説明

フォトクロミック重合性組成物

【課題】ポリカーボネート樹脂などからなる光学シートを接合するための接着層として機能するフォトクロミック重合性組成物であって、該組成物使用した積層体が、優れた密着性、耐熱性、フォトクロミック性を示すフォトクロミック重合性組成物であり、特に、熱水と接触した場合においても、光学シート同士の密着性を低下させない接着層を形成できるフォトクロミック重合性組成物を提供する。
【解決手段】ウレタンプレポリマー(A成分)、オキサゾリジン環含有化合物(B成分)、及びフォトクロミック化合物(C成分)を含むフォトクロミック重合性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なフォトクロミック重合性組成物に関する。具体的には、ポリカーボネート樹脂製などの光学シート又はフィルム同士を接合するためのフォトクロミック接着剤として好適に使用できる新規なフォトクロミック重合性組成物に関する。また、本発明は、該フォトクロミック重合性組成物からなる接着シート(層)を介して光学シート又は光学フィルムが互いに接合されてなる積層構造を含む光学物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年米国を中心として、透明で優れた耐衝撃性を有するポリカーボネート樹脂を用いたプラスチック製レンズが、防眩性を有するサングラス用途において、需要を伸ばしている。そして、このようなプラスチック製サングラスは、フォトクロミック化合物を含有させることによって、周囲の明るさに応じて透過率が変化して防眩性を調節できる、プラスチック製フォトクロミックサングラス(フォトクロミックレンズ)が急速に人気を得ている。
【0003】
このようなフォトクロミックレンズは、様々な方法で製造されている。具体的には、プラスチックレンズの表面にフォトクロミック化合物を含むコーティング組成物を塗布する方法、プラスチックレンズの材質自体にフォトクロミック化合物を混合し、レンズを形成する方法が挙げられる。
【0004】
また、部分的な加工ができること、平滑なフォトクロミック層を形成できること、及び射出成型でプラスチックレンズを製造する際に、同時にフォトクロミック特性を付与できるという点で、以下の方法も検討が進んでいる。つまり、フォトクロミック化合物とウレタンポリマーとを含むフォトクロミック接着剤を使用する方法である。具体的には、該フォトクロミック接着剤をポリカーボネート樹脂などの光学シートに積層した「フォトクロミック積層体」を作製し、次いで、該積層体をレンズ成型用の金型内に装着し、射出成型や熱圧着を行う方法である。この方法によれば、該積層体を有するプラスチック製フォトクロミックサングラスを製造することができる(特許文献1〜4参照)。該方法により得られるフォトクロミックレンズ(光学物品)は、射出成型、または熱圧着により該積層体とプラスチックレンズとを接合しているため、該積層体と該レンズとの界面の密着性は非常に高いものとなる。
【0005】
しかしながら、前記特許文献1、及び2に記載された方法で光学物品においては、使用したウレタンポリマーの構造によるものと考えられるが、光学シートとフォトクロミック接着剤の密着性が十分でないため、光学シートが剥離する問題があった(フォトクロミック積層体そのものの密着性が十分でないため、光学シートが剥離する場合があった)。さらに、該ウレタンポリマーの耐熱性が十分ではないため、射出成型や熱圧着を行う際に光学歪が生じたりするといった問題もあった。そのため、該接着剤からなる層のマトリックス樹脂(ウレタンポリマー)自体の耐熱性を向上することが求められていた。
【0006】
これに対し、特許文献3、及び4に記載された方法では、2液型のウレタンポリマー(末端にイソシアネート基を有する化合物と末端に水酸基を有する化合物との混合物)を採用している。この方法は、2液型のウレタンポリマー、及びフォトクロミック化合物を含む組成物を光学シート上へ積層し、この積層後に、2液型のウレタンポリマーを反応させて、高分子量のウレタン樹脂層(接着剤層)を形成している。この方法によれば、積層前の前記組成物は比較的分子量が低いため、該組成物自体の溶解性、及びフォトクロミック化合物の溶解性を低下させないという利点がある。さらに、積層後に、2液型のウレタンポリマーを反応させて高分子量ウレタンポリマーとするため、耐熱性も向上できる。
【0007】
しかしながら、この方法で得られるフォトクロミック接着剤であっても、フォトクロミック積層体そのものの密着性が十分ではなく、光学シートが剥離する問題を解消できなかった。フォトクロミックレンズは、日常生活で使用するにあたり、高湿度下や、温水と接触する場合があり、このような状況下におかれても、光学シートと該接着剤との密着性が高くなければならない。つまり、フォトクロミック積層体自体が、前記のような状況下におかれても、光学シートが強固に接合していることが望まれる。しかしながら、前記2液型のウレタンポリマーを反応させて得られるフォトクロミック性接着剤では、高いフォトクロミック特性を維持したまま、例えば、熱水と接触させた後、光学シートと該接着剤が高い密着性を維持することは困難であり、改善の余地があった。また、前記2液型のウレタンポリマーでは、イソシアネート基と水酸基の反応性が高いため、保存安定性の点でも改善の余地があった。
【0008】
その他、前記の射出成型や熱圧着以外の方法であって、「フォトクロミック積層体」を使用してレンズを製造する方法として、以下の方法が提案されている。具体的には、重合性モノマー中にフォトクロミック積層体を浸漬させた後、該重合性モノマーを重合、硬化することにより、プラスチックレンズを形成する方法である(特許文献5、6参照)。この方法によれば、重合性モノマーの種類を変えることによって、得られるレンズの性能を簡単に変えることができ、様々な性能を付与したレンズを製造することができる。また、射出成型、熱圧着と比べ、比較的低温でフォトクロミックレンズを作製できるため、熱によるレンズの歪を低減することもできる優れた方法である。
【0009】
しかしながら、本発明者等の検討によれば、特許文献5、6に記載された方法では、以下の点で改善の余地があることが分かった。特許文献5、6には、フォトクロミック接着剤として、イソシアネート基を有するウレタンポリマーと硬化剤からなる2液型の熱硬化性ウレタンポリマーを使用することが示されている。この特許文献5、6に記載された熱硬化性ウレタンポリマーを使用したところ、重合性モノマーの種類、重合条件によっては、フォトクロミック積層体から熱硬化性ウレタンポリマー、フォトクロミック化合物が重合性モノマー中に溶出する場合があった。この溶出は、フォトクロミック積層体の端部分で生じる。フォトクロミック積層体の溶出が生じた部分は、レンズから取り除く必要があるため、この溶出部分が大きくなればなるほど、レンズの有効面積がより小さくなり、改善の余地があった。また、溶出した部分をレンズから取り除くと、フォトクロミック積層体の端面がフォトクロミックレンズの端面と同一面上に存在することになるが、該熱硬化性ウレタンポリマーでは、接着性が十分ではない場合があり、レンズが剥離するといった問題が生じるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許公開2004096666号公報
【特許文献2】特表2003−519398号公報
【特許文献3】米国公開特許20050233153号公報
【特許文献4】米国公開特許20020006505号公報
【特許文献5】特開2005−181426号公報
【特許文献6】特開2005-215640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上の通り、フォトクロミック積層体を使用してフォトクロミックレンズを製造する方法において、従来技術では、フォトクロミック接着剤(フォトクロミック重合性組成物)の光学シートとの密着性、そのものの耐熱性、および組成物としての保存安定性を改善する必要があった。また、重合してレンズの母材となる重合性モノマーに対する耐溶解性(以下、耐溶剤性とする場合もある)を向上させる必要があった。これらの性能を満足するフォトクロミック重合性組成物は、射出成型・熱圧着によるフォトクロミックレンズの製造方法、及び重合性モノマー中に埋設させる方法の両方に使用できるようになる。
【0012】
したがって、本発明の第一の目的は、光学シート又はフィルムを接合するときの接着層(接着剤)として使用した場合に、優れた密着性、耐熱性、及び耐溶剤性に優れ、かつ優れたフォトクロミック性を発揮するフォトクロミック重合性組成物、さらには保存安定性に優れたフォトクロミック重合性組成物を提供することにある。
【0013】
また、本発明の第二の目的は、光学シート又はフィルム上がフォトクロミック性を有する接着層により接合された積層構造(例えば、フォトクロミック積層体)を含んでなる光学物品であって、密着性、耐熱性、およびフォトクロミック特性に優れた光学物品を提供することにある。
【0014】
さらに、本発明の第三の目的は、前記したような光学物品を製造するに当たり、光学シート又はフィルムとしてポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂を使用した場合であっても、外観不良を起こすことなく、光学物品を製造することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者等は前記課題を解決すべく、フォトクロミック接着層の構造と得られる光学物品の特性との関係について検討を行った。その結果、分子内に少なくとも1つのイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、分子内に少なくとも1つのオキサゾリジン環を有する化合物(以下、単に、「オキサゾリジン環含有化合物」ともいう。)とを組み合わせた重合性組成物を主成分として得られる接着層を形成することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
さらに、有機溶媒を使用しないで前記フォトクロミック接着層を形成するか、或いは有機溶媒を用いてキャスト膜を形成した後、乾燥(溶媒除去)することによって、前記フォトクロミック接着層となる“フォトクロミック化合物が分散した特定のウレタンポリマーを含んでなるフォトクロミック接着シート”を別途準備し、該“フォトクロミック接着シート”を用いてフォトクロミック積層体を製造した場合には、溶媒による悪影響が回避でき、フォトクロミック性が低下しないこと、を見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、第一の本発明は、
分子内に少なくとも1つのイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)、
分子内に少なくとも1つのオキサゾリジン環を有するオキサゾリン環含有化合物(B)、及び
フォトクロミック化合物(C)
とを含んでなることを特徴とするフォトクロミック重合性組成物である。
【0018】
また、前記フォトクロミック重合性組成物は、特に優れた効果を発揮するためには、ウレタンプレポリマー(A)含まれるイソシアネート基の総モル数をnとし、前記オキサゾリジン環を有する化合物(B)に含まれるオキサゾリジン環の総モル数をoとしたときに、
n:o=0.5〜10:1
となる量比とすることが好ましい。
【0019】
第二の本発明は、互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルムが前記フォトクロミック重合性組成物から得られる接着層を介して接合されてなる積層構造を有する光学物品である。
【0020】
さらに、第三の本発明は、前記光学物品を製造する方法であって、
平滑な基材上に有機溶媒を含む前記フォトクロミック重合性組成物を延展せしめた後に、乾燥して有機溶媒(D)を除去し、前記ウレタンプレポリマー(A)、オキサゾリジン環含有化合物(B)、フォトクロミック化合物(C)とを含むフォトクロミック接着シートを準備する工程、及び
互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルムの間に前記フォトクロミック接着シートを介在させて、少なくとも水分の存在下で該2枚の光学シート又は光学フィルムを接合することにより前記積層構造を作製する工程、
を含んでなることを特徴とする方法である。前記フォトクロミック接着シートを介在させて、水の存在下で光学シート又は光学フィルム同士を接合することにより、前記ウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基と、オキサゾリジン環含有化合物(B)のオキサゾリジン環との反応(重付加反応)が進行し、強固に光学シート又は光学フィルムを接合することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のフォトクロミック重合性組成物は、接着剤またはバインダーとして機能する。本発明の重合性組成物は、ウレタンプレポリマーと、オキサゾリジン環含有化合物との重合体からなる接着層を形成する。ポリカーボネート樹脂製などの光学シート又はフィルムをこの接着層を介して接合した積層体(フォトクロミック積層体)は、該重合体を使用しているため、優れた密着性、フォトクロミック特性(発色濃度、退色速度、耐久性)、耐熱性、及び耐溶剤性を示す。また、本発明の重合性組成物は、それ自体の保存安定性がよい。
【0022】
また、前記接着層は、優れた耐熱性を示すため、前記積層体を金型に装着し、次いで該金型にポリカーボネート樹脂の熱可塑性樹脂を射出成形することによって光学物品を製造した場合でも、密着性やフォトクロミック特性が低下し難く、光学歪が生じ難い。
【0023】
さらに、前記フォトクロミック積層体は、透明な熱硬化性樹脂を形成する重合性モノマー中に埋設し、熱硬化によってレンズを作製する手法においても有用である。つまり、本発明のフォトクロミック重合性組成物から得られる接着層(シート)は、耐溶剤性が向上しているため、重合性モノマー中に長時間曝されても、接着層のマトリックスであるウレタンポリマーの重合体、及びフォトクロミック化合物の溶出を抑制することができる。その結果、フォトクロミックレンズの有効面積を向上させることができ、生産性を高めることができる。
【0024】
また、本発明の製造方法によれば、耐溶剤性に劣るポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂からなる光学シート又はフィルムを使用しても、有機溶媒による悪影響が回避できるので、フォトクロミック性を低下させることがない。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のフォトクロミック重合性組成物は、分子内に少なくとも1つのイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)、(以下、単にA成分とする場合もある。)、オキサゾリジン環含有化合物(B)(以下、単にB成分とする場合もある。)、及びフォトクロミック化合物(C)(以下、単にC成分とする場合もある。)を含んでなることを特徴とする。
【0026】
従来技術において、フォトクロミック接着剤に使用するウレタンポリマーは、イソシアネート基を有する反応性ウレタンポリマー(プレポリマー)と、イソシアネート基と反応しうる基を有するプレポリマー(ポリオール)を混合し、塗膜を形成後、両者を反応させて高分子量化するものであった。しかし、この方法により得られる接着層は、密着性、耐熱性、耐溶剤性が不十分であるという問題があった。さらに、イソシアネート基は、水酸基との反応性が高いため、保存安定性という点においても改良の余地があった。
【0027】
これに対し、本発明の重合性組成物からなるフォトクロミック接着剤は、下記に記述するウレタンプレポリマー(A)、オキサゾリジン環含有化合物(B成分)、及びフォトクロミック化合物(C成分)を含んでなる。オキサゾリジン環は、水酸基と比較して、イソシアネート基に対して安定である。そして、水の存在下で接着層(シート)を形成した際、又は、水の存在下で該接着シートにより光学シートあるいは光学フィルム同士を接合した際に、オキサゾリジン環は、開環してイソシアネート基と反応(重付加反応)し、ウレア結合を含む架橋構造のウレタンポリマーを形成する。そのため、本発明のフォトクロミック重合性組成物は、より凝集力の強いウレタンポリマーを形成できる。その結果、接着層の主成分となる該フォトクロミック重合性組成物の重合体は、耐熱性、耐溶剤性が向上し、前記の問題点を解決できるものと推定される。また、前記の理由から、A成分とB成分とを混合した際にも、従来の2液型ウレタンポリマーよりも比較的安定であり、優れた保存安定性を示すものと考えられる。
【0028】
以下、これらA成分、B成分、及びC成分について説明する。
【0029】
(A成分:分子内に少なくとも1つのイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー)
本発明で使用されるウレタンプレポリマー(A)は、分子内に少なくとも1つのイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーである。
【0030】
このA成分は、特に制限されるものではないが、以下の方法で製造することが好ましい。具体的は、A成分は、耐熱性、耐溶剤性、密着性、およびフォトクロミック特性の観点から、
(A1)分子内に2つ以上の水酸基を有する数平均分子量400〜3000のポリオール化合物(以下、単にA1成分ともいう。)と、
(A2)分子内に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(以下、単にA2成分ともいう。)
とを反応させて製造することが好ましい。以下、これらの成分について説明する。
【0031】
(A1成分:ポリオール化合物)
A1成分のポリオール化合物は、ウレタンプレポリマー(A)が高架橋体になり過ぎないという理由から分子中に含まれる水酸基数は2〜6であることが好ましい。更に、有機溶剤への溶解性を考慮すれば、該水酸基数は2〜3であることがより好ましい。
【0032】
A1成分の数平均分子量は、400〜3000であることが好ましい。このA1成分はポリマーであり、そのため、分子量は数平均分子量で示す。得られるA成分の耐熱性、及びフォトクロミック重合性組成物のフォトクロミック特性(発色濃度、退色速度、耐候性など)、中でも、フォトクロミック化合物の耐候性の観点から、数平均分子量は、400〜2500であることが好ましく、400〜1500であることがより好ましい。
【0033】
また、A1成分としては公知のポリオール化合物を何ら制限なく使用することが可能である。具体的には、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエステルポリオールなどのポリオール化合物を使用することが好ましい。これらは単独で使用してもよく、2種類以上を併用しても構わない。その中でも、耐熱性、密着性、耐候性、耐加水分解性などの観点から、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオールを使用することが好ましい。以下、A1成分として使用される各種化合物について詳しく説明する。
【0034】
(ポリエーテルポリオール)
A1成分として使用されるポリエーテルポリオールとしては、“分子中に活性水素含有基を2個以上有する化合物”と“アルキレンオキサイド”との反応により得られるポリエーテルポリオール化合物及び該ポリエーテルポリオール化合物の変性体であるポリマーポリオール、ウレタン変性ポリエーテルジポリオール、ポリエーテルエステルコポリマーポリオール等を挙げることが出来る。
【0035】
なお、前記“分子中に活性水素含有基を2個以上有する化合物”としては、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、トリエタノールアミン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどが挙げられ、これらは単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても構わない。また、前記“アルキレンオキサイド”としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物が挙げられ、これらは単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても構わない。
【0036】
このようなポリエーテルポリオールは、試薬としてまたは工業的に入手可能であり、市販されているものを例示すれば、旭硝子株式会社製「エクセノール(登録商標)」シリーズ、「エマルスター(登録商標)」、株式会社ADEKA製「アデカポリエーテル」シリーズなどを挙げることができる。
【0037】
(ポリカーボネートポリオール)
A1成分として使用されるポリカーボネートポリオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−4−ブチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールA のエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類の1種類以上ポリオールのホスゲン化より得られるポリカーボネートポリオール、或いはエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、及びジフェニルカーボネートによるエステル交換法により得られるポリカーボネートポリオール等を挙げることができる。
【0038】
これらポリカーボネートポリオールは、試薬としてまたは工業的に入手可能であり、市販されているものを例示すれば、旭化成ケミカルズ株式会社製「デュラノール(登録商標)」シリーズ、株式会社クラレ製「クラレポリオール(登録商標)」シリーズ、ダイセル化学工業株式会社製「プラクセル(登録商標)」シリーズ、日本ポリウレタン工業株式会社製「ニッポラン(登録商標)」シリーズ、宇部興産株式会社製「ETERNACOLL(登録商標)」シリーズなどを挙げることができる。
【0039】
本発明のA1成分としては、耐熱性、密着性、耐候性、耐加水分解性などの観点から、ポリカーボネートポリオールを使用することが好ましい。特に、ポリカーボネート樹脂からなる光学シート又はフィルムを接合して積層体を製造する場合においては、接着層と被接着層とが同じ骨格を有し、親和性が向上することにより密着性が安定するため、ポリカーボネートポリオールを用いたA1成分を使用することが好ましい。
【0040】
(ポリカプロラクトンポリオール)
A1成分として使用されるポリカプロラクトンポリオールとしては、ε−カプロラクトンの開環重合により得られる化合物が使用できる。
【0041】
このようなポリカプロラクトンポリオールは、試薬としてまたは工業的に入手可能であり、市販されているものを例示すれば、ダイセル化学工業株式会社製「プラクセル(登録商標)」シリーズなどを挙げることができる。
【0042】
(ポリエステルポリオール)
A1成分として使用されるポリエステルポリオールとしては、“多価アルコール”と“多塩基酸”との縮合反応により得られるポリエステルポリオールなどを挙げることができる。ここで、前記“多価アルコール”としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、3,3−ビス(ヒドロキシメチル)ヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどが挙げられ、これらは単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても構わない。また、前記“多塩基酸”としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、これらは単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても構わない。
【0043】
これらポリエステルジオールは、試薬としてまたは工業的に入手可能であり、市販されているものを例示すれば、DIC株式会社製「ポリライト(登録商標)」シリーズ、日本ポリウレタン工業株式会社製「ニッポラン(登録商標)」シリーズ、川崎化成工業株式会社製「マキシモール(登録商標)」シリーズなどを挙げることができる。
【0044】
(A2成分:ポリイソシアネート化合物)
本発明でA2成分として使用される“分子内に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物”としては、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環式ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物、及びこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、耐候性の観点から、脂肪族ポリイソシアネート化合物、及び脂環式ポリイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネート化合物を使用することが好ましい。また、特に耐候性を向上させる観点から、A2成分のポリイソシアネート化合物の30質量%以上、特に50質量%以上が、脂肪族ポリイソシアネート化合物、及び脂環式ポリイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネート化合物であることが好ましい。最も好ましい態様としては、A2成分の100質量%が、脂肪族ポリイソシアネート化合物、及び脂環式ポリイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネート化合物である。
【0045】
A2成分のポリイソシアネート化合物において、分子内に含まれるイソシアネート基の数は2以上であればよい。
【0046】
A2成分として好適に使用できるポリイソシアネート化合物を例示すれば、
ジエチレンジイソシアネート、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、オクタメチレン−1,8−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート化合物、
シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、2,4−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、2,6−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネート、1,9−ジイソシアナト−5−メチルノナン、1,1−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトシクロヘキシル)メチル]−1−メチルシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)シクロヘキシルイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート化合物、
フェニルシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)の異性体混合物、トルエン−2,3−ジイソシアネート、トルエン−2,4−字イソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、フェニレン−1,3−ジイソシアネート、フェニレン−1,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、キシリレンジイシシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、1,3−ジイソシアナトメチルベンゼン、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメトキシ(1,1’−ビフェニル)、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルビフェニル、1,2−ジイソシアナトベンゼン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)−2,3,5,6−テトラクロロベンゼン、2−ドデシル−1,3−ジイソシアナトベンゼン、1−イソシアナト−4−[(2−イソシアナトシクロヘキシル)メチル]2−メチルベンゼン、1−イソシアナト−3−[(4−イソシアナトフェニル)メチル)−2−メチルベンゼン、4−[(2−イソシアナトフェニル)オキシ]フェニルイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート化合物、
1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、2−イソシアナトエチル(2,6−ジイソシアナト)ヘキサノエート、1−メチルベンゼン−2,4,6−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4,4’−トリイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、及び前記ジイソシアネート化合物の3量体からなるイソシヌレート化合物などのトリイソシアネート化合物を挙げることができる。
【0047】
これらの中でも、得られるフォトクロミック重合性組成物の耐候性の観点から、前記の通り、A2成分のポリイソシアネート化合物の30質量%以上、特に50質量%以上が、脂肪族ポリイソシアネート化合物、及び脂環式ポリイソシアネート化合物から選ばれる少なくとも1種のポリイソシアネート化合物であることが好ましい。好適な化合物を具体的に例示すると、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、オクタメチレン−1,8−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、2,4−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、2,6−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、2−イソシアナトエチル(2,6−ジイソシアナト)ヘキサノエート;脂肪族ジイソシアネート化合物、及び脂環式ジイソシアネート化合物の3量体からなるイソシヌレート化合物が挙げられる。これらのポリイソシアネート化合物は、単独で使用してもよく、2種類以上を併用しても構わない。
【0048】
本発明で使用するウレタンプレポリマー(A)は、前記A1成分、及びA2成分から合成することができる。中でも、より優れた効果を発揮するためには、A成分は、分子内に2つ以上のイソシアネート基と反応しうる基を有する鎖延長剤、及び分子内にイソシアネート基と反応しうる基を1つ有する反応停止剤を使用して合成したものであってもよい。ただし、これら鎖延長剤、及び反応停止剤を使用する場合には、製造されるA成分は、必ず、分子内に少なくとも1つのイソシアネート基を有するような割合で該鎖延長剤、及び反応停止剤を使用したものでなければならない。この鎖延長剤(以下、A3成分ともいう)、及び反応停止剤(以下、A4成分ともいう。)について説明する。
【0049】
(A3成分:鎖延長剤)
A3成分として使用される鎖延長剤は、分子内に2つ以上のイソシアネート基と反応しうる基を有する分子量50〜300の化合物である。なお、鎖延長剤はポリマーではないため、該分子量は、鎖延長剤そのものの分子量を指す。また、イソシアネート基と反応しうる基とは、アミノ基(−NH基、及び−NH(R)基、Rは置換基)、水酸基(−OH基)、メルカプト基(−SH基:チオール基)、カルボキシル基〔−C(=O)OH基〕、又は酸クロライド基〔−C(=O)OCl基〕である。
【0050】
該A3成分は、ウレタンプレポリマー(A)を合成する際の鎖延長剤として機能するものであり、鎖延長剤としてA3成分を用いることにより、本発明のウレタンプレポリマー(A)の分子量、耐熱性、フォトクロミック特性などの制御が可能となる。該鎖延長剤の分子量が50未満の場合には、得られるウレタンプレポリマー(A)が硬くなりすぎる傾向がある。また、得られるフォトクロミック重合性組成物の耐熱性は向上するものの、密着性やフォトクロミック特性が低下する傾向にある。一方で、該鎖延長剤の分子量が300を越える場合には、得られるウレタンプレポリマー(A)が柔らかくなりすぎる傾向がある。そのため、得られるフォトクロミック重合性組成物の耐熱性、密着性、フォトクロミック特性のいずれも低下する傾向にある。以上のことから、該鎖延長剤の分子量は、50〜250であることがより好ましく、55〜200であることが最も好ましい。
【0051】
A3成分は、ジアミン化合物、トリアミン化合物、アミノアルコール化合物、アミノカルボン酸化合物、アミノチオール化合物、ジオール化合物、及びトリオール化合物から選ばれる少なくとも1種の鎖延長剤であることが好ましい。以下、ジアミン化合物、トリアミン化合物、アミノアルコール化合物、アミノカルボン酸化合物、アミノチオール化合物をまとめて、アミノ基含有化合物とする場合もある。アミノ基含有化合物としては、分子内に少なくとも2つ以上のイソシアネート基と反応する基を有し、その内の少なくとも1つがアミノ基(−NH基、及び−NH(R)基、Rは置換基)であり、アミノ基以外のイソシアネート基との反応性基は、水酸基(−OH基)、メルカプト基(−SH基:チオール基)、カルボキシル基〔−C(=O)OH基〕、又は酸クロライド基〔−C(=O)OCl基〕である。
【0052】
A3成分のアミノ基含有化合物として好適に使用される化合物を例示すれば、ジアミン化合物、及びトリアミン化合物として、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,3−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、ピペラジン、N,N−ビス−(2−アミノエチル)ピペラジン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス−(4−アミノ−3−ブチルシクロヘキシル)メタン、1,2−、1,3−及び1,4−ジアミノシクロヘキサン、ノルボルネンジアミン、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジン、フェニレンジアミン、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジプロピルエチレンジアミン、N,N’−ジブチルエチレンジアミン、N−メチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,2,5−ペンタントリアミン等を挙げることができる。
【0053】
また、アミノアルコール化合物としては、2−アミノエタノール、3−アミノプロパノール、4−アミノブタノール、5−アミノペンタノール、6−アミノヘキサノール、2−ピペリジンメタノール、3−ピペリジンメタノール、4−ピペリジンメタノール、2−ピペリジンエタノール、4−ピペリジンエタノール等を挙げることができる。
【0054】
アミノカルボン酸としては、グリシン、アラニン、リシン、ロイシン等を挙げることができる。
【0055】
アミノチオールとしては、1−アミノチオール、2−アミノエタンチオール等を挙げることができる。
【0056】
また、A3成分のジオール化合物、及びトリオール化合物として好適に使用される化合物を例示すれば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−ビス(ヒドロキシエチル)−シクロヘキサン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン等を挙げることができる。
【0057】
以上のアミノ基含有化合物、ジオール化合物、及びトリオール化合物などの鎖延長剤は、単独で使用してもよく、2種類以上を併用しても構わない。
【0058】
前記鎖延長剤においては、耐熱性、密着性、フォトクロミック化合物の耐久性などの観点から、アミノ基含有化合物を使用することが好ましく、特にジアミン化合物を使用することがより好ましい。この理由は、A成分を合成する際に、アミノ基含有化合物を用いることにより、ウレタンプレポリマー(A)がウレア結合を有することになり、分子の剛直性が高くなると共に、分子鎖間の水素結合がより強固になると考えられる。その結果、フォトクロミック重合性組成物の耐熱性が向上するものと推定している。また、フォトクロミック化合物の耐久性が向上することに関しては、ウレア結合の存在により分子鎖間の水素結合がより強固となることによって、空気中の酸素がウレタンポリマー中へ拡散し難くなり、フォトクロミック化合物の光酸化劣化が抑制されたためであると推定している。さらに、密着強度が向上することに関しては、ウレア結合の存在により分子鎖間の水素結合が強固となって樹脂の凝集破壊が起こりにくくなったためであると推定している。
【0059】
(A4成分:分子内に1つのイソシアネート基と反応しうる基を有する反応停止剤(反応停止剤))
本発明で用いるウレタンプレポリマー(A)を合成する際に、分子内に1つのイソシアネート基と反応しうる基を有する反応停止剤(以下、単にA4成分ともいう。)を併用することも可能である。
【0060】
A4成分としては、分子内に1つのイソシアネート基と反応しうる基を有する反応停止剤であり、該A4成分を用いることにより、ウレタンプレポリマー(A)の末端をイソシアネート基以外の非反応性基に変換することができる。ただし、本発明のウレタンプレポリマー(A)は、分子内に必ず1つのイソシアネート基を有するものでなければならない。
【0061】
前記イソシアネート基と反応しうる基とは、アミノ基(−NH基、及び−NH(R)基)、水酸基(−OH基)、メルカプト基(−SH基:チオール基)、カルボキシル基〔−C(=O)OH基〕、又は酸クロライド基〔−C(=O)OCl基〕が挙げられる。
【0062】
この反応停止剤は、イソシアネート基と反応しうる基を分子内に1つだけ有する。2つ以上該基が存在すると、A4成分との反応により得られるA成分が高分子量化し、有機溶剤希釈時に高粘度になるため、塗膜が困難になる場合がある。また、得られるフォトクロミック接着剤の接着性(光学シートとの密着性)を低下させる傾向にある。該反応停止剤をウレタンプレポリマー(A)に導入することにより、ウレタンプレポリマーの数平均分子量を制御することが可能となり、密着性、耐熱性、及びフォトクロミック特性を容易に目的の物性に調整できる。
【0063】
また、該反応停止剤は、その分子内に、ピペリジン構造、ヒンダードフェノール構造、トリアジン構造、またはベンゾトリアゾール構造を有する化合物を用いることが好ましい。その理由は、前記のピペリジン構造、ヒンダードフェノール構造、トリアジン構造、またはベンゾトリアゾール構造が、光安定化効果(ピペリジン構造)、酸化防止効果(ヒンダードフェノール構造)、または紫外線吸収効果(トリアジン構造、又はベンゾトリアゾール構造)を発揮する部位となるからである。これらの構造を有する反応停止剤を使用することにより、A成分であるウレタンプレポリマー自体、及びフォトクロミック化合物の耐久性(光安定性、酸化防止性能、紫外線吸収性能)を向上することができる。また、ヒンダードアミンや酸化防止剤といった添加剤の添加量を減少させることができるため、添加剤の添加による密着性の低下を改善することができる。中でも、フォトクロミック化合物の耐久性を向上させるためには、ピペリジン構造を有する化合物を使用することが好ましい。
【0064】
A4成分として好適に使用される反応停止剤としては、例えば、ピペリジン構造を有するものとしては、以下の化合物が挙げられる。具体的には、1−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン、1−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−アミノピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−アミノピペリジンなどのピペリジン構造を分子内に有し、1つのイソシアネート基と反応しうる基を有する反応停止剤が挙げられる。また、この他、ヒンダードフェノール構造、トリアジン構造、またはベンゾトリアゾール構造を分子内に有し、1つの1つのイソシアネート基と反応しうる基を有する反応停止剤を使用することもできる。
【0065】
前記A4成分は、得られるフォトクロミック重合性組成物の耐候性の向上を目的として、ウレタンプレポリマー(A)の分子末端に導入することが好ましい。分子末端に導入することにより、ウレタン樹脂本来の耐熱性、機械的強度(剥離強度)を損なわないという利点が考えられる。
【0066】
以上の反応停止剤は、単独で用いても、2種類以上を混合して用いても構わないが、ウレタンプレポリマー(A)、及びフォトクロミック化合物の耐久性を向上させるという観点から、ピペリジン構造を有する反応停止剤を用いることが好適である。
【0067】
(A成分の合成方法)
これらA1成分、A2成分、さらに必要に応じてA3成分、及びA4成分を反応させてA成分を得る場合には、例えば次のような方法によって好適にA成分を得ることができる。
【0068】
(合成方法)
A1成分とA2成分とを反応させてウレタンプレポリマーを得ることができる。必要に応じて、得られたウレタンプレポリマーに残存する末端イソシアネート基と、A3成分、及びA4を反応させることにより、A成分を製造することもできる。
【0069】
前記方法において、A1成分とA2成分との反応は、溶媒の存在下または非存在下で両者を窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下中、25〜120℃で0.5〜24時間反応させればよい。溶媒としては、メチルエチルケトン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)などの有機溶媒が使用できる。反応に際しては、A2成分であるポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基と不純物としての水との反応を避けるため、各種反応試剤及び溶媒は、予め脱水処理を行い、十分に乾燥しておくことが好ましい。また、前記反応を行う際には、ジラウリル酸ジブチルスズ、ジメチルイミダゾール、トリエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサジアミン、テトラメチル−1,2−エタンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなどの触媒を添加してもよい。触媒を使用する際の添加量としては、該A成分の合計100質量部に対して0.001〜1質量部であることが好ましい。
【0070】
前記反応により、分子鎖の末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)が生成した場合には、そのまま使用することもできる。ただし、フォトクロミック重合性組成物のさらなる耐熱性を向上させるためには、A3成分と該イソシアネート基とを反応させることが好ましい。
【0071】
A3成分と前記ウレタンプレポリマー(A)の反応は、溶媒の存在下または非存在下で両者を窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下中、25〜120℃で0.5〜24時間反応させればよい。溶媒としては、メチルエチルケトン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、DMF、DMSO、THFなどを使用することができる。
【0072】
前記反応により、分子鎖の末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)が生成した場合には、そのまま使用することもできる。ただし、フォトクロミック重合性組成物のさらなる耐候性を向上させるためには、A4成分と該イソシアネート基とを反応させることが好ましい。A4成分と前記ウレタンプレポリマー(A)との反応は、溶媒の存在下または非存在下で両者を窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下中、25〜120℃で0.5〜24時間反応させればよい。溶媒としては、メチルエチルケトン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、DMF、DMSO、THFなどを使用することができる。
【0073】
(各成分の配合割合)
前記方法において反応に使用するA1成分、A2成分、及び必要に応じて使用するA3成分、さらにはA4成分の量比は、適宜決定すればよい。ただし、A成分は、分子内に少なくとも1つのイソシアネート基を有するため、使用する成分によって、その配合量を変える必要がある。得られるフォトクロミック重合性組成物、及び該重合性組成物から得られるフォトクロミック接着シート(層)の耐熱性、接着強度、フォトクロミック特性(発色濃度、退色速度、耐候性など)のバランスの観点から、次のような量比とすることが好ましい。A成分が、A1、及びA2成分から構成される場合、A1、A2、及びA3成分から形成される場合、A1、A2、及びA4成分から形成される場合、又は、A1、A2、A3、及びA4成分から構成される場合について説明する。
【0074】
(A1、及びA2成分から構成される場合)
A成分が、A1成分、及びA2成分から構成される場合には、各成分の量比は、以下の量比を満足させることが好ましい。具体的には、
前記(A1)成分に含まれる水酸基の総モル数をn1とし、
前記(A2)成分に含まれるイソシアネート基の総モル数をn2、
としたときに、n1:n2=0.4〜0.9:1となる量比とすることが好ましい。特に優れた密着性、耐熱性を発揮するためには、0.5〜0.85:1が好ましい。
【0075】
(A1、A2、及びA3成分から構成される場合)
A成分が、A1成分、A2、及びA3成分から構成される場合には、各成分の量比は、以下の量比を満足させることが好ましい。具体的には、
前記(A1)成分のn1、前記(A2)成分のn2に加え、前記(A3)成分のイソシアネート基と反応しうる基の総モル数をn3としたときに、
n1:n2:n3=0.4〜0.85:1:0.05〜0.5となる量比とすることが好ましい。特に、優れた密着性、耐熱性を発揮するためには、0.45〜0.8:1:0.05〜0.3が好ましい。
【0076】
(A1、A2、及びA4成分から構成される場合)
A成分が、A1成分、A2、及びA4成分から構成される場合には、各成分の量比は、以下の量比を満足させることが好ましい。具体的には、
前記(A1)成分のn1、前記(A2)成分のn2に加え、前記(A4)成分のイソシアネート基と反応しうる基の総モル数をn4としたときに、
n1:n2:n4=0.4〜0.90:1:0.01〜0.09となる量比とすることが好ましい。特に、優れた密着性、耐熱性、フォトクロミック特性を発揮するためには、0.45〜0.85:1:0.01〜0.07が好ましい。得られるA成分は、分子内に1つのイソシアネート基を有するものであるから、A4成分は、上記範囲内でそれを満足する配合量としなければならない。そのため、A1、A2成分から得られる反応物にA4成分を反応させてA成分を製造する際、該反応物には、少なくともイソシアネート基が分子内に1.5個以上、好ましくは2個以上4個以下存在しなければならない。
【0077】
つまり、n4は、残存するイソシアネート基のモル数(n2−n1)の半分以下でなくてはならない。(n4≦(n2−n1)/2 を満足しなければならない)。中でも、耐熱性、フォトクロミック特性を考慮すると、
n1:n2:n4=0.6〜0.85:1:0.01〜0.07を満足し、かつ
(n2−n1)/5 ≦ n4 ≦(n2−n1)/2
を満足することが好ましい。なお、A4成分を使用した場合、A成分の分子内に含まれるイソシアネート基の数は、各成分の仕込み比、A成分の数平均分子量、イソシアネート基の滴定結果から求めることができる。この場合、イソシアネート基の数は、平均値となる。
【0078】
(A1、A2、A3及びA4成分から構成される場合)
A成分が、A1成分、A2、A3及びA4成分から構成される場合には、各成分の量比は、以下の量比を満足させることが好ましい。具体的には、n1:n2:n3:n4=0.3〜0.8:1:0.05〜0.5:0.01〜0.1となる量比とすることが好ましい。特に、優れた密着性、耐熱性、フォトクロミック特性を発揮するためには、n1:n2:n3:n4=0.35〜0.75:1:0.05〜0.3:0.01〜0.08となることが好ましい。この場合も、A4成分を使用するため、A1、A2、及びA3成分から得られる反応物にA4成分を反応させてA成分を製造する際、該反応物には、少なくともイソシアネート基が分子内に2つ以上、好ましくは3つ以上4以下存在しなければならない。つまり、n4は、残存するイソシアネート基のモル数(n2−n1−n3)の半分以下でなくてはならない。(n4≦(n2−n1−n3)/2 を満足しなければならない)。中でも、耐熱性、密着性、フォトクロミック特性を考慮すると、
n1:n2::n3:n4=0.4〜0.65:1:0.1〜0.3:0.01〜0.08を満足し、かつ、
(n2−n1−n3)/5 ≦ n4 ≦(n2−n1−n3)/2
を満足することが好ましい。この場合も、得られるA成分中のイソシアネート基の数は、平均値で求めることができる。
【0079】
なお、前記n1、n2、n3、及びn4は、各成分として用いる化合物の使用モル数と該化合物1分子中に存在する各基の数の積として求めることができる。
【0080】
(A成分の物性、イソシアネート基の数)
前記の方法で得られるA成分は、形成される接着層の耐熱性、接着強度、フォトクロミック特性(発色濃度、退色速度、耐候性など)などの観点から、その数平均分子量は、1千〜5万であることが好ましく、さらに1千〜2万であることが好ましく、特に2千〜1万であることが最も好ましい。なお、前記ウレタンポリマーの数平均分子量は、ポリエチレンオキシド換算によるゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)を用いて、カラム:Shodex KD−805、KD−804(昭和電工株式会社製)、溶離液:LiBr(10mmol/L)/DMF溶液、流速:1ml/min、検出器:RI検出器、ウレタンポリマー試料溶液:0.5%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液の条件により測定した数平均分子量である。
【0081】
また、A成分は、分子内に少なくとも1つのイソシアネート基を有するものである。この分子内に含まれるイソシアネート基の数は、密着性、耐熱性という点を考慮すると、好ましくは分子内に1.5〜5であり、さらに好ましくは、1.5〜4である。A成分の分子内に含まれるイソシアネート基の数は、各成分の仕込み比、A成分の数平均分子量、イソシアネート基の滴定結果から求めることができる。この場合、イソシアネート基の数は、平均値となる。
【0082】
(B成分:オキサゾリジン環含有化合物)
B成分は、分子内に1つ以上のオキサゾリジン環を有する化合物(オキサゾリジン環含有化合物)である。該オキサゾリジン環含有化合物は、酸素と窒素を含む飽和5員環の複素環を有する化合物であって、湿気(水)の存在下で開環し、イソシアネート基と反応して硬化するオキサゾリジン環を有する化合物である。具体的には、下記式
【0083】
【化1】

【0084】
で示される環を有する化合物である。
【0085】
このオキサゾリン環が水と反応して開環する機構は、以下の通りである。そして、生じたアミノ基と水酸基が、ウレタンプレポリマー(A)に含まれるイソシアネート基と反応する。
【0086】
【化2】

【0087】
本発明のフォトクロミック重合性組成物においては、オキサゾリジン環含有化合物(B成分)を使用することにより、フォトクロミック接着シート(層)を形成するウレタンポリマーの架橋密度を向上させることができる。そのため、該ウレタンポリマーの耐熱性、耐溶剤性を向上させるとともに、フォトクロミック化合物の耐久性、及び光学シートとフォトクロミック接着シート(層)との密着性を向上できる。さらには、A成分とB成分とを混合しただけでは瞬時に反応することがないため、フォトクロミック重合性組成物自体の保存安定性も向上する。
【0088】
オキサゾリジン環含有化合物(B成分)としては、N−ヒドロキシアルキルオキサゾリジン、及びそのポリイソシアネート化合物との付加物、オキサゾリジンシリルエーテル、カーボネートオキサゾリジン、エステルオキサゾリジンなどを挙げることができる。
【0089】
ヒドロキシアルキルオキサゾリジンとしては、例えば、アルカノールアミンとケトン又はアルデヒドとの脱水縮合反応により行うことができる。ヒドロキシアルキルオキサゾリジンの具体例としては、2−イソプロピル−3−(2−ヒドロキシエチル)オキサゾリジン、2−(1−メチルブチル)−3−(2−ヒドロキシエチル)オキサゾリジン、2−フェニル−3−(2−ヒドロキシエチル)オキサゾリジン、2−(p−メトキシフェニル)−3−(2−ヒドロキシエチル)オキサゾリジン、2−(2−メチルブチル)−3−(2−ヒドロキシエチル)−5−メチルオキサゾリジンなどが挙げられる。
【0090】
オキサゾリジンシリルエーテルは、上述のN−ヒドロキシアルキルオキサゾリジンと、トリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、トリエトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシランとの反応により得られる。
【0091】
カーボネートオキサゾリジンは、例えば、特開平5−117252号公報の方法で得られるカーボネートオキサゾリジン等が挙げられる。
【0092】
エステルオキサゾリジンは、例えば、米国特許第3661923号公報および米国特許第4138545号公報の方法で得られるエステルオキサゾリジン等の種々のエステルオキサゾリジンを用いることができる。
【0093】
その中でも、B成分に含まれるオキサゾリジン環の数は、ウレタンプレポリマー(A)と反応して得られるウレタンポリマーの架橋密度を向上させる観点から、分子内に、2つ以上含有することが好ましく、さらに好ましくは2つ以上3つ以下であることが好ましい。
【0094】
(分子内に2つ以上のオキサゾリジン環を有する化合物(多環化合物))
分子内に2つ以上のオキサゾリジン環を有する化合物(多環化合物)としては、下記一般式(2)で示されるN−ヒドロキシアルキルオキサゾリジンと、ポリイソシアネート化合物との反応生成物であることが好ましい。
【0095】
【化3】

【0096】
(式中、
、R、R、及びRは、それぞれ、水素原子、または炭素数1〜12の1価の炭化水素基であり、
、Rは、それぞれ単独に、水素または炭素数1〜20の1価の炭化水素基であり、
は、炭素数1〜10の2価の炭化水素基である。)
前記一般式(2)において、R、R、R、及びRは、水素原子、または炭素数1〜12の1価の炭化水素基である。炭化水素基としては、直鎖状あるいは分岐鎖を有する脂肪族炭化水素基、または置換基を有してもよい芳香族炭化水素基が挙げられる。中でも、原料の入手の容易さ、硬化性のよさから、水素原子、メチル基、エチル基が好ましい。
、及びRは、水素原子、または炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。炭化水素基としては、直鎖状あるいは分岐鎖を有する脂肪族炭化水素基、または置換基を有してもよい芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0097】
は、炭素数1〜10の2価の炭化水素基である。具体的には、直鎖状または分岐鎖を有する脂肪族炭化水素基である。中でも、エチレン基、プロピレン基が入手の容易さから好ましい。
【0098】
(一般式(2)で示されるN−ヒドロキシアルキルオキサゾリジンの合成)
前記一般式(2)で示されるN−ヒドロキシアルキルオキサゾリジンは、相当するアルデヒドまたはケトンと、N−ヒドロキシアルキルアミンを反応させることにより得られる。
【0099】
アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、2−メチルブチルアルデヒド、3−メチルブチルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、2−メチルペンチルアルデヒド、オクチルアルデヒド、3,5,5−トリメチルヘキシルアルデヒドなどの脂肪族アルデヒド;ベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、トリメチルベンズアルデヒド、エチルベンズアルデヒド、イソプロピルベンズアルデヒド、イソブチルでンズアルデヒド、メトキシベンズアルデヒド、ジメトキシベンズアルデヒド、トリメトキシベンズアルデヒドなどの芳香族アルデヒドが挙げられる。
【0100】
また、ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−t−ブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトンが挙げられる。
【0101】
N−ヒドロキシアルキルアミンとしては、アミノエチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、(2−ヒドロキシエチル)アミン、(2−ヒドロキシプロピル)アミン、ビス−N−(2−ヒドロキシエチル)アミン、ビス−N−(2−ヒドロキシプロピル)アミン、N−2−(ヒドロキシエチル)−N−(2−ヒドロキシプロピル)アミンなどが挙げられる。このN−ヒドロキシアルキルオキサゾリジンは、以下の方法で合成できる。
【0102】
N−ヒドロキシアルキルオキサゾリジンの合成は、前記のアルデヒドまたはケトンとヒドロキシアルキルアミンとを、トルエン中で、還流しつつ行う。反応時間は5〜20時間とすることが好ましく、8〜15時間とすることがさらに好ましい。反応時間が短いと、反応が不十分の場合があり、反応時間が長すぎると、反応性生物の分解物と推測される着色成分が生成する。
【0103】
また、この合成では、N−ヒドロキシアルキルアミンに対して、過剰量のアルデヒドまたはケトンを用いることが好ましい。具体的には、N−ヒドロキシアルキルアミン1モルに対して、アルデヒドまたはケトンを1.01〜1.1モルの範囲で過剰に用いることが好ましい。この理由として、反応生成物であるN−ヒドロキシアルキルオキサゾリジンと、原料であるN−ヒドロキシアルキルアミンの分離生成が困難であることが挙げられる。
【0104】
(多環化合物(B成分)の合成)
多環化合物(B成分)は、前記N−ヒドロキシアルキルオキサゾリジンとポリイソシアネートを反応することで得られる。
【0105】
ポリイソシアネート化合物としては、前記A2成分で例示したポリイソシアネート化合物を何ら制限なく使用することができ、単独でも、2種類以上を併用することも可能である。中でも、脂肪族ジイソシアネート化合物、又は脂環式ジイソシアネート化合物を使用することが好ましい。また、ポリイソシアネート化合物としては、前記A成分であるウレタンプレポリマーも好適に使用することができる。
【0106】
多環化合物を合成する際の、前記N−ヒドロキシアルキルオキサゾリジンとポリイソシアネート化合物の量比は、前記N−ヒドロキシアルキルオキサゾリジンのモル数に対して、ポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基のモル数を当量用いることが好ましい。
【0107】
前記N−ヒドロキシアルキルオキサゾリジンとポリイソシアネート化合物との反応は、溶媒の存在下または非存在下で両者を窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下中、25〜120℃で0.5〜24時間反応させればよい。溶媒としては、メチルエチルケトン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)などの有機溶媒が使用できる。反応に際しては、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基と不純物としての水との反応を避けるため、各種反応試剤及び溶媒は、予め脱水処理を行い、十分に乾燥しておくことが好ましい。また、前記反応を行う際には、ジラウリル酸ジブチルスズ、ジメチルイミダゾール、トリエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサジアミン、テトラメチル−1,2−エタンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなどの触媒を添加してもよい。触媒を使用する際の添加量としては、該ポリイソシアネート化合物100質量部に対して0.001〜1質量部であることが好ましい。
【0108】
本発明で使用するB成分は、例示したオキサゾリジン環含有化合物、および前記方法で製造した多環化合物を挙げることができる。次に、このB成分の配合量について説明する。
【0109】
(B成分の配合量)
本発明のフォトクロミック重合性組成物において、B成分は、得られるフォトクロミック接着層が、優れた密着性、耐熱性、フォトクロミック特性を発揮するためには、
前記ウレタンプレポリマー(A)に含まれるイソシアネート基の総モル数をnとし、
前記オキサゾリジン環含有化合物(B)に含まれるオキサゾリジン環の総モル数をoとしたときに、
n:o=0.5〜10:1
を満足するように配合されることが好ましい。
【0110】
nの比が0.5未満の場合には、得られるフォトクロミック接着層の耐熱性、耐溶剤性が不十分になるおそれがある。また、nの比が10を超える場合には、得られるフォトクロミック接着層の架橋密度が高くなり過ぎる傾向にあり、耐熱性や耐溶剤性は向上するものの、密着性、及びフォトクロミック特性が低下するおそれがある。
【0111】
よって、密着性、耐熱性、耐溶剤性、及びフォトクロミック特性などの全ての物性を十分に発揮するためには、
n:o=1〜8:1 とすることが好ましく、さらに、
n:o=1.5〜5:1 とすることが最も好ましい。
【0112】
(C成分:フォトクロミック化合物)
本発明のフォトクロミック重合性組成物でC成分として用いるフォトクロミック化合物としては、クロメン化合物、フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、スピロピラン化合物などの公知のフォトクロミック化合物を何ら制限なく使用することが出来る。これらは、単独使用でもよく、2種類以上を併用しても良い。
【0113】
前記のフルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、スピロピラン化合物およびクロメン化合物としては、例えば特開平2−28154号公報、特開昭62−288830号公報、WO94/22850号パンフレット、WO96/14596号パンフレットなどに記載されている化合物を挙げることができる。
【0114】
特に、クロメン化合物としては前記特許文献に記載されたもの以外にも、優れたフォトクロミック性を有するクロメン化合物が知られており、このようなクロメン化合物はB成分として好適に使用できる。このようなクロメン化合物としては、特開2001−031670号、特開2001−011067号、特開2001−011066号、特開2000−344761号、特開2000−327675号、特開2000−256347号、特開2000−229976号、特開2000−229975号、特開2000−229974号、特開2000−229973号、特開2000−229972号、特開2000−219678号、特開2000−219686号、特開平11−322739号、特開平11−286484号、特開平11−279171号、特開平09−218301号、特開平09−124645号、特開平08−295690号、特開平08−176139号、特開平08−157467号、米国特許5645767号公報、米国特許5658501号公報、米国特許5961892号公報、米国特許6296785号公報、日本国特許第4424981号公報、日本国特許第4424962号公報、WO2009/136668号パンフレット、WO2008/023828号パンフレット、日本国特許第4369754号公報、日本国特許第4301621号公報、日本国特許第4256985号公報、WO2007/086532号パンフレット、特開平2009−120536号、特開2009−67754号、特開2009−67680号、特開2009−57300号、日本国特許4195615号公報、日本国特許4158881号公報、日本国特許4157245号公報、日本国特許4157239号公報、日本国特許4157227号公報、日本国特許4118458号公報、特開2008−74832号、日本国特許3982770号公報、日本国特許3801386号公報、WO2005/028465号パンフレット、WO2003/042203号パンフレット、特開2005−289812号、特開2005−289807号、特開2005−112772号、日本国特許3522189号公報、WO2002/090342号パンフレット、日本国特許第3471073号公報、特開2003−277381号、WO2001/060811号パンフレット、WO00/71544号パンフレット等に開示されている。
【0115】
これら他のフォトクロミック化合物の中でも、発色濃度、初期着色、耐久性、退色速度などのフォトクロミック特性の観点から、インデノナフト「2,1−f」ナフト「2,1−b」ピラン骨格を有するクロメン化合物を1種類以上用いることがより好ましい。さらにこれらクロメン化合物中でもその分子量が540以上の化合物は、発色濃度および退色速度に特に優れるため好適である。その具体例として、以下のものが挙げられる。
【0116】
【化4】

【0117】
【化5】

【0118】
【化6】

【0119】
【化7】

【0120】
【化8】

【0121】
【化9】

【0122】
【化10】

【0123】
【化11】

【0124】
【化12】

【0125】
(C成分の配合量)
本発明のフォトクロミック重合性組成物におけるC成分の配合量は、フォトクロミック特性の観点から、A成分、及びB成分の合計100質量部に対して0.01〜20質量部とすることが好適である。前記配合量が少なすぎる場合には、十分な発色濃度や耐久性が得られない傾向があり、多すぎる場合には、フォトクロミック化合物の種類にもよるが、A成分とB成分に対しフォトクロミック重合性組成物が溶解しにくくなり、組成物の均一性が低下する傾向があるばかりでなく、接着力(密着力)が低下する傾向もある。発色濃度や耐久性といったフォトクロミック特性を維持したまま、プラスチックフィルムなどの光学基材との密着性を十分に保持するためには、C成分の添加量はA成分、及びB成分の合計100質量部に対して、0.5〜10質量部、特に1〜5質量部とすることがより好ましい。
【0126】
また、本発明のフォトクロミック重合性組成物には、有機溶媒(D)(以下、単に(D成分)とする場合もある。)、水、イソシアネート化合物、その他添加剤を配合することもできる。
【0127】
(D成分:有機溶媒)
本発明のフォトクロミック重合性組成物に有機溶媒を配合することにより、ウレタンプレポリマー(A)、オキサゾリジン環含有化合物(B成分)、フォトクロミック化合物(C成分)、及びその他の成分が混合しやすくなる。その結果、フォトクロミック重合性組成物の均一性を向上させることができる。さらに、有機溶媒を使用することにより、フォトクロミック重合性組成物の粘度を適度に調製することができる。そして、光学シート又はフィルムに本発明のフォトクロミック重合性組成物を塗布するときの操作性および塗布膜の厚みの均一性を高くすることもできる。
【0128】
光学シート又はフィルムとして有機溶媒に侵され易い材質のものを使用した場合には、外観不良が生じたり、フォトクロミック特性が低下したりするという問題が発生することが懸念される。ただし、このような問題は、下記に記述する本発明の方法を採用することにより回避することが出来る。また、本発明のフォトクロミック重合性組成物においては、後述するように、様々な種類の溶媒が使用できる。そのため、有機溶媒として光学シート又はフィルムを侵し難い溶媒を選択して使用することによっても前記問題の発生を防止することができる。
【0129】
D成分として好適に使用できる有機溶媒を例示すれば、ジアセトンアルコール;メチルエチルケトン;トルエン;ヘキサン;ヘプタン;酢酸エチル;DMF;DMSO;THF;シクロヘキサノン;及びこれらの組み合せを挙げることができる。これらの中から、使用するA成分の種類や光学シート又はフィルムの材質に応じて適宜選定して使用すればよい。
【0130】
光学シート又はフィルムに本発明のフォトクロミック重合性組成物を塗布した際の塗布層の平滑性、又は下記に記述する本発明の方法を採用した場合のフォトクロミック接着性層(シート)の平滑性を考慮すると、前記有機溶媒は、90℃未満の沸点を有する有機溶媒と、90℃以上の沸点を有する有機溶剤を混合して用いることが好適である。このような組み合わせの有機溶媒を使用することにより、前記平滑性に加え、有機溶媒の除去が容易となり、乾燥速度を速めることもできる。沸点が90℃未満、90℃以上の有機溶媒の配合割合は、使用する他の成分に応じて適宜決定すればよい。中でも、優れた効果を発揮するためには、全有機溶媒量を100質量%としたとき、沸点が90℃未満の有機溶媒が20〜80質量%、沸点が90℃以上の有機溶媒が80〜20質量%とすることが好ましい。
【0131】
また、D成分を使用する場合の配合量は、前記したようなD成分添加により得られる効果の観点から、A成分、及びB成分の合計100質量部に対して、5〜900質量部、特に100〜750質量部とすることが好ましく、200〜600質量部とすることが最も好ましい。
【0132】
(水)
本発明のフォトクロミック重合性組成物に水を配合することにより、オキサゾリジン環含有化合物(B)を開環させ、塗膜時のウレタンプレポリマー(A)とオキサゾリジン環含有化合物(B)との反応を容易に進行させることができる。
【0133】
水を配合する場合には、オキサゾリジン環含有化合物(B)に含まれるオキサゾリジン環のモル数に対して、0.1〜5モル倍になる範囲で配合することが好ましい。また、水を配合する場合には、本発明のフォトクロミック重合組成物を使用する直前に混合することが好ましい。また、水は、大気中の湿気により、代用することも可能である。
【0134】
(分子内に少なくとも1つのイソシアネート基を有するイソシアネート化合物)
本発明のフォトクロミック重合性組成物には、分子内に少なくとも1つのイソシアネート基を有するイソシアネート化合物を配合することも可能である。該イソシアネート化合物としては、公知のイソシアネート化合物を何ら制限なく使用することができる。これらは、単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0135】
該イソシアネート化合物としては、前述のA2成分として例示したポリイソシアネート化合物に加えて、1−アダマンチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート、tert−ブチルイソシアネート、ヘキサンイソシアネート、ノニルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、4−メチルシクロヘキシルイソシアネート等の分子内に1つのイソシアネート基を有する化合物を挙げることができる。これらの中でも、分子内にイソシアネート基を2つ〜3つ有するイソシアネート化合物を使用することが好ましい。また、これらイソシアネート化合物は、分子量が1000以下であることが好ましい。該イソシアネート化合物は、ポリマーではないため、該分子量は、化合物そのものの分子量を指す。
【0136】
このイソシアネート化合物を配合する場合には、その配合量が多くなり過ぎると、オキサゾリン環含有化合物(B)と反応が進み、本発明の効果を低下させるおそれがある。そのため、該イソシアネート化合物を配合する場合には、該イソシアネート化合物のイソシアネート基のモル数が、ウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基のモル数の0.05〜0.5倍になる範囲で配合することが好ましい。
【0137】
(その他の成分)
さらに、本発明で使用するフォトクロミック重合性組成物には、フォトクロミック化合物の耐久性の向上、発色速度の向上、退色速度の向上や製膜性のために、界面活性剤、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、可塑剤等の添加剤を添加しても良い。添加するこれら添加剤としては、公知の化合物が何ら制限なく使用される。
【0138】
例えば、界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の何れも使用できるが、フォトクロミック重合性組成物への溶解性からノニオン系界面活性剤を用いるのが好ましい。好適に使用できるノニオン性界面活性剤を具体的に挙げると、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール・ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール・フィトスタノール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン・ラノリンアルコール・ミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、単一鎖ポリオキシエチレンアルキルエーテル、さらにはシリコーン系やフッ素系の界面活性剤等を挙げることができる。界面活性剤の使用に当たっては、2種以上を混合して使用してもよい。界面活性剤の添加量は、重合性基を有するウレタンポリマー(A成分)100質量部に対し、0.001〜1質量部の範囲が好ましい。
【0139】
また、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤としては、ヒンダードアミン光安定剤、ヒンダードフェノール酸化防止剤、フェノール系ラジカル補足剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、トリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等を好適に使用できる。これら酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤は、2種以上を混合して使用しても良い。さらにこれらの添加剤の使用に当たっては、界面活性剤と酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤を併用して使用しても良い。これら酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤の添加量は、ウレタンプレポリマー(A)、及びオキサゾリジン環含有化合物(B)の合計100質量部に対し、0.001〜20質量部の範囲が好ましい。但し、これらの添加剤を使用しすぎると、ポリカーボネート樹脂製の光学シート又はフィルムなどへのフォトクロミック重合性組成物の密着性が低下するため、その添加量は好ましくは7質量部以下、より好ましくは3質量部以下、最も好ましくは1質量部以下である。
【0140】
本発明で使用するフォトクロミック重合性組成物には、フォトクロミック接着シートと光学シートの密着性を向上させる目的で、粘着剤を添加してもよい。具体的には、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、フェノール樹脂、水添テルペン樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤などが挙げられる。
【0141】
本発明で使用するフォトクロミック重合性組成物には、フォトクロミック接着シートの耐熱性の向上、及び重合性モノマーへの溶解性を低減させる目的で、無機酸化物微粒子、及び有機/無機複合材料などを添加してもよい。無機酸化物微粒子としては、メタノール、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどの等の有機溶剤に分散したシリカゾルなどの金属酸化物ゾル、有機/無機ハイブリッド材料としては、シリカ/メラミンハイブッリド材料、シリカ/ウレタンハイブリッド材料、シリカ/アクリルハイブリッド材料、シリカ/エポキシ樹脂ハイブリッド材料等が挙げられる。
【0142】
(フォトクロミック重合性組成物の製造方法)
本発明のフォトクロミック重合性組成物は、前記A成分、B成分、C成分、及びその他の成分を混合することにより製造できる。各成分を混合する順序は、特に制限されるものではない。
【0143】
たとえば、有機溶媒を使用しない場合、各主成分を溶融混練してフォトクロミック重合性組成物としペレット化することも可能である。また、そのままシート成型することも可能である。また、有機溶剤を使用する場合には、各主成分を有機溶剤に溶かすことでフォトクロミック重合性組成物を得ることができる。
【0144】
本発明のフォトクロミック重合性組成物は、水を配合してもよいが、この場合、早い段階でオキサゾリン環含有化合物(B)を接触しないように配合されることが好ましい。そのため、水を配合する場合には、使用直前に水を配合することが好ましい。
【0145】
また、この水は、前記の通り、湿気で代用することもできる。そのため、下記に詳述する接着層を形成する工程、及び該接着層を介して光学シート又は光学フィルムを接合する工程の少なくともいずれか一方の工程を、湿気存在下で実施すれば、水を配合する効果が発揮される。特に、光学シート又は光学フィルムを接合する工程を湿気存在下で実施することが好ましい。
【0146】
このようにして得られた本発明のフォトクロミック重合性組成物は、フォトクロミック接着剤、特にポリカーボネート樹脂製の光学シート又はフィルムどうしを接合するためのフォトクロミック接着剤(層)として好適に使用できる。そして、本発明のフォトクロミック重合性組成物からなる接着層を介して光学シート又は光学フィルムを互いに接合することにより、本発明の光学物品を得ることができる。以下、該本発明の光学物品及び該光学物品の製造方法について説明する。
【0147】
(本発明の光学物品)
本発明の光学物品は、互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルムが本発明のフォトクロミック重合性組成物からなる接着層を介して接合されてなる積層構造を含んでなる。このような光学物品としては、
前記積層構造のみからなるフォトクロミック積層シート又はフィルム(以下、単に、本発明の積層体ともいう。);
これら積層体に光学シート又はフィルムを更に積層したり、表面にハードコート層などのコート層を形成したりした複合積層体;
これら積層体、及び複合積層体をプラスチックレンズ本体などの光学基材と一体化した光学物品
などを挙げることができる。プラスチックレンズ本体などの光学基材と一体化する方法としては、たとえば、前記本発明の積層体を金型内に装着した後にポリカーボネート樹脂などの光学基材(たとえばレンズ本体)を構成するための熱可塑性樹脂を射出成形する方法(以下、単に射出成形法ともいう。)、光学基材の表面に接着剤などにより前記本発明の積層体等を貼付する方法、積層体を重合性モノマー中に埋設し、重合性モノマーを重合する方法などを挙げることができる。以下、本発明の光学物品を構成するこれら材料或いは部材について説明する。
【0148】
(光学シート、及びフィルム)
本発明において、光学シート、及び光学フィルムとしては、光透過性を有するシート、及びフィルムが特に制限なく使用できるが、入手の容易性および加工のし易さなどの観点から樹脂製のものを使用することが好適である。光学シート、及び光学フィルムの原料として好適な樹脂を例示すれば、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ナイロン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などが挙げられる。その中でも、密着性が良好で射出成形法に対する適用性が高いという理由からポリカーボネート樹脂が特に好ましい。また、偏光フィルム(例えば、ポリビニルアルコール製の偏光フィルムをトリアセチルセルロース樹脂フィルムではさんだもの)も、本発明の光学フィルムとして使用することが可能である。
【0149】
また、本発明における互いに対向する2枚の光学シートは、同一の樹脂からなるシートであってもよいし、異なる樹脂からなるシートであってもよい。
【0150】
この光学シート又は光学フィルムの厚みは、特に制限されるものではないが、通常、50μm〜1mmであり、0.1mm〜0.5mmであることが好ましい。50μmより薄い場合には、母材となる重合性モノマー中に該光学シートまたはフィルムを埋設した状態で硬化させる際に、光学シート又はフィルムに歪が生じる。その一方で、光学シート又はフィルムの厚さが1mmを超える場合、得られるフォトクロミックレンズが厚くなりメガネ用途として好ましくなく、また曲面加工が困難となる。
【0151】
また、本発明で使用される光学シート又は光学フィルムは、公知の手法で改質したものを使用することもできる。例えば、前記フォトクロミック重合性組成物による密着性をさらに向上させるため、表面を改質したものを使用することができる。改質の手法としては、特に限定されないが、プラズマ放電処理、コロナ処理、火炎処理、酸、アルカリ薬液等による化学的処理などを挙げることができる。また、密着性向上の他、その他の機能を持たせるために、多層の光学シート又はフィルム、塗膜層を有する光学シート又はフィルムを使用することもできる。
【0152】
フォトクロミック積層体の製造方法
本発明の積層体は、互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルムを本発明のフォトクロミック重合性組成物からなる接着層(シート)を介して接合させることにより製造される。なお、前記接着層の厚さは、フォトクロミック化合物の発色濃度、耐候性および接着強度などの観点から、5〜100μm、特に10〜50μmとすることが好ましい。
【0153】
前記接着層は、用いるフォトクロミック重合性組成物の性状に応じて、次のような方法により得ることができる。すなわち、有機溶媒を配合することなどにより本発明のフォトクロミック重合性組成物が適度の粘度に調製されている場合には、一方の光学シート又は光学フィルム上に本発明のフォトクロミック重合性組成物塗布し、必要に応じて(加熱)乾燥をなった後、他の光学シート又は光学フィルムを(加熱)圧着すればよい。このとき、フォトクロミック重合性組成物の塗布方法としては、スピンコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ディップースピンコート法、ドライラミネート法などの公知の方法が何ら制限なく用いられる。フォトクロミック重合性組成物を塗布、さらに乾燥は、室温〜100℃の温度で、10〜100%RHの湿度下で実施されることが好ましい。乾燥をこの条件で実施することにより、B成分のオキサゾリジン環の加水分解反応が促進し、より優れた密着力、耐熱性、耐溶剤性が得られる。
【0154】
また、有機溶媒を含む本発明のフォトクロミック重合性組成物を使用する場合には、平滑な基材上に本発明のフォトクロミック重合性組成物を延展せしめた後に、乾燥して有機溶媒(D)を除去し、ウレタンプレポリマー(A)、オキサゾリジン環含有化合物(B)、及びフォトクロミック化合物(C)とを含むフォトクロミック接着シートを準備する工程、及び、互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルムの間に前記フォトクロミック接着シートを介在させて、水の存在下で該2枚の光学シート又は光学フィルムを接合する工程を実施することにより、本発明の積層体を製造することもできる。
【0155】
前記平滑な基材の材質としては、本発明で使用する溶剤に耐性があるもの、また本発明のウレタンポリマーが剥離しやすいものが好ましく、具体的に例示すれば、ガラス、ステンレス、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。このような方法を採用した場合には、溶媒の種類及び光学シート又は光学フィルムの種類によらず、溶媒の使用に起因する悪影響を排除することが可能である。
【0156】
次に、平滑な基材上で作製したフォトクロミック接着シートは、該基材から剥離し、互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルムの間に介在させる。そして、光学シート又は光学フィルムを、公知の方法、例えば、圧着(加熱圧着)することにより、接合すればよい。この際、フォトクロミック接着シートに含まれる前記ウレタンプレポリマー(A)と前記オキサゾリジン環含有化合物(B)が反応する条件下にすることにより、積層構造を形成する。
【0157】
前記ウレタンプレポリマー(A)と前記オキサゾリジン環含有化合物(B成分)が反応する条件下とは、オキサゾリジン環が水により加水分解する条件下にしてやればよい。この水は、フォトクロミック重合性組成物に配合してもよいが、湿気雰囲気下で光学シート又は光学フィルムを接合することで代用することもできる。オキサゾリジン環が加水分解することで、生成するアミノアルコールがウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基と反応することにより、架橋構造を形成する。この架橋構造が形成されることで、得られるフォトクロミック接着層が優れた耐熱性、耐溶剤性、密着性を発揮する。具体的には、室温〜100℃の温度で、10〜100%RHの湿度下で実施されることが好ましく、室温〜80℃の温度で、50〜100%RHの湿度下で実施されることがさらに好ましい。
【0158】
有機溶媒を含まない本発明のフォトクロミック重合性組成物を使用する場合には、共押し出し成型などにより、フォトクロミック接着シートを作製することも可能である。そして、この接着シートを使用して、フォトクロミック積層体を製造すればよい。
【0159】
以上のような方法により得られたフォトクロミック積層体は、そのまま使用することもできるが、以下の方法により、その状態を安定化させて使用することもできる。この安定化処理の際に、前記ウレタンプレポリマー(A)と前記オキサゾリジン環含有化合物(B成分)を反応させることもできる。具体的には、接合したばかりの積層体を20℃以上60℃以下の温度で12時間以上静置しておくことが好ましい。静置する時間の上限は、特に制限されるものではないが、50時間もあれば十分である。さらに、この静置した積層体を80℃以上130℃以下の温度下、30分以上3時間以下放置しておくことが好ましい(以下、加熱処理とする)。この加熱処理により、開環したオキサゾリン環含有化合物(B)と、ウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基は、ほんとんどのものが反応すると考えられる。そのため、互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルムの間に前記フォトクロミック接着シートを介在させ、その後、接合した積層体を、前記条件で静置した後、前記加熱処理を行うことにより、フォトクロミック積層体とすることが好ましい。
【0160】
フォトクロミック積層体の使用例(フォトクロミックレンズ)
前記フォトクロミック積層シートは、少なくともその一方の面に、光学基材を接合して使用することが好ましい。該光学基材としては、上述のようなポリカーボネート樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。この場合、射出成型・熱圧着により、熱可塑性樹脂をフォトクロミック積層体上に積層することができる。本発明のフォトクロミック重合性組成物よりなる接着シートは、密着性、耐熱性が向上しているため、このような方法でフォトクロミックレンズを製造する場合に好適に使用できる。
【0161】
また、前記フォトクロミック積層体は、重合性モノマー中に埋設した後、該重合性モノマーを硬化させることにより、熱硬化性樹脂を該積層体上に積層することができる。重合性モノマーとしては、(メタ)アクリレートモノマー組成物、アリルモノマー組成物、チオウレタン系モノマー組成物、ウレタン系モノマー組成物、チオエポキシ系モノマー組成物などの熱硬化性樹脂を形成できるものを挙げることができる。本発明のフォトクロミック重合性組成物よりなる接着シートは、耐溶剤性が向上しているため、このような方法でフォトクロミックレンズを製造する場合にも好適に使用できる。
【実施例】
【0162】
以下に例示するいくつかの実施例によって、本発明をさらに詳しく説明する。これらの実施例は、単に、本発明を説明するためのものであり、本発明の精神及び範囲は、これら実施例に限定されるものではない。以下に、実施例及び比較例で各成分として使用した化合物等の略号を纏める。
【0163】
(A1成分;ポリオール化合物)
PL1:旭化成ケミカルズ株式会社製デュラノール(1,5−ペンタンジオールとヘキサンジオールを原料とするポリカーボネートジオール、数平均分子量800)。
PL2:旭硝子株式会社製ポリプロピレンジオール(数平均分子量700)
(A2成分;ポリイソシアネート化合物)
NCO1:イソホロンジイソシアネート。
NCO2:4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)。
NCO3:トルエン−2,4−ジイソシアネート。
【0164】
(A3成分;鎖延長剤)
CE1:イソホロンジアミン。
【0165】
(A4成分;反応停止剤)
S1;1−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−アミノピペリジン。
【0166】
(B成分:オキサゾリジン環含有化合物)
OX1;N−ヒドロキシエチル−2−エチルオキサゾリジン2モルとイソホロンジイソシアネート1モルの反応により得られた多環化合物。
【0167】
OX1の合成方法
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三口フラスコに、N−ヒドロキシエチル−2−エチルオキサゾリジン2モル(262g)、イソホロンジイソシアネート1モル(222g)を仕込み、窒素雰囲気下、80℃で8時間反応させ、下記式で示されるOX1を得た。
【0168】
【化13】

【0169】
OX2;N−ヒドロキシエチル−2−フェニルオキサゾリジン2モルとイソホロンジイソシアネート1モルの反応により得られた多環化合物。
【0170】
OX2の合成方法
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三口フラスコに、N−ヒドロキシエチル−2−フェニルオキサゾリジン2モル(358g)、イソホロンジイソシアネート1モル(222g)を仕込み、窒素雰囲気下、80℃で8時間反応させ、下記式で示されるOX2を得た。
【0171】
【化14】

【0172】
(C成分:フォトクロミック化合物)
PC1:下記式で示される化合物。
【0173】
【化15】

【0174】
(D成分:有機溶媒)
D1:THF(テトラヒドロフラン)。
D2:トルエン。
D3:酢酸エチル。
【0175】
(A成分:ウレタンプレポリマー(U1)の合成)
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三口フラスコに、数平均分子量800のポリカーボネートポリオール(PL1)216g、イソホロンジイソシアネート(NCO1)100gを仕込み、窒素雰囲気下、80℃で6時間反応させ、ウレタンプレポリマー(U1)を得た。得られたウレタンプレポリマー(U1)の数平均分子量は、ポリオキシエチレン換算で1,800(理論値;1,700)であった。ここで言う数平均分子量の理論値とは、原料に用いたA1成分、A2成分が、架橋することなく理論的に直線状にウレタンプレポリマーを生成した場合の分子量のことである。また、得られた(U1)のイソシアネート基を定量したところ、1分子内に平均2個のイソシアネート基を有するものであることを確認した。
【0176】
なお、イソシアネート基の定量は、以下の逆滴定法と前記数平均分子量により確認した。この逆滴定法は、先ず、得られたウレタンプレポリマーに含まれるイソシアネート基よりも、過剰量であって、濃度が既知のn−ブチルアミンを加える。n−ブチルアミンは、イソシアネート基と反応して一部が消費される。次いで、この系を酸で滴定して消費されたn−ブチルアミンの量を求めることにより、イソシアネート基の含量を求める方法である。消費されたn−ブチルアミンとイソシアネート基とは同量となる。
【0177】
逆滴定法によって求められたイソシアネート基の含有量と、前記数平均分子量の測定結果からイソシアネート基を算出した。
【0178】
(A成分:ウレタンプレポリマー(U2)の合成)
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三口フラスコに、数平均分子量800のポリカーボネートポリオール(PL1)216g、イソホロンジイソシアネート(NCO1)100gを仕込み、窒素雰囲気下、80℃で6時間反応させた。その後、THF500mlを加えた後、窒素雰囲気下でイソホロンジアミン(CE1)7.7gを滴下しながら加え、滴下終了後25℃で1時間反応させ、溶媒を減圧留去することで、ウレタンプレポリマー(U2)を合成した。得られたウレタンプレポリマー(U2)の数平均分子量は、ポリオキシエチレン換算で3千(理論値;2千)であった。また、分子内のイソシアネート基の数は、平均2個であった。
【0179】
(A成分:ウレタンプレポリマー(U3)の合成)
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三口フラスコに、数平均分子量800のポリカーボネートポリオール(PL1)216g、イソホロンジイソシアネート(NCO1)100gを仕込み、窒素雰囲気下、80℃で6時間反応させた。その後、THF500mlを加えた後、窒素雰囲気下で、イソホロンジアミン(CE1)7.7gを滴下しながら加え、滴下終了後25℃で1時間反応させ、その後1−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−アミノピペリジン(S1)7.7gを加え、25℃にて1時間反応させ、溶媒を減圧留去することで、ウレタンプレポリマー(U3)を得た。得られたウレタンプレポリマー(U3)の数平均分子量は、ポリオキシエチレン換算で4千(理論値;3千)であった。また、分子内のイソシアネート基の数は、平均1.3であった。
【0180】
(A成分:ウレタンプレポリマー(U4)〜(U11)の合成)
表1に示すポリオール化合物(A1成分)、ポリイソシアネート化合物(A2成分)、鎖延長剤(A3成分)、反応停止剤、及び反応溶媒を用い、表1に示す反応条件を用いた以外は、前述のU1〜U3の合成方法と同様にして、U4〜U11の合成を実施した。得られたウレタンプレポリマーの配合割合、合成条件、数平均分子量、及びイソシアネート基の数の結果を表1、及び表2にまとめた
【0181】
【表1】

【0182】
【表2】

【0183】
実施例1
(フォトクロミック重合性組成物の調製)
ウレタンプレポリマー(U1)4.35gに、有機溶剤としてTHF11.5gを添加し、攪拌して溶解した。ウレタンプレポリマー(U1)が溶解したのを確認後、室温まで冷却し、フォトクロミック化合物(PC1)0.25g、オキサゾリジン含有化合物(OX1)0.65gを加え、攪拌混合してフォトクロミック重合性組成物を得た。このフォトクロミック重合性組成物の保存安定性を評価したところ、下記評価方法の1であった。
【0184】
〔評価項目;フォトクロミック重合性組成物〕
(保存安定性)
得られたフォトクロミック重合性組成物を、ガラス製の容器に窒素を封入して密閉し、25℃で1ヶ月間放置した後の分子量を測定することで、保存安定性の評価を行った。評価基準は、以下に示す1〜3段階の評価で実施した。
1;保存開始時の分子量と比較して、1.0〜1.2倍以下の分子量である。
2;保存開始時の分子量と比較して、1.3〜2.0倍以下の分子量である。
3;保存開始時の分子量と比較して、2.1倍以上の分子量である。
【0185】
(フォトクロミック積層体(光学物品)の作製)
得られたフォトクロミック重合性組成物を、PET製フィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製ピューレックスフィルム、シリコン塗膜付)に塗布し、湿気の存在下(23℃、湿度50%)の実験室において、50℃で30分乾燥させ、厚み約40μmのフォトクロミック接着シートを得た。次いで、得られたフォトクロミック接着シートを、厚み400μmのポリカーボネートシート2枚の間に挟み、40℃で24時間静置した後、さらに110℃で60分加熱処理することにより、目的のフォトクロミック特性を有する積層体を得た。
【0186】
得られたフォトクロミック積層体を下記に示す方法にて評価したところ、剥離強度は初期が130N/25mm、煮沸試験後が115N/25mmであった。また、耐溶剤性については、いずれの重合性モノマー組成物に対しても、下記評価基準で1であり、良好であった。
【0187】
〔評価項目;フォトクロミック積層体〕
(剥離強度)
得られた積層体を、25×100mmの接着部分を有する試験片とし、試験機(オートグラフAG5000D、島津製作所製)に装着し、クロスヘッドスピード100mm/minで引張り試験を行い、剥離強度を測定した。試験片として用いたフォトクロミック積層体は、煮沸試験前後のものである。なお、煮沸試験のフォトクロミック積層体とは、フォトクロミック積層体を煮沸した湯の中に1時間放置したものを指す。
【0188】
(耐溶剤性)
得られたフォトクロミック積層体を、直径65mmの円形に切断し、下記に示す各種重合性モノマー組成物中に12時間室温で浸漬させた後、フォトクロミック積層体の外観を目視により評価した。さらに、フォトクロミック化合物の溶出量に関しては、高速液体クロマトグラフィーを用いて定量した。評価基準は、下記に示す通り、1〜4の4段階評価で実施した。
【0189】
(耐溶剤性の評価基準)
1;フォトクロミック積層体の端から0.2mm以下の部分で、少なくとも一部にウレタン樹脂、及びフォトクロミック化合物の溶出が見られるが、光学シートとフォトクロミック接着剤層間の剥離は見られない。フォトクロミック化合物の溶出量は、フォトクロミック積層体全体含まれる量のうち、0.5wt%以下であった。
2;フォトクロミック積層体の端から0.5mm以下の部分で、少なくとも一部にウレタン樹脂、及びフォトクロミック化合物の溶出が見られるが、光学シートとフォトクロミック接着剤層間の剥離は見られない。フォトクロミック化合物の溶出量は、フォトクロミック積層体全体含まれる量のうち、1.0wt%以下であった。
3;フォトクロミック積層体の端から1.0mm未満の部分で、少なくとも一部にウレタン樹脂、及びフォトクロミック化合物の溶出が見られるが、光学シートとフォトクロミック接着剤層間の剥離は見られない。フォトクロミック化合物の溶出量は、フォトクロミック積層体全体含まれる量のうち、2.0wt%未満であった。
4;フォトクロミック積層体の端から1.0mm以上の部分で、少なくとも一部にウレタン樹脂、及びフォトクロミック化合物の溶出が見られ、さらに光学シートとフォトクロミック接着剤層間の剥離が見られる。フォトクロミック化合物の溶出量は、フォトクロミック積層体全体含まれる量のうち、2.0wt%以上であった。
【0190】
(耐溶剤性の評価に使用した重合性モノマー組成物)
Z1(アクリレートモノマー組成物);トリメチロールプロパントリメタクリレート20質量部、平均分子量522のポリエチレングリコールジアクリレート40質量部、及びウレタンアクリレート(ダイセル化学工業製EBECRYL4858)40質量部の混合物。
Z2(アリルモノマー組成物);ジエチレングリコールビスアリルカーボネート。
Z3(チオウレタン系モノマー組成物);ジシクロヘキシルメタン−4 ,4 ’−ジイソシアネート100質量部、及び1,2−ビス〔(2−メルカプトエチル)チオ〕−3−メルカプトプロパン63.0質量部の混合物。
Z4(ウレタン系モノマー組成物);アジピン酸と1,6−ヘキサンジオールからなる数平均分子量1000のポリエステルポリオール 100質量部、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物78質量部、及び芳香族ジアミン硬化剤としての2,4−ジアミノ−3,5−ジエチル−トルエン/2,6−ジアミノ−3,5−ジエチル−トルエン17質量部の混合物。
Z5(チオエポキシ系モノマー組成);ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン95質量部、2−メルカプトエタノール5質量部の混合物。
【0191】
(フォトクロミックレンズ(光学物品)の製造)
次いで、得られたフォトクロミック積層体を、直径65mmの円形に裁断し、ガスケットを有するガラスモールド内(0.00D、レンズ径70mm、肉厚3.0mmに設定)に設置し、該ガラスモールド内に設置した積層体の上下に、熱硬化性組成物として準備した、重合開始剤としてのジイソプロピルパーオキシジカーボネート3重量部とジエチレングリコールビスアリルカーボネート100重量部の混合物を充填した。
【0192】
前記熱硬化性組成物を充填したガラスモールドを空気炉中に設置し、40〜90℃まで20時間かけて徐々に昇温し、さらに90℃で1時間保持して重合を実施した。重合終了後、ガスケットとモールドを取り外したのち、120℃で2時間熱処理を実施することにより、フォトクロミックレンズを得た。
【0193】
得られたフォトクロミックレンズを下記方法にて評価したところ、フォトクロミック特性としての発色濃度は1.2であり、退色速度は55秒であり、耐久性は95%であった。また、得られたフォトクロミックレンズの外観は、フォトクロミック化合物やポリウレタン樹脂層の溶出は見られず、下記評価基準の1であり、良好であった。
【0194】
〔評価項目;フォトクロミックレンズ〕
(フォトクロミック特性)
得られたフォトクロミックレンズを試料とし、これに、(株)浜松ホトニクス製のキセノンランプL−2480(300W)SHL−100を、エアロマスフィルター(コーニング社製)を介して23℃、積層体表面でのビーム強度365nm=2.4mW/cm、245nm=24μW/cmで120秒間照射して発色させ、フォトクロミックレンズのフォトクロミック特性を測定した。
【0195】
最大吸収波長(λmax):(株)大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディレクターMCPD1000)により求めた発色後の最大吸収波長である。該最大吸収波長は、発色時の色調に関係する。
【0196】
発色濃度〔ε(120)−ε(0)〕:前記最大吸収波長における、120秒間照射した後の吸光度ε(120)と最大吸収波長における未照射時の吸光度ε(0)との差。この値が高いほどフォトクロミック性が優れていると言える。
【0197】
退色速度〔t1/2(sec.)〕:120秒間照射後、光の照射をとめたときに、試料の前記最大波長における吸光度が〔ε(120)−ε(0)〕の1/2まで低下するのに要する時間。この時間が短いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
【0198】
耐久性(%)=〔(A48/A0)×100〕:光照射による発色の耐久性を評価するために次の劣化促進試験を行った。すなわち、得られた積層体をスガ試験器(株)製キセノンウェザーメーターX25により48時間促進劣化させた。その後、前記発色濃度の評価を試験の前後で行い、試験前の発色濃度(A0)および試験後の発色濃度(A48)を測定し、〔(A48)/A0〕×100〕の値を残存率(%)とし、発色の耐久性の指標とした。残存率が高いほど発色の耐久性が高い。
【0199】
(外観評価)
得られたフォトクロミックレンズを目視により評価した。評価基準は、下記に示す通り、1〜4の4段階評価で実施した。
1;フォトクロミック積層体の端から0.2mm以下の部分で、少なくとも一部にウレタン樹脂、及びフォトクロミック化合物の溶出が見られるが、「光学シートとフォトクロミック接着剤層間」、及び「光学シートと熱硬化性樹脂間」のいずれにおいても剥離は見られない。
2;フォトクロミック積層体の端から0.5mm以下の部分で、少なくとも一部にウレタン樹脂、及びフォトクロミック化合物の溶出が見られるが、「光学シートとフォトクロミック接着剤層間」、及び「光学シートと熱硬化性樹脂間」のいずれにおいても剥離は見られない。
3;フォトクロミック積層体の端から1.0mm未満の部分で、少なくとも一部にウレタン樹脂、及びフォトクロミック化合物の溶出が見られるが、「光学シートとフォトクロミック接着剤層間」、及び「光学シートと熱硬化性樹脂間」のいずれにおいても剥離は見られない。
4;フォトクロミック積層体の端から1.0mm以上の部分で、少なくとも一部にウレタン樹脂、及びフォトクロミック化合物の溶出が見られ、さらに「光学シートとフォトクロミック接着剤層間」、及び「光学シートと熱硬化性樹脂間」のいずれかにおいて剥離が見られる。
【0200】
以上の結果を表3、及び表4にまとめた。
【0201】
実施例2〜17
表3に示すウレタンプレポリマー(A)、オキサゾリジン環含有化合物(B成分)を用いた以外は、実施例1と同様の方法でフォトクロミック重合性組成物を調製した。なお、実施例1と同じく、フォトクロミック化合物(PC1)をウレタンプレポリマー(A)とオキサゾリジン環含有化合物(B成分)の総質量に対して5質量部(実使用量0.25g)、及び有機溶剤(D成分)を配合した。また、得られたフォトクロミック重合性組成物を使用して、実施例1と同様の方法でフォトクロミック積層体を作製し、さらにフォトクロミックレンズを作製した。それらの得られた各種フォトクロミック積層体、及びフォトクロミックレンズの評価結果を表3、及び表4に示した。
【0202】
【表3】

【0203】
【表4】

【0204】
比較例1、及び2
表1に示すウレタンポリマーを用いた以外は、実施例1と同様の方法でフォトクロミック重合性組成物を調製した。なお、なお、実施例1と同じく、フォトクロミック化合物(PC1)を、ウレタンプレポリマー(A)とオキサゾリジン環含有化合物(B成分)との総質量に対して5質量部(実使用量0.25g)、及び有機溶剤(D成分)を配合した。また、得られたフォトクロミック重合性組成物を使用して、実施例1と同様の方法でフォトクロミック積層体を作製し、さらにフォトクロミックレンズを作製した。それらの得られた各種フォトクロミック積層体、及びフォトクロミックレンズの評価結果を表3、及び表4に示した。
【0205】
比較例3
以下の方法により、分子鎖の末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(U13−a)、及び分子鎖の末端に水酸基を有するウレタンプレポリマー(U13−b)を合成した。
【0206】
ウレタンプレポリマー(U13−a)の合成
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三口フラスコに、数平均分子量700のポリオール化合物(PL2:ポリプロピレングリコール)211g、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(NCO2)118gを仕込み、窒素雰囲気下、80℃で9時間反応させ、末端にNCO基を有するウレタンプレポリマー(U13−a)を得た。ウレタンプレポリマー(U13−a)の数平均分子量は、ポリオキシエチレン換算で2,200(理論値;2,200)であった。
【0207】
ウレタンプレポリマー(U13−b)の合成
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三口フラスコに、数平均分子量700のポリオール化合物(PL2:ポリプロピレングリコール)241g、トルエン−2,4−ジイソシアネート(NCO3)30gを仕込み、窒素雰囲気下、80℃で9時間反応させ、末端にOH基を有するウレタンプレポリマー(U13−b)を得た。ウレタンプレポリマー(U13−b)の数平均分子量は、ポリオキシエチレン換算で1,600(理論値;1,600)であった。
【0208】
以上のようにして得られたウレタンプレポリマー(U13−a)、及びウレタンプレポリマー(U13−b)を表5に示す配合量で使用し、有機溶媒としてのTHF(D1)20g、及びフォトクロミック化合物(PC1)0.25gを使用し、実施例1と同様の方法でフォトクロミック重合性組成物を調整した。また、得られたフォトクロミック重合性組成物を使用して、実施例1と同様の方法でフォトクロミック積層体を作製し、さらにフォトクロミックレンズも作製した。それらの評価結果を表5に示した。なお、使用したウレタンプレポリマーの合成条件については表1に示し、該ウレタンプレポリマーの各成分の割合、その他物性は表2に示した。
【0209】
比較例4
以下の方法により、分子鎖の末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(U14−a)、及び分子鎖の末端に水酸基を有するウレタンプレポリマー(U14−b)を合成した。
【0210】
ウレタンプレポリマー(U14−a)の合成
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三口フラスコに、数平均分子量800のポリオール化合物(PL1:ポリカーボネートジオール)289g、イソホロンジイソシアネート(NCO1)120gを仕込み、窒素雰囲気下、80℃で9時間反応させ、末端にNCO基を有するウレタンプレポリマー(U14−a)を得た。ウレタンプレポリマー(U14−a)の数平均分子量は、ポリオキシエチレン換算で2,300(理論値;2,300)であった。
【0211】
ウレタンプレポリマー(U14−b)の合成
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三口フラスコに、数平均分子量800のポリオール化合物(PL1:ポリカーボネートジオール)276g、トルエン−2,4−ジイソシアネート(NCO3)30gを仕込み、窒素雰囲気下、80℃で9時間反応させ、末端にOH基を有するウレタンプレポリマー(U14−b)を得た。ウレタンプレポリマー(U14−b)の数平均分子量は、ポリオキシエチレン換算で1,800(理論値;1,800)であった。
【0212】
以上のようにして得られたウレタンプレポリマー(U14−a)、及びウレタンプレポリマー(U14−b)を表5に示す配合量で使用し、有機溶媒としてのTHF(D1)20g、及びフォトクロミック化合物(PC1)0.25gを使用し、実施例1と同様の方法でフォトクロミック重合性組成物を調整した。また、得られたフォトクロミック重合性組成物を使用して、実施例1と同様の方法でフォトクロミック積層体を作製し、さらにフォトクロミックレンズも作製した。それらの評価結果を表5に示した。なお、使用したウレタンプレポリマーの合成条件については表1に示し、該ウレタンプレポリマーの各成分の割合、その他物性は表2に示した。
【0213】
【表5】

【0214】
前記実施例1〜17から明らかなように、ウレタンプレポリマー(A)、オキサゾリジン環含有化合物(B成分)及びフォトクロミック化合物(C成分)を含むフォトクロミック重合性組成物においては、優れた耐溶剤性、フォトクロミック特性、剥離強度(密着性)、耐熱性、保存安定性を有していることが分かる。
【0215】
一方、比較例1〜4のように、オキサゾリジン環含有化合物が未添加(比較例1)、イソシアネート基を有さないウレタンポリマー(比較例2)、または2液型のウレタンポリマー(比較例3及び4)を用いているため、同時に耐溶剤性、フォトクロミック特性、剥離強度(密着性)、耐熱性、及び保存安定性などの物性を満足することができず、いずれかの物性が不十分であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に少なくとも1つのイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(A)、
分子内に少なくとも1つのオキサゾリジン環を有するオキサゾリン環含有化合物(B)、及び
フォトクロミック化合物(C)
とを含んでなることを特徴とするフォトクロミック重合性組成物。
【請求項2】
前記ウレタンプレポリマー(A)に含まれるイソシアネート基の総モル数をnとし、
前記オキサゾリジン環含有化合物(B)に含まれるオキサゾリジン環の総モル数をoとしたときに、
n:o=0.5〜10:1
となる量比である請求項1に記載のフォトクロミック重合性組成物。
【請求項3】
前記ウレタンプレポリマー(A)が、
分子内に2つ以上の水酸基を有する数平均分子量400〜3000のポリオール化合物(A1)と、
分子内に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(A2)とを反応して得られるウレタンプレポリマーであって、
前記(A1)成分に含まれる水酸基の総モル数をn1とし、
前記(A2)成分に含まれるイソシアネート基の総モル数をn2、
としたときに、
n1:n2=0.4〜0.9:1となる量比で反応させたものである請求項1に記載のフォトクロミック重合性組成物。
【請求項4】
前記ウレタンプレポリマー(A)が、
分子内に2つ以上の水酸基を有する数平均分子量400〜3000のポリオール化合物(A1)と、
分子内に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(A2)と、
分子内に2つ以上のイソシアネート基と反応しうる基を有する分子量50〜300の鎖延長剤(A3)とを反応して得られるウレタンプレポリマーであって、
前記(A1)成分に含まれる水酸基の総モル数をn1とし、
前記(A2)成分に含まれるイソシアネート基の総モル数をn2、
前記(A3)成分に含まれるイソシアネート基と反応しうる基の総モル数をn3としたときに、
n1:n2:n3=0.4〜0.85:1:0.05〜0.5となる量比で反応させたものである請求項1に記載のフォトクロミック重合性組成物。
【請求項5】
前記ウレタンプレポリマー(A)が、
分子内に2つ以上の水酸基を有する数平均分子量400〜3000のポリオール化合物(A1)と、
分子内に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(A2)と、
分子内にピペリジン構造を有し、かつ1つのイソシアネート基と反応しうる基を有する反応停止剤(A4)とを反応して得られるウレタンプレポリマーであって、
前記(A1)成分に含まれる水酸基の総モル数をn1とし、
前記(A2)成分に含まれるイソシアネート基の総モル数をn2、
前記(A4)成分に含まれるイソシアネート基と反応しうる基の総モル数をn4としたときに、
n1:n2:n4=0.4〜0.90:1:0.01〜0.09となる量比で反応させたものである請求項1に記載のフォトクロミック重合性組成物。
【請求項6】
前記ウレタンプレポリマー(A)が、
分子内に2つ以上の水酸基を有する数平均分子量400〜3000のポリオール化合物(A1)と、
分子内に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(A2)と、
分子内に2つ以上のイソシアネート基と反応しうる基を有する分子量50〜300の鎖延長剤(A3)と、
分子内にピペリジン構造を有し、かつ1つのイソシアネート基と反応しうる基を有する反応停止剤(A4)とを反応して得られるウレタンプレポリマーであって、
前記(A1)成分に含まれる水酸基の総モル数をn1とし、
前記(A2)成分に含まれるイソシアネート基の総モル数をn2、
前記(A3)成分に含まれるイソシアネート基と反応しうる基の総モル数をn3、
前記(A4)成分に含まれるイソシアネート基と反応しうる基の総モル数をn4としたときに、
n1:n2:n3:n4=0.3〜0.8:1:0.05〜0.5:0.01〜0.1となる量比で反応させたものである請求項1に記載のフォトクロミック重合性組成物。
【請求項7】
前記ウレタンプレポリマー(A)、及び前記オキサゾリジン環含有化合物(B)の合計100質量部に対して、
前記フォトクロミック化合物(C)を0.1〜20質量部含む請求項1に記載のフォトクロミック重合性組成物。
【請求項8】
前記ウレタンプレポリマー(A)、及び前記オキサゾリジン環含有化合物(B)の合計100質量部に対して、さらに有機溶媒(D)を5〜900質量部含む請求項7に記載のフォトクロミック重合性組成物。
【請求項9】
互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルムが請求項1に記載のフォトクロミック重合性組成物から得られる接着層を介して接合されてなる積層構造を含んでなる光学物品。
【請求項10】
前記積層構造における、互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルムの少なくとも一方が、ポリカーボネート樹脂よりなることを特徴とする請求項9に記載の光学物品。
【請求項11】
請求項9に記載の光学物品を製造する方法であって、
平滑な基材上に請求項8に記載のフォトクロミック重合性組成物を延展せしめた後に、乾燥して有機溶媒(D)を除去し、ウレタンプレポリマー(A)と、オキサゾリジン環含有化合物(B)と、フォトクロミック化合物(C)とを含むフォトクロミック性接着シートを準備する工程、及び
互いに対向する2枚の光学シート又は光学フィルムの間に前記フォトクロミック接着性シートを介在させて、水の存在下で該2枚の光学シート又は光学フィルムを接合することにより前記積層構造を作製する工程、
を含んでなることを特徴とする方法。

【公開番号】特開2012−229332(P2012−229332A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−98259(P2011−98259)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】