説明

フォトレジスト組成物、レジストパターン形成方法及び重合体

【課題】感度等の基本特性を満足すると共に、MEEFを良好な値としたままDOFにも優れるリソグラフィー特性を有するフォトレジスト組成物の提供。
【解決手段】本発明は、[A]1つの酸解離性基を含む構造単位(I)、及び2つ以上の酸解離性基を含む構造単位(II)を有する重合体、並びに[B]酸発生体を含有するフォトレジスト組成物である。また、上記構造単位(I)が下記式(1)で表され、上記構造単位(II)が下記式(2)で表されることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトレジスト組成物、レジストパターン形成方法及び重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路素子等を製造する微細加工の分野において、より高い集積度を得るため、KrFエキシマレーザー(波長248nm)やArFエキシマレーザー(波長193nm)等に代表される短波長放射線を使用したリソグラフィー技術の開発が行われている。これらの放射線に対応するフォトレジスト材料としては、高感度、高解像性等の観点から、酸解離性基を有する成分と放射線の照射により酸を発生する酸発生剤とを含有した化学増幅型のフォトレジスト組成物が広く用いられている(特開昭59−45439号公報参照)。
【0003】
しかし、さらなるデバイスの微細化が進んでいる近年にあっては、フォトレジスト組成物に要求される性能レベルはさらに高まり、より優れたリソグラフィー特性等が求められる。そのため、従来のフォトレジスト組成物を用いても、その高いレベルの要求には応えることができていない。例えば、従来のフォトレジスト組成物を用いると、DOF(Depth Of Focus)、MEEF(Mask Error Enhancement Factor)等を指標としたリソグラフィー特性のバランスを十分に満足することができないのが現状である。
【0004】
このような状況に鑑み、より微細なレジストパターンを形成するため、感度等の基本特性を満足し、特に、MEEFを良好な値としたままDOFにも優れたリソグラフィー特性を有するフォトレジスト組成物が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−45439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような背景に基づいてなされたものであり、その目的は、感度等の基本特性を満足し、MEEFを良好な値としたままDOFにも優れたリソグラフィー特性を有するフォトレジスト組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、
[A]1つの酸解離性基を含む構造単位(I)、及び2つ以上の酸解離性基を含む構造単位(II)を有する重合体(以下、「[A]重合体」ともいう)、並びに
[B]酸発生体
を含有するフォトレジスト組成物である。
【0008】
1つの構造単位中に酸解離性基が2つ以上含まれると、酸解離性基同士の距離が近くなるため、酸の作用による解離反応が起こり易くなると共に、生じるカルボキシ基等の極性基の数も多くなる。そのため、当該フォトレジスト組成物は、[A]重合体が構造単位(I)に加えて、このような構造単位(II)を有することで、感度等の基本特性を十分満足すると共に、DOFに優れる。ここで、「構造単位」とは、重合体において、1つの単量体化合物に由来する構造のことをいう。また、「酸解離性基」とは、カルボキシ基、水酸基、アミノ基、スルホ基等の極性基の水素原子を置換する基であって、酸の作用により解離する基をいう。
【0009】
上記構造単位(I)は下記式(1)で表され、上記構造単位(II)は下記式(2)で表されることが好ましい。
【化1】

(式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、2価の連結基である。Rは、酸解離性基である。mは、0又は1である。
式(2)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。nは、2〜5の整数である。Rは、(n+1)価の連結基である。Rは、酸解離性基である。但し、複数のRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0010】
上記構造単位(II)が、上記特定の構造であると、酸の作用による解離反応がより起こり易くなる。それにより、当該フォトレジスト組成物は、[A]重合体が構造単位(I)に加えて、このような構造単位(II)を有することで、感度等の基本特性を十分満足すると共に、DOFにより優れる。
【0011】
上記式(1)及び(2)におけるR及びRの酸解離性基は、それぞれ独立して下記式(3)で表されることが好ましい。
【化2】

(式(3)中、R〜Rは、それぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20の脂環式基である。但し、R〜Rのいずれか2つが互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に炭素数4〜20の2価の脂環式基を形成してもよい。但し、上記アルキル基及び脂環式基が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。*は、−O−と結合する部位を示す。)
【0012】
上記特定構造の酸解離性基は、酸の作用により解離し易い。そのため、当該フォトレジスト組成物は、[A]重合体がこのような構造の酸解離性基を含む構造単位(I)及び構造単位(II)を有することで、感度等の基本特性を十分満足すると共に、DOFにさらに優れる。
【0013】
上記式(2)におけるRは、置換基を有してもよい炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。上記Rが炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基であることで、上記構造単位(II)において、重合体主鎖に直結するエステル基と、酸解離性基との距離が短くなるため、[A]重合体のガラス転移温度を下げることがない。当該フォトレジスト組成物は、[A]重合体がこのような構造単位(II)を有することで、感度等の基本特性を十分満足すると共に、DOFにさらに優れる。
【0014】
上記式(3)におけるR〜Rは、それぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましい。構造単位(I)及び(II)に含むまれる酸解離性基は、上記特定構造であることにより、酸の作用によりさらに解離し易くなる。当該フォトレジスト組成物は、[A]重合体がこのような構造単位を有することで、感度等の基本特性を十分満足すると共に、DOFにさらに優れる。
【0015】
上記式(3)におけるR〜Rのいずれか2つが互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に2価の脂環式基を形成し、この脂環式基の炭素数が4〜8であるとよい。構造単位(I)及び(II)に含まれる酸解離性基が、上記特定構造であることで、酸の作用によりさらに解離し易くなる。当該フォトレジスト組成物は、[A]重合体がこのような構造単位を有することで、感度等の基本特性を十分満足すると共に、DOFをさらに優れた値とすることができる。
【0016】
[A]重合体は、ラクトン基、環状カーボネート基及びスルトン基からなる群より選択される少なくとも1種の基を含む構造単位(III)をさらに有することが好ましい。[A]重合体が構造単位(III)をさらに有することで、当該フォトレジスト組成物から形成されるレジスト膜の基板等に対する密着性を向上させることができる。
【0017】
構造単位(II)の含有割合は、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、1モル%以上40モル%以下であることが好ましい。当該フォトレジスト組成物は、[A]重合体における構造単位(II)の含有割合を上記特定範囲とすることで、感度等の基本特性を十分満足すると共に、DOFにさらに優れる。
【0018】
[A]重合体における構造単位(II)の含有割合に対する構造単位(I)の含有割合の比は、1以上20以下であることが好ましい。[A]重合体における構造単位(I)と構造単位(II)の含有割合の比が上記特定範囲とすることで、当該フォトレジスト組成物は、DOFにさらに優れる。
【0019】
本発明のレジストパターン形成方法は、
(1)本発明のフォトレジスト組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程、
(2)上記レジスト膜を露光する工程、及び
(3)上記露光されたレジスト膜を現像する工程
を有する。
【0020】
当該レジストパターン形成方法によると、MEEFを良好な値としたままDOFにも優れたリソグラフィー特性を有するレジストパターンを形成することができる。
【0021】
本発明の重合体は、下記式(1)で表される構造単位(I)、及び下記式(2)で表される構造単位(II)を有する。
【化3】

(式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、2価の連結基である。Rは、酸解離性基である。mは、0又は1である。
式(2)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。nは、2〜5の整数である。Rは、(n+1)価の連結基である。Rは、酸解離性基である。但し、複数のRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0022】
当該重合体が有する上記特定構造の構造単位(II)は、酸の作用による解離反応がより起こり易い。また、上記解離反応後に発生する極性基の数も多い。そのため、当該重合体は、構造単位(I)に加えてこのような構造単位(II)を有することで、フォトレジスト組成物として用いた場合に、感度等の基本特性を十分満足すると共に、DOFにより優れる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のフォトレジスト組成物は、感度等の基本特性を満足し、MEEFを良好な値としたままDOFにも優れたリソグラフィー特性を有する。そのため、当該フォトレジスト組成物は、半導体デバイス、液晶デバイス等の各種電子デバイスのリソグラフィー工程におけるレジストパターンの形成に好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<フォトレジスト組成物>
当該フォトレジスト組成物は、[A]重合体及び[B]酸発生体を含有し、[C]フッ素原子含有重合体、[D]酸拡散制御体及び[E]溶媒を好適成分として含有する。さらに、本発明の効果を損なわない限り上記以外のその他の成分を含有してもよい。以下、各成分について詳述する。
【0025】
<[A]重合体>
[A]重合体は、1つの酸解離性基を含む構造単位(I)、及び2つ以上の酸解離性基を含む構造単位(II)を有する重合体である。また、ラクトン基、環状カーボネート基及びスルトン基からなる群より選択される少なくとも1種の基を含む構造単位(III)を有することが好ましい。なお、本発明の効果を損なわない限り、その他の構造単位を有していてもよい。各構造単位は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。以下、各構造単位について詳述する。
【0026】
[構造単位(I)]
構造単位(I)は1つの酸解離性基を含む構造単位である。構造単位(I)は、1つの酸解離性基を含む基であれば特に限定されないが、上記式(1)で表される構造単位であることが好ましい。
【0027】
上記式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、2価の連結基である。Rは、酸解離性基である。mは、0又は1である。
【0028】
上記Rで表される2価の連結基としては、例えば炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜20の脂環式基、炭素数6〜20の芳香族基、ラクトン基、スルトン基、エステル基、これらの基を組み合わせてなる基等が挙げられる。なお、上記Rで表される2価の連結基には、上記脂肪族炭化水素基、脂環式基及び芳香族基が有する水素原子の一部又は全部が、フッ素原子で置換されている基も含まれる。
【0029】
上記炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基としては、例えばメチレン基、エタンジイル基、プロパンジイル基、n−ブタンジイル基、i−ブタンジイル基等が挙げられる。
【0030】
上記炭素数4〜20の脂環式基としては、例えばシクロブタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、シクロオクタンジイル基、ノルボルナンジイル基、アダマンタンジイル基等が挙げられる。
【0031】
上記炭素数6〜20の芳香族基としては、例えばフェニレン基、ナフタレニレン基、アントラセニレン基等が挙げられる。
【0032】
上記Rで表される酸解離性基としては、露光により[B]酸発生体から発生する酸の作用により解離する基であれば特に限定されることはないが、上記式(3)で表される基であることが好ましい。上記Rが上記式(3)で表される基であると、酸の作用により解離し易い。
【0033】
上記式(3)中、R〜Rは、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20の脂環式基である。但し、R〜Rのいずれか2つが互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に炭素数4〜20の2価の脂環式基を形成してもよい。但し、上記アルキル基及び脂環式基が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。*は、−O−と結合する部位を示す。
【0034】
上記R〜Rで表される炭素数1〜4のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基等が挙げられる。
【0035】
上記R〜Rで表される炭素数4〜20の脂環式基、及び上記R〜Rの何れか2つが互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に脂環式基としては、例えばシクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。これらのうち炭素数4〜8の脂環式基であるシクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロオクチル基等が好ましい。
【0036】
酸解離性の観点から、上記式(3)で表される基としては、上記R〜Rがそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基である基が好ましい。また、R〜Rのいずれか2つが互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に2価の脂環式基を形成しており、さらにこの脂環式基の炭素数が4〜8である基も好ましい。
【0037】
構造単位(I)としては、例えば下記式で表される基等が挙げられる。
【0038】
【化4】

【0039】
上記式中、R10は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R11は、炭素数1〜4のアルキル基である。aは、1〜6の整数である。bは、1〜3の整数である。
【0040】
これらのうち、好ましい構造単位として、下記式(1−1)〜(1−26)で表される構造単位が挙げられる。
【0041】
【化5】

【0042】
なかでも、酸解離性基がより解離し易いという観点から上記式(1−1)〜(1−10)、(1−14)、(1−15)、(1−23)〜(1−26)で表される構造単位がより好ましい。
【0043】
構造単位(I)を与える単量体としては、1−アルキル−シクロアルキルエステル等の単環の脂環式基を有する酸解離性基を含む単量体、2−アルキル−2−ジシクロアルキルエステル等の多環の脂環式基を有する酸解離性基を含む単量体、アルキルエステル等の3級炭素を有する酸解離性基を含む単量体等が挙げられる。
【0044】
[A]重合体において、構造単位(I)の含有率としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%〜80モル%が好ましく、20モル%〜70モル%がより好ましく、30モル%〜60モル%がさらに好ましい。構造単位(I)の含有率を上記範囲とすることで、当該フォトレジスト組成物はDOFに優れる。
【0045】
[構造単位(II)]
構造単位(II)は、2つ以上の酸解離性基を含む構造単位である。構造単位(II)としては、1つの構造単位中に2つ以上の酸解離性基を含む構造単位であれば特に限定されないが、上記式(2)で表される構造単位であることが好ましい。
【0046】
上記式(2)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。nは、2〜5の整数である。Rは、(n+1)価の連結基である。Rは、酸解離性基である。但し、複数のRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0047】
上記nとしては、2又は3が好ましく、2がより好ましい。
【0048】
上記Rで表される(n+1)価の連結基としては、例えば炭素数1〜10の(n+1)価の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜20の(n+1)価の脂環式基、炭素数6〜20の(n+1)価の芳香族基、(n+1)価のラクトン基、(n+1)価のスルトン基、エステル基とこれらの基を組み合わせてなる(n+1)価の基等が挙げられる。
【0049】
上記炭素数1〜10の(n+1)価の脂肪族炭化水素基としては、例えばメタン、エタン、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン等のアルカンから(n+1)個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0050】
上記炭素数4〜20の(n+1)価の脂環式基としては、例えばシクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、アダマンタン、ノルボルナン等のシクロアルカンから(n+1)個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0051】
上記炭素数6〜20の(n+1)価の芳香族基としては、例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香族環から(n+1)個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
【0052】
これらのうち、上記Rとしては、炭素数1〜10の(n+1)価の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数1〜3の脂肪族炭化水素基がより好ましい。
【0053】
上記Rで表される酸解離性基については、上記Rで表される酸解離性基についての説明を適用することができる。
【0054】
構造単位(II)としては、例えば下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0055】
【化6】

【0056】
上記式中、R12は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0057】
これらのうち、上記式(2−1)で表される構造単位が好ましい。
【0058】
構造単位(II)を与える単量体としては、下記式で表される化合物等が挙げられる。
【0059】
【化7】

【0060】
[A]重合体において、構造単位(II)の含有率としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、0.1モル%〜40モル%が好ましく、1モル%〜30モル%がより好ましく、2モル%〜20モル%がさらに好ましい。構造単位(II)の含有率を上記範囲とすることで、当該フォトレジスト組成物はDOFに優れる。構造単位(II)の含有率が、所定範囲を超えると、アルカリ現像液により未露光部も溶解し易くなり、良好なパターンを形成することができないおそれがある。
【0061】
[A]重合体における構造単位(II)の含有割合に対する構造単位(I)の含有割合の比は、1.0以上20以下であることが好ましい。[A]重合体における構造単位(I)の含有割合と構造単位(II)の含有割合の比を上記特定範囲とすることで、当該フォトレジスト組成物は、DOFにより優れる。
【0062】
[構造単位(III)]
[A]重合体は、ラクトン基、環状カーボネート基及びスルトン基からなる群より選択される少なくとも1種の基を含む構造単位(III)を有することが好ましい。[A]重合体が構造単位(III)をさらに有することで、当該フォトレジスト組成物から形成されるレジスト膜は、基板への密着性を向上することができる。ここで、ラクトン基とは、−O−C(O)−で表される構造を含むひとつの環(ラクトン環)を含有する基をいう。また、環状カーボネート基とは、−O−C(O)−O−で表される構造を含むひとつの環(環状カーボネート環)を含有する基をいう。スルトン基とは、−O−SO−で表される構造を含むひとつの環(スルトン環)を含有する基をいう。なお、ラクトン環、環状カーボネート環又はスルトン環を1つめの環として数え、ラクトン環、環状カーボネート環又はスルトン環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基という。
【0063】
構造単位(III)としては、例えば下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0064】
【化8】

【0065】
【化9】

【0066】
上記式中、R13は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0067】
これらのうち、レジスト膜の密着性を向上させる観点から、上記式(3−1)で表される構造単位が好ましい。
【0068】
構造単位(III)を与える単量体化合物としては、例えば、下記式で表される化合物が挙げられる。
【0069】
【化10】

【0070】
【化11】

【0071】
[A]重合体における構造単位(III)の含有率は、10モル%以上80モル%以下が好ましく、20モル%以上70モル%以下がより好ましい。構造単位(III)の含有率を上記範囲とすることで、当該フォトレジスト組成物から得られるレジスト膜は基板等への密着性を向上させることができる。
【0072】
[他の構造単位]
[A]重合体は、構造単位(I)〜(III)以外の他の構造単位として、本発明の効果を損なわない限り、極性基を含む構造単位等をさらに有してもよい。[A]重合体が極性基を含む構造単位をさらに有することで、[A]重合体と、[B]酸発生体等の他の成分との相溶性が向上するため、当該フォトレジスト組成物の解像性及びLWRを優れた値とすることができる。
【0073】
<[A]重合体の合成方法>
[A]重合体は、例えば所定の各構造単位に対応する単量体を、ラジカル重合開始剤を使用し、適当な溶媒中で重合することにより製造できる。例えば、単量体及びラジカル開始剤を含有する溶液を、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法、単量体を含有する溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法、各々の単量体を含有する複数種の溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法等の方法で合成することが好ましい。
【0074】
上記重合に使用される溶媒としては、例えば
n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等のアルカン類;
シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素類;
クロロブタン類、ブロモヘキサン類、ジクロロエタン類、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;
酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類;
アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン等のケトン類;
テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン類、ジエトキシエタン類等のエーテル類;
メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、4−メチル−2−ペンタノール等のアルコール類等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0075】
上記重合における反応温度は、ラジカル開始剤の種類に応じて適宜決定すればよいが、通常40℃〜150℃であり、50℃〜120℃が好ましい。反応時間としては、通常1時間〜48時間であり、1時間〜24時間が好ましい。
【0076】
上記重合に使用されるラジカル開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)等が挙げられる。これらの開始剤は2種以上を混合して使用してもよい。
【0077】
重合反応により得られた重合体は、再沈殿法により回収することが好ましい。すなわち、重合反応終了後、重合液を再沈溶媒に投入することにより、目的の樹脂を粉体として回収する。再沈溶媒としては、アルコール類やアルカン類等を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。再沈殿法の他に、分液操作やカラム操作、限外ろ過操作等により、単量体、オリゴマー等の低分子成分を除去して、重合体を回収することもできる。
【0078】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)としては、1,000〜100,000が好ましく、2,000〜50,000がより好ましく、3,000〜30,000がさらに好ましい。[A]重合体のMwを上記特定範囲とすることで、DOFを優れた値とすることができる。
【0079】
[A]重合体のMwと数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)としては、通常1〜5であり、1〜3が好ましく、1〜2がより好ましい。Mw/Mnをこのような特定範囲とすることで、当該フォトレジスト組成物は、MEEFを良好な値としたままDOFにも優れたリソグラフィー特性を有する。
【0080】
なお、本明細書においてMw及びMnは、GPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本、以上東ソー社製)を用い、流量1.0mL/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、試料濃度1.0質量%、試料注入量100μL、カラム温度40℃の分析条件で、検出器として示差屈折計を使用し、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値をいう。
【0081】
<[B]酸発生体>
[B]酸発生体は、パターン形成方法における露光工程において、放射線照射により酸を発生する化合物である。その酸の作用により[A]重合体中に存在する構造単位(I)及び(II)が有する酸解離性基が解離し極性基が発生する。その結果、[A]重合体がアルカリ現像液に溶解性となる。当該フォトレジスト組成物における[B]酸発生体の含有形態としては、後述するような化合物の形態(以下、適宜「[B]酸発生剤」ともいう)でも、重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0082】
[B]酸発生剤としては、例えばオニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物等が挙げられる。これらの[B]酸発生剤のうち、オニウム塩化合物が好ましい。
【0083】
オニウム塩化合物としては、例えばスルホニウム塩(テトラヒドロチオフェニウム塩を含む)、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。
【0084】
スルホニウム塩としては、例えばトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1−ジフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムカンファースルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムカンファースルホネート、トリフェニルホスホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニロキシ)−ヘキサン−1−スルホネート、トリフェニルスルホニウムノルボルニル−ジフルオロエタンスルホネート等が挙げられる。これらのうち、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート及びトリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートが好ましい。
【0085】
テトラヒドロチオフェニウム塩としては、例えば1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムカンファースルホネート等が挙げられる。これらのテトラヒドロチオフェニウム塩のうち、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート及び1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートが好ましい。
【0086】
ヨードニウム塩としては、例えばジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムカンファースルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムカンファースルホネート等が挙げられる。これらのヨードニウム塩のうち、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートが好ましい。
【0087】
これらの[B]酸発生体は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。[B]酸発生体が酸発生剤である場合の含有量としては、レジストとしての感度及び現像性を確保する観点から、[A]重合体100質量部に対して、通常、0.1質量部以上30質量部以下、好ましくは0.5質量部以上20質量部以下である。[B]酸発生剤の使用量が上記特定の範囲であると、当該フォトレジスト組成物は解像性及びLWRに優れる。
【0088】
<[C]フッ素原子含有重合体>
当該フォトレジスト組成物は、[C]フッ素原子含有重合体(以下、「[C]重合体」ともいう)を含有することができる。上記フォトレジスト組成物が[C]重合体を含有することで、レジスト膜を形成した際に、[C]重合体の撥水性的特徴により、その分布がレジスト膜表層に偏在化する傾向があるため、液浸露光時において、膜中の酸発生剤や酸拡散制御剤等の液浸媒体への溶出を抑制することができ、後述する液浸用保護膜を用いなくても液浸露光が可能となる。
【0089】
[C]重合体は、通常フッ素原子を構造中に含む単量体を1種類以上重合することにより形成することができる。
【0090】
[C]重合体は下記式(4)で表される構造単位(F−I)を有することが好ましい。
【0091】
【化12】

【0092】
上記式(4)中、R14は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Aは、単結合又は2価の連結基である。R15は、少なくとも1個のフッ素原子を有する炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導基である。
【0093】
上記Aで表される2価の連結基としては、例えば、酸素原子、硫黄原子、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、アミド基、スルホニルアミド基、ウレタン基等が挙げられる。
【0094】
上記構造単位(F−I)を与える好ましい単量体としては、トリフルオロメチル(メタ)アクリル酸エステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロt−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、2−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロシクロヘキシルメチル(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(5−トリフルオロメチル−3,3,4,4,5,6,6
9,6−オクタフルオロヘキシル)(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0095】
[C]重合体における構造単位(F−I)の含有率としては、通常5モル%以上であり、10モル%以上が好ましく、15モル%以上がより好ましい。なお、[C]重合体は、構造単位(F−I)を1種のみ有していてもよいし、2種以上を有していてもよい。
【0096】
[C]重合体は、上述のフッ素原子を構造中に有する構造単位以外にも、例えば、現像液に対する溶解速度をコントールするために、[A]重合体の構造単位(I)と同様の酸解離性基を含む構造単位や、ラクトン基、環状カーボネート基又はスルトン基を含む構造単位、水酸基等を含む構造単位、脂環式基等を含む構造単位、基板からの反射による光の散乱を抑えるために芳香族化合物に由来する構造単位等の「他の構造単位」を1種類以上含有させることができる。
【0097】
本発明のフォトレジスト組成物における[C]重合体の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下が好ましく、0.5質量部以上10質量部以下がより好ましい。
【0098】
<[D]酸拡散制御体>
[D]酸拡散制御体は、露光により[B]酸発生体から生じる酸のレジスト膜中における拡散現象を制御し、未露光部における好ましくない化学反応を抑制する効果を奏する成分である。フォトレジスト組成物が[D]酸拡散制御体を含有することで、得られるフォトレジスト組成物の貯蔵安定性がさらに向上し、またレジストとしての解像性がさらに向上する。また、露光から現像処理までの引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れた組成物が得られる。なお、[D]酸拡散制御体の本発明におけるフォトレジスト組成物における含有形態としては、遊離の化合物の形態(以下、適宜「[D]酸拡散制御剤」ともいうこともある)でも、重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0099】
[D]酸拡散制御剤としては、例えばアミン化合物、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等が挙げられる。
【0100】
アミン化合物としては、例えばモノ(シクロ)アルキルアミン類;ジ(シクロ)アルキルアミン類;トリ(シクロ)アルキルアミン類;置換アルキルアニリン又はその誘導体;エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジエチルアミノエチル)エーテル、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリジノン、2−キノキサリノール、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’’N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0101】
アミド基含有化合物としては、例えばN−t−ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−アセチル−1−アダマンチルアミン、イソシアヌル酸トリス(2−ヒドロキシエチル)等が挙げられる。
【0102】
ウレア化合物としては、例えば尿素、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、トリ−n−ブチルチオウレア等が挙げられる。
【0103】
含窒素複素環化合物としては、例えばイミダゾール類;ピリジン類;ピペラジン類;ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、4−ヒドロキシ−N−アミロキシカルボニルピペリジン、ピペリジンエタノール、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、モルホリン、4−メチルモルホリン、1−(4−モルホリニル)エタノール、4−アセチルモルホリン、3−(N−モルホリノ)−1,2−プロパンジオール、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン等が挙げられる。これらのうち、N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジンが好ましい。
【0104】
また、[D]酸拡散制御剤として、露光により感光し弱酸を発生する光崩壊性塩基を用いることもできる。光崩壊性塩基は、露光部においては酸を発生して[A]重合体の当該現像液に対する溶解性を高め、結果として現像後の露光部表面のラフネスを抑制する。一方、未露光部ではアニオンによる高い酸捕捉機能が発揮されクエンチャーとして機能し、露光部から拡散する酸を捕捉する。すなわち、未露光部のみにおいてクエンチャーとして機能するため、脱保護反応のコントラストが向上し、結果として解像性をより向上させることができる。光崩壊性塩基の一例として、露光により分解して酸拡散制御性を失うオニウム塩化合物がある。オニウム塩化合物としては、例えば下記式(D1)で示されるスルホニウム塩化合物、下記式(D2)で表されるヨードニウム塩化合物等が挙げられる。
【0105】
【化13】

【0106】
上記式(D1)及び式(D2)中、R16〜R20はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子又は−SO−Rである。Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はアリール基である。Zは、OH、R21−COO、R−SO−N―R21、R21−SO又は下記式(D3)で示されるアニオンである。R21は炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアルカリール基である。上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアルカリール基の水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有してもいてもよい炭素数3〜20のシクロアルキル基である。上記アルキル基及びシクロアルキル基の水素原子の一部又は全部はフッ素原子で置換されていてもよい。但し、ZがR21−SOの場合、SOが結合する炭素原子にフッ素原子が結合する場合はない。
【0107】
【化14】

【0108】
上記式(D3)中、R22は、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基である。uは0〜2の整数である。
【0109】
当該パターン形成方法に用いられるフォトレジスト組成物における[D]酸拡散制御剤の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して、10質量部未満が好ましい。合計使用量が10質量部未満であると、レジストとしての感度が維持され易い。これらの[D]酸拡散抑制剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0110】
<[E]溶媒>
当該フォトレジスト組成物は通常[E]溶媒を含有する。[E]溶媒は少なくとも[A]重合体、[B]酸発生体、好適成分である[C]重合体、[D]酸拡散制御剤及び任意成分を溶解できれば特に限定されない。[E]溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒及びその混合溶媒等が挙げられる。
【0111】
アルコール系溶媒としては、例えば
メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール系溶媒;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール系溶媒;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール部分エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0112】
エーテル系溶媒としては、例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル等が挙げられる。
【0113】
ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−i−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン等のケトン系溶媒が挙げられる。
【0114】
アミド系溶媒としては、例えばN,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0115】
エステル系溶媒としては、例えばジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。
【0116】
炭化水素系溶媒としては、例えば
n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−ヘプタン、i−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、i−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、i−プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、i−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−i−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0117】
これらのうち酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトンが好ましい。これらの溶媒は単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0118】
<その他の任意成分>
当該フォトレジスト組成物は、その他の任意成分として、界面活性剤、脂環式骨格含有化合物、増感剤等を含有できる。なお、上記フォトレジスト組成物は、上記その他の任意成分をそれぞれ1種のみ含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
【0119】
[界面活性剤]
界面活性剤は、当該パターン形成方法に用いられるフォトレジスト組成物の塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する効果を奏する。
【0120】
[脂環式骨格含有化合物]
脂環式骨格含有化合物は、当該パターン形成方法に用いられるフォトレジスト組成物のドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等を改善する効果を奏する。
【0121】
[増感剤]
増感剤は、[B]酸発生体からの酸の生成量を増加する作用を示すものであり、当該パターン形成方法に用いられるフォトレジスト組成物の「みかけの感度」を向上させる効果を奏する。
【0122】
<フォトレジスト組成物の調製方法>
当該パターン形成方法に用いられるフォトレジスト組成物は、例えば[E]溶媒中で[A]重合体、[B]酸発生体、[C]重合体、[D]酸拡散制御剤及び任意成分を所定の割合で混合することにより調製できる。また、当該組成物は、適当な[E]溶媒に溶解又は分散させた状態に調製され使用され得る。
【0123】
<レジストパターン形成方法>
本発明のレジストパターン形成方法は、
(1)本発明のフォトレジスト組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程、
(2)上記レジスト膜を露光する工程、及び
(3)上記露光されたレジスト膜を現像する工程
を有する。以下、各工程について詳述する。
【0124】
[(1)工程]
本工程では、当該フォトレジスト組成物を基板上に塗布し、レジスト膜を形成する。基板としては、例えばシリコンウェハ、アルミニウムで被覆されたウェハ等の従来公知の基板を使用できる。また、例えば特公平6−12452号公報や特開昭59−93448号公報等に開示されている有機系又は無機系の下層反射防止膜を基板上に形成してもよい。
【0125】
塗布方法としては、例えば回転塗布(スピンコーティング)、流延塗布、ロール塗布等が挙げられる。なお、形成されるレジスト膜の膜厚としては、通常0.01μm〜1μmであり、0.01μm〜0.5μmが好ましい。
【0126】
当該フォトレジスト組成物を塗布した後、必要に応じてプレベーク(PB)によって塗膜中の溶媒を揮発させてもよい。PBの加熱条件としては、上記フォトレジスト組成物の配合組成によって適宜選択されるが、通常30℃〜200℃程度であり、50℃〜150℃が好ましい。
【0127】
また、環境雰囲気中に含まれる塩基性不純物等の影響を防止するために、例えば特開平5−188598号公報等に開示されている保護膜をレジスト層上に設けることもできる。さらに、レジスト層からの酸発生剤等の流出を防止するために、例えば特開2005−352384号公報等に開示されている液浸用保護膜をレジスト層上に設けることもできる。なお、これらの技術は併用できる。
【0128】
[(2)工程]
本工程では、(1)工程で形成されたレジスト膜の所望の領域に特定パターンのマスク、及び必要に応じて液浸液を介して縮小投影することにより露光を行う。例えば、所望の領域にアイソラインパターンマスクを介して縮小投影露光を行うことにより、アイソラインパターンを形成できる。同様にして、ドットパターンマスクを介して縮小投影露光を行うことによりホールパターンを形成することができる。また、露光は所望のパターンとマスクパターンによって2回以上行ってもよい。2回以上露光を行う場合、露光は連続して行うことが好ましい。なお、露光の際に用いられる液浸液としては水やフッ素系不活性液体等が挙げられる。液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつ膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましいが、特に露光光源がArFエキシマレーザー光(波長193nm)である場合、上述の観点に加えて、入手の容易さ、取り扱いのし易さといった点から水を用いるのが好ましい。
【0129】
露光に使用される放射線としては、[B]酸発生体の種類に応じて適宜選択されるが、例えば、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線等が挙げられる。これらのうち、ArFエキシマレーザーやKrFエキシマレーザー(波長248nm)に代表される遠紫外線が好ましく、ArFエキシマレーザーがより好ましい。露光量等の露光条件は、上記フォトレジスト組成物の配合組成や添加剤の種類等に応じて適宜選択される。当該レジストパターン形成方法においては、上述のように露光工程を複数回有してもよく、これらの複数回の露光においては、同じ光源を用いても異なる光源を用いても良い。但し、1回目の露光にはArFエキシマレーザー光を用いることが好ましい。
【0130】
また、露光後にポストエクスポージャーベーク(PEB)を行なうことが好ましい。PEBを行なうことにより、上記フォトレジスト組成物中の酸解離性基の解離反応を円滑に進行できる。PEBの加熱条件としては、通常30℃〜200℃であり、50℃〜150℃が好ましい。
【0131】
[(3)工程]
本工程は、(2)工程において露光されたレジスト膜を本発明の現像液で現像しパターンを形成する工程である。現像後は、水で洗浄し、乾燥することが一般的である。現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液が好ましい。
【0132】
現像方法としては、例えば現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止することで現像する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液塗出ノズルをスキャンしながら現像液を塗出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等が挙げられる。
【0133】
<重合体>
本発明の重合体は、上記式(1)で表される構造単位(I)、及び上記式(2)で表される構造単位(II)を有する。当該重合体が有する上記特定構造の構造単位(II)においては、酸解離性基が結合するそれぞれのエステル同士の距離が短いため、酸の作用による解離反応がより起こり易くなる。当該重合体は、構造単位(I)に加えて、このような構造単位(II)を有するため、フォトレジスト組成物として用いた場合に、感度等の基本特性を十分満足すると共に、DOFにより優れる。なお、当該重合体については、当該フォトレジスト組成物が含有する[A]重合体についての説明を適用することができる。
【実施例】
【0134】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。各物性値の測定方法を下記に示す。
【0135】
[重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分散度(Mw/Mn)]
重合体の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、東ソー社製のGPCカラム(G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を使用し、以下の条件により測定した。また、分散度(Mw/Mn)は、Mw及びMnの測定結果より算出した。
流量:1.0mL/分、
溶出溶媒:テトラヒドロフラン、
カラム温度:40℃
試料濃度:1.0質量%
試料注入量:100μL
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
【0136】
H−NMR分析及び13C−NMR分析]
H−NMR分析及び13C−NMR分析は、核磁気共鳴装置(JNM−EX270、日本電子社)により行った。
【0137】
<[A]重合体の合成>
(単量体化合物の合成)
[合成例1]
2−ブロモエタノール40g(0.32mol)とt−ブチルジメチルクロロシラン53gを1Lの反応フラスコに入れ、THF400mLを加えた後、この溶液を0℃に冷却した。THF100mLにトリエチルアミン36g(0.35mol)とN,N−ジメチル−4−アミノピリジン3.9g(0.03mmol)を溶解させた溶液を、ゆっくりと滴下した後、室温で10時間攪拌した。反応終了後、生じた沈殿物を吸引ろ過で除き、液層のTHFをエバポレーターにて留去し、残渣を酢酸エチルで抽出した。さらに水及び飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。その後、減圧濃縮して得られた残渣を減圧蒸留にて精製することにより下記式(m−1)で表される化合物を66.0g(収率86%)得た。
【0138】
【化15】

【0139】
窒素雰囲気下、40%オイル含有の水素化ナトリウム12.7g(0.32mol)を1Lの反応フラスコに入れ、そこに無水THF500mLを加えた。この溶液を0℃に冷却し、マロン酸ジ−t−ブチル 80.2g(0.37mol)をゆっくりと滴下した後、室温で2時間攪拌した。その後、0℃で、上記化合物(m−1)63.4g(0.27mol)をゆっくりと滴下し、40℃で15時間攪拌した。反応終了後、生じた沈殿物を吸引ろ過で除き、液層のTHFをエバポレーターにて留去し、残渣を酢酸エチルで抽出した。さらに、水及び飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。その後、減圧濃縮して得られた残渣を1Lのナスフラスコに入れ、1規定の塩酸150mLとメタノール150mL及びTHF400mLを加え、室温で8時間攪拌させた。炭酸水素ナトリウム水溶液にて中和し、液層をエバポレーターにて留去し、残渣を酢酸エチルで抽出した後に、水及び飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。その後、減圧濃縮して得られた残渣を減圧蒸留にて精製することにより下記式(m−2)で表される化合物56.2g(収率80%)を得た。
【0140】
【化16】

【0141】
窒素雰囲気下、上記化合物(m−2)56.0g(0.22mol)とトリエチルアミン 32.7g(0.32mol)を1Lの反応フラスコに入れ、そこにトルエン500mLを加えた。0℃にトルエン溶液を冷やし、メタクリル酸クロライド 23.6g(0.23mol)をゆっくりと滴下した後、室温で4時間攪拌した。反応終了後、生じた沈殿物を吸引ろ過で除き、液層のトルエンをエバポレーターにて留去し、残渣を酢酸エチルで抽出した。さらに、水及び飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。その後、減圧濃縮して得られた残渣を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=8/1)にて精製することにより下記式(M−1)で表される化合物を43.1g(収率60%)得た。
得られた化合物(M−1)のH−NMRデータを以下に示す。
H−NMR(CDCl)δ:1.46(s,18H,CH)、1.92(s,3H,CH)、2.21(q,2H,CH)、3.30(t,1H,CH)、4.19(t,2H,CH)、5.54(s,1H,CH)、6.11(s,1H,CH).
【0142】
[A]重合体の合成に用いた単量体を下記に示す。
【0143】
【化17】

【0144】
[実施例1]
構造単位(II)を与える化合物(M−1)4.7g(10mol%)、構造単位(I)を与える化合物(M−2)9.5g(40mol%)、構造単位(III)を与える化合物(M−5)15.8g(50mol%)及びAIBN 1.17gを2−ブタノン60gに溶解し、単量体溶液を準備した。一方、30gの2−ブタノンを300mLの三口フラスコに投入し、30分間窒素ガスによりパージした。窒素パージの後、三口フラスコ内の2−ブタノンを攪拌しながら、80℃に加熱した。次いで、事前に準備した上記単量体溶液を、滴下漏斗を用いて、3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに、80℃で3時間撹拌した。重合終了後、重合溶液を水冷により、30℃以下に冷却した。そして、この重合反応溶液をメタノール/水=4/1の混合溶液600g中へ投入し、白色粉末を析出させ、その後、これを濾別した。濾別された白色粉末を、2度、120gのメタノールを用いてスラリー洗浄した後、濾別した。次いで、白色粉末(共重合体)を50℃で17時間乾燥することにより重合体(A−1)21.0gを得た(収率70%)。得られた重合体(A−1)のMwは7,100であり、Mw/Mnは1.42であった。また、13C−NMR分析の結果、化合物(M−1)由来の構造単位:化合物(M−2)由来の構造単位:化合物(M−5)由来の構造単位の含有率は、10:38:52(mol%)であった。
【0145】
[実施例2〜4、合成例2〜3]
表1に記載の種類の単量体を所定量配合した以外は、実施例1と同様に操作して重合体(A−2)〜(A−4)及び(a−1)〜(a−2)を得た。また、得られた各重合体のMw、Mw/Mn、収率(%)及び各重合体における各単量体に由来する構造単位の含有率を合わせて表1に示す。
【0146】
【表1】

【0147】
<フォトレジスト組成物の調製>
フォトレジスト組成物の調製に用いた[B]酸発生剤、[D]酸拡散制御剤、[E]溶媒を以下に示す。
【0148】
([B]酸発生剤)
B−1:4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート(下記式(B−1)で表される化合物)
B−2:トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート(下記式(B−2)で表される化合物)
【0149】
【化18】

【0150】
([D]酸拡散制御剤)
D−1:N−t−ブトキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン
【0151】
【化19】

【0152】
([E]溶媒)
E−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
E−2:シクロヘキサノン
E−3:γ−ブチロラクトン
【0153】
[実施例5]
重合体(A−1)100質量部、酸発生剤(B−1)12.0質量部及び(B−2)2.9質量部、酸拡散制御剤(D−3)1.7質量部、並びに溶媒(E−1)1,985質量部、(E−2)850質量部及び(E−3)30質量部を混合し、得られた混合溶液を孔径0.2μmのフィルターでろ過して、フォトレジスト組成物を調製した。
【0154】
[実施例6〜8及び比較例1〜2]
表2に示す種類、量の各成分を用いた以外は実施例5と同様に操作して、各フォトレジスト組成物を調製した。
【0155】
<レジストパターンの形成>
12インチシリコンウェハ上に、下層反射防止膜形成用組成物(ARC66、日産化学製)を、塗布/現像装置(CLEAN TRACK Lithius Pro i、東京エレクトロン製)を用いてスピンコートした後、205℃で60秒間ベークして、膜厚105nmの下層反射防止膜を形成した。この下層反射防止膜上に、上記フォトレジスト組成物を、塗布/現像装置(CLEAN TRACK ACT12、東京エレクトロン製)を用いてスピンコートし、100℃で60秒間ソフトベークを行い、膜厚100nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜上に、国際公開第2008/47678号パンフレットの実施例1に記載の上層膜形成用組成物(液浸用保護膜用組成物)を、上記塗布/現像装置を用いてスピンコートし、90℃で60秒間プレベークして、膜厚30nmの上層膜を形成した。続いて、形成されたレジスト膜を、ArFエキシマレーザー液浸露光装置(NSR S610C、NIKON製)を用い、NA=1.3、ratio=0.675、Annularの条件により、70nmLine140nmPitchのマスクパターンを介して露光した。露光後、表2に記載の温度(℃)で60秒間PEBを行った。その後、2.38質量%のTMAH水溶液により現像し、水洗し、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。
【0156】
<評価>
[感度]
70nmライン140nmピッチのパターン形成用のマスクパターンを介して露光した部分が線幅70nmのラインを形成する露光量を最適露光量(Eop)とし、この最適露光量を感度(mJ/cm)とした。上記線幅の測長には走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社、CG4100)を用いた。
【0157】
[MEEF]
上記最適露光量にて、48nmライン105nmピッチ、50nmライン105nmピッチ、52nmライン105nmピッチ、54nmライン105nmピッチ、56nmライン140nmピッチとするパターン形成用のマスクパターンをそれぞれ介してLSパターンを形成した。このとき、マスクのラインサイズ(nm)を横軸に、各マスクパターンを用いてレジスト膜に形成されたライン幅(nm)を縦軸にプロットしたときの直線の傾きをMEEFとして算出した。MEEF(直線の傾き)は、その値が1に近いほどマスク再現性が良好であると判断される。結果を表2に合わせて示す。
【0158】
[DOF(Dense)]
上記Eopにて、形成されるトレンチ(スペース部分)の幅が63nm〜77nmに収まるような焦点深度(μm)をDense DOFとした。Dense DOFが0.04μm以上であれば「良好」、0.02μm以上0.04μm未満であれば「やや良好」であるといえる。
【0159】
[DOF(Iso)]
50nmトレンチ1,000nmピッチのマスクパターンを介して上記Eopにて露光した以外は、上記70nmライン140nmピッチパターンの形成の場合と同様にして、ポジ型のレジストパターンを形成した。このとき、形成されるトレンチの幅が、45nm〜55nmに収まるような焦点深度(μm)をIso DOFとした。Iso DOFが0.06μm以上であれば良好であるといえる。
【0160】
【表2】

【0161】
表2に示す通り、本発明のフォトレジスト組成物は、比較例のフォトレジスト組成物と比べて、DOFに優れることがわかった。特に光学的理由から一般にDOF(Dense)を良好な値としたままDOF(Iso)を優れた値とすることが難しいとされているが、実施例のフォトレジスト組成物ではDOF(Dense)、DOF(Iso)共に優れた値となった。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明のフォトレジスト組成物は、感度等の基本特性を満足し、MEEFを良好な値としたままDOFにも優れるリソグラフィー特性を有する。そのため、当該フォトレジスト組成物は、半導体デバイス、液晶デバイス等の各種電子デバイスのリソグラフィー工程におけるレジストパターンの形成において好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]1つの酸解離性基を含む構造単位(I)、及び2つ以上の酸解離性基を含む構造単位(II)を有する重合体、並びに
[B]酸発生体
を含有するフォトレジスト組成物。
【請求項2】
上記構造単位(I)が下記式(1)で表され、上記構造単位(II)が下記式(2)で表される請求項1に記載のフォトレジスト組成物。
【化1】

(式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、2価の連結基である。Rは、酸解離性基である。mは、0又は1である。
式(2)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。nは、2〜5の整数である。Rは、(n+1)価の連結基である。Rは、酸解離性基である。但し、複数のRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【請求項3】
上記式(1)及び(2)におけるR及びRの酸解離性基が、それぞれ独立して下記式(3)で表される請求項2に記載のフォトレジスト組成物。
【化2】

(式(3)中、R〜Rは、それぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数4〜20の脂環式基である。但し、R〜Rのいずれか2つが互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に炭素数4〜20の2価の脂環式基を形成してもよい。但し、上記アルキル基及び脂環式基が有する水素原子の一部又は全部は、置換されていてもよい。*は、−O−と結合する部位を示す。)
【請求項4】
上記式(2)におけるRが、置換基を有してもよい炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基である請求項2又は請求項3に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項5】
上記式(3)におけるR〜Rが、それぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基である請求項3又は請求項4に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項6】
上記式(3)におけるR〜Rのいずれか2つが互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に2価の脂環式基を形成し、この脂環式基の炭素数が4〜8である請求項3又は請求項4に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項7】
[A]重合体が、ラクトン基、環状カーボネート基及びスルトン基からなる群より選択される少なくとも1種の基を含む構造単位(III)をさらに有する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項8】
構造単位(II)の含有割合が、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、1モル%以上40モル%以下である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項9】
[A]重合体における構造単位(II)の含有割合に対する構造単位(I)の含有割合の比が、1以上20以下である請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項10】
(1)請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のフォトレジスト組成物を用いて、基板上にレジスト膜を形成する工程、
(2)上記レジスト膜を露光する工程、及び
(3)上記露光されたレジスト膜を現像する工程
を有するレジストパターン形成方法。
【請求項11】
下記式(1)で表される構造単位(I)、及び下記式(2)で表される構造単位(II)を有する重合体。
【化3】

(式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、2価の連結基である。Rは、酸解離性基である。mは、0又は1である。
式(2)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。nは、2〜5の整数である。Rは、(n+1)価の連結基である。Rは、酸解離性基である。但し、複数のRは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)