説明

フコイダンを含む抽出液を褐藻アカモクの藻体から採取する方法

【課題】
従来、褐藻アカモクからフコイダンを含む抽出液を採取する方法としては、藻体を切り刻んだり、粉砕し、乾燥、煮沸、圧縮、溶媒抽出などの処理方法を用いて抽出するのが一般的であり、藻体は一度成分を抽出されると廃棄されるのが通常であった。
【解決手段】
褐藻アカモク(学名:Sargassum horneri)の藻体に熱湯を加え、湯と共に粘状を帯びた抽出液を採取する方法において、少なくとも一度は熱湯を加えて抽出液を採取した褐藻アカモクの藻体に、糖類の水溶液を散布して養生後、更に熱湯を加えて抽出液を採取する工程を数次に亘って繰り返すフコイダンを含む抽出液を褐藻アカモクの藻体から採取する方法を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は褐藻アカモク(学名:Sargassum horneri)の藻体から数次に亘ってフコイダンを含む抽出液を採取する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、褐藻アカモクからフコイダンを含む抽出液を採取する方法としては、藻体を切り刻んだり、粉砕し、乾燥、煮沸、圧縮、溶媒抽出などの処理方法を用いて抽出するのが一般的であり、藻体は一度成分を抽出されると廃棄されるのが通常であった。(例えば、特許文献 1〜3参照)
【0003】
所が、褐藻アカモクは、生命力が旺盛で、一度熱湯を加えて成分を抽出しても、2〜3日間湿度の高い状態で養生すると復活し、数次に亘ってフコイダンを含む抽出液を採取出来ることが特許文献4に示した特許の発明者と同一の本願発明者の研究により判明した。(例えば、特許文献 4参照)
【0004】
特に、生殖器床を有する褐藻アカモクは生命力が非常に強く、更に利用できるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−344652号公報
【特許文献2】特開平11−1437号公報
【特許文献3】特開2002−220402号公報
【特許文献4】特許第3930509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本願発明者は、褐藻アカモクの寿命を更に延長する方法を検討し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は上記の様な従来の方法が有していた問題点を解決し、簡単な方法で褐藻アカモクから数次に亘ってフコイダンを含む抽出液を安価で継続的に多量に採取する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達するため、褐藻アカモク(学名:Sargassum horneri)の藻体に熱湯を加え、湯と共に粘状を帯びた抽出液を採取する方法において、少なくとも一度は熱湯を加えて抽出液を採取した褐藻アカモクの藻体に、糖類の水溶液を散布して養生後、更に熱湯を加えて抽出液を採取する工程を数次に亘って繰り返すフコイダンを含む抽出液を褐藻アカモクの藻体から採取する方法を提供するものである。
【0009】
なお、前記褐藻アカモク(学名:Sargassum horneri)の藻体は成熟した生殖器床を有する褐藻アカモクであることが好ましい。
【0010】
また、前記褐藻アカモク(学名:Sargassum horneri)の藻体に散布する水溶液に用いる前記糖類が、市販の上白糖、氷砂糖、黒糖、三温糖、グラニュー糖等、サトウキビや砂糖大根等の光合成能力のある植物から得ることができる、化学式C12H22O11を有する二糖類から選ばれた糖類であっても良い。
【0011】
本願発明に用いる褐藻アカモクは、表日本中部から九州沿岸、朝鮮半島の海岸に多く生息している通常のアカモクでも良いが、生殖器床を多く有するものが粘性を帯びた抽出液を短時間で多量に得やすく、好ましい。
【0012】
なお、褐藻アカモクは、海より採取して水揚げ後に直ちに使用しても良いし、冷凍貯蔵したものを用いることも出来る。
【0013】
本発明の褐藻アカモクの藻体からフコイダンを含む抽出液を採取する方法において、まず、褐藻アカモクは前処理として砂やゴミ等を取り除くために水洗いすると良い。
【0014】
ついで、褐藻アカモクは、抽出容器に入れ、熱湯を加える。 褐藻アカモクに加える熱湯の温度としては、50℃以上、好ましくは80℃〜100℃の範囲であり、加える量としては、藻体の重量に対して5〜20倍の範囲を加えるが、通常は10倍程度の熱湯を加える。
【0015】
その容器内の液体を濾過して、湯と共に粘状を帯びた抽出液を採取するには、目の細かな網を用いて濾過すると良い。
【0016】
上記のようにして、少なくとも一度は熱湯を加えて抽出液を採取した褐藻アカモクの藻体に、糖類の水溶液を散布して養生し、更に数次に亘って熱湯を加えて抽出液の採取に使用するが、本発明に用いる糖類は市販の上白糖、氷砂糖、黒糖、三温糖、グラニュー糖等、サトウキビや砂糖大根等の光合成能力のある植物から得ることの出来る、化学式C12H22O11を有する二糖類から選定すると良い。
【0017】
特に、純度の高いグラニュー糖の養生効果は大きく、好ましく用いることが出来るが、澱粉や蔗糖を希酸や酵素により加水分解して得られる化学式C6H12O6を有する単糖類のブドウ糖や果糖は養生効果が小さく、好ましくない。 これは、単糖類のもつアルデヒド基やケトン基が影響しているものと思われる。
【0018】
養生に用いる糖類の溶解液は、用いる糖類の種類にも寄るが、水:糖類の重量比が100:10程度の濃度で作成すると良い。
【0019】
藻体に対する散布量としては、溶液に藻体が浸溺しないように留意しなければならず、原藻に対して50〜10重量%の範囲が好ましい。
【0020】
糖類の水溶液を散布した褐藻アカモクの養生条件としては、常温下で12〜48時間程度の間保持すると良い。 濡れた布を被せるなどして高湿度に保持したまま養生することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
上述した様に、褐藻アカモクに一度熱湯を加えてフコイダンを含む粘性を帯びた抽出液を採取した後、その褐藻アカモクを容器に入れ、糖類の溶解液を散布し、そのままか、濡れた布を被せるなどして高湿度に保持したまま養生することで、褐藻アカモクはその旺盛な生命力により復活し、再度熱湯を加えても、従来の水散布のみによる養生に比べて、粘性を帯びた抽出液を数次に亘って採取することが出来、従来の方法に比較して、多量の抽出液を長期間に亘って、安価に入手することができた。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下本発明を実施例に依り説明するが、本実施例によって本発明が限定されるものではない。
【0023】
なお、褐藻アカモクより得ることが出来た抽出液の粘度は次の通りの粘度計と手順で測定した。
(1) 粘度計
粘度計オストワルド(相対粘度計)
毛細管内径 1.25mm
球客量 3mL
(2) 測定方法
抽出液と水との毛細管通過時間を対比する
(3) 測定条件
抽出液、水、共に30℃
(4) 測定結果
通過時間 水 6秒
誤差 ± 1秒
【実施例1】
【0024】
この実施例では、日本海で採取された生殖器床を有する褐藻アカモクを原藻とし、それを水洗後、熱湯で2回処理して抽出液を採取した。 その後、その原藻1Kgに対して、水400CCに三温糖40gを溶解した水溶液を均等に散布して常温下で3日間1度目の養生を行った。 次に、その養生済みの原藻に80℃の熱湯を散布して抽出処理を行い、粘度30秒の抽出液を1.4L得た。
【0025】
ついで、その原藻に前記と同様の条件にて2度目の養生を3日間行い、80℃の熱湯を散布して、粘度15秒の抽出液を1.4L得た。
さらに、その原藻に前記と同様の条件にて3度目の養生を5日間行い、80℃の熱湯を散布して、粘度11秒の抽出液を1.4L得た。
3回の養生により、同一の原藻から合計4.2L(平均粘度17.7秒)の抽出液を得ることができた。
【0026】
なお、原藻は3回の抽出処理を行ったが腐泥状態を呈することなく原形を留めていたが、粘性を帯びた成分の発生状態が望ましくなかったので、4度目の養生を中止して廃棄した。
【実施例2】
【0027】
実施例1で用いたと同様の褐藻アカモクを原藻とし、熱湯で2回抽出処理して抽出液を採取した後、その原藻1Kgに対して、水400CCにグラニュー糖40gを溶解した水溶液を均等に散布して1度目の養生を常温下で3日間行い、次いで3日間、更に5日間養生を行う間に実施例1と同様に80℃の熱湯を散布して抽出処理を行い、合計4.2L(平均粘度21.5秒)の抽出液を得た。
三温糖を用いて養生した実施例1に比べて、平均粘度が高い抽出液が得られ、養生効果に優れていたことが判明した。
【実施例3】
【0028】
実施例1で用いたと同様の褐藻アカモクを原藻とし、熱湯で2回抽出処理して抽出液を採取した後、その原藻1Kgに対して、水400CCに沖縄の黒糖40gを溶解した水溶液を均等に散布して一度目の養生を常温下で3日間行い、次いで3日間、更に5日間養生を行う間に実施例1と同様に80℃の熱湯を散布して抽出処理を行い、合計4.2L(平均粘度18.0秒)の抽出液を得た。
黒糖も三温糖を用いて養生した実施例1に比べて、同程度の平均粘度の抽出液が得られ、養生効果に優れていたことが判明した。
【実施例4】
【0029】
実施例1で用いたと同様の褐藻アカモクを原藻とし、熱湯で2回抽出処理して抽出液を採取した後、その原藻1Kgに対して、水400CCにブドウ糖40gを溶解した水溶液を均等に散布して1度目の養生を常温下で2日間行った。 原藻は腐泥状態を呈することはなかったが、粘性を帯びた成分の発生状態が悪かった。 実施例1と同様に80℃の熱湯を散布して抽出処理を行ったが、粘性を帯びた抽出液を殆ど得ることはできなかった。
ブドウ糖を用いた褐藻アカモクの養生効果は殆ど期待できないことが判明した。
【比較例1】
【0030】
実施例1で用いたと同様の褐藻アカモクを原藻とし、熱湯で2回抽出処理して抽出液を採取した後、その原藻1Kgに対して、常温下で水のみを含ませた湿布(湿度80〜100%)で覆って養生した。 養生期間は5日間とした。
養生後、80℃の熱湯を散布して抽出処理を行い、1.4L(粘度14秒)の抽出液を得た。 引き続いて、その原藻を湿布で覆って2度目の養生を5日間行ったが、原藻が腐泥化したので、処理を中止して廃棄した。
【比較例2】
【0031】
実施例1で用いたと同様の褐藻アカモクを原藻とし、熱湯で2回抽出処理して抽出液を採取した後、その原藻1Kgに対して、3%の食塩水を均等に散布して常温下で2日間養生した。原藻は腐泥状態を呈することはなかったが、粘性を帯びた成分の発生を殆ど見ることができなかった。 実施例1と同様に80℃の熱湯を散布して抽出処理を行ったが、粘性を帯びた抽出液を得ることは出来なかった。
食塩水を用いた褐藻アカモクの養生効果は、殆ど期待できないことが判明した。
【0032】
上記した実施例1〜4や比較例1〜2の効果比較表からも明らかなように、水のみを用いた養生によって得られる抽出液の量や粘度よりも、三温糖やグラニュー糖、黒糖等の二糖類の水溶液を用いた養生によって得られる抽出液の量や粘度が大幅に向上していることが解る。 なお、単糖類であるブドウ糖の水溶液や食塩水を用いた養生は殆ど効果が期待できないことが判明した。

【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
褐藻アカモク(学名:Sargassum horneri)の藻体に熱湯を加え、湯と共に粘状を帯びた抽出液を採取する方法において、少なくとも一度は熱湯を加えて抽出液を採取した褐藻アカモクの藻体に、糖類の水溶液を散布して養生後、更に熱湯を加えて抽出液を採取する工程を数次に亘って繰り返すことを特徴とするフコイダンを含む抽出液を褐藻アカモクの藻体から採取する方法。
【請求項2】
前記褐藻アカモク(学名:Sargassum horneri)の藻体が成熟した生殖器床を有することを特徴とする請求項1項に記載の褐藻アカモクの藻体からフコイダンを含む抽出液を採取する方法。
【請求項3】
前記褐藻アカモク(学名:Sargassum horneri)の藻体に養生のために散布する水溶液に用いる前記糖類が、二糖類から選ばれた糖類であることを特徴とする請求項1又は2項に記載の褐藻アカモクの藻体からフコイダンを含む抽出液を採取する方法。






【公開番号】特開2011−202080(P2011−202080A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72356(P2010−72356)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(502019405)株式会社アッキーフーズ (6)
【Fターム(参考)】