説明

フォーカス調整装置及び方法

【課題】合焦の判断が難しい被検体の合焦容易性を向上させる。
【解決手段】光源21から低可干渉光を発光させ、発光させた低可干渉光を第1のビームスプリッタ23により分離し、第1のビームスプリッタ23を透過した低可干渉光を反射板25により反射させ、第1のビームスプリッタ23を反射した低可干渉光を被写体へと導き、第1のビームスプリッタ23における反射面の中心と反射板25との往復光路長は、第1のビームスプリッタ23における反射面の中心から第2のビームスプリッタ13を介して検量用としての被写体2に至るまでの往復光路長と同一となるように予め調整され、反射板25を反射して第1のビームスプリッタ23を反射した第1の戻り光と、被写体2を反射して第2のビームスプリッタ13を反射して第1のビームスプリッタ23を透過した第2の戻り光との干渉度合に基づいて、撮像光路のフォーカス調整を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体からの撮像光を撮像素子へと導く撮像光路のフォーカス調整を行うフォーカス調整装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コントラスト法に基づいてAF(オートフォーカス)制御を行うフォーカス調整装置、またこれを適用したカメラが知られている。コントラスト法では、被写体をCCD等の撮像素子で撮像して画像信号を生成し、この生成した画像信号から所定エリア内の空間周波数帯域の成分を抽出し、その絶対値を積分することで焦点評価値を算出する。この算出した焦点評価値は、焦点検出エリアのコントラストに対応しているため、焦点評価値が高くなるにつれてコントラストそのものが高くなる。像のコントラストは、合焦レンズが合焦位置に近いほど高くなるため、焦点評価値がピークとなるレンズ位置を合焦位置と判断することが可能となる。このため、かかる焦点評価値のピーク位置を見つけて合焦レンズをフォーカスすることで、被写体に精度よく合焦させることができる。このようなコントラスト法を利用した技術としては、例えば特許文献1に示すようなレンズ制御システムが提案されている。
【0003】
しかしながら、このようなコントラスト法に基づくオートフォーカスは、例えばガラスや水等といった被検体においては、被検体表面において反射する光が微小であるため、撮像素子において十分な戻り光を受光することができず、合焦の判断が困難になるという問題点があった。
【0004】
また、このようなガラスや水等といった合焦と判断しにくい被検体の合焦容易性を向上させるためには、既存の撮像システムの大幅な改変が要求される場合もあり、システム改変に伴う製造コストの上昇が問題となっていた。即ち、既存の撮像システムに大幅な改変を施すことなく、かかる合焦容易性を向上させるための技術に対する要望が特に近年において高まっていた。
【0005】
また生物等のように高速に動く被写体に対して焦点合わせを行う場合も合焦が容易ではないが、このような被写体に対しても精度よくフォーカス調整を行うことができるフォーカス調整方法に対する要望が従来より高まっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−280048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、例えばガラスや水等といった合焦の判断が難しい被検体や、生物等のように高速に動く被写体に対しても高精度にフォーカス調整を行うことができ、既存の撮像システムに大幅な改変を施すことなく、合焦容易性を向上させることが可能なフォーカス調整装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載のフォーカス調整装置は、低可干渉光を発光する光源と、上記光源から発光された上記低可干渉光を分離する第1のビームスプリッタと、上記第1のビームスプリッタを透過した低可干渉光を反射する反射板と、被写体からの撮像光を撮像素子へと導く撮像光路中に設けられ、上記第1のビームスプリッタを反射した低可干渉光を更に反射させて上記被写体へと導く第2のビームスプリッタと、上記反射板を反射して上記第1のビームスプリッタを反射した第1の戻り光と、上記被写体を反射して上記第2のビームスプリッタを反射して上記第1のビームスプリッタを透過した第2の戻り光をともに受光する受光手段と、上記受光手段により受光された上記第1の戻り光と上記第2の戻り光との干渉度合に基づいて、上記撮像光路のフォーカス調整を行うフォーカス調整手段とを備え、上記第1のビームスプリッタにおける反射面の中心と上記反射板との往復光路長は、上記第1のビームスプリッタにおける反射面の中心から上記第2のビームスプリッタを介して検量用としての被写体に至るまでの往復光路長と同一となるように予め調整されていること を特徴とする。
【0009】
また、請求項2記載のフォーカス調整装置は、請求項1記載の発明において、上記光源は、スーパールミネッセンスダイオード(SLD)であることを特徴とする。
【0010】
請求項3記載のフォーカス調整方法は、光源から低可干渉光を発光させ、上記発光させた上記低可干渉光を第1のビームスプリッタにより透過並びに反射することにより分離し、上記第1のビームスプリッタを透過した低可干渉光を反射板により反射させ、被写体からの撮像光を撮像素子へと導く撮像光路中に設けられた第2のビームスプリッタにより、上記第1のビームスプリッタを反射した低可干渉光を更に反射させて上記被写体へと導き、上記第1のビームスプリッタにおける反射面の中心と上記反射板との往復光路長は、上記第1のビームスプリッタにおける反射面の中心から上記第2のビームスプリッタを介して検量用としての被写体に至るまでの往復光路長と同一となるように予め調整され、上記反射板を反射して上記第1のビームスプリッタを反射した第1の戻り光と、上記被写体を反射して上記第2のビームスプリッタを反射して上記第1のビームスプリッタを透過した第2の戻り光をともに受光し、上記受光した上記第1の戻り光と上記第2の戻り光との干渉度合に基づいて、上記撮像光路のフォーカス調整を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上述した構成からなる本発明によれば、例えばガラスや水等といった合焦の判断が難しい被検体や、生物等のように高速に動く被写体に対しても高精度にフォーカス調整を行うことができ、既存の撮像システムに大幅な改変を施すことなく、合焦容易性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を適用したフォーカス調整装置のブロック構成図である。
【図2】本発明を適用したフォーカス調整装置の詳細なブロック構成図である。
【図3】本発明を適用したフォーカス調整装置による作用効果について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明を適用したフォーカス調整装置1のブロック構成を示している。このフォーカス調整装置1は、既存の撮像光学系10に対して新たに実装されるシステムであるが、これに限定されるものではなく、撮像光学系10と合わせて新規のシステムとして提供されるものであってもよい。
【0015】
このフォーカス調整装置1は、低可干渉光を出射する光源21と、この光源21から出射された低可干渉光を平行光とする凸レンズ22と、この凸レンズ22を通過する低可干渉光の光路中に配設され、当該低可干渉光を透過並びに反射することにより分離する第1のビームスプリッタ23と、第1のビームスプリッタ23を透過した低可干渉光が照射される反射板25と、第1のビームスプリッタ23を反射した低可干渉光を集光して縮径させる凸レンズ24とを備えている。
【0016】
また、フォーカス調整装置1は、第1のビームスプリッタ23から出射した光を受光する受光素子26を備え、この受光素子26は、制御部27に電気的に接続され、更にこの制御部27は、フォーカス調整を実現するためのフォーカス調整部28に接続されている。
【0017】
また撮像光学系10は、被検体2からの撮像光を集光するための対物レンズ14と、少なくとも対物レンズ14を通過した撮像光を分離する第2のビームスプリッタ13と、第2のビームスプリッタ13を透過した撮像光を集光するチューブレンズ12と、このチューブレンズ12からの撮像光を受光して光電変換するための撮像素子11とを備えている。
【0018】
被写体2は、本発明を適用したフォーカス調整装置1によるフォーカス調整の対象となるものであって、仮にフォーカス調整装置1が撮像装置に実装される場合には、その撮影対象が当該被検体2に相当する。かかる場合において、被写体2は、例えば水やガラス等、被検体表面において反射する光が微小であるものであってもよく、フォーカス制御装置1は、かかる水やガラス等のような一般的には合焦が困難とされる被写体2に対してフォーカス調整を行っていくことになる。
【0019】
光源21は、図示しないホルダに取り付けられ、例えばスーパールミネッセンスダイオード(SLD)等で構成される。このSLDは、発光ダイオードと半導体レーザの中間に位置する発光デバイスである。スーパールミネッセンスダイオードは、発光ダイオードと異なり導波路構造を持ち、また半導体レーザと異なり共振器構造を持たないものである。このため、スーパールミネッセンスダイオードの出力光は、片方向のみ誘導放出による利得を受けた自然放出光とされる。また、スーパールミネッセンスダイオードは、シングルモードファイバに結合可能であり、出てくるスペクトル幅がレーザ光よりも広い、という利点を持っている。このような光源21から出射される出力光は、可干渉距離が短い低可干渉光とされる。なお、この光源21は、スーパールミネッセンスダイオードで構成される場合に限定されるものではなく、他の光源を用いてもよいことは勿論である。
【0020】
凸レンズ22は、光源21から出射された低可干渉光が最初に入射する光学部品であり、拡散光線とされている低可干渉光を屈折させることによりこれを平行光線に変換する。凸レンズ22を通過した低可干渉光は、第1のビームスプリッタ23へと導かれる。
【0021】
第1のビームスプリッタ23は、凸レンズ22から入射されてくる低可干渉光をそのまま直線状に透過させ、また撮像光学系10の方向に屈折させることにより、これを分離する。またこの第1のビームスプリッタ23は、反射板25からの第1の戻り光をそのまま直線状に透過させ、またその戻り光を折り曲げることによりこれを分離する。また、第1のビームスプリッタ23は、後述するように被写体2からの戻り光をそのまま直線状に透過させ、またその戻り光を折り曲げることにより、これを分離する。
【0022】
凸レンズ24は、第1のビームスプリッタ23を反射した平行光からなる低可干渉光を第2のビームスプリッタ13へ向けてそのビーム径を僅かに縮径させるように、これを屈折させる。
【0023】
第2のビームスプリッタ13は、凸レンズ24から入射されてくる低可干渉光をそのまま直線状に透過させ、また撮像光学系10の方向に屈折させることによりこれを分離する。またこの第2のビームスプリッタ13は、被写体2からの第2の戻り光をそのまま直線状に透過させ、またその戻り光を折り曲げて凸レンズ24へと導くことによりこれを分離する。また、この第2のビームスプリッタ13は、撮像光学系において、合焦後に、実際に被写体2を撮像する際において、被写体2からの撮像光をそのまま透過させる。このとき撮像光は、第2のビームスプリッタ13を反射して第1のビームスプリッタ23側へと導かれるが、実際の撮像においてこれが特段の問題とはならない。
【0024】
対物レンズ14は、第2のビームスプリッタ13により分離された低可干渉光を被写体2上に集光させる。このとき対物レンズ14は、被写体2に対して照射される低可干渉光をその表面上において合焦させるようにしてもよいし、平行光をその表面に照射するようにしてもよい。また、この対物レンズ14は、合焦後において実際に被写体2の撮像を行う際においても、その撮像光を集光する役割をも担う。
【0025】
チューブレンズ12は、第2のビームスプリッタ13を直線状に通過した撮像光が入射される。このチューブレンズ12は、入射されてくる撮像光を集光し、これを撮像素子11へ結像させる。
【0026】
撮像素子11は、例えば電荷結合素子(CCD)を配列させてなり、チューブレンズ12から出射された撮像光をその受光部に結像させて光電変換する。この撮像素子11は、受光部に加えて、該受光部で光電変換された信号の読み出し部を少なくとも有している。
【0027】
反射板25は、例えばミラー等で構成され、第1のビームスプリッタ23を透過した低可干渉光をその反射角度が90°となるようにして反射する。反射板25には図示しない調整機構が設けられ、第1のビームスプリッタ23に対して近接離間自在に調整可能とされている。
【0028】
受光素子26は、第1のビームスプリッタ23からの戻り光を受光して光電変換する。この光電変換された電気信号は、制御部27に送られる。
【0029】
制御部27は、少なくともCPU(Central Processing Unit)を有する制御ユニットとして構成されていればよいが、外付けのPC(パーソナルコンピュータ)等で具体化されるものであってもよい。この制御部27は、受光素子26から送信されてくる電気信号に含まれる、戻り光の干渉度合を識別する。この制御部27は、識別した戻り光の干渉度合に基づいて、フォーカス調整部28に対して、実際にフォーカス調整を行うための制御信号を送信する。このとき、制御部27は、得られた戻り光のビーム形状を図示しない画像表示装置を介して表示させるようにしてもよい。
【0030】
フォーカス調整部28は、制御部27から送信されてきた制御信号に基づいて、対物レンズ14を光軸方向へ移動させることにより撮像光路のフォーカス調整を行う。このときフォーカス調整部28は、受信した制御信号に基づいて、対物レンズ14を被写体2に対して傾けるための制御を行うようにしてもよい。
【0031】
ちなみに、制御部27、フォーカス調整部28を独立した構成要素として捉えてもよいが、概念的にはこれらを一まとめにしてフォーカス調整手段として捉えるようにしてもよい。
【0032】
次に、本発明を適用したフォーカス調整装置1の動作について説明をする。
【0033】
先ず被写体2に対するフォーカス調整を行う前に、光路長の調整を行う。先ず第1のビームスプリッタ23における反射面23bの中心点23aを基準としたとき、当該中心点23aから反射板25までの往復の光路長Laは、図中一点破線により表される。また当該中心点23aから第2のビームスプリッタ13の反射面13aを介して検量用としての被写体に到達するまでの往復の光路長Lbは、図中点線により表される。このとき、この往復光路長Laと、往復光路長Lbとは互いに同一となるように各構成要素、部材の配置が予め調整されている。なお、ここでいう検量用としての被写体2とは、かかる往復光路長Laと、往復光路長Lbを実際に計算する上において基準となる被写体2であり、実際にこれから観察しようとする被写体2とは必ずしも同一物性、同一形状、同一高さで構成されていなくてもよい。この検量用の被写体2をあくまで基準として往復光路長Laと、往復光路長Lbとの光路長を合わせておき、実際にこれから観察しようとする被検体2を試料台に載置したときに生じる往復光路長Laと、往復光路長Lbのズレを無くすようにフォーカス調整を行う。この往復光路長Laと、往復光路長Lbのズレは、後述するように、互いの往復光路長La、Lbからの戻り光の干渉度合に基づいて識別する。
【0034】
実際に、これから観察しようとする被検体2を試料台に載置した後、光源21から低可干渉光を出射する。この出射された低可干渉光は、第1のビームスプリッタ23により分離される。第1のビームスプリッタ23を透過した低可干渉光は、そのまま直進して反射板27へと導かれる。また、第1のビームスプリッタ23を反射した低可干渉光は、凸レンズ24を介して第2のビームスプリッタ13へと導かれる。
【0035】
反射板27へと導かれた低可干渉光は、反射板27を略90°の反射角を以って反射し、第1のビームスプリッタ23へと導かれることになる。この反射板27を反射して第1のビームスプリッタ23へと戻る戻り光を、以下第1の戻り光という。
【0036】
また第2のビームスプリッタ13へと導かれた低可干渉光は、第2のビームスプリッタ13を透過し、また反射することにより分離する。このうち、第2のビームスプリッタ13を反射した低可干渉光の成分は、対物レンズ14により集光されて、これから観察しようとする被写体2へと照射される。
【0037】
被写体2へ照射された低可干渉光は、これを反射することになる。ちなみに、被写体2が水やガラス等であっても低可干渉光は、僅かながら反射する。この反射する低可干渉光の戻り光を第2の戻り光としたとき、この第2の戻り光を再び対物レンズ14により捉え、これを第2のビームスプリッタ13へと導く。第2のビームスプリッタ13は、この第2の戻り光を透過させ、また反射させることにより分離する。そして、この第2のビームスプリッタ13を反射した第2の戻り光は、凸レンズ24を介して第1のビームスプリッタ23へと導かれる。
【0038】
その結果、第1の戻り光と、第2の戻り光とは、互いにビームスプリッタ23において合流することになる。第1の戻り光は、第1のビームスプリッタ23をそのまま透過し、また反射することにより分離する。この第1のビームスプリッタ23を反射した第1の戻り光は、受光素子26へ導かれる。また第2の戻り光は、第1のビームスプリッタ23をそのまま透過し、また反射することにより分離する。この第1のビームスプリッタ23を透過した第2の戻り光は、受光素子26へ導かれる。
【0039】
この受光素子26へと導かれた、第1の戻り光、第2の戻り光は、ともに受光素子26により光電変換されることになる。この光電変換された電気信号は、制御部27へと送信される。
【0040】
制御部27では、この受光素子26からの電気信号を受信することになるが、かかる受信信号は、第1の戻り光、第2の戻り光とが合わさった状態のものを光電変換したものである。このため、第1の戻り光、第2の戻り光との干渉状態がこの受信信号から識別可能となる。
【0041】
往復光路長Laと、往復光路長Lbが同一である場合には、第1の戻り光と第2の戻り光は、ともに位相が一致することになる。その結果、光波の強め合うところと弱め合うところが一致することになり、この第1の戻り光と、第2の戻り光とを合波させることにより得られる干渉縞がより明確なものとして現われる。即ち、合焦時には、往復光路長Laと、往復光路長Lbが同一であることから、第1の戻り光と、第2の戻り光とを合波させることにより得られる干渉縞が最も明確なものとして現われる。
【0042】
これに対して非合焦時、即ち往復光路長Laと、往復光路長Lbが互いに相違する場合には、第1の戻り光と第2の戻り光は、ともに位相がずれることになり、第1の戻り光と、第2の戻り光とを合波させることにより得られる干渉縞が不明確なものとなる。
【0043】
即ち、本発明では、第1の戻り光と第2の戻り光の干渉度合を識別することにより、合焦か否かを識別する。実際にこの干渉度合を識別する際には、得られた第1の戻り光と第2の戻り光の干渉波形をFFT変換する等で識別するようにしてもよい。仮に第2の戻り光の光量が微弱なものであっても、第2の戻り光の波形を取り込めるものであれば、これと第1の戻り光との間の干渉度合を識別することが可能となる。仮に被写体2が水やガラス等のように、表面において反射する光が微小であるため、十分な戻り光を得ることができない場合であっても、単に第1の戻り光と第2の戻り光との干渉度合を識別することができれば、合焦させることができる。その結果、本発明によれば、ガラスや水等といった合焦と判断しにくい被検体の合焦容易性を向上させることが可能となる。
【0044】
また本発明によれば、既存の撮像光学系10に対して、別途光源21と、凸レンズ22と、第1のビームスプリッタと23と、反射板25と、受光素子26からなる光学系を追加するのみで、上述したフォーカス調整を実現することができる。このため、既存の撮像システムの大幅な改変が要求されることなく、システム改変に伴う製造コストの上昇を抑えることができる。
【0045】
また本発明によれば、第2の戻り光を介して細かい時間ピッチで第1の戻り光と第2の戻り光との干渉度合を識別することができる。このため、生物等のように高速に動く被写体に対して焦点合わせを行う場合においても、その動きに応じた干渉度合を識別することにより、リアルタイムな焦点合わせを行うことも可能となる。
【0046】
更に、本発明では、光源21として安価なSLDを用いればよいため、製造コスト、システムの改変コストを低減させることが可能となる。
【0047】
以下、光源21としてSLDを用いることができる理由について説明をする。 対物レンズ14のNA(開口数)が0.2であるときの当該対物レンズ14の焦点深度Dは以下の式(1)によって表される。
【0048】
D=λ/(NA)2・・・・・・・・(1)
【0049】
ここでλは、観察波長であり、上述した式(1)の例では、波長0.55μmの可視光と設定している。
【0050】
その結果、この(1)式よりD=12.5μmという解が得られる。
【0051】
また、可干渉距離に約12.5μmを有する光源のスペクトル幅を計算する。
【0052】
12.5×10-6=3×1018/Δf
より、Δf=2.4×1013Hzとなる。これを波長変換すると、Δλ=50nmとなる。即ち、スペクトル幅が約50nmを持つ光源といえば、SLD等であることから、これを光源11として使用することとし、干渉縞が明確に表れたときに合焦と判断することとしている。
【0053】
なお本発明は、上述したフォーカス調整を目的とした装置に具体化される場合に限定されるものではなく、例えば制御部27は、第1の戻り光と第2の戻り光との干渉度合に応じた測定値を求め、これをプリンタや画像表示部等による図示しないユーザインターフェースを介して表示するものであってもよい。この干渉度合に応じた測定値は、干渉度合そのものを画像の濃淡で表示するものや、これを数値化して表示するもの等、干渉度合に対応するものであればいかなるものであってもよい。
【0054】
なお本発明を適用したフォーカス調整装置1は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、例えば図2に示すようなマッハツェンダー型の光学系で構成するようにしてもよい。
【0055】
この図2に示すマッハツェンダー型のフォーカス調整装置3において、図1に示すフォーカス調整装置1と同一の構成要素、部材については、同一の符号を付すことにより、以下での説明を省略する。なお、このマッハツェンダー型のフォーカス調整装置3は、既存の撮像光学系10に対して新たに実装されるシステムであるが、これに限定されるものではなく、撮像光学系10と合わせて新規のシステムとして提供されるものであってもよい。ちなみに撮像光学系10は、対物レンズ14と、ビームスプリッタ13と、チューブレンズ12と、撮像素子11とを備えている。
【0056】
フォーカス調整装置3は、光源21と、凸レンズ22と、この凸レンズ22を通過する無偏光状態の低可干渉光のうち一方向のみの偏光を通過させる偏光フィルタ51と、偏光フィルタ51を通過した一方向のみの偏光成分のうち、横偏光成分を通過させるとともに、縦偏光成分を反射させる偏光ビームスプリッタ52と、偏光ビームスプリッタ52を反射した縦偏光成分の光を略90°方向に反射させる反射板53と、この反射板53を反射した光を反射させるとともに、反射板53との光路長を可変可能な反射部54と、反射部54から再び反射板53を介して略90°方向に反射された光を折り曲げる反射板55とを備えている。
【0057】
また、このフォーカス調整装置3は、偏光ビームスプリッタ52を通過した横偏光成分の光をそのまま通過させるとともに、撮像光学系10からの縦偏光の光を反射させる偏光ビームスプリッタ56と、この偏光ビームスプリッタ56を通過した横偏光の光を左円偏光に変換させた上で撮像光学系10における偏光ビームスプリッタ13へと導くとともに偏光ビームスプリッタ13からの右円偏光の光を縦偏光に変換する波長板57と、波長板57により縦偏光に変換されて偏光ビームスプリッタ56を反射した光を横偏光に変換する波長板58と、波長板58を出射した横偏光の光と、反射板55を反射した縦偏光の光が供給され、この横偏光の光をそのまま通過させるとともに縦偏光の光を反射させる偏光ビームスプリッタ59と、偏光ビームスプリッタを出射した光を一方向のみの偏光の光に変換する波長板60と、波長板60を通過した光を受光する受光素子26とを備えている。
【0058】
このフォーカス調整装置3においても同様に、光路長の調整が予め行われる。偏光ビームスプリッタ52、偏光ビームスプリッタ56を通過し、被写体2を反射して偏光ビームスプリッタ56を反射して偏光ビームスプリッタ59に至るまでの光路長と、偏光ビームスプリッタ52を反射して、反射板53や、反射部54を介して偏光ビームスプリッタ59に至るまでの光路長とが同一となるように、換言すれば第1の戻り光と第2の戻り光の光路長が予め調整される。実際に調整を行う場合には、反射部54と反射板53との光路長を調整することにより行うようにしてもよい。
【0059】
このようなフォーカス調整装置3においても、それぞれの戻り光の干渉度合を識別することにより、合焦か否かを識別することが可能となり、フォーカス調整装置1と同様の効果を得ることが可能となる。
【0060】
また、本発明は、第1の戻り光と第2の戻り光のそれぞれの光路長が同一となるように調整される場合に限定されるものではない。第1の戻り光と第2の戻り光とが、互いに可干渉距離の範囲となるように調整されていれば、上述した本発明所期の効果を奏することになる。
【0061】
また、本発明では、フォーカス調整装置1でいえば反射板25を、フォーカス調整装置3でいえば反射部54を図示しないアクチュエータを介して振動させるようにしてもよい。これにより、以下の図3に基づいて説明される効果が期待できる。
【0062】
例えば、水滴に対して本発明を適用したフォーカス調整装置1、3により、第1の戻り光と、第2の戻り光との干渉縞を測定した場合には図3に示すような形態となるが、かかる水滴と対称な形状をした溝についても第1戻り光と、第2の戻り光との干渉縞を測定した場合も同様な干渉縞が得られる。このとき、干渉度合を介してフォーカス調整を行う場合に、水滴と溝とが判別できない場合には、全く逆方向に焦点位置合わせが行われる危険性も否定できない。かかる場合において、上述した反射板25又は反射部54を振動させることにより、干渉縞が図中矢印の何れの方向に動くかを判別することで、水滴か溝か、即ち、測定対象が凸状か凹状かを判別することが可能となる。
【0063】
同様に測定対象の表面が撓んでいる場合においても、上述した反射板25又は反射部54を振動させて縞が消えるか否かを識別することにより、何れの方向に撓んでいるかを判定することも可能となる。
【符号の説明】
【0064】
1、3 フォーカス調整装置
10 撮像光学系
11 撮像素子
12 チューブレンズ
13 第2のビームスプリッタ
14 対物レンズ
21 光源
22、24 凸レンズ
23 第1のビームスプリッタ
25 反射板
26 受光素子
27 制御部
28 フォーカス調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低可干渉光を発光する光源と、
上記光源から発光された上記低可干渉光を分離する第1のビームスプリッタと、
上記第1のビームスプリッタを透過した低可干渉光を反射する反射板と、
被写体からの撮像光を撮像素子へと導く撮像光路中に設けられ、上記第1のビームスプリッタを反射した低可干渉光を更に反射させて上記被写体へと導く第2のビームスプリッタと、
上記反射板を反射して上記第1のビームスプリッタを反射した第1の戻り光と、上記被写体を反射して上記第2のビームスプリッタを反射して上記第1のビームスプリッタを透過した第2の戻り光をともに受光する受光手段と、
上記受光手段により受光された上記第1の戻り光と上記第2の戻り光との干渉度合に基づいて、上記撮像光路のフォーカス調整を行うフォーカス調整手段とを備え、
上記第1のビームスプリッタにおける反射面の中心と上記反射板との往復光路長は、上記第1のビームスプリッタにおける反射面の中心から上記第2のビームスプリッタを介して検量用としての被写体に至るまでの往復光路長と同一とされているか、又は可干渉距離となるように予め調整されていること
を特徴とするフォーカス調整装置。
【請求項2】
上記光源は、スーパールミネッセンスダイオード(SLD)であること
を特徴とする請求項1記載のフォーカス調整装置。
【請求項3】
低可干渉光を発光する光源と、
上記光源から発光された上記低可干渉光を分離する第1のビームスプリッタと、
上記第1のビームスプリッタを透過した低可干渉光を反射する反射板と、
被写体からの撮像光を撮像素子へと導く撮像光路中に設けられ、上記第1のビームスプリッタを反射した低可干渉光を更に反射させて上記被写体へと導く第2のビームスプリッタと、
上記反射板を反射して上記第1のビームスプリッタを反射した第1の戻り光と、上記被写体を反射して上記第2のビームスプリッタを反射して上記第1のビームスプリッタを透過した第2の戻り光をともに受光する受光手段と、
上記受光手段により受光された上記第1の戻り光と上記第2の戻り光との干渉度合に応じた測定値を出力する出力手段とを備え、
上記第1のビームスプリッタにおける反射面の中心と上記反射板との往復光路長は、上記第1のビームスプリッタにおける反射面の中心から上記第2のビームスプリッタを介して検量用としての被写体に至るまでの往復光路長と同一とされているか、又は可干渉距離となるように予め調整されていること
を特徴とする測定装置。
【請求項4】
光源から低可干渉光を発光させ、
上記発光させた上記低可干渉光を第1のビームスプリッタにより透過並びに反射することにより分離し、
上記第1のビームスプリッタを透過した低可干渉光を反射板により反射させ、
被写体からの撮像光を撮像素子へと導く撮像光路中に設けられた第2のビームスプリッタにより、上記第1のビームスプリッタを反射した低可干渉光を更に反射させて上記被写体へと導き、
上記第1のビームスプリッタにおける反射面の中心と上記反射板との往復光路長は、上記第1のビームスプリッタにおける反射面の中心から上記第2のビームスプリッタを介して検量用としての被写体に至るまでの往復光路長と同一とされているか、又は可干渉距離となるように予め調整され、
上記反射板を反射して上記第1のビームスプリッタを反射した第1の戻り光と、上記被写体を反射して上記第2のビームスプリッタを反射して上記第1のビームスプリッタを透過した第2の戻り光をともに受光し、
上記受光した上記第1の戻り光と上記第2の戻り光との干渉度合に基づいて、上記撮像光路のフォーカス調整を行うこと
を特徴とするフォーカス調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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