説明

フォトマスクブランクス及びフォトマスク

【課題】高感度で、解像度に優れたパターンを形成しうるフォトマスクブランクスを提供し、細線等の微細パターンを有するものであっても、遮光膜の膜強度とマスク洗浄の溶剤に対する溶剤耐性に優れたフォトマスクを提供する。
【解決手段】基板上に、(A)バインダーポリマー、(B)分子内にビニルフェニル基を2個以上有する化合物、(C)重合開始剤、および(D)遮光材料、を含む感光性組成物層を備えるフォトマスクブランクス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフォトマスクブランクス及びフォトマスクに関する。より詳細には、PDP、FED、LCD等のフラットパネルディスプレイ、CRT用シャドーマスク、印刷配線板、半導体等の分野におけるフォトリソ工程において用いうるフォトマスクを作製しうるフォトマスクブランクス、それにより得られたフォトマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイ、CRT用シャドーマスク、印刷配線板、半導体等の分野におけるフォトリソ工程において用いられるフォトマスクとしては、金属クロム層(Cr層)を設けたCrマスク、ハロゲン化銀乳剤層を設けたEmマスク(エマルションマスク)が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
Crマスクは、石英やガラス等の透明基材上にクロム層をスパッタリング法により形成後、この上にエッチングレジストを塗布などにより設け、HeCdレーザー(442nm)などによる露光、アルカリ水溶液などでの現像によるエッチングレジストのパターニング、クロムのエッチング、及びエッチングレジストの剥離を行って作製される。Crマスクは、ピンホール等の欠陥修正可能で、高解像度、高耐久性(耐傷性)、高洗浄性にも優れるというメリットを有する。その一方、Crマスクは、作製工程が煩雑なため高価であり、また、製造プロセスにおいてクロムエッチングが行われることに起因する廃液処理等の環境面の問題も有している。
【0004】
Emマスクは、ハロゲン化銀乳剤層(感光性組成物層)を石英やガラス等の透明基材上に設け、YAGレーザーなどにより露光、現像、定着処理で作製されるものである。Emマスクの作製に用いられるハロゲン化銀乳剤は、光に対する感度が高いため、露光エネルギーが小さくてもよく(〜0.1mJ/cm)、また、環境にも優しく、安価なフォトマスクブランクスである。この反面、Emマスクは、感光性材料としてハロゲン化銀を用いるため、解像度が余り高くなく(3μm程度)、極微細なパターンを作製するには不向きであり、また感光性組成物層がゼラチン膜であるため耐久性に乏しい。また、Emマスクは、欠陥修正が実質的に困難であるという欠点を有している。
【0005】
また、他のタイプのフォトマスクとして、黒色顔料等の黒色材料を含有し、かつ近紫外光ないし可視光で画像形成が可能な感光性組成物層を有するフォトマスクブランクスを用いて作製されるものが知られている(特許文献1、2参照。)。該フォトマスクブランクスが有する感光性組成物層は、フォトマスク作製時に照射される近紫外ないし可視領域における吸光度が小さいため高感度であり、一方、フォトマスク使用時に照射される紫外領域の光の吸収特性が良好なため、感光性組成物層を露光・現像することにより、解像度に優れたフォトマスクを得ることができる。また、このフォトマスクは、金属膜を必要とせず、レリーフ画像であるため欠陥修正を簡便に行うことができ、感度や解像度等のバランスがよく、安価で環境への負荷も小さいという特徴も有する。
【0006】
ところで、フォトマスクの作製に遮光材料を感光性組成物層に含有するフォトマスクブランクスを用いる場合、通常光ラジカル重合系は高感度であるが、空気中の酸素による重合阻害により感度低下するため、感光性組成物層の上に酸素遮断性の層を設ける手段が取られている。しかし、酸素遮断性を高くしすぎると、感光性組成物を保存時に暗重合反応によるカブリが発生しやすくなり長期保存適性が劣化するという問題もあった。また高濃度に遮光材料を含有した系においては露光光が感光層の深部に至るまで十分に到達しないため、感光層表面近傍では十分に硬化が進むものの、それより深い領域は硬化反応が十分に進行しないという事態が生じ、その場合には、現像時に感光性組成物層の基板近傍部分が側面からえぐり取られて断面が逆台形のようになったり、カケが生じたりして、形成された画像の解像度、画像エッジ部の直線性が劣化するという問題があった。
【0007】
このような問題を解決するため、重合可能なバインダー樹脂を使用したフォトマスク材料が提案(例えば特許文献3)されているが、高感度で、解像度に優れた感光性組成物を用いて得られるフォトマスクブランクスは未だ提供されておらず、従来にはない新たな技術が求められているのが現状である。
また、フォトマスクは、同じ形状のパターン形成に繰り返し使用されるのが一般的であるが、露光工程で使用されると、被露光物との接触でレジストに汚染されたり、レジストからの昇華物等で汚れが生じたりして、その場合、設計通りのマスキングが困難となり、特に細線加工においては、所望の解像度が得られないことがある。マスクの汚染物質を除去し再度使用するため、アルコール類、ケトン類等の溶剤によるマスク洗浄が必要であるが、これらの溶剤に対してフォトマスクが寸法変化を起こしたり、変形したり、あるいは遮光材料が削れたり、傷がついたりして、高解像度のマスクパターンを維持できないという問題があり、マスク洗浄に耐性のあるマスク材料が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−283914号公報
【特許文献2】特開2001−343734号公報
【特許文献3】特開2003−186176号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】教育文科会編、「フォトファブリケーション」、日本フォトファブリケーション協会発行、67〜80ページ、1992年6月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記従来技術における問題点に鑑みてなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明は、高感度で、解像度に優れたパターンを形成しうるフォトマスクブランクスを提供することを目的とする。
また、本発明は、前記本発明のフォトマスクブランクスを用いてなり、細線等の微細パターンを有するものであっても、遮光膜の膜強度とマスク洗浄の溶剤に対する溶剤耐性に優れたフォトマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の重合性化合物を用いることで、上記課題を課題しうることを見出し、本発明を完成した。
本発明の構成は、以下に示す通りである。
【0012】
<1> 基板上に、(A)バインダーポリマー、(B)分子内にビニルフェニル基を2個以上有する化合物、(C)重合開始剤、および(D)遮光材料、を含む感光性組成物層を備えるフォトマスクブランクス。
<2> 前記(A)バインダーポリマーが、側鎖に酸性基を有するバインダーポリマーである<1>に記載のフォトマスクブランクス。
【0013】
<3> 前記(A)バインダーポリマーが、側鎖にビニルフェニル基を有するバインダーポリマーである<1>または<2>に記載のフォトマスクブランクス。
<4> 前記感光性組成物層が、さらに、(E)増感色素を含む感光性組成物層である<1>から<3>のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクス。
【0014】
<5> 前記感光性組成物層上に、さらに、25℃における酸素透過性が1.0ml/m・day・atm以上2000ml/m・day・atm以下である酸素遮断性層を備える<1>から<4>のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクス。
<6> 前記基板が、厚みが0.1mm以上20mm以下の透明なガラスである<1>から<5>のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクス。
<7> 前記(C)重合開始剤が、ヘキサアリールビイミダゾール化合物である<1>から<6>のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクス。
【0015】
<8> <1>から<7>のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクスが有する感光性組成物層を、画像様に露光した後、現像することで形成された遮光層を有するフォトマスク。
<9> 前記露光が、波長350nm以上450nm以下の光により行われる<8>に記載のフォトマスク。
【0016】
<10> 前記遮光層の膜厚が1.0μm以上2.0μm以下であり、且つ波長365nmにおけるオプティカルデンシティー(O.D.)が3.5以上である<8>または<9>に記載のフォトマスク。
<11> 前記遮光層におけるラインアンドスペース(L/S)の線幅が、0.1μm以上20μm以下である<8>から<10>のいずれか1項に記載のフォトマスク。
【0017】
本発明の作用は明確ではないが、以下のように推定している。
本発明のフォトマスクブランクスは、分子内にビニルフェニル基を2個以上有する特定構造の重合性化合物を用いることによって、遮光性が高くても高感度で解像度が高いパターンを有するフォトマスクを形成しうる。これは複数のビニルフェニル基に起因して露光工程での架橋密度が表面のみならず、基板近傍においても向上して、基板と遮光パターンとの密着性が向上すると共に、基板近傍で十分に硬化していなくてもビニルフェニル基がバルキーな親油性を有しているため、現像液に対する耐性が向上し、現像工程におけるパターンのアンダーカットが抑制され、直線性も向上したものと推定される。特に、本発明の好ましい態様においては、酸性基とビニルフェニル基とを側鎖に有するバインダーポリマーを使用することによって、ビニルフェニル基による硬化性と現像液への耐性が向上し、基板と遮光パターンとの密着性も向上したために、さらに細線加工性が良好となったものと考えられる。
【0018】
本発明のフォトマスクブランクスによって得られたフォトマスクは、露光マスクに使用した場合にキズがつきにくく、しかもマスク洗浄においても削られたり、カケが生じることがなかった。これは本発明における特定重合性化合物が有する高い架橋密度に加えて、フェニル環が有する強靭な物性によってマスク層の耐傷性が向上し、また洗浄溶剤に対する耐性が向上したためと推定される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高感度で、解像度に優れたパターンを形成しうるフォトマスクブランクスを提供でき、該フォトマスクブランクスを用いてなり、細線等の微細パターンを有するものであっても、遮光膜の膜強度とマスク洗浄の溶剤に対する溶剤耐性に優れたフォトマスクを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のフォトマスクブランクス、及びそれにより作製されたフォトマスクについて詳細に説明する。
【0021】
[フォトマスクブランクス]
本発明のフォトマスクブランクスは、基板上に、(A)バインダーポリマー、(B)分子内にビニルフェニル基を2個以上有する化合物(以下、特定重合性化合物とも称する。)、(C)重合開始剤、および(D)遮光材料、を含む感光性組成物層を有することを特徴とする。また、目的に応じて、該感光性組成物層上には、更に、酸素遮断性層等の他の層を有することもできる。
【0022】
(感光性組成物層)
本発明のフォトマスクブランクスが有する感光性組成物層は、少なくとも遮光材料を含有し且つ紫外光ないし可視光で画像形成が可能な層である。即ち、感光性組成物層は、近紫外光ないし可視光による画像様の露光後、現像液を用いて現像処理することにより、画像形成が可能な層である。
感光性組成物層は、環境問題上アルカリ現像型が好ましく、本発明においては、露光部分が硬化してアルカリ現像液に不溶化するネガ型の層を用いている。
【0023】
ネガ型の感光性組成物層は、露光により硬化して、遮光層を形成する層であり、少なくとも、(A)バインダーポリマー、(B)分子内にビニルフェニル基を2個以上有する化合物、(C)重合開始剤、および(D)遮光材料、を含む感光性組成物により形成される層である。
以下に本発明の感光性組成物に用いられる各成分を詳細に説明する。
【0024】
<(A)バインダーポリマー>
感光性組成物層は、(A)バインダーポリマーを含有する。本発明におけるバインダーポリマーは、特に限定されないが、アルカリ水溶液への溶解性・現像性の観点から、酸性基を有する有機重合体が好ましく、前記酸性基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、リン酸基などが挙げられる。前記酸性基中でも、合成の容易性、コスト、および現像性の点で、カルボン酸基が好ましい。
【0025】
バインダーポリマーの骨格としては、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂から選ばれる高分子骨格が好ましく、これらの中でも、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、スチレン系樹脂等のビニル共重合体、ポリウレタン樹脂が特に好ましい。具体的には、特開2001−343734号公報の〔0011〕、特開2003−107697号公報の〔0017〕〜〔0019〕、特開2003−186176号公報の〔0022〕〜〔0027〕、特開2006−259558号公報の〔0143〕〜〔0147〕、特開2007−86165号公報の〔0152〕〜〔0154〕に記載のバインダーポリマーが好ましく用いられる。
【0026】
本発明で特に好ましく用いられる側鎖に架橋性基を有するポリウレタン樹脂は、例えば、(i)ジイソシアネート化合物、(ii)少なくとも1つのカルボキシル基を有するジオール化合物、(iii)架橋性基を有するジイソシアネート化合物及び必要であれば(iv)カルボキシル基を有さないジオール化合物、を重付加反応させることにより得ることができる。これらの具体例は、特開2007−57597号公報の〔0050〕〜〔0132〕に挙げられ、好ましく用いられる。
【0027】
高分子バインダーとしては、ポリウレタン合成時に側鎖に架橋性基を導入して得られる上記のポリウレタン樹脂のほかに、特開2003−270775号公報に記載されるようなカルボキシル基を有するポリウレタンに高分子反応で架橋性基を導入して得られるポリウレタン樹脂を用いることもできる。
本発明では、特公平7−12004号、特公平7−120041号、特公平7−120042号、特公平8−12424号、特開昭63−287944号、特開昭63−287947号、特開平1−271741号、特開2001−109139号、特開2001−117217号、特開2001−312062号、特開2003−131397号の各公報に記載のポリウレタン樹脂が好ましく用いられる。
【0028】
上記のカルボキシル基を有する有機重合体は、共重合体成分として、カルボキシル基含有モノマーを含むものであり、カルボキシル基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸2−カルボキシエチルエステル、メタクリル酸2−カルボキシエチルエステル、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、4−カルボキシスチレン等のような例が挙げられる。
【0029】
本発明における(A)バインダーポリマーは、さらに側鎖に架橋性基を有する高分子バインダーであることが好ましい。
ここで架橋性基とは、フォトマスク材料を露光した際に、感光性組成物層中で起こるラジカル重合反応の過程でバインダーポリマーを架橋させる基を意味する。架橋性基としては、このような機能の基であれば特に限定されないが、例えば、付加重合反応し得る官能基としてエチレン性不飽和結合基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。また光照射によりラジカルになり得る官能基であってもよく、そのような架橋性基としては、例えば、チオール基、ハロゲン基、オニウム塩構造等が挙げられる。なかでも、エチレン性不飽和結合基が好ましく、下記一般式(a1)〜(a3)で表される官能基が特に好ましく、最も好ましくは(a3)で表される官能基である。
【0030】
【化1】

【0031】
上記一般式(a1)において、Rla〜R3aはそれぞれ独立に、1価の有機基を表す。R1aとしては、好ましくは、水素原子又は置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、メチル基がラジカル反応性が高いことから好ましい。また、R2a、R3aは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基がラジカル反応性が高いことから好ましい。
【0032】
Xは、酸素原子、硫黄原子、又は−N(R12a)−を表し、R12aは、水素原子、又は1価の有機基を表す。ここで、R12aは、置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基がラジカル反応性が高いことから好ましい。
【0033】
ここで、導入し得る置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基などが挙げられる。
【0034】
【化2】

【0035】
一般式(a2)において、R4a〜R8aは、それぞれ独立に1価の有機基を表す。R4a〜R8aは、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基が好ましい。導入し得る置換基としては、一般式(a1)と同様のものが例示される。
【0036】
Yは、酸素原子、硫黄原子、又は−N(R12a)−を表す。R12aは、一般式(a1)のR12aと同義であり、好ましい例も同様である。
【0037】
本発明に好ましく用いられる側鎖に架橋性基を有する高分子バインダーの最も好ましい態様は、側鎖にビニルフェニル基を有する重合体であり、該フェニル基が直接もしくは連結基を介して主鎖と結合したものであり、連結基としては特に限定されず、任意の基、原子またはそれらの複合した基が挙げられる。また、前記フェニル基はビニル基以外の置換可能な基もしくは原子で置換されていても良く、また、前記ビニル基はハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等で置換されていても良い。
上記した側鎖にビニルフェニル基を有する重合体とは、更に詳細には、下記一般式(a3)で表される基を側鎖に有するものである。
【0038】
【化3】

【0039】
一般式(a3)中、Zは連結基を表し、R11、R12、及びR13は、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等であり、更にこれらの基は、アルキル基、アミノ基、アリール基、アルケニル基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等で置換されていても良い。R14は置換可能な基または原子を表す。n1は0〜3を表し、m1は0〜4の整数を表し、k1は1〜4の整数を表す。
【0040】
一般式(a3)について更に詳細に説明する。Zで表される連結基としては、−O−、−S−、炭素数1〜30のアルキレン基、炭素数1〜30のアルケニレン基、炭素数1〜30のアリーレン基、−N(R15)−、−C(O)−O−、−C(R16)=N−、−C(O)−、スルホニル基、複素環基、及び下記構造式で表される基から選ばれた基、またはこれらの基が2個以上連結した基が挙げられる。ここでR15及びR16は、水素原子、アルキル基、アリール基等を表す。更に、上記したZで表される連結基には、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
【0041】
【化4】

【0042】
上記複素環基としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、イソオキサゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、イソチアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、チアトリアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズセレナゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キノキサリン環等の含窒素複素環、フラン環、チオフェン環等が挙げられ、更にこれらの複素環には置換基が結合していても良い。
一般式(a3)で表される基の例を以下に示すが、これらの例に限定されるものではない。
【0043】
【化5】

【0044】
【化6】

【0045】
【化7】

【0046】
【化8】

【0047】
一般式(a3)で表される基の中には好ましいものが存在する。即ち、R11及びR12が水素原子で、R13が水素原子もしくは炭素数4以下の低級アルキル基(メチル基、エチル基等)であるものが好ましい。更に、連結基Zとしては複素環を含むものが好ましく、k1は1または2であるものが好ましい。
【0048】
上記の例で示されるような側鎖にビニルフェニル基を有する重合体としては、アルカリ性水溶液に可溶性を有することが好ましく、そのために酸性基含有モノマーを共重合成分として含む重合体であることが特に好ましい。前記酸性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、リン酸基などが挙げられる。前記酸性基を有するモノマーの中でも、共重合性やコスト、現像性の点で、カルボキシル基含有モノマーが好ましい。この場合、共重合体組成に於ける側鎖にビニルフェニル基を有するモノマーの割合として、共重合体トータル組成100質量%中に対して5質量%以上95質量%以下であることが好ましく、10〜95質量%の範囲がより好ましく、更に20〜90質量%の範囲が好ましい。また、共重合体中に於ける酸性基含有モノマーの割合は5質量%以上99質量%以下であることが好ましく、更に10〜90質量%の範囲が好ましい。これ以下の割合では共重合体がアルカリ水溶液に溶解しない場合がある。
【0049】
カルボキシル基を有するモノマー以外にも共重合体中に他のモノマー成分を導入して多元共重合体として合成、使用することも好ましく行うことが出来る。こうした場合に共重合体中に組み込むことが出来るモノマーとして、スチレン、4−メチルスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−アセトキシスチレン、4−アミノスチレン、クロロメチルスチレン、4−メトキシスチレン等のスチレン誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ドデシル等のメタクリル酸アルキルエステル類、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アリールエステル或いはアルキルアリールエステル類、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メトキシジエチレングリコールモノエステル、メタクリル酸メトキシポリエチレングリコールモノエステル、メタクリル酸ポリプロピレングリコールモノエステル等のアルキレンオキシ基を有するメタクリル酸エステル類、メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸2−ジエチルアミノエチル等のアミノ基含有メタクリル酸エステル類、或いはアクリル酸エステルとしてこれら対応するメタクリル酸エステルと同様の例、或いは、アリルアミン、ジアリルアミン等のアミノ基含有モノマー類、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール等の含窒素複素環を有するモノマー類、或いは4級アンモニウム塩基を有するモノマーとして4−ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミドのメチルクロライドによる4級化物、N−ビニルイミダゾールのメチルクロライドによる4級化物、4−ビニルベンジルピリジニウムクロライド等、或いはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、またアクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシエチルアクリルアミド、4−ヒドロキシフェニルアクリルアミド等のアクリルアミドもしくはメタクリルアミド誘導体、さらにはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルマレイミド、ヒドロキシフェニルマレイミド、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類、またメチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、その他、N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルアルコール、ビニルトリメトキシシラン、グリシジルメタクリレート等各種モノマーを適宜共重合モノマーとして使用することが出来る。これらのモノマーの共重合体中に占める割合としては、先に述べた共重合体組成中に於けるビニルフェニル基を有するモノマーおよび酸性基含有モノマーの好ましい割合が保たれている限りに於いて任意の割合で導入することが出来る。
【0050】
本発明における(A)バインダーポリマーの分子量は、重量平均分子量で1000から100万の範囲であることが好ましく、さらに1万から30万の範囲にあることが特に好ましい。
【0051】
バインダーポリマーは、感光性組成物層中に任意の量で含有させることができるが、画像強度等の観点からは、感光性組成物層の全固形分中、好ましくは10〜90質量%、より好ましくは30〜80質量%である。
【0052】
本発明の好ましい形態である側鎖に酸性基、およびビニルフェニル基を有するバインダーポリマーの例を下記に示す。式中、数字は共重合体トータル組成100質量%中に於ける各繰り返し単位の質量%を表す。これらの重量平均分子量は8000〜300000である。
【0053】
【化9】

【0054】
【化10】

【0055】
【化11】

【0056】
【化12】

【0057】
【化13】

【0058】
<(B)分子内にビニルフェニル基を2個以上有する化合物(特定重合性化合物)>
本発明に用いられる分子内にビニルフェニル基を2個以上有する化合物とは、下記一般式(2)で示す置換基を分子内に2個以上有するモノマーまたはオリゴマーを含有することで高感度な感光性組成物を与えることから好ましい。特定重合性化合物を使用することにより、高感度で細線加工性の優れたフォトマスクブランクスを作成することができ、膜強度に優れ、溶剤耐性が良好なフォトマスクを作製することができる。
特定重合性化合物は、下記一般式(2)で表されるものが好ましい。
【0059】
【化14】

【0060】
一般式(2)中、Aは連結基を表す。R17は水素原子またはメチル基を表す。R18は置換可能な基または原子を表す。pは0〜4の整数を表し、qは2以上10以下の整数を表す。好ましくはqは2以上4以下である。
特定重合性化合物の分子内に含まれる好ましいビニルフェニル基の数としては、2〜8個が好ましく、より好ましくは2〜6個、さらに好ましくは2〜4個である。
【0061】
一般式(2)について更に詳細に説明する。Aの連結基としては、酸素原子、硫黄原子、炭素数1〜30のアルキレン基、炭素数1〜30のアルケニレン基、炭素数1〜30のアリーレン基、−N(R19)−、−C(O)−O−、−C(R20)=N−、−C(O)−、スルホニル基、および複素環基から選ばれた基の単独もしくは2以上が複合した基が挙げられる。ここでR19及びR20は、水素原子、アルキル基、アリール基等を表す。更に、上記した連結基には、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
【0062】
上記複素環基としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、イソオキサゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、イソチアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、チアトリアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズセレナゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キノキサリン環等の含窒素複素環、フラン環、チオフェン環等が挙げられ、これらには置換基が結合していても良い。
【0063】
特定重合性化合物として、特開2004−294935号公報等に記載された印刷版用の感光性組成物に使用される化合物なども用いることができるが、上記一般式(2)で表される化合物の中でも、下記に示す具体例が好ましい。本発明は、これらの例に限定されるものではない。
【0064】
【化15】

【0065】
特定重合性化合物は、2種以上を併用しても良い。ただし、酸素遮断層を使用しない場合には特定重合性化合物を単独で有することが好ましい。
特定重合性化合物の含有量としては、感光性組成物の全質量に対し、1〜20質量%が好ましく、より好ましくは2〜10質量%の範囲である。
この範囲内にあれば本発明の効果を発揮できる。
【0066】
本発明には特定重合性化合物に他の構造の重合性化合物が併用可能であり、併用可能な重合性化合物としては例えば多官能性アクリレート化合物である。
多官能性アクリレート化合物の例としては、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールグリセロールトリアクリレート、グリセロールエポキシトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能アクリル系モノマーが挙げられる。或いは、アクリレートオリゴマーとして、アクリロイル基、メタクリロイル基を導入した各種オリゴマーであるポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等も同様に使用される。これらの内で、特に好ましいアクリレート化合物の例を以下に示す。
【0067】
【化16】

【0068】
【化17】

【0069】
特定重合性化合物に多官能性アクリレート化合物を併用する場合は、特定重合性化合物:多官能性アクリレート化合物が1:0.1〜0.1:1の範囲の質量比で使用することが好ましく、1:0.2〜0.2:1の範囲の質量比で用いることがさらに好ましい。
【0070】
なお、これら特定重合性化合物、多官能性アクリレート化合物などのエチレン性不飽和化合物の含有量は、感光性組成物層の全質量に対し、5〜80質量%が好ましく、より好ましくは30〜70質量%の範囲である。
【0071】
<(C)重合開始剤>
本発明における(C)重合開始剤としては、特許、文献等で公知である種々の光重合開始剤、あるいは2種以上の光重合開始剤の併用系(光重合開始系)を適宜選択して使用することができる。本発明においては、単独で用いる光重合開始剤、2種以上の光重合開始剤を併用した系を総括して単に光重合開始剤という。
【0072】
本発明における重合開始剤には特に制限はなく、露光波長に応じて適宜選択され、例えば400nm付近の光を光源として用いる場合には、光重合開始剤として、ベンジル、ベンゾイルエーテル、ミヒラーズケトン、アントラキノン、チオキサントン、アクリジン、フェナジン、ベンゾフェノン、ヘキサアリールビスイミダゾール化合物等の公知の光重合開始剤から広く選択して使用される。
【0073】
また、重合開始剤としては、増感色素との共存下で光照射されたときに、増感色素の光励起エネルギーを受け取って活性ラジカルを発生し、重合性化合物を重合に到らしめるラジカル発生剤である、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物、チタノセン系化合物、メタロセン化合物、トリアジン化合物、オキシムエステル化合物、ハロゲン化炭化水素誘導体、ジアリールヨードニウム塩、有機硼素酸塩、及び有機過酸化物等が好ましく挙げられ、さらに、露光感度、基板に対する感光性組成物層の密着性、及び保存安定性等の面から、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物、メタロセン化合物、トリアジン化合物、オキシムエステル化合物、及び有機硼素酸塩が好ましく、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物が特に好ましい。これらの重合開始剤については特開2004−317652号公報、特開2005−47947号公報、特開2005−91618号公報、特開2005−134893号公報、特開2005−250158号公報、特開2005−300650号公報、特開2006−267289号公報、特開2007−47742号公報、特開2007−206216号公報、特開2007−248863号公報、特開2007−249036号公報、特開2008−242093号公報、特開2008−276167号公報、特開2007−99836号公報に記載の重合開始剤が使用できる。
【0074】
本発明における好ましい光重合開始剤であるヘキサアリールビイミダゾール化合物について説明する。
ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、欧州特許第24629号、欧州特許第107792号、米国特許第4410621号、欧州特許第215453号及びドイツ特許公開3211312号等の各明細書に記載の種々の化合物を使用することが可能である。好ましいものとしては、例えば、2,4,5,2’,4’,5’−ヘキサフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−ブロモフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラキス(3−メトキシフェニル)−ビスイミダゾール、2,5,2’,5’−テトラキス(2−クロロフェニル)−4,4’−ビス(3,4−ジメトキシフェニル)ビスイミダゾール、2,2’−ビス(2,6−ジクロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−ニトロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ジ−o−トリル−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−エトキシフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、及び2,2’−ビス(2,6−ジフルオロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール等を挙げることができる。
ヘキサアリールビイミダゾール化合物は2種以上併用してもよい。
【0075】
光重合開始剤としてヘキサアリールビイミダゾール化合物を用いる場合、該ヘキサアリールビスイミダゾール化合物の使用量は、特定重合性化合物と他の重合性化合物との総合計量100質量部に対し、0.05〜50質量部が好ましく、より好ましくは0.2〜30質量部である。ヘキサアリールビイミダゾール化合物とともに、他の光重合開始剤を併用してもよい。
【0076】
光重合開始剤は、必要に応じ、2−メルカプトベンズチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズオキサゾール等のチオール化合物、N−フェニルグリシン、N,N−ジアルキルアミノ芳香族アルキルエステル等のアミン化合物等の水素供与性化合物と併用することにより更に光開始能力が高められることが知られている。
特に、光開始能力が高く本発明に好適な水素供与性化合物としては、メルカプト基含有化合物が上げられる。
【0077】
<(D)遮光材料>
本発明のフォトマスクブランクスにおける感光性組成物層は(D)遮光材料を含有する。本発明における遮光材料とは、250nm〜400nmの光を吸収し、好ましくは塗膜形成時の波長365nmにおけるオプティカルデンシティー(O.D.)が3.5以上になる光吸収剤を指す。
本発明における遮光材料とは、フォトマスクが適用される活性光線の波長の光を反射、吸収することにより透過させない機能を有する材料であり、具体的には、マスクとして使用する際の露光光源(水銀灯、メタルハライド灯、キセノン灯等)が発する波長域200〜450nm、好ましくは250〜400nm程度、の光を実質遮光できるものであり、塗膜形成時の波長365nmにおけるオプティカルデンシティー(O.D.)が2.5以上であることを要し、好ましくは、3.5以上であるものを指す。
本発明でオプティカルデンシティー(O.D.)とは、波長365nmにおいて、伊原電子工業(株)製 Ihac−TC5で測定して得られる値である。
【0078】
本発明に用いる遮光材料は、フォトマスクブランクスにより作製されたフォトマスクの使用目的等に応じて適宜選択すればよい。
遮光材料としては、特に限定されないが、具体的には、特開2001−343734号公報の〔0015〕〜〔0016〕、特開2003−107697号公報の〔0027〕、〔0035〕〜〔0036〕、特開2003−186176号公報の〔0041〕〜〔0043〕、特開2004−302012号の段落〔0038〕〜〔0040〕に記載の着色剤に記載の金属粒子(金属化合物粒子、複合粒子、コア・シェル粒子などを含む)、顔料その他の粒子、フラーレンなどが好適に用いられる。
【0079】
顔料は一般に有機顔料と無機顔料とに大別されるが、有機顔料が好ましい。好適に使用される顔料の例としては、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ニトロ系顔料を挙げることができる。そのような有機顔料の色相は、例えば、黄色顔料、オレンジ顔料、赤色顔料、バイオレット顔料、青色顔料、緑色顔料、ブラウン顔料、黒色顔料等が挙げられる。
また、「顔料便覧、日本顔料技術協会編、誠文堂新光社、1989」、「COLOUR INDEX、THE SOCIETY OF DYES & COLOURIST、THIRD EDITION、1987」に記載の顔料を参照して、適宜用いることもできる。
【0080】
本発明に用いうる遮光材料としては、青色顔料や黒色材料であることが好ましく、該黒色材料としては、黒色顔料及び金属微粒子の少なくとも1種であることが好ましい。
【0081】
本発明における遮光材料として特に好ましくは、カーボンブラックである。
遮光材料としてカーボンブラックを用いる場合、感光性組成物層は、カーボンブラックのみを含有してもよいし、カーボンブラックと、他の色材(例えば、他の着色剤)を併用してもよい。カーボンブラックと他の色材を併用する場合には、感光性組成物層に含有される全着色剤中50質量%以上がカーボンブラックであると、感光性組成物層の色濃度を高濃度にする点で好ましい。
顔料を遮光材料として用いる場合、100nm以下の平均粒径を有する顔料が好ましく、1nm以上60nm以下のものがより好ましい。
【0082】
感光性組成物層固形分中の遮光材料の含有量は、フォトマスクブランクスにより作製されるフォトマスクの濃度や、膜厚、フォトマスクを作製する際の感度、解像性等を考慮して決められ、その種類によっても異なるが、10質量%〜50質量%が好ましく、より好ましくは15質量%〜35質量%である。
【0083】
<(E)増感色素>
感光性組成物層は、さらに(E)増感色素を含有することが好ましい。増感色素とは、吸収した光のエネルギーを光重合開始剤へとエネルギー移動又は電子移動により伝達することが可能な色素を言う。増感色素は、この機能を有する増感色素であれば特に吸収波長は限定されず、露光に用いるレーザーの波長により適宜選択されるが、本発明では、特に、360nmから450nmの波長域に吸収極大を持つ増感色素が好ましく用いられる。
【0084】
本発明に用いることができる増感色素としては、特に制限はなく、公知の増感色素を用いることができる。例えば、ローズベンガル、エオシン、エリスロシン、メロシアニン系化合物、ケトクマリン系化合物、ローダニン環を有する色素、等が挙げられる。
【0085】
また、本発明における増感色素としては、下記一般式(I)で表される増感色素(以下、適宜「特定増感色素」と称する。)が好ましい。
【0086】
【化18】

【0087】
一般式(I)中、R21及びR23は、それぞれ独立に、水素原子又は一価の非金属原子団を表す。Xは−N(R2627)を表す。R22、R24、R25、R26、及びR27はそれぞれ独立に水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R25は、R21、R22、R23、又はR24と脂肪族性又は芳香族性の環を形成するために結合することができる。Zは隣接する原子と共同して、酸性核を形成するのに必要な2価の非金属原子団を表す。
【0088】
特定増感色素の特徴の1つは、350nmから450nm波長領域に特に優れた吸収特性を有することにある。更に、特定増感色素は、感光性組成物層中に含有される種々の開始剤化合物の分解を効率良く引き起こし、非常に高い感光性を示す。
【0089】
一般式(I)中、Zは、酸性核を形成するのに必要な2価の非金属原子団を表し、好ましくはヘテロ原子を含む5員又は6員環構造を表す。
【0090】
ここで「酸性核」とは、ジェイムス(James)編「ザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス」(The Theory of the Photographic Process)第4版、マクミラン出版社、1977年、198頁により定義されるものである。
【0091】
一般式(I)における酸性核の具体例としては、特開2007−47742号公報の〔0233〕〜〔0234〕および〔0251〕〜〔0256〕、特開2007−86165号公報の〔0098〕〜〔0099〕および〔0111〕〜〔0121〕に記載の酸性核が挙げられる。
これらの酸性核は更に置換基を有してもよい。酸性核に導入しうる好ましい置換基としては、アルケニル基、芳香族基、芳香族複素環残基等の不飽和結合を有する置換基が挙げられる。
【0092】
一般式(I)における好ましい酸性核としては、2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン核、1,3−オキサゾリジン2,4−ジオン核、2−イミノ−2,4−オキサゾリジンジオン核が挙げられ、更に好ましくは、1,3−オキサゾリジン−2,4−ジオン核、2−イミノ−2,4−オキサゾリジンジオン核である。
【0093】
一般式(I)中、R21、R22、R23、R24、R25、R26、又はR27で表される一価の非金属原子団としては、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、及び置換若しくは無置換のアルコキシ基が好ましい。具体的には、特開2006−259558号公報の〔0036〕〜〔0041〕、特開2007−47742号公報の〔0235〕〜〔0243〕、特開2007−86165号公報の〔0100〕〜〔0108〕に記載の化合物が用いられる。
【0094】
21、R22、R23、R24及びR25で表される一価の非金属原子団のより好ましい例としては、置換若しくは無置換のアルキル基、及び置換若しくは無置換のアルコキシ基が挙げられる。R21及びR23の更に好ましい例としては、置換基を有してもよい炭素数1〜15のアルキル基又は置換基を有してもよい炭素数1〜15のアルコキシ基が挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、メトキシ基、エトキシ基が挙げられる。R21及びR23の両方が、置換若しくは無置換のアルキル基、又は置換若しくは無置換のアルコキシ基である場合が、特に好ましい。
26及びR27で表される一価の非金属原子団のより好ましい例は、置換若しくは無置換のアルキル基であること、即ち、一般式(I)におけるXがジアルキルアミノ基であることである。R26及びR27のさらに好ましい例としては、置換基を有してもよい炭素数2〜15のアルキル基であり、具体的にはエチル基、ブチル基が挙げられる。
【0095】
また、R24のより好ましい例としては、置換基を有してもよい炭素数1〜15のアルキル基、及び炭素数1〜15のアルコキシ基が挙げられる。
【0096】
特定増感色素の内でも、下記一般式(II)で表される構造を有する増感色素は、高い増感能を有する上、保存安定性にも非常に優れた感光性組成物を与えるため、特に好ましい。
【0097】
【化19】

【0098】
一般式(II)中、X及びYは、それぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、又はNR21を表し、R21及びR23は、それぞれ独立に、水素原子又は一価の非金属原子団を表す。Xは−N(R2627)を表す。R22、R24〜R28は、それぞれ独立に、水素原子又は一価の非金属原子団を表し、R25は、R21、R22、R23又はR24と脂肪族性又は芳香族性の環を形成するために結合することができる。
ここで、一般式(II)中、R21〜R27で表される一価の非金属原子団は、前記一般式(I)における一価の非金属原子団と同義であり、また、好ましい範囲も同様である。R28で表される一価の非金属原子団は、特に、水素原子、又は炭素数1〜10の炭化水素基が好ましい。
更に、一般式(II)において、Xとしては酸素原子が好ましい。また、YとしてはNR29が好ましく、R29は水素原子又は1価の非金属原子団を表し、特に、水素原子、又は炭素数1〜10の炭化水素基が好ましい。
【0099】
特定増感色素の具体例としては、特開2006−259558号公報の段落〔0047〕、〔0212〕の化合物(H−4)、特開2007−47742号公報の段落〔0258〕〜〔0265〕、特開2007−86165号公報の段落〔0123〕〜〔0130〕、〔0291〕の化合物(D−1)〜(D−3)が挙げられる。
【0100】
増感色素は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0101】
増感色素の添加量は、感光性組成物層を構成する全固形成分100質量部に対し、0.05質量部〜30質量部が好ましく、より好ましくは0.1質量部〜20質量部、更に好ましくは0.2質量部〜10質量部の範囲である。
【0102】
<その他の成分>
本発明における感光性組成物層には、前記(A)成分〜(C)成分、および(D)成分の必須成分に加えて、(E)成分等を用いることができるが、さらに目的に応じて種々の化合物を併用することができ、例えば、特開平9−25360号公報に記載のUV吸収剤や特開2004−302012号公報の段落0047に記載の熱重合禁止剤を添加することができる。さらに、本発明で使用する感光性組成物には必要に応じて公知の添加剤、例えば可塑剤、界面活性剤等を添加することができる。
【0103】
<感光性組成物層の形成>
感光性組成物層は、前述した各必須成分及び任意成分を含有する塗布液(感光性組成物層形成用塗布液)を、適切な基板上にスピンコーター、スリットスピンコーター、ロールコーター、ダイコーター、あるいはカーテンコーター等を用いて直接塗布により設けることが可能である。
感光性組成物層の膜厚は、膜厚の均一性、解像度及び感度の観点から、0.3μm〜7μmの範囲が好ましく、より好ましくは、0.5μm〜3μmである。
【0104】
(基板)
前記感光性組成物層を適切な基板上に形成することにより、本発明のフォトマスクブランクスとなる。基板は目的に応じて適宜選択されるが、基板ごとフォトマスクを形成し、そのまま繰り返し使用するという観点からは、フォトマスクが用いられる露光光源の波長に対して吸収のないもの、例えば、可視光に用いる場合には、透明な基板を用いることが好ましい。ここで、透明な基板とは、350〜750nmの波長領域に極大吸収を有さない基板を意味する。
本発明のフォトマスクブランクスにおける透明基板としては、ガラス板(例えば、石英ガラス、ソーダガラス、無アルカリガラスなど)、透明プラスティックフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレートなど)のごとき透明基板を適用することができる。透明基板の厚さは、フォトマスクブランクスによって適宜設定することができるが、0.1mm〜20mmの範囲であることが好ましく、より好ましくは1mm〜7mmの範囲であり、更に好ましくは1mm〜5mmの範囲である。
【0105】
(酸素遮断性層)
本発明のフォトマスクブランクスは、感光性組成物層上に酸素の透過性を適切に制御するための酸素遮断性層を有することが好ましい。
酸素遮断性層は、25℃、1気圧下における酸素透過性が、1.0ml/m・day・atm以上2000ml/m・day・atm以下であり、2.0ml/m・day・atm以上1500ml/m・day・atm以下が好ましく、5.0ml/m・day・atm以上1000ml/m・day・atm以下がより好ましく、10ml/m・day・atm以上800ml/m・day・atm以下が最も好ましい。
酸素遮断性層が有する酸素透過性が、上記範囲内であることで、フォトマスクブランクスの製造時及び生保存時に、不要な重合反応が生じることがなく、また、フォトマクスを作製する際の画像露光時に、不要なカブリ、画線の太りが生ずるという問題もない。したがって、かかる特徴を有する本発明のフォトマスクブランクスにより、高い解像性と良好な画像エッジ部の直線性とを有するフォトマスクを得ることができる。
このような特性を有する保護層については、以前より種々検討がなされており、例えば、米国特許第3,458,311号明細書及び特公昭55−49729号公報に詳細に記載されている。
【0106】
本明細書において、酸素遮断性層が有する酸素透過性は、以下の測定方法(モコン法)により測定した酸素透過率である。
−酸素透過性の測定方法−
酸素透過性の高いポリエチレンフィルム(富士フイルム(株)製「エバービュティーペーパー」の表面ゼラチン層を溶解除去することで作製したポリエチレンラミネート紙)に、感光性組成物層上に形成する酸素遮断性層と同様の組成の塗膜を塗布乾燥し、測定用のサンプルを作製する。JIS−K7126B及びASTM−D3985に記載の気体透過度試験方法に則り、モコン社製OX−TRAN2/21を用い、25℃60%RHの環境下で酸素透過率(ml/m・day・atm)を測定する。
【0107】
<水溶性高分子化合物>
酸素遮断性層は、酸素遮断性及び現像性の観点から、水溶性高分子化合物を含有することが好ましい。
水溶性高分子としては、比較的結晶性に優れた化合物を用いることが好ましく、具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/ビニルアルコール/フタル酸ビニル共重合体、酢酸ビニル/クロトン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドポリエステル、ポリウレタンなどのような水溶性ポリマーが挙げられ、これらは単独又は混合して使用できる。これらの内、ポリビニルアルコールを主成分として用いる事が、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的にもっとも良好な結果を与える。
【0108】
酸素遮断性層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための、未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル、及びアセタールで置換されていてもよい。また、酸変性ポリビニルアルコールなど、ポリビニルアルコール誘導体を用いてもよい。
また、同様に、ビニルアルコール単位以外の重合単位を有する共重合体であってもよく、そのような共重合体としては、例えば、ビニルアルコール/ビニルピロリドン共重合体等が挙げられる。
ポリビニルアルコールの具体例としては、特開2006−259558号公報の〔0179〕、特開2008−139813号の〔0217〕に記載の化合物が好適に用いられる。
好ましい態様としてはポリビニルアルコールの保護層中の含有率が20〜95質量%、より好ましくは、30〜90質量%である。
【0109】
<酸素遮断性層の形成>
酸素遮断性層は、酸素遮断性層を形成するための塗布液を調製し、該塗布液を前記感光性組成物層上に塗布することにより形成することができる。酸素遮断性層の塗布方法に関しては、逐次に塗設する方法と、一気に重層塗布する方法とを適用できるが、いずれであっても構わない。
【0110】
酸素遮断性層の膜厚は、0.05μm以上1.5μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.1μm以上1.0μm以下である。
このようにして、基板上に、(A)〜(E)の各成分を含む感光性組成物層を形成し、好ましくは、その表面に酸素遮断性層を形成して、本発明のフォトマスクブランクスを得る。
【0111】
(密着性下塗り層)
フォトマスクブランクスにおいては、透明ガラス基材上に密着性下塗り層を設けることが好ましい。密着性下塗り層が設けられるときは、感光性組成物層は密着性下塗り層の上に設けられる。密着性下塗り層は、フォトマスクを作製する際に、露光部においては透明ガラス基材と感光性組成物層との密着性を強化し、また、未露光部においては、感光性組成物層の透明ガラス基材からの剥離を生じやすくさせるため、現像性が向上する。
【0112】
密着性下塗り層は、透明基材との密着性を向上させるために、シリル基を有する化合物を含むことが好ましい。
また、密着性下塗り層としては、感光性組成物層との密着性を上げるために、重合性基を有している化合物を含有していることが好ましい。重合性基としては、特にエチレン性不飽和結合を有する基が好ましく、具体的には前記「エチレン性不飽和化合物(特定重合性化合物、多官能性アクリレート化合物などのエチレン性不飽和結合を有する化合物)」に記載の化合物に含まれる重合性基が好ましく用いられる。エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基、スチリル基、アリルエーテル基が好ましく用いられる。
特に、前記エチレン性不飽和結合を有する基とシリル基を有する化合物とが好ましく用いられる。
【0113】
密着性下塗り層に含まれる化合物としては、具体的には、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル]トリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシラン、3−アクリロイルオキシ−1−トリメトキシシラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランを好適な化合物として挙げることができる。
【0114】
密着性下塗り層の塗設量は、乾燥質量として、2mg/m〜200mg/mが好ましく、5mg/m〜100mg/mがさらに好ましい。
このようにして、基板上に、感光性組成物層を形成し、好ましくは、その表面に酸素遮断性層や基板と感光性組成物層の間に密着性下塗り層を形成して、本発明のフォトマスクブランクスを得る。
【0115】
[フォトマスク及びフォトマスクの製造方法]
本発明のフォトマスクは、既述した本発明のフォトマスクブランクスを用い、フォトマスクブランクスが有する感光性組成物を、画像様に露光した後、現像することで形成した遮光層を有することを特徴とする。
具体的には、既述のフォトマスクブランクスを、近紫外光ないし可視光で画像様露光した後(露光工程)、露光後のフォトマスクブランクスを、現像液を用いて現像することにより感光性組成物層の未露光部を除去する(現像工程)により、画像様の遮光層(露光部)を有するフォトマスクを得ることができる。
【0116】
本発明のフォトマスクブランクスを用いて作製されるフォトマスク(本発明のフォトマスク)としては、該フォトマスクブランクスを、350nm以上450nm以下の光を放射するレーザー(より好ましくは、390nm以上450nm以下を放射するレーザー)を用いて画像様露光した後、現像することにより作製されたものが好適な態様である。
【0117】
〔露光工程〕
露光工程は、フォトマスクブランクスを、線画像、網点画像、等を有する透明原画を通して画像様に露光するか、デジタルデータによるレーザー光走査等で画像様に露光することにより行うことが好ましい。本発明のフォトマスクブランクスの画像形成には、レーザーによる露光が好適に用いられる。
【0118】
露光光源としては、350nm以上450nm以下の範囲の光を放射するレーザーが好ましい。例えば、以下のものが挙げられる。ガスレーザーとしては、Arイオンレーザー(364nm、351nm)、Krイオンレーザー(356nm、351nm)、He−Cdレーザー(441nm、325nm)などが挙げられ、固体レーザーとしては、Nd:YAG(YVO)とSHG結晶×2回の組み合わせ(355nm)、Cr:LiSAFとSHG結晶の組み合わせ(430nm)などが挙げられ、半導体レーザー系では、KNbOリング共振器(430nm)、導波型波長変換素子とAlGaAs、InGaAs半導体の組み合わせ(380nm〜450nm)、導波型波長変換素子とAlGaInP、AlGaAs半導体の組み合わせ(300nm〜350nm)、AlGaInN(350nm〜450nm)などが挙げられ、その他のレーザーとして、Nレーザー(337nm)、XeF(351nm)などが挙げられる。
【0119】
これらの中でも、特に、AlGaInN半導体レーザー(InGaN系半導体レーザー400nm〜410nm)が、波長特性、コストの面で好適である。
【0120】
〔現像工程〕
現像液としては、特に制限はなく、公知の現像液などが例示できるが、特公昭57−7427号公報に記載されているような現像液が挙げられ、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、第三リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第三リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、メタケイ酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、アンモニア水などのような無機アルカリ剤やモノエタノールアミン又はジエタノールアミンなどのような有機アルカリ剤の水溶液が適当である。このようなアルカリ剤は、単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。このようなアルカリ剤は、これを含有するアルカリ性水溶液の濃度が0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜15質量%、最も好ましくは1〜12重量%になるように添加される。
【0121】
また、現像液として用いられるアルカリ性水溶液には、必要に応じて界面活性剤やベンジルアルコール、2−フェノキシエタノール、2−ブトキシエタノールのような有機溶媒を少量含むことができる。例えば、米国特許第3375171号及び同第3615480号に記載されているものを挙げることができる。さらに、特開昭50−26601号、同58−54341号、特公昭56−39464号、同56−42860号の各公報に記載されている現像液も優れている。
【0122】
特に好ましい現像液としては、特開2002−202616号公報に記載の非イオン性化合物を含有し、pHが11.5〜12.8であり、かつ3〜30mS/cmの電導度を有する現像液が挙げられる。
また、炭酸イオン及び炭酸水素イオンを含む現像液におけるpHとしては、8.5〜10.8の範囲であることが好ましく、pH9.0〜10.5であることがより好ましく、pH9.5〜10.3であることが特に好ましい。このpH範囲内であると、非画像部の現像性が低下せず、また、空気中の炭酸ガスの影響により処理能力が変動しないので好ましい。
【0123】
現像工程において、露光後のフォトマスクブランクスに、現像液を接触させる態様としては、手処理、浸漬処理、及び機械による処理などが挙げられる。
手処理としては、例えば、スポンジや脱脂綿に充分現像液を含ませ、全体を擦りながら処理し、処理終了後は充分に水洗する態様が挙げられる。
【0124】
浸漬処理としては、例えば、露光後のフォトマスクブランクスを、現像液の入ったバットや深タンクに浸して撹拌した後、脱脂綿やスポンジなどで擦りながら充分に水洗する方法が挙げられる。浸漬時間は、約60秒であることが好ましい。
【0125】
機械処理には、自動現像機を用いることができる。自動現像機を用いる場合としては、例えば、現像槽に仕込んだ現像液をポンプで汲み上げて、露光後のフォトマスクブランクスにスプレーノズルから吹き付けて処理する方式、現像液が満たされた槽中に液中ガイドロールなどによって、露光後のフォトマスクブランクスを浸漬搬送させて処理する方式、実質的に未使用の現像液を、一枚毎の露光後のフォトマスクブランクスに必要な分だけ供給して処理するいわゆる使い捨て処理方式のいずれの方式も適用できる。どの方式においても、高圧洗浄、ブラシやモルトンなどの機構があるものがより好ましい。また、レーザー露光部と自動現像機部分とが一体に組み込まれた装置を利用することもできる。
【0126】
また、現像する際における現像液の温度としては、20℃〜35℃の範囲が好ましく、25℃〜30℃の範囲がより好ましい。
【0127】
〔その他の工程〕
また、フォトマスクブランクスに対しては、必要に応じて、露光前、露光中、露光から現像までの間に、全面に加熱処理を施してもよい。加熱処理を施すことにより、感光性組成物層中の画像形成反応が促進され、感度の向上、感度の安定化といった利点が生じ得る。さらに、画像強度の向上を目的として、現像後の画像に対し、全面後加熱もしくは、全面露光を行うことも有効である。
【0128】
通常、現像前の加熱は150℃以下の穏和な条件で行うことが好ましい。一方、現像後の加熱には非常に強い条件を利用することができる。通常は150〜500℃の範囲加熱処理を行う。
【0129】
また、フォトマスクブランクスに対する画像形成後においては、画像上に熱硬化型のエポキシ樹脂等の保護膜を設けてもよい。画像上に保護膜を設けることにより、更に膜強度を向上させることもできる。
以上のようにして、本発明のフォトマスクブランクスを用いてフォトマスク(本発明のフォトマスク)が得られる。
【0130】
本発明のフォトマスクにおける遮光層の膜厚は、0.8μm以上2.0μm以下であることが好ましく、1.0μm以上1.8μm以下がより好ましい。
また、本発明のフォトマスクにおける遮光層は、365nmにおけるオプティカルデンシティー(O.D.)が3.5以上であることが好ましく、4.0以上がより好ましい。
本発明のフォトマスクにおける遮光層の最も好適な態様は、遮光層の膜厚及び365nmにおけるO.D.の双方が、上記の範囲を満たす態様である。
【0131】
また、本発明のフォトマスクブランクスは高解像度の画像形成が可能であるために、微細な線幅の画像をエッジ直線性が良好な状態で形成することができる。このようなフォトマスクブランクスを用いて形成されるフォトマスクの好適な態様の一つは、遮光層におけるラインアンドスペース(L/S)の線幅が、好ましくは0.1μm以上20μm以下である態様である。形成されるL/Sは、より好ましくは0.1μm以上10μm以下、さらに好ましくは0.1μm以上5μm以下のものであり、前記本発明のフォトマスクブランクスにより、このような微細な線幅のL/Sを有する遮光層の形成が可能となった。
【0132】
本発明のフォトマスクブランクスを用いて得られたフォトマスクは、PDP、FED、LCD等のフラットパネルディスプレイ、CRT用シャドーマスク、印刷配線板、半導体等の分野におけるフォトリソ工程において好適に用いることができる。
本発明で用いるフォトマスクを、紫外感光性のレジストのパターニング用に用いる際には、超高圧水銀灯などの紫外線露光機にバンドパスフィルターを組み入れて、露光波長を選択することも可能である。
【実施例】
【0133】
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、以下において「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」を表す。
【0134】
<フォトマスクブランクスの作製>
(下塗り層の塗布)
ガラス基板(10cm×10cm、厚み2.3mm)上に、下記組成物を乾燥後の塗布層の質量が0.005g/mとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥させ、下塗り層を形成した。
(下塗り層組成物)
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学(株)製) 3.60g
メチルエチルケトン 32.40g
【0135】
(A-1 緑色顔料分散液)
下記の組成を、モーターミルM−200(アイガー社製)で、直径1.0mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで5時間分散して、緑色顔料分散液を得た。
(組成)
・C.I.ピグメントグリーン7 63部
・分散剤(Bykchemie社製 Disperbyk182) 3.15部
・メタクリル酸/アリルメタクリレート/ベンジルメタクリレート共重合体(共重合モル比=28/48/24、重量平均分子量 25600) 31.5部
・1−メトキシ−2−プロピルアセテート 352.4部
【0136】
(A-2 カーボンブラック分散液)
下記の組成をモーターミルM−50(アイガー社製)で、粒子径0.5mmのジルコニアビーズを用い、周速9m/sで6時間分散して、カーボンブラック分散液を得た。
(組成)
・カーボンブラック(Degussa社製 Special Black350(DBP吸油量=45ml/100g、窒素吸着比表面積=65m/g)) 12g
・分散剤(Bykchemie社製 Disperbyk182) 6g
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA) 42g
DBP吸油量とは、カーボンブラック100gが吸収するジブチルフタレート(DBP)量を表す。この分散液を1000倍に希釈し、レーザードップラー法により測定した粒子径分布は0.01〜0.5μmの範囲内であった。
【0137】
(バインダーポリマーの合成)
R−1:n−ブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、1−ヒドロキシエチルアクリレート、およびアクリル酸を常法によりラジカル重合した。さらにビニルイソシアネートを付加させることでR−1(下記構造)を得た。重量平均分子量は35,000であった。
R−2:エチルメタクリレート、メタクリル酸を常法によりラジカル重合した。さらにグリシジルメタクリレートを付加させてR−2(下記構造)を得た。重量平均分子量は36,500であった。
【0138】
【化20】

【0139】
【化21】

【0140】
(特定重合性化合物の合成)
特開2004−294936〔0073〕に記載の方法でB−5を合成した。B−1は、前記B−5の合成方法におけるチオシアヌル酸をビスムチオール(2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール)に変え、B−5と同様の方法で合成した。
【0141】
<実施例1>
(感光性組成物層1の形成)
下記組成の感光性組成物1を調製し、下塗り層を形成したガラス基板(10cm×10cm)上に、乾燥後の塗布量が1.4g/mとなるように感光性組成物1を塗布し、100℃で1分間乾燥させ、感光性組成物層1を形成し、実施例1のフォトマスクブランクスを得た。
【0142】
(感光性組成物1の組成)
・遮光材料:(前記A−1で得た緑色顔料分散液を使用し、顔料分が16部となる量を使用した。)
・バインダーポリマー:R−1(前記構造) 4.2部
・重合性化合物:B−5(例示化合物) 3.0部
・重合開始剤:D−1(下記構造) 0.81部
・増感色素:C−1(下記構造) 0.21部
・界面活性剤:メガファックF−780F(DIC社製) 0.05部
・溶剤:メチルエチルケトン 58部
・溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテル 53部
【0143】
【化22】

【0144】
<感光性組成物2〜7、比較組成物1〜3の調製>
感光性組成物1の調製において、遮光材料の種類、バインダーポリマーの種類と量、および重合性化合物の種類を表1のように変更し、その他は感光性組成物1の調製と同様にして感光性組成物2〜7、および比較組成物1〜3を調製した。なお、表1で遮光材料の欄の「16部」は「顔料分が16部となる量」を意味する。
【0145】
【表1】

【0146】
表1に示した化合物種のうち、P−1、P−4、B−5、B−1、およびM−4は、本文中の例示化合物である。M−8はジエチレングリコールジメタクリレートである。
【0147】
(酸素遮断性層の形成)
下記組成の酸素遮断性層塗布液を調製し、酸素遮断性層塗布液を必要により各感光性組成物層上に塗布し、100℃で2分間乾燥して酸素遮断性層を形成した。酸素遮断性層の膜厚を、「SURFCOM130A、東京精密(株)製」にて直接膜厚測定したところ0.2μmであった。また、前記の方法によりこの酸素遮断性層の酸素透過性を測定したところ、170ml/m・day・atmであった。
【0148】
<酸素遮断性層塗布液>
・水 87g
・ポリビニルアルコール((株)クラレ製 PVA−405) 6g
・ポリビニルピロリドン(BASF社製 PVP−K30) 6g
・界面活性剤(日本エマルジョン(株)製、EMALEX710) 1g
【0149】
<実施例2〜9、および比較例1〜4>
表2に示す各感光性組成物層と酸素遮断性層との組合せにより、実施例2〜9、および比較例1〜4を実施し、各フォトマスクブランクスを得た。
遮光材料としてA−1緑色顔料分散液を用いた実施例1のフォトマスクブランクスの波長365nmにおけるオプティカルデンシティーは3.5であり、遮光材料としてA−2カーボンブラック分散液を用いた実施例2のフォトマスクブランクスの波長365nmにおけるオプティカルデンシティーは4.0であった。
【0150】
2.フォトマスクブランクスの評価
(1)感度評価
以上のようにして得られた実施例及び比較例のフォトマスクブランクス(10×10cm)を、レーザープロッターとして、VIOLD(大日本スクリーン製造(株)製)(レーザー出力350mW、光源は405nmバイオレットレーザー)により露光した。次いで、露光後のフォトマスクブランクスを、下記組成のアルカリ現像液1Lに30℃、15秒間浸漬して現像、水洗した後、乾燥した。更に、180℃・30分加熱処理を行い、所望のフォトマスクを得た。露光感度は、露光量を10〜100mJ/cmの範囲で変更し、フォトマスクのライン/スペース10μm/10μmが再現する際の露光量を最適露光量と定めて評価した。他の評価結果と合わせて表2に示した。
【0151】
(アルカリ現像液組成)
下記組成からなるpH9.8の水溶液
・炭酸ソーダ1水塩 13.1g
・重炭酸ソーダ 7.2g
・下記化合物 52.65g
・エチレンジアミンテトラ酢酸・4Na塩 1.68g
・水 936.21g
【0152】
【化23】

【0153】
(2)解像度測定、画像エッジ部の直線性評価
上記の最適露光量の評価に併せて最適露光量の同じ条件で4、6、8、15、20、25、30μmのライン/スペースを描画し、再現できているうちで最も細い線を解像度とした。
さらに、10μmのラインパターンの長手方向のエッジ部を(株)キーエンス社製 マイクロスコープにて撮影し、エッジのあるべき基準線からの距離を50ポイント測定し、エッジ部の直線性のバラツキを標準偏差σで表した。σ値が小さいほど直線性に優れていることを表す。
【0154】
(3)溶剤耐性評価
方法:メチルエチルケトンをウエスに染み込ませ、擦り、擦った後の膜がはがれた時の回数をカウントした。擦り回数50回以上が好ましい。
【0155】
(4)膜強度評価
方法;JIS K5600−5−4(2006年度版)の鉛筆引っかき値の試験機法に基づいて評価を行った。3H以上の硬度が好ましい。
【0156】
【表2】

【0157】
表2から、本発明を用いた実施例1〜7は酸素遮断性層がなくても、解像度に優れ、膜強度も高く、溶剤耐性が良好であった。特に側鎖にビニルフェニル基を有するバインダーポリマーを用いた実施例4〜6は膜強度、および溶剤耐性に優れていた。酸素遮断性層を付与した実施例8、および9は酸素遮断性層のない実施例4、および5に比べて溶剤耐性がさらに向上した。これに対し本発明を用いない比較例1〜4は解像度が不良で、溶剤耐性にも劣り、酸素遮断性層を付与した比較例3でも好ましくないものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、(A)バインダーポリマー、(B)分子内にビニルフェニル基を2個以上有する化合物、(C)重合開始剤、および(D)遮光材料、を含む感光性組成物層を備えるフォトマスクブランクス。
【請求項2】
前記(A)バインダーポリマーが、側鎖に酸性基を有するバインダーポリマーである請求項1に記載のフォトマスクブランクス。
【請求項3】
前記(A)バインダーポリマーが、側鎖にビニルフェニル基を有するバインダーポリマーである請求項1または請求項2に記載のフォトマスクブランクス。
【請求項4】
前記感光性組成物層が、さらに、(E)増感色素を含む感光性組成物層である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクス。
【請求項5】
前記感光性組成物層上に、さらに、25℃における酸素透過性が1.0ml/m・day・atm以上2000ml/m・day・atm以下である酸素遮断性層を備える請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクス。
【請求項6】
前記基板が、厚みが0.1mm以上20mm以下の透明なガラスである請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクス。
【請求項7】
前記(C)重合開始剤が、ヘキサアリールビイミダゾール化合物である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクス。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のフォトマスクブランクスが有する感光性組成物層を、画像様に露光した後、現像することで形成された遮光層を有するフォトマスク。
【請求項9】
前記露光が、波長350nm以上450nm以下の光により行われる請求項8に記載のフォトマスク。
【請求項10】
前記遮光層の膜厚が1.0μm以上2.0μm以下であり、且つ波長365nmにおけるオプティカルデンシティー(O.D.)が3.5以上である請求項8または請求項9に記載のフォトマスク。
【請求項11】
前記遮光層におけるラインアンドスペース(L/S)の線幅が、0.1μm以上20μm以下である請求項8から請求項10のいずれか1項に記載のフォトマスク。

【公開番号】特開2010−237426(P2010−237426A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85071(P2009−85071)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】