説明

フォトセンサ

【目的】 光電変換部をフォトトランジスタによって構成することにより、小電力で簡素、かつ小規模なフォトセンサを提供する。
【構成】 受光部のN層24に光が照射されると、微弱なベース電流(I)がベースのN層22から分離層のP層25へ流れ、それに応じてベース電流(I)のHFE倍のコレクタ電流(I×HFE)が、エミッタのP層23からコレクタのP層21へ流れる。このコレクタ電流を利用することにより、別途、増幅回路を設けることなくフォトセンサ回路を作動させることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光電変換部を有する半導体集積回路を備えたフォトセンサに係り、特に、発生電流を増大化する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、光電変換を利用したフォトセンサには、フォトダイオードによって光を受けて微弱電流を生成し、その微弱電流を増幅させて光を検知するものがある。そのフォトダイオードは、例えば、図4(a),(b)に示すようにベースとしてのP型半導体31と受光部であるN型半導体32とを接合して、周知であるPN接合構造を形成し、N型半導体32に光が照射されると、N型半導体32からP型半導体31へと電流(I)が流れるように構成されている。そして、この電流(I)を増幅することにより、回路を作動させて入光/遮光を検知する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のフォトセンサにあっては、フォトダイオードにおいて生成される電流が極めて微弱であるため、各種回路を動作させるためには、数十〜数百倍に増幅しなければならない。また、ある程度の大きさの電流を得るためには、フォトダイオードの面積を大きくしなければならず、回路の小規模化の妨げになっていた。
【0004】本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、フォトセンサにおける光電変換部をフォトトランジスタによって構成することにより、電流を増幅する必要がなく、しかも、規模の小さいフォトセンサを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、光を受けて電流を生成する光電変換部を有する半導体集積回路を備え、前記光電変換部をPNPトランジスタ構造としたフォトセンサである。
【0006】また、請求項2記載の発明は、光電変換部を縦型PNPトランジスタ構造とした請求項1記載のフォトセンサである。
【0007】さらに、請求項3記載の発明は、光電変換部を横型PNPトランジスタ構造とした請求項1記載のフォトセンサである。
【0008】
【作用】請求項1記載の構成により、光電変換部のN層に光が照射されると、ベース電流に相当する微小電流がN層からP層へ流れる。そして、この微小電流のHFE倍のコレクタ電流が、エミッタを構成するP層からコレクタを構成するP層へ流れ、このコレクタ電流を利用することにより、増幅することなく回路を作動させることができる。
【0009】また、請求項2記載の発明は、光電変換部を縦型PNPトランジスタ構造としたので、最下層に設けられたP層がコレクタを構成すると共に、分離層としても作用する。そして、ベース電流に相当する微弱電流がN層からP層へ流れ、この微弱電流のHFE倍のコレクタ電流が、エミッタを構成するP層からコレクタ及び分離層を構成するP層へ流れる。このコレクタ電流を利用することにより、増幅することなく回路を作動させることができる。
【0010】さらに、請求項3記載の発明は、光電変換部を横型PNPトランジスタ構造としたので、光電変換部のN層に光が照射されると、ベース電流に相当する微小電流がN層から分離層を構成するP層へ流れる。そして、この微小電流のHFE倍のコレクタ電流が、エミッタを構成するP層からコレクタを構成するP層へ流れ、このコレクタ電流を利用することにより、増幅することなく回路を作動させることができる。
【0011】
【実施例】以下に、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は、本発明のフォトセンサにおいて光電変換部として用いられるトランジスタの記号を示す。図2は、縦型PNPトランジスタの構成例を示し、(a)は平面図、(b)は断面図である。これらの図において、コレクタとしてのP層(P型半導体)11、ベースとしてのN層(N型半導体)12、及び、そのベースN層12内に設けられたエミッタとしてのP層13と受光部であるN層14により、縦型のPNPトランジスタが構成されている。コレクタのP層11は、分離層としても機能する。この構成により、受光部のN層14に光が照射されると、ベースのN層12からコレクタのP層11へ微弱なベース電流(I)が流れ、これに応じてエミッタのP層13からコレクタのP層11へコレクタ電流(I×HFE)が流れる。このコレクタ電流は、トランジスタの増幅作用によってベース電流(I)のHFE倍に増幅されて出力されるので、フォトセンサの回路を作動させるに充分な大きさの電流が得られる。図4に示した光電変換部にフォトダイオードを用いた従来のフォトセンサでは、得られる電流が微弱であるため、回路内で増幅する必要があるが本実施例ではその必要がない。
【0012】次に、光電変換部に用いられる、横型PNPトランジスタの構成例を図3に示す。前記と同様、(a)は平面図、(b)は断面図である。同図において、コレクタとしてのP層21と、エミッタとしてのP層23がベースとしてのN層22内に配設されている。さらに、ベースのN層22には、受光部であるN層24が形成されている。また、ベースのN層22の下には、P層からなる分離層25が設けられている。この構成により、前記と同様に、受光部のN層24に光が照射されると、ベースのN層22から分離層のP層25へ微弱なベース電流(I)が流れ、これに応じて、前記縦型の場合と同様に増幅されたコレクタ電流(I×HFE)が、エミッタのP層23からコレクタのP層21へ流れる。このコレクタ電流を利用してフォトセンサを動作させる。なお、この構成の場合には、ベースのN層22と分離層25との間にN層からなる埋込層26を設けてもよい。
【0013】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、光電変換部にPNPトランジスタを用いて、光を検知することにより生成される電流を回路内で増幅することなく利用するように構成したので、チップの面積を大きくしたり、増幅回路を設ける必要がなく、小電力で簡素、かつ小規模なフォトセンサが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフォトセンサに用いられるフォトトランジスタの記号を示す図である。
【図2】本発明の実施例による縦型PNPトランジスタの構成を示し、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図3】本発明の実施例による横型PNPトランジスタの構成を示し、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図4】従来のフォトセンサに用いられるフォトダイオードの構成を示し、(a)は記号図、(b)は断面図である。
【符号の説明】
11 コレクタとしてのP層
12 ベースとしてのN層
13 エミッタとしてのP層
21 コレクタとしてのP層
22 ベースとしてのN層
23 エミッタとしてのP層

【特許請求の範囲】
【請求項1】 光を受けて電流を生成する光電変換部を有する半導体集積回路を備えたフォトセンサにおいて、前記光電変換部がPNPトランジスタ構造であることを特徴とするフォトセンサ。
【請求項2】 光電変換部が縦型PNPトランジスタ構造であることを特徴とする請求項1記載のフォトセンサ。
【請求項3】 光電変換部が横型PNPトランジスタ構造であることを特徴とする請求項1記載のフォトセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開平5−304310
【公開日】平成5年(1993)11月16日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−131622
【出願日】平成4年(1992)4月24日
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)