説明

フコシル残基を欠くCD30に対するモノクローナル抗体

本発明は、フコシル残基を欠く抗CD30抗体に関する。本発明の抗体は、フコシル化された形態の抗体によっては溶解されないD30発現細胞株を溶解する能力を含めて、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)活性の増加を示す。本発明はまた、フコシル残基を欠く抗CD30抗体を発現する宿主細胞を提供する。該宿主細胞は、フコシルトランスフェラーゼが欠乏している。CD30細胞、例えば、腫瘍細胞の成長を阻害するための、該抗体を使用する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
CD30細胞表面分子は、腫瘍壊死因子レセプター(TNF−R)スーパーファミリーのメンバーである。この分子のファミリーは、そのメンバー中に可変ホモロジーを有し、神経成長因子レセプター(NGFR)、CD120(a)、CD120(b)、CD27、CD40およびCD95を含む。これらの分子は、典型的に、細胞質外領域内に多数のシステインリッチな繰り返し構造が存在することが特徴である(de Bruin, P.C., et al. Leukemia
9:1620-1627 (1995))。このファミリーのメンバーは、リンパ球の増殖と分化の調節に重要であると考えられている。
【0002】
CD30は、6個(ヒト)もしくは3個(ネズミおよびラット)の、中心にヒンジ配列を持つシステインリッチ繰り返し領域を持つI型膜貫通糖タンパク質である。CD30は、90kDaの細胞間プレカーサータンパク質から発達する120kDaの膜分子として存在する。それは、約90kDaの可溶性タンパク質(sCD30)として、細胞表面からシェディングする。CD30のシェディングは、可変CD30細胞の活性プロセスとして生じるものであり、死にかけている、もしくは死んだ細胞から放出されることによってのみ引き起こされるものではない。CD30タンパク質をコードするcDNAは、HLTV−1ヒトT−細胞株HUT−102の発現ライブラリーから、モノクローナル抗体Ki−1およびBer−H2を用いた免疫スクリーニングによってクローニングされてきた(Schwab, U., et
al. Nature 299:65 (1982))。マウスおよびラットCD30cDNAは、498および493アミノ酸をそれぞれコードすることがわかっている。ヒトCD30cDNAは、さらに90アミノ酸をコードし、システインリッチなドメインから部分的に複製される。CD30遺伝子は、ヒトにおける1p36、およびラットにおける5q36.2をマッピングしていた。
【0003】
CD30は、活性化されたリンパ球系細胞から主に発現される。具体的には、リンパ球系細胞におけるCD30の刺激が、細胞タイプ、分化の段階、および他の刺激類の存在に依存して、増殖、活性化、分化および細胞死といった多面的な生物学的効果を誘発することがわかっている(Gruss, H.J. et
al., Blood 83:2045-2056 (1994))。CD30は、本来、ホジキン病のホジキン細胞およびリード−ステルンベルグ細胞上に発現した抗原に反応性を示すモノクローナル抗体Ki−1によって同定されていた(Schwab et
al., Nature 299:65 (1982))。したがって、CD30は、ホジキンリンパ腫の臨床マーカーとして広く使用されており、血液癌に関連するものであった(Froese et
al., J. Immunol. 139:2081 (1987); Carde et al., Eur. J. Cancer 26:474 (1990))。
【0004】
続いて、CD30は、バーキットリンパ腫、未分化巨大細胞リンパ腫(ALCL)、皮膚T細胞リンパ腫、結節性小分裂細胞リンパ腫(nodular small cleaved-cell lymphomas)、リンパ球性リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、レナートリンパ腫、免疫芽球性リンパ腫、T細胞白血病(ATLL)、成人T細胞白血病(T−ALL)、内生分芽型/中心細胞性(cb/cc)濾胞性リンパ腫を含む、非ホジキンリンパ腫(NHL)のサブセット上(Stein et
al., Blood 66:848 (1985); Miettinen, Arch. Pathol. Lab. Med. 116:1197 (1992); Piris et al., Histopathology 17:211 (1990); Burns et
al., Am. J. Clin. Pathol. 93:327(1990); and Eckert et al., Am. J. Dermatopathol. 11:345 (1989))、ならびにヒトT細胞リンパ腫ウイルスIもしくはII形質転換T細胞、およびエプスタイン−バールウイルス形質転換B細胞などの数種のウイルス性形質転換株に発現することがわかっている(Stein et
al., Blood 66:848 (1985);Andreesen et al., Blood 63:1299 (1984))。さらに、CD30発現は、胎児性癌、非胎児性癌、悪性メラノーマ、間葉腫瘍、および骨髄性細胞株や、分化後期のマクロファージにおいても認められている(Schwarting et
al., Blood 74:1678 (1989); Pallesen et al.,
Am J. Pathol. 133:446 (1988); Mechtersheimer et
al., Cancer 66:1732 (1990); Andreesen et al.,
Am. J. Pathol. 134:187 (1989))。
【0005】
正常な個体中のCD30陽性細胞のパーセンテージはかなり小さいので、腫瘍細胞中のCD30は、CD30陽性腫瘍に対する治療薬を特異的に標的とする抗体媒介性の治療にとって、重要な標的となる(Chaiarle, R., et al. Clin. Immunol. 90(2):157-164 (1999))。抗体媒介性治療は、捕捉活性化および抗体依存性細胞傷害性(ADCC)の双方によって、CD30陽性細胞の細胞傷害性を上昇させることがわかっている(Pohl C., et
al. Int J Cancer 54:418 (1993))。しかしながら、これまで得られた結果から、CD30は、免疫治療の有用な標的であることが明らかになったとともに、それらはまた、現時点で利用可能なネズミ抗体が理想的な治療薬ではないことが明らかである。陽性抗体治療は、難治性ホジキン病の患者に対しては、in
vitro またはin vivoで有効性が認めらていない。抗CD30抗体Ber−H2の臨床試験から、抗体の局在化が明らかになったが、反応性はない(Falini B. et
al.(1992) Brit
J Haematol. 82:38-45; Koon, H.B. et al. (2000) Curr Opin in Oncol. 12:588-593)。抗CD30抗体と脱グリコシル化されたリシントキシンA鎖トキシンとが結合することによって、被験体においてはグレード3の毒性が示されたが、SCIDマウスモデルにおけるヒトホジキン病の治療での細胞傷害性が示された(Schell, R. et
al. (2002) Annals
of Oncology 13:57-66)。
【0006】
したがって、CD30によって媒介される疾患を治療および/または予防するのにより有効な、CD30に対する改良された治療用抗体が必要である。
【発明の開示】
【0007】
本発明は、ヒトCD30に結合し、細胞性細胞傷害性(ADCC)のCD30発現細胞の殺傷に対して、非―脱フコシル化された形態の抗体(すなわち、フコース残基を含有する抗体)の場合と比較して増強された抗体である、単離された脱フコシル化された抗体(すなわち、フコース残基を欠く抗体)を提供する。また、本発明の抗体および組成物を使用した、CD30発現に関与する種々の疾患を治療する方法も提供する。
【0008】
ある局面において、本発明は、単離された脱フコシル化されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部に関する。該抗体は、Kが10×10−8M以下、より好ましくは1×10−8M以下、より好ましくは5×10−9以下、さらにより好ましくは1×10−9以下であるヒトCD30と結合している。
【0009】
本発明の脱フコシル化された抗体は、PSMAに結合し、ヒトエフェクター細胞(例えば、単球もしくは単核細胞)の存在下で、フコシル化された形態の抗体と比較して、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を増強させることによって、PSMA発現細胞の成長を阻害する。ある態様において、本発明の脱フコシル化された抗体は、ヒトエフェクター細胞が存在し、マウスエフェクター細胞が存在しない状況で、CD30を発現するADCC細胞の上昇を媒介する。
【0010】
好ましい態様において、本発明の脱フコシル化された抗体は、in vitroでL1236細胞のADCCを誘発するが、抗体濃度0.1μg/ml、標的対細胞の比1:50の条件下において、フコシル化された形態の抗体はADCCを誘発しない。別の好ましい態様において、本発明の脱フコシル化された抗体は、抗体濃度0.1μg/ml、標的対細胞の比1:50の条件下において、L540、L428およびKarpas細胞のin
vitro でのADCCをフコシル化された形態の抗体と比較して上昇させる。したがって本発明の抗体は、CD30発現によって特徴付けられる障害の治療に対する、改良された手段を提供する。
【0011】
好ましくは、本発明の脱フコシル化された抗体は、モノクローナル抗体である。ある局面において、本発明は、ヒト化抗体またはキメラモノクローナル抗体に関する。好ましくは、該ヒト化抗体またはキメラモノクローナル抗体は、AC10、HeFi−1、Ber−H2、Ki−1、Ki−4、HRS−3、Irac、HRS−4、M44、M67、およびBer−H8からなる群から選択されるマウス抗CD30抗体から調製される。別の局面において、本発明は、ヒトモノクローナル抗体に関する。
【0012】
本発明のある態様において、ヒトモノクローナル抗体は、
(a)配列番号1、2および3からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および
(b)配列番号4、5および6からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、
該抗体は、CD30と結合し、フコース残基を欠いている。
【0013】
ある好ましい組み合わせは、
(a)配列番号1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および
(b)配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、を含む。
【0014】
別の好ましい組み合わせは、
(a)配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および
(b)配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、を含む。
【0015】
別の好ましい組み合わせは、
(a)配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および
(b)配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、を含む。
【0016】
別の局面においては、本発明は、CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域、ならびにCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含む、脱フコシル化された抗CD30抗体を提供する。そして、
(a)重鎖可変領域CDR1配列は、配列番号:7、8および9のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
(b)重鎖可変領域CDR2配列は、配列番号:10、11および12のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
(c)重鎖可変領域CDR3配列は、配列番号:13、14および15のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
(a)軽鎖可変領域CDR1配列は、配列番号:16、17および18のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;
(a)軽鎖可変領域CDR2配列は、配列番号:19、20および21のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;そして
(a)軽鎖可変領域CDR3配列は、配列番号:22、23および24のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
該抗体は、CD30と結合し、フコース残基を欠いている。
【0017】
好ましい組み合わせは、
(a)配列番号:7を含むヒト重鎖可変領域CDR1;
(b)配列番号:10を含むヒト重鎖可変領域CDR2;
(c)配列番号:13を含むヒト重鎖可変領域CDR3;
(d)配列番号:16を含むヒト軽鎖可変領域CDR1;
(e)配列番号:19を含むヒト軽鎖可変領域CDR2;および
(f)配列番号:22を含むヒト軽鎖可変領域CDR3、を含む。
【0018】
別の好ましい組み合わせは、
(a)配列番号:8を含むヒト重鎖可変領域CDR1;
(b)配列番号:11を含むヒト重鎖可変領域CDR2;
(c)配列番号:14を含むヒト重鎖可変領域CDR3;
(d)配列番号:17を含むヒト軽鎖可変領域CDR1;
(e)配列番号:20を含むヒト軽鎖可変領域CDR2;および
(f)配列番号:23を含むヒト軽鎖可変領域CDR3、を含む。
【0019】
さらに別の好ましい組み合わせは、
(a)配列番号:9を含むヒト重鎖可変領域CDR1;
(b)配列番号:12を含むヒト重鎖可変領域CDR2;
(c)配列番号:15を含むヒト重鎖可変領域CDR3;
(d)配列番号:18を含むヒト軽鎖可変領域CDR1;
(e)配列番号:21を含むヒト軽鎖可変領域CDR2;および
(f)配列番号:24を含むヒト軽鎖可変領域CDR3、を含む。
【0020】
別の局面において、本発明は、ヒトV4−34またはV3−07遺伝子の生成物である、またはそれに由来する重鎖可変領域を含む、脱フコシル化されたヒト抗CD30抗体を提供する。本発明はまた、ヒトVL15、A27またはL6遺伝子の生成物である、またはそれに由来する軽鎖可変領域を含む、脱フコシル化されたヒト抗CD30抗体を提供する。本発明はさらに、ヒトV4−34またはV3−07遺伝子の生成物である、またはそれに由来する重鎖可変領域、およびヒトVL15、A27またはL6遺伝子の生成物である、またはそれに由来する軽鎖可変領域を含む、脱フコシル化されたヒト抗CD30抗体を提供する。
【0021】
別の局面において、本発明は、抗CD30抗体をコードするイムノグロブリン重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子を含む宿主細胞に関する。該宿主細胞は、フコシルトランスフェラーゼを欠くため、該宿主細胞によって発現される該抗CD30抗体はフコース残基を持たない。好ましくは、前記イムノグロブリン重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子は、ヒトイムノグロブリン重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子である。好ましくは、フコシルトランスフェラーゼは、FUT8である。好ましくは、宿主細胞は、CHO細胞である。
【0022】
別の局面において、本発明は、CD30細胞の成長を阻害する方法を提供する。該方法は、細胞の抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を誘発するのに十分な条件下で、細胞を脱フコシル化された抗CD30抗体に接触させることを含む。該細胞は、例えば、腫瘍細胞である。該抗CD30抗体は、ヒト抗体であることが好ましい。
【0023】
本発明はまた、被験者において、CD30を発現する腫瘍細胞の増殖を阻害する方法を提供する。該方法は、被験者においてCD30を発現する腫瘍細胞の増殖を阻害するのに有効な量の脱フコシル化された抗CD30抗体を、被験者に投与することを含む。好ましくは、抗CD30抗体は、ヒト抗体である。好ましい態様において、腫瘍細胞は、ホジキン病(HD)腫瘍細胞または未分化巨大細胞リンパ腫(ALCL)腫瘍細胞である。
【0024】
本発明の他の特徴および利点については、以下の詳細な説明および限定されることが意図されない実施例において明らかにする。引用文献の内容、ジェンバンク(Genbank)の記載、本明細書において引用する特許および公開されている特許出願は、本明細書において明確に引用によって援用する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、CD30および/またはCD30発現細胞と関連して改良された抗体組成物を提供する。本発明の抗体は、抗体糖鎖上にフコシル残基を欠く。さらに、該抗体は、CD30+細胞の増強された細胞指向性細胞傷害性(ADCC)殺傷性を発揮する。特定の態様において、本発明の抗体は、フコシル化された形態の抗体がCD30+細胞を効果的に殺傷しないであろう条件下で、CD30+細胞を殺傷することができる。別の態様において、本発明の抗体は、フコシル化された形態の抗体と比較して、CD30+細胞の殺傷性を高める。ある態様において、本発明の抗体は、完全ヒト抗体であり、CD30発現細胞に関連したヒト障害の治療処置において特に有用である。フコシル残基を欠く抗CD30抗体を治療処置(例えば、CD30発現細胞に関連する疾患を治療および/または予防するため)に用いる方法もまた本発明に包含される。
【0026】
本発明をより理解しやすくするためにいくつかの用語をまず定義する。さならる定義は、詳細な明細書全体に記載する。
【0027】
用語「CD30」および「CD30抗原」は、本明細書において互換可能に用いられ、細胞によって天然に発現するヒトCD30の変形、アイソフォーム、種ホモログを含む。ヒトCD30タンパク質の完全アミノ酸配列は、Genbank受入番号NP_001234を持つ。ヒトCD30タンパク質の完全cDNA配列は、Genbank受入番号NM_001243を持つ。
【0028】
本明細書において用いられる用語「フコース残基を欠く抗体」および「脱フコシル化された抗体」は、互換可能に用いられており、抗体の糖部分がフコシル残基を含有しない、またはフコシル残基が除去されている抗体を意味している。フコース残基を欠く抗体は、例えば、細胞中の抗体の発現によって、またはフコシル残基を最小化するもしくはそれに付着せず、抗体の糖鎖に付着する系の発現によって、または糖鎖からフコシル残基を除去するようにした抗体の化学的改変(例えば、フコシダーゼによる抗体の処理)によって、作製することができる。そうであるので、用語「フコース残基を欠く」および「脱フコシル化された」は、改変された糖構造を有する抗体を調製するメカニズムに限定されることを意図しない。
【0029】
本明細書において用いられる用語「フコース残基を発現する抗体」および「フコシル化された抗体」は互換可能に用いられており、抗体の糖部分がフコースを含有する抗体を意味することが意図されている。
【0030】
用語「免疫応答」とは、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、およびそれら細胞または肝臓によって産生された可溶性巨大分子(抗体、サイトカインおよび補体を含む)の作用を意味し、その結果、病原体感染、細胞もしくは病原体に侵された組織、癌性細胞の人体からの選択的傷害、その破壊もしくは排除、または自己免疫もしくは病原性炎症の場合には、正常ヒト細胞もしくは組織の選択的傷害、破壊または排除が起こる。
【0031】
本明細書において用いられている用語「エフェクター細胞」は、免疫応答の認識および活性化段階でなく、免疫応答のエフェクター段階に関与する免疫細胞を言う。免疫細胞の例としては、骨髄またはリンパ系由来の細胞、例えばリンパ球(例えば、B細胞及び細胞溶解性T細胞(CTL)を含むT細胞)、キラー細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、単球、好酸球、好中球、多核白血球、顆粒球、マスト細胞、及び好塩基球、挙げられる。いくつかのエフェクター細胞は、特異的Fc受容体を発現し、特異的免疫機能を果たす。好ましい態様において、エフェクター細胞は、ADCCを誘導できる好中球など、抗体依存性、細胞媒介細胞傷害性(ADCC)を誘導することができる。例えば、FcRを発現する単球、マクロファージは、標的細胞の特異的殺傷や、他の免疫系構成成分への抗原提示又は抗原提示細胞への結合に関与している。他の態様においては、エフェクター細胞は、標的抗原または標的細胞を貪食することができる。エフェクター細胞上の特定のFcRの発現は、サイトカインなどの体液性因子により調節することができる。例えば、FcαRIの発現がG−CSFまたはGM−CSFにより上方調節されることがわかっている。この発現亢進により、FcαRI担持細胞の標的に対するエフェクター機能が増す。エフェクター細胞は、標的抗原又は標的細胞を貪食又は溶解することができる。
【0032】
「標的細胞」とは、本発明の組成物(例えば、抗体)の標的となる可能性がある、被験体(例えば、ヒトまたは動物)中の、除去することを望まれるあらゆる細胞または病原体を意味する。例えば、標的細胞は、CD30を発現、または過剰発現する細胞である。
【0033】
用語「抗体依存性細胞傷害性」または「ADCC」は、細胞媒介性の細胞傷害性反応を意味する。そこでは抗CD30抗体が結合した状態のCD30+標的細胞がFcレセプターを保有するエフェクター細胞によって認識され、補体の関与を必要とせずに引き続き溶解される。
【0034】
本明細書において用いられる用語「ADCCを増強させる」(例えば、細胞に関して)は、細胞溶解における、フコシル残基を欠く抗CD30抗体に接触したとき、エフェクター細胞の存在下(例えば、標的細胞:エフェクター細胞の比率1:50)でフコシル化された抗CD30抗体と接触した同じ細胞の細胞殺傷と比較した場合の、あらゆる測定可能な増加を含むことが意図される。例えば、細胞溶解における増加は、少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、250%、300%、または325%である。
【0035】
本明細書において用いられる用語「抗体」は、全抗体、およびそのあらゆる抗原結合フラグメント(すなわち、「抗原結合部分」)またはその一本鎖を含む。「抗体」は、ジスルフィド結合によって内部結合している少なくとも2つの重鎖(H)および軽鎖(L)を含む糖タンパク質およびその抗原結合部分を言う。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においては、Vのように省略する)および重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、3つのドメインCH1、CH2およびCH3からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においては、Vのように省略する)および軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメインCからなる。VおよびV領域はさらに、超可変性の領域、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる部分、より保存されている領域に分散したフレームワーク領域(FR)と呼ばれる部分に分類される。VおよびVのそれぞれは、3つのCDRと4つのFRを含み、アミノ末端からカルボキシ末端に以下の順序で並んでいる。FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、イムノグロブリンと宿主組織もしくはファクターの結合を媒介することもあり、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)や古典的相補系の第1の成分(Clq)を含む。
【0036】
本明細書において用いられている抗体の「抗原結合部分」という用語(単に、「抗体部分」)は、抗原(例えば、CD30)と特異的に結合する能力を保持する1以上のフラグメントを言う。抗体の抗原結合機能は、全長抗体のフラグメントによって達成することができる。用語、抗体の「抗原結合部分」に包含される結合フラグメントの例としては、(i)Fabフラグメント、V、V、CおよびCH1ドメインからなる一価のフラグメント;(ii)F(ab’)フラグメント、ヒンジ領域でのジスルフィドブリッジによって結合した2つのFabフラグメントを含む二価のフラグメント;(iii)VおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の1つの腕のVおよびVドメインからなるFvフラグメント;(v)Vドメインを含むdAbフラグメント(Ward et al., (1989) Nature
341:544-546);および(vi)単離された相補性決定領域(CDR)。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインVおよびVは別個の遺伝子にコードされているが、これらは、組換え方法によって、VおよびV領域が対になって一価の分子(一本鎖Fv(scFv)として知られている)を形成する単一のタンパク質鎖としてそれらを結合する合成リンカーを用いて結合することができる(例えば、Bird et al. (1988) Science
242:423-426;およびHuston et
al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883を参照されたい)。このような一本鎖抗体も、抗体の「抗原結合部分」という用語に包含されるものと、意図されている。これらの抗体フラグメントは、当業者に公知の従来技術を用いて得られ、それらのフラグメントは、インタクト抗体と同じ態様で実用性についてスクリーニングされている。
【0037】
本明細書において用いられている用語「組換えヒト抗体」は、組換え手段によって調製、発現、作出、または単離された全てのヒト抗体、例えば、(a)ヒトイムノグロブリン遺伝子またはそれによって調製されたハイブリドーマ(以下でさらに説明する)のトランスジェニックまたはトランスクロモソーム動物(例えば、マウス)から単離された抗体;(b)ヒト抗体を発現するように形質転換された宿主細胞、例えば、トランスフェクトーマから単離された抗体;(c)組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離した抗体;および(d)ヒトイムノグロブリン遺伝子配列を他のDNA配列にスプライシングすることに関する他のあらゆる手段によって調製、発現、作出、または単離された抗体を含む。そのような組換えヒト抗体は、フレームワーク領域とCDR領域の双方がヒト生殖系列イムノグロブリン配列に由来する可変領域を有する。しかしながら、いくつかの態様において、そのような組換えヒト抗体は、in vitro 突然変異生成を行うことができ(または、ヒトIg配列に遺伝子変異された動物を用いる場合、in vivo 体細胞性突然変異生成)、組換え抗体のVおよびV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VおよびV配列に由来し、またそれに関連するものの、天然にヒト抗体生殖系列レパートリーにin vivoで存在しないことがある。
【0038】
本明細書において用いられている用語「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」は、単一の分子組成物の抗体分子調製物を意味する。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性およびアフィニティーを示す。
【0039】
本明細書において用いられている用語「ヒト抗体」は、フレームワーク領域とCDR領域の双方がヒト生殖系列イムノグロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことが意図されている。さらに抗体が定常領域を含む場合、該定常領域もヒト生殖系列イムノグロブリン配列に由来する。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列イムノグロブリン配列(例えば、in vitro でランダムもしくは部位特異性の突然変異生成、またはin vivoで体細胞性突然変異によって導入された突然変異)によってコードされないアミノ酸残基を含んでもよい。
【0040】
用語「ヒトモノクローナル抗体」は、フレームワーク領域とCDR領域の双方がヒト生殖系列イムノグロブリン配列に由来する可変領域を有する単一の結合特異性を示す抗体を言う。ある態様において、ヒトモノクローナル抗体は、不死化した細胞に融合するヒト重鎖トランスジーンおよび軽鎖トランスジーンを含むゲノムを持つ、トランスジェニック非ヒト動物、例えば、トランスジェニックマウスから得られたB細胞を含むハイブリドーマによって作製される。本明細書において用いられている用語「ヒトモノクローナル抗体」は、組換え手段によって調製、発現、作出、または単離された全てのヒト抗体、例えば、(a)ヒトイムノグロブリン遺伝子またはそれによって調製されたハイブリドーマ(以下でさらに説明する)のトランスジェニックまたはトランスクロモソーム動物(例えば、マウス)から単離された抗体;(b)ヒト抗体を発現するように形質転換された宿主細胞、例えば、トランスフェクトーマから単離された抗体;(c)組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離した抗体;および(d)ヒトイムノグロブリン遺伝子配列を他のDNA配列にスプライシングすることに関する他のあらゆる手段によって調製、発現、作出、または単離された抗体を含む。そのような組換えヒト抗体は、フレームワーク領域とCDR領域の双方がヒト生殖系列イムノグロブリン配列に由来する可変領域を有する。しかしながら、いくつかの態様において、そのような組換えヒト抗体は、in vitro 突然変異生成を行うことができ(または、ヒトIg配列に遺伝子変異された動物を用いる場合、in vivo 体細胞性突然変異生成)、組換え抗体のVおよびV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VおよびV配列に由来し、またそれに関連する一方、天然にヒト抗体生殖系列レパートリーにin vivoで存在しないことがある。
【0041】
本明細書において用いられる用語「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を持つ他の抗体を実質的に含まない抗体(例えば、CD30と特異的に結合する単離された抗体は、CD30以外の抗原と特異的に結合する抗体を実質的に含まない)を意味することが意図されている。しかしながら、ヒトCD30のエピトープ、アイソフォーム、またはバリアントに特異的に結合する単離された抗体は、例えば、他の種(例えば、CD30種ホモログ)からの他の関連抗原に対して交差反応性を有する。さらに、単離された抗体は、他の細胞性物質および/または化学物質も実質的に含まなくてもよい。本発明のある態様において、異なる特異性を有する「単離された」モノクローナル抗体の組み合わせは、十分に確定された組成に組み合わされている。
【0042】
用語「ヒト化抗体」は、マウスのような別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列をヒトフレームワーク配列上に移植した抗体を言う。追加のフレームワーク領域改変も、ヒトフレームワーク配列内部で行うこともできる。
【0043】
用語「キメラ抗体」は、可変領域配列と定常領域配列とが別の種に由来する抗体、例えば、可変領域配列がマウス抗体に由来し、定常領域配列がヒト抗体に由来する抗体を意味する。
【0044】
「エピトープ」と言う用語は、抗体に結合すること、すなわち抗体による特異的結合が可能なタンパク質決定因子を意味する。エピトープは通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面の基からなり、通常特異的な3次元構造的特徴、ならびに特異的な電荷的特徴を有している。高次構造エピトープと非高次構造エピトープとは、後者に対する結合はそうではないが、前者に対する結合は変性溶媒中で失われる点において区別される。
【0045】
本明細書において用いられる「特異的結合」は、所定の抗原に抗体が結合することを意味する。典型的に、抗体は、解離定数(K)10−7M以下で結合するが、所定の抗原に対しては、所定の抗原または関連性の高い抗原以外の非特異性抗原(例えば、BSA、カゼイン)に結合する場合のKの少なくとも2倍低いKで結合する。「抗原を認識する抗体」および「抗原特異的抗体」という表現は、本明細書において、「抗原に特異的に結合する抗体」という表現と互換可能に用いられる。
【0046】
本明細書において使用されている用語「アイソタイプ」は、重鎖定常領域の遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えば、IgMまたはIgGl)を意味する。
【0047】
本明細書において用いられる用語「ベクター」は、それが結合した他の核酸を輸送することのできる核酸分子をいう。ベクターの1つのタイプは、「プラスミド」であり、これは、環状二本鎖DNAのループであって、その中に追加のDNAセグメントをライゲーションできる。別のタイプのベクターは、ウイルスベクターであり、追加のDNAセグメントをウイルスゲノム中にライゲーションできる。ある種のベクターは、それらが導入された宿主細胞中で自律的に複製することができる(例えば、細菌性の複製オリジンを有する細菌性ベクターおよびエピゾーム性哺乳動物用ベクター)。他のベクター(例えば、非エピゾーム性哺乳動物用ベクター)は、宿主細胞への導入に際して宿主細胞のゲノム中にインテグレートされ、それにより、宿主ゲノムと共に複製される。さらに、ある種のベクターは、それらが機能的に結合した遺伝子の発現を指図することができる。かかるベクターは、ここでは、「組換え発現ベクター」(または単に「発現ベクター」)と言う。一般に、組換えDNA技術において有用な発現ベクターは、しばしば、プラスミド形態である。本明細書においては、「プラスミド」と「ベクター」は、プラスミドが最も普通に用いられる型のベクターであるので、互換可能に用いる。しかしながら、本発明は、かかる他の型の発現ベクター、例えば、同等の機能を果たすウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)を包含することを意図している。
【0048】
本明細書において用いられる用語「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)は、組換え発現ベクターが導入された細胞を意味することが意図される。このような用語は、特定の被検細胞のみならず、そのような細胞の子孫を意味することも意図されている。突然変異や環境の影響によって後の世代において特定の変形が生じるかも知れず、そのような子孫は、実際、親細胞と同一ではないかもしれないが、それでもなお本明細書において用いられる用語「宿主細胞」の範囲に含むものとする。組換え宿主細胞としては、例えば、CHO細胞、トランスフェクトーマ、リンパ性細胞が挙げられる。
【0049】
本明細書において用いられる用語「被験体」は、ヒトまたは非ヒト動物のいずれをも含む。用語「非ヒト動物」は、脊椎動物、例えば、哺乳動物および非哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類などを含む。
【0050】
用語「トランスジェニック動物」は、1以上のヒト重鎖および/もしくは軽鎖トランスジーンまたはトランスクロモソーム(その動物の天然のゲノムDNAに導入されている、もしくはされていない)を含むゲノムを有し、完全ヒト抗体を発現することができる非ヒト動物を言う。例えば、トランスジェニックマウスは、CD30抗原および/またはCD30を発現する細胞によって免疫されたとき、マウスがヒト抗CD30抗体を生成することができるように、ヒト軽鎖トランスジーンとヒト重鎖トランスジーンまたはヒト重鎖トランスクロモソームを有することができる。トランスジェニックマウス、例えば、HuMAbマウスの場合、ヒト重鎖トランスジーンをマウスの染色体DNAに統合することができ、または、PCT国際公開WO02/43478号に記載されているトランスクロモソーム(例えば、KM)マウスの場合のようにヒト重鎖トランスジーンは、染色体外部に維持され得る。このようなトランスジェニックおよびトランスクロモソームマウスは、CD30に対する多数のヒトモノクローナル抗体のアイソタイプ(例えば、IgG、IgA、および/またはIgE)を、V−D−J組換え、およびアイソタイプスイッチングを行うことによって生成することができる。
【0051】
以下のサブセクションにおいて、本発明の種々の局面をさらに詳細に説明する。
【0052】
フコース残基を欠き、ADCC活性が増強された抗CD30抗体
本発明は、フコシル化された形態の抗体と比較した場合、CD30を発現する細胞に対する抗体指向性細胞傷害性(ADCC)が増強されている、脱フコシル化された抗CD30抗体に関する。好ましい態様において、本発明の脱フコシル化された抗体は、in vitroでL1236細胞のADCCを誘発するが、抗体濃度0.1μg/mlおよび標的対細胞の比1:50の条件下において、フコシル化された形態の抗体は、ADCCを誘発しない。別の好ましい態様において、本発明の脱フコシル化された抗体は、抗体濃度0.1μg/mlおよび標的対細胞の比1:50の条件下において、L540、L428およびKarpas細胞のin
vitro でのADCCを、フコシル化された形態の抗体と比較して上昇させる。
【0053】
本発明の脱フコシル化された抗体のADCC活性の上昇は、例えば、ADCC活性を、フコシル化された抗体およびフコシル化された形態の抗体について、同じ条件下(例えば、同じ抗体濃度および同じ標的対エフェクター細胞比)で測定したとき、フコシル化された形態の抗体と比較してパーセント細胞溶解の上昇として、定量化することができる。好ましくは、本発明の脱フコシル化された抗CD30抗体は、フコシル化された形態の抗体と比較して、CD30+細胞の細胞溶解を、1.25倍以上(すなわち、脱フコシル化された形態比率対フコシル化された形態の%溶解の比率が少なくとも1.25であることを意味する)、より好ましくは、2倍以上、さらに好ましくは、2.5倍以上、そしてさらにもっと好ましくは、3倍以上増加させている。種々の態様において、脱フコシル化された形態の抗体は、特に、抗体濃度25μg/mlおよび標的対細胞の比1:50の条件下において、フコシル化された形態の抗体と比較して、CD30+細胞の細胞%溶解を、1.25〜3.25倍、好ましくは1.5〜3.25倍、さらに好ましくは、1.61〜3.25、さらにより好ましくは、2.15〜3.25倍、さらにもっと好ましくは、2.63〜3.25倍増加させている。
【0054】
さらに、あるいは別法として、本発明の脱フコシル化された抗体のADCC活性の上昇は、例えば、フコシル化された形態と比較したときの脱フコシル化された形態のEC50値の減少として測定される力価の上昇として定量化することができる。これは、フコシル化された形態の脱フコシル化された形態に対するEC50比として定量することができる。好ましくは、CD30+細胞のADCCに関するフコシル化された形態の脱フコシル化された形態に対するEC50比率は、3以上(すなわち、脱フコシル化された形態のEC50は、フコシル化された形態のEC50より少なくとも3倍低いことを意味する)、より好ましくは4以上、さらに好ましくは5以上、7以上、10以上、15以上、または20以上である。種々の態様において、CD30+細胞のADCC活性のフコシル化された形態の脱フコシル化された形態に対するEC50比率は、2〜27.1、好ましくは4〜27.1、さらに好ましくは4.7〜27.1、さらにより好ましくは7.8〜27.1、そしてさらにより好ましくは11.1〜27.1である。好ましくは、EC50値は、標的対エフェクター細胞比1:50、抗体濃度0.0001μg/ml乃至10μg/ml以上でのADCCアッセイにおいて測定される。
【0055】
本発明のADCCアッセイに用いることができ、本発明の脱フコシル化された抗体がフコシル化された抗体と比べてADCC活性の上昇を示すCD30+細胞株の例としては、L540細胞(ヒトホジキンリンパ腫;DSMZ寄託番号:ACC72)、L428細胞(ヒトホジキンリンパ腫;DSMZ寄託番号:ACC197)、L1236細胞(ヒトホジキンリンパ腫;DSMZ寄託番号:ACC530)およびKarpas細胞(ヒトT細胞リンパ腫;DSMZ寄託番号:ACC31)が挙げられる。脱フコシル化された抗CD30抗体によるADCC効果の上昇の結果、フコシル化された形態の抗体を用いた場合にはADCCは認められないであろう場合のあらゆる濃度で、ADCC活性がCD30+細胞に効果が及ぼされた。例えば、標的対エフェクター細胞比1:50でのin
vitro ADCCアッセイにおいて、脱フコシル化された抗CD30抗体によるADCCは、CD30+細胞株L1236を用いて、抗体濃度0.005μg/mlと低い濃度で観察されたが、一方、フコシル化された抗CD30抗体を用いた場合、濃度0.1μg/mlと高い濃度でADCC活性が検出された。
【0056】
抗CD30抗体の脱フコシル化
抗CD30抗体(例えば、ネズミ抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体およびヒト抗体)は当該技術分野において公知であり、本発明に用いてもよい。本発明の抗CD30抗体は、該抗体がフコシル残基を欠くように改変される。抗体は、種々の方法の1つでフコシル残基を欠くように改変することができる。例えば、抗体は、組換えDNA技術を用いて、フコシル残基の糖鎖への追加が阻害されるように改変されたグリコシル化メカニズムを有する細胞内で発現させることができる。さらに、または別法として、抗体は、フコシル残基の化学的除去によって脱フコシル化することができる。
【0057】
ある形態において、該抗体は、細胞株がそれらの糖内にフコースを持たないタンパク質を作製するようにフコシルトランスフェラーゼ酵素を欠失している細胞内で発現される。例えば、細胞株Ms704、Ms705およびMs709は、フコシルトランスフェラーゼ遺伝子FUT8(アルファ(1,6)フコシルトランスフェラーゼ)を欠いており、MS704、Ms705およびMs709細胞株で発現した抗体がその糖上にフコースを欠いている。Ms704、Ms705およびMs709のFUT8−/−細胞株は、2つのリプレイスメントベクター(米国特許公報20040110704(Yamane et
al.)およびYamane-Ohnuki et al.
(2004) Biotechnol
Bioeng 87:614-22)を用いて、CHO/DG44細胞中でFUT8遺伝子を標的破壊することによって作製した。別の例として、EP1,176,195(Hanai et
al.)は、機能的に破壊されたFUT8遺伝子を有する細胞株を記載している。この遺伝子はフコシルトランスフェラーゼをコードしており、このような細胞株中で発現した抗体は、アルファ1,6結合関連酵素の減少または消失によって低フコシル化を示している。Hanai et
al.は、抗体のFc領域に結合するかまたはその酵素活性を有していないN−アセチルグルコサミンにフコースを付加する酵素活性が本質的に低い細胞株、例えば、ラットミエローマ細胞株YB2/0(ATCC CRL1662)についても述べている。PCT公開公報WO03/035835(Presta)には、フコースをAsn(297)結合糖に付着させる能力が低下しており、その結果、その宿主細胞中で発現した抗体のフコシル化が低下することになる変形CHO細胞やLec13細胞について記載されている(同様に、Shields, R.L. et al. (2002) J.
Biol. Chem. 277:26733-26740を参照)。PCT公開公報WO99/54342(Umana et al.)は、糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼ(例えば、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現するように工学的処理を行った細胞株を記載しており、この工学的処理を行った細胞株中で発現した抗体が、二分性GlcNac構造の増加を示し、その結果、抗体のADCC活性が増加することになる(同様に、Umana et
al. (1999) Nat.
Biotech. 17:176-180参照)。
【0058】
別の態様において、抗CD30抗体が発現し、そのフコシル残基は、フコシダーゼ酵素を用いて切断することができる。例えば、当該フコシダーゼアルファ−L−フコシダーゼは、抗体からフコシル残基を除去する(Tarentino, A.L. et al. (1975) Biochem. 14:5516-23)。
【0059】
さらに別の態様において、抗体を他の形態のグリコシル化修飾する。例えば、非グリコシル化抗体を作製できる(すなわち、当該抗体はグリコシル化を欠いている)。このような糖修飾は、例えば、抗体配列内部の1個以上のグリコシル化部位を改変することによって達成できる。例えば、1個以上のアミノ酸置換を作製し、その結果、1個以上の可変領域フレームワークグリコシル化部位を消失させ、それによってその部位でのグリコシル化を消失させる。このような非グリコシル化は、抗原に対する抗体のアフィニティーを高めることができる。このようなアプローチは、さらに詳細に、米国特許第5,714,350号および第6,350,861号(Co et al.)に記載されている。
【0060】
抗CD30抗体上のフコシル残基の欠落の特徴
本発明の抗体は、例えば、Fc部分の糖鎖においてフコシル残基を欠いている。APTSレーザー誘導蛍光によるAPTSキャピラリー電気泳動法などの当該技術分野において公知の標準的な技法によって、抗体におけるフコシル残基の欠落を調べることができる。簡単に述べれば、精製された抗CD30抗体のN−結合オリゴ糖は、ペプチドN−グリカナーゼ(Prozyme)を添加して、一晩インキュベートすることによって放出することができる。糖を再懸濁させ、8−アミノピレン−1,3,6−トリスルホネート(APTS)を用いて、フコシル残基の脱アシル化および損失を最小限にする穏やかな還元性アミノ化の条件下で誘導体化する。反応付加物を、レーザー誘導蛍光検出装置(Beckman Coulter)を用いたキャピラリー電気泳動法により分析する。フコースの欠落は、同じ抗体でフコースを含有するものと比較した電気泳動におけるシフトによって観察することができる。抗CD30抗体上のフコースの欠落を調べるための別の技法は、HPLCを用いた単糖分析である。CD30結合を測定する好適なアッセイは、実施例においてさらに述べる。
【0061】
CD30+細胞の抗体依存性細胞殺傷の特徴
脱フコシル化された抗CD30抗体を試験し、貪食作用およびCD30を発現する細胞の殺傷を媒介する能力について試験することができる。ある態様において、脱フコシル化された抗CD30抗体は、フコースを含有する同じ抗体と同じ濃度で比較した場合、CD30を発現する細胞の殺傷性を増強させる。別の態様において、脱フコシル化された抗CD30抗体は、CD30を発現する細胞の殺傷を誘発し、フコースを含有する同じ抗体は、同じ濃度で殺傷を誘発しない。
【0062】
モノクローナル抗体のADCC活性は、確立されたin vitroアッセイによって試験することができる。例としては、クロム放出ADCCアッセイを用いることができる。簡単に説明すると、健康なドナーから採取した末梢血単核細胞(PBMC)またはその他のエフェクター細胞を、フィコールハイパックで密度遠心分離してから混入赤血球を細胞溶解して精製することができる。洗浄したPBMCを、10%熱不活化ウシ胎仔血清を補足したRPMI中に懸濁し、様々なエフェクター細胞対腫瘍細胞比(エフェクター細胞:腫瘍細胞)で51Cr標識CD30発現細胞と混合することができる。その後、各種濃度の抗CD30 抗体をを加えることができる。アイソタイプが一致する抗体を陰性対照として用いることができる。アッセイは、37℃で4〜18時間行うことができる。培養上清への51Cr放出を測定することにより、サンプルの細胞溶解についてアッセイすることができる。抗CD30モノクローナルを互いに組み合わせて、細胞溶解が複数のモノクローナル抗体で促進されるかどうかを検査することもできる。
【0063】
CD30発現細胞の貪食作用および細胞殺傷の媒介能に関して、抗CD30抗体を試験するのに使用することができる別の方法は、時間決定フルオロメトリーアッセイである。簡単に説明すると、CD30発現細胞に、細胞膜を貫通する蛍光発光増強リガンド(BATDA)のアセトキシメチルエステルを付加する。細胞内では、エステル結合が加水分解され、該化合物は、もはや細胞膜を通過することができない。次に、抗CD30抗体を種々の濃度で添加することができる。溶解に続いて、ユーロピウム溶液(Perkin Elmer)を添加する。あらゆるフリーのリガンドがユーロピウムを結合させ、高度に蛍光性の安定したキレート(EuTDA)を生成する。それをマクロプレートリーダー(Perkin Elmer)で読み取ることができる。測定されたシグナルは、溶解した細胞に相関している。
【0064】
抗CD30抗体をin vivoモデル(例えば、マウス)において検査し、例えば、腫瘍細胞などのCD30発現細胞の貪食作用および細胞殺傷の媒介の有効性を調べることもできる。このような抗体は、例えば、以下の基準に基づいて選択されてよいが、それに限定されることを意図しない。
1)CD30発現生細胞への結合;
2)CD30への結合の高アフィニティ;
3)CD30上の固有エピトープへの結合(相補的活性を有するモノクローナル抗体を組み合わせて使用した場合に同一のエピトープへの結合と競合する可能性を除くため);
4)CD30を発現する細胞によるオプソニン処理;
5)ヒトエフェクター細胞存在下における、CD30を発現する細胞の増殖阻害、貪食作用および/または細胞殺傷のin vitro媒介。
【0065】
本発明の好ましいヒトモノクローナル抗体は、これらの基準の一つ以上に合致する。特定の態様では、モノクローナル抗体を組み合わせて、例えば、二種類以上の抗CD30モノクローナル抗体またはそのフラグメントを含む薬学的組成物として用いる。例えば、異なるが相補的な活性を有するヒト抗CD30モノクローナル抗体を一種類の治療法に組み合わせて、望ましい治療または診断効果を達成することができる。この具体例は、エフェクター細胞の存在下で標的細胞の高効率的な殺傷を媒介する抗CD30ヒトモノクローナル抗体と、CD30を発現する細胞の増殖を阻害する別の抗CD30モノクローナル抗体とを組み合わせて有する組成物であってよいだろう。
【0066】
CD30に対する結合の特徴
本発明の抗体は、CD30への結合について、当該技術分野において公知の標準的なアッセイ、例えば、ELISA、FACS分析および/またはBiacore分析などによって試験することができる。典型的なELISAにおいては、簡単に説明すると、マイクロタイタープレートをPBS中0.25μg/mLの精製CD30でコーティングし、次に、PBS中5%のウシ血清アルブミンでブロックする。抗体希釈物を各ウェルに添加し、37℃で1〜2時間インキュベートする。プレートをPBS/Tweenで洗浄し、次に、アルカリホスファターゼ結合第2試薬(例えば、ヒト抗体用には、ヤギ抗ヒトIgG Fc−特異的ポリクローナル試薬)とともに37℃で1時間、インキュベートする。洗浄後、プレートをpNPP基質(1mg/mL)で発色させ、OD406−650で分析する。
【0067】
モノクローナル抗体とCD30を発現する生細胞の結合を確認するために、フローサイトメトリーを用いることができる。フローサイトメトリープロトコルの典型的な(但し、これに限定されない)例では、CD30を発現する細胞株(標準的な成長条件下で成長)を、0.1%BSAおよび20%マウス血清を含有する各種濃度のモノクローナル抗体のPBS溶液と混合し、37℃で1時間インキュベートする。洗浄後、細胞を、蛍光標識二次抗体(例えば、抗ヒトIgG抗体)と、一次抗体染色と同一の条件下で反応させる。サンプルを、光および側方散乱特性を用いて細胞一個ずつをゲート制御する機器FACScanで分析することができる。蛍光顕微鏡を用いた代替検定法をフローサイトメトリーアッセイに(追加してまたはその代わりに)用いてよい。細胞の染色は上述の通り正確に行い、蛍光顕微鏡で検査することができる。この方法により個々の細胞の可視化が可能になるが、抗原の濃度により感度が減少しているかもしれない。
【0068】
抗CD30ヒトIgGは、さらに、ウェスタンブロッティングによりCD30抗原との反応性を試験できる。例えば、CD30発現細胞からの細胞抽出物を調製し、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけることができる。電気泳動後、分離された抗原をニトロセルロース膜に移し、20%マウス血清でブロッキングし、検査対象のモノクローナル抗体でプローブする。抗体の結合は、アルカリホスファターゼに結合した抗種特異性二次抗体を用いて検出することができ、BCIP/NBT基質タブレット(Sigma Chem. Co., St. Louis, MO)で展開することができる。CD30に対する抗体の結合能を評価するための、RIAやBiacore分析をはじめとした他の技法が当該技術分野において公知である。CD30結合を測定するための好適なアッセイは、実施例に詳細に説明する。
【0069】
キメラまたはヒト化抗CD30抗体
いくつかの態様において、本発明の脱フコシル化された抗CD30抗体は、キメラまたはヒト化抗体である。このような抗体は、マウス抗体をキメラ抗体またはヒト化抗体に変換するための、当該技術において利用可能な、確立された処置によってマウス抗CD30抗体を用いて調製することができる。そのような抗CD30抗体の例としては、限定されないが、AC10、HeFi−1、Ber−H2、Ki−1、Ki−4、HRS−3、Irac、HRS−4、M44、M67、およびBer−H8モノクローナル抗体が含まれる。さらにヒト化抗CD30抗体は、PCT国際公開公報WO02/4661に記載がある。
【0070】
ヒトモノクローナル抗CD30抗体
本発明の好ましい抗体は、ヒト抗CD30モノクローナル抗体である。ヒト抗CD30モノクローナル抗体の例としては、PCT国際公開WO03/059282号にもともと記載されていたように、単離され、構造的に特徴付けられている5F11、17G1、および2H9抗体が挙げられる。5F11、17G1、および2H9のVアミノ酸配列を、配列番号:1、2および3にそれぞれ示す。5F11、17G1、および2H9のVアミノ酸配列を配列番号:4、5および6にそれぞれ示す。
【0071】
これらの抗体のそれぞれがCD30に結合することができれば、VおよびV配列を「混合して、一致させ」、本発明の他の抗CD30結合分子を作製することができる。このような「混合して、一致させた」抗体のCD30結合は、上記の結合アッセイを用いて、実施例において試験することができる(例えば、FACSまたはELISA)。好ましくは、VおよびV鎖を混合して、一致させ、特定のV/VペアリングからのV配列を構造的に類似するV配列と置き換えることができる。同様に、特定のV/VペアリングからのV配列を構造的に類似するV配列と置き換えることができる。例えば、5F11および2H9のV配列は、混合して一致させるのに特に適している。なぜならこれらの抗体は、同じ生殖系列配列(V4−34)に由来するV配列を用いており、したがってそれらは構造的類似性を示すからである。
【0072】
特定の態様において、本発明は、脱フコシル化されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提供する。それは、以下を含む。
(a)配列番号:1、2および3からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および、
(b)配列番号:4、5および6からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域。該抗体は、ヒトCD30に特異的に結合する。
【0073】
好ましくは、重鎖および軽鎖の組み合わせは、以下を含む。
(a)配列番号:1のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および(b)配列番号:4のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または、
(a)配列番号:2のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および(b)配列番号:5のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または、
(a)配列番号:3のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;および(b)配列番号:6のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0074】
別の局面において、本発明は、5F11、17G1および2H9の重鎖および軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3、またはその組み合わせを含む、脱フコシル化された抗体を提供する。5F11、17G1および2H9のアミノ酸配列を配列番号:7、8および9にそれぞれ示す。5F11、17G1および2H9のVCDR2のアミノ酸配列を配列番号:10、11および12にそれぞれ示す。5F11、17G1および2H9のVCDR3のアミノ酸配列を配列番号:13、14および15にそれぞれ示す。5F11、17G1および2H9のVCDR1のアミノ酸配列を配列番号:16、17および18にそれぞれ示す。5F11、17G1および2H9のVCDR2のアミノ酸配列を配列番号:19、20および21にそれぞれ示す。5F11、17G1および2H9のVCDR3のアミノ酸配列を配列番号:22、23および24にそれぞれ示す。CDR領域を、Kabatシステム(Kabat, E. A., et al.
(1991) Sequences of
Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition,
U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242)を用いて表示する。
【0075】
これらの抗体のそれぞれがCD30に結合することができ、抗原結合特異性が主にCDR1、2および3領域によって提供される場合、VCDR1、CDR2、およびCDR3配列およびVkCDR1、2および3配列は、「混合して、一致させ」ることができる(すなわち、各抗体がVCDR1、2および3配列およびVkCDR1、2および3配列が、異なる抗体からのCDRを混合して一致させることができる)、本発明の他の抗CD30結合分子を作製することができる。そのような「混合して、一致させた」抗体のCD30結合は、上記の結合アッセイを用いて、当該技術分野において公知の、例えば、FACS分析やELISAアッセイによって試験することができる。好ましくは、VCDR配列を混合して、一致させ、特定のV配列からのCDR1、CDR2および/またはCDR3配列を構造的に類似するCDR配列と置き換える。同様に、VCDR配列を混合して、一致させ、特定のV配列からのCDR1、CDR2および/またはCDR3配列を構造的に類似するCDR配列と置き換える。1以上のVおよび/またはVCDR領域配列を、本明細書に開示されているモノクローナル抗体5F11、17G1および2H9のCDR配列からの構造的に類似する配列と置き換えることによって、新規なVおよびV配列を作製することができることが当業者にとっては、容易に明らかであろう。
【0076】
したがって、別の局面において、本発明は、以下を含む、脱フコシル化されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分を含む。
(a)配列番号:7、8および9からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1;
(b)配列番号:10、11および12からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;
(c)配列番号:13、14および15からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3;
(d)配列番号:16、17および18からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1;
(e)配列番号:19、20および21からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;および
(f)配列番号:22、23および24からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3。該抗体は、CD30に特異的に結合する。
【0077】
好ましい態様において、該抗体は、
(a)配列番号:7を含むヒト重鎖可変領域CDR1;
(b)配列番号:10を含むヒト重鎖可変領域CDR2;
(c)配列番号:13を含むヒト重鎖可変領域CDR3;
(d)配列番号:16を含むヒト軽鎖可変領域CDR1;
(e)配列番号:19を含むヒト軽鎖可変領域CDR2;および
(f)配列番号:22を含むヒト軽鎖可変領域CDR3、を含む。
【0078】
別の好ましい態様において、該抗体は、
(a)配列番号:8を含むヒト重鎖可変領域CDR1;
(b)配列番号:11を含むヒト重鎖可変領域CDR2;
(c)配列番号:14を含むヒト重鎖可変領域CDR3;
(d)配列番号:17を含むヒト軽鎖可変領域CDR1;
(e)配列番号:20を含むヒト軽鎖可変領域CDR2;および
(f)配列番号:24を含むヒト軽鎖可変領域CDR3、を含む。
【0079】
別の好ましい態様において、該抗体は、
(a)配列番号:9を含むヒト重鎖可変領域CDR1;
(b)配列番号:12を含むヒト重鎖可変領域CDR2;
(c)配列番号:15を含むヒト重鎖可変領域CDR3;
(d)配列番号:18を含むヒト軽鎖可変領域CDR1;
(e)配列番号:21を含むヒト軽鎖可変領域CDR2;および
(f)配列番号:24を含むヒト軽鎖可変領域CDR3、を含む。
【0080】
特定の生殖系列配列を有する抗体
いくつかの態様において、本発明の脱フコシル化された抗体は、特定の生殖系列重鎖イムノグロブリン遺伝子からの重鎖可変領域、および/または、特定の生殖系列軽鎖イムノグロブリン遺伝子からの軽鎖可変領域を含む。
【0081】
例えば、好ましい態様において、本発明は、ヒトV4−34遺伝子の生成物である、またはそれに由来する重鎖可変領域を含む、脱フコシル化されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提供する。該抗体は、CD30に特異的に結合する。別の好ましい態様において、本発明は、ヒトV3−07遺伝子の生成物である、またはそれに由来する重鎖可変領域を含む、脱フコシル化されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提供する。該抗体は、CD30に特異的に結合する。別の好ましい態様において、本発明は、ヒトVL15遺伝子の生成物である、またはそれに由来する軽鎖可変領域を含む、脱フコシル化されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提供する。該抗体は、CD30に特異的に結合する。別の好ましい態様において、本発明は、ヒトVA27遺伝子の生成物である、またはそれに由来する軽鎖可変領域を含む、脱フコシル化されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提供する。該抗体は、CD30に特異的に結合する。別の好ましい態様において、本発明は、ヒトVL6遺伝子の生成物である、またはそれに由来する軽鎖可変領域を含む、脱フコシル化されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提供する。該抗体は、CD30に特異的に結合する。
【0082】
さらに別の好ましい態様において、本発明は、脱フコシル化されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提供する。該抗体は、
(a)ヒトV4−34または3−07遺伝子(配列番号25および26にそれぞれ記載のアミノ酸配列をそれぞれコードする)の生成物である、またはそれに由来する重鎖可変領域を含み;
(b)ヒトVL15、A27またはL6遺伝子(配列番号27、28および29にそれぞれ記載のアミノ酸配列をそれぞれコードする)の生成物である、またはそれに由来する軽鎖可変領域を含み;
(c)ヒトCD30に特異的に結合する。
【0083】
好ましいVおよびV生殖系列の組み合わせは、V4−34とVL15である。VおよびVとしてV4−34とVL15をそれぞれ有する抗体の例としては、5F11抗体がある。他の好ましいVおよびV生殖系列の組み合わせは、V3−07とVA27である。VおよびVとしてV3−07とVA27をそれぞれ有する抗体の例としては、17G1抗体がある。他の好ましいVおよびV生殖系列の組み合わせは、V4−34およびVL6である。VおよびVとしてV4−34およびVL6をそれぞれ有する抗体の例としては、2H9抗体がある。
【0084】
本明細書で用いられるヒト抗体は、該抗体の可変領域がヒト生殖系列イムノグロブリン遺伝子を用いる系から得られる場合、特定の生殖系列配列の「生成物である」または「それに由来する」重鎖または軽鎖可変領域を含む。そのような系は、対象の抗原を有するヒトイムノグロブリン遺伝子をもつトランスジェニックマウスを免疫すること、または、ファージ上に提示されたヒトイムノグロブリン遺伝子ライブラリーをスクリーニングすることを含む。ヒト生殖系列イムノグロブリン配列の「生成物である」または「それに由来する」ヒト抗体は、ヒト抗体のアミノ酸配列と、ヒト生殖系列イムノグロブリンのアミノ酸配列を比較し(例えば、V塩基データベースを用いる)、配列においてヒト抗体の配列に最も近いヒト生殖系列イムノグロブリン配列を選択することによって(すなわち、最大パーセント(%)同一性)、同定することができる。特定のヒト生殖系列イムノグロブリン配列の「生成物である」または「それに由来する」ヒト抗体は、例えば、天然に存在する体細胞性突然変異によって、または部位指向性突然変異の意図的な導入によって、生殖配列と比較してアミノ酸の相違を含有するかもしれない。しかしながら、選択されたヒト抗体は、ヒト生殖系列イムノグロブリン遺伝子がコードするアミノ酸配列の配列に対してアミノ酸配列において、一般的に90%以上の同一性を有し、他の種の生殖系列(例えば、ネズミ生殖系列配列)イムノグロブリンアミノ酸配列と比較した場合、ヒト抗体をヒトであると同定するアミノ酸残基を含有する。いくつかの場合には、ヒト抗体は、生殖系列イムノグロブリン遺伝子によってコードされたアミノ酸配列において、95%以上、さらに96%、97%、98%、または99%以上の同一性を有することがある。典型的に、特定のヒト生殖系列配列に由来するヒト抗体は、ヒト生殖系列イムノグロブリン遺伝子によってコードされたアミノ酸配列と10アミノ酸以下の相違をもつ。ある場合には、ヒト抗体は、ヒト生殖系列イムノグロブリン遺伝子によってコードされたアミノ酸配列と5以下、またさらに、4、3、2または1以下のアミノ酸の相違をもつ。
【0085】
相同抗体
さらに別の態様において、本発明の脱フコシル化された抗体は、本明細書に記載の好ましい抗体のアミノ酸配列に相同なアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖可変領域を含む。該抗体は、本発明の抗CD30抗体の望ましい機能的特性を維持している。
【0086】
例えば、本発明は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含む、脱フコシル化されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提供する。
(a)重鎖可変領域は、配列番号:1、2および3からなる群から選択されるアミノ酸配列に80%以上相同なアミノ酸配列を含み、
(b)軽鎖可変領域は、配列番号:4、5および6からなる群から選択されるアミノ酸配列に80%以上相同なアミノ酸配列を含み、
(c)抗体は、ヒトCD30に特異的に結合する。
【0087】
別の態様において、Vおよび/またはVアミノ酸配列は、上記の配列に85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%相同であればよい。上記の配列のVおよびV領域に対して高い(すなわち、80%以上)の相同性を有するVおよびV領域を有する抗体は、配列番号:1〜6をコードする核酸分子の1以上の突然変異生成(例えば、部位指向性またはPCR媒介性突然変異生成)によって取得し、その後、本明細書に記載の結合アッセイを用いてコードされた改変抗体を、維持する機能(すなわち、ヒトCD30への結合)について試験することができる。配列番号1〜6をコードする核酸分子は、配列番号30〜35に見出すことができる。
【0088】
本明細書において用いられているように、アミノ酸配列間のパーセントホモロジーは、2つの配列間のパーセント同一性と等しい。2つの配列間のパーセント同一性は、当該配列が共有する同一の位置数の関数である(すなわち、%相同性=同一位置数#/位置数の合計#×100)、ギャップの数、各ギャップの長さを考慮する。このことは、2つの配列の任意の配列比較のために導入される必要がある。配列同士の比較および2つの配列間のパーセント同一性の測定は、数学的アルゴリズムを用いて行うことができる。それには、限定されないが下記のものを含む。
【0089】
2つのヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、NWSgapdnaを用いたGCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comから利用可能)のGAPプログラムを用いて測定することができる。CMPマトリックスおよびギャップ重量は、40、50、60、70または80であり、長さ重量(length weight)は1、2、3、4、5または6である。2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、E. MeyersおよびW. Millerのアルゴリズムを用いて測定することもできる(Comput. Appl. Biosci., 4:11-17 (1988))、それは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれており、PAM120重量残基表、ギャップ長ペナルティー12およびギャップペナルティー4を用いる。さらに、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、NeedlemanとWunsch (J. Mol. Biol. 48:444-453 (1970)) のアルゴリズムを用いて行うことができる。それは、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラム(http://www.gcg.comから利用可能)に組み込まれており、Blossum62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれかを用いる。ギャップ重量は16、14、12、10、8、6または4であり、長さ重量(length weight)は1、2、3、4、5または6である。
【0090】
2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、E. MeyersおよびW. Millerのアルゴリズムを用いて測定することができる(Comput. Appl. Biosci., 4:11-17 (1988))、それは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれており、PAM120重量残基表、ギャップ長ペナルティー12およびギャップペナルティー4を用いる。さらに、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、NeedlemanとWunsch (J. Mol. Biol. 48:444-453 (1970))のアルゴリズムを用いて行うことができる。それは、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラム(http://www.gcg.comから利用可能)に組み込まれており、Blossum62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれかを用いる。ギャップ重量は16、14、12、10、8、6または4であり、長さ重量(length weight)は1、2、3、4、5または6である。
【0091】
さらにまたは別法として、本発明のタンパク質配列は、さらに「クエリー配列」として用いて、例えば、関連する配列を同定するために、公的なデータベースを検索することができる。そのような検索は、XBLASTプログラム(バージョン2.0)(Altschul, et al. (1990) J.
Mol. Biol. 215:403-10)を用いて行うことができる。BLASTタンパク質検索は、XBLASTプログラム(スコア=50、ワード長=3)を用いて行い、本発明の抗体分子に相同なアミノ酸配列を取得することができる。比較の目的で、ギャップのある配列比較をするために、Altschul et al., (1997) Nucleic
Acids Res. 25(17):3389-3402に記載されているようにGapped BLASTを用いることができる。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを用いる場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメーターを用いることができる。http://www.ncbi.nlm.nih.gov.を参照されたい。
【0092】
保存的改変をもつ抗体
いくつかの態様において、本発明の脱フコシル化された抗体は、CDR1、CDR2およびCDR3配列を有する重鎖可変領域およびCDR1、CDR2およびCDR3配列を有する軽鎖可変領域を含む。これらのCDR配列の1以上は、本明細書に記載の好ましい抗体(例えば、5F11、17G1および2H9抗体)またはそれらの保存的改変体に基づいて、特定のアミノ酸配列を含み、該抗体は、本発明の抗CD30抗体の望ましい機能的特性を維持している。したがって、本発明は、CDR1、CDR2およびCDR3配列を有する重鎖可変領域ならびにCDR1、CDR2およびCDR3配列を有する軽鎖可変領域を含む、脱フコシル化されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提供する。尚、
(a)重鎖可変領域CDR3配列は、配列番号:9、12または15のアミノ酸配列からなる群から選択されたアミノ酸配列およびその保存的改変を含み;
(b)軽鎖可変領域CDR3配列は、配列番号:18、21または24のアミノ酸配列からなる群から選択されたアミノ酸配列およびその保存的改変を含み;
(c)抗体は、ヒトCD30に特異的に結合する。
【0093】
好ましい態様において、重鎖可変領域CDR2配列は、配列番号:8、11または14からなる群から選択されるアミノ酸配列、およびそれらの保存的改変を含み;軽鎖可変領域CDR2は、配列番号:17、20または23からなる群から選択されるアミノ酸配列、およびそれらの保存的改変を含む。別の好ましい態様において、重鎖可変領域CDR1は、配列番号:7、10または13からなる群から選択されるアミノ酸配列およびそれらの保存的改変を含み、軽鎖可変領域CDR1は、配列番号:16、19または22からなる群から選択されるアミノ酸配列およびそれらの保存的改変を含む。
【0094】
本明細書において用いられる用語「保存的配列改変」は、アミノ酸配列を含有する抗体の結合特性に有意な影響および変更をきたさないアミノ酸の改変を意味することが意図される。そのような保存的改変は、アミノ酸の置換、追加、および欠失を含む。改変は、当該技術において公知の標準的な技法(例えば、部位指向性の突然変異生成およびPCR媒介性の突然変異生成)によって、本発明の抗体に導入することができる。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基を類似の側鎖をもつアミノ酸残基と置換するものである。類似の側鎖をもつアミノ酸残基のファミリーは、当該技術において定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)をもつアミノ酸、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)をもつアミノ酸、非電化極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)をもつアミノ酸、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)をもつアミノ酸、ベータ分枝状側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)をもつアミノ酸、および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)をもつアミノ酸を含む。したがって、本発明の抗体のCDR領域内の1以上のアミノ酸残基を、同じ側鎖ファミリーの他のアミノ酸残基と置換し、その変更された抗体を、維持された機能(すなわち、上記(i)乃至(iv)に記載の機能)について、本明細書に記載の機能性アッセイを用いて調べることができる。
【0095】
別法として、別の態様において、突然変異を、抗CD30抗体がコードする配列の全部もしくは一部にそってランダムに、例えば、飽和突然変異誘発によって、導入することができる。そして得られた保存された抗CD30抗体をスクリーニングして、結合活性を調べることができる。
【0096】
本発明の抗CD30抗体と同じエピトープに結合する抗体
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の5F11、17G1または2H9抗体と同じエピトープに結合する他のヒト抗体など、ここに提供する本発明の種々の抗CD30モノクローナル抗体に結合するのと同じエピトープに結合する脱フコシル化された抗体を提供する。そのような更なる抗体は、本発明の他の抗体、例えば、5F11、17G1または2H9に交差競合する(例えば、統計学的に有意なやり方で結合を競合的に阻害する)能力に基づいて、標準的なCD30結合アッセイにおいて、同定することができる。試験抗体が、例えば、5F11、17G1または2H9のヒトCD30への結合を阻害する能力は、試験抗体が、ヒトCD30に結合する抗体と競合することができること、例えば、非限定的な理論によれば、そのような抗体が同じ、もしくは関連する(例えば、構造的に類似し、空間的に近い)、競合する抗体であるヒトCD30のエピトープと結合すること、を示すものである。好ましい態様において、ヒトCD30上のエピトープと同じ抗体に結合する脱フコシル化された抗体、5F11、17G1または2H9などは、ヒトモノクローナル抗体である。そのようなヒトモノクローナル抗体は、PCT国際公開03/059282号に記載のようにして調製および単離することができる。
【0097】
工学処理された、改変された抗体
本発明の脱フコシル化された抗体は、さらに、本明細書に開示されている1以上のVおよび/またはV配列を有する抗体を開始物質として用いて、改変された抗体を工学的処理することによって調製することができる。その改変された抗体は、開始抗体から特性を改変しておいてもよい。抗体は、1つまたは双方の可変領域(すなわち、Vおよび/またはV)内、例えば、1以上のCDR領域内および/または1以上のフレームワーク領域内の1以上の残基を改変することによって、工学的処理することができる。さらにまたは別法として、抗体は、定常領域内で残基を改変することによって、工学的に処理して、例えば、抗体のエフェクター機能を変更することができる。
【0098】
行うことが可能な可変領域工学的処理の1つのタイプは、CDRグラフティングである。抗体は、標的抗原と、主に6つの重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)中に位置づけられたアミノ酸残基を介して相互作用する。このため、CDR内のアミノ酸配列は、個々の抗体間で、CDRの外部よりも多様性を持つ。CDR配列は、大半の抗体−抗原相互作用を担うので、特定の天然に存在する抗体の特性に類似した組換え抗体を、異なる特性をもつ他の抗体からフレームワーク配列上に移植された特定の天然に存在する抗体からCDR配列を含む発現ベクターを構築することによって、発現させることができる(例えば、Riechmann, L. et al. (1998) Nature 332:323-327; Jones, P. et al.
(1986) Nature 321:522-525;
Queen, C. et al. (1989) Proc. Natl. Acad.
See. U.S.A. 86:10029-10033; 米国特許第5,225,539号(Winter)および米国特許第5,530,101号;第5,585,089号;第5,693,762号;および第6,180,370(Queen et al.)参照)。
【0099】
したがって、本発明の別の態様は、脱フコシル化されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分に関する。それは、それぞれ配列番号:7、8および9、配列番号:10、11および12、配列番号:13、14および15からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域、ならびにそれぞれ配列番号:16、17および18、配列番号:19、20および21、配列番号:22、23および24からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。したがって、モノクローナル抗体5F11、17G1または2H9のVおよびVCDR配列を含有するそのような抗体は、これらの抗体のフレームワーク配列とは異なるものをさらに含有してもよい。
【0100】
そのようなフレームワーク配列は、公的なDNAデータベース、または公開された生殖系列抗体遺伝子配列を含む参考文献から得ることができる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子の生殖系列DNAは、「VBase」ヒト生殖系列配列データベース(www.mrc−cpe.cam.ac.uk/vbaseからインターネットで利用可能)、ならびにKabat, E. A., et al. (1991) Sequences
of Proteins of Immunological Interest, Fifth
Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No.
91-3242; Tomlinson, I. M., et al. (1992) "The Repertoire of Human Germline VH
Sequences Reveals about Fifty Groups of VH Segments with Different
Hypervariable Loops" J. Mol. Biol. 227:776-798; and Cox, J.
P. L. et al. (1994) "A Directory of Human Germ-line VH
Segments Reveals a Strong Bias in their Usage" Eur. J. Immunol. 24:827-836を参照。それぞれの内容は、本明細書において明確に援用により引用する。
【0101】
本発明の抗体において使用するための好ましいフレームワーク配列としては、本発明の選択された抗体によって使用されるフレームワーク配列に構造的に類似するもの、例えば、本発明の好ましいモノクローナル抗体によって使用されるV4−34または3−07フレームワーク配列(それぞれ配列番号:25または26)、および/またはVL15、A27またはフレームワーク配列(それぞれ配列番号:27、28または29)に類似するものがある。VCDR1、2および3配列、およびVCDR1、2および3配列を、フレームワーク配列が由来している生殖系列イムノグロブリン遺伝子に認められる配列と同一のフレームワーク領域に移植することができる。またはCDR配列を、生殖系列配列と比較して1以上の突然変異を含有するフレームワーク領域に移植することができる。例えば、いくつかの例においては、抗体の抗原結合能力を維持する、もしくは高めるために、フレームワーク領域内の残基を変異させることが有効であることがわかっている(例えば、米国特許第5,530,101号;第5,585,089号;第5,693,762号;および第6,180,370(Queen et al))。
【0102】
別のタイプの可変領域改変は、Vおよび/またはVCDR1、CDR2およびCDR3領域内のアミノ酸残基を改変して、当該抗体の1以上の結合特性(例えば、アフィニティー)を高めることができる。部位指向性の突然変異生成またはPCR媒介性の突然変異生成を行って、突然変異および作用を抗体結合に及ぼすことができる。または対象となる他の機能的特性を、本明細書に記載のin vitro もしくはin vivo アッセイで評価することができる。それを実施例において記載する。(上記のような)保存的改変を導入することが好ましい。突然変異は、アミノ酸の置換、追加、および欠失とすることができるが、置換が好ましい。さらに、典型的には、CDR領域内の改変は、1、2、3、4、または5残基以下とする。
【0103】
したがって、別の態様において、本発明は、脱フコシル化された抗CD30モノクローナル抗体、またはその抗原結合部分を提供する。それは、(a)配列番号:7、8および9からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号:7、8および9からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して、1、2、3、4もしくは5のアミノ酸に対して置換、欠失、もしくは追加がなされているアミノ酸配列を含むVCDR1領域;(b)配列番号:10、11および12からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号:10、11および12からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して、1、2、3、4もしくは5のアミノ酸に対して置換、欠失、もしくは追加がなされているアミノ酸配列を含むVCDR2領域;(c)配列番号:13、14および15からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号:13、14および15からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して、1、2、3、4もしくは5のアミノ酸にに対して置換、欠失、もしくは追加がなされているアミノ酸配列を含むVCDR3領域を含む重鎖可変領域と;(d)配列番号:16、17および18からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号:16、17および18からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して、1、2、3、4もしくは5のアミノ酸に対して置換、欠失、もしくは追加がなされているアミノ酸配列を含むVCDR1領域;(e)配列番号:19、20および21からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号:19、20および21からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して、1、2、3、4もしくは5のアミノ酸に対して置換、欠失、もしくは追加がなされているアミノ酸配列を含むVCDR2領域;ならびに(f)配列番号:22、23および24からなる群から選択されるアミノ酸配列、または配列番号:22、23および24からなる群から選択されるアミノ酸配列と比較して、1、2、3、4もしくは5のアミノ酸に対して置換、欠失、もしくは追加がなされているアミノ酸配列を含むVCDR3領域を含む。
【0104】
本発明の工学的に処理された抗体としては、例えば、抗体の特性を向上させるためにVおよび/またはV内のフレームワーク残基に改変が施されたものが挙げられる。典型的には、そのようなフレームワーク改変を行って、抗体の免疫原性を減少させる。1つのアプローチは、例えば、1以上のフレームワーク残基を「逆突然変異」して、対応する生殖系列配列にすることである。さらに具体的には、体細胞性の突然変異を行った抗体は、抗体が由来する生殖系列とは異なるフレームワーク残基を含有している。そのような残基は、抗体フレームワーク配列と、それが由来する生殖系列配列とを比較することによって同定することができる。例えば、5F11に関しては、Vのアミノ酸残基#83(FR3内)は、アスパラギンであるが、一方、対応するV4−34生殖系列配列内のこの残基は、セリンである。フレームワーク領域配列を、それらの生殖系列構成に戻すために、体細胞性の突然変異を、例えば、部位指向性の突然変異生成およびPCR媒介性の突然変異生成によって、「逆突然変異して」生殖系列配列にすることができる(例えば、5F11のVのFR3の残基83をアスパラギンからセリンに「逆突然変異」することができる)。そのような「逆突然変異した」抗体も本発明の包含されることが意図される。
【0105】
別のタイプのフレームワーク改変では、フレームワーク領域内、さらには1以上のCDR領域内の1以上の残基を変異して、T細胞エピトープを除去して、それによって抗体の潜在的免疫原性を減少させる。このアプローチは、「脱免疫化(deimmunization)」と呼ばれる。それについては、米国特許公報第20030153043号(Carr et al.)に詳細に記載されている。
【0106】
フレームワーク内もしくはCDR領域内に成される改変に加えて、または、替えて、本発明の抗体を工学的に処理して、Fc領域内に改変が含まれるように、典型的には、抗体の1以上の機能的特性、例えば、血清半減期、補足的固定、Fcレセプター結合、および/または抗原依存性細胞傷害性を変えてもよい。さらに本発明の抗体を化学的に改変してもよい(例えば、1以上の化学的部分を抗体に付着させることができる)、または改変してそのグリコシル化を変更してもよい、再び、抗体の1以上の機能的特性を変更してもよい。これらの態様のそれぞれについては、以下において詳細に説明する。Fc領域の残基の番号付けは、KabatのEUインデックスのものである。
【0107】
ある態様において、CH1のヒンジ領域を改変して、ヒンジ領域中のシステイン残基を改変、例えば、増加または減少させる。このアプローチは、米国特許第5,677,425号(Bodmer et al.)にさらに詳細に記載されている。CH1のヒンジ領域中のシステイン残基の数を改変して、例えば、軽鎖および重鎖の結合を容易にする。または抗体の安定性を増加もしくは減少させる。
【0108】
別の態様において、抗体のFcヒンジ領域を変異させて、抗体の生物学的半減期を減少させる。より具体的には、1以上のアミノ酸突然変異をFcヒンジフラグメントのCH2−CH3ドメインインターフェース領域に導入して、抗体がブドウ状球菌タンパク質A(SpA)の固有のFcヒンジドメインSpA結合に対する結合を損傷させるようにする。このアプローチは、米国特許第6,165,745号(Ward et al.)にさらに詳細に記載されている。
【0109】
別の態様において、抗体を改変して、その生物学的半減期を増加させる。種々のアプローチが可能である。例えば、米国特許第6,277,375号(Ward)に記載されているように、以下の突然変異の1以上を導入することができる:T252L、T254S、T256F。別法として、生物学的半減期を増加させるため、、米国特許第5,869,046号および第6,121,022号(Presta et al.)に記載のように、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから取り出されたサルベージレセプター結合エピトープを含有するようにCH1またはCL領域内で抗体を改変させることができる。
【0110】
さらに別の態様において、少なくとも1つのアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基と置換して、Fc領域を改変して、抗体のエフェクター機能を変える。例えば、アミノ酸残基234、235、236、237、297、318、320および322から選択される1以上のアミノ酸を異なるアミノ酸残基と置き換えて、該抗体がエフェクターリガンドのための改変されたアフィニティーを持つようにするが、親抗体の抗原結合可能性を維持するようにする。アフィニティーが改変されたエフェクターリガンドは、例えば、Fcレセプターまたは補体のC1成分とする。このアプローチは、米国特許第5,624,821号および第5,648,260号(ともにWinter et al.)にさらに詳細に記載されている。
【0111】
別の例において、アミノ酸残基329、331および322から選択される1以上のアミノ酸を異なるアミノ酸残基と置き換えて、該抗体がC1q結合を改変し、および/または補体依存性細胞傷害性(CDC)を減少もしくはなくすように改変した。このアプローチは、米国特許第6,194,551号(Idusogie et al.)にさらに詳細に記載されている。
【0112】
別の例において、アミノ酸位置231および239内の1以上のアミノ酸残基を改変して、それによって抗体が補体を固定する能力を改変する。このアプローチは、PCT国際公開WO94/29351号(Bodmer et al)にさらに詳細に記載されている。
【0113】
さらに別の例において、位置:238、239、248、249、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、301、303、305、307、309、312、315、320、322、324、326、327、329、330、331、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438または439の1以上のアミノ酸を改変することによって、Fc領域を改変して、抗体が抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を媒介する能力を増加させ、および/または、Fcγレセプターに対するアフィニティーを増加させる。このアプローチは、PCT国際公開WO00/42072号(Presta)にさらに詳細に記載されている。さらに、FcγR1、FcγRII、FcγRIIIおよびFcRnのヒトIgG1上の結合位置をマッピングし、結合が改善された変異体について記載されている(Shields, R.L. et al. (2001) J.
Biol. Chem. 276:6591-6604参照)。FcγRIIIに対する結合を高めるために位置256、290、298、333、334および339の特定の突然変異を示す。FcγRIII結合を高めるためにさらに以下の組み合わせの変異体を示す。T256A/S298A、S298A/E333A、S298A/K224A、およびS298A/E333A/K334A。
【0114】
本発明によって考えられる抗体の別の改変は、ペグ化(pegylation)である。抗体は、ペグ化して、例えば、抗体の生物学的(例えば、血清)半減期を増加させることができる。抗体をペグ化するために、抗体、またはそのフラグメントを、典型的には、ポリエチレングリコール(PEG)の反応性エステルもしくはアルデヒド誘導体といったPEGと、1以上のPEG基が抗体もしくは抗体フラグメントに付着した条件で反応させる。好ましくは、ペグ化(pegylation)は、反応性PEG分子(または類似の反応性水溶性ポリマー)を用いたアシル化反応またはアルキル化反応によって行われる。本明細書で用いられている用語「ポリエチレングリコール」は、他のタンパク質を誘導体化するあらゆる形態のPEG、例えば、モノ(C1−C10)アルコキシ、もしくはアリールオキシ−ポリエチレングリコールもしくはポリエチレングリコール−マレイミドなどを包含することが意図される。いくつかの態様において、ペグ化される抗体は、無グリコシル化抗体(aglycosylated antibody)である。タンパク質をペグ化する方法は、当該技術分野において公知であり、本発明の抗体に適用される。例えば、欧州特許第0154316号(Nishimura et al.) および欧州特許第0401384(Ishikawa
et al.)に記載されている。
【0115】
抗体を工学的に処理する方法
上記のように、本明細書に開示されているVおよびV配列をもつ、脱フコシル化された抗CD30抗体を用いて、Vおよび/またはV配列、またはそこに付着された定常領域を改変することによって新たな抗CD30抗体を作出することができる。このように、本発明のさらに別の局面において、本発明の抗CD30抗体、例えば、5F11、17G1または2H9の構造的特徴を用いて、構造的に関連し、本発明の抗体の、例えば、ヒトCD30への結合といった、少なくとも1つの機能的特性を維持している、脱フコシル化された抗CD30抗体を作製することができる。例えば、5F11、17G1または2H9の1以上のCDR領域、またはその突然変異を、公知のフレームワーク領域および/または他のCDRとを組換え技術により組み合わせて、上で述べたように本発明の抗CD30抗体を作出することができる。他のタイプの改変としては、前のセクションで述べたものが挙げられる。工学的処理のための開始物質は、本明細書に記載のVおよび/またはV配列の1以上、そのCDR領域の1以上である。工学的処理された抗体を作出するために、実際に本明細書に記載のVおよび/またはV配列の1以上またはそのCDR領域をもつ抗体を調製する(すなわち、タンパク質として発現させる)必要はない。むしろ、その配列に含まれる情報を開始材料として用いて、オリジナルの配列に由来する「第2の世代」の配列を作出し、次いで、「第2の世代」の配列を調製してタンパク質として発現させる。
【0116】
したがって、別の態様において、本発明は、抗CD30抗体を調製する方法を提供する。それは、
(a)(i)配列番号:7、8および9からなる群から選択されるCDR1配列、配列番号:10、11および12からなる群から選択されるCDR2配列、および/もしくは配列番号:13、14および15からなる群から選択されるCDR3配列を含む重鎖可変領域の抗体配列、ならびに/または(ii)配列番号:16、17および18からなる群から選択されるCDR1配列、配列番号:19、20および21からなる群から選択されるCDR2配列、および/もしくはは配列番号:22、23および24からなる群から選択されるCDR3配列を含む軽鎖可変領域の抗体配列を提供すること;
(b)重鎖可変領域の抗体配列、および/または、軽鎖可変領域抗体配列内の少なくとも1つのアミノ酸残基を変更して、少なくとも1つの変更された抗体配列を生成すること、ならびに、
(c)前記変更された配列をタンパク質として発現させることを含む。
【0117】
標準的な分子生物学の技法を用いて、変更した抗体配列を調製し、発現させることができる。そのように調製されるように改変された抗体配列をその後、本明細書に記載の方法を用いて脱フコシル化された形態に作製し、脱フコシル化された改変抗CD30抗体を得ることができる。
【0118】
変更された抗体の機能的特性は、当該技術分野において利用可能な、および/または本明細書に記載されている、例えば、実施例に記載のもの(例えば、フローサイトメトリー、結合アッセイ、ADCCアッセイ)などの標準的なアッセイを用いて評価することができる。
【0119】
本発明の抗体を工学的に処理する方法のいくつかの態様において、突然変異をランダムにまたは選択的に、配列をコードする抗CD30抗体の全ての部分もしくは一部に沿って導入し、得られた改変抗CD30抗体をスクリーニングして、本明細書に記載のように結合アッセイおよび/または他の機能的特性を調べることができる。突然変異の方法は、当該技術分野において記載がある。例えば、PCT公開公報WO02/092780(Short)は、飽和突然変異生成、合成ライゲーションアッセンブリー、またはその組み合わせを用いて、抗体の突然変異を作製およびスクリーニングする方法を記載している。また、PCT公開公報WO03/074679(Lazar et al. )は、計算的なスクリーニング方法を用いて、抗体の生理化学的特性を最適化する方法を記載している。
【0120】
本発明の抗体をコードする核酸分子
本発明の別の局面は、本発明の抗体をコードする核酸分子に関する。本明細書において用いられる「核酸分子」という用語は、DNA分子またはRNA分子を含むことを意図する。核酸分子は、一本鎖または二本鎖であってよいが、好ましくは二本鎖DNAである。核酸は、細胞全体に存在していてもよいし、細胞ライセート中に存在してもよい。または、特定の、精製された、もしくは実質的に純粋な形態で存在してもよい。核酸は、他の細胞成分もしくは他の混入物、例えば、他の細胞核酸もしくはタンパク質から、アルカリ/SDS処理、CsClバンド形成、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動、および当該技術分野において公知の他の方法をはじめとした標準的な技法によって精製された状態のとき、「単離されている」または「実質的に純粋である」という(F. Ausubel, et al.,
ed. (1987) Current Protocols
in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New York)。本発明の核酸は、例えば、DNAまたはRNAであり、イントロンの配列を含有していてもしていなくてもよい。好ましい態様において、核酸は、cDNA分子である。
【0121】
本発明の核酸は、標準的な分子生物学の技法を用いて得ることができる。ハイブリドーマ(以下においてさらに説明するように、例えば、ヒトイムノグロブリン遺伝子を保有するトランスジェニックマウスから分離したハイブリドーマ)によって発現される抗体としては、ハイブリドーマによって作製される抗体の軽鎖および重鎖をコードするcDNAを標準的なPCR増幅またはcDNAクローニング技術によって得ることができる。イムノグロブリン遺伝子ライブラリー(例えば、ファージディスプレイ法)から得られた抗体としては、抗体をコードする核酸をライブラリーから回収することができる。
【0122】
本発明の核酸分子としては、モノクローナル抗体5F11、17G1および2H9のVおよびV配列をコードするものが好ましい。5F11のV配列をコードするDNAを配列番号:30に示す。5F11のV配列をコードするDNAを配列番号:33に示す。17G1のV配列をコードするDNAを配列番号:31に示す。17G1のV配列をコードするDNAを配列番号:34に示す。2H9のV配列をコードするDNAを配列番号:32に示す。2H9のV配列をコードするDNAを配列番号:35に示す。
【0123】
VHおよびVLセグメントをコードするDNAフラグメントを得たら、これらのDNAフラグメントを標準的な組換えDNA技法によって、さらに操作して、例えば、可変領域遺伝子を、全長抗体鎖遺伝子、Fabフラグメント遺伝子、またはscFv遺伝子へと変換することができる。これらの操作において、VLもしくはVHコードDNAフラグメントを、抗体定常領域または柔軟なリンカーなど別のタンパク質をコードする別のDNAフラグメントに作用可能に連結することができる。この文脈で用いられている用語「作用可能に連結する」は、2つのDNAフラグメントによってコードされるアミノ酸配列がフレーム内に維持されるように、2つのDNAフラグメントが結合されることを言う。
【0124】
VH領域をコードする単離されたDNAは、VHコードDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2およびCH3)をコードする別のDNA分子に作用可能に連結することによって全長重鎖遺伝子に変換することができる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は、当該技術分野において公知である(例えば、Kabat, E. A., el al. (1991) Sequences
of Proteins of Immunological Interest, Fifth
Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No.
91-3242)。これらの領域を含むDNAフラグメントは、標準的なPCR増幅によって得ることができる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMもしくはIgD定常領域とすることができるが、最も好ましくはIgG1もしくはIgG4定常領域である。Fabフラグメント重鎖遺伝子としては、VHコードDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に作用可能に連結される。
【0125】
VL領域をコードする単離されたDNAは、VLコードDNAを、軽鎖定常領域CLをコードする別のDNA分子に作用可能に連結することによって全長軽鎖遺伝子(ならびにFab軽鎖遺伝子)に変換することができる。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は、当該技術分野において公知である(例えば、Kabat, E. A., et al. (1991) Sequences
of Proteins of Immunological Interest, Fifth
Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No.
91-3242)。これらの領域を含むDNAフラグメントは、標準的なPCR増幅によって得ることができる。軽鎖定常領域は、カッパまたはラムダ定常領域とすることができるが、最も好ましくはカッパ定常領域である。
【0126】
scFv遺伝子を作製するために、VHおよびVLコードDNAフラグメントを、柔軟性のあるリンカーをコードする、例えば、アミノ酸配列(Gly−Ser)をコードする別のフラグメントに作用可能に連結して、VHおよびVL配列を、柔軟性のあるリンカーによって接続されたVLおよびVH領域と隣接する一本鎖タンパク質として発現することができるようにする(例えば、Bird et al. (1988) Science 242:423-426; Huston et al.
(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883; McCafferty et al., (1990) Nature 348:552-554)。
【0127】
本発明の核酸組成物は、cDNA、ゲノムまたは混合物からの未変性の配列(改変された制限部位などを除く)にしばしば認められるが、標準的な技法にしたがって、突然変異して遺伝子配列を作製してもよい。コードする配列にとって、これらの突然変異は、上記アミノ酸配列に影響を及ぼすかもしれない。特に、未変性のV、D、J定常領域、スイッチおよび本明細書に記載の他のそのような配列に、実質的に相同もしくはそれに由来するDNA配列が考慮される(「由来する」は、配列が、他の配列から独立した、または改変されていることを示す)。
【0128】
本発明のモノクローナル抗体の作製
本発明のモノクローナル抗体(mAbs)は、従来のモノクローナル抗体法、例えば、標準的な体細胞性の細胞ハイブリダイゼーション技法(Kohler and Milstein (1975) Nature 256: 495)を含む、種々の技法によって作製することができる。体細胞性の細胞ハイブリダイゼーション技法が好ましいが、原則的に、他のモノクローナル抗体作製法、例えば、Bリンパ球のウイルス性または腫瘍形成性の形質転換などを採用することができる。
【0129】
ハイブリドーマを調製するための好ましい動物系は、ネズミ系である。マウスにおけるハイブリドーマ作製は非常によく確立した処置である。免疫プロトコルおよび融合するための免疫化された脾細胞を単離する技術は当該技術において公知である。融合パートナー(例えば、ネズミミエローマ細胞)および融合処置も公知である。
【0130】
種々の態様において、該抗体は、例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体である。
【0131】
本発明のキメラまたはヒト化抗体は、上記のようにして調製されたネズミモノクローナル抗体に基づいて調製することができる。重鎖および軽鎖イムノグロブリンをコードするDNAは、対象となるネズミハイブリドーマから取得することができ、また、標準的な生物学的技法を用いて、非ネズミ(例えば、ヒト)イムノグロブリン配列を含有するように工学的に処理することができる。例えば、キメラ抗体を作製するために、当該技術分野において公知の方法を用いて、ネズミ可変領域をヒト定常領域に連結することができる(例えば、米国特許第4,816,567号(Cabilly et al.))。ヒト化抗体を作製するために、当該技術分野において公知の方法を用いて、ネズミCDR領域をヒトフレームワークに挿入することができる(例えば、米国特許第5,225,539号(Winter)、および米国特許第5,530,101号;第5,585,089号;第5,693,762号;および第6,180,370(Queen et al.))。種々のマウス抗CD30抗体が、キメラまたはヒト化抗CD30抗体、例えば、AC10、HeFi−1、Ber−H2、Ki−1、HRS−3、Irac、HRS−4、M44、M67およびBer−H8を作出するために使用される技術分野において公知である。
【0132】
好ましい態様において、本発明の抗体は、ヒトモノクローナル抗体である。そのようなCD30に対するヒトモノクローナル抗体は、マウス系よりむしろヒト免疫系の一部を保有するトランスジェニックまたはトランスクロモソーム性マウスを用いて生成される。これらのトランスジェニックおよびトランスクロモソーム性マウスは、本明細書においてそれぞれHuMAbマウスやKMマウスとよばれるマウスを含み、それらを本明細書において「ヒトIgマウス」と一括して呼ぶ。
【0133】
HuMAbマウス(登録商標)(Medarex,
Inc.)は、転位されていないヒト重鎖(μおよびγ)ならびに軽鎖イムノグロブリン配列をコードするヒトイムノグロブリン遺伝子の小さな座を、内因性μおよびκ鎖座に不活性な標的化された突然変異とともに含有している(例えば、Lonberg, et
al. (1994) Nature 368(6474): 856-859)。したがって、マウスにおいては、マウスIgMまたはκの発現が減少し、免疫化に反応して、導入されたヒト重鎖および軽鎖トランスジーンは、クラススイッチングおよび体細胞性の突然変異を行い、高アフィニティーヒトIgGκモノクローナルを産生させる(Lonberg, N. et al. (1994)、上掲; Lonberg, N. (1994) Handbook of Experimental Pharmacology 113:49-101; Lonberg, N. and Huszar, D. (1995) Intern.
Rev. Immunol. 13: 65-93, and Harding, F. and
Lonberg, N. (1995) Ann. N.Y. Acad. Sci. 764:536-546で検討されている)。HuMabマウスの調製および使用、ならびにそのようなマウスが持つゲノム改変は、Taylor, L. et al. (1992)Nucleic acids Research 20:6287-6295; Chen, J. et al. (1993) International
Immunology 5: 647-656; Tuaillon et al.
(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:3720-3724; Choi et al.
(1993) Nature Genetics 4:117-123; Chen, J. et al. (1993) EMBO J. 12: 821-830; Tuaillon et al.
(1994) J. Immunol. 152:2912-2920;
Taylor, L. et al. (1994) International Immunology 6: 579-591; and Fishwild, D. et al. (1996) Nature
Biotechnology 14: 845-851にさらに記載されている。その内容の全体を引用によってここに援用する。例えば、さらに、米国特許第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,789,650号;第5,877,397号;第5,661,016号;第5,814,318号;第5,874,299号;および第5,770,429号(すべてLonbergとKay);米国特許第5,545,807号(Surani et al.);PCT国際公開WO92/03918号;WO93/12227号;WO94/25585号;WO97/13852号;WO98/24884号;およびWO99/45962号(全てLonbergとKay);ならびにPCT国際公開WO01/14424号(Korman et al)。
【0134】
別の態様において、本発明のヒト抗体は、トランスジーンおよびトランスクロモソーム上にヒトイムノグロブリン配列を保有するマウス、例えば、ヒト重鎖トランスジーンおよびヒト軽鎖トランスクロモソームを保有するマウスを用いて産生させることができる。本明細書において「KMマウス」と称される、このようなマウスについては、PCT国際公開WO02/43478(Ishida et al.)に詳細な記載がある。
【0135】
ヒトイムノグロブリン遺伝子を発現するさらに別のトランスジェニック動物系が当該技術において入手可能であり、それらを利用して本発明の抗CD30抗体を産生させることができる。例えば、キセノマウス(Xenomouse)(Abgenix, Inc.)と呼ばれる別のトランスジェニック系を用いることができる。このようなマウスについては、例えば、米国特許第5,939,598号;第6,075,181号;第6,114,598号;第6,150,584号;および第6,162,963号(Kucherlapati et al.)に記載がある。
【0136】
さらに、ヒトイムノグロブリン遺伝子を発現する別のトランスクロモソーム性動物系が当該技術において入手可能であり、それらを利用して本発明の抗CD30抗体を産生させることができる。例えば、ヒト重鎖トランスクロモソームおよびヒト軽鎖トランスクロモソームの双方を保有するマウス、「TCマウス」と称されるマウスを用いることができる。このようなマウスについては、Tomizuka et al. (2000) Proc.
Natl. Acad. Sci. USA 97:722-727に記載がある。さらに、ヒト重鎖および軽鎖トランスクロモソームを保有するウシについて、当該技術において記載があり(Kuroiwa et al. (2002) Nature
Biotechnology 20:889-894)、本発明の抗CD30抗体を産生させるために用いることができる。
【0137】
本発明のヒトモノクローナル抗体はまた、ヒトイムノグロブリン遺伝子のライブラリーをスクリーニングするファージディスプレイ法を用いて調製することもできる。ヒト抗体を単離するためのそのようなファージディスプレイ法は、当該技術分野において確立している。例えば、米国特許第5,223,409号;第5,403,484号;および第5,571,698号(Ladner et al.);米国特許第5,427,908号および第5,580,717号(Dower et al.)、米国特許第5,969,108号;および第6,172,197号(McCafferty et al.);ならびに米国特許第5,885,793号;第6,521,404号;第6,544,731号;第6,555,313号;第6,582,915号;および第6,593,081号(Griffiths et al.)を参照されたい。
【0138】
本発明のヒトモノクローナル抗体は、ヒト免疫細胞が再構成されて免疫化に応じてヒト抗体反応が生じるようにしたSCIDマウスを用いて作製することもできる。そのようなマウスについては、例えば、米国特許第5,476,996号および第5,698,767号(Wilson et al.)に記載がある。
【0139】
ヒトIgマウスの免疫
ヒトIgマウスを用いて本発明のヒト抗体を産生させる場合、そのようなマウスは、Lonberg, N. et al. (1994) Nature
368(6474): 856-859; Fishwild, D. et al. (1996) Nature
Biotechnology 14: 845-851およびPCT国際公開WO98/24884号およびWO01/14424号に記載されているようにして、精製もしくは濃縮された抗原、および/または、組み換えCD30もしくはCD30融合タンパク質により、免疫できる。好適には、6〜16週齢の当該マウスに対して最初の注入を行う。例えば、CDの精製された調製物または組換え調整物(5〜50μg)のCD30抗原を用いて、腹腔中でヒトIgマウスに免疫できる。
【0140】
CD30に対する全長ヒトモノクローナル抗体を作製するための詳細な操作については、PCT国際公開WO03/059282に記載されている。様々な抗原による累積的な経験により、完全フロイントアジュバントの抗原で最初に腹腔内(IP)免疫し、次に隔週で不完全フロイントアジュバントの抗原でIP免疫(最大6まで)した時、形質転換マウスが応答することが明らかにされている。しかしながら、フロイント以外のアジュバントも有効であることがわかる。さらに、アジュバントの非存在下において全細胞が極めて免疫原性が高いことがわかっている。この免疫応答を、眼窩後方出血により得られた血漿サンプルによる免疫プロトコル過程でモニターできる。血漿は、ELISA(下記で述べたように)によりスクリーニングでき、十分な抗CD30ヒトイムノグロブリン力価を有するマウスを融合に使用できる。マウスを、屠殺3日前に抗原を静注することでブーストし、脾臓を取り出した。各免疫化について2〜3回融合を実施する必要がある。通常、6〜24匹のマウスを各抗原について免疫する。通常、HCo7およびHCo12株の両者を使用する。さらに、HCo7およびHCo12トランスジーンの両者を、2つの異なるヒト重鎖トランスジーン(HCo7/HCo12)を有する1匹のマウスで作製できる。
【0141】
本発明のヒトモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの作製
本発明のヒトモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ作製のため、免疫したトランスジェニックマウス由来の脾臓細胞および/またはリンパ節細胞を単離し、マウスミエローマ細胞株のような適切な不死化細胞株に融合できる。得られたハイブリドーマについて、抗原特異的抗体の産生をスクリーニングできる。例えば、免疫したマウス由来の脾臓リンパ球の単細胞懸濁物を、50%PEGにより、6分の1の数のP3X63−Ag8.653非分泌マウスミエローマ細胞(ATCC、CRL1580)に融合できる。細胞は、約2×10で平底マイクロタイタープレートに播種し、20%胎児クローン血清、18%“653”調整培地、5%オリゲン(IGEN)、4mM L−グルタミン、1mM ピルビン酸ナトリウム、5mM HEPES、0.055mM 2−メルカプトメタノール、50単位/mLペニシリン、50mg/mL ストレプトマイシン、50mg/mL ゲンタマイシンおよび1xHAT(Sigma;HATを、注入24時間後に添加する)を含む選択培地中で2週間インキュベートする。約2週後、細胞を、HATをHTに置き換えた培地中で培養する。次に、それぞれのウェルをELISAでスクリーニングし、ヒトモノクローナルIgMおよびIgG抗体をスクリーニングする。いったん広範なハイブリドーマ増殖が起こると、培地は、通常、10〜14日後に観察できる。抗体分泌ハイブリドーマを再播種し、再度スクリーニングし、もしヒトIgGがまだ陽性であるならば、モノクローナル抗体を少なくとも2回、限定希釈によってサブクローニングする。次に、安定なサブクローンをin vitroで培養し、少量の抗体を組織培地に産生させ、特性解析する。
【0142】
ヒトモノクローナル抗体を精製するため、選択したハイブリドーマを2リットルのスピナーフラスコ中で増殖させ、モノクローナル抗体を精製できる。上清をろ過し、濃縮した後、プロテインA−セファロース(Pharmacia,Piscataway、N.J.)によるアフィニーティクロマトグラフィーを行う。溶出したIgGをゲル電気泳動と高速液体クロマトグラフィーでチェックし、純度を確認できる。緩衝液はPBSに交換し、濃度は、1.43吸光係数を用いてOD280で決定できる。モノクローナル抗体を等量にアリコートし、−80℃で保存できる。
【0143】
本発明のモノクローナル抗体産生トランスフェクトーマの作製
また、本発明の抗体は、例えば、当該技術において公知の組み換えDNA技術と遺伝子トランスフェクション技術を組み合わせて用いて、宿主細胞トランスフェクトーマ中で産生させることができる(例えば、Morrison,S.(1985)Science 229:1202)。
【0144】
例えば、抗体またはその抗体フラグメント発現のため、部分または全長軽鎖および重鎖をコードするDNAは、標準的な分子生物学技術(例えば、PCR増幅または問題の抗体を発現するハイブリドーマを用いたcDNAクローニング)により得られ、このDNAを、遺伝子が適切に作用するように転写および翻訳調節配列に連結されるように、発現ベクター中に挿入できる。この文脈において、用語「適切に作用するように連結する」とは、ベクター内部の転写および翻訳調節配列が抗体遺伝子の転写と翻訳を制御するというそれらの目的機能を果たすようにベクターに連結されることを意味することを意図している。発現ベクターと発現調節配列は、使用した発現宿主細胞に適合するように選択する。抗体軽鎖遺伝子および抗体重鎖遺伝子を別々のベクターに挿入できるが、さらに典型的には、両者の遺伝子ともに同一発現ベクターに挿入する。抗体遺伝子は、標準的方法(例えば、抗体遺伝子断片上の相補性制限部位とベクターとのライゲーション、または制限部位が全く存在しないならば、平滑末端ライゲーション)によって発現ベクター中に挿入される。本明細書に記載の抗体の軽鎖および重鎖可変領域を用いて、Vセグメントがベクター内部のCセグメントに作用可能なように連結され、Vセグメントはベクター内部のCセグメントに作用可能なように連結されるよう、それらを所望のアイソタイプの重鎖定常および軽鎖定常領域をすでにコードしている発現ベクター中に挿入することによって、いかなる抗体のアイソタイプの全長抗体遺伝子をも作出できる。さらにまたはこれとは別に、組み換え発現ベクターは、宿主細胞から抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードできる。当該抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドがインフレームで抗体鎖遺伝子のアミノ末端に連結されるようにベクター中にクローニングできる。当該シグナルペプチドは、イムノグロブリンシグナルペプチドまたは非相同シグナルペプチド(すなわち、非イムノグロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)であってもよい。
【0145】
抗体鎖遺伝子に加えて、本発明の組み換え発現ベクターは、宿主細胞中において抗体鎖遺伝子の発現を調節できる制御配列を有している。用語「制御配列」とは、抗体鎖遺伝子の転写または翻訳を調節するプロモーター、エンハンサーおよび他の発現調節エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含む。このような制御配列は、例えば、Goeddel(Gene Expression Technology. Methods in
Enzymology 185、Academic Press、San Diego、CA(1990))に記載されている。当業者は、制御配列の選択を含む発現ベクターの設計が形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベル等のような因子に依存することを理解できる。哺乳類宿主細胞発現のための好適な制御配列には、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP)およびパピローマに由来するプロモーターおよび/またはエンハンサーのような、哺乳類細胞におけるタンパク質高発現を指示するウイルスエレメントを含む。これとは別に、ユビキチンプロモーターまたはβ−グロビンプロモーターのような非ウイルス制御配列も使用できる。さらに、制御エレメントは、SRαプロモーターシステムのような異なる起源由来の配列で構成され、それらはSV40アーリープロモーターおよびヒトT細胞白血病ウイルス1型の長い末端繰り返し由来の配列を含む(Takebe,Y. et
al.(1988)Mol.Cell.Biol. 8:466-472)。
【0146】
抗体鎖遺伝子および制御配列に加えて、本発明の組み換え発現ベクターは、宿主細胞中におけるベクターの複製を制御する配列(例えば、複製開始点)および選択マーカー遺伝子のような付加的配列も有することができる。当該選択マーカー遺伝子は、ベクターを導入した宿主細胞の選択を促進する(例えば、米国特許第4,399,216号、第4,634,665号および第5,179,017号(全てAxel et al)を参照)。例えば、典型的には、選択マーカー遺伝子は、ベクターを導入した宿主細胞上でG418、ハイグロマイシンまたはメトトレキセートのような薬物に対する耐性を付与する。好適な選択マーカー遺伝子には、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキセート選択/増幅とともにdhfr−宿主細胞中で使用するため)およびneo遺伝子(G418選択用)を含む。
【0147】
軽鎖および重鎖発現のため、重鎖および軽鎖をコードする発現ベクターは、標準的な技術により宿主細胞に導入できる。用語「トランスフェクション」の様々な形態は、外来性DNAを原核生物または真核生物宿主細胞に導入するために一般的に用いた広範囲の技術を包含することを意図しており、例えば、エレクトロポレーション、カルシウム−ホスフェート沈殿、DEAE−デキストラントランスフェクション等である。本発明の抗体を原核生物または真核生物の宿主細胞のいずれにも発現させることは理論的には可能であるが、そのような真核細胞、特に、哺乳類細胞が原核生物に比べて、適切に折りたたまれ、免疫学的に活性のある抗体を集合させ分泌させやすいため、真核細胞での抗体の発現、さらにもっとも好適には哺乳類宿主細胞での抗体の発現が最も好適である。抗体遺伝子の原核生物における発現は高収率の活性抗体産生には無効であると報告されている(Boss, M. A. and Wood, C. R. (1985) Immunology
Today 6:12-13)。
【0148】
本発明の組み換え抗体発現のために好適な宿主細胞には、発現された抗体のフコシル化を改変する細胞が挙げられる。例えば、該宿主細胞は、フコシルトランスフェラーゼ酵素を欠き、その結果、宿主細胞がその糖中にフコースを欠くタンパク質を生成する細胞であってもよい。または、グリコプロテイン改変グリコシルトランスフェラーゼを発現し、その結果、宿主細胞中で発現された抗体が、フコシル化を阻止するGlcNac構造を二分するような宿主細胞であってもよい。本発明の組み換え抗体発現のために好適な、他の哺乳類宿主細胞には、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)(UrlaubとChasinの (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220に記載されているdhfr−CHO細胞を含む。これは、例えば、R. J. KaufmanとP. A. Sharp (1982) Mol. Biol.
159:601-621に記載されているようにDHFR選択マーカーとともに使用される)、NSOミエローマ細胞、COS細胞およびSP2細胞が含まれる。特に、NSOミエローマ細胞とともに使用する場合には、別の好適な発現システムは、WO87/04462、WO89/01036および欧州特許第338,841号に開示されたGS遺伝子発現システムである。抗体遺伝子をコードする組み換え発現ベクターを哺乳類宿主細胞中に導入する時、宿主細胞中で抗体を発現させる、またはさらに好適には、宿主細胞を増殖させる培地中に抗体を分泌させるだけの十分な時間宿主細胞を培養することによって、抗体は産生される。抗体は標準的なタンパク質精製方法を用いて培地から回収できる。
【0149】
免疫複合体
別の局面において、本発明は、サイトトキシン、薬物(例えば、免疫抑制剤)または放射性トキシンのような治療分子に複合させた脱フコシル化された抗CD30抗体またはそのフラグメントを特徴とする。このような複合物を、ここで、「免疫複合体」と称する。1個以上のサイトトキシンを含む免疫複合体は、「イムノトキシン」と称される。サイトトキシン、すなわち、細胞傷害性物質には、細胞に有害な(例えば、死滅させる)あらゆる物質が含まれる。例として、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、エチジウムブロマイド、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジハイドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシンおよびそのアナログまたはホモログが挙げられる。また、治療薬には、例えば、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキセート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシルデカルバジン)、アルカリ化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパクロラムブチル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)およびロムスチン(CCNU)、シクロソスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、およびシス−ジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン(例えば、ダウノルビシン(旧ダウノマイシン)およびドキソルビシン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(旧アクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、およびアンスラマイシン(AMC))、および有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチンおよびビンブラスチン)が含まれる。
【0150】
本発明の抗体に複合できる治療薬サイトトキシンの他の好適な例として、デュオカルマイシン、カリケアミシン、マイタンシンおよびオーリスタチン並びにそれらの誘導体が含まれる。カリケアミシン抗体複合物の例は、市販されている(Mylotarg(登録商標);Wyeth−Ayerst)。
【0151】
サイトトキシンは、先行技術であるリンカー技術を用いて本発明の抗体に結合できる。サイトトキシンを抗体に結合するために用いたリンカータイプの例として、ヒドラゾン、チオエーテル、エステル、ジスルフィドおよびペプチド含有リンカーが含まれるが、これらに限定されない。リンカーは、例えば、リソソームコンパートメント内部の低pHによる切断を受けやすいか、カテプシン(例えば、カテプシンB、C、D)のような腫瘍組織中に主に発現するプロテアーゼのような、プロテアーゼによる切断を受けやすいものが選択される。
【0152】
サイトトキシンのタイプ、リンカーおよび抗体に治療物質を結合する方法をさらに検討するためには、Saito, G. et al. (2003)
Adv. Drug Deliv. Rev. 55:199-215;
Trail, P.A. et al. (2003) Cancer Immunol.
Immunother. 52:328-337; Payne, G. (2003) Cancer Cell 3:207-212; Allen, T.M. (2002) Nat. Rev. Cancer 2:750-763; Pastan, I. and
Kreitman, R. J. (2002) Curr. Opin. Investig. Drugs 3:1089-1091; Senter, P.D. and Springer, C.J. (2001)
Adv. Drug Deliv. Rev. 53:247-264も参照できる。
【0153】
本発明の抗体は、放射性同位元素に結合させ、放射性免疫複合体とも称される細胞傷害性放射性薬物を作製できる。診断または治療に使用するための抗体結合放射性同位元素の例として、ヨード131、インジウム111、イットリウム90およびルテチウム177が含まれるが、これらに限定されない。放射免疫複合体を調製する方法は、当該技術分野において確立されている。放射免疫複合体の例は市販されており、Zevalin(商標)(IDEC Pharmaceuticals)およびBexxar(商標)(Corixa
Pharmaceuticals)が含まれ、類似の方法を用いて本発明の抗体を用いて放射免疫複合体を調製できる。
【0154】
ある生物応答を修飾するために、本発明の抗体複合物を用いることができるが、薬物部分は、旧来の化学的治療薬剤のみに限定されるとみなされない。例えば、薬物部分は、所望の生物活性を有するタンパク質またはポリペプチドであってもよい。このようなタンパク質には、アブリン、リシンA、シュードモナス菌体外毒素またはジフテリアトキシンのような、例えば、酵素的に活性の毒物またはその活性断片、腫瘍壊死因子またはインターフェロン−γのようなタンパク質、または、例えば、リンホカイン、インターロイキン−1(“IL−1”)、インターロイキン−2(“IL−2”)、インターロイキン−6(“IL−6”)、顆粒マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(“G−CSF”)または他の増殖因子のような生物学的応答調節物質が含まれる。
【0155】
このような治療部分を抗体に結合するための技術は公知であり、例えば、Arnon et al.,
"Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer
Therapy", in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Reisfeld
et al. (eds.), pp. 243-56 (Alan R. Liss, Inc. 1985); Hellstrom et al., " Antibodies
For Drug Delivery", in Controlled Drug Delivery (2nd Ed.), Robinson et al. (eds.), pp. 623-53 (Marcel Dekker, Inc. 1987); Thorpe, "Antibody Carriers Of
Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review", in Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications, Pinchera et al. (eds.), pp. 475-506 (1985); "Analysis, Results, And Future
Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer
Therapy", in Monoclonal
Antibodies For Cancer Detection And Therapy, Baldwin et al. (eds.), pp. 303-16 (Academic Press 1985)、およびThorpe et al., "The
Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates",
Immunol. Rev., 62:119-58 (1982) を参照できる。
【0156】
薬剤組成物
別の局面において、本発明は、例えば、本発明のモノクローナル抗体またはその抗原結合部分を1種、またはその組み合わせを含有し、薬学的に許容できる担体とともに調剤された医薬組成物を提供する。このような組成物は、本発明の(例えば、2種以上の異なる)抗体、または免疫複合体を1個、または、その組み合わせを含んでいてもよい。例えば、本発明の医薬組成物は、標的抗原上の異なるエピトープに結合するか、または補完的活性を有する抗体(または免疫複合体または二重特異性抗体)の組み合わせを含むことができる。
【0157】
本発明の医薬組成物は、また、併用療法すなわち他の作用物質と組み合わせて投与することができる。例えば、併用療法は、他の抗新生物剤、抗炎症剤、または免疫抑制剤を少なくとも1つ組み合わせた本発明の脱フコシル化された抗CD30抗体を含んでいてもよい。そのような治療薬としては、とりわけ、高用量のステロイド性および非ステロイド性の抗炎症剤(NSAIDS)、例えば、アスピリンや他のサリチレート、例えば、イブプロフェン(Motrin、Advil)、ナプロキセン(Naprosyn)、スリンダク(Clinoril)、ジクロフェナク(Voltaren)、ピロキシカム(Feldene)、ケトプロフェン(Orudis)、ジフルニサル(Dolobid)、ナブメトン(Relafen)、エトドラク(Lodine)、オキサプロジン(Daypro)、インドメタシン(Indocin)、およびアスピリンを高用量で含む。併用療法に使用することができる他の治療薬の例は、本発明の抗体の使用に関しての以下のセクションにおいて、かなり詳細に記載している。
【0158】
本文中、「薬学的に許容できる担体」には、あらゆる溶媒、分散剤、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張および吸収遅延物質等が全て含まれ、それらは生理的に両立できる。好適には、当該担体は、(例えば、注入または点滴による)静注、筋肉内、皮下、非経口、脊髄または上皮投与に適している。投与経路に応じて、活性化合物、すなわち、抗体または免疫複合体は、化合物を不活性化する可能性のある酸や他の自然条件の作用から化合物を保護する物質で被覆することもできる。
【0159】
本発明の医薬化合物は、1種以上の薬学的に許容できる塩を含むことができる。「薬学的に許容できる塩」とは、親化合物が望ましい生物活性を保持するが、望ましくない毒性効果を全く示さない塩を称する(例えば、Berge, S.M., et al. (1977) J.
Pharm. Sci. 66:1-19を参照)。このような塩の例として、酸付加塩および塩基付加塩を含む。酸付加塩は、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、燐等のような無毒性の無機酸由来、ならびに脂肪族モノ−およびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族スルホン酸等のような無毒性の有機酸に由来するものが含まれる。塩基付加塩には、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等のようなアルカリ土金属、ならびにN,N’−ジベンチルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカイン等のような無毒の有機アミン由来のものが含まれる。
【0160】
また、本発明の医薬組成物は、薬学的に許容できる抗酸化剤を含むことができる。薬学的に許容できる抗酸化剤の例として、(1)アスコルビン酸、システインハイドロクロライド、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等のような水溶性抗酸化剤、(2)アスコルビルパルミテート、ブチル化ハイドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ハイドロキシトルエン(BHT)、レシチン、プロピルガレート、α−トコフェロール等のような油溶性抗酸化剤、および(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等のような金属キレート剤が含まれる。
【0161】
本発明の医薬組成物に使用できる適切な水性および非水性担体の例として、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、およびその適切な混合物、オリーブオイルのような植物油、およびエチルオレイン酸のような注入可能な有機エステルが含まれる。適切な流動性は、レシチンのような被覆物質を使用すること、分散体の場合、必要な粒子径を保持すること、および界面活性剤を使用することによって保持することができる。
【0162】
また、これらの組成物は保存剤、湿潤化剤、乳化剤および分散剤のようなアジュバントを含有してもよい。微生物存在の防止は、殺菌操作、同上のようにおよび、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸等のような様々な抗菌剤および抗真菌剤を包含させることによって確保できる。また、糖、塩化ナトリウム等のような等張化剤を当該組成物に含ませることが望ましい。さらに、注射製剤形態の吸収を持続させることは、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンのような吸収を遅らせる物質を包含させることによって実現することができる。
【0163】
薬学的に許容できる担体には、無菌の注射用溶液または分散体を即時調製するための無菌水溶液または分散体および無菌粉末が含まれる。このような媒体および物質を薬学的に活性の物質のために使用することが当該技術において知られている。これまで従来の媒体または物質が当該活性化合物と両立できなかったので、本発明の医薬組成物中でそれを使用することを検討している。補助的な活性化合物もまた、当該組成物中に組み込むことができる。
【0164】
治療用組成物は、通常、製造および保存条件下で、無菌でかつ安定でなければならない。当該組成物は、溶液、ミクロエマルジョン、リポゾームまたはその他高濃度の薬物に適した、調剤された構造体として製剤化できる。当該担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、およびその適切な混合物を含む溶媒または分散媒体であってもよい。適切な流動性は、レシチンのようなコーティング剤を使用すること、分散体の場合必要な粒子径を保持することおよび界面活性剤を使用することによって保持できる。多くの場合、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールのようなポリアルコールまたは塩化ナトリウムのような等張化剤を当該組成物に含有させることが望ましい。モノステアリン酸アルミニウム塩およびゼラチンのような吸収を遅らせる物質を包含させることによって、注射用組成物の吸収を持続させることができる。
【0165】
無菌の注射用溶液は、必要量の活性化合物を、上記に述べた成分の一つまたはそれらの組み合わせとともに適切な溶媒中に組み込み、必要に応じて無菌的精密ろ過をすることにより調製できる。一般的に、分散体は、基本的分散媒体と上記に述べたものの中から必要な他の成分を含む無菌媒体中に活性化合物を組み込むことによって調製する。無菌の注射用溶液調製のための無菌粉末の場合、好適な調製方法は真空乾燥および凍結乾燥(凍結乾燥)であり、活性成分に、事前に無菌ろ過した溶液からのあらゆる所望の追加成分を加えた粉末を産生できる。
【0166】
単回投与剤形を作製するために担体物質と組み合わせられる活性成分の量は、治療すべき対象と特定の投与様式に応じて変わる。単回投与剤形を作製するために担体物質と組み合わせられる活性成分の量は、一般的に、治療効果をもたらす組成物量である。一般的に、この活性成分の量は、100%のうち、薬学的に許容できる担体との組み合わせにおいて、約0.01%〜約99%、好適には約0.1%〜約70%、さらに好適には約1%〜約30%の範囲である。
【0167】
投与法は、望ましい最適な応答(例えば、治療応答)をもたらすように調整される。例えば、単回のボーラスで投与することができるか、数回に投与量を分けて時間をかけて投与することもでき、または治療状況の緊急性に応じて投与量を減ずるかまたは増量することもできる。特に、投与の容易性および投与量の均一性のため、非経口組成物を単位投与形態として製剤化するのが好都合である。本文中、単位投与形態とは、治療対象に対する単位投与として適した物理的に分離した単位を指し、各単位は、必要な薬剤担体と関連させて所望の治療効果をもたらすために計算され、あらかじめ決定した量の活性化合物を含む。本発明の単位投与形態の仕様は、(a)活性化合物の独自の特異性と目的とする特定の治療効果、および(b)個人への治療感受性のため、そのような活性化合物を調剤する技術に固有の限界により規定されかつ直接それらに依存する。
【0168】
抗体投与のため、当該投与量は、患者体重を基準として、約0.0001〜100mg/kg、さらに一般的には0.01〜5mg/kgの範囲である。例えば、投与量は、約0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重または10mg/kg体重であるかまたは1〜10mg/kgの範囲である。典型的な治療方法には、例えば、週1回投与、2週間おきに1回投与、3週おきに1回投与、4週おきに1回投与、1ヶ月に1回投与、3ヶ月おきに1回投与または3〜6ヶ月おきに1回投与を必要とする。本発明の脱フコシル化された抗CD30抗体の好適な投与方法は、静注投与により、1mg/kg体重または3mg/kg体重であり、当該抗体は、下記の投与スケジュール、すなわち、(i)投与6回を4週おきに、次に3週おき、(ii)3週おき、(iii)3mg/kg体重を1回、次いで3週おきに1mg/kg体重、の一つを用いて投与される。
【0169】
ある方法では、異なる結合特異性を有する2種以上のモノクローナル抗体を同時に投与し、この場合、投与した各抗体の投与量は、例示した範囲内に入る。通常、抗体は、複数回投与される。単回投与間隔は、例えば、毎週、毎月、3カ月おきまたは1年おきとすることができる。また、患者の標的抗原に対する抗体の血中レベルを測定することによって示唆されるように、不定期とすることもできる。血漿中の抗体濃度を約1〜1000μg/mLとなるように調整する方法や、約25〜300μg/mLとなるように調整する方法もある。
【0170】
あるいは、抗体は、徐放性製剤として投与することもでき、この場合、投与頻度を少なくすることが必要となる。投与量と頻度は、患者における抗体の半減期に依存して変わる。一般的に、ヒト抗体の半減期が最も長く、次に、ヒト化抗体、キメラ抗体、非ヒト抗体が続く。投与量と投与頻度は、治療が予防なのか治療なのかにより変わる。予防的用途においては、比較的低用量が、比較的低い頻度で、長期にわたり投与される。寿命のある限り治療を受けることになる患者もいる。治療的用途では、疾患進行を遅らせるかまたは停止させるまで、好ましくは、患者が部分的または完全に疾患症状の改善を示すまで、比較的高用量を比較的短期間に必要とすることがある。その後、患者は、予防的方法で投与される。
【0171】
本発明の医薬組成物中における活性成分の実際の投与レベルを変化させることで、毒性を起こすことなしに、特定患者に対して望ましい治療応答を得る有効な活性成分、組成および投与様式を得ることができる。選択した投与量は、本発明で使用した特定組成物、またはそのエステル、その塩若しくはそのアミドの活性、投与経路、投与時間、使用した特定化合物の排泄速度、治療期間、他の薬物、使用した特定組成物と組み合わせて使用した化合物および/または物質、治療患者の年齢、性別、体重、状態、全身の健康状態、および既往歴、ならびに医学分野において公知の諸因子といった、種々の薬物動態因子に左右される。
【0172】
本発明の抗CD30抗体の「治療有効投与量」は、疾患症状の重篤度の低下、疾患に由来する症状が消失する期間の頻度と期間の増加、または疾患に罹患したことによる不全または障害の予防につながるものである。例えば、癌性の腫瘍の治療については、「治療有効投与量」は、未処置被験体に比較して、好適には少なくとも約20%、さらに好適には少なくとも約40%、さらにより好適には約60%、さらに好適には約80%以上として、細胞増殖すなわち腫瘍増殖を阻害する。化合物の腫瘍増殖阻害能は、ヒト腫瘍における有効性を予測できる動物モデル系で評価できる。別法とし、このような組成物の特性は、当業者に公知のアッセイによって化合物の阻害活性、例えば、in vitroにおける阻害能を調べることによって評価することができる。治療化合物の治療有効投与量は、腫瘍の大きさを減じるか、またはそうでなければ、被験体の症状を改善させる。当業者は、被験体の大きさ、被験体の症状の重篤度、および特定組成物または選択した投与経路のような要素に基づき量を決定することができる。
【0173】
本発明の組成物は、当該技術で公知の様々な方法の1つ以上の方法を用いて、1種以上の投与経路にて投与することもできる。当業者には明らかであろうが、投与経路および/または様式は、望ましい結果に応じて変わる。本発明の抗体の好適な投与経路は、例えば、注射または輸液による、静脈内、筋肉内、皮膚内、腹腔内、皮下、脊髄投与または他の非経口投与経路を含む。本明細書で用いられているフレーズ「非経口投与」とは、腸および局所投与以外の通常の注入による投与様式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下嚢内、眼窩内、心臓内、皮膚内、腹腔内、経気管的、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注入および点滴が含まれるが、これらに限定されない。
【0174】
あるいは、本発明の脱フコシル化された抗体は、局所、上皮のような非経口経路で、または、例えば、鼻腔内、口腔内、膣内、直腸内、舌下または局所で粘膜投与経路により投与できる。
【0175】
活性化合物は、インプラント、経皮パッチおよびミクロカプセル包含デリバリシステムのような徐放性製剤のような、迅速放出に対して当該化合物を保護する担体とともに調製できる。エチレンビニルアセテート、ポリアンハイドリド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルソエステルおよびポリ乳酸といった、生分解性、生体適合性ポリマーも使用できる。このような製剤の調製方法は多くが特許を得ており、または、通常、当業者に公知である。例えば、Sustained and
Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R.
Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New
York, 1978参照。
【0176】
治療用組成物は、当該技術において公知の医療用具により投与できる。例えば、好適な態様において、本発明の治療組成物は、針のない皮下注入用具により投与できる。そのような装置は、米国特許第5,399,163号、第5,383,851号、第5,312,335号、第5,064,413号、第4,941,880号、第4,790,824号または第4,596,556号に開示されている。本発明で有用な公知のインプラントおよびモジュールの例として、制御された速度で医薬を投薬するためのインプラント可能なミクロインフィージョンポンプを開示した米国特許第4,487,603号、皮膚から医薬を投与するための治療用具を開示した米国特許第4,486,194号、精密な点滴速度で医薬を運搬するための医薬インヒュージョンポンプを開示した米国特許第4,447,233号、連続的薬物運搬のための可変フローインプラント可能な点滴装置を開示した米国特許第4,447,224号、複数チャンバーコンパートメントを有する浸透圧ドラッグデリバリシステムを開示した米国特許第4,439,196号および浸透圧ドラッグデリバリシステムを開示した米国特許第4,475,196号が含まれる。これらの特許は引用によって、本明細書において援用する。他にも多くのインプラント、デリバリシステムおよびモジュールが当業者に公知である。
【0177】
いくつかの態様において、本発明の脱フコシル化された抗体を製剤化して、in vivoにおける適切な分布を確保することができる。例えば、血液−脳関門(BBB)バリアは、多くの高親水性化合物を排除する。本発明の治療化合物がBBBを(必要に応じて)確実に通過できるようにするため、それらを、例えば、リポソーム中に処方することができる。リポゾーム製造方法については、例えば、米国特許第4,522,811号;第5,374,548号;および第5,399,331号を参照できる。当該リポソームは、特定細胞または臓器に選択的に運搬される一種以上の分子を含むことができ、それによって標的ドラッグデリバリを増強できる(例えば、V.V. Ranade (1989) J. Clin. Pharmacol. 29:685を参照)。標的となる分子の例として、葉酸またはビオチン(例えば、米国特許5,416,016号(Low et al.)を参照)、マンノシド(Umezawa et al., (1988) Biochem.
Biophys. Res. Commun. 153:1038)、抗体(P.G.
Bloeman et al. (1995) FEBS Lett.
357:140; M. Owais et al. (1995) Antimicrob. Agents Chemother. 39:180)、界面活性剤プロテインAレセプター(Briscoe et al. (1995) Am.
J. Physiol. 1233:134)、p120(Schreier et al. (1994) J. Biol. Chem. 269:9090)が含まれ、また、K. Keinanen; M.L. Laukkanen (1994) FEBS Lett. 346:123; J.J. Killion; I.J.
Fidler (1994) Immunomethods 4:273を参照することができる。
【0178】
本発明の用途および方法
本発明の脱フコシル化された抗体、抗体組成物および方法は、CD30発現に関連する障害の診断治療に関わる、多数のin vitroおよびin vivoでの診断的および治療的用途を有している。例えば、これらの分子は、培養細胞に対してin vitroでもしくはex vivoで、あるいはヒト被験体に対して、例えば、in vivoで投与して、様々な障害において、治療、予防および診断をするために投与することができる。本明細書において用いられている用語「被験体」とは、ヒトおよび非ヒト動物類を含むことを意味している。非ヒト動物には、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、爬虫類等のような哺乳類および非哺乳類である、全脊椎動物類が含まれる。好適な被験体には、CD30発現に関連する障害を有するヒト患者が含まれる。CD30に対する抗体を別の物質とともに投与するときには、その2つは、順番にまたは同時に投与できる。
【0179】
本発明の抗体組成物(例えば、抗体または免疫複合体))のin vivoおよびin
vitroの好適な投与経路は、当該技術分野において公知であり、当業者によって選択され得る。例えば、抗体組成物は、注射(例えば、静脈内もしくは皮下注射)によって投与することができる。好適な投与量は患者の年齢および体重、そして抗体組成物の濃度および/または製剤によって変わるであろう。
【0180】
ある態様において、本発明の抗体を、in vitroでの治療的もしくは診断的用とその結合活性に関して試験する。例えば、本発明の組成物は、ELISAやフローサイトメトリーアッセイによって試験することができる。さらに、CD30を発現する細胞の増殖および/または死滅を阻害することを含む、少なくとも1つのエフェクター媒介性エフェクター細胞活性を惹起する際のこれらの分子の活性を評価する。エフェクター媒介性ADCCをアッセイするためのプロトコルは、実施例において後述する。
【0181】
A.検出方法
ある態様において、本発明の抗体は、CD30のレベル、またはCD30をその膜表面に含有する細胞のレベルを検出するために使用することができる。次にそのレベルは特定の疾患の症状と結びつけることができる。
【0182】
ある特定の態様では、本発明は、サンプル中のCD30抗原の有無を検出する方法、またはCD30抗原の量を測定する方法を提供する。この方法では、脱フコシル化された抗体またはその部分とCD30の間で複合体形成することが可能な条件下で、当該サンプルと対照サンプルを、CD30に結合している本発明の抗体またはその抗原結合部分に接触させる。その後、複合体形成を検出し、当該サンプルと、比較される対照と間に複合体形成に差が認められれば、当該サンプル中にCD30抗原が存在することが示唆される。これは、例えば、当該技術分野において公知の標準的な検出方法、例えば、ELISAやフローサイトメトリー法などによって、本発明の組成物を用いて行うことができる。
【0183】
したがって、ある局面では、本発明はさらに、サンプル中のCD30(例えば、ヒトCD30)の有無を検出する方法、またはCD30の量を測定する方法を提供する。この方法では、抗体またはその部分とCD30の間で複合体形成することが可能な条件下で、当該サンプルと対照サンプルを、CD30に特異的に結合する本発明の抗体またはその抗原結合部分に接触させる。その後、複合体形成を検出し、当該サンプルと、比較される対照と間に複合体形成に差が認められれば、当該サンプル中にCD30が存在することが示唆される。
【0184】
本発明の組成物は、例えばこのような細胞を標識するなど、CD30発現細胞を標的とするために用いることもできる。このような使用法のために、結合剤を、検出される分子に結合することができる。したがって、本発明は、CD30をエキソビボまたはインビトロにおいて局在化する方法を提供する。検出用標識は、例えば、放射性同位体、蛍光化合物、酵素、または酵素共因子などであってよい。
【0185】
B.CD30+細胞の増殖の阻害
結果的に特定の疾患、症状の予防または寛解につながるCD30の機能を阻害または遮断するために抗体を用いることができる。それによって、CD30は、該疾患に関連すると見なされる。疾患状態と非疾患状態の間のCD30発現の差は、抗体とCD30の間で複合体形成することが可能な条件下で、該疾患に罹患した患者から採取した試験サンプルと対照サンプルとを抗CD30抗体に接触させることによって測定することができる。抗体とCD30との間に形成された何らかの複合体を検出し、サンプル中と対照中で比較する。
【0186】
例えば、該抗体は、以下の生物学的活性の1以上をin vivoまたはin vitroで惹起する;CD30を発現する細胞の増殖を阻害する、および/またはCD30を発現する細胞を死滅させる;ヒトエフェクター細胞の存在下でCD30を発現する細胞の貪食作用またはADCCを媒介する;可溶性CD30のシェディングを阻害する;CD30リガンドのCD30に対する結合を遮断すること;IL−4発現を阻害すること、もしくは、Th2表現型の発現を低用量で媒介するために用いることができる。本明細書に記載のように、本発明の脱フコシル化された抗体は、フコシル化された形態の抗体と比較してADCC活性が高められることが示された。
【0187】
したがって、別の局面において、本発明は、CD30細胞の増殖を阻害する方法を提供する。この方法は、前記細胞を、前記細胞の抗体依存性細胞障害(ADCC)を誘発するのに十分な条件下で、前記細胞と脱フコシル化された抗CD30抗体とを接触させることを含む。細胞は、例えば、腫瘍細胞とすることができる。好ましい態様において、抗CD30抗体はヒト抗体である。
【0188】
ある態様において、本発明の抗体またはその結合部分は、例えば、細胞表面上のレセプターをキャップしたり、除去したりすることによって、標的細胞上のCD30レベルを調節するために使用することができる。抗体Fcレセプター抗体の混合物も、この目的のために用いることができる。
【0189】
本発明の組成物に結合したエフェクター細胞などの標的特異性エフェクター細胞は、治療薬として用いることもできる。標的化のためのエフェクター細胞は、マクロファージ、好中球または単球などのヒト白血球であってもよい。その他の細胞としては、好酸球、ナチュラルキラー細胞、およびその他のIgGまたはIgAレセプターを有する細胞が含まれる。必要であれば、エフェクター細胞は、治療される被験体から採取することもできる。標的特異性エフェクター細胞は、生理学的に許容される溶液中の細胞の懸濁液として投与することができる。投与される細胞数は約10〜10個程度とすることができるが、治療目的により変化するであろう。一般に、その量であれば、例えば、CD30を発現する腫瘍細胞などの標的細胞に局在化するのに十分であり、貪食作用などにより細胞死滅を引き起こすのに効果的であろう。投与経路も変えることができる。
【0190】
標的特異性エフェクター細胞による治療は、標的細胞の除去のための他の技術と併用して行うことができる。例えば、本発明の組成物、および/またはこれらの組成物に保護されたエフェクター細胞を用いた抗腫瘍療法は、化学療法と併用することができる。さらに、併用免疫療法は、二つの異なる細胞傷害性エフェクター群を腫瘍細胞拒絶に向かわせるように用いることができる。
【0191】
C.免疫複合体の使用と併用治療
ある態様において、本発明の免疫複合体は、化合物(例えば、治療薬、標識、サイトトキシン、放射性トキシン、免疫抑制薬など)を、CD30細胞表面レセプターをもつ細胞に標的化させるために使用することができる。それはそのような化合物を抗体に結合させることによって行う。したがって、本発明はまた、ex vivo または in vitroでCD30(例えば、検出可能な標識、放射性同意体、蛍光化合物、酵素、または酵素共因子など)を発現する細胞を局在化する方法も提供する。あるいは、免疫複合体は、サイトトキシンまたは放射性トキシンが、CD30、例えば、CD30発現腫瘍細胞を標的とし、その結果、腫瘍細胞を除去することによって、または、CD30発現抗原提示細胞を標的とし、その結果、免疫反応を阻害するための手段としてAPCsを除去することによって、PSMA細胞表面レセプターをもつ細胞を死滅させるために使用することができる。
【0192】
他の態様において、患者は、FcγレセプターまたはFcγレセプターの発現または活性を調節、例えば、増強または阻害させる物質を用いて、例えば、サイトカインを用いて患者を治療することによって、さらに治療することができる。治療中、投与される好適なサイトカインとしては、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターフェロン−γ(IFN−γ)、および腫瘍壊死因子(TNF)が含まれる。
【0193】
別の態様において、被験者は、リンフォカイン製剤によって治療することができる。高度にCD30を発現しない癌細胞は、リンフォカイン製剤を用いることでそのように誘発される。リンフォカイン製剤は、より均質なCD30の発現を、腫瘍の細胞中に引き起こし得る。これは有効な治療となりうる。投与に好適なリンフォカイン製剤としては、インターフェロンガンマ、腫瘍壊死因子およびそれらの組み合わせが含まれる。これらは、静脈投与することができる。リンフォカインの好適な用量は、一患者あたり、10,000〜1,000,000ユニットである。
【0194】
別の態様において、本発明の抗体組成物を用いて治療された患者に、ヒト抗体での治療効果を高めるまたは増強させる細胞傷害性物質または放射毒性物質などの別の治療薬をさらに投与する(本発明の抗体の投与の前、投与と同時、もしくは投与後)ことができる。抗体はその物質と結合することができる(免疫複合物として)、または該物質とは別々に投与することができる。後者の場合(別個の投与)、抗体は、物質投与の前、後、もしくは同時に投与することができる、公知の他の治療方法、例えば、放射線治療などの抗癌治療と共投与することもできる。そのような治療薬としては、とりわけ、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、シスプラチン、硫酸ブレオマイシン、カルムスチン、クロランブシル、シクロホスファミド、ヒドロキシ尿素などの抗悪性腫瘍薬が含まれ、それらは、それら自身、患者に対して毒性もしくは亜毒性となるレベルでのみ有効である。シスプラチンは、4週間毎に1回、100mg/mlの投与量で静脈内投与され、アドリアマイシンは、21日毎に1回、60〜75mg/mlの投与量で静脈内投与される。本発明のヒト抗CD30抗体またはその抗原結合フラグメントは、本発明の化学治療薬と共投与することによって、細胞傷害性効果をヒト腫瘍細胞にもたらす、異なる機序で作用する2つの抗癌剤を提供する。そのような共投与は、薬剤抵抗性の発達によって生じる問題を解決することができ、または抗体と反応性を示さないそれらの腫瘍細胞の抗原特性に変化をもたらす。
【0195】
D.自己免疫疾患の治療
CD30によって媒介される、またはそれに関与する疾患、例えば、CD30の発現、典型的には過剰発現を特徴とする疾患、例えば、マクロファージ、活性化された好中球、樹状細胞またはNK細胞によって媒介される自己免疫疾患、移植に対する拒絶反応、すなわち、移植片対宿主疾患(GVHD)といった疾患を治療するために該組成物をin
vitro またはin vivo で使用することができる。可溶性CD30は、CD30を発現する細胞の表面からの定期的に流出し、CD30のレベルは、腫瘍原性および自己免疫疾患の患者の血清において上昇することが報告されている。したがって、本発明の抗体のさらに別の使用例として、CD30の流出の遮断または阻害に関連する疾患の予防または治療のために使用される。
【0196】
抗体とCD30とを接触させることによって(例えば、抗体を被験者に投与することによって)、CD30がそのような活性を誘発する能力が阻害される。したがって、関連する疾患が治療される。該抗体組成物は、単独ですることもできるし、抗体組成物と結合して、または相乗的に作用してCD30媒介性の疾患を治療または予防する免疫抑制剤などの他の治療薬と併用して投与することもできる。好ましい抗体は、CD30に特異的なエピトープに結合し、それによって好都合にCD30誘発性の活性を阻害するが、構造的に関連する表面抗原の活性に干渉しない。該組成物は、CD30発現細胞によって媒介されるあらゆる疾患を治療するために使用することができる。該疾患には、限定されないが、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、リウマチ性関節炎(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、全身性硬化症、アトピー性皮膚炎、グレーブス病、橋本甲状腺炎、ヴェグナー肉芽腫症、オーメンシンドローム(Omen’s syndrome)、慢性腎不全、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、炎症性大腸疾患(IBD;クローン病、潰瘍性大腸炎およびセリアック病を含む)、インスリン依存性糖尿病(IDDM)、急性感染性単核球症、HIV、ヘルペスウイルス関連疾患、多発性硬化症(MS)、溶血性貧血、甲状腺炎、全身強直性症候群、尋常性天疱瘡、および重症筋無力症(MG)が含まれる。
【0197】
E.癌の治療
他の態様において、本発明は、被験者においてCD30+腫瘍細胞(すなわち、CD30を発現する腫瘍細胞)の成長を阻害する方法であって、本発明のフコシル化された抗CD30抗体を患者に投与することによって、CD30+腫瘍細胞の成長を阻害する提供する。ヒト被験者に対しては、該抗体は、ヒト化抗体またはヒト抗体であることが好ましい。好ましい態様において、該腫瘍細胞は、ホジキン病腫瘍細胞である。他の好ましい態様において、該腫瘍細胞は、未分化巨大細胞リンパ腫(ALCL)腫瘍細胞である。他の好ましい態様において、該腫瘍細胞は、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、結節性小分裂細胞リンパ腫(nodular small cleaved-cell lymphomas)、リンパ球性リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、レナートリンパ腫、免疫芽球性リンパ腫、T細胞白血病(ATLL)、成人T細胞白血病(T−ALL)、内生分芽型/中心細胞性(cb/cc)濾胞性リンパ腫癌、B系列のびまん性巨大細胞リンパ腫、血管免疫芽細胞性リンパ節症(AILD)様T細胞リンパ腫、成人T細胞リンパ腫(ATL)、HIV関連体腔ベースリンパ腫(body cavity based lymphomas)、胎児性癌、鼻咽頭腔の未分化癌(例えば、シュミンケ腫瘍)、カストルマン病、カポジ肉腫、CD30+T細胞リンパ腫およびCD30+B細胞リンパ腫からなる群から選択されることもある。
【0198】
本発明の治療方法は、障害を治療または予防するのに有効な量の本発明の抗体組成物を患者に投与することを含む。該抗体組成物は、単独で、あるいは抗体組成物とあわせて、もしくは相乗的に、CD30発現と関連する疾患を治療または予防する働きをする他の治療薬、例えば、細胞傷害性薬物もしくは放射毒性薬物と併用して投与することができる。
【0199】
キット
また、本発明の抗体を含むキットおよび使用説明書も本発明の範囲内である。そのキットはさらに、免疫刺激剤、細胞障害剤、または放射毒性剤、または1以上の本発明のさらなる抗体(例えば、第1のヒト抗体とは別のCD30抗原中のエピトープに結合する相補的活性を有するヒト抗体)などの少なくともさらに一つの試薬を含むことができる。キットは、通常、キット内容物の目的用途を示したラベルを有している。用語ラベルは、すべての文書を含み、キットの上面またはキットとともに付与されるか、そうでない場合にはキットに添付される。
【0200】
本発明は以下の実施例においてさらに具体化されるが、本発明をさらに限定するものと解釈されてはならない。本願全体に引用されるすべての図面、およびすべての引用文献、特許および特許出願公報の内容を引用によって本明細書中に援用する。
【実施例】
【0201】
実施例1:脱フコシル化された抗CD30モノクローナル抗体の調製および特徴づけ
本実施例では、完全ヒト抗CD30モノクローナル抗体が、フコシルトランスフェラーゼ酵素を欠き、その結果、細胞株がその糖中にフコースを欠くタンパク質を生成する細胞株中で発現される。キャピラリー電気泳動法、アミノ酸配列の比較、マススペクトロスコピーによる質量相違、およびキャピラリー等電点フォーカシングによる帯電変化をはじめとした種々の化学的分析技術を用いて、フコシル化された抗CD30抗体(フコシルトランスフェラーゼ酵素を含有する異なる細胞株中で発現される)に対して脱フコシル化された抗体を試験し、抗体間の構造的および特性的相違を測定した。
【0202】
抗CD30完全ヒトモノクローナル抗体5F11は、PCT国際公開WO03/059282にもともと記載されていた。5F11重鎖の該アミノ酸およびヌクレオチド配列を図1Aに示し、5F11軽鎖の該アミノ酸およびヌクレオチド配列を図1Bに示す。5F11重鎖および軽鎖可変領域の配列を、発現ベクターにサブクローニングした。5F11カッパ可変領域cDNAを、そのシグナル配列および任意のKozak配列を含めて、ヒトカッパ定常領域を持つフレームにサブクローニングした。5F11重鎖可変領域cDNAを、そのシグナル配列および任意のKozak配列を含めて、ヒトガンマ1重鎖定常領域を持つフレームにサブクローニングした。軽鎖および重鎖の発現は、ヒトユビキチンCプロモーターによって引き起こされた(Nenoi, M. et al. Gene
175:179, 1996)。この発現ベクターについては、米国特許出願第60/500,803号に記載されている。その内容を明確に援用によって本明細書に引用する。
【0203】
発現ベクターをFUT8−/−宿主細胞株Ms704にDNAエレクトロポレーションによってトランスフェクトした。該Ms704FUT8−/−細胞株は、2つの置換ベクターを用いてCHO/DG44細胞中のFUT8遺伝子の標的破壊によって作出した。これについては米国特許公報20040110704(Yamane et al.)およびYamane-Ohnuki et al. (2004) Biotechnol Bioeng 87:614-22にさらに記載されている。該Ms704細胞は、100μMのヒポキサンチンおよび16μMのチミジン(Invitrogen、#11067−030)および6mMのL−グルタミン(Invitrogen、#25030−081)を添加した)EX-CELL(登録商標)325PF CHO培地(JRH#14335)成長培地中の懸濁培地中で成長させた。
【0204】
エレクトロポレーションに用いるベクターDNAは、エタノール沈澱させ、10mMのTris7.6、1mMのEDTA中に再懸濁させた。1、5、10、15もしくは20μgのDNAを、各DNA濃度につき4回ずつの20回のエレクトロポレーションに用いた。スクロース緩衝液(SBS)で洗浄し、細胞を1×10細胞/mlのSBS溶液の濃度で再懸濁させることによって、Ms704細胞を調製し、トランスフェクションした。400μlの細胞をDNA構築物と混合し、230ボルト、400マイクロファラデー容量および13オームの抵抗(BTX Molecular Delivery Systems #600エレクトロセルマニピュレーター)に設定してエレクトロポレートした。エレクトロポレーションキュベットから細胞を除去し、20mlの成長培地を添加した。該細胞を、各ウェルにつき200μlずつを用いて、約4×10細胞/ウェルの濃度で96ウェル皿に播いた。エレクトロポレーションの2日後、各ウェルから150μlの培地を除去し、400μg/mlのG418を含む150μlの選択培地と置換した(Invitrogen、#10131−035)。3〜7日おきに、各ウェルにつき150μlの選択培地を新鮮な選択培地と置換した。CHO DG44宿主細胞(FUT8+/+)を、同様の処置によって同じ5F11構築物とともにエレクトロポレートし、フコシル化された糖を含有する組換え5F11を発現するCHO DG44トランスフェクタントを確立した。
【0205】
最も産生性の高いMs704およびCHO DG44クローンを拡張し、組換え5F11抗体を細胞培養上清から、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーによって精製した。
【0206】
Ms704由来のN−結合オリゴ糖および抗CD30モノクローナル抗体サンプル由来のCHO DG44の比較分析をキャピラリー電気泳動法レーザー誘導性蛍光法(cLIF)によって行った(ChenとEvangelista (1998) Electrophoresis 15:1892)。精製された抗体のN−結合オリゴ糖を、ペプチドN−グリカナーゼ(Prozyme)を添加して一晩インキュベートすることによって、放出させた。該タンパク質をエタノール沈澱し、上清を含む糖を新しいチューブにトランスフェクトしSpeedvacを用いて乾燥させた。糖を再懸濁させ、8−アミノピレン−1,3,6−トリスルホネート(APTS)を用いて、脱シアリル化およびフコース残基損失を最小限にした、穏やかな還元アミノ化条件の下で誘導体化した。反応付加物をキャピラリー電気泳動法によって分析した。レーザー励起蛍光検出器 (Beckman Coulter)(Ma and Nashabeh (1999) Anal. Chem. 71:5185)。オリゴ糖プロファイルの相違を、Ms704細胞株から取得した抗体とCHO DG44細胞株の間で観察した。Ms704由来抗CD30抗体においてはフコース残基が存在しないことに一致していた。
【0207】
Ms704細胞中において発現された抗体上にフコース残基がないことを確認するために、単糖組成物分析を行った。その結果を下の表1に示す。
【0208】
【表1】

【0209】
単糖分析の結果から、Ms704細胞中において発現された抗体上にフコース残基は存在しないことが確認された。
【0210】
キャピラリー電気泳動法および単糖分析によって示されるオリゴ糖の相違は別として、抗CD30抗体タンパク質サンプル由来のMs704およびCHO DG44は、本質的に同一であった。N−末端タンパク質配列の分析の結果、同じN−末端アミノ酸配列が明らかになった。抗CD30抗体抗体由来のMs704およびCHO DG44の軽鎖のマススペクトロスコピーによれば、質量はそれぞれ、23,740および23,742であった。これらは誤算の範囲内であった。2つの抗体を、標準的なキャピラリー等電点フォーカシングキット(Beckman Coulter)を用いて試験したところ、2つの抗体サンプルが同一の等電点8.6を有していることがわかった。これらの研究から、Ms704およびCHO DG44細胞に由来する抗体サンプルのタンパク質成分が、Ms704由来抗体の糖成分の脱フコシル化の例外とほぼ同じであることが示された。
【0211】
実施例2:脱フコシル化された抗CD30抗体のADCC活性の評価
抗CD30モノクローナル抗体5F11は、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を介してのエフェクター細胞数の補充によって、CD30+細胞の殺傷を可能とする。この実施例において、脱フコシル化された5F11(defuc-5F11)モノクローナル抗体を試験して、細胞毒性クロム放出アッセイにおいて該抗体がエフェクター細胞の存在下でCD30+ 細胞株を殺傷する能力について調べた。
【0212】
ヒトエフェクター細胞を以下のようにして全血から調製した。ヘパリン化全血からヒト末梢血単核細胞を、標準的なフィコール−ペーク分離(Ficoll-paque separation)によって精製した。該細胞を、10%FBSおよび200U/mlのヒトIL−2を含有するRPMI1640培地中に再懸濁させ、37℃で一晩インキュベートした。翌日、該細胞を採集し、培養培地で1回洗浄し、1×10細胞/mlの濃度で再懸濁した。200万個の標的CD30+細胞を、200μCi51Crを用いて、合計体積1mlで、37℃で1時間インキュベートした。該標的細胞を1回洗浄し、1mlの培地中に再懸濁し、37℃でさらに30分インキュベートした。最終インキュベート後、該標的細胞を1回洗浄し、最終体積を1×10細胞/mlとした。
【0213】
CD30+細胞株L540(ヒトホジキンリンパ腫;DSMZ寄託番号:ACC72)、L428(ヒトホジキンリンパ腫;寄託番号:ACC197)、L1236(ヒトホジキンリンパ腫;DSMZ寄託番号:ACC530)およびKarpas(ヒトT細胞リンパ腫;DSMZ寄託番号:ACC31)細胞株を最初に、フコシル化された5F11(fuc−5F11)およびdefuc−5F11の双方に対する結合について、標準的なFACS分析によって調べた。結合プロファイルの類似する各標的細胞を、fuc−5F11およびdefuc−5F11双方の抗体濃度全体で調べた。平均蛍光強度による測定から、CD30の発現レベルは、L540において最も高く、Karpas、L428と続いた。CD30発現が最も低かったのは、L1236細胞上であった。
【0214】
L540、L428、L1236およびKarpas細胞を、以下のようにして、修正51Cr抗体依存性細胞傷害性(ADCC)アッセイにおいて調べた。各標的細胞株(100μlの標識CD30+細胞)を、50μlのエフェクター細胞および50μlの抗体とともにインキュベートした。実験を通して、標的対エフェクター比1:50を用いた。全ての研究において、以下の陰性対照も行った。a)標的およびエフェクター細胞、但し抗体を含まないもの、b)エフェクター細胞を含まない標的細胞、c)1% Triton X-100の存在下で標的およびエフェクター細胞を含有するウェル、およびd)ヒトIgG1アイソタイプ対照。37℃で4時間のインキュベートを行った後、上清を回収し、240〜400keVの読み取りウインドウをもつガンマカウンター(Cobra II自動ガンマ、Packard Instruments社製)で計数した。1分ごとのカウントを、抗体濃度の関数としてプロットし、データを非線形回帰式、およびプリズム・ソフトウェア(Prism software)(San Diego, CA)を用いたS字形の容量反応(sigmoidal dose response)(変数傾斜)によって分析した。パーセント溶解は以下の式によって求められる。L540、L428、L1236およびKarpas細胞株の細胞傷害性曲線をfuc−5F11およびdefuc−5F11濃度を変えて、図4〜7にそれぞれ示した。
【0215】
パーセント溶解は、以下の式によって測定した。
%溶解=(サンプルCPM−抗体を含まないCPM)/TritonX PM−抗体を含まないCPM)×100
【0216】
抗体濃度25μg/mlおよび標的対エフェクター細胞比1:50でパーセント溶解を試験した。EC50も、各標的細胞について計算した。得られた結果を下の表2にまとめた。
【0217】
【表2】

【0218】
パーセント細胞溶解は、fuc−5F11抗体と比較して、defuc−5F11において、1.61倍(L540細胞)乃至3.25倍(L1236細胞)高かった。このdefuc−5F11における力価の増加の結果、fuc−5F11が測定可能な効果を示さない抗体濃度で細胞溶解が測定可能となる。例えば、CD30の発現レベルの低いL1236細胞上で、defuc−5F11は、0.1μg/mlで10%特異的溶解を示した。一方、同じ濃度でfuc−5F11は、測定可能な効果を示さない(図6参照)。EC50値の比で測定されるように、Defuc−5F11は、fuc−5F11抗体と比較して、4.7倍(L540細胞)乃至27.1倍(L1236細胞)強いADCC活性を示した。
【0219】
実施例3:抗CD30抗体のADCC活性の評価
この実施例において、抗CD30モノクローナル抗体を試験して、該抗体がCD30+細胞株をエフェクター細胞の存在下で殺傷する能力を、蛍光細胞傷害性アッセイにおける細胞傷害性活性(ADCC)を介して調べた。ヒトエフェクター細胞を上記のようにして調製し、上記のようにADCCアッセイを行った。図9からわかるように、脱フコシル化された抗CD30抗体を用いた場合、親抗CD30抗体と比較してADCC活性が増加していた。さらに脱フコシル化された抗CD30抗体は、EC50の減少から明らかなように、親抗体と比較して力価が高かった。該抗体はまた、最大パーセント溶解が脱フコシル化された抗CD30抗体においてより高いことから明らかなように、より有効であった。いずれかの抗体を用いることによって、抗CD16(3G8)抗体は、ADCCを有効に阻害する。これは、この溶解がCD16によって媒介されることを示唆するものである。
【0220】
実施例4:ヒトエフェクター細胞によるADCC増加
ADCCアッセイは、上で述べたとおりである。しかしながら、本実験においては、マウスエフェクター細胞とヒトエフェクター細胞を比較した。図10から明らかなように、マウスエフェクター細胞を用いて脱フコシル化された抗体をもつ親抗CD30抗体どうしを比較したとき、ADCCの増加は認められなかったものの、ヒトエフェクター細胞を調べた場合、親抗CD30抗体の場合と比較して脱フコシル化された抗体を用いた場合ADCCにおいて顕著な増加があった。
【0221】
実施例5:カニクイザルのエフェクター細胞を用いた親抗体および脱フコシル化された抗体を比較するためのADCCアッセイ
カニクイザルから全血を採取した。赤血球が溶解したカニクイザル末梢血細胞を50U/mlのrIL−2で刺激し、10%FBSを含有するRPMI1640培地中で、37℃で一晩培養した。実験当日にカニクイザル細胞をアッセイ緩衝液(RPMI1640、10%FBS、2.5mMプロベネシド)中に1×10細胞/mLの濃度で再懸濁させた。CD30陽性標的細胞、Karpas299を標識し、洗浄緩衝液(PBS、2.5mMプロベネシド、20mMのHEPES)で3回洗浄し、1×10細胞/mLの1:50標的対エフェクター細胞に調節した。上記のようにしてADCCアッセイを行った。親抗CD30抗体と脱フコシル化された抗体を、カニクイザル血から精製したエフェクター細胞を用いて比較した。親抗体では、中等度のADCC活性が認められた(10μg/mLで7〜10%の細胞溶解)。対照的に、脱フコシル化された抗体は、より高いパーセント溶解を誘発し(10μg/mLで約10〜30%細胞溶解)と、EC50の低下を誘発した(図11)。
【0222】
実施例6:抗CD30モノクローナル抗体のL540細胞、活性化されたヒト末梢血細胞およびカニクイザル末梢血細胞に対する結合アフィニティーのスキャットチャード分析
親抗体および脱フコシル化された抗CD30の結合アフィニティーを測定した。CD30陽性L540細胞ならびにPHA/ConA活性化ヒトもしくはカニクイザル末梢血単核細胞に対する結合アフィニティーを、2つの抗体間で比較した。
【0223】
ヒトもしくはカニクイザル末梢血単核細胞を2μg/mlのPHA、10μg/mのConAおよび50U/mlのrIL−2で刺激し、10%ウシ胎児血清(FBS)を1×10細胞/mlの細胞密度で含有するRPMI1640培地中で、3日間培養した。実験当日に細胞を洗浄し、結合緩衝液(RPMI1640、10%FBS、2.5mMプロベネシド)中にて2×10細胞/mLの濃度に調節した。対照として、これらの研究には、高レベルの抗原を発現するので、CD30陽性L540細胞(4〜8×10細胞/mlに調節)を用いた。ミリポアガラスファイバーフィルタープレート(MAFBN0B50)を水に溶かした無脂肪ドライミルクでコーティングし、4℃で一晩保存した。これらのプレートを0.2mlの結合緩衝液で3回洗浄した。50マイクロリットルの緩衝液のみを最大結合ウェル(全結合)に添加した。25マイクロリットルの緩衝液のみを対照ウェルに添加した。125I−抗CD30抗体の濃度を変えながら、全てのウェルに25μlの体積で添加した。300〜400倍超で未標識の抗体を、濃度を変えながら対照ウェルに25μlの体積で添加し(非特異性結合)、25μlのCD30陽性L540細胞または刺激されたヒトもしくはカニクイザル末梢血細胞の入った結合緩衝液を全てのウェルに添加した。このプレートを200RPM、4℃で2時間、シェーカー上でインキュベートした。インキュベート後、ミリポアプレートを0.2mlの冷洗浄緩衝液(RPMI1640、10%FBS、500mMのNaCl)で2回洗浄した。フィルターを除去し、ガンマカウンターで計測した。プリズム・ソフトウェア(Prism software)(San Diego, CA)を用いて、単一部位パラメータを用いて平衡結合を行った。
【0224】
上記スキャットチャード結合アッセイを用いたとき、L540の親CD30抗体のKは、約1.4nMであった。一方、脱フコシル化された抗体は、1.9nMのKを有していた(表3)。これは、フコースの除去によるアフィニティーの変化があまりないことを示すものである。細胞株よりむしろ一次細胞を用いてこれらの実験を繰り返した。さらに、各細胞につき、有意に少ないレセプターを発現する細胞上でのアフィニティーを試験した。活性化されたヒト末梢血細胞を上記のように調製したところ、Kは、親抗体および脱フコシル化された抗CD30抗体のそれぞれに関して1.1nMおよび2.7nMであった。
【0225】
最後に、PHA、ConAおよびrIL−2活性化カニクイザル末梢血単核細胞の親抗体および脱フコシル化された抗体の結合アフィニティーを比較した。Kは親抗体および脱フコシル化された抗CD30抗体のそれぞれに関して0.47nMおよび0.83nMであった。
【0226】
【表3】

【0227】
均等物
当業者であれば、ルーチンの実験以上のことをすることなく、ここに解説した本発明の具体的な実施の形態の均等物を数多く、認識し、または確認できることであろう。このような均等物は以下の請求の範囲の包含するところと、意図されている。
【0228】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0229】
【図1A】図1Aは、5F11ヒトモノクローナル抗体の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号:30)およびアミノ酸配列(配列番号:1)を示す図である。CDR1(配列番号:7)、CDR2(配列番号:10)およびCDR3(配列番号:13)領域を線で表し、V、DおよびJ生殖系列起源を示している。
【図1B】図1Bは、5F11ヒトモノクローナル抗体の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号:33)およびアミノ酸配列(配列番号:4)を示す図である。CDR1(配列番号:16)、CDR2(配列番号:19)およびCDR3(配列番号:22)領域を線で表し、VおよびJ生殖系列起源を示している。
【図2A】図2Aは、17G1ヒトモノクローナル抗体の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号:31)およびアミノ酸配列(配列番号:2)を示す図である。CDR1(配列番号:8)、CDR2(配列番号:11)およびCDR3(配列番号:14)領域を線で表し、VおよびJ生殖系列起源を示している。
【図2B】図2Bは、17G1ヒトモノクローナル抗体の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号:34)およびアミノ酸配列(配列番号:5)を示す図である。CDR1(配列番号:17)、CDR2(配列番号:20)およびCDR3(配列番号:23)領域を線で表し、VおよびJ生殖系列起源を示している。
【図3A】図3Aは、2H9ヒトモノクローナル抗体の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号:32)およびアミノ酸配列(配列番号:3)を示す図である。CDR1(配列番号:9)、CDR2(配列番号:12)およびCDR3(配列番号:15)領域を線で表し、V、DおよびJ生殖系列起源を示している。
【図3B】図3Bは、2H9ヒトモノクローナル抗体の軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号:35)およびアミノ酸配列(配列番号:6)を示す図である。CDR1(配列番号:18)、CDR2(配列番号:21)およびCDR3(配列番号:24)領域を線で表し、VおよびJ生殖系列起源を示している。
【図4】図4は、フコシル化された、および脱フコシル化された形態の5F11のL540ヒトホジキンリンパ腫細胞株に対する細胞傷害性細胞殺傷活性を、アイソタイプ対応対照抗体(1D4)と比較して示したグラフである。
【図5】図5は、フコシル化された、および脱フコシル化された形態の5F11のL428ヒトホジキンリンパ腫細胞株に対する細胞傷害性細胞殺傷活性を、アイソタイプ対応対照抗体(1D4)と比較して示したグラフである。
【図6】図6は、フコシル化された、および脱フコシル化された形態の5F11のL1236ヒトホジキンリンパ腫細胞株に対する細胞傷害性細胞殺傷活性を、アイソタイプ対応対照抗体(1D4)と比較して示したグラフである。
【図7】図7は、フコシル化された、および脱フコシル化された形態の5F11のKarpasヒトホジキンリンパ腫細胞株の細胞傷害性細胞殺傷活性を、アイソタイプ対応対照抗体(1D4)と比較して示したグラフである。
【図8】図8A〜8Bは、ヒト生殖系列V3−11、VL15、VA27およびVL6(それぞれ、配列番号:25〜29)のアミノ酸配列を示す図である。CDRは線で示している。
【図9】図9は、抗CD16抗体を用いたADCC活性の遮断を示すグラフである。
【図10】図10は、マウスエフェクター細胞(左のパネル)またはヒトエフェクター細胞(右のパネル)の存在下で、フコシル化された、および脱フコシル化された形態の5F11の細胞傷害性細胞殺傷活性を示すグラフである。
【図11】カニクイザル血を用いた、ADCCアッセイを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フコース残基を欠く、単離された抗CD30抗体。
【請求項2】
前記抗体は、細胞表面CD30を発現する細胞の抗体依存性細胞傷害性を増強させる、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体は、フコシル化された形態では、L1236細胞(DSMZ寄託番号:ACC530)のin vitroでの抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を誘発しないが、脱フコシル化された形態では、L1236細胞のin vitroでのADCCを誘発する抗体であり、ADCCは、抗体濃度0.1μg/mlおよび標的細胞対エフェクター細胞の比1:50でADCCアッセイによって評価される、請求項2に記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体は、フコシル化された形態では、L540細胞(DSMZ寄託番号:ACC72)、L428細胞(DSMZ寄託番号:ACC197)およびKarpas細胞(DSMZ寄託番号:ACC31)のin vitroでのADCCを、フコシル化された形態の抗体と比較して上昇させ、ADCCは、抗体濃度0.1μg/mlおよび標的細胞対エフェクター細胞の比1:50でADCCアッセイによって評価される、請求項3に記載の抗体。
【請求項5】
モノクローナル抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項6】
ヒト化抗体またはキメラ抗体である、請求項5に記載の抗体。
【請求項7】
前記ヒト化抗体またはキメラ抗体は、AC10、HeFi−1、Ber−H2、Ki−1、Ki−4、HRS−3、Irac、HRS−4、M44、M67、およびBer−H8からなる群から選択されるマウス抗CD30抗体から調製される、請求項6に記載の抗体。
【請求項8】
ヒト抗体である、請求項5に記載の抗体。
【請求項9】
ヒト抗体は、ヒト重鎖可変領域およびヒト軽鎖可変領域を含み、
(a)該ヒト重鎖可変領域は、配列番号1、2および3からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、
(b)該ヒト軽鎖可変領域は、配列番号4、5および6からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の抗体。
【請求項10】
前記ヒト重鎖可変領域は、配列番号:1のアミノ酸配列を含み、前記ヒト軽鎖可変領域は、配列番号:4のアミノ酸配列を含む、請求項9に記載の抗体。
【請求項11】
前記ヒト重鎖可変領域は、配列番号:2のアミノ酸配列を含み、前記ヒト軽鎖可変領域は、配列番号:5のアミノ酸配列を含む、請求項9に記載の抗体。
【請求項12】
前記ヒト重鎖可変領域は、配列番号:3のアミノ酸配列を含み、前記ヒト軽鎖可変領域は、配列番号:6のアミノ酸配列を含む、請求項9に記載の抗体。
【請求項13】
a)配列番号:7、8および9からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むヒト重鎖可変領域CDR1;
b)配列番号:10、11および12からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むヒト重鎖可変領域CDR2;
c)配列番号:13、14および15からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むヒト重鎖可変領域CDR3;
d)配列番号:16、17および18からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むヒト軽鎖可変領域CDR1;
e)配列番号:19、20および21からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むヒト軽鎖可変領域CDR2;および
f)配列番号:22、23および24からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むヒト軽鎖可変領域CDR3、を含む、請求項5に記載の抗体。
【請求項14】
a)配列番号:7を含むヒト重鎖可変領域CDR1;
b)配列番号:10を含むヒト重鎖可変領域CDR2;
c)配列番号:13を含むヒト重鎖可変領域CDR3;
d)配列番号:16を含むヒト軽鎖可変領域CDR1;
e)配列番号:19を含むヒト軽鎖可変領域CDR2;および
f)配列番号:22を含むヒト軽鎖可変領域CDR3、を含む、請求項13に記載の抗体。
【請求項15】
a)配列番号:8を含むヒト重鎖可変領域CDR1;
b)配列番号:11を含むヒト重鎖可変領域CDR2;
c)配列番号:14を含むヒト重鎖可変領域CDR3;
d)配列番号:17を含むヒト軽鎖可変領域CDR1;
e)配列番号:20を含むヒト軽鎖可変領域CDR2;および
f)配列番号:23を含むヒト軽鎖可変領域CDR3、を含む、請求項13に記載の抗体。
【請求項16】
a)配列番号:9を含むヒト重鎖可変領域CDR1;
b)配列番号:12を含むヒト重鎖可変領域CDR2;
c)配列番号:15を含むヒト重鎖可変領域CDR3;
d)配列番号:18を含むヒト軽鎖可変領域CDR1;
e)配列番号:21を含むヒト軽鎖可変領域CDR2;および
f)配列番号:24を含むヒト軽鎖可変領域CDR3、を含む、請求項13に記載の抗体。
【請求項17】
ヒトV4−34またはV3−07遺伝子の生成物である、またはそれに由来する重鎖可変領域を含む、請求項8に記載の抗体。
【請求項18】
ヒトVL15、A27またはL6遺伝子の生成物である、またはそれに由来する軽鎖可変領域を含む、請求項8に記載の抗体。
【請求項19】
ヒトV4−34またはV3−07遺伝子の生成物である、またはそれに由来する重鎖可変領域、およびヒトVL15、A27またはL6遺伝子の生成物である、またはそれに由来する軽鎖可変領域を含む、請求項8に記載の抗体。
【請求項20】
抗CD30抗体をコードするイムノグロブリン重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子を含む宿主細胞であって、前記宿主細胞は、フコシルトランスフェラーゼを欠くため、前記宿主細胞によって発現される前記抗CD30抗体はフコース残基を持たない、宿主細胞。
【請求項21】
前記イムノグロブリン重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子は、ヒトイムノグロブリン重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子である、請求項20に記載の宿主細胞。
【請求項22】
前記フコシルトランスフェラーゼは、FUT8である、請求項20に記載の宿主細胞。
【請求項23】
CHO細胞である、請求項20に記載の宿主細胞。
【請求項24】
CD30細胞の成長を阻害する方法であって、前記細胞の抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を誘発するのに十分な条件下で、前記細胞を脱フコシル化された抗CD30抗体に接触させることを含む、方法。
【請求項25】
前記細胞は腫瘍細胞である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記抗CD30抗体は、ヒト抗体である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
被験者において、CD30を発現する腫瘍細胞の増殖を阻害する方法であって、被験者においてCD30を発現する腫瘍細胞の増殖を阻害するのに有効な量の脱フコシル化された抗CD30抗体を、被験者に投与することを含む方法。
【請求項28】
前記抗CD30抗体は、ヒト抗体である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記腫瘍細胞は、ホジキン病(HD)腫瘍細胞である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記腫瘍細胞は、未分化巨大細胞リンパ腫(ALCL)腫瘍細胞である、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記腫瘍細胞が、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、結節性小分裂細胞リンパ腫(nodular small
cleaved-cell lymphomas)、リンパ球性リンパ腫、末梢T細胞リンパ腫、レナートリンパ腫、免疫芽球性リンパ腫、T細胞白血病(ATLL)、成人T細胞白血病(T−ALL)、内生分芽型/中心細胞性(cb/cc)濾胞性リンパ腫癌、B系列のびまん性巨大細胞リンパ腫、血管免疫芽細胞性リンパ節症(AILD)様T細胞リンパ腫、成人T細胞リンパ腫(ATL)、HIV関連体腔ベースリンパ腫(body cavity based
lymphomas)、胎児性癌、鼻咽頭腔の未分化癌(例えば、シュミンケ腫瘍)、カストルマン病、カポジ肉腫、CD30+T細胞リンパ腫およびCD30+B細胞リンパ腫からなる群から選択される疾患である、請求項27に記載の方法。


【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2008−530244(P2008−530244A)
【公表日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556370(P2007−556370)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/005854
【国際公開番号】WO2006/089232
【国際公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(503289746)メダレックス, インク. (10)
【氏名又は名称原語表記】MEDAREX, INC.
【住所又は居所原語表記】707 State Road, Princeton, NJ 08540 (US)
【Fターム(参考)】