアネート基の数は、ポリオール成分の水酸基の数より多い成分の反応生成物である。
【0137】
ポリオールの限定ではない例として、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールおよび2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオールが挙げられる。他の例として、ポリアルキレングリコール、たとえば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびテトラエチレングリコールが挙げられる。さらに、エステルジオールおよびポリエステルジオールも、ポリオールとして使用することができる。また、1種以上のジオールとε−カプロラクトンの反応生成物であるポリ(カプロラクトンジオール)を使用することができる。
【0138】
使用することができるポリイソシアネートは、数多く、変更可能である。これらには、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートおよびそのようなポリイソシアネートの混合物が挙げられる。そのようなポリイソシアネートの限定ではない例として、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0139】
ポリアミン成分は、脂肪族ポリアミン、シクロ脂肪族ポリアミン、芳香族ポリアミン、および混合脂肪族、シクロ脂肪族および/または芳香族タイプのポリアミンから選択することができる。一般的に、ポリアミンは、少なくとも2個の一級アミノ基を有する。そのようなポリアミンの限定ではない例として、3,5−ジメチル−2,4−トルエンジアミン、3,5−ジメチル−2,6−トルエンジアミン、3,5−ジエチル−2,4−トルエンジアミン、3,5−ジエチル−2,6−トルエンジアミン、3,5-ジイソプロピル−2,4−トルエンジアミンおよび3,5−ジイソプロピル−2,6−トルエンジアミンが挙げられる。
【0140】
ポリ(ウレアウレタン)のより詳しい記述およびポリオール、ポリイソシアネートおよびポリアミンのさらなる例示は、米国特許第6,531,076B2号明細書の第2欄、第60行〜第10欄、第49行に見出すことができ、該開示は、参照によって本明細書に援用される。
【0141】
本発明のさらなる非限定的な実施形態では、多重焦点光学品質樹脂層を、少なくとも1種のエピスルフィドモノマー、代表的には2種以上のエピスルフィド官能性と、少なくとも1種のアルコキシフェニル基を有するホスフィンを含む重合触媒とを含む配合物で製造してもよい。重合触媒およびエピスルフィドモノマーは、米国特許第6,417,322号明細書に記載されている。より具体的には、重合性エピスルフィドモノマーは、該特許の式II、IIIおよびIVとして記載されている。開示されている1つの特定のモノマーは、ビス−(β−エピチオプロピル)スルフィドである。ホスフィン触媒の限定ではない例として、’322特許の式Iで記載されるような、アルコキシフェニルホスフィン、たとえば、トリス(3−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィンおよびトリス(2,4,6−トリメトキシフェニル)ホスフィンが挙げられる。
【0142】
’322特許に記載されるエピスルフィド含有配合物は、たとえば、配合物中に存在するモノマーの総重量の50重量%までの量で、他の共重合性モノマーを含んでもよい。そのようなモノマーの限定ではない例として、ポリチオールモノマー、たとえば、脂肪族ポリチオール(たとえば、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネート、ビス(2,2’−チオエチル)スルフィドおよび1,2−ビス(2’−メルカプトエチルチオ)−3−メルカプトプロパン);ならびに1個以上の(メタ)アクリレート官能基を有するモノマー(たとえば、2−ヒロドキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート)が挙げられる。エピスルフィドの詳細な記載およびそれらを含有する配合物は、米国特許第6,417,322号明細書の第3欄、第29行〜第7欄、第50行に見出され、該開示は参照によって本明細書に援用される。
【0143】
本発明のさらなる非限定的な実施形態では、多重焦点光学品質樹脂層を、不安定なプロトンを持つ重合性モノマーを少なくとも1種と、1個以上のイソ(チオ)シアネート官能基を含む重合性モノマーを少なくとも1種とを含む配合物で製造してもよい。用語「不安定なプロトンを持つ重合性モノマー」は、少なくとも1個の不安定な水素原子を有する1種以上の官能基を含む任意のモノマー、たとえば、チオール、アルコール、および一級または二級アミン官能基またはそのような官能基の組み合わせを含む化合物を意味するものと理解される。これらのモノマー配合物は、ハロゲン化ホスフィンおよびハロゲン化リンから選択される活性化剤を配合物に加えることにより重合することができ、該配合物は、従来の光開始剤を含有する。前記モノマー配合物の詳細な記載は、米国特許第6,225,021号明細書の第2欄、第17行〜第8欄、第32行に見出すことができ、該開示は参照により本明細書に援用される。
【0144】
本発明のさらなる非限定的な実施形態では、多重焦点樹脂層を、米国特許第6,194,511号明細書の式(1)によって表される、イオウ含有(メタ)アクリレート重合性モノマーを少なくとも10重量%含有する重合性モノマー100重量部を含む組成物で製造してもよい。そのようなモノマーの限定ではない例として、ビス(2−メタアクリロイルオキシエチルチオエチル)スルフィド、ビス(2−アクリロイルオキシエチルチオエチル)スルフィド、ビス(2−メタアクリロイルオキシイソプロピルチオイソプロピル)スルフィドおよびビス(2−メタアクリロイルオキシエチル)スルフィドが挙げられる。必要に応じて、重合性配合物は、(a)1〜100重量部の、’511特許の第3欄の式(2)によって表されるエポキシ含有(メタ)アクリレート重合性モノマー、たとえば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートおよびビスフェノールAモノグリシジルエーテルメタクリレートと、(b)0〜500重量部の、’511特許の式(1)および(2)によって表される化合物以外の(メタ)アクリレート重合性モノマーと、(c)0〜200重量部のスチリル重合性モノマーとを含む。前記組成物の詳細な記載は、米国特許第6,194,511号明細書の第3欄、第1行〜第5欄、第2行;第7欄、第1行〜第11欄、第31行に見出すことができ、該開示は参照によって本明細書に援用される。
【0145】
本発明のさらなる非限定的な実施形態では、多重焦点光学品質樹脂層を、米国特許第6,172,140号明細書の第1および2欄に記載のような、アクリルジチオールモノマーまたはアクリルポリチオールモノマーあるいはメタクリルジチオールモノマーまたはメタクリルポリチオールモノマーを含む重合性組成物から製造してもよく、該開示は参照により本明細書に援用される。そのようなチオールモノマーの限定ではない例は、4−メルカプトメチル−3,6−ジチア−1,8−オクタンジチオールのトリチオメタクリレートである。そのようなチオールモノマーの他の限定ではない例として、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトアセテート)、およびトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトアセテート)のジチオールモノマーまたはポリチオールモノマーが挙げられる。また、重合性組成物は、米国特許第6,172,140号明細書の第5欄、第4行〜第7欄、第64行に記載(該開示は参照によって本明細書に援用される)されているような、他のメタクリレートおよびアクリレート、ビニル、ビニルエーテル、アリル、エポキシド、他のチオール、などから選択される共重合性モノマーを含んでもよい。
【0146】
多重焦点光学品質樹脂層を製造するために使用してもよい重合性組成物の他の限定ではない例は、米国特許第5,736,609号明細書の第2欄、第41〜51行の式で表されるポリチオール化合物と、ポリイソ(チオ)シアネート化合物と、’609特許の第2欄、第52〜61行に記載されるような、2個以上の反応性不飽和基を有する化合物とを含む(ここで、前記開示は参照によって本明細書に援用される)、イオウ含有ウレタン系樹脂を含む組成物である。イオウ含有ウレタン樹脂の限定ではない例は、’609特許の実施例1に記載されるような、ポリチオール化合物、1,2−ビス(2’メルカプトエチルチオ)−3−プロパンチオール、イソホロンジイソシアネートおよびエチレングリコールジメタクリレートの反応によって生成される樹脂である。
【0147】
本発明のさらなる非限定的な実施形態では、多重焦点光学品質樹脂層を、高屈折率付与モノマーと、ビスフェノールAビス(アリルカーボネート)と、芳香族環含有不活性可塑剤とを含む重合性組成物から製造することができる。該組成物中には、他のモノマー、たとえば、アクリレートおよびメタクリレート、たとえば、’064特許の第3欄、第38〜57行に記載のもの(該開示は参照によって本明細書に援用される)が存在してもよい。前記重合性組成物の詳細な記載は、米国特許第5,708,064号明細書の第2欄、第27行〜第6欄、第26行に見出すことができ、該開示は参照によって本明細書に援用される。
【0148】
高屈折率付与モノマーの限定ではない例として、ビスフェノールAビス(メタ)アクリレート、10個以下のエチレンオキシ基を含有するエトキシ化ビスフェノールAビス(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、チオジフェノールビス(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼンおよびジアリルフタレートが挙げられる。不活性可塑剤の限定ではない例として、ポリ(エチレングリコール)ジベンゾエート、ポリ(プロピレングリコール)ジベンゾエートおよび1,3−ビス(フェニルチオ)プロパンが挙げられる。
【0149】
本発明のさらなる非限定的な実施形態では、多重焦点樹脂層を、3〜70%の米国特許第4,306,780号明細書の第2欄、第48〜65行に見られる式IのビスフェノールA(メタ)アクリレートと、30〜97%の‘780特許の第3欄、第11〜48行の式II〜IVで記載されるモノマーから選択される少なくとも1種のモノマー(これらの開示は参照によって本明細書に援用される)とを含む共重合体から製造してもよい。
【0150】
ビスフェノールA(メタ)アクリレートの限定ではない例として、ビスフェノールAジメタクリレートおよび2,2−ビス(4−メタクリロキシエトキシフェニル)プロパンが挙げられる。式II〜IVの第二モノマーの限定ではない例として、フェニルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、p−ブロモフェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、スチレン、o−クロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、ナフチルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、4−ビニル−ビフェニル、ジビニルベンゼンおよびビニルフェニルスルフィドが挙げられる。
【0151】
本発明の他の非限定的な実施形態では、多重焦点光学品質樹脂層を、30〜55重量%の、線状または分岐アルキレングリコールのビス(アリルカーボネート)と、20〜55重量%の、数平均分子量が2000未満のエチレン性不飽和ポリエステルと、5〜30重量%の、メタクリル酸の低級アルキルエステル、4〜6個の炭素原子を有する不飽和ジカルボン酸の低級アルキルエステル、および1〜3個の炭素原子を有する飽和モノカルボン酸のビニルエステルから選択される不飽和モノマーを含む重合性組成物から製造してもよい。低級アルキルは、1〜5個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。前記重合性組成物の詳細な記載は、米国特許第4,139,578号明細書の第2欄、第20行〜第7欄、第55行に見出すことができ、該開示は、参考によって本明細書に援用される。
【0152】
本発明の非限定的な実施形態によれば、多重焦点光学製品、たとえば、レンズなどの眼用製品は、固定型モールドとして選択されたデザインの多重焦点モールドと、たとえば、本明細書で記載した例として光学品質樹脂組成物と、プレフォーム光基材(「プレフォーム」)、たとえば、一般的な凸前側表面、一般的な凹後側表面およびその光学中心で所定のレンズ矯正(存在する場合)を有するプレフォームレンズ基材であって、光影響特性を提供するように、たとえば、基材(上)に貼付された光影響性被膜、フィルムまたは層によって、または基材内の光影響材料によって適用されている基材とを利用することによって製造される。
【0153】
たとえば、基材は、基材のマトリックス内に、または基材の少なくとも一部分に、決まった色、フォトクロミック材料、偏光化合物、2種の光影響特性(たとえば、フォトクロミック/偏光またはフォトクロミック/色彩)を提供する材料、またはそのような光影響材料の2種以上の組み合わせを含有することができる。さらに意図される非限定的な実施形態では、光基材は、基材のマトリックス内に光影響特性を、および光基材表面の少なくとも一部分に1種以上の光影響特性、たとえば、光影響性被膜を持つことができる。後者の場合、光基材内の光影響特性および光基材上の光影響特性は、互いに補足しあう。たとえば、基材マトリックスは、偏光層Eメイル:kennelly@ppg.comを含むことができ、一方、フォトクロミック材料は、偏光層の上の基材上に配置される。さらに、決まった色を、基材の内部または上に置くことができ、あるいはフォトクロミック材料を、基材の内部または上に置くことができる。ただし、いずれの場合も光影響特性は、他方に対して相補的なものである。
【0154】
プレフォームレンズ基材の基底レンズ素材のデザインおよびレンズ矯正は、種々あり、たとえば、プラノレンズ、半完成レンズ、完成レンズ、単焦点レンズ、半完成単焦点レンズ、完成単焦点レンズ、拡大鏡などが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、レンズのベースカーブも種々あり、たとえば、ベースカーブは、0.50〜12.00で変化することができ、これらの間の任意のベースカーブが可能である。
【0155】
代替の非限定的な実施形態では、追加の被膜、フィルムまたは層(「被膜」)は、光影響被膜、フィルムまたは層の上または下、たとえば、フォトクロミック被膜の上でかつ多重焦点樹脂層の下に置くことができる。そのような追加の被膜として、追加の機能特性、たとえば、偏光層などの光影響特性を提供する被膜、プライマー層および接着層を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0156】
プレフォーム製品、たとえば、光基材と、たとえば光影響被膜とを含むレンズ基材(プレフォーム)は、2つ割りモールドセットの一部分、たとえば後方部分として使用され(もしそのような被膜、層またはフィルムを使用する場合、プレフォームの光影響被膜を多重焦点モールドに向き合わせて)、一方、選択されたデザインの多重焦点モールドは、該モールドセットの他の部分、たとえば、前方部分として使用される。
【0157】
限定ではない1実施形態では、プレフォーム光学レンズ基材および多重焦点モールドは、たとえば、光学ガスケットまたはOリングを使用して、それらの間に空隙を形成するように、もう一方と近接するが間を空けて配置される。空隙は、多重焦点層の所望のデザインのために所望の形状および寸法、たとえば厚さであるべきである。光学品質樹脂組成物を、空隙を満たすように空隙に導入する。次いで樹脂組成物を硬化し、多重焦点モールドおよび空隙(空隙に向かい合うプレフォームレンズ基材の表面を含む)の形状を取る硬化樹脂を得、該形状は、多重焦点モールドの多重焦点領域にも対応する。硬化プロセスで、多重焦点硬化光学樹脂をプレフォームレンズに結合する。限定ではない1実施形態では、多重焦点モールド(またはプレフォームレンズ表面)の空隙または表面の一部のみが、空隙内[あるいはモールド表面上]に送り出された光学樹脂組成物によって覆われ、新しいレンズ表面を形成する。
【0158】
他の非限定的な実施形態では、プレフォームおよび多重焦点モールドは、もう一方と接触するように配列され配置される。モールドの2つの半部分は、外部力または圧力、たとえばクランプによって閉じられている。多重焦点光学樹脂を、プレフォームおよび多重焦点モールドの間に注入する。プレフォームおよびモールドがそれぞれ他方に対してかけている圧力によって、過剰の樹脂は強制的に外に出される。次いで樹脂を、選択された多重焦点光学樹脂に適切な硬化方法を使用して硬化する。
【0159】
さらなる限定ではない意図する実施形態では、モールドセットの2つ半部分は垂直に配列され、光学樹脂組成物は、プレフォームレンズ基材上、または多重焦点モールド(どちらかの下側のモールド)上に置かれ、その後、プレフォームレンズ基材と多重焦点モールドとが接合され(たとえば、少量の圧力で接合され)、完成レンズの形状を形成する。これらの実施形態では、光学ガスケットは使用されず、2つのモールド部分は、光学樹脂組成物の毛細管引力により閉じられている。
【0160】
多重焦点モールドは、光学品質表面を完成レンズ表面に提供する任意の適切な材料で作ることができる。そのような材料は、キャスティングレンズの分野の当業者に公知である。そのような材料の限定ではない例は、クラウンガラスおよび電鋳ニッケルである。多重焦点モールドのデザインは、キャスティングレンズの分野の当業者に周知であり、求められる多重焦点矯正の種類および性状に応じて変化する。非限定的な実施形態において、多重焦点モールドの表面は、離型剤で処理され、モールドが破損することなく、および欠陥が硬化樹脂の表面に入ることなく硬化光学品質樹脂を、モールドから簡単に剥離することができるようにする。
【0161】
光影響特性、たとえば、フォトクロミック被膜を有する多重焦点モールドおよびプレフォーム硬質光基材(プレフォーム)を、他方に関連した位置に配置し、そしてそれらの間に光学樹脂を配置し、樹脂組成物を硬化させ、プレフォームとともに硬化結合する。光学樹脂組成物は、樹脂組成物に適正な任意の方法、たとえば、選択された多重焦点光学樹脂組成物に適正な温度、開始剤、触媒、圧力などを使用し、たとえば、熱(熱またはマイクロ波硬化)に、紫外線(UV)に、または放射線および熱の組み合わせに、同時にあるいは順番に暴露することによって、硬化することができる。
【0162】
熱開始剤/触媒および/またはUV開始剤を、多重焦点光学樹脂組成物と混合し、次いでこれを、プレフォームまたは多重焦点モールドに塗布するか、あるいはプレフォームおよび多重焦点モールドの間の空隙に充填する。特定の熱または光開始剤(および使用量)あるいは使用されるUV線のタイプは、選択された光学品質樹脂組成物の特性、多重焦点モールドの種類およびデザインおよび使用する特定のレンズプレフォームに依る。適正な触媒および/または開始剤の必要事項(およびそれらの量)、ならびにUVランプの種類および/または必要とされる加熱サイクルに関し、当業者は、よく精通している。そのような情報も、そのような組成物に関連する発刊された文献、たとえば、多重焦点樹脂層に使用することができる多重焦点光学品質樹脂組成物の限定ではない例を記載する先に挙げた特許に見出すことができる。
【0163】
ある光学樹脂組成物は、同時にまたは連続して適用される熱およびUV線の両方の適用によって硬化される。加えて、多重焦点光学製品の後硬化を使用してもよいことも考慮される。光学樹脂組成物の初期硬化(放射線および/または熱手段のどちらか)の後、硬化された多重焦点光学製品を(多重焦点モールドから取り出して、あるいは接触させて)、さらなる熱および/またはUV照射後硬化するステップで処理する。
【0164】
硬化された多重焦点光学樹脂の厚さは、変化することができ、最終的な多重焦点製品の必要条件に依る。たとえば、眼用レンズの場合、厚さは、プレフォームの凸状表面と多重焦点モールドの凹状表面との相対的湾曲率に依る。硬化された樹脂層は、当業者によく知られているように、均一な厚さを有することができ、あるいは多重焦点モールドの湾曲率に依り非均一であってもよい。たとえば、レンズを製造するために使用されるレンズ素材より小さな曲率半径を有する二重焦点を使用する、二重焦点レンズの製造を記載する米国特許第5,366,668号明細書を参照。硬化樹脂の形状および厚さに関する’668特許の開示は、参照により本明細書に援用される。完成したレンズは、第一レンズ矯正(遠距離視力)と、第二レンズ矯正、たとえば、近傍区域視力を提供する、光学中心から離れた第二領域(多重焦点領域)とを有する。
【0165】
モールドセットの1半部分としてプレフォームを使用する前に、多重焦点光学樹脂、たとえば、樹枝状ポリエステルアクリレートのプレフォームに対する接着を増強するため、多重焦点光学樹脂、たとえば、フォトクロミック被膜形成剤を塗布すべきプレフォームの表面を、処理することが普通であるが、必要とされるものではない。効果的な処理として、活性化ガス処理、たとえば、低温プラズマまたはコロナ放電による処理が挙げられる。そのような処理は、多重焦点樹脂層のプレフォームの処理表面への接着を高め、たとえば、製品の残りの部分に影響を与えることなく、表面を粗くするおよび/または化学的に変化させることによって、プレフォームの物理表面(physical surface)を変える清潔で効率的な方法である。アルゴンなどの不活性ガスおよび酸素などの反応性ガスは、プラズマガスとして使用されてきた。不活性ガスは表面を粗くし、一方酸素などの活性ガスは、たとえば、表面上にヒロドキシルまたはカルボキシル単位を生成することによって、プラズマに暴露された表面を、粗くかつ僅かな化学的変化を起こさせる。非限定的な実施形態において、酸素は、一般的に、僅かに、しかし効果的に表面を物理的に粗くするとともに、表面に僅かであるが効果的な化学変性を起こすので、プラズマガスとして使用される。当然、粗面処理および/または化学変性の範囲は、プラズマガスおよびプラズマユニットの操作条件(処理の時間の長さを含む)に依存する。
【0166】
多重焦点光学樹脂の放射線硬化は、UV線、たとえば、200および450ナノメートルの範囲における放射線への暴露によって達成することができる。放射線は、可視光線と紫外線との両方をそのスペクトル内に含有することができる。放射線は、単色であっても多色性であってもよく、非干渉性であっても干渉性であってもよく、樹脂の重合/架橋を開始するのに十分強くあるべきである。任意の種類の適正なUVランプ、たとえば、水銀蒸気またはパルスキセノンを使用することができる。光開始剤を使用する場合は、最も高い効果効率のためには、光開始剤の吸収スペクトルが、UVランプ(電球)の、たとえば、H電球、D電球、Q電球またはV電球の出力スペクトルと適合すべきである。放射線硬化、たとえば、UV硬化の後、必要であれば、熱後硬化を使用して、多重焦点層を完全に硬化することができる。212°F(100℃)のオーブンで0.5〜3時間加熱することで、一般的には十分である。
【0167】
放射線硬化の代わりとして、多重焦点光学樹脂を、熱的に硬化することもできるが、熱硬化はあまり望ましくない。たとえば、アゾ型またはパーオキシ型の熱的フリーラジカル開始剤を、硬化性樹脂配合物に導入し、赤外線加熱によってか、またはプレフォーム、光学樹脂および多重焦点モールドを、十分な温度に保たれた熱対流炉などの従来のオーブン中に置くことによって配合物の硬化を行い、光学樹脂を硬化する。多重焦点光学樹脂を硬化するために使用される温度は、もちろん、使用する樹脂の組成物に依る。そのような温度は、当業者には公知であり、あるいは、樹脂のタイプに関する発刊された文献、たとえば、前記多重焦点光学品質樹脂を記載する米国特許および発行物から簡単に得ることができる。光開始剤の限定ではない例は、光学品質樹脂の硬化に関連して先に記載されていて、そのような記載は、本明細書中でも適用可能である。
【0168】
多重焦点製品のために使用することができる光基材は、変化することができ、最終的な用途に依り、任意の光学(たとえば眼用)基材であって、普通は硬質の基材が含まれる。そのような基材の限定ではない例として、ポリマー基材、たとえば、ガラスおよび光学有機ポリマー材料が挙げられる。
【0169】
この明細書で使用される用語「ガラス」は、ポリマー物質、たとえば、ポリマーシリケートとして規定される。ガラス基材は、意図する目的に適切な任意のタイプであってよいが、一般的に、透明で少し色の付いた透明ガラス、たとえば、周知のシリカタイプのガラス、特にソーダ−石灰シリカ−ガラスである。種々のシリカガラスの特性および組成が当該分野では周知である。ガラスは強化ガラス、たとえば、熱的または化学的焼き戻しによって強化したものであり得る。
【0170】
本明細書で記載した多重焦点製品を製造するために使用することができる有機ポリマー基材は、光基材として有用であり、基材と結合する光影響被膜、たとえば、フォトクロミックポリマー被膜と化学的に相溶性のある、現在公知の(あるいは後に発見される)透明プラスチック材料の任意のものである。非限定的な実施形態において、該有機ポリマー基材は、当該分野で周知の合成有機樹脂、たとえば、眼用レンズなどの光学用途の光学的に透明なキャスティングを製造するために使用される有機光学樹脂から選択される。
【0171】
使用することができる有機光基材の限定ではない例は、たとえば、米国特許第5,962,617号明細書および米国特許第5,658,501号明細書の第15欄、第28行〜第16欄、第17行に開示されているモノマーおよびモノマー混合物から製造されるホモポリマーおよび共重合体であるポリマーである。前記開示は参照によって援用される。そのような有機基材は、熱可塑性または熱硬化性ポリマー基材である。そのようなポリマー基材の非限定的な実施形態では、高いガラス転移温度を有する熱可塑性ポリマー、および高度に架橋した光学ポリマーが挙げられる。非限定的な実施形態において、該有機基材は、1.48〜1.74の範囲の屈折率を有する透明基材であり得る。代替の非限定的な実施形態では、該基材は、1.54〜1.56の、または1.60を超える、たとえば、1.60〜1.74の屈折率を有することができる。
【0172】
そのような開示されているモノマーおよびポリマーの限定ではない例として、ポリオール(アリルカーボネート)モノマー、たとえば、アリルジグリコールカーボネート、たとえば、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)、(該モノマーは、PPG Industries社によって商標CR−39の下に販売されている)およびその共重合体;たとえば、ポリウレタンプレポリマーとジアミン硬化剤との反応によって生成される、ポリウレア−ポリウレタン(ポリウレアウレタン)ポリマー(そのような1ポリマーの組成物は、PPG Industries社によって商標TRIVEXの下に販売されている);アクリル官能性モノマー、たとえば、ポリオール(メタ)アクリロイル末端カーボネートモノマー(これに限定されない);ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー;エトキシ化フェノールメタクリレートモノマー;ジイソプロペニルベンゼンモノマー;エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートモノマー;エチレングリコールビスメタクリレートモノマー;ポリ(エチレングリコール)ビスメタクリレートモノマー;ウレタンアクリレートモノマー;ポリ(エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート)モノマー;ポリ(酢酸ビニル);ポリ(ビニルアルコール);ポリ(塩化ビニル);ポリ(塩化ビニリデン);ポリオレフィン、たとえば、ポリエチレンおよびポリプロピレン;ポリウレタン;ポリチオウレタンモノマー、たとえば、Mitsui Chemicals社によって販売されている、MR−6、MR−7、MR−8およびMR−10光学樹脂などの材料(これらに限定されない);熱可塑性ポリカーボネート、たとえば、熱可塑性ビスフェノールA系ポリカーボネート、たとえば、ビスフェノールAおよびホスゲンから誘導されるカーボネート結合樹脂(そのような材料の1つが、商標LEXANの下に販売されている);ポリエステル、たとえば、商標MYLARの下に販売されている材料;ポリ(エチレンテレフタレート);ポリビニルブチラール;ポリ(メチルメタクリレート)、たとえば、商標PLEXIGLAS5の下に販売される材料、多官能性イソシアネートを、ポリチオールモノマーまたはポリエピスルフィドモノマー(たとえば、Mitsubishi Gas Chemicals社によって商品名IU−10の下に販売されているモノマー)と反応させることによって生成されるポリマー、あるいはポリチオール、ポリイソシアネート、ポリイソチオシアネート、および必要に応じてエチレン性不飽和モノマーまたはハロゲン化芳香族含有ビニルモノマーとのホモ重合、共重合および/または三元重合されたポリマーが挙げられる。一般的に有機光基材は、任意のポリマー被膜、たとえば、基材の表面に貼付されるフォトクロミック被膜などの、光影響特性を有する被膜と化学的に相溶性がある。
【0173】
本発明の多重焦点製品を製造するために使用されるポリマー有機光基材は、その表面に、保護被膜、たとえば、耐摩耗性被膜を有することができる。たとえば、市販の熱可塑性ポリカーボネート光学レンズは、表面が簡単に引掻き傷を受けるか、磨耗するか、または擦り傷を受ける傾向にあるので、普通、耐摩耗性被膜、たとえば、すでにその表面に塗布されたハードコートを付けて販売される。そのようなレンズの例として、ポリカーボネート表面にすでに塗布されたハードコートを付けて販売されているGentexポリカーボネートレンズ(Gentex Optics社から入手可能)がある。本明細書および特許請求の範囲で使用される用語「基材」、「光基材」、「ポリマー有機基材」(または類似の用語)、あるいはそのような基材の「表面」は、基材それ自体、または1以上の被膜、たとえば、保護被膜、接着性被膜および/またはプライマー被膜などのベース被膜を該基材上に付けた基材を意味する。したがって、本明細書または特許請求の範囲において、基材の表面にプライマー被膜または光影響被膜を適用することについて述べられる場合、そのような記述は、そのような被膜を、ポリマー有機基材それ自体に、または基材の表面上のベース被膜、たとえば、耐摩耗性被膜、プライマーまたはその他の被膜に適用する場合も含む。そのようなベース被膜は、任意の適切な被膜またはフィルムであってよく、耐摩耗性被膜(ハードコート)にもプライマー被膜にも限定されない。そのような被膜/フィルムの限定ではない例として、保護被膜、プライマー被膜、耐衝撃性を改良する被膜、または追加の機能特性、たとえば光影響特性を、基材が一部である製品に提供する被膜が挙げられる。
【0174】
さらに、本明細書および特許請求の範囲で使用される用語「光基材の表面」あるいは類似の用語、たとえば、光影響性層が塗布されている表面は、基材の表面の一部だけが被覆されている実施形態も含む。したがって、光影響性層(および多重焦点光学樹脂層)は、光基材の表面の一部だけを被覆することができるが、一般的には、少なくとも1つの基材面の全面に塗布される。
【0175】
プラスチック光基材、特に熱可塑性ポリカーボネートなどの基材にフォトクロミック有機被膜を使用することは、記載されている。選択された有機基材とともに被膜として使用することができ、使用が選択された有機フォトクロミック材料/化合物用のホスト材料(キャリア)として機能する有機ポリマー材料のいかなるものも使用することができる。一般的に、ホスト有機ポリマー被膜は、効率的に機能するように、たとえば、無色の状態から、紫外(UV)線に応答して、裸眼で見ることができる着色された状態に変化し、UV線が取り除かれた時、無色の状態に戻るように、フォトクロミック材料のための十分な内部空隙を有する。
【0176】
そのような有機ポリマー材料の限定ではない例として、ポリウレタン系被膜、たとえば、米国特許第6,107,395号および第6,187,444号明細書、および国際公開第01/55269号の国際特許出願公開に記載されているもの;エポキシ樹脂系被膜、たとえば、米国特許第6,268,055号明細書に記載のもの;アクリル/メタクリルモノマー系被膜、たとえば、米国特許第6,602,603号明細書、国際公開第96/37593号および第97/06944号国際特許出願公開、および米国特許第5,621,017号および第5,776,376号明細書記載のもの;アミノプラスト樹脂、たとえばメラミン型樹脂、たとえば、米国特許第6,506,488号および第6,432,544号明細書記載のもの;ヒロドキシル官能性成分とポリマー無水物官能性成分を含む被膜、たとえば、ポリ無水物被膜、たとえば、米国特許第6,436,525号記載のもの;ポリウレアウレタン被膜、たとえば、国際公開第01/57106号、発明の名称「Photochromic Coated Article」である国際特許出願公開に記載のもの;およびN−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド官能性ポリマーを含む被膜、たとえば、米国特許第6,060,001号明細書に記載のものが挙げられる。
【0177】
フォトクロミックポリウレタン被膜を製造するために使用することができるポリウレタンは、有機ポリオール成分とイソシアネート成分との反応によって製造されるものであり、米国特許第6,187,444号明細書、第3欄、第4行〜第6欄、第22行にさらに詳しく記載され、該開示は参照によって本明細書に援用される。
【0178】
ポリウレタン反応混合物を含む成分の相対的量は、反応性水酸基の平均数に対する反応性イソシアネート基の平均数の比、たとえば、NCO基:OH基比が0.3:1.0〜3.0:1.0と表現することができる。イソシアネート成分は、脂肪族、芳香族、シクロ脂肪族または脂環式イソシアネート、またはこれらのイソシアネートの混合物であることができる。一般的に、イソシアネート成分は、ブロックまたは非ブロック脂肪族またはシクロ脂肪族イソシアネート、またはそのようなイソシアネートの混合物から選択することができる。
【0179】
米国特許第6,107,395号明細書にさらに記載れている、フォトクロミックホスト材料として使用することができるポリウレタンは、(i)40〜85重量%の1種以上の表示官能価が2〜4で、分子量が500〜6000g/モルのポリオールと、(ii)15〜60重量%の1種以上の官能性が2〜3であり、分子量が62〜499であるジオール、トリオールまたはその混合物と、(iii)官能性が3未満、たとえば2である脂肪族ポリイソシアネートとを含むイソシアネート反応性混合物から生成してもよい。
【0180】
米国特許第6,602,603号明細書は、フォトクロミック材料用のポリ(メタ)アクリルホスト材料の反応混合物を記載する。これらの反応混合物は、少なくとも2個の2官能性(メタ)アクリレートモノマーであって、3を超え15未満のアルコキシ単位を有しうるモノマーを含む。限定ではない1実施形態では、2官能性(メタ)アクリレートは、直鎖または分岐鎖状アルキレン基によって結合する反応性アクリレート基であって、一般的に、1〜8個の炭素原子を含有する反応性アクリレート基を有し、一方、第二2官能性(メタ)アクリレートは、ランダム順序またはブロック順序のエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドまたはそのようなオキシド基の混合物によって結合されている反応性アクリレート基を有する。
【0181】
エポキシ樹脂系被膜は、米国特許第6,268,055号明細書に記載されている。そのような被膜は、エポキシ樹脂またはポリエポキシドを含む組成物、たとえば、脂肪族アルコールおよびフェノールのポリグリシジルエーテル、エポキシ含有アクリルポリマー、ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル、およびそのようなエポキシ含有材料の混合物を、硬化剤、たとえば、酸無水物を有機ポリオールと反応させて形成されるハーフエステルを含むポリ酸と反応させることによって製造する。
【0182】
基材の少なくとも1つの表面の少なくとも一部に適用されるフォトクロミック被膜の量は、硬化被膜を紫外(UV)線に暴露した時、光学濃度(ΔOD)において所望の変化を示す被膜を製造するのに十分な量の有機フォトクロミック材料を提供する量、すなわち、フォトクロミック量である。限定ではない1実施形態では、UV暴露から30秒後、22℃(72°F)で測定した光学濃度の変化は、少なくとも0.05である。代替の非限定的な実施形態では、UV暴露から30秒後の光学濃度の変化は、少なくとも0.15、たとえば、少なくとも0.20である。限定ではない1実施形態では、UV暴露から15分後の光学濃度の変化は、少なくとも0.10である。代替の非限定的な実施形態では、15分後の光学濃度の変化は、少なくとも0.50、たとえば、0.70である。
【0183】
代替の記載では、フォトクロミック被膜中で使用される活性フォトクロミック材料の量は、被膜を製造するために使用されるモノマー/樹脂の合計重量に対して、0.5〜40.0重量%の範囲であり得る。一般的に、フォトクロミック被膜内の活性フォトクロミック材料の濃度は、1.0〜30重量%の範囲である。代替の非限定的な実施形態では、フォトクロミック被膜内の活性フォトクロミック材料の濃度は、3〜20重量%、たとえば、3〜10重量%(被膜を製造するために使用されるモノマー/樹脂の合計重量に対し)の範囲である。被膜中のフォトクロミック材料の量は、挙げている値を含み、これらの値のいかなる組み合わせの間でも変化しうる。
【0184】
光基材の表面に塗布されるフォトクロミック被膜の厚さは、変化しうる。限定ではない1実施形態では、二色性被膜の厚さが少なくとも3ミクロンである。代替の非限定的な実施形態では、フォトクロミック被膜の厚さは、少なくとも5ミクロン、たとえば、少なくとも10ミクロン、たとえば20〜30ミクロンである。非限定的な実施形態では、フォトクロミック被膜の厚さは、200ミクロン以下である。代替の非限定的な実施形態では、フォトクロミック被膜の厚さは、100ミクロン以下、たとえば、50ミクロン以下、たとえば、40ミクロン以下である。フォトクロミック被膜の厚さは、挙げた値を含めて、これらの値の任意の組み合わせの間で変化しうる。たとえば、フォトクロミック被膜は、5〜50ミクロン、たとえば、10または20〜40ミクロンの範囲である。非限定的な実施形態において、塗布されたフォトクロミック被膜は、引掻き傷、くぼみ、はん点、クラック、混入物などの美観的欠陥がない。
【0185】
限定ではない1実施形態では、フォトクロミック被膜の硬度は、多重焦点樹脂層より低く、すなわち、多重焦点樹脂層に適用することができる耐摩耗性(ハードコート)被膜よりも柔らかい。被膜の硬度は、当業者に公知の試験、たとえば、フィッシャーミクロ硬度、鉛筆硬度、またはヌープ硬度によって定量することができる。
【0186】
フォトクロミック被膜のために利用してもよい、フォトクロミック材料、たとえば、フォトクロミック染料/化合物またはそのような染料/化合物を含有する組成物は、現在当業者に知られている(または後に開発される)、無機および/または有機フォトクロミック化合物ならびに/あるいはそのような有機フォトクロミック化合物を含有する物質である。選択される特定のフォトクロミック材料は、最終的な用途、および該用途に望ましい色または濃さに依存する。2種以上のフォトクロミック化合物が組み合わせて使用される場合、それらは、一般的に、所望の色または濃さを作り出すように、互いに補足するように選択される。
【0187】
一般的にフォトクロミック被膜で使用される有機フォトクロミック化合物は、300および1000ナノメートルの間、たとえば、400および700ナノメートルの間の可視スペクトル内に、少なくとも1つの活性化吸収極大を持つ。有機フォトクロミック材料は、フォトクロミック被膜および色素中に導入(たとえば、溶解または分散)され、活性化(たとえば、紫外線に暴露)された場合、フォトクロミック材料は、そのような材料の着色状態の特徴である色または濃さに変化する。
【0188】
無機フォトクロミック材料は、一般的に、ハロゲン化銀、カドミウムハライドおよび/または銅ハライドの結晶を含有する。非限定的な実施形態において、該ハライド材料は、塩化物または臭化物である。他の無機フォトクロミック材料は、ユーロピウム(II)および/またはセリウム(III)を、鉱物ガラス、たとえば、ソーダ−シリカガラスに加えることによって製造することができる。限定ではない1実施形態では、無機フォトクロミック材料を、溶融ガラスに加え、ポリマーフォトクロミック被膜を形成するために使用される被膜組成物に導入される粒子に形成される。そのような無機フォトクロミック材料は、Kirk Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,第4版,第6巻,第322〜325頁に記載されている。代替の非限定的な実施形態では、フォトクロミック材料は、金属ジチアゾネート、たとえば、水銀ジシゾネートであり、これは、たとえば、米国特許第3,361,706号明細書に記載されている。
【0189】
フォトクロミック被膜において使用してもよい有機フォトクロミック化合物は、変化しうる。限定ではない1実施形態では、有機フォトクロミック化合物は、ピラン、たとえば、ベンゾピラン;クロメン、たとえば、ナフト[1,2−b]ピランおよびナフト[2,1−b]ピランなどのナフトピラン;スピロ−9−フルオレノ[1,2−b]ピラン、フェナントロピラン、キノピラン、およびインデノ縮合ナフトピラン、たとえば、米国特許第5,645,767号明細書、第1欄、第10行〜第12欄、第57行、および米国特許第5,658,501号明細書、第1欄、第64行〜第13欄、第36行に記載のものから選択され、これらの開示は参照によって本明細書に援用される。代替の非限定的な実施形態では、使用してもよい有機フォトクロミック化合物として、オキサジン、たとえば、ベンゾオキサジン、ナフトオキサジンおよびスピロ(インドリン)ピリドベンゾオキサジン;フルギドおよびフルギミド、たとえば、米国特許第4,931,220号明細書、第20欄、第5行〜第21欄、第38行(該開示は参照によって本明細書に援用される)に記載される、3−フリルフルギドおよび3−フリルフルギミドならびに3−チエニルフルギドおよび3−チエニルフルギミド;米国特許出願第2003/0174560号明細書、段落[0025]〜[0086](該開示は参照によって本明細書に援用される)に記載されるジアリールエタン;および前記フォトクロミック材料/化合物の任意のものの混合物が挙げられる。
【0190】
フォトクロミック被膜は、1種のフォトクロミック化合物、または所望により、2種以上のフォトクロミック化合物の混合物を含有することができる。フォトクロミック化合物の混合物は、ある活性化された色、たとえば、ニュートラルグレーの近似色またはニュートラルブラウンの近似色を達成するために使用することができる。たとえば、ニュートラルグレーおよびブラウンの色を規定するパラメーターを記載する、米国特許第5,645,767号明細書、第12欄、第66行〜第13欄、第19行を参照。該開示は、参照によって本明細書に援用される。
【0191】
フォトクロミック材料に加えて、フォトクロミック被膜(または前駆配合物)は、所望の特性または特徴を、フォトクロミック被膜をプラスチック基材の表面に塗布し硬化されるために使用されるプロセスによって要求される被膜に、付与するか、または被膜の効率を向上させる追加の従来の添加剤を含有することができる。そのような添加剤として、紫外線吸収剤、光安定剤、たとえば、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、非対称性ジアリールオキサルアミド(オキサニリド)化合物および一重項酸素消光剤、たとえば、有機配位子とのニッケルイオン複合体、酸化防止剤、ポリフェノール酸化防止剤、熱安定剤、レオロジー制御剤、レベリング剤、たとえば、界面活性剤、フリーラジカル捕集剤および接着促進剤、たとえば、シランカップリング剤、たとえば、トリアルコキシシラン、たとえば、1〜4個の炭素原子のアルコキシラジカルを有するシラン、たとえば、γ−グリジドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、アミノエチルトリメトキシシラン、および3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(これらに限定されない)が挙げられるが、これらに限定されない。非限定的な実施形態では、そのようなフォトクロミック性能向上アジュバント材料の混合物を使用することができる。たとえば、米国特許第4,720,356号、第5,391,327号および第5,770,115号明細書に記載の材料を参照。
【0192】
非限定的な実施形態では、相溶性のある(化学的および色的に)色、たとえば、染料を、医学的理由、ファッションの理由、たとえば、より美的な結果を達成するため、または米国特許第6,853,471号に記載するように、ある光の波長を吸収するため(これらに限定されない)が挙げられる、種々の理由から、フォトクロミック被膜配合物に加え、あるいはプラスチック光基材に塗布することもできる。選択される特定の染料は、変化しうるが、その選択は、一般的に、先に記載した必要性の1以上および達成されるべき結果に依る。限定ではない1実施形態では、染料は、たとえば、よりニュートラルな色を得るため、または特定の波長または入射光を吸収するために、使用される活性化フォトクロミック材料から得られる色を補足するために選択される。他の非限定的な実施形態では、染料は、フォトクロミック被膜が不活性状態の時、所望の濃さを基材および/または被膜に与えるように選択される。
【0193】
フォトクロミック被膜組成物は、重合性配合物として、光基材の表面に塗布し、次いで当業者に周知の方法(たとえば、光重合、熱重合(赤外線重合を含む)および他の放射線源による方法を含むがこれらに限定されない)によって硬化(重合)することができる。そのような塗布方法として、スピンコーティング、カーテンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティングまたは上塗り層の製造に使用される方法の当該分野で周知の方法が挙げられる。そのような方法は、米国特許第4,873,029号明細書に記載されている。
【0194】
重合性配合物として適用する場合、フォトクロミック被膜配合物は、普通、フォトクロミック染料ホスト樹脂の硬化に使用される触媒または重合開始剤の少なくとも1種も含有する。一般的に、重合反応を開始し(触媒し)、保持するのに必要な触媒または開始剤の量だけ、すなわち、開始または触媒量だけが必要である。限定ではない1実施形態では、開始剤または触媒の量は、配合物中の重合性モノマーの合計重量に対して、0〜10重量%で変化する。代替の非限定的な実施形態では、開始剤または触媒の量は、配合物中の重合性モノマーの合計重量に対して、0.01〜8重量%、たとえば、0.1〜5重量%で変化する。触媒/開始剤の量は、列挙した値を含めて、先に明記した値の任意の組み合わせの間で変化してよい。
【0195】
限定ではない1実施形態では、フォトクロミック被膜形成剤は、光重合によって硬化され、たとえば、硬化性フォトクロミック被膜形成剤は、少なくとも1種の光開始剤の存在下、紫外線および/または可視光線によって硬化される。フリーラジカル開始剤である光開始剤は、作用機構に基づいて2つの主なグループに分類される。開裂型光開始剤として、アセトフェノン、α−アミノアルキルフェノン、ベンゾインエーテル、ベンゾイルオキシム、アシルホスフィンオキシドおよびビスアシルホスフィンオキシドが挙げられるが、これらに限定されない。引抜き型光開始剤として、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、チオキサントン、アントラキノン、カンファーキノン、フルオロンおよびケトクマリンが挙げられるが、これらに限定されない。引抜き型光開始剤が、アミンなどの材料および引抜きのための不安定な水素原子を提供するために加えられる他の水素供与体材料の存在下、よく機能する。代表的な水素供与体は、たとえば、アルコール、エーテルおよび第三アミンのように、酸素または窒素に対してα位に活性水素を有するか、あるいはチオールのように、イオウに直接結合する活性水素を有する。そのような添加材料がない場合でも、光開始は、モノマー、オリゴマーまたは該系の他の成分から、水素を引抜くことにより起こりうる。光開始剤は、当業者に周知であり、樹枝状ポリエステルアクリレート光学品質樹脂に関連して先に記載しており、該検討は本明細書中でも適用しうる。光開始剤は種々の供給元から市販されている。商業的光重合開始剤の限定ではない例として、Ciba−Geigy社から入手可能なもの、たとえば、IRGACURE光開始剤、たとえば、Irgacure184、651、500、907および369、DARACURE光開始剤、たとえば、Daracure1173および4265が挙げられる。他の商業的光開始剤として、SARTOMER KIP100FおよびEBERCRYL P36が挙げられる。
【0196】
光重合のための放射線源は、紫外線および/または可視光線を放出する放射線源から選択される。放射線源は、水銀ランプ、FeIおよび/またはGaIがドープされた水銀ランプ、殺菌ランプ、キセノンランプ、タングステンランプ、金属ハライドランプ、発光ダイオード、またはこれらのランプの組み合わせが挙げられる。一般的に、放射線硬化性フォトクロミック被膜形成剤は、不活性雰囲気、たとえば、酸素が実質的にない雰囲気下で硬化される。
【0197】
フォトクロミック被膜形成剤は、熱的に硬化されてもよく、一般的に、被膜形成剤を、室温からそのような加熱のため基材がダメージを受ける温度未満で加熱することを含む。200℃までの温度が報告されている。そのような硬化条件は、当該分野で周知である。たとえば、代表的な熱硬化サイクルとして、硬化性配合物を、室温(22℃)から85〜125℃まで、2〜20分間加熱することを含んでもよい。
【0198】
フォトクロミック被膜形成剤を光基材の表面に塗布する前に、基材の表面を、清潔な表面および基材にフォトクロミック被膜形成剤の濡れおよび接着を促進する表面を提供するように、クリーニングし処理することが多い。一般的に使用される効果的なクリーニングおよび処理として、石けん水/洗剤溶液による超音波洗浄、有機溶剤の水性混合物、たとえば、イソプロパノール:水またはエタノール:水の50:50混合物によるクリーニング、UV処理、活性化ガス処理、たとえば、先に記載したような、低温プラズマまたはコロナ放電による処理、および基材表面の水酸化を起こす化学処理、たとえば、アルカリ金属水酸化物、たとえば、水酸化ナトリウムまたはカリウムの水溶液(該溶液はフッ素系界面活性剤も含有することができる)を用いた表面のエッチングが挙げられるが、これらに限定されない。
【0199】
ある場合には、フォトクロミック被膜の塗布の前にプライマー被膜形成剤を光基材の表面に塗布してもよい。プライマー被膜形成剤は、基材とフォトクロミック被膜との間に入り、フォトクロミック被膜形成剤を含む成分が基材と相互作用する(逆も同様)ことを防ぐバリア被膜としておよび/またはフォトクロミック被膜のプラスチック基材への接着を促進する接着層として作用する。
【0200】
光影響特性が偏光性の場合、偏光媒体を、光基材に、単独でまたは他の光影響性層、たとえば、フォトクロミックまたは色のついた被膜と組み合わせて適用する。偏光機能は、偏光被膜、フィルム、ウェハなど(「偏光子」)によって供給される。偏光子は、定常または非積層偏光フィルム、および着脱可能な保護シート材または外側永久保護被膜または支持シート材、たとえば、プラスチック層を持つ偏光フィルムが挙げられる、種々の異なる構成成分および材料を含むことができる。そのような偏光子は当業者に周知である。
【0201】
偏光子は、偏光ポリビニルアルコール(PVA)フィルムなどを含むことができる。偏光PVAフィルムは、一般的に、2枚の外側保護プラスチックシートによって保護されている。これらのプラスチックシートおよび密閉PVAフィルムは、しばしばウェハと言われる偏光子サンドイッチ構造を形成する。他の偏光子は、より耐久性のある材料、たとえば、米国特許第6,585,373号明細書に記載されるような、ポリエチレンテレフタレート(PET)から製造しうる。該偏光子は、ヨウ素および他の二色性材料などの偏光材料を含むことができる。
【0202】
偏光子は、光影響性層として、偏光フィルム、被膜、ウェハなどを基材に付随させ、多重焦点光学被膜が貼付する「プレフォーム」を形成することによって、単独で利用してもよく、あるいは他の光影響性層と組み合わせて、たとえば、偏光媒体を、フォトクロミック被膜または色のついたポリマー被膜の下または上に、あるいは色の付いた光基材上に配置することによって使用してもよい。
【0203】
同様に、光影響性層は、光基材に貼付された、色のついたポリマーフィルム、被膜などであり得る。この色のついたポリマー層は、ポリマー材料を、選択された色または染料で着色することによって、たとえば、染料をプレフォームフィルムに吸収させる、プレフォームフィルムを、染料を含有する液体に浸漬すること、または染料を被膜またはフィルムを形成するために使用される重合性組成物に導入することなどによって製造することができる。任意のポリマーフィルム、たとえば、透明フィルムまたは光学製品、たとえば、眼用製品とともに使用する、当業者に公知の被膜を、染料用のキャリアとして使用することができる。同様に、光学製品とともに使用する、当業者に公知の色または染料の任意のものを使用することができる。色があまり不透明ではなく、得られた製品が意図したように機能しない場合、または色のついた被膜またはフィルム、または色(染料)被膜またはフィルムを、フォトクロミック被膜および入射化学光線との間に置いた場合、色(染料)がフォトクロミック材料を活性化するために必要とされる紫外線を吸収しない色のついた被膜またはフィルムを使用する場合は、注意を要する。
【0204】
限定ではない1実施形態では、耐摩耗性被膜を、多重焦点光学樹脂層上に配置する。耐摩耗性被膜(ハードコート)、特にオルガノシラン材料を含む耐摩耗性被膜は、磨耗、引掻き傷などから表面を保護するために使用される。オルガノシラン含有耐摩耗性被膜、たとえば、シラン系硬質被膜は、当該分野で周知であり、SDC Coatings社およびPPG Industries社などの種々の製造会社から市販されている。オルガノシラン硬質被膜を記載する、米国特許第4,756,973号明細書の第5欄、第1〜45行、および米国特許第5,462,806号明細書の第1欄第58行〜第2欄、第8行、および第3欄、第52行〜第5欄、第50行の記載を参照のこと。これらの開示は参照によって本明細書に援用される。また、オルガノシラン硬質被膜の開示に関し、米国特許第4,731,264号、第5,134,191号、第5,231,156号明細書および国際公開第94/20581号の国際特許出願公開の記載も参照のこと。
【0205】
耐摩耗性および耐スクラッチ性を提供する他の被膜、たとえば、多官能性アクリル硬質被膜、メラミン系硬質被膜、ウレタン系硬質被膜、アルキド系被膜、シリカゾル系硬質被膜、あるいは他の有機または無機/有機ハイブリッド硬質被膜も、耐摩耗性被膜として使用することができる。
【0206】
耐摩耗性被膜(ハードコート)は、従来の塗布方法、たとえば、スピンコーティング、浸漬コーティングなどによって、たとえば、多重焦点光学樹脂層に塗布することができる。耐摩耗性被膜は、0.5〜10ミクロンの厚さに塗布してもよい。ハードコート、たとえば、オルガノシランハードコートを塗布する前に、多重焦点光学樹脂層(または、ハードコートが塗布される被膜/フィルム)を処理し、ハードコートの濡れ性および接着性を強化することができる。そのような処理、たとえば、先に記載したプラズマ処理を使用することができる。
【0207】
さらなる非限定的な実施形態では、反射防止被膜などの追加の被膜を、ハードコート層に塗布することができる。反射防止被膜の例は、米国特許第6,175,450号明細書および国際特許出願公開国際公開第00/33111号に記載されている。
【0208】
本発明を、さらに具体的に以下の実施例において記載する。数多くの改変および変種が当業者に明らかになるので、該実施例は、説明のためだけに挙げる。該実施例において、パーセントは、他に特定しない限り、重量%として報告する。1つの実施例において、かっこ内の小文字で表され、他の実施例でも使用されているモノマー、触媒、開始剤などの材料は、続く実施例において同じ小文字で表す。
【0209】
以下の実施例では、種々のベースカーブの半完成単焦点(SFSV)Sola ASLポリカーボネートレンズを使用した。さらに、本発明を説明するために、種々の多重焦点光学樹脂、レンズ素材およびあるプロセス条件を実施例で使用した。種々のプロセス変数は、美容的に許容しうる、多重焦点光学層を製造するために当業者によって観察することができる。そのような変数として、後部モールドとして働くプレフォームの適正な曲率半径を持つ多重焦点モールド、たとえば、ガラスモールドの曲率半径のクローズマッチングが挙げられるが、これに限定されない。さらに、多重焦点層硬化条件、たとえば、紫外線強度および用量の調整、および多重焦点樹脂層の厚さの調整も、種々のプレフォームベースカーブを持つレンズの、美観的に許容しうる多重焦点層を達成するために、変化しうるプロセス変数の例である。
【実施例】
【0210】
(実施例1)
使用されるモールドに適正にマッチするベースカーブを有するポリカーボネート試験レンズを、石けん水で洗浄し、乾燥し、次いで、酸素を100ml/分の速さでPlasmatech機の真空チャンバーに導入しながら、100ワットのパワー設定でPlasmatech機を使用して、酸素プラズマで1分処理した。次いで、レンズを脱イオン水で濯ぎ、空気乾燥した。フォトクロミックポリウレタン被膜組成物を、スピンコーティング(0.22グラム湿潤重量を目標として)によって、プラズマ処理されたレンズに塗布し、120℃のオーブン中で1時間熱硬化した。ポリウレタン組成物の成分およびそれらの量を表1に示す。フォトクロミックポリウレタン被膜の厚さは、約20ミクロンであった。これらのレンズ(プレフォーム)を、以下に記載するモールドセットの1半部分(後部半部分)として使用した。
【0211】
【表1】

(a)ジメチルピラゾールブロックヘキサンジイソシアネートビューレット(Baxenden)
(b)ポリヘキサンカーボネートジオール(Stahl USA)
(c)充填2において、スチレンをメチルメタクリレートおよび総モノマー重量に対して0.5重量%のトリフェニルホスフェートに置き換えた以外は、以下の米国特許第6,187,444号、実施例1の組成物Dの手順によって製造されたポリオール、該手順は参照によって本明細書に組入れられる。
(d)ヒンダードアミン光安定剤(Ciba−Geigy)
(e)γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(OSi)
(f)UV線によって活性化された時灰色の色彩を被膜に付与するようにデザインされた比率であるナフトピランフォトクロミック材料の混合物
(g)界面活性剤(BYK)
(h)触媒(Aldrich)
(1)フォトクロミック材料およびチヌビン144を混合し、該混合物をN−メチルピロリドンとブレンドした。該ブレンドを60℃で約1時間混合した。次いで、配合物の残留成分を、加え、得られた混合物を、室温でさらに1時間撹拌した。
【0212】
光学樹脂組成物を、60重量%(固形分基準)のNXT−7022樹枝状ポリエステルメタクリレート、20重量%のジメチルピラゾール(DMP)ブロックイソシアネートエチルメタクリレート、20重量%のヒロドキシエチルメタクリレート(HEMA)および0.3重量%のIrgacure819光開始剤[Ciba−GeigyからのBAPO(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド)]を、組成物中で混合することにより生成した。[NXT−7022は、その供給者により、16個の末端水酸基を有するポリエステルポリオールをメタクリレート化し、平均でその約85〜90%をメタクリレート基に変換することにより生成した樹枝状ポリエステルメタクリレートであると報告されている]。
【0213】
標準ガラス二重焦点および三重焦点モールド(2.25、4.50、6.25および8.25ベース)を石けん水で洗浄し、乾燥した。離型剤、たとえば、Unelko社からのRainex(登録商標)を、ガラスモールドの表面に塗布した。試験レンズ上のフォトクロミックポリウレタン被膜を、Plasmatech機を使用して、非被覆SFSVレンズを処理するために使用した条件と同じ条件で、プラズマ放電により処理した。
【0214】
適正な、離型剤を含有するガラスモールドを、プラズマ処理SFSVフォトクロミックポリウレタン被覆プレフォームレンズと整列させ、モールドクリップをガラスモールドプレフォームレンズ組立て品に留めた。モールドプレフォームレンズ組立て品を、ガラスモールドの凸側を伏せるように配置した。プレフォームとガラスモールドとの間の一時的開口部を、スプレーの先端がこの開口部に入るようにした。光学樹脂組成物を、ガラスモールドとプレフォームとの間の隙間に、シリンジを使用して、該隙間の2/3が充填されるように注入した。次いで、ガラスモールドの凸側が上を向くようにモールドプレフォームレンズ組立て品を回転させながら、シリンジを取り除いた。モールドからの圧力により、余分な光学樹脂組成物を、モールド側から出口へ強制的に押し出した。
【0215】
光学樹脂組成物を含有するガラスモールドプレフォーム組立て品を、UV線(2個のDランプ)に、光学樹脂が硬化するのに十分な時間(<1分)暴露した。次いで、組立て品を、熱オーブン中に置き、120℃2時間の熱後硬化を行った。次いで、組立て品を、約70℃まで放置し、クリップを取り除いた。ガラスモールドを外すと組立て品はまだ暖かかった。
【0216】
試験レンズについて、接着性を試験し、特に多重焦点区域での光学美観的欠陥を観察した。多重焦点樹脂層のプレフォームへの接着性は、標準的なクロスハッチテープ引張り試験を使用して試験した。この試験に基づいて、キャスト樹脂のプレフォームへの付着を観察した。レンズが許容しうる美観を有していることが観察された。レンズを紫外線に暴露し、色の変化を見た。UV線源を取り除いた時、レンズは最初の透明な状態に戻った。
【0217】
2個の試験レンズ、たとえば、6.00ベースカーブレンズで製造されたものに関し、72°F(22℃)で、光学ベンチにおけるフォトクロミック応答を試験した。30秒での光学濃度値における平均変化(ΔOD)、たとえば、非活性化または漂白状態から活性化または暗くなった状態での光学濃度の変化は、該レンズに関し0.493であり;900秒での光学濃度値における平均変化は、0.743であった。平均漂白速度(薄−明時間T1/2)は74秒であり、平均第二漂白速度(第二薄−明時間T1/2)は216秒であった。光学濃度(ΔOD)における変化は、式:ΔOD=log(%Tb/%Ta)(式中、%Tbは、漂白状態における%透過率であり、%Taは、活性化状態における%透過率であり、logは、底が10である)により計算する。漂白速度(T1/2)は、活性化放射線源を取り除いた後、活性化レンズのΔODが、最高ΔODの1/2に達するまでの時間間隔(単位:秒)である。第二漂白速度(第2T1/2)は、活性化放射線源を取り除いた後、活性化レンズのΔODが、最高ΔODの1/4に達するまでの時間間隔(単位:秒)である。
【0218】
(実施例2)
光学樹脂組成物が、70重量%のPRO−6169樹枝状ポリエステルアクリレート、10重量%のDMPブロックイソシアネートエチルメタクリレート、10重量%の ヒロドキシエチルアクリレート、および0.2重量%のIrgacure819を含む以外は、実施例1の手段に従った。PRO−6169は、供給者によって、16個の末端水酸基を有するポリエステルポリオールをアクリル化し、平均でその約85〜90%をアクリレート基に変換して生成された樹枝状ポリエステルアクリレートであると報告されている。PRO−6169材料は、数平均分子量が700であり、重量平均分子量が3000であると報告されている。この実施例では、2個の2.00ベースカーブ試験レンズを使用した。
【0219】
試験レンズについて、接着性を試験し、特に多重焦点区域での光学美観欠陥を観察した。多重焦点樹脂層のプレフォームへの接着性は、標準的なクロスハッチテープ引張り試験を使用して試験した。この試験に基づいて、キャスト樹脂のプレフォームへの付着を観察した。レンズは許容しうる美観を有していることが観察された。レンズを紫外線に暴露し、色の変化を見た。UV線源を取り除いた時、レンズは最初の透明な状態に戻った。
【0220】
試験レンズに関し、72°F(22℃)で、光学ベンチにおけるフォトクロミック応答を試験した。レンズの30秒での光学濃度値における平均変化(ΔOD)は0.544であり;900秒での光学濃度値における平均変化は、0.742であった。平均漂白速度(薄−明時間T1/2)は44秒であり、平均第二漂白速度(第二薄−明時間T1/2)は105秒であった。
【0221】
(実施例3)
多重焦点樹脂を、90%のNXT7022樹枝状メタクリレート、10%のDMPブロックイソシアネートエチルメタクリレートおよび0.3%のIrgacure819を含む組成物で生成し、2.00、6.00および8.00ベースカーブを有するレンズを使用した以外は、実施例1の手順に従った。6.00および8.00ベースカーブレンズで製造した多重焦点レンズは、許容しうる美観を有していた。
【0222】
(実施例4)
多重焦点樹脂を、50%のPRO−6169樹枝状アクリレート、20%のポリエチレングリコール400ジメタクリレート(SartomerからのSR−603)、20%のヒロドキシエチルメタクリレート、10%のDMPブロックイソシアネートエチルメタクリレートおよび0.3%のIrgacure819を含む組成物から生成し、2.00ベースカーブを有するレンズを使用した以外は、実施例1の手順を使用した。製造された多重焦点レンズは、許容しうるレンズ美観を有していた。
【0223】
(実施例5)
多重焦点樹脂を、50%のPRO−6169樹枝状アクリレート、20%のトリエチレングリコールジメタクリレート、20%のヒロドキシエチルメタクリレート、10%のDMPブロックイソシアネートエチルメタクリレートおよび0.3%のIrgacure819を含む組成物から生成し、6.00ベースカーブを有するレンズを使用した以外は、実施例1の手順を使用した。製造された多重焦点は、許容しうるレンズ美観を有していた。
【0224】
本発明を、あるその実施形態の具体的な詳細に関して記載したが、そのような詳細は、それらが添付の特許請求の範囲に含まれる範囲を除いて、本発明の範囲を限定としてみなされるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多重焦点光学製品であって、
(a)少なくとも1種の光影響特性を有するように適用された硬質光基材と、
(b)該基材上にある光学品質樹脂の多重焦点層と、
を含む多重焦点光学製品。
【請求項2】
前記光影響特性が、フォトクロミズム、偏光性、着色性、またはこれらの特性のうちの2種以上の組み合わせから選択される請求項1記載の多重焦点光学製品。
【請求項3】
前記光学製品が眼用製品である請求項2記載の多重焦点光学製品。
【請求項4】
前記眼用光学製品が屈折率1.48〜1.74のレンズであり、前記多重焦点層が、二重焦点、三重焦点層または累進多重焦点層である請求項3記載の多重焦点光学製品。
【請求項5】
前記基材が、アリルジグリコールカーボネートモノマーを含む重合性組成物から製造された基材、熱可塑性ポリカーボネートを含む組成物から製造された基材、ポリ(ウレアウレタン)を含む組成物から製造された基材、アクリル官能性モノマーを含む重合性組成物から製造された基材、ポリエステルを含む組成物から製造された基材、多官能性イソシアネートとポリチオールモノマーまたはポリエピスルフィドモノマーとの反応生成物を含む組成物から製造された基材、およびポリウレタン、ならびにポリチオウレタンまたはポリオレフィンを含む組成物から製造された基材から選択される請求項2記載の多重焦点光学製品。
【請求項6】
前記多重焦点層が、樹枝状ポリエステル(メタ)アクリレートを含む組成物から製造される透明層、少なくとも1種のマレイミド誘導体を含む組成物から製造される透明層、架橋性ポリエポキシドおよびポリ酸を含む組成物から製造される透明層、熱硬化性ポリウレタンを含む組成物から製造される透明層、放射線硬化性アクリレートを含む組成物から製造される透明層、不飽和ポリエステルを含む組成物から製造される透明層、ポリチオウレタンを含む組成物から製造される透明層、モノ(チオ)(メタ)アクリレートを含む組成物から製造される透明層、エピスルフィドを含む組成物から製造される透明層、ならびにポリ(ウレアウレタン)を含む組成物から製造される透明層から選択される請求項5記載の多重焦点光学製品。
【請求項7】
多重焦点光学製品であって、
(a)硬質光基材と、
(b)該基材の少なくとも1表面の少なくとも一部の上にある光影響性層と、
(c)該光影響性層上にある光学品質樹脂の多重焦点層と、
を含む多重焦点光学製品。
【請求項8】
前記光影響性層が、フォトクロミズム、偏光性、着色性、またはこれらの光影響特性のうちの2種以上の組み合わせから選択される光影響特性を含む請求項7記載の多重焦点製品。
【請求項9】
前記光学製品が1.48〜1.74の屈折率を有するレンズであり、前記多重焦点層が二重焦点層または三重焦点層である請求項8記載の多重焦点製品。
【請求項10】
前記光基材が、アリルジグリコールカーボネートモノマーを含む重合性組成物から製造された基材、熱可塑性ポリカーボネートを含む組成物から製造された基材、ポリ(ウレアウレタン)を含む組成物から製造された基材、アクリル官能性モノマーを含む重合性組成物から製造された基材、ポリエステルを含む組成物から製造された基材、多官能性イソシアネートとポリチオールモノマーまたはポリエピスルフィドモノマーとの反応生成物を含む組成物から製造された基材、およびポリウレタン、ならびにポリチオウレタンまたはポリオレフィンを含む組成物から製造された基材から選択される請求項8記載の多重焦点製品。
【請求項11】
前記多重焦点層が、樹枝状ポリエステル(メタ)アクリレートを含む組成物から製造される透明層、少なくとも1種のマレイミド誘導体を含む組成物から製造される透明層、架橋性ポリエポキシドおよびポリ酸を含む組成物から製造される透明層、熱硬化性ポリウレタンを含む組成物から製造される透明層、放射線硬化性アクリレートを含む組成物から製造される透明層、不飽和ポリエステルを含む組成物から製造される透明層、ポリチオウレタンを含む組成物から製造される透明層、モノ(チオ)(メタ)アクリレートを含む組成物から製造される透明層、エピスルフィドを含む組成物から製造される透明層、ならびにポリ(ウレアウレタン)を含む組成物から製造される透明層から選択される請求項10記載の多重焦点製品。
【請求項12】
前記多重焦点製品が、さらに、前記多重焦点層上にある耐摩耗性被膜を含む請求項9記載の多重焦点製品。
【請求項13】
さらに、前記耐摩耗性被膜上にある反射防止被膜を含む請求項12記載の多重焦点製品。
【請求項14】
前記耐摩耗性被膜がオルガノシランを含む請求項12記載の多重焦点製品。
【請求項15】
前記光影響性層がフォトクロミック層であり、該フォトクロミック層が、フォトクロミック量の少なくとも1種の有機フォトクロミック材料を含有する有機フォトクロミック被膜を含む請求項9記載の多重焦点製品。
【請求項16】
前記有機フォトクロミック材料が、ピランを含む材料、クロメンを含む材料、オキサジンを含む材料、フルギドを含む材料、フルギミドを含む材料、ジアリールエタンを含む材料およびこれらのフォトクロミック材料の混合物から選択される請求項15記載の多重焦点製品。
【請求項17】
前記クロメンが、ナフト[1,2−b]ピラン、ナフト[2,1−b]ピラン、スピロ−9−フルオレノ[1,2−b]ピラン、フェナントロピラン、キノピラン、またはインデノ縮合ナフトピランから選択されるナフトピランであり、前記オキサジンが、ナフトオキサジンおよびスピロ(インドリン)ピリドベンゾオキサジンから選択される請求項16記載の多重焦点製品。
【請求項18】
前記光基材が熱可塑性ポリカーボネートを含む組成物から製造され、前記多重焦点層が樹枝状ポリエステル(メタ)アクリレートを含む組成物から製造され、かつ前記透明光影響性層がフォトクロミックポリウレタン系被膜である請求項11記載の多重焦点製品。
【請求項19】
多重焦点光学製品を製造する方法であって、多重焦点モールドとプレフォームの表面との間に光学品質硬化性樹脂を接触させて配置するステップであって、該プレフォームは少なくとも1種の光影響特性を有するように適合させた硬質光基材を含むステップと、該光学品質樹脂を硬化させることによって、前記プレフォームの表面の上に多重焦点層を設けるステップと、を含む方法。
【請求項20】
前記光影響特性が、フォトクロミズム、偏光性、着色性、またはこれらの特性のうちの2種以上の組み合わせから選択される請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記光基材が、アリルジグリコールカーボネートモノマーを含む重合性組成物から製造された基材、熱可塑性ポリカーボネートを含む組成物から製造された基材、ポリ(ウレアウレタン)を含む組成物から製造された基材、アクリル官能性モノマーを含む重合性組成物から製造された基材、ポリエステルを含む組成物から製造された基材、多官能性イソシアネートとポリチオールモノマーまたはポリエピスルフィドモノマーとの反応生成物を含む組成物から製造された基材、ポリウレタン、ならびにポリチオウレタンまたはポリオレフィンを含む組成物から製造された基材から選択される請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記光基材が屈折率1.48〜1.74のレンズであり、前記多重焦点層が二重焦点層および三重焦点層から選択される請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記光基材が屈折率1.48〜1.74のレンズであり、前記多重焦点層が累進層である請求項21記載の方法。
【請求項24】
前記多重焦点層が、樹枝状ポリエステル(メタ)アクリレートを含む組成物から製造される透明層、少なくとも1種のマレイミド誘導体を含む組成物から製造される透明層、架橋性ポリエポキシドおよびポリ酸を含む組成物から製造される透明層、熱硬化性ポリウレタンを含む組成物から製造される透明層、放射線硬化性アクリレートを含む組成物から製造される透明層、ポリチオウレタンを含む組成物から製造される透明層、エピスルフィドを含む組成物から製造される透明層、ならびにポリ(ウレアウレタン)を含む組成物から製造される透明層から選択される請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記プレフォームが、硬質光基材を含み、該基材の少なくとも1表面の少なくとも一部の上に透明光影響性層を有し、該光影響性層が、フォトクロミズム、偏光性、着色性、または該光影響特性の少なくとも2種の組み合わせから選択される光影響特性を含む請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記光影響性層がフォトクロミック層であり、該フォトクロミック層が、フォトクロミック量の少なくとも1種の有機フォトクロミック材料を含有する有機フォトクロミック被膜を含む請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記光基材が熱可塑性ポリカーボネートを含む組成物から製造され、前記多重焦点層が、樹枝状ポリエステル(メタ)アクリレートを含む組成物から製造され、かつ前記有機フォトクロミック被膜がフォトクロミックポリウレタン系被膜である請求項26記載の方法。

【公表番号】特表2009−507264(P2009−507264A)
【公表日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530086(P2008−530086)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/033519
【国際公開番号】WO2007/030352
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(504175051)トランジションズ オプティカル, インコーポレイテッド (65)
【Fターム(参考)】