説明

フォトマスク、フォトマスクの再加工方法、及びレジストパターンの形成方法

【課題】フォトマスク面内での露光光の照度にムラがある場合でも、ウエハ上のレジスト線幅の細りや膜減りが生じるのを回避できるフォトマスクを得る。
【解決手段】露光パターンを感光性材料に転写するためのフォトマスク100において、ガラス基板などの透明基板101と、該透明基板上に、該露光パターンを有する光透過領域が形成されるよう選択的に形成されたクロムなどの遮光膜10とを備え、該遮光膜10を、レジストパターン欠陥が検出されたウエハ上領域に対応するマスク領域A内の遮光膜20aの膜厚が、レジストパターン欠陥が検出されなかったウエハ領域に対応するマスク領域B内の遮光膜10bの膜厚に対して厚くなるように再加工したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスク、フォトマスクの再加工方法、及びレジストパターンの形成方法に関し、特に、半導体ウエハ上に形成されるレジストパターンのレジスト線幅を調整するためのフォトマスクの構造及びフォトマスクの再加工方法、並びに、このようなフォトマスクの構造及びフォトマスクの再加工方法を用いたレジストパターンの形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造においては、設計されたLSI(Large Scale Integrated Circuit)の集積回路パターンをEB(Electron Beam)描画プロセスを用いてフォトマスク(レチクル)上に作製し、このレチクルを用いてシリコンウエハ基板上に塗布されたフォトレジストに短波長の光(ArF,KrF,i線,etc)を露光して、上記集積回路パターンを転写する光リソグラフィ技術が用いられている。
【0003】
最近では、フォトレジストの露光を行うシステムとして、ステッパ、スキャナなどの縮小型投影露光装置(露光装置)が用いられる。
【0004】
この露光装置の性能の重要な要素のひとつとして、スループットが挙げられる。それは、実際の半導体製造においては、絶縁層や半導体層を20層以上形成する複雑な工程が必要であるため、生産能力が高いパフォーマンスが要求されるからである。
【0005】
露光装置のスループット向上を目的として、フォトマスクに載せるLSIのチップ数はできるだけ多く、すなわち、露光ショット面積(つまり、1回の露光により露光パターンが形成されるウエハ上での面積)ができるだけ大きくなるようにしている。
【0006】
露光ショット面積が大きいと、ウエハ1枚当たりの露光ショット回数が少なくなるため、ウエハ1枚当たりの露光装置の処理時間が短くなる。
【0007】
しかしながら、この露光ショット面積が大きくなると、露光装置の照度ムラの影響が大きくなる。例えば、露光ショット内の端部の領域で照度が大きい場合には、露光ショット内の端部の領域で露光光の光強度が大きくなり、ウエハ上のレジスト線幅の細りや膜減りが生じ、レジストパターンの欠陥が発生してしまう。
【0008】
このようなレジスト線幅の細りや膜減りが生じる場合の対応策としては、フォトマスクを再作製し、露光ショット内の端部のみ線幅を補正する手法や、露光装置の照度ムラをレンズフィルタで改善する手法がある。
【0009】
ところで、フォトマスクを再作製し、露光領域内について部分的にマスク線幅を補正する手法については、一例として、特許文献1に記述されている。
【0010】
また、露光装置の照度ムラをレンズフィルタで改善する手法は、一例として、特許文献2に記述されている。
【0011】
しかしながら、フォトマスクの作成し直しは、材料コストが多大で再作製の期間が長く、生産がストップしてしまうデメリットがあり、露光装置のレンズフィルタの改善も同じく、改造費の負担が多大で、改造期間中は生産がストップしてしまうデメリットが生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−365787号公報
【特許文献2】国際公開第99/36832号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したように、半導体製造における露光装置のスループットを向上させるために、フォトマスクに載せるLSIのチップ数を多くすると、露光装置の照度ムラが大きい場合に生じる露光光の照度が大きい領域でレジスト線幅細りや膜減りによりレジストパターン欠陥が発生してしまう。
【0014】
具体的には、図9のようなマスク面内のLSIチップの配置で露光転写を行い、露光光の照度がマスク面内の左上で大きい場合に、図10に示すようなレジスト欠陥の分布ができてしまう。なお、図9及び10中、Lは、マスク内のLSIチップ領域、Sは、露光光が照射されるマスク内の露光ショット領域、Mは、マスクアライメントマーク、Nは露光の際ブラインドされる露光時ブラインド領域である。また、LLは、ウエハ内のLSIチップ領域、SSは、ウエハ内で1ショットの露光領域、Xは、ウエハ上で欠陥が検出された場所を示している。
【0015】
上記のように、フォトマスク面内の左上の領域で露光光の照度が大きい場合にレジスト欠陥の分布ができてしまうのは、露光ショット内の左上の領域で露光光の光強度が大きくなり、ウエハ上のレジスト線幅の細りや膜減りが生じてしまうからである。
【0016】
また、このようなレジスト線幅の細りや膜減りが生じる場合の対応策としては、特許文献1に開示のフォトマスクを再作製する方法、さらに、特許文献2に開示の、露光装置の照度ムラをレンズフィルタで改善する手法があるが、いずれも多大な費用がかかり、またフォトマスクの再作製の間や、露光装置の改造期間中は生産がストップしてしまうという問題がある。
【0017】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、フォトマスク面内での露光光の照度にムラがある場合でも、ウエハ上のレジスト線幅の細りや膜減りが生じるのを回避できるフォトマスク、フォトマスクの再加工方法、および、レジストパターンの形成方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係るフォトマスクは、露光パターンを感光性材料に転写するためのフォトマスクであって、透明基板と、該透明基板上に、該露光パターンを有する光透過領域が形成されるよう選択的に形成された遮光膜とを備え、該遮光膜は、膜厚の薄い薄膜部分と、膜厚の厚い厚膜部分とを含むよう、該遮光膜を構成する遮光材料の一部を選択的にエッチングした構造を有するものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0019】
本発明は、上記フォトマスクにおいて、前記透明基板は、ガラス及び石英の中から選択した材料により構成されていることが好ましい。
【0020】
本発明は、上記フォトマスクにおいて、前記遮光膜の薄膜部分の膜厚は、60〜110nmの範囲の膜厚であることが好ましい。
【0021】
本発明は、上記フォトマスクにおいて、前記遮光膜の厚膜部分の膜厚は、110nm以上の膜厚であることが好ましい。
【0022】
本発明は、上記フォトマスクにおいて、前記遮光膜は、Cr(クロム)、CrO(酸化クロム)、CrF(クロムフォロライド)の中から選択した材料により構成されていることが好ましい。
【0023】
本発明は、上記フォトマスクにおいて、前記遮光膜を構成する遮光材料の光透過率は1%以下であることが好ましい。
【0024】
本発明に係るフォトマスクの再加工方法は、透明基板上に遮光膜を選択的に形成してなる構造を有する、露光パターンを感光性材料に転写するためのフォトマスクを再加工する方法であって、該露光パターンを該感光性材料に転写したときの欠陥が発生しない正常領域を示すフォトマスク作製用レイアウトデータを作成するステップと、該フォトマスク作製用レイアウトデータを用いて描画と現像とを行って、該フォトマスク上にレジストパターンを形成するステップと、該レジストパターンをマスクとして、該正常領域の遮光膜を、該露光パターンを該感光性材料に転写したときの欠陥が発生する欠陥領域での遮光膜の膜厚が、該正常領域での遮光膜の膜厚に対して厚くなるようエッチングするステップとを含むものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0025】
本発明は、上記フォトマスクの再加工方法において、前記透明基板は、ガラス及び石英の中から選択した材料により構成されており、前記遮光膜は、Cr(クロム)、CrO(酸化クロム)、CrF(クロムフォロライド)の中から選択した材料により構成されていることが好ましい。
【0026】
本発明は、上記フォトマスクの再加工方法において、前記遮光膜の正常領域での膜厚は、60〜110nmの範囲の膜厚であり、前記遮光膜の欠陥領域での膜厚は、110nm以上の膜厚であることが好ましい。
【0027】
本発明は、上記フォトマスクの再加工方法において、前記露光パターンが転写された感光性材料は、ウエハ上に形成された、該露光パターンに対応した平面パターンを有するレジスト膜であり、前記欠陥領域は、該ウエハ上のレジスト膜の線幅細りあるいは膜減りが発生する領域に対応し、前記正常領域は、該ウエハ上のレジスト膜の線幅細り及び膜減りのいずれも発生しない領域に対応し、前記遮光膜は、前記エッチングを行うステップで、前記フォトマスク上に形成されたレジスト膜をエッチングマスクとして、その欠陥領域における膜厚が、その正常領域における膜厚より厚くなるよう、ドライエッチングされることが好ましい。
【0028】
本発明に係るレジストパターンの形成方法は、半導体ウエハ上にレジストパターンを形成する方法であって、所定の露光パターンを有するフォトマスクを用いて、該半導体ウエハ基板上に形成されたレジスト膜を露光するステップと、該露光したレジスト膜を現像して、該レジストパターンを形成するステップとを含み、該フォトマスクとして、透明基板上に該露光パターンを有する遮光膜を形成してなる構造を有し、該遮光膜を、該レジストパターンの欠陥が発生する領域に対応する部分での膜厚が、該レジストパターンの欠陥が発生しない領域に対応する部分での膜厚より厚くなるよう、エッチング処理により再加工したものを用いるものであり、そのことにより上記目的が達成される。
【0029】
本発明は、上記レジストパターンの形成方法において、前記レジスト膜の露光に用いるフォトマスクの遮光膜の厚さにより、前記半導体ウエハ上に形成されるレジストパターンのレジスト線幅を調整することが好ましい。
【0030】
以下、本発明の作用について説明する。
【0031】
本発明においては、露光パターンをレジストなどの感光性材料に転写するためのフォトマスクにおいて、遮光膜を、膜厚の薄い薄膜部分と、膜厚の厚い厚膜部分とを含むよう、該遮光膜を構成する遮光材料の一部を選択的にエッチングした構造としたので、フォトマスクを用いた露光処理の際、露光強度を、遮光膜の膜厚の薄い薄膜部分の厚さに適した強度に低下させることで、遮光膜の膜厚の厚い厚膜部分に対応するウエハ領域上で生じていたレジストパターンの線幅の細りや膜減りを回避することができ、しかも、遮光膜の膜厚の薄い薄膜部分では、感光性材料に対する十分な露光強度を確保することができる。この結果、フォトマスク面内での露光光の照度にムラがある場合でも、ウエハ上のレジスト線幅の細りや膜減りが生じるのを回避できる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、フォトマスクにおいて、露光装置の照度ムラにより生じた露光光の光強度が大きい領域でのレジスト線幅細りや膜減りの欠陥が検出されたウエハ上の領域に対応するマスク領域の遮光膜の膜厚が、欠陥が検出されなかった領域の遮光膜の膜厚に対して厚くなるように、マスク構造を変更するので、照度ムラによりレジストパターン欠陥が発生するのを回避することができる。
【0033】
また、本発明によれば、露光装置ごとに、上述した本発明によるフォトマスクを個別に作製することで、露光装置間での照度ムラの差の補正が可能となる。
【0034】
さらに、本発明では、フォトマスクにおいて、遮光膜を、膜厚の薄い薄膜部分と、膜厚の厚い厚膜部分とを含むよう、該遮光膜を構成する遮光材料の一部を選択的にエッチングした構造としているので、既に使用しているフォトマスクをリワーク(再加工)するだけで、レジストパターンの線細りや膜減りを回避でき、フォトマスクの露光パターンの出し直しや露光装置の改造の必要が無く、コスト負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、本発明の実施形態1によるフォトマスクを説明する図であり、図1(a)は、平面図、図1(b)は、図1(a)のSE線部分の断面図である。
【図2】図2は、本実施形態1のフォトマスク(図2(a))と従来のフォトマスク(図2(b))とを対比して説明する平面図である。
【図3】図3は、本実施形態1のフォトマスク(図3(a))と従来のフォトマスク(図3(b))とを対比して説明する断面図であり、図3(a)は、図2(a)のSE線部分の断面構造を示し、図3(b)は、図2(b)のSE線部分の断面構造を示している。
【図4】図4は、本発明の実施形態1によるフォトマスクを用いた場合のレジストパターン(図4(a))と従来のフォトマスクを用いた場合のレジストパターン(図4(b))とを対比して説明する断面図であり、図4(a)は、図2(a)のSE線部分に対応する断面構造を示し、図4(b)は、図2(b)のSE線部分に対応する断面構造を示している。
【図5】図5は、本発明の実施形態1によるフォトマスクの再加工方法を説明する図であり、マスク面D内での欠陥領域と正常領域とを示している。
【図6】図6は、本発明の実施形態1によるフォトマスクの再加工方法を説明する図であり、遮光膜厚とウエハ上のレジスト線幅との関係を示す図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態1によるフォトマスクの再加工方法を説明する図であり、フォトマスク面内における再加工領域のレイアウトを示している。
【図8】図8は、本発明の実施形態1によるフォトマスクの再加工方法を説明する図であり、既存のフォトマスクに対する再加工処理を工程順(図(a)〜図(f))に示している。
【図9】図9は、フォトマスク面内でのLSIチップの配列を示す図である。
【図10】図10は、ウエハ面上でのレジスト欠陥分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0037】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1によるフォトマスクを説明する図であり、図1(a)は、平面図、図1(b)は図1(a)のSE線部分の断面図である。
【0038】
本実施形態1のフォトマスク(レチクル)100は、露光パターンを感光性材料(例えばレジスト材料など)に転写するためのフォトマスクである。このフォトマスク100は、透明基板101と、該透明基板上に、該露光パターンを有する光透過領域が形成されるよう選択的に形成された遮光膜10とを備えている。この遮光膜10は、膜厚の薄い薄膜部分10bと、膜厚の厚い厚膜部分20aとを含むよう、該遮光膜を構成する遮光材料の一部を選択的にエッチングした構造を有している。
【0039】
具体的には、フォトマスク100の領域Aは、従来のフォトマスクにおける、ウエハ上でレジストパターンの膜減りが生ずる領域A’(図4(b))に相等する領域であり、フォトマスク100の領域Bは、既存のフォトマスクにおける、ウエハ上でレジストパターンの膜減りが生じない領域B’(図4(b))に相等する領域である。
【0040】
以下、図2〜図4を用いて本実施形態1のフォトマスクについて詳しく説明する。
【0041】
図2は、本実施形態1のフォトマスク(図2(a))と従来のフォトマスク(図2(b))とを対比して説明する平面図である。
【0042】
図3は、本実施形態1のフォトマスク(図3(a))と従来のフォトマスク(図3(b))とを対比して説明する断面図であり、図3(a)は、図2(a)のSE線部分の断面構造を示し、図3(b)は、図2(b)のSE線部分の断面構造を示している。
【0043】
図4は、本発明の実施形態1によるフォトマスクを用いた場合のレジストパターン(図4(a))と従来のフォトマスクを用いた場合のレジストパターン(図4(b))とを対比して説明する断面図であり、図4(a)は、図2(a)のSE線部分に対応する断面構造を示し、図4(b)は、図2(b)のSE線部分に対応する断面構造を示している。
【0044】
この実施形態1のフォトマスク100は、既存のフォトマスク200(図2(b)及び図3(b))に対する再加工処理を施したものである。
【0045】
従来のフォトマスク200では、透明基板101上に選択的に形成されている遮光膜20は、図3(b)に示すように、ウエハ上でレジストパターンの膜減りが生ずる領域に対応する領域Aと、ウエハ上でレジストパターンの膜減りが生じない領域に対応する領域Bとに拘わらず、いずれの領域A及びB上の遮光膜20a及び20bも同一の厚さである。
【0046】
このようなフォトマスク200では、図9に示すフォトマスク面内のLSIチップ領域Lの配置で露光転写を行い、露光光の照度がマスク面内の左上で大きい場合に、図10に示すようなレジスト欠陥の分布となってしまう。これは、フォトマスク面内の左上の領域で露光光の照度が大きい場合には、露光ショット内の左上の領域で露光光の光強度が大きくなり、ウエハ上のレジスト線幅の細りや膜減りが生じてしまうからである。
【0047】
そこで、この実施形態1のフォトマスク100は、欠陥が検出されたウエハ上の領域A’に対応するフォトマスク上の領域Aでの遮光膜20aの膜厚が、欠陥が検出されなかったウエハ上の領域B’に対応するフォトマスク上の領域Bでの遮光膜10bの膜厚に対して厚くなるよう、従来のフォトマスクを再加工したフォトマスク構造(新規のマスク構造)を有している。
【0048】
つまり、新規のマスク構造は、ウエハ上でレジスト欠陥が発生する領域に対応するマスク領域Aでの遮光膜の膜厚が、ウエハ上でレジスト欠陥が発生しない領域に対応するマスク領域Bでの遮光膜の膜厚に対して、より厚いフォトマスク構造になっている。
【0049】
このフォトマスク構造では、従来ウエハ上でレジスト欠陥が発生していた領域に対応するマスク領域の遮光膜の膜厚が厚く制御されているので、ウエハ上に転写されるレジストの構造は、図4(a)に示すように、フォトマスク面内の左上の領域で露光光の照度が大きい場合でも、露光ショット内の左上の領域で露光光の光強度が小さく制御され、ウエハ上のレジスト線幅の細りや膜減りが生じない。
【0050】
また、上記透明基板101は、ArF,KrF,i線露光に対する透過率が90%以上である、ガラス、石英、の中から選択された材料で構成されている。
【0051】
また、上記マスク領域Bでの遮光膜10bの膜厚は、遮光膜のピンホール欠陥の発生がなく、かつ、露光転写後のレジスト線幅が変動する60〜110nmの範囲の膜厚としている。
【0052】
また、上記マスク領域Aの遮光膜10aの膜厚は、遮光膜のピンホール欠陥の発生がなく、かつ、露光転写後のレジスト線幅が変動しない、110nm以上の膜厚としている。
【0053】
さらに、上記遮光膜は、十分な遮光性能を満たすよう透過率として1%以下の遮光材料を用いており、具体的には、Cr(クロム)、CrO(酸化クロム)、CrF(クロムフォロライド)の中から選択した材料により構成されている。
【0054】
次に、上述の従来構造のフォトマスク200を新規構造のフォトマスク100へ変更する方法を以下に説明する。
【0055】
以下の説明では、電子線(EB)描画手法を用いた場合について記述する。本手法では光描画手法を用いてもかまわない。したがって、EBレジストではなくフォトレジストを用いてもかまわない。
【0056】
電子線(EB)描画に使用するレイアウトデータ(CADデータ)としては、フォトマスクの、ウエハ上で線幅細りが発生する領域に対応する部分、もしくは、フォトマスクの、ウエハ上で線細りが発生しない領域に対応する部分を選択的に加工可能なマスク作製用レイアウトを示すレイアウトデータを用いる。
【0057】
例えば、図5に示すように、フォトマスク(レチクル)の遮光膜をレイアウトした領域Dを、ウエハ上で欠陥が検出された領域に対応する部分DNと、ウエハ上で欠陥が検出されていない領域に対応する部分DYとの2つの領域に分ける。
【0058】
ここで、ウエハ上で欠陥が検出された領域に対応する部分DNと、ウエハ上で欠陥が検出されていない領域に対応する部分DYとは、同じ従来のフォトマスクを用いて露光強度を変えてレジストを露光することで決定することができる。つまり、露光強度が弱い場合は、露光装置に起因する照度ムラはレジスト膜にはあまり反映されないのに対し、露光強度が強い場合は、露光装置に起因する照度ムラはレジスト膜には顕著に反映される。このため、露光強度が弱い場合のレジスト線幅と、露光強度が強い場合のレジスト線幅とを、フォトマスク面内の各チップ領域で比較した結果得られる線幅の変化が大きい領域が、ウエハ上でのレジスト欠陥領域になる。
【0059】
また、マスク構造を変更するリワークフロー(再加工フロー)で用いるEBレジストがポジ型である場合、EBレジストに対するEB照射パターンのレイアウトとして、フォトマスクの、欠陥が検出されていない領域での遮光膜の厚さを薄くするためのEBレジストの開口部を作れるように、図7に示すEB照射パターンLBのようなレイアウトを作成する。
【0060】
一方、マスク構造を変更するリワークフロー(再加工フロー)で用いるEBレジストがネガ型である場合、EBレジストに対するEB照射パターンのレイアウトとして、フォトマスクの、欠陥が検出されていない領域での遮光膜の厚さを薄くするためのEBレジストの開口部を作れるように、図7に示すEB照射パターンLAのようなレイアウトを作成する。
【0061】
図8は、本発明の実施形態1によるフォトマスクの再加工方法を説明する図であり、既存のフォトマスクに対する再加工処理を工程順(図(a)〜図(f))に示している。
【0062】
まず、図8(a)に示すように、従来のマスク構造を有するフォトマスク20は、ウエハ上でレジスト欠陥が発生する領域に対応するフォトマスク上の領域(フォトマスク内領域)Aでの遮光膜20aの膜厚と、ウエハ上でレジスト欠陥が発生しない領域に対応するフォトマスク上の領域(フォトマスク内領域)Bでの遮光膜20bの膜厚とが、同じ膜厚になっている。
【0063】
この従来のフォトマスク20上に、図8(b)に示すように、ポジレジストであるEBレジストREを塗布する。
【0064】
その後、図8(c)に示すように、ウエハ上で欠陥が検出されていない領域に対応するフォトマスク内領域B上のEBレジスト部分に電子ビームEを照射する。
【0065】
続いて、図8(d)に示すように、現像液を用いて、電子ビームEを照射したEBレジスト部分REbが除去されて遮光膜層の一部が露出するようEBレジストREを加工する。
【0066】
なお、この実施形態では、上述のとおり、フォトマスク上に遮光膜加工のためのフォトレジスト層を形成する方法として、ウエハ上のレジストパターンの線幅細りが発生する領域のレイアウトデータLA(図7)、もしくは、ウエハ上のレジストパターンの線幅細りが発生しない領域のレイアウトデータLB(図7)を用い、このレイアウトデータに基づいた描画と現像によりフォトマスク上にレジストパターンを形成する手法を用いている。
【0067】
その後、平行平板型の反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching)装置等を用いたドライエッチングを、残ったレジストマスクREaをエッチングマスクとして行い、フォトマスク内領域B上の遮光膜20bが、60〜110nmの厚さの遮光膜10bになるように、遮光膜のエッチング加工を行う(図9(e))。
【0068】
上記エッチング加工で決定される遮光膜の厚さと、ウエハ上のレジスト線幅との関係を図6に示す。
【0069】
図6には、横軸に遮光膜の厚さ(nm)をとり、縦軸にレジスト線幅(nm)をとって、レジスト線幅と、レジスト線幅と遮光膜厚との関係を示している。
【0070】
ここでは、遮光膜の厚さが110nmである通常のフォトマスクに対して、遮光膜の厚さを60nmに薄くした薄膜のフォトマスクでは、目標レジスト幅Tが約100nm細ることを示している。なお、遮光膜の厚さは、遮光膜にピンホールが発生するため、60nmよりあまり薄くできない。
【0071】
つまり、この図6からは、遮光膜の厚さが薄いほどウエハ上のレジスト線幅が細くできることがわかる。
【0072】
そこで、このような特性を利用して、線幅細りやレジスト膜減りの欠陥を無くすことができる。
【0073】
なお、ここでは、上述のとおり、ウエハ上のレジストパターンの線幅細りが発生する領域に対応するマスク内領域、もしくは、ウエハ上のレジストパターンの線幅細りが発生しない領域に対応するマスク内領域を示すレイアウトデータを用いて描画と現像を行って得られた、フォトマスク上のレジストパターンをマスクとして用いて、遮光膜のドライエッチング処理を行い、レジストパターンの線幅細りが発生するフォトマスク内領域の遮光膜の膜厚が、線幅細りが発生しないフォトマスク内領域の遮光膜の膜厚に対して厚くなるようにする、遮光膜パターンの加工法を用いている。
【0074】
図8(e)に示すように、フォトマスク内領域B上の遮光膜20bをエッチングにより膜厚の薄い遮光膜10bに変化させた後、EBレジストREaを剥離し、図8(f)に示すような形状に加工する。
【0075】
ここで、EBレジストREの剥離液としては、硫酸と過酸化水素水を3:1の比率で混ぜ合わせた混合液が用いられる。この剥離液に対しては、露出している透明基板101及び遮光膜20a,10bは、十分な剥離耐性を有している。
【0076】
上述のように作製したフォトマスクを用いて、ウエハ上に形成したレジスト膜に露光パターンを転写し、その後レジスト膜を現像してレジストパターンを形成する。
【0077】
すると、従来のフォトマスク20を再加工して得られた本実施形態1のフォトマスク10では、欠陥が検出されたウエハ上領域に対応するマスク内領域Aの遮光膜20aの膜厚が、欠陥が検出されなかったウエハ上領域に対応するマスク内領域Bの遮光膜10bの膜厚に対して厚くなるように、フォトマスク構造が変更されるので、露光光の照度ムラにより露光強度がショット内端部の領域で強くなってしまう場合でも、露光強度をマスク内領域Bの遮光膜10bの膜厚に合わせて低減することで、ショット内端部の領域で、現像後のレジストパターンのレジスト線幅細りや膜減りが生じるのを回避することができ、レジストパターン欠陥の発生を防止できる。
【0078】
以下本実施形態の効果について説明する。
【0079】
このように本発明の実施形態1では、露光パターンをレジストなどの感光性材料110に転写するためのフォトマスク100において、遮光膜10を、膜厚の薄い薄膜部分10bと、膜厚の厚い厚膜部分20aとを含むよう、該遮光膜を構成する遮光材料の一部を選択的にエッチングした構造としたので、フォトマスクを用いた露光処理の際、露光強度を、遮光膜10の膜厚の薄い薄膜部分10bの厚さに適した強度に低下させることで、遮光膜10の膜厚の厚い厚膜部分20aに対応するウエハ領域上で生じていたレジストパターンの線幅の細りや膜減りを回避することができ、しかも、遮光膜の膜厚の薄い薄膜部分では、感光性材料(レジスト材料)に対する十分な露光強度を確保することができる。この結果、フォトマスク面内での露光光の照度にムラがある場合でも、ウエハ上のレジスト線幅の細りや膜減りが生じるのを回避できる。
【0080】
つまり、従来から、半導体製造における露光装置でのスループット向上を目的として、フォトマスク(レチクル)に載せるLSIのチップ数はできるだけ多く(露光ショット面積ができるだけ大きくなるように)しているが、露光装置の照度ムラが大きい場合には露光光の照度が大きい領域で、レジスト線幅細りや膜減りが生じ、レジストパターン欠陥が発生するという問題がある。
【0081】
言い換えると、従来のマスク構造は、フォトマスク面内の特定の領域で露光光の照度が大きい場合には、露光光の光強度が大きくなり、ウエハ上のレジスト線幅の細りや膜減りが生じてしまう。
【0082】
しかしながら、本実施形態では、フォトマスクの遮光膜10を、レジストパターン欠陥が検出されたウエハ上領域に対応するマスク領域A内の遮光膜20aの膜厚が、レジストパターン欠陥が検出されなかったウエハ領域に対応するマスク領域B内の遮光膜10bの膜厚に対して厚くなるように再加工したものとしている。このため、フォトマスク上の遮光膜の膜厚をエッチングによる再加工により制御することができ、図4(a)に示すように、ウエハ上のレジスト線幅の細りや膜減りの不具合を簡単に改善することができる。
【0083】
また、本実施形態では、露光装置ごとに、上述した本発明の実施形態によるフォトマスクを個別に作製することで、露光装置間での照度ムラの差の補正が可能となる。
【0084】
さらに、本実施形態のフォトマスクの再加工方法では、既に使用しているフォトマスクをリワーク(再加工)するだけなので、フォトマスクの露光パターンの出し直しや露光装置の修理の必要が無くなり、コスト負担を軽減できる。
【0085】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、フォトマスク、フォトマスクの再加工方法、及びレジストパターンの形成方法の分野において、フォトマスク面内での露光光の照度にムラがある場合でも、ウエハ上のレジスト線幅の細りや膜減りが生じるのを回避できるフォトマスク、フォトマスクの再加工方法、および、レジストパターンの形成方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0087】
10 遮光膜
10b マスク内領域B上の遮光膜
20a マスク内領域A上の遮光膜
100 フォトマスク
101 透明基板
110 レジスト膜
110a、210a ウエハ内領域A’上のレジスト膜(ウエハ上欠陥検出領域のレジストパターン)
110b、210b ウエハ内領域B’上のレジスト膜(ウエハ上非欠陥検出領域のレジストパターン)
111 シリコン基板(SI)
A ウエハ上欠陥検出領域に対応するマスク内領域
A’ ウエハ上欠陥検出領域
B ウエハ上欠陥非検出領域に対応するマスク内領域
B’ ウエハ上非欠陥検出領域
D マスク作成用レイアウト領域
DN マスク作成用レイアウト領域の欠陥検出領域
DY マスク作成用レイアウト領域の欠陥非検出領域
E 電子ビーム
L マスク内LSIチップ領域
LL ウエハ内LSIチップ領域
LA EBレジストがネガ型の場合の新規マスクリワークで使用するCADデータ
LB EBレジストがポジ型の場合の新規マスクリワークで使用するCADデータ
M マスクアライメントマーク
N 露光時ブラインド領域
S マスク内露光ショット領域
SS ウエハ内の1ショット露光領域
T ターゲットとなるウエハ上のレジスト線幅
RE EBレジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光パターンを感光性材料に転写するためのフォトマスクであって、
透明基板と、
該透明基板上に、該露光パターンを有する光透過領域が形成されるよう選択的に形成された遮光膜とを備え、
該遮光膜は、膜厚の薄い薄膜部分と、膜厚の厚い厚膜部分とを含むよう、該遮光膜を構成する遮光材料の一部を選択的にエッチングした構造を有する、フォトマスク。
【請求項2】
請求項1に記載のフォトマスクにおいて、
前記透明基板は、ガラス及び石英の中から選択した材料により構成されている、フォトマスク。
【請求項3】
請求項1に記載のフォトマスクにおいて、
前記遮光膜の薄膜部分の膜厚は、60〜110nmの範囲の膜厚である、フォトマスク。
【請求項4】
請求項1に記載のフォトマスクにおいて、
前記遮光膜の厚膜部分の膜厚は、110nm以上の膜厚である、フォトマスク。
【請求項5】
請求項1に記載のフォトマスクにおいて、
前記遮光膜は、Cr(クロム)、CrO(酸化クロム)、CrF(クロムフォロライド)の中から選択した材料により構成されている、フォトマスク。
【請求項6】
請求項1に記載のフォトマスクにおいて、
前記遮光膜を構成する遮光材料の光透過率は1%以下である、フォトマスク。
【請求項7】
透明基板上に遮光膜を選択的に形成してなる構造を有する、露光パターンを感光性材料に転写するためのフォトマスクを再加工する方法であって、
該露光パターンを該感光性材料に転写したときの欠陥が発生しない正常領域を示すフォトマスク作製用レイアウトデータを作成するステップと、
該フォトマスク作製用レイアウトデータを用いて描画と現像とを行って、該フォトマスク上にレジストパターンを形成するステップと、
該レジストパターンをマスクとして、該正常領域の遮光膜を、該露光パターンを該感光性材料に転写したときの欠陥が発生する欠陥領域での遮光膜の膜厚が、該正常領域での遮光膜の膜厚に対して厚くなるようエッチングするステップとを含む、フォトマスクの再加工方法。
【請求項8】
請求項7に記載のフォトマスクの再加工方法において、
前記透明基板は、ガラス及び石英の中から選択した材料により構成されており、
前記遮光膜は、Cr(クロム)、CrO(酸化クロム)、CrF(クロムフォロライド)の中から選択した材料により構成されている、フォトマスクの再加工方法。
【請求項9】
請求項7に記載のフォトマスクの再加工方法において、
前記遮光膜の正常領域での膜厚は、60〜110nmの範囲の膜厚であり、
前記遮光膜の欠陥領域での膜厚は、110nm以上の膜厚である、フォトマスクの再加工方法。
【請求項10】
請求項7に記載のフォトマスクの再加工方法において、
前記露光パターンが転写された感光性材料は、ウエハ上に形成された、該露光パターンに対応した平面パターンを有するレジスト膜であり、
前記欠陥領域は、該ウエハ上のレジスト膜の線幅細りあるいは膜減りが発生する領域に対応し、
前記正常領域は、該ウエハ上のレジスト膜の線幅細り及び膜減りのいずれも発生しない領域に対応し、
前記遮光膜は、前記エッチングを行うステップで、前記フォトマスク上に形成されたレジスト膜をエッチングマスクとして、その欠陥領域における膜厚が、その正常領域における膜厚より厚くなるよう、ドライエッチングされる、フォトマスクの再加工方法。
【請求項11】
半導体ウエハ上にレジストパターンを形成する方法であって、
所定の露光パターンを有するフォトマスクを用いて、該半導体ウエハ基板上に形成されたレジスト膜を露光するステップと、
該露光したレジスト膜を現像して、該レジストパターンを形成するステップとを含み、
該フォトマスクとして、透明基板上に該露光パターンを有する遮光膜を形成してなる構造を有し、該遮光膜を、該レジストパターンの欠陥が発生する領域に対応する部分での膜厚が、該レジストパターンの欠陥が発生しない領域に対応する部分での膜厚より厚くなるよう、エッチング処理により再加工したものを用いる、レジストパターンの形成方法。
【請求項12】
請求項11に記載のレジストパターンの形成方法において、
前記レジスト膜の露光に用いるフォトマスクの遮光膜の厚さにより、前記半導体ウエハ上に形成されるレジストパターンのレジスト線幅を調整するレジストパターンの形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−257614(P2011−257614A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132417(P2010−132417)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】