説明

フォトクロミック重合可能組成物

【課題】疲労耐性を増強し、性能を改善したフォトクロミック材料を提供すること。
【解決手段】光互変性量の少なくとも1つのフォトクロミック化合物、少なくとも1つのカーボネート基および少なくとも1つのヒドロキシル基を有する少なくとも1つの物質、ならびに少なくとも1つの不飽和基を有する少なくとも1つのモノイソシアネート含有物質の重合可能組成物が記載される。重合可能組成物は、必要に応じて、共重合性モノマーを含有する。フォトクロミック重合物(例えば、フォトクロミック光学素子(例えば、本発明の重合可能組成物から作製された眼内レンズ))もまた、記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2001年11月1日に出願された仮出願番号60/335,871に対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
本発明は、少なくとも1種の重合可能材料のフォトクロミック組成物および少なくとも1種のフォトクロミック化合物の光互変性量に関する。この重合可能な組成物は、必要に応じて、他の共重合可能モノマーを含む。フォトクロミック化合物は、重合前または重合物が形成された後に、この組成物に添加され得る。本発明はまた、フォトクロミック重合物およびフォトクロミック物品に関する。
【0003】
フォトクロミズムは、紫外線を含む光放射に曝されたときの、フォトクロミック化合物、またはこのような化合物を含む物品の色の可逆的変化、およびこの紫外線放射の影響が中断されたときの、原色への転換に関する現象である。紫外線を含む光放射源としては、例えば、日光および水銀灯の光が挙げられる。紫外線放射の中断は、例えば、フォトクロミック化合物またはフォトクロミック物品を暗闇で保存することまたは紫外線放射源を(例えば、フィルタリング手段によって)取り除くことによって、達成され得る。
【0004】
種々の型のフォトクロミック化合物によって示される色の可逆的変化(すなわち、光の可視範囲(400〜700nm)における吸収スペクトルの変化)を担う一般的な機構が、記載および分類されている。John C.Crano「Chromogenic Materials(Photochromic)」Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology,第4版、1993,pp.321−332を参照のこと。フォトクロミック化合物の最も一般的なクラス(例えば、インドリンスピロピランおよびインドリンスピロオキサジン)についての一般的な機構は、電子環状機構を含む。放射線に曝された場合、これらの化合物は、無色の閉環化合物から有色の開環種に転換される。対照的に、有色形態のフルギドフォトクロミック化合物は、無色開環形態の有色閉環形態への転換を含む電子環状機構によって生成される。
【0005】
前記の電子環状機構において、フォトクロミック化合物は、これらのフォトクロミック化合物が可逆的に転換することができる環境を必要とする。固形ポリマーマトリクスにおいて、フォトクロミックの活性化プロセス(すなわち、有色または暗色、および退色の形成(すなわち、本来の状態または無色の状態に戻ること))は、ポリマーマトリクス中の遊離容量に依存すると考えられる。ポリマーマトリクスの遊離容量は、フォトクロミック化合物周囲のポリマー環境の鎖部分の可動性(すなわち、マトリクスを含む鎖部分の局所移動度および局所粘度)に依存する。Claus D.Eisenbach「New Aspects of Photochromism in Bulk Polymers」Photographic Science and Engineering,1979,pp.183−190を参照のこと。フォトクロミック系の多数の商業的な適用について、Claus D.Eisenbachによって報告された主要な障壁のうちの1つは、固体ポリマーマトリクス中でのフォトクロミック活性化の速度の遅さおよび衰退である。
【0006】
近年、フォトクロミックプラスチック材料は、それらの材料がガラス製の眼用レンズに対して提供し得る重量平均に一部起因して、かなりの注目の対象となっている。さらに、媒体(例えば、自動車および飛行機)についてのフォトクロミックの透明度は、興味深い。これは、このような透明度が与える可能性のある安全機能に起因している。
【0007】
ポリマーマトリクス中のフォトクロミック化合物の活性化速度の遅さおよび衰退に加えて、プラスチック材料と組み合わせたフォトクロミック有機化合物の広範な商業的使用に対するさらなる欠点は、紫外(UV)線に長期間繰返し曝された結果として色の可逆的変化を示すフォトクロミック化合物の能力の喪失である。この現象は、フォトクロミック有機化合物の不可逆的分解の結果であると考えられ、これは、疲労と呼ばれる。
【0008】
いくらかの進歩が、疲労耐性の増強およびフォトクロミック材料の性能の改善に対してなされてきたが、疲労耐性における、さらなる改善(わずかな漸進的改善でさえも)および/またはフォトクロミックポリマー材料の性能の改善が、依然として求められている。それゆえ、このような改善を得るための努力が続けられている。
【0009】
ポリマー組成物(例えば、(メタ)アクリレート)と組み合わせたフォトクロミック化合物の使用は公知であるが、本発明の重合可能組成物のフォトクロミック化合物との使用は、開示されていない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の詳細な説明)
上記目的を達成するために、本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
重合可能組成物であって、該重合可能組成物は、
光互変性量の少なくとも1つのフォトクロミック化合物、
少なくとも1つのカーボネート基および少なくとも1つのヒドロキシル基を含む少なくとも1つの物質、ならびに
少なくとも1つの不飽和基を有する少なくとも1つのモノイソシアネート含有物質、
を含有し、該重合可能組成物は、少なくとも部分的に硬化された場合、促進風化フォトクロミックパーセント明所疲労試験において、フォトクロミック化合物のパーセント疲労を減少させるように適合される、
重合可能組成物。
(項目2)
項目1に記載の重合可能組成物であって、ここで、前記少なくとも1つのフォトクロミック化合物は、クロメン、スピロピラン、オキサジン、水銀ジチゾネート、フルギド、フルギミド、またはこれらの混合物から選択される、重合可能組成物。
(項目3)
項目1に記載の重合可能組成物であって、ここで、前記少なくとも1つの不飽和基は、アリル基、(メタ)アクリル基、ビニル基、またはこれらの混合物から選択される、重合可能組成物。
(項目4)
項目3に記載の重合可能組成物であって、ここで、前記少なくとも1つの不飽和基は、(メタ)アクリル基である、重合可能組成物。
(項目5)
項目1に記載の重合可能組成物であって、ここで、前記少なくとも1つのカーボネート基および少なくとも1つのヒドロキシル基を含む少なくとも1つの物質が、ポリカーボネートポリオールである、重合可能組成物。
(項目6)
少なくとも1つの他の共重合性モノマーをさらに含む、項目1に記載の重合可能組成物。
(項目7)
項目6に記載の重合可能組成物であって、ここで、前記少なくとも1つの他の共重合性モノマーが、(メタ)アクリルモノマーである、重合可能組成物。
(項目8)
以下を含有する重合可能組成物:
(a)ポリオールとイソシアネートとの反応生成物であって、該ポリオールは、少なくとも1つのカーボネート基を含み、該イソシアネートが、1つの反応性イソシアネート基および少なくとも1つの重合性二重結合を含む、反応生成物;ならびに
(b)光互変性量の少なくとも1つのフォトクロミック化合物。
(項目9)
(c)(a)と共重合性の少なくとも1つの他のモノマーをさらに含有する、項目8に記載の重合可能組成物。
(項目10)
項目8に記載の重合可能組成物であって、ここで、前記反応生成物(a)が、以下の式:
【化1】

によって示され、
ここで、R’は、少なくとも1つのカーボネート基を含むポリオールの残基であり、Rは、水素またはメチルであり、Eは、−NH−であり;Xは、直鎖アルキレンまたは分枝鎖アルキレン、直鎖ポリオキシアルキレンまたは分枝鎖ポリオキシアルキレン、環状アルキレン、フェニレン、ポリオールの残基およびC−Cアルキル置換フェニレンから選択される二価の結合であり、そしてiは、2〜6の整数から選択される、
重合可能組成物。
(項目11)
項目8に記載の重合可能組成物であって、ここで、前記(a)のイソシアネートが、以下:
(a)以下の式:
CH=C(R)−C(O)OX−N=C=O
によって示されるイソシアネートであって、
ここで、Rは、水素またはメチルであり、そしてXは、直鎖アルキレンもしくは分枝鎖アルキレン、直鎖ポリオキシアルキレンもしくは分枝鎖ポリオキシアルキレン、環状アルキレン、フェニレン、ポリオールの残基またはC−Cアルキル置換フェニレンから選択される二価の結合である、イソシアネート;
(b)m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート;
(c)ビニルエーテル基を含む少なくとも1つのアクリル官能基性モノマーとイソシアン酸との反応生成物;あるいは
(d)これらの混合物
から選択される、重合可能組成物。
(項目12)
項目11に記載の重合可能組成物であって、ここで、前記イソシアネートが、イソシアナトエチルメタクリレート;m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート;1−(2−メタクリルオキシエトキシ)エチルイソシアネート;またはこれらの混合物から選択される、重合可能組成物。
(項目13)
項目8に記載の重合可能組成物であって、ここで、前記少なくとも1つのカーボネート基を含むポリオールは、以下の式:
【化2】

によって示されるポリカーボネートポリオールであり、
ここで、RおよびRは、二価の直鎖アルキレン基または分枝鎖アルキレン基、環状アルキレン基または二価C−C15芳香族基から各々について各々独立して選択され、そしてaは、1〜20から選択される整数である、
重合可能組成物。
(項目14)
項目13に記載の重合可能組成物であって、ここで、前記ポリカーボネートポリオールは、少なくとも1つのビス(クロロホルメート)と少なくとも1つのポリオールとの反応生成物である、重合可能組成物。
(項目15)
項目14に記載の重合可能組成物であって、ここで、前記ビス(クロロホルメート)は、モノエチレングリコールビス(クロロホルメート)、ジエチレングリコールビス(クロロホルメート)、プロパンジオールビス(クロロホルメート)、ブタンジオールビス(クロロホルメート)、ヘキサンジオールビス(クロロホルメート)、ネオペンチルジオールビス(クロロホルメート)、ビスフェノールAビス(クロロホルメート)またはこれらの混合物である、重合可能組成物。
(項目16)
項目14に記載の重合可能組成物であって、ここで、前記ポリオールは、ビスフェノールA;トリメチロールエタン;トリメチロールプロパン;ジ−(トリメチロールプロパン)ジメチロールプロピオン酸;エチレングリコール;プロピレングリコール;1,3−プロパンジオール;2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール;1,2−ブタンジオール;1,4−ブタンジオール;1,3−ブタンジオール;1,5−ペンタンジオール;2,4−ペンタンジオール;2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール;2−メチル−1,3−ペンタンジオール;2−メチル−1,5−ペンタンジオール;3−メチル−1,5−ペンタンジオール;1,6−ヘキサンジオール;2,5−ヘキサンジオール;2−エチル−1,3−ヘキサンジオール;1,4−シクロヘキサンジオール;1,7−ヘプタンジオール;2,4−ヘプタンジオール;1,8−オクタンジオール;1,9−ノナンジオール;1,10−デカンジオール;2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオネート;ジエチレングリコール;トリエチレングリコール;テトラエチレングリコール;ポリエチレングリコール;ジプロピレングリコール;トリプロピレングリコール;ポリプロピレングリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール;1,2−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン;1,2−ビス(ヒドロキシエチル)シクロヘキサン;1モルの2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわちビスフェノール−A)と2〜10モルのエチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはこれらの混合物とのアルコキシ化生成物;ポリ(オキシテトラメチレン)ジオールあるいはこれらの混合物である、重合可能組成物。
(項目17)
項目9に記載の重合可能組成物であって、ここで、(a)は、該組成物中の非フォトクロミックモノマーの全重量に基づいて、少なくとも5重量%〜95重量%未満で存在する、重合可能組成物。
(項目18)
項目8に記載の重合可能組成物であって、ここで、反応生成物(a)は、2000より大きな数平均分子量を有する、モノマーである、重合可能組成物。
(項目19)
項目9に記載の重合可能組成物であって、ここで、少なくとも1つの他の共重合性モノマーが、以下:
(a)以下の式:
【化3】

によって示されるラジカル重合性モノマーであって、
ここで、Rは、ポリオールの多価残基であり、Rは、水素またはメチルであり、iは、2〜6の整数から選択され、そして、Xは、直鎖アルキレンもしくは分枝鎖アルキレン、直鎖ポリオキシアルキレンもしくは分枝鎖ポリオキシアルキレン、環状アルキレン、フェニレン、ポリオールの残基またはC−Cアルキル置換フェニレンから選択される二価の結合基である、ラジカル重合性モノマー;
(b)以下の式:
【化4】

によって示されるラジカル重合性モノマーであって、
ここでmおよびnは、0〜6の整数から各々独立して選択され、mとnとの和は、0〜6であり、RおよびR10は、水素またはメチルから各々独立して選択され、R11およびR12は、水素またはC〜Cアルキルから、各々について各々独立して選択され、そしてBは、直鎖アルキレンもしくは分枝鎖アルキレン、フェニレン、C−Cアルキル置換フェニレン、または以下の式:
【化5】

によって示される基から選択される二価の結合基であり、
ここで、R15およびR16は、C−Cアルキル、塩素または臭素から各々について各々独立して選択され、pおよびqは、0〜4の整数から各々独立して選択され、
【化6】

は、二価ベンゼン基または二価シクロヘキサン基を示し、
【化7】

が、二価ベンゼン基である場合、Dは、−O−、−S−、−S(O)−、−C(O)−、−CH−、−CH=CH−、−C(CH−、−C(CH)(C)−または
【化8】

であり、そして
【化9】

が、二価シクロヘキサン基である場合、Dは、−O−、−S−、−CH−、または−C(CH−である、ラジカル重合性モノマー;
(c)以下の式:
【化10】

によって示されるラジカル重合性モノマーであって、
ここで、oおよびuは、正数から各々独立して選択され、oとuとの和は、7〜70であり、R、R10、R11、R12およびBは、前記に定義されるものと同じである、ラジカル重合性モノマー;
(d)以下の式:
【化11】

によって示されるラジカル重合性モノマーであって、
ここでR、RおよびR11は、前記に定義されるものと同じであり、dは、0〜20の整数から選択され、そしてjは、3〜6の数から選択される、ラジカル重合性モノマー;
(e)ポリカーボネートポリオールポリクロロホルメートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応生成物;
(f)ポリカーボネートポリオールと塩化(メタ)アクリロイルとの反応生成物;
(g)モノエチレン性不飽和である、ラジカル重合性モノマー;
(h)少なくとも2つのアリル基を有するアリル官能性モノマーである、ラジカル重合性モノマーであって、但し、該アリル官能性モノマーは、モノマーの全重量に基づいて、5重量%を超過しないレベルで使用される、ラジカル重合性モノマー;あるいは、
(i)これらの混合物、
から選択される、重合可能組成物。
(項目20)
項目19に記載の重合可能組成物であって、ここで、以下:
(a)Rは、脂肪族ポリオール、脂環式ポリオール、芳香族ポリオールまたは少なくとも2つのヒドロキシ基を含むエステル基を含むポリオールから選択されるポリオールの多価残基であり、iは、2であり、Xは、直鎖アルキレンまたは分枝鎖アルキレンであり;(b)RおよびR10は、各々メチルであり、R11およびR12は、各々水素であり、p、q、rおよびsは、各々0であり、Dは、−C(CH−であり、そしてmとnとの和は、0〜4であり;
(c)oとuとの和は、10〜30であり、
(d)Rは、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールの残基であり、dは、3〜15であり;
(e)ポリカーボネートポリオールとポリクロロホルメートとの反応生成物;
(f)ポリカーボネートポリオールと塩化メタクリロイルとの反応生成物;
(g)前記モノエチレン性不飽和のモノマーは、(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、ビニル芳香族モノマー、ビニルハライド、ビリニデンハライド、ビニルエステル、(メタ)アクリルオキシプロピルトリ(C−C)アルコキシシラン(メタ)アクリル酸またはこれらの混合物であり;
(h)前記アリル官能性モノマーが、以下:
(i)以下の式:
17−[−O−C(O)O−R18
によって示されるアリル官能基性モノマーであって、
ここでR17は、1,2−エタンジオールジエチレングリコールまたは1,2−プロパンジオールから選択されるジオールの二価残基であり、そしてR18は、アリル基である、アリル官能基性モノマー
(ii)以下の式:
【化12】

によって示されるアリル官能性モノマーであって、
ここでR15およびR16は、各々の存在についてC−Cアルキル、塩素または臭素から各々独立して選択され、pおよびqは、0〜4の整数から各々独立して選択され、そして−A−は、−O−、−S−、−S(O)−、−C(O)−、−CH−、−CH=CH−、−C(CH−、−C(CH)(C)−または
【化13】

から選択される二価結合基であり、そしてR18は、アリル基である、アリル官能基性モノマー
(iii)以下の式:
【化14】

によって示されるアリル官能基性モノマーであって、ここでR18は、アリル基である、アリル官能基性モノマー;あるいは
(iv)(i)、(ii)および(iii)の少なくとも2つの混合物、
である、重合可能組成物。
(項目21)
項目19に記載の重合可能組成物であって、
(a)ここで、Rは、以下の式:
−(Y−(C(O)(−CR−CHR−O)−H)
によって示されるポリオールの残基であり、
ここで:Yは、−O−または−NR−であり、そしてRは、水素またはC−C12アルキルであり;Rは、開始剤に由来する有機ラジカルであり、R、RおよびRは、各々の存在について、水素、C−C12アルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cアルコキシ、ベンジルまたはフェニルから各々独立して選択され、但し、R、RおよびRの全数の少なくともh+2は、水素であり、文字hは、1〜6の整数から選択され;tは、1〜100の整数から選択され;そしてyは、2〜6に等しい整数から選択される、
重合可能組成物。
(項目22)
項目19に記載の重合可能組成物であって、
(a)ここで、Rは、少なくとも1つのジオールと少なくとも1つのラクトンとの反応生成物の残基であり;該ジオールは、2〜20個の炭素原子を有する直鎖脂肪族ジオールまたは分枝鎖脂肪族ジオール、ポリ(C−C)アルキレングリコール、環式環に5〜8個の炭素原子を有する脂環式ジオール、単環式芳香族ジオール、ビスフェノール、水素化ビスフェノール、あるいはこれらの混合物であり;該ラクトンは、β−プロピオラクトン;γ−ブチロラクトン;β−ブチロラクトン;δ−バレロラクトン;α−メチル−γ−ブチロラクトン;β−メチル−γ−ブチロラクトン;γ−バレロラクトン;ε−カプロラクトン;モノメチル−ε−カプロラクトン;モノエチル−ε−カプロラクトン;モノプロピル−ε−カプロラクトン;モノドデシル−ε−カプロラクトン;メトキシ−ε−カプロラクトン;エトキシ−ε−カプロラクトン;シクロヘキシル−ε−カプロラクトン;フェニル−ε−カプロラクトン;ベンジル−ε−カプロラクトン;ζ−エナトラクトン;η−カプリラクトンまたはこれらの混合物である、
重合可能組成物。
(項目23)
少なくとも一部硬化された組成物のフォトクロミック重合物であって、該組成物は、成分として、
光互変性量の少なくとも1つのフォトクロミック化合物、
少なくとも1つのカーボネート基および少なくとも1つのヒドロキシル基を含む少なくとも1つの物質、ならびに
少なくとも1つの不飽和基を有する少なくとも1つのモノイソシアネート含有物質、
を含有し、
ここで、該少なくとも部分的に硬化されたフォトクロミック重合物は、促進風化フォトクロミックパーセント明所疲労試験において、フォトクロミック化合物のパーセント疲労を減少させるように適合される、
フォトクロミック重合物。
(項目24)
前記組成物が、少なくとも1つの他の共重合性モノマーをさらに含む、項目23に記載の少なくとも一部硬化された組成物のフォトクロミック重合物。
(項目25)
前記少なくとも1つの他の共重合性モノマーが、(メタ)アクリルモノマーである、項目24に記載の少なくとも一部硬化された組成物のフォトクロミック重合物。
(項目26)
成分として以下を含有する少なくとも一部硬化された組成物のフォトクロミック重合物:
(a)ポリオールとイソシアネートとの反応生成物であって、該ポリオールは、少なくとも1つのカーボネート基を含み、該イソシアネートが、1つの反応性イソシアネート基および少なくとも1つの重合性二重結合を含む、反応生成物;ならびに
(b)光互変性量の少なくとも1つのフォトクロミック化合物。
(項目27)
(c)前記組成物が、(a)と共重合性の少なくとも1つの他のモノマーをさらに含有する、項目26に記載の少なくとも一部硬化された組成物のフォトクロミック重合物。
(項目28)
前記少なくとも1つの他の共重合性モノマーが、(メタ)アクリルモノマーである、項目27に記載の少なくとも一部硬化された組成物のフォトクロミック重合物。
(項目29)
前記重合物が、光学素子である、項目26に記載の少なくとも一部硬化された組成物のフォトクロミック重合物。
(項目30)
少なくとも一部硬化された組成物の重合物を含むフォトクロミック物品であって、該フォトクロミック物品は、
少なくとも1つのカーボネート基および少なくとも1つのヒドロキシル基を含む少なくとも1つの物質、ならびに
少なくとも1つの不飽和基を有する少なくとも1つのモノイソシアネート含有物質、
を含有し、該重合物は、フォトクロミック有効量の少なくとも部分的に吸収されたフォトクロミック材料を有し、該フォトクロミック物品は促進風化フォトクロミックパーセント明所疲労試験において、フォトクロミック化合物のパーセント疲労を減少させるように適合される、
フォトクロミック物品。
(項目31)
少なくとも一部硬化された組成物の重合物を含むフォトクロミック物品であって、
該フォトクロミック物品は、ポリオールとイソシアネートとの反応生成物であって、該ポリオールは、少なくとも1つのカーボネート基を含み、該イソシアネートが、1つの反応性イソシアネート基および少なくとも1つの重合性二重結合を含む、反応生成物を含み、該重合物は、フォトクロミック有効量の少なくとも部分的に吸収されたフォトクロミック物質を有する、フォトクロミック物品。
(項目32)
項目31に記載のフォトクロミック物品であって、ここで、前記少なくとも一部硬化された組成物の重合物が、少なくとも1つの他の共重合性モノマーをさらに含む、フォトクロミック物品。
本発明の1つの非限定的な実施形態において、以下を含有する重合可能組成物が提供される:光互変性量の少なくとも1種のフォトクロミック化合物、少なくとも1個のカーボネート基および少なくとも1個のヒドロキシル基を有する少なくとも1種の材料、ならびに少なくとも1個の不飽和基を有する少なくとも1種のモノイソシアネート含有材料。この組成物は、必要に応じて、他の共重合可能モノマーを含有し得る。
【0011】
さらなる非限定的な実施形態において、本発明の重合可能組成物は、少なくとも部分的に硬化された場合、Accelerated Weathering Photochromic Percent Photopic Fatigue Test(AWPPPF試験)においてフォトクロミック化合物の低下したパーセント明所疲労(percent photopic fatigue)を提供するように適合される。このAWPPPF試験は、本明細書中で実施例15に記載されている。この試験において、本発明の重合可能な組成物および他の重合可能な組成物は、メタクリル酸コーティング組成物の成分として、フォトクロミック性能およびフォトクロミック疲労について試験される。
【0012】
本発明の別の非限定的な実施形態において、以下の成分(a)〜(c)を含有する重合可能組成物が提供される:成分(a)少なくとも1個のカーボネート基を含むポリオールと、少なくとも1個の反応性イソシアネート基および少なくとも1個の重合可能な二重結合を含むイソシアネートとの反応生成物;必要に応じて、成分(b)成分(a)と共重合可能な、少なくとも1個の他のモノマー;ならびに、成分(c)光互変性量の少なくとも1種のフォトクロミック化合物。
【0013】
1つの非限定的な実施形態において、本発明の重合可能な組成物が重合可能なフォトクロミック組成物(例えば、メタクリル酸コーティング組成物)において使用される場合、本明細書中で実施例15において記載されている、AWPPPF試験において記載されるフォトクロミック化合物のパーセント疲労は低下するということが、予想外に見出された。本発明の重合可能な組成物は、ウレタン基を有さないポリカーボネートベースのジメタクリル酸モノマーと比較して、上で言及したAWPPPF試験においてフォトクロミック化合物のより低量のパーセント疲労を示すこともまた、見出された。
【0014】
本発明の種々の非限定的な実施形態において、任意の成分(b)の正確な性質は、本発明の重合可能な組成物と共重合可能であること以外は、重要ではない。本発明は、本明細書中で記載および主張されているフォトクロミック重合可能な組成物に関する場合、任意の共重合可能モノマーが使用され得る。
【0015】
1つの非限定的な実施形態において、成分(b)の共重合可能モノマーは、以下の(a)〜(i)より選択され得る:
(a)以下の式:
【0016】
【化15】

によって表されるラジカル重合可能モノマーであって、式中、Rは、ポリオールの多価残基であり、Rは、水素またはメチルであり、iは、2〜6の整数から選択され、そしてXは、直鎖または分枝鎖のアルキレン、直鎖または分枝鎖のポリオキシアルキレン、環状アルキレン、フェニレン、ポリオールの残基またはC〜Cアルキル置換フェニレンから選択される二価の連結基である、モノマー;
(b)以下の式:
【0017】
【化16】

によって表されるラジカル重合可能なモノマーであって、式中、mおよびnは、各々独立して、0〜6の整数から選択され、mおよびnの合計は、0〜6であり、RおよびR10は、各々独立して、水素またはメチルから選択され、R11およびR12は、各々独立して、水素またはC〜Cアルキルから選択され、そしてBは、直鎖または分枝鎖のアルキレン、フェニレン、C〜Cアルキル置換フェニレン、または以下の式:
【0018】
【化17】

によって表される基から選択される二価の連結基であり、式中、R15およびR16は、各々独立して、各存在について、C〜Cアルキル、塩素または臭素から選択され、pおよびqは、各々独立して、0〜4の整数から選択され、
【0019】
【化18】

は、二価のベンゼン基または二価のシクロヘキサン基を表し、そして
【0020】
【化19】

が二価のベンゼン基である場合、Dは、−O−、−S−、−S(O)−、−C(O)−、−CH−、−CH=CH−、−C(CH−、−C(CH)(C)−、または
【0021】
【化20】

であり、そして、
【0022】
【化21】

が二価のシクロヘキサン基である場合、Dは、−O−、−S−、−CH−、または−C(CH−である、モノマー;
(c)以下の式:
【0023】
【化22】

によって表されるラジカル重合可能なモノマーであって、式中、oおよびuは、各々独立して、正の数から選択され、oおよびuの合計は、7〜70であり、R、R10、R11、R12およびBは、本明細書中で以前に規定したとおりである、モノマー;
(d)以下の式:
【0024】
【化23】

によって表されるラジカル重合可能なモノマーであって、式中、R、RおよびR11は、本明細書中で以前に規定したとおりであり、dは、0〜20の数から選択され、そしてjは、3〜6の数から選択される、モノマー;
(e)ポリカーボネートポリオールポリクロロホルメートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応生成物;
(f)ポリカーボネートポリオールと(メタ)アクリロイルクロリドとの反応生成物;
(g)モノエチレン性不飽和である、ラジカル重合可能なモノマー;
(h)少なくとも2個のアリル基を有するアリル官能性モノマーであるラジカル重合可能なモノマーであるが、但しこのアリル官能性モノマーは、このモノマーの総量に基づいて、5重量%を超えないレベルで使用される、モノマー;あるいは、
(i)それらの混合物。
【0025】
種々の非限定的な実施形態において、本発明の重合可能な組成物は、フォトクロミック重合物を作製するために使用され得、ここで、このフォトクロミック化合物は、重合前に、少なくとも部分的に硬化された重合物に添加され得るか、またはこのような方法の組み合わせによって添加される。
【0026】
本明細書中および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、1つの対象に対して明白かつ明快に限定されない限り、複数の対象を含むことに留意のこと。
【0027】
本明細書の目的のために、他に指示がなければ、本明細書および特許請求の範囲において使用される構成成分の発現量、反応条件などの全ての実数は、全ての例において、用語「約」によって修飾されることが理解されるべきである。従って、反対の指示がなければ、本明細書中以下および添付の特許請求の範囲で示される実数パラメーターは、本発明によって獲得されるべく探求される所望の特性に依存して変更され得る近似値である。最後に、そして特許請求の範囲の範囲に等価な原則の適用を制限しようとせず、各実数パラメーターは、少なくとも、報告されている有意な数字の数を考慮し、かつ一般的な概算(rounding)技術を適用することによって、解釈されるべきである。
【0028】
本発明の広範な範囲を示す実数範囲および実数パラメーターが近似値であるにもかかわらず、特定の例に記載される実数値は、可能な限り正確に報告されている。しかし、任意の実数値は、それぞれの試験測定値において見出される標準偏差から必要に応じて得られる特定の誤差を固有に含む。
【0029】
句「少なくとも部分的に硬化された重合物」とは、硬化可能成分または架橋可能成分が少なくとも部分的に硬化、架橋および/または反応された、重合可能な組成物をいう。本発明の特定の非限定的な実施形態において、反応成分の程度は、広範に(例えば、全てのありうる硬化可能、架橋可能および/または反応可能な成分の5%〜100%)で変更され得る。
【0030】
モノマー、重合物およびフォトクロミック化合物を調製するための方法を記載する、本明細書中で欄番号および行番号または特定の引用によって引用される、関連する出願、特許および論文の開示は、その全体が本明細書中で参考として援用される。
【0031】
用語「ポリオール」は、本明細書中で、2個以上のヒドロキシル基を有する多価アルコールとして定義されるが、他に指示がなければ、実質的にカーボネート基を有さない。ポリオールの残基またはポリオールから誘導されるラジカルは、ヒドロキシル基のポリオールからの除去の後に残存しているものである。用語「アルキレン」は、直鎖(linear chain)(すなわち、直鎖(straight chain))、または分枝鎖の後にくる場合、2〜20個の炭素原子を有する炭化水素として本明細書中で定義される。用語「オキシアルキレン」は、2〜4個の炭素原子および1個の酸素原子を有する炭化水素として本明細書中で定義される。「オキシアルキレン基」に関して、オキシアルキレンの数は、式中に含まれそして例えば、0〜6の整数または実数であるとして記載され、部分数(例えば、1.1または5.9)は、特定化された範囲内に含まれることが、定義されている。用語「環状アルキレン」は、3〜7個の炭素原子を有する環状炭化水素基として、本明細書中で定義される。用語「メタ(アクリロイル)」は、アクリロイル基、メタクリロイル基、またはアクリロイル基とメタクリロイル基との組み合わせとして、本明細書中で定義される。用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレート、またはアクリレートとメタクリレートとの組み合わせとして、本明細書中で定義される。用語「(メタ)アクリル」は、アクリル基、メタクリル基、またはアクリル基とメタクリル基との組み合わせとして、本明細書中で定義される。
【0032】
成分(a)および成分(b)の記載において、同じ英文字および同じ用語は、他に指示がなければ、同じ意味を有する。
【0033】
1つの非限定的な例において、本発明の重合可能な組成物は、以下の反応生成物である:少なくとも1個のカーボネート基および少なくとも1個のヒドロキシル基(例えば、アルコールまたはポリオールを含むカーボネート基)を含む少なくとも1種の材料、または少なくとも1個のカーボネート基および少なくとも1個のヒドロキシル基を含む(メタ)アクリル酸モノマー材料;少なくとも1個の不飽和基を有する少なくとも1種のモノイソシアネート含有材料(例えば、ビニルエーテル基を含む(メタ)アクリル酸モノマー材料とイソシアン酸との反応生成物);ならびに、光互変性量の少なくとも1種のフォトクロミック化合物。
【0034】
別の非限定的な例において、成分(a)(1個の反応性イソシアネート基および少なくとも1個の重合可能な二重結合を含むイソシアネートと、少なくとも1個のカーボネート基を含むポリオールとの反応生成物)は、以下の式:
【0035】
【化24】

によって表され得、式中、R’は、少なくとも1個のカーボネート基を含むポリオールの残基であり、Rは、水素またはメチルであり、Eは、−NH−であり;Xは、直鎖または分枝鎖のアルキレン、直鎖または分枝鎖のポリオキシアルキレン、環状アルキレン、フェニレン、ポリオールの残基またはC〜Cアルキル置換フェニレンから選択される二価の連結基であり、そしてiは、2〜6の整数である。別の非限定的な実施形態において、R’は、少なくとも2個のカーボネート基を含むポリオールの残基である。
【0036】
1つの非限定的な実施形態において、成分(a)のポリカーボネートポリオールは、以下の式:
【0037】
【化25】

によって表され得、式中、RおよびRは、同じであっても異なっていてもよく、そして各々独立して、各存在について、二価の直鎖または分枝鎖のアルキレン基、環状アルキレン基または二価のC〜C15芳香族基(例えば、2,2−ジフェニレンプロパン)から選択され、そしてaは、1〜20の整数である。
【0038】
別の非限定的な実施形態において、上で言及した式のポリカーボネートポリオールは、米国特許第5,266,551号に記載されるように、少なくとも1個のビス(クロロホルメート)と少なくとも1個のポリオール(例えば、ジオール)との反応によって形成され得る。これらの成分のうちの1つは、得られるポリカーボネートポリオールの分子量を制限および制御するために、過剰に使用され得る。ポリカーボネート調製スキームの以下の非限定的な例示において示されるように、ジオールは過剰であり、末端基となる。
【0039】
(ポリカーボネート調製スキーム)
【0040】
【化26】

前記の調製スキームにおいて使用され得るビス(クロロホルメート)の例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:モノエチレングリコールビス(クロロホルメート)、ジエチレングリコールビス(クロロホルメート)、プロパンジオールビス(クロロホルメート)、ブタンジオールビス(クロロホルメート)、ヘキサンジオールビス(クロロホルメート)、ネオペンチルジオールビス(クロロホルメート)、ビスフェノールAビス(クロロホルメート)またはそれらの混合物。
【0041】
前記の調製スキームにおいて使用され得るポリオールの例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:ビスフェノールA;トリメチロールエタン;トリメチロールプロパン;ジ−(トリメチロールプロパン)ジメチロールプロピオン酸;エチレングリコール;プロピレングリコール;1,3−プロパンジオール;2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール;1,2−ブタンジオール;1,4−ブタンジオール;1,3−ブタンジオール;1,5−ペンタンジオール;2,4−ペンタンジオール;2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール;2−メチル−1,3−ペンタンジオール;2−メチル−1,5−ペンタンジオール;3−メチル−1,5−ペンタンジオール;1,6−ヘキサンジオール;2,5−ヘキサンジオール;2−エチル−1,3−ヘキサンジオール;1,4−シクロヘキサンジオール;1,7−ヘプタンジオール;2,4−ヘプタンジオール;1,8−オクタンジオール;1,9−ノナンジオール;1,10−デカンジオール;2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル−2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオネート;ジエチレングリコール;トリエチレングリコール;テトラエチレングリコール;ポリエチレングリコール;ジプロピレングリコール;トリプロピレングリコール;ポリプロピレングリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール;1,2−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン;1,2−ビス(ヒドロキシエチル)シクロヘキサン;1molの2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわち、ビスフェノール−A)と、2〜10molのエチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはこれらの混合物とのアルキル化生成物;ポリ(オキシテトラメチレン)ジオール、あるいはそれらの混合物。
【0042】
いくつかの非限定的な実施形態において、上記材料は、ポリカーボネートポリオールの種々の組成、鎖長および末端基を形成するように組み合わされ得る。例えば、ポリオールは、末端脂肪族ヒドロキシル基(例えば、ジエチレングリコール基)、フェノール末端基(例えば、ビスフェノールA基)、またはこのような末端ヒドロキシル基の混合物を有し得る。
【0043】
種々の非限定的な実施形態において、米国特許第4,131,731号、同第4,160,853号、同第4,891,421号、および同第5,143,997号に記載されるように、ポリカーボネートポリオールならびに少なくとも1つのカーボネート基および少なくとも1つのヒドロキシル基を含む物質が、ジアルキル、ジアリールまたはアルキレンカーボネートとポリオールとのエステル交換反応により調製され得る。そのようなカーボネートおよびヒドロキシル基を含む物質の他の例としては、以下:米国特許第4,533,729号に記載されるようなポリオールおよびホスゲンの反応により調製される生成物;および米国特許第5,527,879号に記載されるようなポリカーボネートポリオールと酸無水物またはジカルボン酸との反応により調製される生成物が挙げられる。市販されている生成物の例としては、EniChem Synthesis Milano製のポリカーボネートジオールのRAVECARB(登録商標)102−108シリーズおよびStahl USA製のPC 1122が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
1つの非限定の実施形態において、本発明の重合可能な組成物を生成するために使用されるモノイソシアネートは、一級イソシアネート基、二級イソシアネート基、三級イソシアネート基(これは、反応性イソシアネート基と呼ばれる)およびアリル、(メタ)アクリル、ビニルまたはこれらの混合物から選択される少なくとも1つの不飽和基を有する。別の非限定の実施形態において、不飽和基は、(メタ)アクリル基から選択される重合可能な二重結合を有する基である。
【0045】
一連の非限定の実施形態において、成分(a)のイソシアネートならびに少なくとも1つの不飽和基を含むモノイソシアネート物質は:
(1)以下の式で表されるイソシアネートであって:
CH=C(R)−C(O)OX−N=C=O
ここで、RおよびXは、前述のものと同じである、イソシアネート;
(2)m−イソプロペニル−α、α−ジメチルベンジルイソシアネート
(3)ビニルエステル基を含む少なくとも1つのアクリル官能性モノマーとイソシアン酸との反応生成物;または
(4)これらの混合物、
であり得る。
【0046】
1つの非限定の実施形態において、成分(a)を形成するための反応物として用いられ得るイソシアネートは、1つの反応性イソシアネート基および少なくとも1つの重合可能な二重結合を有する物質である。そのような化合物の非限定の例は、イソシアネートエチルメタクリレートである。非限定の例示により、そのような化合物を調製するための方法は、Thomas,Mary R.「Isocyanatoethyl Methacrylate:A Heterofunctional Monomer for Polyurethane and Vinyl Polymer Systems」、 Organic Coatings and Polymer Science Proceedings、Volume 46、pp.506−513、1982に開示されている。m−イソプロピル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートを調製するための非限定の方法は、米国特許第4,377,530号;同第4,379,767号;および同第4,439,616号に開示されている。さらなる非限定の例示により、ビニルエーテル基を含むアクリル酸官能性モノマーおよびイソシアン酸(例えば、1−(2−メタクリルオキシエトキシ)エチルイソシアネート)の反応生成物の調製のための方法は、Hoover,F.W.ら、「Chemistry of Isocyanic Acid.II.Reaction with α,β−Unsaturated Ethers」、Journal of Organic Chemistry、Volume 28、pp.
2082−2085、1963により開示されている。
さらなる非限定の実施形態において、本明細書中で定義される場合、成分(a)のイソシアネートは、「遊離」イソシアネート基、「ブロックされた」イソシアネート基または部分的にブロックされたイソシアネート基を有する、「改変された」または「改変されていない」イソシアネートを含み得る。イソシアネート含有化合物は、脂肪族、芳香族、環状脂肪族(cycloaliphatic)、複素環式イソシアネートまたはこれらの混合物から選択され得る。用語「改変された」とは、本明細書中で、前述のイソシアネート含有化合物がビウレット、尿素、カルボジイミド、ウレタンまたはイソシアヌレート基を導入するように既知の様式で変化することを意味すると定義される。イソシアネートを改変する他の方法は、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry、第五版、1989、Vol.A14、611〜625頁、および米国特許第4,442,145号、第2欄、63行目〜第3欄、31行目に記載されている。
【0047】
遊離のイソシアネート基は、不安定である(すなわち、このイソシアネート基は、水または反応性水素原子を含む化合物と反応する)。安定かつ貯蔵可能なイソシアネートおよび/またはイソシアネート含有化合物を提供するために、NCO基は、室温でこのイソシアネート基を反応性水素化合物に対して不活性にする特定の選択された有機化合物でブロックされ得る。上昇した温度(例えば、90〜200℃の間)へと加熱される場合、ブロックされたイソシアネートは、ブロッキング因子を放出し、そして元のブロックされていないかまたは遊離のイソシアネートと同様の様式で反応する。
【0048】
1つの非限定の実施形態において、これらのイソシアネートは、米国特許第3,984,299号、第1欄、1〜68行目、第2欄および第3欄、1行目〜15行目に記載されるように完全にブロックされ得るか、または米国特許第3,947,338号、第2欄、65行目〜第4欄、30行目に記載されるように、部分的にブロックされておりそしてポリマー骨格と反応する。本明細書中で使用される場合、NCO:OH比におけるNCOは、ブロッキング因子の放出後の、遊離イソシアネート含有化合物およびブロックされたかまたは部分的にブロックされたイソシアネート含有化合物の遊離または反応性のイソシアネートを表す。いくつかの場合において、ブロッキング因子の全てを除去することは不可能である。これらの状況において、ブロックされたイソシアネート含有化合物の大半は、所望のレベルの遊離NCOを達成するために用いられる。
【0049】
別の非限定の実施形態において、イソシアネート含有化合物は、脂肪族イソシアネート、環状脂肪族イソシアネート、芳香族イソシアネート、部分的にブロックされた脂肪族イソシアネート、部分的にブロックされた脂環式イソシアネート、部分的にブロックされた芳香族イソシアネート、またはこれらの混合物の化合物の改変された基または改変されていない基から選択される。別の非限定の例としては、このイソシアネートは、脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート、芳香族イソシアネートまたはこれらの混合物の改変された基から選択される。さらなる非限定の実施形態において、イソシアネート化合物は、改変されていない脂肪族イソシアネートである。
【0050】
一般的に、イソシアネートをブロックするために用いられる化合物は、活性水素原子を有する特定の有機化合物である。1つの非限定の実施形態において、例としては、揮発性アルコール、アミン、酸性エステル、ε−カプロラクタム、トリアゾール、ピラゾール、およびケトオキシム化合物が挙げられる。別の非限定の実施形態において、ブロッキング化合物は、以下からなる群より選択され得る:メタノール、t−ブタノール、フェノール、クレゾール、ノニルフェノール、ジイソプロピルアミン、マロン酸ジエチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、ε−カプロラクタム、3−アミノトリアゾール、1,2,4−トリアゾール、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、アセトンオキシム、メチルアミルケトオキシム、メチルエチルケトオキシムまたはこれらの混合物。さらなる非限定の実施形態において、ブロッキング化合物は、以下から選択される:メタノール、ジイソプロピルアミン、マロン酸ジエチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、1,2,4−トリアゾール、メチルエチルケトオキシム、アセトンオキシムまたはこれらの混合物。なおさらなる非限定の実施形態において、ブロッキング化合物は、メタノール、ジイソプロピルアミン、メチルエチルケトオキシム、1,2,4−トリアゾールまたはこれらの混合物である。
【0051】
1つの非限定の実施形態において、少なくとも1つの不飽和基を有するモノイソシアネート含有物質についての、少なくとも1つのカーボネート基および少なくとも1つのヒドロキシルを含む物質に対するNCO:OH比は1:1〜1:7(例えば、1:2〜1:6または1:2〜1:5)の範囲をとり得る。このNCO:OH比は、列挙される範囲(例えば、1:1.5〜1:6.9)を含め、これらの値の任意の組み合わせの間の範囲をとり得る。
【0052】
別の非限定の実施形態において、少なくとも1つのカーボネート基および少なくとも1つのヒドロキシル基を含む少なくとも1つの物質と少なくとも1つの不飽和基(例えば、成分(a))を有する少なくとも1つのモノイソシアネート含有物質との反応生成物の分子量は、広範に変化し得る。それは、この反応生成物を形成するのに用いられる最小限の数の要素の分子量である、約200グラム/モルから200,000のポリスチレン標準に基づく数平均分子量を有する巨大な重合種までの範囲をとり得る。例えば、この分子量は、500〜17,500のポリエチレングリコール標準に基づく数平均分子量範囲または1500〜100,000のポリスチレン標準に基づく数平均分子量の範囲をとり得る。反応生成物の分子量は、これらの値の任意の組み合わせの間の範囲(例えば、250グラム/モルの分子量〜150,000の数平均分子量)をとり得る。1つの企図される非限定の実施形態において、成分(a)の分子量は、2,000より大きい、ポリスチレン標準に基づく数平均分子量である。
【0053】
一連の非限定の実施形態において、成分(a)は、広範な範囲の量(例えば、重合可能な非フォトクロミック材料の総重量に基づき5重量%〜100重量%)で組成物中に存在し得る。成分(a)は、本発明の重合可能組成物中に、少なくとも5重量%(例えば、少なくとも20重量%、または少なくとも30重量%)の量で存在し得、この重量%は、重合可能な非フォトクロミック材料の総重量に基づく。成分(a)は、重合可能組成物中に、95重量%未満(例えば、75重量%未満、または50重量%未満)の量で存在し得、この重量%は、重合可能な非フォトクロミック材料の総重量に基づく。本発明の重合可能な組成物中に存在する成分(a)モノマーの量は、列挙された値(例えば、6重量%〜99重量%)を含む、これらの上限値および下限値の任意の組み合わせの間の範囲をとり得る。
【0054】
別の一連の非限定の実施形態において、最適な成分(b)の共重合可能なモノマーは、広範な範囲の量で、本発明の組成物中に存在し得る。共重合可能なモノマーは、少なくとも5重量%(例えば、少なくとも25重量%、または少なくとも50重量%)の量(これらの重量%は、この重合可能な非フォトクロミック材料の総重量に基づく)で、重合可能な組成物中に存在し得る。共重合可能なモノマーは、重合可能組成物中に、95重量%未満(例えば、80重量%未満、または70重量%未満)の量で存在し得、この重量%は、重合可能な非フォトクロミック材料の総重量に基づく。この重合可能な組成物中に存在する共重合可能なモノマーの量は、列挙された値(例えば、10重量%〜90重量%)を含む、これらの上限値および下限値の任意の組み合わせの間の範囲を取り得る。重合可能な非フォトクロミック材料の総重量に基づく、成分(a)および成分(b)の重量%は、100重量%を構成する。
【0055】
1つの非限定の実施形態において、本発明の重合可能な有機組成物の第一の共重合可能なモノマーは、直鎖または分枝鎖の、脂肪族ポリオール、脂環式ポリオール、芳香族ポリオールまたはエステル基を含むポリオールの(メタ)アクリロイル末端化カーボネート(例えば、脂肪族グリコールビス((メタ)アクリロイルカーボネート)モノマー、アルキリデンビスフェノールビス((メタ)アクリロイルカーボネート)モノマー、またはポリエステルビス((メタ)アクリロイルカーボネート)モノマー)として記載され得る。第一のモノマーの調製のための非限定の方法は、米国特許第5,965,680号に記載される手順である。
【0056】
【化27】

上記の式を参照して、Rは、ポリオールの多価残基であり、これは、脂肪族ポリオール、脂環式ポリオール、芳香族ポリオールまたは少なくとも2つのヒドロキシ基(例えば、3、4、5、または6つのヒドロキシル基)を含むエステル基を含むポリオールであり得る。2より多いヒドロキシ基を有するポリオールとしては、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジ−トリメチロールプロパン、ジ−トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、およびペンタエリスリトールが挙げられるが、これらに限定されない。Xは、本明細書において前で定義される二価連結基(linking group)であり、Rは、水素またはメチルである。1つの非限定の実施形態において、Rは、メチルであり、文字iは、2〜6の自然数である。別の非限定の実施形態において、iは、2である。
【0057】
一連の非限定の実施形態において、ポリオールのRは、2つのヒドロキシ基を含む残基である(すなわち、ジオール(例えば、グリコールまたはビスフェノール))である。脂肪族ポリオールは、直鎖または分枝鎖であり得、そして2〜20個の炭素原子を含む。1つの非限定の実施形態において、脂肪族ポリオールは、2〜4個の炭素原子を有するアルキレングリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール)および/またはポリ(C−C)アルキレングリコール(例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、トリブチレングリコールなど)である。
【0058】
さらなる非限定の実施形態において、Rがその残基であるポリオールもまた、1,3−ベンゼンジオール、1,4−ベンゼンジオール、ヒドロキシキノンビス(2−ヒドロキシエチルエーテル)または以下の式により表されるビスフェノールから選択され得:
【0059】
【化28】

ここで、R13およびR14は、各々の例について、各々、C〜Cアルキル、塩素または臭素から独立して選択され;pおよびqは、各々、0〜4の整数から独立して選択され;そして−A−は、−O−、−S−、−S(O)−、−C(O)−、−CH−、−CH=CH−、−C(CH−、−C(CH)(C)−または
【0060】
【化29】

から選択される二価の連結基である。
【0061】
なおさらなる非限定の実施形態において、Rが選択され得る脂環式ポリオールとしては、1,2−ジメタノールシクロヘキサン、1,3−ジメタノールシクロヘキサンもしくは1,4−ジメタノールシクロヘキサン、またはビスフェノールの水素化バージョン(例えば、本明細書中でさらに記載されるビスシクロヘキサノール)が挙げられる。Rが選択されるビスシクロヘキサノールの非限定の例は、4,4’−イソプロピリデンビスシクロヘキサノールである。
【0062】
本発明の別の非限定の実施形態において、Rがその残基であるポリオールは、アルキレングリコール、ポリ(C〜C)アルキレングリコール、グリセロール、1,3−ベンゼンジオール、1,4−ベンゼンジオール、ヒドロキシキノンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテルジオール、またはこれらの混合物から選択される。さらなる非限定の実施形態において、Rがその残基であるポリオールは、アルキレングリコール(例えば、エチレングリコール)またはポリ(C−C)アルキレングリコール(例えば、ジエチレングリコール)から選択される。
【0063】
第一の共重合可能なモノマー(a)が選択され得るポリオール((メタ)アクリロイルカーボネート)モノマーの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:エチレングリコールビス((メタクリロイルオキシ)エチレンカーボネート)、エチレングリコールビス((アクリロイルオキシ)エチレンカーボネート)、ジエチレングリコールビス((メタクリロイルオキシ)エチレンカーボネート)、ジエチレングリコールビス((アクリロイルオキシ)エチレンカーボネート)、トリエチレングリコールビス((メタクリロイルオキシ)エチレンカーボネート)、トリエチレングリコールビス((アクリロイルオキシ)エチレンカーボネート)、プロピレングリコールビス((メタクリロイルオキシ)エチレンカーボネート)、プロピレングリコールビス((アクリロイルオキシ)エチレンカーボネート)、1,3−プロパンジオールビス((メタクリロイルオキシ)エチレンカーボネート)、1,3−プロパンジオールビス((アクリロイルオキシ)エチレンカーボネート)、1,3−ブタンジオールビス((メタクリロイルオキシ)エチレンカーボネート)、1,3−ブタンジオールビス((アクリロイルオキシ)エチレンカーボネート)、1,2−グリセロールビス((メタクリロイルオキシ)エチレンカーボネート)および1,3−グリセロールビス((メタクリロイルオキシ)エチレンカーボネート)、1,2−グリセロールビス((アクリロイルオキシ)エチレンカーボネート)および1,3−グリセロールビス((アクリロイルオキシ)エチレンカーボネート)、1,4ブタンジオールビス((メタクリロイルオキシ)エチレンカーボネート)、1,4ブタンジオールビス((アクリロイルオキシ)エチレンカーボネート)、ジプロピレングリコールビス((メタクリロイルオキシ)エチレンカーボネート)、ジプロピレングリコールビス((アクリロイルオキシ)エチレンカーボネート)、トリメチレングリコールビス((メタクリロイルオキシ)エチレンカーボネート)、トリメチレングリコールビス((アクリロイルオキシ)エチレンカーボネート)、ペンタメチレングリコールビス((メタクリロイルオキシ)エチレンカーボネート)、ペンタメチレングリコールビス((アクリロイルオキシ)エチレンカーボネート)、1,3−ベンゼンジオールビス((メタクリロイルオキシ)エチレンカーボネート)および1,4−ベンゼンジオールビス((メタクリロイルオキシ)エチレンカーボネート)、1,3−ベンゼンジオールビス((アクリロイルオキシ)エチレンカーボネート)および1,4−ベンゼンジオールビス((アクリロイルオキシ)エチレンカーボネート)、ヒドロキシキノンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテルビス((メタクリロイルオキシ)エチレンカーボネート)、ヒドロキシキノンビス(2−ヒドロキシエチル)エーテルビス((アクリロイルオキシ)エチレンカーボネート)、イソプロピリデンビスフェノールビス((メタクリロイルオキシ)エチレンカーボネート)、イソプロピリデンビスフェノールビス((アクリロイルオキシ)エチレンカーボネート)、ジエチレングリコールビス((メタクリロイルオキシ)2−メチル−エチレンカーボネート)、ジエチレングリコールビス((メタクリロイルオキシ)1,4−シクロヘキシレンカーボネート)、ジエチレングリコールビス((メタクリロイルオキシ)1,4−フェニレンカーボネート)、ジエチレングリコールビス((メタクリロイルオキシ)2,5−ジメチル−1,3−フェニレンカーボネート)またはこれらの混合物。
さらなる非限定の実施形態において、Rがその残基であるポリオールは、エステル基を含むポリオールである。そのようなポリオールは、一般的に知られており、そして200〜10,000の範囲の数平均分子量を有し得る。これらは、低分子量のジオール(すなわち、500グラム/モル以下の分子量を有するジオール)、トリオール、および当該分野で公知であるポリカルボン酸を有する(必要に応じてアルコール一水化物と組み合わせた)多水酸基アルコールを使用する、従来の技術により調製され得る。ポリカルボン酸の非限定の例としては、以下が挙げられる:フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリト酸、テトラヒドロフタル酸、アジピン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、またはこれらの混合物。上記酸の無水物が存在する場合、これらも使用され得、そして用語「ポリカルボン酸」に包含される。
【0064】
なおさらなる非限定の実施形態において、酸と同様の様式で反応してポリエステルポリオールを形成する特定の物質もまた、有用である。そのような物質としては、以下が挙げられる:ラクトン(例えば、カプロラクトン、プロピオラクトンおよびブチロラクトン)およびヒドロキシ酸(例えば、ヒドロキシカプロン酸およびジメチロールプロピオン酸)。トリオールまたは多水酸基アルコールが用いられる場合、モノカルボン酸(例えば、酢酸および/または安息香酸)がポリエステルポリオールの調製において用いられ得、そしていくつかの目的のために、そのようなポリエステルポリオールが、所望され得る。さらに、ポリエステルポリオールは、本明細書において、脂肪酸または脂肪酸のグリセリド油で改変されたポリエステルポリオールを含む(すなわち、そのような改変を含む従来のアルキドポリオール)と理解されている。使用され得るポリエステルポリオールの他の非限定の例は、アルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなど)と、メタクリル酸を有するバーサティック酸(versatic acid)のグリシジルエステルとを反応させて対応するエステルを形成することによって調製されるポリエステルポリオールである。
【0065】
1つの非限定の実施形態において、Rがエステル基を含むポリオールの残基である場合、それがそのポリオールに由来する残基であるポリオールは、以下の式により表され得:
−(Y−(C(O)(−CR−CHR−O)−H)
ここで:Yは、−O−または−NR−であり、そしてRは、水素またはC−C12アルキルであり;Rは、開始剤由来の有機ラジカルである。開始剤とは、触媒の補助を伴ってかまたは伴わずにラクトン環を開環し得、そして水の縮合を形成することなく開鎖としてそれを付加し得る、少なくとも1つの反応性水素を有する化合物である。開始剤の非限定の例としては、単官能基開始剤(例えば、アルコールおよびアミン)、および多官能性開始剤(例えば、ポリオール、ポリアミン、アミノアルコール、およびビニルポリマーならびにアミド、スルホンアミド、ヒドロゾン、セミカルバゾン、オキシム、ポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、およびアミノカルボン酸)が挙げられる。R、R、およびRは、各々、水素、C−C12アルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cアルコキシ、ベンジルまたはフェニルから、各例について、独立して選択され、ただし、R、R、およびRの総数のうちの少なくともh+2個は、水素である。例えば、ブチロラクトン(C)が出発物質である場合、hは2であり、そしてR、R、およびRの総数のうちの少なくとも4、実際には5が水素である。文字hは、1〜6の整数から選択され;tは、1〜100の整数から選択され;そしてyは、2〜6の整数から選択される。
【0066】
別の非限定の実施形態において、エステル基を含むポリオールはジオール開始剤とラクトンの反応生成物(すなわち、ポリラクトンジオール)である。ポリラクトンジオールのジオールは、2〜20個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の脂肪族ジオール、ポリ(C〜C)アルキレングリコール、環式環中に5〜8個の炭素原子を有する脂環式ジオール、単環式芳香族ジオール、ビスフェノール、水素化ビスフェノールまたはこれらの混合物から選択され得る。
【0067】
2〜20個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の脂肪族ジオール(これは、ポリラクトンジオールを調製するために使用され得る)の例としては、そのRが残基であるジオールが挙げられるが、これに限定されない。このようなジオールの非限定的な例としては、以下が挙げられる:エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオールおよび2,3−ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、ドデカンジオール、トリデカンジオール、テトラデカンジオール、ペンタデカンジオール、ヘキサデカンジオール、ヘプタデカン(hetadecane)ジオール、オクタデカンジオール、ノナデカンジオールおよびイコサン(icosane)ジオール。ポリ(C−C)アルキレングリコールの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコールおよびより高級のエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ペンタプロピレングリコールおよびより高級のプロピレングリコール、ならびにジブチレングリコール、トリブチレングリコール、テトラブチレングリコール、ペンタブチレングリコールおよびより高級のブチレングリコール。
【0068】
5〜8個の炭素原子を有する脂環式ジオールは、ポリラクトンジオールを調製するために使用され得、この脂環式ジオールの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:本明細書中で前に記載した脂環式ジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘプタンジオールおよびシクロオクタンジオール。ポリラクトンジオールを調製するために使用され得る単環式芳香族ジオールの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ベンゼンジオール(例えば、1,2−ジヒドロキシベンゼンおよび1,3−ジヒドロキシベンゼン);C−Cアルキル置換ベンゼンジオール(例えば、4−tert−ブチル−ベンゼン−1,2−ジオール、4−メチル−ベンゼン−1,2−ジオール、3−tert−ブチル−5−メチル−ベンゼン−1,2−ジオールおよび3,4,5,6−テトラメチル−ベンゼン−1,2−ジオール);ハロ置換ベンゼンジオール(例えば、3,5−ジクロロベンゼン−1,2−ジオール、3,4,5,6−テトラブロモ−ベンゼン−1,2−ジオールおよび3,4,5−トリクロロ−ベンゼン−1,2−ジオール);ならびにC−Cアルキルおよびハロ置換ベンゼンジオール(例えば、3−ブロモ−5−tert−ブチル−ベンゼン−1,2−ジオール、3,6−ジクロロ−4−メチル−ベンゼン−1,2−ジオール、3,−ブロモ−4,5−ジメチル−ベンゼン−1,2−ジオールまたは3−クロロ−4,6−ジ−tert−ブチル−ベンゼン−1,2−ジオール)。
【0069】
1つの非限定的な実施形態において、ポリラクトンジオールを調製するために使用され得るビスフェノールおよび水素化ビスフェノールは、以下の式:
【0070】
【化30】

で表され得、ここで、R13およびR14は、C−Cアルキル、塩素または臭素から、各例について各々独立して選択され;pおよびqは、0〜4の整数から各々独立して選択され;そして−A−は、−O−、−S−、−S(O)−、−C(O)−、−CH−、−CH=CH−、−C(CH−、−C(CH)(C)−または
【0071】
【化31】

から選択される二価の連結基であり、そして
【0072】
【化32】

は、ベンゼン環またはシクロヘキサン環を示す。ポリラクトンジオールを調製するために使用され得るビスフェノールの非限定的な例は、4,4’−イソプロピリデンビスフェノールである。ポリラクトンジオールを調製するために使用され得る水素化ビスフェノールの非限定的な例は、4,4’−イソプロピリデンビスシクロヘキサノールである。
【0073】
1つの非限定的な実施形態において、ポリラクトンジオールを調製するために使用されるラクトンは、その環状ラクトン環中に3〜8個の炭素原子を有し、そして以下の式:
【0074】
【化33】

によって表され得る。上記式において、hは、1〜6の整数(例えば、1、2、3、4、5、または6)から選択され、R、RおよびRは、水素、C−C12アルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cアルコキシ、ベンジルまたはフェニルから、各例について独立して各々選択され、ただし、R、RおよびR基の総数のうちの少なくともh+2個は、水素である。別の非限定的な実施形態において、R、RおよびRの各々は、それぞれ水素である。
【0075】
ポリラクトンジオールを調製するために使用され得るラクトンの例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:β−プロピオラクトン;γ−ブチロラクトン;β−ブチロラクトン;δ−バレロラクトン(valerolactone);α−メチル−γ−ブチロラクトン;β−メチル−γ−ブチロラクトン;γ−バレロラクトン;ε−カプロラクトン;モノメチルε−カプロラクトン、モノエチルε−カプロラクトン、モノプロピルε−カプロラクトン、モノイソプロピルε−カプロラクトン−などからモノドデシルε−カプロラクトン;メトキシε−カプロラクトンおよびエトキシε−カプロラクトン;シクロヘキシルε−カプロラクトン;フェニルε−カプロラクトン;ベンジルε−カプロラクトンs;ζ−エナトラクトン(enatholactone);ならびにη−カプリラクトン(caprylactone)。本発明の1つの非限定的な実施形態において、R、RおよびRはそれぞれ水素であり、hは4であり、そしてこのラクトンは、ε−カプロラクトンである。
【0076】
1つの非限定的な実施形態において、第2の共重合可能モノマーは、以下の式:
【0077】
【化34】

で表され得、ここで、mおよびnは、それぞれ0〜6の整数から独立して選択され、mおよびnの合計は、0〜6であり、RおよびR10は、それぞれ水素またはメチルから独立して選択され、R11およびR12は、水素またはC−Cアルキルから、各例について各々独立して選択され、そしてBは、直鎖または分枝鎖のアルキレン、フェニレン、C−Cアルキル置換フェニレン、または以下の式:
【0078】
【化35】

によって表される基から選択される二価の連結基であり、ここで、R15およびR16は、C−Cアルキル、塩素または臭素から、各例について各々独立して選択され、pおよびqは、0〜4の整数からそれぞれ選択され、
【0079】
【化36】

は、二価のベンゼン基または二価のシクロヘキサン基を示し、そしてDは、−O−、−S−、−S(O)−、−C(O)−、−CH−、−CH=CH−、−C(CH−、−C(CH)(C)−または
【0080】
【化37】

であり(
【0081】
【化38】

が二価のベンゼン基である場合)、そして
【0082】
【化39】

が二価のシクロヘキサン基である場合、Dは、−O−、−S−、−CH−、または−C(CH−である。
【0083】
1つの非限定的な実施形態において、Bは、以下の式:
【0084】
【化40】

によって表される二価の連結基であり、ここで、
【0085】
【化41】

は、ベンゼン基を示す。
【0086】
別の非限定的な実施形態において、RおよびR10は、各々メチルであり、R11およびR12は、各々水素であり、p、q、rおよびsは、各々0であり、Dは−C(CH−であって、そしてmおよびnの合計は、0〜4から選択される。
【0087】
1つの非限定的な実施形態において、第3の共重合可能モノマーは、以下の式:
【0088】
【化42】

で表され得、ここで、oおよびuは、各々正の数から独立して選択され、oおよびuの合計は、7〜70から選択され、R、R10、R11、R12およびBは、本明細書中で前に定義されたのと同じである。
【0089】
別の非限定的な実施形態において、oおよびuの合計は、10〜30である。
【0090】
1つの非限定的な実施形態において、第4の共重合可能モノマーは、以下の式:
【0091】
【化43】

で表され得、ここで、R、RおよびR11は、本明細書中で前に定義されたのと同じであり、dは、0〜20の数から選択され、そしてjは、3〜6の数から選択される。
【0092】
別の非限定的な実施形態において、dは、3〜15であり、そしてRが由来するポリオールは、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールである。さらなる非限定的な実施形態において、dは、5〜10である。
【0093】
1つの非限定的な実施形態において、第5の共重合可能モノマーは、ポリカーボネートポリオールポリクロロホルメートおよびヒドロキシ(メタ)アクリレートの反応生成物であり得る。この共重合可能モノマーは、以下の工程を包含する方法によって調製され得る:
(a)カーボネート基を含むポリオールのクロロホルメート中間体を調製する工程;および
(b)そのクロロホルメート中間体のクロロホルメート基とヒドロキシ(メタ)アクリレートとを反応させる工程。
【0094】
クロロホルメート中間体の調製およびその後のヒドロキシ官能性(メタ)アクリレートとの反応は、当該分野で認識されている方法に従って行なわれ得る。当業者に公知であるように、クロロホルメート基とヒドロキシ官能性(メタ)アクリレートとの反応は、典型的には、酸スカベンジャー(例えば、アルカリ金属水酸化物)の存在化で行われ、その後洗浄され、そして得られたポリオール((メタ)アクリロイルカーボネート)モノマーの混合物が分離される。工程(b)におけるクロロホルメート中間体混合物の、ヒドロキシ官能性(メタ)アクリレートとクロロホルメート基のモル等量比は、1:1未満であり得る一方、1つの非限定的な実施形態において、その比は、少なくとも1:1(すなわち、全てのクロロホルメート基が、ヒドロキシ(メタ)アクリレートと反応する)である。この方法の工程(b)において、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとクロロホルメート基のモル等量比は、1:1〜1.5:1.0(例えば、1.1:1.0)であり得る。
【0095】
別の非限定的な実施形態において、第5の共重合可能モノマーは、カーボネート基を含むポリオールのヒドロキシ基と、以下の式:
【0096】
【化44】

で表されるクロロホルメート官能性(メタ)アクリレートとを反応させる工程を包含する方法によってもまた調製され得、上記式において、XおよびRは、それぞれ本明細書中で前に記載したとおりである。
【0097】
前述の式で表されるクロロホルメート官能性(メタ)アクリレートは、当業者に周知の方法によって調製され得る。1つの非限定的な実施形態において、このヒドロキシ官能性(メタ)アクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)は、あるモル等量比でホスゲンと反応され、その結果、前述の式によって示されるクロロホルメート官能性(メタ)アクリレートが形成される。
【0098】
1つの非限定的な実施形態において、ポリオールのヒドロキシ基とクロロホルメート官能性(メタ)アクリレートのクロロホルメート基との反応は、(当業者に公知であるように)酸スカベンジャー(例えば、アルカリ金属水酸化物)の存在下で行なわれ、その後、洗浄され、そして得られたポリオール((メタ)アクリロイルカーボネート)モノマーの混合物が分離される。ポリオール混合物のヒドロキシ基とクロロホルメート官能性(メタ)アクリレートのクロロホルメート基モル等量比は広範に変化し得るが、1つの非限定的な実施形態において、その比は、ポリオール混合物のヒドロキシ基全てが、クロロホルメート官能性(メタ)アクリレートと反応する(すなわち、1:1以下(例えば、0.5:1〜1:1)のモル等量比)ように選択される。
【0099】
別の非限定的な実施形態において、第5の共重合可能モノマーは、(過剰の)ポリオールと塩化(メタ)アクリロイルとを反応させ、その後洗浄し、単官能性メタクリレートを単離することによって調製され得る。この物質をホスゲンと反応させ、クロロホルメート中間体を形成する。このクロロホルメート中間体は、その後少なくとも1つのカーボネート基を含むポリオールと反応される。
【0100】
1つの非限定的な実施形態において、第6の共重合可能モノマーは、ポリカーボネートポリオールと(過剰の)塩化(メタ)アクリロイルとを反応させ、その後洗浄し、そしてポリカーボネートポリオール(メタ)アクリレートを単離することによって調製され得る。
【0101】
1つの非限定的な実施形態において、第7の共重合可能モノマーは、遊離ラジカル開始によって重合可能な、モノエチレン性不飽和モノマーである。このエチレン性不飽和モノマーは、(メタ)アクリル酸のエステル、ビニル芳香族モノマー、ビニルハライド、ビニリデンハライド、ビニルエステル、(メタ)アクリルオキシプロピルトリ(C−C)アルコキシシラン、(メタ)アクリル酸またはこれらの混合物から選択され得る。
【0102】
別の非限定的な実施形態において、このモノエチレン性不飽和モノマーは、ステアリルメタクリレート、メチルメタクリレート、イソボロニルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、スチレン、ビニルトルエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、フッ化ビニリデン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルブチレート、ビニルラレレート(vinyl larerate)、ビニルピロリジノロール、ビニルベンゾエート、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランまたはこれらの混合物から選択され得る。
【0103】
1つの非限定的な実施形態において、第8の共重合可能モノマーは、少なくとも2つのアリル基を有するアリル官能性モノマーである。このアリル官能性モノマーは、モノマーの総重量基準で5重量%を超えないレベルで、重合可能組成物中で使用され得る。別の非限定的な実施形態において、このアリル官能性モノマーは、以下から選択される:
(i)以下の式:
17−[−O−C(O)O−R18
で示されるアリル官能性モノマーであって、ここで、R17は、1,2−エタンジオールジエチレングリコールまたは1,2−プロパンジオールから選択されるジオールの二価の残基であり、そしてR18は、アリル基である、アリル官能性モノマー
(ii)以下の式:
【0104】
【化45】

で示されるアリル官能性モノマーであって、ここで、R15およびR16は、C−Cアルキル、塩素または臭素から、互いの各例について各々独立して選択され、pおよびqは、0〜4の整数から各々独立して選択され、そして−A−は、−O−、−S−、−S(O)−、−C(O)−、−CH−、−CH=CH−、−C(CH−、−C(CH)(C)−または
【0105】
【化46】

から選択される二価の連結基であり、そしてR18は、アリル基である、アリル官能性モノマー;
(iii)以下の式:
【0106】
【化47】

で示されるアリル官能性モノマーであって、ここで、R18は、アリル基である、アリル官能性モノマー;あるいは
(iv)(i)、(ii)および(iii)のうちの少なくとも2つの混合物。
【0107】
さらなる非限定的な実施形態において、このアリル官能性モノマーは、以下から選択される:
(i)ポリエーテルジオールビス(アリルカーボネート);
(ii)ポリラクトンジオールビス(アリルカーボネート);または
(iii)これらの混合物。
【0108】
1つの非限定的な実施形態において、本発明の重合可能組成物の重合は、Hawley’s Condensed Chemical Dictionary 第13版、1997、John Wiley & Sons、901−902頁における「重合化」の定義中に記載される機構によって生じ得る。これらの機構は、「付加」によること(この中で、遊離ラジカルは開始剤であり、これは、一方でモノマーに付加し、同時に他方に新しい自由電子を生成することによってモノマーの二重結合と反応する)、「縮合」(これは、2つのモノマーの反応による水分子の開裂(split out)を含む)によること、およびいわゆる「酸化カップリング」によることを包含する。
【0109】
さらなる非限定的な実施形態において、本発明の重合可能有機組成物の重合は、遊離ラジカルを生じ得る物質(例えば、有機ペルオキシ化合物またはアゾビス(オルガノニトリル)化合物(すなわち、開始剤))の開始量を、その組成物に加えることによって達成され得る。ポリオール((メタ)アクリロイルカーボネート)モノマー組成物を重合するための方法は、当業者に周知であり、そしてその任意の周知技術が、前述の重合可能有機組成物を重合するために使用され得る。このような重合方法としては、熱重合、光重合、またはその組み合わせを含む。
【0110】
熱重合開始剤として使用され得る、有機ペルオキシ化合物の非限定的な例としては、以下が挙げられる:ペルオキシモノカーボネートエステル(例えば、第三級ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート;ペルオキシジカーボネートエステル(例えば、ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ(第二級ブチル)ペルオキシジカーボネートおよびジイソプロピルペルオキシジカーボネート);ジアシルペルオキシド(diacyperoxide)(例えば、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、プロピオニルペルオキシド、アセチルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドおよびp−クロロベンゾイルペルオキシド);ペルオキシエステル(例えば、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシオクチレートおよびt−ブチルペルオキシイソブチレート);メチルエチルケトンペルオキシド、およびアセチルシクロヘキサンスルホニルペルオキシド。1つの非限定的な実施形態において、使用される熱開始剤は、変色せず、重合を生じる熱開始剤である。
【0111】
熱重合可能開始剤として使用され得るアゾビス(オルガノニトリル)化合物の非限定的な例としては、以下が挙げられる:アゾビス(イソブチロニトリル)、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)またはこれらの混合物。
【0112】
本発明の重合可能有機組成物の重合を開始し、重合するのに使用される熱重合開始剤の量は、使用される特定の開始剤および意図されるフォトクロミック製品(例えば、キャストレンズ、被覆レンズまたはオーバーモールド)に依存して変化し得る。重合化反応を開始させ、そして維持させるのに必要な量(すなわち、開始量)のみが、要求される。ペルオキシ化合物に関して、ジイソプロピルペルオキシジカーボネートは、1つの非限定的な実施形態において使用され、その量は、典型的には、重合可能有機組成物100部当たり(phm)の開始剤が、0.01〜3.0部の間である。別の非限定的な実施形態において、0.05〜1.0phmが、重合を開始するために使用される。熱硬化サイクルは、この開始剤の存在下で重合可能有機組成物を加熱する工程を包含し、1つの非限定的な実施形態において、2時間〜30時間の期間にわたって、室温〜85℃から125℃で重合可能有機組成物を加熱する工程を包含する。
【0113】
1つの非限定的な実施形態において、本発明に従う重合可能有機組成物の光重合は、紫外光、可視光、またはその組み合わせを使用して、光重合開始剤の存在化で行われ得る。光重合可能開始剤の非限定的な例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルベンゾフェノール、アセトフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−イソプロピルチキサントン(isopropylthixantone)および2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドが挙げられる。本発明の重合可能有機組成物の重合を開始し、そして重合するために使用される光重合開始剤の量は、変化し得、使用される特定の開始剤および生成される目的のフォトクロミック製品に依存する。重合化反応を開始し、そして維持するために必要とされる量(すなわち、開始量)のみが必要とされる。1つの非限定的な実施形態において、光重合開始剤は、モノマー成分の重量に基づいて、0.01重量%〜5重量%の量で使用される。
【0114】
1つの非限定的な実施形態において、光重合のために使用される光源は、紫外光を発する光源から選択される。この光源は、水銀灯、殺菌灯またはキセノンランプであり得る。可視光(例えば、太陽光)もまた、使用され得る。露光時間は、例えば、光源の波長および強度ならびに特定のフォトクロミック製品に依存して異なり得、そして典型的には、経験的に決定される。
【0115】
別の非限定的な実施形態において、従来の種々の添加物は、本発明の重合可能有機組成物と共に取り込まれ得る。このような添加物としては、以下が挙げられ得る:光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外光吸収剤、離型剤、安定(非フォトクロミック)色素、顔料、貯蔵中を安定に促進するための溶媒および重合インヒビター、ならびに紫外光吸収剤(フォトクロミック化合物以外)。抗黄変添加剤(例えば、3−メチル−2−ブタノール、オルガノピロカーボネートおよびトリフェニルホスファイト[CAS 101−02−0]もまた、本発明の重合可能有機組成物に添加され、黄変に対する抵抗を増強し得る。
【0116】
さらなる非限定的な実施形態において、重合調節剤または重合調節剤混合物が、本発明の重合可能有機組成物に添加され、そこから得られる重合物中のひずみ(例えば、条線)の形成を最小化し得ることもまた、企図される。重合化調節剤の非限定的な例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:ジラウリルチオジプロピオネート、テルピノレン(terpinolene)、1−イソプロピル−4−メチル−1,4−シクロヘキサジエン、1−イソプロピル−4−メチル−1,3−シクロヘキサジエン、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、α−メチルスチレン、2,4−ジフェニル−4−メチル−l−ペンテン、1,1−ジフェニルエチレン、シス−1,2−ジフェニルエチレン、2,6−ジメチル−2,4,6−オクタトリエン、4−tert−ブチルピロカテコール、3−メチル−2−ブタノールまたはこれらの混合物。
【0117】
1つの非限定的な実施形態において、重合調整剤が、重合可能有機組成物の全重量に基づいて、0.01重量%〜20重量%(例えば、0.1重量%〜10重量%または0.3重量%〜5重量%)の量で、本発明の重合可能有機組成物に加えられ得る。重合調整剤の量は、これらの値の任意の組合せの間の範囲(記載された範囲を含む)であり得、例えば、0.015〜19.999重量%である。
【0118】
1つの非限定的な実施形態において、本発明の重合可能有機組成物の重合から得られた重合物は、固体であり、かつ透明または光学的に透明であり、その結果、この重合物は、光学素子(例えば、光学レンズ(例えば、プラノレンズおよび眼用レンズ)、およびコンタクトレンズ、サンレンズ(sun lense)、窓、自動車の透明部分(例えば、防風ガラス、Tルーフ、サイドライトおよびバックライト)、として、および飛行機の透明部分のためなどに使用され得る。別の非限定的な実施形態において、この重合物は、0.5ミリメートル以上の厚みを有し得る。
【0119】
別の非限定的な実施形態において、ガラスツーパートレンズ鋳型が、この重合可能組成物で満たされ、この重合可能組成物は、触媒量のアゾビスイソブチロニトリルをさらに含み得る。このガラス鋳型は、密閉され、そしてオーブン中に置かれる。熱重合サイクル(約40〜110℃で、10〜20時間の持続時間の範囲であり得る)を開始する。その後、この鋳型を開け、そして得られたレンズ(すなわち、重合物)を取り出す。このように製造したポリマーレンズは、次いで、このレンズにおける残留応力を排除するのに十分な時間および温度で、焼きなます。この温度は、一般に、100℃と110℃との間であり、そして焼きなましは、1〜5時間行われる。フォトクロミック材料が、この重合可能組成物中に含まれない場合、このフォトクロミック材料は、インビビション方法、浸透方法または当業者に公知の他の移動方法によって、重合物に組み込まれ得る。
【0120】
さらなる非限定的な実施形態において、本発明のフォトクロミック重合可能組成物の接着性キャスト(adherent casting)を有する半仕上げ単焦点(semi−finished single vision)(SFSV)レンズが、上乗せ成形(overmolding)プロセスにより調製され得る。代表的に、所定の容量のフォトクロミック重合可能組成物を、球形の凹球またはマイナスガラス鋳型(これは、SFSVレンズの前表面曲線および外径にほぼ一致する)により規定される容量に配置する。このガラス鋳型を、円形のポリ塩化ビニルガスケットと合わせ、このガスケットは、この鋳型の約0.2ミリメートル上に延び、そしてガラス鋳型の外径より約4ミリメートル小さい内径を有する。モノマーを配置した後、このSFSVレンズを、この配置した重合可能組成物の上に慎重にのせ、これは広がって、この所定の容量を満たす。このレンズと同じかまたはこのレンズより大きい外径を有する円形ガラスプレートを、このレンズの背面にのせる。クランプの一方の側面がガラスプレートの凹面の上になり、かつクランプの他方の側面がガラスプレートの後面の上になるように、バネクランプを配置する。得られたアセンブリを、ポリウレタンテープを使用して、プレート−レンズ−ガスケット−鋳型の周囲をテーピングすることによって密閉する。このアセンブリを、30〜95℃のエアオーブン中で、60分間隔で予め加熱し、続いて、この温度を、3時間間隔で、95℃から125℃まで上げ、そして82℃まで下げる。このアセンブリを、レンズと鋳型との間のガスケットの下にウェッジを挿入することによって分離する。ここでこのレンズは、150〜180ミクロンの接着性キャストを有する。
【0121】
本発明の重合物が、フォトクロミック化合物のマトリクスとして(例えば、フォトクロミックレンズのようなフォトクロミック物品として)使用される場合、1つの非限定的な実施形態において、この重合物は、このマトリクス中のフォトクロミック物質(単数または複数)を活性化する電磁気スペクトル(例えば、着色形態または開形態のフォトクロミック物質を生成する紫外線(UV)光の波長)の部分、ならびにそのUV活性化形態(例えば、開形態)中のフォトクロミック物質の最大吸収波長を含む可視スペクトルの部分に対して透明でなければならない。
【0122】
様々な非限定的な実施形態において、フォトクロミック物品を、本発明の重合可能組成物を鋳型に注入し、これを、例えば、当該分野で一般にキャストインプレイス(cast−in−place)プロセスと呼ばれる方法で重合することによって、調製し得る。本発明の重合可能組成物のキャスト重合によって(光互変性量の有機フォトクロミック物質の非存在下で)調製された重合物(例えば、レンズ)を使用して、当該分野で認識された方法によって、フォトクロミック化合物をこの重合物に適用または組み込むことによって、フォトクロミック物品を調製し得る。このような非限定的な当該分野で認められた方法としては、以下が挙げられる:(a)重合物内にフォトクロミック材料を溶解または分散させること(例えば、フォトクロミック材料の温かい溶液中に重合物を浸漬することによる、または熱移動による、重合物へのフォトクロミック物質のインビビション;(b)フォトクロミック材料を、重合物の隣接する層の間の別個の層として(例えば、ポリマーフィルムの一部として)提供すること;および(c)フォトクロミック物質を、重合物の表面上のコーティングの一部として適用すること。用語「インビビション」または「吸収(imbibe)」は、重合物へのフォトクロミック物質単独の浸透、重合物へのフォトクロミック物質の溶媒援助移動吸収、気相移動および他のこのような移動機構を意味しそして含むことを意図する。
【0123】
本発明の重合可能組成物と共に使用され得るフォトクロミック化合物の非限定的な例は、所望の色相に呈色する有機フォトクロミック化合物である。これらは、代表的に、約400ナノメートルと700ナノメートルとの間の範囲内に、少なくとも1つの活性化吸収極大を有する。これらは、個々に使用され得るか、またはその活性色を補足するフォトクロミック化合物と組み合わせて使用され得る。
【0124】
1つの非限定的な実施形態において、有機フォトクロミック材料としては、以下が挙げられる:クロメン(chromene)(例えば、ナフトピラン、ベンゾピラン、インデノナフトピランおよびフェナントルピラン);スピロピラン(例えば、スピロ(ベンズインドリン)ナフトピラン、スピロ(インドリン)ベンゾピラン、スピロ(インドリン)ナフトピラン、スピロ(インドリン)キノピランおよびスピロ(インドリン)ピラン);オキサジン(例えば、スピロ(インドリン)ナフトキサジン、スピロ(インドリン)ピリドベンゾキサジン、スピロ(ベンズインドリン)ピリドベンゾキサジン、スピロ(ベンズインドリン)ナフトキサジンおよびスピロ(インドリン)ベンゾキサジン);水銀ジチゾネート、フルギド、フルギミド(fulgimide)、ならびにこのようなフォトクロミック化合物の混合物。このようなフォトクロミック化合物は、米国特許第5,645,767号、同第6,153,126号および同第6,296,785B1号の第30欄、第44行〜第31欄、第5行に記載される。
【0125】
別の非限定的な実施形態において、本明細書中に記載されるフォトクロミック化合物は、光互変性量で、かつこの化合物が適用されるかまたはこの化合物が組み込まれるコーティング組成物が、濾光していない太陽光で活性化された場合に結果として所望の色(例えば、灰色または褐色の影のような実質的な中間色(すなわち、活性化されたフォトクロミック化合物の色を考慮して可能な限り中間に近い色))を示すような比(混合物が使用される場合)で、使用される。中間の灰色および中間の褐色が好ましい;しかし、他の流行色もまた使用され得る。中間色および所望の色についての様式のさらなる考察は、米国特許第5,645,767号の第12欄、第66行〜第13欄、第19行に見出される。
【0126】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、「光互変性量」とは、活性化された場合に、裸眼で識別可能なフォトクロミック効果を生じるのに少なくとも十分なフォトクロミック化合物またはフォトクロミック物質の量を意味する。吸収された物質について別の様式で記載される場合、光互変性量は、「フォトクロミック的に有効な量」の少なくとも部分的に吸収されたフォトクロミック材料である。使用される特定の量は、しばしば、この材料を照射した際に所望される色の強度に依存する。1つの非限定的な実施形態において、本発明の重合可能組成物中にフォトクロミック物質が多く存在する程、または本発明の重合物にフォトクロミック物質が多く組み込まれるほど、得られるフォトクロミック物品の光強度は大きくなる。
【0127】
1つの非限定的な実施形態において、光重合可能組成物に組み込まれるフォトクロミック材料の量は、この光重合可能組成物の重量に基づいて、0.01重量%〜40重量%の範囲である。例えば、フォトクロミック材料の濃度は、この重合可能組成物の重量に基づいて、0.05〜30重量%、または0.1〜20重量%、または0.2〜15重量%(例えば、7〜14重量%)の範囲であり得る。フォトクロミック物質の濃度は、これらの値の任意の組合せ(記載された範囲を含む)、例えば、0.05〜39.95重量%の範囲であり得る。
【0128】
例えば、インビビション(imbibition)によって本発明の光学的に透明な重合物に組み込まれる場合、この光学的に透明な重合物の表面に適用されるフォトクロミック物質の量は、1つの非限定的な実施形態において、重合物の表面積1平方cmあたり、0.01〜2.00mg(例えば、0.1〜1.0mg)の範囲であり得る。フォトクロミック材料の濃度は、これらの値の任意の組合せ(記載された値を含む)、例えば、重合物の表面積1平方cmあたり0.015〜1.999mgの範囲であり得る。
【0129】
1つの非限定的な実施形態において、適合性の(化学的または色的に(color−wise))色(すなわち、色素)が、医療的な理由のためまたは流行の理由のために、より審美的な結果を達成するために、重合可能組成物に添加され得るか、または重合物に適用され得る。選択された特定の色素は、変わり、そして上記の必要性および達成されるべき結果に依存する。1つの非限定的な実施形態において、この色素は、例えば、より中間の色を達成するため、または入射光の特定の波長を吸収するために、活性化されたフォトクロミック物質から得られる色の補色になるように選択され得る。別の非限定的な実施形態において、この色素は、このフォトクロミック物質が活性化されていない状態にある場合、重合物に所望の色合いを提供するように選択され得る。
【0130】
様々な非限定的な実施形態において、アジュバント材料もまた、フォトクロミック材料を重合可能組成物または硬化した重合物に適用するかまたは組み込む前にか、これと同時にかまたはこの後に、使用するフォトクロミック材料と共に重合可能組成物に組み込まれ得る。例えば、紫外線吸収剤が、この組成物に添加する前に、フォトクロミック物質と混合され得るか、またはこのような吸収剤は、例えば、フォトクロミック重合物と入射光との間の層として、重ねられる(例えば、上に重ねられる)。さらに、安定化剤が、フォトクロミック物質の光疲労耐性を改善するために、この組成物に添加する前に、このフォトクロミック物質と混合され得る。安定化剤(例えば、ヒンダードアミン光安定化剤(HALS)、不斉ジアリールオキサルアミド(オキサニリド(oxanilide))化合物、および一重項酸素クエンチャー(例えば、有機配位子とのニッケルイオン錯体)、ポリフェノール性酸化防止剤、またはこれらの安定化剤の混合物が、企図される。これらは、単独で、または組合せて使用され得る。このような安定化剤は、米国特許第4,720,356号、同第5,391,327号および同第5,770,115号に記載される。
【0131】
本発明の重合可能組成物は、この組成物に所望の特性を与えるか、あるいはこの組成物を提供しそして硬化するために使用されるプロセスに必要であるか、またはこの組成物から作製された硬化重合物を強化する、さらなる従来的な成分をさらに含み得る。このような成分は、モノマーの重量に基づいて、20重量%までの量で使用され得る。例えば、可塑剤が、フォトクロミック重合可能組成物のFischer微小硬度および/またはフォトクロミック性能特性を調整するために、使用され得る。他のこのようなさらなる成分は、レオロジー制御剤、レベリング剤、例えば、界面活性剤、イニシエーター、硬化阻害剤、フリーラジカルスカベンジャー、架橋剤および接着促進剤を含む。
【0132】
接着促進剤の非限定的な例(例えば、1〜4個の炭素原子のアルコキシ置換基を有する有機官能性トリアルコキシシラン、および米国特許第6,150,430号の第2欄第39行〜第8欄第38行に開示されるプロセスを使用して適用される重合可能な有機官能性シラン)が、使用され得る。これらの材料としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、アミノエチルトリメトキシシランまたはこれらの混合物。接着促進剤は、本発明の重合物に引き続いて適用されるコーティングの接着性、またはレンズブランクに対して重合可能な組成物の上乗せ成形物の接着性を改善する量で使用され得る。接着促進剤の接着改善量は、接着促進剤を使用していない重合物と比較した場合、ASTM D−3359−Standard Test
Method for Measuring Adhesion by Tape Test−Method Bにより測定されるような、改善された接着評点を示す量である。
【0133】
保護コーティング(これらのいくつかは、ポリマー形成有機シロキサンを含み得る)を、後に適用されるコーティングの接着性を改善するためのプライマーとして使用することは、米国特許第6,150,430号に記載されている。1つの非限定的な実施形態において、非着色(nontintable)コーティングが使用される。市販のコーティング製品の非限定的な例としては、SILVUE(登録商標)124(SDC Coatings,INC.から入手可能)およびHI−GARD(登録商標)コーティング(PPG Industries,Inc.から入手可能)が挙げられる。さらに、1つの非限定的な実施形態において、物品の意図される用途に依存して、適切な保護コーティング(すなわち、耐磨耗性コーティング)および/または酸素バリアとして働くコーティングを、重合物の露出表面に適用して、それぞれ、摩擦および磨耗の影響による引っ掻き傷、ならびにフォトクロミック化合物と酸素との相互作用を防止する必要があり得る。いくつかの場合、プライマーコーティングおよび保護コーティングは、交換可能である。すなわち、同じコーティングが、プライマーコーティングおよび保護コーティングとして使用され得る。ハードコードの非限定的な例としては、無機材料(例えば、シリカ、チタニアおよび/またはジルコニア)、および紫外線硬化性のタイプの有機ハードコートに基づくものが挙げられる。
【0134】
さらなる非限定的な実施形態において、他のコーティングまたは表面処理(例えば、着色(tinatable)コーティング、反射防止表面など)もまた、本発明の物品(すなわち、フォトクロミック重合物)に適用され得る。反射防止コーティング(例えば、単層または多層の金属酸化物、金属フッ化物または他のこのような材料)が、真空蒸着、スパッタリングまたはいくつかの他の方法によって得、本発明のフォトクロミック物品(例えば、レンズ)に蒸着され得る。
【0135】
1つの意図される非限定的な実施形態は、本発明のフォトクロミック重合可能組成物を使用して、光学的に透明な重合物(すなわち、光学的用途(例えば、光学素子(例えば、プラノレンズおよび視力矯正眼用レンズ、ならびにコンタクトレンズ)、窓、透明ポリマーフィルム、自動車の透明部分(例えば、防風ガラス)、飛行機の透明部分、プラスチックシートなど))に適切な材料を製造することである。このような光学的に透明な重合物は、1.48〜2.00(例えば、1.495〜1.75、特に、1.50〜1.66)の範囲であり得る屈折率を有し得る。
【0136】
別の意図される非限定的な実施形態は、本発明のフォトクロミック重合物と適切な保護コーティング(例えば、有機シラン)(必要な場合)との組合せを使用して、フォトクロミック光学物品を製造することである。
【0137】
本発明は、例示としてのみ意図される以下の実施例においてより具体的に記載される。なぜなら、これらの多くの改変および変更が、当業者に明らかであるからである。
【0138】
フォトクロミック材料および種々のメタクリレートモノマーとともに、成分1、2および3を使用して、実施例1〜14を行った。実施例15は、これらの例のフォトクロミックレンズの調製および試験、ならびに促進風化フォトクロミックパーセント明所疲労試験(Accelerated Weathering Photochromic Percent Photopic Fatigue Test)に従って行ったその試験結果を記載している。
【0139】
(成分1)
イソシアネートとポリカーボネートポリオールとの反応生成物を、表1に要約されるような成分から調製した。
【0140】
【表1】

充填物1を、全てのガラス反応器に加えた。成分を、エア噴霧を用いて混合した。充填物が60℃の温度に到達するまで、この反応器中でこの充填物に熱を付与した。充填物2を、約1時間の期間にわたって加えた。この充填物2の添加の完了時に、この反応混合物を、6時間混合した。得られた溶液を、40℃にて10mm水銀で1時間、真空除去した。得られたポリマー溶液は、総溶液重量に基づいて、約91.71%の測定総固体含量を有した。このポリマーは、標準としてポリスチレンを使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される場合、約6473の重量平均分子量、および2480の数平均分子量を有した。
【0141】
(成分2)
(工程1)
ポリラクトンジオールビス(クロロホルメート)中間体を、表2に要約したような成分から調製した。このポリカプロラクトンジオールビス(クロロホルメート)中間体は、ポリカプロラクトンジオールビス(メタ)アクリロイルカーボネート)モノマーの調製において有用である。
【0142】
【表2】

充填物1を、15分間にわたって、5リットルの4つ首丸底ジャケット付き(jacketed)フラスコに加え、同時に5℃まで冷却した。このフラスコは、モーター駆動TEFLON(登録商標)ポリマー撹拌ブレード、ホスゲン入口チューブ、熱電対、圧力均等添加漏斗(pressure equalizing addition funnel)、および水酸化ナトリウムスクラバーに接続された冷却コンデンサーを備えていた。充填物1の添加を完了すると、充填物2および充填物3を各々、それぞれ8.5時間および7.5時間の期間にわたって、このフラスコに同時に加えた。充填物2および充填物3の添加の間、このフラスコの内容物の温度は、せいぜい38℃までしか上昇しないことが観察された。充填物2の添加の最後に、熱マントル(heating mantle)をこのフラスコ上に配置し、そしてこのフラスコの内容物を、充填物3の残りの添加期間、32℃の温度で維持した。充填物3の添加を完了すると、このフラスコの内容物を、32℃の温度にて、約24時間の期間にわたって窒素ガスとともに噴霧した。このフラスコの内容物を、適切な容器に移した。この反応物のアッセイを、この生成物とピリジンとの混合物の滴定に基づいて、99%であると決定した。
【0143】
(工程2)
工程1のポリラクトンジオールビス(クロロホルメート)中間体を、表3に要約した成分とともに使用して、以下のようなポリラクトンジオールビス((メタ)アクリロイル)カーボネート)モノマーを調製した。
【0144】
【表3】

充填物1を、1リットルのジャケット付き丸底ガラスフラスコに添加した。このフラスコは、モーター駆動式TEFLON(登録商標)ポリマーブレードと、水冷コンデンサーと、循環式冷却ユニット(このフラスコのジャケット用)と、温度フィードバック制御デバイスを介して接続された温度計とを備えていた。このフラスコの内容物を0℃まで冷却した。充填物2を、35分間かけてゆっくりと添加した。充填物2の添加全体を通して、このフラスコの内容物の温度が20℃を超えるのは、観察されなかった。充填物2の添加が完了した時に、50gの水を添加した。このフラスコの内容物を、約20℃の温度にてさらに2時間攪拌した。800ミリリットル(ml)の脱イオン水と0.05gのブチル化ヒドロキシトルエンとをこのフラスコに添加することによって、このフラスコの内容物を、有機相と無機相とに分離した。その有機相を収集し、それを300gの10重量%水酸化ナトリウム水溶液で洗浄した。400gの脱イオン水を添加し、1時間後にその有機相を収集した。その有機相を、0.035gのブチル化ヒドロキシトルエンを含む500gの脱イオン水で洗浄した。その有機相を1時間後に収集し、そしてそれを600gの脱イオン水で洗浄した。その有機相を18時間後に収集し、そしてその有機相に空気を2時間噴霧した。その有機相を、35℃の温度にて、12ミリメートル(mm)水銀の真空下で30分間溶媒除去し、48℃にて、10mm水銀下で40分間溶媒除去した。生じる生成物を、0.45ミクロンフィルターに通して濾過した。それから生じる成分2の反応性オリゴマー生成物を、85%収率で得た。その生成物は、サンプル1gあたり5.62mg KOHのヒドロキシ数を有し、そしてポリスチレンを標準物質として使用してゲルクロマトフラフィーにより測定すると、重量平均分子量500〜1400を有することが、見出された。
【0145】
(成分3)
ポリカーボネートポリオールと塩化(メタ)アクリロイルとの反応生成物を、表4に要約される成分から調製した。
【0146】
【表4】

充填物1を、窒素で洗浄した全てのガラスリアクターに添加した。このリアクターを氷浴中に配置し、そして、反応混合物の温度を25℃未満に維持しながら、充填物2を、1時間のインターバルの間添加した。充填物2の添加が完了した際、反応混合物を、95分間にわたり、室温にまで暖めた。充填物が、35℃に達するまで、リアクター中の充填物を加熱した。反応アリコートを、メタノールでクエンチし、そしてメチルメタクリレートについてガスクロマトグラフィーによって分析し、反応変換を決定した。完了した反応物を、エチルアセテート中で1:1に希釈し、そして飽和重炭酸ナトリウムで2回洗浄し、そしてブラインを用いて2回洗浄した。生じた有機溶液を、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、そして約92%が固体となるまで濃縮した。生じた物質を、さらに精製することなく使用した。
【0147】
メチルメタクリレートの存在を、Supelco SPB−8キャピラリーカラムを備えるHewelett Packard 5890 Series IIガスクロマトグラフィーにおいて、標準(Aldrich Chemiacl Companyのメチルメタクリレート99%、M5、590−9)とともに同時注入することによって、決定した。4.29分の保持時間を、以下の設定において、決定した;注入ポート温度 200℃、検出ポート温度 250℃、カラム温度プログラム 2分間40℃に維持、40〜220℃を15℃/分の傾斜、220℃で22分間維持。
【0148】
ゲル浸透クロマトグラフィーデータは、最終産物について、以下のことを明らかにした:Mnは2400。Mwは5600。GPCシステムを、ポリエチレングリコール標準を用いて、較正した。
【0149】
(フォトクロミック成分)
フォトクロミック成分を、表5に列挙される物質の各々を、攪拌機および加熱手段を備えた適切な容器に添加することによって調製した。生じた混合物を、透明な溶液が生じるまで、攪拌し、そして穏やかに加熱した。
【0150】
【表5】

(実施例1〜14)
表6は、実施例1〜14の各々における、モノマーの重量%を列挙する。これら実施例は、表6に列挙されるモノマー組成物を、以下を添加した後、攪拌機を備えた適切な容器に添加し、そして1時間混合することによって調製した:3Mから入手可能なFC−431フルオロカーボン界面活性剤を、0.15重量%を提供するような量にて添加し、そして表5のフォトクロミック成分を、28.0重量%を提供するような量にて添加した(これら両方の重量%は、モノマーの総重量に基づく)。
【0151】
【表6】

(実施例15)
促進風化フォトクロミックパーセント明所疲労試験(AWPPPF Test)は、レンズを調製する工程(パートA〜C)、これらのレンズを重合可能組成物でコーティングする工程(パートD)、このコーティングしたレンズのFischer微小硬度を測定する工程(パートE)、および風化(weathering)(パートG)の前後のフォトクロミック性能および疲労を決定する工程(パートF)、を包含する。
【0152】
本発明の重合可能組成物を、実施例1〜8、10および11のコーティング組成物に組み込んだ。本発明の重合可能組成物を含まない他の重合可能組成物(例えば、実施例9、12、13および14の組成物)もまた、試験した。比較可能なFischer微小硬度レベルを有するコーティングについてのフォトクロミック性能試験および疲労試験の結果を、比較して、これらのパラメーターの増加または減少があったか否かを決定した。比較可能なFischer微小硬度レベルを有するコーティングしたレンズを比較することによって、このコーティングの物理的性質を考察した。なぜなら、フォトクロミック化合物の性能は、より軟らかい重合材料においてより速くあり得ることが一般的に知られているからである。
【0153】
(パートA)
一連のプラノレンズブランク(PPG Industries,inc.から入手可能なCR−39(登録商標)モノマーから調製)を使用した。このレンズブランクの直径は、70mmであった。これらのレンズブランクの全てを、食器用洗剤(Lemon Scented Joy)および水で洗浄し、溶液の全重量に基づいて12.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液に、60℃で10秒間浸し、脱イオン水でリンスし、イソプロピルアルコールと共に噴霧し、そして乾燥した。
【0154】
(パートB)
パートAで調製したレンズを、米国特許第6,150,430に記載されるタイプの接着促進組成物でコーティングした。この接着促進組成物を散布しながら、このレンズを1500回転/分(rpm)で9秒間スピンさせることによって、この組成物をレンズの表面に塗布した。
【0155】
(パートC)
パートBで調製したコーテイングレンズの全てを、紫外線照射に曝露することによって硬化した。このレンズを、10秒間の曝露に供しDymax 5000ECスポット硬化システムの6インチ下を、400ワット/インチの出力で評価した。塗布した組成物が硬化した後、各レンズを、1500rpmでスピンさせながら、イソプロピルアルコールで9秒間リンスし、そしてさらなる処理の前に乾燥させた。
【0156】
(パートD)
パートCで調製したレンズを、表7に列挙される時間、1500rpmでレンズをスピンさせ、コーティング組成物を分配することによって、表6のフォトクロミックコーティング組成物でコーティングして、硬化後に約30ミクロンの厚みを有するコーティングを生成した。
【0157】
【表7】

このコーティングしたレンズを、10インチ(25.4cm)の長さの2つの紫外線「V」型ランプの下で、コンベヤーベルト上で、2.3フィート/分(70.1cm/分)の速度で、1つの経路上にこれらのコーティングしたレンズを露出させることにより、紫外線に曝露することによって、これらのレンズを硬化した。第1のランプを、このコンベヤーの上2.5インチ(6.4cm)の高さに維持し、そして第2のランプを、このコンベヤーの上6.5インチ(16.5cm)に維持した。硬化システムを、Eye Ultravioletシステムから入手し、100万の酸素あたり100部未満のレベルまで、窒素で不活性化した。
【0158】
(パートE)
パートDで調製したコーティングしたフォトクロミックレンズを、Fischerscope HCV、Model H−100(Fischer Technology Inc.から入手可能)を使用して微小硬度試験に供した。これらの実施例のコーティングしたレンズの微小硬度(ニュートン/mmで測定される)を、100ミリニュートンの負荷の条件下、30回の負荷工程で、負荷工程間の0.5秒の休止をはさんで、決定した。表8に報告される結果を、2μmのインデンター(indentor)深さで測定した。
【0159】
【表8】

表8の結果は、成分1を含有する実施例1〜8、10および11が、84〜108ニュートン/mmの範囲の微小硬度を有することを示す。他の実施例は、99〜189ニュートン/mmの範囲の微小硬度を有した。
【0160】
(パートF)
パートDで調製したコーティングしたフォトクロミックレンズを、Essilor of Franceにより作製される光学ベンチ(本明細書中以下で「BMP」という)に対するフォトクロミック反応について試験した。BMPを試験する前に、コーティングしたフォトクロミックレンズを、ランプから約14cmの距離で、365nmの紫外光に約10分間曝露して、このフォトクロミック化合物を活性化した。サンプルのUVA照射量を、Licor Model Li−1800分光光度計で測定し、そして22.2ワット/mであることが分かった。次いで、これらのサンプルを、ランプから約36cmの距離で、約10分間ハロゲンランプの下に置いて、このサンプル中のフォトクロミック化合物を退色させるか、または不活性化した。サンプルにおける照射量を、Licor分光光度計で測定し、21.9Kluxであることが分かった。次いで、この試験レンズを、BMPの試験の前に、少なくとも1時間暗室に置いた。
【0161】
このBMPは、平らな金属表面を備え、この表面に、2つの150ワットキセノンアークランプを90°離して取り付けた(一方のランプは、ある量のUV/VIS光を提供するためであり、もう一方のランプは、可視光のさらなる寄与を提供するためである)。キセノンアークランプからの幾分かの平行出力ビームを合わせ、そして50/50ビームスプリッターを通してサンプルセルおよび照射量検出器に向けた。各ランプを、濾光し、そして別個に閉め、そしてサンプルセルに入る前に、合わせた後にもまた閉めた。各ランプもまた、Schott 3mm KG−2バンドパスフィルターで濾光した。補助的可視光のためのランプを、400nmカットオフフィルターを用いてさらに濾光した。
【0162】
この装置に搭載されたソフトウェア(すなわち、BMPSoftバージョン2.1e)を使用して、タイミング、照射量、空気セルおよびサンプルの温度、シャッタリング、フィルター選択および応答測定を制御した。このソフトウェアプログラムは、フォトフィードバックユニットに、確立された設定限界内の調整を提供し、次いで、ランプのワット数およびその後のランプ出力に対するわずかな調整を行った。選択された照射量が、このフォトフィードバックユニットの限界内で達成され得ない場合、このプログラムは、各光経路について中性密度フィルターの選択における変化の必要性を示した。
【0163】
このBMPソフトウェアのセットアップは、サンプルにおける分光光度測定値と、Model #268UVA UVA検出器およびModel #268P可視光検出器を備えるGraseby Model 5380二重チャネルオプトメータを用いる測定値との間の相関係数を必要とした。このオプトメーター検出器を、光学レールキャリアに取付け、そしてスプリットの2分の1を収容し、そしてキセノンアークランプからの光ビームを合わせた。このレンズサンプルセルを、石英ウインドウおよびセルフセンタリングサンプルホルダーに取り付けた。サンプルセルの温度を、改変したFacis,Model FX−10環境シミュレーターを備えるソフトウェアによって、73.4°F(23℃)に制御した。サンプルにおける照射量を、6.7ワット/平方メートルUVAおよび50Klux照度で確立した。Zeiss分光光度計、Model MCS 501(タングステンハロゲンランプからサンプルを通る光送達のための光ファイバーケーブルを備える)を、応答測定および色測定のために使用した。光ファイバーケーブルからの平行モニタリング光ビームを、試験サンプルに対して垂直に維持し、同時に、この光ビームをサンプルに通し、そして分光光度計に取り付けられた受信光ファイバーケーブルアセンブリに方向付けた。サンプルセルにおけるサンプルの正確な配置点は、活性化するキセノンアークビームおよびモニタリングする光ビームが交差して、光の2つの同心円を形成する場所である。サンプル配置点におけるキセノンアークビームの入射角は、垂直から約20°であった。
【0164】
不活性化状態または退色状態から活性化状態または暗色状態への光学密度の変化(ΔOD)で表される応答測定値を、初期の不活性化透過率を確立し、キセノンランプからシャッターを開け、そして選択された時間間隔で、活性化を介する透過率を測定することによって決定した。光学密度の変化を、以下の式に従って決定する:ΔOD=log(%Tb/%Ta):ここで、%Tbは、退色状態における透過率%であり、%Taは、活性化状態における透過率%であり、そして対数の底は10である。
【0165】
ブリーチ速度(T1/2)は、試験正方形中のフォトクロミック化合物の活性化形態が、活性化光源の除去後の最大のΔODの半分に到達するためのΔODに対する秒での時間間隔である。活性化速度(A1/2)は、照射の15分後に得られる光学密度(ΔOD)の変化が50%に達するために掛かる秒での照射の時間間隔である。フォトクロミックコートレンズについての結果を、表9に列挙する。
【0166】
(表9)
【0167】
【表9】

表9の結果は、成分1を個別に、またはビスフェノールA(2エトキシ単位)ジメタクリレート処方物中に成分2、成分3、トリメチオールプロパントリメタクリレートおよび/もしくはビスフェノールA(10エトキシ単位)ジメタクリレートと組み合わせて含有する実施例1〜8、10および11は、実施例14以外に試験された他の実施例の全てより速い活性化速度(A1/2)および/またはブリーチ速度(T1/2)を示したことを示す。実施例1〜8、10および11の光学密度(ΔOD)の変化は、試験された他の実施例の程度であったかまたは幾分より低かった。
【0168】
表8および9両方の試験は、実施例1、4〜8、10および11のコーティングのFischer微小硬度が、実施例14以上であることを明らかにし、このことは、実施例1、4〜8、10、および11によって示される、フォトクロミック性能(例えば、活性化速度(A1/2)および/またはブリーチ速度(T1/2))の改善が、コーティングの物理的性質(例えば、より柔らかいかまたはより低いFischer微小硬度を有する)に起因しなかったことを示す。
【0169】
(パートG)
ATLAS Ci4000 WEATHEROMETERを、模擬太陽放射促進風化を実施するために使用した。表10において報告されたサンプル結果を、ATLAS Ci4000 WEATHEROMETER中で340nmの1平方メートル当たり0.25ワットの濾光キセノンランプ出力に対して、65時間露光した後、得た。WEATHEROMETER中の温度を、45℃に維持し、相対的湿度を、75%で制御した。黒パネルホルダー上のレンズの温度は、代表的に、55℃を超過しなかった。レンズが疲労プロセスを受けた後、これらのレンズを、準備し、露光前と同じ条件下で、光学ベンチ上で測定した。
【0170】
パーセント疲労(%Fat)を、促進風化の前後の試験サンプルの間の光学密度(ΔOD)の変化の差を測定することによって、そして差が示す光学密度のパーセント減少を計算することによって、決定した。光学密度(ΔOD)の変化を、ブリーチ状態の試験レンズを、サンプルホルダに挿入すること、透過率(T)を測定すること、キセノンランプのシャッターを開放し、模倣太陽放射を提供し、ブリーチ状態から活性化(すなわち暗化)状態へ試験サンプルが変化すること、活性化状態の透過率(T)を測定すること、および以下の式:
ΔOD=log(T/T)(対数は、10の底である)
に従って光学密度の変化を計算することによって決定した。結果は、±2変化し得る。
【0171】
パーセント明所疲労を、ヒトの眼によって検出される可視光応答に密接に対応する明所フィルターによって通過される波長について測定した。結果は、表10に報告される。
【0172】
(表10)
【0173】
【表10】

表10の結果は、実施例7の%明所疲労(30重量%の成分1を含む)が、試験された他のサンプルの全てより低かったことを示す。成分1および2の各々の15重量%を含む実施例8は、実施例7および9の結果の平均である%明所疲労を示し、これは、各々が、それぞれ、30%の成分1と30%の成分2を含むことを示した。15重量%の成分1および15重量%の成分3(成分1と異なるポリカーボネートポリオールベースのジメタクリレート反応生成物)を含有する実施例10は、試験された他のサンプルの全てよりも高い%明所疲労を示した。成分1、2および3の各々を10重量%含有する実施例11は、実施例9と10との間に入る%明所疲労結果を有した。
【0174】
実施例12、13および14は、それぞれ、10〜20から30単位までのエトキシ単位の増加につれて、%明所疲労の減少を示した。
【0175】
表9および10両方の試験は、改善された特徴(例えば、より速い活性化およびブリーチ速度)および/または疲労の減少(例えば、より長い寿命)を有するフォトクロミックレンズが、意外にも、(メタ)アクリレート処方物中に、10、20または30エトキシ単位を有するビスフェノールAジメタクリレートの代わりに、成分1単独または成分2および/もしくは成分3と組み合わせて使用して、生成されたことを示す。
【0176】
本発明は、その特定の実施形態の特定の詳細に関して記載される。このような詳細は、添付の特許請求の範囲に包含される程度の範囲でおよびその程度まで、本発明の範囲に対する限定としてみなされることを意図しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合可能組成物であって、該重合可能組成物は、
光互変性量の少なくとも1つのフォトクロミック化合物、
少なくとも1つのカーボネート基および少なくとも1つのヒドロキシル基を含む少なくとも1つの物質、ならびに
少なくとも1つの不飽和基を有する少なくとも1つのモノイソシアネート含有物質、
を含有し、該重合可能組成物は、少なくとも部分的に硬化された場合、促進風化フォトクロミックパーセント明所疲労試験において、フォトクロミック化合物のパーセント疲労を減少させるように適合される、
重合可能組成物。

【公開番号】特開2007−77398(P2007−77398A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250057(P2006−250057)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【分割の表示】特願2003−540276(P2003−540276)の分割
【原出願日】平成14年10月31日(2002.10.31)
【出願人】(504175051)トランジションズ オプティカル, インコーポレイテッド (65)
【Fターム(参考)】