説明

フォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物

【課題】 フォトレジスト製造において、感度の高いオキシムエステル系光重合開始剤の溶解性が良く、電子材料用途のペースト組成物の特性を損なわないフォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物を提供すること。
【解決手段】オキシムエステル系光重合開始剤溶解用の溶剤または溶剤組成物であって、下記式(A)
【化1】


(上記式中、R1〜R4は、同一又は異なって、それぞれC1-2のアルキル基であり、R1とR3又はR2とR4は互いに結合してそれぞれ環を形成していても良い)
で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を有する溶剤Aを含むフォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光重合開始剤溶解性に優れたフォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物、ならびに該フォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物を含むフォトレジスト製造用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶表示ディスプレイなどの表示体のカラー化には、2枚の基板の間に赤(R)や緑(G)や青(B)や黄(Y)などの画素領域から構成されたカラーフィルターを必要とする。しかし、カラーフィルターの各画素領域の間が隙間無く埋められていると、その境界でコントラスト低下などが起こる。この問題を防ぐため、通常、各色の画素領域を黒色の隔壁によって区分けするブラックマトリクスが形成されている。
【0003】
一般に、ブラックマトリクスやカラーフィルターの形成には、フォトレジストが用いられている。ブラックマトリクスには金属の遮光材料を使用するものと、非金属の遮光材料を使用するものがある。近年環境的な配慮により、非金属のブラックマトリクスとして樹脂ブラックマトリクスが増えている。樹脂ブラックマトリクスペーストは遮光材料、バインダー樹脂、多官能性モノマー、光重合開始剤、溶媒などからなっている。
【0004】
ブラックマトリクスは次の(1)〜(6)の工程を経て製造される。
(1)ブラックマトリクスペーストを調合する。(2)基板に塗布後、薄層化する。(3)100℃程度で溶剤を蒸発させ、乾燥する。(4)100mJ/cm2程度の強度のUVを照射し、光硬化する。(5)炭酸ナトリウム水溶液をスプレーし、不要な樹脂分を洗浄する。(6)200℃程度で加熱し、熱硬化する。
【0005】
ブラックマトリクスの光硬化では、ペースト組成物中に含まれる遮光剤の配合のため、深部まで届く光が弱くなる。そこで、ペースト組成物中に感度の高い光重合開始剤を多量に含有することが必要とされている。感度の高い光重合開始剤としてカルバゾール骨格を持つオキシムエステル系光重合開始剤が挙げられる(特許文献1)。しかしこれらは溶解性に乏しく、多くの量を溶剤に溶解させることは困難であった。
【0006】
そこで、特許文献2では、ブラックマトリクスのペースト用溶剤としては、光重合開始剤に対する溶解性からシクロヘキサノンおよびシクロヘキサノンを含む混合溶剤が使用されている(特許文献2)。しかしながら、シクロヘキサノンは生態毒性の懸念があり、またVOC規制対象化合物として、取り扱いには有機溶剤作業主任者を設定する必要があるなど、規制があるため、代替溶剤が求められている。
【0007】
カラーフィルター、およびブラックマトリクス用途にその他一般的に使用される溶剤は、塗布性や顔料分散性から、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブタノールアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、シクロヘキサノールアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどが用いられている(特許文献3、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4448381号公報
【特許文献2】特開2009−173560号公報
【特許文献3】特開2009−271502号公報
【特許文献4】特開2010−249869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、フォトレジスト製造において、感度の高いオキシムエステル系光重合開始剤の溶解性が良く、電子材料用途のペースト組成物の特性を損なわないフォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記フォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物を含み、塗布性、顔料分散性、染料溶解性、エポキシ樹脂・アクリル樹脂溶解性、乾燥性、安全性等に優れたフォトレジスト製造用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の溶剤を用いることにより、高いオキシムエステル系光重合開始剤溶解性を実現できることを見いだした。また、必要に応じて、この溶剤と一般的に電子材料用途に使用されている溶剤とを混合することにより、塗布性、顔料分散性、染料溶解性、エポキシ樹脂・アクリル樹脂溶解性、乾燥性、安全性等をさらに向上し得ることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0011】
すなわち本発明は、オキシムエステル系光重合開始剤溶解用の溶剤または溶剤組成物であって、下記式(A)
【化1】

(上記式中、R1〜R4は、同一又は異なって、それぞれC1-2のアルキル基であり、R1とR3又はR2とR4は互いに結合してそれぞれ環を形成していても良い)
で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を有する溶剤Aを含むフォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物を提供する。
本発明のフォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物は、さらに、上記溶剤Aと相溶する溶剤Bを少なくとも1種類含んでいることが好ましい。
本発明のフォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物において、上記溶剤Aは30重量%以上含まれていることが好ましく、50重量%以上含まれていることがさらに好ましい。
【0012】
上記オキシムエステル系光重合開始剤は、下記式(P1)
【化2】

で表される化合物(P1)であることが好ましい。
[上記式中、R11は、C2アシル基、又はフェノイル基を示し;R12は、C1-6アルキル基、又は置換基を有していても良いフェニル基を示し;R13は、下記式(P2)
【化3】

(上記式中、R14は、置換基を有していても良いフェニル基、置換基を有していても良いナフチル基、置換基を有していても良いアントラシル基、置換基を有していても良いチエニル基、又は置換基を有していても良いジフェニルスルフィド基を示し;R15は、単結合、又は下記式(P3)
【化4】

(上記式中、R16は、C1-2アルキル基、又はフェニル基を示す。)
で表される2価の基を示す。さらに、R15が単結合の場合には、R14は、C65SC64−であってもよい。)
又は、下記式(P4)
【化5】

(上記式中、R15は、単結合、又は上記式(P3)で表される基を示す。)
で表される基を示す。]
【0013】
上記オキシムエステル系光重合開始剤は、下記式(1)
【化6】

で表される化合物(1)であることが好ましい。
【0014】
また、上記オキシムエステル系光重合開始剤は、好ましくは、下記式(2)
【化7】

で表される化合物(2)であり、溶剤Aが1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)ピリミジノンであることが好ましい。
【0015】
また、上記オキシムエステル系光重合開始剤は、好ましくは、下記式(3)
【化8】

で表される化合物(3)であり、溶剤Aが1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)ピリミジノンであることが好ましい。
【0016】
好ましくは、本発明のフォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物では、20℃におけるオキシムエステル系光重合開始剤の溶解度が、溶剤組成物100重量部に対して4重量部以上である。
【0017】
また、本発明は、オキシムエステル系光重合開始剤と、上記フォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物とを含むことを特徴とするフォトレジスト製造用組成物を提供する。
【0018】
本発明のフォトレジスト製造用組成物において、上記オキシムエステル系光重合開始剤が、下記式(1)で表される化合物(1)、下記式(2)で表される化合物(2)又は下記式(3)で表される化合物(3)であることが好ましい。
【化9】

【化10】

【化11】

【0019】
好ましくは、上記オキシムエステル系光重合開始剤は上記化合物(1)である。また、好ましくは、上記オキシムエステル系光重合開始剤は上記化合物(2)であり、上記溶剤Aが1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)ピリミジノンである。また、好ましくは、上記オキシムエステル系光重合開始剤は上記化合物(3)であり、上記溶剤Aが1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)ピリミジノンである。
【発明の効果】
【0020】
本発明のフォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物は、光重合開始剤の溶解性が高く、電子材料用途のペースト組成物の特性を損なわない。また、本発明のフォトレジスト製造用組成物によれば、塗布性、顔料分散性、染料溶解性、エポキシ樹脂・アクリル樹脂溶解性、乾燥性、安全性等に優れたフォトレジスト製造用組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[フォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物]
本発明のフォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物は、オキシムエステル系光重合開始剤溶解用の溶剤または溶剤組成物であって、下記式(A)
【化12】

(上記式中、R1〜R4は、同一又は異なって、それぞれC1-2のアルキル基であり、R1とR3又はR2とR4は互いに結合してそれぞれ環を形成していても良い)
で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を有する溶剤Aを含んでいる。
【0022】
<溶剤A>
本発明のフォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物に含まれる溶剤Aは、下記式(A)
【化13】

(上記式中、R1〜R4は、同一又は異なって、それぞれC1-2のアルキル基であり、R1とR3又はR2とR4は互いに結合してそれぞれ環を形成していても良い)
で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を有している。環としては、2−イミダゾリジノン環、2−ピリミジノン環などが挙げられる。
【0023】
溶剤Aとしては、具体的には、例えば、テトラメチル尿素、テトラエチル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)ピリミジノンなどが挙げられ、好ましくは、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、テトラメチル尿素、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)ピリミジノンが挙げられる。これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。溶剤Aを用いることにより、オキシムエステル系光重合開始剤を高濃度に溶解することが可能となる。
【0024】
フォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物中における溶剤Aの含有量は、30重量%以上(例えば30〜100重量%)が好ましく、50重量%以上(例えば50〜100重量%)がさらに好ましい。溶剤Aの含有量が30重量%を下回ると、オキシムエステル系光重合開始剤の溶解性が十分でない場合がある。なお、溶剤Aの含有量は、2種類以上を併用する場合には、それらの合計量である。
【0025】
<溶剤B>
本発明のフォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物に含まれる溶剤Aは、更に、一般的に電子材料用途に使用されており溶剤Aと相溶する溶剤Bと混合して用いてもよい。溶剤Bと併用することにより、オキシムエステル系光重合開始剤を溶解させてフォトレジスト製造用組成物とした場合に、オキシムエステル系光重合開始剤を高濃度に溶解しながら、さらに、塗布性、顔料分散性、染料溶解性、エポキシ樹脂・アクリル樹脂溶解性、乾燥性、安全性等を改善することができる。
【0026】
溶剤Bとしては、溶剤Aと相溶するものであれば特に限定されないが、例えば、(モノ、ジ、トリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル、(モノ、ジ)アルキレングリコールジアルキルエーテル、(モノ、ジ)アルキレングリコールアルキルエーテルアセテート、(モノ、ジ)アルキレングリコールジアセテート、(シクロ)アルキルアセテート、C3-6アルコール、C3-6アルカンジオール、C3-6アルカンジオールモノアルキルエーテル、C3-6アルカンジオールアルキルエーテルアセテート、C3-6アルカンジオールジアセテート、グリセリントリアセテート、ヒドロキシカルボン酸エステル、ヒドロキシカルボン酸ジエステル、アルコキシカルボン酸エステル、環状ケトン、ラクトン、環状エーテル、アミド類、ピリジン類、芳香族アセテート、アミン類等が挙げられる。
【0027】
(モノ、ジ、トリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールn−プロピルエーテル、エチレングリコールn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールn−プロピルエーテル、ジエチレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル等が例示される。
【0028】
(モノ、ジ)アルキレングリコールジアルキルエーテルとしては、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールメチルn−プロピルエーテル、プロピレングリコールメチルn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルn−ブチルエーテル等が例示される。
【0029】
(モノ、ジ)アルキレングリコールアルキルエーテルアセテートとしては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールブチルエーテルアセテート等が例示される。
【0030】
(モノ、ジ)アルキレングリコールジアセテートとしては、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート等が例示される。(シクロ)アルキルアセテートとしては、メチルアセテート、エチルアセテート、n−プロピルアセテート、イソプロピルアセテート、ブチルアセテート、シクロヘキサノールアセテート等が例示される。
【0031】
3-6アルコールとしては、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、2−ヘキシルアルコール等が例示される。C3-6アルカンジオールとしては、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が例示される。C3-6アルカンジオールモノアルキルエーテルとしては、3−メトキシブタノール等が例示される。
【0032】
3-6アルカンジオールアルキルエーテルアセテートとしては、3−メトキシブタノールアセテート等が例示される。C3-6アルカンジオールジアセテートとしては、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,4−ブタンジオールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート等が例示される。
【0033】
ヒドロキシカルボン酸エステルとしては、乳酸メチル、乳酸エチル等が例示される。ヒドロキシカルボン酸ジエステルとしては、乳酸メチルアセテート、乳酸エチルアセテート等が例示される。アルコキシカルボン酸エステルとしては、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等が例示される。
【0034】
環状ケトンとしては、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、4−ケトイソホロン等が例示される。ラクトン類としては、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン等が例示される。環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、テトラヒドロフルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアセテート等が例示される。
【0035】
アミド類としては、ジメチルホルムアミド等が例示される。ピリジン類としては、ピリジン、メチルピリジン等が例示される。芳香族アセテートとしては、酢酸フェニル等が例示される。アミン類としては、ジエチルアミン、トリエチルアミン等が例示される。上記例示の溶剤Bは単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0036】
フォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物中における溶剤Bの含有量は、例えば0〜70重量%が好ましく、0〜50重量%がさらに好ましい。溶剤Bの含有量が70重量%を上回ると、オキシムエステル系光重合開始剤の溶解性が十分でない場合がある。なお、溶剤Bの含有量は、2種類以上を併用する場合には、それらの合計量である。
【0037】
フォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物中における溶剤Aと溶剤Bとの混合比(重量)は、溶剤A/溶剤Bが、例えば100/0〜30/70、好ましくは100/0〜50/50である。溶剤A/溶剤Bが30/70より溶剤Bが多い場合には、オキシムエステル系光重合開始剤の溶解性が十分でない場合がある。なお、溶剤A、溶剤Bの量は、2種類以上を併用する場合には、それぞれについての合計量である。
【0038】
<オキシムエステル系光重合開始剤>
オキシムエステル系光重合開始剤としては特に限定されないが、例えば、下記式(P1)
【化14】

で表される化合物が挙げられる。
【0039】
上記式中、R11は、C2アシル基、又はフェノイル基を示し;R12は、C1-6アルキル基、又は置換基を有していても良いフェニル基を示し;R13は、下記式(P2)
【化15】

[上記式中、R14は、置換基を有していても良いフェニル基、置換基を有していても良いナフチル基、置換基を有していても良いアントラシル基、置換基を有していても良いチエニル基、又は置換基を有していても良いジフェニルスルフィド基を示し;R15は、単結合、又は下記式(P3)
【化16】

(上記式中、R16は、C1-2アルキル基、又はフェニル基を示す。)
で表される2価の基を示す。さらに、R15が単結合の場合には、R14は、C65SC64−であってもよい。]
又は、下記式(P4)
【化17】

(上記式中、R15は、単結合、又は上記式(P3)で表される基を示す。)
で表される基を示す。
【0040】
上記式(P1)中、R11として例示されるC2アシル基としては、例えば、アセチル基などが挙げられる。上記式(P1)中、R11として例示されるフェノイル基としては、ベンゾイル基などが挙げられる。上記式(P1)中、R12として例示されるC1-6アルキル基としては、メチル、ヘキシル基などが挙げられる。上記式(P1)中、R12におけるフェニル基が有していても良い置換基としては、メチル基、メトキシプロピオキシ基などが挙げられる。
【0041】
上記式(P2)中、R14におけるフェニル基、ナフチル基、アントラシル基、又はチエニル基が有していても良い置換基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチルなどのC1-4アルキル基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メトキシ基などのC1-4アルコキシ基等が挙げられる。
【0042】
上記式(P3)中、R16として例示されるC1-2アルキル基としては、例えば、メチル、エチル基などが挙げられる。
【0043】
本発明のフォトレジスト製造用溶剤又は溶剤組成物は、上記例示の化合物において、オキシムエステル系光重合開始剤として、下記式(1)で表される化合物(1)、下記式(2)で表される化合物(2)又は下記式(3)で表される化合物(3)を特に好ましく用いることができ、また、これらの2種以上を併用することもできる。
【化18】

【化19】

【化20】

【0044】
本発明のフォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物は、上記式(2)で表される化合物(2)に用いる場合または上記式(3)で表される化合物(3)に用いる場合、溶剤Aとしては1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)ピリミジノンが好ましい。
【0045】
本発明のフォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物では、20℃におけるオキシムエステル系光重合開始剤[例えば、前記式(1)、(2)又は(3)で表される化合物(1)、(2)又は(3)]の溶解度は、前記溶剤または溶剤組成物100重量部に対して、例えば4重量部以上(4〜90重量部程度)、好ましくは5重量部以上(5〜90重量部程度)、より好ましくは6重量部以上(6〜90重量部程度)、さらに好ましくは8重量部以上(8〜90重量部程度)、特に好ましくは10重量部以上(10〜90重量部程度)である。なお、オキシムエステル系光重合開始剤の溶解量は、2種類以上を併用する場合には、それらの合計量である。
【0046】
[フォトレジスト製造用組成物]
本発明のフォトレジスト製造用組成物は、上記オキシムエステル系光重合開始剤と、上記フォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物とを含むことを特徴とする。
【0047】
本発明のフォトレジスト製造用組成物中のオキシムエステル系光重合開始剤の含有量は、例えば4重量%以上(4〜90重量%程度)、好ましくは5重量%以上(5〜90重量%程度)、より好ましくは6重量%以上(6〜90重量%程度)、さらに好ましくは8重量%以上(8〜90重量%程度)、特に好ましくは10重量%以上(10〜90重量%程度)とすることができる。なお、オキシムエステル系光重合開始剤の含有量は、2種類以上を併用する場合には、それらの合計量である。
【0048】
本発明のフォトレジスト製造用組成物中のフォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物の含有量は、例えば96重量%以下(10〜96重量%程度)、好ましくは95重量%以下(10〜95重量%程度)、より好ましくは94重量%以下(10〜94重量%程度)、さらに好ましくは92重量%以下(10〜92重量%程度)、特に好ましくは90重量%以下(10〜90重量%程度)とすることができる。
【0049】
本発明のフォトレジスト製造用組成物中の溶剤Aの含有量は、例えば96重量%以下(3〜96重量%程度)、好ましくは95重量%以下(3〜95重量%程度)、より好ましくは94重量%以下(3〜94重量%程度)、さらに好ましくは92重量%以下(3〜92重量%程度)、特に好ましくは90重量%以下(3〜90重量%程度)とすることができる。なお、溶剤Aの含有量は、2種類以上を併用する場合には、それらの合計量である。
【0050】
オキシムエステル系光重合開始剤としては、下記式(1)
【化21】

で表される化合物(1)であることが好ましい。
【0051】
また、本発明のフォトレジスト製造用組成物に含まれるオキシムエステル系光重合開始剤としては、下記式(2)
【化22】

で表される化合物(2)であることが好ましい。この場合に、溶剤Aは1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)ピリミジノンであることが好ましい。
【0052】
また、本発明のフォトレジスト製造用組成物に含まれるオキシムエステル系光重合開始剤としては、下記式(3)
【化23】

で表される化合物(3)であることが好ましい。この場合に、溶剤Aは1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)ピリミジノンであることが好ましい。
【0053】
本発明のフォトレジスト製造用組成物に含まれる溶剤Aは、オキシムエステル系光重合開始剤溶解性から、オキシムエステル系光重合開始剤に対し、4倍(重量)以上であることが好ましい。溶剤Aの使用量は、オキシムエステル系光重合開始剤に対し、例えば0.1〜100倍(重量)、好ましくは1〜50倍(重量)、さらに好ましくは1.5〜25倍(重量)とすることができる。なお、オキシムエステル系光重合開始剤及び溶剤Aの使用量は、2種類以上を併用する場合には、それぞれについての合計量である。
【0054】
本発明のフォトレジスト製造用組成物には、フォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物中に上記の通り溶剤Bを含んでいても良い。溶剤Bと併用することにより、オキシムエステル系光重合開始剤を高濃度に含有しているだけでなく、さらに、フォトレジスト製造用組成物の塗布性、顔料分散性、染料溶解性、エポキシ樹脂・アクリル樹脂溶解性、乾燥性、安全性等をより向上させることができる。
【0055】
フォトレジスト製造用組成物において、例えば、塗布性をより向上するために、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールn−プロピルエーテル、エチレングリコールn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールn−プロピルエーテル、ジエチレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、又はトリプロピレングリコールn−ブチルエーテル等の(モノ、ジ、トリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールメチルn−プロピルエーテル、プロピレングリコールメチルn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルn−プロピルエーテル、又はジプロピレングリコールメチルn−ブチルエーテル等の(モノ、ジ)アルキレングリコールジアルキルエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、又はジプロピレングリコールブチルエーテルアセテート等の(モノ、ジ)アルキレングリコールアルキルエーテルアセテート;エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、又はジプロピレングリコールジアセテート等の(モノ、ジ)アルキレングリコールジアセテート;又は、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のアルコキシカルボン酸エステルなどを溶剤Bとして併用することが効果的である。
【0056】
また、顔料分散性をより向上するために、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のモノC3-6アルキレングリコールアルキルエーテルアセテート;又は、3−メトキシブタノールアセテート等のC3-6アルカンジオールアルキルエーテルアセテート等を溶剤Bとして併用することが効果的である。
【0057】
また、染料溶解性をより向上するために、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のモノC3-6アルキレングリコールモノアルキルエーテル;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のモノC3-6アルキレングリコールアルキルエーテルアセテート;3−メトキシブタノール等のC3-6アルカンジオールモノアルキルエーテル;3−メトキシブタノールアセテート等のC3-6アルカンジオールアルキルエーテルアセテート;乳酸メチル、又は乳酸エチル等のヒドロキシカルボン酸エステル;乳酸メチルアセテート、又は乳酸エチルアセテート等のヒドロキシカルボン酸ジエステル;n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、又は2−ヘキシルアルコール等のC3-6アルコール;又は、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のC3-6アルカンジオール等を溶剤Bとして併用することが効果的である。
【0058】
また、エポキシ樹脂・アクリル樹脂溶解性をより向上するために、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールn−プロピルエーテル、エチレングリコールn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールn−プロピルエーテル、ジエチレングリコールn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールn−プロピルエーテル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル等の(モノ、ジ、トリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールメチルn−プロピルエーテル、プロピレングリコールメチルn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルn−ブチルエーテル等の(モノ、ジ)アルキレングリコールジアルキルエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールブチルエーテルアセテート等の(モノ、ジ)アルキレングリコールアルキルエーテルアセテート;エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート等の(モノ、ジ)アルキレングリコールジアセテート;シクロペンタノン、シクロヘキサノン、4−ケトイソホロン等の環状ケトン;β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、α−アセチル−γ−ブチロラクトン等のラクトン類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロフルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアセテート等の環状エーテル;ジメチルホルムアミド等のアミド類;ピリジン、又はメチルピリジン等のピリジン類;酢酸フェニル等の芳香族アセテート;又は、ジエチルアミン又はトリエチルアミン等のアミン類などを溶剤Bとして併用することが効果的である。
【0059】
また、乾燥性をより向上するために、プロピレングリコールメチルn−プロピルエーテル、プロピレングリコールメチルn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルn−ブチルエーテル等の(モノ、ジ)C3-6アルキレングリコールC1-2アルキルC3-4アルキルエーテル;又は、メチルアセテート、エチルアセテート、n−プロピルアセテート、イソプロピルアセテート、ブチルアセテート、シクロヘキサノールアセテート等の(シクロ)アルキルアセテート等を溶剤Bとして併用することが効果的である。上記例示の溶剤Bは、単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0061】
<単独系>
実施例1
オキシムエステル系光重合開始剤として化合物(1)(特表2006-516246に記載の方法に準じた方法で合成したダイセル社のラボ製造品)を使用し、20℃環境下、溶剤として1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)ピリミジノン(DMTHP)を使用して、表1に記載の開始剤濃度(4重量%〜15重量%)になるように溶液を調製し、1分程度、容器を手で軽く振って混合後、溶解の可否を目視で確認した。
なお、溶解状態は、目視にて不溶物が確認出来なかった場合を「○:溶解」とし、不溶物が確認出来た場合を「×:不溶解」とした。以下も同様である。
【0062】
実施例2〜3、比較例1
溶剤を表1に示した溶剤に変更した以外は実施例1と同様にして、オキシムエステル系光重合開始剤の溶解性を評価した。
実施例1〜3、比較例1のオキシムエステル系光重合開始剤の溶解性評価結果を表1に示した。
【0063】
【表1】

DMTHP :1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)ピリミジノン(和光純薬工業製)
DMI :1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(和光純薬工業製)
TMU :1,1,3,3−テトラメチル尿素(和光純薬工業製)
ANON :シクロヘキサノン(関東化学製)
【0064】
実施例4
オキシムエステル系光重合開始剤として化合物(2)(BASF製)を使用し、20℃環境下、溶剤として1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)ピリミジノン(DMTHP)を使用して、表2に記載の開始剤濃度(20重量%〜40重量%)になるように溶液を調製し、1分程度、容器を手で軽く振って混合後、溶解の可否を目視で確認した。
【0065】
実施例5〜6、比較例2〜3
溶剤を表2に示した溶剤に変更した以外は実施例4と同様にして、オキシムエステル系光重合開始剤の溶解性を評価した。
実施例4〜6、比較例2〜3のオキシムエステル系光重合開始剤の溶解性評価結果を表2に示した。
【0066】
【表2】

DMTHP :1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)ピリミジノン(和光純薬工業製)
DMI :1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(和光純薬工業製)
TMU :1,1,3,3−テトラメチル尿素(和光純薬工業製)
ANON :シクロヘキサノン(関東化学製)
MMPGAC :プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(ダイセル社製)
【0067】
<混合溶剤系>
実施例7
オキシムエステル系光重合開始剤として化合物(1)を使用し、オキシムエステル系光重合開始剤溶解性の良い溶剤A(Sol.A)として1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)ピリミジノンと、一般的に電子材料用途に使用されており塗布性、顔料分散性が良好と知られている溶剤(Sol.B)として3−メトキシブタノールアセテートとを80:20(重量比)の割合で混合した。その後、20℃環境下、オキシムエステル系光重合開始剤[化合物(1)]を、上記混合溶剤で表3に記載の開始剤濃度(4重量%〜7重量%)の溶液に調整し、1分程度、容器を手で軽く振って混合後、溶解の可否を目視で確認した。
【0068】
実施例8〜14、比較例4〜7
実施例7と同様に、以下の表3に記載の溶剤を表3に記載の重量比で混合し、20℃環境下、オキシムエステル系光重合開始剤[化合物(1)]を表3に記載の開始剤濃度(4重量%〜7重量%)の溶液として調製し、溶解の可否を目視で確認した。
【0069】
【表3】

DMTHP :1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)ピリミジノン(和光純薬工業製)
DMI :1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(和光純薬工業製)
MBA :3−メトキシブタノールアセテート(ダイセル社製)
MMPGAC :プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(ダイセル社製)
1,3BGDA :1,3−ブチレングリコールジアセテート(ダイセル社製)
ANON :シクロヘキサノン(関東化学製)
【0070】
実施例15
オキシムエステル系光重合開始剤として化合物(2)を使用し、オキシムエステル系光重合開始剤溶解性の良い溶剤A(Sol.A)として1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)ピリミジノンと、一般的に電子材料用途に使用されており塗布性、顔料分散性が良好と知られている溶剤(Sol.B)として3−メトキシブタノールアセテートとを80:20(重量比)の割合で混合した。その後、20℃環境下、オキシムエステル系光重合開始剤[化合物(2)]を、上記混合溶剤で表4に記載の開始剤濃度(5重量%〜30重量%)の溶液に調整し、1分程度、容器を手で軽く振って混合後、溶解の可否を目視で確認した。
【0071】
実施例16〜20、比較例8〜9
実施例15と同様に、以下の表4に記載の溶剤を表4に記載の重量比で混合し、20℃環境下、オキシムエステル系光重合開始剤[化合物(2)]を表4に記載の開始剤濃度(5重量%〜30重量%)の溶液として調製し、溶解の可否を目視で確認した。
【0072】
【表4】

DMTHP :1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)ピリミジノン(和光純薬工業製)
MBA :3−メトキシブタノールアセテート(ダイセル社製)
MMPGAC :プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(ダイセル社製)
ANON :シクロヘキサノン(関東化学製)
【0073】
表1、表3から分かるように、溶剤A(Sol.A)単独系(実施例1〜3)および溶剤A(Sol.A)と溶剤B(Sol.B)の混合溶剤(実施例7〜14)は従来使用されているシクロヘキサノンおよびシクロヘキサノンを含む混合溶剤(比較例1、4〜7)よりも化合物(1)の溶解性に優れていた。また、表2、表4から分かるように、溶剤A(Sol.A)単独系(実施例4〜6)および溶剤A(Sol.A)と溶剤B(Sol.B)の混合溶剤(実施例15〜20)は従来使用されているシクロヘキサノンおよびシクロヘキサノンを含む混合溶剤(比較例2、3、8、9)よりも化合物(2)の溶解性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のフォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物は、オキシムエステル系光重合開始剤を高濃度に溶解するためフォトレジスト製造を効率的に行うことが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシムエステル系光重合開始剤溶解用の溶剤または溶剤組成物であって、下記式(A)
【化1】

(上記式中、R1〜R4は、同一又は異なって、それぞれC1-2のアルキル基であり、R1とR3又はR2とR4は互いに結合してそれぞれ環を形成していても良い)
で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を有する溶剤Aを含むフォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物。
【請求項2】
さらに、上記溶剤Aと相溶する溶剤Bを少なくとも1種類含む、請求項1記載のフォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物。
【請求項3】
上記溶剤Aを30重量%以上含む、請求項2記載のフォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物。
【請求項4】
上記溶剤Aを50重量%以上含む、請求項3記載のフォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物。
【請求項5】
オキシムエステル系光重合開始剤が下記式(P1)
【化2】

で表される化合物(P1)である、請求項1〜4の何れか1項に記載のフォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物。
[上記式中、R11は、C2アシル基、又はフェノイル基を示し;R12は、C1-6アルキル基、又は置換基を有していても良いフェニル基を示し;R13は、下記式(P2)
【化3】

(上記式中、R14は、置換基を有していても良いフェニル基、置換基を有していても良いナフチル基、置換基を有していても良いアントラシル基、置換基を有していても良いチエニル基、又は置換基を有していても良いジフェニルスルフィド基を示し;R15は、単結合、又は下記式(P3)
【化4】

(上記式中、R16は、C1-2アルキル基、又はフェニル基を示す。)
で表される2価の基を示す。さらに、R15が単結合の場合には、R14は、C65SC64−であってもよい。)
又は、下記式(P4)
【化5】

(上記式中、R15は、単結合、又は上記式(P3)で表される基を示す。)
で表される基を示す。]
【請求項6】
オキシムエステル系光重合開始剤が下記式(1)
【化6】

で表される化合物(1)である、請求項5に記載のフォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物。
【請求項7】
オキシムエステル系光重合開始剤が下記式(2)
【化7】

で表される化合物(2)であり、溶剤Aが1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)ピリミジノンである、請求項5に記載のフォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物。
【請求項8】
オキシムエステル系光重合開始剤が下記式(3)
【化8】

で表される化合物(3)であり、溶剤Aが1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)ピリミジノンである、請求項5に記載のフォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物。
【請求項9】
20℃におけるオキシムエステル系光重合開始剤の溶解度が、溶剤組成物100重量部に対して4重量部以上である、請求項1〜8の何れか1項に記載のフォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物。
【請求項10】
オキシムエステル系光重合開始剤と、請求項1〜4の何れか1項に記載のフォトレジスト製造用溶剤または溶剤組成物とを含むことを特徴とするフォトレジスト製造用組成物。
【請求項11】
上記オキシムエステル系光重合開始剤が、下記式(1)で表される化合物(1)、下記式(2)で表される化合物(2)又は下記式(3)で表される化合物(3)である、請求項10記載のフォトレジスト製造用組成物。
【化9】

【化10】

【化11】

【請求項12】
上記オキシムエステル系光重合開始剤が上記化合物(1)である、請求項11記載のフォトレジスト製造用組成物。
【請求項13】
上記オキシムエステル系光重合開始剤が上記化合物(2)であり、上記溶剤Aが1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)ピリミジノンである、請求項11記載のフォトレジスト製造用組成物。
【請求項14】
上記オキシムエステル系光重合開始剤が上記化合物(3)であり、上記溶剤Aが1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)ピリミジノンである、請求項11記載のフォトレジスト製造用組成物。

【公開番号】特開2012−198532(P2012−198532A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−49823(P2012−49823)
【出願日】平成24年3月6日(2012.3.6)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】