説明

フコイダンの抽出方法

【課題】フコイダンを分離し精製する条件が複雑であり、少量しか製造されていない、また製造設備の耐腐食材は高価で、加工が難しく、抽出剤として強酸を使用した場合、製造されたフコイダンは、最終的に強塩基で中和する必要があり、そのため製造工程数が増え、含有する不純物量が増え、更にフコイダンに含まれるフコースの抽出効率が極めて低いなどの問題があった。
【解決手段】海水や塩水で洗浄したワカメの芽株部を凍結乾燥し熱水抽出もしくは酸抽出工程の抽出時間を0.5〜72時間の範囲内で行い、芽株粉砕物を抽出する熱水にpH2〜3の範囲内の値にし、無色,無臭な高純度フコイダンを抽出する流水で洗浄したワカメの芽株部を氷結乾燥後、粉砕化され芽株紛擾物から抽出されたフコイダン様多糖複合体はフコースを含有し、洗浄された芽株を凍結乾燥工程と粉砕する工程を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワカメ又は昆布等の芽株部から得られたフコイダン様多糖複合体及びその製造方法で、本発明の方法により得られたフコイダン含有抽出物は、医薬品や医薬部外品や食品や飲料や化粧品等に添加することができ、精製フコイダンの原料としても用いることができる製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、褐藻類には多彩な生理的機能を有し、食品や化粧品素材として利用されているフコイダンが含まれている。フコイダンはL−フコースを主成分とする硫酸化多糖であり、種々の生理活性が知られており、効率的に抽出することが望まれていた。
【0003】
そこで、特開平10−70970号公報に、モズクから、60〜100℃の熱水を用い、30分〜3時間の条件で、重量平均分子量が50,000〜500,000であり、中性糖含量が50〜90%であり、イオウ含量が3〜17%の範囲である熱水抽出物、例えばフコイダンを含んだ熱水抽出物を抽出する方法が開示されている。
【0004】
また、特開昭61−57519号公報や特開昭61−5752019号公報には、海藻から、水や温水、あるいは塩酸を用いて抽出された高粘性のフコイダン含有溶液に、B−1,3−グルカナーゼまたはプロテアーゼを溶存させて、フコイダン含有溶液に含まれる高粘性付与物質を分解し、低粘性のフコイダン含有溶液を製造する方法、あるいは、さらに限外濾過膜を用いてフコイダンを製造する方法が開示されている。
【0005】
さらに、特開平6−62852号公報,特開平7−59563号公報および特開平7−59564号公報には、真ウニ類から抽出したフコイダン分解酵素であり、至適pHがpH3〜3.5付近であり、至適温度が50〜55℃付近であり、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法で約分子量23000のフコイダン分解酵素(特開平6−62852号公報)や、至適pHがpH4〜4.5付近であり、至適温度が60℃付近であるフコイダン分解酵素(特開平7−59563号公報)や、至適pHがpH3〜4.0付近であり、至適温度が45℃付近であるフコイダン分解酵素(特開平7−59564号公報)を用いたフコイダンの製造方法が開示され実用に供せられている。
【特許文献1】特開昭61−57519号公報
【特許文献2】特開昭61−5752019号公報
【特許文献3】特開平10−70970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特に近年、食品業界では前記機能性食品として注目をあつめているものにモズクがあるが、フコイダンは褐藻類にアルギン酸と共存している多糖の一つであり,フコイダンを分離・精製する条件が複雑である。
【0007】
一方、国内におけるフコイダンの原料は沖縄県のオキナワモズクやトンガ王国のトンガモズクなどから主に生産されているが原料が高価格であるうえ、末端価格を一定の値段に調整するため,生産調整がおこなわれ,現在養殖により年間約10,000トンしか生産(1997年)されていない。
【0008】
特開平10−165114号公報に開示された製造方法では、腐食性の高い強酸を抽出剤として用いているため、製造設備を腐食しやすいという問題が見られる、耐腐食性の高い無機材料等を使用することは、製造設備の腐食をある程度は防止することができるものの、耐腐食性の高い無機材料は、極めて高価であり、加工が難しく、経済的にも問題がある。
【0009】
また、前記特開平10−165114号で開示された製造方法で得られるフコイダンは、分子量が高すぎて、所望の分子量、例えば、10,000から5,000,000の範囲内の値とすることが困難である。
【0010】
例えば、抗エイズウイルス作用を典型的に示すには、フコイダンの平均分子量を100,000から200,000の範囲内の値とするのが好ましいことが知られており、同様に、抗胃潰瘍作用を典型的に示すには、フコイダンの平均分子量を200,000程度の値とするのが好ましいことが知られている。
【0011】
さらに、抽出剤として強酸を使用した場合、製造されたフコイダンは、最終的に強塩基で中和する必要があり、そのため製造工程数が増え、含有する不純物量が増えるという問題が生じる。
【0012】
また、特開昭61−57519号公報や特開昭61−5752019号公報に開示された製造方法では、抽出剤として、強酸である塩酸を用いた場合には、特開平10−165114号公報と同様の腐食性や分子量性等の問題があり、一方、抽出剤として、水や温水(40度、14時間)を用いた場合には、特開平10−70970号公報と同様の抽出効率が極めて低い。
【0013】
さらに、特開平6−62852号公報,特開平7−59563号公報および特開平7−59564号公報に開示されたフコイダン分解酵素を用いた製造方法であれば、製造設備の腐食性の問題は見られなが、フコイダン分解酵素を用いただけでは、フコイダンに含まれるフコースの収率が低い等の従来の製造方法では問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、海水や塩水で洗浄したワカメの芽株部を凍結乾燥し熱水抽出もしくは酸抽出工程の抽出時間を0.5〜72時間の範囲内で行うことを特徴とする。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のフコイダンの抽出方法は、芽株粉砕物を、抽出する熱水にpH2〜3の範囲内の値にすることを特徴とする。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1記載のフコイダンの抽出方法は、無色,無臭な高純度フコイダンを抽出することを特徴とする。
【0017】
請求4記載の発明は、流水で洗浄したワカメの芽株部を氷結乾燥後、粉砕化されてなる芽株紛擾物から抽出されたフコイダン様多糖複合体はフコースを含有することを特徴とする。
【0018】
請求5記載の発明は、請求項4記載のフコイダン様多糖複合体の工程で得られた洗浄された芽株を凍結乾燥する凍結乾燥工程と乾燥した芽株を粉砕する工程を、備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明は酵素処理の前に、膨潤処理を施すことにより、製造設備を腐食したり、フコイダンを過度に分解することなく、しかも高い抽出率で得られる。
【0020】
フコイダン様多糖複合体は、海水や塩水で洗浄したワカメの芽株部を凍結乾燥又は氷結乾燥後、乾式粉砕化された芽株紛状物から抽出されたフコース及び/又はガラクトースを含有しているので、以下の効果が得られる。
【0021】
(1)ワカメの芽株を変質させることなくフコイダン様多糖体を容易に抽出することができ、カリウム・カルシウム・リン・鉄等のミネラル類やビタミンA・B1・B2・ナイアシン・C等のビタミン類が豊富に含まれ、また、その他微量ではあるが生命の維持及び栄養素として必要なミネラル、即ち、必須微量元素が含まれるフコイダン様多糖複合体を得ることができる。
【0022】
(2)鉄分やカルシウム・マグネシウム・カリウム等のミネラルの含量が極めて多く、且つストレスの解消性を有し興奮を抑え、抗病性・免疫性を向上させることができる。
よって、本発明により安価で食品等に最適な(着色物質及び海藻臭)高純度フコイダンを効率的に製造することができる。
【0023】
また、本発明の高純度フコイダンは、広範囲の飲食品や化粧品、医薬品等に、飲食品本来の風味や、化粧品、医薬品等の品質を損なったり、悪化させたりする事なく任意に添加することが可能であり、フコイダンの持つ有用な作用を活用する事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、ワカメの茎から芽株を分離する工程と遠心脱水により生ワカメの表面付着水分を取り除く洗浄・脱水工程ならびに芽株を細かく裁断後、一旦凍結あるいは氷結乾燥処理した後、ある一定条件90〜100℃程度の熱水を芽株乾燥重量の1〜3倍量用い、60〜120分程度抽出すればよい。
【0025】
また、酸抽出は、ワカメ乾燥粉末をその湿重量の約1〜3倍量の水に分散させ、酸を加えてpHを2〜4、望ましくは2〜3に調製した後、約50℃以上、望ましくは約80〜100℃に加熱し、フコイダンを溶出させることにより実施される。酸抽出に利用可能な酸としては、塩酸、酢酸、硫酸等が望ましい。
【0026】
また、本発明はワカメの氷結乾燥物を再溶解し熱水もしくは酸抽出物にアルコールを添加し、不純物や沈殿物を除去する工程を含むことを特徴とする。
【0027】
ワカメの成長する時期は、天然のものは8月末であるが、養殖のものについては3月から7月一杯で成長し幹縄から採取する。そして成長したワカメの若布から芽株を切断して分離する。
【0028】
ワカメの芽株の洗浄は、エタノール、メタノールの他、n−プロパノール、イソプロパノール等の低級アルコール、アセトン等を使用しても構わない。フコイダン様多糖複合体の精製法において、抽出時の塩酸の濃度は、0.1〜0.2Nあるいは、更に高濃度であっても構わない。フコイダン様多糖複合体の精製法において、緩衝液中のNaCl濃度を1M,2Mと2段階に変化させて吸着画分を溶出させる方法、あるいは連続的に変化させて溶出させる方法等を用いても構わない。
【0029】
この分離したワカメ芽株は地下水等の真水(好ましくは水温17〜18℃)を容量6〜10リットルのポリ容器に流水の状態で入れ、切断分離した前記芽株を一個づつ5〜10秒間前記流水の中に浸して流し洗いしながら、芽株に付着した海中のゴミ等の不純物を除去する。本発明の請求項3に記載した凍結乾燥すると、組織・細胞内に生じた氷の結晶(氷晶)がそのまま乾燥し、無数の極微少の穴があいた状態となり抽出効率・抽出効果が極めて増大するという作用を有する。
【0030】
また不純物の取り除かれた、ワカメ芽株を凍結乾燥装置又は氷結乾燥装置に長時間暴露し、乾燥物を、120〜200メッシュまで粉砕して粉末にする工程の最適な時間は2時間から4時間の範囲である。
【0031】
本発明の高純度フコイダンの製造原料になる褐藻類(ワカメ類,昆布類)の芽株とは、コンブ科、ナガコンブ科、ホソメコンブ科、マコンブ科、ワカメ科、ミツイシコンブ科、リシリコンブ科、アイヌワカメ科、ホンダワラ科等の褐藻類が適当である。
【0032】
前記、褐藻類の中でもUndaria pinnatifida (Harvey) Suringer(アイヌワカメ科)が最も日本で多く分布しており、暖流の影響のある北海道の西岸から広く九州まで及び年間約10万トン漁獲されており、原料としても豊富である。
【0033】
本発明の高純度フコイダンを得るための原料であるフコイダン抽出物は、フコイダンを常法により熱水抽出もしくは酸抽出で得られる。
【0034】
前記、熱水抽出は、前記特開平7−138166号公報に記載の公知方法により任意の条件で実施できるが、最適な温度は90℃〜100℃の熱水を海藻重量に対し0.5〜3倍の量を用い、最適な時間は60分〜120分間抽出するのがよい。
【0035】
また、酸抽出は、海藻の重量の約1〜3倍の量の常温水に分散させ、酸を加えてpHを2〜4、最適はpH2〜pH3に調整した後、約50℃以上で加熱する。
【0036】
最適な温度は80℃〜100℃で加熱し、フコイダンを溶出させることができる。
【0037】
酸抽出に利用可能な酸としては、塩酸、酢酸、硫酸等である。
【0038】
また得られた海藻の熱水もしくは酸による抽出物(以下、単に「抽出物」ということがある)は、必要に応じて遠心分離や濾過等の処理に付して不溶性の抽出残渣を除去することが好ましく、また必要に応じて、更に限外濾過や水洗浄等の精製手段を行うことができる。
【0039】
これらの方法で調製した抽出物は、海藻の種類や精製の程度にもよるが、2ないし3重量%から80重量%程度のフコイダンを含有する液状あるいは粉末状で得られるが、いずれも本発明の高純度フコイダンを得るための原料として用いることができる。
【0040】
本発明の高純度フコイダンを得るためには、まずワカメ芽株部を流水で洗浄し凍結乾燥する工程及びフコイダン抽出物を凍結後再融解するか、あるいは乾燥後再溶解する。
【0041】
凍結・再融解処理の条件は特に限定されるものではなく、常法により、抽出物を冷却し、凍結させた後、常温で放置するか、加温することにより融解させればよい。
【0042】
また、乾燥・再溶解処理も常法により行うことができ、抽出液に凍結乾燥や噴霧乾燥等の公知の乾燥手段を施して乾燥させた後、任意の溶媒、例えば水、熱水等に溶解させればよい。
【0043】
次に、凍結・再融解または乾燥・再溶解した抽出物を、アルコールによって処理する、この工程により、抽出物中の着色物質を沈殿せしめ、これを分画・除去することができる。
【0044】
前記工程で抽出物に添加されるアルコールの種類は特に制限がないが、脱色効果の点からは炭素数3以下の一価アルコール類、例えばエタノール等が特に優れており、良好な沈殿形成効果を有している。
【0045】
なお、脱色後の抽出物を乾燥せずシロップ等の濃縮物とする場合は、その後の製造工程でアルコール除去と濃縮のためのさらなる減圧濃縮が必要であり、その際にアルコール濃度は濃縮に伴って低下していくものの、必ず少量が共沸混合物として水に解けた状態で残留するため、食品衛生上の観点からは特にエタノールが望ましい。
【0046】
さらに、アルコール分画時の溶液のpHは、pH3〜pH7の範囲であることが好ましく、フコイダンの分解あるいは再着色防止のため、強酸性下およびアルカリ性側での処理は避ける。
【0047】
さらに、アルコール分解時の温度は、10℃〜30℃が望ましく、冷却あるいは加温する必要は無い。
【0048】
沈澱形成時間は、アルコールを添加して攪拌後、30分程度静置すれば十分であるが、例えば20時間程度放置しても、最終アルコール濃度が範囲内であればフコイダン自体が沈澱する事はない。
【0049】
アルコール処理によって生じた沈殿物は、常法に従い、例えば、濾過、遠心分離等の手段によりフコイダンと分解し、除去することができる。
【0050】
本発明では、食塩の共存下でアルコール処理を行うことができる。
【0051】
抽出工程は、アルコール処理に塩を共存させる点以外は、同様に実施される。この工程で抽出物に添加される塩の種類は特に限定されるものではなく、例えば、食塩、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の水易溶性の1価および2価の金属塩が挙げられる。
【0052】
高純度フコイダンを食品等に配合する上では、塩として可食性の塩を用いることが好ましく、特に安全性の問題が無く、最終製品からの除去が不要で、高純度品が低価格かつ容易に入手できる等の理由から、食品添加物として認可されており、日常的に摂取されている食塩、塩化カルシウム等を用いることが好ましい。
【0053】
抽出物に添加し、共存せしめる塩の量は、抽出物中の炭水化物に対し0.2〜300重量%程度、特に50〜100重量%程度が望ましい。この際、処理対象となる抽出物自体に含まれる食塩濃度を考慮し、必要に応じて加塩あるいは減塩して上記範囲の塩濃度に調整することができる。
【0054】
なお、前記の塩(特に食塩)およびアルコール(特にエタノール)は、少量であるなら食品や化粧品に残留しても何ら問題はないが、例えば限外濾過や、電気透析と限外濾過、電気透析と減圧濃縮等を組み合わせて実施することにより、除去あるいは任意の程度まで低減させる事ができる。
【0055】
本発明により得られた高純度フコイダンは、単独でまた精製フコイダンの原料とすることもでき、あるいはその他一般的に使用されている成分と併用することにより、食品、医薬品、医薬部外品、化粧品等の様々な用途に利用することが可能である。
【0056】
例えば、本発明の高純度フコイダンを食品に使用する場合には、砂糖、果糖等の糖質、安定剤、酸味料(クエン酸、リンゴ酸)、ビタミン類、ミネラル等を配合し、お茶、コーヒー、果汁飲料、発酵乳、炭酸飲料、プリン等の形態で用いることができる。
【0057】
更に、化粧品として使用する場合には、公知の化粧料成分、例えば水、アルコール類、油成分、界面活性剤、水溶性高分子、ビタミン類、防腐剤、香料、色素等を適宜配合し、化粧水、乳液、保湿クリーム、クレンジングクリーム、マッサージクリーム、洗顔クリーム、パック、美容液、シャンプー等の形態で用いることが出来る。
【0058】
本発明は、特定の前処理を施した海藻抽出物を適当な濃度の塩の共存下にアルコールで処理することにより、フコイダンの損失を最小限にとどめながら前記着色物質を優先的に沈澱させ、分離するものであり、従来得られなかった高純度のフコイダンの製造を可能にしたものである。また、着色物質の低減あるいは除去に伴い、特有の海藻風味も顕著に低減できる。
【0059】
ワカメやコンブの表面に付着する粘性物質のぬめりの中に、抗がん作用のあるフコイダン成分やミネラル成分の大部分が豊富に入っており、上記生ワカメ等の芽株を洗浄すると一緒にフコイダン、ミネラル成分が洗い流されると、芽株としての品質価値が失われるため、一般的に標準的に乾燥させた乾燥芽株では、内部にフコイダン成分やミネラル成分が失われることとなるため、氷結乾燥の手段を必要とし必要成分を喪失することなく、これをパウダーにして食品や化粧品の原材料としたときその効用を発揮する。
【0060】
ワカメの芽株部を氷結乾燥することは、成分を変質することなく無着色物質で海藻臭さの極めて少ない製造方法を確実に実施でき、効率良く、短時間に、且つ、より安価に製造することができる。
【実施例1】
【0061】
以下に実施例を挙げ、本発明のフコイダンの抽出方法について、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の製造方法の工程を示したフローチャート1である。
【0062】
図1を参照して本発明の乾燥ワカメの製造方法を説明するが、本発明はこれらに限定するものではない。
【0063】
ワカメの芽株を採取後流水で洗浄し、凍結乾燥装置(日本エフティ社製)で3時間暴露し、その乾燥された芽株を石臼で粉砕を行う、粒径は120〜200メッシュである。
【0064】
また、前記方法で凍結乾燥させた乾燥芽株は、芽株内部にフコイダン成分やミネラル成分が存在するから、これをパウダーにして化粧品・食品の原材料としたときその効用を発揮する。
【0065】
これを試料とし、芽株粉体試料10Kgを80%エタノールで2回洗浄(各100リットルを用いた)後、濾過した後、水を170リットル加えた後、85℃〜90℃まで加熱し水抽出を行った。
【0066】
次に40℃〜50℃に冷却した後、プロテアーゼを少量加え4時間攪拌し、80℃〜90℃に加熱し水抽出と同時にプロテアーゼを失活させた。次に、フィルターで濾過した後、噴露乾燥し、粗粉末フコイダン様多糖複合体を得ることができる、収率は45%である。
【0067】
フコイダン様多糖複合体の調整は芽株粉体試料10Kgを80%エタノールで2回洗浄する代わりに、水150リットルを加えて攪拌し、水抽出を行った他は、フコイダン様多糖複合体の調整と同様に行う、そのときの収率は66%である。
【0068】
芽株粉体試料を90%エタノールで洗浄して脱色低分子を除去した後、風乾させ、次に、これに20倍量の0.1NHClを加え、攪拌しながら室温で約10時間抽出する、その後、遠心分離により残渣を集める。
【0069】
前記で得られた残渣に10倍量の0.1NHClを加え、6時間程度攪拌しながら再抽出を行う、この塩酸抽出液に酢酸カルシウムあるいは塩化カルシウム溶液を加えてアルギン酸を沈殿させ、生じた沈殿を遠心分離で除去し、次いでNaOHを用いて中和する。
【0070】
これを遠心分離し、得られた上清を濃縮した後、0.01NHClに対して透析し、HCl抽出多糖類とする、このようにして得られたHCl抽出多糖類を凍結乾燥又は減圧濃縮により濃縮した後、0.01NHClで透析し、0.01NHClで平衡化したDEAEイオン交換セルロースカラムに供し、吸着画分を緩衝液中のNaCl濃度を0.2Mとしてタンパク部を溶出し、2.0Mとして活性画分を集める。
【0071】
更に、0.5MNaClを流した後、2MNaClを流してフコイダン様多糖複合体を回収し、その後、溶離画分のタンパク量、糖含量を定量した。
【0072】
ここで、タンパク量の定量はUV280吸収法により、また、糖の定量はフェノール硫酸法により行った。
【0073】
続いて、活性を有する画分(2MNaCl活性画分)を集め、限外濾過膜により濃縮し、得られた画分のタンパク量、糖含量、及び活性測定を行い、活性画分を回収し、水透析を行う。
【0074】
前記の操作で、分子量的に略均一な多糖画分が得られ、この画分を限外濾過膜により濃縮した後、透析し、次いで凍結乾燥を行って精製粉末フコイダン様多糖複合体を得ることができる。
【実施例2】
【0075】
ワカメの芽株を採取後流水で洗浄し、実施例1と同様に凍結乾燥装置(日本エフティ社製)で3時間暴露し、次に、その乾燥された芽株を石臼で粉砕を行う。粒径は120〜200メッシュである。
【0076】
すなわち、ワカメの芽株部に、最終濃度が45%になるように99.5%エタノールと水とを加え、室温下で10分間攪拌し、これを遠心脱水機(H120B型、国産遠心社)で脱水して可能な限り含水エタノールを除く、メッシュトレーに広げ、減圧しながら40℃〜50℃の温風下で約2時間乾燥して加工芽株を得ることができる。
【0077】
この加工芽株100gに、過酸化水素水を0.6%(35%過酸化水素水(関東化学社)を使用、以下の実施例において同じ、本実施例での最終過酸化水素濃度は0.21%)含み、水酸化ナトリウムを下表の各々の濃度で含む溶媒2kgを加え、撹拌しながら90℃〜95℃で40分間処理した。処理物を室温まで冷却した後、遠心分離してフコイダンを含有する抽出液(処理液)を得る。
【0078】
前記、得られた抽出液を塩酸で中和した後、カタラーゼ(カタラーゼU5L、阪急バイオインダストリー社)を0.4ml添加し、室温で30分間反応させて残留過酸化水素を除去した。これを凍結乾燥し、フコイダン含有抽出物(無色粉末)を得ることができる。
【実施例3】
【0079】
フコイダン様多糖複合体量の調整は、芽株粉体試料に水を加えてもどした後に凍結し、凍結乾燥し、その後粉砕を行う、続いて、酸抽出によりフコイダンを抽出する。
【0080】
多糖類は、アルギン酸が多く可溶化されるので、酢酸カルシウム等のカルシウム塩を加えてアルギン酸をカルシウム塩として除去する、この時、0.2〜0.5Nの塩酸で抽出を行うと、アルギン酸の抽出が低く抑えられ、好ましい。
【0081】
尚、前記の場合においても、カルシウム塩の添加は行い、アルギン酸の除去を行う、その後、0.01N塩酸で透析し、過剰のカルシウム塩及び高濃度の塩酸を除去した後、0.01N塩酸で洗浄しておいたDEAE−イオン交換カラムに流し、吸着画分を食塩濃度を0.2Mで洗浄後、食塩濃度を2.0Mに上昇させて溶出することができる。
【実施例4】
【0082】
凍結・融解した芽株抽出物(炭水化物濃度2.70重量%)の脱色率:生のワカメ芽株から、抽出液を限外濾過し、得られた濃縮液に脱イオン水を加え、pH3に調整後加圧濾過し、精製水を加えてさらに加圧濾過を行うことにより精製濃縮液とする。
【0083】
前記、得られた精製濃縮液をさらに凍結乾燥で−30℃にした後、流水中に浸漬して融解し、融解液は、固形分濃度(炭水化物濃度)が2.70重量%になるよう希釈し、各50mリットルずつ24サンプルを分取する。
【0084】
抽出物を十分に撹拌した後、25℃で60分間静置して沈澱を形成させ、次に遠心分離により沈澱を除去した後、各試験液を100mリットルに定容する、その結果は90%脱色率のフコイダンは、実用上支障の無い着色度の素材になる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
飲食品や化粧品、医薬品等に、飲食品本来の風味や、化粧品、医薬品等の品質を損なったり、悪化させたりする事なく任意に添加するなどに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の製造方法の工程を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0087】
1 本発明の製造方法の工程を示したフローチャート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水や塩水で洗浄したワカメの芽株部を凍結乾燥し熱水抽出もしくは酸抽出工程の抽出時間を0.5〜72時間の範囲内で行うことを特徴とするフコイダンの抽出方法。
【請求項2】
請求項1記載のフコイダンの抽出方法は、芽株粉砕物を、抽出する熱水にpH2〜3の範囲内の値にすることを特徴とするフコイダンの抽出方法。
【請求項3】
請求項1記載のフコイダンの抽出方法は、無色,無臭な高純度フコイダンを抽出することを特徴とするフコイダンの抽出方法。
【請求項4】
流水で洗浄したワカメの芽株部を氷結乾燥後、粉砕化されてなる芽株紛擾物から抽出されたフコイダン様多糖複合体はフコースを含有することを特徴とするフコイダンの抽出方法。
【請求項5】
請求項4記載のフコイダン様多糖複合体の工程で得られた洗浄された芽株を凍結乾燥する凍結乾燥工程と乾燥した芽株を粉砕する工程を、備えていることを特徴とするフコイダンの抽出方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−160862(P2006−160862A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−353513(P2004−353513)
【出願日】平成16年12月7日(2004.12.7)
【出願人】(304063222)有限会社 沖物産 (1)
【Fターム(参考)】