説明

フォトレジスト用重合体の製造方法

【課題】分子量分布が狭く、且つ分子量分布及び分子量の調製ロット間の差が小さい安定したフォトレジスト用重合体を製造することができるフォトレジスト用重合体の製造方法を提供すること。
【解決手段】コンデンサーユニット4が配設された反応槽2と、コンデンサーユニット4に接続されるバッファータンク3と、流量及び圧力が制御された窒素ガスを、バッファータンク3及びコンデンサーユニット4を介して反応槽2に供給可能な窒素供給ライン5と、バッファータンク3に、圧力制御バルブ7を介して接続される減圧ライン6と、を備えた重合反応設備1を使用し、反応槽2の内圧を制御しつつ重合反応を行い、フォトレジスト用重合体を含有する重合体溶液を得る重合反応工程を有するフォトレジスト用重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフォトレジスト用重合体の製造方法に関し、更に詳しくは、分子量分布が狭く、且つ調製バッチ毎の分子量分布及び分子量の振れが小さいフォトレジスト用重合体を効率的に得ることができるフォトレジスト用重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路素子の製造に代表される微細加工の分野においては、より高い集積度を得るために、より微細な加工が可能なリソグラフィー技術が必要とされている。しかし、従来のリソグラフィープロセスでは、一般に放射線としてi線等の近紫外線が用いられているが、この近紫外線では、サブクオーターミクロンレベルの微細加工が極めて困難であると言われている。そこで、例えば、0.10μm以下のレベルでの微細加工を可能とするために、より波長の短い放射線の利用が検討されている。このような短波長の放射線としては、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、X線、電子線等を挙げることができる。これらの中でも、特にKrFエキシマレーザー(波長248nm)或いはArFエキシマレーザー(波長193nm)が注目されている。
【0003】
このような短波長の放射線による照射に適した、レジスト形成用の感放射線性樹脂組成物や、多層レジストにおける上層膜や下層膜(反射防止膜等)を形成するための樹脂組成物等のフォトリソグラフィーに使用される樹脂組成物が数多く提案されている。
【0004】
フォトリソグラフィーに使用される樹脂組成物に含まれる重合体には、レジスト膜や反射防止膜に求められる光学的性質、化学的性質、塗布性や基板或いは下層膜に対する密着性等の物理的な性質に加え、分子量分布が狭いこと、並びに調製ロット間の分子量分布及び分子量振れの小さいことが求められている。特に、微細で精密な形状が要求される半導体材料の製造工程において、レジスト用重合体の分子量分布が狭いことは、現像液に対する溶解性を精密に制御することを可能とし、超微細加工が可能なフォトレジスト樹脂組成物を製造することにつながる。また、レジストパターンが微細化されるにつれ、レジスト用重合体の品質に対する要求が厳しくなってきており、特に、分子量分布や重量平均分子量等のロット間の差が小さい安定したフォトレジスト用重合体の製造方法が強く求められている。
【0005】
これらの問題を解決するための手法としては、例えば、重合温度を制御する方法や、滴下する溶液を予備加熱してモノマー溶液と開始剤溶液を分割して別々に滴下する方法等が開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。重合温度を制御する方法としては、重合缶の熱媒系に直接加圧蒸気及び冷水を制御弁を介して導入することによって均一な重合温度を実現する試みがなされている。また、滴下する溶液を予備加熱してモノマー溶液と開始剤溶液を分割して別々に滴下する方法としては、モノマー溶液と開始剤溶液とを混合滴下する場合に比べ、生成したポリマーの高分子量成分の発生を抑制し、分子量分布を狭くするといった試みがなされている。
【0006】
【特許文献1】特開2007−332285号公報
【特許文献2】特開2004−269855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の重合方法では、超微細加工が可能なフォトレジスト樹脂組成物に求められる、狭い分子量分布を十分に達成しているとはいえなかった。また、ロット間で品質のばらつきがあり、超微細加工を安定的に達成する要求を十分に満たしているとはいえなかった。特に、常圧下、重合溶媒の沸点温度で蒸発した溶媒を還流しながら重合反応を行う、いわゆる還流反応(リフラックス反応)では、大気圧の微妙な変動によって重合溶媒の沸点が変動するために、重合温度が変化して、重合開始剤のラジカル発生量に差異が生じ、ロットによって分子量分布や分子量に差が生じ易いという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、分子量分布が狭く、且つ分子量分布及び分子量の調製ロット間の差が小さい安定したフォトレジスト用重合体を製造することができるフォトレジスト用重合体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、所定の重合反応設備を使用し、大気圧の僅かな変動に影響されず、重合溶媒の沸点温度を変動させることなく重合反応工程を行うことによって、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明によれば、以下に示すフォトレジスト用重合体の製造方法が提供される。
【0011】
[1]コンデンサーユニットが配設された反応槽と、前記コンデンサーユニットに接続されるバッファータンクと、流量及び圧力が制御された窒素ガスを、前記バッファータンク及び前記コンデンサーユニットを介して前記反応槽に供給可能な窒素供給ラインと、前記バッファータンクに、圧力制御バルブを介して接続される減圧ラインと、を備えた重合反応設備を使用し、前記バッファータンクの内圧と前記減圧ラインの内圧の差圧を、前記圧力制御バルブで制御すること、又は前記窒素供給ラインから前記窒素ガスを供給することで、前記反応槽の内圧を制御しつつ重合反応を行い、フォトレジスト用重合体を含有する重合体溶液を得る重合反応工程を有するフォトレジスト用重合体の製造方法。
【0012】
[2]前記反応槽中の内圧を、950〜1100hPaに制御しつつ重合反応を行う前記[1]に記載のフォトレジスト用重合体の製造方法。
【0013】
[3]前記重合体溶液を、貧溶媒と混合して生成した沈殿物をレジスト塗膜形成用の有機溶媒に溶解させて再溶解液を得る工程を更に有する、前記[1]又は[2]に記載のフォトレジスト用重合体の製造方法。
【0014】
[4]フォトレジスト用重合体の分子量分布(Mw/Mn)が1.1〜2.1である前記[1]〜[3]のいずれかに記載のフォトレジスト用重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明のフォトレジスト用重合体の製造方法によれば、分子量分布が狭く、且つ分子量分布及び分子量の調製ロット間の差が小さい安定したフォトレジスト用重合体を提供することができるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0017】
本発明のフォトレジスト用重合体の製造方法は、コンデンサーユニットが配設された反応槽と、コンデンサーユニットに接続されるバッファータンクと、流量及び圧力が制御された窒素ガスを、バッファータンク及びコンデンサーユニットを介して反応槽に供給可能な窒素供給ラインと、バッファータンクに、圧力制御バルブを介して接続される減圧ラインと、を備えた重合反応設備を使用し、バッファータンクの内圧と減圧ラインの内圧の差圧を、圧力制御バルブで制御すること、又は窒素供給ラインから窒素ガスを供給することで、反応槽の内圧を制御しつつ重合反応を行い、フォトレジスト用重合体を含有する重合体溶液を得る重合反応工程(以下、「重合反応工程」と記載する)を有する。
【0018】
1.重合反応設備
本発明のフォトレジスト用重合体の製造方法に使用される重合反応設備は、コンデンサーユニットが配設された反応槽と、コンデンサーユニットに接続されるバッファータンクと、流量及び圧力が制御された窒素ガスを、バッファータンク及びコンデンサーユニットを介して反応槽に供給可能な窒素供給ラインと、バッファータンクに、圧力制御バルブを介して接続される減圧ラインと、を備えたものである。なお、図1に、本発明のフォトレジスト用重合体の製造方法に使用される重合反応設備の一実施形態の模式図を示す。
【0019】
図1において、重合反応設備1には、反応槽2、バッファータンク3、コンデンサーユニット4、窒素供給ライン5、減圧ライン6、圧力制御バルブ7、開始剤供給槽8、複数のモノマー供給槽9、減圧ユニット10、及び差圧計11が備えられている。なお、図1において、コンデンサーユニット4は、重合反応溶媒が一部溜まる構造12を有しているが、重合反応設備1はこれに限定されるものではなく、構造12を有していないものも含まれる。また、開始剤供給槽8、複数のモノマー供給槽9は別途記載されているが、同一の供給槽であっても良い。更に、モノマー供給槽は複数あるが、単一であっても良い。
【0020】
(反応槽2)
反応槽2には、例えば、温度計、攪拌機、加熱ジャケット、並びに重合性モノマー溶液及び開始剤溶液を滴下して供給可能な供給ノズル等が備えられている。重合温度の制御は、例えば、加熱ジャケットに熱媒を通液することで行うことができる。熱媒としては、温水、加圧蒸気、オイル等を適宣選択して用いることができる。
【0021】
反応槽2の内圧は、950〜1100hPaであることが好ましく、1000〜1030hPaであることが更に好ましく、1013hPaであることが特に好ましい。反応槽2の内圧をこのような範囲に制御することで、大気圧の僅かな変動に影響されず、重合反応溶媒の沸点を変動させることなく重合反応を行うことができ、分子量分布が狭く、且つ分子量分布及び分子量の調製ロット間の差が小さく安定したフォトレジスト用重合体を製造することができる。
【0022】
重合性モノマー溶液及び開始剤溶液は、開始剤供給槽8やモノマー供給槽9から供給ノズルを介し、滴下して供給可能であることが好ましい。また、開始剤供給槽8やモノマー供給槽9は、それぞれ、個別のタンクであることが好ましい。更に、開始剤供給槽8又はモノマー供給槽9から反応槽2までの供給ラインを、それぞれ0.05〜1.0MPaに加圧して、重合性モノマー溶液又は開始剤溶液をフィードすることが好ましい。フィード加圧が0.05MPa未満であると、滴下して重合する際、重合性モノマー溶液又は開始剤溶液の供給速度の制御が困難になる場合がある。一方、1.0MPa超であると、同様に供給速度の制御が困難になることに加え、反応槽2内の圧力制御に悪影響を及ぼす場合がある。
【0023】
(コンデンサーユニット4)
コンデンサーユニット4はバッファータンク3に接続されるものであり、反応槽2で蒸発した重合反応溶媒を反応槽2へ循環させるものである。反応槽2に熱交換によって液化した重合反応溶媒を戻すラインには、重合反応溶媒が一部溜まる構造12を有することが好ましい。これは、蒸発した重合反応溶媒がこのラインを通ってコンデンサーに入ることを防止することができるためである。
【0024】
(バッファータンク3)
バッファータンク3は、コンデンサーユニット4、窒素供給ライン5、及び減圧ライン6と接続されるものである。
【0025】
(窒素供給ライン5)
窒素供給ライン5は、反応槽2内の内圧が低い時に、流量及び圧力が制御された窒素ガスを、バッファータンク3及びコンデンサーユニット4を介して反応槽2に供給し、反応槽2の内圧を高くするためのものである。窒素供給ライン5は、例えば、バルブ等により制御されている。
【0026】
(減圧ライン6)
減圧ライン6は、バッファータンク3に圧力制御バルブ7を介して接続されるものであり、反応槽2内の内圧が高い時に、圧力制御バルブ7を開放することで反応槽2内の内圧を低くするためのものである。
【0027】
減圧ライン6の内圧は、絶対圧力で80〜101kPaであることが好ましく、95〜100kPaであることが更に好ましい。この範囲外では反応槽2の内圧を制御することが困難になる場合がある。
【0028】
(圧力制御バルブ7)
圧力制御バルブ7は特に限定されるものではなく、通常、圧力の調整に用いられるバルブであって良い。
【0029】
2.重合反応工程
重合反応工程は、バッファータンクの内圧と減圧ラインの内圧の差圧を、圧力制御バルブで制御すること、又は窒素供給ラインから窒素ガスを供給することで、反応槽の内圧を制御しつつ重合反応を行い、フォトレジスト用重合体を含有する重合体溶液を得る工程である。重合反応は、例えば、モノマー及び重合開始剤、必要に応じて連鎖移動剤等を重合反応溶媒に溶解させて、反応槽中で重合させることにより行うことができる。なお、モノマー、重合開始剤、連鎖移動剤等は、重合反応溶媒に溶解させ、それぞれ、別途滴下して反応槽中に供給することが好ましい。
【0030】
重合反応としては特に制限されるものではなく、例えば、重合反応溶媒の沸点で反応を行う、一般的なビニルモノマーの還流重合等がある。特に、ラジカル重合、イオン重合、ラジカルリビング重合、及びラジカルイオン重合へ適用することが好ましく、アゾ化合物からなる重合開始剤を用いるラジカル重合へ適用することが更に好ましい。これは、重合反応が進行するとともに、アゾ化合物からなる重合開始剤が分解し、窒素のような未凝縮ガスを発生させ、この未凝縮ガスが反応槽及びコンデンサーユニット内の圧力変動を緩和させる効果があるためである。なお、一般的なビニルモノマーの還流重合反応中に、窒素のような未凝縮ガスを反応槽にバブリング等により導入することによっても同様の効果を発現させることができる。
【0031】
重合反応条件として、反応温度は、通常、重合反応溶媒の沸点である。また、反応時間は、通常、1〜48時間であり、好ましくは1〜24時間である。反応槽の内圧は、950〜1100hPaであることが好ましく、1000〜1030hPaであることが更に好ましく、1013hPaであることが特に好ましい。反応槽の内圧をこのような範囲に制御することで、大気圧の僅かな変動に影響されず、重合反応溶媒の沸点温度を変動させることなく重合反応工程を行うことができ、分子量分布が狭く、且つ分子量分布及び分子量の調製ロット間の差が小さく安定したフォトレジスト用重合体を製造することができる。
【0032】
ここで、反応槽の内圧を制御する方法について図1を用いて説明する。まず、大気圧が低い場合には、減圧ライン6上にある圧力制御バルブ7を閉じるとともに、窒素供給ライン5から流量及び圧力が制御された窒素ガスを供給することで反応槽2の内圧を高くする。一方、大気圧が高い場合には、減圧ライン6上にある減圧バルブ7を開放するとともに、窒素供給ライン5からの窒素ガスの供給を止めて反応槽2の内圧を低くする。
【0033】
重合反応中で、反応槽2の内圧が低くなった場合には、減圧ライン6上にある圧力制御バルブ7を閉じるとともに、窒素供給ライン5から流量及び圧力が制御された窒素ガスを供給することで反応槽2の内圧を高くする。一方、反応槽2の内圧が高くなった場合には、減圧ライン6上にある減圧バルブ7を開放するとともに、窒素供給ライン5からの窒素ガスの供給を止めて反応槽2の内圧を低くする。このようにして、重合反応工程において、反応槽2の内圧を制御することができる。
【0034】
重合反応工程において、得られる重合体溶液の濃度(固形分濃度)は、1〜80質量%であることが好ましく、5〜50質量%であることが更に好ましく、10〜50質量%であることが特に好ましい。
【0035】
(フォトレジスト用重合体の物性)
一般に、フォトレジスト用重合体の重量平均分子量が高すぎると、塗膜形成時に使用される溶剤やアルカリ現像液への溶解性が低くなる傾向にある。一方、重量平均分子量が低すぎると、塗膜性能が悪くなる傾向にある。そのため、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、「Mw」ともいう)は、2,000〜40,000の範囲になるよう調整することが好ましく、3,000〜30,000の範囲になるよう調整することが更に好ましい。
【0036】
重合反応工程により調製される重合体溶液に含有されるフォトレジスト用重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、1.1〜2.1であることが好ましく、1.1〜2.0であることが更に好ましく、1.1〜1.9であることが特に好ましい。
【0037】
(モノマー)
モノマーとしては、通常、レジスト形成用の感放射線性樹脂組成物や、多層レジストにおける上層膜や下層膜(反射防止膜等)を形成するための樹脂組成物等のフォトリソグラフィーに使用される樹脂組成物に含まれるフォトレジスト用樹脂(重合体)の製造に用いられるエチレン性不飽和結合を有するモノマーを挙げることができる。
【0038】
ここで、例えば、レジスト形成用のポジ型感放射線性樹脂組成物に含まれる重合体は、少なくとも、酸によって分解してアルカリ現像液に可溶となる化学構造を有する繰り返し単位、より具体的には、非極性置換基が酸によって解離してアルカリ現像液に可溶な極性基を生じさせる化学構造を有する繰り返し単位(1)(以下、「繰り返し単位(1)」と記載する)、半導体基板等の基板に対する密着性を高めるための極性基を有する繰り返し単位(2)(以下、「繰り返し単位(2)」と記載する)とを必須成分として含み、必要に応じて、溶剤やアルカリ現像液への溶解性を調節するための非極性の置換基を有する繰り返し単位(3)(以下、「繰り返し単位(3)」と記載する)を含んで構成されている。
【0039】
繰り返し単位(1)は、従来レジストとして一般的に用いられている非極性置換基を有するモノマーを重合させるか、或いは、アルカリ現像液に可溶な極性基を有するモノマーを重合させた後、アルカリ現像液に可溶な極性基を、アルカリ現像液に溶解せず酸によって解離する基(以下、「酸解離性保護基」と記載する)で保護することにより得ることができる。
【0040】
非極性置換基を有するモノマーとしては、アルカリ現像液に可溶な極性基を有するモノマーに、酸解離性保護基が結合した化合物を挙げることができ、例えば、非極性の酸解離性保護基で保護されたフェノール性水酸基、カルボキシル基やヒドロキシフルオロアルキル基を有する化合物等がある。極性基を有するモノマーとして、具体的には、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン等のヒドロキシスチレン類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、α−トリフルオロメチルアクリル酸、5−ノルボルネン−2−カルボン酸、2−トリフルオロメチル−5−ノルボルネン−2−カルボン酸、カルボキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルメタクリレート等のエチレン性二重結合を有するカルボン酸類;p−(2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル)スチレン、2−(4−(2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル)シクロヘキシル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピルアクリレート、2−(4−(2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル)シクロヘキシル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピルトリフルオロメチルアクリレート、5−(2−ヒドロキシ−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル)メチル−2−ノルボルネン等のヒドロキシフルオロアルキル基を有するモノマー等を挙げることができる。
【0041】
また、酸解離性保護基として、具体的には、tert−ブチル基、tert−アミル基、1−メチル−1−シクロペンチル基、1−エチル−1−シクロペンチル基、1−メチル−1−シクロヘキシル基、1−エチル−1−シクロヘキシル基、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基、2−プロピル−2−アダマンチル基、2−(1−アダマンチル)−2−プロピル基、8−メチル−8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、8−エチル−8−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、8−メチル−8−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル基、8−エチル−8−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカニル基等の飽和炭化水素基;1−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、1−iso−プロポキシエチル基、1−n−ブトキシエチル基、1−tert−ブトキシエチル基、1−シクロペンチルオキシエチル基、1−シクロヘキシルオキシエチル基、1−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルオキシエチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、iso−プロポキシメチル基、n−ブトキシメチル基、tert−ブトキシメチル基、シクロペンチルオキシメチル基、シクロヘキシルオキシメチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニルオキシメチル基、tert−ブトキシカルボニル基等の含酸素炭化水素基等を挙げることができる。
【0042】
また、繰り返し単位(2)を与えるモノマーとしては、例えば、極性基としてフェノール性水酸基、カルボキシル基やヒドロキシフルオロアルキル基を有する化合物等がある。より具体的には、アルカリ現像液に可溶な極性基を有するモノマーとして例示したヒドロキシスチレン類やエチレン性二重結合を有するカルボン酸類、ヒドロキシフルオロアルキル基を有するモノマー、及びこれらに更に極性基が置換したモノマーの他、ノルボルネン環、テトラシクロドデセン環等の脂環構造に極性基が結合したモノマー等を挙げることができる。
【0043】
置換基として繰り返し単位(2)に導入される極性基としては、ラクトン構造を含むものが特に好ましく、例えば、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、1,3−シクロヘキサンカルボラクトン、2,6−ノルボルナンカルボラクトン、4−オキサトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−3−オン、メバロン酸δ−ラクトン等のラクトン構造を含む置換基等がある。
【0044】
また、ラクトン構造以外の極性基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシ−1−アダマンチル基等のヒドロキシアルキル基等がある。
【0045】
更に、必要に応じて含まれる繰り返し単位(3)を与えるモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、インデン等のエチレン性二重結合を有する芳香族化合物;アクリル酸、メタクリル酸、トリフルオロメチルアクリル酸、ノルボルネンカルボン酸、2−トリフルオロメチルノルボルネンカルボン酸、カルボキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシルメタクリレート等のエチレン性二重結合を有するカルボン酸に酸安定性非極性基が置換したエステル化合物;ノルボルネン、テトラシクロドデセン等のエチレン性二重結合を有する脂環式炭化水素化合物等がある。
【0046】
また、前記カルボン酸にエステル置換する酸安定性非極性置換基として、具体的には、メチル基、エチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、イソボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、2−アダマンチル基、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデシル基等を挙げることができる。
【0047】
これらのモノマーは、繰り返し単位(1)、(2)、(3)を調製する際に、それぞれ、1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0048】
レジスト形成用のポジ型感放射線性樹脂組成物に含まれる重合体中の各繰り返し単位の組成比は、レジストとしての基本性能を損なわない範囲で選択することができる。一般に、繰り返し単位(1)は10〜70mol%であることが好ましく、10〜60mol%であることが更に好ましい。また、繰り返し単位(2)の組成比は30〜90mol%であることが好ましく、40〜90mol%であることが更に好ましいが、同一の極性基を有するモノマー単位については、70mol%以下とすることが好ましい。更に、繰り返し単位(3)の組成比は、50mol%以下であることが好ましく、40mol%以下であることが更に好ましい。
【0049】
一方、多層レジストにおける上層膜や下層膜(反射防止膜等)を形成するための樹脂組成物に含まれる重合体は、前述のレジスト形成用のポジ型感放射線性樹脂組成物に含まれる重合体の化学構造から、繰り返し単位(1)を除いた化学構造の重合体が使用される。重合体中の各繰り返し単位の組成比は特に限定されず、塗膜の使用目的により適宜調整される。一般には、繰り返し単位(2)の組成比は10〜100mol%の範囲から選択され、繰り返し単位(3)の組成比は0〜90mol%の範囲から選択される。
【0050】
更に、多層レジストにおける上層膜や下層膜を反射防止膜として使用する場合には、重合体は、架橋点と、フォトリソグラフィーにおいて照射される放射線を吸収する化学構造とを含む必要がある。架橋点としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基等の、エステル結合やウレタン結合等により架橋可能な反応性の置換基がある。このような架橋点を有するモノマーとしては、例えば、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン等のヒドロキシスチレン類の他、これまで例示してきたモノマーを水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基等の反応性置換基で置換したモノマーを適宜用いることができる。
【0051】
放射線を吸収する化学構造は、使用する放射線の波長により異なるが、例えばArFエキシマレーザー光に対しては、ベンゼン環及びその類縁体を含む化学構造が好適に用いられる。この様な化学構造を含むモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン等のスチレン類又はその誘導体;置換又は非置換のフェニル(メタ)アクリレート、置換又は非置換のナフタレン(メタ)アクリレート、置換又は非置換のアントラセンメチル(メタ)アクリレート等のエチレン性二重結合を有する芳香族含有エステル類等が挙げられる。この放射線を吸収する化学構造を有するモノマーは、極性基の有無により繰り返し単位(2)又は(3)のいずれかとして導入されても良いが、放射線を吸収する化学構造を有するモノマーとしての組成比は10〜100mol%の範囲から選択されることが好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを意味する。
【0052】
(重合開始剤)
重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ化合物;デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート等の有機過酸化物等のラジカル重合開始剤等がある。なお、これらは1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0053】
(連鎖移動剤)
連鎖移動剤としては、例えば、ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、4,4−ビス(トリフルオロメチル)−4−ヒドロキシ−1−メルカプトブタン等のチオール化合物がある。なお、これらは1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0054】
重合開始剤及び連鎖移動剤の使用量は、重合反応に用いるモノマーや重合開始剤、連鎖移動剤の種類、重合温度、重合反応溶媒、重合方法、精製条件等の製造条件により適宜調整することができる。
【0055】
(重合反応溶媒)
重合反応溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、グライム、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、乳酸エチル等のエステル類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエーテルエステル類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類等がある。なお、これらは1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0056】
重合反応溶媒の使用量は特に限定されないが、モノマー1質量部に対して、通常、0.5〜20質量部であり、好ましくは1〜10質量部である。0.5質量部未満であると、モノマーが析出したり、高粘度になりすぎて重合系を均一に保てなくなったりする場合がある。一方、20質量部超であると、モノマーの重合転化率が不十分であったり、得られるフォトレジスト用重合体の分子量を所望の値まで高めることができなかったりする場合がある。
【0057】
3.精製工程
また、本発明のフォトレジスト用重合体の製造方法は、重合反応工程の後に精製工程(以下、「精製工程」と記載する)を更に有することが好ましい。精製工程は、得られた重合体溶液を、貧溶媒と混合することにより生成した沈殿物をレジスト塗膜形成用の有機溶媒に溶解させて再溶解液である最終製品を得る工程である。なお、図2に、精製工程を行う設備の一実施形態の模式図を示す。
【0058】
図2において、設備20には、「1.重合反応設備」に記載した重合反応設備1、重合反応設備1と連結する開始剤供給槽8、複数のモノマー供給槽9、再沈槽21、及び再沈槽21と連結する濾過装置22が備えられている。なお、本発明のフォトレジスト用重合体の製造方法に使用される精製工程を行う設備はこれに限定されるものではない。
【0059】
(再沈槽21)
再沈槽21では、重合反応工程で得られた重合体溶液を、貧溶媒と混合することにより沈殿物を生成させる。沈殿操作は特に限定されず、従来公知の方法に従って行うことができる。
【0060】
貧溶媒は、レジスト塗膜形成用の有機溶媒である溶剤よりも低沸点であり、所定のフォトレジスト用重合体を析出させるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、アルコール系溶媒、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、水、及びこれらの混合溶媒等がある。これらの中でも、アルコール系溶媒及び炭化水素系溶媒の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0061】
アルコール系溶媒として、具体的には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等を挙げることができる。これらは1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0062】
炭化水素系溶媒として、具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等を挙げることができる。これらは1種単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0063】
また、貧溶媒の使用量は特に制限されるものではなく、具体的には、貧溶媒と接触させる重合体溶液の全量に対して、質量換算で、0.5〜50倍であることが好ましく、1〜30倍であることがより好ましく、2〜20倍であることが更に好ましい。
【0064】
(濾過装置22)
濾過装置22では、再沈槽21で生じた沈殿物を濾過し、沈殿物を洗浄し、レジスト塗膜形成用の有機溶媒に溶解させて再溶解液である最終製品を得ることができる。有機溶媒としては特に限定されるものではなく、沈殿物を溶解可能であれば良い。
【0065】
(フォトレジスト用重合体の物性)
精製工程後の再溶解液に含有されるフォトレジスト用重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、1.1〜2.1であることが好ましく、1.1〜1.9であることが更に好ましく、1.1〜1.7であることが特に好ましい。
【実施例】
【0066】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、各種物性値の測定方法を以下に示す。
【0067】
[重合転化率(%)]:高速液体クロマトグラフィー(商品名「HLC−802A」、東ソー株式会社製)を用いて測定した。
【0068】
[重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)]:東ソー社製のGPCカラム(商品名「G2000HXL」2本、商品名「G3000HXL」1本、商品名「G4000HXL」1本)を使用し、流量:1.0mL/min、溶出溶剤:テトラヒドロフラン、カラム温度:40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。
【0069】
[分子量分布(Mw/Mn)]:測定したMw及びMnの値から算出した。
【0070】
(実施例1)
(重合反応工程)
本実施例1は、大気圧が960±10hPaの条件で実施した。図1に示すような重合反応設備を用い、容積200Lの反応槽に、重合反応溶剤としてメチルエチルケトン(以下、「MEK」と記載する)32kgを投入して十分に窒素置換した後、100rpmで攪拌しながら80℃まで昇温した。重合反応開始前の反応槽の内圧は、生産当日の大気圧である960hPaであったので、圧力制御バルブを閉じるとともに、窒素供給ラインから窒素ガスを加圧供給して、反応槽の内圧を1013±30hPaに調整した。なお、重合反応進行中に反応槽の内圧が1100hPaを超える場合は、窒素ガスを供給することを止めるとともに、圧力制御バルブを開放させて、反応槽の内圧を1013±30hPaに調整した。同様に、重合反応進行中に反応槽の内圧が980hPaを下回る場合は、圧力制御バルブを閉じるとともに、窒素ガスを加圧供給することによって、反応槽の内圧を1013±30hPaに調整した。
【0071】
5−メタクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン(NLM)15kg、及び2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート(MAdMA)20kgのMEK溶液、並びにアゾビスイソブチロニトリル0.5kgのMEK溶液を0.2MPaで窒素加圧された条件で、3時間かけて反応槽に滴下した。滴下終了後、更に3時間熟成させた後、室温まで冷却して重合体溶液を調製した。なお、重合転化率は90%であり、フォトレジスト用重合体に対する、残存したモノマーの残留量は約11%であった。なお、調製した重合体溶液に含有されるフォトレジスト用重合体の分子量分布(Mw/Mn)は1.82であった。
【0072】
(精製工程)
調製した重合体溶液(固形分濃度:約25%)20kgを、容積200L容器中で、100kgのメタノール溶液中に150rpmで攪拌しながら、12.5g/minの滴下速度で滴下し、沈殿操作を実施することにより白色のスラリー液を得た。その後、容器底部にテフロン(登録商標)製の濾布(通気量;3.0cm/cm・sec、濾過面積:1m)を張った加圧濾過器を用い、0.2MPaの窒素加圧条件にて、濾過することで白色の沈殿物を得た。得られた白色の沈殿物5kgをレジスト塗膜形成用のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)30kgに1時間かけて溶解させて再溶解液を得た。得られた再溶解液には未溶解分はなく、清澄な溶液であった。なお、再溶解液に含有されるフォトレジスト用重合体の分子量分布(Mw/Mn)は1.41であった。
【0073】
(実施例2)
本実施例2は、大気圧が1050±10hPaの条件で実施し、重合反応開始前の反応槽の内圧を、窒素ガスを供給することを止めるとともに、圧力制御バルブを開放させて、1013±30hPaに調整したこと以外は実施例1と同じ条件で行った。重合反応工程後の重合体溶液に含有されるフォトレジスト用重合体の分子量分布(Mw/Mn)は1.82であった。また、再溶解液に含有されるフォトレジスト用重合体の分子量分布(Mw/Mn)は1.41であった。
【0074】
(比較例1)
重合反応工程において反応槽の内圧の制御を行わなかったこと以外は、実施例1と同じ条件で行った。重合反応工程後の重合体溶液に含有されるフォトレジスト用重合体の分子量分布(Mw/Mn)は2.4であった。また、再溶解液に含有されるフォトレジスト用重合体の分子量分布(Mw/Mn)は2.2であった。
【0075】
(比較例2)
重合反応工程において反応槽の内圧の制御を行わなかったこと以外は、実施例2と同じ条件で行った。重合反応工程後の重合体溶液に含有されるフォトレジスト用重合体の分子量分布(Mw/Mn)は2.6であった。また、再溶解液に含有されるフォトレジスト用重合体の分子量分布(Mw/Mn)は2.2であった。
【0076】
大気圧が960±10hPaの場合、MEKの沸点が約76.5〜78.0℃になり(1013hPaでのMEKの沸点は79.5℃)、分子量分布(Mw/Mn)が広くなったり、重量平均分子量が大きくなったりする可能性がある。一方、大気圧が1050±10hPaの場合、MEKの沸点が81℃程度になり、低分子量のフォトレジスト用重合体体が多くなり、分子量分布(Mw/Mn)が広くなったり、重量平均分子量が小さくなったりする可能性がある。実施例1及び2から、本発明のフォトレジスト用重合体の製造方法によれば、大気圧の変動に伴うことなく、分子量分布が狭く、且つ分子量分布及び分子量の調製ロット間の差が小さい安定したフォトレジスト用重合体を製造することができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、分子量分布の狭化が達成され、調製ロット間の差が小さく安定してフォトレジスト用重合体を製造することができ、製造したフォトレジスト用重合体は半導体素子や液晶表示素子等の微細加工の分野において、好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明のフォトレジスト用重合体の製造方法に使用される重合反応設備の一実施形態の模式図である。
【図2】精製工程を行う設備の一実施形態の模式図である。
【符号の説明】
【0079】
1:重合反応設備、2:反応槽、3:バッファータンク、4:コンデンサーユニット、5:窒素供給ライン、6:減圧ライン、7:圧力制御バルブ、8:開始剤供給槽、9:モノマー供給槽、10:減圧ユニット、11:差圧計、12:構造、20:設備、21:再沈槽、22:濾過装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサーユニットが配設された反応槽と、
前記コンデンサーユニットに接続されるバッファータンクと、
流量及び圧力が制御された窒素ガスを、前記バッファータンク及び前記コンデンサーユニットを介して前記反応槽に供給可能な窒素供給ラインと、
前記バッファータンクに、圧力制御バルブを介して接続される減圧ラインと、を備えた重合反応設備を使用し、
前記バッファータンクの内圧と前記減圧ラインの内圧の差圧を、前記圧力制御バルブを制御すること、又は前記窒素供給ラインから前記窒素ガスを供給することで、前記反応槽の内圧を制御しつつ重合反応を行い、フォトレジスト用重合体を含有する重合体溶液を得る重合反応工程を有するフォトレジスト用重合体の製造方法。
【請求項2】
前記反応槽中の内圧を、950〜1100hPaに制御しつつ重合反応を行う請求項1に記載のフォトレジスト用重合体の製造方法。
【請求項3】
前記重合体溶液を、貧溶媒と混合して生成した沈殿物をレジスト塗膜形成用の有機溶媒に溶解させて再溶解液を得る工程を更に有する、請求項1又は2に記載のフォトレジスト用重合体の製造方法。
【請求項4】
前記フォトレジスト用重合体の分子量分布(Mw/Mn)が1.1〜2.1である請求項1〜3のいずれか一項に記載のフォトレジスト用重合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−249425(P2009−249425A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−96161(P2008−96161)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】