説明

フォトクロミック2H−ナフトピラン

7位および8位における2つの隣接する中程度〜強い電子供与体置換基、5位における中程度〜強い電子吸引置換基、ならびに、2位において、弱い電子供与体である1つの置換基、および、弱い〜中程度の電子供与体である別の置換基によって特徴づけられるフォトクロミック性の2H−ナフト[1,2−b]ピラン類が記載される。必要に応じた置換基が6位に存在し、これらの位置のそれぞれは、フォトクロミック材料がホストポリマーに対してより適合性を有することを可能にする反応性置換基を有することができる。前記置換基の選択および配置は、フォトクロミック性能試験において490ナノメートル未満のλ極大を示すためにナフトピランにおいて行われる。置換基の選択および配置はまた、フォトクロミック性能試験において測定されるとき、強度などのフォトクロミック特性を均衡させることを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本開示の様々な限定されない実施形態は、2H−ナフト[1,2−b]ピラン類を含むフォトクロミック材料に関連する。本開示の他の限定されない実施形態は、フォトクロミック品、フォトクロミック組成物、および、そのようなフォトクロミック品の作製方法に関連し、フォトクロミック品およびフォトクロミック組成物は、本明細書に記載されるフォトクロミック材料を含む。
【背景技術】
【0002】
多くの従来のフォトクロミック材料(例えば、ナフトピラン類など)は、電磁放射線の吸収に応答してある状態から別の状態への変換を経ることができる。例えば、多くの従来のフォトクロミック材料は、特定の波長の電磁放射線(または「化学線」)の吸収に応答して、第1の「透明な」または「脱色された」基底状態と、第2の「着色された」活性化状態との間で変換することができる。本明細書で使用される用語「化学線」は、フォトクロミック材料のある形態または状態から別の形態または状態への変換を引き起こし得る電磁放射線をいう。フォトクロミック材料はその後、化学線の非存在下で熱エネルギーに応答して透明な基底状態に戻ることができる。
【0003】
2つ以上のフォトクロミック材料を含有するフォトクロミック品およびフォトクロミック組成物、例えば、アイウエア適用のためのフォトクロミックレンズは一般に、フォトクロミックレンズが含有するフォトクロミック材料に対応する透明な状態および着色された状態を示す。従って、例えば、黄色および青色のフォトクロミック材料を含有するアイウエアレンズは、化学線(日光に見出される特定の波長など)にさらされたとき、透明な状態から灰色の着色された状態に変換することができ、また、そのような放射線の不在下では透明な状態に戻ることができる。
【0004】
フォトクロミック品およびフォトクロミック組成物において利用されるとき、従来のフォトクロミック材料は典型的には、吸入、配合および/または結合のうちの1つによってホストポリマーマトリックスに組み込まれる。例えば、1つまたは複数のフォトクロミック材料をポリマー材料またはその前駆体と混ぜることができ、その後、フォトクロミック組成物をフォトクロミック品にすることができるか、あるいは、代替的に、フォトクロミック組成物を光学要素の表面に薄膜または薄層として被覆することができる。本明細書で使用される用語「フォトクロミック組成物」は、1つまたは複数の他の材料(これらはフォトクロミック材料であっても、フォトクロミック材料ではなくてもよい)と組み合わせたフォトクロミック材料を示す。あるいは、フォトクロミック材料を、事前に形成された物品または被覆物に吸入させることができる。
【0005】
いくつかの状況では、活性化状態におけるフォトクロミック材料の波長を制御することが望ましくあり得る。他の状況では、活性化されたフォトクロミック材料の強度を制御することもまた望ましくあり得る。さらに、そのようなフォトクロミック材料と、このフォトクロミック材料が組み込まれるホストポリマーとの適合性を改変することが望ましくあり得る。そのような活性化状態の特性に対する改変は、例えば、補色のフォトクロミック材料の同じ特性を一致させるために行うことができる。フォトクロミック材料の適合性の改変は、そのような化合物を、親水性または疎水性の被覆組成物、薄膜、あるいは、剛直〜柔軟なプラスチックマトリックスを伴う様々な適用における使用を可能にするために行うことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、様々な適用のためには、望ましい活性化波長を有するフォトクロミック材料を開発することが好都合であり得る。望ましい強度を有するそのようなフォトクロミック材料を開発することもまた有益であり得る。さらに、フォトクロミック材料が様々なホストポリマーに組み込まれることを可能にし得る反応性置換基を伴うこれらのフォトクロミック材料を開発することが好都合であり得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本明細書に開示される様々な限定されない実施形態はフォトクロミック材料に関する。1つの限定されない実施形態において、フォトクロミック材料は、数字1〜10により環原子を特定する以下の構造式Iによって表される2H−ナフト[1,2−b]ピランである:
【0008】
【化6】

式中、
(a)Rは中程度〜強い電子吸引基であり:
(b)Rは、水素、電子吸引基または電子供与基であり;
(c)RおよびRはそれぞれが、中程度〜強い電子供与基であり;そして
(d)Bは弱い電子供与基であり、B’は弱い〜中程度の電子供与基であって、ただし、前記ナフトピランは、本明細書において実施例7に記載されるフォトクロミック性能試験において490ナノメートル(nm)未満の可視でのλ極大を示す。
【0009】
別の限定されない実施形態は、基体と、本明細書に開示される様々な限定されない実施形態による構造式Iのフォトクロミック量のナフトピランとを組み合わせるフォトクロミック品に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(発明の詳細な説明)
本明細書および添付された特許請求の範囲において使用される場合、「a」、「an」および「the」の冠詞は、1つの参照対象物に明示的かつ一義的に限定されない限り、複数の参照対象物を包含する。
【0011】
加えて、本明細書の目的のために、別途示さない限り、本明細書で使用される、成分の量、反応条件および他の特性またはパラメーターを表す数字はすべて、すべての場合において用語「約」によって修飾されると理解されるべきである。従って、別途示さない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲において示される数値パラメーターは概数であることが理解されるべきである。少なくとも、また、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限しようとする意図としてではなく、数値パラメーターは、報告された有効桁の数字および通常の丸め技術の適用に照らして読み取られるべきである。
【0012】
本明細書におけるすべての数値範囲には、示された数値範囲に含まれるすべての数値およびすべての数値の範囲が含まれる。本発明の幅広い範囲を示す数値範囲および数値パラメーターが概数であるにもかかわらず、具体的な実施例において示される数値はできる限り正確に報告される。しかしながら、数値はどれも、それらのそれぞれの試験測定値に見出される標準偏差から必然的に生じるある種の誤差を固有的に含有する。
【0013】
本明細書で使用される用語「フォトクロミック(性の)」は、少なくとも化学線の吸収に応答して変化する、少なくとも可視放射線に関する吸収スペクトルを有することを意味する。さらに、本明細書で使用される用語「フォトクロミック材料」は、フォトクロミック特性を示すように適合される、すなわち、少なくとも化学線の吸収に応答して変化する、少なくとも可視放射線に関する吸収スペクトルを有するように適合される任意の物質を意味する。
【0014】
本発明は、どのようなタイプの置換基が、ナフトピラン上のどこに、これらの2H−ナフト[1,2−b]ピラン類によって可視スペクトルにおいて示される波長を制御するために配置され得るかを開示する。置換基の配置の選択はまた、活性化されたフォトクロミック材料の強度に影響を及ぼすことが予想外にも見出されている。1つの限定されない実施形態において、これらのフォトクロミック化合物は490nm未満の可視でのλ極大を示す。別の限定されない実施形態において、本発明のフォトクロミック性のナフトピラン類は、本明細書で要求される電子供与置換基および電子吸引置換基の組合せを有しない比較可能なナフトピラン類によって示されるよりも大きい強度を有する。強度は、飽和における光学密度より大きいレベルを伴って、または、伴うことなく、より大きい感度レベルによって測定される場合に、より大きい。フォトクロミック材料の強度は、化学線にさらされたとき、フォトクロミック材料がどのくらい速く活性化されて、着色されるかに関係する感度、および、フォトクロミック材料が、どの程度、標準条件(本明細書において実施例7に記載されるフォトクロミック性能試験で指定される条件など)下で着色されるかとして測定される飽和における光学密度として測定することができる。
【0015】
構造式Iによって表されるそのような2H−ナフト[1,2−b]ピラン類は、7位および8位における2つの隣接する中程度〜強い電子供与体置換基、5位における中程度〜強い電子吸引置換基、ならびに、2位における、弱い電子供与体である1つの置換基、および、弱い〜中程度の電子供与体である別の置換基によって特徴づけられる。本発明の化合物はまた、必要に応じた置換基を6位に有する。これらの同じ位置はまた、フォトクロミック材料がホストポリマーに対してより適合性を有することを可能にする、上記の電子供与型および電子吸引型の置換基に対応する電子的性質を有する反応性基により置換することもできる。
【0016】
1つの限定されない実施形態において、電子供与体置換基および電子吸引置換基の上記の組合せは、本明細書において実施例7に記載されるフォトクロミック性能試験において490nm未満の可視でのλ極大を示す得られる活性化されたフォトクロミック性ナフトピラン類の強度に関係する特性を強化する。別の限定されない実施形態において、本発明のナフトピラン類は、490nm未満の可視でのλ極大に対応する1つだけの吸収バンドを示す。強化された強度を有し、橙色、黄色および黄緑色などの色を示すそのようなフォトクロミック化合物は、電子供与体置換基および電子吸引置換基の要求される組合せを有しない比較可能なナフトピラン類と比較した場合、より望ましい活性化された中間色(灰色および褐色など)を生成するための補色の青色フォトクロミック材料との使用のために望ましい。
【0017】
別の限定されない実施形態において、強度レベルは、感度によって測定される場合、0.50〜1.00の範囲であり、飽和におけるODが0.50〜2.00の範囲である。さらなる限定されない実施形態において、強度レベルが0.55〜0.75の範囲であり、飽和におけるODレベルが0.59〜1.5の範囲である。
【0018】
さらなる限定されない実施形態において、本発明のフォトクロミック化合物は、本明細書において実施例7に記載される望ましい退色半減期(「T1/2」)を示す。1つの限定されない実施形態において、T1/2が200秒未満である。別の限定されない実施形態において、T1/2が60秒〜170秒の範囲である。さらなる限定されない実施形態において、T1/2が70秒〜150秒の範囲である。なおさらなる限定されない実施形態において、T1/2が70秒〜100秒の範囲である。
【0019】
潜在的な置換基として使用される電子供与体基の相対的な強さはしばしば、ハメットシグマ値(具体的にはσ値)によって記載される。様々な置換基に関するσ定数の表による列挙を、Exploring QSAR,Hydrophobic,Electronic,and Steric Constants(C.Hansch、A.LeoおよびD.Hoekman編、発行:The American Chemical Society、Washington,D.C.、1995年)に見出すことができる(その開示は参考により本明細書に組み込まれる)。7位および8位において使用することができる、−1.0〜−0.5の間のハメットσ値を有すると本明細書で定義される強い電子供与体の例には、アミノ、モノアルキルアミノ、ジアルキルアミノ、モルホリノおよびピペリジノが含まれる。7位および8位において使用することができる、−0.49〜−0.20の間のσ値を有すると本明細書で定義される中程度の電子供与体の例には、エトキシ、メトキシおよびp−アミノフェニルが含まれる。ナフトピランのピラノ部分の2つの2位の一方において使用することができるような中程度の電子供与体の例には、エトキシ、メトキシまたはp−アミノフェニルなどの基によりパラ位で置換されたアリール基が含まれる。ナフトピランのピラノ部分の2つの2位において使用することができる、−0.01〜−0.19の間のハメットσ値を有すると本明細書で定義される弱い電子供与体の例には、フェニルおよびナフチルが挙げられるアリールならびにトリルが含まれる。0.40を超えるハメットσ値、例えば、0.41〜1.00のハメットσ値を有すると本明細書で定義される中程度〜強い電子吸引体の例には、カルボキシル、エステル(−COOYなど)およびアルデヒド(−C(O)Hなど)が含まれる。上記の電子供与体基または電子吸引基のすべてが、6位における必要に応じた置換基として使用することができる。
【0020】
上記で議論されたように、本明細書に開示される様々な限定されない実施形態によるフォトクロミック材料は反応性置換基を含むことができる。反応性置換基の詳細な記載が米国特許出願第11/102280号(2005年4月8日出願)の段落[0008]〜[0012]および[0017]〜[0072]に開示されている(その開示は参考により本明細書に組み込まれる)。基R、R、R、R、Bおよび/またはB’についての本発明の反応性置換基は、それらの電子供与特性または電子吸引特性に基づいて選択されている。
【0021】
本明細書で使用される用語「反応性置換基」は、配置の一部分が反応性部分またはその残基を含む原子配置を意味する。本明細書に開示される様々な限定されない実施形態によれば、反応性置換基はさらに、反応性部分をフォトクロミック性ナフトピランにつなぐ連結基を含む。本明細書で使用される用語「部分」は、特徴的な化学的特性を有する有機分子の一部または部分を意味する。本明細書で使用される用語「反応性部分」は、重合反応における中間体との、または、中間体が組み込まれているポリマーとの1つまたは複数の結合を形成するために反応することができる有機分子の一部または一部分を意味する。本明細書で使用される表現「重合反応における中間体」は、重合反応を続けるためにさらなるホストモノマーユニットに対して1つまたは複数の結合を形成するために反応することができるか、あるいは、代替的に、フォトクロミック材料における反応性置換基の反応性部分と反応することができる2つ以上のホストモノマーユニットの任意の組合せを意味する。例えば、1つの限定されない実施形態において、反応性部分は重合反応におけるコモノマーとして反応することができる。代替的には、本明細書において限定しないが、反応性部分は求核試薬または求電子試薬として中間体と反応することができる。本明細書で使用される用語「ホストモノマーまたはオリゴマー」は、本発明のフォトクロミック材料が組み込まれ得るモノマー材料またはオリゴマー材料を意味する。本明細書で使用される用語「オリゴマー」または用語「オリゴマー材料」は、さらなるモノマーユニットと反応することができる2つ以上のモノマーユニットの組合せを意味する。本明細書で使用される用語「連結基」は、反応性部分をフォトクロミック性ナフトピランにつなぐ1つまたは複数の原子団または原子鎖を意味する。本明細書で使用される用語「反応性部分の残基」は、反応性部分が重合反応における保護基または中間体のいずれかと反応した後に残る部分を意味する。本明細書で使用される用語「保護基」は、その基が除去されるまでは反応性部分が反応に関与することを防止する、反応性部分に除去可能に結合する原子団を意味する。
【0022】
1つの限定されない実施形態において、反応性部分は重合可能部分を含む。本明細書で使用される用語「重合可能部分」は、ホストモノマーまたはホストオリゴマーの重合反応においてコモノマーとして関与することができる有機分子の一部または一部分を意味する。別の限定されない実施形態において、反応性部分は、重合反応における中間体またはホストポリマーのいずれかにおける求電子性部分との結合を形成するために反応する求核性部分を含む。代替的には、別の限定されない実施形態において、反応性部分は、重合反応における中間体またはホストポリマーのいずれかにおける求核性部分との結合を形成するために反応する求電子性部分を含む。本明細書で使用される用語「求核性部分」は、電子に富む原子または原子団を意味する。本明細書で使用される用語「求電子性部分」は、電子が欠乏している原子または原子団を意味する。求核性部分は求電子性部分と反応して、例えば、共有結合をそれらの間で形成することができることが当業者によって理解される。
【0023】
上記で議論されたように、1つの限定されない実施形態において、フォトクロミック材料は、構造式Iによって表されるフォトクロミック性ナフトピランと、フォトクロミック性ナフトピランに結合した反応性置換基とを含む。例えば、本明細書に開示される様々な限定されない実施形態によれば、反応性置換基を、フォトクロミック性ナフトピランのナフト部分の環のうちの1つにおける水素を反応性置換基で置き換えることによってフォトクロミック性ナフトピランに結合させることができる。代替的には、または、加えて、反応性置換基を、フォトクロミック性ナフトピランのB’基における水素を反応性置換基で置き換えることによってフォトクロミック性ナフトピランに結合させることができる。本発明のナフトピランに結合する反応性置換基の数は広範囲に変化し得る。1つの限定されない実施形態において、6個以下の反応性置換基がナフトピランに結合して存在し、他の限定されない実施形態において、4個以下が存在し、さらなる限定されない実施形態において、1個または2個の反応性置換基が存在する。
【0024】
、R、R、R、BおよびB’のうちの少なくとも1つとして存在し得る反応性置換基は、本明細書に含まれる条件によれば、
−A−D−E−G−J;
−A−G−E−G−J;
−A−D−G−J;
−A−G−Jおよび
−A−D−J
のうちの1つによって独立して表される基Rを含む。
【0025】
本発明の様々な限定されない実施形態によるそれぞれの−A−についての構造の限定されない例には、−C(O)−および−CH−が含まれる。
【0026】
本発明の様々な限定されない実施形態によるそれぞれの−D−についての構造の限定されない例には、ジアミン残基またはその誘導体(前記ジアミン残基の第1のアミン窒素が−A−との結合を形成し、前記ジアミン残基の第2のアミン窒素が、−E−、−G−または−Jとの結合を形成する);あるいは、アミノアルコール残基またはその誘導体(前記アミノアルコール残基のアミン窒素が−A−との結合を形成し、前記アミノアルコール残基のアルコール酸素が、−E−、−G−または−Jとの結合を形成するか;あるいは、前記アミノアルコール残基の前記アミン窒素が、−E−、−G−または−Jとの結合を形成し、前記アミノアルコール残基の前記アルコール酸素が−A−との結合を形成する)が含まれる。
【0027】
−D−がジアミン残基であるとき、ジアミン残基の限定されない例には、脂肪族ジアミン残基、シクロ脂肪族ジアミン残基、ジアザシクロアルカン残基、アザシクロ脂肪族アミン残基、ジアザクラウンエーテル残基および芳香族ジアミン残基が含まれる。
【0028】
−D−がアミノアルコール残基であるとき、アミノアルコール残基の限定されない例には、脂肪族アミノアルコール残基、シクロ脂肪族アミノアルコール残基、アザシクロ脂肪族アルコール残基、ジアザシクロ脂肪族アルコール残基および芳香族アミノアルコール残基が含まれる。
【0029】
本発明の様々な限定されない実施形態によるそれぞれの−E−についての構造の限定されない例には、ジカルボン酸残基またはその誘導体が含まれ、前記ジカルボン酸残基の第1のカルボニル基が、−G−または−D−との結合を形成し、前記ジカルボン酸残基の第2のカルボニル基が−G−との結合を形成する。−E−がジカルボン酸残基であるとき、ジカルボン酸残基の限定されない例には、脂肪族ジカルボン酸残基、シクロ脂肪族ジカルボン酸残基および芳香族ジカルボン酸残基が含まれる。
【0030】
本開示の様々な限定されない実施形態による−G−についての構造の限定されない例には、ポリアルキレングリコール残基およびポリオール残基ならびにそれらの誘導体が含まれる。−G−がポリオール残基であるとき、前記ポリオール残基の第1のポリオール酸素が、−A−、−D−または−E−との結合を形成し、前記ポリオール残基の第2のポリオール酸素が、−E−または−Jとの結合を形成する。好適なポリアルキレングリコール残基の限定されない例には、下記の構造:
−[(OC(OC(OC]−O−(式中、x、yおよびzはそれぞれが独立して、0〜50の数であり、x、yおよびzの和が1〜50の範囲にある)
が含まれる。好適なポリオール残基の限定されない例には、脂肪族ポリオール残基、シクロ脂肪族ポリオール残基および芳香族ポリオール残基が含まれる。
【0031】
本開示の様々な限定されない実施形態において、−Jは、反応性部分またはその残基を含む基であるか;あるいは、−Jは水素であり、ただし、−Jが水素であるならば、−Jは基−D−または基−G−の酸素に結合し、反応性部分を形成する。好適な−J基の限定されない例には、アクリル、クロチル、メタクリル、2−(メタクリルオキシ)エチルカルバミル、2−(メタクリルオキシ)エトキシカルボニル、4−ビニルフェニル、ビニル、1−クロロビニルおよびエポキシが含まれる。
【0032】
置換基Rは、Rが基−C(O)ORであるならば、反応性置換基を含む;あるいは、Rは基Rであり、ただし、−A−が−C(O)−であり、−D−がアミノアルコール残基であって、前記アミノアルコール残基のアミン窒素が、−E−、−G−または−Jとの結合を形成し、前記アミノアルコール残基のアルコール酸素が−A−との結合を形成する。
【0033】
置換基Rは、Rが基−ORであるならば、反応性置換基を含む;あるいは、Rは、
−G−E−G−J;
−D−E−G−J;
−D−G−J;
−G−Jおよび
−D−J
(式中、−E−、−G−および−Jは、本明細書中上記の定義と同じであり、−D−はアミノアルコールであって、前記アミノアルコール残基のアミン窒素が、−E−、−G−または−Jとの結合を形成する)
のうちの1つによって独立して表される基Tを含む。
【0034】
置換基Rおよび/またはRは、Rおよび/またはRがそれぞれ、基−OR、基−SR、基−N(R)Hまたは基−N(R)Rであり、−A−が−CH−であるならば、反応性置換基を含む。
【0035】
置換基Bおよび/またはB’は、Bおよび/またはB’が置換アリール基または置換複素芳香族基であり、前記アリール基または複素芳香族基に関する置換基が基Rまたは基Tであるならば、反応性置換基を含む。
【0036】
1つの限定されない実施形態において、置換基Rは基−C(O)Hまたは基−C(O)OYであり、式中、Yは、水素、基−CH(R)Z(式中、Zは、−CN、−CF、ハロまたは−C(O)Rであり;Rは水素またはC〜Cアルキルであり;Rは、水素、C〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである)であるか;あるいは、Yは基−Rであり;Rは、C〜Cアルキル、アリル、フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ(C〜C)アルキル、C〜Cハロアルキル、または、非置換のアリール基、一置換のアリール基もしくは二置換のアリール基であり、前記アリール基の置換基のそれぞれが、ハロゲン、C〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである。アリール基には、フェニル、ナフチル、フルオレニル、アントラセニルおよびフェナントラセニルが含まれるが、これらに限定されない。別の限定されない実施形態において、アリール基には、フェニルおよびナフチルが含まれる。ハロゲンまたはハロには、フッ素(フルオロ)、塩素(クロロ)、臭素(ブロモ)およびヨウ素(ヨード)が含まれるが、これらに限定されない。別の限定されない実施形態において、ハロゲンには、フッ素、塩素および臭素が含まれる。
【0037】
別の限定されない実施形態において、置換基Rは基−C(O)Yであり、式中、Yは、水素、ヒドロキシ、基−OCH(R)Zまたは基−ORであり;Zは−CNまたは−C(O)Rであり;Rは水素またはC〜Cアルキルであり;Rは、水素、C〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシであり;Rは、C〜Cアルキル、アリル、フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ(C〜C)アルキル、C〜Cクロロアルキル、C〜Cフルオロアルキル、または、非置換のフェニル基、一置換のフェニル基もしくは二置換のフェニル基であり、前記フェニル基の置換基のそれぞれが、クロロ、フルオロ、C〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである。
【0038】
1つの限定されない実施形態において、置換基Rは、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、非置換のアリール基、一置換のアリール基もしくは二置換のアリール基、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、フェニルアミノ、モノ(C〜C)アルキル置換フェニルアミノ、ジ(C〜C)アルキル置換フェニルアミノ、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニルアミノ、ジ(C〜C)アルコキシ置換フェニルアミノ、ジフェニルアミノ、モノ(C〜C)アルキル置換ジフェニルアミノ、ジ(C〜C)アルキル置換ジフェニルアミノ、モノ(C〜C)アルコキシ置換ジフェニルアミノ、ジ(C〜C)アルコキシ置換ジフェニルアミノ、モルホリノ、ピペリジノ、ジシクロヘキシルアミノまたはピロリジルであり、前記アリールの置換基が、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cシクロアルキル、ベンジル、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、ジシクロヘキシルアミノ、ジフェニルアミノ、ピペリジノ、モルホリノ、ピロリジル、ピリジル、ハロ、フェニルおよびナフチルである。
【0039】
別の限定されない実施形態において、置換基Rは、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、非置換のフェニル基、一置換のフェニル基、二置換のフェニル基、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、モルホリノ、ピペリジノ、ジシクロヘキシルアミノまたはピロリジルであり、前記フェニルの置換基が、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cシクロアルキル、ベンジル、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、ピペリジノ、モルホリノ、ピロリジル、ピリジル、クロロ、フルオロ、フェニルまたはナフチルである。
【0040】
1つの限定されない実施形態において、置換基Rは下記のうちの1つである:
(i)基−XR(式中、Xは酸素または硫黄であり;Rは、水素、C〜Cアルキル、非置換のアリール基、一置換のアリール基、二置換のアリール基、フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル(C〜C)アルキル、C〜Cアルコキシ(C〜C)アルキル、C〜Cシクロアルキル、モノ(C〜C)アルキル置換C〜Cシクロアルキル、C〜Cハロアルキル、アリルであるか;あるいは、Rは基−CH(R)Qであり、式中、Rは水素またはC〜Cアルキルであり、Qは、−CN、−CFまたは−COORであり;前記アリール基の置換基のそれぞれがC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである);
(ii)基−N(R10)R10(式中、それぞれのR10は独立して、R、C〜Cアルキルアリール基、または、複素芳香族基であるフラニル、ベンゾフラン−2−イル、ベンゾフラン−3−イル、チエニル、ベンゾチエン−2−イル、ベンゾチエン−3−イル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、ベンゾピリジルおよびフルオレニルである);
(iii)以下の構造式IIA:
【0041】
【化7】

(式中、それぞれのWは独立して、基−CH−、−CH(R11)−、−C(R11)(R11)−、−CH(アリール)−、−C(アリール)−、−C(R11)(アリール)−であり、Kは、基−W−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−NH−、−NR11−または−N−アリール−であり、R11はC〜Cアルキルであり、mは、1、2または3の整数であり、pは、0、1、2または3の整数であり、また、pが0であるとき、KはWである)によって表される複素環式環;または
(iv)以下の構造式IIBまたは構造式IIC:
【0042】
【化8】

(式中、R12は、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシまたはハロであり、R13、R14およびR15はそれぞれが、水素、C〜Cアルキル、フェニルまたはナフチルであるか、あるいは、基R13および基R14は一緒になって、環炭素原子を含めて5個〜8個の炭素原子の環を形成する)によって表される基。
【0043】
1つの限定されない実施形態において、置換基Rは、本明細書中上記で定義されたRと同じである。
【0044】
別の限定されない実施形態において、置換基Rは:
(i)基−XR(式中、Xは酸素であり;Rは、水素、C〜Cアルキル、非置換のフェニル基、一置換のフェニル基、二置換のフェニル基、フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル(C〜C)アルキル、C〜Cアルコキシ(C〜C)アルキル、C〜Cシクロアルキル、モノ(C〜C)アルキル置換C〜Cシクロアルキル、C〜Cクロロアルキル、C〜Cフルオロアルキル、アリルであるか;あるいは、Rは基−CH(R)Qであり、式中、Rは水素またはC〜Cアルキルであり、Qは−CNまたは−COORであり、前記フェニル基の置換基のそれぞれがC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである);
(ii)基−N(R10)R10(式中、R10はRである);
(iii)構造式IIAによって表される複素環式環(それぞれのWは独立して、基−CH−、−CH(R11)−、−C(R11)(R11)−、−CH(アリール)−、−C(アリール)−、−C(R11)(アリール)−であり、Kは、基−W−、−O−、−NH−、−NR11−または−N−アリール−であり、R11はC〜Cアルキルであり、mは、1、2または3の整数であり、pは、0、1、2または3の整数であり、また、pが0であるとき、KはWである)
である。
【0045】
別の限定されない実施形態において、置換基Rは、本明細書中上記で定義されたRと同じである。
【0046】
1つの限定されない実施形態において、置換基Bはアリールまたはトリルである。別の限定されない実施形態において、置換基Bはフェニルまたはトリルである。
【0047】
1つの限定されない実施形態において、置換基B’は:
(i)非置換のアリール基、一置換のアリール基、二置換のアリール基もしくは三置換のアリール基;または、非置換の複素芳香族基、一置換の複素芳香族基もしくは二置換の複素芳香族基であって、前記複素芳香族基は、ピリジル、フラニル、ベンゾフラン−2−イル、ベンゾフラン−3−イル、チエニル、ベンゾチエン−2−イル、ベンゾチエン−3−イル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、カルバゾリル、ベンゾピリジル、インドリニルまたはフルオレニルであり、前記アリールおよび複素芳香族の置換基はそれぞれが独立して:ヒドロキシ、アリール、モノ(C〜C)アルコキシアリール、ジ(C〜C)アルコキシアリール、モノ(C〜C)アルキルアリール、ジ(C〜C)アルキルアリール、p−アミノアリール、ハロアリール、C〜Cシクロアルキルアリール、C〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルキルオキシ、C〜Cシクロアルキルオキシ(C〜C)アルキル、C〜Cシクロアルキルオキシ(C〜C)アルコキシ、アリール(C〜C)アルキル、アリール(C〜C)アルコキシ、アリールオキシ、アリールオキシ(C〜C)アルキル、アリールオキシ(C〜C)アルコキシ、モノ(C〜C)アルキルアリール(C〜C)アルキル、ジ(C〜C)アルキルアリール(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシアリール(C〜C)アルキル、ジ(C〜C)アルコキシアリール(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキルアリール(C〜C)アルコキシ、ジ(C〜C)アルキルアリール(C〜C)アルコキシ、モノ(C〜C)アルコキシアリール(C〜C)アルコキシ、ジ(C〜C)アルコキシアリール(C〜C)アルコキシ、C〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、C〜Cアルコキシ、モノ(C〜C)アルコキシ(C〜C)アルキル、アクリルオキシ、メタクリルオキシ、ハロゲンまたは基−C(O)R16(式中、R16は−OR17であり、R17は、アリル、C〜Cアルキル、フェニル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル、フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル(C〜C)アルキル、C〜Cアルコキシ(C〜C)アルキルまたはC〜Cハロアルキルである)である;
(ii)非置換の基もしくは一置換の基であって、前記基は、ピラゾリル、イミダゾリル、ピラゾリニル、イミダゾリニル、ピロリニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フェナジニルまたはアクリジニルであり、前記置換基のそれぞれが、C〜C12アルキル、C〜C12アルコキシ、フェニルまたはハロゲンである;
(iii)一置換フェニルであって、前記フェニルは、パラ位に存在する置換基を有し、前記置換基は、ジカルボン酸残基またはその誘導体、ジアミン残基またはその誘導体、アミノアルコール残基またはその誘導体、ポリオール残基またはその誘導体、−CH−、−(CH−または−[O−(CH−(式中、tは、2、3、4、5または6の整数であり、kは1〜50の整数である)であり、前記置換基は別のフォトクロミック材料におけるアリール基につながれる;
(iv)以下の構造式IIDおよび構造式IIE:
【0048】
【化9】

(式中、Uは−CH−または−O−であり、Mは−O−であり、それぞれのR20は独立して、それぞれの存在について、C〜C12アルキル、C〜C12アルコキシ、ヒドロキシおよびハロゲンから選ばれ、R18およびR19はそれぞれが独立して、水素またはC〜C12アルキルであり、uは0〜2の範囲での整数である)のうちの1つによって表される基;または
(v)以下の構造式IIF:
【0049】
【化10】

(式中、R21は水素またはC〜C12アルキルであり、R22は、ナフチル、フェニル、フラニルおよびチエニルから選ばれる、非置換の基、一置換の基もしくは二置換の基であり、置換基は、C〜C12アルキル、C〜C12アルコキシまたはハロゲンである)によって表される基;
のうちの1つである。
【0050】
別の限定されない実施形態において、置換基B’は:
(i)非置換のフェニル基、一置換のフェニル基、二置換のフェニル基もしくは三置換のフェニル基;または、非置換の複素芳香族基、一置換の複素芳香族基もしくは二置換の複素芳香族基であって、前記複素芳香族基は、フラニル、ベンゾフラン−2−イル、チエニル、ベンゾチエン−2−イル、ジベンゾフラニルまたはカルバゾリルであり、前記フェニルおよび複素芳香族の置換基のそれぞれはそれぞれが独立して、ヒドロキシ、C〜Cアルキル、C〜Cクロロアルキル、C〜Cフルオロアルキル、C〜Cアルコキシ、モノ(C〜C)アルコキシ(C〜C)アルキル、p−アミノフェニル、フルオロおよびクロロである、非置換のフェニル基、一置換のフェニル基、二置換のフェニル基もしくは三置換のフェニル基;または、非置換の複素芳香族基、一置換の複素芳香族基もしくは二置換の複素芳香族基;
(ii)一置換フェニルであって、前記フェニルは、パラ位に位置する置換基を有し、前記置換基は、−CH−、−(CH−または−[O−(CH−(式中、tは、2、3、4、5または6の整数であり、kは1〜50の整数である)であり、前記置換基は別のフォトクロミック材料におけるアリール基につながれる、一置換フェニル;
(iii)構造式IIDによって表される基であって、Uは−CH−であり、Mは−O−であり、それぞれのR20は独立して、それぞれの存在について、C〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシであり、それぞれのR18およびR19は独立して、水素またはC〜Cアルキルであり、uは0または1の整数である、基;
のうちの1つである。
【0051】
本明細書中前記で記載される置換基R、R、R、R、BおよびB’を有する、構造式Iによって表される化合物は、反応A〜反応Dに従うことによって調製することができる。Rおよび/またはRがアミノ基である構造式Iによって表される化合物を調製するための方法が反応Eに含まれる。Rが重合可能なポリアルコキシ化された基−A−G−Jであり、R、Bおよび/またはB’が基−G−Jである化合物を調製するための方法が、米国特許第6,113,814号において第8欄42行〜第20欄15行に記載される(その開示は参考により本明細書に組み込まれる)。反応性置換基Rを有する化合物を調製するための方法が、米国特許出願第11/102280号(2005年4月8日出願)の上記段落に記載される。
【0052】
構造式V、VAまたはVBによって表される化合物は購入されるか、あるいは、構造式IVの適切に置換されているかまたは非置換の塩化ベンゾイルを、構造式IIIの置換されているかまたは非置換のベンゼン化合物(市販されている場合がある)とともに使用して反応Aにおいて示されるフリーデル−クラフツ法によって調製されるかのいずれかである。刊行物のFriedel−Crafts and Related Reactions(George A.Olah、Interscience Publishers、1964年、第3巻、第XXXI章(Aromatic Ketone Synthesis))、および、「Regioselective Friedel−Crafts Acylation of 1,2,3,4−Tetrahydroquinoline and Related Nitrogen Heterocycles:Effect on NH Protective Groups and Ring Size」(Ishihara,Yugiら、J.Chem.Soc.,Perkin Trans.、1、3401頁〜3406頁、1992)を参照のこと。
【0053】
反応Aにおいて、構造式IIIおよびIVによって表される化合物が溶媒(二硫化炭素、塩化メチレンまたはジメチルスルホキシドなど)に溶解され、Lewis酸(塩化アルミニウムまたは四塩化スズなど)の存在下で反応して、構造式V(反応Bでは構造式VA、または、反応Cでは構造式VB)によって表される対応する置換されたベンゾフェノンを形成する。R’およびR”は、構造式Iに関して本明細書中前記のような可能な置換基を表す。
【0054】
【化11】

反応Bにおいて、構造式VAによって表される置換または非置換のケトン(BおよびB’は、構造式Vに示されるような置換または非置換のフェニルとは異なる基を表し得る)が好適な溶媒(無水テトラヒドロフラン(THF)またはジメチルホルムアミド(DMF)など)中でナトリウムアセチリドと反応して、構造式VIによって表される対応するプロパルギルアルコールを形成する。置換または非置換のフェニルと異なるBまたはB’基を有するプロパルギルアルコールを、市販のケトン、あるいは、ハロゲン化アシルを置換または非置換のベンゼン、ナフタレンまたは複素芳香族化合物と反応させることにより調製されるケトンから調製することができる。構造式IIFによって表される、BまたはB’基を有するプロパルギルアルコールを、米国特許出願5,274,132号(第2欄40行〜68行)に記載される方法によって調製することができる(その開示は参考により本明細書に組み込まれる)。
【0055】
【化12】

反応Cにおいて、構造式VBによって表される置換されたベンゾフェノンまたはベンズアルデヒドがコハク酸のエステル(構造式VIIによって表されるコハク酸ジメチルなど)と反応する。反応物を、カリウムt−ブトキシドまたは水素化ナトリウムを塩基として含有する溶媒(例えば、トルエン)に加えることにより、構造式VIIIによって表されるStobbe縮合半エステルが生じる。シスおよびトランスの半エステルの混合物が形成し、これはその後、無水酢酸の存在下での環化を経て、アセトキシナフタレンを形成する。この生成物は塩酸によりメタノール中で加水分解されて、構造式Xによって表されるカルボメトキシナフトールを形成する。
【0056】
【化13】

反応Dにおいて、構造式Xによって表されるカルボメトキシナフトールが、触媒量の酸(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA))の存在下、溶媒(例えば、クロロホルム)中で構造式VIによって表されるプロパルギルアルコールとカップリングされて、構造式IAによって表されるナフトピランを生成する。
【0057】
【化14】

反応Cおよび反応Dに記載される手順と一緒に反応Eに従って、アミノ置換されたナフトピラン類が生成される。反応Eにおいて、構造式VCによって表されるケトンが、溶媒(テトラヒドロフラン(THF)など)中、構造式XIによって表されるアミンのリチウム塩と反応して、構造式XIIによって表されるアミノ置換されたケトンを生成する。アミノ置換基をR位とR位との両方に有する材料を調製するために、さらなるフッ素が、構造式VCによって表されるケトンにおいてR位置に存在する。アミノ基により置換するための代替方法は、当業者に公知であるように、フルオロの代わりのブロモと、パラジウム触媒とを使用することである。化合物XIIをコハク酸ジメチルにより処理して、対応するエステルを生成し、その後、反応Cに記載されるように、無水酢酸により環化し、続いて、メタノリシスを行うことにより、対応するアミノ置換されたナフトールを生成する。アミノ置換されたナフトールはその後、反応Dに記載されるようにプロパルギルアルコールとカップリングされて、アミノ置換されたナフトピラン類を生成する。
【0058】
【化15】

本開示の様々な実施形態によるナフトピラン類を含むフォトクロミック材料の限定されない例には:
(a)2−(4−メトキシフェニル)−2−フェニル−5−メトキシカルボニル−7,8−ジメトキシ−2H−ナフト[1,2−b]ピラン;
(b)2−(4−メチルフェニル)−2−フェニル−5−メトキシカルボニル−7,8−ジメトキシ−2H−ナフト[1,2−b]ピラン;
(c)2,2−ジフェニル−5−メトキシカルボニル−7,8−ジメトキシ−2H−ナフト[1,2−b]ピラン;
(d)2−(2−(9,9−ジメチル)フルオレニル)−2−フェニル−5−メトキシカルボニル−7,8−ジメトキシ−2H−ナフト[1,2−b]ピラン;
(e)2,2−ジフェニル−5−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシカルボニル]−7,8−ジメトキシ−2H−ナフト[1,2−b]ピラン;および
(f)2,2−ジフェニル−5−[2−(2−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシエトキシ)エトキシカルボニル]−7,8−ジメトキシ−2H−ナフト[1,2−b]ピラン
のうちの少なくとも1つが含まれる。
【0059】
本開示のフォトクロミック材料、例えば、フォトクロミック性ナフトピランに結合した反応性置換基を有するかまたは有さないフォトクロミック性ナフトピランを含むフォトクロミック材料(反応性置換基は、本明細書で示されるような構造を有する)は、フォトクロミック材料が用いられ得る適用において、例えば、光学要素(例えば、眼用要素、ディスプレイ要素、窓、鏡、能動型液晶セル要素および受動型液晶セル要素)などにおいて使用することができる。本明細書で使用される用語「光学(的)」は、光および/または視覚に関係または関連することを意味する。本明細書で使用される用語「眼用」は、目および視覚に関係または関連することを意味する。本明細書で使用される用語「ディスプレイ」は、情報を、言葉、数字、記号、デザインまたは図画で、視覚的に、または機械読み取り可能に提示することを意味する。ディスプレイ要素の限定されない例には、スクリーン、モニターおよびセキュリティ要素(セキュリティマークなど)が含まれる。本明細書で使用される用語「窓」は、放射線が透過することを可能にするために適合された開口部を意味する。窓の限定されない例には、航空機および自動車のフロントガラス、自動車および航空機の透明体(例えば、Tルーフ、側灯およびバックライト)、フィルタ、シャッタ、ならびに、光スイッチが含まれる。本明細書で使用される用語「鏡」は、入射光の大きな割合を鏡のように反射する表面を意味する。本明細書で使用される用語「液晶セル」は、配列することができる液晶材料を含有する構造物を示す。液晶セル要素の限定されない一例が液晶ディスプレイである。
【0060】
特定の限定されない実施形態において、本開示のフォトクロミック材料は眼用要素において使用することができ、例えば、矯正用レンズ(これには、単焦点レンズ、あるいは、セグメント化多焦点レンズまたは非セグメント化多焦点レンズのいずれかであり得る多焦点レンズ(二重焦点レンズ、三重焦点レンズおよび累進レンズなど、これらに限定されない)が含まれる)、非矯正用レンズ、拡大レンズ、保護レンズ、バイザー、ゴーグルおよび光学装置用レンズ(カメラまたは望遠鏡レンズなど)において使用することができる。他の限定されない実施形態において、本開示のフォトクロミック材料は、プラスチックフィルムおよびシート、布地、ならびに被覆物において使用することができる。
【0061】
本明細書に開示される様々な限定されない実施形態によるフォトクロミック材料は、例えば、限定されないが、製造品(光学要素など)、および、他の基体に適用することができる被覆物を形成するために使用することができる有機材料(ポリマー材料、オリゴマー材料またはモノマー材料など)に組み込まれ得る。本明細書で使用される用語「に組み込まれる」は、物理的および/または化学的に一緒にされることを意味する。従って、本明細書に開示される様々な限定されない実施形態によるフォトクロミック材料は有機材料の少なくとも一部分と物理的および/または化学的に一緒にすることができる。本明細書で使用される用語「ポリマー」および用語「ポリマー材料」は、ホモポリマーおよびコポリマー(例えば、ランダムコポリマー、ブロックコポリマーおよび交互コポリマー)、ならびに、それらの配合物および他の組合せを示す。さらに、本明細書に開示される様々な限定されない実施形態によるフォトクロミック材料はそれぞれが単独で、または、本明細書に開示される様々な限定されない実施形態による他のフォトクロミック材料との組合せで、または、他の適切な相補的な従来のフォトクロミック材料との組合せで使用することができることが理解される。例えば、本明細書に開示される様々な限定されない実施形態によるフォトクロミック材料は、活性化吸収極大を300〜1000ナノメートルの範囲に有する他の相補的な従来のフォトクロミック材料と併せて使用することができる。そのような相補的な従来のフォトクロミック材料には、他の重合可能な、または適合化されたフォトクロミック材料が含まれ得る。
【0062】
本開示ではまた、ポリマー材料と、本明細書で議論される様々な限定されない実施形態によるフォトクロミック材料とを含むフォトクロミック組成物が意図される。本明細書で使用される用語「フォトクロミック組成物」は、別の材料(フォトクロミック材料であっても、フォトクロミック材料ではなくてもよい)と組み合わせたフォトクロミック材料を示す。本開示の様々な限定されない実施形態によるフォトクロミック組成物の特定の限定されない例において、フォトクロミック材料はポリマー材料の少なくとも一部分に組み込まれる。例えば、限定ではなく、本明細書に開示されるフォトクロミック材料は、例えば、フォトクロミック材料をポリマー材料の一部分と共重合させることによりポリマー材料の一部分に結合させることによって;または、ポリマー材料と配合することによって、ポリマー材料の一部分に組み込まれ得る。本明細書で使用される用語「配合される」および用語「配合する」は、フォトクロミック材料が有機材料(ポリマー材料など)の少なくとも一部分と混ぜられ、または、混ぜ合わされるが、有機材料に結合されないことを意味する。本明細書で使用される用語「結合される」または用語「結合する」は、フォトクロミック材料が有機材料(ポリマー材料など)またはその前駆体の一部分に連結されることを意味する。例えば、特定の限定されない実施形態において、フォトクロミック材料を、反応性置換基(限定されないが、上記で議論された反応性置換基など)を介して有機材料の一部分に結合させることができる。
【0063】
有機材料がポリマー材料である1つの限定されない実施形態によれば、フォトクロミック材料を、ポリマー材料の少なくとも一部分に、あるいは、ポリマー材料が形成されるモノマー材料またはオリゴマー材料の少なくとも一部分に組み込むことができる。例えば、反応性置換基を有する本明細書に開示される様々な限定されない実施形態によるフォトクロミック材料を、反応性部分が反応することができる基、または、反応性部分が、有機材料が形成される重合反応において、例えば、共重合プロセスにおいてコモノマーとして反応することができる基を有する有機材料(モノマー、オリゴマーまたはポリマーなど)に結合させることができる。本明細書で使用される用語「と共重合する」は、フォトクロミック材料が、ポリマー材料をもたらすホストモノマーの重合反応におけるコモノマーとして反応することによってポリマー材料の一部分に連結されることを意味する。例えば、重合可能部分を含む反応性置換基を有する本明細書中の様々な限定されない実施形態によるフォトクロミック材料は、ホストモノマーの重合の際にコモノマーとして反応することができる。
【0064】
本開示の様々な限定されない実施形態のために好適なポリマー材料には、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ(C〜C12)アルキル化メタクリレート、ポリオキシ(アルキレンメタクリレート)、ポリ(アルコキシ化フェノールメタクリレート)、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸酢酸セルロース、酪酸酢酸セルロース、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ((メタ)アクリルアミド)、ポリ(ジメチルアクリルアミド)、ポリ((メタ)アクリル酸)、熱可塑性ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレアウレタン、ポリチオウレタン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、コポリ(スチレン−メチルメタクリレート)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、ポリビニルブチラール、ならびに、ポリオール(アリルカーボネート)モノマー、単官能性アクリレートモノマー、単官能性メタクリレートモノマー、多官能性アクリレートモノマー、多官能性メタクリレートモノマー、ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー、ジイソプロペニルベンゼンモノマー、アルコキシ化多価アルコールモノマーおよびジアリリデンペンタエリスリトールモノマーからなる群のメンバーのポリマーが含まれるが、これらに限定されない。本開示のフォトクロミック組成物の特定の限定されない実施形態において、ポリマー材料は、アクリレート、メタクリレート、メチルメタクリレート、エチレングリコールビスメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、酢酸ビニル、ビニルブチラール、ウレタン、チオウレタン、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジイソプロペニルベンゼン、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、および、それらの組合せから選ばれるモノマーのホモポリマーまたはコポリマーを含む。
【0065】
透明なコポリマー、および、透明なポリマーの配合物はまた、本明細書に開示される様々な限定されない実施形態によるフォトクロミック組成物に好適なホストポリマー材料である。例えば、様々な限定されない実施形態によれば、ポリマー材料は、LEXAN(登録商標)の商標で販売される、熱可塑性ポリカーボネート樹脂(ビスフェノールAおよびホスゲンに由来する樹脂など)から調製される光学的に透明なポリマー材料;ポリエステル(MYLAR(登録商標)の商標で販売される材料など);ポリ(メチルメタクリレート)(PLEXIGLAS(登録商標)の商標で販売される材料など);ポリオール(アリルカーボネート)モノマー、特に、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)の重合物(そのようなモノマーはCR−39(登録商標)の商標で販売される);および、ポリウレア−ポリウレタン(ポリウレアウレタン)ポリマー(例えば、ポリウレタンプレポリマーおよびジアミン硬化剤の反応によって調製され、1つのそのようなポリマーについての組成物がPPG Industries,Inc.(Pittsburgh、PA、USA)によってTRIVEX(登録商標)の商標で販売される)であり得る。好適なポリマー材料の他の限定されない例には、ポリオール(アリルカーボネート)(例えば、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート))と、他の共重合可能なモノマー材料とのコポリマー(限定されないが、酢酸ビニルとのコポリマー;末端のジアクリレート官能性を有するポリウレタンとのコポリマー;および、末端部分がアリルまたはアクリロイル官能基を含有する脂肪族ウレタンとのコポリマーなど)の重合物が含まれる。さらに別の好適なポリマー材料には、限定されないが、ポリ(酢酸ビニル)、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、ポリチオウレタン、ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー、ジイソプロペニルベンゼンモノマー、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレートモノマー、エチレングリコールビスメタクリレートモノマー、ポリ(エチレングリコール)ビスメタクリレートモノマー、エトキシ化フェノールビスメタクリレートモノマーおよびエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートモノマーから選ばれるポリマー、酢酸セルロース、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、酪酸酢酸セルロース、ポリスチレン、ならびに、スチレンと、メチルメタクリレート、酢酸ビニル、アクリロニトリルとのコポリマー、ならびに、それらの組合せが含まれる。1つの限定されない実施形態によれば、ポリマー材料は、CRの呼称でPPG Industries,Inc.によって販売される光学樹脂であり得る(例えば、CR−307、CR−407およびCR−607)。
【0066】
本明細書に開示される様々な限定されない実施形態により、基体と、その基体の一部分に連続する上記で議論された限定されない実施形態のいずれかによるフォトクロミック材料とを含むフォトクロミック品が提供される。本明細書で使用される用語「に連続する」は、直接的に、あるいは、別の材料または構造体を介して間接的に、そのいずれかで付随することを意味する。1つの限定されない実施形態において、本開示のフォトクロミック品は光学要素であり得る(例えば、限定されないが、眼用要素、ディスプレイ要素、窓、鏡、能動型液晶セル要素および受動型液晶セル要素)。特定の限定されない実施形態において、フォトクロミック品は眼用要素であり、例えば、限定されないが矯正用レンズ(これには、単焦点レンズ、あるいは、セグメント化多焦点レンズまたは非セグメント化多焦点レンズのいずれかであり得る多焦点レンズ(限定されないが、二重焦点レンズ、三重焦点レンズおよび累進レンズなど)が含まれる)、非矯正用レンズ、拡大レンズ、保護レンズ、バイザー、ゴーグルおよび光学装置用レンズである。
【0067】
例えば、限定されないが、本明細書に開示されるフォトクロミック材料は、例えば、フォトクロミック材料を、基体が作製される材料の少なくとも一部分に、例えば、フォトクロミック材料を基体材料と共重合するか、または、そうでない場合には結合させることにより結合することによって、あるいは、フォトクロミック材料を基体材料と配合することによって、あるいは、フォトクロミック材料を基体の表面の少なくとも一部分に被覆することによって基体の少なくとも一部分に連続させることができる。代替的には、フォトクロミック材料を、例えば、中間の被覆物、膜または層などを介して基体の少なくとも一部分に連続させることができる。
【0068】
フォトクロミック品の基体がポリマー材料を含む、本明細書に開示される様々な限定されない実施形態によれば、このフォトクロミック材料は、フォトクロミック材料を基体のポリマー材料の少なくとも一部分に組み込むことによって、あるいは、フォトクロミック材料を、基体が形成されるオリゴマー材料またはモノマー材料の少なくとも一部分に組み込むことによって基体の少なくとも一部分に連続させることができる。例えば、1つの限定されない実施形態によれば、フォトクロミック材料を現場流延(cast−in−place)法によって基体のポリマー材料に組み込むことができる。加えて、または、代替的には、フォトクロミック材料を吸入によって基体のポリマー材料の少なくとも一部分に連続させることができる。吸入法および現場流延法が下記で議論される。
【0069】
例えば、1つの限定されない実施形態によれば、基体はポリマー材料を含み、フォトクロミック材料がこのポリマー材料の少なくとも一部分に結合する。別の限定されない実施形態によれば、基体はポリマー材料を含み、フォトクロミック材料がポリマー材料の少なくとも一部分と配合される。別の限定されない実施形態によれば、基体はポリマー材料を含み、フォトクロミック材料がポリマー材料の少なくとも一部分と共重合される。本明細書に開示される様々な限定されない実施形態に従って基体を形成することにおいて有用であるポリマー材料の限定されない例が上記で詳しく示される。
【0070】
他の限定されない実施形態によれば、フォトクロミック材料は、基体の少なくとも一部分に連続する少なくとも部分的な被覆物の一部としてフォトクロミック品の基体の少なくとも一部分に連続させることができる。この限定されない実施形態によれば、基体はポリマー基体であっても無機基体(限定されないが、ガラス基体など)であってもよい。さらに、フォトクロミック材料は、被覆組成物を基体に適用する前に被覆組成物の少なくとも一部分に組み込むことができるか、または、代替的に、被覆組成物を基体に適用し、少なくとも部分的に固化させることができ、その後、フォトクロミック材料を被覆物の少なくとも一部分に吸入させることができる。本明細書で使用される用語「固化される」および用語「固化させる」は、限定されないが、硬化、重合、架橋、冷却、および、乾燥を包含する。
【0071】
例えば、本開示の1つの限定されない実施形態において、フォトクロミック品は、その表面の少なくとも一部分に連続するポリマー材料の少なくとも部分的な被覆物を含んでいてよい。この限定されない実施形態によれば、フォトクロミック材料は少なくとも部分的な被覆物のポリマー材料の少なくとも一部分と配合されていてよく、または、フォトクロミック材料は少なくとも部分的な被覆物のポリマー材料の少なくとも一部分に結合していてよい。1つの具体的な限定されない実施形態によれば、フォトクロミック材料は少なくとも部分的な被覆物のポリマー材料の少なくとも一部分と共重合していてよい。
【0072】
フォトクロミック材料を含む少なくとも部分的な被覆物は、例えば、フォトクロミック材料を含む被覆組成物を基体の表面の少なくとも一部分に直接に適用し、被覆組成物を少なくとも部分的に固化させることによって基体に直接に連続させることができる。加えて、または、代替的に、フォトクロミック材料を含む少なくとも部分的な被覆物は、例えば、1つまたは複数のさらなる被覆物を介して基体に連続させることができる。例えば、本明細書において限定しないが、様々な限定されない実施形態によれば、さらなる被覆組成物を基体の表面の少なくとも一部分に適用し、少なくとも部分的に固化させることができ、その後、フォトクロミック材料を含む被覆組成物をこのさらなる被覆物上に適用し、少なくとも部分的に固化させることができる。
【0073】
本明細書に開示される光学要素と併せて使用することができるさらなる被覆物および膜の限定されない例には、下塗りの被覆物および膜;保護的な被覆物および膜(これには、過渡的な被覆物および膜、ならびに、耐摩耗性の被覆物および膜が含まれる);反射防止の被覆物および膜;従来のフォトクロミック性の被覆物および膜;偏光用の被覆物および膜;ならびに、それらの組合せが含まれる。本明細書で使用される用語「保護的な被覆物または膜」は、摩滅または摩耗の防止、ある被覆物または膜から別の被覆物または膜への性質の移行の提供、重合反応の化学物質の影響からの保護、および/あるいは、環境的条件(例えば、水分、熱、紫外光、酸素など)に起因する劣化からの保護をもたらすことができる被覆物または膜をいう。
【0074】
本明細書に開示される様々な限定されない実施形態と併せて使用することができる下塗りの被覆物および膜の限定されない例には、カップリング剤、カップリング剤の部分的加水分解物、および、それらの混合物を含む被覆物および膜が含まれる。本明細書で使用される用語「カップリング剤」は、1つまたは複数の表面における基と反応、結合および/または会合することができる基を有する物質を意味する。1つの限定されない実施形態において、カップリング剤は、類似するまたは異なる表面であり得る2つ以上の表面の境界における分子架橋として役立つことができる。カップリング剤は、別の限定されない実施形態では、モノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーであり得る。そのような材料には、有機金属類、例えば、シラン類、チタネート類、ジルコネート類、アルミネート類、アルミン酸ジルコニウム類、それらの加水分解物、および、それらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用される表現「カップリング剤の部分的加水分解物」は、カップリング剤における加水分解可能な基の一部〜すべてが加水分解されていることを意味する。
【0075】
本明細書で使用される用語「過渡的な被覆物および膜」は、2つの被覆物または膜の間、あるいは、被覆物と膜との間における性質の勾配を生じさせることを助ける被覆物または膜を意味する。例えば、本明細書において限定しないが、過渡的な被覆物は、相対的に硬い被覆物と、相対的に軟らかい被覆物との間の硬度における勾配を生じさせることを助けることができる。
【0076】
本明細書で使用される用語「耐摩耗性の被覆物および膜」は、ASTM F−735(振動砂法を使用する透明なプラスチックおよび被覆物の耐摩耗性のための標準試験法)と同等の方法で試験されたとき、標準の参照材料(例えば、PPG Industries,Inc.から入手可能なCR−39(登録商標)モノマーから作製されたポリマー)よりも大きい耐摩耗性を示す保護的なポリマー材料の被覆物を示す。耐摩耗性被覆物の限定されない例には、有機シラン類、有機シロキサン類を含む耐摩耗性被覆物、無機材料(例えば、シリカ、チタニアおよび/またはジルコニアなど)に基づく耐摩耗性被覆物、紫外光硬化性であるタイプの有機耐摩耗性被覆物、酸素バリア被覆物、UV遮蔽被覆物、および、それらの組合せが含まれる。
【0077】
反射防止の被覆物および膜の限定されない例には、本明細書に開示される物品または薄膜に、例えば、真空蒸着、スパッタリングまたは何らかの他の方法によって配置することができる、金属酸化物、金属フッ化物または他のそのような材料の単分子層、多分子層または膜が含まれる。従来のフォトクロミック性の被覆物および膜の限定されない例には、従来のフォトクロミック材料を含む被覆物および膜が含まれるが、これらに限定されない。偏光用の被覆物および膜の限定されない例には、当該分野で公知である二色性化合物を含む被覆物および膜が含まれるが、これらに限定されない。
【0078】
上記で議論されたように、様々な限定されない実施形態によれば、これらの被覆物および膜は、本明細書に開示される様々な限定されない実施形態によるフォトクロミック材料を含む少なくとも部分的な被覆物を適用する前に基体に適用することができる。代替的に、または、加えて、これらの被覆物は、例えば、フォトクロミック材料を含む少なくとも部分的な被覆物における上塗りとして、フォトクロミック材料を含む少なくとも部分的な被覆物を適用した後で基体に適用することができる。例えば、本明細書において限定しないが、様々な他の限定されない実施形態によれば、上記の被覆物は表面から下記の順で基体の同じ表面の少なくとも一部分に連続させることができる:下塗り、フォトクロミック、過渡的、耐摩耗性、偏光用の膜または被覆物、反射防止および耐摩耗性;下塗り、フォトクロミック、過渡的、耐摩耗性および反射防止;または、フォトクロミック、過渡的および偏光用;または、下塗り、フォトクロミックおよび偏光用;または、下塗り、フォトクロミックおよび反射防止。さらに、上記の被覆物は基体の両方の表面に適用することができる。
【0079】
本開示ではまた、本明細書に開示される様々な限定されない実施形態によるフォトクロミック材料を基体の少なくとも一部分に連続させることを含む、フォトクロミック品を作製する様々な方法が意図される。例えば、基体がポリマー材料を含む、1つの限定されない実施形態において、フォトクロミック材料を基体の少なくとも一部分に連続させることは、フォトクロミック材料を基体のポリマー材料の少なくとも一部分と配合することを含むことができる。別の限定されない実施形態において、フォトクロミック材料を基体の少なくとも一部分に連続させることは、フォトクロミック材料を基体のポリマー材料の少なくとも一部分と結合させることを含むことができる。例えば、1つの限定されない実施形態において、フォトクロミック材料を基体の少なくとも一部分に連続させることは、フォトクロミック材料を基体のポリマー材料の少なくとも一部分と共重合させることを含むことができる。フォトクロミック材料をポリマー材料に連続させる限定されない方法には、例えば、フォトクロミック材料を、ポリマー材料、オリゴマー材料またはモノマー材料の溶液または溶融物に混合すること、および、続いて、ポリマー材料、オリゴマー材料またはモノマー材料を少なくとも部分的に固化させることが含まれる。この限定されない実施形態によれば、得られたフォトクロミック組成物において、フォトクロミック材料がポリマー材料と配合され得る(すなわち、ポリマー材料に結合されるのではなく、ポリマー材料と混ぜられ得る)か、または、ポリマー材料に結合され得ることが当業者によって理解される。例えば、フォトクロミック材料が、有機材料の固化時においてポリマー材料、オリゴマー材料またはモノマー材料と適合し得る重合可能な基を含有するならば、フォトクロミック材料は、フォトクロミック材料をそれに結合させるためにその少なくとも一部分と反応させることができる。
【0080】
別の限定されない実施形態において、フォトクロミック材料を基体の少なくとも一部分に連続させることは、フォトクロミック材料を基体のポリマー材料の少なくとも一部分により吸入させることを含むことができる。この限定されない実施形態によれば、フォトクロミック材料は、例えば、ポリマー材料を、加熱を伴って、または、加熱を伴うことなく、フォトクロミック材料を含有する溶液に浸けることによって、材料内に拡散させられることができる。その後、フォトクロミック材料を、上記で議論されたようにポリマー材料に結合させることができる。別の限定されない実施形態において、フォトクロミック材料を基体の少なくとも一部分に連続させることは、フォトクロミック材料を基体のポリマー材料の少なくとも一部分と配合すること、フォトクロミック材料を基体のポリマー材料の少なくとも一部分に結合させること(例えば、共重合することにより結合させること)、および、フォトクロミック材料を基体のポリマー材料の少なくとも一部分により吸入させることの2つ以上の組合せを含むことができる。
【0081】
基体がポリマー材料を含む、1つの限定されない実施形態によれば、フォトクロミック材料を基体の少なくとも一部分に組み込むことは現場流延法を含む。この限定されない実施形態によれば、フォトクロミック材料をポリマーの溶液または溶融物、あるいは、他のオリゴマーおよび/またはモノマーの溶液または混合物と混合することができ、その後、これらは、基体を形成するために、所望の形状を有する鋳型に注入され、少なくとも部分的に固化される。さらに、この限定されない実施形態に従って要求されないが、フォトクロミック材料をポリマー材料に結合することができる。
【0082】
基体がポリマー材料を含む、別の限定されない実施形態によれば、フォトクロミック材料を基体の少なくとも一部分と連続させることは、鋳型内注入を含む。この限定されない実施形態によれば、フォトクロミック材料を含む被覆組成物(これは液状の被覆組成物であっても粉末の被覆組成物であってもよい)が鋳型の表面に適用され、少なくとも部分的に固化される。その後、ポリマーの溶液または溶融物、あるいは、オリゴマーまたはモノマーの溶液または混合物が被覆物上にキャストされ、少なくとも部分的に固化される。固化後、被覆物を伴う基体が鋳型から取り出される。
【0083】
基体がポリマー材料または無機材料(例えば、ガラスなど)を含む、さらに別の限定されない実施形態によれば、フォトクロミック材料を基体の少なくとも一部分と連続させることは、フォトクロミック材料を含む少なくとも部分的な被覆物または積層物を基体の少なくとも一部分に適用することを含む。好適な被覆方法の限定されない例には、スピンコーティング、スプレーコーティング(例えば、液体または粉末の被覆物を使用する)、カーテンコーティング、ロールコーティング、スピンおよびスプレーコーティング、ならびに、オーバーモールディングが含まれる。例えば、1つの限定されない実施形態によれば、フォトクロミック材料はオーバーモールディングによって基体に連続させることができる。この限定されない実施形態によれば、フォトクロミック材料を含む被覆組成物(以前に議論されたように、液状の被覆組成物であっても粉末の被覆組成物であってもよい)が鋳型に適用され、その後、基体が被覆物と接触し、これにより、被覆物が基体の表面の少なくとも一部分を覆って広がることが生じるように、基体が鋳型内に置かれる。その後、被覆組成物は少なくとも部分的に固化され、被覆された基体が鋳型から取り出される。あるいは、オーバーモールディングを、開放領域が基体と鋳型との間で規定されるように基体を鋳型内に置き、その後、フォトクロミック材料を含む被覆組成物を開放領域に射出することによって行うことができる。その後、被覆組成物を少なくとも部分的に固化させることができ、被覆された基体が鋳型から取り出される。
【0084】
さらに別の限定されない実施形態によれば、フォトクロミック材料を含む膜を、接着剤、あるいは/または、熱および圧力の適用を伴って、あるいは、それらを伴うことなく、基体の一部分に接着することができる。その後、所望ならば、第2の基体を第1の基体上に適用することができ、これら2つの基体を一緒に積層化して(すなわち、熱および圧力の適用によって積層化して)、フォトクロミック材料を含む膜がこれら2つの基体の間に置かれる要素を形成させることができる。フォトクロミック材料を含む膜を形成する方法には、例えば、また、限定されないが、フォトクロミック材料をポリマー溶液あるいはオリゴマーの溶液または混合物と一緒にし、それらからの膜をキャストしまたは押し出し、その後、所望ならば、膜を少なくとも部分的に固化させることが含まれ得る。加えて、または、代替的に、膜を、(フォトクロミック材料を伴って、または、フォトクロミック材料を伴うことなく)形成し、フォトクロミック材料を(上記で議論されたように)吸入させることができる。
【0085】
さらに、本明細書に開示される様々な限定されない実施形態によるフォトクロミック組成物、フォトクロミック品およびフォトクロミック被覆組成物はさらに、組成物の加工および/または性能を助ける他の添加物を含むことができることが当業者によって理解される。例えば、また、限定されないが、そのような添加物には、相補的なフォトクロミック材料、光開始剤、熱開始剤、重合防止剤、溶媒、光安定剤(限定されないが、紫外光吸収剤および光安定剤(ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)など)など)、熱安定剤、離型剤、レオロジー制御剤、平滑化剤(限定されないが、界面活性剤など)、フリーラジカル捕捉剤または接着促進剤(例えば、ヘキサンジオールジアクリレートおよびカップリング剤など)が含まれ得る。
【0086】
本明細書に記載されるフォトクロミック材料のそれぞれを、フォトクロミック材料が付随する(すなわち、配合、共重合または他の様式での結合、被覆、および/あるいは、吸入される)基体またはポリマー材料が、所望される得られた色(例えば、フォトクロミック材料が閉じた形態であるときには実質的に無色透明、および、化学線によって活性化され、フォトクロミック材料が開いた形態であるときには実質的に着色された色)を示すような量(または比率)で使用することができる。
【0087】
被覆組成物、ポリマー材料、基体、フォトクロミック組成物および/またはフォトクロミック品に連続するか、または、組み込まれる本開示のフォトクロミック性ナフトピランの量は、所望の光学的効果をもたらすために十分な量が使用されるならば、重要でない。一般に、そのような量は「フォトクロミック量」と記載され得る。使用されるフォトクロミック材料の具体的な量は、様々な要因(例えば、使用されるフォトクロミック材料の吸収特性、その照射時の所望される色の強度、および、フォトクロミック材料を組み込むためまたは適用するために使用される方法など)に依存し得る。
【0088】
本開示の限定されない実施形態の様々な方法において使用される上記フォトクロミック材料の相対的な量は広範囲に変化し、部分的には、そのような材料の活性化された化学種の色の相対的な強度、所望の最終的な色、化学線についてのモル吸収係数(または「吸光係数」)、および、ポリマー材料または基体への適用方法に依存する。一般に、ポリマー材料または基体に組み込まれるか、または、連続するフォトクロミック材料全体の量は、フォトクロミック材料が組み込まれるか、または、連続する基体の1平方センチメートルあたり約0.05ミリグラム〜約5.0ミリグラムの範囲であり得る。被覆組成物に組み込まれるか、または、連続するフォトクロミック材料の量は、被覆組成物の重量に基づいて0.1%重量パーセント〜90重量パーセントの範囲であり得る。ホストポリマーのフォトクロミック組成物、または、フォトクロミック品に、例えば、現場流延タイプの方法などによって組み込まれる(すなわち、それらと配合されるか、それらと共重合されるか、または、それらに結合される)フォトクロミック材料の量は、ポリマー組成物またはフォトクロミック品の重量に基づいて0.01%重量パーセント〜50重量パーセントの範囲であり得る。
【実施例】
【0089】
(本発明の実施例)
下記の実施例は、本開示に含まれる組成物および方法の様々な限定されない実施形態を例示し、本明細書に別途記載されるような本発明を限定しない。
【0090】
(実施例1)
(工程1)
カリウムt−ブトキシド(47.4グラム)を秤量して、機械的撹拌装置を備える1リットルの反応フラスコに入れ、窒素雰囲気下に置き、400ミリリットル(mL)のトルエンを加えた。200mLのトルエン中の2,3−ジメトキシベンズアルデヒド(49.8グラム)およびコハク酸ジメチル(54.3グラム)の混合物を、激しい撹拌を伴って30分間にわたって還流温度で反応混合物に加えた。反応混合物を還流しながら120分間加熱した。反応混合物を室温に冷却した後、反応混合物を500mLの水に注ぎ、トルエン層を分離した。水層をエーテルにより2回抽出し(それぞれ、300mL)、濃塩酸(約40mL)により酸性化した。褐色がかった油状の固体を酢酸エチルによる2回の抽出(それぞれ、300mL)によって水層から得た。有機層を一緒にし、飽和塩化ナトリウム溶液(400mL)により洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を回転蒸発によって除くことにより、82グラムの褐色がかった油状の固体を得た。この生成物の質量スペクトルは、生成物が、4−(2,3−ジメトキシフェニル)−3−メトキシカルボニル−3−ブテン酸(E異性体およびZ異性体の混合物として)と一致する質量プロフィールを有することを示した。この物質をさらに精製せず、次の工程でそのまま使用した。
【0091】
(工程2)
4−(2,3−ジメトキシフェニル)−3−メトキシカルボニル−3−ブテン酸のE異性体およびZ異性体を含有する工程1の生成物(82グラム)を反応フラスコに入れ、120mLの無水酢酸を加えた。反応混合物を還流温度に加熱し、還流温度で2時間保った。その後、反応混合物を室温に冷却し、その後、0℃に冷却した。無水酢酸の大部分を減圧下で除いて、粘性の褐色の油状物を得た。この褐色の油状物を、400mLの酢酸エチルを含有する反応フラスコに加え、その後、500mLの水を加えた。固体の炭酸ナトリウムを、発泡が止むまで二相混合物に加えた。得られた層を分離し、水層を酢酸エチルにより2回抽出した(それぞれ、200mL)。有機層を一緒にし、飽和塩化ナトリウム溶液(400mL)により洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒(酢酸エチル)を回転蒸発によって除いて、77グラムの褐色の固体を得た。この生成物の質量スペクトルは、生成物が、2−メトキシカルボニル−4−アセトキシ−7,8−ジメトキシナフタレンと一致する質量プロフィールを有することを示した。この物質をさらに精製せず、次の工程でそのまま使用した。
【0092】
(工程3)
工程2から得られた2−メトキシカルボニル−4−アセトキシ−7,8−ジメトキシナフタレン(75グラム)、250mLのメタノールおよび4mLの濃塩酸を、窒素雰囲気下、1リットルの反応フラスコに加え、還流温度に加熱し、その温度で4時間維持した。反応混合物を室温に冷却し、その後、0℃に冷却した。その後、溶媒を減圧下で除いて、粘性の褐色の油状物(62グラム)を得た。この生成物の質量スペクトルは、生成物が、2−メトキシカルボニル−4−ヒドロキシ−7,8−ジメトキシナフタレンと一致する質量プロフィールを有することを示した。この物質をさらに精製せず、次の工程でそのまま使用した。
【0093】
(工程4)
工程3から得られた2−メトキシカルボニル−4−ヒドロキシ−7,8−ジメトキシナフタレン(5.3グラム)、1−(4−メトキシフェニル)−1−フェニル−2−プロピン−1−オール(4.4グラム、米国特許第5,458,814号の実施例5の工程1の生成物、その実施例は本明細書により参考により本明細書に特に組み込まれる)、ドデシルベンゼンスルホン酸(約20ミリグラム)および200mLの塩化メチレンを反応容器中で一緒にし、周囲温度で4時間撹拌した。反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム(200mL)により洗浄し、その後、溶媒を回転蒸発によって除いた。得られた褐色の固体をフラッシュカラムクロマトグラフィによって精製し、続いて、得られた生成物をエーテルからの結晶化によって精製して、3グラムの黄色がかった白色の固体を得た。核磁気共鳴(NMR)分析では、生成物が、2−(4−メトキシフェニル)−2−フェニル−5−メトキシカルボニル−7,8−ジメトキシ−2H−ナフト[1,2−b]ピランと一致する構造を有することが示された。
【0094】
(実施例2)
1−(4−メチルフェニル)−1−フェニル−2−プロピン−1−オール(7.65グラム)を1−(4−メトキシフェニル)−1−フェニル−2−プロピン−1−オールの代わりに使用し、11.2グラムの2−メトキシカルボニル−4−ヒドロキシ−7,8−ジメトキシナフタレンを使用し、300mLの塩化メチレンを使用したことを除いて、実施例1の工程4のプロセスに従った。反応混合物を2回、飽和重炭酸ナトリウム(それぞれ、300mL)により洗浄し、その後、溶媒を回転蒸発によって除いた。得られた褐色の固体をフラッシュカラムクロマトグラフィによって精製し、続いて、得られた生成物をエーテルからの結晶化によって精製して、5.6グラムの黄色の固体を得た。NMR分析では、生成物が、2−(4−メチルフェニル)−2−フェニル−5−メトキシカルボニル−7,8−ジメトキシ−2H−ナフト[1,2−b]ピランと一致する構造を有することが示された。
【0095】
(実施例3)
1,1−ジフェニル−2−プロピン−1−オールを1−(4−メトキシフェニル)−1−フェニル−2−プロピン−1−オールの代わりに使用し、9.2グラムの2−メトキシカルボニル−4−ヒドロキシ−7,8−ジメトキシナフタレンを使用し、200mLの塩化メチレンを使用したことを除いて、実施例1の工程4のプロセスに従った。反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム(300mL)により洗浄し、その後、溶媒を回転蒸発によって除いた。得られた褐色の固体をフラッシュカラムクロマトグラフィによって精製し、続いて、得られた生成物をエーテルからの結晶化によって精製して、3.5グラムの黄色の固体を得た。NMR分析では、生成物が、2,2−ジフェニル−5−メトキシカルボニル−7,8−ジメトキシ−2H−ナフト[1,2−b]ピランと一致する構造を有することが示された。
【0096】
(実施例4)
(工程1)
1−(2−(9,9−ジメチル)フルオレニル)−1−フェニル−2−プロピン−1−オールを、K.D.Belfieldら(「Synthesis of New Two−Photon Absorbing Fluorene Derivatives via Cu−Mediated Ullmann Condensations」、J.Org.Chem.、第65巻、第15号、4475頁〜4481頁、7/28/2000)によって記載される手順に従って調製した(その手順は参考により本明細書に組み込まれる)。フルオレンを、水酸化カリウムおよびヨウ化メチルをジメチルスルホキシド中で使用して9位においてメチル化し、その後、塩化ベンゾイルを用いたフリーデル−クラフツ反応を本明細書中の反応Aに記載されるように行い、その後、ジメチルホルムアミド中でのナトリウムアセチリドとの反応を本明細書中の反応Bに記載されるように行った。
【0097】
(工程2)
工程1の生成物(2.15グラム)を1−(4−メトキシフェニル)−1−フェニル−2−プロピン−1−オールの代わりに使用し、3.4グラムの2−メトキシカルボニル−4−ヒドロキシ−7,8−ジメトキシナフタレンを使用し、100mLの塩化メチレンを使用したことを除いて、実施例1の工程4のプロセスに従った。反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム(300mL)により洗浄し、その後、溶媒を回転蒸発によって除いた。得られた褐色の固体をフラッシュカラムクロマトグラフィによって精製し、続いて、得られた生成物をエーテルからの結晶化によって精製して、2.3グラムの黄色の固体を得た。NMR分析では、生成物が、2−(2−(9,9−ジメチル)フルオレニル)−2−フェニル−5−メトキシカルボニル−7,8−ジメトキシ−2H−ナフト[1,2−b]ピランと一致する構造を有することが示された。
【0098】
(実施例5)
(工程1)
2−メトキシカルボニル−4−ヒドロキシ−7,8−ジメトキシナフタレン(33グラム、これは実施例1の工程3で調製された)を1リットルの反応フラスコ中で100mLの熱メタノールに溶解した。50mLの50%水酸化ナトリウムを200mLの水に含む溶液を反応フラスコに加え、得られた褐色の溶液を、窒素雰囲気下で2時間、還流温度で加熱した。反応混合物を室温に冷却し、その後、300mLの水中120mLの濃塩酸の混合物に撹拌しながら滴下して加えた。褐色の固体が析出し、これを濾過し、続いて乾燥した。この生成物の質量スペクトルは、生成物が、4−ヒドロキシ−7,8−ジメトキシ−2−ナフトエ酸と一致する質量プロフィールを有することを示した。この物質をさらに精製せず、次の工程でそのまま使用した。
【0099】
(工程2)
工程1の生成物(5.7グラム)を秤量して250mLの反応フラスコに入れ、51mLのジエチレングリコールを加え、続いて10滴の濃硫酸を加えた。反応混合物を、窒素雰囲気下で約4時間、115℃で加熱した。室温に冷却した後、反応混合物を、激しく撹拌されている600mLの水にゆっくり注いで、反応混合物から分離する褐色の油状物を得た。この油状物を3回、塩化メチレン(それぞれ、200mL)により抽出した。有機層を一緒にし、200mLの水、次いで、200mLの飽和塩化ナトリウム溶液により洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒(塩化メチレン)を回転蒸発によって除いて、7.5グラムの褐色油状物を得た。この生成物の質量スペクトルは、生成物が、2−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]カルボニル−4−ヒドロキシ−7,8−ジメトキシナフタレンと一致する質量プロフィールを有することを示した。この物質をさらに精製せず、次の工程でそのまま使用した。
【0100】
(工程3)
1,1−ジフェニル−2−プロピン−1−オール(9.0グラム)を1−(4−メトキシフェニル)−1−フェニル−2−プロピン−1−オールの代わりに使用し、7.5グラムの工程2の生成物を使用し、100mLのクロロホルムを使用したことを除いて、実施例1の工程4のプロセスに従った。得られた反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム(300mL)により洗浄し、その後、溶媒を回転蒸発によって除いた。得られた褐色の油状物をフラッシュカラムクロマトグラフィによって精製して、4.4グラムの赤色がかった油状物を得た。これは、真空下で乾燥したとき、泡状物となった。NMR分析では、生成物が、2,2−ジフェニル−5−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシカルボニル]−7,8−ジメトキシ−2H−ナフト[1,2−b]ピランと一致する構造を有することが示された。
【0101】
(実施例6)
実施例5のフォトクロミック化合物(3.2グラム)を秤量して250mLの反応フラスコに入れ、80mLの酢酸エチルを加え、その後、2滴のジラウリン酸ジブチルスズおよび1.32グラムの2−イソシアナトエチルメタクリレートを加えた。反応混合物を、空気雰囲気下で約8時間、還流温度で加熱した。メタノール(5mL)を加え、反応混合物を還流温度で15分間加熱した。溶媒を回転蒸発によって除いた。得られた赤色がかった残渣を最小量の1:1の酢酸エチル/メタノールの混合物に溶解し、0℃に冷却して、白色の結晶を得た。白色の結晶を濾過し、真空下で乾燥した。NMR分析では、生成物が、2,2−ジフェニル−5−[2−(2−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシエトキシ)エトキシカルボニル]−7,8−ジメトキシ−2H−ナフト[1,2−b]ピランと一致する構造を有することが示された。
【0102】
(比較例1)
中程度〜強い電子供与体を置換基Bおよび置換基B’として有するナフトピランを下記のように調製した:1,1−ジ(4−メトキシフェニル−2−プロピン−1−オール(4.0グラム、米国特許第5,458,814号の実施例1の工程1の生成物、その実施例は本明細書により参考により本明細書に特に組み込まれる)を1−(4−メトキシフェニル)−1−フェニル−2−プロピン−1−オールの代わりに使用し、5.6グラムの2−メトキシカルボニル−4−ヒドロキシ−7,8−ジメトキシナフタレンを使用し、250mLの塩化メチレンを使用したことを除いて、実施例1の工程4のプロセスに従った。反応混合物を2回、飽和重炭酸ナトリウム(それぞれ、300mL)により洗浄し、その後、溶媒を回転蒸発によって除いた。得られた褐色の固体をフラッシュカラムクロマトグラフィによって精製し、続いて、得られた生成物をエーテルからの結晶化によって精製して、3.4グラムの黄色の固体を得た。NMR分析では、生成物が、2,2−ジ−(4−メトキシフェニル)−5−メトキシカルボニル−7,8−ジメトキシ−2H−ナフト[1,2−b]ピランと一致する構造を有することが示された。
【0103】
(比較例2)
弱い電子吸引基を置換基Rとして有するナフトピランを下記のように調製した:シクロヘキシルアミン(3.0グラムmL)を秤量して250mLの反応フラスコに入れ、40mLの乾燥テトラヒドロフランを加えた。反応混合物を窒素雰囲気下で撹拌し、氷浴を使用して0℃に冷却した。メチルマグネシウムクロリド(テトラヒドロフラン中22重量%溶液の7mL)を反応混合物に5分かけて滴下して加え、得られた粘性の溶液をさらに10分間撹拌した。実施例2のフォトクロミック材料である2−(4−メチルフェニル)−2−フェニル−5−メトキシカルボニル−7,8−ジメトキシ−2H−ナフト[1,2−b]ピラン(2.0グラム)を10mLの乾燥テトラヒドロフランに溶解し、反応混合物に低温で滴下して加えた。冷却浴を除き、得られた黄緑色の混合物を室温で一晩撹拌した。約24時間後、反応物を濃塩酸(100mL)および水(400mL)の溶液に注いだ。得られた混合物を3回、それぞれ、150mLの塩化メチレンにより抽出した。有機層を一緒にし、400mLの水、次いで、400mLの飽和塩化ナトリウム溶液により洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を回転蒸発によって除いて、2.6グラムの赤褐色の油状の固体を得た。この固体をカラムクロマトグラフィによって精製して、1.7グラムの赤色の油状の固体を得た。この固体を最小量のメタノールに溶解し、冷凍庫で冷却して、1.5グラムの白色の結晶を得た。白色の結晶を濾過し、真空下で乾燥した。NMR分析では、生成物が、2−(4−メチルフェニル)−2−フェニル−5−シクロヘキシルアミノカルボニル−7,8−ジメトキシ−2H−ナフト[1,2−b]ピランと一致する構造を有することが示された。
【0104】
(比較例3)
弱い電子供与体基を置換基Rとして有するナフトピランを下記のように調製した:実施例3のフォトクロミック化合物である2,2−ジフェニル−5−メトキシカルボニル−7,8−ジメトキシ−2H−ナフト[1,2−b]ピラン(1.0グラム)を秤量して100mLの反応フラスコに入れ、40mLの乾燥テトラヒドロフランを加え、その後、水素化アルミニウムリチウム(0.9グラム)を加えた。反応混合物を、窒素雰囲気下で約1時間、室温で撹拌した。酢酸エチル(5mL)を加え、反応混合物を室温で15分間撹拌した。反応混合物を濃硫酸(10mL)および水(90mL)の溶液に注いだ。得られた混合物を3回、それぞれ、100mLのジエチルエーテルにより抽出した。有機層を一緒にし、200mLの水、次いで、200mLの飽和塩化ナトリウム溶液により洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を回転蒸発によって除いて、0.9グラムの橙色の固体を得た。この固体を最小量のエーテルに溶解し、冷凍庫で冷却して、白色の結晶を得た。白色の結晶を濾過し、真空下で乾燥した。NMR分析では、生成物が、2,2−ジフェニル−5−ヒドロキシメチレン−7,8−ジメトキシ−2H−ナフト[1,2−b]ピランと一致する構造を有することが示された。
【0105】
(比較例4)
7位および8位における1対の隣接する置換基を有しないナフト[1,2−b]ピランを、2−メトキシカルボニル−4−ヒドロキシ−7−メトキシナフタレンが使用されたことを除いて、実施例3の手順に従って調製した。NMR分析では、生成物が、2,2−ジフェニル−5−メトキシカルボニル−8−メトキシ−2H−ナフト[1,2−b]ピランと一致する構造を有することが示された。
【0106】
(実施例7)
(フォトクロミック性能試験)
実施例1〜6および比較例1〜4のフォトクロミック材料のフォトクロミック性能を下記のように試験した。
【0107】
1.5×10−3重量モル濃度の溶液を得るために計算された量の試験されるフォトクロミック材料を、4部のエトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート(BPA 2EO DMA)、1部のポリ(エチレングリコール)600ジメタクリレートおよび0.033重量パーセントの2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(AIBN)からなる50グラムのモノマー配合物を含有するフラスコに加えた。フォトクロミック材料を、撹拌および穏やかな加熱によってモノマー配合物に溶解した。透明な溶液が得られた後、溶液を、2.2mm×6インチ(15.24cm)×6インチ(15.24cm)の内部寸法を有する平坦なシートの鋳型に注いだ。鋳型を密封し、温度を40℃から95℃まで5時間の期間にわたって上昇させ、温度を95℃で3時間保ち、その後、温度を60℃に少なくとも2時間かけて下げるためにプログラム化された水平気流のプログラム可能なオーブンに入れた。鋳型を開けた後、ポリマーシートを、ダイヤモンド刃ノコを使用して2インチ(5.1cm)の試験用正方形体に切断した。
【0108】
上記のように調製されたフォトクロミック試験用正方形体を光学ベンチでフォトクロミック応答について試験した。光学ベンチで試験する前に、フォトクロミック試験用正方形体を365nmの紫外光に約15分間さらして、フォトクロミック材料を活性化されていない状態(すなわち、脱色された状態)から活性化された状態(すなわち、着色された状態)に変換させ、その後、76℃のオーブンに約15分間入れて、フォトクロミック材料を脱色された状態に戻した。その後、試験用正方形体を室温に冷却し、室内蛍光灯に少なくとも2時間さらし、その後、少なくとも2時間覆ったままにし(すなわち、暗所環境で)、その後、72°F(22.2℃)で維持された光学ベンチで試験した。
【0109】
光学ベンチに、250ワットのキセノンアーク灯、遠隔制御のシャッタ、アーク灯のためのヒートシンクとして作用する硫酸銅浴、短い波長の放射線を除くSchott WG−320nmカットオフフィルタ、濃度フィルタ、および、試験される正方形体が挿入されたサンプルホルダーを取り付けた。光学ベンチの出力、すなわち、サンプルのレンズがさらされる光の線量を、参照用標準物として使用されたフォトクロミック試験用正方形体を用いて校正した。これにより、0.15〜0.20ミリワット/平方センチメートル(mW/cm)の範囲での出力がもたらされた。出力の測定を、UV−A検出器(シリアル番号22411)または同等の装置を備えるGRASEBY Optronics Model S−371携帯型光度計(シリアル番号21536)を使用して行った。UV−A検出器をサンプルホルダーに入れ、光出力を測定した。出力に対する調節を、ランプのワット数を増減することによって、あるいは、濃度フィルタを光路に加え、または、除くことによって行った。
【0110】
モニターしている、タングステンランプからの平行ビームの光を、正方形体に対して垂直な小さい角度(約30°)で正方形体を通過させた。正方形体を通過した後、タングステンランプからの光を、測定されているフォトクロミック化合物の以前に決定された可視λ極大で設定されたSpectral Energy Corp.社のGM−200モノクロメーターを介して検出器に向かわせた。検出器からの出力シグナルを放射計によって処理した。
【0111】
光学密度における変化(ΔOD)を、脱色状態の試験用正方形体をサンプルホルダーに挿入し、透過率スケールを100%に調節し、キセノンランプからのシャッタを開けて、紫外線を与えて、試験用正方形体を脱色状態から活性化状態(すなわち、暗くなった状態)に変化させ、活性化状態での透過率を測定し、光学密度における変化を下記の式に従って計算することによって求めた:ΔOD=log(100/%Ta)、式中、%Taは、活性化状態でのパーセント透過率であり、対数は、10を底とするものである。
【0112】
試験用正方形体でのフォトクロミック化合物の光学特性が表1に報告される。ΔOD/分(UV光に対するフォトクロミック化合物の応答の感度を表す)を、UV暴露の最初の5秒間にわたって、可視でのλ極大に対応する波長で測定し、その後、1分間あたりに基づいて表した。飽和光学密度(飽和におけるOD)を、UV暴露が15分間にわたって続けられたことを除いて、ΔOD/分と同一条件のもとで得た。
【0113】
可視でのλ極大(λmax−vis)は、試験用正方形体におけるフォトクロミック化合物の活性化された形態(着色された形態)の最大吸収が生じる可視スペクトルにおける波長である。表1に報告されるλ極大可視波長は、フォトクロミック試験用正方形体の重合物をVarian Cary 3 UV−可視分光光度計で調べることによって求めた。
【0114】
退色半減期(「T1/2」)は、可視でのλ極大で測定された試験用正方形体におけるフォトクロミック材料の活性化された形態の吸光度が、活性化光の供給源を除いた後において室温(72°F、22.2℃)で飽和におけるODの吸光度値の1/2に達するための秒単位での時間間隔である。
【0115】
【表1】

表1に示されるデータは、実施例1〜6のそれぞれを用いて調製された試験サンプルが490nm未満の可視でのλ極大を示したことを示す。データはまた、実施例1、2および3を用いて調製された試験サンプルのそれぞれが、それらのそれぞれの比較例1、2、3および4と比較したとき、本明細書中下記で議論されるように、より大きい感度レベル、または、より大きい感度レベルおよびより大きい飽和におけるODレベルの両方のいずれかとして測定されるより大きい強度を示したことを示す。実施例4、5および6はまた、異なる要求される置換基を使用することによって、測定されたフォトクロミック特性に対する効果を示した。実施例4は、2位の置換基が実施例1、2および3と異なったが、これらの実施例と比較したとき、飽和におけるODレベルおよび退色半減期における増大を示した。実施例5および6はそれぞれが、5位での異なる反応性置換基の使用が実施例3と異なり、これらが、強度および退色半減期に影響を及ぼした。
【0116】
比較例1は、中程度の電子供与体を2位の両方における置換基として有し、残る置換基が実施例1と同じであったが、490nmを超える可視でのλ極大と、感度および飽和におけるODレベルによって測定されるとき、実施例1の強度よりも小さい強度とを示した。比較例2は、弱い電子吸引基を5位に有し、残る置換基が実施例2と同じであったが、感度レベルによって測定されるとき、実施例2よりも小さい強度を示した。比較例3は、弱い電子供与体を5位に有し、残る置換基が実施例3と同じであったが、感度レベルによって測定されるとき、実施例3よりも小さい強度を示した。比較例4は、中程度の電子供与体基を、7位には有さず、8位に有し、残る置換基が実施例3と同じであったが、感度および飽和におけるODレベルによって測定されるとき、実施例3の強度よりも小さい強度を示した。
【0117】
本記載は、本発明を明瞭に理解することに適切な本発明の様々な局面を例示することを理解するべきである。当業者には明らかであると考えられる本発明のいくつかの局面で、従って、本発明をより良く理解することを容易にしないと考えられる本発明のいくつかの局面は、本記載を簡略化するために示されていない。本発明は特定の実施形態に関連して記載されているが、本発明は、開示された具体的な実施形態には限定されず、添付された特許請求の範囲によって定義されるような本発明の精神および範囲に含まれる様々な改変を包含することが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造式I:
【化1】

によって表されるナフトピランであって、式中、
(a)Rは中程度〜強い電子吸引基であり;
(b)Rは、水素、電子吸引基または電子供与基であり;
(c)RおよびRはそれぞれが、中程度〜強い電子供与基であり;そして
(d)Bは弱い電子供与基であり、B’は弱い〜中程度の電子供与基であって、ただし、前記ナフトピランは、フォトクロミック性能試験において490nm未満の可視でのλ極大を示す;
ナフトピラン。
【請求項2】
、R、R、R、BおよびB’のうちの少なくとも1つが反応性置換基を含み、それぞれの反応性置換基が、本明細書に含まれる条件に従う基Rであり、かつ、独立して:
−A−D−E−G−J;
−A−G−E−G−J;
−A−D−G−J;
−A−G−Jおよび
−A−D−J;
のうちの1つによって表され、
式中、
(i)それぞれの−A−は独立して−C(O)−または−CH−であり;
(ii)それぞれの−D−は独立して:
(a1)ジアミン残基またはその誘導体(前記ジアミン残基は、脂肪族ジアミン残基、シクロ脂肪族ジアミン残基、ジアザシクロアルカン残基、アザシクロ脂肪族アミン残基、ジアザクラウンエーテル残基または芳香族ジアミン残基であり、前記ジアミン残基の第1のアミン窒素が−A−との結合を形成し、前記ジアミン残基の第2のアミン窒素が、−E−、−G−または−Jとの結合を形成する);または
(a2)アミノアルコール残基またはその誘導体(前記アミノアルコール残基は、脂肪族アミノアルコール残基、シクロ脂肪族アミノアルコール残基、アザシクロ脂肪族アルコール残基、ジアザシクロ脂肪族アルコール残基または芳香族アミノアルコール残基であり、前記アミノアルコール残基のアミン窒素が−A−との結合を形成し、前記アミノアルコール残基のアルコール酸素が、−E−、−G−または−Jとの結合を形成するか、あるいは、前記アミノアルコール残基の前記アミン窒素が、−E−、−G−または−Jとの結合を形成し、前記アミノアルコール残基の前記アルコール酸素が−A−との結合を形成する)
であり;
(iii)それぞれの−E−は独立して、ジカルボン酸残基またはその誘導体であり、前記ジカルボン酸残基は、脂肪族ジカルボン酸残基、シクロ脂肪族ジカルボン酸残基または芳香族ジカルボン酸残基であり、前記ジカルボン酸残基の第1のカルボニル基が、−G−または−D−との結合を形成し、前記ジカルボン酸残基の第2のカルボニル基が−G−との結合を形成し;
(iv)それぞれの−G−は独立して:
(a1) −[(OC(OC(OC]−O−(式中、x、yおよびzはそれぞれが独立して、0〜50の数であり、x、yおよびzの和が1〜50の範囲にある);または
(a2)ポリオール残基またはその誘導体(前記ポリオール残基は、脂肪族ポリオール残基、シクロ脂肪族ポリオール残基または芳香族ポリオール残基であり、前記ポリオール残基の第1のポリオール酸素が、−A−、−D−または−E−との結合を形成し、前記ポリオール残基の第2のポリオール酸素が、−E−または−Jとの結合を形成する)
であり;そして
(v)それぞれの−Jは独立して、反応性部分またはその残基を含む基であるか;あるいは、−Jは水素であり、ただし、−Jが水素であるならば、−Jは基−D−または−G−の酸素に結合し、反応性部分を形成し;
ただし:
(1)Rが前記反応性置換基を含むとき、Rは基−C(O)ORであるか;あるいは、Rは基Rであり、ただし、−A−が−C(O)−であり、−D−がアミノアルコール残基であって、前記アミノアルコール残基のアミン窒素が、−E−、−G−または−Jとの結合を形成し、前記アミノアルコール残基のアルコール酸素が−A−との結合を形成し;
(2)Rが前記反応性置換基を含むとき、Rは基−ORであるか;あるいは、Rは、
−G−E−G−J;
−D−E−G−J;
−D−G−J;
−G−Jおよび
−D−J;
(式中、−E−、−G−および−Jは、上記の定義と同じであり、−D−はアミノアルコールであって、前記アミノアルコール残基のアミン窒素が、−E−、−G−または−Jとの結合を形成する)
のうちの1つによって独立して表される基Tを含み;
(3)Rおよび/またはRが前記反応性置換基を含むとき、Rおよび/またはRは、基−OR、−SR、−N(R)Hまたは−N(R)Rであり、ただし、−A−は−CH−であり;および
(4)Bおよび/またはB’が前記反応性置換基を含むとき、Bおよび/またはB’は置換アリール基または置換複素芳香族基であり、前記アリール基または複素芳香族基についての前記置換基は基Rまたは基Tである;
請求項1に記載のナフトピラン。
【請求項3】
前記反応性置換基Rが基−A−G−Jによって表され、式中、Jは、アクリル、クロチル、メタクリル、2−(メタクリルオキシ)エチルカルバミル、2−(メタクリルオキシ)エトキシカルボニル、4−ビニルフェニル、ビニル、1−クロロビニルおよびエポキシのうちの1つである、請求項2に記載のナフトピラン。
【請求項4】
(a)Rが基−C(O)Hまたは−C(O)OYであり、式中、Yは、水素、基−CH(R)Z(式中、Zは、−CN、−CF、ハロまたは−C(O)Rであり;Rは水素またはC〜Cアルキルであり;Rは、水素、C〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである)であるか;あるいは、Yは基−Rであり;Rは、C〜Cアルキル、アリル、フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ(C〜C)アルキル、C〜Cハロアルキル、または、非置換のアリール基、一置換のアリール基もしくは二置換のアリール基であり、前記アリール基の置換基のそれぞれが、ハロゲン、C〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシであり;
(b)Rが、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、非置換のアリール基、一置換のアリール基もしくは二置換のアリール基、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、フェニルアミノ、モノ(C〜C)アルキル置換フェニルアミノ、ジ(C〜C)アルキル置換フェニルアミノ、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニルアミノ、ジ(C〜C)アルコキシ置換フェニルアミノ、ジフェニルアミノ、モノ(C〜C)アルキル置換ジフェニルアミノ、ジ(C〜C)アルキル置換ジフェニルアミノ、モノ(C〜C)アルコキシ置換ジフェニルアミノ、ジ(C〜C)アルコキシ置換ジフェニルアミノ、モルホリノ、ピペリジノ、ジシクロヘキシルアミノまたはピロリジルであり、前記アリールの置換基が、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cシクロアルキル、ベンジル、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、ジシクロヘキシルアミノ、ジフェニルアミノ、ピペリジノ、モルホリノ、ピロリジル、ピリジル、ハロ、フェニルおよびナフチルであり;
(c)Rが:
(i)基−XR(式中、Xは酸素または硫黄であり;Rは、水素、C〜Cアルキル、非置換のアリール基、一置換のアリール基、二置換のアリール基、フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル(C〜C)アルキル、C〜Cアルコキシ(C〜C)アルキル、C〜Cシクロアルキル、モノ(C〜C)アルキル置換C〜Cシクロアルキル、C〜Cハロアルキル、アリルであるか;あるいは、Rは基−CH(R)Qであり、式中、Rは水素またはC〜Cアルキルであり、Qは、−CN、−CFまたは−COORであり;前記アリール基の置換基のそれぞれがC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである);
(ii)基−N(R10)R10(式中、それぞれのR10は独立して、R、C〜Cアルキルアリール基、または、複素芳香族基であるフラニル、ベンゾフラン−2−イル、ベンゾフラン−3−イル、チエニル、ベンゾチエン−2−イル、ベンゾチエン−3−イル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、ベンゾピリジルおよびフルオレニルである);
(iii)以下の構造式IIA:
【化2】

(式中、それぞれのWは独立して、基−CH−、−CH(R11)−、−C(R11)(R11)−、−CH(アリール)−、−C(アリール)−、−C(R11)(アリール)−であり、Kは、基−W−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−NH−、−NR11−または−N−アリール−であり、R11はC〜Cアルキルであり、mは、1、2または3の整数であり、pは、0、1、2または3の整数であり、pが0であるとき、KはWである)によって表される複素環式環;または
(iv)以下の構造式IIBまたは構造式IIC:
【化3】

(式中、R12は、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシまたはハロであり、R13、R14およびR15はそれぞれが、水素、C〜Cアルキル、フェニルまたはナフチルであるか、あるいは、基R13および基R14は一緒になって、環炭素原子を含めて5個〜8個の炭素原子の環を形成する)によって表される基;
のうちの1つであり;
(d)Rは、上記で定義されたRと同じであり;
(e)Bはアリールまたはトリルであり;
(f)B’は:
(i)非置換のアリール基、一置換のアリール基、二置換のアリール基もしくは三置換のアリール基;または、非置換の複素芳香族基、一置換の複素芳香族基もしくは二置換の複素芳香族基であって、前記複素芳香族基は、ピリジル、フラニル、ベンゾフラン−2−イル、ベンゾフラン−3−イル、チエニル、ベンゾチエン−2−イル、ベンゾチエン−3−イル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチエニル、カルバゾリル、ベンゾピリジル、インドリニルまたはフルオレニルであり、前記アリールおよび複素芳香族の置換基はそれぞれが独立して:ヒドロキシ、アリール、モノ(C〜C)アルコキシアリール、ジ(C〜C)アルコキシアリール、モノ(C〜C)アルキルアリール、ジ(C〜C)アルキルアリール、ハロアリール、p−アミノアリール、C〜Cシクロアルキルアリール、C〜Cシクロアルキル、C〜Cシクロアルキルオキシ、C〜Cシクロアルキルオキシ(C〜C)アルキル、C〜Cシクロアルキルオキシ(C〜C)アルコキシ、アリール(C〜C)アルキル、アリール(C〜C)アルコキシ、アリールオキシ、アリールオキシ(C〜C)アルキル、アリールオキシ(C〜C)アルコキシ、モノ(C〜C)アルキルアリール(C〜C)アルキル、ジ(C〜C)アルキルアリール(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシアリール(C〜C)アルキル、ジ(C〜C)アルコキシアリール(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキルアリール(C〜C)アルコキシ、ジ(C〜C)アルキルアリール(C〜C)アルコキシ、モノ(C〜C)アルコキシアリール(C〜C)アルコキシ、ジ(C〜C)アルコキシアリール(C〜C)アルコキシ、C〜Cアルキル、C〜Cハロアルキル、C〜Cアルコキシ、モノ(C〜C)アルコキシ(C〜C)アルキル、アクリルオキシ、メタクリルオキシ、ハロゲンまたは基−C(O)R16(式中、R16は−OR17であり、R17は、アリル、C〜Cアルキル、フェニル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル、フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル(C〜C)アルキル、C〜Cアルコキシ(C〜C)アルキルまたはC〜Cハロアルキルである)である、非置換のアリール基、一置換のアリール基、二置換のアリール基もしくは三置換のアリール基;または、非置換の複素芳香族基、一置換の複素芳香族基もしくは二置換の複素芳香族基;
(ii)非置換の基もしくは一置換の基であって、前記基は、ピラゾリル、イミダゾリル、ピラゾリニル、イミダゾリニル、ピロリニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フェナジニルまたはアクリジニルであり、前記置換基のそれぞれが、C〜C12アルキル、C〜C12アルコキシ、フェニルまたはハロゲンである、非置換の基もしくは一置換の基;
(iii)一置換フェニルであって、前記フェニルは、パラ位に存在する置換基を有し、置換基は:ジカルボン酸残基またはその誘導体、ジアミン残基またはその誘導体、アミノアルコール残基またはその誘導体、ポリオール残基またはその誘導体、−CH−、−(CH−または−[O−(CH−(式中、tは、2、3、4、5または6の整数であり、kは1〜50の整数である)であり、置換基は別のフォトクロミック材料におけるアリール基につながれる、一置換フェニル;
(iv)以下の構造式IIDおよび構造式IIE:
【化4】

(式中、Uは−CH−または−O−であり、Mは−O−であり、それぞれのR20は独立して、それぞれの存在について、C〜C12アルキル、C〜C12アルコキシ、ヒドロキシおよびハロゲンから選ばれ、R18およびR19はそれぞれが独立して、水素またはC〜C12アルキルであり、uは0〜2の範囲での整数である)のうちの1つによって表される基;ならびに
(v)以下の構造式IIF:
【化5】

(式中、R21は水素またはC〜C12アルキルであり、R22は、ナフチル、フェニル、フラニルおよびチエニルから選ばれる、非置換の基、一置換の基もしくは二置換の基であり、置換基は、C〜C12アルキル、C〜C12アルコキシまたはハロゲンである)によって表される基;
のうちの1つである、請求項1に記載のナフトピラン。
【請求項5】
(a)Rが基−C(O)Yであり、式中、Yは、水素、ヒドロキシ、基−OCH(R)Zまたは基−ORであり;Zは−CNまたは−C(O)Rであり;Rは水素またはC〜Cアルキルであり;Rは、水素、C〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシであり;Rは、C〜Cアルキル、アリル、フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル(C〜C)アルキル、(C〜C)アルコキシ(C〜C)アルキル、C〜Cクロロアルキル、C〜Cフルオロアルキル、または、非置換のフェニル基、一置換のフェニル基もしくは二置換のフェニル基であり、前記フェニル基の置換基のそれぞれが、クロロ、フルオロ、C〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシであり;
(b)Rが、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、非置換のフェニル基、一置換のフェニル基、二置換のフェニル基、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、モルホリノ、ピペリジノ、ジシクロヘキシルアミノまたはピロリジルであり、前記フェニルの置換基が、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cシクロアルキル、ベンジル、アミノ、モノ(C〜C)アルキルアミノ、ジ(C〜C)アルキルアミノ、ピペリジノ、モルホリノ、ピロリジル、ピリジル、クロロ、フルオロ、フェニルまたはナフチルであり;
(c)Rが:
(i)基−XR(式中、Xは酸素であり;Rは、水素、C〜Cアルキル、非置換のフェニル基、一置換のフェニル基、二置換のフェニル基、フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルキル置換フェニル(C〜C)アルキル、モノ(C〜C)アルコキシ置換フェニル(C〜C)アルキル、C〜Cアルコキシ(C〜C)アルキル、C〜Cシクロアルキル、モノ(C〜C)アルキル置換C〜Cシクロアルキル、C〜Cクリロアルキル、C〜Cフルオロアルキル、アリルであり;あるいは、Rは、基−CH(R)Qであり、式中、Rは水素またはC〜Cアルキルであり、Qは−CNまたは−COORであり;前記フェニル基の置換基のそれぞれがC〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシである);
(ii)基−N(R10)R10(式中、R10はRである);または
(iii)構造式IIAによって表される複素環式環(それぞれのWは独立して、基−CH−、−CH(R11)−、−C(R11)(R11)−、−CH(アリール)−、−C(アリール)−、−C(R11)(アリール)−であり、Kは、基−W−、−O−、−NH−、−NR11−または−N−アリール−であり、R11はC〜Cアルキルであり、mは、1、2または3の整数であり、pは、0、1、2または3の整数であり、pが0であるとき、KはWである)
であり;
(d)Rは、上記で定義されたRと同じであり;
(e)Bはフェニルまたはトリルであり;そして
(f)B’は:
(i)非置換のフェニル基、一置換のフェニル基、二置換のフェニル基もしくは三置換のフェニル基;または、非置換の複素芳香族基、一置換の複素芳香族基もしくは二置換の複素芳香族基であって、前記複素芳香族基は、フラニル、ベンゾフラン−2−イル、チエニル、ベンゾチエン−2−イル、ジベンゾフラニルまたはカルバゾリルであり、前記フェニルおよび複素芳香族の置換基のそれぞれはそれぞれが独立して、ヒドロキシ、C〜Cアルキル、C〜Cクロロアルキル、C〜Cフルオロアルキル、C〜Cアルコキシ、モノ(C〜C)アルコキシ(C〜C)アルキル、p−アミノフェニル、フルオロおよびクロロである、非置換のフェニル基、一置換のフェニル基、二置換のフェニル基もしくは三置換のフェニル基;または、非置換の複素芳香族基、一置換の複素芳香族基もしくは二置換の複素芳香族基;
(ii)一置換フェニルであって、前記フェニルは、パラ位に存在する置換基を有し、置換基は、−CH−、−(CH−または−[O−(CH−(式中、tは、2、3、4、5または6の整数であり、kは1〜50の整数である)であり、置換基は別のフォトクロミック材料におけるアリール基につながれる、一置換フェニル;
(iii)構造式IIDによって表される基(Uは−CH−であり、Mは−O−であり、それぞれのR20は独立して、それぞれの存在について、C〜CアルキルまたはC〜Cアルコキシであり、それぞれのR18およびR19は独立して、水素またはC〜Cアルキルであり、uは0または1の整数である);
のうちの1つである、請求項4に記載のナフトピラン。
【請求項6】
(a)2−(4−メトキシフェニル)−2−フェニル−5−メトキシカルボニル−7,8−ジメトキシ−2H−ナフト[1,2−b]ピラン;
(b)2−(4−メチルフェニル)−2−フェニル−5−メトキシカルボニル−7,8−ジメトキシ−2H−ナフト[1,2−b]ピラン;
(c)2,2−ジフェニル−5−メトキシカルボニル−7,8−ジメトキシ−2H−ナフト[1,2−b]ピラン;
(d)2−(2−(9,9−ジメチル)フルオレニル)−2−フェニル−5−メトキシカルボニル−7,8−ジメトキシ−2H−ナフト[1,2−b]ピラン;
(e)2,2−ジフェニル−5−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシカルボニル]−7,8−ジメトキシ−2H−ナフト[1,2−b]ピラン;および
(f)2,2−ジフェニル−5−[2−(2−(2−メタクリルオキシエチル)カルバミルオキシエトキシ)エトキシカルボニル]−7,8−ジメトキシ−2H−ナフト[1,2−b]ピラン;
のうちの少なくとも1つを含むナフトピラン。
【請求項7】
基体と、フォトクロミック量の請求項1に記載されるナフトピランとを含むフォトクロミック品。
【請求項8】
前記基体がポリマー材料であり、前記フォトクロミック量のナフトピランが前記ポリマー材料のうちの少なくとも一部分に組み込まれる、請求項7に記載のフォトクロミック品。
【請求項9】
ポリマー材料が、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ(C〜C12)アルキル化メタクリレート、ポリオキシ(アルキレンメタクリレート)、ポリ(アルコキシ化フェノールメタクリレート)、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸酢酸セルロース、酪酸酢酸セルロース、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ((メタ)アクリルアミド)、ポリ(ジメチルアクリルアミド)、ポリ((メタ)アクリル酸)、熱可塑性ポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリウレアウレタン、ポリチオウレタン、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、コポリ(スチレン−メチルメタクリレート)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、ポリビニルブチラール、ならびに、ポリオール(アリルカーボネート)モノマー、単官能性アクリレートモノマー、単官能性メタクリレートモノマー、多官能性アクリレートモノマー、多官能性メタクリレートモノマー、ジエチレングリコールジメタクリレートモノマー、ジイソプロペニルベンゼンモノマー、アルコキシ化多価アルコールモノマーおよびジアリリデンペンタエリスリトールモノマーのうちの少なくとも1つのポリマーである、請求項8に記載のフォトクロミック品。
【請求項10】
ポリマー材料が、アクリレート、メタクリレート、メチルメタクリレート、エチレングリコールビスメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、酢酸ビニル、ビニルブチラール、ウレタン、チオウレタン、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジイソプロペニルベンゼン、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、および、それらの組合せである、請求項9に記載のフォトクロミック品。
【請求項11】
補色のフォトクロミック材料、光開始剤、熱開始剤、重合防止剤、溶媒、光安定剤、熱安定剤、離型剤、レオロジー制御剤、平滑化剤およびフリーラジカル捕捉剤のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項8に記載のフォトクロミック品。
【請求項12】
前記フォトクロミック量のナフトピランが前記基体の少なくとも一部分に連続する、請求項7に記載のフォトクロミック品。
【請求項13】
前記フォトクロミック品が、眼用要素、ディスプレイ要素、窓、鏡、能動型液晶セル要素および受動型液晶セル要素のうちの少なくとも1つである光学要素である、請求項12に記載のフォトクロミック品。
【請求項14】
前記フォトクロミック品が、矯正用レンズ、非矯正用レンズ、拡大レンズ、保護レンズ、バイザー、ゴーグルおよび光学装置用レンズのうちの少なくとも1つである眼用要素である、請求項13に記載のフォトクロミック品。
【請求項15】
前記基体がポリマー材料を含み、前記フォトクロミック量のナフトピランが、該基体のポリマー材料の少なくとも一部分と配合されているか;該基体のポリマー材料の少なくとも一部分に結合されているかのうちの少なくとも1つである、請求項12に記載のフォトクロミック品。
【請求項16】
前記フォトクロミック量のナフトピランが前記基体のポリマー材料の少なくとも一部分に共重合によって結合される、請求項15に記載のフォトクロミック品。
【請求項17】
ポリマー材料の少なくとも部分的な被覆物または膜が前記基体の表面の少なくとも一部分に連続し、該ポリマー材料が前記フォトクロミック量のナフトピランを含む、請求項12に記載のフォトクロミック品。
【請求項18】
ポリマー材料の前記部分的な被覆物または膜が、補色のフォトクロミック材料、光開始剤、熱開始剤、重合防止剤、溶媒、光安定剤、熱安定剤、離型剤、レオロジー制御剤、平滑化剤、フリーラジカル捕捉剤および接着促進剤のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項17に記載のフォトクロミック品。
【請求項19】
基体の少なくとも一部分に連続する少なくとも部分的な被覆物または膜をさらに含み、該被覆物または膜が、下塗りの被覆物または膜、保護的な被覆物または膜、反射防止の被覆物または膜、および、偏光用の被覆物または膜のうちの少なくとも1つである、請求項17に記載のフォトクロミック品。

【公表番号】特表2009−521440(P2009−521440A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547263(P2008−547263)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/046365
【国際公開番号】WO2007/073463
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(504175051)トランジションズ オプティカル, インコーポレイテッド (65)
【Fターム(参考)】