説明

フォトマスク製造方法および荷電粒子ビーム描画方法

【目的】高精度なフォトマスクを実現するフォトマスクの製造方法を提供する。
【構成】荷電粒子ビーム描画装置に、化学増幅型レジストが塗布されたフォトマスクブランクスを搬入し、化学増幅型レジストに荷電粒子ビームを照射してフォトマスクブランクス上の複数の領域にパターンを順次描画し、フォトマスクブランクスを荷電粒子ビーム描画装置から搬出し、複数の領域毎に、描画開始からポストエクスポージャーベークの開始までの経過時間を算出し、複数の領域毎に算出される経過時間に基づき、複数の領域毎のポストエクスポージャーベークのプロセス条件を決定し、プロセス条件を複数の区画毎に変更可能なポストエクスポージャーベーク装置を用い、複数の領域毎に決定されたプロセス条件でポストエクスポージャーベークを行い、化学増幅型レジストを現像することを特徴とするフォトマスクの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスク製造方法および荷電粒子ビーム描画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスに所望の回路パターンを形成するために、リソグラフィー技術が用いられる。リソグラフィー技術では、フォトマスク(以下、単にマスクとも称する)と称される原画パターンを使ったパターンの転写が行われる。そして、高精度なマスクを製造するために、優れた解像度を有する電子ビーム(電子線)描画技術が用いられる。
【0003】
電子ビーム描画では高い解像度を実現する化学増幅型レジストが用いられる。化学増幅型レジストは、電子ビームの照射後に、ポストエクスポージャーベーク(PEB)を行うことにより、照射時に発生した酸が拡散、反応してパターンの形成が完了するという特徴を備える。
【0004】
化学増幅型レジストの中には、電子ビーム照射からポストエクスポージャーベークまでの経過時間中に酸がレジスト中を拡散し、この経過時間の変動により、形成されるレジストのパターンが変動する特性を持つものがある。このようなレジストを用いる場合、電子ビーム照射からポストエクスポージャーベークまでの経過時間の管理が重要となる。
【0005】
電子ビーム描画では高精度な描画を行うために、ビーム精度を保つ必要がある。このために、例えば、試料への描画中に、描画を中断して電子ビーム照射位置の変動を補正する、いわゆるドリフト補正が行われる。このようなドリフト補正のための描画の中断が行われると、中断前に描画した領域と、中断後に描画した領域では、電子ビーム照射による描画からポストエクスポージャーベークまでの経過時間が同一の試料であるにも関わらず大きく異なってしまう恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−111370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その目的とするところは、荷電粒子ビームの照射からポストエクスポージャーベークまでの時間を同一試料上の複数の領域毎に管理することで、高精度なフォトマスクを実現するフォトマスクの製造方法および荷電粒子ビーム描画装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様のフォトマスクの製造方法は、荷電粒子ビーム描画装置に、化学増幅型レジストが塗布されたフォトマスクブランクスを搬入する搬入工程と、前記化学増幅型レジストに荷電粒子ビームを照射して前記フォトマスクブランクス上の複数の領域にパターンを順次描画する描画工程と、前記フォトマスクブランクスを前記荷電粒子ビーム描画装置から搬出する搬出工程と、前記複数の領域毎に、描画開始から前記搬出工程が完了するまでの時間および前記搬出工程の完了からポストエクスポージャーベークの開始時間までの時間より経過時間を算出する算出工程と、前記複数の領域毎に算出される前記経過時間に基づき、前記複数の領域毎のポストエクスポージャーベークのプロセス条件を決定するプロセス条件決定工程と、プロセス条件を複数の区画毎に変更可能なポストエクスポージャーベーク装置を用い、前記複数の領域毎に決定されたプロセス条件で前記フォトマスクブランクスにポストエクスポージャーベークを行うポストエクスポージャーベーク工程と、前記フォトマスクブランクス上の前記化学増幅型レジストを現像する現像工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
上記態様のフォトマスクの製造方法において、前記描画工程の前に、前記ポストエクスポージャーベーク装置におけるプロセス条件の変更可能領域の区画割に基づき、前記複数の領域の描画順序を決定する描画順序決定工程を、さらに備えることが望ましい。
【0010】
上記態様のフォトマスクの製造方法において、前記複数の領域毎に算出される前記経過時間および前記搬出工程の完了から前記ポストエクスポージャーベーク工程の開始時間までの経過時間に基づき、前記複数の領域毎のプロセス条件を決定することが望ましい。
【0011】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画装置は、フォトマスクブランクスを荷電粒子描画装置内に搬入する搬入部と、前記フォトマスクブランクス上に描画すべきパターンが定義される描画データを入力する入力部と、前記描画データを荷電粒子ビームのショットを単位として構成されるショットデータに変換するショットデータ生成部と、前記ショットデータを用いて前記フォトマスクブランクス上の複数の領域に順次荷電粒子ビームを照射することで描画を行う描画部と、前記フォトマスクブランクスを荷電粒子ビーム描画装置外に搬出する搬出部と、前記複数の領域毎に、描画開始から前記フォトマスクブランクスが前記荷電粒子描画装置外へ搬出されるまでの時間をモニタするモニタ部を有することを特徴とする。
【0012】
上記態様の荷電粒子ビーム描画装置において、前記フォトマスクブランクスにポストエクスポージャーベークを行う際のプロセス条件の変更可能領域の区画割に基づき、前記複数の領域の描画順序を決定する描画順序決定部を有することが望ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、荷電粒子ビームの照射からポストエクスポージャーベークまでの時間を同一試料上の複数の領域毎に管理することで、高精度なフォトマスクを実現するフォトマスクの製造方法および荷電粒子ビーム描画装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施の形態のフォトマスク製造方法の工程図である。
【図2】第1の実施の形態の荷電粒子ビーム描画装置の概略構成図である。
【図3】第1の実施の形態のマスクブランクス上に描画されるパターンの一例の模式図である。
【図4】第1の実施の形態のポストエクスポージャーベーク装置の説明図である。
【図5】第1の実施の形態のプロセス条件決定の一例を示す図である。
【図6】第2の実施の形態のフォトマスク製造方法の工程図である。
【図7】第2の実施の形態のフォトマスクの製造方法の描画順序の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。ただし、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームでもかまわない。
【0016】
本明細書中、描画データとは、試料に描画するパターンの基データである。描画データはCAD等で設計者により生成された設計データを、描画装置内での演算処理が可能となるようフォーマットを変換したデータである。図形等の描画パターンが、例えば、図形の頂点等の座標で定義されている。
【0017】
また、本明細書中、ショットとは、荷電粒子ビームの1回の照射により荷電粒子が照射される領域を意味する。
【0018】
また、本明細書中、ショットデータとは、ショットの情報を備え、荷電粒子ビームによる描画を行う上での最終的なデータ形式を有するデータを意味する。
【0019】
(第1の実施の形態)
本実施の形態のフォトマスクの製造方法は、荷電粒子ビーム描画装置に、化学増幅型レジストが塗布されたフォトマスクブランクスを搬入する搬入工程と、化学増幅型レジストに荷電粒子ビームを照射してフォトマスクブランクス上の複数の領域にパターンを順次描画する描画工程と、フォトマスクブランクスを荷電粒子ビーム描画装置から搬出する搬出工程と、複数の領域毎に、描画開始から搬出工程が完了するまでの時間および搬出工程の完了からポストエクスポージャーベークの開始時間までの時間より経過時間を算出する算出工程と、プロセス条件をフォトマスブランクス上の複数の区画で変更可能なポストエクスポージャーベーク装置を用い、複数の領域毎に算出される経過時間に基づき、複数の区画毎のプロセス条件を決定し、フォトマスクブランクスにポストエクスポージャーベークを行うポストエクスポージャーベーク工程と、フォトマスクブランクス上の化学増幅型レジストを現像する現像工程と、を備える。
【0020】
本実施の形態のフォトマスクの製造方法は、試料上の領域毎に電子ビーム照射による描画から試料の搬出が終了するまでの経過時間を算出する。この経過時間をポストエクスポージャーベークのプロセス条件に反映させることで、試料上の各パターンが適切な条件でポストエクスポージャーベークされるようにする。よって、各パターンが所望の形状、サイズに形成され、高精度なフォトマスクを実現する。
【0021】
図2は、本実施の形態のフォトマスク製造方法を実行する電子ビーム描画装置の概略構成図である。この電子ビーム描画装置100は、荷電粒子ビーム描画装置の一例である。電子ビーム描画装置100は、描画部102と、この描画部102の描画動作を制御する制御部104から構成されている。電子ビーム描画装置100は、試料110に所定のパターンを描画する。
【0022】
描画部102の試料室108内に試料110を載置するステージ112が収容されている。ステージ112は、制御部104によって、X方向(紙面左右方向)、Y方向(紙面表裏方向)およびZ方向(紙面上下方向)に駆動される。試料110は、例えば、半導体装置が形成されるウェハにパターンを転写するためのフォトマスクを製造するためのフォトマスクブランクス(以下、単にマスクブランクスとも記載)である。
【0023】
マスクブランクスは、例えば石英ガラス上に遮光膜となるクロムが塗布されている。電子ビーム描画装置のステージ112上に載置される際に、化学増幅型のレジストが塗布される。
【0024】
試料室108に隣接して、マスクブランクス110を装置外から描画装置内へ搬入する搬入部106が設けられる。搬入部106によりマスクブランクスは試料室108へと搬送する機能を備える。また、試料室108に隣接して、マスクブランクスを描画装置内から描画装置外へ搬出する搬出部107が設けられる。
【0025】
試料室108の上方には、電子ビーム光学系114が設置されている。電子ビーム光学系114により、試料上に電子ビームによる描画が行われる。電子ビーム光学系114は、電子銃116、各種レンズ118、120、122、124、126、ブランキング用偏向器128、ビーム寸法可変用偏向器130、ビーム走査用の副偏向器132、ビーム走査用の主偏向器134、及び可変成形ビームで描画するための、ビーム成形用の第1のアパーチャ136、第2のアパーチャ138などから構成されている。
【0026】
制御部104は、電子ビーム光学系114を制御する機能を備える。そして、入力部150、ショットデータ生成部152、制御回路154、およびモニタ部156を備える。
【0027】
入力部150は、フォトマスクブランクス上に描画すべきパターンが定義される描画データを入力する機能を備える。例えば、描画データが記憶されるメモリ素子の読み取り装置である。
【0028】
ショットデータ生成部152は、描画データを荷電粒子ビームのショットを単位として構成されるショットデータに変換する機能を備える。
【0029】
制御回路154は、ショットデータを基に描画部102における電子ビーム描画を制御する。
【0030】
モニタ部156は、マスクブランクス上に描画される複数の領域毎に、描画からマスクブランクスが電子ビーム描画装置100外へ搬出されるまでの時間をモニタする機能を備える。
【0031】
ショットデータ生成部152、制御回路154、およびモニタ部156における処理は、例えば、CPU等の演算処理デバイスや電気回路等のハードウェアを用いて実施される。或いは、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせを用いて実施させても構わない。
【0032】
図1は、本実施の形態のフォトマスクの製造方法の工程図である。搬入工程(S110)、描画工程(S120)、搬出工程(S130)、算出工程(S140)、プロセス条件決定工程(S150)、ポストエクスポージャーベーク工程(S160)、現像工程(S170)を備える。
【0033】
本実施の形態のフォトマスクの製造方法では、まず、搬入工程(S110)において、搬入部106から、化学増幅型レジストが塗布されたマスクブランクス110が電子ビーム描画装置100内に搬入される。搬入されたマスクブランクス110は搬入部106により試料室108内へと搬送され、ステージ112に載置される。この化学増幅型レジストは、電子ビームの照射からポストエクスポージャーベークまでの経過時間によって、パターン形状が変化する性質を備える化学増幅型レジストである。
【0034】
また、電子ビーム描画装置100には、あらかじめ、マスクブランクス110に描画するパターンの基データである描画データが入力および記憶されている。ショットデータ生成部152で、描画データを電子ビームのショットを単位として構成されるショットデータに変換する
【0035】
次に、描画工程(S120)において、描画部102により、化学増幅型レジストに電子ビームを照射してマスクブランクス110上の複数の領域にパターンを順次描画する。
【0036】
図3は、本実施の形態のマスクブランクス上に描画されるパターンの一例の模式図である。図3に示すように、例えば、マスクブランクス上には複数の領域A〜Fが所定の順序で描画される。
【0037】
そして、描画が終了したマスクブランクス110は、搬出工程(S130)において、搬出部107により電子ビーム描画装置100外へと搬出される。
【0038】
算出工程(S140)において、モニタ部156でマスクブランクス上に描画される複数の領域毎、例えば、図3の領域A〜F毎、に描画開始からマスクブランクスが電子ビーム描画装置100外へ搬出されるまでの時間を算出する。また、算出工程(S140)では、搬出工程の完了からポストエクスポージャーベークの開始時間までの時間を、描画開始から搬出までの時間に加え、描画開始からポストエクスポージャーベークまでの経過時間を算出する。搬出工程の完了からポストエクスポージャーベークの開始時間までの時間には、推定された時間を用いてもよいし、実際に計測された時間を用いてもよい。
【0039】
なお、算出工程(S140)の処理は、すべてモニタ部156で行われてもよいし、電子ビーム描画装置100外の処理装置と組み合わせて実現されるものであってもかまわない。
【0040】
次に、プロセス条件決定工程(S150)において、算出工程(S140)で算出された、描画開始からポストエクスポージャーベークまでの経過時間に基づき、領域毎の最適なポストエクスポージャーベークのプロセス条件を決定する。このプロセス条件のパラメータは、例えば、ポストエクスポージャーベークの時間または温度である。
【0041】
例えば、経過時間の長い領域に関しては、短時間あるいは低温のプロセス条件を選択、決定する。また、例えば、経過時間の短い領域に関しては、長時間あるいは高温のプロセス条件を選択・決定する。
【0042】
このプロセス条件決定工程(S150)は、例えば、電子ビーム描画装置100外のコンピューター等の演算処理装置で行われる。また、例えば、電子ビーム描画装置100内の演算処理部またはポストエクスポージャーベーク装置内の演算処理部で行われる。
【0043】
次に、ポストエクスポージャーベーク工程(S160)において、複数の領域毎に決定されたプロセス条件でマスクブランクスにポストエクスポージャーベークを行う。例えば、複数の領域毎に決定されたプロセス条件が、レシピとしてポストエクスポージャーベーク装置に記憶され、このレシピを用いて、ポストエクスポージャーベークを行う。なお、この際、プロセス条件を複数の区画毎に変更可能なポストエクスポージャーベーク装置を用いる。
【0044】
次に、現像工程(S170)で、マスクブランクス上の化学増幅型レジストを現像する。現像には、公知の現像装置と公知の現像液を用いる。
【0045】
図4は、本実施の形態のポストエクスポージャーベーク装置の説明図である。図4は、ポストエクスポージャーベーク装置のマスクブランクスを載置するホットプレートの上面模式図である。図4に示すように、本実施の形態のポストエクスポージャーベーク装置は、ホットプレート上のa1〜d4の16の区画毎にプロセス条件のパラメータ、例えば、プロセス時間またはプロセス温度を変更可能に設計されている。
【0046】
図5は、本実施の形態のプロセス条件決定の一例を示す図である。図5(a)がマスクブランクスに描画される複数の領域の配置と描画順序を示す説明図である。図5(b)がポストエクスポージャーベークの領域毎のプロセス条件の設定の説明図である。
【0047】
例えば、各領域A〜Fは、A→B→D→C→E→Fの描画順で描画されるものとする。
この場合、例えば、領域Cの描画が終了した時点で、電子ビームのドリフトが生じていることが判明し、領域Eの描画前にドリフト補正の処理が行われるものとする。そうすると、領域Cの描画と領域Eの間に描画の待機時間が生じ、結果的に描画からポストエクスポージャーベークまでの経過時間に領域毎に差が生じることになる。
【0048】
すなわち、領域A、B、C、Dの経過時間が長く、領域E、Fの経過時間が短くなる。このため、同一のプロセス条件で、ポストエクスポージャーベークを行うと領域間でパターン形状に差が生じる恐れがある。
【0049】
そこで、本実施の形態のフォトマスクの製造方法では、図5(b)に示すように、領域A、B、C、Dに対応するホットプレート上の区画a1〜a4、b1〜b2と、領域E、Fに対応するホットプレート上の区画b3〜b4、c1〜c4、d1〜d4とでポストエクスポージャーベークのプロセス条件のパラメータを変更する。
【0050】
例えば、区画a1〜a4、b1〜b2ではポストエクスポージャーベークの温度を低くする、または、ポストエクスポージャーベークの時間を短くする。一方、区画b3〜b4、c1〜c4、d1〜d4ではポストエクスポージャーベークの温度を高くする、または、ポストエクスポージャーベークの時間を長くする。このように、領域毎にプロセス条件を変化させることで、領域間でパターン形状に差が生じることを抑制する。
【0051】
本実施の形態のフォトマスクの製造方法によれば、フォトマスクブランクスに描画される複数の領域について、描画からポストエクスポージャーベークまでの経過時間に差が生じたとしても、領域間でパターン形状に差が生じることを抑制することが可能となる。特に、例えば、ドリフト補正等、描画開始前に特定できない描画の中断が生じた場合に本実施の形態は有効である。
【0052】
また、本実施の形態の電子ビーム描画装置100によれば、本実施の形態のフォトマスクの製造方法を容易に実現することが可能となる。
【0053】
(第2の実施の形態)
本実施の形態のフォトマスクの製造方法は、描画工程の前に、ポストエクスポージャーベーク装置におけるプロセス条件の変更可能領域の区画割に基づき、描画順序決定部で複数の領域の描画順序を決定する描画順序決定工程を、さらに備えること以外は、第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と重複する内容については記述を省略する。
【0054】
図6は、本実施の形態のフォトマスクの製造方法の工程図である。搬入工程(S110)、描画順序決定工程(S112)、描画工程(S120)、搬出工程(S130)、算出工程(S140)、プロセス条件決定工程(S150)、ポストエクスポージャーベーク工程(S160)、現像工程(S170)を備える。
【0055】
図7は、本実施の形態のフォトマスクの製造方法の描画順序の一例の説明図である。例えば、ポストエクスポージャーベーク装置のホットプレートが図4に示すような区画割となっているとする。
【0056】
この場合、例えば、図5(a)の順序で各領域A〜Fの描画を行うと、同一の区画に対応する位置に配置される領域Bと領域Cの間に領域Dの描画が入る。このため、領域Bと領域Cの間で描画開始前に特定できない描画の中断が生じる確率が、領域Bと領域Cを連続して描画する場合に比較して高くなる。領域Bと領域Cの間で描画開始前に特定できない描画の中断が生じると、後のポストエクスポージャーベーク工程におけるプロセス条件の対応が困難となる。
【0057】
本実施の形態では、描画順序決定工程(S112)で、あらかじめポストエクスポージャーベーク装置におけるプロセス条件の変更可能領域の区画割を考慮して、各領域の描画順序を決定する。例えば、図7に示すように、各領域A〜Fは、A→B→C→D→E→Fの描画順で描画されるものとする。
【0058】
このように、同一の区画割a4上に配置される領域Bと領域Cを連続して描画することで、領域Bと領域Cの間の経過時間差を抑えることができる。したがって、後のポストエクスポージャーベーク工程におけるプロセス条件の対応できる可能性も向上する。
【0059】
よって、本実施の形態のフォトマスクの製造方法によれば、フォトマスクブランクスに描画される複数の領域について、描画からポストエクスポージャーベークまでの経過時間に差が生じたとしても、領域間でパターン形状に差が生じることを抑制することがさらに容易となる。
【0060】
なお、図1に示す電子ビーム描画装置100が図示しない描画順序決定部をさらに備えることが望ましい。描画順序決定部は、ポストエクスポージャーベーク装置におけるプロセス条件の変更可能領域の区画割に基づき、複数の領域の描画順序を決定する機能を備える。
【0061】
描画順序決定部における処理は、例えば、CPU等の演算処理デバイスや電気回路等のハードウェアを用いて実施される。或いは、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせを用いて実施させても構わない。
【0062】
描画順序決定部をさらに備えることで、本実施の形態フォトマスクの製造方法の実現を容易にする。
【0063】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0064】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのフォトマスクの製造方法または荷電粒子ビーム描画方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0065】
100 電子ビーム描画装置
102 描画部
104 制御部
106 搬入部
107 搬出部
110 マスクブランクス(試料)
112 試料室
150 入力部
152 ショットデータ生成部
154 制御回路
156 モニタ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビーム描画装置に、化学増幅型レジストが塗布されたフォトマスクブランクスを搬入する搬入工程と、
前記化学増幅型レジストに荷電粒子ビームを照射して前記フォトマスクブランクス上の複数の領域にパターンを順次描画する描画工程と、
前記フォトマスクブランクスを前記荷電粒子ビーム描画装置から搬出する搬出工程と、
前記複数の領域毎に、描画開始から前記搬出工程が完了するまでの時間および前記搬出工程の完了からポストエクスポージャーベークの開始時間までの時間より経過時間を算出する算出工程と、
前記複数の領域毎に算出される前記経過時間に基づき、前記複数の領域毎のポストエクスポージャーベークのプロセス条件を決定するプロセス条件決定工程と、
プロセス条件を複数の区画毎に変更可能なポストエクスポージャーベーク装置を用い、前記複数の領域毎に決定されたプロセス条件で前記フォトマスクブランクスにポストエクスポージャーベークを行うポストエクスポージャーベーク工程と、
前記フォトマスクブランクス上の前記化学増幅型レジストを現像する現像工程と、
を有することを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項2】
前記描画工程の前に、前記ポストエクスポージャーベーク装置におけるプロセス条件の変更可能領域の区画割に基づき、前記複数の領域の描画順序を決定する描画順序決定工程を、さらに備えることを特徴とする請求項1記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項3】
前記複数の領域毎のプロセス条件のパラメータは、ポストエクスポージャーベークの時間または温度であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項4】
フォトマスクブランクスを荷電粒子描画装置内に搬入する搬入部と、
前記フォトマスクブランクス上に描画すべきパターンが定義される描画データを入力する入力部と、
前記描画データを荷電粒子ビームのショットを単位として構成されるショットデータに変換するショットデータ生成部と、
前記ショットデータを用いて前記フォトマスクブランクス上の複数の領域に順次荷電粒子ビームを照射することで描画を行う描画部と、
前記フォトマスクブランクスを荷電粒子ビーム描画装置外に搬出する搬出部と、
前記複数の領域毎に、描画開始から前記フォトマスクブランクスが前記荷電粒子描画装置外へ搬出されるまでの時間をモニタするモニタ部を有することを特徴とする荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項5】
前記フォトマスクブランクスにポストエクスポージャーベークを行う際のプロセス条件の変更可能領域の区画割に基づき、前記複数の領域の描画順序を決定する描画順序決定部を有することを特徴とする請求項4記載の荷電粒子ビーム描画装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−76857(P2013−76857A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216826(P2011−216826)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】