説明

フォトダイオード、有機電界発光表示装置、及び電子機器装置

【課題】電流値を向上させ、有機電界発光素子の劣化を補償することのできる、フォトダイオード、このフォトダイオードを用いた有機電界発光表示装置、及び電子機器装置を提供する。
【解決手段】有機電界発光表示装置においては、画素領域A及び非画素領域Bを有する基板200と、基板200の画素領域A上に形成される薄膜トランジスタ220と、薄膜トランジスタ220に電気的に接続された有機電界発光素子250と、非画素領域Bに形成され、互いに並列構造に接続された複数のフォトダイオード230と、を備えることを特徴としており、光を受光するフォトダイオードにおいて、複数のフォトダイオードが並列構造に接続されることを特徴としており、各フォトダイオードは小面積であっても並列接続すれば、面積の大きな1つのフォトダイオードと同じか、またはそれ以上の電流値を持たせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光エネルギーを電気的信号として出力させるフォトダイオード、フォトダイオードを用いた有機電界発光表示装置、及び電子機器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、有機電界発光素子は、アノード電極及びカソード電極からなる一対の電極と、発光層とを備える構造であり、より詳しくは、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、及び電子輸送層をさらに備えることができる。
【0003】
このような構造の有機電界発光素子は、次の発光原理によって発光する。まず、アノード電極からの正孔が正孔注入層に注入され、正孔注入層に注入された正孔が正孔輸送層によって発光層に輸送される。これとともに、カソード電極からの電子が電子注入層に注入され、電子注入層に注入された電子が電子輸送層によって発光層に輸送される。そして、発光層に輸送された正孔と電子とが相互結合することによって励起子が生成され、これにより、発光層が発光する。
【0004】
以下では、添付された図面を参照して有機電界発光素子を用いた、従来の有機電界発光表示装置を詳細に説明する。図1は、従来技術に係る有機電界発光表示装置の断面図であり、有機電界発光表示装置10においては、基板100上にバッファ層110が形成される。バッファ層110上には、薄膜トランジスタ120が形成される。薄膜トランジスタ120は、半導体層121、ゲート電極122、及びソース/ドレイン電極123を備える。
【0005】
薄膜トランジスタ120上には、平坦化層130が形成され、平坦化層130上には、ソース/ドレイン電極123に電気的に接続された第1電極層140が形成され、第1電極層140上には、画素定義膜150が形成される。
【0006】
画素定義膜150は、第1電極層140を少なくとも部分的に露出させる開口部を備えており、開口部上には、発光層160が形成される。発光層160には、電子輸送層及び電子注入層の一部をさらに有することができる。発光層160上には、第2電極層170が形成される。
【0007】
このような有機電界発光表示装置の発光層160となる有機物質は、時間の経過とともに劣化し、画素の輝度が低下する原因となり、ディスプレイの画質または明るさが所望の値とは異なる値で表れることがある。
【0008】
前述の問題を解決するため、有機電界発光表示装置にフォトダイオードを形成する方法が提案された。すなわち、フォトダイオードを介して内部または外部から入射する光エネルギーを電気的信号として出力させ、有機電界発光素子の劣化に関わらず、画素回路への入力信号に対して一定の輝度を表すことができるようにするものである。
【0009】
【特許文献1】大韓民国特許第2005−0121218号明細書
【特許文献2】特開2004−241681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記のようなフォトダイオードは、その電流値の出力が、画素回路への入力信号より低いため、フォトダイオードを用いた有機電界発光素子の輝度を調節するには限界があった。
【0011】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、電流値を向上させ、有機電界発光素子の劣化を補償することのできる、フォトダイオード、このフォトダイオードを用いた有機電界発光表示装置、及び電子機器装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、光を受光するフォトダイオードにおいて、複数のフォトダイオードが並列構造に接続されており、フォトダイオードは、PINフォトダイオードであり、PINフォトダイオードは、N型ドーピング領域と、N型ドーピング領域と離隔したP型ドーピング領域(バッファ層の非画素領域に形成されたP型ドーピング領域)と、N型ドーピング領域とP型ドーピング領域との間に形成された真性領域と、を含み、N型ドーピング領域、P型ドーピング領域、及び真性領域は、いずれも単一平面に形成されることを特徴とする、フォトダイオードが提供される。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、光を受光するフォトダイオードにおいて、複数のフォトダイオードが並列構造に接続されており、フォトダイオードは、PNダイオードであり、PNダイオードは、N型ドーピング領域と、N型ドーピング領域に隣接するP型ドーピング領域と、を含み、N型ドーピング領域及びP型ドーピング領域は、いずれも単一平面上に形成されることを特徴とする、フォトダイオードが提供される。
【0014】
フォトダイオードにおいて、各々は小面積であっても、複数のフォトダイオードを並列に接続させることにより、面積の大きな1つのフォトダイオードと同じか、またはそれ以上の電流値を持たせることができる。この時、フォトダイオードをPINフォトダイオードとして、N型ドーピング領域、P型ドーピング領域、及び真性領域を単一平面に形成することができるし、フォトダイオードをPNダイオードとすることもでき、N型ドーピング領域及びP型ドーピング領域を単一平面上に形成することができる。単一平面上に形成するとは、基板の厚さ方向にN型やP型のドーピング領域が形成されるのではなく、横方向に並んでN型やP型のドーピング領域が形成されることを意味し、小面積のフォトダイオードを複数形成することができる。
【0015】
PINフォトダイオードにおいては、真性領域を形成することにより、空乏層の厚さが増加してフォトダイオードの静電容量が減少し、PNフォトダイオードに比べて、動作速度が速く、動作電圧が低い。また、PNフォトダイオードより暗電流が小さい。
【0016】
フォトダイオードは、外部から光を受光し、受光した光に対応する電気的信号を出力することができる。フォトダイオードは、光エネルギーを電気エネルギーに変換して光信号から電気的信号を得る光センサであって、電子機器装置等の制御に用いることができる。
【0017】
上記課題を解決するために、本発明のまた別の観点によれば、画素領域及び非画素領域を有する基板と、基板の画素領域上に形成される薄膜トランジスタと、薄膜トランジスタに電気的に接続された有機電界発光素子と、非画素領域に形成され、互いに並列構造に接続された複数のフォトダイオードと、を備えることを特徴とする、有機電界発光表示装置が提供される。
【0018】
フォトダイオードを有機電界発光表示装置に形成する場合、画素領域以外の非画素領域に形成しなければならず、空間上の制約を受けるため、従来は、大面積のフォトダイオードを形成することはできなかった。そのため、本発明では、大面積の1つのフォトダイオードを形成するのではなく、複数のフォトダイオードを並列に接続させて、1つの面積の大きなフォトダイオードより大きな電流値を持たせることができる。このように、フォトダイオードの電流値を向上させることにより、有機電界発光素子の劣化を補償することができ、また、フォトダイオードの集光率を向上させ、設計全体の可用性を高めることができる。
【0019】
フォトダイオードは、有機電界発光素子が発光する光を受光し、受光した光に対応する電気的信号を出力することができる。また、フォトダイオードは、外部から供給される光を受光し、受光した光に対応する電気的信号を出力することもできる。こうして、出力された電気的信号は、光の強度に比例して表れるので、有機電界発光素子の基準輝度値に比べて、発光層から放出された輝度が基準値を超過したか、または基準値に到達することができなかった場合、変換された電気的信号を用いて有機電界発光素子の輝度を調節することができる。
【0020】
フォトダイオードは、PINフォトダイオードとすることができる。PINフォトダイオードは、基板の非画素領域上に形成されたN型ドーピング領域と、N型ドーピング領域と離隔して、基板の非画素領域に形成されたP型ドーピング領域(バッファ層の非画素領域に形成されたP型ドーピング領域)と、N型ドーピング領域とP型ドーピング領域との間に形成された真性領域と、を含み、N型ドーピング領域、P型ドーピング領域、及び真性領域は、いずれも単一平面に形成することができる。
【0021】
フォトダイオードは、PNダイオードとすることもできる。PNダイオードは、基板の非画素領域に形成されたN型ドーピング領域と、N型ドーピング領域に隣接して、基板の非画素領域に形成されたP型ドーピング領域と、を含み、N型ドーピング領域及びP型ドーピング領域は、いずれも単一平面上に形成することができる。
【0022】
PINフォトダイオードにおいては、真性領域を形成することにより、空乏層の厚さが増加してフォトダイオードの静電容量が減少し、PNフォトダイオードに比べて、動作速度が速く、動作電圧が低い。また、PNフォトダイオードより暗電流が小さい。
【0023】
上記課題を解決するために、本発明のさらに別の観点によれば、光を受光するフォトダイオードを備える電子機器装置において、複数のフォトダイオードが並列構造に接続されることを特徴とする、電子機器装置が提供される。複数のフォトダイオードを並列に接続させることにより、狭い形成領域にも、1つの面積の大きなフォトダイオードと同じまたはそれ以上の電流値を持たせることができ、フォトダイオードの集光率を向上させ、設計全体の可用性を高めることができる。
【0024】
上記課題を解決するために、本発明のまた別の観点によれば、光を受光するフォトダイオードにおいて、複数のフォトダイオードが並列構造に接続されることを特徴とする、フォトダイオードが提供され、フォトダイオードにおいて、各々は小面積であっても、複数のフォトダイオードを並列に接続させることにより、面積の大きな1つのフォトダイオードと同じ、またはそれ以上の電流値を持たせることができ、集光率も高めることができる。
【0025】
フォトダイオードは、PINフォトダイオードとすることができるし、PNダイオードとすることもできる。PINフォトダイオードにおいては、真性領域を形成することにより、空乏層の厚さが増加してフォトダイオードの静電容量が減少し、PNフォトダイオードに比べて、動作速度が速く、動作電圧が低い。また、PNフォトダイオードより暗電流が小さい。
【0026】
フォトダイオードは、外部から光を受光し、受光した光に対応する電気的信号を出力することができる。フォトダイオードは、光エネルギーを電気エネルギーに変換して光信号から電気的信号を得る光センサであって、電子機器装置等の制御に用いることができる。
【発明の効果】
【0027】
以上詳述したように本発明によれば、光を受光する複数のフォトダイオードを並列構造に接続することにより、フォトダイオードの電流値を向上させ、有機電界発光素子の劣化を補償することができる。また、フォトダイオードの集光率を向上させ、設計全体の可用性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0029】
(第1の実施の形態)
図2は、第1の実施の形態によるフォトダイオードを示す概略的な平面図である。図2を参照すると、本実施の形態では、少なくとも2つのフォトダイオード230が備えられている。フォトダイオード230は、非晶質シリコンに所定の熱処理を経て結晶化した多結晶シリコンとして形成される。この後、多結晶シリコンの第1領域231にN型不純物を高濃度イオン注入してN型ドーピング領域231を形成し、第2領域232にP型不純物を高濃度イオン注入してP型ドーピング領域232を形成する。
【0030】
一方、数式1より、フォトダイオードの面積が大きいほど電流量が増加することが分かる。
【0031】
【数1】

【0032】
ここで、Iは電流、Jは電流密度、Aはフォトダイオードの面積を表す。数式1は、一般的な電流量を求める式であって、電流密度が一定の場合、電流量は、面積に比例することになるので、電流量は、フォトダイオードの面積が大きくなるほど増加する。
【0033】
しかし、フォトダイオードをパネルに形成する場合、画素領域以外の非画素領域に形成しなければならず、空間上の制約を受けるため、大面積のフォトダイオードを形成することはできない。そのため、本実施の形態では、大面積の1つのフォトダイオードを形成するのではなく、複数のフォトダイオード230を並列に接続させて、1つの面積の大きなフォトダイオードと同じ電流値を持たせることを特徴としている。
【0034】
このように、複数のフォトダイオード230が並列構造に接続されることにより、フォトダイオード230の電流値が増加し、外部から入射する光をより効率的に受光することができる。
【0035】
本実施の形態の場合、それぞれのフォトダイオード230は、N型ドーピング領域231と、N型ドーピング領域231に隣接するP型ドーピング領域232とで形成される。そして、フォトダイオード230のN型ドーピング領域231にアノード電圧を印加し、P型ドーピング領域232にカソード電圧を印加する。
【0036】
これにより、N型ドーピング領域231とP型ドーピング領域232との接合面は、完全空乏状態となり、空乏領域の表面を介して入射する光によって電荷が生成され、これを電気的信号として出力させる。このとき、出力された電気的信号は、光の強度に比例して表れる。
【0037】
図3は、本実施の形態によるフォトダイオードを備えた有機電界発光表示装置の断面図であり、図4は、本実施の形態によるフォトダイオードを備えた有機電界発光表示装置を示す概略的な平面図である。
【0038】
図3及び図4を参照すると、有機電界発光表示装置20は、画素領域A及び非画素領域Bを含む基板200と、基板200の画素領域A上に形成される薄膜トランジスタ220と、薄膜トランジスタ220に電気的に接続された有機電界発光素子250と、非画素領域B上に形成され、光を感知して電気的信号として出力するフォトダイオード230とを備える。このとき、複数のフォトダイオード230は、並列構造に接続されている。
【0039】
基板200は、ガラス、プラスチック、シリコンまたは合成樹脂のような絶縁性を有する材質からなることができ、ガラス基板のような透明基板を使うことができる。基板200は、薄膜トランジスタ220と有機電界発光素子250とを備える画素領域Aと、非画素領域Bとを有している。画素領域Aは、画像が表示される領域であり、非画素領域Bは、基板200の画素領域A以外のすべての領域を定義する。
【0040】
そして、基板200上には、バッファ層210が形成される。バッファ層210は、シリコン酸化膜(SiO)またはシリコン窒化膜(SiNx)で形成することができ、多重層で形成することができる。バッファ層210は、薄膜トランジスタ220及びフォトダイオード230に浸透可能な不純物の拡散を防止する。
【0041】
薄膜トランジスタ220は、基板200の画素領域Aに形成されたバッファ層210上に形成される。薄膜トランジスタ220は、半導体層221、ゲート電極222、及びソース/ドレイン電極223を有する。半導体層221は、バッファ層210上に形成された非晶質シリコンを、レーザなどを用いて結晶化したポリシリコン(LTPS:Low Temperature PolySilicon)を用いることができる。
【0042】
半導体層221上には、ゲート絶縁層221aが形成される。ゲート電極222は、ゲート絶縁層221a上に所定のパターンに形成される。ゲート電極222上には、層間絶縁層222aが形成される。また、層間絶縁層222a上には、ソース/ドレイン電極223が形成され、ソース/ドレイン電極223は、ゲート絶縁層221aと層間絶縁層222aとに形成されたコンタクトホール223aを介して半導体層221の両側にそれぞれ電気的に接続される。
【0043】
フォトダイオード230は、まず、外部から発光する光を受光することができる非画素領域Bに、並列構造の複数のフォトダイオードとなるようにパターン化された非晶質シリコンで形成され、このような非晶質シリコンを所定の熱処理を経て多結晶シリコンとして結晶化させる。この後、多結晶シリコンの第1領域にN型不純物を高濃度イオン注入してN型ドーピング領域231を形成し、P型ドーピング領域232も、同様の方法により、第1領域に平行に隣接する第2領域にP型不純物を高濃度イオン注入して形成する。
【0044】
そして、フォトダイオード230のN型ドーピング領域231にアノード電圧を印加し、P型ドーピング領域232にカソード電圧を印加する。これにより、N型ドーピング領域231とP型ドーピング領域232との接合面は、完全空乏状態となり、空乏領域の表面を介して入射する光によって電荷が生成され、これを電気的信号として出力させる。このとき、出力された電気的信号は、光の強度に比例して表れる。
【0045】
このように出力された電気的信号は、有機電界発光素子250の基準輝度値に比べて、発光層252から放出された輝度が基準値を超過したか、または基準値に到達することができなかった場合、変換された電気的信号を用いて有機電界発光素子250の輝度を調節する。例えば、外部から入射する光に応じてフォトダイオード230から出力された電気的信号は、比較部に入力される。比較部は、フォトダイオード230から出力された電気的信号が設定された輝度値より小さければ、発光層から発光する光の輝度が増加するように制御信号を出力し、フォトダイオード230から出力された電気的信号が設定された輝度値より大きければ、発光層から発光する光の輝度が減少するように制御信号を出力する。
【0046】
他の実施例として、外部から入射した光量に応じてフォトダイオード230から出力される電流や電圧が制御部に入力され、制御部に入力された電流や電圧によって当該制御信号を出力させることもでき、外部光量に応じて複数段階で発光層252の輝度を調節することができる。
【0047】
しかし、フォトダイオードは、基板の非画素領域に形成されるため、空間上の制約を受ける。そのため、本実施の形態では、複数のフォトダイオード230を並列に接続させて、面積の大きなフォトダイオードと同じ電流値を有するフォトダイオード230を提供することができる。例えば、1個のフォトダイオードで必要な面積W×L(幅W、長さL)のフォトダイオードを、面積W/n×Lのn個のフォトダイオードを並列接続したものに、置き換えることができる。
【0048】
一般に、フォトダイオードは、光エネルギーを電気エネルギーに変換して光信号から電気的信号(電流または電圧)を得る一種の光センサであって、ダイオードの接合部に光検出機能を与えてなる半導体素子である。このようなフォトダイオードは、基本的に、光子吸収によって電子または正孔が生成されることにより、ダイオードの伝導度が光信号に応じて変調されるという原理を用いる。すなわち、フォトダイオードの電流は、本質的にキャリアの光学的生成率に応じて変化し、このような特性は、時間とともに変化する光信号を電気的信号に変換させるものである。
【0049】
こうして、有機電界発光素子250の発光層252から発生した光の輝度を一定に保持し、所望の基準値に対する輝度を表すことができる。
【0050】
また、図3において、平坦化層240は、薄膜トランジスタ220上に形成され、窒化膜、酸化膜のいずれか1つからなる。有機電界発光素子250は、平坦化層240上に形成され、薄膜トランジスタ220に電気的に接続される。
【0051】
一方、有機電界発光素子250は、第1電極層251、発光層252、及び第2電極層253を有している。第1電極層251は、平坦化層240上に形成され、平坦化層240の一領域をエッチングして、ソース及びドレイン電極233のいずれか1つが露出するように形成されたビアホールを介して、ソース及びドレイン電極233のいずれか1つに電気的に接続される。
【0052】
有機電界発光素子250の発光層252は、第1電極層251を部分的に露出させる開口部上に形成される。発光層252は、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、及び電子注入層の一部をさらに有することができる。このような発光層252は、第1電極層251と第2電極層253とから注入された正孔及び電子が結合しながら光を発生する。第2電極層253は、発光層252及び画素定義膜260の上に形成される。
【0053】
画素定義膜260は、平坦化層240上に形成され、第1電極層251を少なくとも部分的に露出させる開口部(図示せず)を備える。画素定義膜260は、アクリル系有機化合物、ポリアミド、ポリイミドなどの有機絶縁物質のうちの1つからなるが、これらに限られるものではない。
【0054】
(第2の実施の形態)
図5は、第2の実施の形態によるフォトダイオードを示す概略的な平面図である。図5を参照すると、本実施の形態によるフォトダイオード330は、複数のフォトダイオード330が並列構造に接続される。
【0055】
フォトダイオード330は、まず、非晶質シリコンで形成され、非晶質シリコンを所定の熱処理を経て多結晶シリコンとして結晶化させる。この後、非晶質シリコンの第1領域にN型不純物を高濃度イオン注入してN型ドーピング領域331を形成する。P型ドーピング領域333も、同様の方法により、第2領域にP型不純物を高濃度イオン注入して形成する。
【0056】
真性領域332は、N型不純物及びP型不純物イオンが注入されていない多結晶シリコン層の真性半導体層であって、N型ドーピング領域331とP型ドーピング領域333との間に形成される。真性領域332は、表面を介して入射する光によって電荷を生成して電気的信号に変換する。
【0057】
フォトダイオード330は、複数のフォトダイオードが並列構造に接続するが、具体的には、フォトダイオード330は、PIN構造であって、N型ドーピング領域331、真性領域332、及びP型ドーピング領域333を含む。このとき、それぞれのフォトダイオード330において、N型ドーピング領域331と、N型ドーピング領域331から離隔して形成されたP型ドーピング領域333、及びN型ドーピング領域331とP型ドーピング領域333との間に形成された真性領域332は、それぞれ単一平面上に形成される。
【0058】
そして、N型ドーピング領域331にアノード電圧を印加し、P型ドーピング領域333にカソード電圧を印加する。これにより、真性領域332は、完全空乏状態となり、外部または内部から放出された光を吸収して電荷として生成及び蓄積し、これを電気的信号に変換させる。
【0059】
また、本実施の形態に記載されたPINフォトダイオードであるフォトダイオード330は、Nドーピング領域331とPドーピング領域333との間に真性領域332を形成することにより、空乏層の厚さが増加してフォトダイオード330の静電容量が減少し、第1の実施の形態で説明しているPNフォトダイオードであるフォトダイオード230に比べて、動作速度が速く、動作電圧が低い。
【0060】
また、PINフォトダイオードは、PNフォトダイオードより暗電流が小さい。すなわち、フォトダイオード330は、光電効果により、光電流を発生する装置において熱的原因及び絶縁性不良などの原因による暗黒状態(光を受けていないときの状態)で流れる電流が小さい。
【0061】
図6は、第2の実施の形態によるフォトダイオードを備えた有機電界発光表示装置の断面図であり、図7は、本実施の形態によるフォトダイオードを備えた有機電界発光表示装置を示す概略的な平面図である。
【0062】
図6及び図7を参照すると、有機電界発光表示装置30は、画素領域C及び非画素領域Dを含む基板300と、基板300の画素領域C上に形成される薄膜トランジスタ320と、薄膜トランジスタ320に電気的に接続された有機電界発光素子350と、非画素領域Dに形成され、光を感知して電気的信号として出力するフォトダイオード330とを備え、フォトダイオード330は、少なくとも2つのフォトダイオードが並列構造となって接続されている。
【0063】
基板300は、ガラス、プラスチック、シリコンまたは合成樹脂のような絶縁性を有する材質からなることができ、ガラス基板のような透明基板を用いることができる。基板300は、薄膜トランジスタ320と有機電界発光素子350とを備える画素領域Cと、非画素領域Dとを含む。画素領域Cは、画像が表示される領域であり、非画素領域Dは、基板300の画素領域C以外のすべての領域を定義する。
【0064】
基板300上にはバッファ層310が形成される。バッファ層310は、シリコン酸化膜(SiO)またはシリコン窒化膜(SiNx)で形成することができ、多重層で形成することができる。バッファ層310は、薄膜トランジスタ320及びフォトダイオード330に浸透可能な不純物の拡散を防止する。
【0065】
薄膜トランジスタ320は、基板300の画素領域Cに形成されたバッファ層310上に形成される。薄膜トランジスタ320は、半導体層321、ゲート電極322、及びソース/ドレイン電極323を備える。半導体層321は、バッファ層310上に形成された非晶質シリコンを、レーザなどを用いて結晶化したポリシリコン(LTPS)を用いることができる。半導体層321上には、ゲート絶縁層321aが形成される。ゲート電極322は、ゲート絶縁層321a上に所定のパターンに形成される。ゲート電極322上には、層間絶縁層322aが形成される。ソース/ドレイン電極323は、層間絶縁層上に形成され、ゲート絶縁層321aと層間絶縁層322aとに形成されたコンタクトホールを介して半導体層321の両側にそれぞれ電気的に接続される。
【0066】
非画素領域Dのフォトダイオード330において、真性領域332は、N型不純物及びP型不純物イオンが注入されていない多結晶シリコン層の真性半導体層であって、N型ドーピング領域331とP型ドーピング領域333との間に形成される。真性領域332は、表面を介して入射する光によって電荷を生成し、電気的信号に変換する。
【0067】
この後、N型ドーピング領域331にアノード電圧を印加し、P型ドーピング領域333にカソード電圧を印加する。これにより、真性領域332は、完全空乏状態となり、外部または内部から放出された光を吸収して電荷として生成及び蓄積し、これを電気的信号に変換する。
【0068】
このようなPINフォトダイオードであるフォトダイオード330は、N型ドーピング領域331とP型ドーピング領域333との間に真性領域332を形成することにより、空乏層の厚さが増加してフォトダイオード330の静電容量が減少し、第1の実施の形態に説明しているPNフォトダイオードであるフォトダイオード230に比べて動作速度が速く、動作電圧が低い。
【0069】
また、PINフォトダイオードは、PNフォトダイオードより暗電流が小さい。すなわち、PINフォトダイオード330は、光電効果により、光電流を発生する装置において熱的原因及び絶縁性不良などの原因による暗黒状態(光を受けていないときの状態)で流れる電流が小さい。
【0070】
また、図6において、平坦化層340は、薄膜トランジスタ320上に形成され、窒化膜、酸化膜のいずれか1つからなる。有機電界発光素子350は、平坦化層340上に形成され、薄膜トランジスタ320に電気的に接続される。有機電界発光素子350は、第1電極層351、発光層352、及び第2電極層353を有している。
【0071】
第1電極層351は、平坦化層340上に形成され、平坦化層340の一領域をエッチングして、ソース及びドレイン電極333のいずれか1つが露出するように形成されたビアホールを介して、ソース/ドレイン電極333のいずれか1つに電気的に接続される。
【0072】
画素定義膜360は、平坦化層340上に形成され、第1電極層351を少なくとも部分的に露出させる開口部(図示せず)を備える。画素定義膜360は、アクリル系有機化合物、ポリアミド、ポリイミドなどの有機絶縁物質のうちの1つからなるが、これらに限られるものではない。
【0073】
有機電界発光素子350の発光層352は、第1電極層351を部分的に露出させる開口部上に形成される。発光層352は、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、及び電子注入層の一部をさらに有することができる。このような発光層352は、第1電極層351と第2電極層353とから注入された正孔及び電子が結合しながら光を発生する。第2電極層353は、発光層352及び画素定義膜360の上に形成される。
【0074】
図8は、上記の第1の実施の形態または第2の実施の形態の並列接続されたフォトダイオードを用いた電子機器装置の一例である携帯電話の斜視図である。図8において、携帯電話400は、前述のフォトダイオード(図示せず)を有する有機電界発光表示パネル410、複数の操作ボタン420、受話口430、送話口440を備える。
【0075】
このような構成によると、表示パネル410内に、並列接続されたフォトダイオードを用いた光センサを形成することができるため、別途の開口部や受光素子を設けるための実装スペースを必要としないだけでなく、より正確に受光量を検出することができるため、周辺光に応じて、より適切な画像制御が可能となる。
【0076】
また、電子機器装置としては、携帯電話のほかに、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビューファインダ型及びモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電子計算機、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられ、同様に並列接続されたフォトダイオードを用いた光センサを適用することができる。
【0077】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、光エネルギーを電気的信号として出力させるフォトダイオード、フォトダイオードを用いた有機電界発光表示装置、及び電子機器装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】従来技術に係る有機電界発光表示装置の断面図である。
【図2】第1の実施の形態によるフォトダイオードの平面図である。
【図3】第1の実施の形態によるフォトダイオードを備えた有機電界発光表示装置の断面図である。
【図4】第1の実施の形態によるフォトダイオードを備えた有機電界発光表示装置の平面図である。
【図5】第2の実施の形態によるフォトダイオードの平面図である。
【図6】第2の実施の形態によるフォトダイオードを備えた有機電界発光表示装置の断面図である。
【図7】第2の実施の形態によるフォトダイオードを備えた有機電界発光表示装置の平面図である。
【図8】フォトダイオードを用いた電子機器装置の一例である携帯電話の斜視図である。
【符号の説明】
【0080】
230 フォトダイオード装置
231 N型ドーピング領域
232 P型ドーピング領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を受光するフォトダイオードにおいて、複数のフォトダイオードが並列構造に接続されており、前記フォトダイオードは、PINフォトダイオードであり、前記PINフォトダイオードは、
N型ドーピング領域と、
前記N型ドーピング領域と離隔したP型ドーピング領域と、
前記N型ドーピング領域と前記P型ドーピング領域との間に形成された真性領域と、
を含み、
前記N型ドーピング領域、前記P型ドーピング領域、及び前記真性領域は、いずれも単一平面に形成されることを特徴とする、フォトダイオード。
【請求項2】
光を受光するフォトダイオードにおいて、複数のフォトダイオードが並列構造に接続されており、前記フォトダイオードは、PNダイオードであり、前記PNダイオードは、
N型ドーピング領域と、
前記N型ドーピング領域に隣接するP型ドーピング領域と、
を含み、
前記N型ドーピング領域及び前記P型ドーピング領域は、いずれも単一平面上に形成されることを特徴とする、フォトダイオード。
【請求項3】
前記フォトダイオードは、外部から光を受光し、受光した光に対応する電気的信号を出力することを特徴とする、請求項1または2に記載のフォトダイオード。
【請求項4】
画素領域及び非画素領域を有する基板と、
前記基板の画素領域上に形成される薄膜トランジスタと、
前記薄膜トランジスタに電気的に接続された有機電界発光素子と、
前記非画素領域に形成され、互いに並列構造に接続された複数のフォトダイオードと、
を備えることを特徴とする、有機電界発光表示装置。
【請求項5】
前記フォトダイオードは、前記有機電界発光素子が発光する光を受光し、受光した光に対応する電気的信号を出力することを特徴とする、請求項4に記載の有機電界発光表示装置。
【請求項6】
前記フォトダイオードは、外部から供給される光を受光し、受光した光に対応する電気的信号を出力することを特徴とする、請求項4に記載の有機電界発光表示装置。
【請求項7】
前記フォトダイオードは、PINフォトダイオードであることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の有機電界発光表示装置。
【請求項8】
前記PINフォトダイオードは、
前記基板の非画素領域上に形成されたN型ドーピング領域と、
前記N型ドーピング領域と離隔して、前記基板の非画素領域に形成されたP型ドーピング領域と、
前記N型ドーピング領域と前記P型ドーピング領域との間に形成された真性領域と、
を含み、
前記N型ドーピング領域、前記P型ドーピング領域、及び前記真性領域は、いずれも単一平面に形成されることを特徴とする、請求項7に記載の有機電界発光表示装置。
【請求項9】
前記フォトダイオードは、PNダイオードであることを特徴とする、請求項4〜6のいずれかに記載の有機電界発光表示装置。
【請求項10】
前記PNダイオードは、
前記基板の非画素領域に形成されたN型ドーピング領域と、
前記N型ドーピング領域に隣接して、前記基板の非画素領域に形成されたP型ドーピング領域と、
を含み、
前記N型ドーピング領域及び前記P型ドーピング領域は、いずれも単一平面上に形成されることを特徴とする、請求項9に記載の有機電界発光表示装置。
【請求項11】
光を受光するフォトダイオードを備える電子機器装置において、複数のフォトダイオードが並列構造に接続されることを特徴とする、電子機器装置。
【請求項12】
光を受光するフォトダイオードにおいて、複数のフォトダイオードが並列構造に接続されることを特徴とする、フォトダイオード。
【請求項13】
前記フォトダイオードは、PINフォトダイオードであることを特徴とする、請求項12に記載のフォトダイオード。
【請求項14】
前記フォトダイオードは、PNダイオードであることを特徴とする、請求項12に記載のフォトダイオード。
【請求項15】
前記フォトダイオードは、外部から光を受光し、受光した光に対応する電気的信号を出力することを特徴とする、請求項12〜14のいずれかに記載のフォトダイオード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−173832(P2007−173832A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−344356(P2006−344356)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】