フォトマスク保護粘着テープ用単層ポリエステルフィルム
【課題】 内部異物を低減し、紫外線透過率を向上させ、レジスト硬化工程で使用されるフォトマスク保護粘着テープと用いた場合、高精細な回路パターンを形成することのできるポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 ポリエステルフィルム中のチタン元素含有量が1〜20ppm、リン元素含有量が1〜300ppm、アンチモン元素含有量が10ppm以下であり、平均粒径が0.2〜1.0μm、粒度分布が2.0〜5.0の架橋高分子粒子を0.01〜0.15重量%含有し、波長360nmの紫外線透過率が84%以上であることを特徴とするフォトマスク保護テープ用単層ポリエステルフィルム。
【解決手段】 ポリエステルフィルム中のチタン元素含有量が1〜20ppm、リン元素含有量が1〜300ppm、アンチモン元素含有量が10ppm以下であり、平均粒径が0.2〜1.0μm、粒度分布が2.0〜5.0の架橋高分子粒子を0.01〜0.15重量%含有し、波長360nmの紫外線透過率が84%以上であることを特徴とするフォトマスク保護テープ用単層ポリエステルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスク保護粘着テープ用に好適に使用することができ、より詳しくは、回路欠陥の発生の原因となる内部異物や凝集粒子を防止するとともに、フォトレジストの硬化プロセスを効率よく行うことのできるポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子回路基盤の製造には、粘着性を有するフォトレジストが使用されており、一般にフォトマスクと呼ばれるネガフィルムを介して360nm付近の紫外線を照射することによりレジストを硬化させる。
【0003】
フォトレジストに密着して使用される露光用フォトマスクの表面の汚れや損傷等から保護する目的で、厚さ3〜25μmのポリエステルフィルムを基材とし、基材の片面に粘着剤層、もう一方の面に離型層が設けられたフォトマスク保護テープを使用することが知られている(特許文献1)。
【0004】
フォトマスク保護テープとして、高い光線透過率を有すること、紫外線により粘着物性が変化しなしこと、フォトマスクに粘着剤を残さずに剥離できること、離型処理層が高耐久性を有すること等の条件が要求され、これまでに離型処理層や離型層等の改良がなされてきている(特許文献2および3)。
【0005】
近年では、電子回路基盤がより高精細化され、配線の幅が数十μm程度にまで高精細化されている。そのためフォトマスク保護テープの基材フィルムに含まれる内部異物により、紫外線照射時にその部分の光透過性が阻害され、解像度が低下し、精密な回路パターンが得られないという問題が提起されている。
【0006】
その主な原因としては、基材ポリエステルフィルムの原料ポリエステルの重合触媒である三酸化アンチモンが挙げられ、これを実用的な重合速度が発揮される程度の添加量にて使用すると、重縮合時に三酸化アンチモンが還元され、数十μm程度の金属アンチモン凝集体が生成し、高精細な回路パターンを形成する際、紫外線の透過を遮蔽し、回路パターンに欠陥をもたらすことが指摘されている。
【0007】
一方、ポリエステルフィルムの製造においては、フィルムの巻上げ工程での外観品質を安定させる上で、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、フッ化リチウム、酸化アルミニウム、カオリン等の微粒子をフィルムに添加しているが、これらの粒子も同様に基材フィルム中で凝集物を形成する傾向があり、高精細な回路パターンを形成する際、紫外線の透過を遮蔽し、回路パターンに欠陥をもたらすという問題がある。しかしながら、実質的に粒子を添加しないフィルムは、巻取り・ハンドリングが困難なため、工業的に製品化することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−355759号公報
【特許文献2】特開平9−230580号公報
【特許文献3】特開2005−181564号公報
【特許文献4】特開2009−169351号公報
【特許文献5】特開2009−220284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その解決課題は、内部異物を低減し、紫外線透過率を向上させ、レジスト硬化工程で使用されるフォトマスク保護粘着テープと用いた場合、高精細な回路パターンを形成することのできるポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の組成からなるフィルムによれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、ポリエステルフィルム中のチタン元素含有量が1〜20ppm、リン元素含有量が1〜300ppm、アンチモン元素含有量が10ppm以下であり、平均粒径が0.2〜1.0μm、粒度分布が2.0〜5.0の架橋高分子粒子を0.01〜0.15重量%含有し、波長360nmの紫外線透過率が84%以上であることを特徴とするフォトマスク保護テープ用単層ポリエステルフィルムに存する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリエステルフィルムによれば、内部異物を低減し、紫外線透過率を向上させ、レジスト硬化工程で使用されるフォトマスク保護粘着テープとして用いた場合、高精細な回路パターンを形成させることができ、その工業的価値は大きい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のポリエステルフィルムは、チタン化合物およびリン化合物の双方を含有することを特徴とする。すなわち、本発明のポリエステルフィルム中のチタン元素含有量は1〜20ppmである必要があり、好ましくは1〜10ppm、さらに好ましくは1〜15ppmである。チタン化合物の含有量が多すぎるとポリエステルを溶融押出する工程でオリゴマーが多く生成し、結果的に得られるフィルムの紫外線透過率が低下する。またチタン元素を全く含まない場合、ポリエステル原料製造時の生産性が低下し、目的の重合度に達したポリエステル原料を得られない。一方、リン元素量は1〜300ppmであることが必要であり、好ましくは5〜200ppm、さらに好ましくは5〜100ppmである。リン化合物は、その含有量が多すぎるとゲル化が起こり、異物が多く検出され、またフィルムの紫外線透過率を低下させる。
【0014】
重合反応に使用する触媒としては、上記の理由からチタン化合物を用いる。この他にゲルマニウム化合物やアンチモン化合物を用いることができるが、ゲルマニウム化合物は非常に高価であり汎用的に使うには不利であり、またアンチモン化合物については、アンチモン元素含有量としてポリエステルフィルム中に10ppm以下である必要があり、好ましくはアンチモン元素がないことである。アンチモン化合物が10ppm以上であると、アンチモン粒子が凝集しやすく異物となり、高精細な回路パターンを形成する際、紫外線透過を遮蔽し、回路パターンに欠陥をもたらす。
【0015】
本発明でいうポリエステルフィルムとは、押出口金から溶融押出される、いわゆる押出方により押し出した溶融ポリエステルシートを冷却した後、必要に応じ、延伸したフィルムである。
【0016】
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステルとしては、代表的には、例えば、構成単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートであるポリエチレンテレフタレート、構成単位の80モル%以上がエチレン−2,6−ナフタレートであるポリエチレン−2,6−ナフタレート、構成単位の80モル%以上が1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートであるポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられる。その他にも、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0017】
上記の優位構成成分以外の共重合成分としては、例えば、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール成分、イソフタル酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸およびオキシモノカルボン酸などのエステル形成性誘導体を使用することができる。また、ポリエステルとしては、単独重合体または共重合体のほかに、他の樹脂との小割合のブレンドも使用することができる。
【0018】
本発明のポリエステルフィルムは、平均粒径0.2〜1.0μmの架橋高分子粒子を含有することが必要である。平均粒径は0.3〜0.7μmの範囲が好ましい。平均粒径が0.2μm未満では、フィルムの巻き品質安定性が低下し好ましくない。一方、平均粒径が1.0μmを超えると、フィルム表面に大突起が形成され、フィルムの紫外線透過率が低下する。
【0019】
本発明で用いる架橋高分子粒子の粒度分布(定義は後述)は、2.0〜5.0、好ましくは2.5〜4.0である。この値が2.0を下回ると、単一粒子の存在が多くなることを意味し、巻き品質の確保が困難となる。一方、粒度分布が5.0を上回ると大粒子の存在が多くなることを意味し、所望するフィルムの紫外線透過率が得られない。
【0020】
本発明の架橋高分子粒子の添加量は、0.01〜0.15重量%の範囲であり、好ましくは0.03〜0.10重量%である。添加量が0.01重量%未満では、フィルム表面に形成する粒子突起数が少ないため、巻き品質安定化に寄与しない。一方、添加量が0.15重量%を超えると、所望するフィルムの紫外線透過率が得られない。
【0021】
本発明で用いる架橋高分子粒子は、通常次のようにして得ることができる。すなわち、分子中にただ一個の脂肪族の不飽和結合を有する化合物(a)と、架橋剤として分子中に2個以上の脂肪族の不飽和結合を有する化合物(b)とを共重合させて得られるものである。共重合体の一成分である化合物(a)の例としては、アクリル酸、クロトン酸、メタクリル酸、およびこれらのメチルエステル、エチルエステル等の低級アルキルエステル、またはグリシジルエステル、無水マレイン酸およびそのアルキル誘導体、ビニルグリシジルエーテル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレンおよびその置換体等を挙げることができる。また化合物(b)の例としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールアクリレート等を挙げることができる。
【0022】
これらの共重合体の典型的な例としては、メタクリル酸とジビニルベンゼン、スチレンとジビニルベンゼン、メタクリル酸とエチレングリコールジメタクリレートの共重合体を挙げることができるが、本発明においては、化合物(a)および(b)を複数用いて架橋高分子粒子を得ても構わない。
【0023】
本発明において、特定の粒度分布および平均粒径を有する粒子を得るためには、懸濁重合あるいは乳化重合により直接得たものを配合してもよいが、特に懸濁重合の場合に簡単に得ることのできる数十μm〜数百μmの大きさの架橋高分子を粉砕、分級することで得ることが好ましい。
【0024】
本発明のフィルム厚さは、通常3〜16μm、好ましくは4〜12μm、さらに好ましくは4〜8μmである。厚さが16μmを越えると露光時に光が散乱し解像度が低下する傾向があり、厚さが3μm未満であると保護テープ作成時の取扱が困難になり作業性が悪化したり、剥離時に破断したりすることがある。
【0025】
本発明のポリエステルフィルムの紫外線(波長360nm)透過率は84%以上であり、好ましくは85%以上である。この波長の紫外線透過率が84%未満であるとレジスト層の露光、硬化工程が非効率的になる。
【0026】
本発明のポリエステルフィルムの算術平均二次元粗さ(Ra)は、30nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは20nm以下である。Raが30nmを越えると、レジスト層の露光、硬化工程が非効率的になる傾向がある。
【0027】
次にポリエステルフィルムの製造方法について記述する。すなわち、押出機の口金からポリエステルを溶融押出し、キャスティングドラムで冷却固化させて非晶未延伸フィルムとし、縦方向および横方向に延伸する。縦方向の延伸は例えば温度70〜130℃で、3.0〜5.0倍、好ましくは3.5〜4.5倍に延伸する。横方向の延伸は、例えば温度70〜150℃、好ましくは90〜140℃で、横方向に3.0〜5.0倍、好ましくは3.5〜4.5倍に延伸する。
【0028】
なお、フィルムの延伸後の熱固定処理は、最終延伸温度より高く、融点以下の温度内で150〜250℃の温度、2〜30秒の時間で熱固定することが好ましい。
【0029】
また、上記延伸工程中または延伸後にフィルムに接着性、帯電防止能、離型性を付与するために、フィルムの片面または両面に、塗布層を形成したり、コロナ処理等の放電処理等を施したりすることもできる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、フィルムの諸物性の測定および評価方法を以下に示す。
【0031】
(1)ポリエステルの固有粘度の測定
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0032】
(2)添加粒子の平均粒径(d)
島津製作所製遠心沈降式粒度分布測定装置(SP−CP3型)で測定した。
本発明において平均粒径とは、その形状の如何にかかわらず等価球形分布の積算体積分率50%の粒径を平均粒径(d)とした。
【0033】
(3)添加粒子の粒度分布(r)
平均粒径の測定法と同様にして粒度分布を求めた。等価球分布における大粒子側から積算を行い、下記式から粒度分布比(r)を算出した。
(r)=粒子積算重量が25%のときの粒径/粒子積算重量が75%のときの粒径
【0034】
(4)フィルム内部異物の測定
クラス100のクリーンルーム内で、ヤチヨ・コーポレーション社製FPT−80型異物検知器を用い、A4サイズ当たりのフィルムに含まれる内部異物個数(10μm以上)を測定した。
【0035】
(5)フィルム厚さの測定
フィルムを10枚重ねてJIS法マイクロメータにて厚さを測定し、10で除して平均値を求めフィルム厚さとした。
【0036】
(6)フィルム紫外線透過率の測定方法
日本分光製可視紫外分光光度計UVIDEC−670を用いて波長360nmの紫外線透過率を測定した。
【0037】
(7)算術平均二次元粗さ(Ra)
(株)小坂研究所社製表面粗さ測定機(SE−3F)を用いて次のようにして求めた。すなわち、フィルム断面曲線からその中心線の方向に基準長さL(2.5mm)の部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をx軸、縦倍率の方向をy軸として粗さ曲線 y=f(x)で表わしたとき、次の式で与えられた値を〔μm〕で表わす。測定は10点行い、その平均値で表わした。なお、触針の先端半径は2μm、荷重は30mgとし、カットオフ値は0.08mmとした。
【0038】
【数1】
【0039】
(8)レジストの硬化状態の評価
フィルムを公知の方法でフォトマスク保護粘着テープを作成し、幅20μmの線状の透過部と幅20μmの線状の非透過部とが平行に並んだフォトマスクのレジストとの対抗面に貼り付けた。公知のフォトレジストにこのフォトマスクを密着し、その上から紫外線を300mJ/cm2の照射量で照射し、レジストの硬化を行い評価した。
○:全てフォトマスクパターン通りに硬化した
×:一部フォトマスクパターン通りには硬化しなかった
【0040】
(9)フィルムの巻き品質安定性
ポリエステルフィルムの生産において、最終製品のロール巻き取りで製品外観の不良率を考慮し以下の基準で判定を行った。
○:不良品発生率が少なく、製造上に支障がない
×:不良品の発生が多く、製造上に支障をきたす
【0041】
実施例1:
〔架橋高分子微粉体の製造〕
メタクリル酸メチル100部、ジビニルベンゼン25部、エチルビニルベンゼン22部、過酸化ベンゾイル1部およびトルエン100部の均一溶液を水700部に分散させた。次に窒素雰囲気下で8時間撹拌しながら80℃に加熱し、重合を行った。得られたエステル基を有する架橋高分子粒状体の平均粒径は約0.1mmであった。該粒状体を脱塩水で水洗し、500部のトルエンで3回抽出して少量の未反応モノマーおよび線状ポリマーを除去した。次に高分子粒状体をアトライターで2時間、さらに五十嵐機械(株)製サンドグラインダーで5時間粉砕することにより平均粒径が0.6μmの架橋高分子微粉体を得た。次いでスーパーデカンターで大粒子を除去した後、さらに2400メッシュフィルターを用いて粒度分布(r)が3.1、平均粒径が0.5μmの架橋高分子微粉体を得た。
【0042】
<ポリエステル(X1)の製造>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒としてテトラブトキシチタネートを加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応時間を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物を重縮合槽に移し、4時間重縮反応を行った。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェートおよび架橋高分子微粉体を添加した後、重縮合槽に移し、4時間重縮反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.55に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、ポリエステルのチップを得た。極限粘度は0.55であった。得られたポリエステルチップを220℃で固相重合し、極限粘度0.65であり、架橋高分子微粉体の含有量が0.1重量%であるポリエステル(X1)を得た。
【0043】
<ポリエステル(Y1)の製造>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩を加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応時間を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物を重縮合槽に移し、正リン酸を添加した後、4時間重縮反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、ポリエステル(Y1)のチップを得た。ポリエステル(Y1)の極限粘度は0.63であった。
【0044】
<フィルムの製造およびレジストの評価>
ポリエステル(X1)チップおよび、ポリエステル(Y1)チップをそれぞれ95重量部、5重量部の割合でブレンドした原料を、ベント付き二軸押出機を使用し、290℃の温度で溶融押し出しし、静電密着法を併用しながら冷却ドラム上にキャストして、無定形フィルムを得た。このフィルムを83℃で縦方向に3.8倍延伸し、さらに110℃で横方向に4.0倍延伸し、225℃で熱処理して、厚さ6μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム中のアンチモン、チタン、リン元素含有量は、それぞれ0ppm(検出下限値以下)、5ppm、50ppmであった。
【0045】
以下、各実施例、比較例にて得られたフィルム中のアンチモン、チタン、リン元素含有量、および内部異物とフォトレジストの硬化状態、その他の評価結果を表3、4にまとめて示す。
【0046】
実施例2〜4および比較例5〜8:
架橋高分子粒子の粒度分布(r)、平均粒径(d)、含有量を変更し、他は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを製造した。
【0047】
実施例5〜7:
ポリエステル(X1)および(Y1)の製造において、テトラブトキシチタネート、エチルアシッドフォスフェートと正リン酸の添加量を変えた以外は、実施例1と同様の方法でポリエステルフィルムを得た。
【0048】
比較例1:
ポリエステルの製造において、架橋高分子微粉体の替わりに平均粒子径2.5μmのシリカ粒子エチレングリコールスラリーを、粒子のポリエステルに対する含有量が0.10重量%となるように添加した以外は、実施例1と同様の方法で極限粘度0.66のポリエステル(X2)チップを得た。実施例1において、使用したポリエステル(X1)チップの代わりにポリエステル(X2)チップを用いた以外は、実施例1と同様の方法でポリエステルフィルムを得た。
【0049】
比較例2〜3:
ポリエステル(X1)および(Y1)の製造において、テトラブトキシチタネート、エチルアシッドフォスフェートと正リン酸の添加量を変えた以外は、実施例1と同様の方法でポリエステルフィルムを得た。
【0050】
比較例4:
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩を加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応時間を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェートを添加した後、重縮合槽に移し、三酸化アンチモンを添加した、4時間重縮反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、ポリエステルチップを得た。このポリエステルの極限粘度は0.63であった。得られたポリエステルチップを真空下220℃で固相重合し、極限粘度は0.67のポリエステルフィルム(Z)を得た。ポリエステル(Z)をベント付き二軸押出機を使用し、290℃の温度で溶融押し出しし、静電密着法を併用しながら冷却ドラム上にキャストして、無定形フィルムを得た。このフィルムを83℃で縦方向に3.8倍延伸し、さらに110℃で横方向に4.0倍延伸し、225℃で熱処理して、厚さ6μmのポリエステルフィルムを得た。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のポリエステルフィルムは、例えば、フォトマスク保護テープ用として好適に利用することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスク保護粘着テープ用に好適に使用することができ、より詳しくは、回路欠陥の発生の原因となる内部異物や凝集粒子を防止するとともに、フォトレジストの硬化プロセスを効率よく行うことのできるポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子回路基盤の製造には、粘着性を有するフォトレジストが使用されており、一般にフォトマスクと呼ばれるネガフィルムを介して360nm付近の紫外線を照射することによりレジストを硬化させる。
【0003】
フォトレジストに密着して使用される露光用フォトマスクの表面の汚れや損傷等から保護する目的で、厚さ3〜25μmのポリエステルフィルムを基材とし、基材の片面に粘着剤層、もう一方の面に離型層が設けられたフォトマスク保護テープを使用することが知られている(特許文献1)。
【0004】
フォトマスク保護テープとして、高い光線透過率を有すること、紫外線により粘着物性が変化しなしこと、フォトマスクに粘着剤を残さずに剥離できること、離型処理層が高耐久性を有すること等の条件が要求され、これまでに離型処理層や離型層等の改良がなされてきている(特許文献2および3)。
【0005】
近年では、電子回路基盤がより高精細化され、配線の幅が数十μm程度にまで高精細化されている。そのためフォトマスク保護テープの基材フィルムに含まれる内部異物により、紫外線照射時にその部分の光透過性が阻害され、解像度が低下し、精密な回路パターンが得られないという問題が提起されている。
【0006】
その主な原因としては、基材ポリエステルフィルムの原料ポリエステルの重合触媒である三酸化アンチモンが挙げられ、これを実用的な重合速度が発揮される程度の添加量にて使用すると、重縮合時に三酸化アンチモンが還元され、数十μm程度の金属アンチモン凝集体が生成し、高精細な回路パターンを形成する際、紫外線の透過を遮蔽し、回路パターンに欠陥をもたらすことが指摘されている。
【0007】
一方、ポリエステルフィルムの製造においては、フィルムの巻上げ工程での外観品質を安定させる上で、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、フッ化リチウム、酸化アルミニウム、カオリン等の微粒子をフィルムに添加しているが、これらの粒子も同様に基材フィルム中で凝集物を形成する傾向があり、高精細な回路パターンを形成する際、紫外線の透過を遮蔽し、回路パターンに欠陥をもたらすという問題がある。しかしながら、実質的に粒子を添加しないフィルムは、巻取り・ハンドリングが困難なため、工業的に製品化することができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−355759号公報
【特許文献2】特開平9−230580号公報
【特許文献3】特開2005−181564号公報
【特許文献4】特開2009−169351号公報
【特許文献5】特開2009−220284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その解決課題は、内部異物を低減し、紫外線透過率を向上させ、レジスト硬化工程で使用されるフォトマスク保護粘着テープと用いた場合、高精細な回路パターンを形成することのできるポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の組成からなるフィルムによれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、ポリエステルフィルム中のチタン元素含有量が1〜20ppm、リン元素含有量が1〜300ppm、アンチモン元素含有量が10ppm以下であり、平均粒径が0.2〜1.0μm、粒度分布が2.0〜5.0の架橋高分子粒子を0.01〜0.15重量%含有し、波長360nmの紫外線透過率が84%以上であることを特徴とするフォトマスク保護テープ用単層ポリエステルフィルムに存する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリエステルフィルムによれば、内部異物を低減し、紫外線透過率を向上させ、レジスト硬化工程で使用されるフォトマスク保護粘着テープとして用いた場合、高精細な回路パターンを形成させることができ、その工業的価値は大きい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のポリエステルフィルムは、チタン化合物およびリン化合物の双方を含有することを特徴とする。すなわち、本発明のポリエステルフィルム中のチタン元素含有量は1〜20ppmである必要があり、好ましくは1〜10ppm、さらに好ましくは1〜15ppmである。チタン化合物の含有量が多すぎるとポリエステルを溶融押出する工程でオリゴマーが多く生成し、結果的に得られるフィルムの紫外線透過率が低下する。またチタン元素を全く含まない場合、ポリエステル原料製造時の生産性が低下し、目的の重合度に達したポリエステル原料を得られない。一方、リン元素量は1〜300ppmであることが必要であり、好ましくは5〜200ppm、さらに好ましくは5〜100ppmである。リン化合物は、その含有量が多すぎるとゲル化が起こり、異物が多く検出され、またフィルムの紫外線透過率を低下させる。
【0014】
重合反応に使用する触媒としては、上記の理由からチタン化合物を用いる。この他にゲルマニウム化合物やアンチモン化合物を用いることができるが、ゲルマニウム化合物は非常に高価であり汎用的に使うには不利であり、またアンチモン化合物については、アンチモン元素含有量としてポリエステルフィルム中に10ppm以下である必要があり、好ましくはアンチモン元素がないことである。アンチモン化合物が10ppm以上であると、アンチモン粒子が凝集しやすく異物となり、高精細な回路パターンを形成する際、紫外線透過を遮蔽し、回路パターンに欠陥をもたらす。
【0015】
本発明でいうポリエステルフィルムとは、押出口金から溶融押出される、いわゆる押出方により押し出した溶融ポリエステルシートを冷却した後、必要に応じ、延伸したフィルムである。
【0016】
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステルとしては、代表的には、例えば、構成単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートであるポリエチレンテレフタレート、構成単位の80モル%以上がエチレン−2,6−ナフタレートであるポリエチレン−2,6−ナフタレート、構成単位の80モル%以上が1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレートであるポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられる。その他にも、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0017】
上記の優位構成成分以外の共重合成分としては、例えば、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール成分、イソフタル酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸およびオキシモノカルボン酸などのエステル形成性誘導体を使用することができる。また、ポリエステルとしては、単独重合体または共重合体のほかに、他の樹脂との小割合のブレンドも使用することができる。
【0018】
本発明のポリエステルフィルムは、平均粒径0.2〜1.0μmの架橋高分子粒子を含有することが必要である。平均粒径は0.3〜0.7μmの範囲が好ましい。平均粒径が0.2μm未満では、フィルムの巻き品質安定性が低下し好ましくない。一方、平均粒径が1.0μmを超えると、フィルム表面に大突起が形成され、フィルムの紫外線透過率が低下する。
【0019】
本発明で用いる架橋高分子粒子の粒度分布(定義は後述)は、2.0〜5.0、好ましくは2.5〜4.0である。この値が2.0を下回ると、単一粒子の存在が多くなることを意味し、巻き品質の確保が困難となる。一方、粒度分布が5.0を上回ると大粒子の存在が多くなることを意味し、所望するフィルムの紫外線透過率が得られない。
【0020】
本発明の架橋高分子粒子の添加量は、0.01〜0.15重量%の範囲であり、好ましくは0.03〜0.10重量%である。添加量が0.01重量%未満では、フィルム表面に形成する粒子突起数が少ないため、巻き品質安定化に寄与しない。一方、添加量が0.15重量%を超えると、所望するフィルムの紫外線透過率が得られない。
【0021】
本発明で用いる架橋高分子粒子は、通常次のようにして得ることができる。すなわち、分子中にただ一個の脂肪族の不飽和結合を有する化合物(a)と、架橋剤として分子中に2個以上の脂肪族の不飽和結合を有する化合物(b)とを共重合させて得られるものである。共重合体の一成分である化合物(a)の例としては、アクリル酸、クロトン酸、メタクリル酸、およびこれらのメチルエステル、エチルエステル等の低級アルキルエステル、またはグリシジルエステル、無水マレイン酸およびそのアルキル誘導体、ビニルグリシジルエーテル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレンおよびその置換体等を挙げることができる。また化合物(b)の例としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールアクリレート等を挙げることができる。
【0022】
これらの共重合体の典型的な例としては、メタクリル酸とジビニルベンゼン、スチレンとジビニルベンゼン、メタクリル酸とエチレングリコールジメタクリレートの共重合体を挙げることができるが、本発明においては、化合物(a)および(b)を複数用いて架橋高分子粒子を得ても構わない。
【0023】
本発明において、特定の粒度分布および平均粒径を有する粒子を得るためには、懸濁重合あるいは乳化重合により直接得たものを配合してもよいが、特に懸濁重合の場合に簡単に得ることのできる数十μm〜数百μmの大きさの架橋高分子を粉砕、分級することで得ることが好ましい。
【0024】
本発明のフィルム厚さは、通常3〜16μm、好ましくは4〜12μm、さらに好ましくは4〜8μmである。厚さが16μmを越えると露光時に光が散乱し解像度が低下する傾向があり、厚さが3μm未満であると保護テープ作成時の取扱が困難になり作業性が悪化したり、剥離時に破断したりすることがある。
【0025】
本発明のポリエステルフィルムの紫外線(波長360nm)透過率は84%以上であり、好ましくは85%以上である。この波長の紫外線透過率が84%未満であるとレジスト層の露光、硬化工程が非効率的になる。
【0026】
本発明のポリエステルフィルムの算術平均二次元粗さ(Ra)は、30nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは20nm以下である。Raが30nmを越えると、レジスト層の露光、硬化工程が非効率的になる傾向がある。
【0027】
次にポリエステルフィルムの製造方法について記述する。すなわち、押出機の口金からポリエステルを溶融押出し、キャスティングドラムで冷却固化させて非晶未延伸フィルムとし、縦方向および横方向に延伸する。縦方向の延伸は例えば温度70〜130℃で、3.0〜5.0倍、好ましくは3.5〜4.5倍に延伸する。横方向の延伸は、例えば温度70〜150℃、好ましくは90〜140℃で、横方向に3.0〜5.0倍、好ましくは3.5〜4.5倍に延伸する。
【0028】
なお、フィルムの延伸後の熱固定処理は、最終延伸温度より高く、融点以下の温度内で150〜250℃の温度、2〜30秒の時間で熱固定することが好ましい。
【0029】
また、上記延伸工程中または延伸後にフィルムに接着性、帯電防止能、離型性を付与するために、フィルムの片面または両面に、塗布層を形成したり、コロナ処理等の放電処理等を施したりすることもできる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、フィルムの諸物性の測定および評価方法を以下に示す。
【0031】
(1)ポリエステルの固有粘度の測定
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0032】
(2)添加粒子の平均粒径(d)
島津製作所製遠心沈降式粒度分布測定装置(SP−CP3型)で測定した。
本発明において平均粒径とは、その形状の如何にかかわらず等価球形分布の積算体積分率50%の粒径を平均粒径(d)とした。
【0033】
(3)添加粒子の粒度分布(r)
平均粒径の測定法と同様にして粒度分布を求めた。等価球分布における大粒子側から積算を行い、下記式から粒度分布比(r)を算出した。
(r)=粒子積算重量が25%のときの粒径/粒子積算重量が75%のときの粒径
【0034】
(4)フィルム内部異物の測定
クラス100のクリーンルーム内で、ヤチヨ・コーポレーション社製FPT−80型異物検知器を用い、A4サイズ当たりのフィルムに含まれる内部異物個数(10μm以上)を測定した。
【0035】
(5)フィルム厚さの測定
フィルムを10枚重ねてJIS法マイクロメータにて厚さを測定し、10で除して平均値を求めフィルム厚さとした。
【0036】
(6)フィルム紫外線透過率の測定方法
日本分光製可視紫外分光光度計UVIDEC−670を用いて波長360nmの紫外線透過率を測定した。
【0037】
(7)算術平均二次元粗さ(Ra)
(株)小坂研究所社製表面粗さ測定機(SE−3F)を用いて次のようにして求めた。すなわち、フィルム断面曲線からその中心線の方向に基準長さL(2.5mm)の部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をx軸、縦倍率の方向をy軸として粗さ曲線 y=f(x)で表わしたとき、次の式で与えられた値を〔μm〕で表わす。測定は10点行い、その平均値で表わした。なお、触針の先端半径は2μm、荷重は30mgとし、カットオフ値は0.08mmとした。
【0038】
【数1】
【0039】
(8)レジストの硬化状態の評価
フィルムを公知の方法でフォトマスク保護粘着テープを作成し、幅20μmの線状の透過部と幅20μmの線状の非透過部とが平行に並んだフォトマスクのレジストとの対抗面に貼り付けた。公知のフォトレジストにこのフォトマスクを密着し、その上から紫外線を300mJ/cm2の照射量で照射し、レジストの硬化を行い評価した。
○:全てフォトマスクパターン通りに硬化した
×:一部フォトマスクパターン通りには硬化しなかった
【0040】
(9)フィルムの巻き品質安定性
ポリエステルフィルムの生産において、最終製品のロール巻き取りで製品外観の不良率を考慮し以下の基準で判定を行った。
○:不良品発生率が少なく、製造上に支障がない
×:不良品の発生が多く、製造上に支障をきたす
【0041】
実施例1:
〔架橋高分子微粉体の製造〕
メタクリル酸メチル100部、ジビニルベンゼン25部、エチルビニルベンゼン22部、過酸化ベンゾイル1部およびトルエン100部の均一溶液を水700部に分散させた。次に窒素雰囲気下で8時間撹拌しながら80℃に加熱し、重合を行った。得られたエステル基を有する架橋高分子粒状体の平均粒径は約0.1mmであった。該粒状体を脱塩水で水洗し、500部のトルエンで3回抽出して少量の未反応モノマーおよび線状ポリマーを除去した。次に高分子粒状体をアトライターで2時間、さらに五十嵐機械(株)製サンドグラインダーで5時間粉砕することにより平均粒径が0.6μmの架橋高分子微粉体を得た。次いでスーパーデカンターで大粒子を除去した後、さらに2400メッシュフィルターを用いて粒度分布(r)が3.1、平均粒径が0.5μmの架橋高分子微粉体を得た。
【0042】
<ポリエステル(X1)の製造>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒としてテトラブトキシチタネートを加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応時間を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物を重縮合槽に移し、4時間重縮反応を行った。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェートおよび架橋高分子微粉体を添加した後、重縮合槽に移し、4時間重縮反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.55に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、ポリエステルのチップを得た。極限粘度は0.55であった。得られたポリエステルチップを220℃で固相重合し、極限粘度0.65であり、架橋高分子微粉体の含有量が0.1重量%であるポリエステル(X1)を得た。
【0043】
<ポリエステル(Y1)の製造>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩を加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応時間を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物を重縮合槽に移し、正リン酸を添加した後、4時間重縮反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、ポリエステル(Y1)のチップを得た。ポリエステル(Y1)の極限粘度は0.63であった。
【0044】
<フィルムの製造およびレジストの評価>
ポリエステル(X1)チップおよび、ポリエステル(Y1)チップをそれぞれ95重量部、5重量部の割合でブレンドした原料を、ベント付き二軸押出機を使用し、290℃の温度で溶融押し出しし、静電密着法を併用しながら冷却ドラム上にキャストして、無定形フィルムを得た。このフィルムを83℃で縦方向に3.8倍延伸し、さらに110℃で横方向に4.0倍延伸し、225℃で熱処理して、厚さ6μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルム中のアンチモン、チタン、リン元素含有量は、それぞれ0ppm(検出下限値以下)、5ppm、50ppmであった。
【0045】
以下、各実施例、比較例にて得られたフィルム中のアンチモン、チタン、リン元素含有量、および内部異物とフォトレジストの硬化状態、その他の評価結果を表3、4にまとめて示す。
【0046】
実施例2〜4および比較例5〜8:
架橋高分子粒子の粒度分布(r)、平均粒径(d)、含有量を変更し、他は実施例1と同様にしてポリエステルフィルムを製造した。
【0047】
実施例5〜7:
ポリエステル(X1)および(Y1)の製造において、テトラブトキシチタネート、エチルアシッドフォスフェートと正リン酸の添加量を変えた以外は、実施例1と同様の方法でポリエステルフィルムを得た。
【0048】
比較例1:
ポリエステルの製造において、架橋高分子微粉体の替わりに平均粒子径2.5μmのシリカ粒子エチレングリコールスラリーを、粒子のポリエステルに対する含有量が0.10重量%となるように添加した以外は、実施例1と同様の方法で極限粘度0.66のポリエステル(X2)チップを得た。実施例1において、使用したポリエステル(X1)チップの代わりにポリエステル(X2)チップを用いた以外は、実施例1と同様の方法でポリエステルフィルムを得た。
【0049】
比較例2〜3:
ポリエステル(X1)および(Y1)の製造において、テトラブトキシチタネート、エチルアシッドフォスフェートと正リン酸の添加量を変えた以外は、実施例1と同様の方法でポリエステルフィルムを得た。
【0050】
比較例4:
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩を加えて反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応時間を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェートを添加した後、重縮合槽に移し、三酸化アンチモンを添加した、4時間重縮反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させ、ポリエステルチップを得た。このポリエステルの極限粘度は0.63であった。得られたポリエステルチップを真空下220℃で固相重合し、極限粘度は0.67のポリエステルフィルム(Z)を得た。ポリエステル(Z)をベント付き二軸押出機を使用し、290℃の温度で溶融押し出しし、静電密着法を併用しながら冷却ドラム上にキャストして、無定形フィルムを得た。このフィルムを83℃で縦方向に3.8倍延伸し、さらに110℃で横方向に4.0倍延伸し、225℃で熱処理して、厚さ6μmのポリエステルフィルムを得た。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のポリエステルフィルムは、例えば、フォトマスク保護テープ用として好適に利用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルム中のチタン元素含有量が1〜20ppm、リン元素含有量が1〜300ppm、アンチモン元素含有量が10ppm以下であり、平均粒径が0.2〜1.0μm、粒度分布が2.0〜5.0の架橋高分子粒子を0.01〜0.15重量%含有し、波長360nmの紫外線透過率が84%以上であることを特徴とするフォトマスク保護テープ用単層ポリエステルフィルム。
【請求項1】
ポリエステルフィルム中のチタン元素含有量が1〜20ppm、リン元素含有量が1〜300ppm、アンチモン元素含有量が10ppm以下であり、平均粒径が0.2〜1.0μm、粒度分布が2.0〜5.0の架橋高分子粒子を0.01〜0.15重量%含有し、波長360nmの紫外線透過率が84%以上であることを特徴とするフォトマスク保護テープ用単層ポリエステルフィルム。
【公開番号】特開2012−131851(P2012−131851A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282680(P2010−282680)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】
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