説明

フォトマスクの修復方法

先の尖ったチップおよびカンチレバーを用いた直接書き込みリソグラフィ印刷による、低温硬化または光硬化を伴う先進フォトマスクのアディティブ修復を提供する。インクから形成された材料の光学特性を調整することができる(たとえば、n値およびk値)。シルセスキオキサンインクを含むゾルゲルインクを使用して、MoSi組成物を形成することができる。修復されたフォトマスクは、通常のフォトマスク洗浄条件下での洗浄に耐性を有する。AFM機器を使用して、アディティブ修復を行って、高い分解能およびレジストレーションを提供することができる。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
フォトマスクは、たとえば集積回路を調製するために、半導体産業で広く用いられている。マスクは、典型的には高価で複雑であり、年々フィーチャサイズが小さくなるにつれてより精巧なものになっている。したがって、マスクに欠陥がある場合、単にマスクを処分するのではなく、むしろそれを修復することが、経済的に必要とされている。したがって、フォトマスクを修復するためのより良い方法を見出すことが、商業的に必要とされている。具体的には、材料がマスクに付加される、アディティブ修復が重要である。サブトラクティブ修復では、材料がマスクから取り除かれる。アディティブ修復における重要な問題は、透明度および屈折率を含む適正な光学特性を提供するように、インク配合を調整することである。加えて、インクを硬化する必要がある場合、フォトマスク修復と適合している適切な硬化条件が必要である。これらの問題は、複雑な凹凸を有する高分解能構造を伴うフォトマスクを含む、先進かつ次世代のフォトマスクを扱う場合に、特に重要となる。
【0002】
レーザ誘起または電子ビーム誘起堆積またはエッチング、および集束イオンビーム(FIB)を含む、多くの現行のマスク修復技術は、先進フォトマスクの修復に必要とされる分解能および材料可撓性を欠き、修復する間にマスクを損傷することがある。この問題は、制御された光学特性およびナノスケールのレジストレーションを有する透過性材料または半透過性材料を堆積することができる技術がないため、先進フォトマスクおよび減衰型位相シフトマスク(attenuated phase-shift mask)の減衰層(いわゆる「MoSi」層、典型的にMoxSiyOzNt傾斜被膜)の基板において、石英穴および他の空隙をアディティブ法によって修復する場合に、特に重大となり得る。それらを修復するために、位相シフトマスクに不透明な炭素パッチを堆積してきたが(たとえば、FIBを用いて)、曝露中、結果として生じる空間像に対する制御は最小限である。
【0003】
参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開第2004/0175631号(特許文献1)(NanoInk)は、直接書き込みナノリソグラフィおよびナノスコピック(nanoscopic)チップの使用を含む、アディティブフォトマスク修復法を記載している。フォトマスク修復はまた、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、Zhang等の米国特許出願公開第2005/0255237号(特許文献2)(NanoInk)にも簡単に言及されており、これにはスタンプチップ修復法が含まれる。さらに、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、Mirkin等の米国特許出願公開第2003/0162004号(特許文献3)(Northwestern University)は、ゾルゲルインクおよび直接書き込みナノリソグラフィの使用を記載している。しかしながら、フォトマスク修復は記載されていない。インクの熱硬化が記載されており、熱硬化が400℃で行われる実施例が含まれる。加えて、ゾルゲル配合物にはポリマーが用いられている。
【0004】
すべて参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、薄膜および修復材料に関するさらなる参考文献には、"Ultraviolet laser-induced formation of thin silicon dioxide film from the precursor beta-chloroethyl silsesquioxane" J. Sharma, et al., J. Mater. Res. 14(3), 990, 1999(非特許文献1); "High Density Silicon Dioxide Coatings by UV and Thermal Processing" B. Arkles, et al. Silicones in Coatings III meeting Proceedings, Barcelona(Spain), 28-30 March 2000(非特許文献2)(Gelest, Inc.から入手可能); "Characterization of optically active and photocurable ORMOSIL thin films deposited using the Aerosol process" M. Trejo-Valdez, P. et al. J. Mater. Sci. 39, 2801-2810, 2004(非特許文献3); "Photo-induced growth of dielectrics with excimer lamps", I. W. Boyd, et al., Solid-State Electronics 45, 1413-1431, 2001(非特許文献4); "Patterning of hybrid titania film using polypolymerization", H. Segawa, et al., Thin Solid Films 466, 48-53, 2004(非特許文献5); "Sol-gel fabrication of high-quality photomask substrates", R. Ganguli, et al. Microlith. Microfab. Microsyst. 2(3), 2003(非特許文献6); "Photosensitive gel films prepared by the chemical modification and their application to surface-relief gratings", N. Tohge, et al., Thin Solid Films 351, 85-90, 1999(非特許文献7); "Structural and electrical characteristics of zirconium oxide layers derived from photo-assisted sol-gel processing", J. J. Wu, et al., Appl. Phys. A 74, 143-146, 2002(非特許文献8); "Composite thin films of(ZrO2x-(Al2O31-x for high transmittance attenuated phase shifting mask in ArF optical lithography", F. -D. Lai J. Vac. Sci. Technol. B 22(3), 1174, 2004(非特許文献9); および"Low temperature elimination of organic components from mesostructured organic-inorganic composite films using vacuum ultraviolet light", A. Hozumi, et al., Chem. Mater. 12, 3842-3847, 2000(非特許文献10)が含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0175631号
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0255237号
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0162004号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】"Ultraviolet laser-induced formation of thin silicon dioxide film from the precursor beta-chloroethyl silsesquioxane" J. Sharma, et al., J. Mater. Res. 14(3), 990, 1999
【非特許文献2】"High Density Silicon Dioxide Coatings by UV and Thermal Processing" B. Arkles, et al. Silicones in Coatings III meeting Proceedings, Barcelona(Spain), 28-30 March 2000
【非特許文献3】"Characterization of optically active and photocurable ORMOSIL thin films deposited using the Aerosol process" M. Trejo-Valdez, P. et al. J. Mater. Sci. 39, 2801-2810, 2004
【非特許文献4】"Photo-induced growth of dielectrics with excimer lamps", I. W. Boyd, et al., Solid-State Electronics 45, 1413-1431, 2001
【非特許文献5】"Patterning of hybrid titania film using polypolymerization", H. Segawa, et al., Thin Solid Films 466, 48-53, 2004
【非特許文献6】"Sol-gel fabrication of high-quality photomask substrates", R. Ganguli, et al. Microlith. Microfab. Microsyst. 2(3), 2003
【非特許文献7】"Photosensitive gel films prepared by the chemical modification and their application to surface-relief gratings", N. Tohge, et al., Thin Solid Films 351, 85-90, 1999
【非特許文献8】"Structural and electrical characteristics of zirconium oxide layers derived from photo-assisted sol-gel processing", J. J. Wu, et al., Appl. Phys. A 74, 143-146, 2002
【非特許文献9】"Composite thin films of (ZrO2)x-(Al2O3)1-x for high transmittance attenuated phase shifting mask in ArF optical lithography", F. -D. Lai J. Vac. Sci. Technol. B 22(3), 1174, 2004
【非特許文献10】"Low temperature elimination of organic components from mesostructured organic-inorganic composite films using vacuum ultraviolet light", A. Hozumi, et al., Chem. Mater. 12, 3842-3847, 2000
【発明の概要】
【0007】
概要
光学的調整が重要である先進フォトマスクの修復および他の適用のために、光学的に調整可能なインク、およびそれらを使用する方法、ならびに装置、および硬化された材料が提供される。具体的には、一態様において、先端にインクが配置されたナノスコピックチップを提供する段階であって、該インクが約100℃〜約350℃の温度における硬化のために配合される段階、修復が必要とされる領域を含むフォトマスクを提供する段階、修復が必要とされる該領域において該チップを該フォトマスクと接触させる段階であって、インクが該チップから該領域に移動する段階、(i)該インクを約100℃〜約350℃の温度で加熱し、かつ/または(ii)該インクを電磁放射線に曝露することによって、硬化インクを形成する段階を含む、該フォトマスクを修復する方法がここで提供される。
【0008】
一態様はまた、二酸化ケイ素前駆体化合物と、極性プロトン性溶媒およびモリブデン化合物を含む溶液から該極性プロトン性溶媒を蒸発させることによって形成されたモリブデン前駆体組成物とを混合することによって形成された、ゾルゲル組成物を提供する。
【0009】
一態様において、インクは、担体溶媒と、二酸化ケイ素前駆体と、モリブデン前駆体とを混合することによって形成されたゾルゲル組成物であることができる。二酸化ケイ素前駆体は、シルセスキオキサン、たとえばポリ(2-クロロエチル)シルセスキオキサン、または他のシルセスキオキサン化合物などであることができる。モリブデン前駆体は、極性プロトン性溶媒と、モリブデン(V)エトキシド、またはモリブデン(VI)オキシドビス(2,4-ペンタンジオナート)、またはMoxLy(式中、L=有機分子またはリガンド)のうちの少なくとも一つとを含有する溶液から該極性プロトン性溶媒を蒸発させることによって、形成できる。極性プロトン性溶媒は、好ましくは70g/mol未満、たとえば60g/mol未満、より具体的には50g/mol未満である分子量を有することができる。たとえば、極性プロトン性溶媒は、エタノール(46.1g/mol)であることができる。
【0010】
少なくともいくつかの態様の利点には、たとえば、高分解能修復、良好な空間的レジストレーション、さらなる損傷を誘発することなく修復する能力、特定の問題を解決するためにインクを光学的に調整する能力、硬化インクの基板に対する良好な付着、低い汚染レベル、深い凹部または開口の底部で修復する能力、ならびに金属、ケイ素、および酸素、ならびに一部の例では追加の窒素のみを含む(または本質的にそれらからなる)被膜が含まれる。少なくともいくつかの態様のさらなる利点には、堆積される材料の特性に対する精密な制御、関与する化学物質の低毒性、修復工程中のフォトマスク全体の化学汚染低リスク、簡単な機器類、真空とは対照的に周囲雰囲気での装置の操作、高い精度および正確性(たとえば、10nm配置精度)、多種多様な新しい材料を堆積する能力、基板の汚れによる透過損失がなく、画像化中のマスク損傷がない(数多くの修復サイクルを可能にする)、同じツールにおいて透明欠陥(clear defect)および不透明欠陥(opaque defect)を修復する能力、石英、ケイ化モリブデン、Mo/Si多層、および窒化タンタル被膜を含む、すべてのマスク型および材料との適合性、ならびにマルチノード能力が含まれる。
【0011】
少なくともいくつかの態様のさらなる特徴には、たとえば、フォトマスクの光学特性に一致するように硬化インクの光学特性を調整する能力が含まれる。光学特性の調整は、たとえば、MoSi合金のモリブデンおよび二酸化ケイ素の存在を制御することによって達成できる。インクの調整可能な光学特性には、これに限定されるものではないが、屈折率(n)および消衰係数(k)が含まれる。nおよびkの値は両方とも入射光の波長に依存するため、硬化インクのこれらの値は、リソグラフィ曝露またはフォトマスク検査に用いられる波長において、またはその波長近くで、フォトマスクの値に接近するべきである。硬化インクの全透過率、反射率、および吸光度は、フォトマスクのそれらの特性とほぼ一致する。硬化インクはまた、機械的および化学的に安定であり、好ましくはフォトマスクに十分に付着し、反復洗浄およびすすぎ洗いに安定である。硬化に先立って、インクの粘度は、たとえば欠陥の種類および大きさに応じて、またはフォトマスクの特定の表面特性に応じて、より高い粘度または低い粘度を提供するように調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1Aは、本発明の態様によるフォトマスク修復片の底面概略図である。図1Bは、図1Aのフォトマスク修復片の硬化チップの側面概略図である。
【図2】図2Aは、交互開口位相シフトフォトマスク(AAPSM)の3つの模擬透明欠陥(およそ深さ200nm、幅300nm×300nm)の原子間力顕微鏡(AFM)画像である。中央の欠陥は、熱硬化後、DPN(登録商標)印刷を用いて、ポリ(2-クロロエチル)シルセスキオキサン(PCESQ)ゾルゲルインクで充填されている。図2Bは、図2Aの「ライン1」に沿った高さプロファイルである。
【図3】図3A〜3Dは、エリプソメトリを用いて測定した波長に対する測定屈折率(n)および消衰係数(k)のプロットである。図3Aは、化学蒸着(CVD)によって形成されたMoSi薄膜のエリプソメトリデータを示す。図3Bは、体積比1:15のモリブデン(VI)オキシドビス(2,4-ペンタンジオナート)とPCESQを含有する硬化インクのエリプソメトリデータを示す。図3Cは、体積比1:4のモリブデン(VI)オキシドビス(2,4-ペンタンジオナート)とPCESQを含有する硬化インクのエリプソメトリデータを示す。図3Dは、体積比2.5:1のMo(OCH2CH35とPCESQを含有する硬化インクのエリプソメトリデータを示す。
【図4】エリプソメトリを用いて測定した波長に対する測定屈折率(n)および消衰係数(k)のプロットである。重量比1:10のMo(OCH2CH35とPCESQを含有する硬化インクのエリプソメトリデータを示す。
【図5】DPN(登録商標)印刷によって堆積された体積比1:5のMo(V)エトキシドとPCESQおよび20重量%デカノールを含有するインクを硬化することによって形成されたMoSiマイクロドットの3×3アレイのAFM画像(20μm×20μm)である。
【図6】図6A〜6Cは、x線光電子分光法(XPS)を用いて測定した測定強度対結合エネルギーのプロットである。図6Aは、重量比1:4のMo(V)エトキシドとPCESQおよび20重量%デカノールを含有するインクを200℃で加熱することによって形成されたMoSi被膜のXPSスペクトルを示す。図6Bは、重量比1:4のMo(V)エトキシドとPCESQおよび20重量%デカノールおよび6重量%テトラブチルアンモニウムフルオリド触媒を含有するインクを200℃で加熱することによって形成されたMoSi被膜のXPSスペクトルを示す。図6Cは、図6Bのインクを350℃で加熱することによって形成されたMoSi被膜のXPSスペクトルを示す。MはMoを表し、SはSiOxを表す。
【図7】図7Aおよび7Bは、DPN(登録商標)印刷を用い、体積比1:4のMo(V)エトキシドとPCESQおよび20重量%デカノールおよび6重量%テトラブチルアンモニウムフルオリド触媒を含有するインクを用いて作製されたケイ素基板上の構造の5×5アレイの光学顕微鏡画像である。
【図8】図8Aおよび8Bは、それぞれDPN(登録商標)印刷を用い、体積比1:10のMo(VI)オキシドビス(2,4-ペンタンジオナート)とPCESQを含有するインクで充填する前後のフォトマスク(6025 EAPSM)の開口部のAFM画像である。各模擬欠陥は、長さおよび幅、それぞれ2μmおよび0.6μmを有する。
【図9】図9Aおよび9Bは、それぞれDPN(登録商標)印刷を用い、重量比1:10のMo(VI)オキシドビス(2,4-ペンタンジオナート)とPCESQ、および体積比4:1のジメチルホルムアミドとポリ(エチル)グリコールを含有するインクで開口部の一つを充填した後の開口部の2次元および3次元のAFM画像である。図9Cは、図9Aの「ライン1」に沿った高さプロファイルである。
【図10】以下の条件下での3回の洗浄前および洗浄後のMoSiマイクロドットアレイの一連のAFM画像を示す:ピラニア溶液中(H2SO4:H2O2の体積比3:1)65℃で120秒、その後、20W/cm2で30秒間音波処理、その後、4W/cm2で30秒間音波処理、その後、120秒DIによるすすぎ洗い、その後、100℃で15分間加熱。
【図11】図11A〜11Eは、DPN(登録商標)印刷およびエキシマレーザ照射による光硬化を用い、Mo(VI)オキシドビス(2,4-ペンタンジオナート)およびPCESQを含有するインク配合物を堆積させることによって形成されたMoSiマイクロドットアレイのAFM画像を示す。
【図12】位相シフトマスクインク配合物を説明する。
【図13】6025石英マスク上の独立PCESQドットアレイのデータを例示する。
【図14】6025石英マスク上の独立PCESQのドット直径サイズおよび光学画像を示す。
【図15】石英基板上のMoSi被膜のトポグラフィAFMの2次元および3次元の画像を例示する。
【図16】SiO2基板上の独立MoSiドットアレイを例示する。
【図17】6025石英マスク上の独立PCESQのドット直径サイズおよび光学画像を示す。
【図18】石英マスク上の独立MoSiドットを例示する。
【図19】四角のくぼんだ形状(feature)における様々な堆積時間のMoSiインク堆積を例示する。
【図20】欠陥域に堆積および硬化したMoSi試料のAFMおよび高さコンタープロットを示す。
【図21】SiO2基板上の独立MoSiドットアレイおよび欠陥域に堆積したMoSiを例示する。
【図22】MoSi被膜のレーザ硬化を説明する。
【図23】レーザ硬化MoSi被膜のXPSスペクトルを例示する。
【図24】未硬化MoSi被膜のXPSスペクトルを例示する。
【図25】エキシマレーザによって硬化したSiOx被膜のXPSデータを例示する。
【図26】独立PCESQドット形状のエキシマレーザ硬化を例示する。
【図27】独立PCESQドット形状のエキシマレーザ硬化を例示する。
【図28】一部の態様のある種のMoインクの堆積において、困難に直面した場合のインク堆積用の金被覆AFMチップを例示する。
【図29】MoSiマスク欠陥域におけるMo(V)PCESQインクの単一堆積および二重堆積を例示する。
【図30】6025石英マスク上のMo(V)PCESQインクの堆積を例示する。
【図31】MoSiマスク欠陥域におけるMo(V)PCESQインクの堆積を例示する。
【図32】MoSiマスクとMoSi被膜間の透過率の比較を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
序論/全般
本明細書に言及されるいずれの参考文献も先行技術であるとは認められない。参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、Mirkin等の米国特許第6,635,311号("Methods Utilizing Scanning Probe Microscope Tips And Products Therefor Or Produced Thereby")は、たとえば、化学化合物または混合物(たとえば、「インク」)で被覆された先の尖ったチップ(たとえば、「ペン」)を基板に接触させる、直接書き込みパターニング法を開示している。Dip Pen Nanolithography(商標)印刷(「DPN(登録商標)印刷」)として商品化されている、この方法を用いて、任意のパターンをサブ20nm分解能、10nm形状アライメントで作製することができ、これに限定されるものではないが、金属前駆体もしくはセラミック前駆体またはナノ粒子を含む多種多様なインクを使用できる。DPN(登録商標)印刷ナノテクノロジープラットフォームは、NanoInk, Inc.(Skokie, IL)によって商品化されている。DPN(登録商標)、Dip Pen Nanolithography(商標)、NanoInk(登録商標)は、それらの商標である。
【0014】
さらに、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、Crocker等の米国特許出願第10/689,547号、具体的にはその6部および7部は、(i)フォトマスク修復適用のための実質的に光学的に透過性である材料の堆積、ならびに(ii)ゾルゲル堆積による透過性基板の空隙の修復、および、たとえば酸化モリブデンまたはケイ化モリブデンのナノ粒子負荷ゾルゲル材料の堆積による、部分透過位相シフト層の修復を含む、位相シフトマスクおよびNIL/SFIL金型などの先進マスクの修復を教示している。
【0015】
本明細書に記載の一態様は、先端にインクが配置されたナノスコピックチップを提供する段階であって、該インクが約100℃〜約350℃の温度における硬化のために配合される段階、修復が必要とされる領域を含むフォトマスクを提供する段階、修復が必要とされる該領域において該チップを該フォトマスクと接触させる段階であって、インクが該チップから該領域に移動する段階、ならびに(i)該インクを約100℃〜約350℃の温度で加熱し、かつ/または(ii)該インクを電磁放射線に曝露することによって、硬化インクを形成する段階を含む、該フォトマスクを修復する方法を提供する。
【0016】
加熱硬化の態様
一態様は、加熱硬化段階を含む。この態様において、インク硬化は、(i)放射曝露を用いずに、または(ii)加熱曝露前、曝露中、もしくは曝露後に補助的放射曝露を用いて行われる。加熱段階は、フォトマスク全体、または局所的に修復領域で行うことができる。熱は、フォトマスクに損傷を与えることなくインクの硬化をもたらすように、インクの温度を十分に上昇させる任意の方法で提供することができる。たとえば、オーブンもしくは手持ち式ヒートガンは用いられることができるか、または加熱は、電子衝撃もしくはイオン衝撃によって行うこともできる。フォトマスク内またはその周囲での抵抗加熱など、他の加熱方法も容易に用いることができる。加熱は、約100℃〜約350℃、たとえば約150℃〜約250℃、たとえば約250℃の温度で行われる。
【0017】
図1Aは、修復される欠陥の位置を特定するための読み込みチップ102、欠陥域にインクを堆積するための書き込みチップ104、および堆積したインクを硬化するための硬化チップ106を含む、フォトマスク修復片100の例を示す。読み込みチップ102は、フォトマスクから過剰なインクを除去することを含む、サブトラクティブ修復のために用いることもできる。場合により、読み込みチップ102は、サブトラクティブ修復に使用されないが、フォトマスク修復片は、サブトラクティブ修復に用いるための第4のチップ(図1Aには示していない)を含む。
【0018】
図1Bは、修復片100の硬化チップ106を示す。硬化チップ106は、カンチレバー110を支持する基板ハンドル108を含み、カンチレバー110の末端はピラミッド型チップ112である。抵抗加熱装置114が、カンチレバー110の底面に配置される。あるいは、抵抗加熱装置114は、カンチレバー110の上面、または上面および底面の両方に置かれることもできる。場合により、抵抗加熱装置は、チップ112上またはその周囲にのみ置くことができる。一態様において、加熱硬化段階は、修復を必要とするフォトマスク領域上方で硬化チップ106を走査することを含む。抵抗加熱装置114の温度は、ワイヤ116から加熱装置114に提供される電流の量を変えることによって、および/または、たとえば加熱装置114に用いる材料を交換して、加熱装置114の抵抗率を変えることによって、制御することができる。硬化するインクに適用される硬化条件は、硬化チップ106の走査速度を変えることによって、および/または、たとえばピラミッド型チップ112の寸法を変えて、フォトマスクの欠陥と加熱装置114との間の距離を変えることによって、制御することができる。
【0019】
インクを硬化するために、他の加熱機構を用いることができる。たとえば、約3mm未満の距離など、短い距離で熱を放射するピンポイントはんだ付けガン(pinpoint soldering gun)を、欠陥域の上方数マイクロメートル以内など、欠陥域に近接させることができる。はんだ付けガンのチップの直径は、約1mm〜約50μm、たとえば約100μmなど多様であることができる。あるいは、抵抗加熱ワイヤ、たとえばニクロム-60ワイヤ(または他のワイヤ)を、セラミック管などの絶縁管で包むことができ、次いでそれを凹型光沢金属製器具に埋め込み、生じた熱をワイヤから欠陥域に直射および反射することができる。局所熱源は、チップなしであることもでき、かつ様々な幾何学構造を有することができる。たとえば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、J. Lee and W. King, "Microcantilever hotplates: Design, fabrication, and characterization", Sensors and Actuators A, 136 (2007) 291-298に記載のとおり、マイクロカンチレバーホットプレートを用いることができる。
【0020】
放射硬化の態様
別の態様は、放射硬化段階を含む。この態様において、放射硬化を補うために、たとえば加熱硬化段階の前、最中、または後に、加熱も行うことができる。加熱は、放射硬化の自然の作用としても起こり得る。
【0021】
インクは、好ましくはリソグラフィ曝露またはフォトマスク検査に用いられる波長で、紫外光、紫外可視光、または可視光に曝露されると、硬化することができる。紫外光源には、これに限定されるものではないが、レーザ、たとえばエキシマレーザ、波長157nm(F2)、193nm(ArF)、および248nm(KrF)、ならびに紫外線ランプ、たとえば水銀ランプ(184.9nm)、亜鉛ランプ(213.9nm)、エキシマランプ、波長126nm(Ar)、146nm(Kr)、172nm(Xe)、193nm(ArF)、222nm(KrCl)などが含まれる。エキシマレーザは、Lambda Physik(Ft. Lauderdale, FL)およびGAM lasers(Orlando, FL)によって商品化されており、エキシマランプは、たとえばResonance(Ontario, CA)、Radium Lampenwerk(Wipperfurth, Germany)、およびHoya Candeo(Japan)から入手可能である。
【0022】
照射条件は、インクおよびフォトマスクに応じて多様であることができる。好ましくは、照射条件は、フォトマスクの損傷閾値未満である。たとえば、ArFエキシマレーザは、約5mJ/cm2/パルス〜約100mJ/cm2/パルス、たとえば約10mJ/cm2/パルス〜約30mJ/cm2/パルス、より具体的には約13mJ/cm2/パルス〜約20mJ/cm2/パルスでパルスを発することができる。総線量は、パルス時間、パルス強度、およびパルス数によって決定することができる。パルス数は、1パルス〜60,000パルスの間で多様であることができる。総線量は、約50mJ/cm2〜約1000mJ/cm2、たとえば約100mJ/cm2〜約700mJ/cm2、より具体的には約200mJ/cm2〜約400mJ/cm2であることができる。
【0023】
チップ/カンチレバー/機器
チップは、特に限定されないが、ナノスコピックチップ、たとえば走査型プローブ顕微鏡チップ、または具体的には原子間力顕微鏡(AFM)チップなどであることができる。チップは、AFMで用いられる場合など、長いカンチレバーの末端に置かれることができる。チップは、AFM画像化に慣例的に用いられるものより長く、比較的高いアスペクト比を有することができる。チップは、Si3N4、Si、SiOx、ダイヤモンド様炭素(CLD)、ダイヤモンド、金属材料および半導体材料でドープしたチップなどで作られることができる。配列されたチップを用いることができる。チップは、支持カンチレバーを用いてまたは用いずに使用できる。チップは、チップ半径、たとえば100nmまたはそれ未満、または50nmまたはそれ未満、または25nmまたはそれ未満を有することができる。
【0024】
チップは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、Zhang等の米国特許出願公開第2005/0255237号(NanoInk)に記載されている、ポリジメチルシロキサン(PDMS)被覆スタンプチップなどのように、ポリマーで被覆されることができる。フォトマスクの画像化に用いられるチップは、インクの堆積に用いられるチップと異なることができる。たとえば、画像化は、裸(bare)Si3N4チップを用いて行うことができるが、インク堆積は、PDMS被覆スタンプチップを用いて行われる。インクの堆積に用いられるチップは、インクで被覆する前に、洗浄することができる。たとえば、書き込みチップは、RCA1溶液中(H2O2:NH4OH:H2Oの体積比1:1:5)、70℃で10分間洗浄することができる。第3のチップは、抵抗発熱体、たとえば図1A〜1Bに関して論じたものなどを含むことができる。第4のチップは、サブトラクティブ修復チップを含むことができる。あるいは、第4のチップは省略され、画像化チップがサブトラクティブ修復に用いられる。
【0025】
チップは、金属などの導電性材料で被覆することができる。たとえば、Si3N4 AFMチップは、最初に3nmのチタン(Ti)で被覆することができ、次いで、さらに10nmの金(Au)で被覆することができる。金属コーティングがより厚くてもまたはより薄くてもよく、かつCr、Wなどの種々の金属が用いられることができるか、または導電的にドープしたAFMチップが用いられることができる。これらの導電性チップは、たとえば、Mo高含量インクを石英マスクまたはMoSiマスクに堆積させる際に、静電気蓄積の問題を低減または除去するために用いることができる。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、導電性チップを帯電マスクに接触させた際に、静電気帯電は放散または中和されると考えられる。導電性チップは、たとえば金被覆チップのチオール官能化によって、疎水性分子または親水性分子で改変することができる。
【0026】
チップは、インクを含有するリザーバに浸漬することができる。DPN(登録商標)印刷に先立って、インク堆積速度が低下しかつ安定するまで、チップを犠牲基板に繰り返し接触させることによって、チップをブリードすることができる。堆積速度および印刷特性は、滞留(dwell)時間、走査速度、走査モード(たとえば、接触、非接触、間欠接触モード)、およびAFMカンチレバーのバネ定数などのパラメータを変えることによってさらに制御できる。
【0027】
マイクロスケールおよびナノスケールのリソグラフィのための機器および付属品は、NanoInk(Chicago, IL)から入手することができ、これにはNSCRIPTOR(商標)機器類が含まれる。
【0028】
フォトマスク
様々なフォトマスクを用いることができ、認知されているノード、たとえば65nmノード、45nmノードなどに用いられるものが含まれる。マスクの欠陥は、当技術分野において公知であり、たとえば、アディティブ修復工程によって修復することができる透明欠陥、およびサブトラクティブ修復工程によって修復することができる不透明欠陥が含まれる。透明欠陥は、消失または不完全形状であり、たとえば、ピンホール、断続しているかまたは薄くなった線、エッジまたはノッチ欠陥、およびコーナー欠陥が含まれる。欠陥領域は、マイクロスケールまたはナノスケールであることができる。
【0029】
マスクの例示的な種類には、交互開口位相シフトフォトマスク(AAPSM)および組込み減衰型位相シフトフォトマスク(EAPSM)が含まれる。AAPSMは、強い位相シフタ(strong-shifter)とも称され、石英マスクの交互透明領域に180°位相シフトウィンドウをエッチングすることによって作製できる。EAPSMは、弱い位相シフタ(weak-shifter)とも称され、フォトマスクのほぼ透明の開口部に、ケイ化モリブデン(MoSi)などの、部分透過180°位相シフト材料を堆積することによって作製できる。位相シフトマスクおよびそれらを形成する方法は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、Shiota等の米国特許第7,011,910号に記載されている。
【0030】
フォトマスクは、修復前に洗浄することができる。たとえば、フォトマスクは、ピラニア溶液(当技術分野において公知である硫酸と過酸化水素との混合物)で60秒間、次いでRCA1溶液中(H2O2:NH4OH:H2Oの体積比1:1:5)120℃で5.5分、次いで脱イオン水(DI)によるすすぎ洗いによって洗浄することができる。
【0031】
インク組成物
インク組成物は、加熱硬化態様または放射硬化態様を含む硬化に適合させることができる。インク組成物はさらに、フォトマスクとほぼ一致する十分な透明度および十分な屈折率を含む適切な光学特性を提供するように、適合させることができる。硬化インクとフォトマスクとのマッチングは、修復されたフォトマスクの性能が欠陥を持たないフォトマスクの性能より実質的に劣らないように、リソグラフィ曝露に用いられる波長においてまたはその波長近くで達成できる。光学顕微鏡検査下で、より大規模な修復領域の簡易指標として、色合わせを用いることができる。
【0032】
インク組成物は、担体溶媒およびゾルゲル前駆体化合物を含むことができる。担体溶媒の例には、アルコールおよびアルカンを含む有機液体が含まれる。アルコールは、4≦n≦17である、式CnH(2n+2)Oを有することができる。プロトン性または非プロトン性の溶媒を用いることができる。例には、アセトン、デカノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、およびαテルピニルが含まれる。インク組成物の粘度および蒸発速度は、溶媒とゾルゲル前駆体の比率を変えることによって調節できる。たとえば、インク組成物は、インク中の前駆体に対して、約5重量%〜約30重量%、たとえば約10重量%〜25重量%の溶媒を含有することができる。さらに、インク組成物の粘度は、溶媒分子の量および大きさを変えることによって、たとえば長炭素鎖アルコール(たとえば、CH3(CH2nOH、式中、nは5より大きい)の長さを変えることによって調節できる。他の溶媒には、ジグリム[ビス(2-メトキシエチル)]およびポリ(エチレングリコール)[「PEG」]が含まれる。たとえば、PEGが用いられる場合、その分子量は約200g〜約600g、たとえば約250gであることができる。インク中にPEGと共にDMFが存在する場合、DMFとPEGの体積比は、約1:10〜約10:1、たとえば約1:5〜約5:1であることができる。MoSi前駆体をデカノールに溶解する場合、MoSi前駆体およびデカノール溶液とDMF/PEGの体積比は、約1:10〜約10:1、たとえば約1:5〜約5:1であることができる。あるいは、DMF/PEGの代わりにアセトンが用いられる。たとえば、MoSi前駆体およびデカノール溶液とアセトンの体積比は、約1:10〜約10:1、たとえば約1:5〜約5:1である。
【0033】
インク組成物は、硬化すると二酸化ケイ素材料を提供するように適合される、少なくとも1種の二酸化ケイ素を含有することができる。たとえば、インク組成物は、少なくとも1種の光硬化性シルセスキオキサン、たとえば、照射波長193nmを有しかつ主としてシリカを含むマイクロ構造またはナノ構造を生じる、ポリ(2-クロロエチル)シルセスキオキサン(「PCESQ」)を含むことができる。他の二酸化ケイ素前駆体には、これに限定されるものではないが、Hybrid Plasticsによって商品化されている多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS(登録商標))、ケイ素アルコキシド、およびテトラエトキシオルトシリケートが含まれる。参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、米国特許第5,853,808号に記載されているシルセスキオキサンも用いることができる。
【0034】
PCESQは、特にフッ素イオン触媒と混合された場合、中温熱硬化性インクとして適している。フッ素イオン触媒(たとえば、テトラブチルアンモニウムフルオリド)による触媒作用は、シルセスキオキサン硬化温度を、たとえば250℃未満、好ましくは200℃未満に低下する。
【0035】
インク組成物はまた、硬化すると金属材料、たとえば金属ナノ粒子、金属塩、金属アルコキシド、および金属アセチルアセトナートを提供するように適合される、金属前駆体を含有できる。モリブデンナノ粒子には、ケイ化モリブデンおよび酸化モリブデンのナノ粒子または粉末が含まれる。好ましくは、ナノ粒子の平均直径は、修復される典型的な欠陥よりはるかに小さく、たとえば直径数ナノメートルである。金属前駆体には、モリブデン塩またはモリブデン酸塩も含まれる。例には、モリブドケイ酸およびその塩、三酸化モリブデン、モリブデンのヘテロポリ酸、アンモニウムモリブダート、およびモリブダートアニオンのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が含まれる。たとえば、MoClxまたはMoOyClxは、体積比1:1のHClおよびH2O2からなる溶液にMoO2ナノ粒子を添加することによって形成される。他のモリブデン化合物には、モリブデン(III)クロリド(MoCl3)、モリブデン(V)クロリド(MoCl5)、モリブデン(VI)ジクロリドジオキシド(MoO2Cl2)、モリブデン(VI)テトラクロリドオキシド(MoOCl4)が含まれる。
【0036】
金属アルコキシドには、以下の金属のアルコキシドが含まれる:Sc、Ga、Y、La、Ln、Si、Ti、Ge、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、W、Fe、Co、Ni、Re、Pd。金属アルコキシドの例には、Ti(OC3H7-iso)4、Nb2(OCH310、Ta2(OCH310、[MoO(OCH342、Re2O3(OCH36、Re4O6(OCH312、およびRe4O6(OC3H7-iso)10が含まれる。たとえば、モリブデン(V)エトキシドが用いられる。モリブデン(V)アルコキシドおよび二金属アルコキシドの合成および単離は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、"The Solution thermolysis approach to molybdenum(V) alkoxides: synthesis, solid state and solution structures of the bimetallic alkoxides of molybdenum(V) and niobium(V), tantalum(V) and tungsten(VI)", A. Johansson et al., J. Chem. Soc., Dalton Trans. 2000, 387-398に記載されている。
【0037】
金属アセチルアセトナートには、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、"Metal Acetylacetonates as General Precursors for the Synthesis of Early TransitionMetal Oxide Nanomaterials", A. Willis et al., J. Nanomaterials 2007, 1-7(記事ID 14858)に記載のとおり、以下の金属のアセチルアセトナートが含まれる:Ti、Fe、Ga、Zn、In、V、Nb、Ta、Hf、Mo、Mn、Cr、およびSn。たとえば、モリブデン(VI)オキシドビス(2,4-ペンタンジオナート)が用いられる。
【0038】
インクの光学特性は、インク成分の濃度を変えることによって、たとえばインク中の金属前駆体と二酸化ケイ素前駆体の比率を変えることによって調整できる。たとえば、インク中のMoとSiの原子比は、約1:50〜約50:1、たとえば約1:25〜約25:1、たとえば約1:10〜約10:1、より具体的には約1:5〜約5:1であることができる。MoとSiの原子比の制御は、モリブデン前駆体と二酸化ケイ素前駆体の体積比または重量比を変えることによって実行できる。たとえば、モリブデン前駆体と二酸化ケイ素前駆体の体積比は、約1:50〜約50:1、たとえば約1:25〜約25:1、たとえば約1:10〜約10:1、より具体的には約1:5〜約5:1の範囲である。別の態様において、モリブデン前駆体と二酸化ケイ素前駆体の重量比は、約1:50〜約50:1、たとえば約1:25〜約25:1、たとえば約1:10〜約10:1、より具体的には約1:5〜約5:1の範囲である。たとえば、ゾルゲルインク配合物は、PCESQと、Mo(V)エトキシドまたはモリブデン(VI)オキシドビス(2,4-ペンタンジオナート)のうちの少なくとも1種から製造されたモリブデン前駆体とを含む。
【0039】
インク組成物は、チップを被覆し、その後、チップから基板に堆積する能力を有するように適合させることができる。
【0040】
修復されたマスクの特性
修復されたマスクの利点は、硬化インクが十分にマスクに付着し、かつ半導体産業で通常用いられる洗浄段階に耐えて残存できることである。たとえば、硬化インクは、ピラニア溶液、RCA1溶液、RCA2溶液、および脱イオン水での反復洗浄段階に耐えて残存できる。好ましくは、硬化インクの熱膨張係数は、フォトマスクの熱膨張係数とほぼ等しく、それによって、硬化インクがひび割れたり、フォトマスクから剥がれたりすることなく、熱サイクル中に周囲のフォトマスクと共に膨脹および収縮することが可能になる。
【0041】
修復されたマスクのさらなる利点は、硬化インクの光学特性が、非損傷マスクの光学特性とほぼ一致することである。たとえば、Mo-SiをベースとするEAPSM被膜の光学特性は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、H. Kobayashi et al., "Photomask blanks quality and functionality improvement challenges for the 130nm node and beyond", Proc. SPIE, Vol. 4349, p. 164-169, 17th European Conference on Mask Technology for Integrated Circuits and Microcomponents, Uwe F. Behringer; Ed.(2001)、特に図3に記載されている。硬化インクの透過率は、たとえば、入射光の約5%〜約25%であることができる。高透過率のマスクでは、たとえば、5%〜10%、または10%〜20%であり得る。硬化インクの透過率は、たとえば、硬化インクの屈折率(n)、消衰係数(k)、および厚さ(t)を変えることによって調整される。波長193nmを有する入射光では、硬化インクの屈折率(n)は、約1.00〜約2.6、たとえば約1.30〜約2.45、たとえば約2.0〜約2.4、より具体的には約1.55〜約2.03であることができる。波長193nmを有する入射光では、硬化インクの消衰係数(k)は、約0.03〜約0.90、たとえば約0.20〜約0.75、たとえば約0.3〜約0.6、より具体的には約0.38〜約0.63であることができる。硬化インクの厚さ(t)は、数ナノメートル〜数百マイクロメートルまたはそれ以上まで多様であることができるが、好ましくは約10nm〜1000nm、たとえば約30nm〜約650nm、より具体的には約50nm〜約100nmである。
【0042】
本発明を、図面の説明を含む以下の非限定的な実施例を用いて、さらに説明する。
【実施例】
【0043】
実施例1
PCESQ組成物の調製、DPN(登録商標)印刷、および熱硬化
市販されている交互開口フォトマスク(AAPSM)を、ピラニア溶液(当技術分野において公知である硫酸と過酸化水素との混合物)で60秒間、次いでRCA1溶液(H2O2:NH4OH:H2Oの体積比1:1:5)中120℃で5.5分、次いで脱イオン水(DI)によるすすぎ洗いによって洗浄した。市販されている窒化ケイ素チップを、RCA1中70℃で10分間洗浄した。ポリ(2-クロロエチル)シルセスキオキサン(「PCESQ」)とデカノール(密度0.8297g/ml)とを体積比10:1で混合することによって、ゾルゲル混合物を調製した。ゾルゲル混合物に15秒間浸漬することによって、チップを被覆した。
【0044】
マスクの一部をAFMによって画像化し、深さが少なくとも200nmの3つの開口部を含む領域の位置を特定した。図2Aは、中央の開口部を、周囲条件下(22℃〜24℃および相対湿度20%〜40%)、走査型プローブ顕微鏡検査機器NSCRIPTOR(商標)(NanoInk, Skokie IL)を用いて、DPN(登録商標)印刷によって修復した後のAAPSMのAFM画像を示す。堆積後、基板をオーブンにおいて120℃で16時間加熱し、その後、手持ち式ハンドガン(約300℃)で5分間加熱した。図2Bは、図2Aの「ライン1」に沿ったライン走査高さプロファイルを示し、中央の開口部が実質的に充填されたことを示している。
【0045】
欠陥域上方のチップの滞留時間は多様であることができる。場合により、過剰の硬化材料を除去するために、サブトラクティブ修復を行うことができる。
【0046】
上記の方法によって形成された硬化SiO2構造は、石英、ガラス、および酸化ケイ素の上で、ピラニア溶液、RCA1溶液による洗浄、およびDI水によるすすぎ洗いに対して優れた堅牢性を示した。たとえば、反復洗浄後のマイクロドットの平均の高さおよび幅の変化は、約3%未満(誤差の範囲内)であった。このように、硬化SiO2構造は、化学的および機械的に安定である。
【0047】
実施例2
PCESQ組成物の光硬化
実施例1に記載のとおり、DPN(登録商標)印刷を用い、ポリ(2-クロロエチル)シルセスキオキサン(「PCESQ」)を石英基板上に堆積させることによって、33マイクロドットアレイを形成した。光硬化前、未硬化ゾルゲル構造は、非常に軟性であるためAFMで画像化できなかったが、光学顕微鏡法によって容易に観察できた。次いで、これらの構造を、波長193nmを有する市販のArFエキシマを用い、深紫外線を用いて加熱した。照射は、パルス線量13.3mJ/cm2/パルスおよび総線量250J/cm2を用いて行った。
【0048】
実施例3
MoSi組成物の光学特性
MoSiの厚さ66nmの薄膜を物理蒸着(PVD)によって蒸着させた。MoSi被膜においてエリプソメトリ測定を行い、波長の関数として、被膜の屈折率(n)および消衰係数(k)を求めた。図3Aは、PVD蒸着被膜の波長に対するnおよびkのプロットである。波長193nmでは、n=2.45、および0.38≦k≦0.55である。
【0049】
配合:
4種の異なるインク配合物を製造し(A、B、C、Dと名付けた)、それらの光学特性を3回の検査によって試験した。第1回では、配合物A(1、2)は0.002gのMoO2ナノ粒子、および1μLのPSESQを含有した。配合物B(3)は、体積比1:4のMoOxClyとPSESQを含有した。配合物C(4、5)は、それぞれ体積比1:7および1:15のモリブデン(VI)オキシドビス(2,4-ペンタンジオナート)とPCESQを含有した。配合物D(6、7)は、それぞれ体積比1:200および1:400のMo(OCH2CH35とPCESQを含有した。表1は、波長193nmでの第1回のエリプソメトリデータを示す。
【0050】
【表1】

【0051】
第2回では、配合物D(1、2、3、4)は、それぞれ以下の体積比1:30、1:60、1:90、および1:120で、Mo(OCH2CH35およびPCESQを含有した。配合物C(5、6、7)は、それぞれ以下の体積比1:4、1:8、および1:12で、モリブデン(VI)オキシドビス(2,4-ペンタンジオナート)およびPCESQを含有した。表2は、波長193nmでの第2回のエリプソメトリデータを示す。
【0052】
【表2】

【0053】
第3回では、配合物C(1、2、3、4)は、それぞれ以下の体積比1:1、5:1、10:1、および20:1で、モリブデン(VI)オキシドビス(2,4-ペンタンジオナート)およびPCESQを含有した。配合物D(5、6、7)は、それぞれ以下の体積比2.5:1、1:1+デカノール、および1.5:1で、Mo(OCH2CH35およびPCESQを含有した。表3は、波長193nmでの第3回のエリプソメトリデータを含む。
【0054】
【表3】

【0055】
図3B〜3Dは、それぞれ第1回、第2回、および第3回から選択したインクに関して、波長に対する測定されたnおよびkのプロットである。具体的には、図3Bは、第1回の配合物C(5)の波長に対するnおよびkのプロットである。図3Cは、第2回の配合物C(5)の波長に対するnおよびkのプロットである。図3Dは、第3回の配合物D(7)の波長に対するnおよびkのプロットである。特に、図3C〜3Dのnとkの曲線は、図3AのCVD蒸着MoSi被膜と同じ一般的傾向に沿う。波長193nmのnおよびkの最終値を示す。
【0056】
実施例4
Mo(V)エトキシドおよびPCESQの組成物の調製
Mo(V)エトキシドのエタノールストック溶液にデカノール(密度0.8297g/ml)を添加し、エタノールが蒸発するまで24〜72時間、エッペンドルフチューブでその溶液を開放したままにしておくことによって、8種のインク配合物を調製した。蒸発後、ポリ(2-クロロエチル)シルセスキオキサン(「PCESQ」)を溶液に添加した。各インク配合物に関して、各成分の相対量を表4に示す。各インク配合物中のデカノールの重量パーセントは、Mo(V)エトキシドとPCESQの総重量に対して測定した。
【0057】
【表4】

【0058】
実施例5
Mo(V)エトキシドとPCESQの組成物からのMoSi薄膜の調製
Mo(V)エトキシドのエタノールストック溶液にデカノール(密度0.8297g/ml)を添加し、エタノールが蒸発するまで24〜72時間、エッペンドルフチューブでその混合物を開放したままにしておくことによって、インク配合物を調製した。蒸発後、ポリ(2-クロロエチル)シルセスキオキサン(「PCESQ」)を溶液に添加した。Mo(V)エトキシドとPCESQの重量比は1:10であった。デカノールの量は、Mo(V)エトキシドとPCESQの総重量の20重量%であった。二酸化ケイ素基板(1インチ角)をHFで処理し、その後500rpmで5秒間、続いて1500rpmで30秒間、400μLのインク配合物でスピンコーティングした。被膜を約300℃で60分間加熱した。厚さ240nmを有するMoSiの薄膜が得られた。たとえば、400μL未満、たとえば約50μL〜約300μLのインクを堆積させることによって、厚さ約100nmを得ることができる。硬化インクにおいてエリプソメトリ測定を行い、カーブフィッティングを行って、被膜の厚さ、ならびにn値およびk値を得た。図4は、スペクトル範囲1.5eV〜6.5eVおよび被膜の厚さ240nmの場合、波長190nmにおけるnおよびkの値はそれぞれ1.7および0.2であることを示している。
【0059】
実施例6
Mo(V)エトキシドとPCESQの組成物のDPN(登録商標)印刷
Mo(V)エトキシドのエタノールストック溶液にデカノール(密度0.8297g/ml)を添加し、エタノールが蒸発するまで24〜72時間、エッペンドルフチューブでその溶液を開放したままにしておくことによって、インク配合物を調製した。蒸発後、ポリ(2-クロロエチル)シルセスキオキサン(「PCESQ」)を溶液に添加した。Mo(V)エトキシドとPCESQの体積比は1:5であった。デカノールの量は、Mo(V)エトキシドとPCESQの総重量の20重量%であった。DPN(登録商標)印刷を用い、インク配合物をAFMチップからSiO2基板に堆積させ、200℃で1時間熱硬化した。図5は、各堆積領域上方で20秒間(下列)、40秒間(中列)、および60秒間(上列)チップを保持することによって形成された、硬化インクマイクロドットの3×3アレイのAFM画像を示す。
【0060】
実施例7
テトラブチルアンモニウムフルオリド触媒を含むMo(V)エトキシドとPCESQの組成物
Mo(V)エトキシドのエタノールストック溶液にデカノール(密度0.8297g/ml)を添加し、エタノールが蒸発するまで24〜72時間、エッペンドルフチューブでその溶液を開放したままにしておくことによって、第1インクの配合物を調製した。蒸発後、ポリ(2-クロロエチル)シルセスキオキサン(「PCESQ」)を溶液に添加した。Mo(V)エトキシドとPCESQの重量比は1:4であった。デカノールの量は、Mo(V)エトキシドとPCESQの総重量の20重量%であった。HF処理ケイ素基板上にスピンコーティングすることによって、第1のインク配合物を堆積させた。被膜を200℃で1時間加熱した。被膜でX線光電子分光法(XPS)を行った。図6Aは、硬化した第1のインクのXPSスペクトルであり、約290eVに炭素ピークが存在することを示している。
【0061】
最終混合物に6重量%のテトラブチルアンモニウムフルオリド触媒を添加したことを除いて、第1のインク配合物に用いた方法および組成に従って、第2のインク配合物を調製した。添加した触媒の量は、MoSi溶液の総重量の6%であった。HF処理ケイ素基板上にスピンコーティングすることによって、第2のインク配合物を堆積させた。被膜を200℃で1時間加熱した。被膜でX線光電子分光法(XPS)を行った。図6Bは、硬化した第2のインクのXPSスペクトルであり、図6Aと比較して約290eVにはるかに小さいピークを示しており、触媒の存在による炭素ピークの抑制を示唆している。図6Cは、350℃で加熱した第2のインクのXPSスペクトルを示す。小さい炭素ピークが可視であり、試料取扱い時の炭素混入に起因するものである。これらの結果は、図6Bの相対的に小さい炭素ピークから明らかである通り、テトラブチルアンモニウムフルオリド触媒がインク配合物の硬化温度を低下させたことを示している。
【0062】
Mo(V)エトキシドのエタノールストック溶液にデカノール(密度0.8297g/ml)を添加し、エタノールが蒸発するまで24〜72時間、エッペンドルフチューブでその溶液を開放したままにしておくことによって、第3のインク配合物を調製した。蒸発後、ポリ(2-クロロエチル)シルセスキオキサン(「PCESQ」)を溶液に添加した。Mo(V)エトキシドとPCESQの重量比は1:4であった。デカノールの量は、Mo(V)エトキシドとPCESQの総重量の20重量%であった。Mo(V)エトキシドとPCESQの体積比は1:4であった。デカノールの量は、17μLであった(Mo(V)エトキシドとPCESQの総重量の20重量%)。次いで、3重量%のテトラブチルアンモニウムフルオリド触媒を第3のインク配合物に添加した。添加した触媒の量は、Mo(V)Si溶液の総重量の3%であった。図7A〜7Bは、DPN(登録商標)印刷を用い、第3のインク配合物をSiO2表面に堆積させる前(図7A)および堆積させた後(図7B)の、フォトマスクの欠陥アレイの光学顕微鏡画像を示す。図7Bのインクは硬化しなかった。チップの保持時間は、欠陥当たり10秒であった。
【0063】
実施例8
Mo(VI)オキシドビス(2,4-ペンタンジオナート)とPCESQの組成物の調製
Mo(VI)オキシドビス(2,4-ペンタンジオナート)を500μLのエタノールに溶解し、室温で数週間還元した。還元は、1週間後に開始が認められ、4週間後に完了した。溶液の色は、還元によって、黄色から暗青色に変化した。次いで、この溶液をポリ(2-クロロエチル)シルセスキオキサン(「PCESQ」)と共に、デカノール(密度0.8297g/ml)に添加した。各インク配合物に関して、各成分の相対量を表5に示す。Mo(VI)の重量を求めるために、エタノールMo(VI)溶液の既知量(20μL)の溶媒を蒸発させた。求めた重量を20μLのMo(VI)試料の標準重量として用いた。所望の比率に応じて適切な量のPCESQを添加し、たとえば、20μL溶液は、エタノール蒸発後、0.001gの固体を生じた。したがって、0.01gのMo(VI)を得るために、200μLの溶液を用いた。各インク配合物中のデカノールの重量パーセントは、Mo(VI)オキシドビス(2,4-ペンタンジオナート)とPCESQの総重量に対して測定した。
【0064】
【表5】

【0065】
図8A〜8Bは、欠陥域にわたって被覆AFMチップをゆっくりと走査することによって、DPN(登録商標)印刷を用い、インク配合物3(Mo(VI)オキシドビス(2,4-ペンタンジオナート):PCESQの体積比1:10)で行った欠陥充填前(図8A)および充填後(図8B)の欠陥のアレイのAFM画像を示す。試料は、200℃で1時間硬化した。各欠陥形状は、長さおよび幅、それぞれ約2μmおよび0.6μmを有する。
【0066】
実施例9
Mo(V)エトキシドとPCESQの組成物のDPN(登録商標)印刷
実施例5に記載の方法に従って、インク配合物を調製した。Mo(V)エトキシドとPCESQの重量比は1:10であった。デカノールの量は、Mo(V)エトキシドとPCESQの総重量の20重量%であった。次いで、体積比4:1のDMFとPEG(分子量250g)を第1のインク配合物に添加した。Mo(V)SiとDMF:PEG溶液の比率は1:5であった。DPN(登録商標)印刷を用い、石英フォトマスクの幅2μm、深さ70nmの開口部に、インク配合物をAFMチップから堆積させた。堆積したインクを、200℃で1時間硬化した。図9A〜9Bは、それぞれ硬化インクで実質的に充填した開口部の2次元および3次元のAFM画像を示す。図9Cは、図9Bの「ライン1」に沿ったライン走査高さプロファイルを示し、「a」および「b」の位置はそれぞれ修復された開口部および隣接する未充填開口部を表す。
【0067】
実施例10
硬化MoSiインクの安定性
20重量%のデカノールに比率1:10のMo(V)Siを含有するインク配合物を、DPN(登録商標)印刷を用いて、SiO2基板に堆積させ、アレイをオーブンにおいて225℃で60分間加熱することによって、MoSiマイクロドットアレイを形成した。硬化後、アレイを以下の条件下での3回の洗浄に供した:ピラニア溶液中(H2SO4:H2O2の体積比3:1)65℃で120秒、その後、20W/cm2で30秒間音波処理、その後、4W/cm2で30秒間音波処理、その後、120秒DIによるすすぎ洗い、その後、100℃で15分間加熱。図10は、各洗浄回前後のアレイの一連のAFM画像を示す。3回の洗浄前および後のMoSiマイクロドットの平均の高さ(83nm)および幅(1.7μm)は3%以内(誤差の範囲内)であり、侵襲性の洗浄方法によって明らかな影響は受けなかった。平均の高さおよび幅、それぞれ14.5nmおよび600nmを有するMoSiマイクロドットに関しても類似の結果が得られた(示していない)。
【0068】
実施例11
Mo(V)エトキシドとPCESQの組成物の光硬化
DPN(登録商標)印刷を用い、Mo(V)エトキシドおよびPCESQを含有するインク配合物をSiO2および石英マスク基板に堆積させ、エキシマレーザ照射によって光硬化することで、MoSiマイクロドットアレイを形成した。エキシマレーザの波長は、様々な照射条件下で193nmであった。エネルギー密度は、5から、25、50、75、および100mJ/cm2まで多様であった。繰り返し数は、20から50Hzまで多様であった。パルス数は、100から、4000、6000、7600.12000、および60000まで多様であった。処理時間は、5から、80、120、200、240、300、390、および1200秒まで多様であった。
【0069】
図11A〜11Eは、得られた2×2MoSiマイクロドットアレイのAFM画像および対応するライン走査を示す。図11Aにおいて、照射条件は、5mJ/cm2、50Hz、60000パルス、1200s、10秒であった。図11Bにおいて、照射条件は、25mJ/cm2、50Hz、12000パルス、240s、10秒であった。図11Cにおいて、照射条件は、50mJ/cm2、20Hz、6000パルス、300s、10秒であった。図11Dにおいて、照射条件は、75mJ/cm2、20Hz、4000パルス、200s、10秒であった。図11Eにおいて、照射条件は、25mJ/cm2、50Hz、12000パルス、240s、1秒であった。
【0070】
さらなる実施例を図12〜32に示す。
【0071】
別の実施例において、ケイ素および石英基板上のMoSi薄膜堆積を行った。スピンコーティングを用いて、厚さ約75nmを有する被膜を調製した。石英材料上のMoSi被膜は、蒸着MoSi薄膜に色が類似していた。溶媒系DMF-PEGの代わりにアセトンを用いた。厚さおよび光学特性は、エリプソメトリによって測定した。

【0072】
石英マスク上に安価にMoSi被膜を製造するための別の実施例において、MoSi薄膜を石英マスク上に製造した。200μLのMoSiインク(比率1:10)を、石英マスクから採った1インチ角の小片に堆積させた。スピン被覆装置を用いて、500rpmで5秒間、続いて1500rpmで30秒間回転を実行し、小片を250〜350℃で1時間硬化して、良好に滑らかな被膜を形成した。400μLの使用で、300nmの被膜が形成された。目標の厚さは100nmである。
【0073】
エリプソメトリ測定:
エリプソメトリは、薄層の厚さを測定するために用いられる、非破壊的光学技術である。エリプソメトリは、厚さ、光学特性、ならびに材料のバンドギャップなどの薄膜の特性評価のために有用な能力を有する。この技術は、試料表面からの反射による光偏光の変化の測定に基づくものであり、エリプソメトリは、極めて正確に薄膜の厚さおよび光学特性(反射率「n」および吸収係数「k」)を導き出す。分光的能力(spectroscopic capacity)によって、複数のパラメータ、たとえば薄膜積重体の多層の厚さおよび組成を同時に決定することができる。UVISEL位相変調分光エリプソメトリ(Phase Modulated Spectroscopic Ellipsometry)(Jobin Yvon, Inc.)によって収集したエリプソメトリの生データを、通常のエリプソメトリデータに変換する。厚さおよび光学定数nおよびkなどの材料特性は、実験データをエリプソメトリ解析ソフトウェア、Delta Psi 2で作製された理論モデルに当てはめることによって推定される。このモデルの妥当性および頑健性は、カイ2乗(χ2)法に基づく最小化アルゴリズムを用い、相関行列を計算することによって、すべての測定点に関して二重にチェックされる。本明細書に表示した図面に示すMoSi被膜の光学特性は、190〜820nmの異なる波長において、nは青線、kは赤線で示される。
【0074】
MoSi薄膜に関して、以下の実験条件を用いた。
・測定のスペクトル域190〜820nm
・スポットサイズ:直径1mm
・積分時間:200ms

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体溶媒と、
シルセスキオキサンを含む二酸化ケイ素前駆体と、
極性プロトン性溶媒、および
モリブデン(V)エトキシド、
モリブデン(VI)オキシドビス(2,4-ペンタンジオナート)、または
Lが有機分子またはリガンドを含む、MoxLy
のうちの少なくとも一つを含む溶液から、該極性プロトン性溶媒を蒸発させることによって形成された、モリブデン前駆体と
を混合することによって形成された、ゾルゲル組成物。
【請求項2】
前記シルセスキオキサンが、ポリ(2-クロロエチル)シルセスキオキサンを含む、請求項1記載のゾルゲル組成物。
【請求項3】
前記溶液が、モリブデン(V)エトキシドを含み、かつ前記ゾルゲル組成物が、モリブデン原子とケイ素原子の比率約1:50〜約50:1を含む、請求項1記載のゾルゲル組成物。
【請求項4】
前記比率が約1:10〜約10:1である、請求項3記載のゾルゲル組成物。
【請求項5】
前記溶液が、モリブデン(VI)オキシドビス(2,4-ペンタンジオナート)を含み、かつ前記ゾルゲル組成物が、モリブデン原子とケイ素原子の比率約1:50〜約50:1を含む、請求項1記載のゾルゲル組成物。
【請求項6】
前記比率が約1:10〜約10:1である、請求項5記載のゾルゲル組成物。
【請求項7】
前記極性プロトン性溶媒がエタノールを含む、請求項1記載のゾルゲル組成物。
【請求項8】
前記担体溶媒が、重量パーセント約5%〜約30%の前記二酸化ケイ素前駆体および前記モリブデン前駆体を含み、かつ該担体溶媒が、4≦n≦17である式CnH(2n+2)Oを含むアルコールを含む、請求項1記載のゾルゲル組成物。
【請求項9】
前記重量パーセントが約15%〜約25%であり、かつ前記担体溶媒がデカノールを含む、請求項8記載のゾルゲル組成物。
【請求項10】
前記ゾルゲル組成物の硬化温度を低下させることができる触媒をさらに含む、請求項1記載のゾルゲル組成物。
【請求項11】
前記触媒がテトラブチルアンモニウムフルオリドである、請求項10記載のゾルゲル組成物。
【請求項12】
ジメチルホルムアミドおよびポリエチレングリコールのうちの少なくとも一つをさらに含む、請求項1記載のゾルゲル組成物。
【請求項13】
ジメチルホルムアミドとポリエチレングリコールの約1:10〜約10:1の体積比で、ジメチルホルムアミドおよびポリエチレングリコールを含む、請求項12記載のゾルゲル組成物。
【請求項14】
アセトンをさらに含む、請求項1記載のゾルゲル組成物。
【請求項15】
請求項1記載のゾルゲル組成物を硬化することによって形成された固体であって、
硬化する段階が、
前記ゾルゲル組成物を約100℃〜約350℃の温度で加熱すること、または
深紫外線、紫外線、紫外可視光線、または可視光線のうちの少なくとも一つを該ゾルゲル組成物に照射すること
のうちの少なくともいずれかを含む、固体。
【請求項16】
波長193nmで測定された屈折率約1.15〜約2.5を含む、請求項15記載の固体。
【請求項17】
前記屈折率が約1.5〜約2.0である、請求項16記載の固体。
【請求項18】
フォトマスクの少なくとも一部に配置される、請求項15記載の固体。
【請求項19】
前記フォトマスクの透明欠陥(clear defect)の少なくとも一部に配置される、請求項18記載の固体。
【請求項20】
先端にインクが配置されたナノスコピック(nanoscopic)チップを提供する段階であって、該インクが、担体溶媒とシルセスキオキサンとを混合することによって形成されたゾルゲル組成物を含む段階;
欠陥領域を含むフォトマスクを提供する段階;
該欠陥領域で該チップを該フォトマスクと接触させる段階であって、インクが該チップから該領域に移動する段階;ならびに
該インクを約100℃〜約350℃の温度で加熱すること、または
深紫外線、紫外線、紫外可視光線、または可視光線のうちの少なくとも一つを該インクに照射すること
のうちの少なくともいずれかによって、硬化インクを形成する段階
を含む、該フォトマスクを修復する方法。
【請求項21】
前記硬化インクを形成する段階が、該インクを約100℃〜約350℃の温度で加熱することを含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記温度が、約100℃〜約250℃である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記温度が、走査型プローブ顕微鏡チップまたは走査型プローブ顕微鏡カンチレバーのうちの少なくとも一つに置かれた抵抗加熱装置から提供される、請求項21記載の方法。
【請求項24】
前記形成する段階が、前記インクを、深紫外線、紫外線、紫外可視光線、または可視光線のうちの少なくとも一つを含む電磁放射線に曝露することを含む、請求項20記載の方法。
【請求項25】
前記形成する段階が、前記インクを、少なくとも100mJ/cm2の総線量を含む深紫外線に曝露することを含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記ゾルゲル組成物が、前記担体溶媒と、前記シルセスキオキサンと、モリブデン前駆体とを混合することによって形成され、かつ
該モリブデン前駆体が、極性プロトン性溶媒と、
モリブデン(V)エトキシド、
モリブデン(VI)オキシドビス(2,4-ペンタンジオナート)、または
Lが有機分子またはリガンドを含む、MoxLy
のうちの少なくとも一つとを含む溶液から該極性プロトン性溶媒を蒸発させることによって形成される、請求項20記載の方法。
【請求項27】
前記シルセスキオキサンが、ポリ(2-クロロエチル)シルセスキオキサンを含む、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記溶液が、モリブデン(V)エトキシドを含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記溶液が、モリブデン(VI)オキシドビス(2,4-ペンタンジオナート)を含む、請求項27記載の方法。
【請求項30】
前記ゾルゲル組成物が、前記インクの硬化温度を低下させることができる触媒をさらに含む、請求項26記載の方法。
【請求項31】
前記触媒が、テトラブチルアンモニウムフルオリドである、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記硬化インクが、波長193nmで測定された屈折率約1.15〜約2.5を有するモリブデンと二酸化ケイ素の合金を含む、請求項26記載の方法。
【請求項33】
前記欠陥領域が、少なくとも100nmの深さの凹部を含む、請求項32記載の方法。
【請求項34】
前記チップが走査型プローブ顕微鏡チップを含む、請求項20記載の方法。
【請求項35】
前記チップが原子間力顕微鏡チップを含む、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記チップの先端がポリマーで被覆されている、請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記チップの先端が導電性材料で被覆されている、請求項35記載の方法。
【請求項38】
前記導電性材料が金を含む、請求項37記載の方法。
【請求項39】
担体溶媒と、
シルセスキオキサンを含む二酸化ケイ素前駆体と、
極性プロトン性溶媒、および
モリブデン(V)エトキシド、
モリブデン(VI)オキシドビス(2,4-ペンタンジオナート)、または
Lが有機分子またはリガンドを含む、MoxLy
のうちの少なくとも一つを含む溶液から、該極性プロトン性溶媒を蒸発させることによって形成された、モリブデン前駆体と
を混合することによって形成されるゾルゲル組成物を、基板上に堆積させる段階;ならびに
該ゾルゲル組成物を熱硬化する段階
を含む、MoSiナノ構造を形成する方法。
【請求項40】
前記担体溶媒が、重量パーセント約5%〜約30%の二酸化ケイ素前駆体およびモリブデン前駆体を含むアルコールを含み、
前記極性プロトン性溶媒がエタノールを含み、かつ
前記シルセスキオキサンが、ポリ(2-クロロエチル)シルセスキオキサンを含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記堆積させる段階が、ディップペン・ナノリソグラフィ法を使用して、走査型プローブ顕微鏡のチップから前記ゾルゲル組成物を堆積させることを含む、請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記堆積させる段階が、前記組成物を前記基板上にスピンコーティングして、薄膜を形成することを含む、請求項40記載の方法。
【請求項43】
前記熱硬化する段階が、前記組成物を約100℃〜約350℃で加熱することを含む、請求項40記載の方法。
【請求項44】
前記基板がフォトマスクを含む、請求項40記載の方法。
【請求項45】
先端にインクが配置されたナノスコピックチップを提供する段階であって、該インクが、担体溶媒とシルセスキオキサンとを混合することによって形成されたゾルゲル組成物を含み、かつ該インクが、MoSi層と実質的に一致するnおよびkを有するように適合される段階;
欠陥領域を含むフォトマスクを提供する段階;
該欠陥領域で該チップを該フォトマスクと接触させる段階であって、インクが該チップから該領域に移動する段階;ならびに
該インクを約100℃〜約350℃の温度で加熱すること、または
深紫外線、紫外線、紫外可視光線、または可視光線のうちの少なくとも一つを該インクに照射すること
のうちの少なくともいずれかによって、硬化インクを形成する段階
を含む方法。
【請求項46】
二酸化ケイ素前駆体化合物と、
極性プロトン性溶媒およびモリブデン化合物を含む溶液から該極性プロトン性溶媒を蒸発させることによって形成された、モリブデン前駆体と
を混合することによって形成された、ゾルゲル組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate


【公表番号】特表2012−532342(P2012−532342A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517867(P2012−517867)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/040470
【国際公開番号】WO2011/002806
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(508311352)ナノインク インコーポレーティッド (16)
【Fターム(参考)】