説明

フォルモテロールを含むエアゾール

【課題】可逆的な慢性閉塞性肺疾患(COPD)、不可逆的なCOPDの両方のCOPDの処置における有機化合物の使用を提供すること。
【解決手段】慢性閉塞性肺疾患の処置のための吸入薬の製造のための、フォルモテロールまたはその薬学的に許容され得る塩またはその溶媒和物、または該塩の溶媒和物(A)、および(A)1μg当たり400μgから5000μgの薬学的に許容され得る粒状の希釈剤または担体(B)の使用により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可逆的な慢性閉塞性肺疾患(COPD)、不可逆的なCOPDの両方のCOPDの処置における有機化合物の使用に関している。可逆性は、サルブタモールのような短時間作用性ベータ−2アゴニスト気管支拡張薬の標準的な用量の吸入の、肺活量計によって測定した1秒量(FEV)に対する効果を参照することによって決定する。COPDの異なる段階の特徴は、米国胸部学会(ATS)の公式声明で述べられており:Am J Respir Crit Care Med Vol 152, pp S77−120,1995、またヨーロッパ呼吸器学会(ERS)の合意声明でも記述されている:European Respiratory Journal 1995, 8, 1398−1420。
【発明の概要】
【0002】
驚くべきことに、ここで、本発明に従って、フォルモテロールまたはその薬学的に許容され得る塩またはその溶媒和物または該塩の溶媒和物(以下では代わりにフォルモテロール有効成分と述べる)は、フォルモテロール有効成分1μg当たり400μgから5000μgの希釈剤または担体を添加した乾燥粉末として吸入することによって投薬したとき、COPDの処置に特に有効であることが見出された。COPDの患者の吸入によるこのような混合物の投薬は、顕著な気管支拡張、例えば、COPDの処置において重要である顕著な循環器系への副作用を伴わない非常によい安全性特性、およびSt George's Respiratory Questionnaire (SGEQ) による評価でクオリティー・オブ・ライフの顕著な改善を容易にする。
【0003】
それゆえに、本発明は、一態様として、慢性閉塞性肺疾患の処置のための吸入薬の製造における、フォルモテロールまたはその薬学的に許容され得る塩またはその溶媒和物または該塩の溶媒和物(A)、および(A)1μg当たり400μgから5000μgの薬学的に許容され得る希釈剤または担体(B)を含む乾燥粉末の使用を提供する。
【0004】
関連する態様として、本発明は、慢性閉塞性肺疾患の処置のための使用において、上記で定義された(A)および(B)を含む乾燥粉末の形態の薬学的組成物を提供する。
【0005】
別の態様として、本発明は、慢性閉塞性肺疾患の処置が必要な患者に、遊離形態または薬学的に許容され得る塩およびその溶媒和物および該塩の溶媒和物の形態であるフォルモテロール(A)、および(A)1μg当たり400μgから5000μgの薬学的に許容され得る粒状の希釈剤または担体(B)を含む、乾燥粉末の有効量を吸入によって投与することからなる、慢性閉塞性肺疾患の処置方法を提供する。
【0006】
さらなる態様において、本発明は、乾燥粉末がプロピオン酸フルチカゾン、フランカルボン酸モメタゾン、チオトロピウム塩を事実上含まない、慢性閉塞性肺疾患の処置のための吸入薬の製造における、フォルモテロールまたはその薬学的に許容され得る塩またはその溶媒和物または該塩の溶媒和物(A)、および(A)1μg当たり400μgから5000μgの薬学的に許容され得る粒状の希釈剤または担体(B)を含む、乾燥粉末の使用を提供する。
【0007】
フォルモテロール有効成分(A)は、何れの異性体でも、または異性体の混合物でも、例えば純粋なエナンチオマー(特に R,R−エナンチオマー)、エナンチオマーの混合物、ラセミ体またはその混合物でもよい。フォルモテロールの薬学的に許容され得る塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸などの無機酸、もしくは酢酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、安息香酸、サリチル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、p−メトキシ安息香酸、ヒドロキシナフトエ酸、メタンスルホン酸、ベンズスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸の酸付加塩を含む。フォルモテロールおよびその薬学的に許容され得る塩の適切な溶媒和物は、水和物を含む。本発明による使用におけるフォルモテロールの好ましい形態は、フマル酸フォルモテロール、特にフマル酸フォルモテロール二水和物であって、便宜的にはラセミ体である。上記のフォルモテロール、その塩、その水和物およびその塩の水和物は、例えば US3994974 もしくは US5684199 に記載されたような既知の方法によって、製造し得る。
【0008】
それゆえに、好ましい具体的態様において、本発明は、慢性閉塞性肺疾患の処置のための吸入薬の製造における、フマル酸フォルモテロール二水和物(A)、および(A)1μg当たり400μgから5000μgの薬学的に許容され得る希釈剤または担体(B)から成る、または本質的にそれらから成る、乾燥粉末の使用を提供する。
【0009】
適切な希釈剤または担体は、糖類および/または糖アルコール、例えばグルコース、アラビノース、デクストロース、フルクトース、リボース、マンノース、スクロース、トレハロース、ラクトース、マルトース、デキストランなどの単糖類、二糖類および多糖類、マンニトールなどの糖アルコールおよびそれらの2以上の混合物を含む。好ましい希釈剤または担体は、特に一水和物の形態のラクトースである。希釈剤または担体は、一般的にフォルモテロール有効成分(A)1μg当たり400から4000μg、例えば800から3000μg、より好ましくは1000から2500μg、特に2000から2500μg存在する。フォルモテロール有効成分(A)の平均粒子径は、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、特に1から5μmである。希釈剤または担体(B)は、例えば最大径300μm、好ましい最大径は212μmの、粒子の形態で乾燥粉末中に存在し得る。希釈剤または担体(B)は、便宜的に中央粒径(median particle size)が40から100μm、例えば50から75μmであり得る。フォルモテロール有効成分(A)の粒子サイズ、および希釈剤または担体(B)の粒子サイズは、常法によって、例えばエア・ジェット・ミル、ボール・ミル、またはバイブレーター・ミルによる磨砕、篩過、微細沈殿、スプレー・ドライ、凍結乾燥、超臨界溶媒からの再結晶などによって、望ましいレベルの粒子径まで小さくし得る。
【0010】
本発明の好ましい具体的態様において、乾燥粉末は、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの、通常薬学的に許容され得る天然または合成高分子のカプセルに充填され、カプセルはフォルモテロール有効成分(A)を単位用量含む。本発明により吸入すべきフォルモテロール有効成分(A)の用量は、一般的に1μgから60μgであり得る。(A)がフマル酸フォルモテロール二水和物である時、用量は例えば6μgから48μgであり得る。好ましい用量は、6μgから36μg、例えば6μg、12μg、18μg、24μg、30μgまたは36μgであり、特に12μgおよび24μgが好ましく、12μgが最も好ましい。これらの用量は、1日に1回もしくは2回、好ましくは1日に2回投与され得、好ましい1日の最大用量は48μgである。要時使用のためには、6μgもしくは12μgの用量が好ましく、好ましい1日の最大用量に従って随時吸入すべきである。乾燥粉末が、単位用量の(A)を、例えば6μg、12μgまたは24μgの(A)を含んでカプセルに充填されている時、希釈剤/担体の量は、1カプセル当たりの乾燥粉末の全重量が5mg から25mg の間、例えば5mg、10mg、15mg、20mg、または特に25mgが望ましい。
【0011】
特に好ましい具体的態様において、乾燥粉末はカプセルに充填されており、カプセルはフォルモテロール有効成分(A)を12μg、および希釈剤または担体(B)を4988μgから49988μg、例えば4988μgまたは9988μgまたは14988μg、より好ましくは19988μgから24988μg、例えば19988μg、または特に24988μg含む。
【0012】
当分野の技術者によって理解されるように、カプセルに充填された乾燥粉末は、装置を作動させると、乾燥粉末を含むカプセルに穴をあけ、それにより乾燥粉末を使用者が吸入できるように放出するのに適した乾燥粉末吸入装置、すなわち乾燥粉末カプセル吸入器に装着することによって吸入される。このような装置は当分野で周知であり、市販されている。例えば、適切な吸入装置は、ここに引用することによって包含させた US3991761 に、特に US3991761 の請求項に、また US3991761 の図面に関する記載に記載されている;この装置を、WO99 / 45987 に記載されたように、ポリマーでカプセル貫通ピンをコーティングすることによって改善してよい。好ましい吸入装置は乾燥粉末を含むカプセル1つを受け入れるのに対応したもの、例えば1カプセル吸入器、例えば市販の Aerolizer(登録商標)吸入器である。
【0013】
本発明の別の好ましい具体的態様において、乾燥粉末は、例えばフマル酸フォルモテロール二水和物:ラクトースの重量比が5:4995、5:9995、5:14995、10:4990、10:9990、10:14990、12:4988、12:9988、12:14998、15:9985、15:14985である粉末から、1作動当たりに、例えば5μg、6μg、9μg、10μg、12μg、15μg、18μg、20μg、24μg、25μg、30μgまたは36μg、好ましくは5から15μgのフォルモテロール有効成分(A)を、特にフマル酸フォルモテロール二水和物を、単位用量送達するのに対応した複数回乾燥粉末吸入器のリザーバーに収納される。複数回乾燥粉末吸入器は当分野で周知であり市販されている。例えば、適切な複数回乾燥粉末吸入器は WO97 / 20589 に記載されている。
【0014】
本発明によるCOPDの処置は、可逆的または非可逆的な、軽度、中程度または重度のCOPD(慢性の気管支炎、肺気腫を含む)、および例えば気管支痙攣、肺機能喪失、運動能力喪失、息切れ、呼吸困難および肺伸縮性喪失などのCOPDに関する状態の処置を含む。従って、本発明に従うCOPDの処置は、COPDに関する気管支痙攣の維持(予防)処置、要時もしくは救急処置、進行性肺機能喪失を遅らせるための処置、運動能力を改善するための処置、およびSGRQによるクオリティー・オブ・ライフを改善するための処置を含む。
【0015】
COPDの処置における本発明の組成物の効果は、処置中に、一定間隔で、常法によって、例えば1秒量(FEV)、肺活量(VC)、強制肺活量(FVC)、クオリティー・オブ・ライフ、ピーク呼気流量(PEF)、運動能力(例えばシャトル・ウォーキング・テスト)、および肺弾性(CL)などのパラメーターを測定することによってモニターし得る。クオリティー・オブ・ライフは、SGRQによって判定し得る。(P. W. Jonesら、Respir Med. 1991 ; 85 (Suppl B): 25−31)
【実施例】
【0016】
本発明は、次の実施例によって表される。
実施例1
カプセル吸入器における使用に適切なゼラチンのカプセルを準備する。各カプセルは、エア・ジェット・ミルで平均粒子径1−5μmに磨砕したフマル酸フォルモテロール二水和物6μg、および粒子径212μm未満のラクトース一水和物4994μgからなる乾燥粉末を含む。これらのカプセルは、US3991761 に記載された吸入器のカプセルチャンバーにカプセルを挿入し、患者がカプセルチャンバーを通じて空気を吸入する際に、カプセルに穴をあけて乾燥粉末を放出するための穴あけ装置を作動させることによって、COPDの患者の処置に用いる。
【0017】
実施例2−29
フマル酸フォルモテロール二水和物およびラクトース一水和物の用いる量以外は、実施例1を繰り返す。各実施例で代わって用いられた量を下記の表に示す。
【表1】

【0018】
実施例30
COPDに罹患した患者の2つのグループを、フォルモテロールで処置する。一方のグループは可逆性COPDであり、サルブタモール200μgの吸入30分後にFEV1の増大が少なくとも15%見られる。もう一方のグループは非可逆性COPDであり、サルブタモール200μgの吸入30分後FEV1の増大は、15%未満である。両グループを、平均粒子径1から5μmのフマル酸フォルモテロール二水和物12μg、および粒子径212μm未満のラクトース一水和物24988μgを含む乾燥粉末を含むカプセルから、Aerolizer(登録商標)吸入器を用いて、日に二度、12週間吸入を行うことにより処置する。12週間処置を行った後、患者の肺機能(FEV1)を投薬後12時間間隔で測定し、測定したFEV1を投薬後の時間に対してプロットし、得られたプロットの曲線下面積(AUC)を決定する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォルモテロールまたはその薬学的に許容され得る塩もしくは当該薬物または塩の溶媒和物(A)、および成分(A)1μg当たり400μgから5000μgの薬学的に許容される粒状の希釈剤または担体(B)を含む乾燥粉末であって、成分(B)の中央粒径(median particle size)が50μmから75μmであり、かつ成分(A)が唯一の有効成分であり、その平均粒子径が10μm以下である、慢性閉塞性肺疾患(COPD)処置用吸入薬。
【請求項2】
成分(A)がフマル酸フォルモテロール二水和物である、請求項1に記載された吸入薬。
【請求項3】
成分(B)が糖類(saccharide)および/または糖アルコールである、請求項1または2に記載された吸入薬。
【請求項4】
成分(B)がラクトースである、請求項3に記載された吸入薬。
【請求項5】
成分(B)が成分(A)1μg当たり800μgから3000μg存在する、請求項1ないし4の何れかの請求項に記載された吸入薬。
【請求項6】
乾燥粉末がカプセルに入っており、そのカプセルには成分(A)が単位用量含まれる、請求項1ないし5の何れかの請求項に記載された吸入薬。
【請求項7】
カプセルが12μgの成分(A)および19988μgから24988μgの成分(B)を含む、請求項6に記載された吸入薬。
【請求項8】
乾燥粉末が、1作動当たり成分(A)を単位用量送達するのに対応した複数回乾燥粉末吸入器のリザーバー中に収納されている、請求項1から5の何れかの請求項に記載された吸入薬。

【公開番号】特開2013−75909(P2013−75909A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−92(P2013−92)
【出願日】平成25年1月4日(2013.1.4)
【分割の表示】特願2001−541478(P2001−541478)の分割
【原出願日】平成12年11月28日(2000.11.28)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】