説明

フォトクロミック材料

【課題】遮光下で放置することで、可逆的な構造変化(色変化)を呈する新しい構造のフォトクロミック材料を提供する。
【解決手段】特定の式で表されるビイミダゾール化合物からなるフォトクロミック材料。下式で表されるビイミダゾール化合物などが好ましい。ビイミダゾール化合物は、例えば2,2’−ジホルミルビフェニル誘導体とジアリールエタンジオン誘導体とを窒素化合物の存在下に反応させてイミダゾール環を含む中間体を得た後にその中間体を酸化反応させ、異性体を得た後、この異性体に可視光を照射することで得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフォトクロミック材料に関し、特に新規なビイミダゾール化合物からなるフォトクロミック材料に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトクロミック材料は一般に、光を照射することによって異性化反応を引き起こし、色(可視光の透過率)を可逆的に変化させる機能(調光機能)を有する材料であり、光照射前の材料のみならず、光照射後に生成される材料もフォトクロミック材料と呼ばれる。このため、フォトクロミック材料は、まぶしさを防ぐためのメガネや、光スイッチ、または表示・非表示の切り替え能を有するインクなどの表示材料として利用される。また、光ディスクなどの記録材料やホログラムとしての応用も研究されている。
【0003】
フォトクロミック材料による色の変化は一般的に、光照射による材料の可逆的な化学変化によって発現される。代表的なフォトクロミック材料としては、スピロピラン系化合物、スピロオキサジン系化合物、ナフトピラン系化合物、フルギド系化合物およびジアリールエテン系化合物などが知られている(例えば下記非特許文献1)。また近年は高速な光応答性を有する新しい構造の化合物も報告されている(例えば下記非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「フォトクロミック材料の開発」 監修:市村國宏 発行:株式会社シーエムシー (p1〜p80)
【非特許文献2】Journalof the American Chemical Society 131(12), pp4227-4229 (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、調光機能にはその用途に適した色や発色濃度や発色速度などの特性が求められる。そのため、様々な種類の誘導体や新しい分子骨格を有する化合物の開発が必要である。
【0006】
従って、新たな構造を有するフォトクロミック材料が求められていた。
【0007】
本発明の目的は、光照射により可逆的な構造変化(色変化)を呈する新しい構造のフォトクロミック材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、全く新しいフォトクロミック分子を見出した。具体的には、本発明者らは、ビイミダゾールを基本骨格とし、一般式(1)のRおよびRに嵩高い置換基を導入することでフォトクロミズムを示す新しい化合物を見出した。
【化1】

(式中、R及びRはそれぞれ独立してハロゲン原子又はアルキル基を示し、R〜R及びR〜Rはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、フルオロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボニル基、アルキルカルボニル基、ニトロ基、シアノ基又はアリール基を示す。Ar〜Arはそれぞれ独立して置換又は無置換のアリール基を示す。Rは、Rと共に、縮合した置換又は無置換のアリール環を形成してもよく、Rは、Rと共に、縮合した置換又は無置換のアリール環を形成してもよい。)
【0009】
即ち本発明は、上記一般式(1)で表されるビイミダゾール化合物からなることを特徴とするフォトクロミック材料である。
【0010】
本発明のフォトクロミック材料は、図1に示すように、光照射を続けることによって一般式(1)で表される構造を維持することができ、遮光状態で放置することにより、熱エネルギー変化によって異性体(I)に変化させることが可能となり、透過率を低下させて着色体とすることが可能となる。尚、図1において、Δは遮光状態における熱エネルギー変化を表す。
【発明の効果】
【0011】
本発明が提供するフォトクロミック材料は、遮光することにより容易に消色体から着色体へと色調を変化させることができる。この性質はフォトクロミック材料が利用されているあらゆる用途への適用が考えられるものである。具体的な用途としては、光スイッチ、印刷用材料、記録材料、ホログラム材料などがある。しかも、本発明のフォトクロミック材料は従来のフォトクロミズムを示す分子と全く構造が異なるので、フォトクロミズムを利用したデバイス開発に新しい選択肢を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】一般式(1)で表される本発明のフォトクロミック材料が光照射又は遮光により採り得る構造を示す図である。
【図2】一般式(1)においてR及びRがそれぞれ独立してハロゲン原子又はアルキル基を示すフォトクロミック材料が光照射又は遮光により採り得る構造を示す図である。
【図3】実施例1に係る化合物[1]の光照射状態及び遮光状態の紫外可視吸収スペクトルを示すグラフである。
【図4】実施例2に係る化合物[2]の光照射状態及び遮光状態の紫外可視吸収スペクトルを示すグラフである。
【図5】実施例3に係る化合物[3]の光照射状態及び遮光状態の紫外可視吸収スペクトルを示すグラフである。
【図6】実施例4に係る化合物[4]の光照射状態及び遮光状態の紫外可視吸収スペクトルを示すグラフである。
【図7】実施例5に係る化合物[5]の光照射状態及び遮光状態の紫外可視吸収スペクトルを示すグラフである。
【図8】比較例1に係る化合物[6]の光照射状態及び遮光状態の紫外可視吸収スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のフォトクロミック材料は、一般式(1)で表されるビイミダゾール化合物のR、Rの両部位に立体的に嵩高い置換基を導入することでスピロ環構造を持った構造を得るものである。
【0014】
、Rの両部位の嵩高い置換基としては、ハロゲン原子又はアルキル基が挙げられる。この場合、一般式(1)で表されるフォトクロミック材料は、光照射を続けることによって一般式(1)で表される構造を維持することができ、図2に示すように、遮光状態にすることによって、異性体(I)にも異性体(II)にも変化することが可能となる。通常、異性体(I)は着色体であり、透過率が低く、異性体(II)も、発色体であるが、異性体(I)とは透過率が異なる。一般式(1)で表されるフォトクロミック材料は消色体であり、異性体(I)及び異性体(II)とは透過率が異なる。従って、フォトクロミック材料の色調を2段階で調整することが可能である。尚、図2においても、Δは遮光状態における熱エネルギー変化を表す。
上記置換基は、アルキル基のうちの最も小さいメチル基であってもよい。即ち、フォトクロミック材料は、下記一般式(2)で表されるものであってもよい。
【化2】

【0015】
一般式(1)において、Rは、Rと共に、縮合した置換又は無置換のアリール環を形成し、且つ、Rは、Rと共に、縮合した置換又は無置換のアリール環を形成するものであってもよい。ここで、アリール環がベンゼン環であることが好ましい。この場合のフォトクロミック材料は、下記一般式(3)で表される。下記一般式(3)で表されるフォトクロミック材料は通常、遮光状態にすることで異性体(I)になり得るが、図2に示される異性体(II)にはならない。
【化3】

(式中R〜R及びR〜R14はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、フルオロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボニル基、アルキルカルボニル基、ニトロ基、シアノ基又はアリール基を示す。Ar〜Arはそれぞれ独立して置換又は無置換のアリール基を示す。)
【0016】
本発明のフォトクロミック材料は、例えば下記一般式(4)で表される2,2’−ジホルミルビフェニル誘導体と下記一般式(5)及び(6)で表されるジアリールエタンジオン誘導体とを窒素化合物の存在下に反応させてイミダゾール環を含む中間体を得た後にその中間体を酸化反応させ、図1に示す異性体(I)を得た後、この異性体(I)に可視光を照射することで得られる。ここで、一般式(4)で表される2,2’−ジホルミルビフェニル誘導体に代えて、2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフタレン誘導体を用いることもできる。また2,2’−ジホルミルビフェニル誘導体には、2,2’−ジホルミルビフェニルは含まれない。2,2’−ジホルミルビフェニルが含まれると、異性体(I)が得られず、その結果、本発明のフォトクロミック材料が得られなくなるためである。尚、本発明のフォトクロミック材料は、二つのホルミル基に異なるジアリールエタンジオン誘導体を反応させることによっても得られる。本発明の効果は、本発明の構造体分子を得られるのであればどのような合成ルートをとっていてもよく、合成ルートによって何ら限定されるものではない。
【0017】
【化4】

(式中R及びRはそれぞれ独立してハロゲン原子又はアルキル基を示し、R〜R及びR〜Rはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、フルオロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボニル基、アルキルカルボニル基、ニトロ基、シアノ基又はアリール基を示す。Ar〜Arはそれぞれ独立して置換又は無置換のアリール基を示す。Rは、Rと共に、縮合した置換又は無置換のアリール環を形成してもよく、Rは、Rと共に、縮合した置換又は無置換のアリール環を形成してもよい。)
【化5】

(式中Ar、Arはそれぞれ独立して置換又は無置換のアリール基を示す。)
【化6】

(式中Ar、Arはそれぞれ独立して置換又は無置換のアリール基を示す。)
【0018】
上記一般式(1)で表される本発明のフォトクロミック材料の合成原料に使用する2,2’−ジホルミルビフェニル誘導体は、6,6’位に立体的に大きな置換基を有することが好ましい。このような2,2’−ジホルミルビフェニル誘導体としては、例えば6,6’ジメチル−2,2’−ジホルミルビフェニル、6,6’ジエチル−2,2’−ジホルミルビフェニル、6,6’ジメチル−2,2’−ジ−nプロピルビフェニル、6,6’ジメチル−2,2’−ジイソプロピルビフェニル、6,6’ジメチル−2,2’−ジ−nブチルビフェニル、6,6’ジメチル−2,2’−ジイソブチルビフェニル、6,6’ジメチル−2,2’−ジ−tertブチルビフェニル、6,6’ジトリフルオロメチル−2,2’−ジホルミルビフェニル、4,4’ジヒドロキシ−6,6’−ジメチル−2,2’−ジホルミルビフェニル、4,4’ジメトキシ−6,6’−ジメチル−2,2’−ジホルミルビフェニル、4,4’ジアセトキシ−6,6’−ジメチル−2,2’−ジホルミルビフェニル、4,4’ジアミノ−6,6’−ジメチル−2,2’−ジホルミルビフェニル、4,4’ビス(ジメチルアミノ)−6,6’−ジメチル−2,2’−ジホルミルビフェニル、4,4’ジフルオロ−6,6’−ジメチル−2,2’−ジホルミルビフェニル、4,4’ジクロロ−6,6’−ジメチル−2,2’−ジホルミルビフェニル、4,4’ジブロモ−6,6’−ジメチル−2,2’−ジホルミルビフェニル、4,4’ジヨード−6,6’−ジメチル−2,2’−ジホルミルビフェニル、4,4’ジニトロ−6,6’−ジメチル−2,2’−ジホルミルビフェニル、4,4’ジシアノ−6,6’−ジメチル−2,2’−ジホルミルビフェニル、4,4’ジメトキシカルボニル−6,6’−ジメチル−2,2’−ジホルミルビフェニル、3,3’,6,6’−テトラメチル−2,2’−ジホルミルビフェニル、4,4’,6,6’−テトラメチル−2,2’−ジホルミルビフェニル、5,5’,6,6’−テトラメチル−2,2’−ジホルミルビフェニル、6,6’−ジクロロ−2,2’−ジホルミルビフェニル、6,6’−ジブロモ−2,2’−ジホルミルビフェニル、6,6’−ジヨード−2,2’−ジホルミルビフェニル、4,4’,6,6’−テトラクロロ−2,2’−ジホルミルビフェニル、4,4’,6,6’−テトラブロモ−2,2’−ジホルミルビフェニル、4,4’−ジフルオロ−6,6’−ジクロロ−2,2’−ジホルミルビフェニル、4,4’−ジフルオロ−6,6’−ジブロモ−2,2’−ジホルミルビフェニル、4,4’−ジフルオロ−6,6’−ジヨード−2,2’−ジホルミルビフェニル、3,3’,4,4’,5,5’−ヘキサフルオロ−6,6’−ジブロモ−2,2’−ジホルミルビフェニル、5,5’ジメトキシ−4,4’,6,6’−テトラメチル−2,2’−ジホルミルビフェニル、などが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
また、2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフタレン誘導体としては、2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフタレン、3,3’−ジブロモ−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフタレン、4,4’−ジブロモ−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフタレン、6,6’−ジブロモ−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフタレン、3,3’−ジクロロ−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフタレン、3,3’−ジヨード−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフタレン、3,3’−ジメトキシメチル−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフタレン、3,3’−ジフェニル−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフタレン、6,6’−ジメトキシカルボニル−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフタレン、4,4’−ジシアノ−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフタレン、7,7’−ジヒドロキシ−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフタレン、7,7’−ジメトキシ−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフタレン、7,7’−ビス(メタクロロベンジロキシ)−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフタレン、6,6’−ジブロモ−3,3’−ジメトキシ−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフタレン、3,3’−ジメトキシカルボニル−4,4’−ジヒドロキシ−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフタレン、3,3’,6,6’−テトラフェニル−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフタレン、6,6’−ジメチル−7,7’−ジヒドロキシ−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフタレン、6,6’−ジメチル−7,7’−ビス(メタクロロベンジロキシ)−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフタレン、3,3’,4,4’−テトラヒドロキシ−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフタレン、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノ−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフタレン、6,6’−ジメチル−7,7’−ジヒドロキシ−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフタレン、6−メトキシカルボニルエチル−2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフタレンなどが例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
本発明のフォトクロミック材料の原料に使用する一般式(5)及び(6)で表されるジアリールエタンジオン誘導体としては、例えば2−フルオロベンジル、3−フルオロベンジル、4−フルオロベンジル、2−クロロベンジル、3−クロロベンジル、4−クロロベンジル、2−ブロモベンジル、3−ブロモベンジル、4−ブロモベンジル、2−ヨードベンジル、3−ヨードベンジル、4−ヨードベンジル、2−ヒドロキシベンジル、3−ヒドロキシベンジル、4−ヒドロキシベンジル、2−メトキシベンジル、3−メトキシベンジル、4−メトキシベンジル、2−エトキシベンジル、3−エトキシベンジル、4−エトキシベンジル、2−フェノキシベンジル、3−フェノキシベンジル、4−フェノキシベンジル、2−アセトキシベンジル、3−アセトキシベンジル、4−アセトキシベンジル、2−メチルベンジル、3−メチルシベンジル、4−メチルベンジル、2−カルボキシベンジル、3−カルボキシベンジル、4−カルボキシベンジル、2−(メチルカルボキシ)ベンジル、3−(メチルカルボキシ)ベンジル、4−(メチルカルボキシ)ベンジル、2−(フェニルカルボキシ)ベンジル、3−(フェニルカルボキシ)ベンジル、4−(フェニルカルボキシ)ベンジル、2−ニトロベンジル、3−ニトロベンジル、4−ニトロベンジル、2−シアノベンジル、3−シアノベンジル、4−シアノベンジル、2−メチルチオベンジル、3−メチルチオベンジル、4−メチルチオベンジル、2−フェニルチオベンジル、3−フェニルチオベンジル、4−フェニルチオベンジル、2−フェニルアセチレニルベンジル、3−フェニルアセチレニルベンジル、4−フェニルアセチレニルベンジル、2−スチリルベンジル、3−スチリルベンジル、4−スチリルベンジル、2−フェニルメチルベンジル、3−フェニルメチルベンジル、4−フェニルメチルベンジル、2−アミノベンジル、3−アミノベンジル、4−アミノベンジル、2−ジメチルアミノベンジル、3−ジメチルアミノベンジル、4−ジメチルアミノベンジル、2−ブロモメチルベンジル、3−ブロモメチルベンジル、4−ブロモメチルベンジル、2−メトキシメチルベンジル、3−メトキシメチルベンジル、4−メトキシメチルベンジル、2−(N−メチルアミノカルボニル)ベンジル、3−(N−メチルアミノカルボニル)ベンジル、4−(N−メチルアミノカルボニル)ベンジル、2−(N−フェニルアミノカルボニル)ベンジル、3−(N−フェニルアミノカルボニル)ベンジル、4−(N−フェニルアミノカルボニル)ベンジル、2−トリフルオロメチルベンジル、3−トリフルオロメチルベンジル、4−トリフルオロメチルベンジル、3,4−メチレンジオキシベンジル、3,4−エチレンジオキシベンジル、3,4−エチレンジチオベンジル、2,4−ジヒドロキシベンジル、2,4−ジメチルベンジル、2,3−ジメチルベンジル、3,4−ジメチルベンジル、3,4−ジメトキシベンジル、2,4−ジメトキシベンジル、2,4−ジニトロベンジル、2−メチル−3−ニトロベンジル、2−メトキシ−3−ニトロベンジル、2−クロロ−4−メトキシベンジル、3−クロロ−4−アミノベンジル、2,3−ジクロロベンジル、3,4−ジクロロベンジル、2−ジフルオロメチル−3−メチルベンジル、3−フルオロ−4−ブロモベンジル、3,5−ジメトキシベンジル、3,5−ジフルオロベンジル、3,4,5−トリメトキシベンジル、4−(2−オキソ−フェニルアセチル)ナフタレン−1,8−ジカルボキシリックアシッドアンハイドライド、1−(9−オキソフルオレン−2−イル)−2−フェニルエタンジオン、1−(4−ニトロフェニル)−3−[4−(2−オキソ−2−フェニルアセチル)フェニル]ウレア、エチル−4−メチル−2−{[4−(2−オキソ−2−フェニルアセチル)フェニル]カルボニルアミノ}−1,3−チアゾール−5−カルボキシレート、N−(2−メトキシ−5−メチルフェニル)[4−(2−オキソ−2−フェニルアセチル)フェニル]カルボキシアミド、N−(2−メトキシエチル)[4−(2−オキソ−2−フェニルアセチル)フェニル]カルボキシアミド、4−クロロ−2−メチルフェニル−4−(2−オキソ−2−フェニルアセチル)ベンゾエイト、1−フェニル−2−(2−ナフチル)エタンジオン、1−フェニル−2−(1−ナフチル)エタンジオン、1−フェニル−2−[4−(4−ニトロフェノキシ)フェニル]エタンジオン、カルバモイルメチル−4−(2−オキソ−2−フェニルアセチル)ベンゾエイト、1−アセナフテン−5−イル−2−フェニルエタンジオン、2,3,4,5,6−ペンタクロロベンジル、ベンジル、2,2’−ジフルオロベンジル、3,3’−ジフルオロベンジル、4,4’−ジフルオロベンジル、2,2’−ジクロロベンジル、3,3’−ジクロロベンジル、4,4’−ジクロロベンジル、2,2’−ジブロモベンジル、3,3’−ジブロモベンジル、4,4’−ジブロモベンジル、2,2’−ジヨードベンジル、3,3’−ジヨードベンジル、4,4’−ジヨードベンジル、2,2’−ジヒドロキシベンジル、3,3’−ジヒドロキシベンジル、4,4’−ジヒドロキシベンジル、2,2’−ジメトキシベンジル、3,3’−ジメトキシベンジル、4,4’−ジメトキシベンジル、2,2’−ジエトキシベンジル、3,3’−ジエトキシベンジル、4,4’−ジエトキシベンジル、2,2’−ジフェノキシベンジル、3,3’−ジフェノキシベンジル、4,4’−ジフェノキシベンジル、2,2’−ジアセトキシベンジル、3,3’−ジアセトキシベンジル、4,4’−ジアセトキシベンジル、2,2’−ジメチルベンジル、3,3’−ジメチルシベンジル、4,4’−ジメチルベンジル、2,2’−ジカルボキシベンジル、3,3’−ジカルボキシベンジル、4,4’−ジカルボキシベンジル、2,2’−ビス(メチルカルボキシ)ベンジル、3,3’−ビス(メチルカルボキシ)ベンジル、4,4’−ビス(メチルカルボキシ)ベンジル、2,2’−ビス(フェニルカルボキシ)ベンジル、3,3’−ビス(フェニルカルボキシ)ベンジル、4,4’−ビス(フェニルカルボキシ)ベンジル、2,2’−ジニトロベンジル、3,3’−ジニトロベンジル、4,4’−ジニトロベンジル、2,2’−ジシアノベンジル、3,3’−ジシアノベンジル、4,4’−ジシアノベンジル、2,2’−ジメチルチオベンジル、3,3’−ジメチルチオベンジル、4,4’−ジメチルチオベンジル、2,2’−ジフェニルチオベンジル、3,3’−ジフェニルチオベンジル、4,4’−ジフェニルチオベンジル、2,2’−ジフェニルアセチレニルベンジル、3,3’−ジフェニルアセチレニルベンジル、4,4’−ジフェニルアセチレニルベンジル、2,2’−ジスチリルベンジル、3,3’−ジスチリルベンジル、4,4’−ジスチリルベンジル、2,2’−ジフェニルメチルベンジル、3,3’−ジフェニルメチルベンジル、4,4’−ジフェニルメチルベンジル、2,2’−ジアミノベンジル、3,3’−ジアミノベンジル、4,4’−ジアミノベンジル、2,2’−ビス(ジメチルアミノ)ベンジル、3,3’−ビス(ジメチルアミノ)ベンジル、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンジル、2,2’−ジブロモメチルベンジル、3,3’−ジブロモメチルベンジル、4,4’−ジブロモメチルベンジル、2,2’−ジメトキシメチルベンジル、3,3’−ジメトキシメチルベンジル、4,4’−ジメトキシメチルベンジル、2,2’−ビス(N−メチルアミノカルボニル)ベンジル、3,3’−ビス(N−メチルアミノカルボニル)ベンジル、4,4’−ビス(N−メチルアミノカルボニル)ベンジル、2,2’−ビス(N−フェニルアミノカルボニル)ベンジル、3,3’−ビス(N−フェニルアミノカルボニル)ベンジル、4,4’−ビス(N−フェニルアミノカルボニル)ベンジル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジル、3,3’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジル、4,4’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジル、3,4,3’,4’−ジメチレンジオキシベンジル、3,4,3’,4’−ジエチレンジオキシベンジル、3,4,3’,4’−ジエチレンジチオベンジル、2,2’,4,4’−テトラメチルベンジル、3,3’,4,4’−テトラメトキシベンジル、2,2’,4,4’−テトラメトキシベンジル、2,2’,4,4’−テトラニトロベンジル、2,2’−ジメチル−3,3’−ジニトロベンジル、2,2’−ジメトキシ−3,3’−ジニトロベンジル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジメトキシベンジル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノベンジル、2,2’,3,3’−テトラクロロベンジル、3,3’,4,4’−テトラクロロベンジル、2,2’−ビス(ジフルオロメチル)−3,3’−ジメチルベンジル、3,3’−ジフルオロ−4,4’−ジブロモベンジル、3,3’,5,5’−テトラメトキシベンジル、3,3’,5,5’−テトラフルオロベンジル、3,3’,4,4’,5,5’−ヘキサメトキシベンジル、4,4’−ビス(3−メチル−3−ヒドロキシ−1−ブチニル)ベンジル、4,4’−ジフェニルベンジル、4,4’−ビス(N−モルフォリニル)ベンジル、1,2−ビス(2,3,6,7−テトラヒドロ−1H,5H−ピリド[3,2,1−ij]キノリン−9−イル)エタンジオン、3,3’−ジニトロ−4,4’−ジクロロベンジル、3,3’−ジニトロ−4,4’−ジメトキシベンジル、3,3’−ジニトロ−4,4’−ジブロモベンジル、4−メチル−4’−クロロベンジル、2−クロロ−3’,4’−ジメトキシベンジル、2,4’−ジブロモベンジル、2,3,4,5,6−ペンタクロロ−2’,3’,4’,5’,6’ペンタフルオロベンジルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
一般式(4)で表される2,2’−ジホルミルビフェニル誘導体と一般式(5)及び(6)で表されるジアリールエタンジオン誘導体とを反応させるための温度は、触媒の有無及び使用する触媒によって異なるため一概には言えないが、例えば触媒を使用せず溶媒として酢酸を使用する場合、反応温度は、通常80〜120℃であり、好ましくは100〜120℃である。また触媒として、例えばZrClやヨウ素を使用した場合、反応温度は、触媒の存在下、20℃〜75℃とすることができる。
【0022】
反応時間も、触媒の有無及び使用する触媒によって異なるため一概には言えないが、例えば触媒を使用せず溶媒として酢酸を使用する場合、反応温度は4〜32時間であり、好ましくは12〜24時間である。また、触媒として例えばZrClやヨウ素を使用した場合は、反応時間は、触媒存在下、1〜10時間とすることができる。
【0023】
上記窒素化合物としては、例えば酢酸アンモニウム及びアンモニアなどが挙げられるが、中でも、加熱時に揮発しにくいという理由から、酢酸アンモニウムが好ましい。
【0024】
上記反応の溶媒としては、原料を溶解できるものであれば特に制限なく使用可能である。このような溶媒としては、例えば酢酸、アセトニトリルのような極性溶媒が好ましい。
【0025】
中間体の酸化反応は、例えば中間体を溶媒中に溶解させて溶液を調製し、この溶液に酸化剤を加えることによって行うことができる。
【0026】
溶媒は、中間体を溶解できるものであれば特に制限なく使用可能である。このような溶媒としては、例えばベンゼン、塩化メチレンなどを用いることができる。
【0027】
酸化剤は、中間体を酸化して異性体(I)を得ることができるものであれば特に制限なく使用可能である。このような酸化剤としては、例えばフェリシアン化カリウム、酸化鉛が挙げられるが、中でも、フェリシアン化カリウムが好ましい。これは、フェリシアン化カリウムの反応性がより高いためである。
【0028】
尚、上記溶液には、酸化剤のほか、さらに塩基を添加する。このような塩基としては、例えば水酸化カリウムなどを用いることができる。
【0029】
酸化反応は、不活性ガス雰囲気下、遮光条件下で行うことが好ましい。不活性ガス雰囲気とするのは、酸素との反応抑制のためである。不活性ガスとしては、例えば窒素を用いることが可能である。遮光条件下で酸化反応を行うことが好ましいのは、得られる異性体(I)が可視光によって着色体から消色体に変化することを防止するためである。
【0030】
異性体(I)に照射する光は、異性体(I)の可視光の波長域における最大吸収波長を含む波長域の光であればよい。光の照射時間は、光の強度にもよるが、通常は10〜600秒であり、好ましくは30〜300秒である。
【0031】
光照射時の温度は好ましくは30℃以下であり、より好ましくは0℃以下である。また光照射時の温度が30℃以下であると、30℃を超える場合に比べて、異性体(I)からの本発明のフォトクロミック材料の生成効率がより向上する。但し、光照射時の温度は、上記溶媒の融点よりも高い温度とすることが好ましい。すなわち、光照射は、上記溶媒が固体とならない状態で行うことが好ましい。
【0032】
なお、図1に示す2種類の化合物は熱異性化反応を起こすため、一般式(1)で表されるフォトクロミック材料は、必ずしもそれ単独で存在するとは限らず、異性体(I)と一般式(1)とが混合した状態にもなり得る。具体的には、異性体(I)に光を照射すると、一般式(1)で表されるフォトクロミック材料が生成されるが、このフォトクロミック材料は、光照射時の構造、即ち異性体(I)への戻り反応が熱的な反応で進行するため、異性体(I)と一般式(1)とが混合した状態にもなり得る。同様に、図2に示す3種類の化合物は熱異性化反応を起こすため、一般式(1)で表されるフォトクロミック材料は、必ずしもそれ単独で存在するとは限らず、異性体(I)と異性体(II)と一般式(1)とが混合した状態にもなり得る。
【実施例】
【0033】
以下、本発明について実施例により具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0034】
以下の合成例1〜6で使用するベンジル、4,4’−ジメトキシベンジル、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンジル、4,4’−ジブロモベンジル、酢酸アンモニウム、酢酸、フェリシアン化カリウム、水酸化カリウムとしては、市販の試薬(東京化成工業株式会社製)を用いた。また、NMRによる測定は特別な記述が無い限り25℃で行った。
【0035】
<合成例1>
6,6’ジメチル−2,2’−ジホルミルビフェニル100mgと4,4’−ジメトキシベンジル270mgと酢酸アンモニウム960mgと酢酸4.0mlを混合し、110℃のオイルバスで16時間加熱攪拌を行い反応させた後に28%アンモニア水8.0mlを加えて固体を析出させながら中和して、固体を水洗浄後にろ過して真空乾燥機で乾燥した。乾燥した固体をシリカゲルカラムで分離精製した後に溶媒を濃縮して中間体(I)を273mg得た。NMRの分析によって中間体(I)の生成を確認した。尚、NMRの分析結果は下記の通りである。
1H‐NMR(500MHz CDCl3)δ8.92(2H s)、8.38(2H d)、7.53(2H t)、7.46(4H d)、7,40(2H d)、6.94(4H d)、6.80(4H d)、6.75(4H d)3.78(12H s)、1.99(6H s)
【化7】

【0036】
上記の中間体(I)120mgをベンゼン25mlに溶解させ、フェリシアン化カリウム4.1gと水酸化カリウム1.8gを30mlの水に溶解させた溶液を窒素下遮光条件で加えて、室温で2時間撹拌して反応させた後に水層を分離してベンゼンで抽出し、溶媒を濃縮して再結晶を行い、化合物[I]を含む混合物を102mg、化合物[I]として24mg得た。NMRの分析によって化合物[I]の生成を確認した。尚、NMRの分析は混合物について行ったものであり、化合物[I]単品のNMRの分析結果は得られていないが、メトキシ基とメチル基の特徴的なピークとUVスペクトルにおいて496nmに特徴的な吸収帯を示すことから混合物中の化合物[I]が下記構造式で表されることは明らかと考えられる。
【化8】

【0037】
続いて、化合物[I]に対し、重クロロホルムに溶解して可視光を25℃で300秒間照射した。その後、NMRの分析によって化合物[1]の生成を確認した。尚、NMRの分析結果は下記の通りである。
1H-NMR(500MHz CDCl3);7.43(2H s)、7.41(4H d)、7.36(4H d)、7.13(2H t)、6.83(2H d)、6.80(4H d)、6.75(4H d)、3.81(6H s)、3.77(6H s)、2.48(6H s)
13C-NMR(500MHz CDCl3);169.9、164.9、161.14、161.09、136.1、135.4、134.9、131.2、130.6、128.3、126.7、125.4、125.0、121.6、113.5、113.3、106.7、55.3、55.2、21.3
【化9】

【0038】
<合成例2>
2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフタレン100mgと4,4’−ジメトキシベンジル183mgと酢酸アンモニウム750mgと酢酸4.0mlを混合し、110℃のオイルバスで14時間加熱攪拌を行い反応させた後に28%アンモニア水8.0mlを加えて固体を析出させながら中和して、固体を水洗浄後にろ過して真空乾燥機で乾燥した。乾燥した固体をシリカゲルカラムで分離精製した後に溶媒を濃縮して中間体(II)を158mg得た。NMRの分析によって中間体(II)の生成を確認した。尚、NMRの分析結果は下記の通りである。
1H‐NMR(500MHz CDCl3)δ8.78(2H d)、8.45(2H s)、8.19(2H d)、8.02(2H d)7.55-7.51(2H m)、7.42(4H d)、7.32-7.30(4H m)、6.78(4H d)6.69-6.64(8H m)、3.77(12H s)
【化10】

【0039】
上記の中間体(II)84mgをベンゼン25mlに溶解させ、フェリシアン化カリウム2.5gと水酸化カリウム1.1gを20mlの水に溶解させた溶液を窒素下遮光条件で加えて、室温で2時間撹拌して反応させた後に水層を分離してベンゼンで抽出し、溶媒を濃縮して再結晶を行い、化合物[II]を79mg得た。NMRの分析とX線結晶構造解析によって化合物[II]の生成を確認した。尚、NMRの分析結果は下記の通りである。
1H‐NMR(500MHz CDCl3)δ8.24(1H d)、7.92(1H d)、7.90(1H d)、7.77(1H d)、7.50(2H d)、7.47-7.42(5H m)、7.30-7.20(4H m)、7.09-7.05(1H m)、6.93(1H d)、6.89(1H d)、6.85(2H d)、6.80(2H d)6.73(2H d)、6.54(2H d)、6.44(2H d)、3.82(3H s)、3.81(3H s)、3.73(3H s)、3.73(3H s)
【化11】

【0040】
続いて、化合物[II]に対し、重クロロホルムに溶解して可視光を−78℃で300秒間照射した。その後、−50℃に冷却した条件のNMRの分析によって化合物[2]の生成を確認した。尚、NMRの分析結果は下記の通りである。
1H-NMR(500MHz CDCl3);7.97(2H d)、7.87(2H d)、7.82(2H d)、7.56(2H t)、7.46-7.42(8H m)、7.41(2H t)、7.23(2H d)、6.89(4H d)、6.75(4H d)、3.88(6H s)、3.79(6H s)
13C-NMR(500MHz CDCl3);170.5、165.4、160.7、160.6、137.9、134.0、133.3、132.5、131.4、131.3、130.6、130.5、128.0、125.3、124.6、124.5、123.8、122.4、113.2、112.7、106.3、55.3、55.2
【化12】

【0041】
<合成例3>
2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフタレン100mgとベンジル149mgと酢酸アンモニウム750mgと酢酸4.0mlを混合し、110℃のオイルバスで14時間加熱攪拌を行い反応させた後に28%アンモニア水8.0mlを加えて固体を析出させながら中和して、固体を水洗浄後にろ過して真空乾燥機で乾燥した。乾燥した固体をシリカゲルカラムで分離精製した後に溶媒を濃縮して中間体(III)を162mg得た。NMRの分析によって中間体(III)の生成を確認した。尚、NMRの分析結果は下記の通りである。
1H‐NMR(500MHz CDCl3)δ8.76(2H d)、8.69(2H s)、8.20(2H d)、8.04(2H d)7.56-7.51(2H m)、7.51-7.49(4H m)、7.33-7.31(4H m)、7.24-7.14(12H m)6.75-6.73(4H m)
【化13】

【0042】
上記の中間体(III)87mgをベンゼン25mlに溶解させ、フェリシアン化カリウム2.9gと水酸化カリウム1.3gを20mlの水に溶解させた溶液を窒素下遮光条件で加えて、室温で2時間撹拌して反応させた後に水層を分離してベンゼンで抽出し、溶媒を濃縮して再結晶を行い、化合物[III]を75mg得た。NMRの分析によって化合物[III]の生成を確認した。尚、NMRの分析結果は下記の通りである。
1H‐NMR(500MHz CDCl3)δ8.26(1H d)、7.93(2H d)、7.80(1H d)、7.57(2H d)、7.47(2H d)、7.47(2H d)、7.44(3H d)、7.40(1H d)、7.35-7.31(4H m)、7.30-7.21(3H m)、7.19-7.15(3H m)、7.13-7.07(2H m)、7.01(2H t)、6.98(1H d)、6.94(1H d)、6.55(2H d)
【化14】

【0043】
<合成例4>
2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフタレン100mgと4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンジル210mgと酢酸アンモニウム750mgと酢酸4.0mlを混合し、110℃のオイルバスで18時間加熱攪拌を行い反応させた後に28%アンモニア水8.0mlを加えて固体を析出させながら中和して、固体を水洗浄後にろ過して真空乾燥機で乾燥した。乾燥した固体をシリカゲルカラムで分離精製した後に溶媒を濃縮して中間体(IV)を114mg得た。NMRの分析によって中間体(IV)の生成を確認した。尚、NMRの分析結果は下記の通りである。
1H‐NMR(500MHz CDCl3)δ8.84(2H br.s)、8.28(2H br.s)、8.18(2H d)、8.00(2H d)7.51-7.48(2H m)、7.43(4H br.s)、7.30-7.28(4H m)、6.63(8H br.s)6.49(4H br.s)、2.91(24H s)
【化15】

【0044】
上記の中間体(IV)80mgをベンゼン25mlに溶解させ、フェリシアン化カリウム2.3gと水酸化カリウム1.0gを20mlの水に溶解させた溶液を窒素下遮光条件で加えて、室温で2時間撹拌して反応させた後に水層を分離してベンゼンで抽出し、溶媒を濃縮して固体を析出させた。析出した固体をエタノールに溶解させて再結晶を行い、化合物[IV]を59mg得た。NMRの分析によって化合物[IV]の生成を確認した。尚、NMRの分析結果は下記の通りである。
1H‐NMR(500MHz CDCl3)δ8.23(1H d)、7.91(1H d)、7.86(1H d)、7.74(1H d)、7.52-7.50(3H m)、7.47(4H d)、7.23(1H t)、7.19-7.17(3H m)、7.02-6.98(1H m)、6.89(1H d)、6.76(1H d)、6.62(2H d)、6.59-6.56(4H m)6.40(2H d)、6.33(2H d)、3.00(6H s)、2.99(6H s)、2.87(6H s)、2.86(6H s)
【化16】

【0045】
<合成例5>
2,2’−ジホルミル−1,1’−ビナフタレン100mgと4,4’−ジブロモベンジル261mgと酢酸アンモニウム750mgと酢酸4.0mlを混合し、110℃のオイルバスで18時間加熱攪拌を行い反応させた後に28%アンモニア水8.0mlを加えて固体を析出させながら中和して、固体を水洗浄後にろ過して真空乾燥機で乾燥した。乾燥した固体をシリカゲルカラムで分離精製した後に溶媒を濃縮して中間体(V)を249mg得た。NMRの分析によって中間体(V)の生成を確認した。尚、NMRの分析結果は下記の通りである。
1H‐NMR(500MHz CDCl3)δ8.82(2H s)、8.62(2H d)、8.19(2H d)、8.04(2H d)7.84-7.82(4H m)、7.69-7.67(4H m)、7.56(2H t)、7.35-7.29(8H m)、6.61(4H d)
【化17】

【0046】
上記の中間体(V)80mgをベンゼン10mlに溶解させ、フェリシアン化カリウム2.0gと水酸化カリウム0.90gを15mlの水に溶解させた溶液を窒素下遮光条件で加えて、室温で2時間撹拌して反応させた後に水層を分離してベンゼンで抽出し、溶媒を濃縮して固体を析出させた。析出した固体をエタノールに溶解させて再結晶を行い、化合物[V]を22mg得た。NMRの分析によって化合物[V]の生成を確認した。尚、NMRの分析結果は下記の通りである。
1H‐NMR(500MHz CDCl3)δ8.21(1H d)、7.95(2H d)、7.83(1H d)、7.49(2H d)、7.43(2H d)、7.40-7.29(12H m)、7.23(2H d)、7.16(2H d)、7.08(1H d)、6.96(1H d)6.36(2H d)
【化18】

【0047】
<合成例6>
2,2’−ジホルミルビフェニル50mgと4,4’−ジメトキシベンジル142mgと酢酸アンモニウム550mgと酢酸3.0mlを混合し、110℃のオイルバスで24時間加熱攪拌を行い反応させた後に28%アンモニア水6.0mlを加えて固体を析出させながら中和して、固体を水洗浄後にろ過して真空乾燥機で乾燥した。乾燥した固体をシリカゲルカラムで分離精製した後に溶媒を濃縮して中間体(VI)を136mg得た。NMRの分析によって中間体(VI)の生成を確認した。尚、NMRの分析結果は下記の通りである。
1H‐NMR(500MHz CDCl3)δ9.37(2H s)、8.31(2H d)、7.56(2H t)、7.48-7.38(8H m)、7,29(2H d)、7.00(2H br.s)、6.77(8H d)3.78(12H s)
【化19】

【0048】
上記の中間体(VI)89mgをベンゼン35mlに溶解させ、フェリシアン化カリウム3.2gと水酸化カリウム1.4gを25mlの水に溶解させた溶液を窒素下遮光条件で加えて、室温で2時間撹拌して反応させた後に水層を分離してベンゼンで抽出し、溶媒を濃縮して固体を析出させた。析出した固体をエタノールに溶解させて再結晶を行ったがフォトクロミズムを示さない化合物[6]を86mg得た。NMRの分析及びマススペクトルによって化合物[6]の生成を確認した。尚、NMRの分析結果は下記の通りである。
1H‐NMR(500MHz CDCl3)δ8.06(2H d)、7.45(2H t)、7.42(8H d)、7,19(2H t)、6.99(2H d)、6.79(8H d)3.80(12H s)
FD-MS m/z=708(M+
【化20】

【0049】
<実施例1>
合成例1で合成した化合物[I]を含む混合物を用いて1.0×10−3Mのベンゼン溶液を調製した。この溶液を四面石英セルに入れ、可視光を25℃で30秒時間照射した。
そして、可視光を引き続き照射したまま、紫外可視吸収スペクトル分析によって化合物[1](消色体)のスペクトルを測定した。結果を表1及び図3に示す。尚、図3において、実線は化合物[1]のスペクトルを示すものである。
続いて、上記化合物[1]を含むベンゼン溶液について、光照射を止め、遮光下、25℃で1日間放置した。そして、その状態のベンゼン溶液について、紫外可視吸収スペクトル分析によってスペクトルを測定した。結果を表1及び図3に示す。尚、結果は、図3において破線で示した。上記ベンゼン溶液は、NMR分析から、メトキシ基とメチル基の特徴的なピークを持ち、UVスペクトル分析から496nmに特徴的な吸収帯を持っていた。このことから、上記ベンゼン溶液が化合物[I]を含むことは明らかと考えられる。
表1及び図3に示すように、発色体の最大吸収波長496nmにおける消色体の透過率は、遮光状態で放置することで、93%から60%まで低下することが分かった。
【0050】
<実施例2>
合成例2で合成した化合物[II]を用いて2.0×10−4Mのベンゼン溶液を調製した。この溶液を四面石英セルに入れ、可視光を25℃で30秒時間照射した。
そして、可視光を引き続き照射したまま、紫外可視吸収スペクトル分析によって化合物[2](消色体)のスペクトルを測定した。結果を表1及び図4に示す。尚、図4において、実線は化合物[2]のスペクトルを示すものである。
続いて、上記化合物[2]を含むベンゼン溶液について、光照射を止め、遮光下、25℃で間10分間放置した。そして、その状態のベンゼン溶液について、紫外可視吸収スペクトル分析によってスペクトルを測定した。結果を表1及び図4に示す。尚、結果は、図4において破線で示した。
表1及び図4に示すように、発色体の最大吸収波長493nmにおける化合物[2](消色体)の透過率は88%から17%まで低下していることが分かった。また、図4において破線で示すスペクトルは、化合物[II]のスペクトルと同様であった。このことから、化合物[2]は、遮光下で放置することにより、化合物[II]に変化することが分かった。
【0051】
<実施例3>
合成例3で合成した化合物[III]を用いて2.0×10−4Mのベンゼン溶液を調製した。この溶液を四面石英セルに入れ、可視光を25℃で30秒時間照射した。このとき、実施例2と同様のUVスペクトル変化が見られたことから下記化合物[3]の生成が確認された。
【化21】

そして、可視光を引き続き照射したまま、紫外可視吸収スペクトル分析によって化合物[3](消色体)のスペクトルを測定した。結果を表1及び図5に示す。尚、図5において、実線は化合物[3]のスペクトルを示すものである。
続いて、上記化合物[3]を含むベンゼン溶液について、光照射を止め、遮光下、25℃で10分間放置した。そして、その状態のベンゼン溶液について、紫外可視吸収スペクトル分析によってスペクトルを測定した。結果を表1及び図5に示す。尚、結果は、図5において、破線で示した。
表1及び図5に示すように、発色体の最大吸収波長475nmにおける化合物[3](消色体)の透過率は73%から16%まで低下していることが分かった。また、図5において破線で示すスペクトルは、化合物[III]のスペクトルと同様であった。このことから、化合物[3]は、遮光下で放置することにより、化合物[III]に変化することが分かった。
【0052】
<実施例4>
合成例4で合成した化合物[IV]を用いて2.0×10−4Mのベンゼン溶液を調製した。この溶液を四面石英セルに入れ、可視光を25℃で30秒時間照射した。このとき、合成例2と同様のUVスペクトル変化が見られたことから下記化合物[4]の生成が確認された。
【化22】

そして、可視光を引き続き照射したまま、紫外可視吸収スペクトル分析によって化合物[4](消色体)のスペクトルを測定した。結果を表1及び図6示す。尚、図6において、実線は化合物[4]のスペクトルを示すものである。
続いて、上記化合物[4]を含むベンゼン溶液について、光照射を止め、遮光下、25℃で10分間放置した。そして、その状態のベンゼン溶液について、紫外可視吸収スペクトル分析によってスペクトルを測定した。結果を表1及び図6に示す。尚、結果は、図6において、破線で示した。
表1及び図6に示すように、発色体の最大吸収波長544nmにおける化合物[4](消色体)の透過率は74%から23%まで低下していることが分かった。また、図5において破線で示すスペクトルは、化合物[IV]のスペクトルと同様であった。このことから、化合物[4]は、遮光下で放置することにより、化合物[IV]に変化することが分かった。
【0053】
<実施例5>
合成例5で合成した化合物[V]を用いて2.0×10−4Mのベンゼン溶液を調製した。この溶液を四面石英セルに入れ、可視光を25℃で30秒時間照射した。このとき、合成例2と同様のUVスペクトル変化が見られたことから下記化合物[5]の生成が確認された。
【化23】

そして、可視光を引き続き照射したまま、紫外可視吸収スペクトル分析によって化合物[5](消色体)のスペクトルを測定した。結果を表1及び図7に示す。尚、図7において、実線は化合物[5]のスペクトルを示すものである。
続いて、上記化合物[5]を含むベンゼン溶液について、光照射を止め、遮光下、25℃で10分間放置した。そして、その状態のベンゼン溶液について、紫外可視吸収スペクトル分析によってスペクトルを測定した。結果を表1及び図7に示す。尚、結果は、図7において破線で示した。
表1及び図7に示すように、発色体の最大吸収波長486nmにおける消色体の透過率は74%から39%まで低下していることが分かった。また、図7において破線で示すスペクトルは、化合物[V]のスペクトルと同様であった。このことから、化合物[5]は、遮光下で放置することにより、化合物[V]に変化することが分かった。
【0054】
<比較例1>
合成例6で合成した化合物[6]を用いて2.0×10−4Mのベンゼン溶液を調製した。このベンゼン溶液を四面石英セルに入れ、可視光を25℃で30秒時間照射した。
そして、可視光を引き続き照射したまま、紫外可視吸収スペクトル分析によって上記ベンゼン溶液についてスペクトルを測定した。結果を表1及び図8に示す。尚、結果は、図8において、実線で示した。
続いて、上記化合物[6]を含むベンゼン溶液について、光照射を止め、遮光下、25℃で10分間放置した。そして、その状態のベンゼン溶液について、紫外可視吸収スペクトル分析によってスペクトルを測定した。結果を表1及び図8に示す。尚、結果は、図8において破線で示した。
表1及び図8に示すように、500nmにおける消色体の透過率は93%から変化しないことが分かった。このことから、化合物[6]は、遮光下で放置しても、何ら変化しないことが分かった。
【表1】

【0055】
表1に示す結果より、一般式(1)で表されるビイミダゾール化合物のRおよびRに立体的に嵩高い置換基を導入することで、フォトクロミズムが発現する分子が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のフォトクロミック材料は、遮光下で放置することで、透過率を大きく下げるフォトクロミック特性を示す。この特性を利用して、これまで応用が提案されてきた光スイッチ、印刷用材料、記録材料などの分野で利用できる。例えば、光メモリ素子のマスク層材料として用いれば、再生信号を劣化させることなく高密度記録されたビットから良好な再生信号を得ることが可能となる。しかも、本発明の分子は従来のフォトクロミズムを示す分子と全く構造が異なるので、フォトクロミズムを利用したデバイス開発に新しい選択肢を提供する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるビイミダゾール化合物からなることを特徴とするフォトクロミック材料。
【化1】

(式中、R及びRはそれぞれ独立してハロゲン原子又はアルキル基を示し、R〜R及びR〜Rはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、フルオロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボニル基、アルキルカルボニル基、ニトロ基、シアノ基又はアリール基を示す。Ar〜Arはそれぞれ独立して置換又は無置換のアリール基を示す。Rは、Rと共に、縮合した置換又は無置換のアリール環を形成してもよく、Rは、Rと共に、縮合した置換又は無置換のアリール環を形成してもよい。)
【請求項2】
前記一般式(1)中、R及びRがメチル基である請求項1に記載のフォトクロミック材料であって、下記一般式(2)で表されることを特徴とするフォトクロミック材料。
【化2】

(式中R〜R及びR〜Rはそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、フルオロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボニル基、アルキルカルボニル基、ニトロ基、シアノ基又はアリール基を示す。Ar〜Arはそれぞれ独立して置換又は無置換のアリール基を示す。)
【請求項3】
前記一般式(1)中、Rは、Rと共に、縮合した置換又は無置換のベンゼン環を形成し、Rは、Rと共に、縮合した置換又は無置換のベンゼン環を形成する請求項1に記載のフォトクロミック材料であって、下記一般式(3)で表されることを特徴とするフォトクロミック材料。
【化3】

(式中R〜R及びR〜R14はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、フルオロアルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、カルボニル基、アルキルカルボニル基、ニトロ基、シアノ基又はアリール基を示す。Ar〜Arはそれぞれ独立して置換又は無置換のアリール基を示す。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−214673(P2012−214673A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181089(P2011−181089)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】