説明

フォトニック結晶

【課題】 バックグラウンドノイズの発生を防止して高感度に光検出を行うことができるフォトニック結晶を提供する。
【解決手段】 所定の屈折率の媒質で構成される高屈折率部4と、高屈折率部4より屈折率の低い媒質で構成される低屈折率部5とによって周期的構造が形成されたフォトニック結晶1であって、高屈折率部4は、屈折率が二酸化ケイ素より高く、光の吸収スペクトルの吸収端が330nmより短波長側にある純物質または当該純物質を一部に含む化合物を含む低バックグラウンド発光材料を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトニック結晶に関し、特に、可視紫外光領域において低バックグラウンド発光を実現するフォトニック結晶に関する。
【背景技術】
【0002】
屈折率の異なる複数の材料が周期的に並んで構成されるフォトニック結晶が知られている。このようなフォトニック結晶を用いて、光検出、バイオ検出、各種分光、顕微分光等の高感度化を図ったり、フォトニック結晶を種々の光デバイスに適用することにより、高性能化を図ったりする研究が進められている。
【0003】
具体的には、フォトニック結晶に光を照射すると、フォトニック結晶内部や近傍で局所的に光強度が増大し、フォトニック結晶内部や近傍に存在する分子、量子ドット、半導体などの対象物に効率的に光を作用させることができる。また、フォトニック結晶を用いることにより、フォトニック結晶内部や近傍に存在する分子、量子ドット、半導体などの対象物からの発光、蛍光、光信号などを効率的に取り出すことができる。このように、フォトニック結晶を用いることにより、フォトニック結晶を介しないで光を対象物に照射した場合に比べて非常に強い光信号を分子、量子ドット、半導体などの対象物から検出することができる。
【0004】
ここで、フォトニック結晶の効果を向上させるためには、複数の材料間における屈折率差を高めるために、一方の材料として高屈折率材料(一般的に、屈折率が2より大きい材料)が用いられる。可視光領域におけるフォトニック結晶の高屈折率材料としてこれまで主に用いられてきた材料としては、二酸化チタン(TiO)や窒化シリコン(SiN)が挙げられる(二酸化チタンを採用したフォトニック結晶については、例えば非特許文献1,2参照、窒化シリコンを採用したフォトニック結晶については、例えば非特許文献3,4参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】NIKHIL GANESH, WEI ZHANG, PATRICK C. MATHIAS, EDMOND CHOW, J.A.N.T. SOARES, VIKTOR MALYARCHUK, ADAM D. SMITH AND BRIAN T. CUNNINGHAM,「Enhanced fluorescence emission from quantum dots on a photonic crystal surface」AUGUST 2007 nature nanotechnology VOL.2 pp.515-520
【非特許文献2】Anusha Pokhriyal, Meng Lu, Vikram Chaudhery, Cheng-Sheng Huang, Stephen Schulz, and Brian T. Cunningham,「Photonic crystal enhanced fluorescence using a quartz substrate to reduce limits of detection」22 November 2010 OPTICS EXPRESS No.24 Vol.18 pp.24793-24808
【非特許文献3】Xingsheng Xu, Toshiki Yamada, Rieko Ueda, and Akira Otomo,「Two-photon excited fluorescence from CdSe quantum dots on SiN photonic crystals」(2009) APPLIED PHYSICS LETTERS 95, 221113
【非特許文献4】Xingsheng Xu, Toshiki Yamada, Rieko Ueda, and Akira Otomo,「Dynamics of spontaneous emission from SiN with two-dimensional photonic crystals」(August 1, 2008) OPTICS LETTERS Vol. 33, No. 15 pp.1768-1770
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、各非特許文献でも指摘されているように、二酸化チタンや窒化シリコンを用いたフォトニック結晶においては、光を照射した際に、フォトニック結晶自体が発光する(バックグラウンド発光する)問題がある。バックグラウンド発光が生じると、光検出などを行う際に、そのバックグラウンド発光がバックグラウンドノイズとして重畳されてしまい、検出対象である分子、量子ドット、半導体などからの光検出が高感度で行えないという問題がある。特に、分子、量子ドット、半導体などの対象物の数が少ないか単一である場合や当該対象物からの発光、蛍光、光信号などの強度が小さい場合には、バックグラウンドノイズが相対的に大きくなり、光検出がより困難となる。
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決すべくなされたものであり、バックグラウンドノイズの発生を防止して高感度に光検出を行うことができるフォトニック結晶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある形態に係るフォトニック結晶は、所定の屈折率の媒質で構成される高屈折率部と、前記高屈折率部より屈折率の低い媒質で構成される低屈折率部とによって周期的構造が形成されたフォトニック結晶であって、前記高屈折率部は、屈折率が二酸化ケイ素より高く、光の吸収スペクトルの吸収端が330nmより短波長側にある純物質または当該純物質を一部に含む化合物を含む低バックグラウンド発光材料を有するものである。
【0009】
発明者らは、鋭意研究の末、光の透過特性と屈折率との関係から屈折率が二酸化ケイ素の屈折率より高く、しかも光の吸収スペクトルの吸収端が330nmより短波長側にある純物質または当該純物質を一部に含む化合物を含む材料を用いることにより、フォトニック結晶に光を照射した際に、フォトニック結晶自体が発光すること(バックグラウンド発光)が効果的に抑制できるという知見を得た。したがって、フォトニック結晶の高屈折率部としてこのような低バックグラウンド発光材料を用いることにより、バックグラウンドノイズの発生を防止して高感度に光検出を行うことができる。
【0010】
前記低バックグラウンド発光材料は、酸化物、フッ化物、ダイヤモンド、またはこれらのいずれかを一部に含む化合物を含んでもよい。
【0011】
前記低バックグラウンド発光材料は、タンタル、ハフニウムもしくはアルミニウムの酸化物、またはこれらの酸化物のいずれかを一部に含む化合物を含んでもよい。
【0012】
前記低バックグラウンド発光材料は、Taまたはこれを一部に含む化合物を含んでもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明は以上に説明したように構成され、バックグラウンドノイズの発生を防止して高感度に光検出を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は本発明の一実施形態に係るフォトニック結晶の構造例を示す模式図である。
【図2】図2は低バックグラウンド発光材料薄膜(Ta)における透過スペクトルを示すグラフである。
【図3】図3は低バックグラウンド発光材料薄膜における発光強度を示すグラフである。
【図4】図4は本実施形態のフォトニック結晶が用いられた光検出システムの例を示す模式図である。
【図5】図5は本実施形態のフォトニック結晶が用いられる光検出システムの他の例を示す模式図である。
【図6】図6は本発明の他の実施形態に係るフォトニック結晶の構造例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、本実施形態において「屈折率」は、特に記載がない限り、約550nmの波長を有する光が入射した場合の屈折率を示す。
【0016】
図1は本発明の一実施形態に係るフォトニック結晶の構造例を示す模式図である。図1(a)は斜視図であり、図1(b)は平面図である。図1(a)に示すように、本実施形態のフォトニック結晶1は、ガラス基板2上に、周期的構造部3が形成されることによって構成されている。周期的構造部3は、低バックグラウンド発光材料を含む高屈折率部4と、高屈折率部4より屈折率の低い媒質で構成される低屈折率部5とを含んでいる。本実施形態において、低屈折率部5は、図1に示すように、層状の高屈折率部4に所定のパターンで穴を開けることにより形成した空孔により構成されている。すなわち、低屈折率部5は、空気層(屈折率:約1.0)である。本実施形態においては、一平面において高屈折率部4と低屈折率部5とが周期的構造を有している二次元のフォトニック結晶を例示している。
【0017】
なお、本実施形態においては、図1(b)に示すように、低屈折率部5は、平面視において複数の筒状の空孔が三角格子状に配列するように形成されているが、本発明はこれに限られない。例えば複数の空孔が正方格子状、蜂の巣格子状等の様々な格子状に配列するように形成されてもよく、空孔の形状も、角柱など種々の形状を採用できる。
【0018】
高屈折率部4は、低屈折率部5より高い屈折率を有する材料が用いられるが、上述したとおり、フォトニック結晶の高屈折率材料として一般的な二酸化チタン(TiO、屈折率:約2.3−2.55)や窒化シリコン(SiN、屈折率:約2.0)を用いると、光をフォトニック結晶に照射した際に、フォトニック結晶自体が発光する(バックグラウンド発光する)。バックグラウンド発光すると、光検出などを行う際に、そのバックグラウンド発光がバックグラウンドノイズとして重畳されてしまい、検出対象である分子、量子ドット、半導体などからの光検出が高感度で行えないという問題がある。
【0019】
この問題に対し、発明者らは、鋭意研究の末、光の透過特性と屈折率との関係から屈折率が二酸化ケイ素(SiO)の屈折率より高く、しかも光の吸収スペクトルの吸収端が330nmより短波長側にある純物質を含む材料を用いることにより、フォトニック結晶に光を照射した際に、フォトニック結晶自体が発光すること(バックグラウンド発光)が効果的に抑制できるという知見を得た。したがって、フォトニック結晶の高屈折率材料としてこのような低バックグラウンド発光材料を用いることにより、バックグラウンドノイズの発生を防止して高感度に光検出を行うことができる。なお、本実施形態における光の吸収スペクトルの吸収端とは、光の透過スペクトルにおいて透過率が0から立ち上がる波長を意味する。図2は低バックグラウンド発光材料薄膜(Ta薄膜)における透過スペクトルを示すグラフである。図2に示すように、例えばTaに関しては、光(可視から紫外の領域の光)の透過スペクトルにおいて透過率が0から立ち上がる波長は約240nmであり、本明細書においてはこの値をTaの吸収端として扱っている。
【0020】
このような条件を満たす低バックグラウンド発光材料は、酸化物、フッ化物、ダイヤモンドを含んでもよいし、これらのいずれかを一部に含む化合物を含んでもよい。「一部に含む」とは、酸化物などの一部が別の元素または置換基と置換した化合物をも含む。酸化物の具体例としては、例えば、タンタル、ハフニウムまたはアルミニウムの酸化物(例えば、Ta,HfO,Alなど)が考えられる。これらの酸化物のいずれかを一部に含む化合物(例えば、ポリマーやその他の化合物)を含んでもよい。また、フッ化物の具体例としては、例えば、ランタンのフッ化物(例えばLaFなど)が考えられる。
【0021】
上記で例示した各物質の屈折率および光の吸収スペクトルの吸収端を二酸化ケイ素と比較した表を以下に示す。
【0022】
【表1】

上記表に示すように、従来から一般に用いられる二酸化チタン(TiO)は、二酸化ケイ素(SiO)よりも高い屈折率を有するものの光の吸収スペクトルの吸収端が330nmよりも高波長側に位置し、バックグラウンド発光が生じ易いと考えられる。これに対し、五酸化タンタル(Ta),酸化ハフニウム(HfO),アルミナ(Al),ダイヤモンド(C),フッ化ランタン(LaF)はいずれも光の吸収スペクトルの吸収端が330nmよりも短波長側に位置し、バックグラウンド発光が生じ難いと考えられる。
【0023】
図3は低バックグラウンド発光材料薄膜における発光強度を示すグラフである。図3においてはガラス基板2(図3においてはカバーガラス(cg)と表記)として標準的な洗浄方法を用いて十分に洗浄した(例えば、水酸化ナトリウム水溶液及び紫外線オゾンクリーナを用いて洗浄した)ホウケイ酸ガラス(屈折率1.53)を用い、当該ガラス基板2上に低バックグラウンド発光材料として五酸化タンタル(Ta)、酸化ハフニウム(HfO)の薄膜(スラブ)をそれぞれ形成したのちに炉を用いてアニールした各試料、およびアルミナ(Al)基板に、レーザ光を照射した際の励起レーザ強度依存性を示している。図2の例においては、波長488nm、パルス幅1ps、周波数8MHzのレーザ光により低バックグラウンド発光材料を励起し、発光を光電子増倍管にて検出した。比較例として、カバーガラスのみのもの、および、従来から一般に用いられる窒化シリコン(SiN)の薄膜(シリコン基板上に形成)についても同様のレーザ光照射を行い、励起レーザ強度依存性を確認した。
【0024】
図3に示すように、窒化シリコン薄膜においてはレーザ光照射に対する発光強度が高く、バックグラウンド発光が生じ易いことが示された。これに対し、五酸化タンタル、酸化ハフニウム、アルミナの各薄膜においてはいずれもレーザ光照射に対する発光強度が窒化シリコンを用いたフォトニック結晶に比べて格段に低く、カバーガラスのみにレーザ光を照射した場合と遜色ない低発光性が得られていることが示された。
【0025】
次に、本実施形態におけるフォトニック結晶の製造方法について説明する。ここでは、低バックグラウンド発光材料として五酸化タンタルを用いた例について説明する。まず、ガラス基板2をアセトン、水酸化ナトリウム溶液および紫外線オゾンクリーナを用いて洗浄する。そして、ガラス基板2上に、電子ビーム蒸着を用いて所定の厚みの五酸化タンタルの薄膜(スラブ)を形成する。その後、形成された五酸化タンタル薄膜上に電子ビームレジストを塗布し、電子ビームリソグラフィにより所定のパターン(例えば図1(b)に示すようなパターン)を描画する。その上で、CHFプラズマを用いたドライプロセスにおいて反応性イオンエッチングを行い、パターン(空孔)を形成する。
【0026】
パターン形成後、電子ビームレジストを除去し、その後、酸素プラズマによるクリーニング、紫外線オゾンクリーニングおよび炉を用いてアニール(例えば、酸素雰囲気下において600℃にアニール)する。これらの処理により反応性イオンエッチングにより生じた発光性の汚染物質を除去するとともに、五酸化タンタル薄膜における酸素欠陥を除去することができるため、バックグラウンド発光をより低減させることができる。
【0027】
このような方法により、五酸化タンタルを含む高屈折率部4と空孔内の空気による低屈折率部5とが平面上で周期的に配列された周期的構造部3がガラス基板2上に形成される。なお、本実施形態においては上記のような方法でフォトニック結晶を製造する例を説明したが、上記のような低バックグラウンド発光材料を用いた高屈折率部4とそれより屈折率の低い低屈折率部5とが周期的に配列されるような周期的構造部3が形成される限り本発明はこれに限られない。
【0028】
次に、本実施形態におけるフォトニック結晶の利用方法について例示する。図4は本実施形態のフォトニック結晶が用いられた光検出システムの例を示す模式図である。
【0029】
図4に示すように、本例における光検出システムは、図1に示すようなフォトニック結晶1に光源(レーザ光源)11からの入射光(レーザ光)L1が入射され、フォトニック結晶1付近に存在する検出対象物m(例えば分子、生体分子、量子ドット、半導体など)の蛍光または検出対象物mからのラマン散乱光を検出光L2として光検出器16で検出するように構成されている。具体的には、フォトニック結晶1と光検出器16との間の光経路には、フォトニック結晶1へ入射光L1を照射し、検出光L2を集光する対物レンズ12と、入射光L1を反射し、検出光L2を透過するダイクロイックミラー13と、検出光L2をフィルタリングするエッジフィルタ14と、検出光L2を分光する分光器15とが設けられている。光検出器16は例えばアバランシェフォトダイオード(APD)、光電子増倍管(PMT)、CCDなどが適用可能である。
【0030】
このような光検出システムにおいて、上記フォトニック結晶1を用いることにより、検出対象物mからの微弱な検出光L2をフォトニック結晶1により強めて光検出器16に伝えることができるとともに、フォトニック結晶1自身の発光(バックグラウンド発光)が抑えられるため、より高感度の光検出を行うことができる。したがって、蛍光色素や量子ドットなどでラベルした生体関連分子などの蛍光などを用いたバイオ検出や、ナノ材料などの様々な材料からのラマン散乱光の高感度な検出を行うことができる。なお、検出光L2としては、上記の蛍光、ラマン散乱光の他、レイリー散乱光、高次高調波光などであってもよい。このように様々な検出光L2を検出する際にも上記フォトニック結晶1を用いることにより、例えば顕微鏡分光法などの様々な分光法における微弱な光信号の検出を高感度に行うことができる。さらに、光通信や量子エレクトロニクス分野における光デバイスおよびレーザの高効率化および低ノイズ化などを実現することができる。
【0031】
なお、本例における光検出システムにおいては、フォトニック結晶1の外部に光源11および光検出器16が設けられている構成について説明したが、本発明はこれに限られない。図5は本実施形態のフォトニック結晶が用いられる光検出システムの他の例を示す模式図である。
【0032】
図5(a)は、図4の例と同様に、フォトニック結晶1の外部に光源11および光検出器16が設けられている。図5(b)に示す例においては、フォトニック結晶1bの内部に光源11bが設けられている。図5(c)に示す例においては、フォトニック結晶1cの内部に光源11cおよび光検出器16cが設けられている。図5(b)および図5(c)に示すように、光源および/または光検出器をフォトニック結晶の内部に設けることにより光源および/または光検出器とフォトニック結晶との間の光経路において入射光L1および/または検出光L2の減衰や散乱などを防止することができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。
【0034】
例えば、上記実施形態においては、低屈折率部5として空孔(空気)を用いたが、高屈折率部4より低い屈折率を有する材料(固体、液体、気体)を用いる限り、これに限られない。また、上記実施形態においては、周期的構造部3をガラス基板2上に形成することとしたが、周期的構造部3が形成される限り、石英など他の材料を用いた一層または複数層の基板を用いてもよいし、基板を設けなくてもよい。また、周期的構造部3の上面(ガラス基板2が接するのとは反対側の面)にガラス基板などの層を設けることとしてもよい。
【0035】
図6は本発明の他の実施形態に係るフォトニック結晶の構造例を示す模式図である。例えば、図6(a)は、図1に示す周期的構造部3において低屈折率部5と高屈折率部4とが入れ替わった構造を示している。すなわち、図6(a)の例においては、低屈折率部5aに円柱形状の高屈折率部4aが周期的に配置されるように形成された周期的構造3aが設けられている。このような構造でも上記で説明した本発明の効果を奏する。また、図6(b)は、図1に示す周期的構造部3の一部に欠陥構造を有する構造を示している。すなわち、図6(b)の例は、周期的構造部3bにおいて、低屈折率部5bを構成する複数の円柱形状(図1の例においては空孔)のうち大きさが他とは異なる欠陥構造17を有していたり、複数の円柱形状のいくつかが欠損した欠陥構造17−2を有していたり、円柱形状の一部が周期的配列からずれた欠陥構造17−3を有している。このように、フォトニック結晶の周期的構造部の一部において図6(b)で例示するような欠陥構造およびその他の欠陥構造を有していても上記で説明した本発明の効果を奏する。また、図6(a)に示すような構成において欠陥構造を有していてもよい。
【0036】
さらに、本実施形態においては、周期的構造部3において面上に周期的構造が形成された二次元のフォトニック結晶1について説明したが、一次元のフォトニック結晶でもよいし、三次元のフォトニック結晶でもよい。なお、一次元のフォトニック結晶には、ガラスなどの基板上に低バックグラウンド発光材料を含む高屈折率層を一層以上形成したものも含まれる。このようなフォトニック結晶は、全反射蛍光顕微鏡のための基板として利用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のフォトニック結晶は、バックグラウンドノイズの発生を防止して高感度に光検出を行うために有用である。
【符号の説明】
【0038】
1,1b,1c フォトニック結晶
2 ガラス基板
3 周期的構造部
4 高屈折率部
5 低屈折率部
11,11b,11c 光源
12 対物レンズ
13 ダイクロイックミラー
14 エッジフィルタ
15 分光器
16,16c 光検出器
17,17−2,17−3 欠陥構造


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の屈折率の媒質で構成される高屈折率部と、前記高屈折率部より屈折率の低い媒質で構成される低屈折率部とによって周期的構造が形成されたフォトニック結晶であって、
前記高屈折率部は、屈折率が二酸化ケイ素より高く、光の吸収スペクトルの吸収端が330nmより短波長側にある純物質または当該純物質を一部に含む化合物を含む低バックグラウンド発光材料を有する、フォトニック結晶。
【請求項2】
前記低バックグラウンド発光材料は、酸化物、フッ化物、ダイヤモンド、またはこれらのいずれかを一部に含む化合物を含んでいる、請求項1に記載のフォトニック結晶。
【請求項3】
前記低バックグラウンド発光材料は、タンタル、ハフニウムもしくはアルミニウムの酸化物、またはこれらの酸化物のいずれかを一部に含む化合物を含んでいる、請求項1に記載のフォトニック結晶。
【請求項4】
前記低バックグラウンド発光材料は、Taまたはこれを一部に含む化合物を含む、請求項1に記載のフォトニック結晶。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−185217(P2012−185217A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46586(P2011−46586)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 掲載日 平成23年1月17日 ホームページのアドレス http://www.opticsinfobase.org/oe/abstract.cfm?URI=oe−19−2−1422 研究集会名 第9回ナノ分子エレクトロニクス国際会議 主催者名 独立行政法人情報通信研究機構 宮原 秀夫 公開日 平成22年12月14日
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)