説明

フォトニック結晶構造体、その製造方法、フォトニック結晶構造体を用いた反射型カラーフィルタ及びディスプレイ装置

【課題】フォトニック結晶構造体、その製造方法、フォトニック結晶構造体を採用した反射型カラーフィルタ及びディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】複数のサイズを有する複数のナノ粒子を含み、ナノ粒子が相互離隔して配されたナノ構造物層と、ナノ構造物層上に位置し、非平坦表面を有し、所定波長の光を反射するように設計されたフォトニック結晶層と、を備えるフォトニック結晶構造体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトニック結晶構造体、その製造方法、フォトニック結晶構造体を採用した反射型カラーフィルタ及びディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトニック結晶(Photonic Crystal)は、光を制御できる結晶構造を有する物質であり、光の波長サイズ程度の周期で屈折率が反復する結晶構造を形成することにより、特定波長の光のみが補強干渉(constructive interference)が生じ、残りの波長の光は相殺干渉(destructive interference)を起こして、これにより特定のカラーが具現できるというものである。このように、光の反射及び干渉を利用して色を具現する、いわば、「構造色」(Structural Color)技術は、顔料による光の吸収を利用して色を具現する技術に比べて、高効率の色具現が可能であり、色度(Chromaticity)制御が容易であるという点で長所がある。
【0003】
一般的に、最も容易に製造される1次元フォトニック結晶では、低屈折率を有する透明絶縁膜と高屈折率を有する透明絶縁膜とを相互に積層して、反射される光の色が制御される。しかし、1次元フォトニック結晶の場合、入射角が垂直である光に対してのみ設計された色を呈し、入射角が小さくなるにつれて、ブラッグの法則によって短い波長帯域へと色がシフトする現象を表す。視野角の側面から見れば、1次元フォトニック結晶は5°以下の視野角を有しており、高い色再現性及び反射特性を有するにも拘わらず、ディスプレイのようなデバイスへの適用が難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、広い視野角のカラーフィルタリング性能を有するフォトニック結晶構造体及びその製造方法ならびに、このようなフォトニック結晶構造体を用いた反射型カラーフィルタ及びディスプレイ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を達成するために、本発明の一形態によるフォトニック結晶構造体は、複数のサイズを有する複数のナノ粒子を含み、前記ナノ粒子が相互離隔して配されたナノ構造物層と、前記ナノ構造物層上に位置し、非平坦表面を有し、所定波長の光を反射するように設計されたフォトニック結晶層と、を備える。
【0006】
前記ナノ構造物層は、前記複数のナノ粒子の単層膜構造を有してもよい。
【0007】
前記フォトニック結晶層は、第1屈折率を有する第1物質層と、前記第1屈折率と異なる第2屈折率を有する第2物質層と、が交互に積層されて形成されてもよい。
【0008】
前記第1物質層及び前記第2物質層は、透明絶縁性物質で形成されてもよい。
【0009】
前記第1物質層及び第2物質層は、SiO、TiO、Si、CaF、LiF、およびMgFからなる群から選択される少なくとも一つを含んでもよい。
【0010】
前記第1物質層及び第2物質層のうち一方は、金属物質で形成され他方は、絶縁性物質で形成されてもよい。
【0011】
前記ナノ構造物層のナノ粒子は、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、ジルコニア(ZrO)、イットリア−ジルコニア(Y−ZrO)、酸化銅(CuO、CuO)及び酸化タンタル(Ta)からなる群から選択される少なくとも一つを含んでもよい。
【0012】
また、本発明の一形態によるフォトニック結晶構造体の製造方法は、基板上に、複数のサイズを有する複数のナノ粒子が離隔して配されたナノ構造物層を形成する工程と、前記ナノ構造物層上に非平坦表面を有し、所定波長の光を反射させるように設計されたフォトニック結晶層を形成する工程と、を含む。
【0013】
前記ナノ構造物層を形成する工程は、前記基板上に複数のコア−シェル(core−shell)型粒子を形成する工程と、焼成処理により、コア−シェル型粒子のシェル物質をリフローして、前記コア−シェル型粒子のコア物質を露出させる工程と、前記リフローされたシェル物質をエッチングする工程と、を含む。
【0014】
前記複数のコア−シェル型粒子を形成する工程において、前記コア−シェル型粒子の単層膜構造を形成しうる。
【0015】
前記コア−シェル型粒子は、コアが無機物質で形成され、シェルは、有機物質で形成されてもよい。
【0016】
前記フォトニック結晶層を形成する工程は、第1屈折率を有する第1物質層と、前記第1屈折率と異なる第2屈折率を有する第2物質層と、を交互に積層する工程を含みうる。
【0017】
前記第1物質層と第2物質層とをスパッタを用いた蒸着処理で形成しうる。
【0018】
平均自由行程(Mean Free Path)を最大にし、前記基板のターゲットとの距離を最小にする条件でスパッタによる蒸着処理を行いうる。
【0019】
また、本発明の一形態による反射型カラーフィルタは、前記一類型のフォトニック結晶構造体であって、前記フォトニック結晶層が第1波長の光を反射させるように設計された複数の第1カラーユニットと、前記一類型のフォトニック結晶構造体であって、前記フォトニック結晶層が第2波長の光を反射させるように設計された複数の第2カラーユニットと、前記一類型のフォトニック結晶構造体であって、前記フォトニック結晶層が第3波長の光を反射させるように設計された複数の第3カラーユニットと、を備え、前記複数の第1カラーユニット、第2カラーユニット、第3カラーユニットが2次元アレイに交互に配列されて形成されてもよい。
【0020】
また、本発明の一形態によるディスプレイ装置は、前記反射型カラーフィルタと、前記複数の第1カラーユニット、前記複数の第2カラーユニット、前記複数の第3カラーユニットにそれぞれ対応する領域を有し、各領域に入射した光を画像情報によって変調するディスプレイパネルと、を備える。
【0021】
前記ディスプレイパネルは、液晶表示素子(Liquid Crystal Display Device)、電気泳動表示素子(Electrophoresis Display Device)、電気湿潤表示素子(Electrowetting Display Device)または電気変色表示素子(Electrochromic Display Device)を含んでもよい。
【0022】
前記ディスプレイ装置は、反射型カラーフィルタを透過した光を吸収する吸収部をさらに含みうる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によるフォトニック結晶構造体は、視野角が広いカラーフィルタリング性能を有するので、これを採用した反射型カラーフィルタ、ディスプレイ装置は、光効率が高く、色再現が容易であり、視野角の広い画像が提供できる。
【0024】
また、前記フォトニック結晶構造体の製造方法によれば、複数のサイズを有する複数のナノ粒子上に多層構造のフォトニック結晶層を形成した後にも、表面の非平坦度が維持されうる。したがって、視野角度による色の変化が減少し、さらに広い視野角範囲で設計波長帯域の光Lが認知される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態によるフォトニック結晶構造体の概略的な構造を示す断面図である。
【図2】一般的な従来の1次元フォトニック結晶構造を表し、入射角によるカラーシフト現象を説明する図面である。
【図3】本発明の他の実施形態によるフォトニック結晶構造体の概略的な構造を示す断面図である。
【図4A】複数のナノ粒子の間の間隔形成のないフォトニック結晶層の表面傾斜角の程度を比較するシミュレーション図面である。
【図4B】複数のナノ粒子の間の間隔形成のあるフォトニック結晶層の表面傾斜角の程度を比較するシミュレーション図面である。
【図5】複数のナノ粒子の間の間隔及びフォトニック結晶層を構成する層数とフォトニック結晶層の表面の傾斜角との関係を示すシミュレーショングラフである。
【図6A】本発明の一実施形態によるフォトニック結晶構造体の製造方法を説明する図面である。
【図6B】本発明の一実施形態によるフォトニック結晶構造体の製造方法を説明する図面である。
【図6C】本発明の一実施形態によるフォトニック結晶構造体の製造方法を説明する図面である。
【図6D】本発明の一実施形態によるフォトニック結晶構造体の製造方法を説明する図面である。
【図7】フォトニック結晶層を形成する際のスパッタまたは真空蒸着機の使用及びフォトニック結晶層を構成する層数とフォトニック結晶層の表面の傾斜角との関係を示すシミュレーショングラフである。
【図8】本発明の一実施形態による反射型カラーフィルタの概略的な構造を示す断面図である。
【図9】本発明の一実施形態によるディスプレイ装置の概略的な構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付した図面を参照して、本発明の望ましい実施形態を詳細に説明する。以下の図面において、同一の参照符号は、同一の構成要素を表す。また、図面において各構成要素のサイズは、説明の便宜上、誇張されている場合がある。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態によるフォトニック結晶構造体100の概略的な構造を示す断面図である。
【0028】
図1を参照すれば、フォトニック結晶構造体100は、基板110上に、複数のサイズを有する複数のナノ粒子120を含むナノ構造物層を備え、複数のナノ粒子120が相互離隔して配されている。ナノ構造物層上には、非平坦表面140aを有し、所定波長の光を反射させるように設計されたフォトニック結晶層140が形成されている。
【0029】
ナノ構造物層は、ナノ構造物層上に形成されるフォトニック結晶層140の表面を非平坦化し、所定の傾斜角を有するように設けられる。すなわち、このようなナノ構造物層によってランダムな高さ分布を有するフォトニック結晶層140が形成され、これにより、視野角度によって色が異なって見える色変化が減らせる。
【0030】
以下、フォトニック結晶構造体100についてさらに詳細な構造を説明する。
【0031】
基板110の材質としては、シリコン、シリコン酸化物、サファイア、シリコンカーバイド、またはガラスが使われうる。
【0032】
基板110上には、複数のサイズを有する複数のナノ粒子120が離隔して配されており、当該複数のナノ粒子120はナノ構造物層を構成する。ナノ構造物層は少なくとも2種類のサイズを有するナノ粒子を含み、より好ましくは複数のナノ粒子120は、ランダムなサイズ分布を有する。本明細書において「ランダムなサイズ分布」とは、ナノ粒子のサイズに実質的に規則性がないことをいう。すなわち、本発明の効果(回折干渉効果)を奏することができる程度に、ナノ粒子が規則性のない様々なサイズを有する。複数のナノ粒子120間の距離(粒子間隔)は、フォトニック結晶層140に備えられる積層数及びフォトニック結晶層140の表面140aで具現しようとする傾斜角の程度を考慮して適切に定めることができ、一定のまたはランダムな間隔を有しうる。ナノ粒子120間の平均距離はナノ粒子120の平均サイズよりも小さいことが好ましい。例えば、ナノ粒子120間の平均距離はフォトニック結晶層の積層数の増加によるフォトニック結晶層の表面の傾斜角の低減を緩和させ、適正な視野角を確保する点から好ましくは100〜500nmであり、より好ましくは200〜500nmであり、さらに好ましくは200〜400nmである(後述の図5参照)。なお、ナノ粒子120間の平均距離とは隣り合う2つのナノ粒子の粒子間距離の平均値を意味する。ナノ粒子間の平均距離およびナノ粒子の平均サイズはSEMにより粒子を観察し、その平均をとることにより算出することができる。この際、粒子のサイズとは、粒子の投影面積と等しい面積を有する円の直径(投影面積径)とする。なお、ナノ粒子間の距離(間隔)がランダムであるとは、ナノ粒子間の距離(間隔)に実質的に規則性がないことをいう。すなわち、本発明の効果(回折干渉効果)を奏することができる程度に、ナノ粒子間の距離が規則性のないことをいう。
【0033】
ナノ粒子120は、例えば、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、ジルコニア(ZrO)、イットリア−ジルコニア(Y−ZrO)、酸化銅(CuO、CuO)及び酸化タンタル(Ta)からなる群から選択される少なくとも一つを含んで形成されてもよい。これらは1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。ナノ粒子120は、単層で形成される。すなわち、ナノ構造物層は複数のナノ粒子の単層膜構造を有する。但し、これに制限されるものではなく、ナノ粒子120が積層した形態であってもよい。ナノ粒子120の直径は、数十nm〜数百nm、例えば10nm〜900nm、でありうる。
【0034】
フォトニック結晶層140は、所定波長の光を反射するように設計された1次元フォトニック結晶であって、第1屈折率を有する第1物質層141と、前記第1屈折率と異なる第2屈折率を有する第2物質層142とが交互に積層されて形成される。反射波長帯域は、第1物質層141、第2物質層142のそれぞれの屈折率、各層の厚さによって決定される。積層数は、反射効率を考慮して定められ、一般的に、層数が多いほど反射効率が良くなる。
【0035】
第1物質層141及び第2物質層142は、透明絶縁性物質で形成されてもよい。一実施形態において、第1物質層141及び第2物質層142は、SiO、TiO、Si、CaF、LiF、およびMgFからなる群から選択される少なくとも一つを含んで形成される。これらは1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0036】
また、一実施形態において、第1物質層141及び第2物質層142のうち一方は、絶縁性物質で形成され、他方は、金属物質で形成される。金属物質で形成される第1物質層141または第2物質層142層は、光の吸収が最小化するように可能な限り薄く形成し、例えば、約50nm以下の厚さに形成しうる。一方、金属物質で形成される第1物質層141または第2物質層142層の厚さの下限は特に制限されない。また、絶縁性物質で形成される第1物質層141または第2物質層142層の厚さは特に制限されない。
【0037】
フォトニック結晶層140の表面140aは、平坦ではなく、非平坦である。すなわち、フォトニック結晶層140の表面140aは凹凸を有し、フォトニック結晶構造体100の積層方向のサイズ(高さ)が均一ではない。より好ましくは表面140aはランダムな高さ分布を有する。すなわち、本発明の好ましい形態において、表面140aにおける凹凸の高さ(突部の基準高さ(位置)と隣接する凹部の基準高さ(位置)との差)は規則的ではなく、ランダムな分布を有する。これは、ランダムなサイズを有する複数のナノ粒子120上にフォトニック結晶層140を形成するためである。本明細書において、「ランダムな高さ分布」とはフォトニック結晶層の高さ(フォトニック結晶構造体の高さ)に実質的に規則性がないことをいう。すなわち、本発明の効果(回折干渉効果)を奏することができる程度に、フォトニック結晶層の高さ(フォトニック結晶構造体の高さ)が規則性のないことをいう。また、反射効率を考慮して定められる積層数が多くなるほど、フォトニック結晶層140の表面140aの非平坦度、例えば、水平面に対する傾斜角は小さくなるが、本実施形態では、複数のナノ粒子120の間に間隔を形成することによって、積層数が多くなるほど傾斜角が小さくなる傾向を緩和している。
【0038】
前述した構造のフォトニック結晶構造体100は、フォトニック結晶層140の第1物質層141、第2物質層142の材質、厚さ、積層数によって決定される波長帯域の光Lを反射させるにおいて、視野角度による色変化が非常に少ないので、広い視野角が具現される。
【0039】
図2を共に参照して説明すれば、次の通りである。図2は、一般的な従来の1次元フォトニック結晶構造体100’を表し、入射光の入射角が小さくなることによって反射光のカラーシフトが起こることを説明する図面である。
【0040】
基板110’上に平坦な構造で、第1屈折率を有する第1物質層141’と第2屈折率を有する第2物質層142’とが交互に積層されたフォトニック結晶層140’が形成された場合、このようなフォトニック結晶層140’は、垂直入射された光に対してのみ、設計された波長帯域の光が反射される。例えば、フォトニック結晶層140’が緑色波長帯域の光Lを反射するように、第1物質層141’、第2物質層142’の材質、厚さを設計した場合、白色光Lが垂直入射された場合、緑色波長帯域の光Lが反射されるが、白色光Lが所定角度θで入射される場合、角度θによって青色波長帯域にシフトして緑色及び青色の混合色を表す光LGB、または、青色波長帯域の光Lが反射される。
【0041】
一方、図1のようなフォトニック結晶構造体100の場合、フォトニック結晶構造体140に入射された白色光Lのうち、フォトニック結晶層140の設計波長帯域の光Lが反射され、この時、ランダムな高さ分布を有するフォトニック結晶層140の表面140aの傾斜角によって回折干渉効果が誘発される。すなわち、多様な高さで多様な角度で光が反射、回折及び散乱されるので、視野角度による色の変化が減少し、さらに広い視野角範囲で設計波長帯域の光Lが認知される。
【0042】
図3は、本発明の他の実施形態によるフォトニック結晶構造体101の概略的な構造を示す断面図である。本実施形態は、複数のナノ粒子121が半球形状を有する点で、図1の実施形態と相違する。複数のナノ粒子121は、それ以外にも、立方体、円錐形、円錐台型、多面体型などの多様な形状を有しうる。
【0043】
図4A及び図4Bは、複数のナノ粒子間の間隔形成の有/無によるフォトニック結晶層の表面傾斜角程度を比較するシミュレーション図である。
【0044】
図面を参照すれば、ナノ粒子間の間隔が形成されていない場合のシミュレーション結果を示す図4Aに比べて、ナノ粒子間の所定間隔が確保された場合のシミュレーション結果を示す図4Bの場合、フォトニック結晶層の表面の傾斜角がさらに大きく表示されることが分かる。シミュレーションは、便宜上、一定のサイズを有する半球形状のナノ粒子に対して行われたが、ランダムなサイズの他の形状を有するナノ粒子に対しても、類似した結果が予測できる。
【0045】
図5は、複数のナノ粒子間の間隔及びフォトニック結晶層を構成する層数とフォトニック結晶層の表面の傾斜角との関係を示すシミュレーショングラフである。
【0046】
フォトニック結晶層を構成する第1物質層、第2物質層の積層数は、反射効率が高まるほど多くなり、この時、積層数が多いほどフォトニック結晶層の表面は、平坦になる。すなわち、反射効率を考慮してフォトニック結晶層を構成する層数を増加させる場合、視野角は、相対的に小さくなる。但し、ナノ粒子間の適正な間隔を確保する場合、フォトニック結晶層の積層数の増加によるフォトニック結晶層の表面の傾斜角の低減を緩和させることができ、適正な視野角が確保できる。
【0047】
図6A〜図6Dは、本発明の一実施形態によるフォトニック結晶構造体の製造方法を説明する図面であり、図7は、フォトニック結晶層を形成する際のスパッタまたは真空蒸着機の使用及びフォトニック結晶層を構成する層数とフォトニック結晶層の表面の傾斜角との関係を示すシミュレーショングラフである。
【0048】
本発明の一実施形態によるフォトニック結晶構造体の製造方法は、基板上に、複数のサイズを有する複数のナノ粒子を含み、前記ナノ粒子が離隔して配されたナノ構造物層を形成する工程と、前記ナノ構造物層上に、非平坦表面を有し、所定波長の光を反射するように設計されたフォトニック結晶層を形成する工程とを含む。
【0049】
具体的な過程を例示的に説明すれば、次の通りである。すなわち、本発明の一実施形態において、前記ナノ構造物層を形成する工程は、前記基板上に複数のコア−シェル型粒子を形成する工程と、焼成処理により、前記コア−シェル型粒子のシェル物質をリフローして、前記コア−シェル型粒子のコア物質を露出させる工程と、前記リフローされたシェル物質をエッチングする工程と、を含む。
【0050】
まず、図6Aのように、基板210上に、複数のコア−シェル型粒子(Core−Shell type particle:CS)を形成する。複数のコア−シェル型粒子CSは、複数の異なるサイズを有し、好ましくはランダムなサイズを有する。より好ましくは、コア−シェル型粒子CSのコアが複数の異なるサイズを有し、好ましくはランダムなサイズを有する。なお、ランダムなサイズを有する粒子(コア−シェル型粒子、コア部)を調製するには、例えば、篩分級により異なる粒度(サイズ)の粒子に分級した後に、分級された粒度の異なる粒子を適当な割合で配合して、ランダムな粒度分布とする方法等が挙げられる。
【0051】
該コアーシェル型粒子CSは、コア220とシェル227とが異なる物質で形成され、例えば、コア220は、無機物質で形成され、シェル227は、有機物質であって、例えば、熱によってリフローされる物質で形成されてもよい。コア220を構成する無機物質としては、例えば、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、ジルコニア(ZrO)、イットリア−ジルコニア(Y−ZrO)、酸化銅(CuO、CuO)及び酸化タンタル(Ta)からなる群から選択される少なくとも一つが挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。シェル227を構成する有機物質は特に制限されず、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。なお、本明細書において、「リフロー」とはシェル材料を加熱によって溶融し急冷処理することを意味する。複数のコア−シェル型粒子CSは、単層膜構造で形成されてもよい。このような3次元ランダム構造は、例えば、複数のコア−シェル型粒子CSが分散された懸濁液を塗布し、蒸発法によって単層膜の形態を形成することによって形成される。この時に形成される単層膜は、溶媒の蒸発によって発生する毛細管力によって自発的に形成されるが、主にFCC(面心立方格子)またはHCP(六方最密充填)構造となる。
【0052】
次いで、図6Bのように、焼成処理により、コア−シェル型粒子CSのシェル227を形成する物質(シェル物質)をリフローして、コア−シェル型粒子CSのコア220を形成する物質(コア物質)を露出させて、シェル物質から構成されるリフロー層227’を形成する。
【0053】
次いで、リフローされたシェル物質をエッチングする。具体的には、図6Cのように、リフロー層227’のコア220の間に存在する部分、すなわち、リフロー層227’のコア220の下部以外の部分をエッチングする。これにより、複数のコア220の間に間隔が形成される。
【0054】
以上の工程により、ナノ構造物層が形成される。
【0055】
次いで、ナノ構造物層上にフォトニック結晶層を形成する。具体的には、図6Dのように、リフロー層227’およびコア220からなるナノ構造物層上に、第1屈折率を有する第1物質層241と、前記第1屈折率と異なる第2屈折率を有する第2物質層242とを交互に積層してフォトニック結晶層240を形成する。すなわち、本発明の一実施形態において、フォトニック結晶層を形成する工程は、第1屈折率を有する第1物質層と、前記第1屈折率と異なる第2屈折率を有する第2物質層と、を交互に積層する工程を含む。第1物質層241、第2物質層242の材質、厚さ及び層数は、所望の反射波長帯域及び反射効率を考慮して定められる。例えば、第1物質層241及び第2物質層242は、SiO、TiO、Si、CaF、LiF、およびMgFからなる群から選択される少なくとも一つを含んで形成されてもよい。これらは1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。また、第1物質層141及び第2物質層142のうち一方は、絶縁性物質で形成され、他方は、金属物質で形成されてもよい。
【0056】
第1物質層241と第2物質層242とは、スパッタまたは真空蒸着機を使用して形成しうる。好ましくは、第1物質層及び第2物質層を、スパッタを用いた蒸着処理で形成する。図7に示すように、スパッタを使用した場合、フォトニック結晶層240の表面の傾斜角が層数によって減少する程度が減る。また、フォトニック結晶層240の表面の傾斜角を可能な限り大きく維持できるように、平均自由行程を最大にし、基板210のターゲットとの距離を最小にする条件でスパッタによる蒸着処理を行いうる。平均自由行程は、基板210に向かうターゲット粒子の間に衝突が発生する前の飛行距離の平均を意味し、一般的に、スパッタ内の気圧が低くなるほど、平均自由行程は、大きくなる。ここで、最大、最小の意味は、スパッタ装備が提供する範囲内での最大、最小を意味する。例えば、平均自由行程は好ましくは約10cm以上であって、基板とターゲットとの距離は好ましくは約10cm以下でありうる。
【0057】
このような工程によって、ランダムな高さの表面を有するフォトニック結晶層240を備えるフォトニック結晶構造体200が製造される。
【0058】
図8は、本発明の一実施形態による反射型カラーフィルタ300の概略的な構造を示す断面図である。
【0059】
反射型カラーフィルタ300は、第1波長の光を選択的に反射させる第1カラーユニット381、第2波長の光を選択的に反射させる第2カラーユニット382、及び第3波長の光を選択的に反射させる第3カラーユニット383を備える。図面には、便宜上、一つの第1カラーユニット381、一つの第2カラーユニット382、及び一つの第3カラーユニット383が示されているが、反射型カラーフィルタ300は、複数の第1カラーユニット381、複数の第2カラーユニット382、及び複数の第3カラーユニット383を備え、これらは、2次元アレイに交互に配列されている。
【0060】
第1カラーユニット381、第2カラーユニット382及び第3カラーユニット383には、前述した構造のフォトニック結晶構造体100,101,200が採用されてもよい。すなわち、第1カラーユニット381、第2カラーユニット382及び第3カラーユニット383は、基板310と、複数のサイズを有する複数の離隔して配されたナノ粒子320を含むナノ構造物層と、ナノ構造物層(複数のナノ粒子320)の上に、非平坦表面を有し、それぞれ第1波長、第2波長、第3波長の光を反射するように設計されたフォトニック結晶層340,350,360とを備えるフォトニック結晶構造体(第1フォトニック結晶構造体、第2フォトニック結晶構造体、第3フォトニック結晶構造体)を含む。例えば、フォトニック結晶層340は、第1波長の光を反射するように、厚さがそれぞれd1、d2に設計された第1物質層341、第2物質層342を備え、フォトニック結晶層350は、第2波長の光を反射するように、厚さがそれぞれd3、d4に設計された第1物質層351、第2物質層352を備え、フォトニック結晶層360は、第3波長の光を反射するように、厚さがそれぞれd5、d6に設計された第1物質層361、第2物質層362を備える。第1波長の光、第2波長の光、第3波長の光は、例えば、それぞれ赤色光、緑色光、青色光であってもよい。
【0061】
図9は、本発明の一実施形態によるディスプレイ装置400の概略的な構造を示す断面図である。図9に示すように、ディスプレイ装置400は、上述した形態の反射型カラーフィルタと、前記複数の第1カラーユニット、前記複数の第2カラーユニット、前記複数の第3カラーユニットにそれぞれ対応する領域を有し、各領域に入射した光を画像情報によって変調するディスプレイパネルと、を備える。
【0062】
図面を参照すれば、ディスプレイ装置400は、例えば、図8と同じ構造の第1カラーユニット381、第2カラーユニット382、および第3カラーユニット383が備えられた反射型カラーフィルタ300と、第1カラーユニット381、第2カラーユニット382、第3カラーユニット383にそれぞれ対応する領域を有し、各領域に入射された光を画像情報によって変調するディスプレイパネル450と、を備える。
【0063】
ディスプレイパネル450は、入射光をオン/オフ制御または透過率を調節する光シャッターの機能を行える多様な構造が採用され、例えば、液晶表示素子(Liquid Crystal Display Device)、電気泳動表示素子(Electrophoresis Display Device)、電気湿潤表示素子(Electrowetting Display Device)または電気変色表示素子(Electrochromic Display Device)を含む。
【0064】
ディスプレイ装置400は、反射型カラーフィルタ300から反射されない波長帯域の光、すなわち、反射型カラーフィルタ300を通過(透過)した光を吸収する吸収部410をさらに備えうる。吸収部41を構成する材料としては特に制限されない。
【0065】
本実施形態において、反射型カラーフィルタ300に入射される白色光Lは、第1カラーユニット381、第2カラーユニット382、第3カラーユニット383によって、それぞれ、赤色光L、緑色光L、青色光Lとして反射される。反射された赤色光L、緑色光L、青色光Lは、ディスプレイパネル450の各領域で画像情報によって変調されて画像を形成する。
【0066】
以上、本発明を、理解を助けるために図面に示された実施形態を参照して説明したが、これは、例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これから多様な変形及び均等な他の実施形態が可能であるということが分かるであろう。したがって、本発明の真の保護範囲は、特許請求の範囲によって決定されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、ディスプレイ関連の技術分野に好適に適用可能である。
【符号の説明】
【0068】
100、101、200 フォトニック結晶構造体、
100’ 一次元フォトニック結晶構造体、
110、110’、210、310 基板、
120、121、320 ナノ粒子、
140、140’、240 フォトニック結晶層、
140a 非平坦表面、
141、141’、241、341、351、361 第1物質層、
142、142’、242、342、352、362 第2物質層、
220 コア、
227 シェル、
227’ リフロー層、
300 反射型カラーフィルタ、
381 第1カラーユニット、
382 第2カラーユニット、
383 第3カラーユニット、
400 ディスプレイ装置、
410 吸収部、
450 ディスプレイパネル、
白色光、
設計波長帯域の光
GB 緑色及び青色の混合色の光、
青色光、
θ 入射角、
CS コア−シェル型粒子、
d1、d3、d5 第1物質層の厚さ、
d2、d4、d6 第2物質層の厚さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に位置し、複数のサイズを有する複数のナノ粒子を含み、前記ナノ粒子が相互離隔して配されたナノ構造物層と、
前記ナノ構造物層上に位置し、非平坦表面を有し、所定波長の光を反射するように設計されたフォトニック結晶層と、
を備えるフォトニック結晶構造体。
【請求項2】
前記ナノ構造物層は、前記複数のナノ粒子の単層膜構造を有することを特徴とする請求項1に記載のフォトニック結晶構造体。
【請求項3】
前記フォトニック結晶層は、第1屈折率を有する第1物質層と、前記第1屈折率と異なる第2屈折率を有する第2物質層と、が交互に積層されて形成されることを特徴とする請求項1に記載のフォトニック結晶構造体。
【請求項4】
前記第1物質層及び前記第2物質層は、透明絶縁性物質からなることを特徴とする請求項3に記載のフォトニック結晶構造体。
【請求項5】
前記第1物質層及び前記第2物質層は、SiO、TiO、Si、CaF、LiF、およびMgFからなる群から選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項3に記載のフォトニック結晶構造体。
【請求項6】
前記第1物質層及び前記第2物質層のうち一方は、金属物質で形成され、他方は、絶縁性物質で形成されることを特徴とする請求項3に記載のフォトニック結晶構造体。
【請求項7】
前記ナノ構造物層中のナノ粒子は、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)、ジルコニア(ZrO)、イットリア−ジルコニア(Y−ZrO)、酸化銅(CuO、CuO)及び酸化タンタル(Ta)からなる群から選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のフォトニック結晶構造体。
【請求項8】
基板上に複数のサイズを有する複数のナノ粒子を含み、前記ナノ粒子が相互離隔して配されたナノ構造物層を形成する工程と、
前記ナノ構造物層上に、非平坦表面を有し、所定波長の光を反射するように設計されたフォトニック結晶層を形成する工程と、
を含むフォトニック結晶構造体の製造方法。
【請求項9】
前記ナノ構造物層を形成する工程は、
前記基板上に複数のコア−シェル型粒子を形成する工程と、
焼成処理により、前記コア−シェル型粒子のシェル物質をリフローして、前記コア−シェル型粒子のコア物質を露出させる工程と、
前記リフローされたシェル物質をエッチングする工程と、
を含むことを特徴とする請求項8に記載のフォトニック結晶構造体の製造方法。
【請求項10】
前記複数のコア−シェル型粒子を形成する工程において、前記コア−シェル型粒子の単層膜構造を形成することを特徴とする請求項9に記載のフォトニック結晶構造体の製造方法。
【請求項11】
前記コア−シェル型粒子は、コアが無機物質で形成され、シェルが有機物質で形成されることを特徴とする請求項9または10に記載のフォトニック結晶構造体の製造方法。
【請求項12】
前記フォトニック結晶層を形成する工程は、
第1屈折率を有する第1物質層と、前記第1屈折率と異なる第2屈折率を有する第2物質層と、を交互に積層する工程を含むことを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載のフォトニック結晶構造体の製造方法。
【請求項13】
前記第1物質層及び第2物質層を、スパッタを用いた蒸着処理で形成することを特徴とする請求項12に記載のフォトニック結晶構造体の製造方法。
【請求項14】
平均自由行程を最大にし、前記基板のターゲットとの距離を最小にする条件でスパッタによる蒸着処理を行うことを特徴とする請求項13に記載のフォトニック結晶構造体の製造方法。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のフォトニック結晶構造体であって、前記フォトニック結晶層が第1波長の光を反射するように設計された第1フォトニック結晶構造体を含む複数の第1カラーユニットと、
請求項1〜7のいずれか1項に記載のフォトニック結晶構造体であって、前記フォトニック結晶層が第2波長の光を反射するように設計された第2フォトニック結晶構造体を含む複数の第2カラーユニットと、
請求項1〜7のいずれか1項に記載のフォトニック結晶構造体であって、前記フォトニック結晶層が第3波長の光を反射するように設計された第3フォトニック結晶構造体を含む複数の第3カラーユニットと、を備え、
前記複数の第1カラーユニット、前記複数の第2カラーユニット、前記複数の第3カラーユニットが2次元アレイに交互に配列されている反射型カラーフィルタ。
【請求項16】
請求項15に記載の反射型カラーフィルタと、
前記複数の第1カラーユニット、前記複数の第2カラーユニット、前記複数の第3カラーユニットにそれぞれ対応する領域を有し、各領域に入射した光を画像情報によって変調するディスプレイパネルと、
を備えることを特徴とする記載のディスプレイ装置。
【請求項17】
前記ディスプレイパネルは、
液晶表示素子、電気泳動表示素子、電気湿潤表示素子または電気変色表示素子を含むことを特徴とする請求項16に記載のディスプレイ装置。
【請求項18】
前記反射型カラーフィルタを透過した光を吸収する吸収部をさらに含むことを特徴とする請求項16または17に記載のディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2013−61645(P2013−61645A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−193474(P2012−193474)
【出願日】平成24年9月3日(2012.9.3)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung−ro,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】