フォトレジストおよびエッチング残留物をビアから除去する方法
【課題】フォトレジストを除去するための優れた方法などを提供する。
【解決手段】ベール除去と同時にフォトレジストを除去する方法が提供される。この方法は、O2、NH3およびCF4などのフッ素含有ガスを含むガス化学種から形成されたプラズマを用いる。この方法は、インクジェットプリントヘッド作製などのMEMS作製プロセスでの使用に特に適している。
【解決手段】ベール除去と同時にフォトレジストを除去する方法が提供される。この方法は、O2、NH3およびCF4などのフッ素含有ガスを含むガス化学種から形成されたプラズマを用いる。この方法は、インクジェットプリントヘッド作製などのMEMS作製プロセスでの使用に特に適している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタの分野に関し、特に、MEMSインクジェットプリントヘッドの分野に関する。本発明は、主に、MEMSインクジェットプリントヘッドの作製を向上させるために開発されてきたが、本発明は、任意のMEMS作製プロセスにも同様に適応可能である。
【背景技術】
【0002】
これまで数多くの異なるタイプの印刷術が発明され、その多くが現在でも使用されている。既知の印刷形態は、適切なマーキング媒体で印刷媒体をマーキングするための種々の方法を有する。一般的に使用されている印刷形態には、オフセット印刷、レーザ印刷および複写デバイス、ドットマトリクス式インパクトプリンタ、感熱紙プリンタ、フィルムレコーダ、熱転写プリンタ、昇華型プリンタ、およびドロップ・オン・デマンド式および連続フロー式の両方のインクジェットプリンタがある。コスト、速度、品質、信頼性、構造および動作の簡潔性などの面で、どのタイプのプリンタにも特有の利点および問題がある。
【0003】
近年、個々のインクピクセルのそれぞれが1つ以上のインクノズルから生じるインクジェット印刷の分野が、主に、その低価格性と多用途性により、ますます普及してきた。
【0004】
インクジェット印刷に関する多くの異なる技術が発明されてきた。この分野の概要を得るために、J Mooreによる文献、「Non−Impact Printing:Introduction and Historical Perspective」(Output Hard Copy Devices,Editors R Dubeck and S Sherr,pages 207〜220(1988))を参照されたい。
【0005】
インクジェットプリンタは、多くの異なるタイプのものがある。インクジェット印刷に連続したインク流が利用され始めたのは、少なくとも、Hansellの米国特許第1941001号明細書において簡易な形態の連続流式静電インクジェット印刷が開示された1929年まで遡る。
【0006】
また、Sweetらの米国特許第3596275号明細書にも、液滴分離を生じさせるようにインクジェット流が高周波静電場によって変調されるステップを含む連続式インクジェット印刷プロセスが開示されている。この技術は、今でも、Elmjet社およびScitex社を含む何社かのメーカーによって利用されている(Sweetらの米国特許第3373437号明細書を参照されたい)。
【0007】
また、圧電インクジェットプリンタが、一般的に利用されているインクジェット印刷デバイスの1つの形態である。圧電システムは、ダイアフラム(diaphragm)動作モードを利用するKyserらの米国特許第3946398号明細書(1970年)、圧電結晶のスクイーズ(squeeze)動作モードを開示したZoltenの米国特許第3683212号明細書(1970年)、圧電動作のベンド(bend)モードを開示したStemmeの米国特許第3747120号明細書(1972年)、インクジェット流の圧電プッシュ(push)モード作動を開示したHowkinsの米国特許第4459601号明細書、およびせん断(shear)モード型の圧電トランスデューサ要素を開示したFischbeckの米国特許第4584590号明細書に開示されている。
【0008】
最近では、サーマルインクジェット印刷が、広く普及した形態のインクジェット印刷形態となっている。インクジェット印刷技術は、Endoらの英国特許第2007162号明細書(1979年)およびVaughtらの米国特許第4490728号明細書に開示されているものを含む。前述した参照文献は共に、ノズルなどの狭窄空間に気泡を発生させることで、限定された空間に接続された開口から適切な印刷媒体にインクを噴射させる電熱アクチュエータの作動に依存したインクジェット印刷技術を開示したものである。電熱アクチュエータを利用する印刷デバイスは、Canon(登録商標)社、Hewlett Packard(登録商標)社などのメーカーによって製造されている。
【0009】
以上のことから分かるように、多くの異なるタイプの印刷技術が利用可能である。理想的には、印刷技術は、多数の所望の特質を有するべきである。これらの特質には、安価な構造および動作、高速動作、安全性および継続的な長期動作などがある。各技術は、コスト、速度、品質、信頼性、電力使用量、組立動作の簡易性、耐久性および消耗部品の面でそれぞれ特有の利点および欠点がありうる。
【0010】
本出願人は、MEMS技術によって作製された多数のインクジェットプリントヘッドをこれまで開発してきた。典型的に、MEMS作製は、複数のフォトレジスト堆積および除去ステップを用いる。通例、フォトリソグラフィマスクとして使用される比較的薄いフォトレジスト層(およそ1ミクロン以下)の除去は容易である。標準的な条件では、「アッシング」という名称で当技術分野において知られているプロセスで任意のフォトレジストを酸化的に除去する酸素プラズマを用いる。
【0011】
インクジェットノズルアセンブリの作製において、本出願人は、他の材料(例えば、ヒータ材料、ルーフ構造など)が堆積されうる犠牲スカフォルド(scaffold)としてフォトレジストを用いてきた。この技術により、比較的複雑なノズルアセンブリを組み立てることができる。しかしながら、粘性、耐熱性のある比較的厚いフォトレジスト層を堆積することが要求される。以下にさらに詳細に説明するように、最大30ミクロンのフォトレジスト層またはプラグが要求されることもある。さらに、このフォトレジストは、引き続き高温堆積ステップ中、例えば、金属またはセラミック材料をフォトレジストに堆積する間に逆流しないように、完全に堅焼き(hardbake;ハードベーク)され、紫外線硬化されなければならない。
【0012】
典型的なMEMSプリントヘッド作製プロセスにおいて、最終的なアッシングステップが、作製プロセス中に用いられるフォトレジストスカフォルドおよびフォトレジストプラグを含む、ノズルアセンブリにあるすべての残留フォトレジストを除去する。これまで、フォトレジストを最終段階または後段階で除去するために、従来のO2プラズマアッシング技術が用いられてきた。
【0013】
しかしながら、堅焼き(hardbake;ハードベーク)および紫外線硬化された厚いフォトレジスト層は、アッシングに対する耐性が高く、従来のO2アッシング技術によって比較的ゆっくり除去される。これは、アッシング時間を延長し、および/またはアッシング温度を上昇させる必要があることを意味する。アッシング時間の延長および/またはアッシング温度の上昇は、アッシングプロセス中、他のMEMS構造(例えば、ノズルチャンバ、アクチュエータ)へのダメージの危険性が高まるため望ましくない。さらに、一般に、処理時間を短縮し、最終的には、各プリントヘッドのコストを低減するように、各MEMS処理ステップの効率を上げる必要がある。
【0014】
アッシング速度を高めるために、O2とフッ素化ガス(例えば、CF4)との組合せが知られている。しかしながら、本出願人は、O2/CF4ガス化学種では、アッシング速度を高めるために、多量のCF4(>10%)が必要になることを見出した。高濃度のCF4では、このアッシング条件は、本出願人のプリントヘッドの窒化シリコンノズル構造に悪影響を及ぼす。このように、O2/CF4は、本出願人のプリントヘッドから、堅焼き(hardbake;ハードベーク)されたフォトレジストを除去するためには満足できるレベルにないことが判明した。
【0015】
また、アッシング速度を高めるためにO2/N2を使用することも知られているが、N2を添加しても、堅焼き(hardbake;ハードベーク)されたフォトレジストを除去するために純粋なO2より改善されるが、その程度は緩やかである。
【0016】
したがって、前述したものから、MEMS作製技術においてフォトレジストの除去効率を高める必要があることを認識されたい。
【0017】
フォトレジストの除去と同時に、エッチングされたビアから「ベール(veil)」を除去することがさらに望ましい。ポストエッチング残留物または「ベール」は、異方性エッチングプロセス(例えば、ボッシュプロセス)の副生成物としてビア側壁に沿って形成される。ベールは、当技術分野において十分に認識された問題であり、除去しにくいことでも知られている。ベールは、典型的に、エッチングされた材料の潜在種を含み、一般に、酸炭化シリコン化合物である。ポリマーを形成する異方性エッチング化学種(例えば、ボッシュプロセス)が、通例、攻撃的なウェット化学溶剤を使用してしか除去されないベールを生じる。さらに、高温でO2を使用する従来のアッシングは、典型的に、ベールの問題をさらに深刻化し、ベールの除去はさらに困難になる。したがって、高信頼性であり、ウェハにダメージを与えうる攻撃的なウェット化学種を必要としないドライベール除去プロセスが必要とされている。
【0018】
プリントヘッドの作製において上述した需要が存在するが、任意のMEMS作製プロセス、特に、堅焼き(hardbake;ハードベーク)および/または紫外線硬化された比較的厚い犠牲フォトレジスト層を使用するMEMS作製プロセスが、フォトレジスト除去および/またはベール除去の改良された技術から利益を得られることを認識されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第1941001号
【特許文献2】米国特許第3596275号
【特許文献3】米国特許第3373437号
【特許文献4】米国特許第3946398号
【特許文献5】米国特許第3683212号
【特許文献6】米国特許第3747120号
【特許文献7】米国特許第4459601号
【特許文献8】米国特許第4584590号
【特許文献9】英国特許第2007162号
【特許文献10】米国特許第4490728号
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】J Moore著、文献「Non−Impact Printing:Introduction and Historical Perspective」、Output Hard Copy Devices、Editors:R Dubeck and S Sherr、pages207〜220(1988)
【発明の概要】
【0021】
第1の態様において、O2、NH3およびフッ素含有ガスを含むガス化学種から形成されたプラズマを用いる、基板からフォトレジストを除去する方法が提供される。本発明による方法により、従来のO2プラズマまたはO2/N2プラズマを使用したアッシング速度と比較して、少なくとも20%、少なくとも50%または少なくとも100%、驚くほど有益にアッシング速度が高められる。
【0022】
本発明による方法は、従来のO2またはO2/N2アッシングプラズマとは対照的に、基板のエッチングされたビアのベールを同時に除去する。
【0023】
任意に、フッ素含有ガスはCF4である。
【0024】
任意に、フッ素含有ガスは、5容量%未満の濃度で上記ガス化学種に存在する。フッ素含有ガスの量は、通例、基板にある任意の窒化シリコンプリントヘッド構造へのダメージを回避するように低く保たれる。
【0025】
任意に、フッ素含有ガスは、3容量%未満の濃度でガス化学種に存在する。
【0026】
任意に、O2:NH3の比は、20:1〜5:1の範囲のものである。
【0027】
任意に、O2:CF4の比は、40:1〜20:1の範囲のものである。
【0028】
任意に、ガス化学種は、O2、NH3およびCF4のみからなる。しかしながら、必要に応じて、ガス化学種にHeやArなどの不活性ガスが存在してもよい。
【0029】
任意に、フォトレジストは、堅焼き(hardbake;ハードベーク)されたフォトレジストおよび/または紫外線硬化されたフォトレジストであり、特に、従来のO2またはO2/N2アッシングプラズマを使用して除去することが困難である。さらに、従来のアッシングプラズマを使用すると、通例、問題となる残留物(「ベール」)が残る。
【0030】
任意に、MEMS構造形成(例えば、インクジェットノズルアセンブリ)において犠牲スカフォルドとして使用されるフォトレジストのように、フォトレジストの厚さは少なくとも5ミクロンである。
【0031】
任意に、基板はチャックに取り付けられ、チャックは、−5〜−30℃の範囲の温度まで冷却される。
【0032】
任意に、この方法は、プリントヘッド作製プロセスのようなMEMS作製プロセスのステップである。
【0033】
任意に、フォトレジストは、インクジェットノズルチャンバおよび/またはインク供給チャネルに含まれる。
【0034】
任意に、フォトレジストは、インクジェットノズルアセンブリ用の保護コーティング、および/または異方性深堀反応性イオンエッチング(DRIE)プロセス用のマスクである。
【0035】
第2の態様において、インクジェットプリントヘッドの作製方法であって、
ウェハ基板の正面側に、フォトレジストがプラグ埋め込みされた対応するインク入口を各々が有するインクジェットノズルチャンバを形成するステップと、
フォトレジストがプラグ埋め込みされたインク入口に出会うように、ウェハ基板の背面側からインク供給チャネルをエッチングするステップと、
O2、NH3およびフッ素含有ガスを含む第1のガス化学種から形成された第1のプラズマに背面側をさらすことによって、フォトレジストの少なくとも一部を除去すると同時に、インク供給チャネルのベールを除去するステップとを含む方法が提供される。
【0036】
任意に、この方法は、
O2およびNH3を含む第2のガス化学種から形成された第2のプラズマに正面側をさらすことによって、さらなるフォトレジストを除去するステップを含む。
【0037】
以下、本発明の任意の実施形態について、添付の図面を参照しながら、例示的に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】サーマルインクジェットプリントヘッドのノズルアセンブリのアレイの部分斜視図である。
【図2】図1に示すノズルアセンブリユニットセルの側面図である。
【図3】図2に示すノズルアセンブリの斜視図である。
【図4】側壁およびルーフ材料を犠牲フォトレジスト層に堆積した後の部分形成されたノズルアセンブリを示す。
【図5】図4に示すノズルアセンブリの斜視図である。
【図6】図7に示すノズルリムエッチングに関連するマスクである。
【図7】ノズル開口リムを形成するためのルーフ層のエッチングを示す。
【図8】図7に示すノズルアセンブリの斜視図である。
【図9】図10に示すノズル開口エッチングに関連するマスクである。
【図10】長円ノズル開口を形成するようにルーフ材料をエッチングすることを示す。
【図11】図10に示すノズルアセンブリの斜視図である。
【図12】背面側ウェハを薄化した後のノズルアセンブリを示す。
【図13】図12に示すノズルアセンブリの斜視図である。
【図14】図15に示す背面側エッチングに関連するマスクである。
【図15】ウェハへのインク供給チャネルの背面側エッチングを示す。
【図16】図15に示すノズルアセンブリの斜視図である。
【図17】背面側アッシング後のノズルアセンブリを示す。
【図18】図17に示すノズルアセンブリの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
上述したように、本発明は、フォトレジストの除去を必要とする任意のプロセスとともに使用されてもよい。しかしながら、MEMSインクジェットプリントヘッドの作製の実施例を用いて本発明を例示する。本出願人は、本発明が適切である複数のインクジェットプリントヘッドの作製について前述してきた。本発明の理解を促すために、本明細書においてこのようなプリントヘッドをすべて記載する必要はない。しかしながら、本発明は、サーマル気泡形成型インクジェットプリントヘッドおよびメカニカルサーマルベンド作動型インクジェットプリントヘッドに関連して記載される。本発明の利点は、以下の記述から容易に明らかになる。
【0040】
図1を参照すると、複数のノズルアセンブリを含むプリントヘッドの部品が示されている。図2および図3は、これらのノズルアセンブリの1つの側断面図および切欠斜視図を示す。
【0041】
各ノズルアセンブリは、シリコンウェハ基板2にMEMS作製技術によって形成されたノズルチャンバ24を含む。ノズルチャンバ24は、ルーフ21と、ルーフ21からシリコン基板2に延伸する側壁22とによって画成される。図1に示すように、各ルーフは、プリントヘッドの噴射面にわたって広がるノズルプレート56の部分によって画成される。ノズルプレート56および側壁22は、同じ材料で形成され、この材料は、MEMS作製中にフォトレジストの犠牲スカフォルドにわたってPECVDによって堆積される。典型的に、ノズルプレート56および側壁21は、二酸化シリコンまたは窒化シリコンなどのセラミック材料で形成される。これらの硬質材料は、プリントヘッドの堅牢性に優れた特性を有し、本質的に親水性の性質は、毛管作用によってノズルチャンバ24にインクを供給するために有益である。
【0042】
ノズルチャンバ24の詳細に戻ると、ノズル開口26が、各ノズルチャンバ24のルーフに画成されることが分かる。各ノズル開口26は略長円であり、関連するノズルリム25を有する。ノズルリム25は、印刷中の液滴の方向性を補助するとともに、ノズル開口26からのインクの溢れを少なくともある程度低減する。ノズルチャンバ24からインクを噴射するためのアクチュエータは、ノズル開口26の下方に配置され、ピット8にわたって懸架されたヒータ要素29である。基板2の下地CMOS層にある駆動回路に接続された電極9を介して、ヒータ要素29に電流が供給される。ヒータ要素29に電流が流されると、ヒータ要素29は、周囲のインクを急速に過熱して気泡を形成し、気泡はノズル開口からインクを押し出す。ヒータ要素29を懸架することによって、ノズルチャンバ24にインクが注入されたときに、ヒータ要素29はインク中に完全に浸される。これにより、より少ない熱が下地基板2内に放散し、より多くの入力エネルギーが気泡を生成するために使用されるため、プリントヘッドの効率が向上する。
【0043】
図1に最も明らかに示されているように、ノズルは複数列に配設され、列に沿って長手方向に延伸するインク供給チャネル27が、その列の各ノズルにインクを供給する。インク供給チャネル27は、各ノズルのインク入口通路15にインクを送達し、インク入口通路15は、ノズル開口26の側方からインク導管23を通してノズルチャンバ24内にインクを供給する。
【0044】
このようなプリントヘッドを製造するための完全なMEMS作製プロセスが、本出願人によってすでに出願され、2005年10月11日に出願された米国特許出願第11/246,684号明細書に詳細に記載され、その内容全体は、本明細書に参照により組み込まれる。本発明の1つの実施例を示すために、この作製プロセスの後段階をここで簡潔に説明する。
【0045】
図4および図5は、犠牲フォトレジスト16を内包したノズルチャンバ24を備えた部分的に作製されたプリントヘッドを示す。ノズル作製中、フォトレジスト16は、第1に、インク入口15(図2に示す)をプラグ埋め込みするために使用され、第2に、懸架されたヒータ要素29を形成するためのヒータ材料を堆積するためのスカフォルドとして使用され、第3に、側壁22およびルーフ21を堆積するためにスカフォルドとして使用された(ノズルプレート56の部分を画成する)。インク入口15をプラグ埋め込みするフォトレジストの深さは、約20ミクロンであるのに対して、ノズルチャンバにおいてスカフォルドとして使用されるフォトレジストの厚さは、少なくとも5ミクロンの厚さを有する。さらに、フォトレジスト16はすべて、堅焼き(hardbake;ハードベーク)および紫外線硬化され、作製プロセスにおいて後で除去されなければならない。
【0046】
図6〜図8を参照すると、MEMS作製の次の段階は、ルーフ材料20から2ミクロンエッチングすることによって、ルーフ21に長円ノズルリム25を画成する。このエッチングは、図6に示すダークトーンリムマスクによって露出されたフォトレジスト層(図示せず)を用いて規定される。長円リム25は、それぞれサーマルアクチュエータ29にわたって位置付けられた2つの同軸リムリップ25aおよび25bを含む。
【0047】
図9から図11を参照すると、次の段階で、リム25によって境界が付けられた残りのルーフ材料20を貫通するまでエッチングすることによって、ルーフ21に長円のノズル開口26を画成する。このエッチングは、図9に示すダークトーンルーフマスクによって露出させたフォトレジスト層(図示せず)を用いて規定される。図11に示すように、長円のノズル開口26はサーマルアクチュエータ29の上にわたって配置される。
【0048】
ウェハの正面側のMEMS処理が完了すると、ウェハは、背面側を研削し、約150ミクロンの厚さ(図12および図13)にエッチングすることによって薄化される。ウェハの薄化後、インク供給チャネル27は、標準的な異方性DRIE(図14〜図16)を用いてインク入口15と出会うように、ウェハの背面側からエッチングされる。この背面側エッチングは、図14に示すダークトーンマスクによって露出された、堅焼き(hardbake;ハードベーク)されたフォトレジスト層50を用いて規定される。インク供給チャネル27は、正面側のMEMSノズルアセンブリの作製において使用される犠牲フォトレジスト16のすべてを除去した後、ウェハの背面側とインク入口15との間に流体接続を確立する。
【0049】
フォトレジストの除去は、まず、背面側のアッシングから始まり、裏面側の堅焼き(hardbake;ハードベーク)されたフォトレジスト層50を除去し、正面側インク入口15(図17および図18)をプラグ埋め込みするフォトレジスト16のプラグの一部分を除去する。背面側のアッシングは、連続した3段階のアッシングプロセスを用いて、以下の実施例において記載されたアッシング条件を利用する。
【0050】
従来のアッシングプロセスにおいて、フォトレジスト16をアッシングするために、O2プラズマが用いられる。しかしながら、本発明によれば、アッシングプラズマは、O2、NH3およびCF4を含むガス化学種を用いて形成される。プラズマが、このガス化学種を含むガス化学種から形成される場合、アッシング速度の上昇およびノズル構造へのダメージ低下の点から優れたアッシングが達成される。さらに、インク供給チャネル27の背面側異方性エッチングから得られたベールが、このガス化学種を用いて除去されることで、ベールの攻撃的なウェット化学除去が不要になる。アッシング条件の実験的な詳細は、以下の実施例の項でより詳細に記載される。
【0051】
最後に、正面側のアッシングは、図1〜図3に示す完成したプリントヘッドを与えるために、フォトレジスト16の残りを除去する。正面側アッシングは、本発明によるO2/NH3/CF4ガス化学種を利用してもよい。あるいは、正面側アッシングは、本出願人の米国特許出願公開第2009/0078675号明細書に記載されているようなO2/NH3ガス化学種を利用してもよく、その内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0052】
図1は、完成したプリントヘッド集積回路の3つの隣接した列のノズルを切欠斜視図で示す。各列のノズルは、列の長さに沿って延伸し、各列の複数のインク入口15にインクを供給するインク供給チャネル27をそれぞれ有する。インク入口は、各列のインク導管23にインクを供給し、各ノズルチャンバは、当該列に共通するインク導管からインクを受ける。
【0053】
後段階MEMS作製ステップの正確な順番が変更されてもよいことは、当業者によって認識される。例えば、ウェハには、背面側アッシングのみ、または正面側アッシングのみが施されてもよい。いずれにせよ、フォトレジスト16を除去してプリントヘッドを提供するために、正面側アッシングおよび/または背面側アッシングのいずれかのアッシングをウェハに施す必要があることは認識される。
【実施例】
【0054】
図17および図18に示すウェハの背面側アッシングを、表1に示す最適化されたアッシングの順序を用いて、アッシング炉において実行した。配合表1を15分間使用した後、配合表2を5分間、次に、配合表3を10分間使用した。表1の温度は、ヘリウムを使用して冷却されたチャック温度を参照する。
【表1】
【0055】
表1に示す連続的なアッシング条件下において、優れたフォトレジスト除去速度を観察した。さらに、SEMによって確認されるように、インク供給チャネル27およびインク入口のベールは完全に除去された。比較により、従来のO2アッシングまたはO2/N2アッシングは、同じフォトレジストを除去するために約70〜90分間のアッシング時間を要し、後続のウェット化学処理によって除去される必要のあるベールが多量に残る。
【0056】
予想されるように、O2/NH3/CF4ガス化学種を使用して正面側アッシング実験において、優れたアッシング速度およびベール除去を観察した。
【0057】
これらの実験から、O2/NH3/CF4を含むガス化学種が、従来のアッシング条件と比較して、優れたアッシング速度および驚くべきベール除去効率を提供するという結論が得られた。
【0058】
広範囲に記載された本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、特定の実施形態に示された本発明に、多数の変形および/または修正がなされてもよいことは、当業者らにより認識される。したがって、本発明の実施形態は、あらゆる点で例示的なものであり、限定的なものではないとみなすべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタの分野に関し、特に、MEMSインクジェットプリントヘッドの分野に関する。本発明は、主に、MEMSインクジェットプリントヘッドの作製を向上させるために開発されてきたが、本発明は、任意のMEMS作製プロセスにも同様に適応可能である。
【背景技術】
【0002】
これまで数多くの異なるタイプの印刷術が発明され、その多くが現在でも使用されている。既知の印刷形態は、適切なマーキング媒体で印刷媒体をマーキングするための種々の方法を有する。一般的に使用されている印刷形態には、オフセット印刷、レーザ印刷および複写デバイス、ドットマトリクス式インパクトプリンタ、感熱紙プリンタ、フィルムレコーダ、熱転写プリンタ、昇華型プリンタ、およびドロップ・オン・デマンド式および連続フロー式の両方のインクジェットプリンタがある。コスト、速度、品質、信頼性、構造および動作の簡潔性などの面で、どのタイプのプリンタにも特有の利点および問題がある。
【0003】
近年、個々のインクピクセルのそれぞれが1つ以上のインクノズルから生じるインクジェット印刷の分野が、主に、その低価格性と多用途性により、ますます普及してきた。
【0004】
インクジェット印刷に関する多くの異なる技術が発明されてきた。この分野の概要を得るために、J Mooreによる文献、「Non−Impact Printing:Introduction and Historical Perspective」(Output Hard Copy Devices,Editors R Dubeck and S Sherr,pages 207〜220(1988))を参照されたい。
【0005】
インクジェットプリンタは、多くの異なるタイプのものがある。インクジェット印刷に連続したインク流が利用され始めたのは、少なくとも、Hansellの米国特許第1941001号明細書において簡易な形態の連続流式静電インクジェット印刷が開示された1929年まで遡る。
【0006】
また、Sweetらの米国特許第3596275号明細書にも、液滴分離を生じさせるようにインクジェット流が高周波静電場によって変調されるステップを含む連続式インクジェット印刷プロセスが開示されている。この技術は、今でも、Elmjet社およびScitex社を含む何社かのメーカーによって利用されている(Sweetらの米国特許第3373437号明細書を参照されたい)。
【0007】
また、圧電インクジェットプリンタが、一般的に利用されているインクジェット印刷デバイスの1つの形態である。圧電システムは、ダイアフラム(diaphragm)動作モードを利用するKyserらの米国特許第3946398号明細書(1970年)、圧電結晶のスクイーズ(squeeze)動作モードを開示したZoltenの米国特許第3683212号明細書(1970年)、圧電動作のベンド(bend)モードを開示したStemmeの米国特許第3747120号明細書(1972年)、インクジェット流の圧電プッシュ(push)モード作動を開示したHowkinsの米国特許第4459601号明細書、およびせん断(shear)モード型の圧電トランスデューサ要素を開示したFischbeckの米国特許第4584590号明細書に開示されている。
【0008】
最近では、サーマルインクジェット印刷が、広く普及した形態のインクジェット印刷形態となっている。インクジェット印刷技術は、Endoらの英国特許第2007162号明細書(1979年)およびVaughtらの米国特許第4490728号明細書に開示されているものを含む。前述した参照文献は共に、ノズルなどの狭窄空間に気泡を発生させることで、限定された空間に接続された開口から適切な印刷媒体にインクを噴射させる電熱アクチュエータの作動に依存したインクジェット印刷技術を開示したものである。電熱アクチュエータを利用する印刷デバイスは、Canon(登録商標)社、Hewlett Packard(登録商標)社などのメーカーによって製造されている。
【0009】
以上のことから分かるように、多くの異なるタイプの印刷技術が利用可能である。理想的には、印刷技術は、多数の所望の特質を有するべきである。これらの特質には、安価な構造および動作、高速動作、安全性および継続的な長期動作などがある。各技術は、コスト、速度、品質、信頼性、電力使用量、組立動作の簡易性、耐久性および消耗部品の面でそれぞれ特有の利点および欠点がありうる。
【0010】
本出願人は、MEMS技術によって作製された多数のインクジェットプリントヘッドをこれまで開発してきた。典型的に、MEMS作製は、複数のフォトレジスト堆積および除去ステップを用いる。通例、フォトリソグラフィマスクとして使用される比較的薄いフォトレジスト層(およそ1ミクロン以下)の除去は容易である。標準的な条件では、「アッシング」という名称で当技術分野において知られているプロセスで任意のフォトレジストを酸化的に除去する酸素プラズマを用いる。
【0011】
インクジェットノズルアセンブリの作製において、本出願人は、他の材料(例えば、ヒータ材料、ルーフ構造など)が堆積されうる犠牲スカフォルド(scaffold)としてフォトレジストを用いてきた。この技術により、比較的複雑なノズルアセンブリを組み立てることができる。しかしながら、粘性、耐熱性のある比較的厚いフォトレジスト層を堆積することが要求される。以下にさらに詳細に説明するように、最大30ミクロンのフォトレジスト層またはプラグが要求されることもある。さらに、このフォトレジストは、引き続き高温堆積ステップ中、例えば、金属またはセラミック材料をフォトレジストに堆積する間に逆流しないように、完全に堅焼き(hardbake;ハードベーク)され、紫外線硬化されなければならない。
【0012】
典型的なMEMSプリントヘッド作製プロセスにおいて、最終的なアッシングステップが、作製プロセス中に用いられるフォトレジストスカフォルドおよびフォトレジストプラグを含む、ノズルアセンブリにあるすべての残留フォトレジストを除去する。これまで、フォトレジストを最終段階または後段階で除去するために、従来のO2プラズマアッシング技術が用いられてきた。
【0013】
しかしながら、堅焼き(hardbake;ハードベーク)および紫外線硬化された厚いフォトレジスト層は、アッシングに対する耐性が高く、従来のO2アッシング技術によって比較的ゆっくり除去される。これは、アッシング時間を延長し、および/またはアッシング温度を上昇させる必要があることを意味する。アッシング時間の延長および/またはアッシング温度の上昇は、アッシングプロセス中、他のMEMS構造(例えば、ノズルチャンバ、アクチュエータ)へのダメージの危険性が高まるため望ましくない。さらに、一般に、処理時間を短縮し、最終的には、各プリントヘッドのコストを低減するように、各MEMS処理ステップの効率を上げる必要がある。
【0014】
アッシング速度を高めるために、O2とフッ素化ガス(例えば、CF4)との組合せが知られている。しかしながら、本出願人は、O2/CF4ガス化学種では、アッシング速度を高めるために、多量のCF4(>10%)が必要になることを見出した。高濃度のCF4では、このアッシング条件は、本出願人のプリントヘッドの窒化シリコンノズル構造に悪影響を及ぼす。このように、O2/CF4は、本出願人のプリントヘッドから、堅焼き(hardbake;ハードベーク)されたフォトレジストを除去するためには満足できるレベルにないことが判明した。
【0015】
また、アッシング速度を高めるためにO2/N2を使用することも知られているが、N2を添加しても、堅焼き(hardbake;ハードベーク)されたフォトレジストを除去するために純粋なO2より改善されるが、その程度は緩やかである。
【0016】
したがって、前述したものから、MEMS作製技術においてフォトレジストの除去効率を高める必要があることを認識されたい。
【0017】
フォトレジストの除去と同時に、エッチングされたビアから「ベール(veil)」を除去することがさらに望ましい。ポストエッチング残留物または「ベール」は、異方性エッチングプロセス(例えば、ボッシュプロセス)の副生成物としてビア側壁に沿って形成される。ベールは、当技術分野において十分に認識された問題であり、除去しにくいことでも知られている。ベールは、典型的に、エッチングされた材料の潜在種を含み、一般に、酸炭化シリコン化合物である。ポリマーを形成する異方性エッチング化学種(例えば、ボッシュプロセス)が、通例、攻撃的なウェット化学溶剤を使用してしか除去されないベールを生じる。さらに、高温でO2を使用する従来のアッシングは、典型的に、ベールの問題をさらに深刻化し、ベールの除去はさらに困難になる。したがって、高信頼性であり、ウェハにダメージを与えうる攻撃的なウェット化学種を必要としないドライベール除去プロセスが必要とされている。
【0018】
プリントヘッドの作製において上述した需要が存在するが、任意のMEMS作製プロセス、特に、堅焼き(hardbake;ハードベーク)および/または紫外線硬化された比較的厚い犠牲フォトレジスト層を使用するMEMS作製プロセスが、フォトレジスト除去および/またはベール除去の改良された技術から利益を得られることを認識されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第1941001号
【特許文献2】米国特許第3596275号
【特許文献3】米国特許第3373437号
【特許文献4】米国特許第3946398号
【特許文献5】米国特許第3683212号
【特許文献6】米国特許第3747120号
【特許文献7】米国特許第4459601号
【特許文献8】米国特許第4584590号
【特許文献9】英国特許第2007162号
【特許文献10】米国特許第4490728号
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】J Moore著、文献「Non−Impact Printing:Introduction and Historical Perspective」、Output Hard Copy Devices、Editors:R Dubeck and S Sherr、pages207〜220(1988)
【発明の概要】
【0021】
第1の態様において、O2、NH3およびフッ素含有ガスを含むガス化学種から形成されたプラズマを用いる、基板からフォトレジストを除去する方法が提供される。本発明による方法により、従来のO2プラズマまたはO2/N2プラズマを使用したアッシング速度と比較して、少なくとも20%、少なくとも50%または少なくとも100%、驚くほど有益にアッシング速度が高められる。
【0022】
本発明による方法は、従来のO2またはO2/N2アッシングプラズマとは対照的に、基板のエッチングされたビアのベールを同時に除去する。
【0023】
任意に、フッ素含有ガスはCF4である。
【0024】
任意に、フッ素含有ガスは、5容量%未満の濃度で上記ガス化学種に存在する。フッ素含有ガスの量は、通例、基板にある任意の窒化シリコンプリントヘッド構造へのダメージを回避するように低く保たれる。
【0025】
任意に、フッ素含有ガスは、3容量%未満の濃度でガス化学種に存在する。
【0026】
任意に、O2:NH3の比は、20:1〜5:1の範囲のものである。
【0027】
任意に、O2:CF4の比は、40:1〜20:1の範囲のものである。
【0028】
任意に、ガス化学種は、O2、NH3およびCF4のみからなる。しかしながら、必要に応じて、ガス化学種にHeやArなどの不活性ガスが存在してもよい。
【0029】
任意に、フォトレジストは、堅焼き(hardbake;ハードベーク)されたフォトレジストおよび/または紫外線硬化されたフォトレジストであり、特に、従来のO2またはO2/N2アッシングプラズマを使用して除去することが困難である。さらに、従来のアッシングプラズマを使用すると、通例、問題となる残留物(「ベール」)が残る。
【0030】
任意に、MEMS構造形成(例えば、インクジェットノズルアセンブリ)において犠牲スカフォルドとして使用されるフォトレジストのように、フォトレジストの厚さは少なくとも5ミクロンである。
【0031】
任意に、基板はチャックに取り付けられ、チャックは、−5〜−30℃の範囲の温度まで冷却される。
【0032】
任意に、この方法は、プリントヘッド作製プロセスのようなMEMS作製プロセスのステップである。
【0033】
任意に、フォトレジストは、インクジェットノズルチャンバおよび/またはインク供給チャネルに含まれる。
【0034】
任意に、フォトレジストは、インクジェットノズルアセンブリ用の保護コーティング、および/または異方性深堀反応性イオンエッチング(DRIE)プロセス用のマスクである。
【0035】
第2の態様において、インクジェットプリントヘッドの作製方法であって、
ウェハ基板の正面側に、フォトレジストがプラグ埋め込みされた対応するインク入口を各々が有するインクジェットノズルチャンバを形成するステップと、
フォトレジストがプラグ埋め込みされたインク入口に出会うように、ウェハ基板の背面側からインク供給チャネルをエッチングするステップと、
O2、NH3およびフッ素含有ガスを含む第1のガス化学種から形成された第1のプラズマに背面側をさらすことによって、フォトレジストの少なくとも一部を除去すると同時に、インク供給チャネルのベールを除去するステップとを含む方法が提供される。
【0036】
任意に、この方法は、
O2およびNH3を含む第2のガス化学種から形成された第2のプラズマに正面側をさらすことによって、さらなるフォトレジストを除去するステップを含む。
【0037】
以下、本発明の任意の実施形態について、添付の図面を参照しながら、例示的に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】サーマルインクジェットプリントヘッドのノズルアセンブリのアレイの部分斜視図である。
【図2】図1に示すノズルアセンブリユニットセルの側面図である。
【図3】図2に示すノズルアセンブリの斜視図である。
【図4】側壁およびルーフ材料を犠牲フォトレジスト層に堆積した後の部分形成されたノズルアセンブリを示す。
【図5】図4に示すノズルアセンブリの斜視図である。
【図6】図7に示すノズルリムエッチングに関連するマスクである。
【図7】ノズル開口リムを形成するためのルーフ層のエッチングを示す。
【図8】図7に示すノズルアセンブリの斜視図である。
【図9】図10に示すノズル開口エッチングに関連するマスクである。
【図10】長円ノズル開口を形成するようにルーフ材料をエッチングすることを示す。
【図11】図10に示すノズルアセンブリの斜視図である。
【図12】背面側ウェハを薄化した後のノズルアセンブリを示す。
【図13】図12に示すノズルアセンブリの斜視図である。
【図14】図15に示す背面側エッチングに関連するマスクである。
【図15】ウェハへのインク供給チャネルの背面側エッチングを示す。
【図16】図15に示すノズルアセンブリの斜視図である。
【図17】背面側アッシング後のノズルアセンブリを示す。
【図18】図17に示すノズルアセンブリの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
上述したように、本発明は、フォトレジストの除去を必要とする任意のプロセスとともに使用されてもよい。しかしながら、MEMSインクジェットプリントヘッドの作製の実施例を用いて本発明を例示する。本出願人は、本発明が適切である複数のインクジェットプリントヘッドの作製について前述してきた。本発明の理解を促すために、本明細書においてこのようなプリントヘッドをすべて記載する必要はない。しかしながら、本発明は、サーマル気泡形成型インクジェットプリントヘッドおよびメカニカルサーマルベンド作動型インクジェットプリントヘッドに関連して記載される。本発明の利点は、以下の記述から容易に明らかになる。
【0040】
図1を参照すると、複数のノズルアセンブリを含むプリントヘッドの部品が示されている。図2および図3は、これらのノズルアセンブリの1つの側断面図および切欠斜視図を示す。
【0041】
各ノズルアセンブリは、シリコンウェハ基板2にMEMS作製技術によって形成されたノズルチャンバ24を含む。ノズルチャンバ24は、ルーフ21と、ルーフ21からシリコン基板2に延伸する側壁22とによって画成される。図1に示すように、各ルーフは、プリントヘッドの噴射面にわたって広がるノズルプレート56の部分によって画成される。ノズルプレート56および側壁22は、同じ材料で形成され、この材料は、MEMS作製中にフォトレジストの犠牲スカフォルドにわたってPECVDによって堆積される。典型的に、ノズルプレート56および側壁21は、二酸化シリコンまたは窒化シリコンなどのセラミック材料で形成される。これらの硬質材料は、プリントヘッドの堅牢性に優れた特性を有し、本質的に親水性の性質は、毛管作用によってノズルチャンバ24にインクを供給するために有益である。
【0042】
ノズルチャンバ24の詳細に戻ると、ノズル開口26が、各ノズルチャンバ24のルーフに画成されることが分かる。各ノズル開口26は略長円であり、関連するノズルリム25を有する。ノズルリム25は、印刷中の液滴の方向性を補助するとともに、ノズル開口26からのインクの溢れを少なくともある程度低減する。ノズルチャンバ24からインクを噴射するためのアクチュエータは、ノズル開口26の下方に配置され、ピット8にわたって懸架されたヒータ要素29である。基板2の下地CMOS層にある駆動回路に接続された電極9を介して、ヒータ要素29に電流が供給される。ヒータ要素29に電流が流されると、ヒータ要素29は、周囲のインクを急速に過熱して気泡を形成し、気泡はノズル開口からインクを押し出す。ヒータ要素29を懸架することによって、ノズルチャンバ24にインクが注入されたときに、ヒータ要素29はインク中に完全に浸される。これにより、より少ない熱が下地基板2内に放散し、より多くの入力エネルギーが気泡を生成するために使用されるため、プリントヘッドの効率が向上する。
【0043】
図1に最も明らかに示されているように、ノズルは複数列に配設され、列に沿って長手方向に延伸するインク供給チャネル27が、その列の各ノズルにインクを供給する。インク供給チャネル27は、各ノズルのインク入口通路15にインクを送達し、インク入口通路15は、ノズル開口26の側方からインク導管23を通してノズルチャンバ24内にインクを供給する。
【0044】
このようなプリントヘッドを製造するための完全なMEMS作製プロセスが、本出願人によってすでに出願され、2005年10月11日に出願された米国特許出願第11/246,684号明細書に詳細に記載され、その内容全体は、本明細書に参照により組み込まれる。本発明の1つの実施例を示すために、この作製プロセスの後段階をここで簡潔に説明する。
【0045】
図4および図5は、犠牲フォトレジスト16を内包したノズルチャンバ24を備えた部分的に作製されたプリントヘッドを示す。ノズル作製中、フォトレジスト16は、第1に、インク入口15(図2に示す)をプラグ埋め込みするために使用され、第2に、懸架されたヒータ要素29を形成するためのヒータ材料を堆積するためのスカフォルドとして使用され、第3に、側壁22およびルーフ21を堆積するためにスカフォルドとして使用された(ノズルプレート56の部分を画成する)。インク入口15をプラグ埋め込みするフォトレジストの深さは、約20ミクロンであるのに対して、ノズルチャンバにおいてスカフォルドとして使用されるフォトレジストの厚さは、少なくとも5ミクロンの厚さを有する。さらに、フォトレジスト16はすべて、堅焼き(hardbake;ハードベーク)および紫外線硬化され、作製プロセスにおいて後で除去されなければならない。
【0046】
図6〜図8を参照すると、MEMS作製の次の段階は、ルーフ材料20から2ミクロンエッチングすることによって、ルーフ21に長円ノズルリム25を画成する。このエッチングは、図6に示すダークトーンリムマスクによって露出されたフォトレジスト層(図示せず)を用いて規定される。長円リム25は、それぞれサーマルアクチュエータ29にわたって位置付けられた2つの同軸リムリップ25aおよび25bを含む。
【0047】
図9から図11を参照すると、次の段階で、リム25によって境界が付けられた残りのルーフ材料20を貫通するまでエッチングすることによって、ルーフ21に長円のノズル開口26を画成する。このエッチングは、図9に示すダークトーンルーフマスクによって露出させたフォトレジスト層(図示せず)を用いて規定される。図11に示すように、長円のノズル開口26はサーマルアクチュエータ29の上にわたって配置される。
【0048】
ウェハの正面側のMEMS処理が完了すると、ウェハは、背面側を研削し、約150ミクロンの厚さ(図12および図13)にエッチングすることによって薄化される。ウェハの薄化後、インク供給チャネル27は、標準的な異方性DRIE(図14〜図16)を用いてインク入口15と出会うように、ウェハの背面側からエッチングされる。この背面側エッチングは、図14に示すダークトーンマスクによって露出された、堅焼き(hardbake;ハードベーク)されたフォトレジスト層50を用いて規定される。インク供給チャネル27は、正面側のMEMSノズルアセンブリの作製において使用される犠牲フォトレジスト16のすべてを除去した後、ウェハの背面側とインク入口15との間に流体接続を確立する。
【0049】
フォトレジストの除去は、まず、背面側のアッシングから始まり、裏面側の堅焼き(hardbake;ハードベーク)されたフォトレジスト層50を除去し、正面側インク入口15(図17および図18)をプラグ埋め込みするフォトレジスト16のプラグの一部分を除去する。背面側のアッシングは、連続した3段階のアッシングプロセスを用いて、以下の実施例において記載されたアッシング条件を利用する。
【0050】
従来のアッシングプロセスにおいて、フォトレジスト16をアッシングするために、O2プラズマが用いられる。しかしながら、本発明によれば、アッシングプラズマは、O2、NH3およびCF4を含むガス化学種を用いて形成される。プラズマが、このガス化学種を含むガス化学種から形成される場合、アッシング速度の上昇およびノズル構造へのダメージ低下の点から優れたアッシングが達成される。さらに、インク供給チャネル27の背面側異方性エッチングから得られたベールが、このガス化学種を用いて除去されることで、ベールの攻撃的なウェット化学除去が不要になる。アッシング条件の実験的な詳細は、以下の実施例の項でより詳細に記載される。
【0051】
最後に、正面側のアッシングは、図1〜図3に示す完成したプリントヘッドを与えるために、フォトレジスト16の残りを除去する。正面側アッシングは、本発明によるO2/NH3/CF4ガス化学種を利用してもよい。あるいは、正面側アッシングは、本出願人の米国特許出願公開第2009/0078675号明細書に記載されているようなO2/NH3ガス化学種を利用してもよく、その内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0052】
図1は、完成したプリントヘッド集積回路の3つの隣接した列のノズルを切欠斜視図で示す。各列のノズルは、列の長さに沿って延伸し、各列の複数のインク入口15にインクを供給するインク供給チャネル27をそれぞれ有する。インク入口は、各列のインク導管23にインクを供給し、各ノズルチャンバは、当該列に共通するインク導管からインクを受ける。
【0053】
後段階MEMS作製ステップの正確な順番が変更されてもよいことは、当業者によって認識される。例えば、ウェハには、背面側アッシングのみ、または正面側アッシングのみが施されてもよい。いずれにせよ、フォトレジスト16を除去してプリントヘッドを提供するために、正面側アッシングおよび/または背面側アッシングのいずれかのアッシングをウェハに施す必要があることは認識される。
【実施例】
【0054】
図17および図18に示すウェハの背面側アッシングを、表1に示す最適化されたアッシングの順序を用いて、アッシング炉において実行した。配合表1を15分間使用した後、配合表2を5分間、次に、配合表3を10分間使用した。表1の温度は、ヘリウムを使用して冷却されたチャック温度を参照する。
【表1】
【0055】
表1に示す連続的なアッシング条件下において、優れたフォトレジスト除去速度を観察した。さらに、SEMによって確認されるように、インク供給チャネル27およびインク入口のベールは完全に除去された。比較により、従来のO2アッシングまたはO2/N2アッシングは、同じフォトレジストを除去するために約70〜90分間のアッシング時間を要し、後続のウェット化学処理によって除去される必要のあるベールが多量に残る。
【0056】
予想されるように、O2/NH3/CF4ガス化学種を使用して正面側アッシング実験において、優れたアッシング速度およびベール除去を観察した。
【0057】
これらの実験から、O2/NH3/CF4を含むガス化学種が、従来のアッシング条件と比較して、優れたアッシング速度および驚くべきベール除去効率を提供するという結論が得られた。
【0058】
広範囲に記載された本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、特定の実施形態に示された本発明に、多数の変形および/または修正がなされてもよいことは、当業者らにより認識される。したがって、本発明の実施形態は、あらゆる点で例示的なものであり、限定的なものではないとみなすべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板からフォトレジストを除去する方法であって、
O2、NH3およびフッ素含有ガスを含むガス化学種から形成されたプラズマを用いるステップ、を含む、方法。
【請求項2】
前記基板にあるエッチングされたビアのベールを同時に除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フッ素含有ガスがCF4である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フッ素含有ガスが、5容量%未満の濃度で前記ガス化学種に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記フッ素含有ガスが、3容量%未満の濃度で前記ガス化学種に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
O2:NH3の比が、20:1〜5:1の範囲のものである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
O2:CF4の比が、40:1〜20:1の範囲のものである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ガス化学種が、O2、NH3およびCF4のみからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
フォトレジストの除去速度が、O2プラズマを用いてフォトレジストの除去速度より少なくとも20%速い、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記フォトレジストが、堅焼きされたフォトレジストである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記フォトレジストが、紫外線硬化されたフォトレジストである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記フォトレジストの厚さが、少なくとも5ミクロンである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記基板がチャンクに取り付けられ、前記チャンクが、−5〜−30℃の範囲の温度まで冷却される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
MEMS作製プロセスのステップである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
プリントヘッド作製プロセスのステップである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記フォトレジストが、インクジェットノズルチャンバおよびインク供給チャネルの少なくとも1つに含まれる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記フォトレジストが、インクジェットノズルアセンブリ用の保護コーティングおよび/または異方性深堀反応性イオンエッチング(DRIE)プロセス用のマスクである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
インクジェットプリントヘッドの作製方法であって、
ウェハ基板の正面側に、フォトレジストがプラグ埋め込みされた対応するインク入口を各々が有するインクジェットノズルチャンバを形成するステップと、
フォトレジストがプラグ埋め込みされる前記インク入口と出会うように前記ウェハ基板の背面側からインク供給チャネルをエッチングするステップと、
前記フォトレジストの少なくとも一部を除去すると同時に、O2、NH3およびフッ素含有ガスを含む第1のガス化学種から形成された第1のプラズマに前記背面側をさらすことによって、前記インク供給チャネルのベールを除去するステップと、
を含む方法。
【請求項19】
O2およびNH3を含む第2のガス化学種から形成された第2のプラズマに前記正面側をさらすことによって、さらなるフォトレジストを除去するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2のガス化学種が、O2、NH3およびフッ素含有ガスを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項1】
基板からフォトレジストを除去する方法であって、
O2、NH3およびフッ素含有ガスを含むガス化学種から形成されたプラズマを用いるステップ、を含む、方法。
【請求項2】
前記基板にあるエッチングされたビアのベールを同時に除去する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フッ素含有ガスがCF4である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フッ素含有ガスが、5容量%未満の濃度で前記ガス化学種に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記フッ素含有ガスが、3容量%未満の濃度で前記ガス化学種に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
O2:NH3の比が、20:1〜5:1の範囲のものである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
O2:CF4の比が、40:1〜20:1の範囲のものである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ガス化学種が、O2、NH3およびCF4のみからなる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
フォトレジストの除去速度が、O2プラズマを用いてフォトレジストの除去速度より少なくとも20%速い、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記フォトレジストが、堅焼きされたフォトレジストである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記フォトレジストが、紫外線硬化されたフォトレジストである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記フォトレジストの厚さが、少なくとも5ミクロンである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記基板がチャンクに取り付けられ、前記チャンクが、−5〜−30℃の範囲の温度まで冷却される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
MEMS作製プロセスのステップである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
プリントヘッド作製プロセスのステップである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記フォトレジストが、インクジェットノズルチャンバおよびインク供給チャネルの少なくとも1つに含まれる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記フォトレジストが、インクジェットノズルアセンブリ用の保護コーティングおよび/または異方性深堀反応性イオンエッチング(DRIE)プロセス用のマスクである、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
インクジェットプリントヘッドの作製方法であって、
ウェハ基板の正面側に、フォトレジストがプラグ埋め込みされた対応するインク入口を各々が有するインクジェットノズルチャンバを形成するステップと、
フォトレジストがプラグ埋め込みされる前記インク入口と出会うように前記ウェハ基板の背面側からインク供給チャネルをエッチングするステップと、
前記フォトレジストの少なくとも一部を除去すると同時に、O2、NH3およびフッ素含有ガスを含む第1のガス化学種から形成された第1のプラズマに前記背面側をさらすことによって、前記インク供給チャネルのベールを除去するステップと、
を含む方法。
【請求項19】
O2およびNH3を含む第2のガス化学種から形成された第2のプラズマに前記正面側をさらすことによって、さらなるフォトレジストを除去するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2のガス化学種が、O2、NH3およびフッ素含有ガスを含む、請求項18に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2012−531053(P2012−531053A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516433(P2012−516433)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【国際出願番号】PCT/AU2009/001088
【国際公開番号】WO2011/022749
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(303024600)シルバーブルック リサーチ ピーティワイ リミテッド (150)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【国際出願番号】PCT/AU2009/001088
【国際公開番号】WO2011/022749
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(303024600)シルバーブルック リサーチ ピーティワイ リミテッド (150)
【Fターム(参考)】
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