説明

フォールトトレラントなタービン速度制御システム

【課題】タービン自体の電力を使用して緊急時のタービン速度を制御するための方法およびシステムを提供する。
【解決手段】発電機500はタービン100に設置され、タービンの力学的エネルギーを電気に変換することによって、タービンから電力を供給する。生成された電力は、タービンの制御器55,60に電源供給するために使用することができ、その結果、タービンはそれ自体のエネルギーによって使用状態に留まることができる。タービンは原子力発電所の中の安全に関係するタービンであることができ、発電機を介して、発電所の電力の喪失によりタービンおよびタービンが電源供給する安全に関係する機能が使用されないようにはならない。適切な電気回路および電気的な接続は発電機を調整して、制御器に安全に電力を供給するのに必要な特性を電力に提供しながら、存在するその他の電力源と協力して働く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービン速度制御システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、商用原子力発電所の中の従来のタービン制御システムの概略図である。図1に示したように、タービン100は、蒸気源101を受け、蒸気源101から熱力学的エネルギーを抽出し、低圧の飽和蒸気102を出力する。蒸気源101は、原子炉、熱交換器、蒸気発生器、高圧タービンなどから来ることがある。タービン101は、例えば低出力の炉心隔離冷却(RCIC)タービンまたはより高出力の高圧注入冷却(HPIC)タービンを含む、原子力発電所の中で見られる任意のタービンであり得る。抽出エネルギー105は、所望の構成部品に電源供給するために使用される。例えば、RCICおよびHPICの場合、抽出エネルギー105は、原子炉内の流量レベルおよび水位を維持する、関連のRCICおよびHPICの冷却ポンプに電力を供給する。
【0003】
過渡的なシナリオなどで、冷却システムを起動して原子炉冷却剤のレベルを維持し、発電所から崩壊熱を除去するためにタービン100が使用されるとき、タービン100は速度制御器60によって制御される。タービン100は、負荷および出力に基づいて速度情報を生成し、速度情報61を速度制御器60に送信する。速度制御器は、受信した速度情報61に基づいて速度制御信号62を生成して、タービン100に返信する。速度情報61によって、タービン100が指定された速度および負荷で動作して、遮断を回避し適切な電力105を所望の目的地に供給することが可能になる。従来、速度制御器60は発電所制御室の中の流量制御器55とネットワーク接続し、流量制御器55は流量制御信号56を速度制御器60と交換する。このようにして、発電所のオペレータは監視し、速度制御器60により速度制御信号62に変換される速度命令を制御室の流量制御器55を介して入力し、最終的に制御室命令に従って機能するように制御タービン100を制御することができる。
【0004】
従来、制御室の流量制御器55および速度制御器60、ならびに、それらによって生成されたデータおよび信号は、オフサイトまたは発電所の電力によって電源供給される。図1に示したように、発電所の停電事象中など、そのような電力が利用できないとき、ローカルのディーゼル発電機またはバッテリなどの発電所の緊急配電源50は、制御室の流量制御器55および速度制御器60に電力51を供給することができる。ローカルな電力を提供することにより、緊急配電源50は、オペレータがタービン100の速度を継続的に制御し、タービン100を使用して過渡状態を管理し、および/または、炉心隔離冷却ポンプおよび高圧注入冷却ポンプを含む安全システムに電力を供給することを可能にする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】WOODWARD,505 Digital Governor for Steam Turbines with Single Actuators,Installation and Operation Manual,1986
【発明の概要】
【0006】
例示的な実施形態は、オフサイト電力またはローカルな緊急電力がタービンを運転するのに必要とならないように、タービン自体の電力を使用してタービン速度を制御するための方法およびシステムを含む。例示的なシステムは、タービンに接続してそこから電力を生成し、タービンの動作を制御する速度制御器または制御室の流量制御器などのタービン用の制御器に接続する、発電機を含む。発電機は、制御器およびその他の所望のシステムに電源供給する任意の適切な電力、電圧、周波数などのものであり得る。さらに、例示的な実施形態は、発電機、制御器、および発電所の緊急電力を各電力源とフィルタの間の分離ダイオードに接続して、制御器に電源供給するのに必要な特性を有する電力を供給する電気回路を含むことができる。
【0007】
原子力発電所の中のタービンに発電機を設置し使用してタービン制御器に電源供給することにより、タービンはオフサイトまたはローカルの電力への配慮なしにそれ自体の電力によって操作および制御することができる。タービンがRCICまたはHPICのような安全に関係するポンプを駆動する場合、少なくともそのタービンはオペレータによって例示的な実施形態および方法を介して操作および制御され、タービンが崩壊熱または他の蒸気源によって駆動することができるかぎり、オフセットおよびオンサイトの緊急電力を喪失した原子炉に緊急冷却を行うことができる。これは、安全に関係するタービンを操作するための手動介入に対するいかなる必要性も排除しながら、いくつかの事故シナリオの中での冷却能力を大いに拡張することができる。
【0008】
例示的な実施形態は、そこでは同じ構成要素が同じ参照数字によって表されるが、添付図面を詳細に説明することによってより明白になり、添付図面は例示によって与えられるにすぎず、したがってそれらが描写する条件を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来の商用原子炉タービン流量制御システムの概略図である。
【図2】例示的な実施形態のフォールトトレラントなタービン速度制御システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
これは特許文書であり、それを読み理解するときは、一般的で広範囲の構成規則を適用すべきである。本文書に記載され例示されたすべては、添付特許請求の範囲の範囲内に含まれる主題の例である。本明細書に記載したいかなる特定の構造的および機能的な詳細も、例示的な実施形態をいかにして作成し使用するかを記載するためにすぎない。本明細書において詳細には開示されないいくつかのさまざまな実施形態が特許請求の範囲の範囲内に入り、そのため、特許請求の範囲は多くの代替の形態で具現化することができ、本明細書において説明した例示的な実施形態に限定されるものとして解釈すべきではない。
【0011】
本明細書において第1、第2などの用語をさまざまな構成要素を記載するために使用する場合があるが、これらの構成要素はこれらの用語によって限定すべきでないことが理解されよう。これらの用語は、1つの構成要素を別の構成要素から区別するために使用されるにすぎない。例示的な実施形態の範囲から逸脱することなく、例えば、第1の構成要素は第2の構成要素と呼ばれてもよいし、同様に第2の構成要素は第1の構成要素と呼ばれてもよい。本明細書では、用語「および/または」は、1つまたは複数の関連する列記された項目のありとあらゆる組合せを含む。
【0012】
構成要素が別の構成要素に「接続した」、「結合した」、「はめ合わせた」、「取り付けた」、または「固定した」と呼ばれるとき、直接その他の構成要素に接続もしくは結合してもよいし、または間に入る構成要素が存在してもよいことが理解されよう。対照的に、構成要素が別の構成要素に「直接接続した」または「直接結合した」と呼ばれるとき、間に入る構成要素は存在しない。構成要素の間の関係を説明するために使用される他の単語は、同じやり方(例えば「間の」対「間で直接に」、「近傍の」対「直接に近傍の」、など)で解釈すべきである。同様に、「通信結合した」などの用語は、中継装置、ネットワークなどを含む、無線または有線で接続した2つの装置の間の情報交換経路のすべての変形形態を含む。
【0013】
本明細書では、単数形「a」、「an」および「the」は、言葉が「only」、「single」および/または「one」などの単語を伴って明確に他を示さないかぎり、単数形と複数形のどちらも含むものとする。さらに、用語「備える」、「備えている」、「含む」および/または「含んでいる」は、本明細書において使用されるとき、記載した特徴、工程、動作、構成要素、概念、および/または構成部品の存在を指定するが、それら自体で1つまたは複数の他の特徴、工程、動作、構成要素、構成部品、概念および/もしくはそれらの集合の存在または追加を排除しないことが理解されよう。
【0014】
また、下記構造および動作は、図の中で説明および/または注記した順序以外で起こる場合があることに留意すべきである。例えば、連続して示された2つの動作および/または図は、関係する機能/動作に応じて、実際には同時に実行される場合があるか、または時々逆の順序で実行される場合がある。同様に、それぞれの、下記例示的な方法の中の個別の動作は、反復的に、個別的にまたは連続的に実行することができ、結果として、下記単一動作とは別にループ化または他の連続動作を提供する。下記特徴および機能を有する任意の実施形態が、任意の実現可能な組合せにおいて、例示的な実施形態の範囲内に入ることを想定すべきである。
【0015】
出願人は、発電所の緊急配電システム50が発電所の過渡期間中は利用できなくなる可能性があることを認識した。実際、オフサイト電力を切断するのと同じ過渡的な事象が緊急配電システム50を使用不可にすることは起こり得る。そのような状況では、タービン速度制御器60および/または制御室の流量制御器55は緊急電力を欠いているので、タービン100は、制御室の中の発電所オペレータによって、もしくは別の方法で、監視、制御、または、ことによると緊急システムに出力105を供給するために使用することさえできなくなる。さらに、出願人は、すべての他のオフサイトおよびオンサイトの電力が失われた場合、タービン100自体が緊急電気出力を供給することができ、そのような電力は適切に流用された場合、速度制御器60および制御室の流量制御器55に電源供給するために使用することができ、その結果、オペレータはタービン100を使用して、すべての他の電力が失われる事象の中でさえ発電所の過渡状態を管理することを認識した。下記に記載する例示的な実施形態および方法によって、出願者が認識した状況に対する上記その他の利点および状況に対する解決策が可能になる。
【0016】
図2は、例示的な実施形態のフォールトトレラントなタービン速度制御システム1000の概略図である。図2に示したように、発電機500はタービン100に設置され、速度制御器60および制御室の流量制御器55に電気的に接続される。発電機500は、タービン100の力学的エネルギー515から電圧を生成する能力があるACまたはDCの発電機を含む、任意のタイプの発電機であり得る。発電機500は、タービン100のタービンシャフトに沿って設置され、シャフト上の力学的エネルギー515の出力から電力551を生成することができる。例示的な実施形態において、既存の力学的出力105は、依然タービン100によって生成することができる。
【0017】
発電機500は、速度制御器60および/または制御室の流量制御器55などの接続システムに電源供給するのに十分な、大量の電力551を配送する能力がある。例えば、発電機500は、従来原子力発電所の中に設置された速度制御器60と制御室の流量制御器55のどちらにも電源供給できる、200WのDC発電機であり得る。当然、発電機500は、必要性およびタービン100の力学的出力に応じて、より大きな、または小さなワット数を有することができる。タービン100の機能が、タービン出力105によって電源供給される冷却ポンプなどの他の構成部品用に求められる場合、発電機500はタービン100の容量と必要な出力105との間の差異より小さい電力を定格とすることができる。例えば、1kWのDC発電機は、より大きなタービン100の動作を妨害しないで、別のシステムに電源供給することができる。
【0018】
図2に示したように、発電機500はタービン制御器に電気的に接続し、その結果、緊急配電システム50からの電気出力51が(図2の中で「X」によって示したように)信頼できないか、または利用できなくなった場合、発電機500からの電気出力551は、緊急システムからの電気出力51を補足または交換することができる。発電機500は、発電機500とネットワークの間に電気的な接続または回路を設置することにより、発電所の電力ネットワークに電気的に接続し、したがって、発電所の構成部品に電源供給することができる。
【0019】
分離ダイオード505および/またはフィルタ501は、所望により設置または構成されて、効果的な電流、電圧、電力、周波数、タイミングなどを、ネットワークに接続したすべての構成部品に供給することができる。分離ダイオード505および/またはフィルタ501は、緊急配電システム50からの電力を補足または交換するような電力が、発電機500、速度制御器60、制御室の流量制御器55、および/または、発電機500からの電気によって電源供給することができるその他の発電所の構成部品のような緊急システムを安全に動作させるのに必要な電圧および電力の特性に適合することを保証することができる。また、分離ダイオード505は、緊急配電システム50の機能不全または完全喪失にかかわらず、発電機500からの電力が電気ネットワーク上の消費する構成部品に達することができることを保証することができる。例えば、分離ダイオード505は、発電機500および/または緊急配電システム50への逆過電流を防止または削減し、その結果、それらの構成部品の中の損傷または無効性を防止することができる。フィルタ501は、コンデンサまたはバッテリであり得るが、例えば、速度制御器60、制御室の流量制御器55、および発電機500によって電源供給されるその他の構成部品に適用された、接地され滑らかな電流および電圧であり得る。
【0020】
あるいは、発電機500は、速度制御器60および/または制御室の流量制御器55などの所望の構成部品に直接電気的に接続することができ、その結果、発電所の緊急配電システム50の障害の場合、それらの構成部品は、それら自体で発電機500の電力551に切り替えることができる。
【0021】
図2に示したように、速度制御器60および/または制御室の流量制御器55が発電機500を介してタービン100によって電源供給されると、発電所のオペレータは、信号61、62、および/または56を介して制御室からその速度を監視および制御することによって、タービン100を継続的に運転することができる。このようにして、タービン100、およびその出力105は、発電所の緊急配電システム50の全体的な障害においてさえ、使用することができる。タービン100がRCIC、HPIC、または他の過渡状態もしくは安全に関係するタービンである場合、力学的出力105は、発電機500を使用する例示的なシステムを介して、RCICまたはHPICのポンプなどの緊急システムに対して維持することができる。原子炉からの崩壊熱または他のソースなどからの蒸気源101が利用できるかぎり、タービン100は、発電所の電力および緊急の電気的バックアップの完全喪失にかかわらず、例示的なシステムにおいて動作し制御可能であることができる。そのため、例示的なシステム1000は、タービン100の長期の使用および制御を可能にして、過渡事象中に原子炉または発電所の完全性を保持する他の緊急システムに電源供給することができる。
【0022】
例示的な実施形態および方法をこのように記載したので、例示的な実施形態が、以下の特許請求の範囲の範囲内に依然入りながら、日常の実験によって変更および置換できることが当業者によって理解されよう。例えば、例示的な実施形態を原子力発電所の中のRCICまたはHPICのタービンと関連して記載したが、例示的な実施形態および方法は、電力の喪失がタービンを制御および/または使用する能力に影響する任意のタービンと関連して使用できることが理解される。そのような変形形態は、以下の特許請求の範囲から逸脱するとみなされるものではない。
【符号の説明】
【0023】
50 発電所緊急配電源
51 緊急配電システム電気的出力
55 流量制御器
56 流量制御信号
60 速度制御器
61 速度情報
62 速度制御信号
100 タービン
101 蒸気源
102 飽和蒸気
105 既存の力学的出力
500 発電機
501 フィルタ
505 分離ダイオード
515 力学的エネルギー
551 電力
1000 例示的な実施形態のフォールトトレラントなタービン速度制御システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン(100)から電力(551)を生成する、前記タービン(100)に設置された発電機(500)と、
前記発電機と前記タービン用速度制御器(60)および制御室の前記速度制御器(60)用流量制御器(55)のうちの少なくとも1つとの間の電気的な接続であって、前記速度制御器(60)および/または制御室の流量制御器(55)の動作を前記電力(551)で可能にする電気的な接続と
を含む、タービン速度制御システム(1000)。
【請求項2】
前記速度制御器(60)および前記制御室の流量制御器(55)が前記タービンから離れている、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記発電発電機(500)機(500)がACまたはDCの約200ワットの発電機である、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記電気的な接続が前記速度制御器(60)および/または制御室の流量制御器(55)に供給される前記電力を調整する少なくとも1つの分離ダイオード(505)およびフィルタ(501)を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項5】
前記分離ダイオード(505)が前記発電機(500)への過電流を防止し、前記フィルタ(501)が前記電気的な接続の中の過電圧を削減するように構成されたコンデンサである、請求項4記載のシステム。
【請求項6】
前記タービン(100)が原子力発電所の中の炉心隔離冷却(RCIC)タービンおよび高圧注入冷却(HPIC)タービンのうちの1つである、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
前記電気的な接続に接続した緊急配電システム(50)であって、前記速度制御器(60)および/または制御室の流量制御器(55)の前記電力(551)による前記動作によって、前記タービン(100)が前記緊急配電システム(50)からの入力(51)にかかわらず制御されることが可能になるように、前記速度制御器(60)および/または制御室の流量制御器(55)が構成された緊急配電システム(50)
をさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
前記電気的な接続が、前記発電機(500)と前記速度制御器(60)との間および/または前記発電機(500)と前記制御室の流量制御器(55)との間で直接になされる、請求項1記載のシステム。
【請求項9】
発電機(500)が原子炉冷却ポンプタービン(100)から電気を生成することができるように、前記タービン(100)に発電機(500)を設置するステップと、
前記発電機(500)を前記タービン用の制御器(55/60)に電気的に接続するステップと
を含む、原子力発電所を運転する方法。
【請求項10】
前記発電機(500)からの電力(551)を使用して前記制御器(55/60)で前記タービン(100)を運転するステップ
をさらに含む、請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−100814(P2013−100814A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−239715(P2012−239715)
【出願日】平成24年10月31日(2012.10.31)
【出願人】(508177046)ジーイー−ヒタチ・ニュークリア・エナジー・アメリカズ・エルエルシー (101)
【氏名又は名称原語表記】GE−HITACHI NUCLEAR ENERGY AMERICAS, LLC
【Fターム(参考)】