説明

フォンビルブランド因子(VWF)マルチマーを検出する方法およびシステム

フォンビルブランド因子(vWF)マルチマーの電気泳動移動度分布を分析する方法は、複数のvWFマルチマーを含むサンプル媒体を生成することを含む。サンプル媒体に電界を印加することによって、vWFマルチマーをサンプル媒体中の電気泳動度によって電気泳動的に分離して、分離されたvWFマルチマーを生成する。サンプル媒体中の分離されたvWFマルチマーに光を照射して散乱光を発生する。散乱光は検出され、分離されたvWFマルチマーの電気泳動移動度分布は検出された散乱光から決定される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2003年7月7日に出願された、米国仮出願番号60/485,526の優先権を主張するものであり、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は一般に、分光分析法、詳細には電気泳動スペクトル解析法についての方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
フォンビルブランド因子(vWF)は多分散多重結合血漿糖蛋白であり、初期の血小板粘着および凝固第VIII因子の輸送に関与する。vWFマルチマーが大きければ大きいほど、血小板粘着の促進により効果的であるため、vWFマルチマーの粒度(size)分布はその機能に重大な影響を及ぼす。しかし、超巨大マルチマーが存在すると、自発的血小板凝集および粘着が発生し、血栓症状態を生じる。
【0004】
最近の研究では、ADAMTS13(A Disintegrin−like And Metalloprotease with ThromboSpondin type 1 motif(トロンボスポンジン1型モチーフを有するディスインテグリン様およびメタロプロテアーゼ))、肝臓内で主として合成されるプロテアーゼは、そのA2ドメイン内でvWFの蛋白質分解を担うことが明らかになった。ADAMTS13の不足は切断されていない超巨大vWFマルチマーが存在する状態、正常な血漿では一般に観察されない状態を引き起こす[Levy,G.G.et al.,Nature 413:488−494(2001)]。さらに、これらの研究は、このメタロプロテアーゼの抑制および活性のレベルは血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の患者の診断および治療に有効であることを提示している[Mannucci P.et al.,98:2730−35(2001)]。これらはADAMTS13異常のいくつかの異なる病状発現である。先天性TTPでは、ADAMTS13が量的に不足していることが判明している。後天性TTPでは、IgG自己抗体は、ADAMTS13を抑制するように形成されている。後天性TTP/HUS(溶血性尿毒症症候群)の他の形態では、ADAMTS13は変動する濃度で存在している。例えば、ADAMTS13の不足は、子供の大腸菌感染、骨髄移植における肝静脈閉塞症およびさまざまな薬物毒性によって生じる。
【0005】
vWFは日常的な診断での血液検査には現れないため、vWFの検査室診断および細分類は困難であった。したがって、医師は、各患者に対する最高およびもっとも安全な治療を確立するため、特定のvWF変種を決定するための特殊な診断血液検査を指示しなければならない。
【0006】
現在、vWF異常の診断についてはいくつかの種類の分析方法が存在する。このような分析での使用においては、正しい診断のために、vWF抗原を特定しなければならない。これらの分析は、高親和性抗体に対する放射標識抗原および非標識抗原の競合結合を含む放射標識免疫検定法(RIA)、抗原−抗体反応を測定する酵素−基質相互作用の呈色反応生成物を用いる酵素免疫測定法(EIA)および酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)[米国特許5,202,264を参照]、およびFv領域でラテックス粒子に結合する抗体を利用、かつ血液のサンプルに存在する抗原との相互作用に対するFab領域を示すラテックス免疫測定法(LIA)[米国特許第5,585,278号を参照]などのさまざまな分析方法を含む。
【0007】
上述の免疫学的検定法は簡単で幅広く使用されているが、いくつかの欠点を持つ。上述の免疫学的検定法は標識抗体を必要とするが、それらは極めて高価であり、放射性標識を使用する場合、本質的な危険を伴う。これに加えて、抗原との蛋白の非特異結合の発生、抗体複合体の形成、および一般的に使用されるさまざまな種類の固体支持体の存在は、バックグラウンドノイズを増加し、感度を低減し、その結果、偽陽性判定がなされることになる[Harlow,E.Antibodies:A Lavoratory Manual,Cold Springs Harbor Laboratory 1988]。
【0008】
従来は、病状に関するvWFの異常性はさらに確認され、Western Blot電気泳動を用いてvWFの多重結合構造および粒度分布分析により細分類される。原則的には、40程度の異なる分子量のポリマーは、500,000および2000万Mrの上限分子量のダイマーに基づいて可能である。Western Blot電気泳動を用いたvWFマルチマーの粒度分布の現在の評価では、10から15の明らかに大きな電気泳動易動度を示す。この従来および現在の方法を用いて、抗原の電気泳動的に分離される亜種のエピトープを検出し、電気泳動移動度によるマルチマーのスペクトル分布結果を得る。公知の分子量基準の電気泳動法により、抗体が生成される各抗原の結合の分子量の決定が可能になる[Colman RW.Hemostasis and Thrombosis,Basic Princples and Clinical Practice,4th edition; pp 825−837]。この方法の欠点は、高コスト、分析の完了に通常3〜5日を要すること、マルチマーの識別のための放射線、蛍光または化学ルミネセンスを用いた抗vWF抗体を標識付けするレポータグループの必要性、および超巨大分子量のマルチマーの分解能の低減を含む。
【0009】
さらに、vWFに関する疾患は非特異的出血症状の持続性の診断問題を含む。血漿vWF濃度の正常値の範囲が広いため、vWF:RCO(リストセチン補助因子)およびvWF:Agに対する低い値が存在する場合、vWFに対する現在の診断試験は値が限定される。さらに困難なことは、出血回数がvWFレベルに比べてさらに広い通常変動を有するという事実である。したがって、以前の公知の試験では、vWF関連の疾患の正確で信頼できる診断に不可欠である高い精度を実現できない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
現在、低コストで効率が高く、医師、研究室および患者に有利な詳細な分子情報を提供する診断試験に対する強い要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態によれば、vWFマルチマーを物理的に特性決定する方法およびシステムが提供される。vWFマルチマーの分布、濃度、拡散係数および粒度が決定される。例えば、サンプル媒体中のvWFマルチマーの電気泳動移動度の分布が決定される。電気泳動移動度の分布は、例えば、サンプル媒体中のvWFマルチマーの粒度、濃度、拡散係数、重量および分布の計算に使用される。
【0012】
本発明の特定の実施形態においては、フォンビルブランド因子(vWF)マルチマーの電気泳動移動度の分布を分析する方法は、複数のvWFマルチマーを含むサンプル媒体を生成することを含む。分離されたvWFマルチマーを生成するために、vWFマルチマーは、サンプル媒体に電界を印加して、サンプル媒体中で電気泳動移動度によって電気泳動的に分離される。サンプル媒体中で分離されたvWFマルチマーに光を照射して散乱光を発生する。散乱光は検出され、分離したvWFマルチマーの電気泳動移動度の分布は検出された散乱光から決定される。
【0013】
特定の実施形態においては、vWF異常および/または疾患は電気泳動移動度の分布に基づいて特定される。vWF異常および/または疾患はI型vWF疾患、II型vWF疾患、III型vWF疾患、亜種IIA型vWF疾患、亜種IIB型vWF疾患、亜種IIM型vWF疾患、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)および溶血性尿毒症症候群(HUS)から成るグループから選択される。例えば、電気泳動移動度の分布は、一連のvWF異常および/または疾患に対応するパラメータを比較する。パラメータは、一連のvWF異常および/または疾患に対応する複数のスペクトルに基づいている。特定の実施形態においては、ADAMTS異常および/または疾患は、電気泳動移動度の分布に基づいて特定される。
【0014】
特定の実施形態においては、サンプル媒体の光子相関分光(PCS)スペクトルが生成され、分子の粒度分布はサンプルのPCSスペクトルに基づいて決定される。vWF異常および/または疾患は分子の粒度分布および電気泳動移動度の分布に基づいて特定される。したがって、電気泳動および非電気泳動の分光分析法を組み合わせて、サンプル媒体中にvWF異常が存在するかどうかを決定できる。
【0015】
電気泳動移動度の分布の決定は電気泳動準弾性光散乱分析法により実行される。例えば、位相シフトは測定された自己相関関数から散乱光において検出される。ドップラーシフトは入射光と比較した散乱光において検出できる。次に、散乱粒子の電気泳動移動度が計算される。
【0016】
光源はコヒーレント光源である。サンプル媒体は容器で提供され、電気泳動的な分離工程が容器内のサンプル媒体を用いて実行される。露出工程および検出工程は両方とも、容器内の溶液を用いて実行される。特定の実施形態では、容器はキャピラリーゾーンを画定するかまたは含み、例えばキャピラリーゾーン電気泳動法により、サンプル媒体中のvWF異常および/または疾患のキャピラリー分光分析決定を促進する。
【0017】
特定の実施形態においては、電気泳動的に分離する工程、露出工程および検出工程は、合計時間が5分未満、例えば1分未満で実行される。
【0018】
決定された電気泳動移動度の分布は1000万、2000万またはそれ以上までの分子量を有するvWFマルチマーを含む。
【0019】
特定の実施形態においては、サンプル媒体を生成する工程は、血漿サンプルを準備し、血漿サンプルからvWFを精製してサンプル媒体を生成することにより実行される。フォンビルブランド因子(vWF)マルチマーは人体のフォンビルブランド因子マルチマーである。
【0020】
本発明の別の実施形態によれば、サンプル媒体中のフォンビルブランド因子(vWF)分解酵素の存在を決定する方法は、ある一定量のvWFマルチマーを含むサンプル媒体を生成することを含む。酵素がサンプル内に存在する場合、vWF分解酵素を含む疑いのある標本をサンプル媒体に加えて、サンプル媒体中の高分子量のvWFマルチマーを分解させる。vWFマルチマーは、サンプル媒体に電界を印加して、サンプル媒体中で電気泳動移動度により電気泳動的に分離され、分離されたvWFマルチマーが生成される。サンプル媒体における分離されたvWFマルチマーに光を照射して散乱光を発生する。散乱光は検出され、分離されたvWFマルチマーの電気泳動移動度の分布は検出された分散光から決定される。vWF分解酵素が存在するかどうかは電気泳動移動度の分布から決定される。
【0021】
特定の実施形態においては、サンプル媒体の光子相関分光(PCS)スペクトルが生成される。分子の粒度分布はサンプル媒体のPCSスペクトルに基づいて決定される。vWF分解酵素が存在するかどうかは分子の粒度分布および電気泳動移動度の分布から決定される。vWF分解酵素はADAMTS13であり得る。
【0022】
本発明の別の実施形態によれば、サンプル媒体中のフォンビルブランド因子(vWF)マルチマーの電気泳動移動度分布を分析するシステムは、電気泳動準弾性光散乱(EQELS)分光計を含み、このEQELSは、vWFマルチマーを電気泳動的に分離し、サンプル媒体中のvWFマルチマーについてのEQELSスペクトルを生成するように構成されたEQELSコントローラを備える。EQELS分析器はEQELS分光計と通信する。EQELS分析器は、EQELSスペクトルから分離されたvWFマルチマーの電気泳動移動度の分布を決定するように構成される。システムは使用して、ここで述べたさまざまな工程を実行するために使用される。特定の実施形態では、EQELS分光計はさらに、サンプル媒体の光子相関分光(PCS)スペクトルを発生するように構成される。例えば、EQELS分光計における電界はPCS分光分析法に対してはアクティブにされなくても良い。EQELS分析器はさらにサンプル媒体のPCSスペクトルに基づいて分子の粒度分布を決定するように構成される。
【0023】
本発明の別の実施形態によれば、サンプル媒体中のvWFマルチマーの電気泳動移動度および/または粒度分布の特性を検出する方法は、サンプル媒体にエネルギーを供給して、エネルギーの相互作用出力を生成する。サンプル媒体中のvWFマルチマーの電気泳動移動度の分布および/または粒度分布はエネルギーの相互作用出力に基づいて決定される。
【0024】
例えば、サンプル媒体中のvWFマルチマーの存在、欠損および/または相対量はvWFマルチマーの電気泳動移動度の分布および/または粒度分布に基づいて決定される。供給エネルギーはサンプル媒体への照射光エネルギーを含む。vWFマルチマーの粒度分布は光子相関分光法(PCS)の静的光散乱、電気泳動準弾性光散乱(EQELS)および/またはキャピラリーゾーン電気泳動(CZE)の動的光散乱を用いて決定される。
【0025】
サンプル媒体は、血漿またはその成分および/または希釈緩衝食塩液を含む。エネルギーの相互作用出力は、電気泳動または非電気泳動(PCS)状態下で生成される。
【0026】
サンプル媒体は被検者から得られる血漿サンプルにある一定量の高分子量vWFを追加することにより生成できる。血漿サンプル中のvWF代謝酵素の存在または欠損はサンプル媒体中のvWFマルチマーの電気泳動移動度および/または粒度分布に基づいて決定される。vWF代謝酵素はADAMTS13および/または内皮からのvWFの放出においてvWFを代謝する酵素を含む。176,000Mrの分子量を有するvWF代謝生成物フラグメントの存在または欠損はvWF代謝酵素の存在または欠損を決定するために測定される。被検者に対する診断は、被検者から得られる血漿サンプル中のvWF代謝酵素の存在または欠損に基づいて決定できる。被検者の診断は176,000Mrの分子量を有するvWF代謝生成物フラグメントの存在または欠損に基づいて決定できる。例えば、血漿サンプル中のvWF代謝酵素の不足に関連する生理状態の存在または欠損、または感受性は、サンプル媒体中のvWFマルチマーの電気泳動移動度および/または粒度分布に基づいて決定される。血漿サンプル中のADAMTS13の不足に関連する生理状態の存在または欠損、または感受性は、サンプル媒体中のvWFマルチマーの電気泳動移動度および/または粒度分布に基づいて決定される。生理状態は、TTP、HUS、TTP/HUSから成るグループから選択される病状、内皮の異常作用がvWFを放出する病状、急性冠動脈症候群、糖尿病、高血圧、月経過多および/または腎不全、を含む。
【0027】
特定の実施形態では、被検者は被検者内のvWF代謝酵素の存在を増加するのに効果的な治療薬および/または処理を施される。vWFの電気泳動移動度および/または粒度分布は、治療薬および/または処理を施される前の被検者から取られた第1サンプルおよび治療薬を投与された後の被検者から取られた第2サンプルから決定される。治療薬および/または処理の効果は、第1および第2サンプルからvWFの電気泳動移動度および/または粒度分布に基づいて評価される。治療薬は、組み換えADAMTS13、合成ADAMTS13、組み換えADAMTS13の変種、変異体、フラグメントおよび融合体、および合成ADAMTS13の変種、変異体、フラグメントおよび融合体から成るグループから選択されたADAMTS13プロテアーゼの、潜在的に治療に効果的な量を含む。vWF代謝酵素はADAMTS13を含む。
【0028】
本発明の別の実施形態によれば、ADAMTS13の欠損または不足に関連する病状または生理的状態を発生する危険性を有するかまたは危険性がある被検者を特定する方法は、生理学的なサンプルであって、その中に正常な被験者にはADAMTS13が存在するタイプの生理学的なサンプルを被検者から取得すること、サンプル媒体を提供する高分子量(HMW)vWFのある一定量を生理学的なサンプルに追加すること、サンプル媒体に静的および/または動的光散乱分光分析を実行して、ADAMTS13によるHMVvWFの分解に起因するvWFマルチマーの電気泳動移動度および/または粒度分布を決定すること、およびvWFマルチマーの電気泳動移動度および/または粒度分布に基づいて、ADAMTS13の欠損または不足に関連する病状または生理状態の危険性を有するかまたは危険性がある被検者を特定することを含む。
【0029】
静的および/または動的光散乱分光法は、電気泳動準弾性光散乱(EQELS)、光子相関分光法(PCS)および/またはキャピラリーゾーン電気泳動法(CZE)を用いて実行される。
【0030】
vWFマルチマーの電気泳動移動度の分布および/または粒度分布が176,000Mrの分子量を有するvWFフラグメントを含むかどうかも決定できる。サンプル媒体は、例えばクロマトグラフによる精製を利用して精製できる。
【0031】
サンプル媒体は試薬を含み、この試薬は、ADAMTS13によるHMWvWFの代謝に起因するHMWvWFおよび/またはvWFマルチマーに結合し、またそれらに結合したときにHMWvWFおよび/またはvWFマルチマーの移動性特性を変更して、電気泳動移動度および粒度分布を高精度で決定できる。試薬はBotricetinを含む。
【0032】
本発明の別の実施形態によれば、vWFを代謝するのに効果的な酵素の欠損または不足に関連する病状または生理状態を伴う被検者を治療する方法は、酵素の欠損または不足を抑制する治療薬を被検者に投与すること、治療薬の投与後に酵素が正常な被検者に存在する種類の生理的学サンプルを被検者から取得すること、ある一定量のHMWvWFを生理学的サンプルに追加すること、酵素によるHMWvWFの代謝に起因するvWFマルチマーの電気泳動移動度および/または粒度分布を決定するためにサンプル媒体に対して静的および/または動的光散乱分光分析を実行すること、およびvWFマルチマーの電気泳動移動度および/または粒度分布に基づいて治療薬の有効性または無効性を決定することを含む。
【0033】
治療薬は被検者における酵素の量を潜在的に増加する作用薬を含む。コラーゲン結合分析はvWFマルチマーの特性決定のために使用される。vWFの不完全結合凝集第VIII因子はvWF Normandy分析を用いて特性決定される。さらに、HMWvWFマルチマーおよび超巨大vWFマルチマーに対するvWFも特性決定される。病状または生理状態は、vWFマルチマーの電気泳動移動度および/または粒度分布に基づいて、敗血症、急性冠動脈症候群、静脈閉塞症、薬物中毒および急性炎症から成るグループから選択された、病状または生理状態を含めて診断される。
【0034】
本発明の別の実施形態によれば、vWFの代謝を調整する酵素の欠損または不足に関連する病状または生理状態を有するかまたは発生する危険性がある被検者を特定するシステムが提供される。システムは、生理学的サンプルであって、正常な被験者ではADAMTS13が存在するタイプの生理学的サンプルを被検者から取得する方法、一定量の高分子量(HMW)vWFを生理学的サンプルに加えてサンプル媒体を生成する方法、サンプル媒体に静的および/または動的光散乱分光分析を実行してADAMTS13によるHMWvWFの分解に起因するvWFマルチマーの電気泳動移動度および/または粒度分布を決定する方法、およびvWFマルチマーの電気泳動移動度および/または粒度分布に基づいてADAMTS13の欠損または不足に関連する病状または生理状態を有するかまたは発生する危険性がある被検者を特定する方法、を含む。
【0035】
別の実施形態によれば、被検者のvWF代謝を調整する酵素の欠損または不足の迅速な決定のための分析キットが提供される。キットは、生理学的サンプルであって、正常な被験者では酵素が存在するタイプのある一定量の生理学的サンプルを被検者から取得し、かつ生理学的サンプルに追加するある一定量のHMWvWF取得する手段を含み、この手段により、EQELS(電気泳動の準弾性光散乱)、PCS(光子相関分光法)等を含む静的および/または動的光散乱分光分析法のためのサンプル媒体、または酵素によるHMWvWFの代謝に起因するvWFマルチマーの電気泳動移動度および粒度分布CZE(キャピラリーゾーン電気泳動)分析のためのサンプル媒体を生成し、これにより被検者における酵素の欠損または不足を決定できる。
【0036】
特に、本発明の分析は、フォンビルブランド病、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)/溶血性尿毒症症候群(HUS)等を含む(ただし、これらに限定されない)vWFおよび/またはADAMTS13に関連する疾患に対する被検対象、特に人間の被検者または他の哺乳類の被検対象をスクリーニングするのに役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に、添付図面を参照して本発明を詳細に説明し、本発明の好ましい実施形態を示す。しかし、本発明はさまざまな多様な形態で実現可能であり、ここに記述した実施形態に限定されると解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本発明を詳細および完全に説明するものであり、当業者に本発明の範囲を完全に伝達するために提供される。同一参照符合は全体に渡って同一要素を指す。それぞれの図において要素は縮尺通りには描かれず、詳細を示すために拡大されている。
【0038】
本明細書における本発明の詳細な説明で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、本発明を限定することを目的としない。本発明の説明および添付の特許請求の範囲に用いられるとおり、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈において特に指定しない限り、複数形も同様に含むものである。
【0039】
本発明の実施形態は、vWFおよびvWF−代謝因子を含む媒体中の(例えば、生理学的サンプル中あるいは生理学的サンプルまたはその成分を含む溶液中の)、ADAMTS13などのvWFおよびvWF−代謝因子を迅速に特性決定する方法を提供する。vWFは分子量を変化させる一連のマルチマーとして血漿内に存在する高分子血漿糖蛋白である。さまざまな分光分析法を利用して、サンプル中のvWFマルチマーを分析し、例えば、サンプル内のマルチマーの電気泳動移動度、分子量分布、分子粒度分布および/または拡散係数に基づいて、サンプルを特性決定できる。
【0040】
本発明の実施形態は電気泳動準弾性光散乱(EQELS)分光分析に関して説明されているが、他の電気泳動相互スペクトル分析法(すなわち、電気泳動範囲で生物学的な粒子がスペクトルを生成するエネルギー媒体と相互に作用する分析法)および/または非電気泳動法も利用できることは理解されるであろう。電気泳動法を使用しない分光分析法は光子相関分光分析法(PCS)を含む。
【0041】
さらに、本発明の実施形態は励起光ビームに関して説明されているが、電磁エネルギー、音響エネルギー、超音波エネルギーまたは他の適切なエネルギー媒体を含む、他のエネルギー媒体も使用できる。例えば、電磁エネルギーは、可視光線、赤外線、紫外線および/またはX線の範囲などの、いずれかの適切なスペクトル範囲から使用できる。例えば、約200nm〜700nmの波長を有する化学線は、電気泳動法においてvWFマルチマーとの相互作用に対してエネルギー媒体として使用される。可視光線は、弾性光散乱および準弾性光散乱を含む光散乱分析法において使用される。紫外線は、例えば、毛細管流れ内の生物粒子に照射される紫外線のエネルギー源として紫外線レーザーを有する、キャピラリー電気泳動システムにおいて使用される。したがって、任意の適切なエネルギー源および対応するエネルギー媒体を使用できる。
【0042】
特定の実施形態においては、サンプルから得られるスペクトル特性を用いて、高分子量vWFの分解、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)および血栓性血小板減少性紫斑病/溶血性尿毒症症候群(TTP/HUS)などの、さまざまな状態を診断する。これらの状態の治療もまた、例えば、治療前および治療後に取得したスペクトルの比較により評価される。さらに、ADAMTS13を含むvWF代謝作用薬などの、vWFマルチマーと相互作用する薬剤は、ここに説明される分光分析法を使用して評価される。例えば、薬剤をサンプルに追加する前および追加後にvWFからのスペクトルを収集することにより、vWFマルチマーへの薬剤の影響を比較できる。
【0043】
本発明を実行することによりサンプルを収集される被検者は、医療および診断目的のための人間の被検者、ならびに、他の動物の被検対象、特に、犬、猫、鼠、豚、馬、羊、牛、猿等の、獣医学および薬剤開発の目的のため哺乳類の被検対象を含む。
【0044】
フォンビルブランド因子(vWF)は公知であり、例えば、米国特許第6,531,577号、第6,518,482号、第6,465,624号、第6,410,237号、第6,103,693号および第6,040,143号に記載されており、上記特許の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。本発明で用いられるvWFは天然または組み換え型であり、天然vWFは診断目的のため被検者から収集されるかまたは治療組成の調製のため被検者から収集される。
【0045】
ADAMTS13((A Disintegrin−like And Metalloprotease(reprolysin type)、 with ThromboSpondin type 1 motif)トロンボスポンジン1型モチーフを有するディスインテグリン様およびメタロプロテアーゼ(レプロリジンタイプ))は公知であり、例えば、G.Antoine et al.,Br.J.Haematol.70,257−262(2003),R.Schneppenheim et al.,Blood101,1845−1850(2003),A.Ashida et al.,Am.J.Hematol.71,318−322(2002),S.Cal et al.,Gene283,49−62(2002),X.Zheng et al.,およびJ.Biol Chem.276,41059−41063(2001)に記載されている。本発明の実施形態により使用されるADAMTS13または他のADAMTS酵素は天然または組み換え型であり、天然酵素は診断目的のため被検者から収集されるかまたは治療組成の調製のため被検者から収集される。
【0046】
本発明の実施形態を用いて、高分子量vWFマルチマーおよび超巨大vWFマルチマーを検出できる。通常の範囲のvWFマルチマーの重量は500,000〜20,000,000である。1000万から2000万の分子量は「高分子量」(HMW)のマルチマーと見なされる。ここに使用されている通り、vWFに関する用語「超巨大マルチマー」は2000万Mrより大きな分子量を有するフォンビルブランド因子マルチマーを意味する。超巨大マルチマーは2000万より大きなモノマーを含み、100,000,000と同程度の重さであることもあり、本明細書では、「高分子量マルチマー」または「HMW」などの状態に含まれる。
【0047】
以下の説明の背景として、次にさまざまなスペクトル技法を説明する。
【0048】
動的光散乱(DLS)は、不均一な(粒子を含む)媒体に照射される光の粒子介在散乱および特定の散乱角における散乱ベクトルの時間自己相関関数の測定を含む。散乱強度および自己相関関数から、粒径(流体力学の半径)、形状因子および/または粒子を含む媒体の粒子の他の特性を決定する。動的光散乱はまた光子相関分光分析(PCS)と称される。
【0049】
電気泳動準弾性光散乱(EQELS)は、サンプルに電界を印加して媒体中の粒子を特性決定する動的光散乱法であり、この方法は電気泳動を利用して、粒子は印加された電界内での粒子の運動により、粒子の特性を決定する。キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)は高電界を用いて、電気浸透により細管を通り駆動される粒子の移動を誘導する。次に、粒子は粒度および粒子の表面電荷に関して特性決定される。これらの技法はvWFマルチマーを含む媒体中のvWFマルチマーの特性決定のために使用でき、これら技法では重畳する電界を利用して、これらマルチマーを容易に電気泳動分析できる。溶液中のマルチマーの電気泳動移動度はマルチマーの粒度、マルチマーの総電荷および重畳電界の強度に依存する。
【0050】
したがって、本発明の実施形態は、電気泳動準弾性光散乱(EQELS)、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)および/または、光子相関分光法(PCS)と称される動的光散乱法(DLS)を用いて実行される。さらに、他のエネルギーの相互作用法も使用される。用語「準弾性」は、ここに説明されている分光分析法における光子と粒子の間の相互作用を説明するために使用される(このような相互作用は完全に弾性ではないためである)。すなわち、光子が散乱粒子に衝突すると、比較的小量のエネルギーを失う。
【0051】
ここに説明されている技法で使用される入射光は、一般にコヒーレントである。コヒーレント光は、一般的に、光または光子として定義され、全て、「同相」である本質的同一波長を有する。コヒーレント光はレーザーから得られる。したがって、入射光は変化しないコヒーレント光を用いて、散乱粒子を照射する。インコヒーレント光を使用することもできる。
【0052】
ここで使用されているとおり、散乱光は、対象物からの非弾性(準弾性を含む)または弾性散乱を指す。光子は一般的に、電界および磁界の直交配列から生じる波の属性を有する。光散乱においては、光が粒子に当たるとき、電界により粒子内の電子が上下に運動する。電子の振動運動により第2の電界が形成される。この電界は散乱光を形成する。散乱光は、入射光により引き起こされた散乱粒子の電子振動運動から生じる光を含む。
【0053】
入射光の光子が散乱粒子と衝突すると、光子は少量のエネルギーを失い、その結果、入射光の周波数がわずかに低下する。入射光と比較される散乱光のこの「位相シフト」(ドップラーシフトとも称される)は測定の基本である。周波数シフトは、光検出器で散乱光と非散乱光を混合することにより検出される。「ビート」結果およびビート周波数の大きさは一般に散乱粒子の移動度に比例する。EQELSの場合、ビート周波数の大きさは粒子の電気泳動移動度に比例する。対照的に、PCSまたはQELSでは、粒子運動はその拡散係数に比例する。
【0054】
ここで使用される電気泳動移動度は重畳電界の効果により生じる浮遊荷電粒子に生じる運動を指し、この運動は粒子に対する溶剤の粘性抵抗と釣り合う。電気泳動移動度は、大きさ、重量および分布の計算のため使用される。なお、粒径は一般にその拡散係数と等価である。
【0055】
あらゆる特定理論に拘束されないで、粒子がDebye Huckle距離に比べて大きい場合、表面電荷は一般に粒子の動きを決定する。Debye Huckle距離は浮遊粒子の帯電表面全体に渡って形成された溶剤の対イオン層により画定され、その層の厚みは粒子の表面電荷の大きさおよび浮遊溶液のイオン強度に依存する。
【0056】
自己相関関数は多数の粒子(集団)の相対位置の相関を求めるための統計力学法であり、例えば、一般式を有する。
【数1】

ここで、τは時間増分、Iは散乱強度、およびtは時間である。特定の実施形態では、自己相関関数の時間依存性を用いて、散乱粒子の集団の時間経過に伴う運動を決定する。
【0057】
マルチマーの分子量の決定に対する電気泳動移動度の計算は次のとおり実行される。特定の実施形態においては、試験結果は(1)周波数シフト、(2)ゼータ電位および/または(3)電気泳動移動度を含む定量表示のいくつかの異なる形式で示される。データもまた、(1)拡散係数、(2)固有の寸法および/または(3)分子量および/または粒度、を含む形式で提示できる。後者の2つの量は各マルチマーの拡散係数から計算される。各マルチマーの拡散係数は次のとおり決定される。移動度スペクトルにおける各マルチマーが分子量に対して均一である場合(電気泳動法により得られるものと同様に)、スペクトルの各帯域の形状または線形状はローレンツ形でなければならない。ローレンツ形の線形状は次のとおり記述される。
【数2】

【0058】
特定のマルチマーを表す、個々の帯域の1/2幅はS2Dであり、グラフ化することにより、それぞれの1/2の幅に対するsin2(θ)Dを決定できる。したがって、電気泳動移動度分布は計算されたおよび/または表示された電気泳動移動度分布から直接決定され、および/または直接表示されるか、あるいは、上に説明されているとおり別の定量表示から間接的に決定および/または表示できる。
【0059】
本発明の実施形態はADAMTS13のようなvWFマルチマーおよびvWF代謝因子を検出および分析する迅速な方法を提供する。本発明の実施形態はTTPおよびTTP/HUSの診断および/またはこのような状態の治療の効果を監視するのに使用される。本発明の実施形態により分析される多重結合vWF種は、分子量、分子配列、分子構造、および/またはアミノ酸シーケンスにおいて相互に異なる分子形態のvWFをさまざまに含む。
【0060】
本発明の実施形態は、電気泳動準弾性光散乱(EQELS)、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)、および光子相関分光法(PCS)と称される動的光散乱法(DLS)を含むさまざまな技法により、溶液中に浮遊するvWFマルチマーおよび/または溶液内のADAMTS13などのvWF代謝因子を評価するのに適する。
【0061】
各vWFマルチマーの電気泳動移動度は、例えば、本発明の例示の実施形態において以下に記載されるとおり、電気泳動準弾性光散乱(EQELS)により決定される。
【0062】
典型的なEQELS分光計10は図1に示されている。分光計10は、サンプル20に光線を照射するレーザー14を含む。サンプル20は、サンプル20に電界を提供する2つの電極28の間に配置される。サンプル20中の荷電粒子は、電界を印加されたために運動する。例えば、サンプル20はvWFサンプルなどの対象粒子が溶液内に存在するかまたは浮遊しているサンプル媒体を含む。例えば、サンプル媒体は、血漿、血漿生成物、蛋白質、核酸、細胞、細胞生成物、多糖類等を含む。サンプル20中の粒子運動はレーザー14により提供される一般的なコヒーレント光から準弾性散乱により検出される。入射光子の一部はサンプル20中の運動粒子に衝突する。この衝突が発生すると、光子から少量のエネルギーが放出され、結果として、散乱光の周波数がわずかに低下する。この散乱光は検出器26により検出される。
【0063】
図1に示されているとおり、分光計10は、EQELS信号分析器22を含むプロセッサ12に接続されている。プロセッサ12は分光計10からの信号を受け取り、この信号はEQELS信号分析器22により分析される。例えば、検出器26により検出された散乱光は分析され、わずかな周波数シフトの大きさが決定される。この周波数シフトは、一般にサンプル20中の粒子運動の速度に比例し、ドップラーシフトとして検出される。信号分析器22はヘテロダイン法によりドップラーシフトを測定し、ヘテロダイン法では、周波数シフトされない光を散乱光と混合して「ビート」を生成する。この信号は自己相関関数として測定され、次にフーリエ変換して、解釈のためにパワースペクトルを求める。
【0064】
特定の実施形態では、EQELS分光計10を用いて、サンプル20中に含まれるADAMTS13などの、vWFマルチマーおよび/またはvWF代謝因子を検出および/または特性決定する。EQELS分光計10からのスペクトルは、高分子量vWF、TTPおよび/またはTTP/HUSの低下などのさまざまな状態の診断に使用される。EQELS分光計からのスペクトルは治療前および治療後に比較され、所定の治療における治療上の値を評価する。
【0065】
特定の実施形態において、EQELS分光計10を用いて、サンプル媒体中にvWFマルチマーを含むサンプル20に対するEQELSスペクトルを検出する。EQELSスペクトルは既知のスペクトルのデータベースと比較される。上記既知のスペクトルのそれぞれは、正常なvWFまたはvWFに関するさまざまな異常または疾患などの、既知の複数のvWF状態の1つに対応する。媒体中のvWFマルチマーは比較に基づいて特性決定される。
【0066】
別の特定の実施形態においては、EQELS分光計10を用いて、ADAMTS13などのvWF代謝因子を評価または特性決定する。
【0067】
図2は、本発明の実施形態によるシステム、方法、およびコンピュータプログラム生成物を示す、データ処理システムの典型的な実施形態のブロック図である。データ処理システム110は、分光計125およびメモリ114と通信するプロセッサ120を含む。分光計125に使用される典型的なEQELSシステムは図1に示されている。しかし、他の種類の分光計、例えばPCS、DLS、EQELS分光計またはCZE装置なども使用できることは理解されるであろう。図2に示されているとおり、分光計125はサンプル修正システム135を含む。サンプル修正システム135は、vWF代謝因子(例えばADAMTS13)または治療薬などの物質をサンプルに追加することなどにより、分光計内のサンプルを修正するように構成される。
【0068】
特定の実施形態においては、分光計125および/またはサンプル修正システム135は省略される。例えば、サンプルは手動で修正できるか、または、スペクトルはサンプル修正システム135によりサンプルを修正することなく、本発明の実施形態により得ることができる。特定の実施形態では、分光計125は省略され、別の分光計から取得されたスペクトルはデータ処理システム110に提供されて、分析される。
【0069】
サンプル修正システム135はサンプルを修正できるが、この修正は、例えば、ADAMTS13などvWF代謝作用薬の追加、溶液の追加、サンプル媒体のpHの変更、サンプル媒体の温度の変更、サンプル媒体のイオン強度の変更、対象粒子の結合特性を変更する薬剤の追加、および/または対象のvWF粒子に対する合成薬剤の追加によりなされる。結合剤の例は、抗体、細胞、微生物、リガンド、蛋白質、ペプチド、核酸、多糖類、脂質、リポ蛋白、ハプテン、および薬剤化合物を含む。サンプル精製は、各種の親和性(免疫のまたはリガンドの)方法のいずれかにより達成される。サンプルに結合する抗体またはペプチドはカラムマトリクスまたはミクロビーズと共有結合できる。次にサンプルは親和剤により結合され、所望の溶液に移される。サンプルは、その後、親和剤から抽出され特性決定される。
【0070】
プロセッサ120はアドレス/データバス148を介してメモリ114と通信する。プロセッサ120は任意の市販または特注のカスタムマイクロプロセッサである。メモリ114は、データ処理システム110の機能を実行するために使用されるソフトウェアおよびデータを含むメモリデバイスの全体的な階層の見本である。メモリ114は、次の種類のデバイス、すなわちキャッシュ、ROM、PROM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、SRAMおよびDRAMを含むが、これには限定しない。
【0071】
図2に示されているとおり、メモリ114はデータ処理システム110内で使用されるソフトウェアおよびデータのいくつかのカテゴリ、すなわち、オペレーティングシステム152、アプリケーションプログラム154、入力/出力(I/O)デバイスドライバ158およびデータ156を含む。データ156は、分光計125からの既知のスペクトルのプロファイル144および/またはスペクトルのデータ146のデータベースを含む。既知のスペクトルのプロファイル144および/またはスペクトルのデータ146のデータベースはサンプルを識別または特性決定するために使用される。例えば、既知の状態を有するvWFサンプルからのスペクトルは診断のためのパラメータを決定するために使用される。このようなパラメータ内の範囲に入るスペクトルは、同一または類似の状態を潜在的に有すると診断される。例えば、ある特定のフォンビルブランド病の状態は低濃度の高分子量(HMW)vWFマルチマーを有する。
【0072】
当業者には明らかなとおり、オペレーティングシステム152は、例えば、ニューヨーク州アーモンク市のIBM社のOS/2、AIX、OS/390またはSystem390、ワシントン州レドモンド市のマイクロソフト社のWindows(登録商標) CE、Windows(登録商標) NT、Windows(登録商標) 95、Windows(登録商標) 98、Windows(登録商標) 2000またはWindows(登録商標) XP、Unix(登録商標)またはLinuxまたはFreeDSD、Palm社のPalm OS、アップルコンピュータのMac OS、Lav View、または独自のオペレーティングシステムなどの、データ処理システムにおける使用に適した任意のオペレーティングシステムである。I/Oデバイスドライバ158は通常、デバイス、例えば、I/Oデータポート、データストレージ156およびメモリ114および/または分光計125の特定の構成要素と通信するアプリケーションプログラム154により、オペレーティングシステム152を介してアクセスされるソフトウェアルーチンを含む。アプリケーションプログラム154はデータ処理システム110のさまざまな機能を実現するプログラムの例であり、好ましくは本発明の実施形態による操作をサポートする少なくとも1つのアプリケーションを含む。データ156は、アプリケーションプログラム154、オペレーティングシステム152、I/Oデバイスドライバ158およびメモリ114に属する他のソフトウェアプログラムにより使用される静的および動的データを表す。
【0073】
本発明は、例えば、図2においては、アプリケーションプログラムであるスペクトルプロファイル分析モジュール160によって示されているが、当業者には明らかなように、本発明の教示の恩恵を受けつつ、別の構成も利用できる。例えば、スペクトルプロファイル分析モジュール160はさらに、オペレーティングシステム152、I/Oデバイスドライバ158またはデータ処理システム110の別のこのような論理部分に組み込むことができる。したがって、本発明は図2の構成に制限されると解釈されるべきではなく、ここに説明されるオペレーションを実行する能力のある任意の構成を含むものとする。
【0074】
I/Oデータポートを用いて、データ処理システム110と分光計125または別のコンピュータシステムまたはネットワーク(例えばインターネット)の間に、またはプロセッサにより制御される他の装置に情報を転送する。これらのコンポーネントは、ここに記載されたとおりに作動するために、本発明により構成される多くの従来のデータ処理システムで使用されるような従来のコンポーネントである。
【0075】
本発明は分光計125に関して上に説明されているが、電気泳動分光計および/またはサンプルが電界内に位置しない分光計を含む、さまざまな種類の分光計および分光分析法を利用できることは理解されるべきである。例えば、EQELS、PCSまたはDLS分光計は分光計125に使用される。さらに、他の技法を用いて、サンプルにエネルギーを供給し、サンプルからエネルギー相互作用の出力を収集できる。
【0076】
図1および2に図示されているような、本発明の実施形態による光散乱分析をベースとする技法は、運動粒子から散乱した光と粒子に照射された入射光との間の周波数差を基にしている。散乱光の極めて少ない周波数シフトは直接測定できないため、ヘテロダイン方法を用いて、散乱光を参照光またはシフトされない光と混合する[Johnson,Jr.,CS.Laser Light Scattering.Dover Press,NY,1994]。シフト光および非シフト光の間の周波数差は「ビート」を発生する。ビート周波数は散乱光の周波数シフトの大きさに関連し、この周波数シフトはさらに、散乱する粒子、例えばvWF粒子の移動度に関連する。電気泳動効果は、使用される電気泳動法に依存する均一な電界(約数ボルト/cmから約30,000ボルト/cm)を重畳することにより得られる。電界はパルス化され、その極性はサンプルの極性を避けるために交番する。固定角度(θs)における動く粒子からの散乱強度(Is)は2次領域自己相関関数G2Lhet(τ)としてヘテロダイン法における発振強度として観測され、式1により与えられる[Bern,BJ.Dynamic Light Scattering.John Wiley & Son,NY.1976]。
【数3】

ここで、ILは参照光ビームの強度(局部発振器)であり、Isは散乱光の強度であり、vdは散乱粒子の速度であり、Dは拡散係数であり、τは時間増分である。Kは、下記の式により定義される散乱ベクトルである。
【数4】

ここで、nは屈折率であり、λは入射光の波長である。この式で1つの重要な量は粒子の運動から生じる信号のドップラーシフトK・vdである。測定された自己相関関数のフーリエ変換は、粒子の電気泳動移動度が計算されるパワースペクトルを提供する[Ware,BR.Electrophoretic Light Scattering.Adv.Colloid Interface Sience 4:1−44,1974]。
【0077】
サンプル媒体の温度、イオン強度、pHおよび導電率(図1のサンプル20など)は制御できる。温度の小さな変化は導電率の変化により検出され、試験を通して監視できる。ジュール加熱はパルス幅および電界周波数の調整により制御できる。熱レンズは入射レーザー電力を制御することで避けられる。電気浸透は(γ−グリシドキシプロピル)−トリメトキシシランを用いて最初に散乱細胞をコーティングし、70℃で乾燥し、メチルセルロースによるコーティング、および70℃での再乾燥を行うことにより最小化される。電気浸透アーチファクトの有無は、散乱体積を横切る平坦な電気泳動プロファイルにより確認される。別の方法は、メチルセルロースを用いてキュベットのコーティング工程を削除すること、および固定境界での移動度を測定すること、または別の細胞設計を使用することである。スネルの法則の補正は全ての散乱角度に対してなされる。vWFの動電学的特性はDebye−Huckel等式の領域内にある、この領域では、表面電荷および摩擦力の両方が電界内での運動に重要である。例えば、vWFマルチマーの電荷および摩擦の特性の両方は、移動度スペクトルに寄与する[Pthica BA.細胞接着の物理化学(The physical chemistry of cell adhesion.)Exp.Cell Res.8,123−140,1961]。
【0078】
いずれの特定理論にも拘束されないで、EQELS技法を用いるさまざまなvWF種の間の分解能および区別の基本は、一般に、さまざまなvWFマルチマー種の電気泳動移動度における相違である。電気泳動移動度は電界の影響下での帯電した粒子種の運動である。
【0079】
DLSまたはPCS技法(図1および2に関して説明したEQELS技法の代用とすることができる)を用いた場合などの、電気泳動移動度を発生する電界が存在しない場合、vWF種はなおも熱効果から発生する運動を受ける。例えばブラウン運動、対流性流れおよび/または拡散効果を含む、このような運動の大きさは、溶剤の状態、溶質の濃度、および散乱粒子の分子の大きさにより決定される。したがって、EQELSを用いて、vWFマルチマー間の差を区別し決定し、および/または存在するマルチマーの数を決定するが、PCSまたはDLSもまたさまざまなvWFマルチマー種の拡散係数の差に基づいてvWFマルチマーを検出する。
【0080】
このように、PCSは、サンプルに電界を印加しない点においてEQELSとは異なる。拡散するvWF種の運動の大きさの差は、例えばレーザーまたは他の光源により生成されるような、入射光子と拡散する種の相互作用から生じるドップラーシフトの大きさの差から検出される。急速に移動または拡散する種は、大きなドップラーシフトを発生し、より遅く拡散する種はより小さなドップラーシフトを発生する。そうでない場合、検出方法はEQELSに対して使用される方法に対応する。
【0081】
PCSはvWFマルチマーの分析に対する平行移動拡散係数を決定する正確な方法を提供する。さらに、拡散係数が測定される迅速性により、PCSを高分子の結合を監視する有効な方法にする。EQELSはvWFマルチマーの電気泳動移動度分布の決定に使用される。
【0082】
説明の目的で、EQELS技法は、屈折率一致タンクに含まれるサンプル細胞を使用し、0.1℃の許容差内で制御される屈折性一致流体および温度としてトルエンを使用することにより実行される。散乱放射線は、定義された散乱角度で配置される光電管により測定される。次に、z−平均平行移動拡散係数は、崩壊定数Γの傾きに対するsin2(θs/2)(ここでΓ=K2D、Kは散乱ベクトルである)として、強度正規化された光子カウント自己相関関数から得られる。分子の大きさは流体力学的径として表され、アインシュタインの式により定義されるDから計算される。指数的サンプリング技法に基づいて、分子の粒度分布(例えば、vWFマルチマーの大きさの変化)はPCS自己相関関数から導かれる。フォンビルブランド因子(vWF)は500,000〜2,000万の範囲の変動する分子量の高分子糖蛋白として、10μg/mLにおける正常な血漿中を循環する。vWFマルチマーは内皮細胞および巨核球の両方内で合成されるvWFモノマーで構成される。「前処理vWFモノマー」とも言われる、2813アミノ酸(360,000 Mr.)発生期vWFモノマーは、22アミノ酸シグナルペプチド、741プロペプチド(vWF抗原IIとも呼ばれる100,000 Mr、741アミノ酸)および成熟vWFモノマーで構成される。
【0083】
成熟モノマーは2050アミノ酸を含み、260,000のMrを有する。小胞体では、負に帯電した成熟したvWFモノマーはカルボキシル基の末端に位置する特定のジスルフィド結合配列を介して二量化する。ゴルジ装置では、結果として得た生じたダイマーは、モノマーのD3ドメインに位置する特定のジスルフィド結合の第2セットを介してvWFマルチマーを形成するために、次々に重合する。結果として、大きなポリマーが形成される。プロペプチドは内皮細胞および血小板のα−微粒のWeibel Palade体に成熟したvWFモノマーを取り込むのに必要である。その後、プロペプチドは、furin、サブチリシン様酵素により切断される。
【0084】
マルチマーの粒度、およびマルチマーの著しい多分散性は、ADAMTS13によりA2ドメイン内での蛋白分解に少なくとも部分的に起因する。
【0085】
電子顕微鏡検査によるvWFダイマーの画像化は、約145nmの全体固有寸法を与える線維鎖(34nm)により中央のドメイン(5nm)に接続される2つの球状ドメイン(26×2.6nm)を含む構造を示す。ダイマーのvWFの原子間力顕微鏡(AFM)画像では、5nmのロッドにより接続される38nmの中央ドメインに接続される73nmの2つの側面ドメインを示す。両方の方法による固有寸法は正確に一致する。球状のvWFのAFMは最大774nmの広がったマルチマーを有する146nmの主軸の寸法を示す。球状配列は35ダイン/cm2を上回る機械的なせん断力で直線配列への伸長を受ける。このモデルは、しばしば、「毛糸の玉」と称され、vWFの正常な生物学的機能の現在の概念に良く適合する。機械的せん断力は、小さな「毛糸の玉」から伸長した状態への変形を引き起こすのに極めて重要である。
【0086】
vWFモノマー組織について、ドメイン構造および機能に関して、vWFモノマー自体は以下の構造的ドメイン(NH2)、D’−D3−A1−A2−A3−D4−B1−B2−C1−C2(CO2H)に配列される。ドメインは反復同族関係の領域として定義される。未だに完全に特定されていないが、生物学的機能とドメインとの関係はいくつかのドメインに対して解明されている。
【0087】
ドメインD’およびD3について、vWFの重要な機能の1つは凝集第VIII因子の輸送であり、凝集第VIII因子はvWFが血漿にさらされると発生し、凝集第VIII因子を結合する。この輸送機能に加えて、第VIII因子は、vWFに結合されている間は、活性蛋白質Cまたは活性凝集因子X(FXa)により蛋白質分解から保護されている。結合部位はvWFのD’D3ドメイン内で残基78−96に精製される。vWF(Kd=0.25nM)による凝集第VIII因子の非共有結合は、vWFにおけるD’およびD3ドメインと凝集第VIII因子におけるA3ドメイン(vWF(81−83)のA3ドメインと混同してはならない)との相互作用により発生する。凝集第VIII因子A3ドメインにおけるArg1689の分断はvWFから凝集第VIII因子を解放する。残基19、28、53、54および91でvWF領域を結合する凝集第VIII因子における変種は、vWFへの凝集第VIII因子の正常な結合を妨げ、大量出血を引き起こし、血友病と誤診される場合があり、vWF Normandyと称される。血小板表面への凝集第VIII因子の輸送メカニズムは未だに明らかではない。
【0088】
ドメインA1については、ドメインA1およびA3は、インテグリンのIドメイン、細胞外基質の補体成分およびras−p21ジヌクレオチド結合部位を含む大きなスーパーファミリーを有する構造類似性を共有する。正極性に帯電したA1ドメインはアミノ酸残基497および716の間に配置され、184アミノ酸のかなり大きなループを生成するCys509−Cys695の間にジスルフィド・ブリッジを有する。
【0089】
ドメインA1はドメインA2およびA3と共に、vWFと血管壁に配置されるコラーゲンと血小板表面に配置されるGPIb/V/IXとの間の相互作用を仲介する。A1反復は血小板GPIbの結合部位を含む。GPIbはそれぞれ、モル比2:2:1:2でGP Ibα、GP Ibβ、GP VおよびGP IXから成る複合体として存在する。vWFはGPIb/V/IXを構成的に結合しないが、vWFは分子の伸長を通して活性化を必要とする。
【0090】
A1ドメインによるGPIbの結合は、ドメインA3と非線維コラーゲンの間の相互作用により調整されるA1ドメインにおける配置変化を含むと考えられる。配置変化の正確な詳細は明らかでない。A1ドメイン結晶構造の分析によると、および白血球のインテグリンのa−副単位(Iドメインとも称されるαM、β2およびαLβ2)からのデータを用いた推定によると、埋没塩橋の分断はインテグリンのIドメインとして前部上表面から下方のα7螺旋10Aの電荷の再分布および変位の原因となる。Iドメインの場合、この膨張形状は高い親和性リガンド結合に関連し、vWF A1のこの膨張形状はGP Ib結合に関連すると推定される。A3ドメインのコラーゲンおよび/または大きい機械的せん断力との相互作用は、この配置変化を起動すると思われる。A1ドメインはさらに、VI型コラーゲンの第2結合部位、およびスルファチド、アウリントリカルボン酸(ATA)、ボトロセチン(Botricetin)およびヘパリンの結合部位を含む。
【0091】
A2ドメインはアミノ酸部位717から909により定義される。このvWFドメインは、血漿ADAMTS13により分裂され、かつWFマルチマー粒度の調整に関与すると考えられるTyr842とMet843間の部位を含む。ADAMTS13による分割の後、vWFダイマーは176Kdおよび140Kdの質量を有する2つのフラグメントになる。活性化のためカルシウムまたは亜鉛のどちらかを必要とするADAMTS13は、vWFが機械的せん断力あるいはコラーゲンまたは他の蛋白質との後の相互作用のいずれかにより、広げられる及び伸長されない限り、vWFに対して作用しない。A2ドメインの削除はマルチマーの分裂を防止する。
【0092】
負に帯電したA3ドメインはアミノ酸910から1111まで伸長する。このドメインはI型およびIII型コラーゲンの結合部位を含み、アミノ酸1018から1114までの間に配置される。IV型およびVI型コラーゲンの結合部位は公知ではないが、A1またはA3ドメインのいずれにも現れない。A1およびA3の一部から成るキメラのドメインを含む独立した組み換えA−ドメインと、A1またはA3のどちらかを削除されたvWF分子上とに基づいて、主コラーゲン結合部位はA3ドメインに配置されている。独立した組み換えA3ドメインは1.8×10-6MのKdを伴うI型コラーゲンに結合する。
【0093】
コラーゲンの結合およびvWF介在血小板付着のメカニズムは複雑であり、複数の工程を含み、コラーゲンの型により変化する。白血球インテグリン(LFA−1)内で見られるIドメインとは対照的に、vWFのA1またはA3ドメインのいずれにも金属結合部位は存在しない。Iドメインの特性であり、2つの両親媒性螺旋により挟まれた中央の平行なβシートにより形成される、ジヌクレオチド結合折曲部の主題はvWF A−ドメインに存在し、それぞれ、GP Ibおよびコラーゲンの結合部位であると見なされる。A−ドメインおよびA3−ドメインは、詳細には、経験的に観測される疎水性領域を含むことができる。
【0094】
vWFは、初期の血小板付着および血小板への凝集剤第VIII因子の輸送という、2つの主機能を有する。内皮下基底膜および血管の外膜組織に位置するさまざまなコラーゲンは、vWFの特定の対象物として特定されるが、I型およびIII型の線維コラーゲン、VI型の細線維コラーゲン、およびIV型の非線維コラーゲンは最も重要である。大きい機械的なせん断力はvWFを引き伸ばされた分子に物理的に変形させて、血小板付着における機能を高める。vWFの活性化における機械的なせん断力の重要性が問題とされてきた一方で、コラーゲン結合の重要性は、モノクローナル抗体によるA3ドメインの遮断によるコラーゲン結合の阻止により生体内の動脈性の血小板血栓形成を防ぐことを示す、ヒヒの研究により強調されてきた。
【0095】
コラーゲン、vWF、血小板の間の初期の相互作用は血小板付着の初期工程としてのみ役立つ。他のリガンド(おそらくα2β1)が強固な付着に役立つことは明らかである。大きいせん断力の下で、内皮下のvWFは血小板付着の最大50%の割合を占める。
【0096】
A3ドメインによるコラーゲン結合はA1ドメインでの配置変化を誘発するものとして発生し、血小板表面での構成性分泌糖蛋白質Ib/V/IX(GPIb/V/IX)に結合する部位を露出させる。このシークエンスはアシアロ−vWFの結合、vWF−血小板付着、リストセチンおよびボトロセチン両方の結合を阻止するため、GPIbの主結合部位はvWF残基514−542内に存在する。リストセチンまたはボトロセチンのvWF結合はGPIb/V/VXとの結合を強化するが、負に帯電したまたは芳香性のポリマーはGPIbとの結合を阻止する。GPIbがvWFに結合すると、信号変換が発生し、血小板の活性化が生じる。血小板の活性化によって、次に、血小板拡大、凝集、不可逆性血小板付着およびトロンビン生成を調整する、αIIbβ3へのvWFまたはフィブリノゲン結合が生じる。大きいせん断力の状況下で、血小板の凝集は、αIIbβ3へのvWF結合を通して調整される。
【0097】
vWFマルチマーの粒度および濃度の分布における異常は、先天性または後天性の原因から発生する。HMWマルチマーは血小板粘着の主メディエータであるため、HMWマルチマーの損失は特に重大である。I型vWDは最も一般的な型のvWDであり、全てのマルチマー粒度の濃度を低下させる。II型vWDでは、HMWマルチマーは減少するかまたは存在しない。II型BvWDでは、vWFマルチマーはGPIb/V/IX混合物に対親和力を低下させるが、これは、蛋白質分解に対するvWFの脆弱性を増加するA1−ドメインにおけるマルチマーから生じる。A2−ドメインにおける大多数の変種はIIA型のvWDを生成し、この場合、残基Tyr842−Met843の間の分裂がvWFを分解し、HMWvWFマルチマーの損失を招く。例えば本明細書に記載されたスペクトル技法を使用して決定されたサンプル中の、分子粒度および重量分布、電気泳動移動度分布、および/またはvWFの粒度分布は、これらの条件および他の条件を特定する。
【0098】
vWFに関連する臨床上の病状に関しては、フォンビルブランド病は、vWFにおけるさまざまな定量的および/または定性的な欠陥によりそれぞれ特性決定される、多数の疾患の変形体を伴う、臨床的に異質な疾患である。3つの主な疾患の型(型I、II、III)および4つの亜型(IIA、IIB,IIM、IID)がある。vWDは通常診断の血液検査では現れないため、vWDの検査室診断および細分類は困難である。したがって、医師は、各患者に対する最高および最も安全な治療を確立するため、特定のvWF変種を決定するための特殊な診断血液検査を指示しなければならない。
【0099】
血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)および溶血性尿毒症症候群(HUS)はvWFマルチマーの分布およびADAMTS13活性を含む病状である。血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は発生率は低いが、若年成人および若い女性にはより一般的な、潜在的に致死的な病気である。TTPの診断は、熱、腎不全、変動的な精神状態、微小血管症性溶血性貧血(MAHA)および血小板減少症の、古典的な5徴候により確定される。関連のある溶血性尿毒症症候群(HUS)は、E.coli O157:H7に感染した子供によりしばしば見られ、より高い腎機能障害を伴うが、神経系への介入は少ない。先天性および後天性の両方の病気の形態で現れる。後天性のTTPは、感染(特に、E.coli O157:H7からの志賀赤痢菌毒素またはAIDS)、SLEなど自己免疫性疾患、骨髄移植(BMT)、妊娠、慢性の免疫抑制、敗血症および、チクロピジン、シクロスポリン、マイトマイシンCおよびキニーネといった薬品を含む、多くのさまざまな臨床的状態から発生する。
【0100】
したがって、TTPは、血漿交換輸血(PLEX)以外の場合には80%を超える致命率の、多様な病因の症候群である。PLEXを用いても、15%〜20%の範囲の死亡率が一般的である。PLEXの効果は正常血漿の注入による不足しているvWF分裂プロテアーゼ(vWFCP)の交換、および、場合によっては、IgG型免疫グロブリンなど抑止自己抗体の除去を含むと考えられる。慢性再発性TTPが超巨大vWFマルチマー(ULvWF)と関連するという観察報告は、これらのULvWFマルチマーは血小板により容易に結合されるため、「デポリメラーゼ」調整マルチマー粒度はTTPに存在しないことを示している。血漿プロテアーゼ(vWFCP)はvWFの分裂に有効であり、TTPにおいて、vWFはTyr1605−Met1606間のvWFのA2ドメインで分裂される。vWFCPによるvWFの分裂はvWFのせん断力による伸長によって促進される。
【0101】
先天性のTTP患者はADAMTS13に変種を有すると見られてきた。ADAM(ディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼ)系統群の各要素は細胞外基質付着蛋白質の代謝において顕著な役割を果たす。ADAMT系統群は、コラーゲン結合におけるその推定可能な作用を繰り返すトロンボスポンジン−1の追加分を有する。ADAMTS系統群の各要素の機能は多様であるが、全ての系統群の要素は、細胞外基質付着蛋白質を処理する膜固着プロテアーゼである。ADAMTS13はvWFの分裂を調整し、これはTTPにとって極めて重要である。蛋白質分解作用はvWFCPの活性化および/または止血の他の構成要素を含む。
【0102】
ADAMTS13の遺伝形質は常染色体劣性である。ADAMTS13は、シグナルペプチド、41aaプロペプチド、reprolysin様ドメイン、メタロプロテイナーゼドメイン、ディスインテグリン様ドメイン、トロンボスポンジン−1反復、RDGシークエンス(その後に7つの付加されたトロンボスポンジン−1ドメインおよび2CUB−ドメインが続く)を有するCys−richスペーサードメインを含む、1427アミノ酸残基糖蛋白質である。計算された154kのMr(非グリコシル化)は血漿から分離した190k Mr(グリコシル化)vWFCPとよく一致合致する。ADAMTS13は、その短いプロペプチド(わずかに41の残基長)およびCUB−ドメインの存在により、ADAMTS系統群の他の要素から区別される。CUBドメインはADAMTS13に固有であり、コラーゲン結合部位を含む。細胞基質結合はトロンボスポンジンドメインによって生じると仮定される。初期蛋白は、おそらくfurinによるゴルジ体または細胞表面のいずれかにおいて活性化を要求する酵素原であると考えられる。PLEX後に注入された血漿内に含まれるADAMTS13のt1/2は、明確には公知ではないが、PLEX処理された2名のTTP患者に3.3日および2.1日で測定した。3%未満の機能活性度の低下は、臨床的有意性を表すために必要であることを示している。先天性および突発性TTPを伴うADAMTS13の機能的または先天性不足のいずれかの関連性は、TTP患者の約50%に対して間違いなく確立されたように見える。
【0103】
低レベルのADAMTS13およびHMWマルチマーはまた、病状、およびVOD、急性膵炎、妊娠、尿毒症、特発性血小板血症、炎症および肝硬変症などの、TTP以外の生理状態に存在する。本発明は、本発明の特定の実施形態におけるTTP、HUSおよびTTP/HUSに関して説明されているが、このような病状は本発明の適用性に関して説明しているものであり、本発明は、例えば急性冠動脈症候群などの、例えば異常な内皮機能がvWFの放出を介在する病状などのvWFの異常生成を含む、さまざまな病状および生理学的な状態の症状の疾患、治療および/または回復を含む、ことは理解されるであろう。したがって、本発明の分析方法は、同様に、これらの病状および/または生理学的状況の潜在的な存在が、診断上で決定されるかまたは禁忌されるという用途を含む。
【0104】
したがって、本発明は、vWFマルチマーの検出および特性決定、および/またはADAMTS13などの因子によるvWFの分解の迅速な分析方法を提供するものであり、このADAMTS13は、vWFおよび/または分解薬剤に関連するか、指示されるか、または禁忌される病状または生理学的な状況の診断および治療に関する有用性を有する。
【0105】
本発明の迅速な分析方法は、限定されることなく、静的光散乱法および動的光散乱法を利用する方法を含み、これら光散乱法には、EQELS(電気泳動の準弾性光散乱)、PCS(光子相関分光法)他またはCZE(キャピラリーゾーン電気泳動)技法を含み、または、vWF種および/または分解薬剤を含むか、または存在に影響されやすい媒体にエネルギーを照射することによりエネルギー相互作用スペクトルを生成し、および、エネルギー相互作用スペクトルからこのような種および/または作用薬の存在、不足または特性を決定することにより、vWFおよび/または分解薬剤を検出および/または特性決定する他の方法、を含む。
【0106】
エネルギーの相互作用スペクトルは一般に、任意の適切な種類であり、このスペクトルには、エネルギー散乱スペクトル、エネルギー吸光度スペクトル、エネルギー伝送スペクトルまたはこのような種および/または薬剤を含むエネルギー/粒子相互作用を示す、任意の他のスペクトルを含む。エネルギー相互作用は、電気泳動状態または非電気泳動状態下で発生し、エネルギー源は、限定されることなく、電磁エネルギー、音響エネルギー、超音波エネルギーまたは任意の他の適切なエネルギー媒体を含む、所望の相互作用スペクトルを生成するのに有効な任意の適切な種類である。電磁エネルギーの場合、エネルギーは、可視光線、赤外線、紫外線およびX線スペクトル類など、適切なスペクトル類である。特定の実施形態では、化学線が、サンプルにおけるvWFおよび/または代謝作用薬(例えば、ADAMTS13)粒子との相互作用のためのエネルギー媒体として使用され、このような化学線は、例えば、約200nm〜約700nmの範囲の波長を有する。本発明の各種の実施形態は、弾性光散乱および準弾性光散乱を含む光散乱技法など、可視光線放射を使用する。別の実施形態は、毛管流れ内の粒子に照射される紫外線放射のエネルギー源として紫外線レーザーを有するキャピラリー電気泳動方法およびシステムなどのように、紫外線放射を使用する。したがって、任意の適切なエネルギー検出源および対応するエネルギー媒体は、本発明の幅広い実施に使用されることが認識されるであろう。さまざまな好ましい実施形態においては、可視光レーザーは、EQELS(電気泳動の準弾性光散乱)、PCS(光子相関分光法)等またはCZE(キャピラリーゾーン電気泳動)技法を含む、静的光散乱法および動的光散乱法を実行するためのエネルギー検出源として利用される。
【0107】
エネルギー相互作用スペクトルからのvWF種および/または関連する薬剤の決定(例えば、検出、特性決定)は、このような決定のための任意の適切なソフトウェア、システム、分析技法、アルゴリズムなどを用いる適正な方法でなされる。エネルギー相互作用スペクトル方法の説明として、EQELSを主に参照して説明した実例の決定方法は、例えば、2004年5月4日に出願された同時係属の米国特許出願第(欠番)号、Electrophoretic Interactive Spectral Methods and Systems for the Detection and/or Characterization of Cells and/or Microbes[代理人整理番号5470−404]に説明されており、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0108】
被検者を、TTP疾患およびいずれかの他の病状が進行する危険性のある患者と特定でき、これら疾患により内皮の異常機能を引き起こし、その結果、ADAMTS13、および/またはこのような被検者から得られる生理学的サンプル中のvWF種の存在、不足または特性と相関関係のある、代謝因子の欠損または不足に関連するvWFまたは生理状態を発生させる。生理学的サンプル中のvWF種の存在、不足または特性(例えばスペクトル分析により決定される)が決定される。ADAMTS13および/またはいずれかのvWF代謝因子の欠損または不足は相関的に決定できる。
【0109】
内皮の異常機能を引き起こすことにより、ADAMTS13および/またはvWFのいずれかの代謝因子の欠損または不足に関連するvWFまたは生理状態を発生する、TTP疾患またはいずれかの他の病状を有する患者を治療できる。ADAMTS13の欠損または不足を抑制する治療薬は、このような患者に投与され、治療薬の効果は、治療薬の投与後の患者から取得される生理学的サンプル中のvWF種の存在、不足または特性により、決定される。生理学的サンプル内のvWF種の存在、不足または特性は、EQELS(電気泳動の準弾性光散乱)、PCS(光子相関分光法)他またはCZE(キャピラリーゾーン電気泳動)技法または他のエネルギー相互作用スペクトル技法を含む、静的光散乱法および動的光散乱法により、さまざまな特定の実施形態において決定される。
【0110】
TPP疾患または、ADAMTS13および/または任意のvWFの代謝因子の欠損または不足に関連するvWFまたは生理状態を発生する内皮の異常機能を引き起こすいずれかの他の病状の患者の治療は、有効な量のADAMTS13プロテアーゼの治療的な投与を含み、このようなプロテアーゼは、例えば、組み換えADAMTS13、合成ADAMTS13、組み換えADAMTS13の変種、変異体、フラグメントおよび融合体、ならびに、2003年4月17日に発行された米国特許公報第2003/0073116号により詳細に記載されいるとおり、合成ADAMTS13の変種、変異体、フラグメントおよび融合体から選択される。上記特許の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0111】
vWFマルチマーの電気泳動移動度および粒度分布は分析できる。複数のvWFマルチマーを含む媒体を生成できる。エネルギーはサンプル媒体中のvWFに照射され、エネルギーの相互作用の出力は照射されたエネルギーに応じて生成される。媒体中のvWFマルチマーの電気泳動移動度および粒度分布は、エネルギーの相互作用の出力から決定される。
【0112】
エネルギーは、例えば光エネルギーを含み、したがって、エネルギーの相互作用の出力は散乱光出力を含む。エネルギーの相互作用は、電気泳動または非電気泳動状態下で、このような方法の所定の最終用途における要望通りに発生できる。このような散乱光出力を処理して、自己相関関数から散乱光の位相シフト、vWFマルチマーに照射される入射光に関連する散乱光のドップラーシフト、vWFマルチマー移動度(電気泳動状態を与えられた場合の電気泳動移動度)、およびvWFマルチマーの分子量分布を決定できる。正常な範囲のvWFマルチマー重量は500,000〜20,000,000の範囲である。1000万〜2000万の重量は通常高いと見なされ、超巨大マルチマー重量は2000万より大きく、場合によっては1億にもなる。
【0113】
散乱光出力処理工程は、5分未満、1分未満またはそれより短い、極めて迅速な方法で実行される。サンプルはチャンバ内に収容され、それらは、例えばEQELS装置の電気泳動チャンバまたはCZEシステムのキャピラリーチャンバである。
【0114】
vWFマルチマーを含む媒体は、例えば、希釈食塩水、患者の血漿、(例えばクロマトグラフで精製された)精製された血漿、または他の生理学的な流体または試薬液を含む。
【0115】
通常または処理された血漿のvWFは、ゲル透過クロマトグラフィーまたは親和性方法を含むさまざまな種類の方法の1つを使用してさらに精製される。親和性方法は、クロマトグラフィマトリックス、微粒子等に付着する、vWF上の特定の結合部位に誘導される抗体、ペプチド(コラーゲンフラグメント等)、または炭水化物(すなわちヘパリン等)、を使用する免疫沈降法または免疫親和法である。基質に結合されるvWFは、好ましくない物質を除去するために適切な緩衝液で洗浄され、洗浄緩衝液から戻され、適切な溶離緩衝液に再び懸濁される。微粒子は除去され、vWFを含む上澄み液が除去される。vWF溶液は、その後、脱塩され、分析緩衝液に移される。
【0116】
vWF代謝酵素(例えばADAMTS13)は患者のサンプル、例えば、患者の血漿サンプル内で特性決定される。ある一定量の高分子量vWFが患者のサンプルに導入される。エネルギーは、高分子量vWFが加えられた患者のサンプルに照射される。エネルギーの相互作用の出力が生成され、高分子量vWFの分解が発生したかどうかは、エネルギーの相互作用の出力から決定される。
【0117】
HMWvWF増加患者サンプルへのエネルギー照射するおよびエネルギーの相互作用の出力応答の生成には、EQELS(電気泳動の準弾性光散乱)、PCS(光子相関分光法)他またはCZE(キャピラリーゾーン電気泳動)技法または他のエネルギー相互作用スペクトル技法を含む、静的光散乱法および動的光散乱法が挙げられる。
【0118】
vWF代謝酵素に対する患者サンプルを特性決定する方法は、さらに、分解が発生している場合、ADAMTS13による分解の確認マーカとして、固有の176,000Mr分解フラグメントの存在の決定を含む。この分解フラグメントはADAMTS13について特定であるため、このようなフラグメントに対応する移動度は、ADAMTS13によるHMWvWFの分解が進行に伴い発生する。
【0119】
HMWvWFの分解が発生していないと決定されると、この結果は、サンプルを採取された患者がADAMTS13酵素不足であることを示す。
【0120】
ADAMTS13などのvWF代謝酵素を特性決定する上記の方法を用いて、患者サンプル中の、治療薬および/または治療養生法の治療の有効性を分析する。
【0121】
液状媒体中のvWFマルチマーの電気泳動移動度の分布および/または粒度分布を決定できる。エネルギーを媒体に照射し、エネルギーの相互作用の出力を生成する。エネルギーの相互作用の出力を用いて、媒体中のvWFマルチマーの存在、不足または電気泳動移動度分布特性を決定できる。
【0122】
エネルギー照射およびエネルギー相互作用出力の決定技法は、EQELS(電気泳動準弾性光散乱法)、PCS(光子相関分光分析法)等またはCZE(キャピラリーゾーン電気泳動)を含む静的光散乱法および動的光散乱法などの技法であってもよい。媒体内のvWFマルチマーの有無はスペクトル解析によって決定できる。例えば、vWF代謝酵素不足を有する患者の高分子量vWFなどの、特定の状態で予測される特性を求めるために、スペクトルを、特定の状態を有する既知のスペクトルと比較するかまたは分析できる。媒体自体は血漿または血漿成分および/または希釈緩衝食塩水、他の試薬、他の生理学的サンプル等を含んでもよい。媒体は、(i)被験者から得られる血漿サンプルや(ii)所定の量の高分子量vWFを含んでもよい。被験者内のvWF代謝酵素は、電気泳動度分布および/または粒度分布に基づいて決定されるように、サンプル中の高分子量vWFの分解量に基づいて分析できる。
【0123】
被験者から得られる血漿サンプル中のvWF代謝酵素の有無に起因する、媒体中のvWFマルチマーの特性を決定できる。vWF代謝酵素はADAMTS13を含んでもよく、vWF代謝酵素の有無に起因する媒体中のvWFマルチマーの特性は、分子量が176,000MrのvWF代謝反応生成物フラグメントの有無として決定できる。
【0124】
被験者の診断は、被験者から得られる血漿サンプルのvWF代謝酵素の有無から決定できる。例えば、診断は分子量が176,000MrのvWF代謝反応生成物フラグメントの有無によって確立できる。あるいは、診断は、被験者から得られる血漿サンプルのvWF代謝酵素の不足に関連する生理状態に対する感受性の有無に関する結論、例えば被験者から得られる血漿サンプルのADAMTS13の不足に伴う生理状態に対する感受性の有無の結論であってもよい。
【0125】
特定の実施形態では、分析方法は被験者に治療薬を投与するのに合わせて実施できる。治療薬は、被験者のvWF分解酵素の存在を増すために実際有効であるか、または潜在的に有効と特定された薬剤である。分析により決定がなされる前および/または後に、そのような治療薬の投与を実行して、投与効果を決定できる。治療薬は任意の適切な種類であってもよく、例えば、組み換えADAMTS13、合成ADAMTS13、組み換えADAMTS13の変種、変異体、フラグメントおよび融合体、合成ADAMTS13の変種、変異体、フラグメントおよび融合体からなるグループから選択されるADAMTS13プロテアーゼであってもよい。治療薬はさらに、それらの効力が被験者のvWF代謝酵素の存在を増加すると評価される何らかの治療薬を含むこともできる。この場合には、他の何らかの治療薬の効力に関して、被験者内のADAMTS13などのvWF代謝酵素の存在を増す薬剤の効果を決定するために、分析による決定を実行する。
【0126】
被験者は、ADAMTS13の不在または不足および/またはvWFのいずれかの代謝酵素に関連する病状または生理状態が発生する危険性を有するかまたはその状態にあると特定できる。ADAMTS13が正常な被験者に存在する種類の生理学的サンプルを被験者から得ることができる。所定量のHMWvWFを生理学的サンプルに加えることもできる。所定量のHMWvWFが加えられた生理学的サンプルを、EQELS(電気泳動準弾性光散乱法)、PCS(光子相関分光分析法)等またはCZE(キャピラリーゾーン電気泳動)を含む静的光散乱法および動的光散乱法などの方法によって処理して、ADAMTS13によるHMWvWFの代謝に起因するvWFマルチマーの電気泳動度および粒度分布を決定できる。その後、被験者は、vWFマルチマーの電気泳動度および粒度分布に基づいて、ADAMTS13の不在または不足および/またはvWFのいずれかの代謝酵素に関連する病状または生理状態が発生する危険性を有するかまたはその状態にあると特定される。
【0127】
生理学的サンプルは血漿または(クロマトグラフィー精製等によって)精製後の血漿を含んでもよい。生理学的サンプルはさらに試薬を含んでもよい。試薬は、(i)ADAMTS13の代謝および/またはvWFのいずれかの代謝剤に起因するHMWvWFおよび/またはvWFマルチマーと結合でき、および/または(ii)電気泳動度分布のEQELS決定を向上させるために、HMWvWFおよび/またはvWFマルチマーと結合しているときに、HMWvWFおよび/またはvWFマルチマーの移動特性を変化させることができる。そのような試薬の一例としてボトロセチンがある。
【0128】
上記の方法は、分子量が176,000Mrで、vWFフラグメントを含むかまたは含まないため、高分子量のvWF上のADAMTS13の蛋白分解作用に起因するvWFマルチマーの電気泳動度分布を決定するために実行できる。
【0129】
EQELSを利用するときは、光が生理学的サンプルを照射し、散乱光出力を生じる。散乱光出力を処理して、(i)照射光に対する散乱光出力の散乱光シフトおよびドップラーシフト、および(ii)ADAMTS13によるHMWvWFの分解で生じるvWFマルチマーの移動度、を決定できる。
【0130】
上述の方法は、TTP、HUS、TTP/HUSおよび急性冠動脈症候群、糖尿病、高血圧、月経過多、腎不全など、vWFを放出する内皮の異常機能の原因となるあらゆる病状の診断にも有用である。
【0131】
TTP、HUSおよびTTP/HUSなどのvWFを代謝するのに有効な酵素が欠損または不足していることに関連する病状または生理状態の患者を治療でき、および/または治療の有効性を決定できる。患者には酵素の欠損または不足を抑制する治療薬を投与できる。酵素が正常な被験者に存在する種類の生理学的サンプルを得ることもできる。所定量のHMWvWFを生理学的サンプルに加え、その後EQELS(電気泳動準弾性光散乱法)、PCS(光子相関分光法)等またはCZE(キャピラリーゾーン電気泳動)を含む静的光散乱法および/または動的光散乱法などによって処理して、酵素によるHMWvWFの代謝に起因するvWFマルチマーの電気泳動度と粒度分布とを決定できる。その後、治療薬の効果の有無を、vWFマルチマーの電気泳動度と粒度分布に基づいて決定できる。
【0132】
そのような治療方法は、分子量が176,000MrのvWFフラグメントを含むかまたは含まないため、vWFマルチマーの電気泳動度と粒度分布とを決定する処理を含むことができる。
【0133】
そうでない場合、治療方法は、上述の診断方法で記載したように、例えば生理学的サンプルに対して、病状および生理状態などの同様の態様を含むことができる。酵素はADAMTS13を含んでもよく、治療薬は患者の酵素の量の増加に効果的な薬剤を含むことができる。
【0134】
図1および図2に示すシステムなどの、本明細書で述べる種々の手術を実行するシステムも提供できる。
【0135】
被験者を、vWFの分解を調整する酵素の欠損または不足に関連する病状または生理状態が発生する危険性を有するかまたはその状態にあると特定するシステムは、酵素が正常な被験者に存在するタイプの生理学的サンプルを被験者から得る手段、および生理学的サンプルに所定量のHMWvWFを加える手段とを備えることができる。これらの手段は生理学的サンプルが収集される容器またはガラス瓶を含むことができ、容器またはガラス瓶は特定量のHMWvWFを収容する。サンプルは静脈穿刺、組織診、組織培養、細胞内容物、組み換えプロセスなどから得ることもできる。
【0136】
システムは、さらに、所定量のHMWvWFが加えられた生理学的サンプルを処理するよう配置されたサンプル処理装置を備えることもできる。サンプル処理装置は、EQELS(電気泳動準弾性光散乱法)、PCS(光子相関分光法)等またはCZE(キャピラリーゾーン電気泳動)を利用する分光計などの静的光散乱および/または動的光散乱分光計を含む。結果として生じるスペクトルは、例えば、自動ソフトウェアを用いて分析し、(i)酵素によってHMWvWFの代謝に起因するvWFマルチマーの電気泳動度と粒度分布を決定し、および/または(ii)vWFマルチマーの電気泳動度と粒度分布に基づいて、酵素の欠損または不足に関連する病状または生理状態が発生する危険性を有するかまたはその状態にあると被験者を特定するのに有用な相関出力を得る、ことができる。
【0137】
EQELS、PCS等またはCZEなど、本明細書で記載した静的光散乱法および動的光散乱技法は、市場で入手可能な、その構造および操作が本発明の種々の態様または実施形態の実現に容易に適用可能な処理装置であってもよい。例えば図2に関して述べたように、一般用のプログラム可能なコンピュータシステム、マイクロプロセッサ、レジスタ、記憶装置、出力表示装置および端子などの、任意の適切なハードウェアおよびソフトウェア部品およびアセンブリを機能的に配置して、本明細書で記載した電気泳動度および/または粒度分布分析を実行でき、および/またはそのような電気泳動分布の決定に基づいて出力を提供できる。
【0138】
本発明の別の実施形態は、被験者のvWFの分解を調整する酵素の欠損または不足を迅速に決定する分析キットに関する。キットは、酵素が正常な被験者に存在する種類の所定量の生理学的サンプルを被験者から収集することを含む。キットはまた、所定量の生理学的サンプルに加えるための所定量のHMWvWFも含むことにより、酵素によるHMWvWFの代謝に起因するvWFマルチマーの電気泳動度および粒度分布を分析するEQELS(電気泳動準弾性光散乱法)、PCS(光子相関分光法)等またはCZE(キャピラリーゾーン電気泳動)を含む静的光散乱法および動的光散乱法用の分析サンプルを生成し、それによって、被験者の酵素の欠損または不足を決定できる。さらにキットを使用して、vWFマルチマー分布を得ることができ、および/またはコラーゲン結合、vWF抗原、第VIII因子結合などを検出できる。
【0139】
生理学的試料は、分析手順で使用されるまで、容器、ガラス瓶または生理学的試料を収容して保存するための容器などの適切な手段であればいずれの手段によって収集してもよい。所定量のHMWvWFを第2容器またはガラス瓶に収容してもよく、そこから高分子量のvWFが生理学的試料を保管する容器またはガラス瓶に収容してもよい(逆でもよい)。
【0140】
分析キットはさらに、迅速な決定を実行するための指示書を備え、および/または(i)HMWvWFおよび/または酵素によるHMWvWFの代謝に起因するvWFマルチマーに結合し、(ii)それに結合されるとHMWvWFおよび/またはvWFマルチマーの移動度特性を変化させる、試薬を含むことができる。ボトロセチンはそのような試薬の一例である。
【0141】
本発明の特定の実施形態においては、精製されたvWFマルチマー分布分析が用いられる。例えば約10μ未満の最小量のサンプルがvWF構造の分析に必要とされる。分析は、クエン酸デキストロース溶液(ACD)ガラス瓶に集められた血液全体を遠心分離によって得られる人の血漿からの初期vWF精製を用いて実行できる。患者の血漿はCL−4Bを用いたクロマトグラフィーカラムに供給され、vWFを含む空間容積が集められる。代わりに、vWFを吸収するために免疫親水性のマイクロビーズが用いることもでき、vWFをビーズから溶出できる。高分子量(HMW)のvWFマルチマーは空間容量の主要部で見られ、後端部の低分子量(LMW)のvWFマルチマーが後に続く。vWFの一部が集められ、溜められ、分析される。最終的に作用する緩衝液は、例えば、pHが7.4のとき、40mMのNaClと6.5mMのトリスと5mMのクエン酸ナトリウムとを含んでもよいが、緩衝液の組成、濃度およびpHはそのような技法を一般的に実現する際に大幅に変更してもよいことは理解されよう。作用する溶液は作用緩衝液でさらに希釈され、最終的に所望のvWF濃度(例えば、溶液の5から約20μgのvWF/mlの範囲)を得る。
【0142】
血漿からの初期のvWF精製を必要としない別の方式として、血漿vWFマルチマーの分布分析は、vWFマルチマーの移動度を固有に修正して、vWFマルチマーを、高濃度で存在するアルブミン、免疫グロブリンおよびフィブリノゲンなどの他の血漿蛋白質と区別できるように、vWFを固有に結合する試薬を加えることを含む。特に、そのような分析技法の実施形態で有用なvWF移動度修正薬剤としては、そのような移動度修正に効果的な方法でvWFマルチマーと結合するボトロセチン、アンツーラン、トリカルボン酸、コラーゲン、ヘパリンおよびモノクローナル抗体が挙げられる。
【0143】
図3は変質していない状態における正常なvWFの電気泳動準弾性光散乱スペクトルの結果を示している。vWFの濃度は20μg/mLで、スペクトル捕集時間は20秒であった。横軸は(μ−cm)/(volt−sec)の標準単位でのvWFマルチマーの移動度を示す。縦軸は各vWFマルチマーの相対的な強度を示す。相対強度はvWFマルチマーの濃度とヘテロダイン比との両方によって決定される。ヘテロダイン比とは散乱光と非散乱光との混合効率である。各マルチマーの濃度はサンプル中のvWFの全濃度の生成物と、特定のマルチマーに対する曲線の下の面積に対する散乱包絡線下の全面積の比とから決定できる。各マルチマーの帯域の不均一性は、1/2高さでの帯域幅に対するKのグラフから算定できる。さらに、個々のマルチマーに対応する帯域数の増加がWestern Blot法の電気泳動ゲルを用いて観察されるvWFマルチマー帯域数の低減に対して示されている(図3の挿入画で示される)。
【0144】
本発明の分析方法のさまざまな実施形態の利点は、従来の分析と比較して、巨大分子の形状、大きさおよび分子量に関する情報を得るために予備的な過程を必要としないことである。
【0145】
vWFの電気泳動スペクトルを得ることにより、vWFマルチマーの多分散特性の結果として複数帯域スペクトルを得るができる。さまざまな大きさのvWFマルチマーに一般に対応する複数帯域を、ジチオスレイトールを用いるvWFマルチマーの解重合によって1つの主帯域に低減して、vWFマルチマーを形成する構成モノマーを接続するジスルフィド結合を分離できる。
【0146】
図4aおよび図4bは、Z平均粒径分布、すなわちサンプル内に存在する特定の大きさのマルチマーの数に対して描かれた粒径を示している。Z平均は本発明を実現する際には平均の大きさをパラメータ化することが好ましい。この理由は、Z平均は高分子量の種を強調し、それによって分解能を大幅に向上し、最大のvWFマルチマー形状の物理的な詳細を提供する。
【0147】
本発明のvWFの特性決定方法を有効に利用して、イオン強度、pH、温度および疎水性の効果によってvWFの分子特性を決定できることは理解されるであろう。
【0148】
本発明の別の実施形態においては、サンプル中のADAMTS13の存在、活性度および濃度を決定するために分析法、すなわちADAMTS13電気泳動準弾性光散乱分析法を提供する。そのような実施形態の1つにおいては、高分子量のvWF(HMWvWF)マルチマーは機能、分子量および濃度に関して分離され、特性決定される。その後、患者サンプルは標準的なHMWvWFと混合される。正常なHMWvWFが分解しない場合、その試験は、患者はADAMTS13が不足していることを示している。その後、正常な標準血漿と共にこの分析が繰り返される。このように、正常なADAMTS13レベルと比較した不足率が算出される。HMWvWFマルチマーの分解損失に加え、分析によって、結果を確認するための別のマーカとして、176,000Mrの固有のvWF分解フラグメントの存在を観察できる。
【0149】
一般に、少量の標準的な高分子量vWFが少量の患者の血漿に加えられる。その後、vWFが分解しているかどうかを判断するために試験され、分解している場合、固有のvWFフラグメント(176,000)が生成される。このフラグメントに対応する移動度はADAMTS13による分解が進むにつれて大きくなる。分解していない場合、その結果から患者は酵素が不足していることがわかる。この分析は、以下のTTP/HUS治療を含む、TTP/HUSなどを診断する多数の用途にとって大きな価値がある。
【0150】
本発明の別の実施形態においては、ELSを用いたコラーゲン結合分析を提供する。この分析において、vWFはゲル浸透クロマトグラフ分析分離法を用いて患者から分離される。I型、III型、IV型、VI型などの標準的なコラーゲンの型がこの方法の標準として用いられる。特定のコラーゲンの増加量が患者のvWFサンプルに滴定される。結合中に変化が観察され、コラーゲン濃度に対して区分される。その後これらの結果が単一状態の結合モデルに適合される。結合不足の強度は算出された結合定数の異常性に反映される。分析によって、実際にコラーゲンを結合する特定のvWFマルチマーを決定することもできる。
【0151】
本発明の別の実施形態においては、EQELSを用いたvWFノルマンディー分析法を提供する。vWFにおける少なくとも8点の突然変異が特定され、その結果凝固第VIII因子の結合が不足する。vWFのNormandy分析法によって、そのような第VIII因子の結合が不足した変異を有する患者を迅速に特定することができる。分析は患者から分離された正常なHMWvWFと精製された凝固第VIII因子とを必要とする。精製された凝固第VIII因子はvWF溶液に滴定され、凝固第VIII因子の移動度の変化が観察される。このデータから結合定数が先の分析のように算出される。結合定数の分散は凝固第VIII因子の結合不足の強度の尺度となる。
【0152】
vWF抗原の測定は試料中に存在するvWFの量に関係する。抗vWF抗原はマイクロビーズと電子対を共有するように結合でき、マイクロビーズの電気泳動度の変化はvWF結合として観察できる。ビーズの電気泳動度の変化の程度はサンプル中に存在するvWFの量にほぼ比例する。
【0153】
別の実施形態においては、本発明は内皮活性化の検出または損傷分析を提供する。内皮活性化および内皮損傷は、(ウィルス性、細菌性または菌性の)敗血症、急性冠動脈症候群、肝静脈閉塞病、医薬調整内皮反応、急性炎症などの多数の臨床状況において高い重要性を有する生理学的現象である。この分析では、vWFが患者から精製され、高分子量のvWFマルチマーに対しておよび巨大vWFマルチマーに対して試験される。
【0154】
図5、図6および図7のデータによると、vWFが疎水性の環境にあるとき、伸張が生じる。図5に示されるように、イオン強度が低いとvWFでの荷電グループに対して利用できる対イオン遮蔽がほとんどない。したがって、分子の低い拡散係数によって証明されるように、分子は拡大する。イオン強度が増すと、vWFの表面電荷の良好な選別が利用でき、vWFは大きな拡散係数によって証明されるように、より小型の形状をとることができる。
【0155】
図6に示されるように、温度変化は疎水性の結合に影響を与える。温度が低いと、vWFがより小型でより小さい流体力学上の直径を有する。温度が上昇すると、拡散係数は下がる。これはvWFがより拡大されていることを示し、はるかに大きな流体力学上の直径によって確認される。
【0156】
図7を参照すると、溶媒の極性が弱くなるにつれて、誘電率は高くなる。大きいサイズの直鎖アルカンアルコールを加えることによって、vWFはその拡散係数の増加で示されるように、より小型になる。したがって、vWFの分子形状は溶媒の条件によって変わり得る。
【0157】
本発明の具体化におけるvWFの検出および特性決定は、活性化された拡大状態においてvWFを有利に利用する。この拡大状態は、vWFが生体内で循環すると仮定される、「毛玉」状態と時には称される小型で非活性の状態とは反対である。非活性状態の極めて小さい形態と比べて分子寸法がはるかに大きいため、拡大された活性状態は好ましい。
【0158】
したがって、本発明を、本明細書において種々の例示的な態様、特徴、および実施形態を参照して述べられてきたが、本発明はこれらに限定されることなく、むしろ、本明細書の開示に基づいて当業者に提示されるように、他の変形形態、修正形態および代替実施形態にまで拡大し、それらを包含することは理解されよう。したがって、本明細書の後に記載された特許請求の範囲は広く解釈され、本発明の精神および範囲内のそのような変形形態、修正形態および代替実施形態の全てを含むと解釈されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0159】
【図1】本発明の実施形態による電気泳動準弾性光散乱(EQELS)分光計のブロック図である。
【図2】本発明の実施形態によるデータ処理システムのブロック図である。
【図3】非変性状態下での正常なvWFを含むEQELS試験における電気泳動スペクトル結果のグラフであり、サンプルにおける各vWFマルチマーの相対強度はマルチマー移動度の関数として示されており、単位は(μ−cm)/(ボルト−秒)で、比較のため同一のvWFサンプルのWestern Blot電気泳動ゲルを挿入している。
【図4a】vWFマルチマーのz平均の粒径分布のグラフであり、粒径はサンプル中のこのような粒径のマルチマーの数の関数として示されている。
【図4b】vWFマルチマーのz平均の粒径分布のグラフであり、粒径はサンプルのこのような粒径のマルチマーの数の関数として示されている。
【図5】PCSにより決定されたvWFの散乱に対するイオン強度の影響を示すグラフである。
【図6】本明細書に記載される分光分析法に基づく、vWFの分子形状に対する温度の影響を示すグラフである。
【図7】本明細書に記載される分光分析法に基づく、vWFの分子形状に対する溶媒極性の影響を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フォンビルブランド因子(vWF)マルチマーの電気泳動度分布を分析する方法であって、
複数のvWFマルチマーを含むサンプル媒体を生成することと、
前記サンプル媒体に電界を印加することによって、前記サンプル媒体中の電気泳動度により前記vWFマルチマーを電気泳動的に分離して、分離されたvWFマルチマーを生成することと、
前記サンプル媒体中の前記分離されたvWFマルチマーを光源に露出して散乱光を生成することと、
前記散乱光を検出することと、
前記分離されたvWFマルチマーの電気泳動度分布を前記検出された散乱光から決定することと、を含む方法。
【請求項2】
前記分離されたvWFマルチマーの大きさおよび/または重量分布を前記検出された散乱光から算出することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電気泳動度分布に基づいてvWF異常および/または疾患を特定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記vWF異常および/または疾患は、I型vWF病、II型vWF病、III型vWF病、IIA特殊型vWF病、IIB特殊型vWF病、IIM特殊型vWF病、血小板減少性血栓性紫斑病(TTP)および溶血性尿毒症症候群(HUS)からなるグループから選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記特定する工程は、前記電気泳動度分布を一連のvWF異常および/または疾患に対応するパラメータと比較することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記パラメータは、前記一連のvWF異常および/または疾患に対応する複数のスペクトルに基づいている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記電気泳動度分布に基づいてADAMTS異常および/または疾患を特定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記サンプル媒体の光子相関分光法(PCS)スペクトルを生成することと、
前記試料のPCSスペクトルに基づいて分子の粒度分布を決定することと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記分子の粒度分布と前記電気泳動度分布とに基づいてvWF異常および/または疾患を特定することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記決定工程は電気泳動準弾性光散乱分析によって実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記決定工程は、
測定された自己相関関数からの散乱光に位相シフトを検出することと、
入射光と比較した散乱光のドップラーシフトを検出することと、
その後に散乱粒子の電気泳動度を算出することと、によって実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記光源はコヒーレント光源である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記サンプル媒体は容器内に供給され、前記電気泳動的に分離する工程は前記容器内の前記サンプル媒体を用いて実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記サンプル媒体は容器内に供給され、前記露出工程と前記検出工程とは両方とも前記容器内の前記サンプル媒体を用いて実行される、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記電気泳動的分離工程と、前記露出工程と、前記検出工程は合計時間が5分未満で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記電気泳動的分離工程と、前記露出工程と、前記検出工程は合計時間が1分未満で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記決定された電気泳動度分布は、分子量が1000万以上のvWFマルチマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記決定された電気泳動度分布は、分子量が2000万以上のvWFマルチマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記サンプル媒体を生成する工程は、
血漿サンプルを生成することと、
前記血漿サンプルからvWFを精製して前記サンプル媒体を生成することと、によって実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記フォンビルブランド因子マルチマーはヒトフォンビルブランド因子マルチマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
サンプル媒体中のフォンビルブランド因子(vWF)分解酵素の存在を決定する方法であって、
vWFマルチマーの量を含むサンプル媒体を生成することと、
酵素が前記サンプル中に存在すると、前記サンプル媒体の高分子量のvWFマルチマーが分解されるようにvWF分解酵素を含むと思われる試料を前記サンプル媒体に加えることと、
前記サンプル媒体に電界を印加することによって、前記サンプル媒体中で電気泳動移動度により前記vWFマルチマーを電気泳動的に分離して、分離されたvWFマルチマーを生成することと、
前記サンプル媒体中の前記分離されたvWFマルチマーを光源に露出して散乱光を生成することと、
前記散乱光を検出することと、
前記分離されたvWFマルチマーの電気泳動度分布を前記検出された散乱光から決定することと、
前記電気泳動度分布から前記vWF分解酵素の有無を決定することと、を含む方法。
【請求項22】
前記検出された散乱光から前記分離されたvWFマルチマーの大きさおよび/または重量分布を算出することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記サンプル媒体の光子相関分光法(PCS)スペクトルを生成することと、
前記サンプルの前記PCSスペクトルに基づいて分子の粒度分布を決定することと、をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記分子の粒度分布と前記電気泳動度分布とに基づいて前記vWF分解酵素の有無を決定することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記vWF分解酵素はADAMTS13である、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記光源はコヒーレント光源である、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記決定工程は電気泳動準弾性光散乱分析によって実行される、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記サンプル媒体は容器内に供給され、前記電気泳動的に分離する工程は前記容器内の前記サンプル媒体を用いて実行される、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記サンプル媒体は容器内に供給され、前記露出工程と前記検出工程とは両方とも前記容器内の前記サンプル媒体を用いて実行される、請求項21に記載の方法。
【請求項30】
前記電気泳動的分離工程と、前記露出工程と、前記検出工程は合計時間が5分未満で実行される、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
前記電気泳動的分離工程と、前記露出工程と、前記検出工程は合計時間が1分未満で実行される、請求項21に記載の方法。
【請求項32】
前記決定された電気泳動度分布は、分子量が1000万以上のvWFダイマーを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項33】
前記フォンビルブランド因子マルチマーはヒトフォンビルブランド因子マルチマーである、請求項21に記載の方法。
【請求項34】
サンプル媒体中のフォンビルブランド因子(vWF)マルチマーの電気泳動度分布を分析するシステムであって、前記システムは、
前記vWFマルチマーを電気泳動的に分離し、サンプル媒体のvWFマルチマーに対してEQELSスペクトルを生成するよう構成された電気泳動準弾性光散乱(EQELS)制御器を備えたEQELS分光計と、
前記EQELS分光計と通信するEQELS分析器とを備え、
前記EQELS分析器は前記EQELSスペクトルからの前記分離されたvWFマルチマーの電気泳動度分布を決定するよう構成されているシステム。
【請求項35】
前記EQELS分析器は、前記電気泳動度分布に基づいてvWF異常および/または疾患を特定するように構成されている、請求項34記載のシステム。
【請求項36】
前記EQELS分析器は、さらに、前記電気泳動度分布を一連のvWF異常および/または疾患に対応するパラメータと比較するように構成されている、請求項34に記載のシステム。
【請求項37】
前記パラメータは、前記一連vWF異常および/または疾患に対応する複数のスペクトルに基づいている、請求項34に記載のシステム。
【請求項38】
前記EQELS分析器は、さらに、前記電気泳動度分布に基づいてADAMTS異常および/または疾患を特定するように構成されている、請求項34に記載のシステム。
【請求項39】
前記EQELS分光計は、さらに、サンプル媒体の光子相関分光法(PCS)スペクトルを生成するように構成され、
前記EQELS分析器は、さらに、前記サンプルの前記PCSスペクトルに基づいて分子の粒度分布を決定するように構成されている、請求項34に記載のシステム。
【請求項40】
前記EQELS分析器は、前記分子の粒度分布と前記電気泳動度分布とに基づいてvWF異常および/または疾患を特定するように構成されている、請求項39に記載のシステム。
【請求項41】
サンプル媒体のvWFマルチマーの電気泳動度および/または粒度分布を検出する方法であって、前記方法は、
前記サンプル媒体にエネルギーを照射してエネルギー相互作用出力を生成することと、
前記エネルギー相互作用出力に基づいて前記サンプル媒体のvWFマルチマーの電気泳動度分布および/または粒度分布を決定することと、を含む方法。
【請求項42】
前記vWFマルチマーの前記電気泳動度分布および/または粒度分布に基づいて前記サンプル媒体の前記vWFマルチマーの有無および/または相対量を決定することをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
照射するエネルギーは前記サンプル媒体上に照射する光エネルギーを含み、
前記方法は、光子相関分光法(PCS)静的光散乱を用いてvWFマルチマーの粒度分布を決定することを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
照射するエネルギーは前記サンプル媒体上に照射する光エネルギーを含み、
前記方法は、電気泳動準弾性光散乱法(EQELS)および/またはキャピラリーゾーン電気泳動(CZE)動的光散乱法を用いて、電気泳動度分布を決定することを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記サンプル媒体は血漿または血漿成分を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記サンプル媒体は希釈緩衝食塩水を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
前記エネルギー相互作用出力は電気泳動または非電気泳動(PCS)状態で生成される、請求項41に記載の方法。
【請求項48】
ある一定量の高分子量vWFを被験者から得られる血漿サンプルに加えることによって前記サンプル媒体を生成することをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項49】
前記サンプル媒体のvWFマルチマーの前記電気泳動度および/または粒度分布に基づいて、前記血漿サンプルのvWF代謝酵素の有無を決定することをさらに含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記vWF代謝酵素は、内皮からvWFを放出する際にvWFを代謝するADAMTS13および/または酵素を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
分子量が176,000MrのvWF代謝生成物フラグメントの有無を決定して、前記vWF代謝酵素の前記有無を決定する、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記被験者から得られる前記血漿サンプルの前記vWF代謝酵素の前記有無に基づいて前記被験者の診断を行うことをさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
分子量が176,000Mrの前記vWF代謝生成物フラグメントの前記有無に基づいて前記被験者の診断を行うことをさらに含む、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記被験者の診断を行うことは、前記サンプル媒体の前記vWFマルチマーの前記電気泳動度および/または粒度分布に基づいて前記血漿サンプルの前記vWF代謝酵素の不足に関連する生理状態の有無または感受性を決定することを含む、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記被験者の診断を行うことは、前記サンプル媒体の前記vWFマルチマーの前記電気泳動度および/または粒度分布に基づいて前記血漿サンプルのADAMTS13の不足に伴う生理状態の有無または感受性を決定することを含む、請求項53記載の方法。
【請求項56】
前記生理状態は、TTP,HUS、TTP/HUS、vWFを放出する内皮の異常機能の原因となる病状、急性冠症候群、糖尿病、高血圧、月経過多および/または腎不全からなるグループから選択される病状を含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記被験者の前記vWF代謝酵素の存在を増やすのに効果的であり得る治療薬を前記被験者に投与することをさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項58】
前記治療薬を投与する前に前記被験者から得られる第1サンプルと、前記治療薬を投与した後に前記被験者から得られる第2サンプルとからvWFの電気泳動度および/または粒度分布を決定することと、
前記第1と第2の試料から前記電気泳動度および/または粒度分布に基づいて前記治療薬の効果を評価することと、をさらに含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記治療薬は、組み換えADAMTS13、合成ADAMTS13、組み換えADAMTS13の変種、変異体、フラグメントおよび融合体、合成ADAMTS13の変種、変異体、フラグメントおよび融合体からなるグループから選択される、治療に効果的な量のADAMTS13プロテアーゼを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記vWF代謝酵素はADAMTS13を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
被験者を、ADAMTS13の不足または不足に伴う病状または生理状態が発生する危険性を有するかまたはその状態にあると特定する方法であって、前記方法は、
生理学的サンプルであって、正常な被験者ではADAMTS13が存在するタイプの生理学的サンプルを前記被験者から得ることと、
前記生理学的サンプルに、ある一定量の高分子量(HMW)vWFを加えてサンプル媒体を生成することと、
前記サンプル媒体に静的および/または動的光散乱分光法を実施して、ADAMTS13による前記HMWvWFの分解に起因するvWFマルチマーの電気泳動度分布および/または粒度分布を決定することと、
vWFマルチマーの前記電気泳動度分布および/または粒度分布に基づいてADAMTS13の欠損または不足に伴う病状または生理状態が発生する危険性を有するかまたはその状態にあるとして被験者を特定することと、を含む方法。
【請求項62】
前記静的および/または動的光散乱分光法を実施する工程は、電気泳動準弾性光散乱(EQELS)を用いて実行される、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記静的および/または動的光散乱分光法を実施する工程は、光子相関分光法(PCS)を用いて実行される、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
前記静的および/または動的光散乱分光法を実施する工程は、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)を用いて実行される、請求項61に記載の方法。
【請求項65】
vWFマルチマーの前記電気泳動度分布および/または粒度分布が、分子量が176,000MrのvWFフラグメントを含むかどうかを決定することをさらに含む、請求項61に記載の方法。
【請求項66】
クロマトグラフィー精製を用いて前記サンプル媒体を精製することをさらに含む、請求項61に記載の方法。
【請求項67】
前記サンプル媒体は、前記HMWvWFおよび/またはADAMTS13によるHMWvWFの代謝に起因するvWFマルチマーに結合し、それに結合されると、前記電気泳動度および粒度分布の決定を向上させるためにHMWvWFおよび/またはvWFマルチマーの移動度特性を変化させる試薬をさらに含む、請求項61に記載の方法。
【請求項68】
前記試薬はボトロセチンを含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
vWFを代謝するのに効果的な酵素の欠損または不足に関連する病状または生理状態の被験者を検査する方法であって、前記方法は、
前記被験者に、前記酵素の欠損または不足に効力のある治療薬を投与することと、
前記治療薬を投与した後、生理学的サンプルであって、正常な被験者では前記酵素が存在するタイプの生理学的サンプルを前記被験者から得ることと、
前記生理学的サンプルにある一定量のHMWvWFを加えることと、
前記サンプル媒体に静的および/または動的光散乱分光法を実施して、前記酵素による前記HMWvWFの代謝に起因するvWFマルチマーの電気泳動度分布および/または粒度分布を決定することと、
vWFマルチマーの前記電気泳動度分布および/または粒度分布に基づいて前記治療薬の効果の有無を決定することと、を含む方法。
【請求項70】
前記静的および/または動的光散乱分光法を実施する工程は、電気泳動準弾性光散乱(EQELS)を用いて実行される、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記静的および/または動的光散乱分光法を実施する工程は、光子相関分光法(PCS)を用いて実行される、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
前記静的および/または動的光散乱分光法を実施する工程は、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)を用いて実行される、請求項69に記載の方法
【請求項73】
vWFマルチマーの前記電気泳動度分布および/または粒度分布が、分子量が176,000MrのvWFフラグメントを含むかどうかを決定することをさらに含む、請求項69に載の方法。
【請求項74】
前記酵素によるHMWvWFの代謝によって生成するvWFマルチマーの移動度を決定することをさらに含む、請求項70に記載の方法。
【請求項75】
前記サンプル媒体は、前記HMWvWFおよび/またはADAMTS13による前記HMWvWFの代謝に起因するvWFマルチマーに結合し、それに結合されると、前記電気泳動度および粒度分布の決定を向上させるためにHMWvWFおよび/またはvWFマルチマーの移動度特性を変化させる試薬をさらに含む、請求項69に記載の方法。
【請求項76】
前記試薬はボトロセチンを含む、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記酵素はADAMTS13を含む、請求項69に記載の方法。
【請求項78】
前記治療薬は、前記被験者の前記酵素の量を増加し得る薬剤を含む、請求項69に記載の方法。
【請求項79】
vWFマルチマー特性に対してコラーゲン結合分析を用いることをさらに含む、請求項69に記載の方法。
【請求項80】
vWFノルマンディー分析法を用いて、vWFの不足結合凝固第VIII因子を特性決定することをさらに含む、請求項69に記載の方法。
【請求項81】
HMWvWFマルチマーおよび超巨大vWFマルチマーに対してvWFを特性決定することをさらに含む、請求項69に記載の方法。
【請求項82】
vWFマルチマーの前記電気泳動度分布および/または粒度分布に基づいて、敗血症、急性冠動脈症候群、静脈閉塞病、医薬毒性および急性炎症からなるグループから選択される病状または生理状態を診断することをさらに含む、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
vWFの代謝を調整する酵素の欠損または不足に伴う病状または生理状態が現われる危険性を有するかまたはその状態にあるとして被験者を特定するシステムであって、前記システムは、
生理学的サンプルであって、正常な被験者ではADAMTS13が存在するタイプの生理学的サンプルを前記被験者から得る手段と、
前記生理学的サンプルにある量の高分子量(HMW)vWFを加えて、サンプル媒体を生成する手段と、
前記サンプル媒体に静的および/または動的光散乱分光法を実施して、ADAMTS13による前記HMWvWFの分解に起因するvWFマルチマーの電気泳動度分布および/または粒度分布を決定する手段と、
vWFマルチマーの前記電気泳動度および/または粒度分布に基づいてADAMTS13の欠損または不足に伴う病状または生理状態が発生する危険性を有するかまたはその状態にあるとして被験者を特定する手段と、を備えたシステム。
【請求項84】
前記特定手段は、前記酵素による前記HMWvWFの代謝に起因するvWFマルチマーの電気泳動度分布および/または粒度分布を算出決定する手段を含む、請求項84記載のシステム。
【請求項85】
相関出力を生成して、vWFマルチマーの前記電気泳動度分布および/または粒度分布に基づいて、酵素の欠損または不足に伴う病状または生理状態が発生する危険性を有するかまたはその状態にあるとして被験者を特定する手段をさらに備える、請求項84に記載のシステム。
【請求項86】
被験者のvWFの代謝を調整する酵素の欠損または不足を迅速に決定するための分析キットであって、前記キットは、
被験者から、ある一定量の生理学的サンプルであって正常な被験者では前記酵素が存在するタイプの生理学的サンプルと前記生理学的サンプルに加えるためのある一定量のHMWvWFを得て、前記酵素による前記HMWvWFの代謝に起因するvWFマルチマーの電気泳動度および粒度分布のEQELS(電気泳動準弾性光散乱法)、PCS(光子相関分光法)等、またはCZE(キャピラリーゾーン電気泳動法)分析を含む静的光散乱法および/または動的光散乱法のためにサンプル媒体を生成する手段を備え、
前記被験者の前記酵素の欠損または不足を決定できる分析キット。
【請求項87】
前記迅速な決定を行うために指示書をさらに備えている、請求項87に記載のキット。
【請求項88】
前記HMWvWFおよび/または前記酵素による前記HMWvWFの分解に起因するvWFマルチマーに結合し、それに結合されると、HMWvWFおよび/またはvWFマルチマーの移動度特性を変化させる試薬をさらに含む、請求項87に記載のキット。
【請求項89】
前記試薬はボトロセチンである、請求項88に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−530912(P2007−530912A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518867(P2006−518867)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/021715
【国際公開番号】WO2005/008241
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Linux
【出願人】(500282209)ユニヴァーシティ・オヴ・ノース・キャロライナ・アト・チャペル・ヒル (14)
【Fターム(参考)】