説明

フォトレジストシミュレーション

【解決手段】フォトレジスト体積内における酸発生剤およびクエンチャの個数を判定するステップと、フォトレジスト体積により吸収された光子の個数を判定するステップと、酸に変換された酸発生剤の個数を判定するステップと、フォトレジスト体積内における酸とクエンチャとの反応の回数を判定するステップと、フォトレジスト体積の現像を計算するステップと、フォトレジスト体積の現像およびフォトレジストプロファイルの寸法特性の計測により形成された3次元的にシミュレーションされた走査型電子顕微鏡画像をプロセッサを用いて生成するステップとによる、フォトレジストプロファイルの寸法特性を計測するための、プロセッサに基づく方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年11月12日に出願された、先行する同時係属中の米国特許仮出願整理番号第61/260,533号のすべての権利および優先権を主張するものである。本発明は、集積回路製造分野に関するものである。さらに詳細には、本発明は、測長走査型電子顕微鏡(CDSEM:critical−dimension scanning electron microscope)を用いて観察および計測された、フォトレジストのレリーフイメージのシミュレーションに関する。
【背景技術】
【0002】
光リソグラフィに対するモデリング戦略においては、通常、連続体近似が、シミュレーションされる物理的現象に対して適用されてきた。これは、経験的観測の記述に連続体数学を用いることを意味する。一方、きわめて小さい寸法に縮小されると、現実世界は離散的になる。例えば、極めて小さい体積内における光エネルギーは個々の光子から構成され、平均的な光強度は無意味なものとなる。極めて小さい体積内における化学物質は個々の分子から構成され、平均的な化学的濃度は無意味なものとなる。したがって、係る小さい体積内における化学物質および光の反応は、離散的且つ確率的である。すなわち、反応する化学物質または光子が、反応を生じさせるための小さい体積内の所定位置に存在する場合もあり、存在しない場合もあるということである。
【0003】
露光量が減少しレジスト寸法が約100ナノメートルより小さくなると、確率レジスト効果およびレジストイメージ上における測長走査型電子顕微鏡の効果は無視できなくなる。
【0004】
したがって、例えば上述した等の問題を少なくとも部分的に克服するモデリング方法が必要となる。
【発明の概要】
【0005】
上述の、およびその他の必要性は、フォトレジスト体積内における酸発生剤およびクエンチャの個数を判定するステップと、フォトレジスト体積により吸収された光子の個数を判定するステップと、酸に変換された酸発生剤の個数を判定するステップと、フォトレジスト体積内における酸とクエンチャとの反応の回数を判定するステップと、フォトレジスト体積の現像を計算するステップと、フォトレジスト体積の現像およびフォトレジストプロファイルの寸法特性の計測により形成された3次元的にシミュレーションされた走査型電子顕微鏡画像をプロセッサを用いて生成するステップによる、フォトレジストプロファイルの寸法特性を計測するための、プロセッサに基づく方法により満足され得る。
【0006】
このようにすると、費用および時間を要する複数の経験的研究を実施せずとも、フォトレジストレリーフイメージ上における光−酸発生剤充填の効果、光−酸発生剤吸収の効果、光−酸発生剤量子効率の効果、クエンチャ充填の効果、光子ショットノイズ等の効果を研究することが可能である。
【0007】
本発明のこの態様に係る様々な実施形態において、フォトレジスト体積内における酸発生剤およびクエンチャの個数を判定するステップは、仮想的なフォトレジスト構築に基づいて、酸発生剤の所望する個数を指定するステップと、クエンチャの所望する個数を指定するステップとを含む。他の実施形態においては、フォトレジスト体積内における酸発生剤およびクエンチャの個数を判定するステップは、実在のフォトレジスト構築に基づいて、酸発生剤の実際の個数およびクエンチャの実際の個数を入力するステップを含む。いくつかの実施形態において、フォトレジスト体積により吸収された光子の個数を判定するステップは、仮想的な露光に基づいて、光子の所望する個数を指定するステップを含む。他の実施形態において、フォトレジスト体積により吸収された光子の個数を判定するステップは、既知の露光に基づいて、光子の個数を入力するステップを含む。いくつかの実施形態において、酸に変換された酸発生剤の個数を判定するステップは、光分解機構により酸に変換された酸発生剤を計算するステップを含む。いくつかの実施形態において、酸に変換された酸発生剤の個数を判定するステップは、イオン化機構により酸に変換された酸発生剤を計算するステップを含む。いくつかの実施形態において、フォトレジストプロファイルの寸法特性を計測するステップは、3次元的にシミュレーションされた走査型電子顕微鏡画像のハードコピー出力を定規を用いて計測するステップを含む。他の実施形態において、フォトレジストプロファイルの寸法特性を計測するステップは、3次元的にシミュレーションされた走査型電子顕微鏡画像のデータファイルを数学的に評価するステップを含む。いくつかの実施形態は、フォトレジストプロファイルの寸法特性に少なくとも部分的に基づくプロセスを用いて集積回路を製造するステップを含む。
【0008】
本発明の他の態様によれば、フォトレジストパラメータおよび露光パラメータをフォトレジストプロセスの確率モデルに入力するステップと、フォトレジストプロファイルをプロセッサを用いて確率モデルから計算するステップと、フォトレジストプロファイルの寸法特性をプロセッサ上で実行されるCDSEMシミュレータを用いて計測するステップとによる、フォトレジストプロファイルの寸法特性を計測するための、プロセッサに基づく方法が説明される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、コンピュータ可読媒体が説明される。なお、このコンピュータ可読媒体は、このコンピュータ可読媒体上に配置された、フォトレジストプロファイルの寸法特性を計測するようプロセッサに命じるための命令モジュールを有し、この命令モジュールは一時的な信号ではなく、この命令モジュールは、フォトレジスト体積内における酸発生剤およびクエンチャの個数を判定することと、フォトレジスト体積により吸収された光子の個数を判定することと、酸に変換された酸発生剤の個数を判定することと、フォトレジスト体積内における酸とクエンチャとの反応の回数を判定することと、フォトレジスト体積の現像を計算することと、フォトレジスト体積の現像およびフォトレジストプロファイルの寸法特性の計測により形成された3次元的にシミュレーションされた走査型電子顕微鏡画像をプロセッサを用いて生成することとをプロセッサに対して命令するよう動作する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明のさらなる利点は、以下の図面と合わせて考慮しつつ詳細な説明を参照することにより、明らかになるであろう。なお、これらの図面においては、詳細をより明らかに示すために、縮尺率は一定ではなく、いくつかの図面を通じて、同様の参照番号は同様の要素を示す。
【0011】
【図1】1つの1立方ナノメートルの格子において3つ以下の光−酸発生剤を見つける確率を示す図である。
【0012】
【図2】フォトレジストのライン等の特徴のプロファイルを端から端まで電子ビームを走査することにより生成されるライン走査を示す図である。
【0013】
【図3】Z軸およびフォトレジストのラインの特徴の側壁に対する法線を示す図である。
【0014】
【図4】本発明の1つの実施形態に係るシミュレーションされたライン走査を示す図である。
【0015】
【図5】本発明の1つの実施形態に係る、1つの方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本方法の様々な実施形態により、
1.限界寸法の均一性、
2.ラインエッジ粗さ、ライン幅粗さ、および関連する出力対周波数スペクトル、
3.期待される露光量を受ける際の光子ショットノイズ効果および不確実性、
4.フォトレジスト特性に対する、酸発生機構の効果、酸分布の効果、酸拡散の効果、および関連の効果、
5.光酸発生剤の充填、分布、および特性に対する効果、
6.クエンチャの充填、分布、拡散、および特性に対する効果、
等の、重要なリソグラフ現象の研究が可能となる。
【0017】
本発明の様々な実施形態は、実際のCDSEM実験において観測されるであろうレジストレリーフイメージの係る統計的リソグラフィ特性を予測するために用い得る。様々な実施形態においては、所望のシミュレーション結果を生成するために、2つのシミュレーション方法の組み合わせが用いられる。これらの組み合わされる2つの方法は、(1)確率レジストモデリング方法、および(2)CDSEM画像モデリング方法を含む。
【0018】
一般に、確率レジストモデリング方法はレジストレリーフイメージの物理的−化学的形成をシミュレーションする。その結果、レリーフイメージのいくつかの統計的リソグラフィ特性が、入力の応答として研究され得る。CDSEM画像モデリング方法は、次いで、電子ビームとレリーフイメージとの相互作用を近似する物理モデルを用いて、確率レジストモデルの出力を処理する。最終出力は、極めて実際に近いがシミュレーションされた、実際のCDSEMにより観測および計測されるであろうレジストレリーフの画像である。
【0019】
確率レジストモデルの概要
光リソグラフィプロセスをコンピュータモデリングするための様々な方法は、通常、連続体近似にしたがう。この連続体近似は、平均的挙動の記述に連続体数学を用いることである。しかし、いくつかの事象は、特に、極めて小さい体積を考慮する場合、連続的な領域において適切にモデル化することはできない。例えば、光は波動および量子論において二重の特性を有する。フォトレジスト層を構成する分子は離散的である。化学反応は離散的且つ確率的である。数十ナノメートルの長さ尺度における挙動を記述する場合、連続体モデリングに対する代替的な手法は、光および物質の量子化を直接的に確率的物理モデルと称されるモデルに組み込むことである。なお、このモデルにおいては、確率分布および乱数を用いて、期待される統計変動が記述される。
【0020】
この方法を用いることにより、研究者は、ライン幅粗さ(レジスト線に沿った限界寸法の変動)、ラインエッジ粗さ(レジスト線エッジの配置の変動)、限界寸法変化、限界形状変化、特定の欠陥が形成される確率、その他等の、連続体モデルを用いてはモデル化不能であったリソグラフ状態をモデル化することができる。
【0021】
この方法は、実際のレジスト構築をより厳密に近似するモデルも生成する。このようにすると、フォトレジストレリーフイメージ上における光−酸発生剤充填の効果、光−酸発生剤吸収の効果、光−酸発生剤量子効率の効果、クエンチャ充填の効果、光子ショットノイズ等の効果を研究することが可能である。露光プロセスの全体的な量子収率等の、マクロ効果を研究することも可能である。
【0022】
確率レジストモデリングは、わずか約100ナノメートルの限界寸法に対してさらに有用である。係る限界寸法はArF浸漬リソグラフィ、ArFダブルパターニングリソグラフィ、および極紫外線リソグラフィにおいて、日常的に遭遇される。
【0023】
確率レジストモデルの説明
本発明に係る実施形態は、露光後における酸画像(酸ショット雑音画像)の状態が、ライン幅粗さ、ラインエッジ粗さ、限界寸法変化、コンタクトホール真円度、その他等のフォトレジストレリーフの後の挙動に強く影響するため、露光プロセスの間に生じる統計変動を含む。
【0024】
図5の1つの実施形態10のフローチャートに示すように、第1ステップは、フォトレジストの所望のビルディングブロック体積を指定することである。ブロック12に示すように、その体積内において基本的な計算が実施される。次いで、ブロック14に示すように、この基本ビルディングブロック体積内における酸発生剤およびクエンチャの個数が指定される。この個数は、モデル化されるフォトレジストの種類に依存するものであり、実際のフォトレジスト製品または理論的なフォトレジスト製品のいずれかに影響し得る。フォトレジストの屈折率および放射照度は、ブロック16に示すように、所望により、計算または指定される。再び、これらの値は、実際のフォトレジスト製品または理論的製品のいずれかに影響し得るものである。
【0025】
次のステップは、ブロック18に示すように、吸収された格子の個数に関して統計計算を実施することである。なぜなら、レジスト(特に、酸発生剤)は、露光プロセスの間に供給された光子から吸収されたエネルギーにより活性化されるためである。吸光係数αの体積Vにより吸収される光子の平均個数は、下記の式により得られる。
【数1】

【0026】
式中、αはフォトレジストの吸光度、Iは露光に用いられた光の強度、tは露光時間、λは化学線波長、Vは、注目する体積、cは光の真空速度、およびhはプランク定数をそれぞれ表す。このように、吸収された光子の平均個数は、波長、吸光度、露光量(It)、および体積に比例する。吸収された露光量は極紫外線放射露光およびArF放射露光において一定であるが、例えば、極紫外線放射露光と比較して約14倍の光子がArF放射露光の間に吸収される。
【0027】
例えば、吸収された光子の個数の計数統計をモデル化するにあたっては、ポアソン確率分布を用いることができる。吸収された光子の平均個数の場合の、正常な光子吸収事象を観測する確率kは、下記の式により得られる。
【数2】

【0028】
ポアソン分布の特性は、分布の分散が平均に等しいこと、すなわち
【数3】

と、吸収された光子の個数の標準偏差が平均の平方根に等しいこととを含む。吸収された光子の個数の標準偏差は、以下の式により得られる。
【数4】

【0029】
期待される個数の光子(期待される露光量)を吸収する相対的不確実性は、下記の式により得られる。
【数5】

【0030】
これは、吸収される光子の平均個数が減少するに応じて、平均個数の吸収される光子を観測する相対的不確実性が増加することを示す。これは、ショット雑音として知られる現象である。例えば、10ミリジュール/平方センチにおいて、および1ミクロンあたり4つのαでは、ArF放射の場合の吸収された光子の個数の標準偏差は、吸収された光子の平均個数の約1.7倍である。極紫外線放射の場合、吸収された光子の個数の標準偏差は、吸収された光子の平均個数の約6.4倍である。
【0031】
化学増幅されたレジスト膜における離散的な酸発生剤の分散等のフォトレジスト分子の計数統計を記述するために、ポアソン分布が用いられ得る。図1は、酸発生剤充填がレジスト固体の5パーセントである場合の、一辺が1ナノメートルのサイズを有する立方体内にn個の酸発生剤を観測する確率を示す。興味深いことに、この例においては、1立方ナノメートルの全格子のうちの95パーセントが光−酸発生剤を含まない。
【0032】
化学増幅されたフォトレジスト層に分散する個々の酸発生剤分子は、露光の間、フォトレジストにより受容された光子からエネルギーを吸収することにより、活性化される。水溶性の基部における露光後ベークおよび現像によるレジストの処理後に、フォトレジストにおける生成された酸と樹脂ポリマーとの相互作用により、しだいに膜に可溶性の領域が生成される。したがって、生成された酸の統計はレジストレリーフイメージの特性に顕著な重要性を有する。なぜなら、酸は、光学的投影画像の最初の痕跡(初期状態)となるためである。
【0033】
本発明の様々な実施形態に係る確率レジストモデルにおいては、2つの確率的な酸発生剤活性化機構が考慮される。第1の機構は直接的な光分解であり、第2の機構は分散された低エネルギー電子である。ブロック20に示すように、どちらの機構がより適正であるかの判定がなされる。光分解機構がより適切である場合、光分解により酸に変換される酸発生剤の個数は、後に説明するように、および図5のブロック24に示すように、計算される。イオン化機構がより適切である場合、イオン化により酸に変換される酸発生剤の個数は、後に説明するように、および図5のブロック22に示すように、計算される。いくつかの実施形態においては、両方の計算が実施される。
【0034】
光分解機構に対しては、レジストにおける酸発生剤は、量子効率と等しい確率で、吸収された光子により活性化される。最大で1つの酸が1つの光子の吸収により生成される。これが、レジストがArF光(波長が193ナノメートル)により照射された場合に、最も見込まれる機構である。直接に光分解により生成される酸の個数の分布およびレジストレリーフイメージに対する効果が、確率レジストシミュレーションにより研究され得る。
【0035】
イオン化機構に対しては、酸発生剤は分散された低エネルギー電子により活性化される。光電効果と同様に、低エネルギー電子は、高エネルギー極紫外線光子の吸収時にレジストのイオン化により生成される。レジスト膜に蓄えられたエネルギーは、このように、光子吸収部位からいくらか距離が離れた位置にある酸発生剤を活性化することができる。これが、極紫外線(波長が13.5ナノメートル)により照射された場合に、酸生成に対して最も見込まれる機構である。しかし、イオン化により生成される酸の個数分布は、直接的光分解機構よりもいくらか予測しにくい。なぜなら、光電子露光機構は、単一の光子が複数の電子を生成し、各電子がレジスト膜を移動して、複数の酸発生剤を活性化することを可能にするためである。したがって、1つの光子吸収事象に対して、複数の酸が生成され得る。
【0036】
様々な実施形態において、イオン化プロセスは2ステップの機構としてモデル化され得る。なお、各ステップは確率的プロセスである。特定個数の酸を生成する確率は、条件付き確率すなわち、
【数6】

と、特定個数の光子を生成する確率すなわち、
【数7】

の積としてモデル化される。上述のように、光子を生成する確率は、ポアソン統計を用いてモデル化される。一方、酸を生成する全体的な確率は、光子のすべての可能な個数を加算することにより得られる。簡単な条件付き確率の式を用いて、
【数8】

であることが理解できる。したがって、複数の酸の生成は、単一の光子の吸収と相関する。複数の酸分子の生成とのこの相関関係は、ポアソン計数統計の主要な過程に矛盾する。したがって、低エネルギー光電子により生成される酸の個数分布はポアソン分布ではない。しかし、イオン化により生成された酸の個数の複雑な分布、電子の散乱、およびその結果としてレジストレリーフイメージに生じる効果は、確率レジストシミュレーションにより研究することが可能である。
【0037】
これら2つの活性化方法のうちの1つまたは両方を用いると、酸の個数は、ブロック26に示すように、判定され、数学的モデルに入力され得る。一度これが完了すると、フォトレジストにおける酸およびクエンチャの間のレジスト反応は、ブロック28に示すように、計算される。これにより、フォトレジストのどの部分が露光されたか、およびどの程度露光されたかを示す、フォトレジストのモデルが生成される。
【0038】
次いで、ブロック30に示すように、フォトレジストの現像が計算される。このステップにおいて、フォトレジストの露光された部分上の溶液を現像する効果が、以前に計算したように、判定され、モデルに入力される。
【0039】
一度これらのステップが完了されると、ブロック32に示すように、フォトレジストの3次元的グラフィック画像が生成される。数学的モデル現像における、温度、湿度、ベーク、および他の事象を考慮するステップ等の他のステップが、所望により、このモデルに含まれてもよいことを理解すべきである。
【0040】
写真が、ラインエッジ粗さ、側壁粗さ、高さ変動、側壁プロファイル、過露光、露光不足、その他を含む実際に露光および現像されたフォトレジストラインパターンを撮影したものであるならば、ステップ32において生成された画像は、SEM画像を観測して得られる画像と同様となる。しかしこの画像は撮影によるものではなく数学的に生成されたものである。さらに、撮影により生成された画像と数学的に生成された画像との差異は極めて少なものである。しかし、実際のフォトレジスト構築が生成される必要もなく、また、実際の処理条件が処理に適用される必要もないため、本方法においては、実際の経験的研究よりも、より短時間で、遥かに多数の条件がシミュレーションされ得る。
【0041】
CDSEM撮像モデルの概要
CDSEMは、品質が高く、反復性を有し、非破壊的であるため、光リソグラフィプロセスにより生成される特徴の計測に対する主要な基準となっている。DSEMの効果をモデル化する方法は、より現実的なシミュレーションを生成する際に、明らかに有用である。
【0042】
トップダウン走査型電子顕微鏡を用いて限界寸法を判定することはライン走査生成から始まり、2次電子検出器からの強度信号が電子ビームとして画像上で走査される。実際、ライン走査は、通常、信号におけるノイズを低減するために、いくつかの走査の平均から得られる。一度このことが完了すると、図2に示すように、2つの対応する点の間の距離を計測するために、走査に関数形式が適用される。
【0043】
電子ビームがレジストプロファイル上を走査すると、電子ビームと物質との相互作用に起因する2次電子が検出器において収集される。2次電子は、プロファイル表面のわずか約5ナノメートル下方の領域から発する。電子ビームが有限の断面積を有するため、水平表面上におけるよりもプロファイル側壁上において、より広い面積が照射される。したがって、中心部からの信号よりも、プロファイルのエッジ部からの信号のほうがより大きくなる。電子ビームが極めて薄く且つ均一である場合、結果として生じる強度プロファイルはかなり正方形となるであろう(プロファイルのコーナー部分から脱した余剰電子を無視する)。電子ビームがガウス型輪郭を有するため、計測されたライン走査は、ガウス型核部を有する理想的な正方形の強度プロファイルの畳み込みして表される。
【0044】
経験に対して、一定のオフセットよりもより良好な合致を生成する目的を達成する、最も簡単な物理モデルが用いられる。開始点は、強度プロファイルが、図3に示すように、表面の法線とZ軸との間の角度の関数であることに注目することである。この関数は、垂直の側壁(90度の側壁角度θ)に対して最大値を取り、水平の側壁(0度の側壁角度θ)に対して最小値を取る。2次電子信号の強度をモデル化するために、下記のように正割関数が用いられ得る。
【数9】

【0045】
正割関数は、小さい角度に対して最小値を取り、90度付近の角度に対して最大値を取る。
【0046】
一方、正弦関数は、ほぼ垂直な側壁に対して、より良好な挙動を有する。正弦関数は、最大値に向かって増加する過程において、同様であるがしかしながらより緩やかな増加を示す。その結果、側壁を中心とするピークはより広がったものとなる。なお、これら2つの分布の差異が最終ステップにおいて、実質的に縮小され得ることに注意すべきである。角度依存に加えて、強度は、レジスト物質および他の物質に対する特性の定数を単に変更することにより、レジスト物質が一般に基盤よりもわずかに多くの2次電子を返す事実を説明するよう、調節され得る。すなわち、一定のオフセットがレジスト物質に覆われた湾曲部分の強度に対して加えられる。強度プロファイル関数の最終的な形は、下記の式となる。
【数10】

【0047】
理想的な強度プロファイルの畳み込みが、ガウス型核部を用いて実施されることにより、図4に示す、最終的なシミュレーションされたライン走査が達成される。ガウス型輪郭の幅を調節することにより、上述のように、強度プロファイルに対して所望の倍率変更が加えられる。CDSEM計測方法をライン走査に適用することにより、図5のブロック34に示すように、限界寸法値が生成される。いくつかの実施形態において、中央限界寸法値のみが、生成されたデータにおいて生成される。
【0048】
したがって、本発明の様々な実施形態は、高度に詳細なレジストレリーフイメージのコンピュータシミュレーションを生成する。すべてCDSEMにより観測および計測されるライン幅粗さ、ラインエッジ粗さ、限界寸法変化、コンタクトホール真円度等の、いくつかの統計的効果のコンピュータモデルが生成され得る。レジストレリーフイメージの特定の形の欠陥のコンピュータモデリングも可能である。これらの実施形態を利用することにより、科学者は、より低価格でより現実的であるコンピュータモデルにより、より高価な経験的研究を置き換えることができる。
【0049】
これらの方法の実施形態のうちのいくつかは、パーソナルコンピュータまたはより専門的なグラフィック処理用コンピュータ等のプロセッサに基づく装置上で実行される。これらの実施形態の出力は、フォトレジストプロファイルのグラフィック画像および表形式のシミュレーションされたSEM画像に関する限界寸法データを含む。この情報は、本明細書の他の箇所で説明した、且つ新規フォトレジストの開発、処理方法の開発、フォトレジストおよびプロセスの初期品質確認試験等の一般的な目的を含む、いくつかの異なる目的を実行するために、プロセス技術者および他の人々により用いられる。係る情報は、しだいに実際の集積回路および他の構造の処理にも用いられるようになる。
【0050】
本発明に対する実施形態の前述の説明は、例示および説明の目的のために提示されたものである。説明は、網羅的であることを意図するものではなく、または発明を、開示された正確な形に限定することを意図するものでもない。様々な変更例または変化例が上述の教示に照らし合わせると明らかになる。これらの実施形態のすべては、本発明の原理および実際的な適用を例示し、それにより当業者が様々な実施形態において、および考えられる特定の使用に適した様々な変更例とともに、本発明を利用することを可能とする努力において、選択および説明されたものである。係る変更例および変化例のすべては、本発明が公正に、法律的に、等価論的に権利を有する範囲に応じて解釈されるとき、添付の請求項により定められる本発明の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォトレジストプロファイルの寸法特性を計測するためのプロセッサに基づく方法であって、
フォトレジスト体積内における、酸発生剤およびクエンチャの個数を判定するステップと、
前記フォトレジスト体積により吸収された光子の個数を判定するステップと、
酸に変換された前記酸発生剤の個数を判定するステップと、
前記フォトレジスト体積内における酸とクエンチャとの反応の回数を判定するステップと、
前記フォトレジスト体積の現像を計算するステップと、
前記フォトレジスト体積の前記現像により生成された前記フォトレジストプロファイルの3次元的にシミュレーションされた走査型電子顕微鏡画像を前記プロセッサを用いて生成するステップと、
前記フォトレジストプロファイルの前記寸法特性を計測するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
前記フォトレジスト体積内における酸発生剤およびクエンチャの個数を判定する前記ステップは、仮想的なフォトレジスト構築に基づいて、酸発生剤の所望する個数を指定するステップと、クエンチャの所望する個数を指定するステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フォトレジスト体積内における酸発生剤およびクエンチャの個数を判定する前記ステップは、実在のフォトレジスト構築に基づいて、酸発生剤の実際の個数およびクエンチャの実際の個数を入力するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フォトレジスト体積により吸収された光子の個数を判定する前記ステップは、仮想的な露光に基づいて、光子の所望する個数を指定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記フォトレジスト体積により吸収された光子の個数を判定する前記ステップは、既知の露光に基づいて、光子の個数を入力するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
酸に変換された前記酸発生剤の個数を判定する前記ステップは、光分解機構により酸に変換された前記酸発生剤を計算するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
酸に変換された前記酸発生剤の個数を判定する前記ステップは、イオン化機構により酸に変換された前記酸発生剤を計算するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記フォトレジストプロファイルの前記寸法特性を計測する前記ステップは、前記3次元的にシミュレーションされた走査型電子顕微鏡画像のハードコピー出力を定規を用いて計測するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記フォトレジストプロファイルの前記寸法特性を計測する前記ステップは、前記3次元的にシミュレーションされた走査型電子顕微鏡画像のデータファイルを数学的に評価するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記フォトレジストプロファイルの前記寸法特性に少なくとも部分的に基づくプロセスを用いて集積回路を製造するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
フォトレジストプロファイルの寸法特性を計測するためのプロセッサに基づく方法であって、
フォトレジストパラメータおよび露光パラメータを、フォトレジストプロセスの確率モデルに入力するステップと、
前記確率モデルから前記フォトレジストプロファイルを前記プロセッサを用いて計算するステップと、
前記フォトレジストプロファイルの前記寸法特性を前記プロセッサ上で実行されるCDSEMシミュレータを用いて計測するステップと、
を含む方法。
【請求項12】
コンピュータ可読媒体上に配置された、フォトレジストプロファイルの寸法特性を計測するようプロセッサに命じるための命令モジュール、を有するコンピュータ可読媒体であって、前記命令モジュールは一時的信号ではなく、且つ前記命令モジュールは、
フォトレジスト体積内における、酸発生剤およびクエンチャの個数を判定することと、
前記フォトレジスト体積により吸収された光子の個数を判定することと、
酸に変換された前記酸発生剤の個数を判定することと、
前記フォトレジスト体積内における酸とクエンチャとの反応の回数を判定することと、
前記フォトレジスト体積の現像を計算することと、
前記フォトレジスト体積の前記現像により生成された前記フォトレジストプロファイルの3次元的にシミュレーションされた走査型電子顕微鏡画像を前記プロセッサを用いて生成することと、
前記フォトレジストプロファイルの前記寸法特性を計測することと、
を実施するよう動作する、コンピュータ可読媒体。
【請求項13】
前記フォトレジスト体積内における酸発生剤およびクエンチャの個数を判定するための前記命令モジュールは、仮想的なフォトレジスト構築に基づいて、酸発生剤の所望する個数を指定することと、クエンチャの所望する個数を指定することとを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記フォトレジスト体積内における酸発生剤およびクエンチャの個数を判定するための命令モジュールは、実在のフォトレジスト構築に基づいて、酸発生剤の実際の個数およびクエンチャの実際の個数を入力することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記フォトレジスト体積により吸収された光子の個数を判定するための前記命令モジュールは、仮想的な露光に基づいて、光子の所望する個数を指定することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記フォトレジスト体積により吸収された光子の個数を判定するための前記命令モジュールは、既知の露光に基づいて、光子の所望する個数を入力することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
酸に変換された前記酸発生剤の個数を判定するための前記命令モジュールは、光分解機構により酸に変換された前記酸発生剤を計算することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
酸に変換された前記酸発生剤の個数を判定するための前記命令モジュールは、イオン化機構により酸に変換された前記酸発生剤を計算することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記フォトレジストプロファイルの前記寸法特性を計測するための前記命令モジュールは、前記3次元的にシミュレーションされた走査型電子顕微鏡画像のハードコピー出力を定規を用いて計測することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
前記フォトレジストプロファイルの前記寸法特性を計測するための前記命令モジュールは、前記3次元的にシミュレーションされた走査型電子顕微鏡画像のデータファイルを数学的に評価することを含む、請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−511152(P2013−511152A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538879(P2012−538879)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/055937
【国際公開番号】WO2011/059947
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(502442049)ケーエルエー−テンカー・コーポレーション (77)
【氏名又は名称原語表記】KLA−TENCOR CORPORATION
【Fターム(参考)】