説明

フォーカス制御装置および撮像装置

【課題】被写体のコントラストやフォーカスレンズ位置に影響されず、一定時間でフォーカスエフェクト機能を実現させる。
【解決手段】画像のコントラストを表わす焦点評価信号に基づいてフォーカスレンズの制御を行い、被写体距離に対応する情報に基づいてフォーカスレンズの制御を行うレンズ制御手段を有し、フォーカスエフェクト機能に応じたフォーカスレンズ制御を行う際は、被写体距離に対応する情報によってフォーカスレンズが合焦する移動方向と移動速度を決定し、被写体距離に対応する情報に基づくフォーカスレンズの合焦方向への移動を制御した後、焦点評価信号に基づく合焦制御に切り換わる制御を行う(S204→S234→S235、S209→S210→S211、S217→S218→S219、S220→S221→S219)ようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォーカスレンズの制御を行うフォーカス制御装置およびビデオカメラ等の撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オートフォーカス(以下、AF)方式として、撮像素子からの撮像信号における高周波成分(以下、AF評価値(鮮鋭度))を抽出し、該AF評価値が最大になるレンズ位置を検出して合焦動作を行うコントラストAF(山登り)方式が実用化されている。そして、この種のAF方式を利用して、フォーカスイン、フォーカスアウト、フォーカス送り等のエフェクト撮影を可能にするビデオカメラが提案されている(例えば、特許文献1参照)。なお、ぼけた状態から徐々にフォーカスを合わせることをフォーカスインといい、フォーカスの合っている状態から徐々にぼかしていくことをフォーカスアウトという。このような撮影手法は、例えば子供時代の思い出シーン、夢の中のでき事、回想シーンなどに使われる。また、手前の被写体から奥の被写体へ、あるいはその逆に意図的にピントを送ることをフォーカス送りあるいはピン送りといい、画面上の焦点を変えて視線を誘導するような視覚的効果を生み出したい時に使われる。
【特許文献1】特許2702968号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記の従来例では、フォーカスインさせるために手動フォーカスでぼけた状態にしてからコントラストAFに切り換えることで、フォーカスイン動作を起動させている。しかし、コントラストAFでは、ぼけた状態は低AF評価値であり、初めからAF評価値の最大値を探し直さなければならない。
【0004】
また、被写体のコントラストによってAF評価値の変化率が違うため、合焦までの時間が一定にならず、エフェクト発生時間を管理できないという課題がある。フォーカス送りの場合においても、コントラストAFでは隣接するAF評価値の最大値を探す山登り動作をする必要があり、エフェクト発生時間を管理できないという課題がある。このように、被写体によって早くフォーカスインする場合もあれば、なかなかフォーカスインしない場合も出てきてしまう。
【0005】
また、上記の従来例では、フォーカスレンズの位置が無限遠側であった場合は至近側方向へ、至近側であった場合は無限遠側方向へ、レンズ位置を動かすことでフォーカスアウト動作を起動している。しかし、レンズ位置が真中及びその付近にあった場合、確実にぼける方向へ動けるとは限らないという課題がある。
【0006】
(発明の目的)
本発明の目的は、被写体のコントラストやフォーカスレンズ位置に影響されず、一定時間でフォーカスエフェクト機能を実現させることのできるフォーカス制御装置および撮像装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、撮像素子の出力信号から画像のコントラストを表わす焦点評価信号を生成する信号生成手段と、被写体距離に対応する情報を検出する距離検出手段と、前記焦点評価信号に基づいてフォーカスレンズの制御を行い、前記被写体距離に対応する情報に基づいてフォーカスレンズの制御を行うレンズ制御手段とを有し、フォーカスエフェクト機能に応じたフォーカスレンズ制御を可能にするフォーカス制御装置において、前記レンズ制御手段が、フォーカスエフェクト機能に応じたフォーカスレンズ制御を行う際は、前記被写体距離に対応する情報によって前記フォーカスレンズが合焦する移動方向と移動速度を決定し、前記被写体距離に対応する情報に基づく前記フォーカスレンズの合焦方向への移動を制御した後、前記焦点評価信号に基づく合焦制御に切り換わる制御を行うフォーカス制御装置とするものである。
【0008】
同じく上記目的を達成するために、本発明は、上記本発明のフォーカス制御装置を有する撮像装置とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被写体のコントラストやフォーカスレンズ位置に影響されず、一定時間でフォーカスエフェクト機能を実現させることのできるフォーカス制御装置または撮像装置を提供できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施するための最良の形態は、以下の実施例に示す通りである。
【実施例】
【0011】
図1は本発明の一実施例に係るフォーカス制御装置を搭載した撮影装置の回路構成を示すブロック図である。AF方式としては、コントラストAFの他に、合焦位置までのデフォーカス量を算出して該合焦位置までレンズ駆動を行う位相差検出AFが知られている。他に三角測距法を用いて被写体までの距離を測定し、合焦動作を行う外測方式の三角測距AFのフォーカス制御が知られている。これらは被写体距離に対応する情報を検出する。そして、コントラストAFのようにAF評価値を抽出するためのスキャン動作を要しないため、コントラストAFよりも速い合焦動作が可能である。そして、これらのフォーカス制御方式を組み合わせたハイブリッドAFなるフォーカス制御も知られている。以下の本実施例におけるフォーカス制御装置は、ハイブリッドAFなるフォーカス制御を行うものである。
【0012】
図1において、100はコントラストAF部であり、CCDセンサ、CMOSセンサ等の撮像素子に結像された被写体像を光電変換し、撮像信号として出力する。101はAF評価値処理部であり、コントラストAF部100から出力される撮像信号からコントラストAF(山登り)方式のAF制御のためのAF評価値(焦点評価信号)を生成して出力する。このAF評価値処理部101は撮像信号をフィルタリングして所定の高周波成分のみを抽出し、ピークホールドや積分等の処理を行うことで、AF評価値を生成する。
【0013】
102は山登り制御位置目標演算部であり、出力されたAF評価値が増加しているか減少しているかを判定しながらAF評価値のピーク位置へとレンズ位置目標を変化させていく。この山登り制御位置目標演算部102は、AF評価値の増減を比較して減少していた場合に、位置目標変化方向を反転させる。それによってAF評価値が増加しはじめた後に再減少を検出することで、山の頂点通過と判定するアルゴリズムで山登り制御位置目標を変化させていく。
【0014】
103は位相差AF部であり、外測三角測距用位相差検出センサへ分割されて結像された二つの被写体像の位相差量を位相差信号として出力する。104は位相差信号から三角測距法により被写体までの距離を算出する距離算出部であり、距離算出の原理は公知であるのでその説明は省略する。105はレンズ位置目標演算部であり、算出された距離からレンズ位置目標を演算する。
【0015】
106はレンズ移動目標演算部であり、山登り制御位置目標演算部102とレンズ位置目標演算部105の二つのレンズ位置目標を合成してレンズ位置目標とレンズ速度目標を演算する。この種のハイブリッッドAFでは、低コントラスト時や大ぼけ時は位相差AFによる位置目標を使い、合焦点に近づいて所定の切換条件になったらコントラストAFによる位置目標使用に切り換えている。
【0016】
107はAF入切選択部であり、手動フォーカスとオートフォーカスを選択するものである。使用者はメニュー画面操作や切換ボタン操作等によって手動フォーカスかオートフォーカスを指示できる。108は後述の制御目標発生部110に設定するレンズ位置目標とレンズ速度目標の更新をオンオフするAF入切スイッチであり、後述のAFモード判定部117によってオンオフ制御される。109は通常オートフォーカスとエフェクト撮影フォーカスを切り換えるAF切換スイッチであり、AFモード判定部117によってオンオフ制御される。110は制御目標発生部であり、設定速度相当で設定数値まで変化する目標値を発生させる。111はエラー算出器であり、後述のレンズ位置検出部114からのレンズ位置と制御目標発生部110からのレンズ位置目標を比較して位置エラーを算出する。112はレンズ制御部であり、位置エラーをフィルタリングして位置エラーが零になるようなレンズ駆動信号を出力する。
【0017】
113はレンズとモータードライバとモータ等の駆動部品からなるレンズ部であり、レンズ駆動信号に応じてレンズを移動させる。114はレンズ位置検出部であり、レンズの移動に応じてレンズ位置信号を出力する。115はエフェクト撮影選択部であり、通常撮影とフォーカスイン、フォーカスアウト、フォーカス送り等のエフェクト撮影を選択可能にする。使用者は切換ボタン操作等によって通常撮影とエフェクト撮影を指示できる。116はエフェクト撮影レンズ移動目標演算部であり、フォーカスインやフォーカスアウトやフォーカス送りというエフェクト撮影効果を発生させるためのレンズ位置目標とレンズ速度目標を演算する。
【0018】
117はAFモード判定部であり、AF入切選択部107とエフェクト撮影選択部115の選択とレンズ位置から、AF入切スイッチ108とAF切換スイッチ109を制御する。118はレンズ制御マイコンであり、AF入切選択部107、エフェクト撮影選択部115、コントラストAF部100、位相差AF部103、レンズ部113、レンズ位置検出部114とポート接続してレンズシステムを統合的に制御する。
【0019】
図2は、レンズ制御マイコン118内のAFモード判定部117が、周期的に使用者の切換ボタン操作等による各種撮影の指示を監視し、AFモードを決めるフローチャートである。図3は本実施例におけるAFモードの遷移図であり、円内はAFモード、矢印R0は従来のハイブリッドAFのAFモード遷移である。同じく図3において、矢印R1はフォーカスインのAFモード遷移、矢印R2はフォーカスアウトのAFモード遷移、矢印R3はフォーカス送りのAFモード遷移である。また、AFモードが0は手動フォーカス中を、1は位相差AFを、2はコントラストAFを、3は合焦状態(AF評価値ピークで停止)を、それぞれ示す。さらに、AFモードが4はフォーカスイン中を、5はフォーカスアウトを、6はフォーカス送りを、それぞれ示す。図4(A),(B)はフォーカスイン時の説明図であり、横軸には時間を、縦軸にはレンズ位置を、それぞれ示している。図5(A),(B)はフォーカスアウト時の説明図であり、横軸には時間を、縦軸にはレンズ位置を、それぞれ示している。図6(A),(B)はフォーカス送り時の説明図であり、横軸には時間を、縦軸にはレンズ位置を、それぞれ示している。
【0020】
次に、上記図3ないし図6を参照しながら、図2のフローチャートにしたがってAFモード判定部117での動作について説明する。
【0021】
まず、ステップs201では、手動フォーカスへの切り換え要求がされているかを判定し、要求されていれば後述のステップs227へ進む。手動フォーカスへの切り換え要求がされていなければステップs202へ進み、ここではエフェクト撮影のフォーカスインが要求されているかを判定する。その結果、フォーカスインが要求されていればステップs203へ進み、要求されていなければ後述のステップs207へ進む。
【0022】
フォーカスインが要求されているとしてステップs203へ進むと、ここでは現在のAFモードが0(手動フォーカス)であるかどうかを判定する。その結果、手動フォーカスであればステップs204へ進む。手動フォーカスでなければ、後述する要求を拒否する警告表示を行うステップs205へ進む。これは、後述の図7において、フォーカスインを実行するAFモードの遷移として手動フォーカスで予めぼけ状態に移動した状態からのフォーカスイン以外は許可していないからである。また、後述するようなフォーカスアウトと組み合わせれば、AFモード3(合焦状態)から自動的にAFモード5(フォーカスアウト)に遷移して、ぼけ状態になってからフォーカスインを実行することも可能である。また、フォーカスインの要求に記録装置の記録開始信号を接続して連動させることも可能である。
【0023】
手動フォーカスであるとしてステップs204へ進むと、ここでは位相差AFにて被写体までの距離情報を取得する。そして、次のステップs234にて、現在のレンズ位置と前後近接の被写体距離から、レンズをどちらかの方向へ動かせばフォーカスイン効果が得られるかを判定する。即ち、合焦位置がどちらの方向にあるかを判定し、合焦位置が無い場合はステップs205へ進み、合焦位置がある場合はステップs235へ進む。
【0024】
図4(A)のように、予め被写体距離を位相差AFで検出できるので、現在のレンズ位置L1,L2のように合焦点L0までの距離、方向が異なっていても、フォーカスイン時間が一定になるように速度V1,V2を決めることができる。図4(B)のように、現在のレンズ位置L6が近接被写体間の中間付近の場合、コントラストAFだけでは中間にいることすら判定できない。しかし、本実施例によれば、合焦点L3,L4のように位相差AFによる距離情報からフォーカスイン時間が一定になるように速度V3,V4を決めることができる。合焦点が二つある場合、どちらに進むかは予めメニューで遠近優先の選択を行う、もしくは、フォーカス効果撮影選択部115で選択できる。
【0025】
図2に戻り、上記ステップs234にて合焦位置があると判定した場合は上記のようにステップs235へ進み、AFモードを4(フォーカスイン)に設定して、処理を終了する。
【0026】
上記ステップs203にて手動フォーカスでない、もしくは、上記ステップs234にて合焦位置がないと判定した場合はステップs205へ進む。そして、このステップs205では、要求を拒否する旨の警告表示を出力する。そして、次のステップs206にて、現在のAFモードを変更無しにして、処理を終了する。
【0027】
また、上記ステップs202にてフォーカスインが要求されていないと判定してステップs207へ進むと、ここではエフェクト撮影のフォーカスアウトが要求されているかを判定する。その結果、フォーカスアウトが要求されていればステップs208へ進み、要求されていなければステップs214へ進む。
【0028】
フォーカスアウトが要求されているとしてステップs208へ進むと、現在のAFモードが3(AF評価値ピークで停止)であるかを判定する。その結果、AF評価値ピークでレンズが停止中であればステップs209へ進む。また、AF評価値ピークでなければ、後述するように要求を拒否する警告表示を行うステップs212へ進む。これは、図3において、フォーカスインを実行するAFモードの遷移として、ぼけ効果を得るためにAFモード3(合焦状態)からのフォーカスアウト以外は許可していないからである。但し、小ぼけから大ぼけさせるときはAFモード3でなくとも良く、AFモード3以外からの遷移を許可すれば可能になる。
【0029】
AF評価値ピークで停止中であるとしてステップs209へ進むと、位相差AFにて被写体までの距離情報を取得する。そして、次のステップs210にて、現在の焦点位置と前後近接の被写体距離から、レンズをどちらかの方向へ動かせばぼけ効果が得られるかどうか判定する。即ち、ぼけ位置があるかどうかを判定し、ぼけ位置がない場合はステップs212へ進み、ぼけ位置がある場合はステップs211へ進む。
【0030】
図5(A)のように、予め被写体距離を位相差AFにて検出できるので、合焦点L6からフォーカスアウトする場合、合焦点L7と反対側に所定ぼけ量だけフォーカスアウトするように速度V6を決めることができる。図5(B)のように、現在のレンズ位置L8に対して複数の近接被写体位置L9,L10がある場合、コントラストAFだけでは確実にぼける方向の判定ができない。本実施例では、予め被写体距離を位相差AFで検出できるので、近接した合焦点L9,L10が存在しても、所定のぼけ量だけフォーカスアウト可能なのは合焦点L9方向と判定可能なので、フォーカスアウト時間が一定になるように速度V8を決めることができる。
【0031】
図2に戻り、ぼけ位置があるとしてステップs211へ進むと、AFモードを5(フォーカスアウト)に設定して処理を終了する。一方、ぼけ位置がないとしてステップs212へ進むと、要求を拒否する旨の警告表示を出力する。どの方向に動かしても、ぼけ位置がない場合は、警告を出すことも可能になる。次のステップs213では、現在のAFモードを変更なしにして、処理を終了する。
【0032】
上記ステップs207にてフォーカスアウトが要求されていないとしてステップs214へ進むと、エフェクト撮影のフォーカス送りが要求されているかを判定する。その結果、フォーカス送りが要求されていればステップs215へ進み、要求されていなければ後述のステップs224へ進む。
【0033】
フォーカス送りが要求されているとしてステップs215へ進むと、現在のAFモードが3(AF評価値ピークで停止)であるかどうかを判定する。その結果、AF評価値ピークでレンズが停止中であればステップs216へ進む。また、AF評価値ピークでレンズが停止中でなければステップs222へ進む。これは、図3において、フォーカス送りを実行するAFモードの遷移として、合焦点を2回通過させないために、AFモード3(合焦状態)からのフォーカス送り以外は許可していないからである。但し、AFモード3以外からの遷移を許可すれば可能になる。
【0034】
AF評価値ピークで停止中であるとしてステップs216へ進むと、前ピン送りが要求されているかを判定し、前ピン送りが要求されていればステップs217へ進み、後ピン送りならばステップs220へ進む。なお、前ピンとは、手前の被写体に焦点を合わせること、後ピンとは、奥側の被写体に焦点を合わせることを意味する。
【0035】
前ピン送りが要求されているとしてステップs217へ進むと、位相差AFにて被写体の距離情報を取得する。そして、次のステップs218にて、現在の焦点位置より手前に被写体があるかどうか判定し、手前に被写体がある場合はステップs219へ進み、そうでない場合はステップs222へ進む。
【0036】
図6(B)のように、予め被写体距離を位相差AFにて検出できるので、合焦点L11から手前に合焦点L13が存在することが判定でき、フォーカス送り時間が一定のフォーカス送りになるように速度V13を決めることができる。
【0037】
図2に戻り、現在の焦点位置より手前に被写体があるとしてステップs219へ進むと、AFモードを6(フォーカス送り)に設定して、処理を終了する。
【0038】
上記ステップs216にて後ピン送りと判定するとステップs220へ進み、位相差AFにて被写体の距離情報を取得する。そして、次のステップs221にて、現在のレンズ位置より後ろの遠側に被写体があるかどうか判定し、遠側に被写体がある場合は上記したステップs219へ進む。
【0039】
図6(A)のように、予め被写体距離を位相差AFにて検出できるので、合焦点L11から奥に合焦点L12が存在することが判定でき、フォーカス送り時間が一定のフォーカス送りになるように速度V11を決めることができる。
【0040】
図2に戻り、現在の焦点位置より後ろの遠側に被写体がない場合はステップs222へ進み、要求を拒否する旨の警告表示を出力し、次のステップs223にて現在のAFモードを変更無しにして、処理を終了する。
【0041】
図6(C)のように、予め被写体距離を位相差AFで検出できるので、現在のレンズ位置である合焦点L11の前後に合焦点が全く存在しないことが予め判定でき、警告を出すことが可能になる。
【0042】
図2に戻り、手動フォーカス要求がなく、エフェクト撮影要求も無い、つまりオートフォーカスの場合には、いずれの場合もステップS224へ進む。このステップs224では、現在のAFモードが0(手動フォーカス)であるかどうかを判定する。その結果、手動フォーカスであればステップs225へ進み、AFモードを手動フォーカスから位相差AFの方式に設定することでハイブリッドAFが起動するようにして、処理を終了する。一方、手動フォーカスでなければステップs226へ進み、既にハイブリッドAFで動作中であるので、現在のAFモードを変更無しにして、処理を終了する。
【0043】
上記ステップs201にて手動フォーカスへの切り換え要求されているとしてステップs227へ進むと、エフェクト撮影中であるかどうかを判定する。その結果、エフェクト撮影中、即ちAFモードが4,5もしくは6であればステップs228へ進む。そして、ステップs228では、エフェクト撮影終了までは手動フォーカスへの遷移を禁止するために現在のAFモードを変更無しにして、処理を終了する。一方、撮影されていなければステップs229へ進み、AFモードを0(手動フォーカス)に設定して、処理を終了する。
【0044】
次に、図7のフローチャートを用いて、AFモードとAF評価値と距離を周期的に取得しながらAFモードを遷移していく際のレンズ制御マイコン118での動作について説明する。
【0045】
まず、ステップs301では、コントラストAFから撮像信号を得る撮像信号処理と、位相差AFから位相差を得る位相差検出処理を行う。次のステップs302では、撮像信号より抽出されるAF評価値と、検出された位相差とレンズ位置から演算される距離情報を取得する。続くステップs303では、AFモードが0(手動フォーカス)であるかどうかを判定し、手動フォーカスであればステップs301へ戻り、そうでなければステップs304へ進む。
【0046】
手動フォーカスでないとしてステップs304へ進むと、ここではAFモードが1(位相差AF)であるかどうかを判定し、位相差AFであればステップs305へ進み、位相差AFでなければステップs309へ進む。
【0047】
位相差AFであるとしてステップs305へ進むと、位相差AFによって得られた距離から合焦レンズ位置を演算するレンズ位置目標演算処理を行う。そして、次のステップs306にて、現在のレンズ位置とレンズ位置目標から、レンズ移動速度と移動方向を決めるレンズ移動目標演算処理を行う。続くステップs307では、AF評価値が位相差AFからコントラストAFへの切換条件を超えているかを判定する。その結果、切換条件を超えていなければステップs335へ進む。切換条件を超えていればステップs308へ進み、AFモードを2(コントラストAF)に設定して、後述のステップs335へ進む。
【0048】
位相差AFでないとしてステップs309へ進むと、AFモードが2(コントラストAF)であるかどうかを判定し、コントラストAFであればステップs310へ進み、そうでなければステップs315へ進む。
【0049】
コントラストAFであるとしてステップs310へ進むと、AF評価値が前回(1周期前)より増加しているかどうかを判定し、増加していれば後述のステップs314へ進む。増加していなければステップs311へ進み、ここでは今回の減少がAF評価値ピーク通過後の減少であるか判定し、ピーク通過後であればステップs313へ進み、そうでなければステップs312へ処理を移す。
【0050】
ステップs313へ進むと、AFモードを3(AF評価値ピーク停止)に設定してステップs312へ進む。ステップs312では、レンズ移動方向反転の方針を決定する。そして、次のステップs314にて、AF評価値の増加、減少に応じて移動方向を、変化量に応じてレンズ移動速度を、それぞれ決めるレンズ移動目標演算処理を行う。その後は後述のステップs335へ進む。
【0051】
上記ステップs309にてAFモードがコントラストAFではないと判定すると、上記したようにステップs315へ進む。そして、このステップs315では、AFモードが3(AF評価値ピーク停止)であるかどうかを判定し、AF評価値ピーク停止であればステップs316へ進み、そうでなければステップs319へ進む。
【0052】
AF評価値ピーク停止であるとしてステップs316へ進むと、レンズ移動の停止、すなわち速度0のレンズ移動目標にする。そして、次のステップs317にて、AF評価値または距離が変化したかどうかを判定する。その結果、変化していればステップs318へ進み、AFモードを2(コントラストAF)に設定して後述のステップs335へ進む。また、変化していなければ直ちに後述のステップs335へ進む。
【0053】
以上のように、AFモードが1→2→3と遷移して、位相差AFからコントラストAFへ切り換わるようになっている。
【0054】
上記ステップs315にてAF評価値ピーク停止でないとしてステップs319へ進むと、ここではAFモードが4(フォーカスイン)であるかどうかを判定し、フォーカスインであればステップs320へ進み、そうでなければステップs325へ進む。
【0055】
フォーカスインであるとしてステップs320へ進むと、位相差AFのレンズ位置目標演算部105で距離からレンズ位置目標を演算する。そして、次のステップs321にて、フォーカスイン効果をかける時間を取得する。続くステップs322では、現在のレンズ位置とレンズ位置目標とフォーカスイン効果をかける時間から、レンズ移動速度と移動方向を決めるフォーカスイン時のレンズ移動目標演算処理を行う。
【0056】
例えば、図4(A)のように、被写体距離からレンズ位置目標L0を位相差AFで検出できるので、現在のレンズ位置L2とフォーカスイン時間T1から速度V2を決める。
【0057】
図7に戻り、次のステップs323では、現在のレンズ位置が速度制御からコントラストAFへの切換条件に等しくなっているかを判定し、等しくなければ直ちに後述のステップs335へ進む。また、切換条件に等しければステップs324へ進み、AFモードを2(コントラストAF)に設定して後述のステップs335へ進む。
【0058】
図4(A)の時刻T1のように、レンズ位置が切換条件に到達していたら、コントラストAFに切り換える。上記切換条件がステップs307におけるコントラストAFへの切換条件に内包されるように設定しておけば、速度制御からコントラストAFへ切り換わる。
【0059】
以上のように、AFモードが0→4→1→2→3と遷移して、手動フォーカスからフォーカスインしてハイブリッドAFへ切り換わるようになっている。
【0060】
図7において、ステップs319にてフォーカスインでないとしてステップs325へ進むと、ここではAFモードが5(フォーカスアウト)であるかどうかを判定し、フォーカスアウトであればステップs326へ進み、そうでなければステップs331へ進む。
【0061】
フォーカスアウトであるとしてステップs326へ進むと、位相差AFのレンズ位置目標演算部で距離からレンズ位置目標を演算する。そして、次のステップs327にて、フォーカスアウト効果をかける速度を取得する。続くステップs328では、現在のレンズ位置とレンズ位置目標とフォーカスアウト効果をかける速度から、レンズ移動速度と移動方向を決めるフォーカスアウト時のレンズ移動目標演算処理を行う。
【0062】
例えば、図5(A)のように、現在のレンズ位置L6からぼける方向を位相差AFで検出できるのでフォーカスアウト時間T1から速度V6を決める。
【0063】
次のステップs329では、現在のレンズ位置がフォーカスアウトレンズ移動から手動フォーカスへの切換条件に等しくなっているかを判定し、等しくなければ後述のステップs335へ進む。また、切換条件に等しければステップs330へ進み、AFモードを0(手動フォーカス)に設定して後述のステップs335へ進む。
【0064】
例えば、図6(A)のように、現在のレンズ位置L6から所定ぼけ量をレンズ移動させた後、手動フォーカスに移る。
【0065】
以上のように、AFモードが3→5→0と遷移して、AF評価値ピークからフォーカスアウトして手動フォーカスで待機に切り換わるようになっている。フォーカスアウト動作終了に記録装置の記録終了信号を接続して連動させることも可能であるのは明らかである。
【0066】
上記ステップs325にてフォーカスアウトでなければステップs331へ進み、フォーカス送り効果をかける速度を取得する。そして、ステップs332へ進み、現在のレンズ位置と位相差AFのレンズ位置目標とフォーカス送りをかける速度から、レンズ移動速度と移動方向を決めるフォーカス送りレンズ移動目標演算処理を行う。
【0067】
図6(A)のように、予め被写体距離からレンズ位置目標L12を位相差AFで検出できるので、現在レンズ位置L11とフォーカス送り時間T1から速度V11を決める。
【0068】
次のステップs333では、現在のレンズ位置がフォーカス送りレンズ移動からハイブリッドAFへの切換条件に等しくなっているかを判定し、等しくなければ後述のステップS335へ進む。また、切換条件に等しければステップs334へ進み、AFモードを2(コントラストAF)に設定して後述のステップs335へ進む。
【0069】
図6(A)の時刻T1のように、レンズ位置が切換条件に到達していたら、コントラストAFに切り換える。前記切換条件がステップs307におけるコントラストAFへの切換条件に内包されるように設定しておけば、速度制御からコントラストAFへ切り換わる。
【0070】
以上のように、AFモードが3→6→1→2→3と遷移して、AF評価値ピークからフォーカス送りしてコントラストAFへ切り換わるようになっている。
【0071】
ステップs335へ進むと、制御目標発生部110の速度と方向と位置設定値を更新して、次回の周期先頭処理であるステップs301に戻る。
【0072】
図8は、図7のステップs323での切換条件判定の詳細を示すフローチャートである。
【0073】
ステップs801では、現在のレンズ位置がフォーカスイン時のレンズ目標位置から所定距離以内に近づいているかを判定する。その結果、所定距離以内に近づいていればステップs803へ進み、切換条件は成立していると決定して、処理を終える。一方、所定距離以内に近づいていなければステップs802へ進み、現在のAF評価値が所定評価値以上であるかを判定し、所定評価値以上であれば上記のステップs803へ進む。所定評価値以上でなければステップs804へ進み、切換条件は成立していないと決定して、処理を終える。
【0074】
図9は、図7のステップs329での切換条件判定の詳細を示すフローチャートである。
【0075】
ステップs901では、現在のレンズ位置がフォーカスアウト時のレンズ移動目標位置から所定距離以内に近づいているかを判定する。その結果、所定距離以内に近づいていればステップs903へ進み、切換条件は成立していると決定して、処理を終える。一方、所定距離以内に近づいていなければステップs902にて、フォーカスアウト移動開始から所定時間経過したか判定し、所定時間以上経過であれば上記のステップs903へ進む。所定時間以上経過していなければステップs904へ進み、切換条件は成立していないと決定して、処理を終える。
【0076】
図10は、図7のステップs333での切換条件判定の詳細を示すフローチャートである。
【0077】
ステップs1001では、現在のレンズ位置がフォーカス送り時のレンズ移動目標位置から所定距離以内に近づいているかを判定する。その結果、所定距離以内に近づいていればステップs1003へ進み、切換条件は成立していると決定して、処理を終える。一方、所定距離以内に近づいていなければステップs1002へ進み、現在のAF評価値が所定評価値以上であるかを判定し、所定評価値以上であれば上記のステップs1003へ進む。所定評価値以上でなければステップs1004へ進み、切換条件は成立していないと決定して、処理を終える。
【0078】
以上のように、位相差AFでの距離情報を、エフェクト撮影時のレンズ目標位置にフィードフォワードしてからコントラストAFに切り換えるようにしている。
【0079】
よって、予め合焦レンズ位置を記憶させずとも、任意の速度制御下で自動フォーカスインできる。同様に、任意の速度制御下で自動フォーカス送りできる。また、必ずぼけが発生する方向に、自動的にフォーカスアウトすることができる。また、被写体が動いて画面から消え、フォーカス送り、フォーカスイン撮影ができない時も、撮影を開始する時点で警告を出すことが可能になる。また、被写体が増えて、フォーカスアウト撮影ができない時も、撮影を開始する時点で警告を出すことが可能になる。
【0080】
上記の実施例によれば、位相差AFによる距離検出手段による距離検出によって合焦する移動方向と移動速度を決定し、移動終了後にコントラストAFに切り換えるようにしている。そのため、被写体コントラスト、レンズ位置に影響されずに一定時間でフォーカスイン、フォーカス送りを発生できるという効果がある。
【0081】
また、位相差AFによる距離検出手段による距離検出によってぼける移動方向と移動速度を決定し、移動終了後に手動フォーカスに切り換えるようにしている。そのため、被写体コントラスト、レンズ位置に影響されずに一定時間でフォーカスアウトを発生できるという効果がある。また、フォーカスイン、フォーカス送り、フォーカスアウトができない被写体条件であることをエフェクト撮影実行前に判定できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施例に係るレンズ制御装置の回路構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例におけるAFモードを決める際の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施例におけるAFモードの遷移を示す図である。
【図4】本発明の実施例におけるフォーカスインについて説明するための図である。
【図5】本発明の実施例におけるフォーカスアウトについて説明するための図である。
【図6】本発明の実施例におけるフォーカス送りについて説明するための図である。
【図7】本発明の実施例におけるAFモードを遷移していく際の動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施例においてフォーカスインからコントラストAFへの切換判定を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施例においてフォーカスアウトから手動フォーカスへの切換判定を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施例においてフォーカス送りからコントラストAFへの切換判定を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0083】
100 コントラストAF部
101 AF評価値処理部
102 山登り制御位置目標演算部
103 位相差AF部
104 距離算出部
105 レンズ位置目標演算部
106 レンズ移動目標演算部
107 AF入切選択部
108 AF入切スイッチ
109 AF切換スイッチ
110 制御目標発生部
111 エラー算出器
112 レンズ制御部
113 レンズ部
114 レンズ位置検出部
115 エフェクト撮影選択部
116 エフェクト撮影レンズ移動目標演算部
117 AFモード判定部
118 レンズ制御マイコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子の出力信号から画像のコントラストを表わす焦点評価信号を生成する信号生成手段と、
被写体距離に対応する情報を検出する距離検出手段と、
前記焦点評価信号に基づいてフォーカスレンズの制御を行い、前記被写体距離に対応する情報に基づいてフォーカスレンズの制御を行うレンズ制御手段とを有し、
フォーカスエフェクト機能に応じたフォーカスレンズ制御を可能にするフォーカス制御装置において、
前記レンズ制御手段は、フォーカスエフェクト機能に応じたフォーカスレンズ制御を行う際は、前記被写体距離に対応する情報によって前記フォーカスレンズが合焦する移動方向と移動速度を決定し、前記被写体距離に対応する情報に基づく前記フォーカスレンズの合焦方向への移動を制御した後、前記焦点評価信号に基づく合焦制御に切り換わる制御を行うことを特徴とするフォーカス制御装置。
【請求項2】
前記レンズ制御手段は、前記フォーカスエフェクト機能としてフォーカスインが選択されている際は、非合焦状態で前記被写体距離に対応する情報と現在のフォーカスレンズ位置から合焦点までのレンズ移動量を求め、該レンズ移動量とエフェクト時間長から求めた一定移動速度で前記フォーカスレンズを非合焦状態から合焦点へ移動させるフォーカスレンズ制御を行い、
前記移動中の所定条件において、前記被写体距離に対応する情報に基づくフォーカスレンズ制御から前記焦点評価信号に基づくフォーカスレンズ制御に切り換わることを特徴とする請求項1に記載のフォーカス制御装置。
【請求項3】
前記所定条件とは、前記焦点評価信号が所定レベルを超えることであることを特徴とする請求項2に記載のフォーカス制御装置。
【請求項4】
前記所定条件とは、フォーカスレンズ位置が合焦点までの所定距離内に入ることであることを特徴とする請求項2に記載のフォーカス制御装置。
【請求項5】
前記レンズ制御手段は、前記フォーカスエフェクト機能としてフォーカスアウトが選択されている際は、合焦状態で前記被写体距離に対応する情報と現在のフォーカスレンズ位置から非合焦状態までのレンズ移動量を求め、該レンズ移動量とエフェクト時間長から求めた一定移動速度で前記フォーカスレンズを合焦点から非合焦状態へ移動させるフォーカスレンズ制御を行い、
前記移動中の所定条件において、前記被写体距離に対応する情報に基づくフォーカス制御から手動フォーカスレンズ制御に切り換わることを特徴とする請求項1に記載のフォーカス制御装置。
【請求項6】
前記所定条件とは、フォーカスレンズ位置が非合焦位置までの所定距離内に入ることであることを特徴とする請求項5に記載のフォーカス制御装置。
【請求項7】
前記所定条件とは、フォーカスレンズ位置が非合焦方向へ移動開始してから所定時間経過することであることを特徴とする請求項5に記載のフォーカス制御装置。
【請求項8】
前記レンズ制御手段は、前記フォーカスエフェクト機能としてフォーカス送りが選択されている際は、合焦状態で前記被写体距離に対応する情報と現在のフォーカスレンズ位置から隣接する合焦点までのレンズ移動量を求め、該レンズ移動量とエフェクト時間長から求めた一定移動速度で現在の合焦点から隣接する合焦点へ前記フォーカスレンズを移動させるフォーカスレンズ制御を行い、
前記移動中の所定条件において、前記被写体距離に対応する情報に基づくフォーカス制御から前記焦点評価信号に基づくフォーカスレンズ制御に切り換わることを特徴とする請求項1に記載のフォーカス制御装置。
【請求項9】
前記所定条件とは、前記焦点評価信号が所定レベルを超えることであることを特徴とする請求項8に記載のフォーカス制御装置。
【請求項10】
前記所定条件とは、フォーカスレンズ位置が隣接する合焦点までの所定距離内に入ることであることを特徴とする請求項8に記載のフォーカス制御装置。
【請求項11】
請求項1ないし請求項10のいずれかに記載のフォーカス制御装置を有することを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−46225(P2008−46225A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219818(P2006−219818)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】