説明

フコキサンチン含有褐藻抽出組成物の製造方法

【課題】原料から効率よくフコキサンチンを抽出・回収することができ、海藻等の原料から持ち込まれるヒ素の含有量も簡便に低減することができる、フコキサンチン含有褐藻抽出組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】原料となる褐藻又はその加工物に、水と、水に対して相溶性を有する相溶性溶媒とを少なくとも添加し、その混合溶媒中にフコキサンチンを抽出した後、その混合溶媒中から脂肪油で構成された油相中にフコキサンチン移行させて、これを回収する。相溶性溶媒としてはエタノールが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フコキサンチン含有褐藻抽出組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フコキサンチンは褐藻類に含まれるカロテノイド(キサントフィル)であり、ワカメ、モズク、コンブ、ヒジキなど日常的に食される海藻類に含まれている成分である。近年、フコキサンチンには抗酸化作用(特許文献1)、抗腫瘍作用(特許文献2)、神経細胞保護作用(特許文献3)、血糖値上昇抑制(特許文献4)などの保健機能的作用効果が報告されており、健康食品等として利用することも期待されている。
【0003】
一方、褐藻類のフコキサンチンを抽出する方法としては、フコキサンチンが脂溶性成分であるため、その抽出溶媒としてエタノールなど水に相溶性を有する有機溶媒を用いることが行われている(特許文献5、6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−224278号公報
【特許文献2】特開平10−158156号公報
【特許文献3】特開2001−335480号公報
【特許文献4】国際公開WO2007/116980号パンフレット
【特許文献5】特開2008−231198号公報
【特許文献6】特開2009−120494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エタノールなど水に相溶性を有する有機溶媒を用いる方法では、抽出液中に海藻等の原料からのヒ素をも持ち込んでしてしまい、これを除去するにはカラムクロマトグラフィーや吸着クロマトグラフィーでなどでの煩雑な精製工程を経なければならなかった。また、水に相溶性を有しない脂肪油などで抽出すると、ヒ素の持ち込みは少ないがフコキサンチンの抽出・回収効率が非常に悪いという問題があった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、原料から効率よくフコキサンチンを抽出・回収することができ、海藻等の原料から持ち込まれるヒ素の含有量も簡便に低減することができる、フコキサンチン含有褐藻抽出組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明者らが鋭意研究した結果、脂肪油のみを抽出溶媒とするとフコキサンチンの抽出・回収効率が非常に悪いのであるが、水と、水に対して相溶性を有する相溶性溶媒とを少なくとも含む溶媒中にフコキサンチンをいったん抽出すると、意外にも、その溶媒中からは、脂肪油で構成する油相中に効率よくフコキサンチン移行させ回収できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明のフコキサンチン含有褐藻抽出組成物の製造方法の1つは、原料となる褐藻又はその加工物に、水と、水に対して相溶性を有する相溶性溶媒とを添加して、前記相溶性溶媒100容量部に対し、前記原料中の水分も含めた量で計算される水を0〜100容量部含有する混合溶媒となるようにして該混合溶媒中で可溶性成分を抽出した後、抽出残渣を除去する第1工程と、得られた抽出液に更に水及び脂肪油を添加して、該抽出液中の水に対する前記相溶性溶媒の割合を、水100容量部に対して相溶性溶媒30容量部以上100容量部未満となるようにし、次いで油相を回収する第2工程とを含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明のフコキサンチン含有褐藻抽出組成物の製造方法のもう1つは、原料となる褐藻又はその加工物に、水と、水に対して相溶性を有する相溶性溶媒と、脂肪油とを添加して、前記相溶性溶媒100容量部に対し、前記原料中の水分も含めた量で計算される水を0〜100容量部含有する混和溶媒となるようにして該混和溶媒中で可溶性成分を抽出した後、抽出残渣を除去する第1工程と、得られた抽出液に更に水を添加して、該抽出液中の水に対する前記相溶性溶媒の割合を、水100容量部に対して相溶性溶媒30容量部以上100容量部未満となるようにし、次いで油相を回収する第2工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、前記相溶性溶媒と水とを少なくとも含む混合溶媒又は混和溶媒中に、原料となる褐藻又はその加工物からフコキサンチンを効率よく抽出することができ、次いで、水及び必要なら脂肪油を添加して、前記相溶性溶媒の割合を減じて、その結果生じた油相中に効率よくフコキサンチンを移行させてこれを回収することができる。また、その一方で、ヒ素が油相中に移行しづらいので、原料から持ち込まれるヒ素を低減することができる。
【0011】
本発明においては、前記第2工程における、前記抽出液中の水及び相溶性溶媒と、脂肪油との容量比が、1:1〜100:1となるようにすることが好ましい。
【0012】
また、前記第2工程で回収された油相は、原料となる褐藻又はその加工物に含まれるフコキサンチン質量に換算して60%以上のフコキサンチンを含有し、原料となる褐藻又はその加工物に含まれるヒ素質量に換算して20%以下のヒ素を含有することが好ましい。
【0013】
一方、本発明のもう1つは、前記製造方法で得られたフコキサンチン含有褐藻抽出組成物を含有してなる飲食品を提供するものである。
【0014】
また、本発明の他の1つは、前記製造方法で得られたフコキサンチン含有褐藻抽出組成物を含有してなる化粧品を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のフコキサンチン含有褐藻抽出組成物の製造方法によれば、原料から効率よくフコキサンチンを抽出・回収することができ、海藻等の原料から持ち込まれるヒ素の含有量も簡便に低減することができる。本発明の製造方法で得られるコキサンチン含有褐藻抽出組成物は、健康食品等の飲食品に配合する食品素材や、化粧品素材等として好適に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
原料となる褐藻としては、フコキサンチン(Fucoxanthin)を含有する褐藻類であれば特に制限されず、例えば、ワカメ(学名:Undaria pinnatifida)等のワカメ類、オキナワモズク(学名:Cladosiphon okamuranus)、イシモズク(学名:Sphaerotrichia divaricata)、フトモズク(学名:(Tinocladia crassa)、モズク(学名:Nemacystus decipiens)等のモズク類、マコンブ(学名:Laminaria japonica)、オニコンブ(学名:Laminaria diabolica)、ナガコンブ(学名:Laminaria longissima)、ガゴメ(学名:Kjellmaniella crassifolia)、ミツイシコンブ(学名: Laminaria angustata)等のコンブ類、ヒジキ(学名:Sargassum fusiforme、ホンダワラ(学名:Sargassum fulvellum)、アカモク(学名:Sargassum horneri)等が挙げられる。これらの中でも特にワカメ類及びアカモクが好ましい。また、これらの2種以上を併用して用いることもできる。
【0017】
原料となる褐藻は、水分を含む生のままのものを用いてもよく、乾燥したものを用いることもできる。また、その加工物を用いてもよく、例えば粉砕物を用いてもよい。これによれば、抽出溶媒との接触面積を大きくして抽出効率を高めることができる。この場合、 例えば乾燥物であれば、16メッシュ(開口1mm)をパスする程度の粒度に粉砕することが好ましい。好ましい態様のひとつとしては、褐藻を乾燥させて適当な粒度に粉砕したものに、水分を再吸収させて用いる。その他の加工物としては、温水、加熱、酸、アルカリ、酵素などでの処理を施したものを用いることができる。このような処理により、例えば褐藻の繊維の構造体をふやけさせ又は破壊しておくことができ、これにより抽出効率を高めることができる。
【0018】
脂肪油としては、常温で液状であり、水等の極性液体と混和したときに混じり合わずに油相/極性液体(水)相に分離する性質を有するものであれば特に制限されず、例えば、魚油、サフラワー油、菜種油、コーン油、大豆油、オリーブ油、向日葵油、綿実油、こめ油、胡麻油等が挙げられる。これらの中でも特に魚油、サフラワー油が好ましい。また、これらの2種以上を併用して用いることもできる。
【0019】
本発明において、水に対して相溶性を有する相溶性溶媒(以下、単に「相溶性溶媒」ともいう。)とは、水と混じり合う性質を有する有機溶媒をいう。このような性質を有するものとしては、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、イソプロプルアルコール、アセトニトリル等が挙げられる。また、これらの2種以上を併用して用いることもできる。これらの中でも、特に、食用に供するための組成物を抽出する溶媒としてはエタノールが好ましい。
【0020】
次に、本発明の製造方法を、その第1工程と第2工程とに分けて説明する。
【0021】
(1)第1工程
原料となる褐藻又はその加工物に、水と、上記相溶性溶媒とを添加して、その相溶性溶媒100容量部に対し、褐藻由来原料中の水分も含めた量で計算される水を0〜100容量部、より好ましくは30〜80容量部含有するようにし、適宜攪拌する。これにより、水と、上記相溶性溶媒とは混じり合うのでこれらの混合溶媒となる。水と、上記相溶性溶媒は、いずれも原料となる褐藻又はその加工物の内部に拡散し浸透するので、これらからなる混合溶媒は、褐藻由来原料の内部によくいきわたる。よって、褐藻由来原料の可溶性成分を抽出することができ、その混合溶媒中にフコキサンチンも効率よく抽出される。
【0022】
また、別の実施形態としては、原料となる褐藻又はその加工物に、水と、上記相溶性溶媒と、上記脂肪油とを添加して、その相溶性溶媒100容量部に対し、褐藻由来原料中の水分も含めた量で計算される水を0〜100容量部、より好ましくは30〜80容量部含有するようにし、適宜攪拌する。これにより、水と、上記相溶性溶媒と、上記脂肪油とは、これらの混和溶媒となる。その混和溶媒の水相には、上記相溶性溶媒が溶け込んでいるので、褐藻由来原料の内部によくいきわたる。よって、褐藻由来原料の可溶性成分を抽出することができ、その混和溶媒中にフコキサンチンも効率よく抽出される。
【0023】
その後、抽出残渣を除去する。除去の方法としては、特に制限されるものではないが、ろ紙、フィルター、メッシュ等による濾過や、遠心分離、静置分離等により行うことができる。
【0024】
(2)第2工程
第1工程で得られた抽出液に、更に水、及び、第1工程で脂肪油を添加しない場合には、上記脂肪油を添加して、その抽出液中の水に対する相溶性溶媒の割合を、水100容量部に対して相溶性溶媒30容量部以上100容量部未満、より好ましくは相溶性溶媒30〜80容量部となるようにする。また、その抽出液中の水及び相溶性溶媒と、脂肪油(上記第1工程から持込まれる場合その量も含む)との容量比が1:1〜100:1、より好ましくは1:1〜20:1となるようにする。なお、ここでの容量部や容量比は、第1工程で添加した量と、第2工程で添加した量とから、用いられた抽出液の量に応じて比例按分して計算される各々の容量部又は容量比に相当する値をいう。
【0025】
次いで、これを適宜攪拌する。これにより、水と、上記相溶性溶媒と、上記脂肪油とが混和されるが、その相溶性溶媒の割合が上記第1工程のときよりも減じられているので、フコキサンチンを水相に溶け込ませる作用が全体として及ばずに、フコキサンチンを油相に溶け込ませる作用のほうが強くなる。その後、好ましくは常温で0.5〜12時間程度静置し、相分離を生じたその油相を回収する、これによって、フコキサンチンは油相中に効率よく移行させて、これを回収することができる。その一方で、ヒ素は油相中に移行しづらいので、原料から持ち込まれるヒ素を低減することができる。
【0026】
上記のようにして第2工程で回収された油相は、通常、原料となる褐藻又はその加工物に含まれるフコキサンチン質量に換算して60%以上のフコキサンチンを含有し、より好ましい態様においては80%以上のフコキサンチンを含有している。また、原料となる褐藻又はその加工物に含まれるヒ素質量に換算して20%以下のヒ素を含有していることが好ましい。なお、フコキサンチンは、HPLC法などにより定量測定することができる。また、ヒ素は、原子吸光光度法などにより定量測定することができる。
【0027】
このようにして得られるフコキサンチン含有褐藻抽出組成物は、天然物を原料にしたその抽出組成物であるので、健康食品、栄養補助食品等の飲食品や化粧品などに配合する素材としても、好適に利用することができる。
【実施例】
【0028】
以下に例を挙げて本発明について更に具体的に説明する。なお、これらの例は本発明の範囲を限定するものではない。
【0029】
[実施例1]
原料ワカメを「魚油+エタノール+水」で抽出し、その抽出液に「水」を添加した後、油相/水相分離により生じるその魚油相を回収することで、フコキサンチン含有褐藻抽出組成物を得た。具体的には以下のように行った。
【0030】
16メッシュ(開口1mm)以下程度に粉砕した乾燥わかめ50gに水200mlを投入し、常温で20分間攪拌した。これに99%エタノール500ml及び脂肪酸組成としてDHAを48質量%含有する魚油(以下、単に「魚油」という。)120gを投入し、常温で1時間攪拌した。ろ紙濾過で残渣を除去して抽出液550gを回収し、これに水940mlを投入し常温で10分間攪拌混合した。その後、常温で2時間静置し、水/エタノール相(下相)と魚油相(上相)に分離するのを待って、その魚油相(上相)を回収し、ワカメ抽出組成物125gを得た。
【0031】
得られたワカメ抽出組成物のフコキサンチン含量を常法に従いHPLC法により定量したところ、その濃度は0.24mg/gであった。そして、原料ワカメ中に含有するフコキサンチン濃度0.87mg/gから算出した回収率(原料から回収できた質量換算での割合。以下同じ。)としては67.7%であった。また、得られたワカメ抽出組成物のヒ素含量を常法に従い原子吸光光度法により定量したところ、その濃度は2.6ppmであった。そして、原料ワカメ中に含有するヒ素含量47.5ppmから算出した持込率(原料から持込まれた質量換算での割合。以下同じ。)は13.4%であった。
【0032】
[実施例2]
原料ワカメを「エタノール+水」で抽出し、その抽出液に「魚油」と「水」を添加した後、油相/水相分離により生じるその魚油相を回収することで、フコキサンチン含有褐藻抽出組成物を得た。具体的には以下のように行った。
【0033】
16メッシュ(開口1mm)以下程度に粉砕した乾燥わかめ36gに水144mlを投入し、常温で20分間攪拌した。これに99%エタノール360mlを投入し、常温で1時間攪拌しながら抽出した。ろ紙濾過で残渣を除去して抽出液369gを回収した。この抽出液340gに水675ml、上記魚油120gを投入し常温で30分間攪拌した。その後、常温で2時間静置し、水/エタノール相(下相)と魚油相(上相)に分離するのを待って、その魚油相(上相)を回収し、ワカメ抽出組成物126gを得た。
【0034】
得られたワカメ抽出組成物のフコキサンチン含量を常法に従いHPLC法により定量したところ、その濃度は0.23mg/gであった。そして、原料ワカメからの回収率としては93.4%であった。また、得られたワカメ抽出組成物のヒ素含量を常法に従い原子吸光光度法により定量したところ、その濃度は2.3ppmであった。そして、原料ワカメから持込率としては18.5%であった。
【0035】
[実施例3]
原料アカモクを「エタノール+水」で抽出し、その抽出液に「魚油」と「水」を添加した後、油相/水相分離により生じるその魚油相を回収することで、フコキサンチン含有褐藻抽出組成物を得た。具体的には以下のように行った。
【0036】
16メッシュ(開口1mm)以下程度に粉砕した乾燥アカモク106gに水424mlを投入し、常温で20分間攪拌した。これに99%エタノール1,060mlを投入し、常温で1時間攪拌しながら抽出した。ろ紙濾過で残渣を除去し、抽出液1,086gを回収した。この抽出液1,050gに水2,085ml、上記魚油120gを投入し常温で30分間攪拌した。その後、常温で2時間静置し、水/エタノール相(下相)と魚油相(上相)に分離するのを待って、その魚油相(上相)を回収し、アカモク抽出組成物128gを得た。
【0037】
得られたアカモク抽出組成物のフコキサンチン含量を常法に従いHPLC法により定量したところ、その濃度は0.24mg/gであった。そして、原料アカモクからの回収率としては92.4%であった。また、得られたアカモク抽出組成物のヒ素含量を常法に従い原子吸光光度法により定量したところ、その濃度は6.8ppmであった。そして、原料アカモクから持込率としては11.9%であった。
【0038】
[実施例4]
原料ワカメを「エタノール+水」で抽出し、その抽出液に「植物油」と「水」を添加した後、油相/水相分離により生じるその魚油相を回収することで、フコキサンチン含有褐藻抽出組成物を得た。具体的には、魚油のかわりにサフラワー油を用いる以外は実施例2と同様にしてワカメ抽出組成物125gを得た。
【0039】
得られたワカメ抽出組成物のフコキサンチン含量を常法に従いHPLC法により定量したところ、その濃度は0.24mg/gであった。そして、原料ワカメからの回収率としては96.5%であった。また、得られたワカメ抽出組成物のヒ素含量を常法に従い原子吸光光度法により定量したところ、その濃度は2.3ppmであった。そして、原料ワカメから持込率としては18.5%であった。
【0040】
[比較例1]
原料ワカメを「魚油」で抽出することで、フコキサンチン含有褐藻抽出組成物を得た。具体的には以下のように行った。
【0041】
16メッシュ(開口1mm)以下程度に粉砕した乾燥わかめ60gに上記魚油120gを投入し、常温で1時間攪拌しながら抽出した。ろ紙濾過で残渣を除去し、抽出液を回収した。また、19gの魚油で残渣を洗浄し、その洗浄液も合わせて回収した。この抽出液全量に、原料乾燥わかめ60gを新たに投入し、常温で1時間攪拌しながら抽出し、ろ紙濾過で残渣を除去し、上記と同様にして抽出液を回収した(19gの魚油で残渣洗浄を含む)。この操作を、原料乾燥わかめの投入回数が合計5回になるまで繰り返し(投入量合計300g)、ワカメ抽出組成物121gを得た。
【0042】
得られたワカメ抽出組成物のフコキサンチン含量を常法に従いHPLC法により定量したところ、その濃度は0.29mg/gであった。そして、原料ワカメからの回収率としては11.4%であった。また、得られたワカメ抽出組成物のヒ素含量を常法に従い原子吸光光度法により定量したところ、その濃度は3.0ppmであった。そして、原料ワカメから持込率としては2.5%であった。したがって、この方法では、フコキサンチンの抽出・回収効率が非常に悪いことが明らかとなった。
【0043】
[比較例2]
原料ワカメを「エタノール+水」で抽出し、その抽出液の溶媒を減圧留去して濃縮し、その濃縮物に「魚油」を添加することで、フコキサンチン含有褐藻抽出組成物を得た。具体的には以下のように行った。
【0044】
16メッシュ(開口1mm)以下程度に粉砕した乾燥わかめ36gに水144mlを投入し、常温で20分間攪拌した。これに99%エタノール360mlを投入し、常温で1時間攪拌しながら抽出した。ろ紙濾過で残渣を除去して抽出液369gを回収した。この抽出液340gを減圧濃縮により水及びエタノールを除去し、これに上記魚油120gを投入し、混合して、ワカメ抽出組成物122gを得た。
【0045】
得られたワカメ抽出組成物のフコキサンチン含量を常法に従いHPLC法により定量したところ、その濃度は0.24mg/gであった。そして、原料ワカメからの回収率としては94.1%であった。また、得られたワカメ抽出組成物のヒ素含量を常法に従い原子吸光光度法により定量したところ、その濃度は4.9ppmであった。そして、原料ワカメから持込率としては39.4%であった。したがって、この方法では、原料からのヒ素の持ち込みが非常に多くなることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料となる褐藻又はその加工物に、水と、水に対して相溶性を有する相溶性溶媒とを添加して、前記相溶性溶媒100容量部に対し、前記原料中の水分も含めた量で計算される水を0〜100容量部含有する混合溶媒となるようにして該混合溶媒中で可溶性成分を抽出した後、抽出残渣を除去する第1工程と、得られた抽出液に更に水及び脂肪油を添加して、該抽出液中の水に対する前記相溶性溶媒の割合を、水100容量部に対して相溶性溶媒30容量部以上100容量部未満となるようにし、次いで油相を回収する第2工程とを含むことを特徴とするフコキサンチン含有褐藻抽出組成物の製造方法。
【請求項2】
原料となる褐藻又はその加工物に、水と、水に対して相溶性を有する相溶性溶媒と、脂肪油とを添加して、前記相溶性溶媒100容量部に対し、前記原料中の水分も含めた量で計算される水を0〜100容量部含有する混和溶媒となるようにして該混和溶媒中で可溶性成分を抽出した後、抽出残渣を除去する第1工程と、得られた抽出液に更に水を添加して、該抽出液中の水に対する前記相溶性溶媒の割合を、水100容量部に対して相溶性溶媒30容量部以上100容量部未満となるようにし、次いで油相を回収する第2工程とを含むことを特徴とするフコキサンチン含有褐藻抽出組成物の製造方法。
【請求項3】
前記第2工程における、前記抽出液中の水及び相溶性溶媒と、脂肪油との容量比が、1:1〜100:1となるようにする請求項1又は2記載のフコキサンチン含有褐藻抽出組成物の製造方法。
【請求項4】
前記第2工程で回収された油相は、原料となる褐藻又はその加工物に含まれるフコキサンチン質量に換算して60%以上のフコキサンチンを含有し、原料となる褐藻又はその加工物に含まれるヒ素質量に換算して20%以下のヒ素を含有する請求項1〜3のいずれか1つに記載のフコキサンチン含有組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の製造方法で得られたフコキサンチン含有褐藻抽出組成物を含有してなる飲食品。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の製造方法で得られたフコキサンチン含有褐藻抽出組成物を含有してなる化粧品。

【公開番号】特開2011−256153(P2011−256153A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134458(P2010−134458)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(390033145)焼津水産化学工業株式会社 (80)
【Fターム(参考)】