説明

フォトレジスト組成物及びレジストパターン形成方法

【課題】MEEF、DOF及び解像性に優れるフォトレジスト組成物、並びにこのフォトレジスト組成物を用いたレジストパターンの形成方法の提供。
【解決手段】[A]側鎖にスルホラクトン環を有するノルボルナン環を有する(メタ)アクリレート単位(I)、単環の脂環式基を有する酸解離性基を含む構造単位(II)及びラクトン基を含む構造単位(III)を有する重合体、並びに[B]感放射線性酸発生体、を含有するフォトレジスト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトレジスト組成物及びレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路素子等を製造する微細加工の分野において、より高い集積度を得るためにKrFエキシマレーザー(波長248nm)やArFエキシマレーザー(波長193nm)等に代表される短波長放射線の照射(露光)を使用したリソグラフィ技術の開発が行われている。これらの露光光源に適応するレジスト材料としては、高感度、高解像性等が求められ、通常、酸解離性基を有する成分と放射線の照射により酸を発生する酸発生剤とを含有した化学増幅型のフォトレジスト組成物が用いられている(特開昭59−45439号公報参照)。また、さらなるデバイスの微細化が進んでいる近年にあっては、エキシマレーザーよりさらに短波長であるX線、電子線(EB)、極紫外線(EUV)等を利用する技術についても検討されている。
【0003】
しかし、従来のフォトレジスト組成物を用いて、より微細なレジストパターンを形成した場合、レジスト膜中における酸の拡散距離(以下、「拡散長」ともいう)はある程度短いことが適切であるとされるところ、この拡散長が不適切であることに起因してか、マスクエラー許容度を表す指標であるMEEF(Mask Error Enhancemnt Factor)、DOF(Depth Of Focus)、解像性等のリソグラフィー特性を十分に満足することができないのが現状である。
【0004】
このような状況に鑑み、より微細なレジストパターンを形成するためのフォトレジスト組成物には感度等の基本特性の向上のみならず、MEEF、DOF、解像性等の向上が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59−45439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、MEEF、DOF及び解像性に優れるフォトレジスト組成物並びにこのフォトレジスト組成物を用いたレジストパターンの形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、
[A]下記式(1)で表される構造単位(I)、単環の脂環式基を有する酸解離性基を含む構造単位(II)及びラクトン基を含む構造単位(III)を有する重合体(以下、「[A]重合体」ともいう)、並びに
[B]感放射線性酸発生体(以下、「[B]酸発生体」ともいう)、
を含有するフォトレジスト組成物。
【化1】

(式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、酸素原子、硫黄原子、炭素数1以上5以下の2価の鎖状炭化水素基又はこれらを組み合わせてなる基である。Rは、1価の有機基である。aは、0〜2の整数である。但し、aが2である場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。)
【0008】
本発明のフォトレジスト組成物は、[B]酸発生体を含有し、露光により[B]酸発生体から酸が発生する。当該フォトレジスト組成物は、[A]重合体が、構造単位(I)、構造単位(II)及び構造単位(III)を有することで、上記酸の拡散を抑制できることに加え、微細なパターンにおける高い解像性と、現像液との適度な親和性を両立することができる。その結果、当該フォトレジスト組成物は解像性、MEEF及びDOFに優れる。
【0009】
[A]重合体における構造単位(II)の含有率は、40モル%以上80モル%以下であることが好ましい。当該フォトレジスト組成物は、[A]重合体が単環の脂環式基を有する酸解離性基を含む構造単位(II)を上記特定範囲で有することで、感度を十分満足できる。その結果、当該フォトレジスト組成物は、解像性、MEEF及びDOFにより優れる。
【0010】
上記構造単位(III)が含むラクトン基は、ノルボルナンラクトン基であることが好ましい。当該フォトレジストから形成されるレジスト膜は、[A]重合体がノルボルナンラクトン基を含む構造単位(III)を有することで、基板等への密着性を向上させることができる。
【0011】
[B]酸発生体は、炭素数8以上30以下の脂環構造を有することが好ましい。[B]酸発生体が、脂環構造を含む嵩高い構造であることで、露光により発生する酸の拡散をより抑制することができる。[A]重合体と共にこのような[B]酸発生体を含有する当該フォトレジスト組成物は、解像性、MEEF及びDOFをさらに優れたものとすることができる。
【0012】
当該フォトレジスト組成物は、[C]フッ素原子を含有する撥水性重合体添加剤(以下、「[C]撥水性重合体添加剤」ともいう)をさらに含有することが好ましい。当該フォトレジスト組成物は、[C]撥水性重合体添加剤をさらに含有することで、形成されるレジスト膜表面が撥水性に優れるため、液浸露光に好適に用いることができる。
【0013】
本発明のレジストパターン形成方法は、
(1)本発明のフォトレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、
(2)上記レジスト膜に露光する工程、及び
(3)上記露光されたレジスト膜を現像する工程
を有する。
【0014】
当該レジストパターン形成方法によると、当該フォトレジスト組成物を用いることで解像性を十分満足でき、MEEF及びDOFに優れるレジストパターンを形成できる。従って、当該フォトレジスト組成物を用いる当該パターン形成方法により、微細パターンを高精度にかつ安定して形成することができ、今後更に微細化が進行すると予想される半導体デバイス製造用に好適に用いることができる。
【0015】
なお、ここで「放射線」とは、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線、EUV等を含む概念である。また、「有機基」とは、少なくとも1つの炭素原子を含む基をいう。
【発明の効果】
【0016】
本発明のフォトレジスト組成物及びこれを用いる当該パターン形成方法によると、解像性、MEEF及びDOFに優れるパターンを形成することができる。従って、当該フォトレジスト組成物を用いるパターン形成方法により、微細パターンを高精度にかつ安定して形成することができ、今後更に微細化が進行すると予想される半導体デバイス製造用に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<フォトレジスト組成物>
本発明のフォトレジスト組成物は、[A]重合体、[B]酸発生体を含有する。また、当該フォトレジスト組成物は、[C]撥水性重合体添加剤、[D]酸拡散制御体、[E]溶媒を含有することが好ましい。さらに、当該フォトレジスト組成物は本発明の効果を損なわない限り、その他の任意成分を含有してもよい。以下、各成分について詳述する。
【0018】
<[A]重合体>
[A]重合体は、上記式(1)で表される構造単位(I)、単環の脂環式基を有する酸解離性基を含む構造単位(II)及びラクトン基を含む構造単位(III)を有する。[A]重合体が上記3つの構造単位を有することで、[B]酸発生体から発生する酸との高い相互作用性を有する。その結果、当該フォトレジスト組成物は、酸の拡散を抑制でき、解像性、MEEF及びDOFに優れる。また、[A]重合体は、本発明の効果を損なわない限り、構造単位(I)、構造単位(II)及び構造単位(III)以外のその他の構造単位を有していてもよい。なお、[A]重合体は、各構造単位を1種単独で有していてもよいし、2種以上有していてもよい。以下、各構造単位を詳述する。
【0019】
[構造単位(I)]
構造単位(I)は、上記式(1)で表される。上記式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、酸素原子、硫黄原子、炭素数1以上5以下の2価の鎖状炭化水素基又はこれらを組合せてなる基である。Rは、1価の有機基である。aは、0〜2の整数である。但し、aが2である場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。
【0020】
上記Rで表される炭素数1以上5以下の2価の鎖状炭化水素基としては、例えばメチレン基、エタンジイル基、プロパンジイル基、ブタンジイル基等が挙げられる。これらのうちメチレン基、エタンジイル基が好ましく、メチレン基がより好ましい。なお、上記炭素数1以上5以下等の原子数の記載は、以下炭素数1〜5と記載することもある。
【0021】
上記Rで表されるこれらを組合せてなる基としては、例えば−CH−O−CH−、−CH−S−CH−、−CH−CH−O−CH−CH−、−CH−CH−S−CH−CH−等が挙げられる。これらのうち、−CH−O−CH−及び−CH−S−CH−が好ましい。
【0022】
上記Rとしては、炭素数1〜5の2価の鎖状炭化水素基が好ましく、メチレン基及びエタンジイル基がより好ましく、メチレン基がさらに好ましい。
【0023】
上記Rで表される1価の有機基としては、例えば炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状の炭化水素基、炭素数4〜20の脂環式基等が挙げられる。
【0024】
上記炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基等が挙げられる。これらのうち、メチル基、エチル基及びプロピル基が好ましく、メチル基及びエチル基がより好ましい。
【0025】
上記炭素数4〜20の脂環式基としては、例えばシクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。
【0026】
上記Rとしては、炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状の炭化水素基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基がより好ましく、メチル基及びエチル基がさらに好ましい。
【0027】
上記aとしては、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
【0028】
構造単位(I)の具体例としては、例えば下記式(1−1)〜(1−12)で表される構造単位等が挙げられる。
【0029】
【化2】

【0030】
これらのうち、上記式(1−1)〜(1−3)で表される構造単位が好ましく、式(1−2)で表される構造単位がより好ましい。
【0031】
上記構造単位(I)を与える単量体としては、例えば下記式で表される化合物等が挙げられる。なお、下記式中、Rは、上記式(1)と同義である。
【0032】
【化3】

【0033】
[A]重合体における構造単位(I)の含有率としては、1モル%以上40モル%以下が好ましく、3モル%以上30モル%以下がより好ましく、5モル%以上25モル%以下がさらに好ましい。構造単位(I)の含有率を上記範囲とすることで、当該フォトレジスト組成物は酸の拡散をより抑制することができ、MEEF等に優れる。
【0034】
[構造単位(II)]
構造単位(II)は、単環の脂環式基を有する酸解離性基を含む構造単位であり、下記式(2)で表される構造単位であることが好ましい。
【0035】
【化4】

【0036】
上記式(2)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。R〜Rは、それぞれ独立して炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数4〜20の単環の脂環式基である。但し、RとRとが互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に、炭素数4〜20の2価の単環の脂環式基を形成していてもよい。また、R〜Rの少なくとも1つが単環の脂環式基であるか、又はRとRとが互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に、炭素数4〜20の2価の単環の脂環式基を形成している。
【0037】
上記R〜Rで表される炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、1−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基、n−ヘプチル基、i−ヘプチル基、n−オクチル基、i−オクチル基、n−ノニル基、i−ノニル基、n−デシル基、i−デシル基等が挙げられる。これらのうち、メチル基、エチル基及びプロピル基が好ましい。
【0038】
上記R〜Rで表される炭素数4〜20の単環の脂環式基としては、例えばシクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロデシル基等が挙げられる。
【0039】
上記RとRとが互いに結合して、それらが結合している炭素原子と共に形成していてもよい炭素数4〜20の2価の単環の脂環式基としては、例えばシクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基、シクロオクタンジイル基等のシクロアルカンから水素原子2つを除いた形の基等が挙げられる。
【0040】
構造単位(II)としては、例えば下記式(2−1)〜(2−10)で表される構造単位等が挙げられる。
【0041】
【化5】

【0042】
上記式中、Rは上記式(2)と同義である。
【0043】
これらのうち、上記RとRとが互いに結合して、これらが結合している炭素原子と共に単環の脂環式基を形成している構造単位が好ましく、上記式(2−3)〜(2−10)で表される構造単位がより好ましく、式(2−3)〜(2−8)で表される構造単位がさらに好ましく、式(2−3)〜(2−5)で表される構造単位が特に好ましい。
【0044】
構造単位(II)を与える単量体としては、例えば1−アルキル−シクロアルキルエステル等の単環の脂環式基を有する酸解離性基を含む単量体等が挙げられる。
【0045】
[A]重合体における構造単位(II)の含有率としては、20モル%以上90モル%以下が好ましく、30モル%以上80モル%以下がより好ましく、40モル%以上70モル%以下がさらに好ましい。構造単位(II)の含有率を上記範囲とすることで、得られるレジストパターンのリソグラフィー性能がより向上する
【0046】
[構造単位(III)]
構造単位(III)は、ラクトン基を含む構造単位である。[A]重合体が構造単位(III)を含むことで、当該フォトレジスト組成物から得られるレジスト膜の密着性を向上させることができる。
【0047】
構造単位(III)としては、例えば下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0048】
【化6】

【0049】
【化7】

【0050】
上記式中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0051】
構造単位(III)としては、これらのうちノルボルナンラクトン基を含む構造単位が好ましい。
【0052】
構造単位(III)を与える単量体としては、例えば下記式で表される化合物等が挙げられる。
【0053】
【化8】

【0054】
【化9】

【0055】
[A]重合体における構造単位(III)の含有率は、5モル%以上60モル%以下が好ましく、10モル%以上40モル%以下がより好ましい。構造単位(III)の含有率を上記範囲とすることで、当該フォトレジスト組成物から得られるレジスト膜は、基板等への密着性を向上させることができる。
【0056】
[A]重合体は、上記構造単位(I)〜(III)以外に、他の構造単位として、例えば、親水性官能基を有する構造単位(IV)等を含んでいてもよい。[A]重合体が親水性官能基を有する構造単位(IV)を含むことで、レジストパターンのリソグラフィー性能をより向上できる。
【0057】
構造単位(IV)としては、例えば下記式で表される構造単位等が挙げられる。
【0058】
【化10】

【0059】
上記式中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0060】
[A]重合体における構造単位(IV)の含有率としては、0モル%〜30モル%が好ましく、5モル%〜20モル%がより好ましい。
【0061】
また、他の構造単位として、構造単位(II)以外の酸解離性基を含む構造単位(ii)を含んでいても良い。構造単位(ii)を含むことで、MEEF及びエッチング耐性を向上させる事ができる。構造単位(ii)としては、多環構造を有する酸解離性基を含む構造単位が好ましく、下記式で表される構造単位がより好ましい。
【0062】
【化11】

【0063】
上記式中、R’は水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0064】
[A]重合体における構造単位(ii)の含有率としては、15モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましい。
【0065】
<[A]重合体の合成方法>
[A]重合体は、例えば所定の各構造単位に対応する単量体を、ラジカル重合開始剤を使用し、適当な溶媒中で重合することにより製造できる。例えば、単量体及びラジカル開始剤を含有する溶液を、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法、単量体を含有する溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法、各々の単量体を含有する複数種の溶液と、ラジカル開始剤を含有する溶液とを各別に、反応溶媒又は単量体を含有する溶液に滴下して重合反応させる方法等の方法で合成することが好ましい。
【0066】
これらの方法における反応温度は開始剤種によって適宜決定すればよい。通常30℃〜180℃であり、40℃〜160℃が好ましく、50℃〜140℃がさらに好ましい。滴下時間は、反応温度、開始剤の種類、反応させる単量体等の条件によって異なるが、通常、30分〜8時間であり、45分〜6時間が好ましく、1時間〜5時間がより好ましい。また、滴下時間を含む全反応時間も、滴下時間と同様に条件により異なるが、通常、30分〜10時間であり、45分〜9時間が好ましく、1時間〜8時間がより好ましい。
【0067】
上記重合に使用されるラジカル開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)等が挙げられる。これらの開始剤は単独で又は2種以上を混合して使用できる。
【0068】
重合溶媒としては、重合を阻害する溶媒(重合禁止効果を有するニトロベンゼン、連鎖移動効果を有するメルカプト化合物等)以外の溶媒であって、その単量体を溶解可能な溶媒であれば限定されない。重合溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル・ラクトン系溶媒、ニトリル系溶媒及びその混合溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は、単独又は2種以上を併用できる。
【0069】
重合反応により得られた重合体は、再沈殿法により回収することが好ましい。すなわち、重合反応終了後、重合液を再沈溶媒に投入することにより、目的の重合体を粉体として回収する。再沈溶媒としては、アルコール類やアルカン類等を単独で又は2種以上を混合して使用することができる。再沈殿法の他に、分液操作やカラム操作、限外ろ過操作等により、単量体、オリゴマー等の低分子成分を除去して、重合体を回収することもできる。
【0070】
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、1,000以上100,000以下が好ましく、2,000以上50,000以下がより好ましく、3,000以上20,000以下がさらに好ましい。なお、[A]重合体のMwを上記特定範囲とすることで、当該フォトレジスト組成物のMEEF、CDU等を指標としたリソグラフィー性能を向上させることができる。
【0071】
また、[A]重合体のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対するMwの比(Mw/Mn)は、通常1以上5以下であり、1以上3以下が好ましく、1以上2.5以下がより好ましい。Mw/Mnをこのような範囲とすることで、フォトレジスト膜が解像性能に優れたものとなる。
【0072】
なお、本明細書のMw及びMnは、GPCカラム(東ソー製、G2000HXL 2本、G3000HXL 1本、G4000HXL 1本)を用い、流量1.0ミリリットル/分、溶出溶媒テトラヒドロフラン、カラム温度40℃の分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値をいう。
【0073】
<[B]酸発生体>
[B]酸発生体は、レジストパターン形成の一工程である露光工程において、マスクを通過した放射線照射によって酸を発生する化合物である。当該フォトレジスト組成物における[B]酸発生体の含有形態としては、後述するような化合物の態様(以下、この態様を「[B]酸発生剤」ともいう)でも、重合体の一部として組み込まれた態様でも、これらの両方の態様でもよい。
【0074】
[B]酸発生剤としては、例えばオニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾケトン化合物等が挙げられる。これらのうち、オニウム塩化合物が好ましい。
【0075】
オニウム塩化合物としては、例えばスルホニウム塩(テトラヒドロチオフェニウム塩を含む)、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。これらのうち、スルホニウム塩(テトラヒドロチオフェニウム塩を含む)及びヨードニウム塩が好ましい。
【0076】
スルホニウム塩としては、例えばトリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム4−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロブタンスルホナート、トリフェニルスルホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニロキシ)−ヘキサン−1−スルホネート等が挙げられる。これらのうち、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム4−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロブタンスルホナート及びトリフェニルスルホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニロキシ)−ヘキサン−1−スルホネートが好ましく、トリフェニルスルホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニロキシ)−ヘキサン−1−スルホネートがより好ましい。
【0077】
テトラヒドロチオフェニウム塩としては、例えば1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(6−n−ブトキシナフタレン−2−イル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート等が挙げられる。これらのテトラヒドロチオフェニウム塩のうち、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、1−(4−n−ブトキシナフタレン−1−イル)テトラヒドロチオフェニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート及び1−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)テトラヒドロチオフェニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートが好ましい。
【0078】
ヨードニウム塩としては、例えばジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ジフェニルヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムパーフルオロ−n−オクタンスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート等が挙げられる。これらのヨードニウム塩のうち、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムノナフルオロ−n−ブタンスルホネートが好ましい。
【0079】
[B]酸発生体としては、炭素数8以上30以下の脂環構造を有する化合物であることが好ましい。[B]酸発生体が脂環構造を有する嵩高い構造であることで、露光により発生する酸の拡散をより抑制することができる。[A]重合体と共にこのような[B]酸発生体を含有する当該フォトレジスト組成物は、解像性、MEEF及びCDUをさらに優れたものとすることが出来る。
【0080】
炭素数8以上の脂環構造を有する[B]酸発生体としては、下記式(3)で表される化合物が好ましい。
【0081】
【化12】

【0082】
上記式(3)中、Xはオニウムカチオンである。R10は、炭素数8〜30の脂環構造を含む1価の有機基である。R11及びR12は、水素原子、フッ素原子又は炭素数1〜20の鎖状炭化水素基である。但し、上記鎖状炭化水素基が有する水素原子の一部又は全部はフッ素原子で置換されていてもよい。また、R11及びR12の少なくとも一方は、フッ素原子又はパーフルオロアルキル基である。
【0083】
上記R10で表される炭素数8〜30の脂環構造を含む1価の有機基としては、例えば炭素数8〜30の脂環式基;−CO−O−、−O−CO−O−、−O−、−SO−、−CO−NH−、−SONH−、−O−CO−及び炭素数1〜20の鎖状炭化水素基からなる群より選択される少なくとも1種の基と炭素数8〜30の脂環式基とを組み合わせてなる基等が挙げられる。
【0084】
上記炭素数8〜30の脂環式基としては、例えばシクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基、シクロペンタデシル基、シクロノナデシル基、アダマンチル基、ジアマンチル基等が挙げられる。
【0085】
上記R11及びR12で表される炭素数1〜20の鎖状炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基等が挙げられる。これらのうち、メチル基、エチル基及びプロピル基が好ましい。
【0086】
上記R11及びR12としては、フッ素原子、トリフルオロメチル基及びパーフルオロエチル基が好ましい。
【0087】
上記式(3)で表される[B]酸発生体としては、例えば上記例示したスルホニウム塩のうちの、トリフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−シクロヘキシルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、4−メタンスルホニルフェニルジフェニルスルホニウム2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホネート、トリフェニルスルホニウム4−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロブタンスルホナート、トリフェニルスルホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニロキシ)−ヘキサン−1−スルホネート等が挙げられる。これらのうち、トリフェニルスルホニウム4−(1−アダマンタンカルボニルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロブタンスルホナート及びトリフェニルスルホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニロキシ)−ヘキサン−1−スルホネートが好ましく、トリフェニルスルホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニロキシ)−ヘキサン−1−スルホネートがより好ましい。
【0088】
これらの[B]酸発生剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。[B]酸発生体が「剤」である場合の使用量としては、当該フォトレジスト組成物により形成されるレジスト膜の感度及び現像性を確保する観点から、[A]重合体100質量部に対して、0.01質量部以上35質量部以下が好ましく、0.1質量部以上30質量部以下がより好ましい。
【0089】
<[C]撥水性重合体添加剤>
当該フォトレジスト組成物は、[C]フッ素原子を含有する撥水性重合体添加剤を含有することが好ましい。当該フォトレジスト組成物が、[C]撥水性重合体添加剤を含有することで、レジスト膜を形成した際に、膜中のフッ素原子含有重合体の撥水性的特徴により、その分布がレジスト膜表面近傍に偏在化する傾向があるので、液浸露光時における酸発生剤や酸拡散制御剤等が液浸媒体に溶出することを抑制することができる。また、[C]撥水性重合体添加剤の撥水性的特徴により、レジスト膜と液浸媒体との前進接触角が所望の範囲に制御でき、バブル欠陥の発生を抑制できる。さらに、レジスト膜と液浸媒体との後退接触角が高くなり、水滴が残らずに高速でのスキャン露光が可能となる。このように当該フォトレジスト組成物が[C]撥水性重合体添加剤を含有することにより、液浸露光法に好適なレジスト膜を形成することができる。
【0090】
上記[C]撥水性重合体添加剤は、[A]重合体よりフッ素原子含有率(質量%)が高いことを必須とする。[C]撥水性重合体添加剤は、[A]重合体よりフッ素原子含有率が高いことで、上述の偏在化の度合いがより高くなり、得られるレジスト膜の撥水性及び溶出抑制性等の特性が向上する。
【0091】
本発明における[C]撥水性重合体添加剤は、フッ素原子を構造中に含む単量体を1種類以上重合することにより形成される。
【0092】
フッ素原子を構造中に含む重合体を与える単量体としては、主鎖にフッ素原子を含む単量体、側鎖にフッ素原子を含む単量体、主鎖と側鎖とにフッ素原子を含む単量体が挙げられる。
【0093】
主鎖にフッ素原子を含む重合体を与える単量体としては、例えばα−フルオロアクリレート化合物、α−トリフルオロメチルアクリレート化合物、β−フルオロアクリレート化合物、β−トリフルオロメチルアクリレート化合物、α,β−フルオロアクリレート化合物、α,β−トリフルオロメチルアクリレート化合物、1種類以上のビニル部位の水素がフッ素又はトリフルオロメチル基等で置換された化合物等が挙げられる。
【0094】
側鎖にフッ素原子を含む重合体を与える単量体としては、例えばノルボルネンのような脂環式オレフィン化合物の側鎖がフッ素又はフルオロアルキル基やその誘導体、アクリル酸又はメタクリル酸のフルオロアルキル基やその誘導体のエステル化合物、1種類以上のオレフィンの側鎖(二重結合を含まない部位)がフッ素原子又はフルオロアルキル基やその誘導体等が挙げられる。
【0095】
主鎖と側鎖とにフッ素原子を含む重合体を与える単量体としては、例えばα−フルオロアクリル酸、β−フルオロアクリル酸、α,β−フルオロアクリル酸、α−トリフルオロメチルアクリル酸、β−トリフルオロメチルアクリル酸、α,β−トリフルオロメチルアクリル酸等のフルオロアルキル基やその誘導体のエステル化合物、1種類以上のビニル部位の水素がフッ素原子又はトリフルオロメチル基等で置換された化合物の側鎖をフッ素原子又はフルオロアルキル基やその誘導体で置換したもの、1種類以上の脂環式オレフィン化合物の二重結合に結合している水素をフッ素原子又はトリフルオロメチル基等で置換し、かつ側鎖がフルオロアルキル基やその誘導体等が挙げられる。なお、この脂環式オレフィン化合物とは、環の一部が二重結合である化合物を示す。
【0096】
[C]撥水性重合体添加剤が有する構造単位としては、下記式で表される構造単位(以下、「構造単位(V)」ともいう)が挙げられる。
【0097】
【化13】

【0098】
上記式中、R13は水素、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Qは連結基である。R14は少なくとも一つ以上のフッ素原子を含有する炭素数1〜6の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数4〜20の1価の脂環式炭化水素基若しくはその誘導体である。
【0099】
上記Qで表される連結基としては、例えば単結合、酸素原子、硫黄原子、カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基、アミド基、スルホニルアミド基、ウレタン基等が挙げられる。
【0100】
構造単位(V)を与える単量体としては、例えば2−[1−(エトキシカルボニル)−1,1−ジフルオロブチル](メタ)アクリル酸エステル、トリフルオロメチル(メタ)アクリル酸エステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロエチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−プロピル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロn−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロi−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロt−ブチル(メタ)アクリル酸エステル、2−(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチル)(メタ)アクリル酸エステル、パーフルオロシクロヘキシルメチル(メタ)アクリル酸エステル、1−(2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル)(メタ)アクリル酸エステル、1−(5−トリフルオロメチル−3,3,4,4,5,6,6,6−オクタフルオロヘキシル)(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0101】
[C]撥水性重合体添加剤は、構造単位(V)を1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。[C]撥水性重合体添加剤における構造単位(V)の含有割合は、通常5モル%以上、好ましくは10モル%以上、より好ましくは15モル%以上である。構造単位(V)の含有率を上記特定範囲とすることで、より好ましい後退接触角を達成でき、レジスト膜からの酸発生剤等の溶出を効率的に抑制することができる。
【0102】
[C]撥水性重合体添加剤は、構造単位(V)以外にも、例えば現像液に対する溶解速度を制御するために酸解離性基を有する構造単位、ラクトン基及び環状カーボネート基からなる群より選択される少なくとも1種の基を含む構造単位、水酸基、カルボキシル等の親水性官能基を含む構造単位等の他の構造単位を1種類以上含有することができる。
【0103】
上記酸解離性基を有する他の構造単位としては、上記構造単位(II)で例示した構造単位と同様の構造単位が適用できる。上記ラクトン基及び環状カーボネート基からなる群より選択される少なくとも1種の基を含む構造単位としては、上記構造単位(III)で例示した構造単位と同様の構造単位が適用できる。上記親水性官能基を含む構造単位としては、上記構造単位(IV)で例示した構造単位と同様の構造単位が適用できる。
【0104】
他の構造単位の含有割合としては、[C]撥水性重合体添加剤における全構造単位を100モル%とした場合に、通常80モル%以下、好ましくは75モル%以下、より好ましくは70モル%以下である。
【0105】
[C]撥水性重合体添加剤のMwとしては、1,000〜100,000が好ましく、2,000〜50,000がより好ましく、3,000〜30,000が特に好ましい。フッ素原子含有重合体のMwを上記特定範囲とすることで、より好ましい後退接触角を達成でき、レジスト膜からの酸発生剤等の溶出を効率的に抑制することができる。フッ素原子含有重合体のMwとMnとの比(Mw/Mn)としては、通常1〜3であり、好ましくは1〜2.5である。
【0106】
上記感放射線性組成物における[C]撥水性重合体添加剤の含有割合としては、[A]重合体100質量部に対して、0〜50質量部が好ましく、0〜20質量部がより好ましく、0.5〜10質量部が特に好ましく、1〜8質量部が最も好ましい。上記フォトレジスト組成物における上記[C]撥水性重合体添加剤の含有率を上記範囲とすることで、得られるレジスト膜表面の撥水性及び溶出抑制性をより高めることができる。
【0107】
<[C]撥水性重合体添加剤の合成方法>
上記[C]撥水性重合体添加剤は、例えば所定の各構造単位に対応する単量体を、ラジカル重合開始剤を使用し、適当な溶媒中で重合することにより合成できる。
【0108】
上記重合に使用されるラジカル重合開始剤及び溶媒としては、例えば[A]重合体の合成方法で挙げたものと同様の溶媒が挙げられる。
【0109】
上記重合における反応温度としては、通常40℃〜150℃、50℃〜120℃が好ましい。反応時間としては、通常1時間〜48時間、1時間〜24時間が好ましい。
【0110】
<[D]酸拡散制御体>
[D]酸拡散制御体は、露光により[B]酸発生体から生じる酸のレジスト膜中における拡散現象を制御し、未露光部における好ましくない化学反応を抑制する効果を奏する成分である。フォトレジスト組成物が[D]酸拡散制御体を含有することで、得られるフォトレジスト組成物の貯蔵安定性がさらに向上し、またレジストとしての解像性がさらに向上する。また、露光から現像処理までの引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に極めて優れた組成物が得られる。なお、[D]酸拡散制御体の本発明におけるフォトレジスト組成物における含有形態としては、遊離の化合物の形態(以下、適宜「[D]酸拡散制御剤」ともいうこともある)でも、重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。
【0111】
[D]酸拡散制御剤としては、例えばアミン化合物、アミド基含有化合物、ウレア化合物等の含窒素複素環化合物等が挙げられる。
【0112】
アミン化合物としては、例えばモノ(シクロ)アルキルアミン類;ジ(シクロ)アルキルアミン類;トリ(シクロ)アルキルアミン類;置換アルキルアニリン又はその誘導体;エチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2−(3−アミノフェニル)−2−(4−アミノフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(4−アミノフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(1−(4−アミノフェニル)−1−メチルエチル)ベンゼン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、ビス(2−ジエチルアミノエチル)エーテル、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリジノン、2−キノキサリノール、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N’’N’’−ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0113】
アミド基含有化合物としては、例えばN−t−ブトキシカルボニル基含有アミノ化合物、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−アセチル−1−アダマンチルアミン、イソシアヌル酸トリス(2−ヒドロキシエチル)等が挙げられる。
【0114】
ウレア化合物としては、例えば尿素、メチルウレア、1,1−ジメチルウレア、1,3−ジメチルウレア、1,1,3,3−テトラメチルウレア、1,3−ジフェニルウレア、トリ−n−ブチルチオウレア等が挙げられる。
【0115】
含窒素複素環化合物としては、例えばイミダゾール類;ピリジン類;ピペラジン類;ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、キノザリン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、4−ヒドロキシ−N−アミロキシカルボニルピペリジン、ピペリジンエタノール、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、モルホリン、4−メチルモルホリン、1−(4−モルホリニル)エタノール、4−アセチルモルホリン、3−(N−モルホリノ)−1,2−プロパンジオール、1,4−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N−t−アミロキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン等が挙げられる。これらのうち、N−t−アミロキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジンが好ましい。
【0116】
また、[D]酸拡散制御剤として、露光により感光し弱酸を発生する光崩壊性塩基を用いることもできる。光崩壊性塩基は、露光部においては酸を発生して[A]重合体の当該現像液に対する不溶性を高め、結果として現像後の露光部表面のラフネスを抑制する。一方、未露光部ではアニオンによる高い酸捕捉機能が発揮されクエンチャーとして機能し、露光部から拡散する酸を捕捉する。すなわち、未露光部のみにおいてクエンチャーとして機能するため、脱保護反応のコントラストが向上し、結果として解像性をより向上させることができる。光崩壊性塩基の一例として、露光により分解して酸拡散制御性を失うオニウム塩化合物がある。オニウム塩化合物としては、例えば下記式(D1)で示されるスルホニウム塩化合物、下記式(D2)で表されるヨードニウム塩化合物等が挙げられる。
【0117】
【化14】

【0118】
上記式(D1)及び式(D2)中、R15〜R19はそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子又は−SO−Rである。Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基又はアリール基である。Zは、OH、R20−COO、R−SO−N―R20、R20−SO又は下記式(D3)で示されるアニオンである。R20は炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数7〜30のアルカリール基である。上記アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアルカリール基の水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。Rは、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、置換基を有してもいてもよい炭素数3〜20のシクロアルキル基である。上記アルキル基及びシクロアルキル基の水素原子の一部又は全部はフッ素原子で置換されていてもよい。但し、ZがR20−SOの場合、SOが結合する炭素原子にフッ素原子が結合する場合はない。
【0119】
【化15】

【0120】
上記式(D3)中、R21は、水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基である。uは0〜2の整数である。
【0121】
当該パターン形成方法に用いられるフォトレジスト組成物における[D]酸拡散制御剤の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して、20質量部未満が好ましく、10質量部未満がより好ましい。[D]酸拡散制御剤の含有量を上記特定範囲とすることで、レジストとしての感度が維持され易い。これらの[D]酸拡散抑制剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0122】
<[E]溶媒>
当該フォトレジスト組成物は通常、溶媒を含有する。溶媒としては、例えば例えばアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒及びその混合溶媒等が挙げられる。
【0123】
アルコール系溶媒としては、例えば
メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、3−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フルフリルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール系溶媒;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール系溶媒;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール部分エーテル系溶媒等が挙げられる。
【0124】
エーテル系溶媒としては、例えばジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル等が挙げられる。
【0125】
ケトン系溶媒としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−i−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン等のケトン系溶媒が挙げられる。これらのうち、シクロヘキサノンが好ましい。
【0126】
アミド系溶媒としては、例えばN,N’−ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0127】
エステル系溶媒としては、例えばジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。これらのうち、γ−ブチロラクトン及び酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテルが好ましい。
【0128】
炭化水素系溶媒としては、例えば
n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、i−ヘキサン、n−ヘプタン、i−ヘプタン、2,2,4−トリメチルペンタン、n−オクタン、i−オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒;
ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、メチルエチルベンゼン、n−プロピルベンゼン、i−プロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、i−ブチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジ−i−プロピルベンセン、n−アミルナフタレン等の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
【0129】
これらのうち酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、γ−ブチロラクトン及びシクロヘキサノンが好ましい。これらの溶媒は単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0130】
<その他の任意成分>
当該フォトレジスト組成物は、その他の任意成分として、界面活性剤、脂環式骨格含有化合物、増感剤等を含有できる。なお、上記フォトレジスト組成物は、上記その他の任意成分をそれぞれ1種のみ含有してもよいし、2種以上を含有してもよい。
【0131】
[界面活性剤]
界面活性剤は、当該パターン形成方法に用いられるフォトレジスト組成物の塗布性、ストリエーション、現像性等を改良する効果を奏する。
【0132】
[脂環式骨格含有化合物]
脂環式骨格含有化合物は、当該パターン形成方法に用いられるフォトレジスト組成物のドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等を改善する効果を奏する。
【0133】
[増感剤]
増感剤は、[B]酸発生体からの酸の生成量を増加する作用を示すものであり、当該パターン形成方法に用いられるフォトレジスト組成物の「みかけの感度」を向上させる効果を奏する。
【0134】
<フォトレジスト組成物の調製方法>
当該フォトレジスト組成物は、例えば[E]溶媒中で[A]重合体、[B]酸発生体、[C]撥水性重合体添加剤、[D]酸拡散制御剤及びその他の任意成分を所定の割合で混合することにより調製できる。また、当該フォトレジスト組成物は、適当な[E]溶媒に溶解又は分散させた状態に調製され使用され得る。
【0135】
<レジストパターンの形成方法>
本発明のレジストパターンの形成方法は、
(1)当該フォトレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程(以下、「工程(1)」ともいう)、
(2)上記レジスト膜を露光する工程(以下、「工程(2)」ともいう)、及び
(3)上記露光されたレジスト膜を現像する工程(以下、「工程(3)」ともいう)
を有する。以下、各工程を詳述する。
【0136】
当該レジストパターン形成方法によると、当該フォトレジスト組成物を用いることで解像性を十分満足し、MEEF及びDOFに優れるレジストパターンを形成できる。従って、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUV等の放射線であっても、当該フォトレジスト組成物から微細パターンを高精度にかつ安定して形成することができ、今後更に微細化が進行すると予想される半導体デバイス製造用に好適に用いることができる。
【0137】
[工程(1)]
本工程では、当該フォトレジスト組成物又はこれを溶媒に溶解させて得られた当該フォトレジスト組成物の溶液を、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の塗布手段によって、シリコンウエハー、二酸化シリコン、反射防止膜で被覆されたウエハー等の基板上に所定の膜厚となるように塗布し、場合によっては通常70℃〜160℃程度の温度でプレベーク(PB)することにより当該フォトレジスト組成物中の溶媒を揮発させレジスト膜を形成する。
【0138】
[工程(2)]
本工程では、工程(1)で形成されたレジスト膜に(場合によっては、水等の液浸媒体を介して)、放射線を照射し露光させる。なお、この際所定のパターンを有するマスクを通して放射線を照射する。放射線としては、目的とするパターンの線幅に応じて、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線、荷電粒子線、EUV等から適宜選択して照射する。これらのうち、ArFエキシマレーザー(波長193nm)、KrFエキシマレーザー(波長248nm)に代表される遠紫外線が好ましく、EUV(極紫外線、波長13.5nm)等のより微細なパターンを形成可能な光源であっても好適に使用できる。次いで、ポストエクスポージャーベーク(PEB)を行うことが好ましい。このPEBにより、[A]重合体の酸解離性基の脱離を円滑に進行させることが可能となる。PEBの加熱条件は、フォトレジスト組成物の配合組成によって適宜選定することができるが、通常50℃〜180℃程度である。
【0139】
[工程(3)]
本工程は、露光されたレジスト膜を、現像液で現像することによりレジストパターンを形成する。現像後は、水、有機溶媒等で洗浄し、乾燥することが一般的である。現像液としては、アルカリ水溶液を用いる場合と、有機溶媒を用いる場合とがある。一般的に、アルカリ水溶液を用いる場合は、露光部が現像液に溶解し、得られるレジストパターンはポジ型となる。また、有機溶媒を用いる場合は、低露光部・未露光部が現像液に溶解し、得られるレジストパターンはネガ型となる。
アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液等が挙げられる。。これらの中で、TMAH水溶液が好ましい。
【0140】
また、上記有機溶媒としては、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系有機溶媒、アミド系溶媒、エステル系有機溶媒及び炭化水素系溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒としては、例えば、当該フォトレジスト組成物に含有される[E]溶媒として例示したものと同様の溶媒等が挙げられる。
【0141】
これらのうち、エステル系溶媒、ケトン系溶媒及びエーテル系溶媒が好ましく、エステル系溶媒及びエーテル系溶媒がより好ましく、エステル系溶媒がさらに好ましい。具体的には、アニソール、酢酸n−ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸i−ペンチル、メチルエチルケトン、メチル−n−ブチルケトン及びメチル−n−ペンチルケトンが好ましく、アニソール、酢酸n−ブチル、及びメチル−n−ペンチルケトンがより好ましく、アニソール、及び酢酸n−ブチルがさらに好ましく、酢酸n−ブチルが特に好ましい。これらの有機溶媒は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0142】
なお、液浸露光を行う場合は、工程(2)の前に、液浸液とレジスト膜との直接の接触を保護するために、液浸液不溶性の液浸用保護膜をレジスト膜上に設けてもよい。液浸用保護膜としては、工程(3)の前に溶媒により剥離する溶媒剥離型保護膜(例えば、特開2006−227632号公報等参照)、工程(3)の現像と同時に剥離する現像液剥離型保護膜(例えば、WO2005−069076号公報、WO2006−035790号公報等参照)のいずれを用いてもよい。
【実施例】
【0143】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、13C−NMR分析は、JNM−EX270(日本電子製)を用いて測定した。
【0144】
[A]重合体、[A]重合体に相当する比較例用の重合体及び後述する[C]撥水性重合体添加剤の合成に使用した単量体の構造を下記に示す。
【0145】
【化16】

【0146】
<[A]重合体の合成>
[合成例1]
構造単位(I)を与える上記化合物(M−4)26.22g(20モル%)、構造単位(II)を与える化合物(M−1)51.23g(60モル%)及び構造単位(III)を与える化合物(M−3)22.56g(20モル%)を、2−ブタノン200gに溶解し、さらにAIBN 4.17gを投入した単量体溶液を準備した。100gの2−ブタノンを投入した1,000mLの三口フラスコを30分窒素パージし、窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液は水冷することにより30℃以下に冷却し、2,000gのメタノールへ投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別された白色粉末を400gのメタノールに分散させてスラリー状にして洗浄した後にろ別する操作を2回行い、その後50℃にて17時間真空乾燥し、白色粉末の共重合体(A−1)を得た。(A−1)のMwは、7,020、Mw/Mn=1.53であり、13C−NMR分析の結果、化合物(M−4)、化合物(M−1)及び化合物(M−3)に由来する各構造単位の含有率は、19.8:58.9:21.3(モル%)であった。
【0147】
[合成例2〜9]
表1に記載の種類及び量の単量体を用いた以外は合成例1と同様に操作して、重合体(A−2)〜(A−4)及び(a−1)〜(a−5)を得た。また、得られた各重合体の各構造単位の含有率、Mw、Mw/Mn比、収率(%)を表1に合わせて示す。
【0148】
【表1】

【0149】
<[C]撥水性重合体添加剤の合成>
[合成例10]
上記化合物(M−6)37.41g(40モル%)及び化合物(M−7)62.59g(60モル%)を2−ブタノン100gに溶解し、さらにAIBN4.79g(7モル%)を投入した単量体溶液を準備した。100gの2−ブタノンを投入した1,000mLの三口フラスコを30分窒素パージし、窒素パージの後、反応釜を攪拌しながら80℃に加熱し、上記単量体溶液を滴下漏斗を用いて3時間かけて滴下した。滴下開始を重合開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。その重合溶液をエバポレーターにて重合溶液の重量が150gになるまで減圧濃縮した。その後、760gのメタノール及び40gの水の混合液中に濃縮液を投入し、スライム状の白色固体を析出させた。デカンテーションにて液体部を取り除き、回収した固体を50℃にて17時間真空乾燥し、白色粉末の共重合体(C−1)を得た(47g、収率47%)。(C−1)のMwは3,700、Mw/Mnは1.40であり、13C−NMR分析の結果、化合物(M−6)及び化合物(M−7)各構造単位の含有率は、42.5:57.5(モル%)であった。
【0150】
<フォトレジスト組成物の調製>
各実施例及び比較例の調製に用いた[B]酸発生剤、[D]酸拡散制御剤、[E]溶媒、添加剤は以下の通りである。
【0151】
([B]酸発生剤)
B−1:トリフェニルスルホニウム1,1,2,2−テトラフルオロ−6−(1−アダマンタンカルボニロキシ)−ヘキサン−1−スルホネート
【0152】
【化17】

【0153】
([D]酸拡散制御剤)
D−1:下記式で表されるN−t−アミロキシカルボニル−4−ヒドロキシピペリジン
【0154】
【化18】

【0155】
([E]溶媒)
E−1:酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
E−2:シクロヘキサノン
E−3:γ−ブチロラクトン
【0156】
[実施例1]
[A]重合体としての共重合体(A−1)100質量部、[B]酸発生剤としての(B−1)14質量部、[C]撥水性重合体添加剤としての(C−1)3質量部、[D]酸拡散制御剤としての(D−1)1.7質量部、並びに溶媒としての(E−1)1770質量部、(E−2)760質量部及び(E−3)200質量部を添加し、各成分を混合して均一溶液とした。その後、孔径200nmのメンブランフィルターを用いてろ過することにより、フォトレジスト組成物(J−1)を調製した(固形分濃度約4%)。
【0157】
[実施例2〜8、比較例1〜6]
表2に示す種類、量の各成分を使用した以外は実施例1と同様に操作して、フォトレジスト組成物(J−2)〜(J−8)及び(j−1)〜(j−6)を調製した。
【0158】
[実施例9〜16、比較例7〜12]
<レジストパターン形成方法1>
下層反射防止膜(ARC66、日産化学製)を形成した12インチシリコンウェハ上に、実施例1〜4及び比較例1〜5で得られたフォトレジスト組成物(J−1)〜(J−4)及び(j−1)〜(j−5)をそれぞれ塗布して、表3に示す温度で60秒間PBを行い、膜厚100nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜にArFエキシマレーザー液浸露光装置(NSR S610C、Nikon社製)を用い、NA=1.3、iNA=1.27、ratio=0.800、Annularの条件により、縮小投影後のパターンが65nmトレンチ、200nmピッチとなるマスクパターンを介して露光した。露光後、表3に示す温度で60秒間PEBを行った。その後、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により現像し、水洗し、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。
【0159】
<レジストパターン形成方法2>
下層反射防止膜(ARC66、日産化学製)を形成した12インチシリコンウェハ上に、実施例5〜8及び比較例6で得られたフォトレジスト組成物(J−5)〜(J−8)及び(j−6)をそれぞれ塗布して、表3に示す温度で60秒間PBを行い、膜厚100nmのレジスト膜を形成した。次に、形成したレジスト膜上に、WO2008/047678の実施例1に記載の上層膜形成用組成物をスピンコートし、90℃で60秒間加熱を行うことにより膜厚90nmの上層膜を形成した。
このレジスト膜にArFエキシマレーザー液浸露光装置(NSR S610C、Nikon社製)を用い、NA=1.3、iNA=1.27、ratio=0.800、Annularの条件により、縮小投影後のパターンが65nmトレンチ、200nmピッチとなるマスクパターンを介して露光した。露光後、表3に示す温度で60秒間PEBを行った。その後、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液により現像し、水洗し、乾燥して、ポジ型のレジストパターンを形成した。
【0160】
<評価>
上記のように形成したレジストパターンについて、以下のように評価した(実施例9〜16及び比較例7〜12)。結果を表3に示す。なお、表3中の「−」は、55nmのトレンチパターンを形成できなかったことを示す。
【0161】
[MEEF]
縮小投影後のパターンが65nmトレンチ200nmピッチのパターン形成用のマスクパターンを介して露光した部分が55nmのトレンチを形成する露光量を最適露光量(Eop)とした。次に、上記Eopにて、縮小投影後のトレンチ幅を63nm、64nm、65nm、66nm、67nmとするマスクパターンをそれぞれ用い、ピッチ200nmのLSパターンを形成し、レジスト膜に形成されたトレンチ幅を測長SEM(日立製、CG4000)にて測定した。このとき、マスクパターンのサイズ(nm)を横軸に、各マスクパターンを用いてレジスト膜に形成されたトレンチ幅(nm)を縦軸にプロットしたときの直線の傾きをMEEFとして算出した。MEEFが3.5以下である場合、良好であると評価した。
【0162】
[DOF(nm)]
上記Eopにて、形成されるトレンチ幅が、50nm〜60nmに収まるような焦点深度(μm)をDOFとした。DOFが0.12μm以上である場合、良好であると評価した。
【0163】
[解像性(nm)]
上記Eop以下の露光量にて縮小投影後のパターンが65nmトレンチ200nmピッチとなるマスクパターンを介して露光した際、露光量の減少に伴い得られるトレンチパターンの最小寸法(nm)を解像性とした。解像性が45nm以下である場合、良好であると評価した。
【0164】
【表2】

【0165】
【表3】

【0166】
表3に示される結果から明らかなように、当該フォトレジスト組成物から形成されるレジストパターンは、MEEF、DOF及び解像性に優れることがわかった。なお、本実施例においては、露光光源としてArFを使用しているが、EUV等の短波長放射線を使用した場合であっても、得られる微細パターンはレジスト特性が類似しており、同等の評価結果が得られるものと考えられる。
【0167】
[実施例17〜18、比較例13〜15]
<レジストパターン形成方法3>
下層反射防止膜(ARC66、日産化学製)を形成した12インチシリコンウェハ上に、実施例1及び3並びに比較例1、4及び5で得られたフォトレジスト組成物(J−1)及び(J−3)並びに(j−1)、(j−4)及び(j−5)をそれぞれ塗布して表4に示す温度で60秒間PBを行い、膜厚100nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜にArFエキシマレーザー液浸露光装置(NSR S610C、Nikon社製)を用い、NA=1.3、iNA=1.27、ratio=0.800、Crosspoleの条件により、縮小投影後のパターンが43nmホール、86nmピッチとなるマスクパターンを介して露光した。露光後、表4に示す温度で60秒間PEBを行った。その後、酢酸ブチルにてパドル現像(30秒間)し、乾燥して、ネガ型のレジストパターンを形成した。
【0168】
<評価>
上記形成したレジストパターンについて、以下のように評価した(実施例17及び18並びに比較例13〜15)。結果を表4に示す。なお、表4中の「−」は43nmのホールパターンを形成できなかったことを示す。
【0169】
[MEEF]
縮小投影後のパターンが58nmホール86nmピッチのパターン形成用のマスクパターンを介して露光した部分が43nmホールを形成する露光量を最適露光量(Eop)とした。次に、上記Eopにて、縮小投影後のホールパターンサイズを59nm、58.5nm、57.5nm、57nmとするマスクパターンをそれぞれ用い、ピッチ86nmのホールパターンを形成し、レジスト膜に形成されたホールサイズを測長SEM(日立製、CG4000)にて測定した。このとき、縮小投影露光後のホールパターンのサイズ(nm)を横軸に、縮小投影露光後に基板上のレジスト膜に形成されたホールパターンのサイズ(nm)を縦軸にプロットした時の直線の傾きをMEEFとして算出した。MEEFが6.0以下の場合を「良好」と判断した。
【0170】
[DOF]
上記Eopにて形成されるホールサイズが43nmの±10%以内に収まるような焦点深度(μm)をDOFとした。DOFが0.20μm以上である場合を「良好」と判断した。
【0171】
[解像性]
上記Eop以上の露光量にて縮小投影露光後のパターンが58nmホール86nmピッチとなるマスクパターンを介して露光した際、露光量の増加に伴い得られるホールパターンの最小寸法を解像性(nm)とした。解像性が35nm以下である場合を「良好」と判断した。
【0172】
[CDU]
上記Eopにて形成された43nmのホールパターン直径を任意のポイントで計30点測定し、その測定値の平均偏差の3σ値をCDU(nm)とした。CDUが5.0nm以下である場合を「良好」と判断した。
【0173】
【表4】

【0174】
表4に示される結果から明らかなように、当該フォトレジスト組成物から形成されるレジストパターンは、有機溶媒を用いる現像の場合、MEEF、DOF、解像性及びCDUに優れることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0175】
本発明のフォトレジスト組成物及びレジストパターン形成方法は、MEEF、DOF、CDU及び解像性に優れるレジストパターンを形成することができる。従って、当該フォトレジスト組成物を用いる当該パターン形成方法は、今後更に微細化が進行すると予想される半導体デバイス製造用に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]下記式(1)で表される構造単位(I)、単環の脂環式基を有する酸解離性基を含む構造単位(II)及びラクトン基を含む構造単位(III)を有する重合体、並びに
[B]感放射線性酸発生体、
を含有するフォトレジスト組成物。
【化1】

(式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、酸素原子、硫黄原子、炭素数1以上5以下の2価の鎖状炭化水素基又はこれらを組み合わせてなる基である。Rは、1価の有機基である。aは、0〜2の整数である。但し、aが2である場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
[A]重合体における構造単位(II)の含有率が、40モル%以上80モル%以下である請求項1に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項3】
上記構造単位(III)が含むラクトン基が、ノルボルナンラクトン基である請求項1又は請求項2に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項4】
[B]感放射線性酸発生体が、炭素数8以上30以下の脂環構造を有する請求項1、請求項2又は請求項3に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項5】
[C]フッ素原子を含有する撥水性重合体添加剤をさらに含有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のフォトレジスト組成物。
【請求項6】
(1)請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のフォトレジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、
(2)上記レジスト膜に露光する工程、及び
(3)上記露光されたレジスト膜を現像する工程
を有するレジストパターン形成方法。


【公開番号】特開2013−83972(P2013−83972A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−215291(P2012−215291)
【出願日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】