フコシル化されたGal−Glcまたはその誘導体の製造方法

【課題】ルイスa抗原およびルイスx抗原を含む様々な糖鎖を特異的に製造可能な方法を提供する。
【解決手段】特定のアミノ酸配列における703位のアスパラギンがグリシンまたはセリンに置換されているアミノ酸配列に対して少なくとも80%以上のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列(ただし、703位のアスパラギンのグリシンまたはセリンへの置換は維持されている)からなり、かつGal−Glcまたはその誘導体にフコシル基を導入する活性を有する、タンパク質、ならびに当該タンパク質の存在下において、Gal−Glcまたはその誘導体にフコシル基を導入して、フコシル化されたGal−Glcまたはその誘導体を得ることを含む、フコシル化されたGal−Glcまたはその誘導体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フコシル化されたGal−Glcまたはその誘導体の製造方法などに関する

【背景技術】
【0002】
ルイス(Le)式血液型抗原決定基は、複合糖質糖鎖の非還元末端に頻繁に見られ、ヒ
トなどの高等動物で様々な役割を果たしている。マウス胚の発生過程では、段階特異的に
Le[Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc]抗原の発現が観察され、この
一過的発現は胚細胞緊密化に関与していると考えられている。Le抗原の発現は脳にお
いても制御されていることが見出され、中枢神経系の発達に重要であると推定されている
。通常の発生過程のみならず、Le[Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc
]およびLe[Fucα1−2Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc]抗原
の発現量の増加は、癌の進行および悪性度と相関していることがよく知られている。さら
に、シアリルLe抗原は、炎症部位での白血球ローリングを制御するセレクチンリガン
ドとして作用している。
【0003】
Le抗原は、動物における細胞間情報伝達に限らず、宿主と病原体との相互作用にも関
わっている。Helicobacter pyloriではリポ多糖(LPS)にLe抗
原が発現しており、このLe抗原はH.pyloriが宿主の上皮細胞に接着する際の足
場として働くことが知られている。さらに、H.pyloriのLPS上のLe抗原は
、宿主のDC−SIGN(樹状細胞特異的細胞間接着分子−3−グラビング非インテグリ
ン)を介して免疫応答を抑制する働きがあることが知られている。DC−SIGNは、マ
ンノースを含む複合糖質を認識するC型レクチンであり、通常は様々な病原菌を捕らえて
T細胞に病原菌の抗原を提示する役割を有するが、近年の研究によって、DC−SIGN
はLe抗原により高い親和性を示すことが示され、例えば、Le抗原を有する糖タンパ
ク質やミルクオリゴ糖はヒト免疫不全ウイルスI型がDC−SIGNに結合するのを阻害
することが知られている。
【0004】
以上のことは、Le抗原を含むオリゴ糖が、糖鎖機能研究や医薬品応用に不可欠である
ことを示している。オリゴ糖を精密合成するには、グリコシド結合の位置および立体の正
確な制御が要求される。酵素合成法はアノマー(立体化学的)配置を完璧に制御する点で
、また、面倒な保護・脱保護を行わずに比較的高い位置特異性を有する点で、化学合成法
より優れていると考えられる。酵素合成では一般的にグリコシルトランスフェラーゼとグ
リコシダーゼを利用する(非特許文献1、2)。グリコシルトランスフェラーゼは、一般
に厳密な位置特異性および受容体特異性を示し、オリゴ糖の精密合成には優れた触媒であ
る。近年、H.pylori由来α−1,3−フコシルトランスフェラーゼを利用してL
トリサッカライドを効率的に合成可能であることが報告された(非特許文献3)。し
かしながら、文献中にも記述されているように、グリコシルトランスフェラーゼの利用に
は高価な糖ヌクレオチドもしくは糖ヌクレオチド再生システムが必要であるため、大規模
オリゴ糖生産(高濃度オリゴ糖生産)への利用が難しい。一方で、グリコシダーゼの糖転
移活性を利用した合成は、反応の簡便性および多様性のため、現在まで効率的に利用され
てきている(非特許文献1、2)。特に10年ほど前に開発されたグリコシンターゼと呼
ばれる新しいタイプの酵素を利用した合成法は特筆すべきである(非特許文献4〜6)。
グリコシンターゼは、グリコシダーゼの加水分解活性を欠損させた変異体であるが、基質
として適切な糖供与体(フッ素のような脱離基を有する糖)を用いると糖転移反応を触媒
する。このように、グリコシダーゼおよびその変異体は、オリゴ糖を合成する際の有効な
手段となってきた(非特許文献2、7〜9)。しかしながら、グリコシダーゼが触媒する
糖転移反応は、一般的に位置選択性および受容体特異性がそれほど高くなく、反応産物は
様々な長さや様々な結合を持つオリゴ糖の混合物として得られてしまうため、精密合成と
いう点では克服すべき課題が残されていた。これらのことを考えると、グリコシド結合を
精密(立体・位置特異的)に合成するためには、グリコシド結合および脱離基(転移反応
の際に受容体となる)の両方に対して厳密な特異性を有するグリコシダーゼを見つけるこ
とが極めて重要であることとなる。
【0005】
以前の研究において、我々は、Bifidobacterium bifidum由来
の2種類のα−L−フコシダーゼを単離し、それらが厳密な基質特異性を有していること
を明らかにした。その1つは1,2−α−L−フコシダーゼ(BbAfcA)であり、複
合糖質糖鎖の非還元末端に存在するFucα1−2Gal結合を特異的に分解する(非特
許文献10〜12)。もう1つは、1,3−1,4−α−L−フコシダーゼ(BbAfc
B)で、LeおよびLe抗原を含む様々な複合糖質糖鎖に存在するα−1,3/4−
フコシル結合に特異的に作用する(非特許文献13)。我々は、これら2種のα−L−フ
コシダーゼをオリゴ糖の精密酵素合成に利用することを試み、まず1,2−α−L−フコ
シダーゼ(BbAfcA)を1,2−α−L−フコシンターゼに変換することに成功し報
告した(非特許文献14)。この酵素は、供与体にβ−L−フコピラノシルフルオリド(
FucF)、受容体にラクトース(Lac)を用いて反応させると、2’−フコシルラク
トース(Fucα1−2Galβ1−4Glc,2’−FL)のみを特異的に合成し、副
産物は全く生じなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Hancock SM,Vaughan MD,Withers SG.2006.Engineering of glycosidases and glycosyltransferases.Curr Opin Chem Biol.10:509−519.
【非特許文献2】Wang LX,Huang W.2009.Enzymatic transglycosylation for glycoconjugate synthesis.Curr Opin Chem Biol.13:592−600.
【非特許文献3】Wang W,Hu T,Frantom PA,Zheng T,Gerwe B,Del Amo DS,Garret S,Seidel RD III,Wu P.2009.Chemoenzymatic synthesis of GDP−L−fucose and the Lewis X glycan derivatives.Proc Natl Acad Sci USA.106:16096−16101.
【非特許文献4】Mackenzie LF,Wang Q,Warren RAJ,Withers SG.1998.Glycosynthases:mutant glycosidases for oligosaccharide synthesis.J Am Chem Soc.120:5583−5584.
【非特許文献5】Malet C,Planas A.1998.From β−glucanase to β−glucansynthase:glycosyl transfer to α−glycosyl fluorides catalyzed by a mutant endoglucanase lacking its catalytic nucleophile. FEBS Lett.440:208−212.
【非特許文献6】Honda Y,Kitaoka M.2006.The first glycosynthase derived from an inverting glycoside hydrolase. J Biol Chem.281:1426−1431.
【非特許文献7】Umekawa M,Huang W,Li B,Fujita K,Ashida H,Wang LX,Yamamoto K.2008.Mutants of Mucor hiemalis endo−β−N−acetylglucosaminidase show enhanced transglycosylation and glycosynthase−like activities.J Biol Chem.283:4469−4479.
【非特許文献8】Shaikh FA,Withers SG.2008.Teaching old enzymes new tricks:engineering and evolution of glycosidases and glycosyl transferases for improved glycoside synthesis.Biochem Cell Biol.86:169−177.
【非特許文献9】Kitaoka M,Honda Y,Fushinobu S,Hidaka M,Katayama T,Yamamoto K.2009.COnversion of inverting glycoside hydrolases into catalysts for synthesizing glycosides employing a glycosynthase strategy.Trends Glycosci Glycotechnol.21:23−39.
【非特許文献10】Katayama T,Sakuma A,Kimura T,Makimura Y, Hiratake J,Sakata K,Yamanoi T,Kumagai H,Yamamoto K.2004.Molecular cloning and characterization of Bifidobacterium bifidum 1,2−α−L−fucosidase(AfcA),a novel inverting glycosidase(glycoside hydrolase family 95).J Bacteriol.186:4885−4893.
【非特許文献11】Katayama T,Fujita K,Yamamoto K.2005.Novel bifidobacterial glycosidases acting on sugar chains of mucin glycoproteins.J Biosci Bioeng.99:457−465.
【非特許文献12】Nagae M, Tsuchiya A,Katayama T,Yamamoto K,Wakatsuki S,Kato R.2007.Structural basis of the catalytic reaction mechanism of novel 1,2−α−L−fucosidase from Bifidobacterium bifidum.J Biol Chem.282:18497−18509.
【非特許文献13】Ashida H,Miyake A,Kiyohara M,Wada J,Yoshida E,Kumagai H,Katayama T,Yamamoto K.2009.Two distinct α−L−fucosidases from Bifidobacterium bifidum are essential for the utilization of fucosylated milk oligosaccharides and glycoconjugates.Glycobiology.19:1010−1017.
【非特許文献14】Wada J,Honda Y,Nagae M,Kato R,Wakatsuki S,Katayama T,Taniguchi H,Kumagai H,Kitaoka M,Yamamoto K.2008.1,2−α−L−Fucosynthase:a glycosynthase derived from an inverting α−glycosidase with an unusual reaction mechanism. FEBS Lett.582:3739−3743.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、LeおよびLe抗原を含む様々な糖鎖を特異的に製造可能な方法を開発
することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、オリゴ糖精密合成を目的としたグリコシンターゼ技術の可能性を広げる
ために、BbAfcBを1,3−1,4−α−L−フコシンターゼ化し、次に、その位置
特異性および受容体特異性について検討した。その結果、本酵素が、I型糖鎖(Galβ
1−3GlcNAc,lacto−N−biose I,LNB)にLe抗原決定基を
、またII型糖鎖(Galβ1−4GlcNAc,N−acetyllactosami
ne,LacNAc)にLe抗原決定基を導入するのに有効な手段となることなどを見
出し、本願発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕配列番号2で表されるアミノ酸配列における703位のアスパラギンがグリシンま
たはセリンに置換されているアミノ酸配列に対して少なくとも80%以上のアミノ酸配列
同一性を有するアミノ酸配列(ただし、配列番号2で表されるアミノ酸配列における70
3位のアスパラギンのグリシンまたはセリンへの置換は維持されている)からなり、かつ
Gal−Glcまたはその誘導体にフコシル基を導入する活性を有する、タンパク質。
〔2〕Gal−Glcまたはその誘導体が、下記式(1a)または(1b):
【化1】

(式中、R、RおよびRは、各々独立して、置換されていてもよいC〜C炭化
水素基、置換されていてもよいC〜C11芳香族基、アミノ基、置換されていてもよい
モノまたはジ(C〜C炭化水素)アミノ基、置換されていてもよいモノまたはジ(C
〜C11芳香族)アミノ基、置換されていてもよい(C〜C炭化水素)(C〜C
11芳香族)アミノ基、置換されていてもよいモノまたはジ(C〜C炭化水素−カル
ボニル)アミノ基、置換されていてもよいモノまたはジ(C〜C11芳香族−カルボニ
ル)アミノ基、ヒドロキシ基、置換されていてもよい(C〜C炭化水素)オキシ基、
置換されていてもよい(C〜C11芳香族)オキシ基、またはハロゲン原子を示し、
、R、RおよびRは、各々独立して、置換されていてもよいC〜C炭化
水素基、置換されていてもよいC〜C11芳香族基、アミノ基、置換されていてもよい
モノまたはジ(C〜C炭化水素)アミノ基、置換されていてもよいモノまたはジ(C
〜C11芳香族)アミノ基、置換されていてもよい(C〜C炭化水素)(C〜C
11芳香族)アミノ基、置換されていてもよいモノまたはジ(C〜C炭化水素−カル
ボニル)アミノ基、置換されていてもよいモノまたはジ(C〜C11芳香族−カルボニ
ル)アミノ基、ヒドロキシ基、置換されていてもよい(C〜C炭化水素)オキシ基、
置換されていてもよい(C〜C11芳香族)オキシ基、またはハロゲン原子、あるいは
1以上の糖残基を示す。)で表される糖化合物である、〔1〕のタンパク質。
〔3〕R、RおよびRが、各々独立して、C〜Cアルキル基、(ヒドロキシ)
〜Cアルキル基、アミノ基、(C〜Cアルキル)アミノ基、(C〜Cアル
キル−カルボニル)アミノ基、ヒドロキシ基、(C〜Cアルキル)オキシ基を示し、
、R、RおよびRが、各々独立して、C〜Cアルキル基、(ヒドロキシ
)C〜Cアルキル基、アミノ基、(C〜Cアルキル)アミノ基、(C〜C
ルキル−カルボニル)アミノ基、ヒドロキシ基、(C〜Cアルキル)オキシ基、また
は1以上の糖残基を示す、〔1〕または〔2〕のタンパク質。
〔4〕R、R、RおよびRから選ばれる3つの基が、各々独立して、C〜C
アルキル基、(ヒドロキシ)C〜Cアルキル基、アミノ基、(C〜Cアルキル)
アミノ基、(C〜Cアルキル−カルボニル)アミノ基、ヒドロキシ基、または(C
〜Cアルキル)オキシ基を示し、R、R、RおよびRから選ばれる残りの1つ
の基が、1以上の糖残基を示す、〔3〕のタンパク質。
〔5〕前記活性が、Gal−Glcまたはその誘導体にフコシル基を導入して、下記式(
2a)または(2b):
【化2】

(式中、R、R、R、R、R、RおよびRは、前記と同じである。Fuc
は、フコシル基を示す。)
で表される糖化合物を生成する活性である、〔2〕〜〔4〕のいずれかのタンパク質。
〔6〕前記活性が、ラクト−N−ビオースI〔Galβ1−3GlcNAc〕、またはラ
クト−N−ビオースI〔Galβ1−3GlcNAc〕を非還元末端に有する糖鎖に、フ
コシル基を導入して、ルイスa抗原〔Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc〕
、またはルイスa抗原〔Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc〕を非還元末端
に有する糖鎖を生成する活性である、〔1〕のタンパク質。
〔7〕前記活性が、N−アセチルラクトサミン〔Galβ1−4GlcNAc〕、または
N−アセチルラクトサミン〔Galβ1−4GlcNAc〕を非還元末端に有する糖鎖に
、フコシル基を導入して、ルイスx抗原〔Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNA
c〕、またはルイスx抗原〔Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc〕を非還元
末端に有する糖鎖を生成する活性である、〔1〕のタンパク質。
〔8〕前記糖鎖が、二糖、三糖または四糖である、〔1〕〜〔7〕のいずれかのタンパク
質。
〔9〕〔1〕〜〔8〕のいずれかのタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
〔10〕〔9〕のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
〔11〕〔10〕の発現ベクターが導入された形質転換体。
〔12〕〔11〕の形質転換体を培地中で培養して、〔1〕〜〔8〕のいずれかのタンパ
ク質を生成することを含む、タンパク質の製造方法。
〔13〕〔1〕〜〔8〕のいずれかのタンパク質の存在下において、Gal−Glcまた
はその誘導体にフコシル基を導入して、フコシル化されたGal−Glcまたはその誘導
体を得ることを含む、フコシル化されたGal−Glcまたはその誘導体の製造方法。
〔14〕ラクト−N−ビオースI〔Galβ1−3GlcNAc〕、またはラクト−N−
ビオースI〔Galβ1−3GlcNAc〕を非還元末端に有する糖鎖に、フコシル基を
導入して、ルイスa抗原〔Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc〕、またはル
イスa抗原〔Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc〕を非還元末端に有する糖
鎖を生成する方法である、〔13〕の方法。
〔15〕N−アセチルラクトサミン〔Galβ1−4GlcNAc〕、またはN−アセチ
ルラクトサミン〔Galβ1−4GlcNAc〕を非還元末端に有する糖鎖に、フコシル
基を導入して、ルイスx抗原〔Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc〕、また
はルイスx抗原〔Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc〕を非還元末端に有す
る糖鎖を生成する方法である、〔13〕の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、LeおよびLe抗原を含む様々な糖鎖を特異的に製造することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、BbAfcBの触媒性求核基としてAsp−703を示す図〔BbAfcBおよび他の1,3−1,4−α−L−フコシダーゼ(GH29−B)の配列アライメント〕を示す図である。アライメントは、ClustalW(http://clustalw.ddbj.nig.ac.jp/top−j.html)およびBoxShade 3.21(http://www.ch.embnet.org/software/BOX_form.html)により作成した。Fuc認識に関与すると推測されるBiAfcBの残基について、アステリスクで印を付す。BiAfcBのAsp−172に対応するBbAfcBのAsp−703を、ボックスで囲む。Arabidopsis:シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)由来の1,3−1,4−α−L−フコシダーゼ(Zeleny et al.2006);Streptomyces:Streptomyces sp.142由来の1,3−1,4−α−L−フコシダーゼ(Sano et al.1992)。
【図2】図2は、BbAfcB D703変異体によるLe三糖の合成を示す図である。野生型酵素およびD703変異体(17μM)を、100mM MOPS(pH7.0)、20mM FucF(供与体)および100mM LNB(受容体)からなる反応混合液(50μl)中において、30℃で10分間インキュベートした。標品の糖(Std.)は、ラクト−N−ビオースI(LNB)およびルイスa(Le)である。
【図3】図3は、BbAfcB D703変異体によるLe三糖の合成を示す図である。100mM LacNAcを受容体として用いたことを除いて、Le合成のために、図2と同様の反応を行った。反応生成物は、HPLC−UV検出によって解析した。標品の糖(Std.)は、N−アセチルラクトサミン(LacNAc)、ルイスx(Le)である。
【図4】図4は、BbAfcB D703S変異体により触媒される合成反応のpHプロフィールを示す図である。反応を、20mM FucFおよび200mM LNBを含有する以下の緩衝液中において、30℃で5分間行った。用いた緩衝液は、100mM クエン酸−NaOH(pH4.0−5.0,白丸)、100mM MES(pH5.0−6.5,白三角)および100mM MOPS(pH6.5−8.0,白四角)であった。pH5.0(MES緩衝液)での活性を、100%とした。
【図5】図5は、BbAfcB D703S変異体によるLe三糖の合成を示す図である。反応は、40mM FucF(供与体)、200mM LNB(受容体)および17μM D703S変異体を含有する100mM MES緩衝液(pH5.0)中において、30℃で40分間行った。コントロール実験については、基質または酵素のいずれかを、反応から省略した。反応生成物は、HPLC−CADによって解析した。L−フコース(Fuc)、ラクト−N−ビオースI(LNB)およびルイスa(Le)のピークを示す。
【図6】図6は、BbAfcB D703S変異体によるLe三糖の合成を示す図である。100mM LacNAcを受容体として用いたことを除いて、図5と同様のセットの反応を、Leの合成について行った。反応生成物は、HPLC−CADによって解析した。L−フコース(Fuc)、N−アセチルラクトサミン(LacNAc)、およびルイスx(Le)のピークを示す。
【図7】図7は、Le三糖についての合成反応の飽和曲線を示す図である。反応を、17μM D703Sの存在下で、FucF(20mM,白丸;60mM,白三角)およびLNB(0−300mM)を含有する100mM MES緩衝液(pH5.0)中において、30℃で5分間行った。反応生成物は、HPLC−UV検出によって解析した。速度論的パラメータを、KaleidaGraph 4.0(Synergy Software)を用いて、実験データをMichaelis−Menten方程式にカーブフィッティングすることにより算出した。
【図8】図8は、Le三糖についての合成反応の飽和曲線を示す図である。LacNAc(0−300mM)を受容体として用いたことを除いて、図7と同様の反応を、Leの合成のために行った。反応生成物は、HPLC−UV検出によって解析した。速度論的パラメータを、KaleidaGraph 4.0(Synergy Software)を用いて、実験データをMichaelis−Menten方程式にカーブフィッティングすることにより算出した。
【図9】図9は、BbAfcB D703S変異体により触媒されたLe合成のタイムコースを示す図である。反応は、D703S変異体(17μM)の存在下で、40mM FucFおよび200mM LNBを含有する100mM MES緩衝液(pH5.0)中において、30℃で120分間行った。反応液の一部を、示された時間に採取し、HPLC−CADによって解析した。
【図10】図10は、BbAfcB D703S変異体により触媒されたLe合成のタイムコースを示す図である。100mM LacNAcを用いたことを除いて、図9と同様の反応を、Leの合成のために行った。反応液の一部を、示された時間に採取し、HPLC−CADによって解析した。
【図11】図11は、受容体の構造の好ましい例、および1,3−1,4−α−L−フコシンターゼのフコシル化部位を示す図である。酵素により認識されるコア構造を、破線ボックスで示し、ラクト−N−ビオースI(LNB)、N−アセチルラクトサミン(LacNAc)およびラクトース(Lac)の構造を、示す。グループR(−NHCOCH、−CHOHまたは−OH)のサイズは、生成物の収率に影響し得る(表3を参照)。BbAfcBは、GalおよびGlcNAc/Glc残基についてのサブサイトを有し得る。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、Gal−Glcまたはその誘導体にフコシル基を導入する活性を有するタン
パク質を提供する。
【0013】
本発明のタンパク質は、配列番号2で表されるアミノ酸配列における703位のアスパ
ラギンがグリシンまたはセリンに置換されているアミノ酸配列に対して少なくとも80%
以上のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列からなる(ただし、配列番号2で表され
るアミノ酸配列における703位のアスパラギンのグリシンまたはセリンへの置換は維持
されている)。アミノ酸配列の同一性パーセントは、好ましくは85%以上、より好まし
くは90%以上、さらにより好ましくは95%以上、最も好ましくは96%以上、97%
以上、98%以上または99%以上であってもよい。
【0014】
一実施形態では、本発明のタンパク質は、配列番号2で表されるアミノ酸配列における
703位のアスパラギンがグリシンまたはセリンに置換されているアミノ酸配列において
、1または数個のアミノ酸残基の変異(例、欠失、置換、付加および挿入)を含むアミノ
酸配列からなるものであってもよい(ただし、配列番号2で表されるアミノ酸配列におけ
る703位のアスパラギンのグリシンまたはセリンへの置換は維持されている)。1また
は数個のアミノ酸残基の変異は、アミノ酸配列中の1つの領域に導入されてもよいが、複
数の異なる領域に導入されてもよい。アミノ酸残基の変異に関する用語「1または数個」
が示す数は、例えば、1〜290個、好ましくは1〜250個、より好ましくは1〜20
0個、1〜150個または1〜100個、さらにより好ましくは1〜50個、1〜30個
、1〜20個または1〜10個、特に好ましくは1、2、3、4または5個である。
【0015】
アミノ酸配列において変異を導入されてもよいアミノ酸残基の位置は、当業者に明らか
であるが、配列アライメントを参考にして、変異体を作製してもよい。具体的には、当業
者は、1)複数のホモログのアミノ酸配列(例、配列番号2で表されるアミノ酸配列、お
よび他のホモログのアミノ酸配列)を比較し、2)相対的に保存されている領域、および
相対的に保存されていない領域を明らかにし、次いで、3)相対的に保存されている領域
および相対的に保存されていない領域から、それぞれ、機能に重要な役割を果たし得る領
域および機能に重要な役割を果たし得ない領域を予測できるので、構造・機能の相関性を
認識できる(図1)。
【0016】
アミノ酸残基が置換により変異される場合、アミノ酸残基の置換は、保存的置換であっ
てもよい。本明細書中で用いられる場合、用語「保存的置換」とは、所定のアミノ酸残基
を、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換することをいう。類似の側鎖を有するアミノ
酸残基のファミリーは、当該分野で周知である。例えば、このようなファミリーとしては
、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有
するアミノ酸(例、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電性極性側鎖を有するアミノ
酸(例、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非
極性側鎖を有するアミノ酸(例、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン
、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β位分岐側鎖を有する
アミノ酸(例、スレオニン、バリン、イソロイシン)、芳香族側鎖を有するアミノ酸(例
、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)、ヒドロキシル基(例、
アルコール性、フェノール性)含有側鎖を有するアミノ酸(例、セリン、スレオニン、チ
ロシン)、および硫黄含有側鎖を有するアミノ酸(例、システイン、メチオニン)が挙げ
られる。好ましくは、アミノ酸の保存的置換は、アスパラギン酸とグルタミン酸との間で
の置換、アルギニンとリジンとヒスチジンとの間での置換、トリプトファンとフェニルア
ラニンとの間での置換、フェニルアラニンとバリンとの間での置換、ロイシンとイソロイ
シンとアラニンとの間での置換、およびグリシンとアラニンとの間での置換であってもよ
い。
【0017】
別の実施形態では、本発明のタンパク質は、配列番号1で表されるヌクレオチド配列に
対して相補的なヌクレオチド配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリ
ヌクレオチドによりコードされるものであってもよい(ただし、配列番号1で表されるヌ
クレオチド配列における2107〜2109位のヌクレオチド残基は、グリシンまたはセ
リンをコードするように置換されている)。「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる
特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。
このような条件を明確に数値化することは困難であるが、一例を示せば、同一性が高いポ
リヌクレオチド同士、例えば80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%
以上、さらにより好ましくは95%以上、最も好ましくは96%以上、97%以上、98
%以上または99%以上の同一性を有するポリヌクレオチド同士がハイブリダイズし、そ
れより低い同一性を示すポリヌクレオチド同士がハイブリダイズしない条件である。具体
的には、このような条件としては、6×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)
中、約45℃でのハイブリダイゼーション、続いて、0.2×SSC、0.1%SDS中
、50〜65℃での1または2回以上の洗浄が挙げられる。
【0018】
アミノ酸配列およびヌクレオチド配列の相同性(例、同一性または類似性)は、例えば
KarlinおよびAltschulによるアルゴリズムBLAST(Pro.Natl
.Acad.Sci.USA,90,5873(1993))、PearsonによるF
ASTA(MethodsEnzymol.,183,63(1990))を用いて決定
することができる。このアルゴリズムBLASTに基づいて、BLASTP、BLAST
Nとよばれるプログラムが開発されているので(http://www.ncbi.nl
m.nih.gov参照)、これらのプログラムをデフォルト設定で用いて、アミノ酸配
列およびヌクレオチド配列の相同性を計算してもよい。また、アミノ酸配列の相同性とし
ては、例えば、Lipman−Pearson法を採用している株式会社ゼネティックス
のソフトウェアGENETYX Ver7.0.9を使用し、ORFにコードされるポリ
ペプチド部分全長を用いて、Unit Size to Compare=2の設定でS
imilarityをpercentage計算させた際の数値を用いてもよい。アミノ
酸配列およびヌクレオチド配列の相同性として、これらの計算で導き出される値のうち、
最も低い値を採用してもよい。
【0019】
配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質が由来し得る微生物としては、
特に限定されないが、例えば、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobac
terium bifidum)等のビフィドバクテリウム(Bifidobacter
ium)属に属する細菌が挙げられる。
【0020】
本発明のタンパク質は、Gal−Glcまたはその誘導体にフコシル基を導入する活性
を有し、それにより、フコシル化されたGal−Glcまたはその誘導体を生成する。G
alは、ガラクトースを示し、Glcはグルコースを示し、Gal−Glcは、ガラクト
ースおよびグルコースからなる二糖を示す。Gal−Glcまたはその誘導体の糖間の結
合としては、Gal−Glcまたはその誘導体に対してフコシル基を導入する活性を保持
し得るものである限り特に限定されないが、例えば、β−1,3−結合、およびβ−1,
4−結合が挙げられる。好ましくは、上記活性は、Gal−Glcまたはその誘導体にフ
コシル基を導入して、Gal−GlcにおけるGlc部分またはGal−Glcの誘導体
におけるGlc対応部分と、α−1,3−フコシル結合またはα−1,4−フコシル結合
を生成する活性である。
【0021】
Gal−Glcの誘導体としては、Gal−Glc中のGal部分および/またはGl
c部分が修飾された誘導体、ならびにGal−Glcまたはその誘導体を、糖鎖の非還元
末端に有する糖化合物が挙げられる。糖化合物を構成する糖残基の個数は、Gal−Gl
cに起因する糖残基の個数(2個)を、後述する糖残基の個数に加算した数である。
【0022】
より具体的には、Gal−Glcの誘導体としては、以下が挙げられる:
(1)Gal−GlcにおけるGlc部分の1以上のヒドロキシ基が、置換されていても
よいC〜C炭化水素基、置換されていてもよいC〜C11芳香族基、アミノ基(−
NH)、置換されていてもよいモノまたはジ(C〜C炭化水素)アミノ基、置換さ
れていてもよいモノまたはジ(C〜C11芳香族)アミノ基、置換されていてもよい(
〜C炭化水素)(C〜C11芳香族)アミノ基、置換されていてもよいモノまた
はジ(C〜C炭化水素−カルボニル)アミノ基、置換されていてもよいモノまたはジ
(C〜C11芳香族−カルボニル)アミノ基、ヒドロキシ基(−OH)、置換されてい
てもよい(C〜C炭化水素)オキシ基、置換されていてもよい(C〜C11芳香族
)オキシ基、またはハロゲン原子で置換された化合物;
(2)Gal−GlcにおけるGal部分のヒドロキシ基が、置換されていてもよいC
〜C炭化水素基、置換されていてもよいC〜C11芳香族基、アミノ基、置換されて
いてもよいモノまたはジ(C〜C炭化水素)アミノ基、置換されていてもよいモノま
たはジ(C〜C11芳香族)アミノ基、置換されていてもよい(C〜C炭化水素)
(C〜C11芳香族)アミノ基、置換されていてもよいモノまたはジ(C〜C炭化
水素−カルボニル)アミノ基、置換されていてもよいモノまたはジ(C〜C11芳香族
−カルボニル)アミノ基、ヒドロキシ基、置換されていてもよい(C〜C炭化水素)
オキシ基、置換されていてもよい(C〜C11芳香族)オキシ基、またはハロゲン原子
、あるいは1以上の糖残基で置換された化合物;ならびに
(3)上記(1)および(2)で示された置換が組み合わされた化合物。
【0023】
好ましい実施形態では、Gal−Glcまたはその誘導体は、下記式(1a)または(
1b):
【化3】

(式中、R、RおよびRは、各々独立して、置換されていてもよいC〜C炭化
水素基、置換されていてもよいC〜C11芳香族基、アミノ基、置換されていてもよい
モノまたはジ(C〜C炭化水素)アミノ基、置換されていてもよいモノまたはジ(C
〜C11芳香族)アミノ基、置換されていてもよい(C〜C炭化水素)(C〜C
11芳香族)アミノ基、置換されていてもよいモノまたはジ(C〜C炭化水素−カル
ボニル)アミノ基、置換されていてもよいモノまたはジ(C〜C11芳香族−カルボニ
ル)アミノ基、ヒドロキシ基、置換されていてもよい(C〜C炭化水素)オキシ基、
置換されていてもよい(C〜C11芳香族)オキシ基、またはハロゲン原子を示し、
、R、RおよびRは、各々独立して、置換されていてもよいC〜C炭化
水素基、置換されていてもよいC〜C11芳香族基、アミノ基、置換されていてもよい
モノまたはジ(C〜C炭化水素)アミノ基、置換されていてもよいモノまたはジ(C
〜C11芳香族)アミノ基、置換されていてもよい(C〜C炭化水素)(C〜C
11芳香族)アミノ基、置換されていてもよいモノまたはジ(C〜C炭化水素−カル
ボニル)アミノ基、置換されていてもよいモノまたはジ(C〜C11芳香族−カルボニ
ル)アミノ基、ヒドロキシ基、置換されていてもよい(C〜C炭化水素)オキシ基、
置換されていてもよい(C〜C11芳香族)オキシ基、またはハロゲン原子、あるいは
1以上の糖残基を示す。)で表される糖化合物であってもよい。
【0024】
したがって、Gal−Glcまたはその誘導体にフコシル基を導入する活性は、上記の
Gal−Glcまたはその誘導体にフコシル基を導入して、下記式(2a)または(2b
):
【化4】

(式中、R、R、R、R、R、RおよびRは、前記と同じである。Fuc
は、フコシル基を示す。)
で表される糖化合物を生成する活性であってもよい。
【0025】
〜C炭化水素基は、直鎖または分岐鎖、あるいは環状の炭素原子数1〜6個の炭
化水素基を示す。C1−6炭化水素基としては、例えば、C〜Cアルキル基(例、メ
チル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、ter
t−ブチル、ペンチル、ヘキシル)、C〜Cアルケニル基(例、ビニル、アリル)、
〜Cアルキニル基(例、エチニル、プロパルギル)、C〜Cシクロアルキル基
(例、シクロプロピル、シクロブチル)が挙げられる。C〜C炭化水素基は、好まし
くは、C〜Cアルキル基である。また、C〜C炭化水素基は、上述したように置
換されていてもよいが、置換されていてもよいC〜C炭化水素基としては、ヒドロキ
シ基で置換されたC〜C炭化水素基が好ましく、ヒドロキシ基で置換されたC〜C
アルキル基である(ヒドロキシ)C〜Cアルキル基がより好ましい。
【0026】
〜C11芳香族基は、炭素原子数3〜11個の芳香族基を示す。C〜C11芳香
族基としては、例えば、C〜C10アリール基(例、フェニル、1−ナフチル、2−ナ
フチル)またはC〜C11芳香族複素環基が挙げられる。C〜C11芳香族基は、好
ましくは、C〜C10アリール基である。
【0027】
〜C11芳香族複素環基は、3〜11個の炭素原子および少なくとも1個のヘテロ
原子を含む単環式芳香族複素環基または縮合芳香族複素環基であり得る。このような単環
式芳香族複素環基は、環構成原子として炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子および窒素原
子(好ましくは、窒素原子)から選ばれるヘテロ原子を1ないし4個含有する4ないし7
員(好ましくは、5または6員)の基であり得る。このような縮合芳香族複素環基は、上
記の単環式芳香族複素環基(好ましくは、環構成原子として窒素原子を含有する基)に対
応する環と、1または2個の窒素原子を含む5または6員の芳香族複素環(例、ピロール
、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリジン、ピリミジン)、1個の硫黄原子を含
む5員の芳香族複素環(例、チオフェン)およびベンゼン環から選ばれる1または2個の
環とが縮合した環から誘導される基であり得る。
【0028】
上記の単環式芳香族複素環基としては、例えば、フリル、チエニル、ピリジル、ピリミ
ジニル、ピリダジニル、ピラジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル
、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリ
ル、トリアゾリル、テトラゾリル、トリアジニルが挙げられる。
【0029】
上記の縮合芳香族複素環基としては、例えば、キノリル、イソキノリル、キナゾリル、
キノキサリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンズオキサゾリル、ベンズイソオキサ
ゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、インドリル(例
、インドール−1−イル、インドール−2−イル、インドール−3−イル、インドール−
5−イル)、インダゾリル、ピロロピラジニル、イミダゾピリジニル、イミダゾピラジニ
ル、ピラゾロピリジニル、ピラゾロチエニル、ピラゾロトリアジニルが挙げられる。
【0030】
モノまたはジ(C〜C炭化水素)アミノ基は、上記のC〜C炭化水素基でモノ
置換またはジ置換されたアミノ基を示す。モノまたはジ(C〜C炭化水素)アミノ基
は、好ましくは、モノまたはジ(C〜Cアルキル)アミノ基であり、より好ましくは
、(C〜Cアルキル)アミノ基である。
【0031】
モノまたはジ(C〜C11芳香族)アミノ基は、上記のC〜C11芳香族基でモノ
置換またはジ置換されたアミノ基を示す。モノまたはジ(C〜C11芳香族)アミノ基
は、好ましくは、モノまたはジ(C〜C11芳香族)アミノ基であり、より好ましくは
、(C〜C10アリール)アミノ基である。
【0032】
(C〜C炭化水素)(C〜C11芳香族)アミノ基は、上記のC〜C炭化水
素基および上記のC〜C11芳香族基で置換されたアミノ基を示す。
【0033】
モノまたはジ(C〜C炭化水素−カルボニル)アミノ基は、C〜C炭化水素−
カルボニルでモノ置換またはジ置換されたアミノ基を示す。C〜C炭化水素−カルボ
ニルにおけるC〜C炭化水素部分は、上記のC〜C炭化水素基と同様である。モ
ノまたはジ(C〜C炭化水素−カルボニル)アミノ基は、好ましくは、モノまたはジ
(C〜Cアルキル−カルボニル)アミノ基であり、より好ましくは、(C〜C
ルキル−カルボニル)アミノ基である。C〜Cアルキル−カルボニルにおけるC
アルキル部分は、上記のC〜Cアルキル基と同様である。
【0034】
モノまたはジ(C〜C11芳香族−カルボニル)アミノ基は、C〜C11芳香族−
カルボニルでモノ置換またはジ置換されたアミノ基を示す。C〜C11芳香族−カルボ
ニルにおけるC〜C11芳香族部分は、上記のC〜C11芳香族基と同様である。モ
ノまたはジ(C〜C11芳香族−カルボニル)アミノ基は、好ましくは、モノまたはジ
(C〜C10アリール−カルボニル)アミノ基であり、より好ましくは、(C〜C
アリール−カルボニル)アミノ基である。C〜C10アリール−カルボニルにおける
〜C10アリール部分は、上記のC〜C10アリール基と同様である。
【0035】
(C〜C炭化水素)オキシ基は、上記のC〜C炭化水素基で置換されたヒドロ
キシ基(−O−R)を示す。(C〜C炭化水素)オキシ基は、好ましくは、(C
アルキル)オキシ基である。(C〜Cアルキル)オキシ基におけるC〜C
ルキル部分は、上記のC〜Cアルキル基と同様である。
【0036】
(C〜C11芳香族)オキシ基は、上記のC〜C11芳香族で置換されたヒドロキ
シ基(−O−R’)を示す。(C〜C11芳香族)オキシ基は、好ましくは、(C
10アリール)オキシ基である。(C〜C10アリール)オキシ基におけるC〜C
10アリール部分は、上記のC〜C10アリール基と同様である。
【0037】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられ
る。
【0038】
置換されていてもよい上記の基における「置換基」としては、例えば、ヒドロキシ基、
ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、スルホニル基、ホルミル基、アミノ基およびカルボ
キシル基、ならびに上述したようなC〜C炭化水素基、C〜C11芳香族基、C
〜C11芳香族複素環基、モノまたはジ(C〜C炭化水素)アミノ基、モノまたはジ
(C〜C11芳香族)アミノ基、(C〜C炭化水素)(C〜C11芳香族)アミ
ノ基、モノまたはジ(C〜C炭化水素−カルボニル)アミノ基、モノまたはジ(C
〜C11芳香族−カルボニル)アミノ基、(C〜C炭化水素)オキシ基、および(C
〜C11芳香族)オキシ基が挙げられる。置換基の個数は、1〜3個であり、好ましく
は、1個または2個である。置換基が2個または3個である場合、各置換基は同一でも異
なっていてもよい。
【0039】
、R、RおよびRについての糖残基としては、ペントース、ヘキソース、ヘ
プトースが挙げられる。糖残基は、アルドースまたはケトースであり得る。具体的には、
糖残基としては、グルコース、マンノース、ガラクトース、N−アセチル−グルコサミン
、N−アセチル−ガラクトサミン、フコース、キシロース、シアル酸が挙げられる。糖残
基は、α体またはβ体であり得る。糖残基はまた、D体またはL体であり得る。糖残基の
個数が2個以上である場合、糖残基の種類は同じでも異なっていてもよい。
【0040】
、R、RおよびRについての糖残基の個数は、1以上であれば特に限定され
ないが、例えば、1〜15個、好ましくは、1〜10個、より好ましくは、1〜5個、さ
らにより好ましくは1〜3個、特に好ましくは、1個または2個である。例えば、糖残基
の個数が1個である場合、式(1)で表される糖鎖は三糖であり、糖残基の個数が2個で
ある場合、式(1)で表される糖鎖は四糖である。
【0041】
、R、RおよびRについての糖残基は、通常の糖間結合を介して、Gal−
GlcにおけるGalに結合し得る。また、R、R、RおよびRについての糖残
基の個数が2個以上である場合、2個以上の糖残基は、通常の糖間結合を介して、隣接す
る糖残基に各々結合し得る。このような糖間結合としては、Gal−Glcまたはその誘
導体(糖鎖の非還元末端に存在し得る)に対してフコシル基を導入する活性を保持し得る
ものである限り特に限定されないが、例えば、α−1,2−結合、α−1,3−結合、α
−1,4−結合、β−1,2−結合、β−1,3−結合、およびβ−1,4−結合が挙げ
られる。
【0042】
好ましくは、R、RおよびRは、各々独立して、C〜Cアルキル基、(ヒド
ロキシ)C〜Cアルキル基、アミノ基、(C〜Cアルキル)アミノ基、(C
アルキル−カルボニル)アミノ基、ヒドロキシ基、(C〜Cアルキル)オキシ基
を示してもよい。
【0043】
好ましくは、R、R、RおよびRは、各々独立して、C〜Cアルキル基、
(ヒドロキシ)C〜Cアルキル基、アミノ基、(C〜Cアルキル)アミノ基、(
〜Cアルキル−カルボニル)アミノ基、ヒドロキシ基、(C〜Cアルキル)オ
キシ基、または1以上の糖残基を示してもよい。より好ましくは、R、R、Rおよ
びRから選ばれる3つの基は、各々独立して、C〜Cアルキル基、(ヒドロキシ)
〜Cアルキル基、アミノ基、(C〜Cアルキル)アミノ基、(C〜Cアル
キル−カルボニル)アミノ基、ヒドロキシ基、または(C〜Cアルキル)オキシ基を
示してもよく、R、R、RおよびRから選ばれる残りの1つの基が、1以上の糖
残基を示してもよい。
【0044】
さらにより好ましくは、RおよびRは、各々独立して、C〜Cアルキル基、(
ヒドロキシ)C〜Cアルキル基、アミノ基、(C〜Cアルキル)アミノ基、(C
〜Cアルキル−カルボニル)アミノ基、ヒドロキシ基、または(C〜Cアルキル
)オキシ基を示してもよい。R、R、RおよびRは、ヒドロキシ基、または(C
〜Cアルキル)オキシ基を示してもよい。Rは、ヒドロキシメチル基等の(ヒドロ
キシ)C〜Cアルキル基を示してもよい。
【0045】
フコシル基の導入のために用いられるフコシル基供給化合物は、フコース中のヒドロキ
シ基(例、1位のヒドロキシル基)が脱離基で置換されているフコース誘導体であり得る
。フコシル基供給化合物におけるフコシル基は、α体またはβ体であり得る。フコシル基
はまた、L体であり得る。脱離基としては、例えば、フッ素原子、リン酸基が挙げられる
。好ましくは、フコシル基供給化合物は、フッ化フコースである。
【0046】
より好ましい実施形態では、本発明のタンパク質は、以下の活性を有し得る:
(i)ラクト−N−ビオースI(Galβ1−3GlcNAc)、またはラクト−N−ビ
オースI(Galβ1−3GlcNAc)を非還元末端に有する糖鎖に、フコシル基を導
入して、ルイスa抗原〔Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc〕、またはルイ
スa抗原〔Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc〕を非還元末端に有する糖鎖
を生成する活性(GlcNAcは、グルコサミンを示す。以下、同様。);
(ii)N−アセチルラクトサミン(Galβ1−4GlcNAc)、またはN−アセチ
ルラクトサミン(Galβ1−4GlcNAc)を非還元末端に有する糖鎖に、フコシル
基を導入して、ルイスx抗原〔Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc〕、また
はルイスx抗原〔Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc〕を非還元末端に有す
る糖鎖を生成する活性;
(iii)ラクトース(Galβ1−4Glc)、またはラクトース(Galβ1−4G
lc)を非還元末端に有する糖鎖に、フコシル基を導入して、3−フコシルラクトース[
Galβ1−4(Fucα1−3)Glc]、または3−フコシルラクトース[Galβ
1−4(Fucα1−3)Glc]を非還元末端に有する糖鎖を生成する活性;
(iv)2’−フコシルラクトース(Fucα1−2Galβ1−4Glc)、または2
’−フコシルラクトース(Fucα1−2Galβ1−4Glc)を非還元末端に有する
糖鎖に、フコシル基を導入して、ジフコシルラクトース[Fucα1−2Galβ(Fu
cα1−3)1−4Glc]、またはジフコシルラクトース[Fucα1−2Galβ(
Fucα1−3)1−4Glc]を非還元末端に有する糖鎖を生成する活性;ならびに
(v)ラクト−N−テトラオース(Galβ1−3GlcNAcβ1−3Galβ1−4
Glc)、またはラクト−N−テトラオース(Galβ1−3GlcNAcβ1−3Ga
lβ1−4Glc)を非還元末端に有する糖鎖に、フコシル基を導入して、ラクト−N−
フコペンタオースII[Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAcβ1−3Gal
β1−4Glc]、またはラクト−N−フコペンタオースII[Galβ1−3(Fuc
α1−4)GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc]を非還元末端に有する糖鎖を生
成する活性。
【0047】
上記糖鎖を構成する糖残基の総数は、Gal−Glcに起因する糖残基の個数(2個)
を、上述した糖残基の個数に加算した数である。したがって、糖鎖を構成する糖残基の総
数は、例えば、1〜17個、好ましくは、1〜12個、より好ましくは、1〜7個、さら
により好ましくは3、4または5個である。
【0048】
本発明のタンパク質は、本発明のタンパク質を発現する形質転換体から得ることができ
る。この形質転換体は、本発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む、本発
明のタンパク質の発現ベクターを作製し、次いで、この発現ベクターを宿主に導入するこ
とにより作製することができる。本発明のタンパク質を発現させるための宿主としては、
例えば、エスケリシア・コリ(Escherichia coli)等のエスケリシア属
細菌、コリネバクテリウム属細菌、およびバチルス・ズブチリス(Bacillus s
ubtilis)をはじめとする種々の原核細胞、サッカロマイセス・セレビシエ(Sa
ccharomyces cerevisiae)、ピヒア・スティピティス(Pich
ia stipitis)、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus ory
zae)をはじめとする種々の真核細胞が挙げられる。
【0049】
形質転換される宿主としてE.coliについて詳述すると、E.coliとしては、
例えば、E.coli K12株亜種のE.coli JM109株、DH5α株、HB
101株、BL21(DE3)株が挙げられる。形質転換方法、および形質転換体を選別
する方法は、Molecular Cloning: A Laboratory Ma
nual, 3rd edition, Cold Spring Harbor pr
ess (2001/01/15)などにも記載されている。以下、形質転換されたE.
coliを作製し、これを用いて本発明のタンパク質を製造する方法を、一例としてより
具体的に説明する。
【0050】
本発明のタンパク質をコードするDNAを発現させるプロモータとしては、通常E.c
oliにおける異種タンパク質生産に用いられるプロモータを使用することができ、例え
ば、T7プロモータ、lacプロモータ、trpプロモータ、trcプロモータ、tac
プロモータ、ラムダファージのPRプロモータ、PLプロモータ、T5プロモータ等の強
力なプロモータが挙げられる。ベクターとしては、例えば、pUC19、pUC18、p
BR322、pHSG299、pHSG298、pHSG399、pHSG398、RS
F1010、pACYC177、pACYC184、pMW119、pMW118、pM
W219、pMW218、pQE30およびその誘導体が挙げられる。
【0051】
また、本発明のタンパク質をコードする遺伝子の下流に、転写終結配列であるターミネ
ータを連結してもよい。このようなターミネータとしては、例えば、T7ターミネータ、
fdファージターミネータ、T4ターミネータ、テトラサイクリン耐性遺伝子のターミネ
ータ、大腸菌trpA遺伝子のターミネータが挙げられる。
【0052】
本発明のタンパク質をコードする遺伝子をE.coliに導入するためのベクターとし
ては、いわゆるマルチコピー型のものが好ましく、ColE1由来の複製開始点を有する
プラスミド、例えばpUC系のプラスミドやpBR322系のプラスミドあるいはその誘
導体が挙げられる。ここで、「誘導体」とは、塩基の置換、欠失、挿入、付加および/ま
たは逆位などによってプラスミドに改変を施したものを意味する。なお、ここでいう「改
変」とは、変異剤やUV照射などによる変異処理、あるいは自然変異などによる改変をも
含む。
【0053】
ベクターは、形質転換体の選別のため、アンピシリン耐性遺伝子等のマーカーを有する
ことが好ましい。このようなプラスミドとして、強力なプロモータを持つ発現ベクターが
市販されている(例、pUC系(タカラバイオ社製)、pPROK系(クローンテック製
)、pKK233−2(クローンテック製))。
【0054】
得られた発現ベクターを用いてE.coliを形質転換し、得られたE.coliを培
養すると、本発明のタンパク質が発現される。
【0055】
培地としては、例えば、M9−カザミノ酸培地、LB培地など、大腸菌を培養するため
に通常用いる培地が挙げられる。培養および生産誘導等の条件は、用いたベクターのマー
カー、プロモータ、宿主菌等の種類に応じて適宜選択することができる。
【0056】
本発明のタンパク質を回収するには、以下の方法などがある。本発明のタンパク質は、
本発明のタンパク質を産生する形質転換体を回収した後、形質転換体を破砕(例、ソニケ
ーション、ホモジナイゼーション)あるいは溶解(例、リゾチーム処理)することにより
、破砕物および溶解物として得ることができる。このような破砕物および溶解物を、抽出
、沈澱、濾過、カラムクロマトグラフィー等の手法に供することにより、精製タンパク質
、粗タンパク質、または本発明のタンパク質含有画分を得ることができる。
【0057】
本発明はまた、本発明のタンパク質の作製に用いることができる、上述したような、本
発明のタンパク質をコードするポリヌクレオチド、および当該ポリヌクレオチドを含む発
現ベクター、ならびに当該発現ベクターを含む形質転換体を提供する。
【0058】
本発明のポリヌクレオチドは、本発明のタンパク質をコードするので、本発明のタンパ
ク質に関する上述した説明に基づいて、種々の観点から特定することができる。
【0059】
本発明はまた、フコシル化されたGal−Glcまたはその誘導体の製造方法を提供す
る。本方法は、本発明のタンパク質の存在下において、Gal−Glcまたはその誘導体
にフコシル基を導入して、フコシル化されたGal−Glcまたはその誘導体を生成する
ことを含む。本発明のタンパク質、Gal−Glcまたはその誘導体、フコシル基を導入
するためのフコシル基供給化合物等の詳細は、上述したとおりである。
【0060】
好ましい実施形態では、Gal−Glcまたはその誘導体は、上記式(1)で表される
多糖であってもよい。
【0061】
より好ましい実施形態では、本発明の製造方法は、以下のとおりである:
(i’)ラクト−N−ビオースI(Galβ1−3GlcNAc)、またはラクト−N−
ビオースI(Galβ1−3GlcNAc)を非還元末端に有する糖鎖に、フコシル基を
導入して、ルイスa抗原〔Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc〕、またはル
イスa抗原〔Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc〕を非還元末端に有する糖
鎖を生成する方法
(ii’)N−アセチルラクトサミン(Galβ1−4GlcNAc)、またはN−アセ
チルラクトサミン(Galβ1−4GlcNAc)を非還元末端に有する糖鎖に、フコシ
ル基を導入して、ルイスx抗原〔Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc〕、ま
たはルイスx抗原〔Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc〕を非還元末端に有
する糖鎖を生成する製造方法;
(iii’)ラクトース(Galβ1−4Glc)、またはラクトース(Galβ1−4
Glc)を非還元末端に有する糖鎖に、フコシル基を導入して、3−フコシルラクトース
[Galβ1−4(Fucα1−3)Glc]、または3−フコシルラクトース[Gal
β1−4(Fucα1−3)Glc]を非還元末端に有する糖鎖を生成する製造方法;
(iv’)2’−フコシルラクトース(Fucα1−2Galβ1−4Glc)、または
2’−フコシルラクトース(Fucα1−2Galβ1−4Glc)を非還元末端に有す
る糖鎖に、フコシル基を導入して、ジフコシルラクトース[Fucα1−2Galβ(F
ucα1−3)1−4Glc]、またはジフコシルラクトース[Fucα1−2Galβ
(Fucα1−3)1−4Glc]を非還元末端に有する糖鎖を生成する製造方法;なら
びに
(v’)ラクト−N−テトラオース(Galβ1−3GlcNAcβ1−3Galβ1−
4Glc)、またはラクト−N−テトラオース(Galβ1−3GlcNAcβ1−3G
alβ1−4Glc)を非還元末端に有する糖鎖に、フコシル基を導入して、ラクト−N
−フコペンタオースII[Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAcβ1−3Ga
lβ1−4Glc]、またはラクト−N−フコペンタオースII[Galβ1−3(Fu
cα1−4)GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc]を非還元末端に有する糖鎖を
生成する製造方法。
【0062】
上記糖鎖を構成する糖残基の総数は、上述したとおりである。
【0063】
本発明のタンパク質の存在下におけるGal−Glcまたはその誘導体へのフコシル基
の導入は、反応系中に、本発明のタンパク質、ならびにGal−Glcまたはその誘導体
およびフコシル基供給化合物が共存する条件下で行なわれる。このような条件は、例えば
、(I)本発明のタンパク質(例、精製タンパク質、粗タンパク質)、ならびにGal−
Glcまたはその誘導体およびフコシル基供給化合物を含有する反応液、または(II)
本発明のタンパク質を発現する本発明の形質転換体、ならびにGal−Glcまたはその
誘導体およびフコシル基供給化合物を含有する培養液を用いることにより達成することが
できる。
【0064】
反応系中の基質(Gal−Glcまたはその誘導体およびフコシル基供給化合物)の濃
度は、特に制限されず、適宜設定できる。基質はまた、反応中に適宜補充されてもよい。
さらに、基質は、遊離の塩基および塩のいずれの形態でも用いることができる。反応系中
には、フッ化フコース等の基質の自発分解を抑制し得る成分を補充してもよい。このよう
な成分としては、例えば、DMSOが挙げられる。
【0065】
本発明の製造方法におけるpHは、目的の反応が進行する限り特に限定されない。本発
明の製造方法は、目的化合物の収率の観点から、例えば、pH約4.0〜約7.5、好ま
しくは、pH約4.0〜約6.5、より好ましくはpH約4.5〜約5.5で行なわれて
もよい。
【0066】
本発明の製造方法における温度は、目的の反応が進行する限り特に限定されない。本発
明の製造方法は、例えば、約20〜45℃、好ましくは、約25〜40℃で行なわれても
よい。
【0067】
本発明の製造方法において、反応時間は、製造されるべき目的化合物の量に応じて適宜
設定できる。反応は、静置または攪拌状態で行われ得る。
【0068】
本発明の製造方法において得られる目的化合物は、公知の分離精製手段、例えば、濃縮
、減圧濃縮、溶媒抽出、晶出、再結晶、転溶、活性炭処理、イオン交換クロマトグラフィ
ー等のクロマトグラフィーなどの処理を必要に応じて組み合せることにより単離精製する
ことができる。本発明の製造方法において原料として用いられる化合物、および本発明の
製造方法において得られる目的化合物は、特に断らない限り、塩の形態であってもよい。
このような塩は、それ自体公知の手段に従い、例えば、原料または目的化合物に無機酸ま
たは有機酸を加えることによって製造することができる。また、原料または目的化合物の
塩は、水和物であってもよく、水和物および非水和物のいずれも本発明の範囲に包含され
るものである。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の各種塩が挙
げられる。
【0069】
(略語)
CAD:荷電エアロゾル検出器〔charged aerosol detector〕
DC−SIGN:樹状細胞特異的細胞間接着分子−3−グラビング非インテグリン〔de
ndritic cell−specific intercellular adhe
sion molecule−3−grabbing non−integrin〕
DFL:ジフコシルラクトース〔difucosyllactose〕
ESI−MS:電気スプレーイオン化−質量分析〔electrospray ioni
zation−mass spectrometry〕
2’−FL:2’−フコシルラクトース〔2’−fucosyllactose〕
3−FL:3−フコシルラクトース〔3−fucosyllactose〕
FucF:β−L−フコピラノシルフルオリド〔β−L−fucopyranosyl
fluoride〕
FucN:β−L−フコピラノシルアジド〔β−L−fucopyranosyl a
zide〕
GH:グリコシドヒドロラーゼ〔glycoside hydrolase〕
HEPES:4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸〔4−(
2−hydroxyethyl)−1−piperazine ethanesulfo
nic acid〕
HPLC:高速液体クロマトグラフィー〔high−performance liqu
id chromatography〕
Lac:ラクトース〔lactose〕
LacNAc:N−アセチルラクトサミン〔N−acetyllactosamine〕
LNB:ラクト−N−ビオースI〔lacto−N−biose I〕
LNDFH:ラクト−N−ジフコヘキサオース〔lacto−N−difucohexa
ose〕
LNFP:ラクト−N−フコメンタオース〔lacto−N−fucopentaose

LNT:ラクト−N−テトラオース〔lacto−N−tetraose〕
LPS:リポ多糖〔lipopolysaccharides〕
MES:2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸〔2−(N−morpholino)
ethanesulfonic acid〕
MOPS:3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸〔3−(N−morpholin
o)propanesulfonic acid〕
NMR:核磁気共鳴〔nuclear magnetic resonance〕
pNP−α−Fuc:4−ニトロフェニル−α−L−フコピラノシド〔4−nirtop
henyl−α−L−fucopyranoside〕
TLC:薄層クロマトグラフィー〔thin−layer chromatograph
y〕
【実施例】
【0070】
以下の実施例により、本発明を詳細に説明するが、これらの実施例により本発明が限定
されるものではない。
【0071】
(材料および方法)
材料
LacNAc、Le、Le、および、LNFP IIは、Dextra Labo
ratories(Reading,UK)より購入した。N,N’−ジアセチルキトビ
オースは生化学工業(Tokyo,Japan)から、DFLはIsosep(Tull
inge,Sweden)から購入した。LNB(Nishimoto et al.2
007)、Glcβ1−4GlcNAc(Honda et al.2004)、および
、FucF(Wada et al.2008)は既報通りに合成した。3−FLはDe
xtra Laboratoriesで購入し、Bio−Gel P2カラム(Bio−
Rad,CA,USA)で更に精製した。他の試薬は、分析グレードの市販品である。
【0072】
変異体の構築
BbAfcBのD703変異体(D703A,D703C,D703G,D703S)
は、鋳型にプラスミドpET23b−afcB(Ashida et al.2009)
を使って、QuikChange site−directed mutagenesi
s method(Stratagene)により構築した。使用したプライマーは、以
下の表1に記載した。設計した部分以外に余分な変異が入っていないことはシークエンス
により確認した。作製したプラスミドは、Escherichia coli BL21
ΔlacZ(DE3)に導入した(Ashida et al.2009)。
【0073】
【表1】

【0074】
タンパク質発現と精製
組換え体は、100μg/mLアンピシリンを含むLuria−Bertani培地に
て、吸光度(600nm)が0.5に達するまで18℃で培養し、その後、isopro
pyl−β−D−thiogalactopyranosideを終濃度0.1mMにな
るように加えた。さらに15時間培養した後に集菌し、超音波処理により破砕した。超音
波破砕することで、BugBuster Protein Extraction re
agent(Merck,Darmstadt,Germany)を使用した以前の方法
(Ashida et al.2009)よりも高収率で活性酵素を得ることが出来た。
遠心後、上清をNi−NTAアガロースカラム(Qiagen)にアプライし、マニュア
ルに従って蛋白質を溶出させた。活性フラクションを収集し、Amicon Ultra
50 K(Millipore,MA,USA)にて濃縮した後、Superdex
200 10/300 GLゲルろ過カラム(GE Healthcare Bio−S
ciences,Uppsala,Sweden)に供した。溶出は150mM NaC
lを含む20mM tris(hydroxymethyl)aminomethane
−HCl buffer(pH8.0)にて行った。精製した酵素は50mM 4−(2
−hydroxyethyl)−1−piperazineethanesulfoni
c acid(HEPES)buffer(pH7.0)に透析した。タンパク質濃度は
、bovine serum albuminを標準に用い、BCA protein
assay kit(Pierce,Thermo Fisher Scientifi
c,IL,USA)にて測定した。
【0075】
酵素測定
BbAfcB変異体の加水分解活性は、基質に3−FLを用いて決定した。反応液の組
成は、100mM 3−(N−morpholino)propanesulfonic
acid(MOPS)buffer(pH6.5)、1mM基質、および、酵素(野生
型14nM、および、D703変異体12μM)とした。反応は30℃で行い、熱処理で
反応を止めた後、遊離したL−fucose(Fuc)の量をフコースデヒドロゲナーゼ
カップリング法で決定した(Cohenford et al.1989;Kataya
ma et al.2004)。1Uは、1分間に1μmolのFucを生じさせるのに
必要な酵素量とした。
D703変異体のグリコシンターゼ活性は、100mM MOPS buffer(p
H7.0)、20mM FucF(供与体)、100mM LNB/LacNAc(受容
体)、および、酵素(17μM)の存在下で測定した。反応は50μlで行い、30℃に
て10分保温後に、30%トリクロロ酢酸5μlを加えて反応を止めた。反応産物はSu
gar−Dカラム(4.6×250mm、Nacalai Tesque)を用いた高速
クロマトグラフィー(HPLC)によって分析した。溶出には75%もしくは78%アセ
トニトリルを用い、40℃および流速1.0mL/minとした。検出は214nmもし
くはコロナ荷電化粒子検出器(Corona CAD,Esa,USA)にて行った。反
応産物の濃度は、LeおよびLeトリサッカライド標品を使用して作成した検量線を
用いて決定した。
【0076】
グリコシンターゼ反応の至適pHは、D703S変異体を用いて決定した。緩衝液(1
00mM)は、クエン酸−NaOH(pH4.0−5.0)、MES(pH5.0−6.
5)、およびMOPS(pH6.5−8.0)を使用した。反応初速度は、100mM
MES buffer(pH5.0)、FucF(20および60mM)、LNB/La
cNAc(0−300mM)、および、酵素(17μM D703S)の存在下、反応産
物が直線的に増加する条件下(30℃,5分)で決定した。D703S変異体の受容体特
異性は、13種類の基質を用いて検討した。40mM FucFおよび100mM各受容
体を含む100mM MES buffer(pH5.0)を、17μM D703S存
在下もしくは非存在下で30℃40分間保温し、その後、反応産物をHPLC−CADに
て分析した。
【0077】
D703S変異体を使用した最適条件下でのLeおよびLeトリサッカライドの合成
Leトリサッカライド合成は、100mM MES buffer(pH5.0)、
40mM FucF(供与体)、200mM LNB(受容体)、および、D703変異
体(17μM)の存在下で行った。反応液は300μlとし30℃で行った。Leトリ
サッカライド合成では、受容体に100mM LacNAcを用い、同様の条件で行った

【0078】
反応産物の精製と構造解析
反応産物はAmberlite MB−3にて脱塩し、凍結乾燥させた後に、Suga
r−Dカラムを使ってHPLCにより精製した。溶出条件は上記の通りである。得られた
画分は、凍結乾燥後、さらにTSKgel ODS−80TSカラム(4.6×250m
m,Tosoh,Japan)を用いて精製し、残存するLNB/LacNAcを完全に
取り除いた。溶出には水を用い、流速は0.5ml/minとした。また、検出には示差
屈折率検出器(RID−10A,Shimazu,Kyoto,Japan)を用いた。
H−および13C NMR解析には、Bruker Avance 500 spec
trometerを用いた。ESI−MS測定にはBruker APEX II 70
eフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計を用い、ポジティブモードで行った

【0079】
求核残基としてのAsp−703
B.bifidum由来1,3−1,4−α−L−フコシダーゼ(BbAfcB)は、
糖質加水分解酵素(GH)ファミリー29に属している(http://www.caz
y.org)(Cantarel et al,2009)。このファミリーに属する酵
素は、立体保持型の反応機構でα−L−フコシル結合を加水分解する(McCarter
and Withers 1994;Sulzenbacher et al.200
4)。BbAfcBのα−L−フコシンターゼ化の第一段階として、まず求核残基の同定
を試みた(立体保持型グリコシダーゼをグリコシンターゼ化するためには、求核残基に変
異を導入して加水分解活性を消失させることが必須である)。既知の数種類のGH29酵
素の立体構造やアミノ酸配列を比較した結果、Asp−703が求核残基である可能性が
示唆された(後に詳しく考察する)。
【0080】
Asp−703をアラニン、システイン、グリシン、および、セリンに置換し、これら
変異体の加水分解活性を調べた[これらのアミノ酸残基はグリコシンターゼ化に適してい
ると言われている(Jakeman and Withers 2002)]。なお、活
性は比活性のみで表している。というのも、反応初速度が20mMの基質濃度まで直線的
に増加し、速度論的パラメータを算出できなかったためである。野生型酵素の比活性と比
較して、D703A、D703C、D703G、およびD703Sの比活性はそれぞれ1
60,000倍、46,000倍、17,000倍、および76,000倍低下した(表
2)。これらの結果から、Asp−703がBbAfcBの求核残基であることが強く示
唆された(考察および図1)。
【表2】

【0081】
1,3−1,4−α−L−フコシンターゼへの変換
上記で得られたBbAfcB D703変異体のグリコシンターゼ活性を調べた。20
mM FucF(β−L−フコピラノシルフルオリド)を供与体、100mM LNB(
Galβ1−3GlcNAc)を受容体として反応させたところ、D703GとD703
S変異体において、保持時間15.4分にLeトリサッカライドに相当するピークが検
出された(図2)。しかしながら、野生型およびD703A/C変異体においては検出さ
れなかった。D703GとD703S変異体では、受容体にLacNAc(Galβ1−
4GlcNAc)を用いた際にも、保持時間14.9分にLeトリサッカライドに相当
するピークが観察された(図3)。どちらの受容体を用いた場合でも、D703Sのピー
クの方がD703Gのピークよりわずかに大きかった。以上の結果、および、D703S
の加水分解活性の方がD703Gより低いことから(表2)、以降の実験にはD703S
を使用することとした。
【0082】
合成反応の至適pHは5.0(2−(N−morpholino)ethanesul
fonic acid(MES)buffer)であり、その時の収量はpH7.0のと
きより2倍高かった(図4)。反応液をコロナ荷電化粒子検出器を用いた高速液体クロマ
トグラフィー(HPLC−CAD)によって分析した結果、FucF、LNB/LacN
Ac、および、酵素が存在した時にのみ合成活性が検出され、どれか1つでも反応系から
除くと、基質以外のピークは検出されないことが明らかとなった(図5、6)[120分
以降の保持時間においてもピークは検出されなかった(データ示さず)]。反応産物の薄
層クロマトグラフィー分析においても、LeおよびLeトリサッカライドの特異的合
成が示唆された(データ示さず)。反応産物の同定については後述する。
【0083】
次に、FucF濃度を20mMおよび60mMに固定し、LNB/LacNAc濃度を
変化させる(0−300mM)ことによって、速度論的パラメータを決定しようと試みた
(図7、8)。その結果、LNB/LacNAcに対する見かけのK値はFucF依存
的に増加し、また、これらの値は2基質反応の式(Cleland 1963)に回帰す
ることが出来なかった。以上の結果から、本酵素のFucFに対する親和性が低いことが
示唆された。
【0084】
最適化した条件下[40mM FucF(供与体),200mM LNBもしくは10
0mM LacNAc(受容体),17μM酵素]において反応の時間依存性を検討した
ところ、Leトリサッカライドの濃度は約40分、Leトリサッカライドの濃度は約
60分で最大に達した。両者とも、その反応効率は添加したFucFに対して56%であ
った(図9、10)。
【0085】
受容体特異性
様々な単糖およびオリゴ糖(100mM)を使用して、BbAfcB D703Sの受
容体特異性を調べた(表3)。本酵素は、LNBおよびLacNAcに加えてラクトース
(Lac)(Galβ1−4Glc)、2’−フコシルラクトース(2’−FL)(Fu
cα1−2Galβ1−4Glc)、およびラクト−N−テトラオース(LNT)(Ga
lβ1−3GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc)を認識し、それぞれ3−FL[
Galβ1−4(Fucα1−3)Glc]、ジフコシルラクトース(DFL)[Fuc
α1−2Galβ(Fucα1−3)1−4Glc]、ラクト−N−フコペンタオースI
I(LNFPII)[Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAcβ1−3Galβ
1−4Glc]を生成した。収率は、添加したFucFに対して13%、5.5%、およ
び、41%であった。しかしながら本酵素は、単糖(Gal,GalNAc,Glc,G
lcNAc)、セロビオース(Glcβ1−4Glc)、2−アセトアミド−2−デオキ
シ−4−O−(β−グルコシル)−グルコース(Glcβ1−4GlcNAc)、N,N
’−ジアセチルキトビオース (GlcNAcβ1−4GlcNAc)、および、ガラク
ト−N−ビオース(Galβ1−3GalNAc)には全く作用しなかった。以上の結果
から、本酵素は、非還元末端のLNB、LacNAc、Lac二糖構造[Galβ1−3
/4Glc(NAc)]を認識して、GlcNAc/Glc残基にα−(1→3/4)−
フコシル結合を導入することが明らかになった(図11)。
【0086】
【表3】

【0087】
反応産物の分析
1,3−1,4−α−L−フコシンターゼの位置特異性および立体特異性を証明するた
め、反応産物を精製してエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)、および
H−,13C−核磁気共鳴分光法(NMR)を用いて分析した。MSスペクトルの結
果は、LNBおよびLacNAcにフコシル基が一カ所導入されたことを示していた(ナ
トリウム付加物[M+Na]の計算値は552.19、実測値は552.18)。
および13C NMRスペクトルは、LeおよびLeトリサッカライド標準品のスペ
クトルと一致した(データ示さず)。受容体にLNTを用いた場合では、LNFP II
[Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc]のみ
が合成され、ラクト−N−フコペンタオース V[Galβ1−3GlcNAcβ1−3
Galβ1−4(Fucα1−3)Glc]やラクト−N−ジフコヘキサオース II[
Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAcβ1−3Galβ1−4(Fucα1−
3)Glc、LNDFH II]は合成されなかった(データ示さず)。以上の結果によ
り、本シンターゼの特異性が証明された。
【0088】
(考察)
BbAfcBの求核残基D703
GH29は、そのアミノ酸配列の系統樹解析により2つのサブファミリーに分類されて
おり、この分類は明らかに両グループの基質特異性の差異と相関している(Ashida
et al.2009)。一つ目のサブファミリー(GH29−A)は、ヒトやThe
rmotoga maritima由来の酵素によって代表されるように、比較的広い基
質特異性を示し、4−ニトロフェニル−α−L−フコピラノシド(pNP−α−Fuc)
にも作用する酵素群から構成される(Liu et al.2009a;Sulzenb
acher et al.2004)。これとは対照的に、もう一つのサブファミリー(
GH29−B)に属する酵素は、非還元末端に存在するα−(1→3)−およびα−(1
→4)−フコシル結合のみを特異的に切断し、pNP−α−Fucには作用しない。Bb
AfcBはGH29−Bサブファミリーに分類される(Ashida et al.20
09)。最近、B.longum subsp.infantis ATCC15697
由来の1,3−1,4−α−L−フコシダーゼホモログ(BiAfcB,GH29−B)
の結晶構造が決定された(PDB code:3MO4)。その立体構造はT.mari
tima(TmFuc)(GH29−A)のα−L−フコシダーゼ(PDB code:
1ODU)と類似性を示し[the root mean square devia
tion=3.5オングストローム(289 Cα原子に対して);Zスコア=28.5
;配列一致性=24%](Holm and Park 2000)、特に、−1サブサ
イトの構造が極似していた。TmFucの求核残基Asp−224(Sulzenbac
her et al.2004)は、立体構造上でBiAfcBのAsp−172とよく
重なり、BiAfcBのAsp−172は、アミノ酸配列のアライメントにおいてBbA
fcBのAsp−703に対応していた(図1)。これらの知見、および、変異体解析の
結果から、BbAfcBの求核残基はAsp−703であると結論づけた。
【0089】
1,3−1,4−α−L−フコシンターゼ
D703GおよびD703SはLeとLeトリサッカライド合成活性を示したのに
対し、D703AおよびD703Cは示さなかった。この結果は、BbAfcBのグリコ
シンターゼ化には、変異体の残存加水分解活性や置換残基の側鎖の大きさが関係しないこ
とを示唆している(表2)。それゆえ、グリコシンターゼ化を行う上で求核残基をどのア
ミノ酸残基に置換するのが適当であるかという疑問に対する答えは、Cobucci−P
onzano et al.(2009)が示唆しているように、目的の酵素に依存して
いるのであろう。
【0090】
合成反応において、2基質反応の式に適合する速度論的パラメータは、今回の実験条件
下では得られなかった。このことは、本シンターゼの基質に対する親和性の低さを示唆し
ている。変異体は、添加したFucF量に対して約60%の収率でLeおよびLe
リサッカライドを合成した。この反応効率は典型的なグリコシンターゼ(80%以上)よ
りわずかに低いと思われるが、これは、反応中にFucFが自然分解したためと考えられ
る(Wada et al.2008)。
【0091】
近年、Cobucci−Ponzanoら(2009)はSulfolobus so
lfataricus由来(SsFuc D242S)およびT.maritima由来
(TmFuc D224G)の2種のα−L−フコシンターゼを作製した(両酵素ともG
H29−Aサブファミリーに属している)。これら2種のフコシンターゼは、β−L−フ
コピラノシルアザイド(FucN)(水溶液中ではFucFに比べてかなり安定)を糖
供与体に利用することが可能であり、その反応効率は、受容体の種類により変動するもの
の(30−90%)、最大でFucNに対して90%まで到達した。BbAfcB D
703変異体は、検討した条件下においてはFucNを供与体として利用できず、また
、アザイドによってその活性はレスキューされなかった(データ示さず)。
【0092】
基質特異性
位置特異性および受容体特異性の高さは、オリゴ糖を精密合成する際に、特に重要な決
定因子であり、その点で、酵素合成法は化学合成法よりも有効である場合が多い。これま
でに、Alcaligenes sp.、Aspergillus niger、Pen
icillium multicolor、および、T.maritima由来の立体保
持型α−L−フコシダーゼにおいて、糖供与体にpNP−Fucを利用した糖転移反応に
よるフコシルオリゴ糖の合成が行われてきた(Ajisaka et al.1998;
Murata et al.1999;Farkas et al.2000;Osa
njo et al.2007)。また、上述したように、近年、TmFuとSsFuc
がグリコシンターゼ化された(Cobucci−Ponzano et al.2009
)。これらの酵素もしくは変異体は、様々な受容体に効率的にα−L−フコシル結合を導
入することが出来るが、GH29−Aに属しているため(いくつかの酵素についての遺伝
子情報は得られていないが、pNP−Fucに対して活性があることから推察できる)、
本質的に、位置および受容体の選択的制御が出来ない。例えば、TmFucをpNP−α
−Fuc(供与体)およびpNP−β−Gal(受容体)と反応さて糖転移反応を行うと
、Fucα1−3Fucα−pNP およびFucα1−2Galβ−pNPの混合物が
得られることが知られている(Osanjo et al.2007)。また、SsFu
cのグリコシンターゼ変異体は、供与体にFucN、および、受容体にGalβ−pN
Pを用いると、Fucα1−6Galβ−pNP、Fucα1−3Galβ−pNP、F
ucα1−4Galβ−pNP、および、Fucα1−2(Fucα1−3)Galβ−
pNPを生じることが報告されている(Cobucci−Ponzano et al.
2009)。
【0093】
本研究では、BbAfcBのグリコシンターゼ化により、特異的かつ効率的にLe
よびLeトリサッカライドを合成することに成功した。特筆すべきはその厳密な受容体
特異性である。本酵素は、非還元末端に存在するLNB、LacNAc、Lacの二糖構
造[Galβ1−3/4GlcNAc(Glc)]のみを受容体として認識し、単糖はG
lcNAcでさえ認識しない。現在、BbAfcBの立体構造情報がないので(類縁酵素
BiAfcBにおいても、(+)サブサイトを形成するループ構造が決定できていない)
、本酵素の受容体特異性について説明することが出来ないが、以前の報告にあるように(
Sugimura et al.2006)、様々な基質を利用して受容体特異性を調べ
ることで、(+)サブサイトの特性についての有用な情報を得ることが出来た。つまり、
BbAfcBはGlc/GlcNAc残基のサブサイト(GalNAc残基は認識しない
)の隣に、枝分かれしたGal残基を収容できるサブサイト(GlcNAc/Glc残基
は認識しない)があると推察された(表3、図11)。ここで、LNBとLacNAc(
Lac)では、GlcNAc環の面が反転しており、そのためにそれぞれのGlcNAc
残基のO4およびO3の水酸基の立体位置が同一となることに注目すべきである(図11
)。非還元末端Galβ1−3/4GlcNAc(Glc)二糖を認識することによって
、本酵素は特異的にGlcNAc(Glc)のO3/O4位にα−L−フコシル基を導入
する。GlcNAc/Glc残基のフコシル化部位の隣の位置する環外官能基の大きさ(
−NHCOCH,−CHOH,−OH)が反応効率に影響すると考えられた(表3、
図11)。このような位置特異性および受容体特異性は、本酵素BbAfcB D703
Sのユニークの特性であり、GH29−Aサブファミリーに属する他のα−L−フコシダ
ーゼを利用することでは確立できなかったであろうと思われる。
【0094】
本酵素は受容体に2’−FL(Fucα1−2Galβ1−4Glc)を利用し、効率
は良くないがDFL[Fucα1−2Galβ(Fucα1−3)1−4Glc]を特異
的に合成した。また、本酵素はLNT(Galβ1−3GlcNAcβ1−3Galβ1
−4Glc)を受容体とした場合に、LNFP II[Galβ1−3(Fucα1−4
)GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc]を合成した。LNTにはフコシル化可能
な部位が2つ存在するが、単離した産物を分析したところ、LNFP IIしか検出され
なかった。このことは、野生型のBbAfcBをLNDFH II[Galβ1−3(F
ucα1−4)GlcNAcβ1−3Galβ1−4(Fucα1−3)Glc]に作用
させた場合、Fucα1−3Glc結合よりもFucα1−4GlcNAc結合を約10
0倍早く切断するという事実と良く一致していた(データ示さず)。
【0095】
BbAfcB D703S変異体を利用すれば、様々な複合糖質糖鎖の非還元末端のI
型およびII型構造に、極めて特異的に、意図しないフコシル基を導入することなく、L
およびLe抗原を形成することが可能となる。また、1,3−1,4−α−L−フ
コシンターゼ、および、我々がすでに開発している1,2−α−L−フコシンターゼ(W
ada et al.2008)を組み合わせることで、すべてのタイプのルイス糖を合
成することが可能となるかも知れない。
【0096】
(まとめ)
ルイスa(Le)[Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc]およびルイス
x(Le)[Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc]血液型抗原決定基は、
複合糖質糖鎖の非還元末端に存在し、様々な生命現象に関わっている.それゆえ、これら
抗原の効率的な合成方法を確立することは、糖鎖の機能研究において極めて重要である。
我々は、Bifidobacterium bifidum由来1,3−1,4−α−L
−フコシダーゼの求核残基変異体D703Sが、供与体にβ−L−フッ化フコース(Fu
cF)および受容体にラクト−N−ビオースI(Galβ1−3GlcNAc)あるいは
N−アセチルラクトサミン(Galβ1−4GlcNAc)を用いた場合に、添加したF
ucF濃度に対して56%の効率でLeとLeトリサッカライドを合成することを見
出した。また、本酵素は受容体としてラクトース(Galβ1−4Glc)、2’−フコ
シルラクトース(Fucα1−2Galβ1−4Glc)、ラクト−N−テトラオース(
Galβ1−3GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc)を認識し、それぞれ3−フ
コシルラクトース[Galβ1−4(Fucα1−3)Glc]、ジフコシルラクトース
[Fucα1−2Galβ(Fucα1−3)1−4Glc]、ラクト−N−フコペンタ
オースII [Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAcβ1−3Galβ1−4
Glc]を特異的に合成した。しかしながら、単糖、セロビオース(Glcβ1−4Gl
c)、Glcβ1−4GlcNAc、N,N’−ジアセチルキトビオース(GlcNAc
β1−4GlcNAc)、ガラクト−N−ビオース(Galβ1−3GalNAc)は受
容体にはならなかった。すなわち、本酵素は、非還元末端に存在する二糖構造[Galβ
1−3/4GlcNAc(Glc)]を特異的に認識し、GlcNAc/Glc残基の3
位もしくは4位にフコシル基を特異的に導入することを明らかとした。本酵素(1,3−
1,4−α−L−フコシンターゼ)の高い位置特異性および受容体特異性は極めてユニー
クであり、I型およびII型糖鎖構造にそれぞれLeおよびLe抗原決定基を導入す
るための極めて有用なツールとなることが示唆された。
【0097】
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【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明は、LeおよびLe抗原を含む様々な糖鎖の特異的な製造に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2で表されるアミノ酸配列における703位のアスパラギンがグリシンまたは
セリンに置換されているアミノ酸配列に対して少なくとも80%以上のアミノ酸配列同一
性を有するアミノ酸配列(ただし、配列番号2で表されるアミノ酸配列における703位
のアスパラギンのグリシンまたはセリンへの置換は維持されている)からなり、かつGa
l−Glcまたはその誘導体にフコシル基を導入する活性を有する、タンパク質。
【請求項2】
Gal−Glcまたはその誘導体が、下記式(1a)または(1b):
【化1】

(式中、R、RおよびRは、各々独立して、置換されていてもよいC〜C炭化
水素基、置換されていてもよいC〜C11芳香族基、アミノ基、置換されていてもよい
モノまたはジ(C〜C炭化水素)アミノ基、置換されていてもよいモノまたはジ(C
〜C11芳香族)アミノ基、置換されていてもよい(C〜C炭化水素)(C〜C
11芳香族)アミノ基、置換されていてもよいモノまたはジ(C〜C炭化水素−カル
ボニル)アミノ基、置換されていてもよいモノまたはジ(C〜C11芳香族−カルボニ
ル)アミノ基、ヒドロキシ基、置換されていてもよい(C〜C炭化水素)オキシ基、
置換されていてもよい(C〜C11芳香族)オキシ基、またはハロゲン原子を示し、
、R、RおよびRは、各々独立して、置換されていてもよいC〜C炭化
水素基、置換されていてもよいC〜C11芳香族基、アミノ基、置換されていてもよい
モノまたはジ(C〜C炭化水素)アミノ基、置換されていてもよいモノまたはジ(C
〜C11芳香族)アミノ基、置換されていてもよい(C〜C炭化水素)(C〜C
11芳香族)アミノ基、置換されていてもよいモノまたはジ(C〜C炭化水素−カル
ボニル)アミノ基、置換されていてもよいモノまたはジ(C〜C11芳香族−カルボニ
ル)アミノ基、ヒドロキシ基、置換されていてもよい(C〜C炭化水素)オキシ基、
置換されていてもよい(C〜C11芳香族)オキシ基、またはハロゲン原子、あるいは
1以上の糖残基を示す。)で表される糖化合物である、請求項1記載のタンパク質。
【請求項3】
、RおよびRが、各々独立して、C〜Cアルキル基、(ヒドロキシ)C
〜Cアルキル基、アミノ基、(C〜Cアルキル)アミノ基、(C〜Cアルキル
−カルボニル)アミノ基、ヒドロキシ基、(C〜Cアルキル)オキシ基を示し、
、R、RおよびRが、各々独立して、C〜Cアルキル基、(ヒドロキシ
)C〜Cアルキル基、アミノ基、(C〜Cアルキル)アミノ基、(C〜C
ルキル−カルボニル)アミノ基、ヒドロキシ基、(C〜Cアルキル)オキシ基、また
は1以上の糖残基を示す、請求項1または2記載のタンパク質。
【請求項4】
、R、RおよびRから選ばれる3つの基が、各々独立して、C〜Cアル
キル基、(ヒドロキシ)C〜Cアルキル基、アミノ基、(C〜Cアルキル)アミ
ノ基、(C〜Cアルキル−カルボニル)アミノ基、ヒドロキシ基、または(C〜C
アルキル)オキシ基を示し、R、R、RおよびRから選ばれる残りの1つの基
が、1以上の糖残基を示す、請求項3記載のタンパク質。
【請求項5】
前記活性が、Gal−Glcまたはその誘導体にフコシル基を導入して、下記式(2a
)または(2b):
【化2】

(式中、R、R、R、R、R、RおよびRは、前記と同じである。Fuc
は、フコシル基を示す。)
で表される糖化合物を生成する活性である、請求項2〜4のいずれか一項記載のタンパク
質。
【請求項6】
前記活性が、ラクト−N−ビオースI〔Galβ1−3GlcNAc〕、またはラクト
−N−ビオースI〔Galβ1−3GlcNAc〕を非還元末端に有する糖鎖に、フコシ
ル基を導入して、ルイスa抗原〔Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc〕、ま
たはルイスa抗原〔Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc〕を非還元末端に有
する糖鎖を生成する活性である、請求項1記載のタンパク質。
【請求項7】
前記活性が、N−アセチルラクトサミン〔Galβ1−4GlcNAc〕、またはN−
アセチルラクトサミン〔Galβ1−4GlcNAc〕を非還元末端に有する糖鎖に、フ
コシル基を導入して、ルイスx抗原〔Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc〕
、またはルイスx抗原〔Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc〕を非還元末端
に有する糖鎖を生成する活性である、請求項1記載のタンパク質。
【請求項8】
前記糖鎖が、二糖、三糖または四糖である、請求項1〜7のいずれか一項記載のタンパ
ク質。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項記載のタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項10】
請求項9記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項11】
請求項10記載の発現ベクターが導入された形質転換体。
【請求項12】
請求項11記載の形質転換体を培地中で培養して、請求項1〜8のいずれか一項記載の
タンパク質を生成することを含む、タンパク質の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれか一項記載のタンパク質の存在下において、Gal−Glcまた
はその誘導体にフコシル基を導入して、フコシル化されたGal−Glcまたはその誘導
体を得ることを含む、フコシル化されたGal−Glcまたはその誘導体の製造方法。
【請求項14】
ラクト−N−ビオースI〔Galβ1−3GlcNAc〕、またはラクト−N−ビオー
スI〔Galβ1−3GlcNAc〕を非還元末端に有する糖鎖に、フコシル基を導入し
て、ルイスa抗原〔Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc〕、またはルイスa
抗原〔Galβ1−3(Fucα1−4)GlcNAc〕を非還元末端に有する糖鎖を生
成する方法である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
N−アセチルラクトサミン〔Galβ1−4GlcNAc〕、またはN−アセチルラク
トサミン〔Galβ1−4GlcNAc〕を非還元末端に有する糖鎖に、フコシル基を導
入して、ルイスx抗原〔Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc〕、またはルイ
スx抗原〔Galβ1−4(Fucα1−3)GlcNAc〕を非還元末端に有する糖鎖
を生成する方法である、請求項13記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−235757(P2012−235757A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108441(P2011−108441)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 日本農芸化学会 2011年度大会講演要旨集,発行日 平成23年3月5日
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】